以下に、図面を参照しながら開示技術を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
図1に示すように、車両用空調装置1は、磁気熱量効果型ヒートポンプ装置2を備える。磁気熱量効果型ヒートポンプ装置2は、MHP(Magneto-caloric effect Heat Pump)装置2、または単に磁気ヒートポンプ装置2とも呼ばれる。MHP装置2は、熱磁気サイクル装置を提供する。
この明細書においてヒートポンプ装置の語は広義の意味で使用される。すなわち、ヒートポンプ装置の語には、ヒートポンプ装置によって得られる冷熱を利用する装置と、ヒートポンプ装置によって得られる温熱を利用する装置との両方が含まれる。冷熱を利用する装置は、冷凍サイクル装置とも呼ばれることがある。よって、この明細書においてヒートポンプ装置の語は冷凍サイクル装置を包含する概念として使用される。
車両用空調装置1は、MHP装置2の高温側に設けられた熱交換器3を有する。熱交換器3は、MHP装置2の高温と、媒体、例えば空気との間の熱交換を提供する。熱交換器3は、主として放熱のために用いられる。図示の例では、熱交換器3は、MHP装置2の熱輸送媒体と、空気との熱交換を提供する。熱交換器3は、車両用空調装置1における高温系統機器のひとつである。熱交換器3は、例えば車両の室内に設置され、空調用空気と熱交換することにより空気を温める。熱交換器3は、作業室11からの熱出力のうち高温端からの温熱出力を用いて、被加熱流体である例えば空調用空気を加熱する。熱交換器3は、熱輸送媒体との熱交換により被加熱流体を加熱する高温側熱交換器である。
車両用空調装置1は、MHP装置2の低温側に設けられた熱交換器4を有する。熱交換器4は、MHP装置2の低温端と、媒体、例えば空気との間の熱交換を提供する。熱交換器4は、主として吸熱のために用いられる。図示の例では、熱交換器4は、MHP装置2の熱輸送媒体と、熱源媒体との熱交換を提供する。熱交換器4は、車両用空調装置1における低温系統機器のひとつである。熱交換器4は、例えば車両の外部に設置され、外気と熱交換する。熱交換器4は、作業室11からの熱出力のうち低温端からの冷熱出力を用いて、被冷却流体である例えば外気を冷却する。熱交換器4は、熱輸送媒体との熱交換により被冷却流体を冷却する低温側熱交換器である。
MHP装置2は、MHP装置2を駆動するための回転軸2aを有する。回転軸2aは、動力源5と作動的に連結されている。よって、MHP装置2は、動力源5によって回転駆動される。動力源5は、MHP装置2に回転動力を提供する。動力源5は、MHP装置2の唯一の動力源である。動力源5は、電動機、内燃機関など回転機器によって提供される。動力源の一例は、車両に搭載された電池によって駆動される電動機である。以下、動力源を、モータと呼ぶ場合がある。
MHP装置2は、ハウジング6を備える。ハウジング6は回転軸2aを回転可能に支持している。MHP装置2は、ロータ7を備える。ロータ7は、ハウジング6内に回転可能に支持されている。ロータ7は、回転軸2aから直接的にまたは間接的に回転力を受けて、回転する。ロータ7は、動力源5によって回転させられる回転体である。ロータ7は、円筒状の部材である。
ロータ7は、熱輸送媒体が流れることができる作業室11を形成する。ひとつの作業室11は、ロータ7の軸方向に沿って延びている。ひとつの作業室11は、ロータ7の軸方向の両方の端面において開口している。ロータ7は、複数の作業室11を備えることができる。複数の作業室11は、ロータ7の回転方向に沿って配列されている。以下、ロータを、容器または素子ベッドと呼ぶ場合がある。
ロータ7は、磁気熱量素子12を備える。磁気熱量素子12は、MCE(Magneto-Caloric Effect)素子12とも呼ばれる。MHP装置2は、MCE素子12の磁気熱量効果を利用する。MHP装置2は、MCE素子12によって低温端と高温端とを生成する。MCE素子12は、低温端と高温端との間に設けられている。図示の例では、図中の右側が低温端であり、図中の左端が高温端である。
MCE素子12は、作業室11内に、熱輸送媒体と熱交換するように配置されている。MCE素子12は、ロータ7に固定され、保持されている。MCE素子12は、熱輸送媒体の流れ方向に沿って配置されている。MCE素子12は、ロータ7の軸方向に沿って細長く延在している。ロータ7は、複数のMCE素子12を備えることができる。複数のMCE素子12は、ロータ7の回転方向に沿って互いに離れて配置されている。
MCE素子12は、外部磁場の強弱の変化に応答して発熱と吸熱とを生じる。MCE素子12は、外部磁場の印加により発熱し、外部磁場の除去により吸熱する。MCE素子12は、外部磁場が印加されることによって電子スピンが磁場方向に揃うと、磁気エントロピーが減少し、熱を放出することによって温度が上昇する。また、MCE素子12は、外部磁場が除去されることによって電子スピンが乱雑になると、磁気エントロピーが増加し、熱を吸収することによって温度が低下する。MCE素子12は、常温域において高い磁気熱量効果を発揮する磁性体によって作られている。例えば、ガドリウム系材料、またはランタン−鉄−シリコン化合物を用いることができる。また、マンガン、鉄、リンおよびゲルマニウムの混合物を用いることができる。MCE素子12には、外部磁場の印加により吸熱し、外部磁場の除去により発熱する素子を利用してもよい。
MHP装置2は、ロータ7と対向して配置されたステータ8を有する。ステータ8は、ハウジング6の一部によって提供されている。ステータ8は、ロータ7の径方向内側および/または径方向外側に配置され、ロータ7と径方向に関して対向する部位を有する。これら径方向に関して対向する部位は、磁場変調装置を提供するために利用される。ステータ8は、ロータ7の軸方向一端および/または軸方向他端に配置され、ロータ7と軸方向に関して対向する部位を有する。これら軸方向に対向する部位は、熱輸送装置、具体的には流路切換機構を提供するために利用される。
MHP装置2は、MCE素子12をAMR(Active Magnetic Refrigeration)サイクルの素子として機能させるための磁場変調装置14と熱輸送装置16とを備える。磁場変調装置14は、ロータ7と、ステータ8とによって提供される。磁場変調装置14は、ステータ8に対するロータ7の相対的な回転運動によって磁場を周期的に増減させる。磁場変調装置14は、回転軸2aに与えられる回転動力によって駆動される。熱輸送装置16は、ポンプ17と、流路切換機構18とを有する。流路切換機構18は、ロータ7と、ステータ8とによって提供される。流路切換機構18は、ステータ8に対するロータ7の相対的な回転運動によって機能する。流路切換機構18は、熱輸送媒体の流路に対する作業室11の接続状態を切換えることにより、作業室11およびMCE素子12に対する熱輸送媒体の流れ方向を反転するように切換える。
磁場変調装置14は、MCE素子12に外部磁場を与えるとともに、その外部磁場の強さを増減させる。磁場変調装置14は、MCE素子12を強い磁界内に置く励磁状態と、MCE素子12を弱い磁界内またはゼロ磁界内に置く消磁状態とを周期的に切換える。磁場変調装置14は、MCE素子12が強い外部磁場の中に置かれる励磁期間、およびMCE素子12が励磁期間より弱い外部磁場の中に置かれる消磁期間を周期的に繰り返すように外部磁場を変調する。磁場変調装置14は、後述する熱輸送媒体の往復的な流れに同期して、MCE素子12への磁場の印加と除去とを繰り返す。磁場変調装置14は、外部磁場を生成するための磁力源13、例えば永久磁石、または電磁石を備える。
具体的には、磁場変調装置14は、ひとつの作業室11およびMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に位置付ける。磁場変調装置14は、第1位置にあるMCE素子12を強い磁場の中に位置付ける。磁場変調装置14は、第2位置にあるMCE素子12を弱い磁場またはゼロ磁場の中に位置付ける。
磁場変調装置14は、MCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体が流れるときに、MCE素子12が強い磁場の中に位置付けられるように、MCE素子12を第1位置に位置付ける。第1方向は、低温端から高温端に向かう方向である。磁場変調装置14は、作業室11の一端がポンプ17の吸入口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吐出口に連通するときに、その作業室11の中のMCE素子12が強い磁場の中に置かれるようにMCE素子12を第1位置に位置付ける。
磁場変調装置14は、MCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体が流れるときに、MCE素子12が弱い磁場またはゼロ磁場の中に位置付けられるように、MCE素子12を第2位置に位置付ける。第2方向は、高温端から低温端に向かう方向である。磁場変調装置14は、作業室11の一端がポンプ17の吐出口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吸入口に連通するときに、MCE素子12が弱い磁場またはゼロ磁場の中に置かれるようにMCE素子12を第2位置に位置付ける。
熱輸送装置16は、MCE素子12が放熱または吸熱する熱を輸送するための熱輸送媒体と、この熱輸送媒体を流すための流体機器とを備える。熱輸送装置16は、MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体をMCE素子12に沿って流す装置である。熱輸送装置16は、MCE素子12に沿って熱輸送媒体を往復的に流す。熱輸送装置16は、磁場変調装置14による外部磁場の変化に同期して、熱輸送媒体の往復的な流れを発生させる。熱輸送装置16は、磁場変調装置14による磁場の増減に同期して熱輸送媒体の流れ方向を切換える。
MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体は一次媒体と呼ばれる。一次媒体は、不凍液、水、油などの流体によって提供することができる。熱輸送装置16は、熱輸送媒体を流すためのポンプ17を備える。ポンプ17は、一方向に熱輸送媒体を流す一方向ポンプである。ポンプ17は、熱輸送媒体を吸入する吸入口と、熱輸送媒体を吐出する吐出口とを有する。ポンプ17は、熱輸送媒体の環状の流れ経路の上に配置されている。ポンプ17は、環状の流れ経路の中に熱輸送媒体の一方向の流れを生じさせる。ポンプ17は、回転軸2aによって駆動される。ポンプ17は、例えば容積型ポンプである。
熱輸送装置16は、流路切換機構18を備える。流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびひとつのMCE素子12に関する熱輸送媒体の流れ方向を反転させるように、作業室11に対して熱輸送媒体の流路を切換える。言い換えると、流路切換機構18は、一方向型のポンプ17によって生成される熱輸送媒体の一方向の流れの中における作業室11の配置を流れ方向に関して反転させる。流路切換機構18は、ポンプ17を含む環状の流路の中における往路と復路とにひとつの作業室11を交互に位置付ける。流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびひとつのMCE素子12と、ポンプ17を含む環状の流路との接続関係を少なくとも2つの状態に切換える。第1の状態は、作業室11の一端がポンプ17の吸入口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吐出口に連通した状態である。第2の状態は、作業室11の一端がポンプ17の吐出口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吸入口に連通した状態である。
