JP6417878B2 - 半導体発光装置封止材用硬化性オルガノポリシロキサン組成物、該組成物を硬化させてなるオルガノポリシロキサン硬化物及びこれを用いて封止されてなる半導体発光装置 - Google Patents

半導体発光装置封止材用硬化性オルガノポリシロキサン組成物、該組成物を硬化させてなるオルガノポリシロキサン硬化物及びこれを用いて封止されてなる半導体発光装置 Download PDF

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Description

本発明は、発光輝度が高い半導体発光装置を得ることができる、封止材用硬化性シリコーン樹脂組成物、及びこれを用いて封止してなる半導体発光装置に関する。
更に本発明は、該半導体発光装置を備えてなる照明及び画像表示装置に関するものである。
発光ダイオード(light emitting diode:以下適宜「LED」と略記する。)や半導体レーザ等の半導体発光装置においては、半導体発光素子を透明の樹脂等の部材(半導体発光装置用封止材)によって封止したものが一般的である。
この半導体発光装置用封止材としては、エポキシ樹脂が広く用いられており、また、半導体発光素子からの発光波長を変換するために、上記のエポキシ樹脂等の中に蛍光体などの顔料を含有させたものも用いられている。
このような発光装置は、一般の照明装置として用いられる他、液晶表示装置等のバックライト用光源としても広く用いられている。
しかし、このような発光装置を長期間にわたって使用した場合、発光強度が経過時間と共に低下するという現象が多く見られていた。これは、エポキシ樹脂の耐熱性不足や吸湿性が原因となって、(i)半導体発光素子からの熱によってクラックが生じる、(ii)侵入した水分により蛍光体や発光素子が劣化する、等が原因と考えられている。
また近年、LEDの発光波長の短波長化・高エネルギー化により、エポキシ樹脂が劣化して着色するために、長時間の点灯及び高出力での使用においては半導体発光デバイスの輝度が更に低下するという問題も発生している。
これらの課題に対して、エポキシ樹脂の代替品として耐熱性、耐紫外線性に優れるオルガノポリシロキサン組成物から得られるシリコーン樹脂が使用されるようになり、このような材料を用いた半導体発光デバイスが種々提案されている(例えば特許文献1〜5参照)。
さらにLEDの高輝度化を目的として半導体発光素子からの光取り出しに優れたシリコーン組成物も提案されており、例えば特許文献6には、屈折率の高い封止材を用いることで、屈折率の高い半導体発光素子と封止材との界面で半導体発光素子から発せられた光が、反射することを防ぐために、アルケニル基を分子鎖末端に有するジフェニルシロキサン系化合物を含有する組成物からなる封止材を用いた半導体発光装置が記載されている。
特開2006−294821号公報 国際公開2006/090804号パンフレット 特開平8−269331号公報 特開2009−256670号公報 特開2012−021131号公報 特開2010−180323号公報
しかし封止材の屈折率を高くすると、半導体発光素子の発光面から封止材への光の取り
出し効率は向上するが、封止材と外界(例えば、屈折率が約1.00の空気など)との屈折率の差が大きくなり、封止材と外部との界面で反射が起きるため、最終的に半導体発光素子の発光面から外部への光の取出し効率が低下するという問題があった。
また高屈折率化のためにフェニル基を多用すると、得られる硬化物が過度に硬くなり熱衝撃による封止材のクラックやワイヤ断線が起きやすくなる他、発光素子の熱や光によって封止材が着色しやすくなるという問題があった。
これに対し特許文献5に記載されるジメチルポリシロキサン系の封止材は応力緩和に優れ、上記のようなクラックやワイヤ断線は起こしにくいが、屈折率が低いため発光素子からの光取出し効率が十分とは言えなかった。
このように高い光取出し効率と長期点灯時の半導体発光装置の信頼性とを両立する封止材は未だ見出されていなかった。
本発明の目的は、特許文献5で改良された優れた耐光性(特に耐紫外線性)及び密着性と、特許文献6で改良された優れた光取出し効率を更に改良して、LED発光装置を長時間使用した際でも、クラックや剥離の発生を抑制でき、しかも高い光取出し効率と輝度維持率が得られる光学部材を形成できるような硬化性オルガノポリシロキサン組成物と、その優れた特性を活かした半導体発光装置、照明、画像表示装置を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の組成の架橋性オル
ガノポリシロキサン組成物が、これを封止材として用いて製造した半導体発光装置におい
て、優れた耐久性と高い発光強度の長期間にわたる持続性が得られることを見出して本発
明に到達した。
即ち、本発明の要旨は下記[1]〜[14]に存する。
[1](A)シラノール基を一分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン100重
量部あたり、(B)球状シリコーン樹脂粒子50〜100重量部、(C)フュームドシリ
カ0.1〜30重量部、(D)硬化触媒1〜10000重量ppm、及び(G)末端がカ
ルビノール変性されたシリコーンオイル3〜30重量部を含有してなる半導体発光装置封
止材用硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、前記(B)球状シリコーン樹脂粒
子と(A)シラノール基を一分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンの屈折率差
が0.05未満である半導体発光装置封止剤用硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[2] 更に(E)エポキシ基含有シランカップリング剤を、(A)成分100重量部あ
たり、0.01〜5重量部含有することを特徴とする上記1に記載の半導体発光装置封止
材用硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[3] 更に(F)MQレジン(M単位:RSiO1/2及びQ単位:SiO4/2
らなり(但しRはメチル基である)、かつ樹脂中に0.01〜10重量%のシラノール基及
び/又はアルコキシ基を有するシリコーン系樹脂)を、(A)成分100重量部あたり、
1〜10重量部含有することを特徴とする上記1又は2に記載の半導体発光装置封止剤用
硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[4] (D)硬化触媒がスズ(Sn)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム
(Zr)、ハフニウム(Hf)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In)からなる群
から選ばれる少なくとも1種類の金属を含む化合物であることを特徴とする上記1〜3の
いずれかに記載の半導体発光装置封止剤用硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[5] (F)MQレジンが、M単位/Q単位の比が0.4〜1.2モル/モルであり、
分子量が2,000〜20,000で、シラノール基とアルコキシ基の樹脂中の合計含有
量が0.01〜10重量%のシリコーン系樹脂であることを特徴とする上記3または4に
記載の半導体発光装置封止材用硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[6] (G)末端がカルビノール変性されたシリコーンオイルが一分子中に少なくとも
1個のカルビノール基を有し、分子量400以上15000以下、水酸基価が10〜12
0mgKOH/gであることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の半導体発光装置
封止剤用硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[7] 前記半導体発光装置封止剤用硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物中のシラ
ノール基とカルビノール基との比率がシラノール基/カルビノール基=0.5〜50モル
/モルの範囲にあることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の半導体発光装置封止
材用硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[8] 上記(A)〜(C)成分と、上記(D)成分とが個別に準備されてなる二液型組
成物であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の半導体発光装置封止材用硬化
性オルガノポリシロキサン組成物。
[9] 更に、上記(G)成分が、上記(D)成分が含まれる液に含まれていることを特
徴とする、上記8に記載の半導体発光装置封止材用硬化性オルガノポリシロキサン組成物

[10] 上記1〜9のいずれかに記載の半導体発光装置封止材用硬化性オルガノポリシ
ロキサン組成物を硬化させて得られたオルガノポリシロキサン硬化物。
[11] 表面平均粗さRzが0.05μm以上、1μm以下の範囲であることを特徴と
する上記10に記載のオルガノポリシロキサン硬化物。
[12] 上記10又は11に記載のオルガノポリシロキサン硬化物で封止されてなる半
導体発光装置。
[13] 上記12に記載の半導体発光装置を備えてなる照明。
[14] 上記12に記載の半導体発光装置を備えてなる画像表示装置。
本発明の半導体発光装置封止材用硬化性オルガノポリシロキサン組成物(以下「本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物」、又は単に「シリコーン樹脂組成物」と記すことがある)は、硬化物の耐久性が良好で、光取り出し効率に優れ、かつ発光強度を長期間にわたり高いレベルで維持することができるので、これを用いて封止された半導体発光装置は、照明や画像表示装置に特に好適に用いることができる。
本発明の実施形態の一例(蛍光体が封止材中に分散されている形式)を示す概略断面図である。 本発明の実施形態の別の一例(蛍光体が半導体発光素子と離れて存在する形式)を示す概略断面図である。 実施例において評価に用いた半導体発光装置(LED)の概略断面図である。
以下、本発明の実施の形態を、「オルガノポリシロキサン組成物」、「組成物の構成成分」、「組成物から得られる硬化物」、及び「組成物を用いて封止されてなる半導体発光装置」の順に詳細に説明する。
なお、これらの各構成要件及び発明の概要に関する説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されず、その要旨の範囲内であれば種々変更して実施することができることは言うまでもない。
1.オルガノポリシロキサン組成物
(1)組成
本発明の半導体発光装置封止材用硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、以下の組成を有するものである。
(A)架橋反応可能な官能基を一分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン・・・100重量部
(B)球状シリコーン樹脂粒子・・・50〜100重量部
(C)フュームドシリカ・・・0.1〜30重量部
(D)硬化触媒・・・1〜10000重量ppm
(G)末端がカルビノール変性されたシリコーンオイル・・・3〜30重量部
また、本発明の好ましい態様においては、上記(A)成分の架橋反応可能な官能基がシラノール基であること、及び、上記(A)〜(D)の必須成分に加えて、(A)成分100重量部あたり、以下の(E)及び(F)成分を、それぞれ任意の組み合わせで、以下の量比となるように含有していること、が好ましい。
(E)エポキシ基含有シランカップリング剤・・・0.01〜5重量部
(F)MQレジン(M単位:RSiO1/2及びQ単位:SiO4/2からなり、かつ樹脂中に0.01〜10重量%のシラノール基及び/又はアルコキシ基を有するシリコーン系樹脂)・・・1〜10重量部
また、(G)末端がカルビノール変性されたシリコーンオイルを用いるに際して、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物中の、シラノール基とカルビノール基との比率がシラノール基/カルビノール基=0.5〜50モル/モルの範囲とすることが好ましい。
