本発明のある態様に係る自動二輪車は、車体と、前記車体に設けられ、車体側から少なくとも左右方向一方に突出する突出部とを備え、前記突出部は、その上面に沿って走行風が前方から後方に通過することによって車体を下方に押し付ける力を生じる構造を有する。
上記構成により、車体が下方に押し付けられることで、路面に車輪を押し付けて路面接地力が向上する。本発明者らは車体側方であれば、走行風に乱れが少ないことを発見した。このような知見に基づいて、乱れが少ない車体側方の走行風を用いることで、効果的に下向きの揚力を発生させることができ、突出部が過大となることを防いで、路面接地力を向上できる。なお、ここで突出部は、例えばブレードを有し、そのブレードの上面に沿って走行風が前方から後方に通過するような構造でもよい。
前記突出部は、走行風が上下面に沿ってそれぞれ流れ、下面に沿って流れる走行風の流速が上面に沿って流れる走行風の流速よりも大きい翼断面形状に形成されてもよい。
上記構成により、走行抵抗力を抑制しつつ、下方に押し付ける力を発生することができる。ここで翼断面形状は、例えば前縁が曲線的で後縁が鋭くとがった形状でもよい。
前記突出部は、前記車体重心よりも前側に配置されてもよい。上記構成により、前輪の路面接地力が向上し、高速走行時における前輪の路面接地力の低下を防ぐことができる。
前記車体の側面に設けられたカウルを更に備え、前記カウルに前記突出部が位置してもよい。
上記構成により、乱れの少ない走行風を利用できる。また、車体側面のカウルにより突出部に沿う走行風が車体方向内側に逸れることを防ぐことができる。例えば、突出部がラジエータを覆うシュラウドの役目を果たすカウルに形成されてもよい。
前記カウルのうち前部から後方に進むにつれて車幅方向外方に膨らむ領域の後部に前記突出部の一部が位置してもよい。上記構成により、多くの走行風を導くことができる。
前輪の後方に配置されたラジエータを更に備え、前記カウルは、前記ラジエータ前方に開口を有して、当該ラジエータの車幅方向外側を覆い、走行風をラジエータへ導き、ラジエータ通過後の走行風を排出する排出口が形成されており、前記突出部は、前記カウルに設けられて、前記排出口よりも前方に配置されてもよい。
上記構成により、部品点数を削減しつつ、カウルの排出口から排出される走行風ではなくカウルの外側を通過する乱れの少ない走行風を利用できる。
前記突出部の前端部は、平面視において前方にいくにつれて幅が拡がる形状を有してもよい。上記構成により、多くの走行風を導くことができる。ここで例えば、突出部としてのブレードの前端部が、前方にいくにつれて幅が拡がる形状を有してもよい。
前記左右の突出部の各々は、前記突出部の車幅方向外側の端部から下方に向けて突出するガイド壁を更に有してもよい。上記構成により、多くの走行風を導くことができる。
前記突出部が設けられるカウルよりも前方に配置されて走行風を車幅方向外側に案内する前側案内部材を更に備え、前記突出部は、前記前側案内部材の上下端の間の高さに位置してもよい。
上記構成により、前部案内部材で案内された走行風を突出部に導くことができる。前側案内部材は、例えばフロントフェンダー、フロントフォーク下部を覆う保護カバーでもよい。
前記突出部は、前突出部と後突出部とに分割されており、前記前突出部と前記後突出部とは、車両の進行方向に対して間隙を有するように前後に並べられてもよい。
上記構成により、1つの部材により突出部を構成する場合と比べて、突出部の前後の長さを短くしながらも良好なダウンフォースが得られるので、ライダー操作に影響を与えることなく高速安定性を向上させることができる。
前記突出部の上面は、後方に進むにつれて上方に傾斜する傾斜面が形成されてもよい。上記構成により、走行風が上面に沿って流れることで、走行風が偏向されるときに生じる力の反作用によって車体を下方に押し付けることができる。即ち、突出部の上面が、後方に進むにつれて車両の進行方向に対して迎角を形成し、この迎角による押し下げ力を利用してダウンフォースを増加させることができる。なお、突出部の形状は、翼形状でなくてもよい。
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は自動二輪車に騎乗した運転者から見た各方向であり、左右方向は車体の車幅方向と一致する。以下の説明では、車体の車幅方向の内側を「内側」といい、車体の車幅方向の外側を「外側」という。
