長尺体カバーの実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、建築物の壁面や天井面等の被配設部9に対して長尺体6を隠蔽状態で所定形態に配設するために用いられる長尺体カバー1を例として説明する。この長尺体カバー1は、長尺体6を収容可能な直管筒状に形成される直管筒部2と、直管筒部2に接続される筒状の継手筒部3とを備えるものであり、以下の点によって特徴付けられる。すなわち、直管筒部2は、被配設部9に固定される直管側ベース部材10と、直管側ベース部材10に対して係脱自在な直管側カバー部材20とを含み、継手筒部3は、被配設部9に固定される継手側ベース部材30と、継手側ベース部材30に対して係脱自在な継手側カバー部材40とを含む。そして、継手側ベース部材30に、当該継手側ベース部材30の本体部31から突出して直管側ベース部材10の端部に被配設部9とは反対側から係止される突出係止部36が設けられているとともに、突出係止部36の付け根部分36rに切除容易化のための弱化部37が設けられている。このような長尺体カバー1は、長尺体配設経路Pの形態によらずに幅広い施工手順によって施工することができる。以下、本実施形態に係る長尺体カバー1について、詳細に説明する。
なお、以下の説明では、便宜上、被配設部9における長尺体カバー1の設置面に直交する方向を基準として上下方向を定義する。具体的には、前記設置面に直交する方向に沿う被配設部9側を「下」と表し、被配設部9とは反対側(直管側カバー部材20及び継手側カバー部材40の頂部側)を「上」と表す。長尺体カバー1を構成する各部材の説明における方向についての言及は、特に断らない限り、各部材が互いに組み合わされて一体化された状態での方向を意図しているものとする。また、以下の説明で参照する図面においては、図示の容易化や理解の容易化等の観点から、縮尺や上下左右の寸法比率等が実際の製品とは異なる場合がある。
図1に示すように、長尺体カバー1は、互いに接続される直管筒部2と継手筒部3とを備える。直管筒部2は、長尺体6を収容可能な直管筒状に形成されている。継手筒部3は、長尺体6を収容可能な屈曲筒状に形成されている。本実施形態の継手筒部3は、エルボ型(より具体的には、屈曲角が約90°の平面エルボ型)に形成されている。長尺体カバー1は、複数の直管筒部2と複数の継手筒部3とを備え、長尺体配設経路Pに沿って直管筒部2と継手筒部3とが交互に接続されて構成されている。直管筒部2及び継手筒部3は、いずれも樹脂材料(合成樹脂材料)で構成されている。なお、長尺体6は、例えば線状体、管状体、及び帯状体等の、一方向に延びる長尺状の構造を有するものである。本実施形態では、長尺体6は、例えば合成樹脂製又は金属製の配管部材であり、このような配管部材として例えば給湯管や給水管、排水管、冷媒管等を例示することができる。配管部材の周囲に、例えば合成樹脂製の断熱材等からなる被覆材が設けられていても良い。
図2及び図3に示すように、直管筒部2は、被配設部9に固定される直管側ベース部材10と、直管側ベース部材10に対して係脱自在な直管側カバー部材20とを含む。直管側ベース部材10は、長尺体配設経路Pの直線部分に沿って直線状に延びる長尺状の平板状部材で構成されている。直管側ベース部材10は、被配設部9の設置面に沿って配置される底板部11と、この底板部11から上側に向かって立ち上がる一対の突条部12とを有する。底板部11における長手方向の所定位置には、取付穴11Aが形成されている。一対の突条部12は、断面形状が略S字状を呈するように屈曲形成されている。なお、「略S字状」とは、S字に沿う形状、又は、多少の歪み等があったとしても概略的にはS字と考えることができる形状を意味する(以下、「略」を用いて表現する他の形状・状態等に関しても同様である)。
直管側ベース部材10は、略S字状の一対の突条部12の内外に、互いに内向きに対向する一対の係止溝13と、それぞれ外向きに開口する一対の係合溝14とを有する。一対の係止溝13には、ホルダ部材5に設けられる係止片部52がそれぞれ係止される。一対の係合溝14には、直管側カバー部材20に設けられる係合突部23がそれぞれ係合される。直管側ベース部材10の底板部11の上面には、長手方向に沿って延びる基準線15が設けられている。基準線15は、直管側ベース部材10の幅方向(短手方向)中心を示す線であり、本例では、中心線15cとその両側に並設された一対の補助線15sとを含む。