更に、本発明の別の好ましい態様としては、上記(A)〜(C)成分と、上記(D)成分とが個別に準備されてなる二液型の組成物であることが挙げられ、また上記(E)〜(G)成分が用いられる場合は、(G)成分の少なくとも一部は上記(D)成分と同じ液中に含有されていることが好ましい。(なお、(E)及び(F)成分は上記(A)〜(C)成分と同じ液中に含有されることが好ましい。)
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上記の必須成分及び好ましい成分を一液タイプとして混合するか、又は(A)〜(C)成分を含む第1液、(D)及び(G)成分を含む第2液とを個別に調製する二液タイプと製造することができる。各成分の混合順序や混合方法等の条件は、得られる組成物の特性を損なわない限り、特に制限はされない。
なお、二液タイプの場合は封止材として使用する直前に両液を混合して使用すればよいが、一液タイプの場合は、可使時間(ポットライフ)を考慮して、調製後速やかに使用することが好ましく、また保存が必要な場合は硬化が進まないような低温・低湿度条件等で保管する等の配慮を行うことが好ましい。
(2)組成物の構成成分
以下、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に用いる必須成分及び好ましい成分について、個別に説明する。
(A)架橋反応可能な官能基を一分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、一分子中に架橋反応可能な官能基を2個以上有するオルガノポリシロキサンを主成分とするものである。
この架橋反応可能な官能基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ビニル基、ヒドロシリル基、及びシラノール基等が挙げられ、中でもシラノール基が、架橋の容易さと迅速さ、及び得られる架橋構造が熱や光に対し安定である点で好ましい。
以下、(A)成分の具体例として、シラノール基を2個以上有するオルガノポリシロキサンを用いて説明を行うが、上記で例示したビニル基やアルコキシ基等においても同様である。
(A)成分において、シラノール基を有する官能基を2個以上有することにより、縮合反応による硬化が迅速に進行し、得られる硬化物の耐久性や寸法安定性などが良好なものとなる。また、シラノール基を3個以上有していると、得られる硬化物の機械的強度が更
に改善されるので好ましい。このような架橋反応可能な官能基を一分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンは、好ましくは下記式(2)で表される化合物を含有する。分子構造は直鎖状、分岐状、3次元網目状などいずれでもよい。
(R13SiO3/2(R1415SiO2/2(R161718SiO1/2)r・・・(2)
(式(2)中、R13〜R18は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、水酸基、アルコキシ基およびアリール基から選ばれる基を示す。p、q、およびrは、0以上の数を示し、p+q+r=1である。また、一分子中の少なくとも2個のR13〜R18は水酸基である。)
なお縮合反応が迅速に進行し、また硬化物の物性の点からpは0<pであることが好ましい。
また、耐光性や紫外透明性が重視される用途の場合、一般式(2)で表される化合物におけるR13〜R18のうち、少なくとも80モル%以上、好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上がメチル基であることが好ましい。一方、発光素子からの光取り出し効率が重視される用途の場合、前記R13〜R18のうち、50モル%以上がフェニル基であることが好ましい。
一般式(2)のR13〜R18において、アルキル基、アルケニル基およびアリール基は、ハロゲン原子によって更に置換されていてもよく、好ましいアルキル基、アルケニル基およびアリール基は、後述するR1〜R3およびR5〜R8におけるものと同様である。このような置換基の中で好ましいものとしては、例えばフェニル基、メチル基が挙げられる。
このシラノール基を有するオルガノポリシロキサンにおいては、長期保管時や硬化時の粘度上昇を適度に抑制する観点から、分子中のシラノール基の量が過度に多くならないようにすることが好ましい。例えば、一般式(2)のR13〜R18におけるシラノール基の数はR13〜R18の置換基の全数に対して、通常20%以下、好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下であり、通常0.01%以上、好ましくは0.05%以上、更に好ましくは、0.1%以上である。シラノール基の数(含有量)が多すぎると保存中の粘度安定性が低くなったり、保管中に水滴(縮合水)が発生したりする場合がある。なお、シラノール基の量が少なすぎると反応の進行が遅くなるか、不十分となる場合がある。
このような一般式(2)で表されるシラノール基含有オルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、分岐又は非分岐のシラノール末端ポリジメチルロキサン(Silanol terminated polydimethylsiloxanes)などが挙げられる。
こうしたシラノール性水酸基を含有するオルガノポリシロキサンは加水分解性基を有するシラン・オルガノポリシロキサンを縮重合させることにより合成することができ、また、例えば、Momentive Performance Materials社製シラノール末端ポリジメチルシロキサン(XC96−723、XF3905、YF3057、YF3800、YF3802、YF3807、YF3897等)のような市販品を用いることもできる。
なお、本発明においてシラノール基含有オルガノポリシロキサンとして、上記非分岐のシラノール末端ポリジメチルシロキサンを用いる場合には、これに加えて、架橋性ケイ素含有オルガノシラン及び/又は分岐オルガノポリシロキサン化合物を含有していることが、架橋反応性の点から好ましい。
さらに前記シラノール基含有オルガノポリシロキサンは、シラノール末端ポリジメチルシロキサンと、前記架橋性ケイ素含有オルガノシラン及び/又は分岐オルガノポリシロキサンとを反応させたシラノール基含有分岐オルガノポリシロキサンであってもよい。
本発明に用いるシラノール基含有オルガノポリシロキサンのポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常160以上、好ましくは400以上、さらに好ましくは500以上であり、また、通常70000以下、好ましくは50000以下、さらに好ましくは30000以下である。重量平均分子量が高いと、このオルガノポリシロキサンが硬化時に揮発し難く、縮合反応性の末端基含有量が相対的に少なくなり、硬化時の重量歩留まりが高く、硬化物が収縮し難いため、内部応力が小さくなる。
一方シラノール基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量が低いと、粘度が低くなるため後述の(B)球状シリコーン樹脂粒子や(C)フュームドシリカ、蛍光体などの固体成分を所望量添加しやすい。また、潜在的な水分であるシラノール基の相対的含有量が高くなり、系内にアルコキシ基等の加水分解性基が共存する際に加水分解に必要な水を供給でき、反応速度が低下し難く、硬化反応が速くなりやすい。
なお、このシラノール基含有オルガノポリシロキサンは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
(B)球状シリコーン樹脂粒子
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物においては、(B)球状シリコーン樹脂粒子を、上記(A)成分である架橋性オルガノポリシロキサン100重量部あたり、50〜100重量部を使用する。好ましい使用量は、55重量部以上、更に好ましくは60重量部以上であり、また、80重量部以下、更に好ましくは75重量部以下である。
この球状シリコーン樹脂粒子の粒子径は1〜30μmであることが好ましい。粒子径が1μmよりも大きいと、上記シリコーン樹脂組成物の粘度が低く、取扱いやすくなり生産性が向上する他、粒子による光散乱が強くなり過ぎず、得られる発光装置の輝度が低下し難い。一方、粒子径が30μm以下であると、シリコーン樹脂組成物の取扱い時に、ディスペンサーのノズルを閉塞させる危険性が低く、また、蛍光体層中で球状シリコーン樹脂粒子を透過する光の割合が少なく、球状シリコーン樹脂粒子が相互に接触することによる光が蛍光体と接触しない光路、いわゆる「光の素抜け」が起こり難くなって、蛍光体の利用効率が高くなりやすい。
また球状シリコーン樹脂粒子を構成するシリコーン樹脂の構成単位は、その95%以上がT単位であると、得られる硬化物の機械的強度が高くなるので好ましい。
上記のような構成単位を有する球状シリコーン樹脂粒子は、屈折率がポリジメチルシロキサンに近いので、ポリジメチルシロキサンを基本骨格に含むシリコーン樹脂系の封止材中に分散したときの光の拡散の程度があまり大きくならない。即ち、本発明のオルガノポリシロキサン組成物に基づく封止材は発光素子や蛍光体からの光透過性をあまり損うことがない。
本願のオルガノポリシロキサン組成物およびその硬化物において、(B)球状シリコーン樹脂粒子と前記封止材成分との屈折率差は通常0.05未満で、好ましくは0.03以内、より好ましくは0.02以内である。また、屈折率差の下限は、通常0.005程度である。このような範囲とすることにより本願の硬化物が有するような前方散乱を主体とする光拡散作用を実現することができる。
例えば、ポリジメチルシロキサンが架橋された構造のシリコーン樹脂に一次粒子径が数十nmのフュームドシリカを分散させた封止材では実効屈折率が1.41より高い値(ジメチルシリコーンの屈折率とシリカの屈折率の中間の値)となり、これに球状シリコーン樹脂粒子としてポリメチルシルセスキオキサン構造を有するものを組み合わせた場合、その光拡散作用は特に小さくすることができる。
例えば、酸化チタン微粒子のようなシリコーン樹脂系の封止材との屈折率差が大きいものは、少量でも大きな光拡散効果を発揮する一方で、後方への光散乱も多いため、使用量の変動や粒子の沈降等による封止材中での分散状態の僅かな変化が、発光装置の輝度や色度などの発光特性を大きく変動させてしまう可能性がある。これに対し、本発明に用いる(B)球状シリコーン樹脂粒子はポリジメチルシロキサンを基本骨格に含むシリコーン樹脂との屈折率差が小さく、特定の範囲にあるので、封止材中での分散状態の変動が発光効率に及ぼす影響は小さくなる。
即ち、球状シリコーン樹脂粒子の種類を選択するに際しては、マトリックスである封止材部分との屈折率の差を考慮して、その差があまり大きくならないようにその組成を選ぶことが、光の拡散・取り出し効率を高くする上で好ましいと言える。
このような球状シリコーン樹脂粒子は、メチルシルセスキオキサン構造を有するものであり、市販品では、信越化学工業(株)のシリコーンレジンパウダー(KMP−590・701・702/X−52−854/X52−1621)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(同)のシリコーン樹脂粒子TSR9000、及び同社のトスパール(登録商標)TOSPEARL120・130・145・2000B・1100・3120、XC99−A8808などが挙げられる。
なお、「球状」とは真球状の粒子のみを言うのではなく、楕円球状の粒子を始めとする略球状の粒子や球状粒子が複数個接合した形状の複合球状粒子も含まれる。
本願のオルガノポリシロキサン硬化物の表面には、前記球状シリコーン樹脂粒子に由来する多数の凸部が存在し、これが封止材中から外部空気層への光取り出しに寄与する。通常、球状シリコーン樹脂粒子の比重はシリコーン封止材より大きいので、球状シリコーン樹脂粒子とシリコーン封止材との混合物を硬化すると、硬化中に球状シリコーン樹脂粒子が沈降し、硬化物表面は平坦となりやすいが、後述の(C)ヒュームドシリカその他の添加成分と組み合わせることで、本願発明の組成物では、硬化反応時にも球状シリコーン樹脂粒子が安定に分散し、硬化物表面に球状シリコーン樹脂粒子由来の凸部が形成されやすくなる。
(C)フュームドシリカ
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物においては、(C)フュームドシリカを、上記(A)成分である架橋性オルガノポリシロキサン100重量部あたり、0.1〜30重量部使用する。より好ましい使用量は、0.5〜25重量部、更に好ましくは1〜20重量部である。
