JP6413851B2 - 繊維強化プラスチック成形体用基材及び繊維強化プラスチック成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維強化プラスチック成形体用基材及び繊維強化プラスチック成形体に関する。なお、本発明は、繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法及び繊維強化プラスチック成形体の製造方法に関するものでもある。
炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含む不織布(繊維強化プラスチック成形体用基材ともいう)を加熱加圧処理し、成形した繊維強化プラスチック成形体は、既にスポーツ、レジャー用品、航空機用材料など様々な分野で用いられている。繊維強化プラスチック成形体を成形する方法としては、強化繊維から構成される繊維強化プラスチック成形体用基材に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含浸させて加熱加圧成形する方法や、強化繊維と熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂から構成される繊維強化プラスチック成形体用基材を加熱加圧成形する方法が知られている。
強化繊維には、炭素繊維やガラス繊維が用いられている。このような強化繊維は繊維強化プラスチック成形体の強度を高める働きをする。また、繊維強化プラスチック成形体用基材において強化繊維を特定の方向に配向させることによって、繊維強化プラスチック成形体の強度に方向性を持たせることが行われている(例えば、特許文献1〜4)。特許文献1〜4では、強化繊維と熱可塑性樹脂を含む繊維強化プラスチック成形体用基材の平面方向の強化繊維の配向方向を調整することにより、一方向の機械的強度を高めた繊維強化プラスチック成形体を成形することが提案されている。
特開平5−44188号公報 特開平4−208405号公報 特開平4−208406号公報 特開平4−208407号公報
本発明は、繊維強化プラスチック成形体の曲げ強度を向上させることが可能な繊維強化プラスチック成形体用基材を提供することを目的とするものである。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、強化繊維とバインダー成分とを含む繊維強化プラスチック成形体用基材において、厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)を特定範囲とすることにより、繊維強化プラスチック成形体の曲げ強度を向上させることが可能な繊維強化プラスチック成形体用基材が得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1]強化繊維とバインダー成分とを含む繊維強化プラスチック成形体用基材であって、繊維強化プラスチック成形体用基材における厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)の絶対値が0.5〜1.0であることを特徴とする繊維強化プラスチック成形体用基材。
[2]繊維強化プラスチック成形体用基材における平面方向の繊維配向パラメーター(fp)の絶対値が0.18〜1.0である[1]に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材。
[3]強化繊維は炭素繊維である[1]又は[2]に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材。
[4]バインダー成分の含有量は、繊維強化プラスチック成形体用基材の全質量に対して0.1〜10質量%である[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形体用基材。
[5]強化繊維の繊維長は10mm以上である[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形体用基材。
[6]強化繊維と、バインダー成分を混合したスラリーを、湿式抄紙する工程を含み、湿式抄紙する工程は、傾斜型抄紙機を用いて抄紙する工程であり、傾斜型抄紙機のワイヤーは、ジェットワイヤー比が0.98以下となるように走行することを特徴とする繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法。
[7]傾斜型抄紙機のワイヤーは、ジェットワイヤー比が0.90以下となるように走行する[6]に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法。
[8]スラリーの分散媒の25℃における粘度は、0.8〜4.0mPaである[6]又は[7]に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法。
[9][6]〜[8]のいずれかに記載の製造方法で製造された繊維強化プラスチック成形体用基材。
[10][1]〜[5]及び[9]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形体用基材を用いて繊維強化プラスチック成形体を製造する方法であって、繊維強化プラスチック成形体用基材に樹脂を含浸し樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を得る工程、又は樹脂を積層し樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を得る工程と、樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を加圧する工程と、を含むことを特徴とする繊維強化プラスチック成形体の製造方法。
[11][10]に記載の製造方法で製造された繊維強化プラスチック成形体。
本発明によれば、繊維強化プラスチック成形体の曲げ強度を向上させることが可能な繊維強化プラスチック成形体用基材を得ることができる。
図1は、本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材の一例の概念図である。 図2は、本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材の繊維配向パラメーターを測定するための断面観察用試験片の概念図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(繊維強化プラスチック成形体用基材)
本発明は、強化繊維とバインダー成分とを含む繊維強化プラスチック成形体用基材に関する。本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材においては、厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)の絶対値は0.5〜1.0である。
図1は、本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材の概念図である。図1に示されているように、本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材10は、強化繊維20を主要構成成分として含む。ここで、主要構成成分とは、繊維強化プラスチック成形体用基材10の全質量に対して80質量%以上の成分をいう。すなわち、強化繊維20の含有量は、繊維強化プラスチック成形体用基材10の全質量に対して80質量%以上である。また、繊維強化プラスチック成形体用基材10は、バインダー成分30を含む。バインダー成分30は、強化繊維20の接点に存在する結着成分である。また、バインダー成分30は、たとえばほぼ全ての強化繊維20間の接点に存在する。さらには、強化繊維20間の接点以外の部分にバインダー成分30が存在していてもよい。図1では、バインダー成分30の存在がわかるように図示したが、実際は、視認できない状態の微小結着成分であってもよい。なお、バインダー成分30は、強化繊維20と同様の形状をした繊維であってもよい。
本明細書において、繊維配向パラメーター(fp)は、繊維強化プラスチック成形体用基材における強化繊維の配向状態を表すパラメーターである。繊維配向パラメーター(fp)は、繊維配向分布を−1.0〜1.0の数値で表すパラメーターであり、fp=−1.0及びfp=1.0のとき、強化繊維が1方向に配向していることを意味し、fp=0.0のとき、強化繊維が完全にランダムに配置されていることを意味する。
