以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のシアン酸エステル化合物は、下記一般式(I)で表される分子構造を有することを特徴とする化合物である。
式(I)中、Xは下記構造式(x1)又は(x2)で表される構造部位である。
式(x1)又は(x2)中、R1及びR2はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、lは0〜3の整数、nは0〜4の整数である。l又はnが2以上の整数の場合、複数のR1又はR2は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。さらに、Arは下記構造式(Ar1)又は(Ar2)で表される構造部位であり、kは1〜3の整数、mは1〜2の整数である。k又はmが2以上の整数の場合、複数のArは同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。なお、*1は前記一般式(I)においてO原子との結合点を示す。
式(Ar1)又は(Ar2)中、R3及びR4はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、qは0〜4の整数、sは0〜6の整数である。q又はsが2以上の整数の場合、複数のR3又はR4は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。p、rはそれぞれ1〜2の整数である。式(Ar2)中のR4、シアナト基は、2つの芳香核のうちどちらに結合していてもよい。なお、*2は前記構造式(x1)又は(x2)において芳香核上の炭素原子との結合点を示す。
本発明のシアン酸エステル化合物は、前記のようにメチレン鎖を介さずに芳香核同士が結合した構造(構造式(x1)、(x2)で表される構造)に、シアナト基が導入された構成からなる。このようにメチレン鎖を介さずに芳香核同士が結合した剛直な分子構造を有する化合物は、ノボラック樹脂といった長鎖の樹脂と比較して、分子運動が抑制されること、および高い芳香環濃度を有することから、得られる硬化物において誘電率と誘電正接は低く、耐熱分解温度が高いという特徴を有する。
さらに、前記のような構造(メチレン鎖を介さずに芳香核同士が結合した構造式(x1)、(x2)で表される構造)に、シアナト基が導入された化合物は、一般的な樹脂と比較して、シアナト基濃度が高く、硬化物において高い架橋密度を有するので、得られる硬化物は耐熱性が高いという特徴を有する。
なお、一般的にシアナト基濃度が高い化合物は、易燃性のシアナト基が近接して存在するため硬化物の難燃性に劣る傾向にあるが、本発明のシアン酸エステル化合物は、前記のようにメチレン鎖を介さずに芳香核同士が結合した構造を有すること、及び構造式(x1)又は(x2)において、芳香核のパラ位に導入された2つのシアナト基は優れた反応性を有することから、硬化物において優れた難燃性を有するという特徴を有する。
構造式(x1)又は(x2)においてkは1〜3の整数、mは1〜2の整数である。k又はmの値が1の場合に相当する化合物(以下「2核体化合物(α1)」と略記する。)は、低分子量で粘度が低くありながら、得られる硬化物において耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に優れるという特徴を有する。一方、k又はmの値が2の場合に相当する化合物(以下「3核体化合物(α2)」と略記する。)や、kの値が3の場合に相当する化合物(以下「4核体化合物(α3)」と略記する。)は、分子骨格の剛直性がより高く、芳香環濃度も高いことから、得られる硬化物において耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるという特徴を有する。
前記一般式(I)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)と、分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)とを、無触媒又は酸触媒条件下、40〜180℃の温度範囲で反応させてフェノール中間体(a)を得、次いで、得られたフェノール中間体(a)とハロゲン化シアンとを反応させる方法により製造されるものが挙げられる。このような方法により本発明のシアン酸エステル化合物を製造する場合、反応条件により任意の成分を選択的に製造したり、複数種のシアン酸エステル化合物の混合物であるシアン酸エステル樹脂として製造したりすることが出来る。また、混合物であるシアン酸エステル樹脂から任意の成分のみを単離して用いても良い。
前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)は、例えば、下記構造式(Q1)又は(Q2)で表される化合物が挙げられる。
式(Q1)又は(Q2)中、R1及びR2はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、lは0〜3の整数、nは0〜4の整数である。l又はnが2以上の整数の場合、複数のR1又はR2は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。
そのような、キノン構造を有する化合物(Q)として、具体的には、パラベンゾキノン、2−メチルベンゾキノン、2,3,5−トリメチル−ベンゾキノン、ナフトキノン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)は、例えば、下記構造式(P1)又は(P2)で表される化合物が挙げられる。
式(P1)又は(P2)中、R3及びR4はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、qは0〜4の整数、sは0〜6の整数である。q又はsが2以上の整数の場合、複数のR3又はR4は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。また、p及びrはそれぞれ1〜2の整数である。
そのような、フェノール性水酸基を有する化合物(P)として、具体的には、フェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,3,4−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、4−イソプロピルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2‐メトキシ−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、3,5−ジメトキシフェノール、2−エトキシフェノール、3−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、4−ベンジルフェノール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1−ナフトール、2−ナフトール、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)と前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)との反応は、反応性が高いことから無触媒条件下でも進行するが、適宜酸触媒を用いて行っても良い。ここで用いる酸触媒は例えば、塩酸、硫酸、リン酸、などの無機酸や、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸等が挙げられる。これら酸触媒を用いる場合は、前記キノン構造を有する化合物(Q)と前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)との合計質量に対し、5.0質量%以下の量で用いることが好ましい。
また、前記反応は無溶剤条件下で行うことが好ましいが、必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。ここで用いる有機溶媒は例えば、メチルセロソルブ、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これら有機溶剤を用いる場合は、反応効率が向上することから、キノン構造を有する化合物(Q)と分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)との合計100質量部に対し、有機溶剤が50〜200質量部の範囲となる割合で用いることが好ましい
このように、キノン構造を有する化合物(Q)とフェノール性水酸基を有する化合物(P)とを反応させることにより、下記一般式(II)で表されるフェノール中間体(a)を得ることが出来る。
式(II)中、X’は下記構造式(x3)又は(x4)で表される構造部位である。
式(x3)又は(x4)中、R1及びR2はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、lは0〜3の整数、nは0〜4の整数である。lまたはnが2以上の整数の場合、複数のR1又はR2は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。kは1〜3の整数、mは1〜2の整数であり、*3は前記一般式(II)におけるO原子との結合点を示す。さらに、Arは下記構造式(Ar3)又は(Ar4)で表される構造部位である。k又はmが2以上の整数の場合、複数のArは同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。