まず、本実施形態の自動二輪車100において、車体にダウンフォースを作用させることが必要な事情を説明する。自動二輪車100では、左右のサイドカウル21は、前端部から後端部に進むにつれて車幅方向外側に進んで傾斜することで、運転者の脚部に向かう走行風を逸らす。サイドカウル21の後端部は、ラジエータ17の近傍に位置する。ラジエータ17を通過した走行風は、サイドカウル21に干渉することなく、車幅方向後方かつ下方に逸れて流れる。サイドカウル21は、ラジエータ17へ走行風を導く導風機能を有する。各サイドカウル21の車幅方向内側面は、ラジエータ17よりも前方に延びて配置される。左のサイドカウル21と右のサイドカウル21との間の空間の上方は、ヘッドライト12及びフロントカウル20等によって塞がれる。また、左右のサイドカウル21間には、車両前方からの走行風導入可能に開口19aが形成され、左右のサイドカウル21間であって、サイドカウル21の前端部よりも後方にラジエータ17が配置される。これによって、左右のサイドカウル21間の開口19aから導入され、サイドカウル21の前端より後方に導かれた走行風は、車幅方向外側に逸れることが防がれて、ラジエータ17に導かれる。
高速走行によって左右のサイドカウル21間の空間内のラジエータ17に導かれる走行風が多量になると、走行風によって前輪2を上方に持上げる方向の力が車両に生じて、前輪2の接地荷重が低下しやすい。本実施形態では、ラジエータ17の前面およびエンジン16のシリンダ前面が下方に進むにつれて後方に傾斜するので、前輪2を上方に持ち上げる方向の力が働きやすい。本実施形態では、後述する車体側面に設けられた突出部30が採用されることによって、突出部30の上方に臨む面に衝突する走行風によって、ダウンフォースを発生させて、突出部30とともに車体を下方に押し付ける力を発生させる。これによって、高速走行時において、前輪2の接地荷重の低下を抑えて、駆動力及び制動力を前輪2から路面に伝えやすくできる。また左右のサイドカウル21間の空間に導かれる走行風にかかわらず、ダウンフォースを発生させて、前輪2の接地荷重を高めることで、前輪2から路面に与える駆動力および制動力を高めることができ、走行性能を向上させることができる。
以下、自動二輪車100の構成等を具体的に説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施の形態に係る自動二輪車100の左側面図である。図1に示すように、自動二輪車100は、車体1と、前輪2と、後輪3と、車体1に設けられ、車体側から左右方向一方に突出する突出部30とを備える。
車体1は、車体フレーム4と、車体フレーム4を前方から覆うフロントカウル20と、車体フレーム4の前部を側方から覆う左右一対のサイドカウル21とを備える。車体フレーム4は、ヘッドパイプ6と、ヘッドパイプ6から後方に向かって延びる左右一対のメインフレーム8と、メインフレーム8の後部に連続してスイングアーム9の前端部が回動自在に支持される左右一対のピボットフレーム10と、ピボットフレーム10から後方に延びる左右一対のシートレール11とを有する。
フロントカウル20は、車体1を前方から覆うように車体フレーム4の前部に取り付けられている。サイドカウル21は、フロントカウル20に連なるようにフロントカウル20の後側に配置され、車体1を側方から覆うように車体フレーム4の前部に取り付けられている。フロントカウル20及びサイドカウル21は、流線形状を成し、車体1に沿って流れる走行風を整流して空気抵抗を低減する。フロントカウル20の中央上部にはウインドシールド20aが設けられている。フロントカウル20の前部にはヘッドランプ12が設けられている。フロントカウル20の側部には左右一対のサイドミラー13が取り付けられている。