従来技術に係る繊維強化プラスチック成形体用基材においては、繊維強化プラスチック成形体用基材の厚み方向における強化繊維の配向にばらつきが生じてしまう場合があることが本発明者らの検討により明らかとなった。さらに、繊維強化プラスチック成形体用基材の厚み方向における強化繊維の配向がばらつくことにより、繊維強化プラスチック成形体用基材から成形された繊維強化プラスチック成形体の曲げ強度が低下するおそれがあることを本発明者らは明らかにした。本発明は、このような知見に基づいて、繊維強化プラスチック成形体用基材の厚み方向における繊維配向パラメータ(fp)を制御するものである。
本発明では、繊維強化プラスチック成形体用基材における、厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)の絶対値は0.5〜1.0であればよく、0.6〜1.0であることが好ましく、0.7〜1.0であることがより好ましく、0.8〜1.0であることがさらに好ましく、0.9〜1.0であることが特に好ましい。厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)の絶対値を上記範囲内とすることにより、厚み方向の強化繊維の配向を一定方向とすることができ、繊維強化プラスチック成形体の曲げ強度を向上させることが可能な繊維強化プラスチック成形体用基材を得ることができる。また、本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材は上記構成を有するため、特に繊維強化プラスチック成形体のMD方向(抄紙ラインの流れ方向)の曲げ強度が高められている。
なお、繊維強化プラスチック成形体用基材における厚み方向の繊維配向パラメータ(fp)は、たとえば繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法等を適切に選択することによって制御することが可能である。
繊維強化プラスチック成形体用基材における、厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)を測定する場合は、繊維強化プラスチック成形体用基材に、一般的に電子顕微鏡観察で使用される包埋用エポキシ樹脂等を含浸させて、断面観察用試験片を作製する。ここで包埋用エポキシ樹脂を含浸させるのは、後述する断面の切り出しの際に繊維の配向方向が切断時のせん断力で変わってしまうことを防止するためである。包埋用樹脂としては、エポキシ樹脂やスチレン樹脂等、せん断力に耐えうる十分な強度・硬度を有する樹脂が好ましいが、本発明では、エポキシ樹脂を使用することで厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)を測定する。尚、包埋用樹脂としては、例えば、日本電子株式会社製、アロニックス LCA D−800を例示することができる。なお、熱硬化タイプの樹脂や、硬化時に発熱する樹脂は、硬化時の熱で繊維強化プラスチック成形体用基材中のバインダーの強化繊維同士の接着力が低下し、強化繊維の角度が変わってしまう可能性があるため、紫外線等の光硬化タイプのエポキシ樹脂等、硬化時に熱源とならない樹脂を用いることが好ましい。
樹脂包埋の方法としては、電子顕微鏡観察や光学顕微鏡観察で一般的に用いられる方法を採用することができる。具体的には、繊維強化プラスチック成形体用基材を幅5mm、長さ10mmに切断し、上述した包埋用エポキシ樹脂を少なくとも試験片の表面が全て覆われるまで滴下して含浸させ、硬化させる。また、包埋用エポキシ樹脂の滴下は、たとえばスポイト等を用いて行うことができる。
図2は、繊維強化プラスチック成形体用基材に紫外線硬化タイプの包埋用エポキシ樹脂を含浸させて得られた断面観察用試験片の概念図である。図2(a)に示されているように、断面観察用試験片50は、繊維強化プラスチック成形体用基材10を構成する強化繊維20と、包埋用エポキシ樹脂40を包含する。断面観察用試験片50においては、強化繊維20の位置関係及び形状は繊維強化プラスチック成形体用基材10における状態と同一であり、強化繊維20の位置関係及び形状を保持するように包埋用エポキシ樹脂40が存在している。
厚み方向の繊維配向を観察する際には、日本分光株式会社製、スライスマスター HS−1を用いて、硬化物から幅0.4mmの断面観察用試験片を切り出し、得られた試験片の厚み方向の断面を、光学顕微鏡で観察する。光学顕微鏡には、キーエンス社製、マイクロスコープを用い、モノフィラメントが視認できる倍率に拡大して透過光にて繊維を観察する。本実施形態においては、たとえば上記倍率を300倍、600倍、および800倍から選択することができる。また、ここでは、たとえば試験片の観察面およびその反対面のそれぞれから深さ10μm以上の部分に焦点を合わせて観察することができる。なお、試験片は、ミクロトームを用いて切り出してもよい。
本発明では、エポキシ樹脂で包埋して、厚み方向の断面を切り出すことにより、切断時のせん断力で繊維の角度が変わってしまうことを防ぐことができる。また透過光で観察することにより、包埋樹脂と繊維の区別を明確にすることができるため、角度の測定が容易となる。
強化繊維の配向方向とは、たとえば強化繊維の長軸方向である。また、厚み方向の断面において、強化繊維は楕円形で確認される場合もある。強化繊維が楕円形で確認される場合はこの楕円の長軸方向を繊維の配向方向とする。強化繊維の配向角度θiは、基準線に対する選び出した強化繊維の配向方向(配向線)のなす角度である。本発明では、上記条件で試験片の厚み方向の断面を光学顕微鏡で観察して、上記断面のうちの任意に選択される連続した1.5mm2の測定領域を観察し、この測定領域中に存在する視認し得る全ての繊維(繊維数はn本とする)の配向角度θiを測定する。配向角度θiは、基準線に対して時計回りの方向の角度を測定し、0°以上180°未満の角度とする。
厚み方向の繊維配向パラメーター(fp、以下fp値ともいう)は、上記の方法で測定した配向角度θiから以下の式(1)を用いて算出することができる。
fp=2×Σ(cos2θi/n)−1 式(1)
ここで、θiは基準線に対する選び出した強化繊維の配向角度(i=1〜n)である。
ここで、基準線は、下記の方法により決定することができる。
基準線を設定する際には、まず仮基準線pを選択し、上記測定領域内に存在する視認し得る全ての繊維n本の角度を測定する。この場合、仮基準線pと各繊維の角度は、α(p)i(i=1〜n)で表される。
仮基準線pとした際の繊維配向パラメーター(fp(p))は、下記式を用いて算出することができる。
fp(p)=2×Σ(cos2α(p)i/n)−1
(i=1、2、3、・・・、n)
次に、仮基準線pを±1°ずつ、±90°となるまで回転させた仮基準線(p+z、p-z(z=1〜90))をとり、仮基準線p+zと仮基準線p-zと繊維n本の角度を算出する。この場合の角度は、α(p+ziと、α(p-zi(i=1〜n)で表される。
回転させた仮基準線(p+z、p-z(z=1〜90))と強化繊維の繊維配向パラメーター(fp(p±z))は、下記式を用いて算出することができる。
fp(p±z)=2×Σ(cos2α(p±zi/n)−1
(i=1、2、3、・・・、n)
このようにして、得られたfp(p)値及びfp(p±z)値のうち最大値が得られた場合に設定した仮基準線を基準線Pとすることができる。このように決定した基準線Pから算出される繊維配向パラメーターを、厚み方向における繊維配向パラメーター(fp)とすることができる。
図2(b)は、図2(a)に示した断面観察用試験片50をB−B'方向に切り出し、厚み方向を縦方向とした断面概念図である。B−B'方向は、繊維の大半が配向している方向と平行な方向であることが好ましい。
図2(b)では、上記の方法で決定された基準線はPで表される点線であり、各強化繊維の配向は、各々QとRの点線で表されている。なお、図2(b)において、P'とした点線は基準線と平行な線であり、基準線Pと、各強化繊維の配向線(Q及びR)がなす角度をわかりやすく説明するための補助線である。図2(b)では、P'とQがなす角度(配向角度θ1)は0°であるため、P'とQは重なっている。また、P'とRがなす角度(配向角度θ2)はθ2として表されている。このようにして、θ1〜θnが測定される。
なお、繊維配向パラメーター(fp)や仮基準線と強化繊維の繊維配向パラメーター(fp(p±z))を測定する部分としては、断面観察用試験片の厚み方向の断面の端部を避け、中央近辺とすることが好ましい。具体的には、断面観察用試験片の両端部辺から厚み方向に5%(断面観察用試験片の厚みに対して5%)までの領域を避けて測定領域とすることが好ましい。