このフュームドシリカとは、気相法で合成されたシリカ微粒子であり、その表面が疎水性のものが好ましい。例えば日本アエロジル株式会社製「アエロジル」R972、R972V、R972CF、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812、R812S、株式会社トクヤマ製「レオロシール」MT−10、MT−10C、DM−10、DM−10C、DM−30、DM−30S、KS−20SC、HM−20L、HM−30S、PM−20、PM−20L等の商品名で市販されている。
表面がヘキサメチルジシラザンやジメチルシリコーンオイルでコーティング処理された疎水性のものがオルガノポリシロキサン類への分散性に優れているため分散液の透明性が高く、かつ適度なチキソトロピー性を発現できるので特に好ましい。
このフュームドシリカの一次粒子径はメジアン径として好ましくは5nm以上、50nm以下、より好ましくは10nm以上、20nm以下である。一次粒子径が大きいと、凝集し難く、分散に要するエネルギーが少ないうえに、得られる硬化性オルガノポリシロキサン組成物の粘度も低くなりやすい。また一次粒子径が小さいと、オルガノポリシロキサ
ン中に分散し難くなるが、粒子径が小さいために分散液が白濁し難く、また十分な増粘効果を得やすい。
なお、フュームドシリカ粒子は常態では凝集している場合があるが、これを本発明の組成物に用いる際には、十分解砕して100μmを超えるような粗大な粒子を含まないようにすることが重要である。このような粗大粒子が含まれると、チキソ性の発現が不安定となったり、ポッティング時の糸引きや、保管中の異常増粘やチキソ性の経時変化を引き起こしたり、粗大粒子が光を後方に散乱して発光装置の輝度が低下したりすることがある。
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物にフュームドシリカを加えることにより、球状シリコーン樹脂粒子の沈降を抑制するとともに、得られる硬化物の表面に球状シリコーン樹脂粒子に由来する微小な凸部を安定して形成できるようになり、かつ硬化物表面にしわ、波打ち等を起こさずに、良好なレベリングが得られる。同時に発光素子近傍に球状シリコーン樹脂粒子が沈降・堆積することによる光の遮蔽も抑えられて、球状シリコーン樹脂粒子が系内で均一な分散状態を保つことができるので、高い光取り出し効率を安定的に達成することができる。
(D)硬化触媒
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物においては、(D)硬化触媒を、上記(A)成分である架橋性オルガノポリシロキサン100重量部あたり、1〜10000重量ppm使用する。具体的には、縮合硬化型触媒の場合は0.01〜1重量部(100〜10000重量ppm)、ヒドロシリル化硬化型触媒の場合は白金換算で1〜100重量ppmそれぞれ使用することが好ましい。
硬化触媒が少ないと、本発明のシリコーン樹脂組成物の保存安定性に優れ、封止後の硬化物の白濁や紫外透明性の低下が起こり難い。一方、硬化触媒が多いと、十分に硬化反応が進行し、反応速度の低下が起こり難い。
本発明において使用できる縮合硬化型触媒としては、金属化合物、特に有機金属化合物、金属と有機酸の塩、ルイス酸・ルイス塩基等が挙げられる。
好ましい金属元素としては、スズ(Sn)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In)からなる群から選ばれる少なくとも1種類が好ましく、中でも、Sn、Ti、Zn、Zr、Hf、Gaが反応活性が高いので好ましい。
特に、半導体発光装置用封止材として用いるためには、電極腐食や光吸収が少なく、適度な触媒活性を有し、オルガノポリシロキサン鎖の切断による劣化が起こりにくいZrやHf、Gaが特に好ましい。
ジルコニウム(Zr)を含有する有機金属化合物触媒としては、具体的には、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシジアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムアシレート、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムオクトエート、ジルコニル(2−エチルヘキサノエート)、ジルコニウム(2−エチルヘキソエート)などが挙げられる。
なお、ジルコニウムを含有する有機金属化合物触媒として、上記の化合物の他に、例えば特開2010−163602号公報に記載されているような各種ジルコニウム触媒を用いることができる。
また、本発明に用いる有機金属化合物触媒としては、触媒そのものが適度な安定性及び
触媒反応性を持つことが重要であり、触媒が大気中の水分等によって加水分解されにくい性質を持つことが好ましい。
有機金属化合物触媒にこのような特性を付与できる配位子としてはステアリン酸やナフテン酸、オクチル酸のようなモノカルボン酸、アセチルアセトンのようなジケトンなどが挙げられ、ジルコニウムの4つの原子価のうちの少なくとも1つがこれらと結合した塩となっていることが好ましい。また、ジルコニウム触媒はジルコニル構造(Zr=O2+)をとっていてもよい。
なお、上記説明はジルコニウム触媒を具体例としたものであるが、他の有機金属化合物触媒についても同様なことが言える。
例えば、ハフニウム(Hf)を含有する有機金属化合物触媒は、前記ジルコニウムと同様の形態が挙げられ、またカルボン酸ハフニル等のハフニル構造)Hf=O2+)をとっていてもよいことも同様である。
チタン(Ti)を含有する有機金属化合物触媒としては、チタニウムテトラi−プロポキシド、チタニウムテトラn−ブトキシド、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテートなどが挙げられる。
亜鉛(Zn)を含有する有機金属化合物触媒としては、亜鉛トリアセチルアセトネート、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ビス(アセチルアセトナト)亜鉛(II)(一水和物)、などが挙げられる。
スズ(Sn)を含有する有機金属化合物触媒としては、テトラブチルスズ、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキサイド、テトラオクチルスズ、ジオクチルスズジクロライド、ジオクチルスズオキサイド、テトラメチルスズ、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレート、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ビス(ネオデカノエート)スズ、ジ−n−ブチルビス(エチルヘキシルマレート)スズ、ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、ジ−n−ブチルブトキシクロロスズ、ジ−n−ブチルジアセトキシスズ、ジ−n−ブチルジラウリル酸スズ、ジメチルジネオデカノエートスズなどが挙げられる。
ガリウム(Ga)を含有する触媒としては、例えばガリウムトリアセチルアセトネート、ガリウムトリエトキシド、ジエチルエトキシガリウム、オクチル酸ガリウム、ラウリン酸ガリウムなどを挙げることができる。
インジウム(In)を含有する触媒としては、例えばトリメトキシインジウム、トリエトキシインジウム、トリ−i−プロポキシインジウム(インジウムトリイソプロポキシド)、トリ−n−プロポキシインジウム、トリ−n−ブトキシインジウム、トリ−t−ブトキシインジウム、トリス−1−メトキシ−2−メチル−2−プロポキシインジウム等のアルコキシド類、酢酸インジウム、シュウ酸インジウム、2−エチルヘキサン酸インジウム、n−オクチル酸インジウム、ナフテン酸インジウム等の脂肪酸塩、及び配位子がβ−ジケトン型化合物のキレート錯体であるインジウムトリアセチルアセトナートなどが例示される。このような錯体触媒として一分子中に互いに異なる配位子を有する触媒を使用してもよい。
これらの中でも、インジウムトリアセチルアセトナート(トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III))、2−エチルヘキサン酸インジウム、n−オクチル酸インジウム、ナフテン酸インジウムなどが、触媒活性が良好であるので好ましい。
ヒドロシリル化硬化型触媒としては白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテ
ート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。なかでも入手が容易で活性が高い白金系触媒が好ましい。
これらの硬化触媒としては、成分(A)への溶解性または分散性が良好であるものが好ましい。
またこれらの触媒は、(A)成分のオルガノポリシロキサンに溶解しやすいように、溶媒に溶解させて用いてもよい。溶媒としては、ミネラルスピリット、灯油、炭素数6〜15の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルアセトアセテート等のエステル類、炭素数1〜5のアルコール、揮発性のシリコーンオイル等が挙げられる。これらの溶媒は、触媒活性に悪影響しない限り、任意に選択できるが、溶媒自身が化学変性しにくく(A)成分のオルガノポリシロキサンの溶解性が良好な炭化水素系の溶剤が好ましく、具体的にはミネラルスピリット、炭素数10〜15の炭化水素が好ましい。
溶媒の使用量は、(A)成分を溶解できれば、量は少ない方が好ましい。用いた溶媒は、通常、オルガノポリシロキサンを硬化させる前及び/又は硬化反応時に、減圧及び/又は加熱などにより除去する。
また、溶媒として反応性溶媒を用いると、溶媒の揮発による硬化物の体積減少の程度が小さくなり、2液硬化型とした時に(A)成分と触媒液との混合比を1に近くすることができる。このような反応性溶媒としては、縮合硬化型触媒の場合、シラノール変性オルガノポリシロキサン、カルビノール変性オルガノポリシロキサン、ヒドロシリル基変性オルガノポリシロキサンなどが挙げられ、ヒドロシリル化硬化型触媒の場合、アルケニル基変性オルガノポリシロキサンが挙げられる。
前記縮合触媒は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。また反応促進剤や反応抑制剤と適宜併用してもよい。
(E)エポキシ基含有シランカップリング剤
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物においては、上記(A)成分である架橋性オルガノポリシロキサン100重量部あたり、(E)エポキシ基含有シランカップリング剤を0.01〜5重量部含有することが好ましい。より好ましい含有量は0.1重量部であり、また、3重量部以下である。
エポキシ基含有シランカップリング剤の配合割合が多いと、発光素子と封止材が十分に接着しやすく、一方、エポキシ基含有シランカップリング剤の配合割合が少ないと、耐熱性や耐光性に優れ、着色し難い。
このエポキシ基含有シランカップリング剤を用いることにより、前記シラノール基含有オルガノポリシロキサンと発光装置のパッケージ、基板材料、金属配線等との接着性を付与・改良され、硬化した封止材が温度の変化等の環境条件によって、割れたり剥離したりすることを防止できて、発光装置の耐久性が改善される。
更に、本発明においては、エポキシ基含有シランカップリング剤は上記の接着性付与効果だけではなく球状シリコーン樹脂粒子と相互作用して、得られる発光装置の輝度を高める効果も得られる。
このようなエポキシ基含有シランカップリング剤の具体例としては、例えば信越化学工業株式会社製の、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(
商品名「KBM−303」、以下同じ)、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−402)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403)、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE−402)、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(KBE−403)などが挙げられる。必要に応じ
てこれらの2量体以上のオリゴマーを使用しても良い。
(F)MQレジン
本発明に用いるMQレジンとしては、「M単位:RSiO1/2及びQ単位:SiO
4/2」からなり(但しRはメチル基である)、M単位/Q単位の比が0.4〜1.2モル
/モルであって、分子量が2,000〜20,000であるものが好ましく、かつSiO
骨格を有する球状分子表面に−O−Si−(CH基を有していて、樹脂中に0.