具体的には、流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に位置付ける。流路切換機構18は、第1位置にあるMCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体を流すように、そのMCE素子12を収容する作業室11を流れ経路に連通させる。流路切換機構18は、第2位置にあるMCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体を流すように、そのMCE素子12を収容する作業室11を流れ経路に連通させる。流路切換機構18は、MCE素子12に対して熱輸送媒体を往復的に流すように、ポンプ17を含む熱輸送媒体の流れ経路と、MCE素子12、すなわち作業室11との接続状態を切換える。
流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第1位置にあるときに、そのMCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体が流れるように、そのMCE素子12を収容する作業室11と流路とを接続する。流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第1位置にあるときに、そのMCE素子12を収容する作業室11の一端とポンプ17の吸入口とを連通し、他端とポンプ17の吐出口とを連通する。
流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第2位置にあるときに、そのMCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体が流れるように、そのMCE素子12を収容する作業室11と流路とを接続する。流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第2位置にあるときに、そのMCE素子12を収容する作業室11の一端とポンプ17の吐出口とを連通し、他端とポンプ17の吸入口とを連通する。
MHP装置2は、熱交換器3から熱輸送媒体を受け入れる高温側入口16aを有する。高温側入口16aはポンプ17の吸入口に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器3へ向けて熱輸送媒体を供給する高温側出口16bを有する。高温側出口16bは、第1位置にある作業室11の一端に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器4から熱輸送媒体を受け入れる低温側入口16cを有する。低温側入口16cは、第1位置にある作業室11の他端に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器4へ向けて熱輸送媒体を供給する低温側出口16dを有する。低温側出口16dは、第2位置にある作業室11の他端に連通可能である。第2位置にある作業室11の一端はポンプ17の吐出口と連通可能である。
ロータ7は、MCE素子12を保持するための素子ベッドとも呼ばれる。この実施形態では、MCE素子12を収容する作業室11を形成する素子ベッドが回転軸2aと作動的に連結されている。流路切換機構18と磁場変調装置14との両方に関連するMCE素子12を含む素子ベッドが回転軸2aによって移動する。よって効率的な駆動が可能である。
ポンプ17、流路切換機構18、および磁場変調装置14は、共通のハウジング6の中に収容されている。この構成によると、ポンプ17を流路切換機構18の近傍に設置することができる。このため、長い配管を要することなくポンプ17と流路切換機構18とが接続される。この結果、ポンプ17を含む流れ経路の分岐があっても、熱輸送媒体の流れの差を抑制することができる。この構成では、ホースなどの配管を用いることなくハウジング6内の流路を利用できる。よって、分岐した流れ経路の間において、配管に起因する熱輸送媒体の流れの差が抑制される。
回転軸2aとロータ7との間には、変速機構9が配置されている。変速機構9は、例えば遊星歯車機構によって提供される。変速機構9は、ポンプ17のボディとステータ8との間に配置されている。変速機構9は、ポンプ17の回転数が、流路切換機構18および磁場変調装置14の回転数より高くなるように回転軸2aから伝達される回転数を調節する。この構成によると、ポンプ17の回転数が、流路切換機構18および磁場変調装置14の回転数より高くなる。これにより、高回転型のポンプ17を利用することができる。ポンプ17が高い回転数で回転することにより、ポンプ17の流量の増加、および/または小型のポンプ17の利用が可能となる。
車両用空調装置1は、車両に搭載され、車両の乗員室の温度を調節する。2つの熱交換器3、4は、車両用空調装置1の一部を提供する。熱交換器3は、熱交換器4より高温になる高温側熱交換器3である。熱交換器4は、熱交換器3より低温になる低温側熱交換器4である。車両用空調装置1は、高温側熱交換器3、および/または低温側熱交換器4を室内空調のために利用するための空調ダクトおよび送風機などの空気系機器を備える。
車両用空調装置1は、冷房装置または暖房装置として利用される。車両用空調装置1は、室内に供給される空気を冷却する冷却器と、冷却器によって冷却された空気を加熱する加熱器とを備えることができる。MHP装置2は、車両用空調装置1における冷熱供給源、または温熱供給源として利用される。すなわち、高温側熱交換器3は上記加熱器として用いることができる。また、低温側熱交換器4は上記冷却器として用いることができる。
MHP装置2が温熱供給源として利用される場合、高温側熱交換器3を通過した空気は車両の室内に供給され、暖房のために利用される。このとき、低温側熱交換器4を通過した空気は車両の室外に排出される。熱交換器3は、室内熱交換器とも呼ばれる。熱交換器4は、室外熱交換器とも呼ばれる。
MHP装置2が冷熱供給源として利用される場合、低温側熱交換器4を通過した空気は車両の室内に供給され、冷房のために利用される。このとき、高温側熱交換器3を通過した空気は車両の室外に排出される。熱交換器4は、室内熱交換器とも呼ばれる。熱交換器3は、室外熱交換器とも呼ばれる。
MHP装置2は、除湿装置として利用されることもある。この場合、低温側熱交換器4を通過した空気は、その後に、高温側熱交換器3を通過し、室内に供給される。MHP装置2は、冬期においても、夏期においても、温熱供給源として利用される。
図2に示す車両用空調装置1は、例えば、エンジンとしての電動機から車両走行用の駆動力を得る車両に搭載される空調装置である。
車両用空調装置1は、エンジンルーム内に配置されるMHP装置2、および、車室内に配置される室内空調ユニット20を備えている。車両用空調装置1は、MHP装置2の外部に熱輸送媒体を流すことが可能な熱輸送媒体回路を有している。以下、熱輸送媒体を冷媒と呼ぶことがある。また、熱輸送媒体回路を冷媒回路と呼ぶ場合がある。車両用空調装置1は、車室内を冷房する冷房モード、車室内を暖房する暖房モード、車室内の暖房時等に除湿を行う除湿モードの冷媒回路を切替え可能に構成されており、車室内の冷房、暖房、除湿を行うことができる。
室内空調ユニット20は、例えば、車室内最前部のインストルメントパネルの内側に配置されている。室内空調ユニット20は、その外殻を形成する空調ケース21内に送風機23、冷却用熱交換器24、加熱用熱交換器25等を収容したものである。
空調ケース21は、車室内に送風される送風空気の通風路を内部に形成している。空調ケース21は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂、例えば、ポリプロピレン樹脂にて成形されている。空調ケース21内の送風空気流れ最上流側には、車室内空気である内気と車室外空気である外気とを切替導入する内外気切替箱が配置されている。内外気切替箱は空調制御装置100から出力される指令により内気と外気との導入割合を調節する。
内外気切替箱の空気流れ下流側には、内外気切替箱を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機23が配置されている。送風機23は、例えば遠心多翼ファンの一例であるシロッコファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機23は、車室内へ吹き出す風を送る室内ブロワである。送風機23は、ヒートポンプ制御装置101から出力される制御電圧指令によって回転数が制御される。送風機23は、ヒートポンプ制御装置101から出力される制御電圧指令によって送風量が制御される。以下、送風機23を室内ブロワと呼ぶ場合がある。
空調ケース21内の通風路において送風機23の空気流れ下流側には、通風路を流れる空気を冷却するための冷却用熱交換器24が配置されている。さらに、冷却用熱交換器24の空気流れ下流側には、冷却用熱交換器24通過後の空気を加熱するための加熱用熱交換器25が配置されている。空調ケース21内には、冷却用熱交換器24をバイパスして送風空気を流すことが可能な第1バイパス通路21Aが形成されている。空調ケース21内の通風路には、冷却用熱交換器24の空気流れ上流側に、第1エアミックスドア26が配設されている。第1エアミックスドア26は、冷却用熱交換器24を通過する送風空気の風量と、第1バイパス通路21Aを通過する送風空気の風量とを調節する配風装置である。第1エアミックスドア26の配設位置は、冷却用熱交換器24の空気流れ上流側に限定されない。第1エアミックスドア26の配設位置は、冷却用熱交換器24の空気流れ下流側であってもよい。
空調ケース21内には、加熱用熱交換器25をバイパスして送風空気を流すことが可能な第2バイパス通路21Bが形成されている。空調ケース21内の冷却用熱交換器24よりも空気流れ下流側の通風路には、加熱用熱交換器25の空気流れ上流側に、第2エアミックスドア27が配設されている。第2エアミックスドア27は、加熱用熱交換器25を通過する送風空気の風量と、第2バイパス通路21Bを通過する送風空気の風量との風量割合を調節する。第2エアミックスドア27の配設位置は、加熱用熱交換器25の空気流れ上流側に限定されない。第2エアミックスドア27の配設位置は、加熱用熱交換器25の空気流れ下流側であってもよい。
空調ケース21内には、加熱用熱交換器25を通過後の空気、第1バイパス通路21Aを通過後の空気、および、第2バイパス通路21Bを通過後の空気を混合させる混合空間21Cが形成されている。
空調ケース21の送風空気流れ最下流部には、混合空間21Cから空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す複数の吹出口が形成されている。複数の吹出口は、例えば、フェイス吹出口、フット吹出口、デフロスタ吹出口である。各吹出口の空気流れ上流側には、吹出口の開口面積を調整するドアが配置されて、吹出モード設定装置を構成している。吹出モード設定装置28は、空調制御装置100から出力される指令により吹出モードを設定する。
