JP6420963B2 - 車両の静音化構造 - Google Patents
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Description
このため、車両では、外パネルと内張りとの間に遮音材を配置している。特許文献1、2は、車両のルーフ部分に防音材や吸音材を配置する発明を開示する。
特に、本発明の所定のルーフ音低減構造は、ルーフパネルについての前角から離れた後方位置からルーフパネルの後縁までの範囲である、ルーフパネルの後部に設けられる。よって、前進する車両のAピラーに沿って駆け上がる空気流がルーフパネルの後部を叩いて音が発生する場合であっても、そのルーフパネルの後部を叩く音が乗車室へ伝わり難くなる。従来の燃料エンジンを備える車両と比べて静かな電気自動車において、ルーフパネルの後部を叩く音が、風切音として認識され難くなる。
しかも、本発明の所定のルーフ音低減構造を設ける範囲が、ルーフパネルについての前角から離れた後方位置からルーフパネルの後縁までの範囲である、ルーフパネルの後部とされている。よって、同様のルーフ音低減構造がルーフパネルの全体に均一に設けられる場合と比べて、ルーフ音低減構造のために追加する部材を減らすことができる。
このように、本発明では、ルーフパネルについて所定のルーフ音低減構造を設ける範囲をルーフパネルの後部に限定しているので、ルーフ部分の重量増加を抑制しつつ、ルーフ部分からの音を低減することできる。その結果、本発明では、燃料エンジンを搭載する従来の車両と比べて静かな電気車両においても、ルーフ部分からの音が乗員に気にならないようにできる。
図1は、本発明のルーフ音低減構造21を適用する電気自動車1の外観を示す側面図である。電気自動車1は、前進走行可能な車両の一例である。
図2は、図1の電気自動車1の外観を示す上面図である。
図1の電気自動車1は、車体2を有する。電気自動車1は、前側からエンジン室3、乗車室4および荷室5を有する。車体2は、車体2に剛性を与える図示外の骨格部材と、骨格部材の外側に溶接されたパネル部材と、乗車室4を画成するために骨格部材の内側に取り付けられる内装部材と、を有する。
このような電気自動車1では、路面などを走行することにより発生するロードノイズ、燃料エンジンなどによる騒音、風切音などが発生する。これらの音が大きいと、乗車室4に乗車した乗員が不快に感じることがある。そして、電気自動車1は、常に燃料エンジンを用いるガソリン自動車と異なり、大きなエンジン音がしないため、これら外で発生する音が乗員へ伝わり易い。特に、電気自動車1では、ガソリン自動車では通常問題視されることが無かった、ルーフ部分から伝わる音が乗員に認識されるようになった。
しかしながら、防音材は一般的に重量のあるゴム材やウレタン材が用いられる。こめため、ルーフ部分についてその前縁から後縁にかけて全体的に防音材を配置した場合、外で発生した音は遮音されるため乗車室4へ伝わり難くなるものの、ルーフ部分の重量が増えてしまい、車体2の高重心化や重量化が課題になる。
そこで、本実施形態では、電気自動車1のルーフ部分の重量増加を抑制しつつ、ルーフ部分からの音を低減する。
この場合、上述した車体2の幅方向両端付近を駆け上がるサイド空気流SFは、走行や自然風の状態に応じて変動することではあるが、基本的に、Aピラー9から剥離し、これによりたとえば前後方向の軸の周囲で回る縦渦流となる可能性がある。サイド空気流SFは、主空気流MFとの間に流速差があるため、主空気流MFと混ざり難い。そして、このAピラー9から剥離したサイド空気流SFがルーフパネル8に再付着する部位でルーフパネル8を叩き、ルーフ部分から乗車室4へ伝わる音(空力騒音)が生じる可能性がある。
また、Aピラー9から剥離したサイド空気流SFは、ルーフパネル8の後側になるほど、ルーフパネル8の中央寄りへ移動する可能性もある。
図3に示すように、車体2は、ルーフパネル8の左右両端には、前後方向へ伸びる一対のサイドフレーム10が溶接される。