01〜10重量%のシラノール基及び/又はアルコキシ基を有するシリコーン系樹脂であ
ることが好ましい。
本発明においては、上記(A)成分の架橋性オルガノポリシロキサン100重量部あたり、このMQレジンを1重量部以上用いることが好ましく、より好ましい使用量は2重量部以上である。また、10重量部以下用いることが好ましく、より好ましい使用量は8重量部以下である。
MQレジンを組成物中に含有することにより、硬化物/組成物に可撓性や強靱性、及びMQレジンの粘着性に由来する接着性のような特性を付与することができる。
また、本発明においては、上記の効果だけでなく(F)MQレジンが(B)球状シリコーン樹脂粒子と相互作用して、得られる発光装置の輝度を高める効果がある。
このようなMQレジンの具体例としては、例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、「MQレジンSR1000」、東レ・ダウコーニング株式会社製、「MQ−1600」などが挙げられる。
(G)末端がカルビノール変性されたシリコーンオイル
本発明においては、上記(A)成分の架橋性オルガノポリシロキサン100重量部あたり、この末端がカルビノール変性されたシリコーンオイルを3〜30重量部使用する。
末端がカルビノール変性されたシリコーンオイルとしては、一分子中に少なくとも1個のカルビノール基を有し、分子量400以上15000以下、水酸基価が10〜120mgKOH/gのものを用いるのが好ましい。
また、その添加量としては、上記範囲内であって、かつ本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物中のシラノール基とカルビノール基との比率がシラノール基/カルビノール基=0.5〜50モル/モルの範囲となることが好ましい。
上記の条件で、(G)末端がカルビノール変性されたシリコーンオイルを組成物中に含有させることにより、(B)球状シリコーン樹脂粒子の分散を安定化し、高い発光強度を安定して長期間維持できるという効果を示すことができる。また硬化物に柔軟性、耐衝撃性を付与し、脆さを改善することができる。
このような末端カルビノール変性シリコーンオイルの具体例としては、例えば以下のものを例示できる。
信越化学工業株式会社製の、側鎖型カルビノール変性シリコーンオイル(商品名「X−22−4039」、「X−22−4015」、両末端カルビノール変性シリコーンオイル(商品名「X−22−160AS」、「KF−6000」、「KF−6001」、「KF−6002」、「KF−6003」)、片末端変性シリコーンオイル(商品名「X−22−170BX」、「X−22−170DX」)、片末端ジオール変性シリコーンオイル(商品名「X−22−176DX」、「X−22−176GX−A」)、あるいは、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の両末端カルビノール変性シリコーンオイル(商品名「XF−42−B0970」、「XF−42−C5277」)等。
なお、この末端カルビノール変性シリコーンオイルの配合割合が多いことにより、十分
な発光強度を維持する効果が発現しやすく、一方、その使用量の増加に見合う効果が得られる範囲の量以下とすることにより、過剰のシリコーンオイルが封止材の表面にブリードアウトしてべたつき等を引き起こすことを予防できる。
上記の通り、(G)末端がカルビノール変性されたシリコーンオイルには側鎖変性型、両末端変性型、片末端変性型、1つの変性基に二つの水酸基を含む片末端ジオール型など様々な構造のものがあり、その種類、分子量、官能基の種類・含有量、分子構造を選択することにより、得られる硬化性オルガノポリシロキサン組成物の、塗布時のチキソ性、塗布後の形状維持性・レベリング性、硬化時における、室温〜硬化温度までの温度−粘度特性、硬化速度等を目的に応じて調整することができる。
特に、本願発明においては、前述の通り、(B)球状シリコーン樹脂粒子及び(C)フュームドシリカを用いるため、得られる組成物の粘度が高く、またチキソ性が顕著に発現しやすくなる。(G)末端カルビノール変性シリコーンオイルをこれらの成分と併用することでチキソ性の発現を適度に抑え、またポッティング時の糸引きの少ない、レベリング性に優れた組成物とすることができるので、特にポッティング用の封止材として好ましい。
また、パッケージの凹部にポッティングする用法など、レベリング性を特に優先する場合には、一分子あたりの水酸基が少ない片末端カルビノール変性シリコーンオイルが好ましく、一方、平坦な配線(基板)上にディスペンサーを用いて注加しドーム状の封止を行う場合は、チキソ性付与能力が大きい側鎖型カルビノール変性シリコーンオイルを用いることが好ましい。
これらのカルビノール変性シリコーンオイルは単独で使用しても、また使用目的に応じて任意の種類/比率で併用しても構わない。
カルビノール変性シリコーンオイルは縮合硬化型及びヒドロシリル化硬化型のいずれにも用いることができるが、縮合硬化型シリコーン系に添加した場合、カルビノール変性シリコーンオイルの水酸基が(A)成分のシラノール基と硬化反応時に脱水縮合して、硬化物の骨格中に取り込まれるので、硬化物からのブリードアウトの恐れが低下するため特に好ましい。
また縮合硬化型シリコーン系においては、この(G)末端カルビノール変性シリコーンオイルを触媒の反応性溶媒として利用することで保存安定性に優れた2液型の組成物とすることができる。(G)末端カルビノール変性シリコーンオイルは適度な極性を有するので、本発明においては、(A)成分のオルガノポリシロキサンへの触媒の溶解度が低い場合に、触媒の溶解を助け低温保管時の析出を防ぐ働きもある。
なお、これらのカルビノール変性シリコーンオイルは通常ヒドロシリル化反応を経由して合成されるため、合成工程において使用される白金系触媒が残留していることが多い。その残留量が多く本願の用途において熱や光による着色の原因となるような場合には、公知の吸着材等を使用して予め白金触媒の除去を行ってもよい。
(H)その他の成分
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、粘度、硬化速度、硬化物の硬度、性状の調整や硬化物の光学的特性や作業性、機械的特性、物理化学的特性を向上させることを目的として、上記必須成分に加えて、他の添加物を含有していてもよい。
このような添加物としては、フュームドシリカ以外の無機粒子やシリコーン系架橋促進剤、安定剤、酸化防止剤、及び液状媒体等が挙げられる。
(H−1)無機粒子
無機粒子は半導体発光素子から発生する光を散乱させて蛍光体に当たる光量を増加して波長変換効率を向上させると共に、半導体発光装置から外部に放出される光の指向角を広
げることができ、特に白色の無機粒子を用いることで、反射材としても機能して、半導体発光装置の光を装置外部へ効率よく放出させることができる。また、これに加えて、硬化物中の結合剤として作用することでクラックの発生や収縮を防止したり、組成物の粘度を調整したり、あるいは硬化物の屈折率を調整することによって光取り出し効率を向上したりする、等の効果もある。
このような無機粒子の好ましい粒径は、10nm前後(超微粒子状シリカ等)から、数μm(破砕シリカ、球状シリカ等)程度までのものが用いられ、使用量を含めてその目的や効果に応じて選択することができる。
無機粒子の種類としては、シリカ、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化イットリウムなどの無機酸化物粒子や窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウムなどの窒化物や炭素化合物、ダイヤモンド粒子などが例示でき、その他の粒子を含めて目的に応じて選定すればよい。
(H−2)シリコーン系架橋促進剤
シリコーン系架橋促進剤としては、例えばT単位及び/又はQ単位のケイ素を主体とし、炭素数1〜3のアルコキシ基やシラノールを有するオルガノシランや分子量1000以下のオルガノポリシロキサンオリゴマーのようなものが挙げられる。これらの化合物は縮合反応活性が高く、(A)成分としてジオルガノシロキサン鎖を有する縮合硬化型オルガノポリシロキサンを使用する際に(A)成分の0.1〜1重量%程度の量を使用することで、前記オルガノポリシロキサン分子鎖末端にT(又はQ)単位ケイ素結合の反応性に富むアルコキシ基又は水酸基を導入できて、硬化反応速度を向上することができる。
(H−3)安定剤
硬化後の封止材はLEDからの強力な発熱や発光に曝されるため、その劣化防止のために熱安定剤や光安定剤等として酸化防止剤を使用することが好ましい。
これらの安定剤は封止材そのものの劣化を抑制する他に、封止材に接触している電極表面、パッケージの反射面、蛍光体粒子などが光や熱によって劣化することも抑制する作用がある。
このような安定剤としては、シリコーン樹脂の熱/光安定剤として通常用いられているものを特に制限なく用いることができ、その種類や量は、目的とする効果とその程度に応じて調整すればよい。
具体的には、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。なお、耐光試験において、着色が起こり難いことからイオウを含まない酸化防止剤が好ましい。
(H−3−1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いる場合、その種類・使用量は特に限定されず、従来公知のものから目的に応じて選択して使用することができる。
具体的には、大内新興化学工業株式会社製の、ノクラック200、ノクラックM−17、ノクラックSP、ノクラックSP−N、ノクラックNS−5、ノクラックNS−6、ノクラックNS−30、ノクラックNS−7、及びノクラックDAH(いずれも商品名、以下同じ)、株式会社ADEKA製の、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330、BASFジャパン株式会社製の、IRGANOX−245、IRGANOX−259、IRGANOX−1010、IRGANOX−1024、IRGANOX−1076、IRGANOX−
1098、IRGANOX−1330、IRGANOX−1425WL、住友化学株式会社製の、SumilizerGM、SumilizerGA−80等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
これらのヒンダードフェノール系酸化防止剤は単独で使用してもよく、その2種類以上を任意の比率・組み合わせで併用しても構わない。
なお、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の中では、熱や光に対する着色抑制効果に優れる点で、両側ヒンダードフェノール構造よりも、片側ヒンダードフェノール構造のヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、また加熱時の揮発減量を少なくできる点で、その分子量が600以上のものがより好ましい。なお分子量はGC−MS又はLC−MSを用いて測定することができる。
(H−3−2)ヒンダードアミン系酸化防止剤
ヒンダードアミン系酸化防止剤の種類・使用量についても、特に限定されず、従来公知のものから目的に応じて選択して用いることができる。
具体例としては、BASFジャパン株式会社製の、キマソーブ(CHIMASSORB)119、キマソーブ2020、キマソーブ944、チヌビン(TINUVIN)622、チヌビンB75、チヌビン783、チヌビン111、チヌビン791、チヌビン C353、チヌビン494、チヌビン492、チヌビン123、チヌビン144、チヌビン152、チヌビン292、チヌビン5100、チヌビン765、チヌビン770、チヌビンXT850、チヌビンXT855、チヌビン440、チヌビンNOR371、株式会社ADEKA製の、アデカスタブ(ADEKASTAB)LA−52、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−63、アデカスタブLA−63P、アデカスタブLA−68LD、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87、アデカスタブLA−501、アデカスタブLA−502XP、アデカスタブLA−503、アデカスタブLA−77、アデカスタブLX−335、アデカノール(ADEKANOL)UC−605、三共ライフテック株式会社製の、サノール(SANOL)LS770、サノールLS765、サノールLS292、サノールLS440、サノールLS744、サノールLS2626、サノールLS944、クラリアントジャパン株式会社製のホスタビン(HOSTAVIN)N20、ホスタビンN24、ホスタビンN30、ホスタビンN321、ホスタビンPR31、ホスタビン3050、ホスタビン3051、ホスタビン3052、ホスタビン3053、ホスタビン3055、ホスタビン3058、ホスタビン3063、ホスタビン3212、ホスタビンTB01、ホスタビンTB02、ナイロスタッブ(Nylostab)S−EED、株式会社エーピーアイ コーポレーション製のトミソーブ77、サンケミカル株式会社製のサイアソーブ(CYASORB)UV3346、サイアソーブUV3529、サイアソーブUV3853、住友化学株式会社製の、スミソーブ(SUMISORB)TM61等が例示できるが、これらに限定されるものではない。なお、これらのヒンダードアミン系酸化防止剤は、単独で用いても、2種以上を任意の比率・組み合わせで併用してもよい。
これらのヒンダードアミン系酸化防止剤の中でも、硬化性組成物の貯蔵安定性や得られる硬化物の耐候性が優れる点で、アデカスタブLA−63、アデカスタブLA−63P、チヌビン152、チヌビン123、サノールLS765、ホスタビンN24、ホスタビンN30、及びホスタビンN3050が好ましい。