車両用空調装置1は、高温側冷媒回路40および低温側冷媒回路50を備えている。高温側冷媒回路40は、MHP装置2の高温側出口16bから吐出された冷媒を、加熱用熱交換器25の冷媒流入口25aに導く共に、加熱用熱交換器25の冷媒流出口25bから流出した冷媒を高温側入口16aに戻す冷媒循環回路である。
高温側出口16bには、加熱用熱交換器25の冷媒流入口25aが接続されている。加熱用熱交換器25は、室内空調ユニット20の空調ケース21内に配置されて、その内部を流通する冷媒と、冷却用熱交換器24通過後の送風空気とを熱交換させることで、送風空気を加熱する熱交換器である。加熱用熱交換器25の冷媒流出口25bには、電気式の第1三方弁41が接続されている。第1三方弁41は、ヒートポンプ制御装置101から出力される制御信号によって、その作動が制御される流路切替装置を構成している。第1三方弁41は、ヒートポンプ制御装置101からの制御信号に応じて、冷媒流出口25bと高温側入口16aとの間を接続する冷媒回路、および冷媒流出口25bと吸放熱用熱交換器60の放熱側冷媒流入口61aとの間を接続する冷媒流路を切り替える。
吸放熱用熱交換器60は、エンジンルーム内に配置されて、その内部を流通する冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器である。吸放熱用熱交換器60は、加熱用熱交換器25から流出した冷媒が流れる放熱部61、およびMHP装置2の低温側出口16dから吐出された冷媒が流れる吸熱部62といった二つの熱交換部を有して構成されている。吸放熱用熱交換器60には、放熱部61および吸熱部62への外気の流通量を調節する室外ファン63が併設されている。
吸放熱用熱交換器60の放熱部61は、放熱側冷媒流入口61aから流入した冷媒と外気とを熱交換させる熱交換部である。また、吸放熱用熱交換器60の吸熱部62は、吸熱側冷媒流入口62aから流入した冷媒と外気とを熱交換させる熱交換部である。なお、放熱部61および吸熱部62は、吸放熱用熱交換器60の内部において放熱部61を流れる冷媒と吸熱部62を流れる冷媒が混在しないように、互いに冷媒流路が独立して構成されている。吸放熱用熱交換器60における放熱側冷媒流出口61bには、MHP装置2の高温側入口16aが接続されており、吸放熱用熱交換器60にて放熱された冷媒がMHP装置2の作業室11に戻る。
従って、高温側冷媒回路40は、2つの冷媒循環回路で構成される。1つは、高温側出口16b→加熱用熱交換器25→第1三方弁41→高温側入口16aといった順に冷媒が循環する循環回路である。もう1つは、高温側出口16b→加熱用熱交換器25→第1三方弁41→吸放熱用熱交換器60の放熱部61→高温側入口16aといった順に冷媒が循環する循環回路である。
なお、高温側冷媒回路40には、加熱用熱交換器25と第1三方弁41との間に、固定絞り42を介して、高温側冷媒回路40内の冷媒量を調整するためのリザーバタンク43が接続されている。なお、固定絞り42としては、オリフィスやキャピラリチューブ等を採用することができる。
低温側冷媒回路50は、MHP装置2の低温側出口16dから吐出された冷媒を、冷却用熱交換器24の冷媒流入口24aに導く共に、冷却用熱交換器24の冷媒流出口24bから流出した冷媒を低温側入口16cに戻す冷媒循環回路である。低温側出口16dには、電気式の第2三方弁51が接続されている。第2三方弁51は、第1三方弁41と同様に、ヒートポンプ制御装置101から出力される制御信号によって、その作動が制御される流路切替装置を構成している。
第2三方弁51は、ヒートポンプ制御装置101からの制御信号に応じて、低温側出口16dと吸放熱用熱交換器60の吸熱側冷媒流入口62aとの間を接続する冷媒回路、および低温側出口16dと電気式の第3三方弁52との間を接続する冷媒回路を切り替える。そして、吸放熱用熱交換器60の吸熱側冷媒流出口62b側には、第2三方弁51を介して電気式の第3三方弁52が接続されている。第3三方弁52は、第1、第2三方弁41、51と同様に、ヒートポンプ制御装置101から出力される制御信号によって、その作動が制御される流路切替装置を構成している。
第3三方弁52は、第2三方弁51に連動して作動するように構成されている。すなわち、第3三方弁52は、第2三方弁51にて低温側出口16dと第3三方弁52との間を接続する冷媒回路に切り替えられると、第2三方弁51と冷却用熱交換器24の冷媒流入口24aとの間を接続する冷媒回路に切り替える。また、第3三方弁52は、第2三方弁51にて低温側出口16dと吸放熱用熱交換器60の吸熱側冷媒流入口62aとの間を接続する冷媒回路に切り替えられると、第2三方弁51と低温側入口16cとの間を接続する冷媒回路に切り替える。
第3三方弁52に接続された冷却用熱交換器24は、室内空調ユニット20の空調ケース21内のうち、加熱用熱交換器25の送風空気流れ上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する熱交換器である。そして、冷却用熱交換器24の冷媒流出口24bには、低温側入口16cが接続されている。
このように、低温側冷媒回路50は、2つの冷媒循環回路で構成される。1つは、低温側出口16d→第2三方弁51→第3三方弁52→冷却用熱交換器24→低温側入口16cといった順に冷媒が循環する循環回路である。もう1つは、低温側出口16d→吸放熱用熱交換器60の吸熱部62→第2三方弁51→第3三方弁52→低温側入口16cといった順に冷媒が循環する循環回路である。
第2三方弁51と第3三方弁52とは、連動して作動しなくてもよい。上記2つの冷媒循環回路に加え、低温側出口16d→吸放熱用熱交換器60の吸熱部62→第2三方弁51→第3三方弁52→冷却用熱交換器24→低温側入口16cといった順に冷媒が循環する循環回路を構成するものであってもよい。
なお、低温側冷媒回路50には、第2三方弁51と第3三方弁52との間に、固定絞り53を介して、低温側冷媒回路50内の冷媒量を調整するためのリザーバタンク54が接続されている。なお、固定絞り53としては、オリフィスやキャピラリチューブ等を採用することができる。
図2に示すように、MHP装置2の高温側出口16bには、高温側出口16bから流出する熱輸送媒体の温度を検出する温度センサ94が設けられている。温度センサ94は、作業室11の高温端から流出し加熱用熱交換器25または放熱部61で熱交換する前の熱輸送媒体の温度Th1を検出する。温度センサ94は、高温端温度検出装置である。MHP装置2の高温側入口16aには、高温側入口16aへ流入する熱輸送媒体の温度を検出する温度センサ95が設けられている。温度センサ95は、加熱用熱交換器25または放熱部61で熱交換した後に作業室11の高温端へ戻る熱輸送媒体の温度Th2を検出する。温度センサ94、95は、高温側熱交換器3で被加熱流体と熱交換する前後の熱輸送媒体の温度をそれぞれ検出する一対の高温側温度センサである。一対の高温側温度センサは、高温側熱交換器3で被加熱流体と熱交換する前後の熱輸送媒体の温度差を検出する温度差検出装置である。
MHP装置2の低温側出口16dには、低温側出口16dから流出する熱輸送媒体の温度を検出する温度センサ96が設けられている。温度センサ96は、作業室11の低温端から流出し冷却用熱交換器24または吸熱部62で熱交換する前の熱輸送媒体の温度Tc1を検出する。温度センサ96は、低温端温度検出装置である。MHP装置2の低温側入口16cには、低温側入口16cへ流入する熱輸送媒体の温度を検出する温度センサ97が設けられている。温度センサ97は、冷却用熱交換器24または吸熱部62で熱交換した後に作業室11の低温端へ戻る熱輸送媒体の温度Tc2を検出する。温度センサ96、97は、低温側熱交換器4で被冷却流体と熱交換する前後の熱輸送媒体の温度をそれぞれ検出する一対の低温側温度センサである。一対の低温側温度センサは、低温側熱交換器4で被冷却流体と熱交換する前後の熱輸送媒体の温度差を検出する温度差検出装置である。
図3に示すように、車両用空調装置1の制御系は、空調制御装置100およびヒートポンプ制御装置101を有する。空調制御装置100は、ヒートポンプ制御装置101の上位制御装置である。空調制御装置100は、ヒートポンプ制御装置101に対して各種指令や情報を出力する。車両用空調装置1の制御系は、2つの制御装置を有するものに限らない。例えば制御装置は1つであってもかまわない。以下、空調制御装置をACECU、ヒートポンプ制御装置をHPECUと呼ぶ場合がある。
空調制御装置100およびヒートポンプ制御装置101は、いずれも、CPU、ROMおよびRAM等を含むマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。空調制御装置100の入力側には、内気温センサ91、外気温センサ92、日射センサ93および操作パネル90が接続している。内気温センサ91は、車室内の空気温度情報を出力する。外気温センサ92は、車室外の空気温度情報を出力する。日射センサ93は、車室内への日射量情報を出力する。操作パネル90は、車室内前部の計器盤付近に配置されており、操作パネル90に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が空調制御装置100に入力される。操作パネル90には、車両用空調装置1の作動スイッチ、オートスイッチ、空調運転モードの設定スイッチ、車室内温度の設定スイッチ等が設けられている。
空調制御装置100は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された内外気切替箱22、吹出モード設定装置28等の作動を制御する。また、空調制御装置100は、ヒートポンプ制御装置101に対して、指令信号等を出力する。
ヒートポンプ制御装置101の入力側には、温度センサ94〜97が接続している。温度センサ94〜97は、それぞれが検出した熱輸送媒体の温度Th1、Th2、Tc1、Tc2情報信号を出力する。ヒートポンプ制御装置101は、空調制御装置100からの指令信号等や温度センサ94〜97からの入力信号等に基づいて、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された機器の作動制御を行なう。出力側に接続された機器は、動力源5、第1〜第3三方弁41、51、52、送風機23、室外ファン63、および、第1、第2エアミックスドア26、27である。
車両用空調装置1では、操作パネル90からの空調運転モードの設定スイッチ情報、または空調制御装置100の制御処理の少なくともいずれかに基づいて、ヒートポンプ制御装置101は、空調運転モードを設定する。ヒートポンプ制御装置101が設定する空調運転モードは、冷房運転モード、暖房運転モード、除湿運転モード等である。
冷房運転モードでは、ヒートポンプ制御装置101からの制御信号により、高温側冷媒回路40において、第1三方弁41が加熱用熱交換器25の冷媒流出口25bと吸放熱用熱交換器60の放熱側冷媒流入口61aとを接続する冷媒回路に切り替える。また、低温側冷媒回路50において、第2三方弁51が低温側出口16dと第3三方弁52とを接続する冷媒回路に切り替えると共に、第3三方弁52が第2三方弁51と冷却用熱交換器24の冷媒流入口24aとを接続する冷媒回路に切り替える。また、第2エアミックスドア27が加熱用熱交換器25側を閉塞し、加熱用熱交換器25における放熱を抑止する。
