例えば、上記特許文献1等に開示された先行技術では、バイオセンサストリップなどの分析用具において、不適合な分析用具を検出することができないという問題点を生じることがある。具体的にいえば、上記のような先行技術では、分析用具において、一対のヘマトクリット電極と一対のグルコース電極との間に、分離要素を設けているだけであり、一対のグルコース電極上に滴下した試薬が、その滴下ミス、または当該分析用具の輸送時での振動や落下の衝撃、あるいは分析用具の保管状態などにより、一対のヘマトクリット電極上に飛散することがある。このように試薬が一対のヘマトクリット電極上に飛散した場合、上記のような先行技術では、このような試薬の飛散を検知することができなかった。この結果、上記のような先行技術では、不適合な分析用具を検出することができないために、ヘマトクリットの値を正確に測定することができずに、グルコースの値を適切に補正することができないという問題点を生じる。
上記の課題を鑑み、本実施形態は、試薬の飛散による不適合な分析用具を検出することができる装置及び方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態にかかる測定方法は、試薬を用いて、生物学的な試料の測定対象成分を測定する方法であって、
少なくとも1つのテスト電極対に検知信号を印加する工程と、
前記テスト電極対での前記検知信号に対する電気的応答を測定する工程と、
測定した前記電気的応答に基づき、前記テスト電極対上の前記試薬の有無を判別する工程とを含む。
本発明の一実施形態にかかる測定装置は、試薬を用いて、生物学的な試料の測定対象成分を測定する装置であって、
少なくとも1つのテスト電極対に印加された検知信号に対する電気的応答を測定する測定部と、
測定した前記電気的応答に基づき、前記テスト電極対上の前記試薬の有無を判別する制御部を備える。
上記測定方法及び測定装置では、少なくとも1つのテスト電極対に対して、検知信号を印加するとともに、当該検知信号に対する電気的応答を測定する。そして、この電気的応答に基づいて、上記テスト電極対上の試薬の有無が、判別される。これにより、試薬の飛散による不適合な分析用具を検出することができる測定方法及び測定装置を提供することができる。
また、上記測定方法において、前記試薬の有無を判別する工程では、測定した前記電気的応答と既知の値とを比較することにより、前記テスト電極対上の前記試薬の有無を判別することが好ましい。
この場合、上記テスト電極対上の試薬の有無を精度よく行うことができる。
また、上記測定方法において、前記電気的応答を測定する工程では、前記検知信号に対する電気的応答として、電流値を測定してもよい。
この場合、上記テスト電極対上の試薬の有無を容易に判別することができる。
また、上記測定方法において、前記検知信号を印加する工程の前、または前記電気的応答を測定する工程の後に、前記テスト電極対を用いて、第1の生物学的値を測定する工程を行ってもよい。
この場合、上記テスト電極対上への試薬の飛散の有無を判別する前、または判別した後に、第1の生物学的値を測定することができる。
また、上記測定方法において、前記第1の生物学的値を測定する工程では、前記試薬が設置されていない前記テスト電極対が用いられていることが好ましい。
この場合、第1の生物学的値を正確に測定することができる。
また、上記測定方法において、前記試薬が設置された他の電極対に対し、前記試料が前記試薬と反応した状態で、測定信号を印加することにより、第2の生物学的値を測定する工程を行ってもよい。
この場合、第2の生物学的値を求めることができる。
また、上記測定方法において、前記第1の生物学的値はヘマトクリットの値であって、前記第2の生物学的値はグルコースの値であって、測定したヘマトクリットの値を用いて、測定したグルコースの値を補正する工程を行うことが好ましい。
この場合、グルコースの値を精度よく求めることができる。
また、上記測定装置において、前記制御部は、測定した前記電気的応答と既知の値とを比較することにより、前記テスト電極対上の前記試薬の有無を判別することが好ましい。
この場合、上記テスト電極対上の試薬の有無を精度よく行うことができる。
また、上記測定装置において、前記測定部は、前記テスト電極対に印加された測定信号に対する電気的応答を測定し、
前記制御部は、測定した前記測定信号に対する前記電気的応答に基づいて、第1の生物学的値を求めてもよい。
この場合、第1の生物学的値を求めることができる。
また、上記測定装置において、前記試薬が設置された他の電極対に印加された測定信号に対する電気的応答を測定する他の測定部を備えるとともに、
前記試料の流路に位置するとともに、前記試薬が設置された前記他の電極対と、前記試料の流路に位置するとともに、前記試薬が設置されていない前記テスト電極対とを有する分析用具をさらに備えてもよい。
この場合、分析用具毎に、生物学的な試料の測定対象成分を測定することが可能となり、多くの生物学的な試料について、容易に測定することができる。
また、上記測定装置において、前記分析用具では、前記他の電極対と前記テスト電極対とが、前記試料の同じ流路内で、所定の距離の範囲内の位置に設けられてもよい。
この場合、分析用具の構造を大型化及び複雑化することなく、他の電極対及びテスト電極対の各々を用いた測定を行うことができる。
また、上記測定装置において、前記テスト電極対では、前記検知信号が印加される場合において、前記他の電極対に近い電極が作用極とされ、前記他の電極対から遠い電極が対極とされることが好ましい。
この場合、検知信号に対する電気的応答の測定感度を向上することができ、試薬の有無の判別を容易に行うことができる。
また、上記測定装置において、前記制御部は、前記他の測定部が測定した前記測定信号に対する前記電気的応答に基づいて、第2の生物学的値を求めてもよい。
この場合、第2の生物学的値を求めることができる。
また、上記測定装置において、前記第1の生物学的値はヘマトクリットの値であって、前記第2の生物学的値はグルコースの値であって、前記制御部は、求めたヘマトクリットの値を用いて、求めたグルコースの値を補正することが好ましい。
この場合、グルコースの値を精度よく求めることができる。
以下、本発明の測定装置、及び測定方法を示す好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、本発明を血糖値計に適用した場合を例示して説明する。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
[第1の実施形態]
(システムの構成例)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる血糖値計及び分析用具を説明する斜視図である。図1において、本実施形態の血糖値計1は、携帯型の測定装置であり、分析用具2と、この分析用具2が着脱可能に構成された測定器としての血糖値計本体1aを備えている。この分析用具2には、患者の血液(試料)が付着(導入)されるようになっており、分析用具2は、血液中の血糖値(グルコース値)を検出するための(バイオ)センサとしての機能を有するように構成されている。図1に示す血糖値計1は、例えば、携帯型の血糖測定器(BGM:Blood Glucose Monitoring)や血糖自己測定(SMBG:Self Monitoring of Blood Glucose)メータなどの血糖値計として使用することができる。
また、血糖値計本体1aには、短冊状の分析用具2を挿入するための挿入口1bが設けられている。また、血糖値計本体1aには、例えばマイクロプロセッサにて構成されるとともに、血糖値計1の各部の制御を行う後掲の制御部が設けられている。また、血糖値計本体1aは、後に詳述するように、分析用具2に対して、所定の電圧信号を供給するとともに、分析用具2から測定結果を示す電圧信号を受け取ってAD変換し、測定値を示す測定データを生成する測定部と、測定部で得られた測定データを記録する記録部を備えており、上記制御部が、測定部で得られた測定データを測定時間や患者IDなどと関連付けて、記録部に記録させるようになっている。
また、血糖値計本体1aには、測定データを表示する表示画面1cと、外部機器とデータ通信するためのコネクタ1dとが設けられている。このコネクタ1dは、外部機器としてのスマートフォンなどの携帯機器やパーソナルコンピュータなどとの間で、測定データ、測定時間、患者IDなどのデータを送受信するようになっている。すなわち、血糖値計1では、コネクタ1dを介在させて、外部機器に測定データや測定時間を転送したり、外部機器から患者ID等を受信して測定データなどと関連付けたりすることができるように構成されている。
