以下の詳細な説明は、図面を参照しつつ読まれるべきもので、異なる図面中、同様の要素は同様の参照符号にて示してある。図面は必ずしも一定の縮尺を有さず、選択した実施形態を示したものであって、本発明の範囲を限定するものではない。詳細な説明は本発明の原理を限定するものではなく、あくまでも例として説明するものである。
本明細書で任意の数値や数値の範囲について用いる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその所望の目的に沿って機能することを可能とするような適当な寸法の許容誤差を示すものである。更に、本明細書で用いられる「患者」、「ホスト」、「ユーザー」、及び「被験者」なる語は、いずれかのヒト又は動物被験対象を指し、ヒト患者における本発明の使用は好ましい実施形態であるが、システム又は方法をヒトへの使用に制限することは意図されない。
本明細書で開示するシステム及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理が総括的に理解されるように、特定の例示的実施形態をこれから説明する。これらの実施形態の1以上の例を添付図面に示す。本明細書で具体的に説明し、添付の図面に示すシステム及び方法が、非限定的な例示的実施形態であること、並びに本開示の範囲が特許請求の範囲によってのみ定義されることが、当業者には理解されよう。例示的な一実施形態に関連して例示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされ得る。そのような修正及び変形は、本開示の範囲に含まれることが意図される。
以下に更に詳細に記載するように、開示されるシステム及び方法は、第1の分析物濃度値を定量する工程と、第1の分析物濃度値から第2の分析物濃度値を計算する工程と、温度の影響について第2の分析物濃度値を補正し、第3の分析物濃度値を得る工程と、第3の分析物濃度値をセンサの充填時間に応じて補正し、第4の分析物濃度値を得る工程と、第4の分析物濃度値を静電容量に応じて補正し、最終分析物濃度値を得る工程と、を含む。
本明細書に開示されているシステム及び方法は、多種多様なサンプル中の多種多様な分析物の測定において使用するのに好適であり、全血、血漿、血清、間質液、又はこれらの類縁体中の分析物の測定において使用するのに特に好適である。例示的実施形態では、対向する電極を有する薄層セル設計と速い(例えば、約5秒以下の分析時間)3つのパルス電気化学設計に基づくグルコース試験システムは、小さな(例えば、約0.4μL以下)サンプルを必要とし、血液グルコース測定の信頼性及び精度の改善を提供することができる。分析物を検査するための反応セルでは、サンプル中のグルコースは、グルコースデヒドロゲナーゼを使用してグルコノラクトンに酸化することができ、電気化学的に活性である媒体は、酵素から作用電極に電子をシャトル輸送するために使用することができる。より詳細には、反応セル中で電極の少なくとも1つをコーティングする試薬層は、ピロロキノリンキノン(PQQ)補酵素依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)とフェリシアニドとを含むことができる。別の実施形態では、PQQ補酵素依存性GDHなる酵素は、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)補酵素依存性GDHなる酵素と置き換えてもよい。血液又は対照溶液が反応チャンバ中に投与されると、グルコースは、下の化学変化T.1に示されているように、GDH(ox)により酸化され、このプロセスにおいてGDH(ox)をGDH(red)に変化させる。但し、GDH(ox)はGDHの酸化状態を指し、GDH(red)はGDHの還元状態を指すことに留意されたい。
T.1 D−グルコース+GDH(ox)→グルコン酸+GDH(red)
3つのパルスの電位波形を作用電極及び対電極に印加するために定電位を利用することができ、結果として、グルコース濃度を計算するために使用される試験電流遷移を生じる。更に、試験電流遷移から得られる追加的な情報は、サンプルマトリックス間の区別、及びヘマトクリット値、温度変化、電気化学的活性成分による血液サンプルの変動性の補正、並びに起こり得るシステムエラーの同定のために使用され得る。
標記方法は、原理的には、離間した第1及び第2の電極と試薬層とを有する任意のタイプの電気化学セルセンサと共に使用することができる。例えば、電気化学セルセンサは、試験ストリップの形状であることができる。一態様では、試験ストリップは、サンプル受容チャンバ又は試薬層が配置される領域を画定するために薄いスペーサにより分離された2つの対向する電極を含んでもよい。出願者は、例えば、同一平面上に複数の電極を有する試験ストリップ等の他のタイプの試験ストリップもまた本明細書に記載されているシステム及び方法で使用され得ることを注記しておく。本明細書に記載されるシステム及び方法と共に使用される装置は、典型的に、その間に電位が印加され得る少なくとも1つの作用電極と、1つの対電極と、を含む。サンプル分析デバイスは、一般的に、計器等の電極間に電位を印加するための構成要素に関連付けられ得る。出願者は、様々な試験計器が本明細書に記載されているシステム及び方法で使用され得ることを注記しておく。しかしながら、一実施形態では、試験計器は、少なくともプロセッサを含み、これは、少なくとも1つの測定された又は計算されたパラメータを考慮して補正因子を計算できる計算を行うように構成され、並びに、データ分類及び/又は保存のために構成された1つ以上の制御ユニットを含んでもよい。マイクロプロセッサは、例えば、Texas Instruments MSP 430などのミックスドシグナルマイクロプロセッサ(MSP)の形態であることができる。TI−MSP 430は、定電位機能及び電流計測機能の一部を行うようにも構成され得る。更に、MSP 430は、揮発性及び不揮発性メモリを含むこともできる。別の実施形態では、電子的構成要素の多くは、特定用途向け集積回路の形態でマイクロコントローラと共に集積することができる。
電気化学セル
図1A〜4Bは、本明細書で説明される方法で使用するのに適した例示的な試験ストリップ62の様々な図を示す。示されるように、試験ストリップ62は、遠位端80から近位端82まで延在し、側縁部56、58を有する細長い本体を含むことができる。本体59の遠位部分は、複数の電極64、66及び試薬72を有するサンプル反応チャンバ61を含むことができ、一方、試験ストリップ本体59の近位部分は、試験計器と電気的に導通するために構成される特徴を含むことができる。使用中、生理学的流体又は対照溶液は、電気化学分析のためにサンプル反応チャンバ61に送達され得る。本明細書で用いるとき、用語「近位」は、参照の構造が試験計器により近いことを示し、用語「遠位」は、参照の構造が試験計器からより遠いことを示す。
例示的な実施形態において、試験ストリップ62は、第1の電極層66及び第2の電極層64を含むことができ、スペーサ層60がその間に位置付けられる。第1の電極層66は、第1の電極166を第1の電気接点67に電気的に接続するために、第1の電極166及び第1の接続路76を提供することができる。同様に、第2の電極層64は、第2の電極164を第2の電気接点63に電気的に接続するために、第2の電極164及び第2の接続路78を提供することができる。
一実施形態において、サンプル反応チャンバ61は、図1A〜4Bに示されるように、第1の電極166、第2の電極164、及びスペーサ60によって画定される。具体的には、第1の電極166及び第2の電極164は、それぞれ、サンプル反応チャンバ61の底部及び上部を画定する。スペーサ60の切欠き領域68は、サンプル反応チャンバ61の側壁を画定することができる。一態様において、サンプル反応チャンバ61は、サンプルの入口及び/又は通気孔を提供するいくつかのポート70を更に含むことができる。例えば、ポートのうちの1つは、流体サンプルの入口を提供することができ、他のポートは、通気孔として機能することができる。
サンプル反応チャンバ61は、小さな容積を有する。例えば、容積は、約0.1マイクロリットル〜約5マイクロリットル、好ましくは約0.2〜約3マイクロリットル、より好ましくは約0.3マイクロリットル〜約1マイクロリットルの範囲である。当業者が理解するように、サンプル反応チャンバ61は、様々な他のそのような容積を有することができる。小サンプル容量を提供するために、切欠き68は、約0.01cm2〜約0.2cm2、好ましくは約0.02cm2〜約0.15cm2、より好ましくは約0.03cm2〜約0.08cm2の範囲の領域を有することができる。同様に、当業者は、容量切欠き68が様々な他のそのような領域のものであり得ることを理解するであろう。加えて、第1及び第2の電極166、164は、約1マイクロメートル〜約500マイクロメートルの範囲、好ましくは約10マイクロメートル〜約400マイクロメートルの範囲、より好ましくは、約40マイクロメートル〜約200マイクロメートルの範囲で離間され得る。他の実施形態では、そのような範囲は、様々な他の値間で変動することができる。近接した電極間隔は、第1の電極166で生成された酸化媒体が、還元される第2の電極164に拡散することができ、続いて再び酸化される第1の電極166に戻って拡散する、酸化還元サイクルを生じさせることもできる。
試験ストリップ本体59の近位端で、第1の電気接点67は、試験計器への電気接続を確立するために使用され得る。第2の電気接点63は、図2に示されるように、U字型ノッチ65を通して試験計器によりアクセスされ得る。出願者は、試験ストリップ62が、試験計器に電気的に接続するために構成される様々な代替的電気接点を含むことができることを注記しておく。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,379,513号は、電気化学セル接続手段を開示している。
一実施形態において、第1の電極層66及び/又は第2の電極層64は、金、パラジウム、カーボン、銀、プラチナ、酸化スズ、イリジウム、インジウム、及びこれらの組み合わせ(例えば、インジウムドープ酸化スズ)等の材料から形成される導電性材料であり得る。加えて、電極は、例えば、スパッタリング、化学メッキ、又はスクリーン印刷プロセス等の様々なプロセスによって、導電性材料を絶縁シート(図示せず)上に配置することにより形成され得る。例示的な一実施形態において、第2の電極層64は、スパッタされた金電極であり得、第1の電極層66は、スパッタされたパラジウム電極であり得る。間隔層60として使用することができる適切な材料としては、例えば、プラスチック(例えば、PET、PETG、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン)、シリコン、セラミック、ガラス、接着剤、及びこれらの組み合わせ等の様々な絶縁材料が挙げられる。
試薬層72は、スロットコーティング、チューブの端からの分注、インク噴射、及びスクリーン印刷等のプロセスを使用して、サンプル反応チャンバ61内に配置することができる。そのようなプロセスは、例えば、次の米国特許第6,749,887号、同第6,869,411号、同第6,676,995号、及び同第6,830,934号に記載されており、これら参考文献の全体それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態において、試薬層72は、少なくとも媒体及び酵素を含むことができ、第1の電極166上に沈着され得る。様々な媒体及び/又は酵素が、本開示の趣旨及び範囲内にある。例えば、適切な媒体は、フェリシアニド、フェロセン、フェロセン誘導体、オスミウムビピリジル錯体、及びキノン誘導体が挙げられる。適切な酵素の例としては、グルコースオキシダーゼ、ピロロキノリンキノン(PQQ)補酵素依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド補酵素依存性GDH、及びFAD依存性GDH[E.C.1.1.99.10]が挙げられる。試薬層72を製造するのに好適な一例示的試薬処方は、係属中の米国特許出願第10/242,951号(表題「Method of Manufacturing a Sterilized and Calibrated Biosensor−Based Medical Device」、米国特許出願公開第2004/0120848号として公開)に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