これにより、冷房運転モードでは、吸放熱用熱交換器60の放熱部61が高温側熱交換器3として機能し、冷却用熱交換器24が低温側熱交換器4として機能する。冷房運転モードでは、MHP装置2を介して、冷却用熱交換器24から放熱部61への熱量の輸送が行なわれる。冷房運転モードでは、作業室11からの熱出力のうち、作業室11の低温端からの冷熱出力を用いて、冷却用熱交換器24で被冷却流体である送風空気を冷却する。また、作業室11からの熱出力のうち、作業室11の高温端からの温熱出力を用いて、放熱部61で被加熱流体である外気風を加熱する。
暖房運転モードでは、ヒートポンプ制御装置101からの制御信号により、高温側冷媒回路40において、第1三方弁41が冷媒流出口25bと高温側入口16aとを接続する冷媒回路に切り替える。また、低温側冷媒回路50において、第2三方弁51が低温側出口16dと吸放熱用熱交換器60の吸熱側冷媒流入口62aとを接続する冷媒回路に切り替えると共に、第3三方弁52が第2三方弁51と低温側入口16cとを接続する冷媒回路に切り替える。
これにより、暖房運転モードでは、加熱用熱交換器25が高温側熱交換器3として機能し、吸放熱用熱交換器60の吸熱部62が低温側熱交換器4として機能する。暖房運転モードでは、MHP装置2を介して、吸熱部62から加熱用熱交換器25への熱量の輸送が行なわれる。暖房運転モードでは、作業室11からの熱出力のうち、作業室11の高温端からの温熱出力を用いて、加熱用熱交換器25で被加熱流体である送風空気を加熱する。また、作業室11からの熱出力のうち、作業室11の低温端からの冷熱出力を用いて、吸熱部62で被冷却流体である外気風を冷却する。
また、除湿運転モードでは、ヒートポンプ制御装置101からの制御信号により、高温側冷媒回路40において、第1三方弁41が冷媒流出口25bと高温側入口16aとを接続する冷媒回路に切り替える。また、低温側冷媒回路50において、第2三方弁51が低温側出口16dと第3三方弁52とを接続する冷媒回路に切り替えると共に、第3三方弁52が第2三方弁51と冷媒流入口24aとを接続する冷媒回路に切り替える。
これにより、除湿運転モードでは、加熱用熱交換器25が高温側熱交換器3として機能し、冷却用熱交換器24が低温側熱交換器4として機能する。除湿運転モードでは、MHP装置2を介して、冷却用熱交換器24から加熱用熱交換器25への熱量の輸送が行なわれる。除湿運転モードでは、作業室11からの熱出力のうち、作業室11の低温端からの冷熱出力を用いて、冷却用熱交換器24で被冷却流体である送風空気を冷却する。また、作業室11からの熱出力のうち、作業室11の高温端からの温熱出力を用いて、加熱用熱交換器25で被加熱流体である送風空気を加熱する。
なお、除湿を行ないつつ暖房を行なう除湿暖房運転モードでは、ヒートポンプ制御装置101からの制御信号により、高温側冷媒回路40において、第1三方弁41が冷媒流出口25bと高温側入口16aとを接続する冷媒回路に切り替える。また、低温側冷媒回路50において、第2三方弁51が低温側出口16dと吸放熱用熱交換器60の吸熱側冷媒流入口62aとを接続する冷媒回路に切り替えると共に、第3三方弁52が第2三方弁51と冷媒流入口24aとを接続する冷媒回路に切り替える。
これにより、除湿暖房運転モードでは、加熱用熱交換器25が高温側熱交換器3として機能し、冷却用熱交換器24および吸熱部62が低温側熱交換器4として機能する。除湿暖房運転モードでは、MHP装置2を介して、冷却用熱交換器24および吸熱部62から加熱用熱交換器25への熱量の輸送が行なわれる。除湿暖房運転モードでは、作業室11からの熱出力のうち、作業室11の低温端からの冷熱出力を用いて、冷却用熱交換器24で被冷却流体である送風空気を冷却すると共に、吸熱部62で被冷却流体である外気風を冷却する。また、作業室11からの熱出力のうち、作業室11の高温端からの温熱出力を用いて、加熱用熱交換器25で被加熱流体である送風空気を加熱する。
このように、車両用空調装置1では、各運転モードにおいて、MHP装置2の作業室11の高温端側で得られる温熱および低温端側で得られる冷熱を利用して、車室内を空調することができる。
空調制御装置100は、例えば、操作パネル90のオートスイッチがオンされ、自動空調を行なうオートモードが設定されているときには、各種センサや設定スイッチ等からの入力情報に基づいて、制御目標値を決定する。例えば、空調制御装置100は、操作パネル90の温度設定スイッチの設定状態から設定温度Tset信号を入力する。また、空調制御装置100は、内気温センサ91から内気温Tr信号を、外気温センサ92から外気温Tam信号を、日射センサ93から日射量情報Ts信号を入力する。日射量情報Tsは、日射熱負荷による温度上昇分に相当する温度情報である。空調制御装置100は、これらの入力情報に基づいて、車室内へ吹き出す空気温度の目標値である目標吹出温度TAO、車室内へ吹き出す風量の目標値である目標吹出風量BLO、および、MHP装置2からの熱出力の目標値である目標熱出力QOを決定する。
これらの3つの制御目標値は、2つの制御目標値を決定すれば、残りの1つの制御目標値は自ずと決まる値である。したがって、空調制御装置100は、下位制御装置であるヒートポンプ制御装置101に対して、2つの制御目標値を指令値として出力する。また、MHP装置2の能力限界等により、2つの制御目標値が同時に達成できない場合に対応するため、2つの制御目標値の達成優先度としての優先パラメータも出力する。また、空調制御装置100は、入力情報のうち、ヒートポンプ制御装置101がMHP装置2の運転制御等に必要とする情報も出力する。
なお、空調制御装置100は、例えば算出した目標吹出温度TAOに基づいて、内外気切替箱22の作動制御、および、吹出モード設定装置28の作動制御を行なう。操作パネル90において内外気導入モードや吹出モードが手動設定されている場合には、空調制御装置100は、目標吹出温度TAOによらず、手動設定されたスイッチの設定状態に応じたモードを設定する。
ヒートポンプ制御装置101は、上位制御装置である空調制御装置100から指令値等の情報を入力する。また、ヒートポンプ制御装置101は、温度センサ94〜97から熱輸送媒体の温度情報を入力する。ヒートポンプ制御装置101は、これらの入力情報に加え、ROM等からなる記憶部102に予め記憶された熱出力の特性情報に基づいて、制御対象機器を制御する。
記憶部102には、例えば、図6に示す作業室11の高低温端の温度差ΔTbに対する熱出力Qの特性情報が記憶されている。作業室11の高温端と低温端との温度差は、磁気熱量効果材料からなるMCE素子12の高温端と低温端との温度差である。図6に示すように、動力源であるモータ5の回転数の増減に応じて熱出力Qも増減する。モータ5の回転数が増加すると、磁場変調装置14と流路切換機構18とによるヒートポンプの動作サイクル周波数が増大するとともに、動作サイクル周波数の増大に比例して増大するポンプ17による熱輸送媒体流量が増大し、熱出力Qが増加する。
モータ5の回転数が同一である場合には、温度差ΔTbが変化するにつれて熱出力Qも変化する。図6に示す熱出力特性例では、モータ5の各回転数において、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが増大する領域と温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが減少する領域とがある。図6の特性曲線の頂点より図示右側において、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが低下する領域が本実施形態の第1特性領域に相当する。また、特性曲線の頂点より図示左側において、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが上昇する領域が本実施形態の第2特性領域に相当する。
温度差ΔTbに応じて熱出力Qが変化する理由を以下に述べる。キュリー温度が異なる磁気熱量効果材料をカスケード配置してMCE素子12を構成した場合に、図7に示すように、理想的温度差ΔTbdにおいて各材料要素が最大の性能を発揮する設計がなされる。理想的温度差ΔTbdは、設計温度差と呼ぶことができる。例えば図8に示すように、温度差ΔTbが理想的温度差ΔTbdよりも小さい場合には、各材料要素が充分に性能を発揮しない。設計上の理想的温度差ΔTbdは、理想的高温端温度Thdと理想的低温端温度Tcdとの差である。図6では、図示する特性曲線のうち、運転効率が最も良好な特性曲線において、作業室11の両端の温度差が理想的温度差ΔTbdであるときに、熱出力Qが最大になることを示している。図示した例では、モータ5が許容最大回転数の90%回転数で回転したときの特性曲線が、運転効率が最も良好な特性曲線である。図6からも明らかなように、熱出力Qが最大となる温度差ΔTb、すなわち特性曲線の頂点は、モータ5の回転数が異なる特性曲線では互いに異なる。熱出力Qが最大となる温度差ΔTbは、モータ5の回転数の上昇にしたがって漸次上昇する。
図からも明らかなように、熱出力Qを大きくするためには、温度差ΔTbを理想的温度差ΔTbdに近づける制御が求められる。熱出力Qを効率よく得るためには、温度差ΔTbを、理想的温度差ΔTbdを中心としたカスケード好適作動域に設定することが好ましい。図6に例示するような熱出力特性マップを、記憶部102は予め記憶している。記憶部102に記憶する熱出力の特性情報は、図6に例示した特性マップに限定されるものではない。例えば、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが低下する第1特性領域と、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが上昇する第2特性領域とを、モータ5の回転数毎にデータとして記憶し、熱出力Q値は記憶していなくてもよい。また、モータ5の複数の回転数に対応した第1特性領域と第2特性領域とを記憶し、記憶していない回転数に関しては、記憶データから補間算出するものであってもよい。
以下、車両用空調装置1が暖房運転モードに設定されたときのヒートポンプ制御装置101の制御動作について説明する。ここでは、空調制御装置100からヒートポンプ制御装置101に対して、目標吹出風量BLO、目標熱出力QO、および優先パラメータが指令された場合を例に説明する。また、空調制御装置100からヒートポンプ制御装置101へは、内気温Trおよび外気温Tamも出力される。
ヒートポンプ制御装置101は、空調制御装置100から暖房運転の開始指令を入力すると、図4に示すように、まず、ステップ110においてブロワフラグを0に設定する。ブロワフラグは、送風機23に対する指令出力値である送風量BLが目標吹出風量BLOに基づくものであるか否かにより設定される。送風機23の送風量が目標吹出風量BLOと一致するように制御している場合には、ブロワフラグは0に設定される。一方、目標吹出風量BLOに係らず送風機23の送風量を所定量に制御している場合には、ブロワフラグは1に設定される。
ヒートポンプ制御装置101は、暖房運転を開始する際には、第1エアミックスドア26を、第1バイパス通路21Aを全閉にして、冷却用熱交換器24側を全開にする位置に設定する。また、第2エアミックスドア27を、第2バイパス通路21Bを全閉にして、加熱用熱交換器25側を全開にする位置に設定する。
ステップ110を実行したら、ヒートポンプ制御装置101は、ステップ111において温度情報を取得する。ステップ111では、空調制御装置100から内気温Tr、外気温Tamを取得するとともに、温度センサ94、96から熱輸送媒体の温度Th1、Tc1を取得する。