本発明において、厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)が上記範囲内であることは、強化繊維の繊維強化プラスチック成形体の中心面となす角度が小さくなるように配向していることを意味する。ここで、繊維強化プラスチック成形体用基材の中心面とは、繊維強化プラスチック成形体用基材の第1の表面の平均面と第2の表面の平均面の中点を結んで形成される平面である。なお、第1の表面の平均面と第2の表面の平均面の中点とは、第1の表面の特定点から第2の表面の最短距離の中点のことをいう。また、各表面の平均面とは、表面に凹凸形状がある場合は凹部と凸部の高さの平均の高さを通る面をいい、表面に凹凸形状がない場合は、各平均面は各表面のことをいう。
また、繊維強化プラスチック成形体用基材における平面方向の繊維配向パラメーター(fp)の絶対値は0.18〜1.0であることが好ましい。繊維強化プラスチック成形体用基材における平面方向の繊維配向パラメーター(fp)の絶対値は、0.25〜1.0であることがより好ましく、0.3〜1.0であることがさらに好ましく、0.6〜1.0であることが特に好ましい。すなわち、本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材においては、強化繊維は、厚み方向の配向が一定方向であることに加え、平面方向の配向も一定方向であることが好ましい。
繊維強化プラスチック成形体用基材における平面方向の繊維配向パラメーターの測定は、特に樹脂包埋等の処理をせずとも測定することができる。具体的には、長さ3cm×幅3cmに切り出した繊維強化プラスチック成形体用基材をスライドガラス上に載せ、上から更にスライドガラスを載せて、マイクロスコープを用いて通常の反射光の測定で観察することができる。
本発明では、スライドガラスで挟んだ試験片の一方の面について光学顕微鏡にて観察する。光学顕微鏡には、キーエンス社製、マイクロスコープを用い、モノフィラメントが視認できる倍率に拡大して反射光にて、または反射光と透過光を併用して繊維を観察する。本実施形態においては、たとえば上記倍率を300倍、600倍、および800倍から選択することができる。これにより、一方の面のうちの任意に選択される連続した2.0mm2の測定領域を観察し、この測定領域中に存在する視認し得る全ての繊維(繊維数はm本とする)の配向角度θiを測定する。配向角度θiは、基準線に対して時計回りの方向の角度を測定し、0°以上180°未満の角度とする。繊維配向パラメーター(fp、以下fp値ともいう)は、上記の方法で測定した配向角度θiから以下の式(2)を用いて算出することができる。
fp=2×Σ(cos2θi/m)−1 式(2)
ただし、i=1〜mである。
そして、反対面についても同様に測定し、一方の面と反対面の平均値を求めて、これを平面方向の繊維配向パラメーター(fp)とする。なお、一方の面の測定領域と反対面の測定領域は、たとえば平面視において重なる領域である。また、一方の面および反対面のいずれの観察においても、たとえば一方の面および反対面のそれぞれから深さ10μm以上の部分に焦点を合わせて観察することができる。
平面方向の繊維配向パラメーターの測定をする際の基準線は、下記の方法により決定することができる。
基準線を設定する際には、まず仮基準線pを選択し、上記測定領域内に存在する視認し得る全ての繊維m本の角度を測定する。この場合、仮基準線pと各繊維の角度は、α(p)i(i=1〜m)で表される。
仮基準線pとした際の繊維配向パラメーター(fp(p))は、下記式を用いて算出することができる。
fp(p)=2×Σ(cos2α(p)i/m)−1
(i=1、2、3、・・・、m)
次に、仮基準線pを±1°ずつ、±90°となるまで回転させた仮基準線(p+z、p-z(z=1〜90))をとり、仮基準線p+zと仮基準線p-zと繊維m本の角度を算出する。この場合の角度は、α(p+ziと、α(p-zi(i=1〜m)で表される。
回転させた仮基準線(p+z、p-z(z=1〜90))と強化繊維の繊維配向パラメーター(fp(p±z))は、下記式を用いて算出することができる。
fp(p±z)=2×Σ(cos2α(p±zi/m)−1
(i=1、2、3、・・・、m)
このようにして、得られたfp(p)値及びfp(p±z)値のうち最大値が得られた場合に設定した仮基準線を基準線Pとすることができる。このように決定した基準線Pから算出される繊維配向パラメーターを、平面方向における繊維配向パラメーター(fp)とすることができる。
強化繊維の平面方向の配向が一定方向である場合、強化繊維は、繊維強化プラスチック成形体用基材の平面方向のいずれの方向に配向していてもよいが、繊維強化プラスチック成形体用基材のMD方向(抄紙ラインの流れ方向)に配向していることが好ましい。
強化繊維の厚み方向及び平面方向の配向が一定方向の場合、繊維強化プラスチック成形体用基材を成形した繊維強化プラスチック成形体においては、一方向の曲げ強度が高められている。特に、強化繊維がMD方向に配向している場合、繊維強化プラスチック成形体においてはMD方向の強度が高められる。
また、本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材から成形される繊維強化プラスチック成形体においては、繊維強化プラスチック成形体の第1方向の曲げ強度と、第1方向に直交する第2方向の曲げ強度の強度比は3以上であることも好ましい。曲げ強度の強度比は4以上であることも好ましく、5以上であることも好ましい。なお、第1方向とは、繊維強化プラスチック成形体用基材の平面方向における強化繊維の配向方向をいい、第2方向とは、平面方向における強化繊維の配向方向に直交する方向をいう。本発明では、強化繊維がMD方向に配向している場合、第1方向はMD方向であり、第2方向はCD方向(抄紙ラインの流れ方向と直交する方向)である。
このように、繊維強化プラスチック成形体用基材において、強化繊維の厚み方向及び平面方向の配向が一定方向の場合、繊維強化プラスチック成形体においては特定方向の強度が高められる。このような繊維強化プラスチック成形体は、自動車や航空機等に用いられる一方向に機械的強度が要求される構造部品に好ましく用いられる。
本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材において、強化繊維の配合割合は、80〜99質量%であることが好ましい。強化繊維の配合割合を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック成形体において、より特定方向に配向した繊維の本数を増やすことが可能となる。これにより、強化繊維間の距離が短くなり、加熱加圧成形後の強化繊維の充填密度が高くなり、繊維強化プラスチック成形体の強度を効果的に高めることができる。
本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材の坪量は、たとえば8〜600g/m2であることが好ましく、10〜500g/m2であることがより好ましい。上記上限値以下とすることにより、繊維強化プラスチック成形体用基材の乾燥工程における乾燥効率の向上や、厚さ方向の繊維の配向性をさらに向上させることができる。一方で、上記下限値以上とすることにより、繊維強化プラスチック成形体用基材の製造工程における断紙をより確実に抑制して、生産効率の向上を図ることが可能となる。
(強化繊維)
本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材は強化繊維を含有する。強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維等を挙げることができる。これらの強化繊維は、1種のみを使用してもよく、複数種を使用してもよい。中でも、強化繊維としては、炭素繊維を用いることが好ましい。
強化繊維として、例えば、炭素繊維やガラス繊維等の繊維を使用した場合、繊維強化プラスチック成形体用基材に含まれる熱可塑性繊維の溶融温度で加熱加圧処理することにより繊維強化プラスチック成形体を形成することが可能となる。また、強化繊維として、アラミド等の繊維を用いた場合は、耐摩耗性を向上させることができる。
強化繊維の繊維長は、3mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、15mm以上であることがさらに好ましく、20mm以上であることが特に好ましい。なお、強化繊維の繊維長は、50mm以上とすることもできる。また、強化繊維の繊維長は、150mm以下であることが好ましく、100mm以下であることがより好ましく、75mm以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、強化繊維の繊維長は、質量平均繊維長であり、100本の繊維について測定した繊維長の平均値である。強化繊維の質量平均繊維長を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック成形体用基材から強化繊維が脱落することを抑制することができ、かつ、繊維の分散性が良好で、強度に優れた繊維強化プラスチック成形体を形成することが可能となる。