(H−3−3)リン系酸化防止剤
リン系酸化防止剤としては、その種類に特に制限はなく任意のものが使用できるが、活性水素を含むリン酸およびリン酸エステルは組成物の貯蔵安定性、硬化物の耐熱性に影響を与える可能性があるので、リン酸およびリン酸エステルを分子内に含まない、アルキルホスファイト、アリールホスファイト、アルキルアリールホスファイト化合物などが好ましい。
具体例としては、株式会社ADEKA製の、アデカスタブ1178、アデカスタブ329K、アデカスタブ135A、アデカスタブC、アデカスタブTPP、アデカスタブ3010、アデカスタブ2112、アデカスタブ522A、アデカスタブ260、アデカスタブHP−10、アデカスタブ1500、アデカスタブPEP−24−G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブPEP−4C、アデカスタPEP−8、城北化学工業株式会社製の、JPM−308、JPM−313、JPM−333E、JPP−100、JPP−613M、JPP−31、堺化学工業株式会社製のCHELEX−M、BASFジャパン株式会社製のIRGAFOS38等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
これらのリン系酸化防止剤の中でも、加水分解に対して安定で耐熱性が良好である点で、リン原子の置換基の2以上がアリールオキシ基であることが好ましい。具体的には、アデカスタブ1178、アデカスタブ329K、アデカスタブ135A、アデカスタブC、アデカスタブTPP、アデカスタブ2112、アデカスタブHP−10、JPM−313、JPP−100、CHELEX−M、IRGAFOS38が好ましい。
リン系酸化防止剤は単独で使用してもよく、その2種以上を任意の比率・組み合わせで併用しても構わない。
(H−3−4)安定剤の用法・用量
本発明において、酸化防止剤に代表される安定剤の使用量は、組成物の各成分、即ち(A)成分〜(G)成分の合計量を100重量部とした時に、これに対して、0.01重量部以上であることが好ましく、0.02重量部以上であることがより好ましく、0.03重量部以上であることが最も好ましく、また、一方で、5重量部以下であることが好ましく、3重量部以下であることがより好ましく、1重量部以下であることが最も好ましい。
使用量が多いと、着色抑制等の酸化防止剤添加による効果が十分に発揮されやすく、一方、少ない方が安定剤による着色が起こり難い。
本発明において使用する安定剤は、そのいずれかを単独で用いてもよく、また2種以上を任意の比率・組み合わせで併用してもよい。
特にリン系酸化防止剤を上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤及びヒンダードアミン系酸化防止剤の少なくとも1種と併用することで、熱や光に対して極めて優れた着色抑制効果を発揮することができる。この時の、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及び/又はヒンダードアミン系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤の使用比率は、特に制限されないが、より効果的に熱や光に対する着色抑制効果を向上させるという点から、「(ヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系酸化防止剤の合計量)/(リン系酸化防止剤量)」の比が0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることが更に好ましく、また、一方で、10以下であることが好ましく、3以下であることが更に好ましい。
(H−4)その他の添加剤
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて発光素子を封止する際に、粘度調整用にミネラルスピリット等の、硬化反応に悪影響がなく、かつ硬化後には封止材から揮散するような液状媒体を用いることにより、その粘度が過度に高くなり、封止が不十分になったり不均一になったりことを防ぐことができる。
2.硬化反応と硬化物
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化反応とそれによって得られる硬化物について説明する。
(1)硬化反応
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は一液型の場合はそのまま、二液型の場
合は両者を混合した上で、一般には加熱したり、エネルギー線を照射したりすることにより架橋反応を生起させて硬化させることができる。
具体的な条件としては、空気中、温度150℃〜200℃程度、時間は6時間以内で硬化するものが好ましい。より好ましい硬化時間は0.2時間以上で、0.5時間以上が更に好ましく、また、一方で、より好ましい硬化時間は4時間以内で、3時間以内が更に好ましい。硬化時間が短いと、フィラーを含む組成物の場合に、フィラーが沈降し難く、一方、硬化時間が長いと、ハンドリングしやすく、また所望のレベリング状態になる前に硬化してしまうことによる硬化物表面のムラが生じ難い。
硬化速度を高くするためには、温度を高くする/適切な触媒を選択する/分岐の多いポリシロキサン原料を使用する/分子量の高いポリシロキサン原料を使用する/硬化時に発生する水素や水分、アルコールなど脱離成分の除去を積極的に行う、などの方法がある。このような硬化条件で硬化させることで、半導体発光装置の構成要素である半導体発光素子や蛍光体の熱による劣化を防止しつつ、かつ組成物中の各種固形成分が分離・沈降することなく、均一な硬化物を得ることができる。
なお本発明において、「硬化」とは、流動性を示す状態から流動性を示さない状態に変化することをいい、例えば、対象物を水平より45度傾けた状態で30分間静置して流動性があるかないか、によって未硬化状態、硬化状態を判断することができる。
フィラーを多量に添加した系では、チキソ性の発現により対象物を水平より45度傾けた状態で流動性が無くとも硬化していないケースがあり得るが、そのような場合には、対象物の硬度をデュロメータタイプAにて測定し、硬度測定値が少なくとも5以上であるか否かで未硬化状態、硬化状態を判断することができる。
(2)硬化物の性質
(2−1)表面粗度
本発明の半導体発光装置封止材用硬化性オルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物は表面平均粗さRが0.05μm以上、1μm以下の範囲であることが好ましい。このような表面平均粗さとすることにより、半導体発光装置からの光を取り出すための表面積が完全な平滑面(表面粗度(Rz)=0)の場合に比べて大きくなるため、発光効率がより高いものが得られる。
上記硬化物の表面平均粗さを上記範囲とするためには、本発明のような組成物の構成成分及び組成比とすることが重要であって、これにより、硬化性組成物中における球状シリコーン樹脂粒子の沈降が抑制され安定分散するために硬化物表面に安定して多数の凸部を形成することが可能となり、表面粗度が上記好適範囲になるものと考えられる。
なお、上記のような表面平均粗さを得るためには、硬化反応時に配合成分が沈降したり分離したりしないようにすることも重要であり、そのためには、上記2.(1)のような硬化反応条件を選定することが、より効果的にこのような結果を得るための方法であると考えられる。
(2−2)屈折率
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物の屈折率は、通常1.55以下、好ましくは、1.43以下、より好ましくは1.429以下であり、通常1.35以上、好ましくは1.40以上である(20℃、波長589nm)。
光学部材用の発光デバイスの屈折率は通常約2.5以下であるが、本発明においては樹脂の光安定性の観点から比較的屈折率の低いものを選択することが好ましい。なお、本発明の半導体発光デバイス用部材の用途やデバイス内での適用部位により屈折率が高い封止材が必要な場合は、フェニル基の導入や高屈折率無機酸化物ナノゾルの使用等などにより、例えば屈折率を1.46〜1.57程度に高くすることも可能である。
屈折率は封止材の劣化と光取り出し効率とを考慮して調整すればよい。
なお、屈折率はアッベ屈折計等により測定することができるが、フィラーを含み不透明である場合には、固体1H−NMR、固体Si−NMR、元素分析などを組み合わせるこ
とによりオルガノポリシロキサンケイ素に直接結合している有機基の含有量と組成比(例えばフェニル基とメチル基の比)を測定することでその屈折率を推定することができる。例えばケイ素に結合している有機基がメチル基とフェニル基であるポリジオルガノシロキサンでは、ケイ素に結合した全ての有機基におけるフェニル基含有量が0モル%の時の屈折率は約1.403、50モル%の時の屈折率は約1.545であり、その間の組成における屈折率はフェニル基含有率に応じて直線関係が成り立つ。
(2−3)透過率
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物は多量の球状シリコーン樹脂粒子を含有しているため、通常、目視では白濁しているように見えるが、平行線透過率(垂直入射の時には直線透過率、垂直透過率と呼ばれることもある)と拡散透過率の合計である全光線透過率が、公知の透明樹脂と比較しても高いことが大きな特徴である。これは本発明の組成物を硬化して得られる硬化物が光の透過に際して後方散乱が非常に少ない光学的性質を有していることを示している。この性質により、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物で封止した発光装置は従来の透明樹脂を用いて封止した発光装置と比べて高い輝度となる。
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物は膜厚0.5〜1.0mmの範囲において、膜厚一定の単独硬化物膜の波長650nmにおける全光線透過率が、通常90%以上、好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上である。全光線透過率は光検出器部分に積分球を有するヘイズメーターを用いて測定することができる。
なお、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から全てのフィラー成分を除いた透明組成物の硬化物の可視光域の透過率(垂直透過率)は、単独硬化物膜を直接光路に置いて測定する場合、膜厚1mmとした時の400nm以上800nm以下の可視光の全波長範囲において、通常80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
同様に測定したUV〜青色領域における透過率(垂直透過率)は膜厚1mmとした時の350nm以上400nm以下の全波長範囲において、通常80%以上、好ましくは85%以上、更には90%以上である。
このような垂直透過率は紫外―可視分光光度計を用いて測定することができる。
(2−4)耐熱性、耐光性
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物は、耐熱性及び耐光性が良好である。例えば、耐熱性については、200℃×500時間放置の前後において、通常、目視では、着色・クラック発生等はほとんど見られない。
また、耐光性については、例えば松下電工マシンアンドビジョン株式会社製 スポット照射型紫外線硬化装置アイキュアANUP5204(200W Hg−Xeランプ)に4分岐ライトガイドファイバーユニットを取り付け、熱線カットフィルター及びUVカットフィルター(350nm以下カット)を通して、硬化物に対し30時間、UVスポット光を照射した後でも、目視では、茶色への変色やクラックの発生は見られない。
(2−5)硬度
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物は、上述のような各成分を選定することにより、エラストマー状を呈する部材とすることができる。
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物のエラストマー性に
より、熱膨張係数の異なる部材を複数使用することが多い半導体発光装置等において、これらの部材の伸縮による応力を緩和することができ、半導体発光装置の使用中に剥離、クラック、断線などを起こしにくく、耐リフロー性及び耐温度サイクル性に優れる半導体デバイスを提供することができる。
この硬化物の好ましいデュロメータタイプAによる硬度(ショアA)は、通常25以上、好ましくは30以上、より好ましくは50以上であり、また、通常90以下、好ましくは80以下、より好ましくは70以下である。上記範囲の硬度とすることで、得られる光学部材が、クラックが発生しにくく、耐リフロー性及び耐温度サイクル性に優れるという利点を有することとなる。
なお、上記の硬度(ショアA)は、JIS K6253に記載の方法により、例えば古里精機製作所製のA型ゴム硬度計等を用いて測定することができる。
(2−6)その他
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物は、上記に加えて以下の特性を有することが好ましい。
(a)官能基
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物は、半導体発光装置用の容器(後述するカップ等。以下適宜「半導体発光装置容器」という)の材料である、ポリフタルアミドなどの樹脂、セラミック又は金属の表面に存在する、水酸基、メタロキサン結合中の酸素などと水素結合可能な官能基を有しているのが好ましい。