直管側カバー部材20は、長尺体配設経路Pの直線部分に沿って直線状に延びる長尺状の湾曲板状部材で構成されている。直管側カバー部材20は、覆い壁部21と、この覆い壁部21から延びる一対の対向する側壁部22とを有する。直管側カバー部材20は、長尺体配設経路Pに沿って見た場合に、略U字状に形成されている。側壁部22の内面には、長手方向に沿って延びる係合突部23が突出形成されている。一対の係合突部23は、それぞれ対応する係合溝14に係合される。
直管側ベース部材10に対して直管側カバー部材20を近接させながら被せるのに伴って、一対の突条部12は内側に向かって弾性変形するとともに、一対の側壁部22は外側に向かって弾性変形する。そして、側壁部22に形成された係合突部23が突条部12の先端部を乗り越えると、係合突部23が係合溝14に係入して両者が互いに係合される。逆に、直管側カバー部材20を弾性変形させながら直管側ベース部材10から引き離すように直管側カバー部材20を引っ張れば、係合突部23が係合溝14から離脱して、両者の係合状態が解除される。このように、係合溝14と係合突部23とが協働することで、直管側ベース部材10と直管側カバー部材20とが係脱自在となっている。
図2及び図3に示すように、ホルダ部材5は、長尺体6の外周を覆う形状に湾曲した、合成樹脂製の弾性変形可能な帯板状部材で構成されている。ホルダ部材5は、湾曲本体部51と、この湾曲本体部51の両端部に設けられる一対の係止片部52とを有する。湾曲本体部51は、略円弧状を呈するように湾曲形成されている。係止片部52は、湾曲本体部51の端部に対して交差(本例では略直交)して、外側に向かって延びるように設けられている。ホルダ部材5は、全体として、やや扁平な末広がり状態の変形Ω型に形成されている。ホルダ部材5は、一対の係止片部52がそれぞれ対応する係止溝13に係止された状態で直管側ベース部材10との間に閉じたループ状の長尺体保持部を形成して、当該部位で長尺体6を保持する。その際、各係止片部52は、帯板状部材の弾性復元力によってそれぞれ対応する係止溝13の内面に圧接された状態で係止溝13に係止されると好適である。
図2及び図6に示すように、継手筒部3は、被配設部9に固定される継手側ベース部材30と、継手側ベース部材30に対して係脱自在な継手側カバー部材40とを含む。継手側ベース部材30は、長尺体配設経路Pの屈曲部分において長尺体配設経路Pに沿うように屈曲形成された平板状部材で構成されている。継手側ベース部材30は、本体部31と、この本体部31の両端部から突出する突出係止部36とを有する。
図4〜図7に示すように、本体部31は、被配設部9の設置面に沿って配置される底板部32と、この底板部32から上側に向かって立ち上がる一対の側壁部33とを有する。本実施形態では、底板部32は、その延在面に直交する方向から見て長尺体配設経路Pに沿って略L字状を呈するように、同一平面状に屈曲形成されている。底板部32における所定位置(本例では屈曲部の位置)には、取付穴32Aが形成されている。一対の側壁部33は、底板部32の短手方向(延在方向に直交する方向)の両端部から底板部32に対して略直交状態で立ち上がるように形成されている。一対の側壁部33のうち、屈曲中心から見て内方側に位置する方の側壁部33は、屈曲部付近が部分的に切り欠かれて形成された切欠部33cを有する。
また、本体部31は、それぞれの側壁部33の上端部から外側に向かって突出する一対の鍔状部34と、側壁部33と鍔状部34との入れ隅空間として区画される一対の凹状部35とを有する。本実施形態では、屈曲中心から見て外方側の鍔状部34及び凹状部35は、継手側ベース部材30の延在方向のおよそ全域に亘って連続するように形成されている。屈曲中心から見て内方側の鍔状部34及び凹状部35は、継手側ベース部材30の延在方向に沿いつつ切欠部33c付近で分断された状態に形成されている。鍔状部34は、その上面側に、外側に向かうに従って下方(被配設部9側)となるように傾斜する傾斜面34sを有する。鍔状部34の下面側は、被配設部9に略平行な平面に形成されており、継手側カバー部材40に設けられる係合突起43に当接可能な当接面34eとなっている。一対の凹状部35には、継手側カバー部材40に設けられる係合突起43が係合される。
突出係止部36は、本体部31の延在方向の両端部から、長尺体配設経路Pに沿って突出するように設けられている。突出係止部36は、底板部32の延在面(被配設部9の設置面)に沿って略平行に設けられている。突出係止部36は、底板部32の下面(被配設部9の設置面)から、直管側ベース部材10の底板部11の厚み相当分(若干の余裕代を設けても良い)だけ上方にオフセットさせて設けられている。突出係止部36は、底板部32の短手方向の幅に比べて幅狭(例えば3/5程度)に形成されている。また、突出係止部36は、直管側ベース部材10の一対の突条部12どうしの間の離間幅よりも幅狭に形成されている。突出係止部36は、直管側ベース部材10の底板部11の端部に、被配設部9とは反対側(上側)から係止される。