ステップ111を実行したら、ステップ112において、温度Th1と内気温Trとの比較および温度Tc1と外気温Tamとの比較を行なう。ステップ112では、温度Th1が内気温Trよりも高く、かつ、温度Tc1が外気温Tamよりも低いか否かを判断する。ステップ112では、温度Th1と内気温Trとの温度関係が、加熱用熱交換器25で熱輸送媒体から送風空気へ放熱可能な関係であるか否かを判断する。また、温度Tc1と外気温Tamとの温度関係が、吸熱部62で外気風から熱輸送媒体へ吸熱可能な関係であるか否かを判断する。
ステップ112においてNOと判断した場合には、ステップ113へ進む。ステップ113では、動力源5の回転数を例えば効率に基づく所定値に設定する。本例では、運転効率が最も良好な許容最大回転数の90%回転数に設定する。また、室内ブロワ23の送風量BLを0とする。また、吸熱部62への外気通風量FNが標準レベルとなるように、室外ファン63を制御する。標準レベルとは、例えば、図9に示すような、最大外気通風量よりも小さい所定風量である。図9に示すように、作業室11の低温端の熱輸送媒体の温度が外気温Tamよりも低い場合には、室外熱交換器をなす低温側熱交換器4である吸熱部62への通風量を増加させるにしたがって、室外熱交換器での熱交換量が増加する。車両の走行等により走行風が吸熱部62を通過する場合には、この走行風の風量を加味して室外ファン63の制御を行なう。したがって、走行に伴い充分な外気通風量が確保できる場合には、室外ファン63の作動は不要である。さらに、ステップ113では、第2エアミックスドア27を、加熱用熱交換器25側を全開とする位置に制御する。そして、ブロワフラグを0に設定する。
ステップ113を実行したら、ステップ111へリターンする。暖房運転を開始した直後に、ステップ112でYESと判定するまでステップ111〜113を繰り返し実行する制御は、起動時運転制御である。この起動時運転制御では、作業室11の高温端温度の上昇を助け、ヒートポンプの起動速度を上げる。暖房運転を開始した時点では、図11の左部に示すように、内気温Trと外気温Tamとに温度差はあるものの、MHP装置2は外気環境下にあるため、作業室11高温端の温度Th1、作業室11低温端の温度Tc1は、ともに、ほぼ外気温Tamと同一である。このような状態から、モータ5を駆動しつつ、室内熱交換器である加熱用熱交換器25への通風を行なわず、室外熱交換器である吸熱部62への通風を行なうことで、図11の右部に示す温度関係を形成することができる。室内熱交換器での熱交換を禁止しつつ、室外熱交換器での熱交換を行なうことで、高温端の温度Th1を確実に上昇させて内気温Tr以上とする。これにより、室内ブロワ23を運転して送風を行なった際に、車室内への送風空気を加熱することが可能になる。
ステップ113は、磁場変調装置14および熱輸送装置16を起動して通常の暖房運転である定常運転に至るまでの起動時運転を行なう起動時運転部である。ステップ113は、室外側二次流体である外気風の流通を室外熱交換器に行ないつつ、室内熱交換器に対して室内側二次流体である車室内への送風空気の流通を停止する。ステップ113では、室内側二次流体の流量を0にするのではなく、室内側二次流体の流量を定常運転のときよりも小さくなるように抑制するものであってもよい。
ステップ112では、温度Th1が内気温Trよりも高く、かつ、温度Tc1が外気温Tamよりも低いか否かを判断していたが、これに限定されるものではない。起動時運転としてステップ113を継続して実行すると、一般的に、定常運転を開始可能な図11右部の温度関係が形成される。したがって、高低温端の温度差ΔTbが、室内外気の温度差ΔTraよりも大きくなった場合に、ステップ112でYESと判断して、起動時運転から定常運転への移行を行なってもよい。また、ステップ112では、温度Th1が内気温Trよりも高いか否かを判断するだけであってもよい。
ステップ112でYESと判断したら、ステップ114へ進む。ステップ112でYESと判断することは、作業室11の高温端と低温端との温度差ΔTbが増大して、図12に太線矢印で示すように内気温と外気温との温度差ΔTraよりも大きくなったということである。すなわち、作業室11の両端の温度差ΔTbが、比較的大きな熱出力Qが得られる領域に入ったということである。
ステップ112は、起動時運転部であるステップ113で起動時運転を行ない、温度差ΔTbが室内側二次流体と室外側二次流体との温度差ΔTraよりも大きくなった場合に、起動時運転から定常運転への移行を行なう運転移行部に相当する。
ステップ114では、ブロワフラグが0であるか否かを判断する。ステップ114においてブロワフラグが0であると判断した場合には、ステップ115で室内ブロワ23の送風量BLを目標吹出風量BLOとし、ステップ116へ進む。ステップ114においてブロワフラグが0ではなく1であると判断した場合には、ステップ115をパスして、ステップ116へ進む。
ステップ116では、各種情報を取得する。ステップ116では、温度センサ94、95から熱輸送媒体の温度Th1、Th2を取得するとともに、空調制御装置100から目標熱出力QOを取得する。また、モータ5の回転数とポンプ17の吐出流量特性とから熱輸送媒体の循環流量を算出して取得する。
ステップ116を実行したら、ステップ117へ進み、実熱出力である熱出力Qを算出する。ステップ117では、加熱用熱交換器25で送風空気と熱交換する前の熱輸送媒体の温度Th1と熱交換した後の温度Th2との温度差と、加熱用熱交換器25を通過する熱輸送媒体の流量とから、加熱用熱交換器25における温熱出力である熱出力Qを算出する。
ステップ117を実行したら、ステップ118へ進み、ステップ117で算出した熱出力Qと、ステップ116で取得した目標熱出力QOとを比較する。ステップ118において、熱出力Qが目標熱出力QOと一致していると判断した場合には、ステップ111へリターンする。ステップ118において、熱出力Qが目標熱出力QOよりも大きいと判断した場合には、ステップ119へ進む。
ステップ119では、ブロワフラグを0に設定する。また、吸熱部62への外気通風量FNが標準レベルとなるように、室外ファン63を制御する。さらに、加熱用熱交換器25側を全開とする位置に第2エアミックスドア27を制御する。ステップ119を実行したら、ステップ120へ進む。ステップ120では、モータ5の回転数を予め定めた1レベル低下させる。ステップ120を実行したらステップ111へリターンする。
ステップ118において、熱出力Qが目標熱出力QOよりも小さいと判断した場合には、図5に示すステップ121へ進む。ステップ121では、モータ5の回転数が許容最大回転数であるか否かを判断する。ステップ121においてモータ5の回転数が許容最大回転数でないと判断した場合には、ステップ122へ進み、モータ5の回転数を予め定めた1レベル増大させる。ステップ122を実行したら、ステップ111へリターンする。
ステップ112で初めてYESと判断して、起動時運転から定常運転へ移行すると、室内ブロワ23により送風量BLを目標吹出風量BLOとする送風が行なわれ、図13に太線矢印で示すように、熱出力Qが行なわれる。そして、ステップ118での判断以降、ステップ120、122におけるモータ5の回転数の増減により、図13に示す目標吹出風量BLOと一致した送風量BLの特性線上において熱出力Qを目標熱出力QOに一致させる制御が行なわれる。
図10に示すように、作業室11の高温端の熱輸送媒体の温度が内気温Trよりも高い場合には、室内熱交換器をなす高温側熱交換器3である加熱用熱交換器25への通風量を増加させるにしたがって、室内熱交換器での熱交換量である熱出力Qが増加する。また、加熱用熱交換器25への通風量が同一である場合には、加熱用熱交換器25へ流入する熱輸送媒体の温度Th1と内気温Trとの差が大きくなるにしたがって、熱出力Qが増加する。熱輸送媒体の温度Th1の内気温Trからの高温側への乖離が大きくなると、温度差ΔTraに対して温度差ΔTbが大きくなる。これにより、送風量BLが変化せず加熱用熱交換器25への通風量が同一である場合には、モータ5の回転数に応じて、図13に示す傾斜した送風量BLの特性線上で熱出力Qが調整される。
ステップ121においてモータ5の回転数が許容最大回転数であると判断した場合には、モータ5の回転数上昇による熱出力Qの増加は困難であるので、ステップ123へ進む。ステップ123では、温度差ΔTbに対する熱出力Qの特性情報を取得する。ステップ123は、本実施形態における特性情報取得部である。ステップ123では、記憶部102が記憶する特性情報から、モータ5が許容最大回転数で回転するときの特性曲線、または、モータ5の許容最大回転数に対応した第1特性領域と第2特性領域とに関する特性情報を取得する。ステップ123を実行したら、ステップ124へ進む。
ステップ124では、ステップ111で取得した温度Th1と温度Tc1とから算出された現時点の温度差ΔTbが、ステップ123で取得した特性情報においていずれの特性領域にあるかを判断する。ステップ124では、温度差ΔTbが、特性曲線において右下がりとなる第1特性領域にあるか、特性曲線において右上がりとなる第2特性領域にあるか、特性曲線における最大熱出力点である頂点にあるかを判断する。第1特性領域は、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが低下する領域である。第2特性領域は、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが上昇する領域である。
ステップ124において、温度差ΔTbが特性曲線の頂点にあると判断した場合には、更なる熱出力の上昇は困難であるので、ステップ111へリターンする。ステップ124において、温度差ΔTbが、特性曲線の右上がり領域である第2特性領域にあると判断した場合には、ステップ125へ進み、温度情報を取得する。ステップ125では、温度センサ96が検出した温度Tc1と、モータ5が許容最大回転数で回転するときの設計上の理想的低温端温度Tcdとを取得する。理想的低温端温度Tcdは、設計低温端温度と呼ぶことができる。ステップ125を取得したら、ステップ126へ進む。
ステップ126では、ステップ125で取得した温度Tc1が理想的低温端温度Tcdよりも高いか否かを判断する。ステップ126において、温度Tc1が理想的低温端温度Tcd以下であると判断した場合には、ステップ127へ進む。ステップ127では、第2エアミックスドア27を、加熱用熱交換器25側へ1レベル開度を変更するように移動させる。すなわち、第2エアミックスドア27により、1レベル加熱用熱交換器25側の開度を絞り、1レベル第2バイパス通路21B側の開度を開く。ステップ127を実行したら、ステップ111へリターンする。
ステップ126で温度Tc1が理想的低温端温度Tcd以下であると判断した場合には、低温端の熱輸送媒体の温度が設計値である理想的温度に達している。そのため、高温端の熱輸送媒体の温度を上げることで温度差ΔTbを上昇させて、熱出力Qを上昇させることが好ましい。そこで、ステップ127では、第2エアミックスドア27で加熱用熱交換器25側の開度を絞り、加熱用熱交換器25を通過する被加熱流体である送風空気の通過風量を減少させて、熱交換を抑制することで高温端の熱輸送媒体温度を上昇させる。加熱用熱交換器25の通過風量の減少分は、第2バイパス通路21Bを流れ、混合空間21Cで加熱用熱交換器25を通過後の温風と混合される。このとき、送風量BLは目標吹出風量BLOとしたままであるので、車室内へ吹き出す風量は変化しない。ステップ127を実行すると、図14に太線矢印で示すように熱出力Qが上昇する。