なお、強化繊維の繊維径は特に限定されないが、炭素繊維の場合には、繊維径が5〜25μmであることが好ましい。なお、本明細書において、強化繊維の繊維径は数平均繊維径であり、100本の繊維の繊維径を測定した繊維径の平均値である。
(炭素繊維)
強化繊維としては炭素繊維を用いることが好ましい。炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系等の炭素繊維を用いることができる。これらの炭素繊維は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせ用いてもよい。また、これら炭素繊維の中でも、工業規模における生産性及び機械特性の観点から、ポリアクリロニトリル(PAN)系の炭素繊維を用いることが好ましい。
炭素繊維の繊維長は、3mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、15mm以上であることがさらに好ましく、20mm以上であることが特に好ましい。なお、炭素繊維の繊維長は、50mm以上とすることもできる。また、強化繊維の繊維長は、150mm以下であることが好ましく、100mm以下であることがより好ましく、75mm以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、炭素繊維の繊維長は、質量平均繊維長であり、100本の繊維について測定した繊維長の平均値である。
炭素繊維の単繊維強度は、4500MPa以上であることが好ましく、4600MPa以上であることがより好ましく、4700MPa以上であることがさらに好ましい。単繊維強度とは、モノフィラメントの引っ張り強度をいう。このような炭素繊維を使用した場合、前述した強化繊維の繊維配向の効果との相乗効果で曲げ強度が大幅に向上する。なお、単繊維強度は、JIS R7601「炭素繊維試験方法」に準じて測定することができる。
(強化繊維の形状)
強化繊維は、一定の長さにカットされたチョップドストランドであることが好ましい。強化繊維をこのような形態とすることにより、繊維強化プラスチック成形体用基材中における分散性を高めることができる。また強化繊維の断面形状は円形に限定されず、楕円形等、異形断面のものも使用できる。なお、強化繊維としては、複数の素材や形状を併用することもできる。
(バインダー成分)
本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材は、バインダー成分含む。バインダー成分の含有量は、繊維強化プラスチック成形体用基材の全質量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.3〜10質量%であることがより好ましく、0.4〜9質量%であることがさらに好ましく、0.5〜8質量%であることが特に好ましい。バインダー成分の含有率を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック成形体用基材の強度を高めることができ、繰り返しの断裁工程を経ても層間剥離などを発生しない繊維強化プラスチック成形体用基材を得ることができる。このため、本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材はハンドリング性に優れている。また、バインダー成分の含有率を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック成形体用基材から成形される繊維強化プラスチック成形体の強度も高めることができる。
バインダー成分としては、一般的な不織布製造に使用される、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、PVA樹脂、各種澱粉、セルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドーアクリル酸エステルーメタクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を用いることができる。
バインダー成分は、メチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位、エチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む共重合体を含有してもよい。この場合、バインダー成分は、メチルメタクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位及びエチルメタクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む共重合体を含有することが好ましい。また、これらのモノマーは他のモノマー、例えばスチレンや酢酸ビニル、アクリルアミド等と共重合させてもよい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を含むことを意味し、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を含むことを意味する。
さらに、本発明では、ポリエステル樹脂及び変性ポリエステル樹脂をバインダー成分として用いることもできる。ポリエステル樹脂としては、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)を好ましい例として挙げることができる。変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂を変性することで融点を低下させたものであれば特に限定されないが、変性ポリエチレンテレフタレートが好ましい。変性ポリエチレンテレフタレートとしては、共重合ポリエチレンテレフタレート(coPET)が好ましく、例えば、ウレタン変性共重合ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ポリエステル樹脂は本発明の熱可塑性繊維と加熱溶融時に相溶するため、冷却後も熱や樹脂の機能を損ないにくいため、好ましく用いられる。
共重合ポリエチレンテレフタレートは、融点が140℃以下のものが好ましく、120℃以下ものがより好ましい。また、特公平1−30926号公報に記載のような変性ポリエステル樹脂を使用してもよい。変性ポリエステル樹脂の具体例として、特に、ユニチカ社製商品名「メルティ4000」(繊維全てが共重合ポリエチレンテレフタレートである繊維)が好ましく挙げられる。また、芯鞘構造のバインダー繊維としては、ユニチカ社製商品名「メルティ4080」や、クラレ社製商品名「N−720」等が好適に使用できる。
本発明では、繊維強化プラスチック成形体用基材における厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)の絶対値を0.5〜1.0としている。このような繊維強化プラスチック成形体用基材においては、強化繊維の密度を高めることができる上、成形体用基材を用いた成形体の曲げ強度を高めることに資する繊維の本数が増加するため、成形体を強めることができる。更に、強化繊維の交点が増加するため、バインダー成分の添加量を減少させても、繊維強化プラスチック成形体用基材の製造時において、十分な工程強度を得ることができる。
バインダー成分は、強化繊維の接点に存在する結着成分であり、その形状は特に限定されない。バインダー成分の形状は、例えば、粒子形状や繊維形状とすることができ、繊維形状とすることが好ましい。
バインダー成分の形状が粒子形状の場合、バインダー粒子の平均1次粒子径は、3〜7000μmであることが好ましく、30〜3000μmであることがより好ましく、100〜1000μmであることがさらに好ましい。なお、バインダー粒子が球形ではない場合は、バインダー粒子の平均1次粒子径は、透過型電子顕微鏡写真により粒子の投影面積を求め、同じ面積を有する円の直径を平均1次粒子径とする。バインダー粒子の平均1次粒子径を上記範囲内とすることにより、網の抄き上げが可能となり湿式抄紙法で繊維強化プラスチック成形体用基材を得ることができる。
バインダー成分の形状が繊維形状の場合、バインダー繊維の繊維長は、3mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、15mm以上であることがさらに好ましく、20mm以上であることが特に好ましい。なお、バインダー繊維の繊維長は、50mm以上とすることもできる。また、バインダー繊維の繊維長は、150mm以下であることが好ましく、100mm以下であることがより好ましく、75mm以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書においてバインダー繊維の繊維長は、質量平均繊維長であり、100本の繊維について測定した繊維長の平均値である。