式(Ar3)又は(Ar4)中、p、rはそれぞれ1〜2の整数である。qは0〜4の整数、sは0〜6の整数である。R3及びR4は、それぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかである。式(Ar4)中、R4、OHは、2つの芳香核のうちどちらに結合していてもよい。*4は前記式(x3)又は(x4)における芳香核上の炭素原子との結合点を示す。
前記式(x3)又は(x4)において、k又はmの値が1の場合に相当するフェノール中間体(a)は、下記のハロゲン化シアンと反応することで、前記シアン酸化合物2核体化合物(α1)を生成する。同様に、下記のハロゲン化シアンと反応することで、k又はmの値が2の場合に相当するフェノール中間体は、前記3核体化合物(α2)を生成し、kの値が3の場合に相当するフェノール中間体は、前記4核体化合物(α3)を生成する。すなわち、式(x3)又は(x4)において、k又はmの値が1である化合物は、前記シアン酸エステル化合物において前記2核体化合物(α1)の前駆体であり、k又はmの値が2の場合である化合物は、前記3核体化合物(α2)の前駆体であり、kの値が3である化合物は、前記4核体化合物(α3)の前駆体である。なお、下記で説明するシアン酸エステル樹脂を前記フェノール中間体(a)から合成する場合、シアン酸エステル樹脂における2核体化合物(α1)、3核体化合物(α2)、4核体化合物(α3)の割合は、フェノール中間体(a)に含まれる前駆体の割合に依存し、ハロゲン化シアンと反応した後も、その割合は維持され、変化しないものである。
次いで、得られたフェノール中間体(a)と反応させるハロゲン化シアンは、具体的には、塩化シアンや臭化シアン等が挙げられる。また、工程2の反応は塩基性触媒条件下で行うことにより反応が促進されることから好ましく、ここで用いる塩基性触媒は、例えば、トリエチルアミンやトリメチルアミン等の3級アミン、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。
前記フェノール中間体(a)とハロゲン化シアンとの反応は、各原料成分を有機溶媒に溶解させて反応に供することが好ましく、ここで用いる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物溶媒や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒等が挙げられる。
反応終了後は、反応液に適量の水を加えて生成塩を溶解し、水洗を繰り返して系内の生成塩を除去する。次いで、脱水や濾別によりさらに精製し、有機溶媒を蒸留で除去することにより、目的とするシアン酸エステル樹脂を得ることが出来る。
なお、本発明のシアン酸エステル化合物は、前記一般式(I)で表される構造を有するものであれば、いずれの場合であっても、得られる硬化物において、誘電率、誘電正接が低く、耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に優れるという特徴を有する。以下、前記一般式(I)で表される構造を有するシアン酸エステル化合物のより好ましいものについて詳述する。
前記一般式(I)で表されるシアン酸エステル化合物の代表的なものとして、下記構造式(I−1)〜(I−3)の何れかで表される分子構造を有する化合物が挙げられる。
式(I−1)〜(I−3)中、kは1〜3の整数、mは1〜2の整数であり、k又はmが2以上の整数の場合、複数のArは同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。なお、Arは下記構造式(Ar1)又は(Ar2)の何れかで表される構造部位である。
式(Ar1)又は(Ar2)中、R3及びR4はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、qは0〜4の整数、sは0〜6の整数である。q又はsが2以上の整数の場合、複数のR3又はR4は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。p、rはそれぞれ1〜2の整数である。式(Ar2)中のR4、シアナト基は、2つの芳香核のうちどちらに結合していてもよい。なお、*2は前記構造式(x1)又は(x2)において芳香核上の炭素原子との結合点を示す。
前記構造式(I−1)で表されるシアン酸エステル化合物として、更に具体的には、下記構造式(1)〜(7)の何れかで表される分子構造を有する化合物が挙げられる。
式(1)〜(7)中、kは1〜3の整数、uは1〜4の整数である。R5は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、uが2以上の整数の場合、複数のR5は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。
以下で、前記構造式(1)〜(7)の分子構造を有するシアン酸エステル化合物と、前記構造式(1)〜(7)の分子構造を有するシアン酸エステル化合物を含むシアン酸エステル樹脂について詳細に説明する。
下記構造式(1)で表されるシアン酸エステル化合物は、本発明のシアン酸エステル化合物の中でも、特に、低い溶融粘度を有し、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、難燃性、および誘電特性とのバランスに特に優れるという特徴を有する。
式(1)中、kは1〜3の整数である。
前記構造式(1)で表されるシアン酸エステル化合物を含むシアン酸エステル樹脂は、前記構造式(1)で表されるシアン酸エステル化合物と同様の特徴を有するが、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性が一層優れることから、前記構造式(1)においてkの値が1である2核体化合物(α1)と、kの値が2である3核体化合物(α2)とを含有するシアン酸エステル樹脂が好ましい。前記樹脂の中でもシアン酸エステル樹脂中の前記2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で10〜50%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(α2)の含有率がGPC測定における面積比率で10〜50%の範囲にあるシアン酸エステル樹脂がより好ましい。
特に、得られる硬化物の耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性が一層優れる点から、前記2核体化合物(α1)、前記3核体化合物(α2)に加え、kの値が3である4核体化合物(α3)や、下記構造式(1’)で表される4核体化合物(α3’)を含有するシアン酸エステル樹脂が好ましく、このとき、シアン酸エステル樹脂中の前記4核体化合物(α3)と前記4核体化合物(α3’)との合計の含有量は、GPC測定における面積比率で2〜20%の範囲であることが好ましい。
なお、本発明において、シアン酸エステル樹脂中の前記2核体化合物(α1)、前記3核体化合物(α2)、前記4核体化合物(α3)及び前記4核体化合物(α3’)の含有率とは、下記の条件によるGPC測定データから算出される、シアン酸エステル樹脂の全ピーク面積に対する前記各成分のピーク面積の割合である。
<GPC測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
前記構造式(1)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)としてパラベンゾキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてフェノールを用い、前述の方法により製造することが出来る。このときパラベンゾキノンとフェノールとの反応割合は、得られるシアン酸エステル樹脂中の前記2核体化合物(α1)と前記3核体化合物(α2)との含有量を前述した好ましい範囲に調整することが容易となることから、パラベンゾキノン1モルに対し、フェノールが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
前記構造式(1)で表される化合物としては、例えば、下記構造式(1−1)〜(1−9)の何れかで表される化合物等が挙げられる。
下記構造式(2)で表されるシアン酸エステル化合物は、前記一般式(I)で表されるシアン酸エステル化合物の中でも、特に溶融粘度が低く、硬化物において誘電特性、耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に優れるという特徴を有する。
式(2)中kは1〜3の整数である。