ステップ126において、温度Tc1が理想的低温端温度Tcdよりも高いと判断した場合には、ステップ128へ進む。ステップ128では、室外ファン63を制御して吸熱部62への外気通風量FNを1レベル減少させる。ステップ128を実行したら、ステップ111へリターンする。
ステップ126で温度Tc1が理想的低温端温度Tcdより高いと判断した場合には、低温端の熱輸送媒体の温度を下げることで温度差ΔTbを上昇させて、熱出力Qを上昇させることが好ましい。そこで、ステップ128では、吸熱部62への外気通風量FNを減少させて、熱交換を抑制することで低温端の熱輸送媒体温度を低下させる。ステップ128を実行すると、図15に太線矢印で示すように熱出力Qが上昇する。なお、ステップ128において、室外ファン63が回転を停止しており外気通風量FNを減少させることができない場合には、代わりにステップ127を実行して熱出力Qを上昇させることができる。
ステップ124において、温度差ΔTbが、特性曲線の右下がり領域である第1特性領域にあると判断した場合には、ステップ129へ進む。ステップ129では、室外ファン63の作動による吸熱部62への外気通風量FNが許容限界である最大量であるか否かを判断する。ステップ129において外気通風量FNが最大量でないと判断した場合には、ステップ130へ進み、室外ファン63を制御して吸熱部62への外気通風量FNを1レベル増加させる。ステップ130を実行したら、ステップ111へリターンする。
ステップ129において外気通風量FNが最大量に到達していないと判断した場合には、吸熱部62への外気通風量FNを増加させて、熱交換を促進させることで低温端の熱輸送媒体温度を上昇させる。ステップ130を実行すると、低温端の熱輸送媒体温度の上昇によって温度差ΔTbが低下して、図16に太線矢印で示すように熱出力Qが上昇する。
ステップ129において外気通風量FNが最大量であると判断した場合には、外気通風量FNの増加による熱出力Qの増加は困難である。ステップ129において外気通風量FNが最大量であると判断した場合には、ステップ131へ進む。ステップ131では、空調制御装置100から入力した優先パラメータが、目標吹出風量BLO、目標熱出力QOのいずれであるかを判断する。
ステップ131において、優先パラメータが目標吹出風量BLOであると判断した場合には、ステップ111へリターンする。優先パラメータが目標吹出風量BLOである場合には、送風量BLを目標吹出風量BLOよりも大きくして熱出力Qを上昇することが許可されないので、熱出力Qが目標熱出力QOに達していなくても、ステップ111へリターンする。
ステップ131において、優先パラメータが目標熱出力QOであると判断した場合には、ステップ132へ進む。ステップ132では、送風量BLが許容限界である最大量であるか否かを判断する。ステップ132において、送風量BLが最大量であると判断した場合には、送風量BLを増加できないので、熱出力Qが目標熱出力QOに達していなくても、ステップ111へリターンする。
ステップ132において、送風量BLが最大量でないと判断した場合には、ステップ133へ進む。ステップ133では、室内ブロワ23による送風量BLを予め定めた1レベル増加させるとともに、ブロワフラグを1に設定する。ステップ133では、優先パラメータが目標熱出力QOであるので、送風量BLが目標吹出風量BLOを超えても送風量BLを増加させて、加熱用熱交換器25を通過する通風量を増加させる。加熱用熱交換器25の通過風量を増加させると、熱交換が促進されて高温端の熱輸送媒体温度が低下して温度差ΔTbが低下し、図17に太線矢印で示すように熱出力Qが上昇する。ステップ133を実行したら、ステップ111へリターンする。
暖房運転モード時においては、送風機23および第2エアミックスドア27が、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量を調節する高温側流量調節装置である。また、室外ファン63が、低温側熱交換器における被冷却流体の流通量を調節する低温側流量調節装置である。ステップ127、128、130、133は、本実施形態における流通量制御部に相当する。ステップ127、128、130、133が実行されると、熱出力Qが増大する方向へ温度差ΔTbが変化するように、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量および低温側熱交換器における被冷却流体の流通量の少なくともいずれかが変更される。
ステップ130およびステップ133は、第1特性領域に温度差ΔTbがあると判断した場合に、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量および低温側熱交換器における被冷却流体の流通量の少なくともいずれかを増加させる流通量増加部に相当する。また、ステップ127およびステップ128は、第2特性領域に温度差ΔTbがあると判断した場合に、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量および低温側熱交換器における被冷却流体の流通量の少なくともいずれかを減少させる流通量減少部に相当する。
ここで、空調制御装置100からの指令値が変更になった場合の作動について説明する。上述した制御動作により車室内の暖房を行なっていると、一般的に内気温Trが上昇して、目標吹出風量BLOおよび目標熱出力QOが共に低下される。このような場合には、まず、送風量BLを新しい目標吹出風量BLOに一致するように変更する。その後、熱出力Qが新たな目標熱出力QOよりも大きいと判断され、モータ5の回転数を低下させる。モータ5の回転数は、熱出力Qが新たな目標熱出力QOと一致するように調整される。
例えば、図18に太線矢印で示すように、まず、室内ブロワ23の送風量BLを新たな目標吹出風量BLOに一致させる変更をした後に、新たな目標吹出風量BLOと一致した送風量BLの特性線上において熱出力Qを目標熱出力QOに一致させる制御が行なわれる。
以上、車両用空調装置1が暖房運転モードに設定されたときのヒートポンプ制御装置101の制御動作について説明したが、同様の技術的思想を有する制御動作を暖房運転モード以外の他の運転モードに適用することができる。同様の技術的思想を有する制御動作を冷房運転モードにも適用することができる。作業室11の低温端からの冷熱出力により、低温側熱交換器4となる冷却用熱交換器24で送風空気を冷却する場合にも、開示技術を用いることができる。
冷房運転モード時においては、室外ファン63が、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量を調節する高温側流量調節装置である。また、送風機23および第1エアミックスドア26が、低温側熱交換器における被冷却流体の流通量を調節する低温側流量調節装置である。第1エアミックスドア26は、空調ケース21内の通風路に設けられ、冷房運転モード時に低温側熱交換器を通過する風量と低温側熱交換器をバイパスする風量との風量割合を調節する配風装置である。車両用空調装置1は、冷房運転モード時の配風装置である第1エアミックスドア26を備えている。
上述の構成および作動によれば、以下に述べる効果を得ることができる。
MHP装置2は、作業室11からの熱出力のうち高温端からの温熱出力を用いて、熱輸送媒体との熱交換により被加熱流体を加熱する高温側熱交換器と、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量を調節する高温側流量調節装置と、を備えている。また、作業室11からの熱出力のうち低温端からの冷熱出力を用いて、熱輸送媒体との熱交換により被冷却流体を冷却する低温側熱交換器と、低温側熱交換器における被冷却流体の流通量を調節する低温側流量調節装置と、を備えている。そして、磁場変調装置14、熱輸送装置16、高温側流量調節装置、および、低温側流量調節装置の作動を制御する制御装置としてHPECU101を備えている。
HPECU101は、作業室11の高温端と低温端との温度差ΔTbに対する熱出力Qの特性情報を取得する特性情報取得部としてステップ123を有する。HPECU101は、熱出力を上昇させる際に、高温側流量調節装置および低温側流量調節装置を制御する。HPECU101は、特性情報取得部で取得した特性情報に基づいて熱出力が増大する方向へ温度差ΔTbが変化するように、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量および低温側熱交換器における被冷却流体の流通量の少なくともいずれかを変更する。HPECU101は、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量および低温側熱交換器における被冷却流体の流通量の少なくともいずれかを変更する流通量制御部としてステップ127、128、130、133を有する。
これによると、MHP装置2は、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量を調節する高温側流量調節装置と、低温側熱交換器における被冷却流体の流通量を調節する低温側流量調節装置と、これらの装置を制御するHPECU101とを備えている。HPECU101は、作業室11の高温端と低温端との温度差ΔTbに対する熱出力Qの特性情報を取得する特性情報取得部と、特性情報取得部で取得した特性情報に基づいて高温側流量調節装置および低温側流量調節装置を制御する流通量制御部とを有している。
流通量制御部は、作業室11からの熱出力Qを上昇させる際に、特性情報に基づいて熱出力Qが増大する方向へ温度差ΔTbが変化するように、高温側流量調節装置および低温側流量調節装置を制御する。流通量制御部は、熱出力Qが増大する方向へ温度差ΔTbが変化するように、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量および低温側熱交換器における被冷却流体の流通量の少なくともいずれかを変更する。したがって、作業室11からの熱出力Qが目標熱出力QOに満たない場合等に、被加熱流体の流通量や被冷却流体の流通量の少なくともいずれかを特性情報に基づいて適切に調節して温度差ΔTbを変更し、作業室11からの熱出力Qを上昇させることができる。このように、被加熱流体や被冷却流体の適切な流量制御により作業室11からの熱出力Qを上昇させることができる。
また、流通量制御部は、熱出力Qを上昇させる際に、特性情報取得部で取得した特性情報に基づいて、次のように制御を行なう。温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが低下する第1特性領域に温度差ΔTbがあると判断した場合には、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量および低温側熱交換器における被冷却流体の流通量の少なくともいずれかを増加させる。二次流体の流通量の増加は流通量増加部であるステップ130、133で行なう。また、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが上昇する第2特性領域に温度差ΔTbがあると判断した場合には、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量および低温側熱交換器における被冷却流体の流通量の少なくともいずれかを減少させる。二次流体の流通量の増加は流通量減少部であるステップ127、128で行なう。