バインダー成分の形状が繊維形状の場合、バインダー繊維の繊維径は3〜25μmであることが好ましい。なお、本明細書において、バインダー繊維の繊維径は数平均繊維径であり、100本の繊維の繊維径を測定した繊維径の平均値である。
また、バインダー成分は、水溶液やエマルジョン中に含まれていてもよい。このような水溶液やエマルジョンをスプレーや含浸等の方法で強化繊維の接点等に付与することで、バインダー成分を含む繊維強化プラスチック成形体用基材を得ることもできる。
(その他の成分)
繊維強化プラスチック成形体用基材は、実質的には熱可塑性繊維を含まない。ここで、実質的に熱可塑性樹脂を含まないとは、繊維強化プラスチック成形体用基材全体に対する熱可塑性繊維の含有量が0.1質量%以下であることをいう。なお、上記熱可塑性繊維は、たとえばポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアミド、ポリプロピレンである。
(繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法)
本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材の製造工程は、強化繊維と、バインダー成分を混合したスラリーを、湿式抄紙する工程を含む。この湿式抄紙する工程は、傾斜型抄紙機を用いて抄紙する工程であり、傾斜型抄紙機のワイヤーは、ジェットワイヤー比が0.98以下となるように走行する。本発明は、このような製造方法で製造された繊維強化プラスチック成形体用基材に関するものでもある。
傾斜型抄紙機のワイヤーのジェットワイヤー比は、0.98以下であればよく、0.96以下であることがより好ましく、0.90以下であることがさらに好ましく、0.80以下であることが特に好ましい。
ここで、ジェットワイヤー比とは、強化繊維とバインダー成分を含むスラリーの供給速度とワイヤー走行速度の比であり、スラリーの供給速度/ワイヤー走行速度で表される。ジェットワイヤー比が1よりも大きい場合は、スラリーの供給速度がワイヤーの走行速度よりも速く、この場合を「押し地合」という。また、ジェットワイヤー比が1以下場合は、スラリーの供給速度はワイヤーの走行速度よりも遅く、この場合を「引き地合」という。
本発明では、ジェットワイヤー比を上記範囲とし、「引き地合」で抄紙することにより、繊維強化プラスチック成形体用基材における厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)を所望の範囲内とすることができる。さらに、繊維強化プラスチック成形体用基材における平面方向の繊維配向パラメーター(fp)についても所望の範囲内とすることが可能となる。
本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法においては、傾斜型抄紙機の傾斜ワイヤーに備えられている複数のウエットサクションボックスの吸引力を適宜調節することが好ましい。具体的には、傾斜ワイヤーの下流側のウエットサクションボックスの脱水量が多くなるように調節することが好ましい。通常、ウエットサクションボックスの吸引力を均一にした場合、ワイヤーの上流側の脱水量が多くなり、ワイヤー上下流側の脱水量が少なくなる傾向となる。このため、本発明の製造方法においては、上流側の吸引力を下流側の吸引力より弱めて、傾斜ワイヤーの下流側のウエットサクションボックスの脱水量が多くなるように調節することにより、ワイヤー上の繊維強化プラスチック成形体用基材が均一に脱水される。このように、均一な脱水を行うことによっても、厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)を所望の範囲内とすることができる。
繊維強化プラスチック成形体用基材を抄紙する際には、スラリーの分散媒の25℃における粘度を、0.8〜4.0mPaとすることが好ましい。スラリーの分散媒の25℃における粘度は、1.0〜3.5mPaであることがより好ましく、1.0〜3.0mPaであることがさらに好ましい。ここで、スラリーの分散媒の25℃における粘度は、JIS Z 8803「液体の粘度測定方法」に規定された測定方法で測定される。
なお、ここでいうスラリーとは、抄紙工程直前のスラリーをいい、インレット中のスラリーのことである。また、スラリーの分散媒の粘度を測定する際は、インレットのスラリーを500ml採取し、150メッシュの金属製のフルイで繊維をろ過して得られるろ液を用いて測定する。
スラリーの分散媒の粘度は、インレットに、ポリアクリルアミド系等の粘剤を添加するなどして調整することができる。スラリーの分散媒の粘度を上記範囲内とすることにより、ワイヤー付近における分散液の流れの乱れを抑制し、層流とすることができる。これにより、繊維強化プラスチック成形体用基材の厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)を所望の範囲内とすることができる。
なお、繊維強化プラスチック成形体用基材を製造する工程では、バインダー成分を抄紙工程後に後添することもできる。例えば、バインダー成分を含む溶液又はバインダー成分を含むエマルジョンを、抄紙されたシートに内添、塗布又は含浸させ、加熱乾燥させてもよい。このような工程を設けることにより、繊維強化プラスチック成形体用基材の表面繊維の飛散、毛羽立ちや脱落を抑制することができ、ハンドリング性に優れた繊維強化プラスチック成形体用基材を得ることができる。
また、上記のように、加熱乾燥工程を設けることにより、バインダー成分を含む溶液又はバインダー成分を含むエマルジョンを繊維強化プラスチック成形体用基材の表層領域に移行させることができる。さらに、バインダー成分を水掻き膜状に局在させることができる。
(繊維強化プラスチック成形体の成形方法)
本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材は、さらに樹脂を含有することによって繊維強化プラスチック成形体となる。繊維強化プラスチック成形体用基材から成形される繊維強化プラスチック成形体の製造工程は、繊維強化プラスチック成形体用基材に樹脂を含浸し樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を得る工程、又は樹脂を積層し樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を得る工程を含む。さらに、繊維強化プラスチック成形体の製造工程は、樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を加熱加圧する工程を含む。このように繊維強化プラスチック成形体は、上述した繊維強化プラスチック成形体用基材に樹脂を添加し、少なくとも加圧をすることにより成形される。
繊維強化プラスチック成形体用基材は、目的とする形状や成形法に合わせて任意の形状に加工することができる。樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を得る工程では、繊維強化プラスチック成形体用基材は1枚単独、或いは所望の厚さとなるように積層される。このような単層または複層繊維強化プラスチック成形体用基材に樹脂を含浸又は、樹脂を積層する。
繊維強化プラスチック成形体用基材に含浸させるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂を主成分としたマトリックス樹脂を溶媒に溶かしたものを使用することができる。熱硬化性樹脂の種類は特に制限はなく、例えば不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール(レゾール型)樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリイミド樹脂等や、これらの共重合体、変性体、および、これらの少なくとも2種をブレンドした樹脂が挙げられる。これらの中でも、剛性、強度に優れることから、エポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。これらの樹脂は、成形品の力学特性の観点からも好ましく用いられる。熱硬化性樹脂を使用する場合は、耐衝撃性等を向上させるために、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂および/またはその他のエラストマーもしくはゴム成分等を添加してもよい。