第1の電極166又は第2の電極164のいずれかは、試験計器の印加された試験電位の極性により、限界量の媒体を酸化又は還元する作用電極として機能することができる。例えば、電流制限種が還元媒体である場合、十分な正電位が第2の電極164に対して印加される限り、第1の電極166で酸化され得る。このような状況では、第1の電極166は作用電極の機能を実行し、第2の電極164は対電極/参照電極の機能を実行する。試験ストリップ62に関して特に明記しない限り、以下、試験計器100により印加された電位はすべて、第2の電極164に関して記述されるものであることに留意するべきである。
同様に、十分な負電位が第2の電極164に対して印加される場合、還元媒体は、第2の電極164で酸化され得る。このような状況では、第2の電極164は作用電極の機能を実行することができ、第1の電極166は対電極/参照電極としての機能を実施することができる。
初めに、本開示の方法は、関心の流体サンプル量を試験ストリップ62の中に導入することを含むことができ、これは、第1の電極166、第2の電極164、及び試薬層72を含む。流体サンプルは、全血又はその誘導体若しくは画分、又は対照溶液であり得る。流体サンプル、例えば、血液は、ポート70を介してサンプル反応チャンバ61の中に投与され得る。一態様において、ポート70及び/又はサンプル反応チャンバ61は、毛管作用が流体サンプルにサンプル反応チャンバ61を充填させるように構成され得る。
図5Aは、それぞれ、試験ストリップ62の第1の電極166及び第2の電極164と電気的導通状態にある第1の電気接点67及び第2の電気接点63と接触する試験計器100の簡略化した概略図を提供する。試験計器100は、それぞれ、第1の電気接点67及び第2の電気接点63を介して、第1の電極166及び第2の電極164に電気的に接続されるように構成され得る(図2及び5Aに示される)。当業者が理解するように、様々な試験計器が本明細書に記載される方法と共に使用され得る。しかしながら、一実施形態では、試験計器はプロセッサを少なくとも含み、これは、電気化学セルの物理的特性と相関する少なくとも1つの測定されたパラメータを考慮して補正因子を計算できる計算を行うように構成される、並びにデータ分類及び/又は保存のために構成される、1つ以上の制御ユニットを含んでよい。マイクロプロセッサは、例えば、Texas Instruments MSP 430などのミックスドシグナルマイクロプロセッサ(MSP)の形態であることができる。TI−MSP 430は、定電位機能及び電流計測機能の一部を行うようにも構成され得る。更に、MSP 430は、揮発性及び不揮発性メモリを含むこともできる。別の実施形態では、電子的構成要素の多くは、特定用途向け集積回路の形態でマイクロコントローラと共に集積することができる。
図5Aに示されるように、電気接点67は、2つのプロング67a、67bを含むことができる。例示的な一実施形態において、試験計器100は、プロング67a、67bに別々に接続されるため、試験計器100が試験ストリップ62と接触すると、回路が完成する。試験計器100は、試験ストリップ62が試験計器100に電気的に接続されているかどうかを判定するために、プロング67aと67bとの間の抵抗又は電気的導通を測定することができる。出願者は、試験ストリップ62が試験計器100に対して適切に位置付けられるときを判定するために、試験計器100が様々なセンサ及び回路を使用することができることを注記しておく。
一実施形態では、試験計器100に配置される回路は、第1の電気接点67と第2の電気接点63との間に試験電位及び/又は電流を印加できる。ストリップ62が挿入されたことを試験計器100が認識したら、試験計器100のスイッチが入り、流体検出モードを開始する。一実施形態において、流体検出モードは、第1の電極166と第2の電極164との間に、試験計器100に約1マイクロアンペアの一定の電流を印加させる。試験ストリップ62は、最初は乾いているため、試験計器100は、試験計器100内のハードウェアによって制限される最大電圧を測定する。しかしながら、ユーザーが流体サンプルを入口70に投与すると、これにより、サンプル反応チャンバ61が充填される。流体サンプルが第1の電極166と第2の電極164との間の隙間を埋めると、試験計器100が測定された電圧の減少を測定するが(例えば、米国特許第6,193,873号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、これは、試験計器100にグルコース試験を自動的に開始させる既定の閾値より低い。
サンプル反応チャンバ61の一部のみが充填された場合、測定された電圧が既定の閾値より下に減少してもよいことに留意するべきである。流体が適用されたことを自動的に認識する方法は、必ずしもサンプル反応チャンバ61が完全に充填されたことを示さないが、サンプル反応チャンバ61にある程度の量の流体が存在することのみを確認することができる。試験計器100が、流体が試験ストリップ62に適用されたことを判定したら、流体がサンプル反応チャンバ61を完全に充填するように、0ではない短い時間量が依然必要であってもよい。
図5Bは、糖尿病データ管理ユニット10と、グルコース試験ストリップ42の形態のバイオセンサと、を含む、糖尿病管理システムを示す。糖尿病データ管理ユニット(DMU)は、分析物測定及び管理ユニット、グルコース測定器、測定器、及び分析物測定デバイスと呼ばれる場合もあることに留意されたい。一実施形態において、DMUは、インスリン送達デバイス、追加の分析物試験デバイス、及び薬物送達デバイスと組み合わされてもよい。DMUは、ケーブル、又は例えば、GSM(登録商標)、CDMA、BlueTooth(登録商標)、WiFi等といった好適な無線技術を介して、コンピュータ又はサーバに接続されてもよい。
再度図5Bを参照すると、DMU 10は、ハウジング11と、ユーザーインターフェースボタン(16、18、及び20)と、ディスプレイ14と、ストリップポート開口22と、を含むことができる。ユーザーインターフェースボタン(16、18、及び20)は、データの入力、メニューのナビゲーション、及びコマンドの実行を可能とするように構成することができる。ユーザーインターフェースボタン18は、2方向トグルスイッチの形態であることができる。データには、検体濃度及び/又は患者の日常の生活習慣に関連した情報を表す値を挙げることができる。日常の生活習慣に関連した情報には、食物の摂取、薬の使用、健康診断の実施、並びに個々の一般的な健康状態及び運動レベルを挙げることができる。
DMU 10の電子要素は、ハウジング11内の回路基板34上に配置され得る。図5Cは、回路基板34の上面上に配置された電子構成要素を(概略的な形で)示す。上面上の電子構成要素としては、ストリップポート開口308、マイクロコントローラ38、不揮発性フラッシュメモリ306、データポート13、リアルタイムクロック42、及び複数のオペアンプ(46〜49)が挙げられる。底面上の電子構成要素としては、複数のアナログスイッチ、バックライトドライバ、及び電気的消却・プログラム可能型読取専用メモリ(EEPROM、図示せず)が挙げられる。マイクロコントローラ38は、ストリップポート開口308、不揮発性フラッシュメモリ306、データポート13、リアルタイムクロック42、複数のオペアンプ(46〜49)、複数のアナログスイッチ、バックライトドライバ、及びEEPROMに電気的に接続され得る。
再度図5Cを参照すると、複数のオペアンプは、利得段オペアンプ(46及び47)、トランスインピーダンスオペアンプ48、及びバイアスドライバオペアンプ49を含み得る。複数のオペアンプは、ポテンシオスタット機能及び電流測定機能の一部を提供するように構成され得る。ポテンシオスタット機能とは、試験ストリップの少なくとも2つの電極間に試験電圧を加えることを指し得る。電流機能とは、加えられた試験電圧によって生じる試験電流を測定することを指し得る。電流測定は、電流電圧変換器によって行うことができる。マイクロコントローラ38は、例えば、Texas Instruments MSP 430などのミックスドシグナルマイクロプロセッサ(MSP)の形態であることができる。MSP 430は、ポテンシオスタット機能及び電流測定機能の一部を行うように構成することもできる。更に、MSP 430は、揮発性及び不揮発性メモリを含むこともできる。別の実施形態において、電子構成要素の多くを特定用途向け集積回路(ASIC)の形態でマイクロコントローラに組み込むことができる。
ストリップポートコネクタ308は、ストリップポート開口22に近接して位置決めされ、試験ストリップと電気的接続を形成するように構成され得る。ディスプレイ14は、測定された血糖値を報告し、生活習慣に関連した情報の入力を容易にするための、液晶ディスプレイの形態であってよい。ディスプレイ14は、任意にバックライトを有してよい。データポート13は、接続リード線に取り付けられた適当なコネクタを受容することにより、グルコース測定器10をパーソナルコンピュータなどの外部装置に接続することができるようになっている。データポート13は、例えば、シリアル、USB、又はパラレルポートなど、データ送信が可能な任意のポートであってもよい。
リアルタイムクロック42は、ユーザーが位置する地理的領域に関連する現在時刻を維持し、また時間を計測するように構成され得る。リアルタイムクロック42は、クロック回路45、クリスタル44、及び超コンデンサ43を含んでもよい。DMUは、例えば、電池などの電源に電気的に接続されるように構成され得る。超コンデンサ43は、電力供給障害があった場合にリアルタイムクロック42に電力供給するために、長時間電力供給するように構成され得る。したがって、電池が放電する又は交換されるときに、ユーザーがリアルタイムクロックを固有時間に再設定する必要がない。リアルタイムクロック42を超コンデンサ43と一緒に使用することによって、ユーザーがリアルタイムクロック42を誤って再設定するかもしれないリスクを軽減することができる。
本明細書に開示する方法のうちの少なくともいくつか及び免疫センサ110と併せて使用するためのサンプル分析デバイスの別の例示的実施形態が図6に図示され、「Adhesive Compositions for Use in an Immunosensor」と題する、2009年9月30日に出願された、Chatelierらの米国特許出願第12/570,268号に記載されており、これは、参照によって、その全体が本願に組み込まれる。複数のチャンバは、サンプルを免疫センサの中に導入することができる充填チャンバ、サンプルを1つ以上の所望の物質と反応させることができる反応チャンバ、及びサンプルの特定の構成成分の濃度を決定することができる検出チャンバを含む、免疫センサ内に形成され得る。これらのチャンバは、免疫センサの第1の電極、第2の電極、及びセパレータのうちの少なくとも一部分内に形成され得る。免疫センサは、必要に応じて、空気が免疫センサに進入及びそれから漏れることを可能にし、また第1及び第2の封止用構成要素が通気孔の第1及び第2の側面を選択的に封止することを可能にする、通気孔を含むこともできる。第1の封止用構成要素は、充填チャンバの壁を形成することもできる。
図示されるように、免疫センサ110は、その上部に2つの液体試薬130、132が縞模様で付けられている、第1の電極112を備える。第1の電極112は、電極を形成するために用いられる多数の技術を用いて形成され得るが、一実施形態では、硫酸バリウムを充填されたポリエチレンテレフタレート(PET)のシートが、金でスパッタコーティングされる。PETシートが二酸化チタンで充填されてもよい。電極を形成する他の非限定的な例が、「Electrochemical Cell」と題され、2000年11月10日に出願された、Hodgesらの米国特許第6,521,110号において開示されており、その内容は、参照によって、その全体が本願に組み込まれる。
同様に、液体試薬130、132は、多くの異なる組成物を有することができる。一実施形態では、第1液体試薬130は、スクロース並びにPluronics(登録商標)ブロックコポリマー等のポロキサマー、シトラコネート等の抗凝固剤、及びカルシウムイオンを含有する緩衝液中にGDH−PQQ等の酵素に接合した抗体を含む。一実施形態では、第2液体試薬132は、希釈シトラコン酸溶液などの酸性緩衝液中に、フェリシアニドと、グルコースと、フェナジンエトサルフェートなどの第2媒体と、の混合物を含む。第1及び第2の液体試薬130、132は、第1の電極112の上で乾燥させることができる。試薬130、132を乾燥させるために多くの技法を使用することができるが、一実施形態では、第1の電極112の上に試薬130、132が縞模様で付けられた後に、1つ以上の赤外線乾燥器を試薬130、132に適用することができる。また、例えば、1つ以上の空気乾燥器が赤外線乾燥器に続いて使用され得る。本明細書における、第1の試薬と第1の液体試薬及び第2の試薬と第2の液体試薬についての言及は、同じ意味で用いられており、特定の実施形態に対して試薬が所与の時点で液体の又は乾燥した形態にあることを必ずしも示唆するものではない。更に、第1及び第2の液体試薬に付随する構成成分のいくつかは、交換可能に、及び/又は所望に応じて、第1液体試薬と第2液体試薬の両方において使用され得る。非限定的な例として、抗凝固剤は、第1の液体試薬130及び第2の液体試薬132のうちの一方又は両方に付随することができる。