このような容器構成材料の表面には、通常水酸基が存在するので、硬化物が水酸基と水素結合可能な官能基を有していると密着性が改良される。このような水素結合性の官能基としては、例えば、シラノール基、アルコキシ基、アミノ基、イミノ基、メタクリル基、アクリル基、チオール基、エポキシ基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホン酸基、カルビノール基等が挙げられる。中でも耐熱性の観点からシラノール基、アルコキシ基、カルビノール基が好ましい。なお、前記官能基は1種でもよく2種以上でもよい。
硬化物が水酸基に対して水素結合が可能な官能基を有しているか否かは、固体Si−NMR、固体1H−NMR、赤外線吸収スペクトル(IR)、ラマンスペクトルなどの分光
学的手法により分析することができる。
(b)触媒残留量
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物は、通常、硬化触媒(縮合触媒)を用いて製造されるため、これらの触媒が例えば、金属元素換算で、0.001重量%〜0.3重量%程度含まれていることが多い。縮合触媒は加水分解触媒でもあり、含有量が多いと、高温下等の条件によっては、硬化物の重量減少が著しくなることがあるため、含有量の上限値としては0.1重量%程度が好ましい。硬化触媒の含有量はICP分析により測定できる。
(c)低沸点成分
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物は、水、溶媒および3員環から5員環の環状シロキサン等の低沸点成分を含有することがあるが、これらは硬化反応時の気泡生成、使用中のブリードアウトなどの原因となるため、その量は少ないほど好ましい。
低沸点成分の含有量は、TG−mass(熱分解MSクロマトグラフ法)により、40℃〜210℃の範囲の加熱発生ガスのクロマトグラム積分面積として測定することができ
る。
このような低沸点成分量を低く抑える方法としては、例えば、硬化反応を十分に行なうことや、使用する触媒の選択、予め低沸点成分を減圧除去した原材料を使用すること等が挙げられる。
3.半導体発光装置
本発明の半導体発光装置は、上記の特定の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて半導体発光素子と蛍光体とが封止されている構造となっていれば、その他の点は特に限定されない。
以下その具体的な実施形態について説明する。なお、本願発明の効果を阻害しない限り、半導体発光素子及び蛍光体の種類も特に限定されるものではない。
(1)蛍光体が封止材中に分散されている形式(図1)
図1に示す半導体発光装置1Aは、LED等の発光素子2が、配線(リード)17が設けられた絶縁基板16上に半導体発光素子2が表面実装されている。この半導体発光素子2の発光層部(図示せず)のp型半導体層(図示せず)とn型半導体層(図示せず)のそれぞれが導電ワイヤ15を介して配線17に電気的に接続されている。なお、導電ワイヤ15は半導体発光素子から放射される光を妨げないように、断面積の小さいものを用いるのがよい。
半導体発光素子2としては、図1の下面側にn型半導体層、上面側にp型半導体層が形成されて、p型半導体層側から光出力を取り出す形となる。
絶縁基板16上には半導体発光素子2を囲む枠材18が設けられている。この枠材18と絶縁基板16とは、同じ材料を用いて一体的にパッケージとして形成されていてもよい。
枠材18の内側には半導体発光素子を封止・保護する封止部19が形成されている。この封止部19は本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を硬化させて形成したものであり、その中に所望の蛍光体が分散されて含有されている。
(2)蛍光体が半導体発光素子と離れて存在する形式(図2)
図2に本願発明の別の態様となる半導体発光装置1Bを例示する。(なお、以下の説明では上記図1と同じ構成要素には同じ符号(番号)を付して説明を省略する。)
図2に示す通り、この半導体発光装置には封止部19の上面にレンズ状又はシート状の光学部材33が載置されている。この光学部材33は、外界の酸素や水分から半導体発光装置1Bを遮断するとともに、ここに蛍光体を含有させることにより半導体発光素子2から放射された光の波長を可視光に変換する機能を有している。
この形式では蛍光体層と半導体発光素子との間が離れている構造となり、いわゆる「リモートフォスファー」の形態となる。
このような構造を採用することにより、水、酸素等の蛍光体や封止材中の樹脂を劣化させる物質の侵入を防止しつつ、蛍光体が封止材に直接接触していないことで、蛍光体の発熱や分解・劣化による不純物の溶出等によって封止部が劣化したり割れたりすることを防ぐことができる。
リモートフォスファーの蛍光体層を含む光学部材33は、例えば蛍光体粉末とバインダー樹脂に、必要に応じて有機溶剤を添加・混練してペースト化し、これをシート状に成形したり、透過性基板上に塗布して乾燥・硬化したりして製造できる。バインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、あるいはポリカーボネート樹脂等の透明性が高い樹脂を用いることが好ましい。
また、光学部材33としては、ガラスをマトリックスとして蛍光体を分散したガラス封止体や、バインダー樹脂中に分散された蛍光体を板状のガラスに挟んで封止したガラス封止体を用いることもできる。
なお、蛍光体層を含む光学部材33と封止部19の間に、半導体発光素子が発する波長の光は透過し、蛍光体が発する光は反射するようなバンドパスフィルター(図示せず)を設けると、蛍光体が発した光が再度封止部に入射することを防ぐことができて、発光装置の発光効率をより高くすることができる。
またこのようなリモートフォスファー構造の発光装置としては、表面実装型、砲弾型、及びパッケージ反射面に蛍光体を塗布した反射型のような配置を採用することも可能である。
(3)本発明の発光装置の光学部材への応用
本発明の発光装置は、特定の半導体発光装置封止材用硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて封止することにより、蛍光体や封止材の劣化が起きにくく、高い発光強度を安定して長期間保つことができる。 このような本発明の発光装置は、単独で又は複数個を組み合わせて、照明ランプ、液晶パネル等のバックライト、超薄型照明等の照明、画像表示装置等が有する光学部材として使用することができる。
以下実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
1.オルガノポリシロキサン
(1)オルガノポリシロキサン((A)成分)
表1、表2に示す半導体発光装置封止用オルガノポリシロキサン組成物を製造するため下記のように原料となるオルガノポリシロキサンを調製した。
(1−1)オルガノポリシロキサン(A−1)
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製両末端シラノール基型のジメチルシリコーンオイルXC96−723を165g、信越化学工業(株)製メチルアルコキシシランオリゴマーKC−89Sを4.95g、及び、触媒として松本ファインケミカル(株)製ジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を0.425gを、攪拌翼、分留管、ジムロートコンデンサとリービッヒコンデンサとを切り替え可能に取り付けた200ml五つ口フラスコ中に装入し、室温で15分間触媒粒子が溶解するまで攪拌した。その後、反応液を120℃まで昇温して、ジムロートコンデンサを用いて全還流しながら30分間攪拌した。
留出先をリービッヒコンデンサ側に切り替えて、窒素を空間速度(SV)20で液中に吹き込み、温度を120℃に保って、10時間還流下で撹拌を行い、生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素化合物を窒素に同伴させて留去して、粘度185mPa・sの反応液を得た。
なお、上記「SV」は「Space Velocity」の略称であり、単位時間・単位体積当たりの気体吹き込み体積を表すものである。例えば「SV20」は、1時間に反応液の20倍の体積の気体(本例では窒素)を吹き込むことになる。
窒素の吹き込みを停止し反応液を一旦室温まで冷却した後、ナス型フラスコに反応液を移し、ロータリーエバポレーターでオイルバス上120℃、1kPaの減圧下で微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素化合物成分を除去し、粘度240mPa・s、無溶剤のプレA−1液を得た。
上記プレA−1液2000重量部を攪拌混合槽に仕込み、活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製精製白鷺)133.8重量部を添加し、室温にて1時間攪拌を行なった後、N
o.5Aろ紙にて加圧ろ過した。得られたろ液に再度活性炭(同上)133.8重量部を添加・混合した後No.5Aろ紙でろ過し、続いて目開き0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製ろ布にて加圧ろ過を行って、液状のオルガノポリシロキサン(A−1)を得た。
得られたオルガノポリシロキサン(A−1)の粘度は273mPa・sであり、また一分子中に2個以上の架橋反応可能な官能基であるシラノール基とメトキシ基を有していた。
(1−2)オルガノポリシロキサン(A−2)
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製両末端シラノール基型のジメチルシリコーンオイルXC96−723を2630g、信越化学社製メチルトリメトキシシランを70.22g、及び、触媒として松本ファインケミカル社製ジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末1.89gを、攪拌翼、分留管、ジムロートコンデンサ、リービッヒコンデンサ、温度計を取り付けた3リットル五つ口フラスコ中に装入し、室温で15分間触媒粒子が溶解するまで攪拌した。その後、反応液を100℃まで昇温して、ジムロートコンデンサを用いて全還流しながら30分間470rpmで攪拌し、反応を行った。
留出先をリービッヒコンデンサ側に切り替えて、窒素を空間速度(SV)20で液中に吹き込み、温度を100℃として1時間、470rpmにて撹拌を行った後、130℃に昇温して更に5時間還流下で撹拌を行って反応を継続し、粘度120mPa・sの反応液を得た。
窒素の吹き込みを停止し反応液を一旦室温まで冷却した後、容量1リットルのナス型フラスコ4個に反応液を分割し、それぞれロータリーエバポレーターでオイルバス上120℃、1kPaの減圧下で微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素化合物成分を除去した。続いて、目開き3.0μmのPTFEろ布にて加圧ろ過を実施して粘度215mPa・sのオルガノポリシロキサン(A−2)を得た。
このオルガノポリシロキサン(A−2)は一分子中に2個以上の架橋反応可能な官能基であるシラノール基とメトキシ基を有していた。
2.オルガノポリシロキサン組成物の原料
上記1.で調製した(A)成分に加えて、以下の原料を用いて、表1、2に示す配合にて、本発明の実施例/比較例となるオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
(1)オルガノポリシロキサン組成物前駆体A
(1−1)で得られたオルガノポリシロキサン(A−1)100重量部((A)成分)に、チキソ剤として、トリメチルシリル基で表面処理された疎水性フュームドシリカ(BET比表面積:140±25m/g、一次粒子平均径:約12nm)((C)成分)17重量部を加え、自転公転式ミキサーを用いて70℃で撹拌・混合しペースト状とした。
得られた混合物を一旦室温まで冷却した後、硬化促進剤として3官能ケイ素のみからなり、かつケイ素に結合した有機基がメチル基とメトキシ基であるオルガノシロキサンオリゴマー(メトキシ基含有量45wt%、重量平均分子量500)(市販品)0.2重量部を追加混合し、(A)成分、(C)成分を含み、硬化促進剤を含有するオルガノポリシロキサン組成物前駆体Aを調液した。
(2)オルガノポリシロキサン組成物前駆体B
市販の2液型フェニルメチル系付加硬化型シリコーン樹脂の主剤、硬化剤を混合し、オルガノポリシロキサン組成物前駆体B(混合液の屈折率1.54、粘度7100mPa・s、架橋可能な反応基=ヒドロシリル基及びビニルシリル基、白金含有量3ppm)を調製した。
この組成物は一分子中に2個以上のビニルシリル基を含有するメチルフェニルポリシロキサンと、一分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するメチルフェニルポリシロキサンを主成分とするものである。
(3)オルガノポリシロキサン組成物前駆体C
市販の2液型メチル系付加硬化型シリコーン樹脂の主剤、硬化剤を混合し、オルガノポリシロキサン組成物前駆体C(混合液の屈折率1.41、粘度4300mPa・s、架橋可能な反応基=ヒドロシリル基及びビニルシリル基、白金含有量7.5ppm)を調製した。
この組成物は一分子中に2個以上のビニルシリル基を含有するメチルポリシロキサンと、一分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するメチルポリシロキサンを主成分とするものである。
(4)その他の構成成分
(4−1)(B)球状シリコーン樹脂粒子
(B)成分の球状シリコーン樹脂粒子としては、平均粒子径d50(メジアン径):2.0μm、屈折率1.42、真比重1.32の真球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子を用いた。
(4−2)(C)フュームドシリカ