なお、上記の説明以外に、例えば上記測定部を分析用具2の端部に設けて、分析用具2側で測定データを生成する構成でもよい。また、血糖値計本体1aにおいて、患者などのユーザがデータを入力するためのボタン、タッチパネル等の入力部を含むユーザインタフェースを備えてもよい。また、表示画面1cや記録部などを血糖値計本体1aに設けずに、血糖値計本体1aと接続可能な外部装置に設ける構成であってもよい。
(分析用具2の構成例)
次に、図2〜図5を参照して、本実施形態の分析用具2について具体的に説明する。
図2は、図1に示した分析用具を説明する平面図である。図3は、上記分析用具の血液の導入孔側の構成を説明する拡大平面図である。図4は、図3のIV−IV線断面図である。図5は、上記分析用具の主要部の構成を説明する拡大平面図である。
図2において、本実施形態の分析用具2には、基板3と、レジストインク9を介在させて基板3に対向する対向基板4とが設けられている。この分析用具2では、後に詳述するように、図2の右端部に、血液の導入孔が設けられている。また、分析用具2では、図2の矢印“I”方向に沿って、血糖値計1の挿入口1b(図1)に挿入されるようになっている。
基板3には、例えば疎水性を有する合成樹脂が用いられており、この基板3上には、4本の信号配線5、6、7、及び8が形成されている。また、これらの各信号配線5、6、7、及び8には、例えばカーボンインクが用いられており、例えばスクリーン印刷法により基板3上に所定のパターンで形成されている。すなわち、信号配線5、6、7、及び8は、それぞれ直線状に設けられるとともに、同一の幅寸法を有する配線部5a、6a、7a、及び8aと、これら配線部5a、6a、7a、及び8aに対して、それぞれ直角に折り曲げられた電極部5b、6b、7b、及び8b(図3)とを有している。
なお、この説明以外に、例えば金属薄膜を用いて、信号配線5、6、7、及び8を構成しもてよい。
また、分析用具2では、図2に示すように、基板3は左端部(挿入部)が対向基板4とレジストインク9で覆われておらず、上述の各配線部5a、6a、7a、及び8aの左端部が露出するようになっている。そして、分析用具2では、上記挿入口1bに挿入されたときに、各配線部5a、6a、7a、及び8aの左端部が血糖値計本体1a(図1)の内部に設けられた接続部(図示せず)に接続されて、分析用具2は、血糖値計1と電圧信号のやりとりを行うように構成されている。
また、分析用具2では、図2に示すように、その右端部(試料流入部)に一対のヘマトクリット電極11と、一対のグルコース電極12とが設けられており、上記導入孔から導入された血液が後述の流路を通って、これらヘマトクリット電極11及びグルコース電極12に到達するようになっている。
また、対向基板4には、例えば親水性を有する合成樹脂が用いられており、その左端(挿入側端部)4aは、上述したように、各配線部5a、6a、7a、及び8aの左端部が露出するように、位置決めされている。一方、対向基板4の右端(試料流入側端部)4bは、分析用具2の右端(すなわち、基板3の右端)と一致するように構成されている。また、対向基板4では、親水性を有しているので、上記流路内を通る血液が当該血液の流入方向の下流側に設けられた一対のグルコース電極12に容易に達することができるようになっている。さらに、対向基板4には、上記流路に連通する空気孔Anが設けられており、当該流路内に円滑に血液(生物学的な試料)を流入させることができるようになっている。
また、レジストインク9には、例えば熱硬化インクなどの絶縁体が用いられており、例えばスクリーン印刷法により基板3上及び信号配線5、6、7、及び8上に所定のパターンで形成されている。具体的には、レジストインク9の左端9aは、対向基板4の左端4aと一致するように構成されている。一方、レジストインク9の右端9bは、図2に示すように、対向基板4の右端4bよりも若干左側となるように構成されている。また、レジストインク9には、絶縁体が用いられているので、各信号配線5、6、7、及び8、ひいては測定精度に悪影響を及ぼすことがないようになっている。
また、レジストインク9上には、矩形状の両面テープ10a、10b、及び10cが対向基板4との間に設けられている。この両面テープ10a、10b、及び10cは、基板3と対向基板4とを接着するための接着層であり、基板3上に形成されたレジストインク9を介して基板3と対向基板4とを互いに接着させるようになっている。なお、両面テープ10cには、基板3、対向基板4、及びレジストインク9と同じ幅を有するものが用いられており、また両面テープ10cの一方の端(図2の左端)は、対向基板4の左端4a及びレジストインク9の左端9aと一致するようになっている。また、両面テープ10cの他方の端(図2の右端)と両面テープ10a、10bとの間において、上記空気孔Anが対向基板4に設けられている。
なお、この説明以外に、例えば紫外線硬化樹脂を用いて、レジストインク9を構成してもよい。
また、本実施形態の分析用具2では、図3に“A”にて示すように、その下端部に血液の導入孔が設けられている。この導入孔では、その開口部分が基板3、対向基板4、レジストインク9、及び両面テープ10a、10bによって規定されている。上記開口部分から、図3上側に向かって血液の流路Rが分析用具2内に形成されている(図4も参照。)。そして、この流路Rでは、血液は上記導入孔から毛細管現象によって図3及び図4に“Rh”にて示す流入方向に流入するようになっている。なお、この毛細管現象を容易なものとするために、対向基板4には上記空気孔Anが設けられている。
つまり、本実施形態の分析用具2では、基板3、対向基板4、レジストインク(絶縁体)9、及び両面テープ(接着層)10a、10b、及び10cにより、血液(試料)の流路Rを規定する規定要素が構成されている。また、流路Rの長さは、例えば、1.1〜10mm、1.5〜4.5mm、または2〜4mmとしうる。また、流路Rの幅は、例えば、1〜10mm、2〜3.5mm、または1.5〜2.5mmとしうる。さらに、流路Rの容積は、例えば、0.1〜10μL、0.15〜0.5μL、または0.25〜0.35μLとしうる。
また、流路Rでは、図3〜図5に示すように、切り欠き部9cがレジストインク9に設けられている。また、流路Rでは、その上流(導入孔側)に位置するように、テスト電極対としての一対のヘマトクリット電極11が設けられ、その一対のヘマトクリット電極11より下流に位置するように、他の電極対としての一対のグルコース電極12が設けられている。さらに、分析用具2では、これら一対のヘマトクリット電極11と一対のグルコース電極12とが、血液(試料)の同じ流路R内で、所定の距離の範囲内の位置に設けられている。これにより、本実施形態では、分析用具2の構造を大型化及び複雑化することなく、一対のヘマトクリット電極11及び一対のグルコース電極12の各々を用いた測定を行うことができるようになっている。
具体的にいえば、一対のヘマトクリット電極11は、電極部5b及び8bのうち、切り欠き部9c内に露出した各部分により、実質的に構成されている。そして、一対のヘマトクリット電極11では、電極部5b及び8bの上述の各部分に血液が接触した状態で、信号配線5及び8に対して、交流電圧(AC)または直流電圧(DC)による電圧信号(測定信号)が供給されることにより、血糖値計1において、第1の生物学的値としてのヘマトクリットの値が検出されるようになっている。
また、本実施形態の血糖値計1では、一対のヘマトクリット電極11に対し、例えば直流電圧信号からなる検知信号が印加されるように構成されており、後述の滴下試薬(試薬)が一対のヘマトクリット電極11上に飛散しているか否かについて判別するようになっている(詳細は後述。)。
また、一対のグルコース電極12は、電極部6b及び7bのうち、切り欠き部9c内に露出した各部分により、実質的に構成されている。また、一対のグルコース電極12上には、図5に二点鎖線にて示すように、固化した滴下試薬15が設置されている。そして、一対のグルコース電極12では、電極部6b及び7bの上述の各部分と試薬としての滴下試薬15に血液が接触し当該血液が滴下試薬15と反応した状態で、信号配線6及び7に対して、交流電圧(AC)または直流電圧(DC)による電圧信号が供給されることにより、血糖値計1において、第2の生物学的値としてのグルコースの値(血糖値)が検出されるようになっている。また、血糖値計1では、検出したヘマトクリットの値を用いて、検出したグルコースの値を補正して、この補正後のグルコースの値を測定データとして扱うようになっている。