電気絶縁線が、試薬132の端縁がその線に近接するか又は接触するように、試薬130と132との間のスパッタコーティングされた金として形成され得る。この線は、レーザーアブレーションを利用して、又は鋭利な金属の縁部を用いて施され得る。例示的な一実施形態において、この線は、試薬130、132が電極上に縞模様で付けられる前に施すことができる。この線は、検出チャンバの下の第1の電極112の部分を、反応チャンバの下に位置する部分から電気的に絶縁するように設計され得る。これにより、電気化学的分析の間、作用電極の範囲がより良好に規定され得る。
また、免疫センサ110は、その上部に表面結合型抗原を含有する1つ以上の磁気ビーズ134を有する第2の電極114も有することができる。これらの抗原は、以下で更に詳細に説明するように、第1の電極112に配置された抗体及び反応チャンバ118内のサンプルと反応するように構成され得る。第1の電極112の上及び第2の電極114の上に配設された構成要素が相互に交換可能であることが、当業者には理解されよう。したがって、第1の電極112は1つ以上の磁気ビーズ134を含むことができ、第2の電極114は、その上部に縞模様で付けられた2つの液体試薬130、132を含むことができる。更に、図示の実施形態において、電極112の長さは、免疫センサ110全体の長さを形成しているが、他の実施形態において、電極は、免疫センサの層のうちの第1又は第2の電極として働く部分のみとされ得、あるいは、複数の電極が、免疫センサの単一の層に配置され得る。更に、免疫センサに印加される電圧は、反転及び/又は交番することがあるため、第1及び第2の電極はそれぞれ、異なる段階において作用電極及び対電極又は対/参照電極としての働きをすることができる。説明を容易にする目的で、本願において、第1の電極は作用電極と見なし、第2の電極は対電極又は対電極/参照電極と見なす。
第1の電極112と第2の電極114との間に配置されるセパレータ116は、多様な形状及び寸法を有することができるが、一般的には、望ましくは第1及び第2の電極112、114と係合して免疫センサ110を形成するように構成される。一例示的実施形態では、セパレータ116は、両側に接着剤を含む。セパレータ116は更に、製造プロセスを容易にするために、セパレータ116の2つの面のそれぞれに剥離ライナを備えてよい。各剥離ライナは、セパレータが各電極に結合する前に取り除かれる。セパレータ116は、少なくとも2つの空洞を形成する方式で切断され得る。第1の空洞は、反応チャンバ118として働くように形成され得、第2の空洞は、検出チャンバ120として働くように形成され得る。一実施形態において、反応チャンバ118は、電極112、114と整列して反応チャンバ内での抗原抗体反応を可能にし、一方で検出チャンバ120は、電極112、114と整列して検出チャンバ内でのフェロシアン化物の電気化学的測定を可能にするように、セパレータ116がキスカット(kiss−cut)され得る。
一実施形態では、セパレータ116は、第2の電極114の磁気ビーズ134及び第1の電極112の第1の試薬130を少なくとも部分的に反応チャンバ118内に配設することが可能となり、第1の電極112の第2の試薬132のフェリシアニドとグルコースの組み合わせを少なくとも部分的に検出チャンバ120内に配設することが可能となるような方式で、第1の電極112上に配置され得る。第1及び第2の液体試薬130、132の各々に抗凝固剤を含めて、抗凝固剤が反応チャンバ118及び検出チャンバ120の各々に付随するようにすると有利となり得る。いくつかの実施形態では、第1の電極112及び第2の電極114の一方とセパレータ116との組み合わせが、互いに積層されて二層積層体を形成することができ、一方で、他の実施形態では、第1の電極112、第2の電極114、及びセパレータ116のそれぞれの組み合わせが、互いに積層されて三層積層体を形成することができる。あるいは、更なる層も追加し得る。
充填チャンバ122は、第1の電極112及び第2の電極114の一方及びセパレータ116に孔を打抜きすることによって形成され得る。図示の実施形態において、充填チャンバは、第1の電極112の孔が反応チャンバ118と重なり合うように、第1の電極112及びセパレータ116に孔を打抜きすることによって形成される。図示されるように、充填チャンバ122は、検出チャンバ120から一定の距離だけ離され得る。そのような構成により、サンプルは、検出チャンバ120に進入することなく、充填チャンバ122を通じて免疫センサ110に進入し、反応チャンバ118の中に流入して、例えば、第1の電極112上の、酵素と抱合した抗体を緩衝液中に含む第1の液体試薬130、及び第2の電極114上に縞模様で付けられた磁気ビーズ134と反応することが可能となる。サンプルが反応すると、そのサンプルは次いで、第2液体試薬132、例えば、フェリシアニド、グルコース、及び酸性の緩衝液中の第2媒体の混合物と化学的又は物理的転換を受けるために、検出チャンバ120の中に流入することが可能となる。
通気孔124が免疫センサ110の全体を通じて延びるように、通気孔124は、2つの電極112、114の各々及びセパレータ116を貫いて孔を打抜きすることによって形成され得る。穴は、例えば、多くの異なる位置でのドリル又は打抜き等の好適な方法で形成することができるが、一例示的実施形態では、穴は、反応チャンバ118から離間した検出チャンバ120の領域に重なり合うことができる。
通気孔124は、多数の異なる方法で封止することができる。図示の実施形態では、第1のシーリング構成要素140は、第1の電極112上に配置されて通気孔124の第1の面を封止し、第2のシーリング構成要素142は、第2の電極114上に配置されて通気孔124の第2の面を封止する。封止用構成要素は、任意の数の材料から作製することができ、及び/又は任意の数の材料を含むことができる。非限定的な例として、封止用構成要素のいずれか一方、又はそれらの両方は、親水性接着テープ又はスコッチ(Scotch)(登録商標)テープであってよい。封止用構成要素の接着側は、免疫センサ110に面することができる。図示されるように、第1の封止用構成要素140は、通気孔124に対する封止を形成できるだけでなく、サンプルが中に収容され得るように、充填チャンバ122の壁を形成することもできる。第1の封止用構成要素140の接着側上に組み込まれた特性は、充填チャンバ122に関連付けられ得る。例えば、第1のシーリング構成要素140が、それを親水性及び/又は水溶性にする特性を含む場合、充填チャンバは、サンプルがそこに配置されているとき、湿ったままであってよい。更に、封止用構成要素140、142は、免疫センサ110及びその中に配設された構成成分に対して所望に応じて通気及び/又は封止をなすように、免疫センサ110に選択的に関連し、切り離すことができる。
接着剤は、一般的に、免疫センサの構造に使用することができる。接着剤を本開示の免疫センサ及び他のサンプル分析デバイス内に組み込むことができる方法の非限定的な例は、「Adhesive Compositions for Use in an Immunosensor」と題し、2009年9月30日に出願された、Chatelierらの米国特許出願第12/570,268号で確認することができ、この内容は、既に、参照によって、その全体が本願に組み込まれている。
本開示は、免疫センサに関連する様々な異なる実施形態を論じるが、免疫センサの他の実施形態も、本開示の方法と共に使用することができる。そのような実施形態の非限定的な例には、「Direct Immunosensor Assay」と題され2002年3月21日に出願されたHodgesらの米国特許出願公開第2003/0180814号、「Immunosensor」と題され2004年4月22日に出願されたHodgesらの米国特許出願公開第2004/0203137号、「Biosensor Apparatus and Methods of Use」と題され2005年11月21日に出願されたRylattらの米国特許出願公開第2006/0134713号、並びに米国特許出願公開第2003/0180814号及び同第2004/0203137号の各々に対する優先権を主張する米国特許出願第12/563,091号に記載されたものが挙げられ、これらのそれぞれは、参照によって、その全体が本願に組み込まれる。
一実施形態において、免疫センサ110は、例えば、好適な回路を介して、ある電位を電極112、114に印加し、その電位を印加した結果として生じる電流を測定するように構成された計器の中に配置されるように構成され得る。一実施形態において、免疫センサは、計器と係合するための1つ以上のタブ117を含む。他の特性も、免疫センサ110を計器に係合するために使用することができる。その計器は、多数の種々の特徴を有することができる。例えば、計器は、免疫センサ110の特定の構成成分をあるチャンバ内に維持し、その一方で他の構成成分が他のチャンバに流れるように構成された、磁石を含むことができる。例示的な一実施形態において、計器の磁石は、免疫センサ110を計器内に配設すると磁石が反応チャンバ118の下方に配置されるように位置する。これにより、磁石は、任意の磁気ビーズ134、より具体的には、ビーズ134に拘束されている任意の抗体酵素複合体が、検出チャンバ120の中に流入するのを防ぐのを助けることができる。
計器の別の特徴には、加熱要素が挙げられる。加熱要素は、反応速度を速めるのを助け、また、粘度を減じることによってサンプルが所望の方式で免疫センサ110を通じて流動するのを助けることができる。加熱要素は、1つ以上のチャンバ及び/又はその中に配置されたサンプルが所定温度まで加熱されるのを可能にすることもできる。所定温度まで加熱することで、例えば、反応が生じる際の温度変化の影響を減少又は除去することによって、精度を提供するのを助けることができる。
更に、穿孔装置は、計器に関連付けられ得る。穿孔装置は、空気が通気孔から流出し、液体が反応チャンバから検出チャンバに流動することができるように、所望時間に第1及び第2の封止用構成要素のうちの少なくとも1つを穿孔するように構成することができる。
免疫センサ110及び試験ストリップ62を、制御ユニットに関連付けるよう構成することもできる。制御ユニットは、様々な機能を実行するように構成することができる。一例示的実施形態では、制御ユニットは、サンプルが装置に導入されるときに、サンプルの充填時間を計測することができる。別の実施形態では、制御ユニットは、血液サンプルのヘマトクリット値を定量するように構成することができる。更に別の実施形態では、制御ユニットは、充填時間を考慮して、サンプル中の分析物の濃度を計算するように構成され得る。実際、制御ユニットは、所望される機能性及び充填時間を計測するためにシステムが設計されている方法に少なくとも一部依存する、多くの異なる特徴を含むことができる。
制御ユニットは、システムの他の特徴を測定することもできる。非限定的な例として、制御ユニットは、免疫センサ又は試験ストリップのうちの1つ以上のチャンバの温度を測定するように構成され得る。制御ユニットは、サンプルの温度、サンプルの色、免疫センサ若しくは試験ストリップの静電容量、あるいはサンプル及び/又はシステムの様々な他の特徴及び/若しくは性質を測定するようにも構成され得る。更に非限定的な例として、制御ユニットは、充填時間測定の結果、静電容量測定の結果、分析濃度測定の結果、及び/又はヘマトクリット測定値を外部設備に伝達するように構成され得る。これは、任意の数の方法で実現することができる。一実施形態において、制御ユニットは、マイクロプロセッサ及び/又はディスプレイデバイスに配線することができる。別の実施形態において、制御ユニットは、制御ユニットからのデータをマイクロプロセッサ及び/又はディスプレイデバイスに無線で送信するように構成され得る。