(C)成分のフュームドシリカとしては、上述の通りトリメチルシリル基で表面処理された疎水性フュームドシリカ(BET比表面積:140±25m/g、一次粒子の平均径:約12nm)を用いた。
(4−3)(D)硬化触媒
(D)成分の硬化触媒としては下記の触媒を用いた。
1)2−エチルヘキサン酸ジルコニル(日本化学産業(株)製):実施例1−1、比較例1−4、実施例2−1〜2−5、比較例2−1、2−2
2)ジルコニウムテトラアセチルアセトナート(松本ファインケミカル社製):比較例1−1
3)白金化合物(構造不詳、市販付加硬化型シリコーン樹脂に含有される均一系触媒):比較例1−2、1−3
(4−4)(E)シランカップリング剤
(E)シランカップリング剤としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)を使用した。
(4−5)(F)MQレジン
(F)成分のMQレジンとしては下記の方法で製造したものを使用した。
M単位(RSiO1/2)となるヘキサメチルジシロキサン(170g)とQ単位(SiO4/2)となる三菱化学株式会社製メチルシリケートMS−51(476g)とを3L四つ口フラスコに仕込んだ後、撹拌を開始し、濃硫酸3.9gを添加して50℃に昇温し、そのまま2時間反応させた。所定時間経過後、50℃に保ったままで、水129gを加え、更に3時間反応させた。その後、メトキシトリメチルシラン107gとイソプロパノール327gの混合物を500ml滴下ロートから、反応物温度が50℃を維持するようにして加えた後、1時間反応させた。
その後、イソプロパノール196gを加えた上で、濃度8モル%の水酸化カリウム水溶液を25g加えて70℃に昇温し、3時間反応させた。その後、室温まで冷却し、18%クエン酸水溶液を500g加え、更にヘキサンを614g加えて希釈・抽出して、水層を
除去した。有機層へ水をそれぞれ700g加えて洗浄する工程を数回行った後、エバポレーター及び真空乾燥機で乾燥して、白色粉末状のMQレジン327gを得た。
得られたMQレジンのGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、11443であった。また、MQレジンのM単位/Q単位の比は、0.6モル/モルであった。MQレジン中にはシラノール基とアルコキシ基が合計4.1重量%であった。
(4−6)(G)末端カルビノール変性シリコーンオイル
(G)成分として下記の構造を有する市販末端カルビノール変性シリコーンオイルを使用した。該市販末端カルビノール変性シリコーンオイルは、分子量が4666で、水酸基価が12mgKOH/gであった。
3.点灯試験
(1)実施例1−1、比較例1−1〜1−4(従来封止材との比較)
(1−1)封止用オルガノポリシロキサン組成物の製造
上記で準備した各原料成分を後述の下記表1に示す組成(単位:質量部)で配合し、真空撹拌機を用いて均一に混合して、実施例及び比較例で使用する封止用オルガノポリシロキサン組成物を製造した。
(1−2)半導体発光装置(LED)の作製
本実施例で作製し評価に用いた半導体発光装置の具体例を図3として示す。
(1−2−1)発光装置の組み立て
銀メッキ付銅リードフレーム25a、25bとポリフタルアミド樹脂を一体成形した外寸3.5×2.8mmの表面実装型パッケージ26を用い、次のようにして図3の構造を有する発光装置を組み立てた。
サファイヤ絶縁基板16上に窒化ガリウム系発光層を設けた350μm角の半導体発光素子2(発光波長450nm)を、パッケージの凹部27に露出しているインナーリード上の所定位置にシリコーンダイボンド材(信越化学工業(株)製 KER−3000−M2)を介して設置した後、該シリコーンダイボンド材を100℃で1時間、さらに150℃で2時間硬化させた。こうして半導体発光素子をパッケージ上に搭載した後、金線(導電ワイヤ)15で該パッケージのリード電極と半導体発光素子を接続し、これを以下手順で、実施例1−1又は比較例1−1、1−2、1−3、1−4のオルガノポリシロキサン組成物を用いて封止することにより発光装置を組み立てた。
(1−2−2)半導体発光素子の封止
前述の発光装置のパッケージ凹部27へ、開口部上縁と同じ高さになるように上記(1−1)で調製した実施例及び比較例の封止用オルガノポリシロキサン組成物をそれぞれ滴下した後、恒温容器中で下記の条件で加熱硬化を行って半導体発光素子を封止した。
<加熱硬化条件>
実施例1−1:100℃×1時間+150℃×1時間+170℃×2時間
比較例1−1:90℃×2時間+110℃×1時間+150℃×3時間
比較例1−2:100℃×1時間+150℃×2時間
比較例1−3:100℃×1時間+150℃×5時間
比較例1−4:90℃×2時間+110℃×1時間+150℃×3時間
(1−3)輝度の測定
上記(1−2)にて作製した半導体発光装置を点灯電源にセットし、60mAの駆動電流を通電して点灯30秒後の輝度を測定した。結果を表1に示す。
なお、輝度の測定には、オーシャンオプティクス社製分光器「USB2000」(積算波長範囲:350−800nm、受光方式:100mmφの積分球)を用い、分光器本体を25℃恒温槽内に保持して測定した。
測定時はLED装置の温度上昇を防ぐために、熱伝導性絶縁シートを介し3mm厚のアルミ板にて放熱を行なった。
(1−4)結果の評価
上記の測定結果より、実施例1−1で示す本願封止用オルガノポリシロキサン組成物を用いて封止した発光装置の輝度は、(B)球状シリコーン樹脂粒子及び(C)フュームドシリカ粒子を使用しない従来封止材で封止した比較例1−1〜1−4の発光装置の輝度より大きく向上した。
一般に、高屈折率のフェニル系シリコーン樹脂封止材は発光素子との屈折率差が小さく光取り出し効率が優れているため、低屈折率のメチル系シリコーン樹脂より明るい発光装置を得られるとされている。これに対し実施例1−1の本願封止材は低屈折率のメチルシリコーン系であるにかかわらず比較例1−2のフェニル系封止材を用いた発光装置より輝度が高くなっている。
この理由は定かではないが、以下のように推測される。
青色領域の波長においてGaNの屈折率が約2.4、サファイア基板の屈折率が約1.8と、GaNとサファイア基板の屈折率差が大きいため、発光層にて発光した光は一部が直接発光層上面より放出されるが、残りの多くは全反射の制限からGaN層に閉じ込められてGaN層中を側方に向かって伝搬し、発光層側面から放出される。すなわちサファイア基板上にGaN層が形成された発光素子の発光分布は側面発光成分が多くなる。
発光素子側面から放出された光は、パッケージ反射面を構成する樹脂や銀メッキ電極表面にて反射され上方に向きを変え、封止材表面から外部に放出される。比較例1−1〜1−4の従来タイプの透明封止材を用いた発光装置では反射の際に光の一部が銀メッキ表面やパッケージ樹脂表面に吸収され減衰する。また封止材と空気の間には屈折率差があるので、上方に向かった光の一部は封止材と空気の界面にて全反射し、発光装置外に取り出すことができない。
一方、本願実施例1−1の発光装置では、封止材発光素子側面から放出された光は封止材用オルガノポリシロキサンと屈折率が近い球状シリコーン樹脂粒子によりゆるやかに屈折され、その多くはパッケージ反射面に到達する前に上方に向きを変え封止材表面に到達する。この時、硬化した封止材表面には球状シリコーン樹脂粒子に由来する多数の凸部があるため、封止材表面に達した光は全反射により封止材内部に戻ることなく有効に発光装置外に取り出される。
中には、発光素子側方から出てパッケージ反射面に向かう光成分もあるが、本願の封止材組成物は光を隠蔽しにくいためパッケージで反射された光が拡散粒子により再び反射面
に戻る確率が低く、大半が上方に向かって発光装置より取り出されることになる。また、本願封止材は後方散乱が少ないため発光素子から出た光が発光素子方向に戻りにくく、発光素子による再吸収の確率も低い。
これらの結果、本願封止材を用いた発光装置ではパッケージ樹脂や電極による光吸収抑制と封止材表面における全反射抑制を同時に実現し、光取り出し効率の高い高輝度の発光装置を得ることができると考えられる。
(2)実施例2−2〜2−5、比較例2−1〜2−3(添加成分の効果)
(2−1)封止用オルガノポリシロキサン組成物の製造
上記3.(1)と同様にして、各原料成分を下記表2に示す組成(単位:質量部)で配合し、真空撹拌機を用いて均一に混合して、実施例及び比較例で使用する封止用オルガノポリシロキサン組成物を製造した。
(2−1−1)青色LED封止用オルガノポリシロキサン組成物
表2のLED光出力試験(青LED)の結果においては、上記(2−1)で製造した実施例及び比較例の各封止用オルガノポリシロキサン組成物をそのまま用いて封止を行い、点灯試験を行った。
(2−1−2)白色LED封止用オルガノポリシロキサン組成物
表2のLED光出力試験(白色LED)の結果においては、(2−1)で製造した実施例及び比較例の各封止用オルガノポリシロキサン組成物に蛍光体を添加した組成物を用いて封止を行い、点灯試験を行った。具体的には、(2−1)で製造した実施例及び比較例の各封止用オルガノポリシロキサン組成物84重量部に赤色蛍光体(SCASN)2.86重量部、緑色蛍光体(β−サイアロン)13.14重量部をそれぞれ添加し、真空撹拌機を用いて均一に混合して、実施例及び比較例で使用する蛍光体入り封止用オルガノポリシロキサン組成物を製造し、これ用いて封止した。
(2−1−3)組成物の物性
下記(2−2)におけるLED作製時に、各組成物についてパッケージ中への注加(ポッティング)の際の糸引き及び注加後のレベリング性を目視で評価した。結果を表2に併せて示す。
なお、「ポッティング時の糸引き」の評価基準は、「○」がポッティング後10秒以内に滴と注加治具との間の糸引きが消滅し、使用上問題がないことを、「×」はポッティング時の糸引きが著しく、10秒経過しても糸が切れないため、使用上困難を伴うことを示す。
また、[レベリング性」では、「○」がポッティング終了後速やかに封止材表面が平坦になることを、一方「×」は、ポッティング終了後も長時間、角状の凸部が封止材表面に残ることを、それぞれ示す。
(2−2)半導体発光装置(LED)の作製
(2−2−1)発光装置の組み立て
パッケージとして外寸が「4.0×1.4mm」のパッケージを使用し、半導体発光素子の大きさが「1000×500μm角」のものを用いたこと以外は、前記3.(1)と同様にして実施例2−2〜2−5及び比較例2−1〜2−3に用いる発光装置を組み立てた。
(2−2−2)半導体発光素子の封止
上記で組み立てた発光装置のパッケージ凹部へ、開口部上縁と同じ高さになるように上記(2−1)で調製した実施例及び比較例の封止材をそれぞれ滴下した後、恒温容器中で100℃×1時間+150℃×1時間+170℃×2時間の加熱硬化を行い、半導体発光素子を封止した。
(2−3)輝度の測定
上記(2−2)にて作製した半導体発光装置を点灯電源にセットし、120mAの駆動電流を通電して点灯30秒後の輝度の測定を行った。結果を表2に示す。
なお、輝度の測定には、オーシャンオプティクス社製分光器「USB2000」(積算波長範囲:350−800nm、受光方式:100mmφの積分球)を用い、分光器本体を25℃恒温槽内に保持して測定した。
測定時はLED装置の温度上昇を防ぐために、熱伝導性絶縁シートを介し3mm厚のアルミ板にて放熱を行なった。
(2−4)結果の評価
(2−4−1)青色LED(2−1−1の組成物で透明封止)
上記「3.(1)従来封止材との比較」と同様、球状シリコーン樹脂粒子を含む実施例2−2〜2−5の発光装置の輝度は、これを含まない比較例2−1、2−2より向上した。
また、少量添加成分である「(E)エポキシ基含有シランカップリング剤、(F)MQレジン、及び(G)末端カルビノール変性シリコーンオイル」は、いずれも僅かではあるが輝度向上に寄与している。
(2−4−2)白色LED(2−1−2の蛍光体入り組成物で封止)
赤色、緑色蛍光体を含む白色LED用組成物においても上記(2−4−1)同様、球状シリコーン樹脂粒子を用いた実施例2−2〜2−5では、発光装置の輝度がこれを用いない比較例2−1、2−2より向上した。また、少量添加成分である
(E)エポキシ基含有シランカップリング剤
(F)MQレジン
(G)末端カルビノール変性シリコーンオイル
も、いずれも僅かではあるが輝度向上に寄与している。
上述の通り、青色LED、白色LEDいずれの発光装置においても球状シリコーン樹脂粒子添加品が無添加品より輝度が向上した。この理由は前記「従来封止材との比較」におけるのと同様、適度な光散乱効果及び封止材の硬化物表面の凸部形成に由来するものと考えられる。
なお、前記(E)成分〜(G)成分の少量添加成分が輝度向上に寄与する理由は定かではないが、これらはいずれも(B)球状シリコーン樹脂粒子の安定分散に寄与しているものと考えられる
例えば(E)エポキシ基含有シランカップリング剤や(F)MQレジンは含有するアルコキシ基、シラノール基、エポキシ基等の極性基を介して(C)フュームドシリカと相互作用し組成物のチキソ性を高めたり、球状シリコーン樹脂粒子表面と反応して主剤である(A)オルガノポリシロキサンとの親和性や接着性を向上させたりするものと考えられる。
また(G)末端カルビノール変性シリコーンオイルは、顔料などの無機フィラーの分散剤として知られており、これが球状シリコーン樹脂粒子と(A)オルガノポリシロキサンとの親和性を向上して分散性を高めるものと考えられる。
4.点灯試験以外の評価
(1)硬化物の表面状態((B)球状シリコーン樹脂粒子の効果)
実施例1−1において、球状シリコーン樹脂粒子として、「平均粒子径d50(メジアン径):2.0μm、屈折率1.42、真比重1.32の真球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子」60重量部に代えて、この粒子を30重量部と、「平均粒子径d50(メジアン径):6.0μm、屈折率1.42、真比重1.32の真球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子」を30重量部混合したものを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にしてオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