また、滴下試薬15は、分析用具2の製造工程において、対向基板4が基板3に貼り合わせられる前に、液体の状態で、例えばディスペンサなどの液体定量吐出装置により、一対のグルコース電極12上に滴下された後、乾燥されることにより、当該グルコース電極12上で固化する。また、この滴下試薬15には、例えば、酸化還元酵素および電子伝達物質などの試薬が用いられている。
また、流路Rでは、図5に例示するように、一対のヘマトクリット電極11の下流側端部と一対のグルコース電極12の上流側端部との間に、液体の状態の滴下試薬15を規制する滴下試薬規制要素16が設けられている。この滴下試薬規制要素16は、レジストインク(規定要素)9と同時に形成されるものであり、図5に示すように、一対のヘマトクリット電極11の一方の電極部5b上に形成されている。詳細には、滴下試薬規制要素16の一部分は、電極部5bの一部分上に重なるように設けられ、滴下試薬規制要素16の残りの部分は、一対のヘマトクリット電極11の下流側端部と一対のグルコース電極12の上流側端部との間に設けられている。
また、流路Rでは、図5に例示するように、血液の流入方向Rhに交差する交差方向(例えば、流入方向Rhに直交する直交方向)において、当該交差方向の中央部に滴下試薬規制要素16が設けられ、この滴下試薬規制要素16を挟むように、2つの間隙17a及び17bが設けられている。つまり、流路Rでは、滴下試薬規制要素16が2つの間隙17a及び17bの間に形成されている。
以上のように構成された本実施形態の分析用具2では、滴下試薬規制要素16が上記流路Rにおいて、一対のヘマトクリット電極(テスト電極対)11の下流側端部と一対のグルコース電極(他の電極対)12の上流側端部との間に形成されている。さらに、本実施形態の分析用具2では、流路Rでは、血液(試料)の流入方向Rhに交差する交差方向において、滴下試薬規制要素16と、2つの間隙17a及び17bとが設けられている。これにより、本実施形態の分析用具2では、上記従来例と異なり、流路Rの下流側に設けられた一対のグルコース電極12に対しても、血液を十分に到達させることができる。
また、本実施形態では、滴下試薬規制要素16が一対のヘマトクリット電極11上に形成されているので、一対のグルコース電極12に対して、十分な滴下試薬15を滴下することができる。また、滴下試薬規制要素16により、滴下試薬15を規制することができる。すなわち、滴下試薬規制要素16により、滴下試薬15の一対のヘマトクリット電極11側への移動を抑制することができる。
また、本実施形態では、滴下試薬規制要素16はレジストインク(規定要素)9と同時に構成されているので、部品点数が少なく、構造簡単な分析用具2を容易に構成することができる。
また、本実施形態では、滴下試薬規制要素16は絶縁体であるので、製造簡単な分析用具2を容易に構成することができる。
また、本実施形態では、基板3に対向する対向基板4と、基板3と対向基板4とを接着するための両面テープ(接着層)10a、10b、及び10cとを備え、規定要素には、基板3上に設けられたレジストインク(絶縁体)9、両面テープ10a、10b、及び10c、及び対向基板4が含まれている。これにより、本実施形態では、構造簡単で、薄型化されたコスト安価な分析用具2を容易に構成することができる。
また、本実施形態の分析用具2の製造方法は、基板3上で、流路Rの上流に一対のヘマトクリット電極(第1の電極対)11を形成する第1の電極対形成工程と、基板3上で、流路Rの下流に一対のグルコース電極(第2の電極対)12を形成する第2の電極対形成工程と、流路Rにおいて、一対のヘマトクリット電極11の下流側端部と一対のグルコース電極12の上流側端部との間に、血液(試料)の流入方向Rhに交差する交差方向で間隙14が生じるように、滴下試薬15を規制する滴下試薬規制要素16を形成する滴下試薬規制要素形成工程を具備している。これにより、本実施形態の分析用具2の製造方法では、滴下試薬規制要素形成工程により、流路Rにおいて、一対のヘマトクリット電極11の下流側端部と一対のグルコース電極12の上流側端部との間に、滴下試薬規制要素16と、2つの間隙17a及び17bが形成される。この結果、本実施形態の分析用具2の製造方法では、流路Rの下流側に設けられた一対のグルコース電極12に対しても、血液を十分に到達させることができる分析用具2を製造することができる。
また、本実施形態の分析用具2の製造方法では、滴下試薬規制要素形成工程において、滴下試薬規制要素16が一対のヘマトクリット電極11上に形成されているので、一対のグルコース電極12に対して、十分な滴下試薬15を滴下することができる。
また、本実施形態の分析用具2の製造方法では、第1及び第2の電極対形成工程において、スクリーン印刷法を用いて、基板3上に一対のヘマトクリット電極11及び一対のグルコース電極12が同時に形成される。これにより、本実施形態では、一対のヘマトクリット電極11及び一対のグルコース電極12を高精度に、かつ、短時間で形成することができる。
また、本実施形態では、流路Rの下流側に設けられた一対のグルコース電極(第2の電極対)12に対しても、血液(試料)を十分に到達させることができる分析用具2が用いられているので、当該血液について、高精度な測定を行うことができる血糖値計(測定装置)1を容易に構成することができる。
上記のような、滴下試薬(試薬)15を十分に設けた一対のグルコース電極12と、一対のヘマトクリット電極11とを有する分析用具2を、図1に示す血糖値計1のセンサとして用いることで、測定精度をより向上させることができる。これにより、簡単な処理及び構成によって、測定精度を向上させることができるという効果をより奏することができる。なお、本実施形態の血糖値計1に用いることができる分析用具2は、上記例に限られない。
また、本実施形態の血糖値計1では、分析用具2において、固化していた滴下試薬15が、その滴下ミス、または分析用具2の輸送時での振動や落下の衝撃、あるいは分析用具2の保管状態などによっては、一対のグルコース電極12上から剥離されて、滴下試薬規制要素16とレジストインク9との間の間隙17a、17bを経たり、滴下試薬規制要素16を飛び越えたりして、一対のヘマトクリット電極11上に移動することがある。つまり、滴下試薬15が、一対のヘマトクリット電極11を構成する電極部5b及び8b上に飛散することがある。そこで、本実施形態の血糖値計1では、滴下試薬15が、上記のように、一対のヘマトクリット電極11上に飛散した場合に、当該滴下試薬(試薬)15の飛散の有無を判別できるように構成されている(詳細は後述。)。
(測定装置の回路構成例)
ここで、図6を参照して、本実施形態の血糖値計1の具体的な回路構成について説明する。
図6は、図1に示した血糖値計の回路構成例を示すブロック図である。
図6に示すように、血糖値計1は、第1測定部31a、第2測定部31b、制御部33、記録部34及び出力部35を備える。第1測定部31aは、試料に接触可能な一対のグルコース電極(他の電極対)12に対して印加された測定信号としての第1信号に対する第1電気的応答を測定する。第2測定部31bは、試料に接触可能な一対のヘマトクリット電極(テスト電極対)11に対して印加された測定信号としての第2信号に対する電気的応答を測定する。
ここで、第2信号は、第1のレベルから第2のレベルへ値が変化し、その後一定の時間、前記第2のレベルを保つ波形を含むものとなる。第2測定部31bは、この第2信号に対する第2電気的応答を、第2信号の前記変化に対する応答信号のピーク値として測定する。制御部33は、第1電気的応答から得られる試料の測定対象成分の量を示す値を、第2測定部31bが測定した応答信号のピーク値に基づいて補正する。補正された測定対象成分の量を示す値は、例えば、記録部34に記録され、出力部35によって、表示画面1cに表示される。
また、第2測定部31bは、一対のヘマトクリット電極11に対して印加された検知信号に対する電気的応答を測定する。また、制御部33は、前記検知信号に対する電気的応答に基づき、一対のヘマトクリット電極11上の滴下試薬15の有無を判別し、その判別結果を表示画面1cに表示させるようになっている。また、第2測定部31bでは、後に詳述するように、例えば検知信号に対する電気的応答、及び第2信号に対する電気的応答の順番で測定を行うように構成されている。
血糖値計(測定装置)1の構成は、上記の携帯型の測定装置に限られない。例えば、携帯電話、スマートフォン、ゲーム機、パーソナルコンピュータ、又は、サーバコンピュータ等に測定部を接続した構成とすることもできる。この場合、制御部33は、測定部を接続可能な機器のコンピュータにより構成することができる。