システムの他の構成要素も、そのような測定を行うように構成され得る。例えば、免疫センサ又は計器は、免疫センサ若しくは試験ストリップの1つ以上のチャンバの温度を測定するか、サンプルの温度を測定若しくは推測するか、又はサンプル及び/若しくはシステムの様々な他の特徴及び/若しくは特性を測定、判定、若しくは推測するように構成され得る。更に、制御ユニットのこれらの特徴が、単一の制御ユニット内で交換及び選択的に組み合わせることができることは、当業者には理解されよう。例えば、制御ユニットは、充填時間、静電容量の判定、及びチャンバの温度の測定の両方を行うことができる。他の実施形態において、複数の制御ユニットは、様々な制御ユニットの構成及び実行される所望機能に少なくとも部分的に基づき、様々な機能を実行するために共に使用することができる。
分析物濃度試験
操作中、一実施形態では、試験計器100が、流体が試験ストリップ62上に導入された(例えば、投与された)ことを判定したら、試験計器100は、図7Aに示されるように、指定される間隔で複数の試験電位を試験ストリップ62に印加することによって、分析物試験を実施することができる。分析物試験の時間間隔tGは、分析物試験の時間間隔tGが第1の試験電位時間間隔t1に対して第1の試験電位E1、第2の試験電位時間間隔t2に対して第2の試験電位E2、及び第3の試験電位時間間隔t3に対して第3の試験電位E3を含むことができる、分析物試験を実施するための時間量を表す(しかし、すべての計算が必ずしも分析物試験と関連しない)。更に、図7Aに示されるように、第2の試験電位時間間隔t2は、一定の(DC)試験電圧成分、及び交直重畳(AC)、又は振動試験電圧成分を含むことができる。交直重畳試験電圧成分は、tcapにより示される時間間隔に印加され得る。グルコース試験の時間間隔tGは、例えば、約1秒〜約5秒の範囲である。
上述のように、第1の電極166又は第2の電極164のいずれかは、試験計器の印加された試験電位の極性により、限界量の媒体を酸化又は還元する作用電極として機能することができる。特に明記しない限り、以下、試験計器100によって印加された電位はすべて、第2の電極164に関して記述されるものであることに留意するべきである。しかしながら、出願者は、試験計器100によって印加された試験電位が第1の電極166に関して記述され得、この場合、以下に説明される試験電位及び測定された電流の極性は逆になることを注記しておく。
第1、第2、及び第3の試験電位時間間隔中に測定された複数の試験電流値は、1ナノ秒当り約1測定値〜100ミリ秒当り約1測定値の範囲の周波数で実施され得る。出願者は、「第1」、「第2」、及び「第3」という名称が便宜上選択され、必ずしも試験電位が印加される順序を示さないことを注記しておく。例えば、実施形態は、第3の試験電圧が第1及び第2の試験電圧の印加前に印加され得る電位波形を有することができる。順次様式で3つの試験電圧を使用する実施形態が説明されるが、出願者は、分析物試験が異なる数の開回路及び試験電圧を含むことができることを注記しておく。出願者は、分析物試験の時間間隔が任意の数の開回路電位時間間隔を含むことができることを注記しておく。例えば、分析物試験の時間間隔は、1つ以上の試験電位時間間隔の前及び/又は後に、2つの試験電位時間間隔及び/又は開回路電位時間間隔のみを含むことができる。別の例示的実施形態では、分析物試験は、第1の時間間隔に開回路、第2の時間間隔に第2の試験電圧、及び第3の時間間隔に第3の試験電圧を含むことができる。
図7Aに示されるように、試験計器100は、第1の試験電位時間間隔t1(例えば、約0〜約1秒の範囲)に対して第1の試験電位E1(例えば、図7Aに示されるように−20mV)を印加してもよい。第1の試験電位時間間隔t1は、図7A中の開始点であるゼロ(0)秒から、約0.1秒〜約3秒の範囲、好ましくは約0.2秒〜約2秒の範囲、最も好ましくは約0.3秒〜約1秒の範囲である。第1の試験電位時間間隔t1は、サンプル反応チャンバ61がサンプルで完全に充填され、試薬層72が少なくとも部分的に溶解又は溶媒和され得るように十分に長くてもよい。他の実施形態において、第1の試験電位時間間隔t1は、任意の他の所望の時間範囲を含むことができる。
一実施形態において、試験計器100は、計器がストリップがサンプルで充填されていることを検出できたときと第2の試験電位E2が印加される前との間の期間、電極間に第1の試験電位E1を印加することができる。一態様において試験電位E1は小さい。例えば、電位は、約−1〜約−100mVの範囲、好ましくは約−5mV〜約−50mVの範囲、最も好ましくは約−10mV〜約−30mVの範囲であり得る。より小さい電位は、より大きい電位差を印加するときと比較して、それほどではないにせよ、還元媒体濃度勾配を乱すが、それでもサンプル中の酸化可能物質の測定値を得るのに十分である。試験電位E1は、充填の検出と第2の試験電位E2が印加されるときとの間の時間の一部分に印加され得るか、又はその期間全体に印加され得る。試験電位E1が時間の一部分に使用される場合、開回路は、残りの時間の一部分に適用され得る。任意の数の開回路と小電圧電位印加の組み合わせ、それらの順序、及び印加される時間は、本実施形態において重大ではなく、小電位E1が印加される総期間がサンプル中に存在する酸化可能な物質の存在及び/又は量を示す電流測定値を得るのに十分である限り、適用することができる。好ましい実施形態において、小電位E1は、実質的に、充填が検出されるときと第2の試験電位E2が印加される時との間の全期間に印加される。
第1の時間間隔t1中、試験計器100は、ia(t)と称され得る、得られる第1の電流遷移を測定する。電流遷移は、特定の試験電位時間間隔中に試験計器によって測定された複数の電流値を表す。第1の電流遷移は、第1の試験電位時間間隔にわたる電流値の整数、又は第1の試験電位時間間隔の時間間隔により乗じられる第1の試験電位時間間隔中に測定された平均若しくは単一電流値であり得る。いくつかの実施形態において、第1の電流遷移は、第1の試験電位時間間隔中の様々な時間間隔にわたって測定される電流値を含んでよい。一実施形態において、第1の電流遷移ia(t)は、約0.05秒〜約1.0秒の範囲、好ましくは約0.1秒〜約0.5秒の範囲、最も好ましくは約0.1秒〜約0.2秒の範囲の時間の間測定され得る。他の実施形態では、第1の電流遷移ia(t)は、他の望ましい時間範囲で測定され得る。以下に説明されるように、第1の電流遷移の一部分又はすべては、対照溶液又は血液サンプルが試験ストリップ62に適用されたかどうかを判定するために、本明細書に記載される方法に使用され得る。第1の遷移電流の規模は、サンプル中の容易に酸化可能な物質の存在によって影響を受ける。血液は、通常、第2の電極164で容易に酸化される内因性及び外因性化合物を含有する。逆に、対照溶液は、酸化可能な化合物を含有しないように製剤化され得る。しかしながら、血液サンプル組成物は、異なってもよく、サンプル反応チャンバ61が約0.2秒後に完全に充填されない場合があるため、粘度が高い血液サンプルの第1の電流遷移の規模は、典型的に、粘度が低いサンプルより小さい(いくつかの場合において、対照溶液サンプルよりも低い)。不完全な充填は、同時に第1の電流遷移を低下させる第1の電極166及び第2の電極164の有効面積を減少させる。よって、サンプル中の酸化可能物質の存在は、血液サンプルの差異のため、それ自体、常に十分な差別的要因ではない。
第1の時間間隔t1時間が経過すると、試験計器100は、第2の試験電位時間間隔t2(例えば、図7Aに示されるように、約3秒)に対して、第1の電極166と第2の電極164との間に第2の試験電位E2(図7Aに示されるように、例えば、約−300mV)を印加することができる。第2の試験電位E2は、限界酸化電流が第2の電極164で生じるような、十分に負の媒体酸化還元電位の値であってもよい。例えば、媒体としてフェリシアニド及び/又はフェロシアニドを使用するとき、第2の試験電位E2は、約−600mV〜約0mVの範囲、好ましくは約−600mV〜約−100mVの範囲、より好ましくは約−300mVである。同様に、図6にtcapとして示される時間間隔は、様々な時間にわたって持続してもよいが、例示的な一実施形態において、約20ミリ秒間である。例示的な一実施形態において、交直重畳試験電圧成分は、第2の試験電位E2の印加後約0.3秒〜約0.32秒後に印加され、約+/−50mVの振幅の約109Hzの周波数を有する2サイクル分の正弦波を誘導する。第2の試験電位時間間隔t2中、試験計器100は、第2の電流遷移ib(t)を測定することができる。
第2の試験電位時間間隔t2は、限界酸化電流の規模に基づき、サンプル反応チャンバ61中の還元媒体(例えば、フェロシアニド)の生成速度を監視するために十分に長くてもよい。還元媒体は、試薬層72における一連の化学反応によって生成され得る。第2の試験電位時間間隔t2中、限界量の還元媒体が第2の電極164で酸化され、非限界量の酸化媒体が第1の電極166で還元されて、第1の電極166と第2の電極164との間に濃度勾配を形成する。説明されるように、第2の試験電位時間間隔t2は、十分な量のフェリシアニドが第2の電極164で生成され得るように十分に長くなくてはならない。フェロシアニドを酸化するために、限界電流が第3の試験電位E3中に第1の電極166で測定され得るように、十分な量のフェリシアニドが第2の電極164で必要とされ得る。第2の試験電位時間間隔t2は、約0秒〜約60秒の範囲、好ましくは約1秒〜約10秒の範囲、最も好ましくは約2秒〜約5秒の範囲である。
図7Bは、第2の試験電位時間間隔t2の最初に比較的小さいピークipb、その後、第2の試験電位時間間隔(例えば、約1秒〜約4秒の範囲)中、酸化電流の絶対値の緩徐な増加を示す。小さいピークは、還元媒体の初期枯渇により、約1秒で生じる。酸化電流における緩徐な増加は、試薬層72によるフェロシアニドの生成、その後の第2の電極164へのその拡散に起因する。
第2の電位時間間隔t2が経過した後、試験計器100は、第3の試験電位時間間隔t3(例えば、図6に示されるように約4〜約5秒の範囲)に対して、第1の電極166と第2の電極164との間に第3の試験電位E3(例えば、図7Aに示されるように約+300mV)を印加することができる。第3の試験電位時間間隔t3中、試験計器100は、ic(t)と称され得る、第3の電流遷移を測定することができる。第3の試験電位E3は、限界酸化電流が第1の電極166で測定されるような、十分に正の媒体酸化還元電位の値であってもよい。例えば、媒体としてフェリシアニド及び/又はフェロシアニドを使用するとき、第3の試験電位E3の規模は、約0mV〜約600mVの範囲、好ましくは約100mV〜約600mVの範囲、より好ましくは約300mVである。
第2の試験電位時間間隔t2及び第3の試験電位時間間隔t3は、それぞれ、約0.1秒〜約4秒の範囲である。図7Aに示される実施形態について、第2の試験電位時間間隔t2は、約3秒であり、第3の試験電位時間間隔t3は、約1秒であった。上述のように、開回路電位時間期間は、第2の試験電位E2と第3の試験電位E3との間で経過させることができる。代替的に、第3の試験電位E3は、第2の試験電位E2を印加した後に印加され得る。第1、第2、又は第3の電流遷移の一部分は、一般に、セル電流又は電流値と称され得る。
第3の試験電位時間間隔t3は、酸化電流の規模に基づき、第1の電極166付近の還元媒体(例えば、フェロシアニド)の拡散を監視するために十分に長くてもよい。第3の試験電位時間間隔t3中、限界量の還元媒体が第1の電極166で酸化され、非限界量の酸化媒体が第2の電極164で還元される。第3の試験電位時間間隔t3は、約0.1秒〜約5秒の範囲、好ましくは約0.3秒〜約3秒の範囲、最も好ましくは約0.5秒〜約2秒の範囲である。
図7Bは、第3の試験電位時間間隔t3の最初に比較的大きいピークipc、その後、定常状態電流への減少を示す。一実施形態において、第1の試験電位E1及び第2の試験電位E2の両方は、第1の極性を有し、第3の試験電位E3は、第1の極性とは反対である第2の極性を有する。しかしながら、出願者は、第1、第2、及び第3の試験電位の極性は、分析物濃度が判定される様式により、並びに/又は試験サンプル及び対照溶液が区別される様式により選択され得ることを注記しておく。
静電容量測定
いくつかの実施形態において、静電容量が測定され得る。静電容量測定は、基本的に、電極−液体接触面でのイオン層の形成によるイオン二重層静電容量を測定することができる。静電容量の規模は、サンプルが対照溶液か血液サンプルかを判定するために使用され得る。例えば、対照溶液が反応チャンバ内にあるとき、測定された静電容量の規模は、血液サンプルが反応チャンバに存在するときの測定された静電容量の規模より大きくてもよい。以下により詳細に説明されるように、測定された静電容量は、電気化学セルを使用して行われる測定値に対する電気化学セルの物理的特性の変化の影響について補正するための、様々な方法において使用され得る。例えば、測定された静電容量の変化は、電気化学セルの老化及び電気化学セルの保存状態のうちの少なくとも1つに関連し得る。