本実施形態では、突出係止部36は、その中央領域に角孔36Hを有する平板状部材で構成されている。言い換えれば、突出係止部36は、本体部31の幅方向の異なる位置から突出する一対の突出片部36Aと、これら一対の突出片部36Aの突出先端部どうしを接続する接続片部36Bとを有する。突出片部36A及び接続片部36Bは、底板部32の短手方向の幅に比べて十分に幅狭(例えば1/10以下)に形成されている。突出係止部36は、接続片部36Bと一対の突出片部36Aとにより、全体として枠状に形成されている。そして、本体部31と接続片部36Bと一対の突出片部36Aとで囲まれた空間として、角孔36Hが形成されている。接続片部36Bの突出先端部側かつ被配設部9側(下側)の角部には、C面カット状又はR面カット状等に形成された面取部36cが設けられている。
図5等に示すように、突出係止部36の付け根部分36rには弱化部37が設けられている。弱化部37とは、その周辺の部分に比べて機械的強度が低められた構造要素を意味する。このような弱化部37は、本体部31からの突出係止部36の切除を容易化させるために設けられている。本実施形態では、突出係止部36を構成する一対の突出片部36Aのそれぞれの付け根部分36rに、弱化部37が設けられている。弱化部37は、少なくとも突出係止部36(突出片部36A)における被配設部9側の面(下面)に設けられている。本実施形態では、突出係止部36(突出片部36A)における下面側だけに弱化部37が設けられており、上面側には弱化部37は設けられていない。
本実施形態では、弱化部37は、本体部31の延在方向の両側の端面31eに対面する状態に形成された切れ込み溝37Aによって構成されている。切れ込み溝37Aは、その溝底部において、突出係止部36(突出片部36A)側の切れ込み面と本体部31の端面31eとのなす角が鋭角となるように形成されていることが好ましい。好ましくは30°〜60°である。図7の拡大図に示すように、本実施形態の切れ込み溝37Aは、溝底部における2つの交差する面どうしのなす角が約45°となるように形成されている。また、切れ込み溝37Aは、その断面形状が、等しい長さの2辺が突出係止部36(突出片部36A)の下面と本体部31の端面31eとにそれぞれ沿う直角二等辺三角形状となるように形成されている。
図4に示すように、本体部31における延在方向の両端部(直管側ベース部材10との両接続端部)に、第一指示線38が設けられている。第一指示線38は、本体部31の短手方向の中央に設けられている。第一指示線38は、底板部32の上面において上方に向かって突出する線状突起により構成されている。この第一指示線38に、底板部11の上面に設けられた基準線15(ここでは特に中心線15c)を整合させるように直管側ベース部材10を配置することで、直管側ベース部材10と継手側ベース部材30との位置合わせを容易に行うことができる。本実施形態では、この位置合わせ用の第一指示線38が、「指示線」に相当する。
本実施形態では、突出係止部36における突出側の先端部(接続片部36B)に、第二指示線39が設けられている。第二指示線39は、突出係止部36(接続片部36B)の短手方向の中央に設けられている。第二指示線39は、突出係止部36(接続片部36B)上面において上方に向かって突出する線状突起により構成されている。第二指示線39も、直管側ベース部材10と継手側ベース部材30との位置合わせの容易化に寄与する。
図2及び図6に示すように、継手側カバー部材40は、長尺体配設経路Pの屈曲部分において長尺体配設経路Pに沿うように屈曲形成された湾曲板状部材で構成されている。継手側カバー部材40は、上方から見て長尺体配設経路Pに沿って略L字状を呈するように屈曲形成されている。継手側カバー部材40は、覆い壁部41と、この覆い壁部41から延びる一対の対向する側壁部42とを有する。継手側カバー部材40は、長尺体配設経路Pに沿って見た場合に、略U字状に形成されている。側壁部42の内面の所定位置には、係合突起43が突出形成されている。図8に示すように、本実施形態では、一対の係合突起43が二組、延在方向中央部の屈曲部に対して延在方向の両側に位置する側壁部42の直線状部分に、それぞれ設けられている。