上記制御部33は、血糖値計(測定装置)1のコンピュータが備えるプロセッサが、所定のプログラムを実行することによって実現することができる。例えば、血糖値計1には、マイクロコントローラを組み込むことができる。このようなマイクロコントローラは、一例として、制御部33を構成するコアプロセッサを含む構成とすることができる。なお、コンピュータを、制御部33として機能させるプログラム、及び、それらを記録した非一時的(non-transitory)な記録媒体も、本発明の実施形態に含まれる。さらに、これらのプログラムをコンピュータが実行する方法も、本発明の実施形態に含まれる。
第1測定部31aは、制御部33からの指示に基づき、試薬と反応した状態の試料が接触した一対のグルコース電極12に対して、測定信号としての第1信号として例えば、DC信号を印加し、その応答信号を第1電気的応答として測定する。制御部33は、応答信号値に基づいてグルコース濃度を示す値(グルコースの値)を決定することができる。
(第2測定部の回路構成例及び信号印加例)
ここで、図7及び図8を参照して、第2測定部31bの具体的な回路構成及び当該第2測定部31bでの信号印加について説明する。
図7は、図2に示した第2測定部の回路構成の例を説明する図である。図8は、上記第2測定部の動作例を説明する図である。
図7に示すように、第2測定部31bでは、オペアンプ40の+端子に信号生成回路312が接続され、−端子にセンサ2の第2の電極対が接続される。オペアンプ40の出力端子は、A/D変換回路311に接続される。オペアンプ40の−端子と出力端子間には、抵抗Rが接続される。
また、図8に例示するように、第2測定部31bでは、時点T0から時点T1までの間、一対のヘマトクリット電極11に対して、例えば直流電圧信号からなる上記検知信号を印加する。これにより、滴下試薬(試薬)15が一対のヘマトクリット電極(テスト電極対)11上に飛散しているか否かについて判別することができる。
また、第2測定部31bでは、検知信号の印加に続いて、時点T2から時点T3までの間、一対のヘマトクリット電極11に対して、例えばパルス波からなる上記第2信号(測定信号)が印加する。これにより、血液(生物学的な試料)に含まれたヘマトクリットの値を求めることができる。
(検知信号の印加方法及びその電気的応答)
ここで、図9及び図10を参照して、本実施形態での上記検知信号の具体的な印加方法と当該検知信号の具体的な電気的応答について説明する。
図9は、上記分析用具における、図8に示した検知信号の具体的な印加方法を説明する図である。図10は、上記検知信号に対する電気的応答の具体例を説明する図であり、図10(a)、図10(b)、及び図10(c)は、それぞれ上記検知信号の電圧が200mV、1000mV、及び1500mVである場合での電気的応答の具体例を説明する図である。
図9に示すように、本実施形態では、上記検知信号の+電圧が電極部8bに印加され、−電圧が電極部5bに印加されるように構成されている。すなわち、本実施形態では、一対のヘマトクリット電極11を構成する電極部5b及び8bのうち、一対のグルコース電極12から遠い位置にある、電極部8bが上記検知信号に対する作用極とされ、一対のグルコース電極12に近い位置にある、電極部5bが上記検知信号に対する対極とされている。
第2測定部31bが、制御部33から指示に基づき、一対のヘマトクリット電極11に対して、上記検知信号を印加した場合、一対のヘマトクリット電極11上に滴下試薬15が飛散して存在していると、血液と反応している滴下試薬15との酸化還元反応によってグルコース反応電流が生じる。このグルコース反応電流の電流値は、検知信号の電圧の大きさに応じて、変化する。
具体的にいえば、検知信号の電圧が、例えば200mVに設定された場合、図10(a)に点線にて示すように、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在していない場合のみ、微量の電流が検出された。また、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在している場合では、電流をほとんど検出することはできなかった。つまり、検知信号の電圧が200mVに設定された場合、本実施形態では、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬15の飛散の有無を判別することは困難であった。
これに対して、検知信号の電圧が、例えば1000mVに設定された場合、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在していない場合での電流値(図10(b)に点線にて図示)に比べて、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在している場合での電流値(図10(b)に実線にて図示)が大きくなった。具体的にいえば、検知信号の印加開始時点から、例えば0.1秒後での電流値が、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在していない場合では、3μA程度であるのに対して、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在している場合では、5μA程度であった。これにより、検知信号の電圧が1000mVに設定された場合、本実施形態では、図10(b)の点線及び実線にて示されるように、検知信号の印加開始時点から、例えば0.1秒後での電流値(電気的応答)に基づき、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬15の飛散の有無を容易に判別することができる。具体的にいえば、制御部33が、検知信号の印加開始時点から、例えば0.1秒後での電流値と、既知の値(例えば、4μA)との比較を行うことにより、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬15の飛散の有無を容易に、かつ、精度よく判別することができる。
さらに、検知信号の電圧を大きくした場合、滴下試薬15の飛散の有無の検知感度を向上することができた。例えば、検知信号の電圧が1500mVに設定された場合、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在していない場合での電流値(図10(c)に点線にて図示)に比べて、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在している場合での電流値(図10(c)に実線にて図示)がより大きくなった。具体的にいえば、検知信号の印加開始時点から、例えば0.1秒後での電流値が、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在していない場合では、6μA程度であるのに対して、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在している場合では、16μA程度であった。これにより、検知信号の電圧が1500mVに設定された場合、本実施形態では、図10(c)の点線及び実線にて示されるように、検知信号の印加開始時点から、例えば0.1秒後での電流値(電気的応答)に基づき、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬15の飛散の有無を容易に判別することができる。具体的にいえば、制御部33が、検知信号の印加開始時点から、例えば0.1秒後での電流値と、既知の値(例えば、10μA)との比較を行うことにより、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬15の飛散の有無を容易に、かつ、精度よく判別することができる。
尚、図10(a)〜図10(c)での検知信号に対する電流値(電気的応答)の測定結果は、試料として、グルコースの濃度が336mg/dL及びヘマトクリットの値が20%の血液を用いた場合での測定結果である(後掲の図27(a)〜図27(c)においても同様。)。
(第2信号(測定信号)の印加方法及びその電気的応答)
次に、図11を参照して、第2測定部31bでの上記第2信号(測定信号)の印加方法及びその電気的応答について具体的に説明する。
図11は、上記第2測定部における、図8に示した測定信号の具体的な印加例を説明する図である。