前輪2は略上下方向に延びるフロントフォーク5の下端部にて回転自在に支持され、該フロントフォーク5は、その上端部に設けられたアッパーブラケット(図示せず)と該アッパーブラケットとを介してステアリングシャフト(図示せず)に支持されている。更にフロントフォーク5には前輪2上部を覆うようにフロントフェンダー22が取り付けられている。フロントフォーク5前方にはフロントフォーク5への異物侵入を防ぐフォークガード部23が配置されている。ステアリングシャフト(図示せず)はヘッドパイプ6によって回転自在に支持されている。該アッパーブラケットには左右へ延びるバー型のステアリングハンドル7が取り付けられている。従って、運転者はステアリングハンドル7を回動操作することにより、前記ステアリングシャフトを回転軸として前輪2を所望の方向へ転向させることができる。また、ステアリングハンドル7の後方には燃料タンク14がメインフレーム8に固定されており、この燃料タンク14の後方には乗車用シート15が取り付けられている。
前輪2と後輪3との間には、エンジン16がメインフレーム8及びピボットフレーム10に支持された状態で搭載されている。前輪2の後方かつエンジン16の斜め上方には、前傾したラジエータ17が配置されている。エンジン16は、ラジエータ17とウォータジャケット(図示せず)との間で冷却水を循環させて、ラジエータ17で冷却水の放熱を行う冷却構造を備えている。ラジエータ17は、シュラウドの役目を果たすサイドカウル21により覆われている。
以下では、図2も参照しながら説明する。図2は、図1の自動二輪車の正面図である。図2に示すように、フロントカウル20の左右両側にサイドカウル21がそれぞれ設けられ、フロントカウル20及びサイドカウル21の組合せであるカウル19全体が、前方から見て逆凹形状をなしている。カウル19は、その前側においてラジエータ17前方に位置する開口19aを有して、当該ラジエータ17の前側空間を車幅方向外方から覆い、走行風をラジエータ17へ導くように構成されている。ラジエータ17は、それを通過する走行風によりエンジンの冷却水を冷却する。また、カウル19は、その後側においてラジエータ17通過後の走行風を排出する排出口19bが形成されている(図1参照)。
自動二輪車100は、車体1に設けられ、車体1側から左右方向両側に突出する突出部30を備える。突出部30は、車体重心位置Aよりも前側に配置される。本実施の形態では、突出部30は、車体側面に設けられたサイドカウル21に位置する。突出部30は、エンジン16よりも前方においてサイドカウル21から突出しているので、乗車時にライダーの膝に接触することはなく、ライダー操作に影響を与えることは無い。また、突出部30は、左右のサイドカウル21にそれぞれ左右対称に設けられ、かつ、左右の突出部は互いに同一重量である。これにより、突出部30が走行時のバランスに影響を与えることが防がれる。
また、突出部30は、フロントカウル20の前部のヘッドランプ12よりも下方に配置されている。突出部30は、カウル19の開口19aの上縁(つまりフロントカウル20の下縁)よりも下方に配置されている。
自動二輪車100は、サイドカウル21から離れた状態で突出部30よりも前方に配置されて走行風を車幅方向外側に案内する前側案内部材を備える。本実施の形態では、前側案内部材として、フロントフォーク5前方に配置されてフロントフォーク5への異物侵入を防ぐフォークガード部23が用いられる。本実施の形態では、フォークガード部23は、フロントフェンダー22とともに前輪2車軸支持部に固定されて、フロントフォーク5に向かう走行風を車幅方向外側に案内するようにフロントフォーク5前方を覆い前端から後方に進むにつれて車幅方向外側に向かう傾斜面が形成される。これにより、フォークガード部23で案内された走行風が突出部30に導かれる。突出部30は、フロントフェンダー22の上下端の間の高さに位置する。なお、前側案内部材は前輪2上部のフロントフェンダー22でもよい。
突出部30は、車体正面視において、ラジエータ17前方に位置する開口19aの左右方向外側位置に位置し、前記開口19aの上端と下端との間の上下位置に配置される。本実施の形態では、突出部30は、カウル19のうち、大略的に鉛直方向に延びて前後方向に延びるサイドカウル21に形成される。前側案内部材は、突出部30よりも車幅方向内側に配置され、正面視にて突出部30と同じ高さ位置に配置される部分を含むことが好ましい。
次に、突出部30の具体的構成について説明する。