また、マトリックス樹脂としては、たとえば熱可塑性樹脂を用いることもできる。この場合、熱可塑性樹脂を溶媒に溶解したり、エマルジョンとしたものを本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材に含浸させて、加熱加圧成形することもできる。熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアミド、ポリプロピレン等を例示することができる。中でも、高強度の繊維強化プラスチック成形体を得るために、ポリカーボネートやポリエーテルイミド、ポリアミドを用いることが好ましい。なお、ポリアミドはナイロンであることが好ましく、ナイロン6であることがより好ましい。
繊維強化プラスチック成形体用基材に樹脂を含浸し樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を得る工程では、繊維強化プラスチック成形体用基材にマトリックス樹脂をあらかじめ含浸させたプリプレグを作製してもよい。このようなプリプレグを加圧、若しくは加熱加圧することで繊維強化プラスチック成形体を成形することもできる。また、繊維強化プラスチック成形体はハンドレイアップ方法、RTM等の方法によって成形することも可能である。
また、樹脂を積層し樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を得る工程では、樹脂フィルムを積層又は挟持し、加熱加圧することが好ましい。なお、当該工程における樹脂フィルムの厚み等の諸条件は、繊維強化プラスチック成形体の用途や物性、厚み等に基づいて適宜調整することが可能である。
樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を加熱加圧する工程では、上述した方法で樹脂を添加した樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を熱プレス又は、あらかじめ赤外線ヒーター等で予熱した金型で加熱加圧成形する。成形方法は、一般的な繊維強化プラスチック成形体用基材の加熱加圧成形方法を用いることができる。
プレス成形の方法としては、各種存在するプレス成形の方法の中でも、大型の航空機などの成形体部材を作製する際によく使用されるオートクレーブ法や、工程が比較的簡便である金型プレス法が好ましく挙げられる。ボイドの少ない高品質な繊維強化プラスチック成形体を得るという観点からはオートクレーブ法が好ましい。一方、設備や成形工程でのエネルギー使用量、使用する成形用の治具や副資材等の簡略化、成形圧力、温度の自由度の観点からは、金属製の型を用いて成形を行う金型プレス法を用いることが好ましく、これらは用途に応じて選択することができる。
金型プレス法には、ヒートアンドクール法やスタンピング成形法を採用することができる。ヒートアンドクール法は、繊維強化プラスチック成形体用基材を型内に予め配置しておき、型締とともに加圧、加熱をおこない、次いで型締をおこなったまま、金型の冷却により該シートの冷却をおこない成形体を得る方法である。スタンピング成形法は、予め該基材を遠赤外線ヒーター、加熱板、高温オーブン、誘電加熱などの加熱装置で加熱し、熱可塑性樹脂を溶融、軟化させた状態で、成形体型の内部に配置し、次いで型を閉じて型締を行い、その後加圧冷却する方法である。また、低密度の成形体を得る場合など、成形時の温度が比較的低い場合は、ホットプレス法を採用することもできる。
成形用の金型は大きく2種類に分類され、1つは鋳造や射出成形などに使用される密閉金型であり、もう1つはプレス成形や鍛造などに使用される開放金型である。本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材を用いた場合、用途に応じていずれの金型も使用することが可能である。成形時の分解ガスや混入空気を型外に排除する観点からは開放金型が好ましいが、過度の樹脂の流出を抑制するためには、成形加工中においては開放部をできるだけ少なくし、樹脂の型外への流出を抑制するような形状を採用することも好ましい。
さらに、金型には打ち抜き機構、タッピング機構から選択される少なくとも一種を有する金型を使用することができる。2段プレス機構を用いるなどの工夫で、熱プレス後に連続して、成形体を打ち抜き加工することも可能である。また、成形体は、その使用目的などによってはリブやボス等の強度補強・加工用の突起やネジ穴の形成、意匠性の付与を目的とした模様の付与を行うことができる。
繊維強化プラスチック成形体が多層構造である場合、他種の繊維強化プラスチック成形体用基材を積層して熱プレスで加熱加圧成形することもできる。また、繊維強化プラスチック成形体を成形すると同時、或いは成形後にアウトサート成形やインサート成形によって、より複雑な形状部材を接着することも可能である。
繊維強化プラスチック成形体用基材から繊維強化プラスチック成形体を成形する際に、熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として使用する場合は、樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を150℃〜600℃で加圧成形することが好ましい。なお、加熱温度は、熱可塑性樹脂繊維が流動する温度であって強化繊維は溶融しない温度帯であることが好ましい。
樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を成形する際の圧力としては、0.5〜20MPaが好ましい。また、強化繊維の折れを抑制して強度を向上させる観点からは、0.5〜10MPaであることがより好ましく、1〜8MPaであることがさらに好ましい。熱硬化性樹脂を使用する場合や、繊維強化プラスチック成形体に樹脂を含浸する直前に硬化剤を混合して含浸させ、常温で硬化させる樹脂を使用する場合は、当該樹脂に応じて適宜成形温度を設定することができる。また、上記樹脂を使用する場合は、加熱せずに加圧のみで繊維強化プラスチック成形体を成形することもできる。
(繊維強化プラスチック成形体)
本発明は上述した方法で成形される繊維強化プラスチック成形体に関するものでもある。本発明の繊維強化プラスチック成形体は、強化繊維と、バインダー成分と、樹脂成分を含む。また繊維強化プラスチック成形体における厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)の絶対値は0.5〜1.0である。
繊維強化プラスチック成形体における、厚み方向の繊維配向パラメーター(fpの絶対値)は0.5〜1.0であればよく、0.6〜1.0であることが好ましく、0.7〜1.0であることがより好ましく、0.8〜1.0であることがさらに好ましく、0.9〜1.0であることが特に好ましい。厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)の絶対値を上記範囲内とすることにより、厚み方向の強化繊維の配向を整えることができ、繊維強化プラスチック成形体の曲げ強度を向上させることができる。
また、繊維強化プラスチック成形体における平面方向の繊維配向パラメーター(fp)の絶対値は0.18〜1.0であることが好ましく、0.25〜1.0であることがより好ましく、0.3〜1.0であることがさらに好ましく、0.6〜1.0であることが特に好ましい。すなわち、本発明の繊維強化プラスチック成形体においては、強化繊維は、厚み方向の配向が一定方向であることに加え、平面方向の配向も一定方向であることが好ましい。このように、繊維強化プラスチック成形体においては、強化繊維は、厚み方向の配向が一定方向であることに加え、平面方向の配向も一定方向であることが好ましい。
本発明の繊維強化プラスチック成形体のMD方向の曲げ強度とCD方向の曲げ強度の相乗平均値は、280MPa以上であることが好ましく、300MPa以上であることがより好ましく、320MPa以上であることがさらに好ましく、350MPa以上であることが特に好ましい。また、本発明の繊維強化プラスチック成形体のMD方向の曲げ強度は、310MPa以上であることが好ましく、350MPa以上であることがより好ましく、500MPa以上であることがさらに好ましく、600MPa以上であることが特に好ましい。
さらに、繊維強化プラスチック成形体の第1方向の曲げ強度と、第1方向に直交する第2方向の曲げ強度の強度比は、3以上であることも好ましく、4以上であることも好ましく、5以上であることも好ましい。なお、第1方向とは、繊維強化プラスチック成形体における強化繊維の配向方向をいい、第2方向とは、強化繊維の配向方向に直交する方向をいう。本発明では、強化繊維がMD方向に配向している場合、第1方向はMD方向であり、第2方向はCD方向(抄紙ラインの流れ方向と直交する方向)である。