図11において、第2測定部31bは、制御部33から指示に基づき、試薬と反応していない状態の試料が接触したヘマトクリット電極11に、第2信号(測定信号)として、例えば、矩形又は台形の波形を有するパルス信号を印加する。第2測定部31bは、第2信号における信号レベルの変化、例えば、パルスの立ち上がりに対する応答信号のピーク値を測定する。このように、入力信号におけるレベルの変化に対する応答信号のピーク値を測定することで、制御部33において、ピーク値を用いてヘマトクリットの量を示す値を決定することができる。すなわち、入力信号の急峻な変化によって得られるピーク電流を測定することで、ヘマトクリットの値を算出することができる。さらに、制御部33は、ヘマトクリットの値を用いて、第1信号の第1応答信号値から得られるグルコース濃度を示す値を補正することができる。
具体的にいえば、図11に示すように、オペアンプ40の+端子に入力信号Inとしてパルス波が入力され、分析用具2のヘマトクリット電極11に対して、そのパルス波In(一例としてパルス電圧)が入力される。ヘマトクリット電極11は試料と接しており、試料の応答電流Resはオペアンプ40の−端子側へ入力され、オペアンプ40の出力端子側から電圧信号Res_eに変換されて出力される。電圧信号Res_eはA/D変換回路311でデジタル信号に変換されて制御部33へ入力される。なお、オペアンプ40とA/D変換回路311の間に設けられた検出回路(図示せず)でピーク値を検出する構成であってもよいし、制御部33でピーク値の算出をする構成とすることもできる。信号生成回路312は、制御部33からの指示に基づいて、入力信号を生成する。
このように、第2測定部31bは、立ち上がり成分と立ち上がり後一定値をとる波形成分を有する信号を、第2信号として、試料へ印加することができる。そして、第2測定部31bは、矩形波又は台形波成分を有する試料の第2電気的応答を、応答信号のピーク値によって測定することができる。
ピーク値は、例えば、第2信号のレベル変化時点(例えば、パルスの立ち上がり時点)から一定期間内に検出された応答信号値のうち最も大きいものとすることができる。あるいは、ある一定の時間における応答信号のピーク値を保持する回路を用いて、例えば、第2信号のレベル変化時間からある一定の時間において保持されたピークの値を、応答信号のピーク値として測定することもできる。また、ピーク値の大きさは、応答信号値の立ち上がり前のレベル又は立ち上がり後に一定値に落ち着いたときのレベルとピーク時のレベルとの差として検出することができる。すなわち、応答信号値の変化前又は変化後の安定期におけるレベルを基準とした値をピーク値として測定することができる。
応答信号値は、応答電流値又は応答電圧値として測定することができる。上記図11に示す回路では、一例として、電圧信号を電極対へ印加することで応答としてピークトップ電流の出力を得る構成となっている。なお、ピーク値は、必ずしも厳密に最高到達点の値である必要はなく、一定期間内に所定周期で検出された離散値のうち最も大きい値をピーク値とすることができる。
本実施形態では、少なくとも1回の入力信号レベル変化に対する応答信号値が検出できれば、ピーク値を得ることができる。そのため、例えば、ヘマトクリットの値を短時間で得ることが可能になる。なお、複数のパルスを連続的に入力し、複数回の信号レベル変化に対する応答信号のピーク値を、それぞれ取得してもよい。この場合、例えば、複数のピーク値の代表値(例えば、平均値等)を求めることにより、ピーク値の精度を向上させることも可能である。
図12は、上記測定信号(第2信号)と、その応答信号の一例を示す図である。図12に示すグラフにおいて、横軸は時間、縦軸は電圧レベルを示す。図12に示す例では、入力信号InputSignalの電圧レベルがV1からV2へ変化することによって、出力信号の電圧レベルもV3から急激に変化してV4へ達し、その後ゆるやかに減少している。例えば、ここで、入力信号の立ち上がり時点(変化開始時点)t1から6.43μ秒後に出力信号のレベルがピーク(Peaktop)に達している。
図13は、上記測定信号の形態について説明するための図である。図13では、入力信号の例として、電圧パルス波を示している。ここで、パルス波の周期T、第1のレベルと第2のレベルの電位差A、立ち上がり時間t(第1のレベルから第2のレベルへ変化する時間の一例)は、分析用具2の構造や測定システムの環境等に応じて適宜設定することが可能である。例えば、1/Tは、1〜500[Hz]、立ち上がり時間tは、30μ秒より短く、電位差Aは、50〜1000mVの範囲で設定することができる。また、入力信号として、最大0.2秒のパルス波信号をヘマトクリット電極11へ印加することで、ヘマトクリットの値を測定することができる。なお、図13に示す例では、印加する信号すなわち入力信号は、電圧で表されるが、入力信号は電流で表されてもよい。すなわち、ヘマトクリット電極11へ印加する電圧を制御することで、入力信号を制御することもできるし、電流を制御することで入力信号を制御することもできる。
図13に示す例では、あるレベルから高いレベルへ立ち上がり一定の時間高いレベルを保った後、元のレベルへ戻る波形の信号である。これに対して、あるレベルから低いレベルへ下がって一定の時間低いレベルを保ったのち元のレベルへ戻る波形の信号を入力することもできる。この場合、信号は低いレベルへ下がる変化に対する応答信号か、もしくは、低いレベルから元のレベルへの変化に対する応答信号のピーク値を測定することができる。
発明者らは、入力信号のレベルの変化に費やす時間(例えば、立ち上がり時間)が、応答信号のピーク値を高精度に発生させるのに重要であることを見出した。図14は、上記測定信号におけるパルス立ち上がり時間と、その応答信号のピーク値との関係を示すグラフである。このグラフによれば、例えば、入力信号が第1のレベルから第2のレベルへ変化するのに費やす時間が、30μ秒かもしくは30μ秒より短ければ、応答信号のピーク値を高精度に発生させることができることが分かる。7μ秒かもしくは7μ秒より短ければ、応答信号のピーク値のヘマトクリットの値による変動がより顕著に現れる。そのため、ピーク値を高精度に発生させることができることが分かる。望ましくは、入力信号が第1のレベルから第2のレベルへ変化するのに費やす時間を、2μ秒もしくは2μ秒より短くすることで、ピーク値の大きさが大きくなり、さらに、高精度な応答信号のピーク値を得ることができる。
なお、入力信号の値が第1のレベルから第2のレベルに変化した後、第2のレベルを維持する時間は、特に限定はされない。例えば、入力信号の変化に対する応答信号のピークを過ぎて一定の値に落ち着くのに費やす時間より長い時間、第2のレベルを維持するようにすることができる。図14に示すパルス波の場合、パルスが立ち上がってから、再び元のレベルへ戻るまでの時間(すなわち、第2のレベルを維持する時間)は、応答信号のピークが過ぎて変動が収まるのに要する時間より長くなるよう、設定することができる。これにより、確実にピーク値を検出することができる。
また、発明者らは、ピーク値を得るには、入力信号において、信号のレベルが、ある値から異なる値へ短時間に変化することが重要であり、入力信号は、必ずしも一定周期で繰り返す一定の電位差のパルス波である必要はないことを見出した。例えば、間隔を空けて段階的にレベルが変化する階段状の波形を有する信号を試料へ印加することもできる。
図15は、図16に示す階段状の波形で、3種類のヘマトクリット値が既知の試料を測定した場合の例を示すグラフである。図15に示すグラフは縦軸が応答信号のピーク値、横軸がヘマトクリットの値を示している。図16に示す入力信号は、時刻t3においてレベルがV5からV6に上がり、その後レベルをV6に保って、時刻t4においてレベルがV6からV7に上がっている。図17は、図16に示す入力信号を、ヘマトクリットの値が20%の試料(が接触したヘマトリクット電極)に印加した場合の、応答信号の一例を示すグラフである。図17に示す場合、時刻t4の入力信号の立ち上がりに対する応答信号のピーク値は、立ち上がりピークトップとその後の安定期の電流値との差ΔI1として測定される。同様に、図18は、図16に示す入力信号を、ヘマトクリットの値が40%の試料に印加した場合の応答信号の一例を示すグラフである。図18の例において、時刻t4の入力信号の立ち上がりに対する応答信号のピーク値は、ピークトップとその後の安定期の電流値との差ΔI2として測定される。図19は、図16に示す入力信号を、ヘマトクリットの値が70%の試料に印加した場合の応答信号の一例を示すグラフである。図19の例において、時刻t4の入力信号の立ち上がりに対する応答信号のピーク値は、ピークトップとその後の安定期の電流値との差ΔI3として測定される。
図15におけるプロットaは、図17の時刻t4の立ち上がりに対する応答信号で検出されたピーク値ΔI1に、プロットbは、図18のピーク値ΔI2、プロットcは、図19のピーク値ΔI3に対応している。
(滴下試薬の飛散の有無によるヘマトクリットの値及びグルコースの値)