前記構造式(2)で表されるシアン酸エステル化合物を含むシアン酸エステル樹脂は、前記構造式(2)で表されるシアン酸エステル化合物と同様の特徴を有するが、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れることから、前記構造式(2)においてkの値が1である2核体化合物(α1)と、前記構造式(2)においてkの値が2である3核体化合物(α2)とを含有するシアン酸エステル樹脂が好ましい。前記樹脂の中でもシアン酸エステル樹脂中の前記2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で2〜50%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(α2)の含有率がGPC測定における面積比率で10〜90%の範囲であるシアン酸エステル樹脂がより好ましく、前記2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で2〜25%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(α2)の含有率がGPC測定における面積比率で25〜90%の範囲であるシアン酸エステル樹脂がさらにより好ましい。
特に、耐熱性に一層優れる硬化物が得られる点においては、前記2核体化合物(α1)、前記3核体化合物(α2)に加え、前記構造式(2)においてkの値が3である4核体化合物(α3)や、下記構造式(2’)で表される4核体化合物(α3’)を含有するシアン酸エステル樹脂が好ましく、このとき、シアン酸エステル樹脂中の前記4核体化合物(α3)と前記4核体化合物(α3’)との合計の含有量は、GPC測定における面積比率で2〜20%の範囲であることがより好ましい。
前記構造式(2)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)としてパラベンゾキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてクレゾールを用い、前述の方法により製造することが出来る。このときパラベンゾキノンとクレゾールとの反応割合は、得られるシアン酸エステル樹脂中の前記2核体化合物(α1)と前記3核体化合物(α2)との含有量を前述した好ましい範囲に調整することが容易となることから、パラベンゾキノン1モルに対し、クレゾールが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
ここで用いるクレゾールは、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾールの何れでも良く、また、複数種を併用しても良い。中でも、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性にも優れるシアン酸エステル樹脂が得られることから、オルソクレゾールが好ましい。
前記構造式(2)で表される化合物は、例えば、下記構造式(2−1)〜(2−31)の何れかで表されるシアン酸エステル化合物等が挙げられる。
下記構造式(3)で表されるシアン酸エステル化合物は、前記一般式(I)で表されるシアン酸エステル化合物の中でも、特に溶融粘度が低く、硬化物において誘電特性、耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に優れるという特徴を有する。
式(3)中、kは1〜3の整数である。
前記構造式(3)で表されるシアン酸エステル化合物を含むシアン酸エステル樹脂は、前記構造式(3)で表されるシアン酸エステル化合物と同様の特徴を有するが、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れることから、前記構造式(3)においてkの値が1である2核体化合物(α1)と、前記構造式(3)においてkの値が2である3核体化合物(α2)とを含有するシアン酸エステル樹脂が好ましい。前記樹脂の中でもシアン酸エステル樹脂中の前記2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で2〜50%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(α2)の含有率がGPC測定における面積比率で10〜95%の範囲であることがより好ましい。更に、シアン酸エステル樹脂中の前記2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で2〜25%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(α2)の含有率がGPC測定における面積比率で50〜95%の範囲であることが特に好ましい。
特に、耐熱性に一層優れる硬化物が得られる点においては、前記2核体化合物(α1)、前記3核体化合物(α2)に加え、前記構造式(3)においてkの値が3である4核体化合物(α3)や、下記構造式(3’)で表される4核体化合物(α3’)を含有するシアン酸エステル樹脂が好ましく、このとき、シアン酸エステル樹脂中の前記4核体化合物(α3)と前記4核体化合物(α3’)との合計の含有量は、GPC測定における面積比率で0.5〜10%の範囲であることがより好ましい。
前記構造式(3)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)としてパラベンゾキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてジメチルフェノールを用い、前述の方法により製造することが出来る。このときパラベンゾキノンとジメチルフェノールとの反応割合は、得られるシアン酸エステル樹脂中の前記2核体化合物(α1)と前記3核体化合物(α2)との含有量を前述した好ましい範囲に調整することが容易となることから、パラベンゾキノン1モルに対し、ジメチルフェノールが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
ここで用いるジメチルフェノールは2,6−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール等何れの位置異性体のものでも良い。中でも、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性にも優れるシアン酸エステル樹脂が得られることから、2,6−ジメチルフェノールが好ましい。
前記構造式(3)で表される化合物は、例えば、下記構造式(3−1)〜(3−3)の何れかで表される化合物等が挙げられる。
下記構造式(4)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)としてパラベンゾキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてジヒドロキシベンゼンを用い、前述の方法により製造することが出来る。このときパラベンゾキノンとジヒドロキシベンゼンとの反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるシアン酸エステル樹脂が得られることから、パラベンゾキノン1モルに対し、ジヒドロキシベンゼンが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
式(4)中、kは1〜3の整数である。
なお、前記で使用するジヒドロキシベンゼンは、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン等何れの位置異性体のものでも良い。中でも、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性にも優れるシアン酸エステル樹脂が得られることから、1,3−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。
前記構造式(4)で表されるシアン酸エステル化合物としては、例えば、下記構造式(4−1)〜(4−3)の何れかで表される化合物等が挙げられる。
前記構造式(4)で表されるシアン酸エステル化合物を含有するシアン酸エステル樹脂は、更にこれら以外のシアン酸エステル化合物を含有していても良い。前記その他のシアン酸エステル化合物としては、例えば、下記構造式(4’−1)〜(4’−8)の何れかで表される化合物等が挙げられる。
式(4’−1)〜(4’−8)中、u及びvはそれぞれ1〜2の整数である。
シアン酸エステル樹脂が前記構造式(4)で表される化合物に併せて、前記その他のシアン酸エステル化合物を含む場合、シアン酸エステル樹脂中の各成分の含有割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に優れるシアン酸エステル樹脂となることから、前記構造式(4)においてkの値が1である2核体化合物(α1)と前記構造式(4’−1)で表される化合物との合計の含有率がGPC測定における面積比率で5〜40%の範囲であり、前記構造式(4)においてkの値が2である3核体化合物(α2)又は前記構造式(4’−2)で表される化合物、及び前記構造式(4’−4)又は(4’−5)で表される化合物の合計の含有率が10〜60%の範囲であることが好ましい。
下記構造式(5)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)としてパラベンゾキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてナフトールを用い、前述の方法により製造することが出来る。このときパラベンゾキノンとナフトールとの反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるシアン酸エステル樹脂が得られることから、パラベンゾキノン1モルに対し、ナフトールが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