図3は、図2の自動二輪車の左側方の突出部30の斜視図である。図3に示すように、突出部30は、上下面が形成されたブレード形状(板形状)を主に有する。そこで、以下では、突出部30をブレード装置として説明する。ブレード装置30は、サイドカウル21から側方に突出する前ブレード31と、前ブレードよりも後方においてサイドカウル21から側方に突出する後ブレード32と、前ブレード31及び後ブレード32の車幅方向外側の端部から下方に向けて突出しているガイド壁33とを備える。
ブレード装置30は、図1に示したように、車体重心Aよりも前側に配置されているので、前輪2の路面接地力が向上し、高速走行時における前輪の路面接地力の低下を防ぐことができる。また、本実施の形態では、前ブレード31、後ブレード32、及びガイド壁33の表面は、樹脂で覆われており、風が表面を通り易い滑らかな形状をしている。
本実施形態のサイドカウル21は、その外側面に設けられて車幅方向内方に窪んだ凹部21cを有する。図6で後述するように、前ブレード31の車幅方向の内端部がサイドカウル21の凹部21cに挿入されている。
ところで、カウル19の排出口19bより後方はエンジン16及びその周辺部品が配置されており、それらの表面は一様でないため、排出された走行風の気流は乱れる。そこで、ブレード装置30は、カウル19の排出口19bよりも前方にずれた位置に配置される。後ブレード32の後端部は、カウル19の排出口19bより後方に突出している。即ち、ブレード装置30の後端部は、カウル19よりも後方に突出している。上記構成により、走行風を整流するための部品点数を削減しつつ、排出口19bから排出される走行風ではなく、カウル19の外側を通過する乱れの少ない走行風を路面接地力の向上に利用できる。
図4は、図3のブレード装置30の正面図である。図4に示すように、ガイド壁33は、前ブレード31及び後ブレード32の車幅方向外側の端部から下方に向けて突出している。ガイド壁33の下側の端縁33aは、車幅方向内方(サイドカウル21側)に向けて湾曲している。上記構成により、サイドカウル21とガイド壁33とが、前ブレード31及び後ブレード32の左右両端に位置する一対の翼端板の機能を果たす。即ち、サイドカウル21の外側面とガイド壁33の内側面とが、ブレード31及び32の下面に沿って流れる走行風(図4の紙面の表から裏に向かう方向)をブレード下面から逃がさないように捉えることができ、より効果的にダウンフォースを得ることができる。
図5は、図4の自動二輪車のブレード装置30のV−V線断面図である。図5に示すように、本実施の形態の前ブレード31及び後ブレード32の断面形状は、前縁が曲線的で後縁が前縁よりも鋭くとがった略翼断面形状である。前ブレード31及び後ブレード32は、その下面の前後方向長さが上面の前後方向長さよりも長い断面形状を有している。前ブレード31及び後ブレード32は、走行風(図5の点線矢印)がその上下面に沿ってそれぞれ流れ、下面に沿って流れる走行風の流速が上面に沿って流れる走行風の流速よりも大きくなるように形成されている。即ち、前ブレード31及び後ブレード32は、揚力を発生させる翼を上下反転させた形状とすることで、ブレード31,32の上側と下側との間の圧力差によってダウンフォースを発生し、車体1を下方に押し付ける作用を発揮する。このように、車体1が下方に押し付けられることで、路面に前輪2が押し付けられて路面接地力が向上する。
前ブレード31と後ブレード32とは、車両の進行方向に対して間隙Gを有するように前後に並べられている。これにより、前ブレード31の上面に沿って流れた走行風の一部が、間隙Gを通過することで、後ブレード32の下面に沿って流れる走行風に合流することになる。しかも、本実施形態では、後ブレード32の前端部が前ブレード31の後端部よりも上方に位置し、後ブレード32の前端部が前ブレード31の後端部に側面視で重なっているため、前ブレード31の上面に沿って流れた走行風の一部が、間隙Gを通過して後ブレード32の下面に導かれやすくなる。よって、後ブレード32の下面に沿って流れる走行風の流速が上面に沿って流れる走行風の流速よりも大きくなるように促進することができる。これにより、前後のブレード間に間隙Gを設けない場合に比べ、ブレードの幅又は長さが過大となるのを防ぎつつダウンフォースを効率よく発生することができる。すなわち、1つの部材によりブレードを構成する場合と比べて、ブレードの前後幅を小さくしてライダー操作への影響を防ぎ、また、ブレードの突出長さを短くして車体1のバンク角を十分に確保することができる。