サイドフレーム10の先端には、Aピラー9の上端が溶接される。サイドフレーム10の中央部には、Bピラー11の上端が溶接される。サイドフレーム10の後端には、Cピラー12の上端が溶接される。
一対のサイドフレーム10の間には、前側から順番に、前ルーフフレーム13、複数のルーフブレース14、後ルーフフレーム15が橋渡すように溶接される。前ルーフフレーム13の両端は、サイドフレーム10の先端およびAピラー9の上端と溶接される。ルーフブレース14の両端は、サイドフレーム10に溶接される。後ルーフフレーム15の両端は、サイドフレーム10の後端およびCピラー12の上端と溶接される。
ルーフパネル8は、前ルーフフレーム13、左右一対のサイドフレーム10および後ルーフフレーム15により形成される矩形のフレーム枠の上に溶接される。
また、図4に示すように、ルーフパネル8の下には、ルーフパネル8と離間させて、ルーフトリム16が配置される。ルーフトリム16は、ルーフパネル8と略同サイズの矩形形状に形成される。ルーフトリム16は、その外周部分が前ルーフフレーム13、左右一対のサイドフレーム10および後ルーフフレーム15に取り付けられる。ルーフトリム16は、たとえば内装止め具により、サイドフレーム10の孔に取り付けられる。ルーフブレース14は、ルーフパネル8とルーフトリム16との間で左右方向へ伸びる。
また、図3に示すように、遮音材22は、ルーフパネル8の全後方向の長さより短く形成され、ルーフパネル8の全面に対して設けられるのではなく、ルーフパネル8の後部の範囲にのみ設けられる。具体的には、ルーフパネル8の前角から離れた後方位置から、ルーフパネル8の後縁までの範囲に設けられる。また、遮音材22は、前後方向に長尺の矩形形状ではなく、前後方向に長尺の矩形形状の前側中央がV字に切り欠かれた平面形状を有する。
このような重量のある遮音材22は、たとえば複数のルーフブレース14に固定するとよい。ルーフブレース14の剛性やルーフブレース14の本数は、必要に応じて変更してよい。この場合でも車体2の基本構造を変更する必要は原則ない。
または、遮音材22は、ルーフパネル8の下面に張り付けてもよい。
特に、本実施形態のルーフ音低減構造21は、ルーフパネル8についてのAピラー9が接続される前角から後へ離れた後方位置からルーフパネル8の後縁までの範囲である。このようにルーフパネル8の後部にルーフ音低減構造21を設けることにより、前進する車体2のAピラー9に沿って駆け上がる空気流が、ルーフパネル8の***を前後方向へ流れる速い主空気流MFに当たってルーフパネル8の後部を叩いて音が発生する場合であっても、そのルーフパネル8の後部を叩く音が乗車室4へ伝わり難くなる。従来の燃料エンジンを備える車体2と比べて静かな電気自動車1において、ルーフパネル8の後部を叩く音が、風切音として認識され難くなる。
しかも、遮音材22を配置する範囲は、ルーフパネル8の全体ではなく、ルーフパネル8の後部としている。よって、同様のルーフ音低減構造21をルーフパネル8の全体に均一に設ける場合と比べて、ルーフ音低減構造21のために追加する部材を減らすことができる。遮音材22によるルーフ部分の重量化を抑制できる。車体2の高重心化や重量化を抑制できる。
その結果、本実施形態では、ルーフパネル8について所定のルーフ音低減構造21を設ける範囲をルーフパネル8の後部に限定しているので、電気自動車1のルーフ部分の重量増加を抑制しつつ、ルーフ部分からの音を低減することできる。そして、燃料エンジンを搭載する従来の車体2と比べて静かな電気自動車1において、ルーフ部分からの音が乗員に気にならないようにできる。
しかも、車体2の前部のAピラー9に沿って駆け上がる空気流が、ルーフパネル8の***を前後方向へ流れる速い主空気流MFと当たることによりルーフパネル8の後部を叩いて発生する音は、Aピラー9により支えられているルーフパネル8の前角から後方および斜め後方へ向かって放射状に広がる範囲内において生成される傾向にある。よって、所定のルーフ音低減構造21を設ける範囲を上記のように制限したとしても、ルーフパネル8上の空気流がルーフパネル8を叩く該範囲については所定のルーフ音低減構造21を持たせることができる。所定のルーフ音低減構造21による減音効果を損なうことがなく、ルーフ音低減構造21のために追加する部材を更に減らすことができる。