式(5)中、kは1〜3の整数である。
前記構造式(5)で表されるシアン酸エステル化合物としては、例えば、下記構造式(5−1)〜(5−10)の何れかで表される化合物等が挙げられる。
前記構造式(5)で表されるシアン酸エステル化合物を含むシアン酸エステル樹脂としては、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に特に優れることから、前記構造式(5)においてkの値が1である2核体化合物(α1)と、前記構造式(5)においてkの値が2である3核体化合物(α2)とを含有するシアン酸エステル樹脂が好ましい。前記樹脂の中でもシアン酸エステル樹脂中の前記2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で5〜60%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(α2)の含有率がGPC測定における面積比率で5〜50%の範囲であるシアン酸エステル樹脂が特に好ましい。
下記構造式(6)で表されるシアン酸エステル化合物としては、前記一般式(I)で表されるシアン酸エステル化合物の中でも、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に特に優れるという特徴を有する。
式(6)中、kは1〜3の整数である。
前記構造式(6)で表されるシアン酸エステル化合物を含むシアン酸エステル樹脂は、前記構造式(6)で表されるシアン酸エステル化合物と同様の特徴を有するが、その中でも、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れることから、前記構造式(6)においてkの値が1である2核体化合物(α1)と、前記構造式(6)においてkの値が2である3核体化合物(α2)とを含有するシアン酸エステル樹脂が好ましく、シアン酸エステル樹脂中の前記2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で5〜60%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(α2)の含有率がGPC測定における面積比率で5〜50%の範囲であることがより好ましい。
前記構造式(6)の何れかで表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)としてパラベンゾキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてジヒドロキシナフタレンを用い、前述の方法により製造することが出来る。このときパラベンゾキノンとジヒドロキシナフタレンとの反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるシアン酸エステル樹脂となることから、パラベンゾキノン1モルに対し、ジヒドロキシナフタレンが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
ここで用いるジヒドロキシナフタレンは、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等何れの位置異性体のものでも良い。中でも、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性にも優れるシアン酸エステル樹脂が得られることから、2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
前記構造式(6)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、下記構造式(6−1)〜(6−30)の何れかで表される化合物等が挙げられる。
下記構造式(7)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキ
ノン構造を有する化合物(Q)としてパラベンゾキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてフェニルフェノールを用い、前述の方法により製造することが出来る。このときパラベンゾキノンとフェニルフェノールとの反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるシアン酸エステル樹脂となることから、パラベンゾキノン1モルに対し、フェニルフェノールが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
式(7)中、R5は、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、kは1〜3の整数である。
前記構造式(7)で表されるシアン酸エステル化合物としては、例えば、下記構造式(7−1)〜(7−12)の何れかで表される化合物等が挙げられる。
前記構造式(I−2)で表されるシアン酸エステル化合物として、更に具体的には、下記構造式(8)〜(11)の何れかで表される化合物が挙げられる。以下、それぞれについて詳細に説明する。
式(8)〜(11)中、R5は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、qは0〜4の整数、rは1〜2の整数、uは1〜4の整数である。uが2以上の整数の場合、複数のR5は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。
下記構造式(8)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)として2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてフェノール、クレゾール、ジメチルフェノール等を用い、前述の方法により製造することが出来る。このとき2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンと、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)との反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるシアン酸エステル樹脂が得られることから、2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノン1モルに対し、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)が0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
式(8)中、qは0〜4の整数である。
前記構造式(8)で表される化合物は、例えば、下記構造式(8−1)〜(8−9)の何れかで表されるシアン酸エステル化合物が挙げられる。
下記構造式(9)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)として2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてジヒドロキシベンゼンを用い、前述の方法により製造することが出来る。このとき2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンとジヒドロキシベンゼンとの反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるシアン酸エステル樹脂が得られることから、2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノン1モルに対し、ジヒドロキシベンゼンが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
前記構造式(9)で表される化合物は、例えば、下記構造式(9−1)で表されるシアン酸エステル化合物等が挙げられる。
下記構造式(10)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)として2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてジヒドロキシナフタレン又はナフトールを用い、前述の方法により製造することが出来る。このとき2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンと前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)との反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるシアン酸エステル樹脂が得られることから、2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノン1モルに対し、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
式(10)中、rは1〜2の整数である。
前記構造式(10)で表される化合物は、例えば、下記構造式(10−1)〜(10−12)の何れかで表されるシアン酸エステル化合物等が挙げられる。