また、ブレード装置30の上面は、後方に進むにつれて上方に傾斜する傾斜面が形成される。本実施の形態では、後ブレード32の上面が、後方に進むにつれて上方にいくように傾斜している。即ち、後ブレード32は、その後端がその前端よりも上方に位置している。よって、後ブレード32の上面に沿って走行風(図3の点線矢印)が前方から後方に通過して走行風が偏向されるときに生じる力の反作用によって後ブレード32の上面を下方に押し付ける力が作用する。即ち、ブレード装置30の上面が、後方に進むにつれて車両の進行方向に対して迎角を形成し、この迎角による押し下げ力を利用してダウンフォースを更に増加させることができる。
また、前ブレード31の前端と後端とを結ぶ仮想線の水平線に対する傾斜角は、後ブレード32の前端と後端とを結ぶ仮想線の水平線に対する傾斜角よりも小さい。これにより、走行風が前ブレード31に当たることによる抵抗が小さくなる。よって、後ブレード32により後ブレード32の上面を下方に押し付ける力を得ながらも、ブレード装置30全体として、走行風による抵抗を抑制することができる。
前ブレード31は、平板形状を有する金属製の芯金31cと、芯金31cの下側を覆う樹脂製の下部材31aと、芯金31cの上側を覆う樹脂製の上部材31bとを有している。前ブレードの芯金31c、下部材31a及び上部材31bは、下方からネジSで互いに固定されている。後ブレード32は、金属製の芯金32aと、芯金32aを覆う樹脂製のブレード本体32bとを有している。芯金32aは、後ブレード32の下面の一部を構成している。後ブレードの芯金32aとブレード本体32bとは、下方からネジSで互いに固定されている。
図6は、図4の自動二輪車100のブレード装置30の平面図である。図6に示すように、車幅方向に延びる支持部材(図示せず)の両端部に左右一対のサイドカウル21が取り付けられている。自動二輪車100の車体1前方の走行風(図6の点線矢印)は、カウル19の開口19aに導入されるとともに、フロントフォーク5下部を覆う左右のフォークガード部23により、車幅方向外側に案内され、サイドカウル21の外側面で整流される。ブレード装置30は、サイドカウル21に設けられているので、乱れの少ない走行風を利用できる。また、サイドカウル21によりブレード装置30に沿う走行風が車体方向内側に逸れることを防ぐことができる。
本実施の形態では、ブレード装置30の一部が、サイドカウル21のうち前部から後方に進むにつれて車幅方向外方に膨らむ領域の後部に位置する。また、ブレード装置30の前ブレード31は、平面視において前方にいくにつれて幅が拡がる形状を有している。上記構成により、多くの走行風をブレード装置30に導くことができる。
本実施の形態では、左右の前ブレード31の各々は、その車幅方向の内端部をサイドカウル21の外側面に設けられて前後方向に延びる凹部21cに挿入することでサイドカウル21に支持されている。上記構成により、ダウンフォースが作用する左右のブレード装置30の内端部をサイドカウルの凹部21cにより安定して支持できる。更に、前ブレードの板金31cの車幅方向の内端部には、複数のスタッドボルト31dが形成されている。これらスタッドボルト31dの各先端は、サイドカウルの凹部21cに空いた穴を貫通してサイドカウル21の内側面側でナットにより固定されている。このように、ブレード装置30はサイドカウル21の凹部21cによって支持されるとともに、スタッドボルト31dによってもサイドカウル21に固定されているので、ブレード上下面で発生する上下方向の力に耐え得る。
また、左右の後ブレード32の各々(図6の点線)は、後ブレードの芯金32aの車幅方向の内側に突出するスタッドボルト32cを有し、スタッドボルト32cは、芯金32aの前端部を貫通して芯金32aに固定されている。このスタッドボルト32cも、サイドカウル21の凹部21cに空いた穴を貫通してサイドカウル21の内側面側でナットにより固定されている。