非限定的な例として、試験ストリップに対して静電容量測定を実施するための方法及び機構は、米国特許第7,195,704号及び同第7,199,594号に見出すことができ、そのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。静電容量を測定するための例示的な方法の1つにおいて、定数成分と振動成分とを有する試験電圧が試験ストリップに印加される。そのような場合、得られる試験電流は、以下により詳細に記載されるように、静電容量値を決定するために数学的に処理され得る。
一般に、限界試験電流が、明確に画定された領域(即ち、静電容量測定中に変化しない領域)を有する作用電極で生じるとき、電気化学試験ストリップにおいて最も正確かつ緻密な静電容量測定が実施され得る。経時的に変化しない明確に画定された電極領域は、電極とスペーサとの間に気密なシールが存在するときに生じる。試験電流は、電流が分析物酸化又は電気化学腐食のいずれかにより急速に変化しないとき、比較的一定である。あるいは、分析物酸化により見られるであろうシグナルの増加が、電気化学腐食を伴うシグナルの減少によって効率的に平衡が保たれるときの任意の時間は、静電容量の測定に適切な時間間隔でもあり得る。
第1の電極166の領域は、サンプルがスペーサ60と第1の電極166との間に浸透する場合、サンプルで投与した後に、経時的に潜在的に変化することができる。試験ストリップの実施形態において、試薬層72は、試薬層72の一部分がスペーサ60と第1の電極層66との間に位置する切欠き領域68よりも大きい領域を有することができる。特定の状況下において、試薬層72の一部分をスペーサ60と第1の電極層66との間に置くことにより、試験中、湿った電極領域を増加させることができる。結果として、試験中、同時に静電容量測定を歪める可能性がある、第1の電極の領域を経時的に増加させる漏出が起こる可能性がある。
逆に、第2の電極164の領域は、第2の電極164とスペーサ60との間に試薬層がないため、第1の電極166と比較して、経時的により安定し得る。よって、サンプルは、スペーサ60と第2の電極164との間に浸透する可能性は低い。第2の電極164で限界試験電流を使用する静電容量測定は、よって、領域が試験中に変化しないため、より緻密であり得る。
上述及び図7Aに示されるように、液体が試験ストリップにおいて検出されると、第1の試験電位E1(例えば、図7Aに示すように−20mV)は、液体の充填挙動を監視し、対照溶液と血液とを区別するために、約1秒間、電極間に印加される。式1において、試験電流は、約0.05〜約1秒使用される。この第1の試験電位E1は、セル中のフェロシアニドの分布が第1及び第2の電極で生じる電気化学反応によってできるだけ乱されないように、比較的低くてもよい。
より大きい絶対規模を有する第2の試験電位E2(例えば、図7Aに示すように約−300mV)は、限界電流が第2の電極164で測定できるように、第1の試験電位E1後に印加してよい。第2の試験電位E2は、AC電圧成分及びDC電圧成分を含むことができる。AC電圧成分は、第2の試験電位E2の印加後に既定の時間量で印加され得、更に、約109ヘルツの周波数及び約+/−50ミリボルトの振幅を有する正弦波であり得る。好ましい実施形態において、既定の時間量は、第2の試験電位E2の印加後、約0.3秒〜約0.4秒の範囲である。代替的に、既定の時間量は、時間の関数としての試験電流遷移が約0の傾きを有する時間であり得る。別の実施形態において、既定の時間量は、ピーク電流値(例えば、ipb)が約50%減衰するために必要な時間であり得る。DC電圧成分に関しては、第1の試験電位の最初に印加され得る。DC電圧成分は、第2の電極で限界試験電流、例えば、第2の電極に対して約−300mVをもたらすのに十分な規模を有することができる。
図4Bに従い、試薬層72は、絶対ピーク電流ipcの規模と比較して、絶対ピーク電流ipbの規模を比較的小さくさせる第2の電極164上にコーティングされない。試薬層72は、分析物の存在下で還元媒体を生成するように構成され得、第1の電極に近接する還元媒体の量は、比較的高い絶対ピーク電流ipcの一因となる。一実施形態において、サンプルが試験ストリップの中に導入されるとき、少なくとも、試薬層72の酵素部分は実質的に、第1の電極から第2の電極に拡散しないように構成され得る。
ipb後の試験電流は、約1.3秒で平らな領域に落ち着く傾向があり、その後、還元媒体が試薬層72でコーティングされ得る第1の電極166で生成されると、電流は再び増加し、試薬層72でコーティングされない第2の電極164に拡散する。一実施形態において、静電容量測定は、約1.3秒〜約1.4秒で実施され得る、試験電流値の比較的平らな領域で実施され得る。一般に、静電容量が1秒前に測定される場合、静電容量測定は、第1の電流遷移ia(t)を測定するために使用され得る、比較的低い第1の試験電位E1に干渉することができる。例えば、−20mVの定電圧成分上に重畳されたほぼ±50mVの振動電圧成分は、測定された試験電流を大幅に乱す可能性がある。振動電圧成分は、第1の試験電位E1に干渉するだけでなく、同時に抗酸化物の補正に干渉する可能性がある、約1.1秒で測定された試験電流を大幅に乱す可能性がある。多数の試験及び実験の後、意外にも、約1.3秒〜約1.4秒で静電容量を測定することにより、対照溶液/血液識別試験又は血中分析物(例えば、グルコース)アルゴリズムに干渉しない正確かつ緻密な測定値が得られることがついに確認された。
第2の試験電位E2後、第3の試験電位E3(例えば、図7Aに示されるように約+300mV)が印加され得、試薬層72でコーティングされ得る第1の電極166で測定される、試験電流が生じる。第1の電極上の試薬層の存在は、電極領域を増加させることができる、スペーサ層と電極層との間の液体の浸透を可能にすることができる。
図7Aに示されるように、例示的な実施形態において、109HzのAC試験電圧(ピーク間±50mV)が、時間間隔tcap中、2つのサイクルに印加され得る。第1のサイクルは調整パルスとして用いることができ、第2のサイクルは、静電容量を判定するために用いることができる。静電容量の推定は、交流(AC)波の一部分にわたって試験電流を合計し、直流(DC)オフセットを減算し、そして、AC試験電圧振幅及びAC周波数を使用して結果を正規化することにより得ることができる。この計算は、ストリップサンプルチャンバがサンプルで充填されるとき、ストリップサンプルチャンバによって占められるストリップの静電容量の測定値を提供する。
一実施形態では、血中グルコースアッセイにおいて、静電容量は、入力AC電圧がDCオフセットを超える時点のいずれかの側の、即ち、入力電圧のAC成分が0である(0交差点)ときのAC波の4分の1にわたって試験電流を合計することにより測定され得る。これがどのように静電容量の測定に変換されるかの導出は、以下により詳細に説明される。式1は、時間間隔t
cap中の時間の関数としての試験電流規模を示し、
式中、項i
o+stは、定試験電圧成分によって生じた試験電流を表す。一般に、DC電流成分は、経時的に直線的に変化すると考えられ(フェロシアニドを生成する進行中のグルコース反応により)、よって、時間0でのDC電流(0交差点)である定数i
o、及び経時的なDC電流変化の傾きsにより表される。AC電流成分は、Isim(ωt+φ)により表され、式中、Iは、電流波の振幅であり、ωは、その周波数であり、φは、入力電圧波に関するその位相変化である。項ωは、2πfとも表され、式中、fは、ヘルツでのAC波の周波数である。項Iは、式2に示されるようにも表すことができ、
式中、Vは、印加された電圧シグナルの振幅であり、│Z│は、複素インピーダンスの規模である。項│Z│は、式22に示されるように表すこともでき、
式中、Rは、インピーダンスの実数部であり、Cは、静電容量である。
式1は、式4を得るために、0交差点前の4分の1波長から0交差点後の4分の1波長までが統合され得、
これは、式5に簡略化され得る。
式2を式1に代入し、その後、式4に代入した後、再整理すると、式6となる。
式6における積分項は、式7に示される電流の合計を使用して近似され得、
式中、試験電流i
kは、0交差点前の4分1波長から0交差点後の4分の1波長までが合計される。式7を式6に代入して、式8を得、
式中、DCオフセット電流i
oは、0交差点付近の1つの完全な正弦サイクルに対して試験電流を平均化することにより得ることができる。
別の実施形態において、静電容量測定値は、電圧0交差点付近の電流ではなく、むしろ電流の最大AC成分付近を合計することにより得ることができる。よって、式7において、電圧0交差点のいずれかの側の4分の1波長を合計するのではなく、電流最大値付近の4分の1波長の試験電流が合計され得る。これは、AC励起に応答する回路素子が純粋なコンデンサと仮定することに等しいため、φは約π/2である。よって、式5は、式9に要約され得る。
電流の流れのDC、又は実際の成分がAC励起に使用された電圧の範囲に対して印加された電圧から独立しているように、未コーティングの電極が分極されるため、この場合、これは妥当な仮定であると考えられる。したがって、AC励起に応答するインピーダンスの実数部は無限大であり、純粋な容量性素子を示唆する。次いで、式9を式6と共に使用して、積分近似を必要としない簡略化された静電容量式を得ることができる。最終的な結果は、電圧交差点付近ではなく、むしろ電流の最大AC成分付近の電流を合計するときのその静電容量測定値がより緻密であったということである。
CS/血液識別試験
いくつかの実施形態において、対照溶液(CS)/血液識別試験が実施され得る。CS/血液識別試験によって、サンプルが血液であると判定される場合、血中グルコースアルゴリズム、ヘマトクリット値補正、血液温度補正、及び誤差チェックの適用を含み得る一連の工程を実施することができ、CS/血液識別試験によって、サンプルがCS(すなわち、血液ではない)と判定される場合、CSグルコースアルゴリズム、CS温度補正、及び誤差チェックの適用を含み得る一連の工程を実施することができる。誤差がない場合、試験計器は、グルコース濃度を出力するが、誤差がある場合、試験は、エラーメッセージを出力することができる。
一実施形態において、対照溶液(CS)の特徴は、対照溶液を血液と識別するために使用される。例えば、サンプル中の酸化還元種の存在及び/又は濃度、反応速度、及び/又は静電容量が、対照溶液を血液と識別するために使用され得る。本明細書に開示される方法は、サンプル中の酸化還元濃度を表す第1の参照値、及びサンプルの試薬との反応速度を表す第2の参照値を計算することを含む。一実施形態では、第1の参照値は、干渉酸化電流であり、第2の参照値は、反応完了率である。
いくつかの実施形態において、第3の参照値は、第1の参照値に静電容量率を乗ずることによって計算できる。静電容量率は、静電容量である、又は静電容量値に関連する、例えば、比例する任意の計算値であってよい。静電容量率は、例えば、測定された静電容量、既知の若しくは既定の静電容量、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。また静電容量率は、任意の上記静電容量及び経験的に得られる定数に関連していてもよい。例示的実施形態において、静電容量率は、既知の静電容量の測定された静電容量に対する比、又は測定された静電容量の既知の静電容量に対する比であってよい。既知の静電容量は、電流試験で用いられる試験ストリップと同じ種類の試験ストリップに、血液サンプルを乗せたときに測定される、平均静電容量であってよい。測定された静電容量は、例えば、上記アルゴリズムを用いて測定できる。
一実施形態において、CS/血液識別試験は、第1の参照値と第2の参照値とを含むことができる。第1の値は、第1の時間間隔t
1内の電流値に基づき計算することができ、第2の参照値は、第2の時間間隔t
2及び第3の時間間隔t
3中の両方の電流値に基づくことができる。一実施形態において、第1の参照値は、図7Aの試験電圧波形を使用するとき、第1の時間電流遷移中に得た電流値を合計することにより得ることができる。非限定的な例として、第1の参照値i
sumは、式10Aにより表すことができ、
式中、項i
sumは、電流値の合計であり、tは時間である。いくつかの実施形態において、静電容量率が既知の静電容量の測定された静電容量に対する比であり得る場合、第1の参照値は静電容量率で乗じてよい。このような実施形態では、第3の参照値i
capsumは、式10Bにより表わすことができ、
式中、C
avは既知の平均静電容量であり、C
mは測定された静電容量であり、tは時間である。式10Bの例示的実施形態では、C
avとC