下記構造式(11)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)として2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてフェニルフェノール化合物を用い、前述の方法により製造することが出来る。このとき2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンとフェニルフェノール化合物との反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるシアン酸エステル樹脂が得られることから、2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノン1モルに対し、前記分子構造中にフェニルフェノール化合物が0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
式(11)中、R5は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、uは1〜4の整数である。uが2以上の整数の場合、複数のR5は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。
前記構造式(11)で表される化合物は、例えば、下記構造式(11−1)〜(11−3)の何れかで表されるシアン酸エステル化合物等が挙げられる。
前記構造式(I−3)で表されるシアン酸エステル化合物としては、更に具体的には、下記構造式(12)〜(16)何れかで表されるシアン酸エステル化合物が挙げられる。以下で、それぞれについて詳細に説明する。
式(12)〜(16)中、R5は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかである。qは0〜4の整数、mは1〜2の整数、uは1〜4の整数である。uが2以上の整数の場合、複数のR5は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。
下記構造式(12)表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)としてナフトキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてフェノール、クレゾール、ジメチルフェノール等を用い、前述の方法により製造することが出来る。このときナフトキノンと、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)との反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるシアン酸エステル樹脂が得られることから、ナフトキノン1モルに対し、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)が0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
式(12)中、qは0〜4の整数、mは1〜2の整数である。
前記構造式(12)で表される化合物は、例えば、下記構造式(12−1)〜(12−9)の何れかで表されるシアン酸エステル化合物が挙げられる。
下記構造式(13)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)としてナフトキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてジヒドロキシベンゼンを用い、前述の方法により製造することが出来る。このとき2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンと1,3−ジヒドロキシベンゼンとの反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるシアン酸エステル樹脂が得られることから、2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノン1モルに対し、ジヒドロキシベンゼンが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
式(13)中、mは1〜2の整数である。
前記構造式(13)で表される化合物は、例えば、下記構造式(13−1)で表されるシアン酸エステル化合物が挙げられる。
下記構造式(14)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)としてナフトキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてナフトールを用い、前述の方法により製造することが出来る。このときナフトキノンとナフトールとの反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるシアン酸エステル樹脂が得られることからナフトキノン1モルに対し、ナフトールが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
式(14)中、mは1〜2の整数である。
前記構造式(14)で表される化合物は、例えば、下記構造式(14−1)〜(14−4)の何れかで表されるシアン酸エステル化合物が挙げられる。
下記構造式(15)で表されるシアン酸エステル化合物は、前記一般式(I)で表されるシアン酸エステル化合物の中でも、特に硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に特に優れるという特徴を有する。
式(15)中、mは1〜2の整数である。
前記構造式(15)で表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)としてナフトキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてジヒドロキシナフタレンを用い、前述の方法により製造することが出来る。このときナフトキノンとジヒドロキシナフタレンとの反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるシアン酸エステル樹脂が得られることから、ナフトキノン1モルに対し、ジヒドロキシナフタレンが0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。ここで用いるジヒドロキシナフタレンは、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等何れの位置異性体のものでも良い。中でも、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性にも優れるシアン酸エステル樹脂が得られることから、2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
前記構造式(15)で表される化合物は、例えば、下記構造式(15−1)〜(15−8)の何れかで表されるシアン酸エステル化合物が挙げられる。
前記構造式(15)で表されるシアン酸エステル化合物を含有するシアン酸エステル樹脂は、更にこれら以外のシアン酸エステル化合物を含有していても良い。中でも、硬化物における難燃性に優れることから、下記構造式(15’)で表されるジナフトフラン型化合物を含有していることが好ましい。
この場合、シアン酸エステル樹脂中の各成分の含有割合は、前記構造式(15)においてmの値が1である2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で2〜60%の範囲であり、かつ、前記ジナフトフラン型化合物の含有率が1〜60%の範囲であることが好ましい。
下記構造式(16)表されるシアン酸エステル化合物は、例えば、前記分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)としてナフトキノンを、前記分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)としてフェニルフェノール化合物を用い、前述の方法により製造することが出来る。このときナフトキノンとフェニルフェノール化合物との反応割合は、溶融粘度が低く、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるシアン酸エステル樹脂が得られることからナフトキノン1モルに対し、フェニルフェノール化合物が0.1〜10.0モルの範囲となる割合であることが好ましい。
式(16)中、R5は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、uは1〜4の整数である。uが2以上の整数の場合、複数のR5は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。
前記構造式(16)で表される化合物は、例えば、下記構造式(16−1)〜(16−7)の何れかで表されるシアン酸エステル化合物等が挙げられる。
これら例示したシアン酸エステル化合物のうち、溶融粘度が低く、硬化物において誘電特性、耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性のバランスに優れる点では前記構造式(1)〜(3)の何れかで表されるシアン酸エステル化合物が好ましく、これらの中でも特に溶融粘度が低いことから前記構造式(1)で表されるシアン酸エステル化合物がより好ましい。