ここで、図20〜図23を参照して、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬の飛散の有無によるヘマトクリットの値の測定結果及びグルコースの値の測定結果(シミュレーション)について具体的に説明する。
まず、図20及び図21を用いて、一対のヘマトクリット電極11上の滴下試薬15の飛散の有無の各場合における、上記測定信号(第2信号)に対する電気的応答について具体的に説明する。
図20は、図2に示したヘマトクリット電極に試薬が飛散していない場合での上記測定信号に対する電気的応答の具体例を説明する図である。図21は、上記ヘマトクリット電極に試薬が飛散している場合での上記測定信号に対する電気的応答の具体例を説明する図である。図22は、上記検知信号に対する電気的応答と、ヘマトクリット測定電流との具体的な関係例を説明する図である。図23は、上記検知信号に対する電気的応答と、補正後のグルコースの値との具体的な関係例を説明する図である。
図20に示すように、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に飛散していない場合では、第2測定部31bにより、測定される上記測定信号(第2信号)に対する電流値(電気的応答)では、バラツキが小さいものであった。具体的にいえば、図20に示すように、ヘマトクリットの値が20%である場合、電流値は約21〜24μAの範囲内の値であった。また、ヘマトクリットの値が40%である場合、電流値は約18〜21μAの範囲内の値であり、ヘマトクリットの値が70%である場合、電流値は約14〜17μAの範囲内の値であった。また、このように電流値のバラツキが小さい範囲である場合、制御部33は、ヘマトクリットの値を容易に求めることができる。
一方、図21に示すように、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に飛散している場合では、検知信号の場合と同様に、血液と反応している滴下試薬15との酸化還元反応によってグルコース反応電流が発生するため、測定される上記測定信号(第2信号)に対する電流値(電気的応答)では、バラツキが大きいものであった。具体的にいえば、図21に示すように、ヘマトクリットの値が20%である場合、電流値は約17〜28μAの範囲内の値であった。また、ヘマトクリットの値が40%である場合、電流値は約16〜23μAの範囲内の値であり、ヘマトクリットの値が70%である場合、電流値は約13〜24μAの範囲内の値であった。また、このように電流値のバラツキが大きい範囲である場合、制御部33は、ヘマトクリットの値を求めることは困難である。
次に、図22及び図23を用いて、試薬検知電流とヘマトクリット測定電流及びグルコースの値との関係について、具体的に説明する。なお、図22及び図23では、例えばグルコースの(濃度)の値が336mg/dLであり、ヘマトクリットの値が20%である血液が用いられている。
図22において、滴下試薬15が一対のグルコース電極12に設置されていない場合(つまり、分析用具2において、滴下試薬15が設けられていない場合)では、同図22に◇にて示すように、試薬検知電流、すなわち上記検知信号に対する電気的応答の値は、0であり、ヘマトクリット測定電流、すなわち上記測定信号(第2信号)に対する電気的応答の値は、約22〜23μAの範囲内の値であった。
また、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に飛散していない場合では、図22に○にて示すように、試薬検知電流の値は、約1μA以下であり、ヘマトクリット測定電流の値は、約21〜23μAの範囲内の値であった。すなわち、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に飛散していない場合では、分析用具2は正常なセンサとして機能して、ヘマトクリットの値を容易に求めることが実証された。
また、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に飛散している場合では、図22に◆にて示すように、試薬検知電流の値は、約9〜25μAの範囲内の値であり、ヘマトクリット測定電流の値は、約18〜23μAの範囲内の値であった。すなわち、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に飛散している場合では、分析用具2は異常なセンサとして機能して、ヘマトクリットの値を求めることが困難であることが実証された。言い換えれば、本実施形態では、滴下試薬15の飛散による不適合な分析用具2を検出できることが確かめられた。
また、図23において、滴下試薬15が一対のグルコース電極12に設置されていない場合では、同図23に◇にて示すように、ヘマトクリットの値を用いて補正した後のグルコースの値が、約300〜350mg/dLの範囲内の値であり、同図23に点線にて示すグルコースの値の許容範囲内の値となったことが確かめられた。すなわち、制御部33が、グルコースの値を精度よく求めることが実証された。
また、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に飛散していない場合では、図23に○にて示すように、ヘマトクリットの値を用いて補正した後のグルコースの値は、上記グルコースの値の許容範囲内の値となった。すなわち、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に飛散していない場合でも、制御部33は、ほぼ完全にグルコースの値を精度よく求めることが実証された。
また、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に飛散している場合では、図23に◆にて示すように、ヘマトクリットの値を用いて補正した後のグルコースの値は、多くのサンプルにおいて、上記グルコースの値の許容範囲外の値となった。すなわち、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に飛散している場合では、制御部33は、グルコースの値を正確に求めることが難しいことが確かめられた。
(動作例)
次に、図24を参照して、本実施形態の血糖値計1の動作例について具体的に説明する。
図24は、上記血糖値計の動作例を示すフローチャートである。
図24に示すように、本実施形態の血糖値計1では、試料が分析用具2の一対のヘマトクリット電極11及び一対のグルコース電極12へ接触すると測定が開始される(ステップS1)。例えば、血糖値計1は、分析用具2が挿入口1bに挿入されると起動するよう構成することができる。この場合、挿入された分析用具2へ試料である血液が点着されたことが検出されると、制御部33は、測定を開始することができる。
制御部33は、検知信号を試料に印加する(ステップS2)。例えば、制御部33は、第2測定部31bへ指示を出し、直流電圧信号を第1信号として、一対のヘマトクリット電極11へ印加させる。
第2測定部31bは、検知信号に対する電気的応答を測定する(ステップS3)。例えば、第2測定部31bは、直流電圧信号に対する応答電流を測定し、A/D変換して制御部33へ送信することができる。
次に、制御部33は、第1信号(測定信号)を試料に印加する(ステップS4)。例えば、制御部33は、第1測定部31aへ指示を出し、DC信号を第1信号として、一対のグルコース電極12へ印加させる。一対のグルコース電極12には、予め滴下試薬(試薬)15が設けられており、試料が滴下試薬15と反応した状態で一対のグルコース電極12に接している。
第1測定部31aは、第1信号に対する試料の第1電気的応答を測定する(ステップS5)。例えば、第1測定部31aは、DC信号に対する応答電流を測定し、A/D変換して制御部33へ送信することができる。
制御部33は、第1信号に対する試料の第1電気的応答を取得すると、第2信号(測定信号)を試料に印加する(ステップS6)。例えば、制御部33は、第2測定部31bへ指示を出し、パルス信号を第2信号として、一対のヘマトクリット電極11へ印加させる。制御部33は、例えば、パルス信号の立ち上がり時間、周期、大きさ、印加する時間の長さ等を、第2測定部31bに対して指示することができる。
第2測定部31bは、第2信号に対する試料の第2電気的応答を測定する(ステップS7)。例えば、第2測定部31bは、第2信号のパルスの立ち上がりに対する応答信号のピーク値を測定する。第2測定部31bは、応答信号のピーク値を、A/D変換して制御部33へ送信してもよいし、応答信号を所定の周期(例えば、0.1μ秒)で検出した値をA/D変換して制御部33へ送信してもよい。