これによると、特性情報に、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが低下する第1特性領域と、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが上昇する第2特性領域とがある場合には、温度差ΔTbがある領域に応じて両流量調節装置を制御することができる。温度差ΔTbが第1特性領域にある場合には、流通量増加部が被加熱流体の流通量および被冷却流体の流通量の少なくともいずれかを増加させて温度差ΔTbを低下させる。また、温度差ΔTbが第2特性領域にある場合には、流通量減少部が被加熱流体の流通量および被冷却流体の流通量の少なくともいずれかを減少させて温度差ΔTbを増大させる。したがって、温度差ΔTbがある領域に応じて被加熱流体の流通量および被冷却流体の流通量の少なくともいずれかを調節して温度差ΔTbを変更し、作業室11からの熱出力Qを上昇させることができる。
また、HPECU101は、特性情報を記憶するための記憶部102を有している。そして、特性情報取得部は、記憶部102が予め記憶した特性情報を取得する。これによると、HPECU101は、記憶部102が予め記憶した特性情報を容易に特性情報取得部で取得して、高温側流量調節装置および低温側流量調節装置の作動制御を行なうことができる。
また、第1エアミックスドア26は、空調ケース21内の通風路に設けられ、冷房運転モード時に低温側熱交換器を通過する風量と低温側熱交換器をバイパスする風量との風量割合を調節する配風装置である。車両用空調装置1は、冷房運転モード時の配風装置である第1エアミックスドア26を備えている。
これによると、空調ケース21内に低温側熱交換器を配して通風路を流れ室内へ吹き出す空気を冷却する空調装置において、低温側熱交換器を通過する風量とバイパスする風量との風量割合を調節する配風装置を低温側流量調節装置とすることができる。したがって、配風装置により低温側熱交換器における被冷却流体の流通量を容易に調節することができる。
また、MHP装置2は、高温側熱交換器で被加熱流体と熱交換する前後の熱輸送媒体の温度をそれぞれ検出する一対の高温側温度センサとして温度センサ94、95を備えている。また、低温側熱交換器で被冷却流体と熱交換する前後の熱輸送媒体の温度をそれぞれ検出する一対の低温側温度センサとして温度センサ96、97を備えている。
これによると、高温側熱交換器で熱交換する前後の熱輸送媒体の温度差を一対の高温側温度センサで容易に検出することができる。また、高温側熱交換器で熱交換する前の熱輸送媒体の温度を作業室11の高温端温度として、一対の高温側温度センサのうち片方の高温側温度センサで容易に検出することができる。また、低温側熱交換器で熱交換する前後の熱輸送媒体の温度差を一対の低温側温度センサで容易に検出することができる。また、低温側熱交換器で熱交換する前の熱輸送媒体の温度を作業室11の低温端温度として、一対の低温側温度センサのうち片方の低温側温度センサで検出することができる。したがって、作業室両端の温度差や熱交換器における熱出力を求める際に必要な温度情報を、確実に得ることができる。
暖房運転モードおよび冷房運転モードでは、高温側熱交換器および低温側熱交換器のうち一方の熱交換器が室内に配される室内熱交換器であって、室内熱交換器を流通する被加熱流体または被冷却流体が室内側二次流体である。高温側熱交換器および低温側熱交換器のうち他方の熱交換器が室外に配される室外熱交換器であって、室外熱交換器を流通する被加熱流体または被冷却流体が室外側二次流体である。
HPECU101は、磁場変調装置14および熱輸送装置16を起動して定常運転に至るまでの起動時運転を行なう起動時運転部を有している。暖房運転モード時には、ステップ113が起動運転部である。起動時運転部は、室外側二次流体の流通を行ないつつ、室内側二次流体の流通を停止または室内側二次流体の流量を定常運転のときよりも小さくなるように抑制する。
これによると、磁場変調装置および熱輸送装置を起動して定常運転に至るまでの起動時運転を行なうときに、室外側二次流体の流通を行ないつつ、室内側二次流体の流通を停止または室内側二次流体の流量を定常運転のときよりも小さくなるように抑制する。したがって、作業室の室内側熱交換器が接続する側の端部の温度を変化させて作業室両端の温度差を速やかに拡大することができる。これにより、磁場変調装置および熱輸送装置を起動して定常運転に至るまでの時間を短縮することができる。
また、HPECU101は、起動時運転部が起動時運転を行ない、作業室11の高温端と低温端との温度差ΔTbが室内側二次流体と室外側二次流体との温度差ΔTraよりも大きくなった場合に、起動時運転から定常運転への移行を行なう運転移行部を有する。起動時運転から定常運転への移行は、運転移行部であるステップ112で行われる。これによると、起動時運転を行なって、室内熱交換器および室外熱交換器の両者において熱輸送媒体と二次流体との熱交換が可能となった後に、運転移行部により定常運転へ移行することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図19〜21に基づいて説明する。
第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、作業室11の高温端と低温端との温度差ΔTbに対する熱出力Qの特性情報の取得方法が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第2の実施形態において説明しない他の構成は、第1の実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図19に示すように、本実施形態のHPECU101は、ステップ110を実行したら、ステップ210へ進む。ステップ210では、処置モードを「なし」に設定する。ここで、処置モードとは、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量および低温側熱交換器における被冷却流体の流通量の少なくともいずれかを変更して熱出力Qを向上する熱出力向上処置モードである。ステップ210を実行したら、ステップ111へ進む。
また、本実施形態のHPECU101は、ステップ113を実行したら、ステップ211を実行して、ステップ111へリターンする。ステップ211では、処置モードを「なし」に設定する。
また、ステップ115を実行した場合、もしくは、ステップ114の判断によりステップ115をパスした場合には、ステップ212を実行して、ステップ116へ進む。ステップ212では、直近のステップ117を実行した際に算出した熱出力Qを前回熱出力Qpとする。ステップ212では、ステップ212実行直後のステップ116、117による新たな熱出力Qの算出に備えて、前回のステップ117における熱出力Qの算出値を前回熱出力Qpとして記憶する。
また、ステップ119を実行した場合には、ステップ213を実行して、ステップ120へ進む。ステップ213では、処置モードを「なし」に設定する。
また、ステップ121においてモータ5の回転数が許容最大回転数であると判断した場合には、ステップ214へ進む。ステップ214では、温度差ΔTbに対する熱出力Qの特性情報を検知する特性情報検知動作を行なう。ステップ214の制御動作に関しては後述する。ステップ214を実行したら、ステップ124へ進む。
ステップ124において温度差ΔTbが特性曲線上の頂点にあると判断した場合には、ステップ215を実行して、ステップ111へリターンする。ステップ215では、処置モードを「なし」に設定する。
ステップ127またはステップ128を実行した場合には、ステップ216を実行して、ステップ111へリターンする。ステップ216では、処置モードを「流量減」に設定する。ステップ127では、加熱用熱交換器25を通過する被加熱流体である送風空気の通過風量を減少させる。ステップ128では、吸熱部62を通過する被冷却流体である外気の通風量FNを減少させる。すなわち、ステップ127またはステップ128を実行した場合には、高温側熱交換器および低温側熱交換器のいずれかで二次流体の流量を減少させて熱出力Qを向上させている。そこで、ステップ216では、熱出力向上処置モードを「流量減」に設定する。
ステップ130を実行した場合には、ステップ217を実行して、ステップ111へリターンする。ステップ217では、処置モードを「流量増」に設定する。ステップ130では、吸熱部62を通過する被冷却流体である外気の通風量FNを増加させる。すなわち、ステップ130を実行した場合には、低温側熱交換器の二次流体の流量を増加させて熱出力Qを向上させている。そこで、ステップ217では、熱出力向上処置モードを「流量増」に設定する。
ステップ131において、優先パラメータが目標吹出風量BLOであると判断した場合、または、ステップ132において、送風量BLが最大量であると判断した場合には、ステップ218を実行して、ステップ111へリターンする。ステップ218では、処置モードを「なし」に設定する。
ステップ133を実行した場合には、ステップ219を実行して、ステップ111へリターンする。ステップ219では、処置モードを「流量増」に設定する。ステップ133では、室内ブロワ23による送風量BLを増加させる。すなわち、ステップ133を実行した場合には、高温側熱交換器の二次流体の流量を増加させて熱出力Qを向上させている。そこで、ステップ219では、熱出力向上処置モードを「流量増」に設定する。
次に、ステップ214で行われる特性情報検知動作について図21を参照して説明する。図21に示すように、まず、ステップ230において、処置モードが「なし」、「流量減」、「流量増」のいずれに設定されているかを判断する。
ステップ230において、設定されている処置モードが「なし」であると判断した場合には、二次流体の流量変更がないとして、ステップ124へ進む。ステップ230において、設定されている処置モードが「流量減」であると判断した場合には、ステップ231へ進む。ステップ231では、ステップ117で算出した熱出力Qと、ステップ212で得た前回熱出力Qpとを比較する。
ステップ231において熱出力Qが前回熱出力Qpよりも小さいと判断した場合には、ステップ232へ進む。ステップ231において熱出力Qが前回熱出力Qpよりも小さいと判断した場合には、二次流体の流量減少により熱交換量が減少して温度差ΔTbが増大した際に、熱出力が低下している。すなわち、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力が低下する第1特性領域に温度差ΔTbがあると判断したと同意である。そこで、ステップ232では、特性領域を、第1特性領域である旨の特性曲線の「右下がり領域」に設定する。
ステップ231において熱出力Qと前回熱出力Qpとが等しいと判断した場合には、ステップ233へ進む。ステップ231において熱出力Qと前回熱出力Qpとが等しいと判断した場合には、二次流体の流量減少により熱交換量が減少して温度差ΔTbが増大した際に、熱出力が変化していない。すなわち、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力が増大する第2特性領域と温度差ΔTbの増大に伴い熱出力が低下する第1特性領域の間の頂点に温度差ΔTbがあると判断したと同意である。そこで、ステップ233では、特性領域を、特性曲線の「頂点」に設定する。