次に、本発明の硬化性組成物について説明する。本発明の硬化性組成物は、以上詳述したシアン酸エステル化合物又はシアン酸エステル樹脂と、硬化促進剤とを必須成分とするものである。
ここで用いる硬化促進剤は、具体的には、フェノール化合物、アミン化合物、ルイス酸、3級スルホニウム塩、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、エポキシ基含有化合物などが挙げられる。これらの中でも、シアン酸エステル樹脂との相溶性が高く、反応が円滑に進行する点からは、ノニルフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、銅、鉛、スズ、マンガン、ニッケル、鉄、亜鉛、コバルト等のカルボン酸塩、チタンテトラ-n-ブトキシドとそのポリマー、銅、ニッケル、コバルト等のペンタジオナート塩、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、オクチル酸亜鉛が好ましい。また、反応速度がより高まることからはエポキシ基含有化合物が特に好ましい。
前記硬化促進剤の使用量は、硬化促進能が十分に発揮されることから、例えば、シアン酸エステル樹脂100質量部に対し、0.001〜1質量部の範囲であることが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物は、前記硬化促進剤に加え、更に、エポキシ樹脂を含有することにより、有機溶剤への溶解性や成形性がより良好なものとなることから好ましい。
ここで用いるエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ジグリシジルオキシナフタレン、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシ−1−ナフチル)アルカン等の分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;リン原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、より耐熱性の高い硬化物が得られることから、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂や、ナフタレン骨格を含有するナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂や、結晶性のビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂や、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック型エポキシ樹脂(ホルムアルデヒドでグリシジル基含有芳香環及びアルコキシ基含有芳香環が連結された化合物)等が好ましい。
前記エポキシ樹脂を用いる場合、その使用量は、本発明の硬化性組成物中、10〜50質量%の範囲であることが好ましい。
前記エポキシ樹脂を用いる場合、更にエポキシ樹脂用硬化剤を併用しても良い。ここで用いるエポキシ樹脂用硬化剤は、例えば、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン化合物;ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
また、前記エポキシ樹脂を併用する場合、必要に応じてエポキシ樹脂用硬化促進剤を適宜併用しても良い。硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
本発明の硬化性組成物は、本発明のシアン酸エステル樹脂及び前記硬化促進剤に加え、更にビスマレイミド化合物を含有していても良い。ここで用いるビスマレイミド化合物は、1分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、具体的には、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド等のN−脂肪族マレイミド;N−フェニルマレイミド、N−(P−メチルフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド等のN−芳香族マレイミド;4,4’―ジフェニルメタンビスマレイミド、4,4’―ジフェニルスルホンビスマレイミド、m―フェニレンビスマレイミド、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3、5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン等のビスマレイミド化合物が挙げられる。
これらの中でも、特に硬化物の耐熱性が良好なものとなることから、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3、5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタンが好ましい。
以上詳述した本発明の硬化性組成物は、特にプリント配線基板用ワニスにする場合、前記各成分の他に有機溶剤を配合することが好ましい。ここで用いる有機溶剤は、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。有機溶剤の種類や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
また、前記硬化性組成物は、難燃性を発揮させるために、例えばプリント配線板の分野においては、信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
また前記リン系難燃剤を使用する場合、前記リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(iv)前記(ii)、(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO2−MgO−H2O、PbO−B2O3系、ZnO−P2O5−MgO系、P2O5−B2O3−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V2O5−TeO2系、Al2O3−H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて無機充填材を配合することができる。前記無機充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、硬化性組成物の全体量に対して20質量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
本発明の硬化性組成物は、前記した各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のシアン酸エステル化合物又はシアン酸エステル樹脂、硬化促進剤、更に必要によりエポキシ樹脂が配合された硬化性組成物は、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。前記硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
本発明の硬化性組成物が用いられる用途としては、硬質プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用絶縁材料、半導体封止材料、導電ペースト、ビルドアップ用接着フィルム、樹脂注型材料、接着剤等が挙げられる。これら各種用途のうち、硬質プリント配線板材料、電子回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、耐熱性が高く、特に低誘電率性及び低誘電正接性に優れる特性を生かし、硬質プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用材料、及び半導体封止材料に用いることが好ましい。以下で、本発明の硬化性組成物を用いて、硬質プリント配線板、フレキシルブル配線基板、ビルドアップ基板等の回路基板や半導体封止材料を得る方法について説明する。
本発明の硬化性組成物から、回路基板を得るには、硬化性組成物を有機溶剤に希釈したワニスを得、これを板状に賦形したものを銅箔と積層し、加熱加圧成型する方法が挙げられる。
回路基板のうち、硬質プリント配線板を本発明の硬化性組成物から得る方法としては、有機溶剤を含むワニス状の硬化性組成物を、有機溶剤を用いてして更にワニス化したものを補強基材に含浸し、半硬化させてプリプレグを得たのち、プリプレグに銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材としては、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の硬化性組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この際、用いる硬化性組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、前記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とする硬質プリント配線板を得ることができる。