係合突起43は、上下方向に沿う状態で互いに平行に配置された複数の突出板部43Aと、これら複数の突出板部43Aの上端部どうしを接続する接続板部43Bとを有する。突出板部43Aは、長尺体配設経路Pに沿って見て略台形状に形成されている。突出板部43Aは、下方(被配設部9側)に向かうに従って側壁部42の内面に近づくように傾斜する傾斜面43sを有する。接続板部43Bは、被配設部9に略平行となるように配置されており、その上面は、継手側ベース部材30の鍔状部34に当接可能な当接面43eとなっている。各係合突起43は、それぞれ対応する凹状部35に係合される。
継手側ベース部材30に対して継手側カバー部材40を近接させながら被せるのに伴って、一対の側壁部42は外側に向かって弾性変形する。そして、側壁部42に形成された係合突起43が鍔状部34の先端部を乗り越えると、係合突起43が凹状部35に係入して両者が互いに係合される。その際、係合突起43を構成する突出板部43Aの傾斜面43sと、鍔状部34の傾斜面34sとが互いに摺動して、係合突起43の凹状部35への係入動作が円滑に行われる。係入後は、係合突起43を構成する接続板部43Bの上面側の当接面43eと、鍔状部34の下面側の当接面34eとが互いに当接して、係合突起43の凹状部35からの意図せぬ離脱が抑制される。なお、継手側カバー部材40を大きく弾性変形させながら継手側ベース部材30から引き離すように継手側カバー部材40を引っ張れば、係合突起43が凹状部35から離脱して、両者の係合状態が解除される。このように、凹状部35と係合突起43とが協働することで、継手側ベース部材30と継手側カバー部材40とが係脱自在となっている。
なお、図6等に示すように、側壁部42の内面の所定位置には、上下方向に沿って延びるリブ部44も形成されている。また、図2及び図8に示すように、継手側カバー部材40における延在方向の両端部の、直管側カバー部材20との接続口は、先端部に向かうに従って僅かずつ窄まる緩やかな先細り形状を有している。
図9を参照して、本実施形態に係る長尺体カバー1を用いて長尺体6を隠蔽状態で被配設部9に配設するための手順の一例を説明する。本例では、長尺体配設経路Pの一部において2つの継手筒部3と1つの直管筒部2とを接続する場合の施工手順の一例(ここでは、屈曲点先行設置型の施工手順)について説明する。
まず、被配設部9上の長尺体配設経路Pにおける屈曲点の位置に、2つの平面エルボ状の継手側ベース部材30をそれぞれ配置する。被配設部9の設置面には、例えば墨出し線等で長尺体配設経路Pが予め示されているので、墨出し線に両端部の第一指示線38及び第二指示線39を整合させるように継手側ベース部材30を配置すれば、高い位置精度で継手側ベース部材30を位置決めすることができる。継手側ベース部材30の位置が定まれば、底板部32の取付穴32Aに挿通される締結部材8(例えばビス等)を用いて、継手側ベース部材30をそれぞれ被配設部9に固定する。
次に、2つの継手側ベース部材30どうしの間の離間長さに切断された直管側ベース部材10を準備する。そして、当該直管側ベース部材10の一端部を一方の継手側ベース部材30(以下、区別の容易化のため「30X」と表示する場合がある)の突出係止部36と被配設部9との間に差し込んで、突出係止部36によって直管側ベース部材10の一端部を仮止めする。なお、継手側ベース部材30Xの突出係止部36は、直管側ベース部材10の一対の突条部12どうしの間に入り込むので、当該一端部に関しては、自ずからある程度の位置合わせがなされる。その後、通常であれば、直管側ベース部材10の全体を撓ませて、直管側ベース部材10の他端部を、他方の継手側ベース部材30(以下、区別の容易化のため「30Y」と表示する場合がある)の突出係止部36と被配設部9との間に差し込ませる。
但し本例では、長尺体配設経路Pの形態の関係上、2つの継手側ベース部材30X,30Yどうしの間の離間長さが比較的短く、直管側ベース部材10も比較的短いため、直管側ベース部材10を十分に撓ませることができない。そのため、直管側ベース部材10の他端部を、継手側ベース部材30Yの突出係止部36と被配設部9との間に差し込ませることができない。このような場合には、直管側ベース部材10の他端部に未だ係止されない状態で継手側ベース部材30Yにそのまま残っている突出係止部36を、被配設部9とは反対側(上側)に向かって起ち上げるよう押圧する。すると、突出係止部36の付け根部分36rには弱化部37が設けられているので、この弱化部37にて、継手側ベース部材30Yから突出係止部36を容易に切除することができる。