mの比は、静電容量率と称することができる。例示的な一実施形態において、本発明の実施形態による代表的な試験ストリップの既知の平均静電容量C
avは、約582ナノファラッドである。
残留反応率と称される場合もある第2の参照値は、式11に示されるように、第2の時間間隔及び第3の時間間隔中の電流値の比率Yにより得ることができ、
式中、absは、絶対値の関数を表し、3.8及び4.15は、この特定の例において、それぞれ、第2及び第3の時間間隔の秒での時間を表す。
識別基準は、式10Aの第1の参照値又は式10Bの第3の参照値、及び式11の第2の参照値に基づき、サンプルが対照溶液又は血液のいずれかであるかを判定するために使用され得る。例えば、式10Aの第1の参照値又は式10Bの第3の参照値は、既定の閾値と比較することができ、式11の第2の参照値は、既定の閾値関数と比較することができる。既定の閾値は、例えば、約12マイクロアンペアであってもよい。既定の閾値関数は、式10A又は式10Bの第1の参照値を使用する関数に基づくことができる。より具体的には、式12に図示されるように、式10Aのi
sum又は式10Bのi
capsumのいずれかの計算された値がXによって表される場合、既定の閾値関数F
pdtは、
であり得、式中、Zは、例えば、約0.2等の定数であり得る。よって、CS/血液識別試験は、式10Aのi
sum、又は式10Bのi
capsumが、既定の閾値以上、例えば、約12マイクロアンペアである場合、かつ、式11に示されるように、第2の時間間隔及び第3の時間間隔中の電流値の比率Yが、既定の閾値関数F
pdtの値より小さい場合、サンプルを血液と識別することができ、そうでなければ、サンプルは対照溶液である。一実施形態では、CS/血液識別試験は、例えば、式13によっても表わすことができる。
の場合、サンプルは血液であり、そうでなければ対照溶液である。
上記で述べた実施形態の非限定例として、2010年9月10日出願の米国特許出願第12/895,067号(Chatalierら)、表題「Systems and Methods of Discriminating Between a Control Sample and a Test Fluid Using Capacitance」、及び2010年9月30日出願の米国特許出願第12/895,168号(Chatelierら)、表題「Systems and Methods for Improved Stability of Electrochemical Sensors」に記載されるものが挙げられ、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
血液グルコースアルゴリズム
サンプルが血液サンプルとして識別される場合、血液グルコースアルゴリズムが試験電流値に対して実施され得る。図1A〜4Bに図示されるように、試験ストリップが対向面又は正面配列を有し、図7A又は図8Aに示されるように、電位波形が試験ストリップに適用されると仮定すると、第1の分析物濃度G1は、式(Eq.)14に示される。
式14中、G1はグルコース濃度であり、ilは第1の電流値であり、irは第2の電流値であり、i2は酸化防止剤で補正した電流値であり、項p、zgr、及びaは、経験的に得られた較正定数である。例えば、pは約0.5246であってよく、aは約0.03422であってよく、zgrは約2.25であってよい。本発明の一実施形態では、pは約0.2〜約4、好ましくは約0.1〜約1の範囲であり得る。較正係数aは、電気化学セルの個別の寸法に特有である。
較正係数zgrは、試薬層に起因する典型的なバックグラウンド信号の説明に用いる。サンプル添加前のセルの試薬層内における酸化可能種の存在は、バックグラウンド信号に寄与し得る。例えば、サンプルが試験ストリップに添加される前に、試薬層が少量のフェロシアニド(例えば、還元された媒体)を含有する場合、分析物濃度に起因しない測定試験電流における増加が存在する。このことは、試験ストリップについて計測された試験電流全体で一定バイアスを生じるので、このバイアスは、較正係数zgrを使用して補正することができる。項p及びaと同様に、zgrも較正プロセス中に計算することができる。ストリップ区画を較正するための例示的方法は、米国特許第6,780,645号に記載されており、これはその全体が参照により本願に組み込まれる。式13の導出は、2005年9月30日に出願された、係属中の米国特許出願公開第2007/0074977号(米国特許出願第11/240,797号)、表題「Method and Apparatus for Rapid Electrochemical Analysis」に見出すことができ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。式13のすべての試験電流値(例えば、il、ir、及びi2)には、電流の絶対値を用いる。
一実施形態では、電流値irは第3の電流遷移から計算することができ、電流値ilは第2の電流遷移から計算することができる。式14及び後続の式中に示されるすべての電流値(例えば、ir、il、及びi2)には、電流の絶対値を用いてよい。電流値ir、ilは、いくつかの実施形態では、電流遷移の時間間隔にわたっての電流値の整数、電流遷移の時間間隔にわたっての電流値の和、又は電流遷移の時間間隔により乗じられた電流遷移の平均又は単一電流値であり得る。電流値の和の場合、ある範囲の連続的電流測定値は、2つの電流値のみからすべての電流値まで一緒に加算することができる。電流値i2は、下記のように計算することができる。
例えば、以下の等式15A及び15Bに示されているように、分析物試験の時間間隔が5秒の長さである場合、i
lは、5秒の長さのうちの3.9〜4秒の電流の和であり得、i
rは5秒の長さの分析物試験の時間間隔のうちの4.25〜5秒の電流の和であり得る。
第1の電流遷移の電流の規模は、式16によって時間の関数として表すことができる。
項i
ssは、第2の試験電位E
2の印加後の定常状態電流であり、Dは媒体の拡散係数であり、Lはスペーサの厚さである。式16においてtは、第2の試験電位E
2が印加された後に経過した時間を示すことに留意されたい。第3の電流遷移の電流の規模は、式17によって時間の関数として表すことができる。
式17中の指数項は、式16中の指数項と比較して2倍差があるが、この理由は第3の電流遷移が第3の試験電位E3から生じるからであり、これは第2の試験電位E2とは極性が反対で、第2の試験電位E2の後すぐに印加された。式17においてtは、第3の試験電位E3が印加された後に経過した時間を示すことに留意されたい。
第2の試験電位時間間隔t
2に関するピーク電流はi
pbと表記することができ、第3の試験電位時間間隔t
3に関するピーク電流はi
pcと表記することができる。第2のピーク電流i
pb及び第3のピーク電流i
pcの両方を、それぞれ、第2の試験電位E
2及び第3の試験電位E
3印加直後の同じタイミングで、例えば0.1秒で測定した場合、式16を式17から引いて、式18を得ることができる。
ipbは、主に干渉物質により制御されると判断されるため、ipcをipbと共に用いて、補正因子を決定することができる。例えば、下記に示されるように、グルコースに対して比例し、干渉物質に対してより感受性の低い補正された電流を定量するために、ipcは、数学的関数でipbと共に使用することができる。
式19は、分析物濃度に比例し、干渉物質に起因する電流の相対的割合が除去されている電流i
2を計算するために誘導された。
項i
pbは、第2の試験電位時間間隔t
2のピーク電流値を表し、項i
pcは、第3の試験電位時間間隔t
3のピーク電流値を表す。項i
ssは、進行中の化学反応の不在下で、第3の試験電位E
3の印加後長時間生じると予測される電流である、定常状態の電流の推定である。項i
ssを式19の分子及び分母の両方に加え、グルコースが存在しないとき、分子をゼロに近づかせる。i
ssを算出する方法のいくつかの例は、米国特許第5,942,102号及び同第6,413,410号に見出すことができ、当該特許のそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。生理学的サンプルにおける干渉を説明するためのピーク電流値の使用は、「Methods and Apparatus for Analyzing a Sample in the Presence of Interferents」と題する、2006年3月31日に出願された米国特許出願公開第2007/0227912号(米国特許出願第11/278,341号)に説明されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
例示的な一実施形態において、酸化防止剤で補正した電流値i
2は、式20によって計算できる。
式20中、i(4.1)は、第3の電位E
3の間の電流の絶対値からなり、i(1.1)は、第2の電位E
2の間の電流の絶対値からなり、i
ssは、定常状態電流からなる。
いくつかの実施形態において、i
ssは式21によって計算できる。
式21中、i(5)は、第3の電位の間の電流の絶対値からなり、πは、定数からなり、Dは、酸化還元種の拡散係数からなり、Lは、2つの電極間の距離からなる。
いくつかの実施形態において、第2の分析物濃度値は、第1の分析物濃度値G1を基に計算できる。例えば、式22を用いて、低分析物濃度において動力学的補正が強調されない第2の分析物濃度値G2を計算できる。
式22中、pは約0.5246であってよく、aは約0.03422であってよく、i2は酸化防止剤で補正した電流値であってよく、AFOは約2.88であってよく、zgrは約2.25であってよく、kは約0.0000124であってよい。非対称因子オフセットAFOを、非対称因子ir/ilから引き、新たなより小さい非対称因子項を分析物濃度に左右される項で累乗すると、低分析物濃度における動力学的補正の影響が強調され得ない。その結果、広範囲の分析物濃度にわたって、より高レベルの精度を達成することができる。
図7A及び7Bに示す例では、電圧測定において、試薬でコーティングされていない電極が参照電極として働くとき、第1及び第2の印加された電圧の極性を負として、第3の印加された電圧を正として示している。しかしながら、試薬でコーティングされた電極が電圧測定において参照電極として働く場合、印加された電圧は、図7Aに示す一連のものとは反対の極性であってもよい。例えば、図8A及び8Bの好ましい実施形態において、第1及び第2の印加された電圧の極性は、正であり、第3の印加された電圧の極性は負である。どちらの場合も、第1及び第2の印加された電圧中は試薬でコーティングされていない電極がアノードとして働き、第3の印加された電圧中は試薬でコーティングされた電極がアノードとして働くため、グルコースの計算は同じである。
加えて、試験計器が、サンプルが対照溶液(血液とは対照的に)であると判断する場合、試験計器は、ユーザーが対照溶液データとは別に試験サンプル濃度データを検討できるように、対照サンプルの得られるグルコース濃度を保存することができる。例えば、対照溶液のグルコース濃度は、別のデータベースに保存することができる、印を付ける、及び/又は消去する(即ち、保存されない又は短時間保存されない)ことができる。
対照溶液を認識することができる別の利点は、試験計器が対照溶液の試験の結果(例えば、グルコース濃度)を対照溶液の予想されたグルコース濃度と自動的に比較するようにプログラムされ得ることである。例えば、試験計器は、対照溶液(複数可)の予想されたグルコースレベル(複数可)で予めプログラムされ得る。代替的に、ユーザーは、対照溶液の予想されたグルコース濃度を入力することができる。試験計器が対照溶液を認識するとき、試験計器は、計器が正常に機能しているかを判定するために、測定された対照溶液のグルコース濃度を予想されたグルコース濃度と比較することができる。測定されたグルコース濃度が予想された範囲の外である場合、試験計器は、ユーザーに警告するための警告メッセージを出力することができる。
温度補正
本システム及び方法のいくつかの実施形態では、温度による影響が減少するため、改善された精度で分析物濃度を提供するための血液温度補正が試験電流値に適用され得る。温度補正された分析物濃度を計算するための方法は、温度値を測定することと、温度補正値CTを計算することと、を含むことができる。温度補正値CTは、温度値及び分析物濃度、例えば、グルコース濃度に基づくことができる。したがって、温度補正値CTは、次いで、温度について分析物濃度を補正するために使用され得る。