回路基板のうち、フレキシルブル配線基板を本発明の硬化性組成物から得る方法としては、シアン酸エステル樹脂、硬化促進剤、エポキシ樹脂、及び有機溶剤を配合したものをリバースロールコータ、コンマコータ等の塗布機を用いて、電気絶縁性フィルムに塗布し、次いで、加熱機を用いて60〜170℃で1〜15分間加熱し、溶媒を揮発させて、接着剤組成物をB−ステージ化し、次いで、加熱ロール等を用いて、接着剤に金属箔を熱圧着する方法が挙げられる。熱圧着の際の圧着圧力は2〜200N/cm、圧着温度は40〜200℃が好ましい。それで十分な接着性能が得られれば、ここで終えても構わないが、完全硬化が必要な場合は、さらに100〜200℃で1〜24時間の条件で後硬化させることが好ましい。最終的に硬化させた後の接着剤組成物膜の厚みは、5〜100μmの範囲が好ましい。
回路基板のうち、ビルドアップ基板を本発明の硬化性組成物から得る方法としては、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて、回路が形成された配線基板上に硬化性組成物を塗布して硬化させたのち、粗化剤を用いて硬化性組成物が塗布された面の表面に凹凸を形成し銅などの金属をめっきする工程を、所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層と導体層を交互にビルドアップする方法が挙げられる。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましい。前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物から半導体封止材料を得る方法としては、シアン酸エステル樹脂、硬化促進剤、エポキシ樹脂、及び無機充填剤等の配合剤を必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常シリカが用いられるが、その場合、硬化性組成物中、無機充填材を70〜95質量%となる割合で配合することにより、半導体封止材料を得ることができる。
さらに、本発明の硬化性組成物から半導体装置を得ることもできる。本発明の硬化性組成物から半導体装置を得る方法としては、硬化性組成物を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50〜200℃で2〜10時間に加熱する方法が挙げられる。
本発明の硬化性組成物からビルドアップ用接着フィルムを得る方法としては、例えば、支持フィルム上に硬化性組成物を塗布する方法が挙げられる。前記の方法により製造された接着フィルムを用いる場合、前記接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう前記各成分を配合することが好ましい。前記スルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
前記接着フィルムを得る方法について、さらに具体的に説明すると、支持フィルムの表面に、ワニス状に調製した本発明の硬化性組成物を塗布し、加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて硬化性組成物の層(硬化性組成物層)を形成する方法が挙げられる。
支持フィルム上に形成される硬化性組成物層の厚さは、通常、導体層の厚さ以上であることが好ましい。回路基板が有する導体層の厚さは、通常5〜70μmの範囲であるので、硬化性組成物層の厚さは10〜100μmであることが好ましい。
なお、本発明における硬化性組成物層は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、硬化性組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
なお、前記で得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を得ることもできる。そのような方法としては、例えば、硬化性組成物層が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、硬化性組成物層を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする方法が挙げられる。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは、9.8×104〜107.9×104N/m2とし、空気圧26.7hPa以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
本発明の硬化性組成物から硬化物を得る方法としては、一般的な硬化性組成物の硬化方法に準拠する方法、例えば加熱温度条件等は、組み合わせる硬化剤の種類や用途によって、適宜選択が可能であるが、例えば20〜250℃程度の温度範囲で加熱する方法が挙げられる。
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、GPC、13C−NMR、MSは以下の条件等にて測定した。
GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
<13C−NMRの測定条件>
13C−NMRの測定条件は以下の通りに行った。
装置:日本電子株式会社製 AL−400
測定モード:SGNNE(NOE消去の1H完全デカップリング法)、
溶媒:ジメチルスルホキシド、
パルス角度:45°パルス、
試料濃度 :30wt%、
積算回数 :1000回
<MSの測定装置>
MSの測定装置は以下の装置を使用した。
装置: 日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置 AX505H(FD505H)
<IRの測定条件>
IRの測定装置は以下の装置を使用した。
装置: 日本分光(株)製「FT/IR−550」
実施例1 シアン酸エステル樹脂(A−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フェノール282g(3.0mol)、パラトルエンスルホン酸3gを仕込み、撹拌しながら室温から80℃まで昇温した。80℃に到達した後、パラベンゾキノン162g(1.5mol)を1時間要して添加し、その後更に130℃まで昇温し1時間攪拌して反応させた。反応終了後、減圧下乾燥し、フェノール中間体(A)250gを得た。得られたフェノール中間体のGPCチャートを図1に、13CNMRスペクトルを図2に、MSスペクトルを図3に示す。フェノール中間体(A)の水酸基当量は88g/eqであり、軟化点は95℃であった。MSスペクトルから2核体化合物(a−1)に相当する202のピーク、3核体化合物(b−1)に相当する294のピーク、及び4核体化合物(c−1)に相当する386のピークが検出された。GPCチャートから算出されるフェノール中間体(A)中の2核体化合物(a−1)相当成分の含有量は37.3%、3核体化合物(b−1)相当成分の含有量は30.7%、4核体化合物(c−1)相当成分の含有量は10.3%であった。
続いて、温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けた四つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、先で得たフェノール中間体(A)44g(0.5mol)と臭化シアン106g(1.0mol)を仕込みアセトン1000gに溶解させた後、−3℃に冷却した。次に、トリエチルアミン111g(1.1mol)を滴下ロートに仕込み、攪拌しながらフラスコ内温が10℃以上にならない様な速度で滴下した。滴下終了後、2時間の間、10℃以下の温度下で攪拌し、生じた沈澱を濾過により除いた後、大量の水に注ぎ再沈した。これを塩化メチレンで抽出し、水洗することによりシアン酸エステル樹脂(A−1)55gを得た。得られたシアン酸エステル樹脂(A−1)のシアナト基当量は113g/eqであった。また、シアン酸エステル樹脂(A−1)のIRスペクトルは2264cm−1(シアナト基)の吸収を示し、かつ水酸基の吸収は示さなかったことから、目的のシアン酸エステル樹脂(A−1)が得られたことを確認した。
実施例2 シアン酸エステル樹脂(B−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、オルソクレゾール649g(6.0mol)、パラベンゾキノン162g(1.5mol)、パラトルエンスルホン酸8gを仕込み、撹拌しながら室温から120℃まで昇温した。120℃に到達後、2時間攪拌した。反応終了後、析出した結晶物を渡別し、水200gで2回水洗した。その後加熱減圧条件下で乾燥してフェノール中間体(B)117g得た。得られたフェノール中間体(B)のGPCチャートを図4に、13CNMRスペクトルを図5、およびMSスペクトルを図6に示す。フェノール中間体(B)の水酸基当量は81g/eqであり、MSスペクトルから2核体化合物(a−2)に相当する216のピーク、3核体化合物(b−2)に相当する322のピーク、4核体化合物(c−2)に相当する428のピークが検出された。GPCチャートから算出されるフェノール中間体(B)中の2核体化合物(a−2)相当成分の含有量は4.6%、3核体化合物(b−2)相当成分の含有量は88.0%、4核体化合物(c−2)相当成分の含有量は5.1%であった。