このように、本発明の繊維強化プラスチック成形体では、強化繊維の厚み方向及び平面方向の配向が一定方向であるため、繊維強化プラスチック成形体の全体の強度と特定方向の強度が高められている。このため、本発明の繊維強化プラスチック成形体は、自動車や航空機等に用いられる一方向に機械的強度が要求される構造部品に好ましく用いられる。
なお、繊維強化プラスチック成形体の厚みは、特に限定されないが、0.1〜50mmとすることができる。
(繊維強化プラスチック成形体の用途)
繊維強化プラスチック成形体の用途としては、例えば、「OA機器、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末、タブレットPC、デジタルビデオカメラなどの携帯電子機器、エアコンその他家電製品などの筐体、及び筐体に貼り付けるリブ等の補強材、「支柱、パネル、補強材」などの土木、建材用部品、「各種フレーム、各種車輪用軸受、各種ビーム、ドア、トランクリッド、サイドパネル、アッパーバックパネル、フロントボディー、アンダーボディー、各種ピラー、各種フレーム、各種ビーム、各種サポート、などの外板またはボディー部品及びその補強材」、「インストルメントパネル、シートフレームなどの内装部品」、または「ガソリンタンク、各種配管、各種バルブなどの燃料系、排気系、または吸気系部品」、「エンジン冷却水ジョイント、エアコン用サーモスタットベース、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング」、などの自動車、二輪車用部品、「ウィングレット、スポイラー」などの航空機用部品、「鉄道車両用の座席用部材、外板パネル、外板パネルに貼り付ける補強材、天井パネル、エアコン等の噴出し口」などの鉄道車両用部品、「樹脂(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂)からなる成形体の補強材、樹脂と強化繊維からなる成形体の補強材、植物由来のシート(クラフト紙、段ボール、耐油紙、絶縁紙、導電紙、剥離紙、含浸紙、グラシン紙、セルロースナノファイバーシートなど)の補強材」などの部材等に好適に使用される。さらに、本発明の繊維強化プラスチック成形体は薄くても難燃性に優れるため、電気絶縁性の高いガラス繊維を強化繊維として用いることで、電気絶縁用基板としても好適に用いることができる。
このように、本発明の繊維強化プラスチック成形体は、強度が高く、また優れた難燃性を有するため安全性が高いので、電気、電子機器用の筐体、自動車用の構造部品、航空機用の部品、土木、建材用のパネル、その他多種多様な用途に好ましく用いられる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、以下において、実施例1、7及び8はそれぞれ、参考例1、7及び8と読み替えるものとする。
<実施例1>
<強化繊維スラリーの製造>
繊維長12mmの炭素繊維(台湾プラスチック社製、CS815)をスラリー濃度が0.5質量%となるように水中に投入し、分散剤としてエマノーン(登録商標)3199V(花王株式会社製)を、炭素繊維100質量部に対して1質量部となるよう添加した。なお、エマノーン3199Vは、あらかじめ0.5%濃度の水溶液となるように水に溶解して添加した。その後、古紙離解用パルパーを用いて30秒間攪拌して初期分散を行った後、スラリー濃度が0.15質量%となるように水で希釈した。得られたスラリーを炭素繊維スラリーとした。
別容器にて、粉末のアニオン性高分子ポリアクリルアミド系増粘剤(MTアクアポリマー株式会社製、スミフロック)を溶解した水溶液を作製した。粉末のアニオン性高分子ポリアクリルアミド系増粘剤は、水溶液の全質量に対して、0.1質量%となるように添加した。この水溶液を、上記の炭素繊維スラリーに、添加した。水溶液の添加量は、水溶液の全質量に対して増粘剤の固形分が60ppmとなるように調整した。その後、攪拌し、炭素繊維がモノフィラメント化するまで分散させた。
次いで、バインダー成分として、繊維状PVA(株式会社クラレ製、VPB105−2)を、繊維強化プラスチック成形体用基材の質量に対して3質量%となるように計量した。これを、スラリー濃度が10質量%となるように別容器に分取した水中に分散させてバインダー繊維スラリーを得た。なお、バインダー繊維は分散性が良好であったため、特に攪拌等の処置をせずとも十分に分散した。このバインダー繊維スラリーを上記の炭素繊維スラリーに投入し、水で希釈して0.2質量%濃度の原料スラリーを得た。
<繊維強化プラスチック成形体用基材の製造>
原料スラリーを傾斜ワイヤーマシンに連続して供給し、抄紙することで繊維強化プラスチック成形体用基材を作製した。
抄紙工程では、原料スラリーはインレット内に送液され、循環白水によってインレット濃度を0.03質量%に希釈した。この際、インレット内に高分子ポリアクリルアミド系増粘剤(MTアクアポリマー株式会社製、スミフロック)の水溶液を適宜添加し、スラリーの分散媒の粘度を表1に示す値となるように調整した。なお、スラリーの分散媒の粘度は、インレットのスラリーを500ml採取し、150メッシュの金属製のフルイで繊維をろ過して得られるろ液を用いて測定した。また、スラリー分散媒の粘度は、液温25℃における粘度であり、JIS Z 8803「液体の粘度測定方法」に規定された測定方法により測定した。
次いで、上記スラリーを傾斜ワイヤーマシンに連続して供給した。この際、白水循環流量、及び抄速を調整して、ジェットワイヤー比を表1に示すとおりとなるように調整した。なお、抄紙の際は傾斜ワイヤーマシンのワイヤーに備えられた4個の脱水ボックスの吸引力を個々に調整し、4個がほぼ同量の脱水量となるように調整した。このようにして、繊維強化プラスチック成形体用基材を作製した。
<実施例2>
スラリー分散媒の粘度及びジェットワイヤー比を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材を得た。
<実施例3>
スラリー分散媒の粘度及びジェットワイヤー比を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材を得た。
<実施例4>
スラリー分散媒の粘度及びジェットワイヤー比を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材を得た。
<実施例5>
スラリー分散媒の粘度、ジェットワイヤー比及び炭素繊維の繊維長を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材を得た。
<実施例6>
炭素繊維をガラス繊維に変更し、スラリー分散媒の粘度を表1の通りとした以外は実施例5と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材を得た。
<実施例7>
スラリー分散媒の粘度及びジェットワイヤー比を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材を得た。
<実施例8>
スラリー分散媒の粘度及びジェットワイヤー比を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材を得た。
<比較例1>
スラリー分散媒の粘度及びジェットワイヤー比を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材を得た。
<比較例2>
スラリー分散媒の粘度及びジェットワイヤー比を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材を得た。
<厚み方向の繊維配向パラメーター(fp値)の測定>
実施例・比較例で得られた繊維強化プラスチック成形体用基材を幅5mm、長さ10mmに切断し、紫外線硬化タイプの包埋用エポキシ樹脂(日本電子株式会社製、アロニックス LCA D−800)を、試験片の表面全面を覆うようにスポイトを用いて滴下して含浸させ、紫外線を照射して硬化させた。
そして、日本分光株式会社製、スライスマスター HS−1を用いて、硬化物から幅0.4mm、長さ10mmの断面観察用試験片を切り出した。なお、切断方向は、図2(b)におけるB−B'方向とした。
得られた試験片の厚み方向の断面を、キーエンス社製、マイクロスコープで、300倍に拡大して透過光にて繊維を観察した。ここでは、上記断面のうちの連続した1.5mm2の測定領域を観察した。また、試験片の観察面およびその反対面のそれぞれから深さ10μm以上の部分に焦点を合わせて観察を行った。そして、上記測定領域中に存在する、観察像において視認し得る全ての繊維(繊維数はn本とする)について、後述する方法で設定した基準線に対する角度θi(i=1〜n)を測定した。配向角度θiは、基準線に対して時計回りの方向の角度を測定し、0°以上180°未満の角度とした。そして、設定された基準線に対する繊維の角度θiから、以下の式(1)を用いて厚み方向の繊維配向パラメーターを算出した。