図5(A)は、前後方向に長尺の矩形形状の前縁全体をV字とした遮音材22である。
図5(B)は、一対の直角三角形を向かい合わせに連結してなる遮音材22である。遮音材22の幅方向中央部は、略ルーフパネル8の後縁の近くまで切り欠かれている。
図5(C)は、互いに分離した一対の直角三角形部材からなる遮音材22を、一対のサイドフレーム10に沿って配置した例である。ルーフパネル8の中央部には、遮音材22がない。
図5(D)は、互いに分離した一対の略直角三角形からなる遮音材22を、一対のサイドフレーム10に沿って配置した例である。図5(C)と異なり直角三角形の斜辺が波形状に形成されている。
これらの遮音材22であっても、ルーフパネル8の後部に配置することにより、ルーフパネル8上の空気流がルーフパネル8の後部を叩く部分に、遮音材22を配置できる。ルーフ部分の重量化を抑制しつつ、一定の遮音効果を得ることができる。
図6および図7は、本発明の第2実施形態に係るルーフ音低減構造21を示す概略説明図である。図6は、ルーフ音低減構造21を適用した車体2のルーフ部分の上面図である。図6の左側が車体2前方である。図7は、図6のルーフ部分の断面図である。
第2実施形態のルーフ部分の基本構造は、第1実施形態と同じであり、同一の符号を付して説明を省略する。
複数のブラケット23は、たとえば、基本構造におけるルーフパネル8とルーフトリム16との間隔に対応する高さの中空の円柱形状に形成される。または、ルーフブレース14とルーフトリム16との間隔に対応する高さの中空の円柱形状に形成される。ブラケット23は、金属製でも良いが、樹脂成型により軽量に形成してよい。複数のブラケット23は、ルーフパネル8およびルーフトリム16と、またはルーフブレース14とルーフトリム16と接着剤により接着される。なお、ブラケット23は、ルーフパネル8、ルーフブレース14またはルーフトリム16とネジ固定されてもよい。
また、複数のブラケット23は、図6に示すように、ルーフパネル8の後部において、ルーフパネル8とルーフトリム16とを連結する。複数のブラケット23は、図3の遮音材22と同様に、ルーフパネル8の前角から離れた後方位置から、ルーフパネル8の後縁までの範囲に設けられる。これにより、ルーフパネル8の後部には、ルーフトリム16が固定され、ルーフトリム16の分だけルーフパネル8の後部の重量が増加する。ルーフパネル8の後部は、振動し難くなる。
しかも、ルーフパネル8の下に遮音材22を配置することなく空気流がルーフパネル8を叩く音を減らすことができるので、遮音材22により減音する場合と比べて格段にルーフ部分の重量化を抑制できる。
このように、本実施形態では、ルーフパネル8について所定のルーフ音低減構造21を設ける範囲をルーフパネル8の後部に限定しているので、第1実施形態と同様に、電気自動車1のルーフ部分の重量増加を抑制しつつ、ルーフ部分からの音を低減することできる。そして、燃料エンジンを搭載する従来の車体2と比べて静かな電気自動車1において、ルーフ部分からの音が乗員に気にならないようにできる。
よって、車体2に既設されているルーフトリム16の重量を利用してルーフパネル8の後部の制振構造を実現できる。その結果、車体2のルーフ部分を略重量化させることなく、ルーフパネル8の後部のルーフ音低減構造21を実現できる。
しかも、車体2の既設部材であるルーフトリム16とルーフパネル8とは、それらの間に配置された複数のブラケット23により連結される。よって、ルーフトリム16といった車体2の既設部材およびルーフパネル8の既存の相互配置を変更することなくこれらを連結し、ルーフパネル8の後部のルーフ音低減構造21を実現できる。