ステップ231において熱出力Qが前回熱出力Qpよりも大きいと判断した場合には、ステップ234へ進む。ステップ231において熱出力Qが前回熱出力Qpよりも大きいと判断した場合には、二次流体の流量減少により熱交換量が減少して温度差ΔTbが増大した際に、熱出力が増加している。すなわち、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力が増加する第2特性領域に温度差ΔTbがあると判断したと同意である。そこで、ステップ234では、特性領域を、第2特性領域である旨の特性曲線の「右上がり領域」に設定する。ステップ232、233、234のいずれかを実行したら、ステップ124へ進む。
ステップ230において、設定されている処置モードが「流量増」であると判断した場合には、ステップ235へ進む。ステップ235では、ステップ117で算出した熱出力Qと、ステップ212で得た前回熱出力Qpとを比較する。
ステップ235において熱出力Qが前回熱出力Qpよりも小さいと判断した場合には、ステップ236へ進む。ステップ235において熱出力Qが前回熱出力Qpよりも小さいと判断した場合には、二次流体の流量増加により熱交換量が増加して温度差ΔTbが減少した際に、熱出力が低下している。すなわち、温度差ΔTbの減少に伴い熱出力が低下する第2特性領域に温度差ΔTbがあると判断したと同意である。そこで、ステップ236では、特性領域を、第2特性領域である旨の特性曲線の「右上がり領域」に設定する。
ステップ235において熱出力Qと前回熱出力Qpとが等しいと判断した場合には、ステップ237へ進む。ステップ235において熱出力Qと前回熱出力Qpとが等しいと判断した場合には、二次流体の流量増加により熱交換量が増加して温度差ΔTbが減少した際に、熱出力が変化していない。すなわち、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力が増大する第2特性領域と温度差ΔTbの増大に伴い熱出力が低下する第1特性領域の間の頂点に温度差ΔTbがあると判断したと同意である。そこで、ステップ237では、特性領域を、特性曲線の「頂点」に設定する。
ステップ235において熱出力Qが前回熱出力Qpよりも大きいと判断した場合には、ステップ238へ進む。ステップ235において熱出力Qが前回熱出力Qpよりも大きいと判断した場合には、二次流体の流量増加により熱交換量が増加して温度差ΔTbが減少した際に、熱出力が増加している。すなわち、温度差ΔTbの減少に伴い熱出力が増加する第1特性領域に温度差ΔTbがあると判断したと同意である。そこで、ステップ238では、特性領域を、第1特性領域である旨の特性曲線の「右下がり領域」に設定する。ステップ236、237、238のいずれかを実行したら、ステップ124へ進む。
図20に示すステップ124では、ステップ214で検知した特性情報に基づいて、現時点の温度差ΔTbがいずれの特性領域にあるかを判断する。ステップ124では、ステップ214において、「右下がり」、「頂点」、「右上がり」のいずれに設置されたかを判断する。すなわち、ステップ124では、温度差ΔTbが、特性曲線上の「右下がり」となる第1特性領域にあるか、特性曲線上の「右上がり」となる第2特性領域にあるか、特性曲線の最大熱出力点である「頂点」にあるかを判断する。第1特性領域は、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが低下する領域である。第2特性領域は、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが上昇する領域である。なお、ステップ124において、処置モード「なし」等により特性領域が不明である場合には、ステップ125へ進む。
本実施形態において、ステップ214は、特性情報を検知する特性検知部であるとともに、特性情報を取得する特性情報取得部に相当する。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態のHPECU101は、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量および低温側熱交換器における被冷却流体の流通量の少なくともいずれかを変更した際の熱出力の変化に基づいて特性情報を検知する特性検知部としてステップ214を有する。特性情報取得部でもあるステップ214は、特性検知部が検知した特性情報を取得する。
これによると、HPECU101は、特性検知部が検知した特性情報を特性情報取得部で取得して、高温側流量調節装置および低温側流量調節装置の作動制御を行なうことができる。したがって、予め特性情報を記憶しておく必要がない。
また、本実施形態のHPECU101は、所望の熱出力を得るための制御サイクルを繰り返す中で、特性情報を検知している。したがって、特性情報を検知するためだけに、熱交換器を通過する二次流体流量を変更する必要がない。
なお、本実施形態では、車両用空調装置1が暖房運転モードに設定されたときのHPECU101の制御動作について説明したが、同様の技術的思想を有する制御動作を暖房運転モード以外の他の運転モードに適用することができる。同様の技術的思想を有する制御動作を冷房運転モードにも適用することができる。作業室11の低温端からの冷熱出力により、低温側熱交換器4となる冷却用熱交換器24で送風空気を冷却する場合にも、開示技術を用いることができる。
(他の実施形態)
この明細書に開示される技術は、その開示技術を実施するための実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。開示される技術は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。実施形態は追加的な部分をもつことができる。実施形態の部分は、省略される場合がある。実施形態の部分は、他の実施形態の部分と置き換え、または組み合わせることも可能である。実施形態の構造、作用、効果は、あくまで例示である。開示技術の技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示技術のいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
上記実施形態では、温度差ΔTbに対する熱出力Qの特性は、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが低下する第1特性領域と、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが上昇する第2特性領域とを有していたが、これに限定されるものではない。例えば、図22に示すように、温度差ΔTbに対する熱出力Qの特性が、温度差ΔTbの増大に伴い熱出力Qが低下する第1特性領域のみからなる場合であっても、開示された技術を適用して有効である。
また、上記実施形態では、モータ5の回転数を許容最大回転数としても、熱出力Qが目標熱出力QO未満であるときには、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量および低温側熱交換器における被冷却流体の流通量のいずれかを変更して熱出力Qを上昇させた。しかしながら、これに限定されるものではない。熱出力Qが増大する方向へ温度差ΔTbが変化するように、高温側熱交換器における被加熱流体の流通量および低温側熱交換器における被冷却流体の流通量の両者を変更してもよい。
また、上記実施形態では、ステップ117で実熱出力である熱出力Qを算出する際に、熱輸送媒体の熱交換前後の温度差を用いていた。そのため、MHP装置2は、一対の高温側温度センサ94、95と、一対の低温側温度センサ96、97を備えていた。しかしながら、これに限定されるものではない。例えば高温端側には温度Th1を検出する温度センサ94を設け、温度センサ95は省略して、高温側熱交換器3の熱交換特性を利用して熱出力Qを算出してもよい。また、例えば低温端側には温度Tc1を検出する温度センサ96を設け、温度センサ97は省略して、低温側熱交換器4の熱交換特性を利用して冷熱出力を算出してもよい。
また、上記実施形態では、ステップ117で実熱出力である熱出力Qを算出するために、ステップ116でモータ5の回転数とポンプ17の吐出流量特性とから熱輸送媒体の循環流量を得ていたが、これに限定されるものではない。例えば熱輸送媒体の流量を計測する流量計を設けて、流量計の出力値を用いてもかまわない。
また、上記実施形態では、磁場変調装置14と熱輸送装置16とは共通の動力源5によって駆動されていた。すなわち、ポンプ17による熱輸送媒体の流量は、磁場変調装置14および流路切換機構18の作動周波数の変化に比例して変動するものであった。しかしながら、これに限定されるものではない。例えば、磁場変調装置14および流路切換機構18を駆動する動力源と、ポンプ17を駆動する動力源とを、別々に設けてもかまわない。また、例えば、可変減速機構を採用して、磁場変調装置14および流路切換機構18の作動周波数とポンプ17の回転数とが比例して変動しないものであってもよい。
また、上記実施形態では、ポンプ17は一方向ポンプであったが、これに限定されるものではない。例えば熱輸送媒体の吸入と吐出とを交互に繰り返して熱輸送媒体の往復流を形成するポンプであってもよい。また、ポンプは、1つではなく2つ以上設けてもかまわない。
また、上記実施形態では、MHP装置2の外部の熱交換器3、4に熱輸送媒体を供給した。これに代えて、一次媒体である熱輸送媒体と、二次媒体とを熱交換する熱交換器をMHP装置2内に設け、二次媒体を低温系統と高温系統とに供給してもよい。このような場合には、二次媒体を被加熱流体や被冷却流体として開示された技術を用いることができる。また、二次媒体が低温系統に循環する流量および高温系統に循環する流量を、固定または熱輸送媒体流量に関連付けて変化させる。そして、二次媒体が循環する低温側熱交換器で熱交換により冷却される被冷却流体および二次媒体が循環する高温側熱交換器で熱交換により加熱される被加熱流体の流通量制御に開示された技術を用いてもよい。
また、上記実施形態では、車両用空調装置に開示された磁気ヒートポンプ装置を用いた。しかしながら、これに限定されるものではない。例えば船舶や航空機等の車両以外の移動体用の空調装置に開示された磁気ヒートポンプ装置を用いてもよい。また、例えば住宅用等の定置式の空調装置に開示された磁気ヒートポンプ装置を用いてもよい。
また、上記実施形態では、被加熱流体や被冷却流体は空気であったが、これに限定されるものではない。被加熱流体や被冷却流体は、空気以外の気体であってもよい。また、被加熱流体や被冷却流体は、液体であってもかまわない。例えば、被加熱流体を水とする給湯装置に開示された磁気ヒートポンプ装置を用いても有効である。
また、上記実施形態では、作業室11とMCE素子12とを有する素子ベッドが回転する構成を採用した。これに代えて、素子ベッドと磁場変調装置14との間の相対的な回転と、素子ベッドと流路切換機構18との間の相対的な回転とを提供するための多様な構成を採用することができる。例えば、素子ベッドを静止させておき、永久磁石を含む磁場変調装置を素子ベッドに対して相対的に回転移動させてもよい。