最初に、上記の式22から分析物濃度G2などの、温度について未補正の分析物濃度を得ることができる。温度値も測定され得る。温度は、試験計器に組み込まれるサーミスタ若しくは他の温度読取デバイスを使用して、又は他の任意の数の機構若しくは手段により測定され得る。続いて、温度値Tが第1の温度閾値T1より大きいかどうかを判定するために、判定が実施され得る。例えば、温度閾値T1は、約15℃であり得る。温度値Tが15℃より大きい場合、温度補正値CTを判定するために、第1の温度関数が適用され得る。温度値Tが15℃より小さい場合、温度補正値CTを判定するために、第2の温度関数が適用され得る。
温度補正値CTを計算するための第1の温度関数は、式23の形態であってもよく、
式23 CT=+K9(T−TRT)+K10G2(T−TRT)
式中、CTは補正値であり、K9は9番目の定数(例えば、−0.866)であり、Tは温度値であり、TRTは室温値(例えば、22℃)であり、K10は10番目の定数(例えば、0.000687)であり、G2は分析物濃度である。TがほぼTRTに等しいとき、CTは約0である。いくつかの場合において、第1の温度関数は、偏差が日常的な周辺条件下で低減され得るように、室温で基本的に補正がないように構成され得る。第2の補正値CTを計算するための第2の温度関数は、式24の形態であってもよく、
式24 CT=+K11(T−TRT)+K12G2(T−TRT)+K13(T−T1)+K14G2(T−T1)
式中、CTは補正値であり、K11は11番目の定数(例えば、−0.866)であり、Tは温度値であり、TRTは室温値であり、K12は12番目の定数(例えば、0.000687)であり、G2は分析物濃度であり、K13は13番目の定数(例えば、−0.741)であり、T1は第1の温度閾値(例えば、約15℃)であり、K14は14番目の定数(例えば、0.00322)である。
式23を使用してCTを計算した後、CTが既定の範囲に制限されることを確実にし、それによって外れ値のリスクを軽減するように、いくつかの切り捨て関数が実行され得る。一実施形態において、CTは、−10〜+10の範囲を有するように制限され得る。例えば、判定は、CTが10より大きいかどうかを判定するために実施され得る。CTが10を超える場合、温度は閾値、例えば15℃を超え、CTが10に設定される。CTが10より小さい場合、判定は、CTが−10未満であるかどうかを判定するために実施される。CTが−10未満の場合、CTは−10に設定され得る。CTが既に−10〜+10の値である場合、一般に、切り捨ては必要ない。しかしながら、温度が閾値、例えば、15℃未満の場合、CTの最大値を10+0.92(15−T)に設定できる。
CTが判定されたら、温度補正された分析物濃度を計算できる。例えば、温度について未補正の分析物濃度(例えば、G2)が100mg/dL未満であるかどうかを判定するために、判定が実施され得る。G2が100mg/dL未満である場合、式25を用い、補正値CTをグルコース濃度G2に加算することによって、温度補正された分析物濃度G3を計算できる。
式25 G3=G2+CT
G2が100mg/dL未満でない場合、式26を用い、CTを100で割り、1を加え、次に分析物濃度G2をかけることによって、温度補正された分析物濃度G2を計算できる(この方法は、CTを事実上百分率補正項として用いる)。
式26 G3=G2[1+0.01(CT)]
温度の影響について補正されている分析物濃度が定量されると、サンプルの充填時間に基づいて更なる補正を実施できる。
充填時間補正
いくつかの実施形態において、分析物の濃度は、サンプルの充填時間に基づき補正され得る。そのような方法の一例は、2009年12月30日に出願された「Systems,Devices and Methods for Improving Accuracy of Biosensors Using Fill Time」と題する、Ronald C.Chatelier及びAlastair M.Hodgesによる同時係属中の特許出願(出願番号第12/649,594号)、並びに2010年12月17日に出願された「Systems,Devices and Methods for Improving Accuracy of Biosensors Using Fill Time」と題する、Ronald C.Chatelier及びAlastair M.Hodgesによるもの(出願番号第12/971,777号)に開示されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。サンプル中の分析物の濃度を検出するための代替的実施形態では、誤差は、判定された充填時間よりも定量された初期充填速度に基づいて補正され得る。そのような方法の一例は、「Systems,Devices and Methods for Measuring Whole Blood Haematocrit Based on Initial Fill Velocity」と題する、2009年12月30日に出願されたRonald C.Chatelier、Dennis Rylatt、Linda Raineri、及びAlastair M.Hodgesによる同時係属中の特許出願(出願番号第12/649,509号)に開示されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
上記充填時間に関する補正の例示的実施形態では、以下の式27A及び27Bにより、温度補正された分析物濃度G3を充填時間を考慮して補正し、充填時間補正された分析物濃度値G4を得ることができる。例えば、G3<100mg/dLのとき、補正は不要であり、G4はG3の未補正値であってよい。しかしながら、G3≧100mg/dLのとき、式27Bを、式28A、28B、及び28Cと共に用いてG3を補正できる。
式27A G4=G3 G3<100mg/dLのとき
式27B G4=G3(1+CFT/100)G3≧100mg/dLのとき
式27B中の補正因子CFTは、充填時間(FT)の一連の閾値に基づいて、FTを考慮して計算できる。例えば、以下の式を用い、FTの2つの閾値であるTh1及びTh2を利用して、CFTを計算できる。
式28A Th1<FT<Th2の場合CFT=FTf(FT−Th1)
式28B FT<Th1の場合CFT=0
式28C FT>Th2の場合CFT=10
例示的実施形態において、閾値Th1は約0.2秒であってよく、閾値Th2は約0.4秒であってよく、充填時間因子FTfは約41であってよい。例えば、血液がセンサを約0.2秒未満で充填する場合、その充填の様態は、理想に近いものであると説明できる。約0.2秒未満の充填時間は、ヘマトクリット値が十分に低くて、サンプルの粘度がサンプルの充填の様態に最小限の影響しか有さない場合に通常生じる。低いヘマトクリット値の結果として、グルコースのほとんどは、それが急速に酸化され得る血漿相の中に分配されると考えられる。これらの条件下では、充填時間の影響に対するグルコースの結果を補正する必要がほとんどなく、その結果、補正因子をゼロに設定することができる。これに代わって、サンプル中のヘマトクリット値が高い場合、サンプルの粘度は、サンプルの充填時間に影響を及ぼし得る。結果として、サンプルは、センサを充填するのに約0.4秒超かかり得る。高いヘマトクリット値の結果として、グルコースのほとんどは、赤血球の中に分配されると考えられ、その結果、より少ない割合のグルコースが酸化される。これらの条件下では、グルコースの結果は、充填時間を考慮して補正され得る。しかしながら、グルコース値を補正し過ぎないことが重要であり得、そのため、例示的実施形態では、補正因子は、最大で約10mg/dL血漿グルコースに又は信号の約10%に制限され得る。経験的に得られた一次方程式は、充填時間が約0.2〜約0.4秒の範囲で増加するにつれて、補正項を約0〜約10の範囲で段階的に増加させるのに使用することができる。
老化/保存補正
本発明のシステム及び方法のいくつかの実施形態では、更なる補正因子を充填時間補正された分析物濃度値G4に適用できる。この補正因子を用いて、センサ性能に対する老化及び/又は保存状態の影響を補正することによって、改善された精度を提供できる。例えば、センサの物理的特性を補正するパラメータを測定でき、そのパラメータを用いて補正された分析物濃度を計算できる。いくつかの実施形態において、センサの物理的特性を補正するパラメータは、センサの測定された静電容量であってよい。
センサ、例えば、先に詳細に説明した種類の電気化学セルの測定された静電容量は、センサの老化及び/又は保存状態に関連し得る。非限定例として、電気化学セルの製造に用いた接着剤が、スペーサ層からサンプル反応チャンバ内へゆっくりと流れることによって、電気化学セルの静電容量が影響を受け得る。例えば、保存中、特に高温においてセンサが老化すると、接着剤が反応チャンバへ流れ込み、センサの参照及び/又は対電極を覆う場合がある。例えば、接着剤は、電極の面積を小さくする原因となり、そのセンサによってなされる測定の精度に影響し得る。電極面積が小さくなると、センサの静電容量の低下にも関連し得る。したがって、センサの測定された静電容量を用いて、そのセンサを用いて実行される読取り精度の改善のために使用できる補正因子を計算してよい。
例示的な一実施形態において、補正された分析物濃度を計算する方法は、電気化学セルの物理的特性、例えば、静電容量を測定することと、補正因子Ccを計算することと、を含んでよい。補正因子Ccは、測定された物理的特性に基づくものであってよい。したがって、補正因子Ccを用いて、補正された分析物濃度を計算できる。
最初に、上記充填時間補正された分析物濃度値G4などといった分析物濃度を得ることができる。例えば、上記静電容量測定方法を用いて、センサの測定された静電容量も得ることができる。続いて、測定された静電容量値Cが静電容量閾値C1未満かどうかを判定するために、判定が実施され得る。いくつかの実施形態において、静電容量閾値C1は、同種のセンサの静電容量の平均又は理想値であってよい。静電容量値Cが静電容量閾値C1未満であり、未補正の(又は予め補正された)分析物濃度G4が、分析物濃度閾値Gthを超える場合、静電容量補正関数を用いて、補正因子Ccを決定できる。静電容量値Cが静電容量閾値C1以上であり、及び/又は未補正の(又は予め補正された)分析物濃度G4が、分析物濃度閾値Gth以下の場合、補正因子Ccをゼロに設定してよい。例えば、一実施形態では、静電容量閾値C1は約577ナノファラッドであってよく、分析物濃度閾値Gth、例えば、グルコース濃度は、約100mg/dLであってよい。したがって、静電容量値C及び/又は分析物濃度G4が既定の範囲内にある場合、静電容量補正関数を用いて補正因子Ccを決定でき、そうでなければ、補正因子Ccをゼロに設定してよい。
静電容量補正因子Ccを計算するための静電容量補正関数は、測定された静電容量値Cが静電容量閾値C1未満であり、未補正の(又は予め補正された)分析物濃度G4が分析物濃度閾値Gthを超えるとき、式29の形態であってもよく、
式29 Cc=Kc(C1−C)
式中、Ccは補正因子であり、Kcは経験的に得られた定数(例えば、0.051)であり、C1は静電容量閾値(例えば、577ナノファラッド)であり、Cは測定された静電容量値である。
例えば、式29を使用してCcを計算した後、データに適応される最大補正を制限することによって、Ccが既定の範囲に制限されることを確実にし、それによって外れ値のリスクを軽減するように、いくつかの切り捨て関数が実行され得る。一実施形態では、Ccがカットオフ値を超える場合、Ccをカットオフ値に設定してよい。例えば、判定は、Ccがカットオフ値、例えば、5を超えるかどうかを判定するために実施され得る。Ccがカットオフ値、例えば、5を超える場合、Ccはカットオフ値、例えば、5に設定される。Ccがカットオフ値以下である場合、一般に切り捨ての必要がない。
Ccが判定されたら、静電容量補正された分析物濃度を計算できる。例えば、判定は、分析物がグルコースである場合、未補正の(又は予め補正された)分析物濃度G4が、分析物濃度閾値Gth、例えば、100mg/dL未満であるかを判定するために実施され得る。G4が分析物濃度閾値Gth未満の場合、更なる補正は適応されない。G4が分析物濃度閾値Gthを超える場合、式30を用い、Ccを100で割り、1を加え、次に分析物濃度[G]をかけることによって、静電容量補正されたグルコース濃度(つまり最終濃度値)G5を計算できる。
式30 G5=G4[1+0.01(Cc)]
老化及び/又は保存の影響について補正されている分析物濃度が定量されると、分析物濃度を、例えば、ディスプレイに出力できる。