図8(A)では、複数のブラケット23により、ルーフパネル8を、その下に既設されているルーフトリム16およびルーフブレース14と連結している。
図8(B)では、複数のブラケット23により、ルーフパネル8を、その下に既設されているルーフブレース14と連結している。
これらのルーフ音低減構造21であっても、ルーフパネル8の後部にルーフ音低減構造21を配置することにより、ルーフパネル8上の空気流がルーフパネル8の後部を叩く部分をルーフ音低減構造21とすることができる。ルーフ部分の重量化を抑制しつつ、一定の遮音効果を得ることができる。
この他にもたとえば、ルーフ音低減構造21は、ルーフパネル8の前縁から後縁にかけて全体的に設けてもよい。ただし、この場合であっても、ルーフパネル8の前部のルーフ音低減構造21と比べて後部の所定のルーフ音低減構造21を強化し、ルーフパネル8の前部より後部の方がより減音される構造とするとよい。これにより、ルーフパネル8の全体を所定のルーフ音低減構造21とする場合と比べてルーフ音低減構造21のために追加する部材を減らしつつ、ルーフパネル8の後部を叩く音が乗車室4へ伝わることを抑制できる。
この他にもたとえば、ルーフ音低減構造21は、ルーフパネル8自体を厚くすることで実現してもよい。この場合、ルーフパネル8は、その前部より後部が厚くなる。このようなルーフパネル8は、たとえばFRP(Fiber Reinforced Plastics)などの樹脂材料に形成すればよい。
更に他にもたとえば、ルーフ音低減構造21は、上述した3種類のルーフ音低減構造21を組み合わせたものであってもよい。この場合において、組み合わせの一部のルーフ音低減構造21は、ルーフパネル8の前縁から後縁まで均一に形成されてもよい。
この他にもたとえば、本発明は、ハイブリッド自動車、ガソリン自動車、その他の車両に適用できる。これらの車両でも、Aピラー9に沿ってルーフへ駆け上がる空気流が生成されることにより、ルーフ部分の音が発生する。そして、このルーフ部分の音が乗車室4に伝わらないようにするために、本発明を適用し得る。
Claims (3)
- 前進走行可能な車両の乗車室の上に設けられるルーフパネルと、
前記ルーフパネルの前角を支える前ピラーと、
前記ルーフパネルと前記乗車室との間に設けられるルーフ音低減構造と、
を有し、
前記ルーフ音低減構造は、
前記ルーフパネルについての前記前角から離れた後方位置から前記ルーフパネルの後縁までの範囲である、前記ルーフパネルの後部に設けられ、前記ルーフパネルについての幅方向両端部と比べて幅方向中央部の方がより後側から設けられる、
車両の静音化構造。 - 前記ルーフ音低減構造は、
多くとも前記ルーフパネルの後部となる範囲において、前記ルーフパネルの下に遮音材を配置することにより実現される、
請求項1記載の車両の静音化構造。 - 前進走行可能な車両の乗車室の上に設けられるルーフパネルと、
前記ルーフパネルの前角を支える前ピラーと、
前記ルーフパネルと前記乗車室との間に設けられるルーフ音低減構造と、
を有し、
前記ルーフ音低減構造は、
前記ルーフパネルについての前記前角から離れた後方位置から前記ルーフパネルの後縁までの範囲である、前記ルーフパネルの後部に設けられ、前記ルーフパネルの後部となる範囲において、前記ルーフパネルをその下に配置される車両構成部材と接着することにより実現され、
前記車両構成部材は、前記ルーフパネルの下に配置されるルーフブレースおよびルーフトリムの中から選択された少なくとも一方の車両の既設部材であり、
前記車両の既設部材と前記ルーフパネルとは、それらに配置された複数のブラケットにより連結されており、
前記複数のブラケットは、前記ルーフパネルの前縁と前記後縁との中間より前方側に配置される数に比べて、前記中間よりも後方側に配置される数の方が多くなるように配置される、
車両の静音化構造。
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