制御部33は、ステップS5で取得した第1電気的応答と、ステップS7で取得した第2電気的応答を用いて、試料に含まれる測定対象成分の量を示す値(ここでは、一例として、グルコース濃度)を算出する(ステップS8)。これにより、ステップS5で第1電気的応答から得られる前記試料の測定対象成分の量を示す値を、ステップS7で得られる応答信号のピーク値に基づいて補正した値が得られる。
例えば、ステップS8において、制御部33は、ステップS7で取得した応答信号のピーク値を用いて試料中のヘマトクリットの量を示す値を決定することができる。例えば、ヘマトクリットの値は、予め記録された計算式にピーク値を代入する演算によって得ることができる。あるいは、制御部33は、応答信号のピーク値と、ヘマトクリットの値とを対応付けて記録したテーブルを参照することにより、ヘマトクリットの値を決定することができる。制御部33は、決定したヘマトクリット値を用いて、第1電気的応答から得られるグルコース濃度の値を補正することができる。なお、ピーク値からヘマトクリット値に換算せず、ピーク値(応答電流値又は応答電圧値)を、そのままグルコースの値の補正に用いてもよい。
ここで、応答信号のピーク値をヘマトクリットの値に変換する際の計算例について説明する。例えば、下記式(1)に、ステップS7で得られるピーク値を代入してヘマトクリットの値を求めることができる。
Y = aX + b ―――(1)
ヘマトクリットの値:Y
ピーク値:X
a, b:予め決められた係数
なお、計算式は、上記式(1)に限られない。例えば、上記式(1)のような一次式だけでなく、高次式を用いることもできる。
また、計算式を用いるかわりに、演算用のテーブルを予め記録しておき、テーブルを参照することにより、ピーク値に対応するヘマトクリットの値を決定することもできる。
次に、制御部33は、ステップS3で取得した直流電圧信号(検知信号)に対する応答電流に基づき、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬15の飛散の有無を判別する(ステップS9)。例えば、制御部33は、図10(b)または図10(c)を用いて説明したように、上記応答電流での検知信号の印加開始から所定の経過時間における電流値と、検知信号の電圧の大きさ及び上記経過時間に応じて、予め定められている既知の値(閾値)とを比較することにより、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に飛散して存在しているか否かについて判別することができる。
そして、ステップS9において、制御部33が一対のヘマトクリット電極11上に滴下試薬15が飛散していないと判別すると、ステップS8で補正された測定対象成分の量を示す値(例えば、グルコース濃度値)は、記録部34に記録され、出力部35により表示画面1cへ表示される(ステップS10)。出力部35は、有線又は無線ネットワークを介して他の装置へ値を送信することもできる。
一方、ステップS9において、制御部33が一対のヘマトクリット電極11上に滴下試薬15が飛散していると判別すると、制御部33は分析用具2に異常が生じていると判断して、その旨を表示画面1cに表示させる(ステップS11)。
なお、上記の説明以外に、制御部33が一対のヘマトクリット電極11上に滴下試薬15が飛散していると判別した場合、例えば制御部33が不適合な分析用具2が用いられたと判断して、測定を中止する構成でもよい。
以上、図24に示す例では、第1信号の応答を測定する処理(ステップS4、S5)の終了後、第2信号の応答を測定する処理(ステップS6、S7)が実行されている。これは、第1信号及び第2信号を、共通しない時間のあいだで生物学的な流体に印加する場合の例である。この場合、第1信号及び第2信号間で同期をとる必要がないため、処理や装置構成を簡素にすることができる。
なお、上記ステップS1〜ステップS11に要する時間は、10秒程度であり、後に詳述するように、ステップS2〜ステップS11の順番を適宜変更することができる。
[第2の実施形態]
図25は、本発明の第2の実施形態にかかる血糖値計の第2測定部の回路構成の例を説明する図である。図26は、第2の実施形態での分析用具における、上記検知信号の具体的な印加方法を説明する図である。
図において、本実施形態と上記第1の実施形態との主な相違点は、一対のヘマトクリット電極では、検知信号が印加される場合において、一対のグルコース電極に近い電極が作用極とされ、一対のグルコース電極から遠い電極が対極とされる点である。なお、上記第1の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
つまり、図25において、本実施形態の第2測定部31bでは、オペアンプ40の分析用具2側に、4つのスイッチング素子SW1〜SW4を備えた反転回路SWが設けられている。具体的にいえば、反転回路SWでは、スイッチング素子SW1がオペアンプ40と信号配線8との間に接続され、スイッチング素子SW2が信号配線8と接地端子との間に接続されている。また、スイッチング素子SW3がオペアンプ40と信号配線5との間に接続され、スイッチング素子SW4が信号配線5と接地端子との間に接続されている。
本実施形態の第2測定部31bでは、上記直流電圧信号(検知信号)が印加される場合、反転回路SWは、制御部33からの指示に基づいて、図25に示す状態とされる。すなわち、上記検知信号が印加される場合、反転回路SWでは、図25に示すように、スイッチング素子SW1及びSW4がオフ状態とされ、スイッチング素子SW2及びSW3がオン状態とされる。
この結果、本実施形態では、第1の実施形態と異なり、図26に示すように、上記検知信号の+電圧が電極部5bに印加され、−電圧が電極部8bに印加されるように構成されている。すなわち、本実施形態では、一対のヘマトクリット電極11を構成する電極部5b及び8bのうち、一対のグルコース電極12に近い位置にある、電極部5bが上記検知信号に対する作用極とされ、一対のグルコース電極12から遠い位置にある、電極部8bが上記検知信号に対する対極とされている。
また、本実施形態の第2測定部31bでは、上記第2信号(測定信号)が印加される場合、反転回路SWは、制御部33からの指示に基づいて、スイッチング素子SW1〜SW4の各状態を図25に示した状態から反転させる。すなわち、上記第2信号が印加される場合、反転回路SWでは、スイッチング素子SW1及びSW4がオン状態とされ、スイッチング素子SW2及びSW3がオフ状態とされる。
ここで、図27を参照して、本実施形態での上記検知信号の具体的な電気的応答について説明する。
図27は、第2の実施形態の測定装置において、上記検知信号に対する電気的応答の具体例を説明する図であり、図27(a)、図27(b)、及び図27(c)は、それぞれ上記検知信号の電圧が200mV、1000mV、及び1500mVである場合での電気的応答の具体例を説明する図である。
本実施形態では、検知信号の電圧が、例えば200mVに設定された場合でも、第1の実施形態と異なり、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬15の飛散の有無を判別することが確認された。
すなわち、本実施形態では、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在していない場合での電流値(図27(a)に点線にて図示)に比べて、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在している場合での電流値(図27(a)に実線にて図示)が大きくなった。具体的にいえば、検知信号の印加開始時点から、例えば0.1秒後での電流値が、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在していない場合では、0μAであるのに対して、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在している場合では、3μA程度であった。これにより、検知信号の電圧が200mVに設定された場合、本実施形態では、図27(a)の点線及び実線にて示されるように、検知信号の印加開始時点から、例えば0.1秒後での電流値(電気的応答)に基づき、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬15の飛散の有無を容易に判別することができる。具体的にいえば、制御部33が、検知信号の印加開始時点から、例えば0.1秒後での電流値と、既知の値(例えば、2μA)との比較を行うことにより、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬15の飛散の有無を容易に、かつ、精度よく判別することができる。