図7は、図4の自動二輪車のブレード装置30の底面図である。図7に示すように、前ブレード31の芯金31c、下部材31a及び上部材31bは、下方からネジSで複数個所固定されている。後ブレード32の芯金32aとブレード本体32bとは、下方からネジSで複数個所固定されている。ガイド壁33の下側の端縁33aは、後方にいくに従って車体内側(サイドカウル21側)に湾曲している。ブレード31及び32の幅は後方に従って狭くなるが、ガイド壁33の端縁33aは後方にいくに従って突出量が増加している。上記構成により、多くの走行風(図7の点線矢印)を導くとともに、ガイド壁33により導かれた走行風が絞り込まれるので、ベンチュリ効果によりブレード31,32の下面に沿って流れる流速がより大きくなる。これにより、効果的なダウンフォースを得ることができる。
また、本実施の形態では、突出部30は、側面視でラジエータ17の上端と下端との間の高さに位置し、ラジエータ17とオーバラップする位置に配置される(図1参照)。突出部30を通過した走行風と、ラジエータ17を通過した走行風とが合流する通路が形成されるように車体設計される。これによってラジエータ17での走行風の通過を促進させることができる(図6参照)。例えば突出部30を通過することによって偏向された走行風の方向と、ラジエータ17に直交する直交方向とが一致するか又は近づくように形成されてもよい。
突出部30は、フロントカウル20前端よりも下方に配置されることで、フロントカウル20によって乱された走行風が突出部30に導かれることを防ぐことができ、乱されていない走行風を突出部30に導くことができる。本実施の形態では、突出部30は、前輪2の上端部よりも下方に配置される(図1参照)。
また、ブレード装置(突出部)30は、金属のような剛性の高い材料で形成される剛性部材(例えばブレード31の芯金31c及びスタッドボルト31d)を有し、この剛性部材によってカウル19(例えばサイドカウル21)またはカウル支持部(例えば車体フレーム4)に固定される。ブレード装置(突出部)30は、カウル19(例えばサイドカウル21)又はカウル支持部(例えば車体フレーム4)に直接接続されることで、ブレード装置30の振動を防ぐことができる。
また、ブレード装置(突出部)30の前記剛性部材は、当該剛性部材よりも剛性が低く軽量な材料で形成される例えば樹脂からなる軽量部材(例えば前ブレード31の下部材31a及び上部材31b、後ブレード本体32b)によって覆われる。これによって必要な支持剛性を保ちつつ、軽量化を図ることができる。また、軽量部材として成形加工されたものを用いることで、滑らかな表面形状に形成しやすい。
また、ブレード装置(突出部)30の翼部分が、カウル19に隣接して形成されることで、カウル19に沿って前方から後方に流れる走行風を受けることができ、カウル19に対して車幅方向に間隔を空ける場合に比べて好適にダウンフォースを得ることができる。
また、前ブレード31及び後ブレード32は、下面の前後方向長さが上面の前後方向長さよりも長い断面形状を有することで、ブレード31、32の上下面に発生する圧力差が大きくなり、効果的にダウンフォースを得ることができる。本実施の形態のように側方から見たブレードの断面が翼断面を上下逆向きにした形状であれば、安定したダウンフォースを効果的に得ることができる。
また、左右のブレード装置30(突出部)は、サイドカウル21の外側面に取り付けられているので、サイドカウル21外面に沿って流れる安定した走行風を利用することができ、ブレードにより発生するダウンフォースを効果的に得ることができる。
サイドカウル21は、その外側面に凹部を有し、左右のブレード装置30(突出部)の各々は、その車幅方向の内端部を凹部21cに挿入することでサイドカウル21に支持されているので、ダウンフォースが作用する左右のブレード装置30の内端部をサイドカウル21の凹部21cにより安定して支持できる。
ガイド壁33の下端部は、車幅方向内方に向けて湾曲しているので(図4参照)、ブレードの下面に沿って流れる走行風をブレード下面から逃がさないように捉えることができ、より効果的にダウンフォースを得ることができる。