上述のように、本発明のシステム及び方法は、一連のグルコース濃度評価のうち少なくとも95%について、基準グルコース測定値の誤差が10%以内であるグルコース濃度値が得られるように、グルコース濃度閾値を超えるグルコース濃度に対し、少なくとも±10%の精度基準を達成できる。別の例示的実施形態では、本方法は、一連のグルコース濃度評価のうち少なくとも95%について、基準グルコース測定値の誤差が約10mg/dL以内であるグルコース濃度値が得られるように、グルコース濃度閾値を下回るグルコース濃度に対し、少なくとも±10mg/dLの精度基準を達成できる。例えば、グルコース濃度閾値は約75mg/dLであってよい。出願者は、本発明のアルゴリズム及び方法が、約5,000回を超える一連の分析物濃度評価にわたって、更に約18,000回を超える分析物濃度評価にわたっても、この精度基準を達成できることを注記しておく。例えば、本発明のシステム及び方法は、米国食品医薬品局の最新の標準規格、及び携帯用侵襲的血中グルコース監視システムの精度に対する推奨に合致、又は上回ることができる。
(実施例1)
上記電流和時間枠を用いたグルコース濃度定量におけるドナー間変動の減少について、本実施例で証明する。以下の実施例では、システムは、サンプルと反応するように設計された試薬が一方の電極上で乾燥している、2つの対向した電極を有するセンサを含んだ。本明細書に開示されるシステム、装置、及び方法の性能試験の分析のため、異なるドナー由来の複数のサンプルを準備した。サンプルは、31人のドナー由来の10,240本の血液サンプルであり、ヘマトクリット値の範囲は37%〜45%であった。電流遷移を測定し、ilについて約1.4秒〜約4.0秒、irについて約4.4秒〜約5秒の時間枠に依存する第1のアルゴリズムを用いて分析した。上記第2のアルゴリズム、具体的には、上記式15A及び15Bによって計算した電流値ir及びilを用いて、測定された電流遷移も測定した。第1のアルゴリズムを用いた試験結果の標準偏差は約2.83であった。本明細書で示し、説明した第2のアルゴリズムを用いた試験結果の標準偏差は、約1.72であった。この結果は、電流値ir及びilが式15A及び15Bによって計算されると、予想外に精度が改善されることを示す。
(実施例2)
上記電流和時間枠を用いたグルコース濃度定量における性別間変動の減少について、本実施例で証明する。以下の実施例では、システムは、サンプルと反応するように設計された試薬が一方の電極上で乾燥している、2つの対向した電極を有するセンサを含んだ。本明細書に開示されるシステム、装置、及び方法の性能試験の分析のため、異なる30人のドナー(男性15人、女性15人)由来の複数のサンプルを準備した。電流遷移を測定し、ilについて約1.4秒〜約4.0秒、irについて約4.4秒〜約5秒の時間枠を含む第1のアルゴリズムを用いて分析した。上記第2のアルゴリズム、具体的には、上記式15A及び15Bによって計算した電流値ir及びilを用いて、測定された電流遷移も測定した。
図9に示すように、女性由来の血液サンプルは、YSI 2700医療機器で測定された基準グルコース測定値から正のバイアスを有する傾向があり(平均バイアス=1.6±2.1SD)、男性由来の血液サンプルは、YSI 2700医療機器で測定された基準グルコース測定値から負のバイアスを有する傾向がある(平均バイアス=−2.5±1.9SD)。任意の特定の理論に制限されるものではないが、性差の理由の1つは、グルコース酸化速度が男性と女性で異なること(おそらく、血液細胞中のグルコース流出速度の変化、又は血漿粘度の差による)と考えられる。したがって出願者は、グルコース濃度の定量に用いられる電流遷移について様々な時間枠を検査し、観察される誤差がより明確でなくなる時間枠を判定した。
最善の結果(すなわち、基準グルコース測定値からのバイアスが最も小さい)が得られた電流遷移中の時間枠は、il(上記式15B参照)については約3.9秒〜約4.0秒の枠であり、ir(上記式15A)については約4.25秒〜約5秒の枠であった。図9に示すように、これら新たな時間枠により、以前の時間枠、すなわちilでは約1.4秒〜約4.0秒、irでは約4.4秒〜約5秒と比較して、男性及び女性の両ドナーに対して、YSI 2700医療機器で測定された基準グルコース測定値からのバイアスが低減された。具体的には、YSI 2700医療機器で測定された基準グルコース測定値からのバイアスは、女性ドナー由来のサンプルについて0.7±1.6SDの平均バイアスに、男性ドナー由来のサンプルについて−0.4±1.7SDの平均バイアスに低減された。このように両性において、式15A及び15B中の時間枠を用いたとき、バイアスの平均がゼロに近づき、バイアスのSDが小さくなった。
(実施例3)
上記電流和時間枠を用いたグルコース濃度定量における尿酸塩濃度による干渉の減少について、本実施例で証明する。以下の実施例では、システムは、サンプルと反応するように設計された試薬が一方の電極上で乾燥している、2つの対向した電極を有するセンサを含んだ。複数のサンプルを、本明細書に開示するシステム、デバイス、及び方法の性能を試験するための分析に提供した。電流遷移を測定し、ilについて約1.4秒〜約4.0秒、irについて約4.4秒〜約5秒の時間枠を含む第1のアルゴリズムを用いて分析した。本明細書に示し、かつ説明した第2のアルゴリズム、具体的には、式15A及び15Bによって計算した電流値ir及びilを用いて、測定された電流遷移も測定した。65、240又は440mg/dLの標的血漿グルコース濃度のサンプルについて、YSI 2700医療機器で測定された基準グルコース測定値からのバイアスを判定した。正常ヘマトクリット値の血液に追加された尿酸塩の濃度に対して、これらのデータをプロットした。各線の傾きを計算した。傾きが小さいとは、尿酸塩による干渉が小さいことを示す。以下の表1に示すように、第1のアルゴリズムに対するバイアスは、上記第2のアルゴリズムに対するバイアスよりもはるかに大きかった。より具体的には、式15A及び15Bによって計算した電流値ir及びilは、意外にも、血中尿酸塩に対する感度が第1のアルゴリズムよりも5〜13倍低いことが示された。
(実施例4)
ヘマトクリット値が高い血液に対する、本明細書に開示される充填時間補正アルゴリズムの有効性について、本実施例で証明する。以下の実施例では、システムは、サンプルと反応するように設計された試薬が一方の電極上で乾燥している、2つの対向した電極を有するセンサを含んだ。複数のサンプルが、本明細書に開示されているシステム、装置及び方法の性能を試験するための分析のために提供された。サンプルは、約15%〜約70%の範囲のヘマトクリット値が含まれる血液サンプルとした。本明細書に開示されるアルゴリズムは、血液充填が遅いことを打ち消すことができ、70%程度の高さのヘマトクリット値においてもグルコース値を正確に報告できる。生後16時間は非常に高いヘマトクリット値を有し得る新生児の検査に対して、このことが影響する。YSI 2700医療機器で測定された基準グルコース測定値からのグルコース値のバイアスを、ヘマトクリット値に対してプロットした。このデータに最も適合する線の傾きは、グルコース反応のヘマトクリット依存性の指標である。傾きが小さいほど理想的である。新たな時間枠、具体的には、上記式15A及び15Bによって計算した電流値ir及びilを用いて、15〜70%のヘマトクリット値の血液で得られたデータを分析したところ、バイアス対ヘマトクリットのプロットの傾きは−0.0278であった。上記充填時間補正を分析に含めたところ、傾きは−0.0098に減少した。出願者は意外にも、上記充填時間補正により、グルコース反応のヘマトクリット依存性が2.8倍低下することを発見した。
(実施例5)
本発明による静電容量補正アルゴリズムを用いたときの、改善された試験ストリップの貯蔵寿命を本実施例で証明する。典型的には、2つの電極間のホットメルト接着剤を用いて、試験ストリップを作製した。センサが高温で長期間保存される場合、接着剤がゆっくりと流れ、電極を部分的に覆う場合がある。これによって、電圧が印加時に測定される電流が低下する。しかしながら、電極面積が低下すると、測定された静電容量値も低下する。上記式に示すように、静電容量の変化を用いて、グルコース反応を補正することができる。
バイアス対保存期間のプロットを用いて、製品の貯蔵寿命を予測できる(適合線が誤差量の上下限の1つを交差する時間を記すことにより)。上記静電容量補正は、高グルコース集団(>100mg/dL)にのみ影響する。
実際には、傾きの小ささは、貯蔵寿命の長さと相関する傾向がある。静電容量補正を使用しないとき、バイアス対保存期間のプロットの傾きは−0.0559である。しかしながら、静電容量の変化に対してデータを補正すると、バイアス対保存期間のプロットの傾きは−0.0379に減少する。したがって、上記静電容量補正アルゴリズムを用いてセンサの老化による静電容量変化を補正するとき、製品が約50%長い貯蔵寿命を有することになる。
(実施例6)
上記補正アルゴリズムがもたらす高全体精度について、本実施例で証明する。以下の実施例では、システムは、サンプルと反応するように設計された試薬が一方の電極上で乾燥している、2つの対向した電極を有するセンサを含んだ。本明細書に開示されるシステム、装置及び方法の性能試験の分析のため、異なるドナー由来の複数のサンプルを準備した。このデータセットは18,970回のグルコースアッセイからなり、構成は以下のとおりである。
・安定性試験から7,460回のアッセイ(30℃/65%RHで1〜18ヵ月保存した6ロットのストリップ、50、250及び500mg/dLの血漿グルコースに正常ヘマトクリット値の血液を加えたもので検査)、
・5〜45℃で実施した温度試験から5,179回のアッセイ(正常ヘマトクリット値の血液で検査)
・ヘマトクリット試験から6,331回のアッセイ(15〜70%のヘマトクリット値)。
上記アルゴリズムを用いて、これらアッセイからのデータを分析した。この「検証用上位集合」に全アルゴリズムを適合させると以下の適合パラメータが得られたが、これらは上で開示した式に関して述べたものである。
アルゴリズムの各態様を加えることによる、センサ性能の段階的改善を、以下の表3に示す。上記大量のデータセットを、まず新たな時間枠のみで(G1)、次にG1の補正に用いた充填時間で、次に先の結果の補正に用いた静電容量で、次に先の結果の補正に用いたAFオフセット(「AFO」)で、最後に(完全なアルゴリズムを得るために)追加されたグルコース依存性累乗項で適合させた。これを実施することにより、アルゴリズムの各ステップによってもたらされる漸進的改善が示された。大きな変化は、G>75mg/dLで得られた結果においてである。性能の改善は、アルゴリズムの各ステップにおいてみられる。RMSバイアスは、計算された等量の血漿グルコースと測定された基準値との間の二乗平均平方根バイアスである。このバイアスは、基準グルコース濃度に対して、G<75mg/dLについてはmg/dLで、G>75mg/dLについては%で表わされる。P10は、基準値の10mg/dL又は10%以内のグルコース値の結果の割合を示す。
「非対称因子オフセット」及び「グルコース依存性累乗項」は、低グルコース値では若干正に、高グルコース値では若干負に偏る傾向を克服するために設計された。この非理想的挙動は、バイアスを基準血漿グルコース値に対してプロットするとき、負の傾きとしてよくみられる。「非対称因子オフセット」及び「グルコース依存性累乗項」をアルゴリズムに含めることで、この負の傾きを26%低減できた。この変化は、グルコース濃度が80mg/dLを超えたとき、基準血漿グルコース値の10%以内に更に1.55%の点を含めるのに十分であった。
データセットによる結果の明細を表4に示す。いずれの場合も、米国糖尿病学会による好ましい性能基準を満たすP10>95%であった。
この結果は、基準血漿グルコース値の10mg/dL又は10%以内に入らない外れ値の評価を可能にするため、図10〜14にグラフとしても示す。図10〜12は、基準グルコース値、ヘマトクリット値、及び温度に対してプロットした全データセットを示す。図13〜14は、G<75mg/dLとG>75mg/dLに分けた安定性データを示す。
本発明を特定の変形例及び説明図に関して述べたが、当業者は本発明が上述された変形例又は図に限定されないことを認識するであろう。更に、上述の方法及び工程が特定の順序で起こる特定の事象を示している場合、当業者は特定の工程の順序が変更可能であり、そうした変更は本発明の変形例に従うものであることを認識するであろう。更に、こうした工程のうちのあるものは、上述のように順次行われるが、場合に応じて並行したプロセスで同時に行われてもよい。したがって、開示の趣旨及び請求項に見出される本発明の同等物の範囲内にある本発明の変形が存在する範囲では、本特許請求がこうした変形例をも包含することが意図されるところである。本明細書に引用されるすべての刊行物及び文献は、それらの全容を本明細書に援用するものである。