しかも、弱化部37は、突出係止部36を構成する一対の突出片部36Aのそれぞれの付け根部分36rに設けられており、切除対象面積が小さく済むので、より小さな力で容易に、かつ、より綺麗に突出係止部36を切除することができる。さらに、弱化部37が本体部31の端面31eに対面する状態に形成された切れ込み溝37Aによって構成されているので、切除開始が容易に契機付けられるとともに、切除面が綺麗に現れやすく直管側ベース部材10との接続に支障をきたすこともほとんどない。また、突出係止部36を切除する際に施工者が指で押圧する部分となる接続片部36Bに面取部36cが設けられているので、被配設部9との間の隙間が狭くても指先を引っかけやすいとともに、施工者に対する指触りも優しい。
継手側ベース部材30Yから突出係止部36が切除されれば、当該突出係止部36による物理的な障害が存在しなくなるので、直管側ベース部材10の全体を、被配設部9に沿って適切に配置することができる。そして、継手側ベース部材30Xの突出係止部36によって直管側ベース部材10の一端部が仮止めされた状態で、基準線15(ここでは特に中心線15c)と第一指示線38とを整合させて、直管側ベース部材10の位置合わせ(位置調整)を行う。直管側ベース部材10の位置が定まれば、底板部11の取付穴11Aに挿通される締結部材8(例えばビス等)を用いて、直管側ベース部材10を被配設部9に固定する。この場合、締結部材8を用いた直管側ベース部材10の固定は、仮止め用の突出係止部36からより離間した位置から優先的に実施されると好適である。
その後、図示は省略するが、被配設部9に固定された直管側ベース部材10及び継手側ベース部材30に沿って長尺体6を配置し、ホルダ部材5を用いて長尺体6を直管側ベース部材10に保持する。その後、直管側カバー部材20を直管側ベース部材10に係合させ、最後に継手側カバー部材40を継手側ベース部材30に係合させる。
なお、上記の場合において、長尺体配設経路Pにおける2つの屈曲点間の直線部分が十分に長い場合には、継手側ベース部材30Yの突出係止部36を切除することなく2つの継手側ベース部材30間に直管側ベース部材10を固定しても良い。この場合、一端部が継手側ベース部材30Xの突出係止部36に係止された状態の直管側ベース部材10を撓ませて、その他端部を継手側ベース部材30Yの突出係止部36に係止させれば良い(図示省略)。
また、上述した屈曲点先行設置型の施工手順に限らず、継手筒部3と直管筒部2とを長尺体配設経路Pに沿って順に接続する、延長設置型の施工手順を採用することももちろん可能である。この場合、固定された直管側ベース部材10の端部に一方の突出係止部36が係止される状態で継手側ベース部材30を固定する。その後、当該継手側ベース部材30の他方の突出係止部36と被配設部9との間に新たな直管側ベース部材10の端部を差し込みつつ、当該直管側ベース部材10を固定する。これらを長尺体配設経路Pに沿って順次繰り返せば良い(図示省略)。
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る長尺体カバー1によれば、長尺体配設経路Pの形態によらずに幅広い施工手順によって、被配設部9に対して長尺体6を隠蔽状態で配設することができる。
〔その他の実施形態〕
最後に、長尺体カバーのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施形態では、平面エルボ型に形成される継手筒部3の屈曲角が約90°である構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば屈曲角は、任意の角度であって良く、例えば30°、45°、60°、120°、145°等であっても良い。
(2)上記の実施形態では、継手筒部3が平面エルボ型継手である構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば図10〜図13に示すように、継手筒部3は立面エルボ型継手(図示の例では、出隅用立面エルボ型継手)であっても良い。長尺体カバー1としての特徴は上記の実施形態と同様であるので、ここでは、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。なお、継手筒部3は、入隅用立面エルボ型継手であっても良いし、チーズ型継手や異径継手等であっても良い。継手筒部3の種別に応じて、継手側ベース部材30及び継手側カバー部材40の具体的形状は適宜変更される。