尚、本実施の形態では、突出部30は、左右方向両側に形成されたが、左右方向一方のみに形成されてもよい。車幅方向に対する左右方向一方と他方との車体バランスの偏りを抑えるために、突出部30を除く部分で左右方向一方側の重量が大きい場合には、突出部30の左右方向他方を左右方向一方に比べて重量を大きく形成してもよい。
また、前ブレード31及び後ブレード32の上下面を通過する走行風により生じる上下圧力差によってダウンフォースを得てもよいし、前ブレード31及び後ブレード32に衝突する走行風によって前ブレード31及び後ブレード32に下向きの力が与えられるようにしてダウンフォースを得てもよい。
尚、本実施の形態の自動二輪車は、突出部30は、車体側面のサイドカウル21に設けたが、これに限定されるものではなく、サイドカウル21を設けない自動二輪車の場合では、突出部30は、例えば車体フレーム4の車体側面に設けてもよい。
尚、本実施の形態では、ブレード装置30は、サイドカウル21に固定されていたが、これに限られるものではなく、必要に応じてサイドカウル21に着脱可能な構成でもよい。ブレード装置(突出部)30が、カウル19に対して着脱可能に構成されることで、必要に応じて着脱することができ、利便性を向上することができる。またブレード装置30が破損した場合でも、カウル19を取り換えることなく修理することができる。また、ブレード装置30が複数種類用意される場合には、運転者の好みに応じたブレード装置30を取り付けることができる。
ブレード装置30をサイドカウル21に装着しない場合には、適宜、サイドカウル21と同系色の板状部材により、サイドカウル21の凹部21cを塞いでもよい。
尚、ブレード31,32は、全体として迎角(angle of attack)をつけてもよいし、後部だけ迎角をつけてもよい。
尚、本実施の形態では、ブレード装置30は、車体側方であれば特に限定されない。例えば乗車シート15よりも後方、又はカウル19の開口19aよりも後方でもよい。
尚、本実施の形態では、前後のブレード31,32は、車両進行方向に対して所定角度に固定したが、前ブレード又は後ブレードが可動でもよい。その際には、車両の進行方向に対するブレードの傾斜角度を変更可能な構成でもよい。
尚、本実施の形態では、ブレードは、板金を樹脂で覆う構成としたが、ブレード全体をFRP(繊維強化プラスチック)で形成してもよい。また、FRPにより、ブレードの板金と樹脂を一体的に形成してもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態の自動二輪車の基本構成は、第1実施形態と同様である。以下では、第1実施形態と共通する構成の説明は省略し、相違する構成を中心に説明する。
図8は、第2実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。図8に示すように、自動二輪車101のサイドカウル121に、ブレード装置(突出部)130が設けられている。本実施形態では自動二輪車101の右側面を中心に説明するが、左側のサイドカウル121にも同様な構成のブレード装置130が設けられている。
ブレード装置130は、サイドカウル121から側方に突出する単一のブレードのみからなる。本実施形態のブレード装置130は、第1実施形態の前ブレード31に相当する。ブレード装置130は、上下面が形成され、その上面に沿って走行風が前方から後方に通過することによって車体を下方に押し付ける力を生じる構造を有する。ブレード装置130の車体外側は流線形状をしている。
図9は、図8のサイドカウル121からブレード装置130を取り外した状態を示した右側面図である。図9に示すように、ブレード装置130の装着部分に対応して、サイドカウル121のアウターパネル121aの表面には凹部121b及び凸部121cが設けられている。
アウターパネル121aの凹部121bは、ブレード装置130の装着部分に対応して設けられた溝である。溝の上下の幅寸法は、ブレード装置130の上面と下面との間の幅寸法に適合する。凹部121bの溝に、ブレード装置130の一部が嵌めこまれる。そして、凹部121bの底面にはボルト穴41が2箇所設けられている。これらのボルト穴41から、ブレード装置130を固定すべく、2本のボルト40が突出している。
アウターパネル21aの凸部121cは、凹部121bの車体の進行方向前側に設けられた突起である。この凸部121cは、凹部121bに内挿されたブレード装置130の車体外側の形状に連なるような流線形状をしている。