この組成物を傷や汚れの無い5cm径のポリテトラフルオロエチレン製シャーレに流し入れ、恒温器にて100℃×1時間+150℃×1時間+170℃×2時間の加熱硬化を行い、単独硬化膜を作製した。
この単独硬化膜のシャーレに接していない側の表面を原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope; AFM)にて観察したところ、平坦面上に球状シリコーン樹脂粒子に対応すると思われる、なだらかで同一形状の凸部が多数観測され、100μm×100μmの観察視野における凸部の個数は516個であった。
観測長さ20μmにおいて、凸部の平坦面からの最大高さを示すRyは0.23μm、平坦面からの平均的な高さ(表面平均粗さR)は0.22μmであった。
また、凸部においても球状シリコーン樹脂粒子は硬化物表面から直接露出せずオルガノポリシロキサン樹脂被膜に覆われていた。これより、球状シリコーン樹脂粒子に対する本発明の組成物の濡れ性は良好であり、球状シリコーン樹脂粒子の表面でハジキが生じたり、剥離が起きたりはしていないものと推測される。
参考のため球状シリコーン樹脂粒子及び無機フィラーを添加していない組成物に基づく硬化物の表面を同様に観察したところ、100μm×100μmの観察視野の全面が平坦であった。
本発明の組成物では、球状シリコーン樹脂粒子に基づく多数の凸部が封止材硬化物表面において良好な光取り出し効果を発現し、半導体発光装置の輝度向上に貢献しているものと考えられる。
(2)比較例3((C)フュームドシリカの効果)
(C)フュームドシリカによる効果を確認するため、前述の実施例1−1の封止用オルガノポリシロキサン組成物の成分のうち、フュームドシリカを含有しないこと以外は該実施例1−1と同組成の組成物を調製し、比較例3とした。
実施例1−1の組成物液、比較例3の組成物を同時に調製した後、10mlをガラス製スクリュー缶瓶に採取し、密栓して静置して、深さ方向の液の均一性の経時変化を観察した。
実施例1−1の組成物では1ヶ月静置後も球状シリコーン樹脂粒子の沈降は見られず、組成物中に均一に分布していたが、比較例3の組成物は1時間以内に目視で判別できるほどの球状シリコーン樹脂成分の沈降が観測され、液の上層部と下層部において球状シリコーン樹脂粒子の濃度差が生じていた。また最上部では球状シリコーン樹脂粒子がほとんど無い透明な部分が生じた。
本発明の組成物では、球状シリコーン樹脂粒子の液内での均一分散やその維持ができるので、半導体発光素子近傍への球状シリコーン樹脂粒子の沈降や集積による光の遮蔽を防止でき、しかも上述のように硬化物表面に球状シリコーン由来の凸部が安定に形成できる。
比較例3のようにシリコーン組成物と球状シリコーン樹脂粒子をヒュームドシリカ無しで混合しただけでは、仮に組成物を調製した直後の均一分散液をパッケージ凹部に塗布したとしても、硬化前あるいは硬化中に球状シリコーン樹脂粒子が速やかに沈降するため、発光装置の光の拡散効果は生じるとしても、本発明のような、安定した輝度向上の効果は得られないものと考えられる。
(3)全光線透過率測定
本願組成物の硬化物の光散乱の状況を調べるため、以下のような組成物から硬化物サンプルを作製し、全光線透過率を測定した。
(3−1)透過率測定用サンプル
<サンプルA(本願組成物):屈折率1.41の白濁膜>
前述の4.(1)で作製した本発明の組成物の硬化物と同様にして封止用オルガノポリシロキサン組成物を調製し、単独硬化膜を作製した。
<サンプルB:屈折率1.41の極微白濁膜>
(B)球状シリコーン樹脂粒子を使用しないこと以外は上記サンプルAと同様にして、封止用オルガノポリシロキサン組成物を製造した。
この組成物を上記サンプルAと同様に硬化させて単独硬化膜を作製した。
<サンプルC:屈折率1.41の透明膜>
前述の比較例1−1で調製した封止用オルガノポリシロキサン組成物を用いて、加熱条件を90℃×2時間+110℃×1時間+150℃×3時間としたこと以外はサンプルAと同様の方法で硬化させて単独硬化膜を作製した。
<サンプルD:屈折率1.57の透明膜>
(B)球状シリコーン樹脂粒子、及び(C)フュームドシリカを含有しない市販の2液型付加硬化型ジフェニルシロキサン系オルガノポリシロキサン組成物の主剤と硬化剤を混合し、封止用オルガノポリシロキサン組成物(屈折率1.57)を製造した。
この組成物を100℃×2時間+150℃×3時間の加熱条件としたこと以外はサンプルAと同様の方法にて硬化させ、単独硬化膜を作製した。
(3−2)全光透過率の測定
ヘーズコンピューターHZ−2(スガ試験器社製)を用いて650nmにおける各サン
プルの全光線透過率(=平行光線透過率+拡散透過率)を測定した。結果を表3に示す。
(3−3)結果の評価
本願の組成物を硬化したサンプルAは、球状シリコーン樹脂粒子により目視では白濁しており平行光線透過率は低かったが、拡散透過率と平行光線透過率を合わせた全光線透過率は97%と非常に高く、後方散乱が極めて少ないことが判った。
球状シリコーン樹脂粒子を含有しないサンプルBは目視では半透明、サンプルC、Dは透明であるにかかわらず、全光線透過率はサンプルAより低かった。
サンプルBはフュームドシリカの微粒子を含むことからごくわずかに散乱を有しており、そのため拡散透過率がフィラーを全く含まないサンプルC、Dより高くなったものと思われる。しかし全光線透過率はフィラーを含まないサンプルCと大差なく、フュームドシリカのみを含む硬化物には全光線透過率をサンプルAのように高くする効果はほとんど無いと考えられる。
上記(3−1)の硬化物表面観察において、サンプルAの表面の球状シリコーン樹脂粒子が存在しない(=凸部が無い)領域は平坦であり、この領域の組成はサンプルBに相当するはずであるので、(C)フュームドシリカでは凸部を形成しない(サンプルBは凸部を有しない)ものと考えられる。よって全光線透過率の向上は球状シリコーン樹脂粒子による凸部形成の寄与が大きいと考えられる。
サンプルDのような高屈折率樹脂を封止材として用いた場合に、屈折率が低いサンプルAよりも発光素子との屈折率が近いため、発光素子からの光取り出しに有利となる。
しかし上記のように、本願においては、上記サンプルAのように、発光素子表面に微小な凹凸構造を形成するなど、封止材の屈折率がそれほど高くなくても発光素子から効率よく光を取り出すことができる、即ち全光線透過率を高くできるので、本願硬化物からなるサンプルAでは透明高屈折率のサンプルCと同等以上のより高い全光線透過率を有しており、しかもジメチル系シリコーン樹脂の高耐久性も有しているので、高屈折率のフェニル系シリコーン封止材同等以上に高輝度・高耐久性の発光装置を得ることが可能となる。
(4)触媒種の影響
上記実施例では、硬化触媒としてジルコニウム(Zr)を使用しているが、上記4.(1)の実験において、触媒を下記のように変更し、金属換算の使用量が(1)の実験と同じになるようにしたこと以外は、同様の処方で硬化サンプルを作製した。
触媒としては、下記のようなガリウム(Ga)系とインジウム(In)系を用いて、硬化反応を行い、いずれの触媒でも4.(1)と同様の硬化物を得ることができた。
<サンプルE>触媒:ガリウムトリアセチルアセトナート
<サンプルF>触媒:インジウムトリアセチルアセトナート
本発明の半導体発光装置封止用硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及びこれから得られるポリオルガノシロキサン硬化物は、半導体分野、特に半導体発光装置分野において、封止材として好適に用いられる。そしてこの半導体発光装置は、照明装置、画像表示装置、薄型テレビなどの液晶バックライト用光源などの広範な分野において好適に使用することができる。
1,1A,1B 発光装置(半導体発光装置)
2 発光素子
15 導電ワイヤ
16 絶縁基板
17 配線(リード)
18 枠材
19 封止部
25a、25b 銀メッキ付きリードフレーム
26 パッケージ
27 凹部(封止材封入後は封止材部)
33 光学部材(半導体発光装置用部材)

Claims (14)

  1. (A)シラノール基を一分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン100重量部あ
    たり、(B)球状シリコーン樹脂粒子50〜100重量部、(C)フュームドシリカ0.
    1〜30重量部、(D)硬化触媒1〜10000重量ppm、及び(G)末端がカルビノ
    ール変性されたシリコーンオイル3〜30重量部を含有してなる半導体発光装置封止材用
    硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、前記(B)球状シリコーン樹脂粒子と(
    A)シラノール基を一分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンの屈折率差が0.
    05未満である半導体発光装置封止剤用硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
  2. 更に(E)エポキシ基含有シランカップリング剤を、(A)成分100重量部あたり、
    0.01〜5重量部含有することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置封止材用
    硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
  3. 更に(F)MQレジン(M単位:RSiO1/2及びQ単位:SiO4/2からなり
    (但しRはメチル基である)、かつ樹脂中に0.01〜10重量%のシラノール基及び/又
    はアルコキシ基を有するシリコーン系樹脂)を、(A)成分100重量部あたり、1〜1
    0重量部含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光装置封止剤用硬化
    性オルガノポリシロキサン組成物。
  4. (D)硬化触媒がスズ(Sn)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr
    )、ハフニウム(Hf)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In)からなる群から選
    ばれる少なくとも1種類の金属を含む化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいず
    れか1項に記載の半導体発光装置封止剤用硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
  5. (F)MQレジンが、M単位/Q単位の比が0.4〜1.2モル/モルであり、分子量
    が2,000〜20,000で、シラノール基とアルコキシ基の樹脂中の合計含有量が0
    .01〜10重量%のシリコーン系樹脂であることを特徴とする請求項3または4に記載
    の半導体発光装置封止材用硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
  6. (G)末端がカルビノール変性されたシリコーンオイルが一分子中に少なくとも1個の
    カルビノール基を有し、分子量400以上15000以下、水酸基価が10〜120mg
    KOH/gであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体発光装置
    封止剤用硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
  7. 前記半導体発光装置封止剤用硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物中のシラノール
    基とカルビノール基との比率がシラノール基/カルビノール基=0.5〜50モル/モル
    の範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体発光装置封止
    材用硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
  8. 上記(A)〜(C)成分と、上記(D)成分とが個別に準備されてなる二液型組成物で
    あることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体発光装置封止材用硬化
    性オルガノポリシロキサン組成物。
  9. 更に、上記(G)成分が、上記(D)成分が含まれる液に含まれていることを特徴とす
    る、請求項8に記載の半導体発光装置封止材用硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体発光装置封止材用硬化性オルガノポリシロ
    キサン組成物を硬化させて得られたことを特徴とするオルガノポリシロキサン硬化物。
  11. 表面平均粗さRzが0.05μm以上、1μm以下の範囲であることを特徴とする請求
    項10に記載のオルガノポリシロキサン硬化物。
  12. 請求項10又は11に記載のオルガノポリシロキサン硬化物で封止されてなる半導体発
    光装置。
  13. 請求項12に記載の半導体発光装置を備えてなる照明。
  14. 請求項12に記載の半導体発光装置を備えてなる画像表示装置。
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