(3)上記の実施形態では、突出係止部36が角孔36Hを有する平板状部材で構成され、言い換えれば一対の突出片部36Aと接続片部36Bとを有する例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば突出係止部36が、接続片部36Bを有することなく、本体部31から突出する複数の突出片部36Aで構成されても良い。或いは、例えば図14に示すように、突出係止部36が角孔36Hを有さない平板状部材で構成されても良い。後者の場合、弱化部37は、突出係止部36の幅方向全域に亘って設けられる。
(4)上記の実施形態では、弱化部37を構成する切れ込み溝37Aが、鋭角三角形状の断面形状を有するように形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば切れ込み溝37Aは、鈍角三角形状の断面形状を有するように形成されても良いし、矩形状の断面形状を有するように形成されても良い。
(5)上記の実施形態では、弱化部37が、突出係止部36(突出片部36A)における被配設部9側の面(下面)だけに設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。弱化部37は、例えば突出係止部36(突出片部36A)における上下両面に設けられても良いし、或いは被配設部9とは反対側の面(上面)だけに設けられても良い。
(6)上記の実施形態では、弱化部37が本体部31の端面31eに対面する状態に形成された切れ込み溝37Aによって構成された例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば図15に示すように、突出係止部36が角孔36Hを有さない平板状部材で構成される場合等に、弱化部37がミシン目状のスリット37Bによって構成されても良い。ミシン目状のスリット37Bは、例えば、本体部31の端面31eに沿って突出係止部36を厚み方向に貫通する線状の穿孔と非貫通部分とが交互に連なるように形成されると良い。また、弱化部37が、切れ込み溝37Aとミシン目状のスリット37Bとの組み合わせによって構成されても良い。さらに、周辺の部分に比べて機械的強度が低められているのであれば、弱化部37としてあらゆる形態が採用されて良い。
(7)上記の実施形態では、本体部31における直管側ベース部材10との接続端部に第一指示線38が設けられるとともに、突出係止部36の接続片部36Bに第二指示線39が設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。第一指示線38は突出係止部36の切除の有無によらずに継手側ベース部材30に必ず残るので、突出係止部36側の第二指示線39は必ずしも設けられなくても良い。また、例えば位置合わせ精度がそれほど要求されない場合等には、第一指示線38に関しても、必ずしも設けられなくても良い。
(8)上記の実施形態では、ホルダ部材5が湾曲本体部51と一対の係止片部52とを有し、一対の係止片部52がそれぞれ対応する係止溝13に係止された状態で直管側ベース部材10との間に長尺体6を保持する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば図16に示すように、ホルダ部材5が、直管側ベース部材10の一対の係止溝13に係止される取付板部55と、互いに対向する状態に取付板部55から立設された一対の抱持部53とを有し、一対の抱持部53によって長尺体6を保持しても良い。この場合のホルダ部材5は、取付板部55の長手方向を直管側ベース部材10の長手方向に沿わせて配置した後に縦軸心周りに回動させることにより、取付板部55の係止縁部55eが係止溝13に係止されて、直管側ベース部材10に取り付けられる。
(9)上記の実施形態では、係合溝14と係合突部23との協働によって直管側ベース部材10と直管側カバー部材20とが係脱自在とされ、凹状部35と係合突起43との協働によって継手側ベース部材30と継手側カバー部材40とが係脱自在とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。直管側ベース部材10と直管側カバー部材20とを係脱自在とするための具体的構造や、継手側ベース部材30と継手側カバー部材40とを係脱自在とするための具体的構造として、あらゆる形態が採用されて良い。
(10)上記の実施形態では、長尺体6が、被覆材で被覆されていても良い配管部材である例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。長尺体6は、例えば電気ケーブル等であっても良い。
(11)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。