fp=2×Σ(cos2θi/n)−1 式(1)
なお、基準線は下記の方法で決定した。基準線を決定する際には、まず仮基準線pを選択し、上記測定領域内に存在する視認し得る全ての繊維n本の角度を測定した。この場合、仮基準線pと各繊維の角度は、α(p)i(i=1〜n)で表した。
仮基準線pとした際の繊維配向パラメーター(fp(p))は、下記式を用いて算出した。
fp(p)=2×Σ(cos2α(p)i/n)−1
(i=1、2、3、・・・、n)
次に、仮基準線pを±1°ずつ、±90°となるまで回転させた仮基準線(p+z、p-z(z=1〜90))をとり、仮基準線p+zと仮基準線p-zと繊維n本の角度を算出した。この場合の角度は、α(p+ziと、α(p-zi(i=1〜n)で表した。
回転させた仮基準線(p+z、p-z(z=1〜90))と強化繊維の繊維配向パラメーター(fp(p±z))は、下記式を用いて算出した。
fp(p±z)=2×Σ(cos2α(p±zi/n)−1
(i=1、2、3、・・・、n)
このようにして、得られたfp(p)値及びfp(p±z)値のうち最大値が得られた場合に設定した仮基準線を基準線とした。
<平面方向の繊維配向パラメーター(fp値)の測定>
実施例・比較例で得られた繊維強化プラスチック成形体用基材を幅3cm×長さ3cmとなるように切り出し、この試験片をスライドガラスで挟み、当該試験片の一方の面を光学顕微鏡にて観察した。光学顕微鏡には、キーエンス社製、マイクロスコープを用い、300倍に拡大して反射光にて繊維を観察した。ここでは、上記一方の面のうちの連続した2.0mm2の測定領域を観察した。そして、この測定領域中に存在する、観察像において視認し得る全ての繊維(繊維数はm本とする)について、後述する方法で設定した基準線に対する角度θi(i=1〜m)を測定した。配向角度θiは、基準線に対して時計回りの方向の角度を測定し、0°以上180°未満の角度とした。そして、設定された基準線に対する繊維の角度θiから、以下の式(2)を用いて厚み方向の繊維配向パラメーターを算出した。
fp=2×Σ(cos2θi/m)−1 式(2)
そして、反対面についても同様に測定し、一方の面と反対面の平均値を求めて、これを平面方向の繊維配向パラメーター(fp)とした。なお、一方の面の測定領域と反対面の測定領域は、平面視において重なる領域とした。また、一方の面および反対面のいずれの観察においても、一方の面および反対面のそれぞれから深さ10μm以上の部分に焦点を合わせて観察を行った。
なお、基準線は下記の方法で決定した。基準線を決定する際には、まず仮基準線pを選択し、上記測定領域内に存在する視認し得る全ての繊維m本の角度を測定した。この場合、仮基準線pと各繊維の角度は、α(p)i(i=1〜m)で表した。
仮基準線pとした際の繊維配向パラメーター(fp(p))は、下記式を用いて算出した。
fp(p)=2×Σ(cos2α(p)i/m)−1
(i=1、2、3、・・・、m)
次に、仮基準線pを±1°ずつ、±90°となるまで回転させた仮基準線(p+z、p-z(z=1〜90))をとり、仮基準線p+zと仮基準線p-zと繊維m本の角度を算出した。この場合の角度は、α(p+ziと、α(p-zi(i=1〜m)で表した。
回転させた仮基準線(p+z、p-z(z=1〜90))と強化繊維の繊維配向パラメーター(fp(p±z))は、下記式を用いて算出した。
fp(p±z)=2×Σ(cos2α(p±zi/m)−1
(i=1、2、3、・・・、m)
このようにして、得られたfp(p)値及びfp(p±z)値のうち最大値が得られた場合に設定した仮基準線を基準線とした。
<曲げ強度の測定>
実施例及び比較例で得られた曲げ強度測定用繊維強化プラスチック成形体用基材を、幅10cm×長さ10cmとなるように切り出し、合計重量が10gとなるように、抄造方向を揃えて積層した。この積層物に、硬化剤を添加し混練りしたエポキシ樹脂(有限会社、ブレニー技研製GM−6800)を15gスポイトで滴下し、温度60℃の熱プレス機に挿入し、圧力8MPaで2時間成形し、繊維強化プラスチック成形体を得た。
得られた繊維強化プラスチック成形体を、JIS K 7074 「炭素繊維強化 プラスチックの曲げ試験方法」に従って、繊維の配向方向(マシンディレクション、以下MDとする)及び繊維の配向と直角方向(クロスディレクション、以下CDとする)について測定し、MD方向とCD方向の強度及び強度比測定した。
なお、曲げ強度の相乗平均値は以下の式で算出した。
曲げ強度の相乗平均値=√(FMD×FCD)
ここで、FMDはMD方向の曲げ強度を表し、FCDはCD方向の曲げ強度を表す。
Figure 0006413851
表1より、実施例で得られた繊維強化プラスチック成形体用基材を用いて繊維強化プラスチック成形体を成形した場合、曲げ強度に優れた繊維強化プラスチック成形体を得られることがわかる。特に、実施例で得られた繊維強化プラスチック成形体用基材から成形された繊維強化プラスチック成形体は、MD方向の曲げ強度が優れている。
10 繊維強化プラスチック成形体用基材
20 強化繊維
30 バインダー成分
40 包埋用エポキシ樹脂
50 断面観察用試験片
P 基準線
P' 基準線と平行な線(補助線)
Q 基準線に対する強化繊維の角度を表す線
R 基準線に対する強化繊維の角度を表す線

Claims (9)

  1. 強化繊維とバインダー成分とを含む繊維強化プラスチック成形体用基材であって、
    前記繊維強化プラスチック成形体用基材における厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)が0.5〜1.0であり、
    前記繊維強化プラスチック成形体用基材における平面方向の繊維配向パラメーター(fp)が0.3〜1.0であることを特徴とする繊維強化プラスチック成形体用基材。
  2. 前記強化繊維は炭素繊維である請求項1に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材。
  3. 前記バインダー成分の含有量は、前記繊維強化プラスチック成形体用基材の全質量に対して0.1〜10質量%である請求項1又は2に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材。
  4. 前記強化繊維の繊維長は10mm以上である請求項1〜のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材。
  5. 強化繊維と、バインダー成分を混合したスラリーを、湿式抄紙する工程を含み、
    前記傾斜型抄紙機のワイヤーは、ジェットワイヤー比が0.98以下となるように走行することを特徴とする繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法であって、
    前記繊維強化プラスチック成形体用基材における厚み方向の繊維配向パラメーター(fp)が0.5〜1.0であり、
    前記繊維強化プラスチック成形体用基材における平面方向の繊維配向パラメーター(fp)が0.3〜1.0である繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法
  6. 前記傾斜型抄紙機のワイヤーは、ジェットワイヤー比が0.90以下となるように走行する請求項に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法。
  7. 前記スラリーの分散媒の25℃における粘度は、0.8〜4.0mPaである請求項5又は6に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材を用いて繊維強化プラスチック成形体を製造する方法であって、
    前記繊維強化プラスチック成形体用基材に樹脂を含浸し樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を得る工程、又は樹脂を積層し樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を得る工程と、
    記樹脂含有繊維強化プラスチック成形体用基材を加圧する工程と、を含むことを特徴とする繊維強化プラスチック成形体の製造方法。
  9. 請求項に記載の製造方法で製造された繊維強化プラスチック成形体。
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