次いで、フェノール中間体(B)41g(水酸基:0.5eq)に変更した以外は実施例1と同様にしてシアン酸エステル樹脂(B−1)50gを得た。このシアン酸エステル樹脂(B−1)の官能基当量は仕込み比より106g/eqであった。また、シアン酸エステル樹脂(B−1)のIRスペクトルは2264cm−1(シアナト基)の吸収を示し、かつ水酸基の吸収は示さなかったことから、目的のシアン酸エステル樹脂(B−1)が得られたことを確認した。
実施例3 シアン酸エステル樹脂(C−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、オルソクレゾール649g(6.0mol)、パラトルエンスルホン酸3gを仕込み、撹拌しながら室温から80℃まで昇温した。80℃に到達した後、パラベンゾキノン162g(1.5mol)を1時間要して添加し、その後更に130℃まで昇温し1時間攪拌して反応させた。反応終了後、減圧下乾燥し、フェノール中間体(C)260g得た。得られたフェノール中間体(C)のGPCチャートを図7に示す。フェノール中間体(C)の水酸基当量は97g/eqであった。GPCチャートから算出されるフェノール中間体(C)中の2核体化合物(α1)相当成分の含有量は25.8%、3核体化合物(α2)相当成分の含有量は51.7%、4核体化合物(α3)相当成分の含有量は10.0%であった。
次いで、フェノール中間体(C)49g(水酸基:0.5eq)に変更した以外は実施例1と同様にしてシアン酸エステル樹脂(C−1)60gを得た。このシアン酸エステル樹脂(C−1)の官能基当量は仕込み比より122g/eqであった。また、シアン酸エステル樹脂(C−1)のIRスペクトルは2264cm−1(シアナト基)の吸収を示し、かつ水酸基の吸収は示さなかったことから、目的のシアン酸エステル樹脂(C−1)が得られたことを確認した。
実施例4 シアン酸エステル樹脂(D−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,6−ジメチルフェノール733g(6.0mol)、パラベンゾキノン216g(2.0mol)、パラトルエンスルホン酸9gを仕込み、撹拌しながら室温から120℃まで昇温した。120℃に到達後、2時間攪拌した。反応終了後、析出した結晶物を渡別し、水200gで2回水洗した。その後加熱減圧条件下で乾燥してフェノール中間体(D)123g得た。得られたフェノール中間体(D)のGPCチャートを図8に、MSスペクトルを図9に示す。フェノール中間体(D)の水酸基当量は88g/eqであり、MSスペクトルから下記構造式(a−3)で表される化合物に相当する230のピーク、下記構造式(b−3)で表される化合物に相当する350のピーク、下記構造式(c−3)で表される化合物に相当する470のピークが検出された。
次いで、フェノール中間体(D)44g(水酸基:0.5eq)に変更した以外は実施例1と同様にしてシアン酸エステル樹脂(D−1)55gを得た。このシアン酸エステル樹脂(D−1)の官能基当量は仕込み比より113g/eqであった。また、シアン酸エステル樹脂(D−1)のIRスペクトルは2264cm−1(シアナト基)の吸収を示し、かつ水酸基の吸収は示さなかったことから、目的のシアン酸エステル樹脂(D−1)が得られたことを確認した。
実施例5 シアン酸エステル樹脂(E−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、レゾルシン165g(1.5mol)、パラベンゾキノン162g(1.5mol)を仕込み、撹拌しながら室温から120℃まで昇温した。120℃に到達後、2時間攪拌した。反応終了後、180℃迄加熱し減圧条件下で乾燥してフェノール中間体(E)280g得た。得られたフェノール中間体(E)のGPCチャートを図10に、13CNMRスペクトルを図11に、MSスペクトルを図12に示す。フェノール中間体(E)の水酸基当量は60g/eqであり、軟化点は98℃であった。MSスペクトルから2核体化合物(α1)に相当する202、218のピーク、3核体化合物(α2)に相当する310、326のピーク、4核体化合物(α3)に相当する418、434のピークが検出された。GPCチャートから算出されるフェノール中間体(E)中の2核体化合物(α1)相当成分の含有量は20.0%、3核体化合物(α2)相当成分の含有量は20.8%、4核体化合物(α3)相当成分の含有量は13.0%であった。
次いで、フェノール中間体(E)30g(水酸基:0.5eq)に変更した以外は実施例1と同様にしてシアン酸エステル樹脂(E−1)40gを得た。このシアン酸エステル樹脂(E−1)の官能基当量は仕込み比より85g/eqであった。また、シアン酸エステル樹脂(E−1)のIRスペクトルは2264cm−1(シアナト基)の吸収を示し、かつ水酸基の吸収は示さなかったことから、目的のシアン酸エステル樹脂(E−1)が得られたことを確認した。
実施例6 シアン酸エステル樹脂(F−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン240g(1.5mol)、パラベンゾキノン162g(1.5mol)、イソプロピルアルコール268g、シュウ酸8gを仕込み、撹拌しながら室温から120℃まで昇温した。120℃に到達した後、2時間攪拌して反応させた。反応終了後、180℃まで加熱して減圧下乾燥し、フェノール中間体(F)359gを得た。得られたフェノール中間体(F)のGPCチャートを図13に、13CNMRスペクトルを図14、MSスペクトルを図15に示す。フェノール中間体(F)の水酸基当量は68g/eqであり、軟化点は126℃であった。MSスペクトルから2核体化合物(a−4)に相当する268のピーク、3核体化合物(b−4)に相当する426のピークが検出された。GPCチャートから算出されるフェノール中間体(F)中の2核体化合物(a−4)相当成分の含有量は43.6%、3核体化合物(b−4)相当成分の含有量は30.7%であった。
次いで、フェノール中間体(F)34g(水酸基:0.5eq)に変更した以外は実施例1と同様にしてシアン酸エステル樹脂(F−1)45gを得た。このシアン酸エステル樹脂(F−1)の官能基当量は仕込み比より93g/eqであった。また、シアン酸エステル樹脂(F−1)のIRスペクトルは2264cm−1(シアナト基)の吸収を示し、かつ水酸基の吸収は示さなかったことから、目的のシアン酸エステル樹脂(F−1)が得られたことを確認した。
実施例7 シアン酸エステル樹脂(G−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン160g(1.0mol)、ナフトキノン158g(1.0mol)、メチルイソブチルケトン318gを仕込み、撹拌しながら室温から150℃まで昇温した。150℃に到達した後、3時間攪拌して反応させた。反応終了後、180℃まで加熱して減圧下乾燥し、フェノール中間体(G)300gを得た。得られたフェノール中間体(G)のGPCチャートを図16に、MSスペクトルを図17に示す。得られたフェノール中間体(G)の水酸基当量は101g/eqであり、軟化点は130℃であった。MSスペクトルから下記構造式(a−5)で表される化合物に相当する318のピーク、下記構造式(d)で表される化合物に相当する300のピークが検出された。GPCチャートから算出されるフェノール中間体(G)中の2核体化合物(α1)相当成分の含有量は49.7%、下記構造式(d)で表される次ナフトフラン化合物の含有量は6.0%であった。
次いで、フェノール中間体(G)51g(水酸基:0.5eq)に変更した以外は実施例1と同様にしてシアン酸エステル樹脂(G−1)61gを得た。このシアン酸エステル樹脂(G−1)の官能基当量は仕込み比より126g/eqであった。また、シアン酸エステル樹脂(G−1)のIRスペクトルは2264cm−1(シアナト基)の吸収を示し、かつ水酸基の吸収は示さなかったことから、目的のシアン酸エステル樹脂(G−1)が得られたことを確認した。
実施例8〜14、比較例1
実施例1〜7で得たシアン酸エステル樹脂(A−1)、(B−1)、(C−1)、(D−1)、(E−1)、(F−1)、(G−1)又は比較用シアン酸エステル化合物(LONZA製「BA−200」:ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂)100gに対し、硬化促進剤としてオクチル酸亜鉛0.01Phrを配合し、硬化性組成物を調整した。得られた硬化性組成物をプレスで200℃の温度条件下10分間成型した後、200℃の温度条件下で5時間硬化させ、試験片を作製した。得られた試験片につき下記の方法により誘電特性、耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性を評価した。結果を表1に示す。
<誘電率及び誘電正接の測定>
JIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
<耐熱性(ガラス転移温度)>
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて測定し、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
<耐熱分解性の評価>
厚さ0.8mmの硬化物を幅5mm、長さ54mmのサイズに切り出し、試験片を250℃で72時間保持した後、初期重量と比較した際の重量減少率を評価した。
<難燃性>
UL−94試験法に準拠し、厚さ0.8mmの試験片5本用いて燃焼試験を行った。