このように本実施形態では、一対のグルコース電極12に近い位置にある、電極部5bを作用極とすることにより、検知信号の電圧が小さい場合(例えば、200mVである場合)でも、検知信号に対する測定感度を向上させて、第1の実施形態と異なり、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬15の飛散の有無を判別することができることが確かめられた。また、これにより、本実施形態では、検知信号と第2信号とを同じ電圧(200mV)とすることができることも確認された。
また、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、検知信号の電圧を大きくした場合、滴下試薬15の飛散の有無の検知感度を向上できることが実証された。
すなわち、検知信号の電圧が、例えば1000mVに設定された場合、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在していない場合での電流値(図27(b)に点線にて図示)に比べて、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在している場合での電流値(図27(b)に実線にて図示)が大きくなった。具体的にいえば、検知信号の印加開始時点から、例えば0.1秒後での電流値が、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在していない場合では、3μA程度であるのに対して、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在している場合では、20μAを超える値であった。これにより、検知信号の電圧が1000mVに設定された場合、本実施形態では、図27(b)の点線及び実線にて示されるように、検知信号の印加開始時点から、例えば0.1秒後での電流値(電気的応答)に基づき、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬15の飛散の有無を容易に判別することができる。具体的にいえば、制御部33が、検知信号の印加開始時点から、例えば0.1秒後での電流値と、既知の値(例えば、10μA)との比較を行うことにより、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬15の飛散の有無を容易に、かつ、精度よく判別することができる。
さらに、例えば、検知信号の電圧が1500mVに設定された場合、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在していない場合での電流値(図27(c)に点線にて図示)に比べて、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在している場合での電流値(図27(c)に実線にて図示)がより大きくなった。具体的にいえば、検知信号の印加開始時点から、例えば0.2秒後での電流値が、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在していない場合では、1μA程度であるのに対して、滴下試薬15が一対のヘマトクリット電極11上に存在している場合では、8μAを越える値であった。これにより、検知信号の電圧が1500mVに設定された場合、本実施形態では、図27(c)の点線及び実線にて示されるように、検知信号の印加開始時点から、例えば0.2秒後での電流値(電気的応答)に基づき、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬15の飛散の有無を容易に判別することができる。具体的にいえば、制御部33が、検知信号の印加開始時点から、例えば0.2秒後での電流値と、既知の値(例えば、4μA)との比較を行うことにより、一対のヘマトクリット電極11上への滴下試薬15の飛散の有無を容易に、かつ、精度よく判別することができる。
以上の構成により、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様な作用・効果を奏することができる。また、本実施形態では、一対のヘマトクリット電極11を構成する電極部5b及び8bのうち、一対のグルコース電極12に近い位置にある、電極部5bが上記検知信号に対する作用極とされ、一対のグルコース電極12から遠い位置にある、電極部8bが上記検知信号に対する対極とされている。これにより、本実施形態では、検知信号に対する電気的応答の測定感度を向上することができ、滴下試薬15の有無の判別を容易に行うことができる。
尚、上記の実施形態はすべて例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって規定され、そこに記載された構成と均等の範囲内のすべての変更も本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、上記の説明では、測定装置として血糖値計を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば試料(検体)から乳酸などの値を測定する乳酸値計などの他の測定装置でもよい。具体的には、例えば乳酸値計(乳酸センサ)に適用する場合は、試薬として乳酸オキシダーゼ(酵素)を使い、テスト電極対を用いて第1の生物学的値としてヘマトクリットの値を測定し、他の電極対を用いて第2の生物学的値として乳酸の値を測定して、血糖値計と同様に、ヘマトクリット補正を行う構成とすればよい。また、本発明は、ヘマトクリット補正を行う構成に限定されるものではなく、例えば、第1の生物学的値として還元性物質を測定するなど、テスト電極対及び他の電極対を用いて、それぞれ第1及び第2の生物学的値を求めるものであれば何等限定されない。
また、上記の説明では、一対のヘマトクリット電極(テスト電極対)と、一対のグルコース電極(他の電極対)を有する構成について説明したが、本発明は少なくとも一つのテスト電極対を有するものであればよく、例えば一つのテスト電極対を含む合計三つの電極対を有するものでよい。
また、上記の説明では、図24のフローチャートに例示したように、検知信号に対する電気的応答を測定する工程の後に、一対のヘマトクリット電極(テスト電極対)を用いて、ヘマトクリットの値(第1の生物学的値)を測定する工程を行う構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば検知信号をテスト電極対に印加する工程の前に、テスト電極対を用いて、ヘマトクリットの値を測定する工程を行ってもよい。すなわち、図24のステップS2及びS3の工程を、図24のステップS8の工程の後に行ってもよい。また、テスト電極対を用いて、ヘマトクリットの値を測定する工程の前または後に、検知信号に対する電気的応答を測定する工程及びテスト電極対上の試薬の有無を判別する工程を連続的に行ってもよい。すなわち、図24のステップS6及びS7の前または後に、図24のステップS2及びS3の工程に続いて、図24のステップS9の工程を連続的に行ったりしてもよい。
また、上記の説明では、検知信号として直流電圧信号を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、交流電圧信号やのこぎり波などの非正弦波からなる他の電圧信号を印加する構成でもよい。
但し、上記実施形態のような直流電圧信号または交流電圧信号を検知信号に用いる場合の方が、当該検知信号の印加工程及び試薬の有無の判別工程を容易に行うことができる点で好ましい。
また、上記の説明では、分析用具において、流路の上流側に一対のヘマトクリット電極(テスト電極対)を設け、流路の下流側に一対のグルコース電極(他の電極対)を設けた構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、流路の上流側に一対のグルコース電極(他の電極対)を設け、流路の下流側に一対のヘマトクリット電極(テスト電極対)を設けてもよい。
また、上記の説明では、一本の流路内に一対のヘマトクリット電極と一対のグルコース電極を設けた構成について説明したが、本発明の分析用具は試薬が設置された他の電極対から当該試薬が飛散可能な位置にあるテスト電極対を有するものであればよく、流路の形状は上記のものに何等限定されない。例えばY字状で2股に分かれているような流路を有する分析用具にも適用することができる。