図10は、図8のサイドカウル121からアウターパネル121aのみを取り外した状態の右側面図である。図10に示すように、アウターパネル21aは、インナーパネル21dの裏側から複数のボルト40でネジ止めされており、サイドカウル121からアウターパネル21aを取り外した状態では、内側のインナーパネル21dが露出する。
サイドカウル121の内部、即ち、インナーパネル121dとアウターパネル121aとの間に形成された内部空間には、線状部材51を含む収容部材50が収容される。収容部材50は、例えば、タンク又は電装品である。線状部材51は、例えば、タンクに連結したホース又は電装品の配線である。
また、インナーパネル121dとアウターパネル121aとの間の内部空間R(図11参照)には、ブレード装置130に対応する位置にてスペーサ52が配置される。スペーサ52は、締結部材52aにより上部と下部の2箇所でインナーパネル21dに固定される。線状部材51は、スペーサ52とブレード装置130の間を通過するように配線される。
図11は、右側面のサイドカウル121とブレード装置130の水平断面図である。図11に示すように、ブレード装置130は、車体から側方に突出するようにサイドカウル121に取り付けられる。ブレード装置130の車幅方向内側の一部が、アウターパネル121aの凹部121bの内部に挿入されつつ、ブレード装置130の車幅方向内側の取り付け面30aが、アウターパネル121aの底部のボルト40で2箇所ネジ止めされて固定される。また、サイドカウル121の凸部121cは、凹部121bに内挿されたブレード装置130の車体外側の形状に連なるような流線形状をしているので、サイドカウル121とブレード装置130の境界面は滑らかな流線形である。サイドカウル121のうち前部から後方に進むにつれて車幅方向外方に膨らむ領域にブレード装置130が位置する。ブレード装置130の前端部は、平面視において前方にいくにつれて幅が狭まる形状を有する。
サイドカウル121の内部空間Rには、ブレード装置130に対応する位置にスペーサ52が配置される。スペーサ52は、ブレード装置130をアウターパネル21aの外表面で固定するための補強部材である。サイドカウル121内部には線状部材51が収容される。
スペーサ52の表面には2つの取り付け面52b及び52cが形成されている。サイドカウル121のアウターパネル21a及びブレード装置130の取り付け面30aの形状に応じて、スペーサ52の2つの取り付け面52b及び52cの高さは異なる。これにより、ブレード装置130は、サイドカウル121のアウターパネル21aに強固に固定される。
スペーサ52にはサイドカウル121内部において線状部材51が挿通さる挿通部52dが設けられる。具体的にはスペーサ52の表面中央に上下方向に延びる溝部52d(挿通部)が形成されており、溝部52d内を線状部材51が通過する。ここでは、溝部52dとアウターパネル121aの内面とが合わさって貫通孔が形成され、線状部材51はその貫通孔を通過する。これにより、ブレード装置130がサイドカウル121表面で強固に固定されるとともに、線状部材51がサイドカウル121内部で補強部材を通過し、コンパクトなレイアウトを実現できる。
また、本実施形態によれば、サイドカウル121のうち前部から後方に進むにつれて車幅方向外方に膨らむ領域の後部にブレード装置130の一部が位置するので、より多くの走行風を導くことができる。
尚、本実施形態では、ブレード装置130は、第1実施形態の前ブレード31に相当する単一のブレードのみからなる構成であったが、第1実施形態の後ブレード32に相当するブレードを備えてもよい。ブレード装置130は、その車幅方向外側の端部から下方に向けて突出するガイド壁33を有してもよい。更には、ガイド壁33の下端部が、車幅方向内方に向けて湾曲していてもよい。また、本実施形態のスペーサ52には、挿通部として溝部52dを形成したが、貫通孔を形成してもよい。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び機能のうち少なくとも一方の詳細を実質的に変更できる。