この発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
実施の形態1.
図1から図13は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1は冷蔵庫の正面図、図2は冷蔵庫の縦断面図、図3は図2の野菜室部分を拡大して示した図、図4は冷蔵庫が備える発光部の構成を示す図、図5は冷蔵庫の制御系統の構成を示すブロック図、図6は冷蔵庫の発光部が備える各光源の光照射制御のタイムチャート、図7は冷蔵庫の光照射制御の流れを示すフロー図、図8は光合成光量子密度と3日間キャベツを保存した場合のビタミンC量変化率との関係の一例を示す図、図9は等しい光量子束密度となる緑色光と赤色光のエネルギー量の一例を示す図、図10は緑色光と赤色光の放射エネルギー比R/Gと、緑色光と赤色光の合計エネルギーとの関係を示す図、図11は緑色光と赤色光のエネルギー量比を1:2とした場合に図9と等しい合計光量子束密度となるエネルギー量の一例を示す図、図12は複数の光照射条件下で3日間キャベツを保存した場合のビタミンC量の比較の一例を示す図、図13は冷蔵庫の発光部が備える各光源の光照射制御及び野菜室扉の開閉状態のタイムチャートである。
なお、各図においては、各構成部材の寸法の関係や形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、各構成部材同士の位置関係(例えば、上下関係等)は、原則として、冷蔵庫を使用可能な状態に設置したときのものである。
(冷蔵庫の構成)
この発明の実施の形態1に係る冷蔵庫1は、図2に示すように断熱箱体90を有している。断熱箱体90は、前面(正面)が開口されて内部に貯蔵空間が形成されている。断熱箱体90は、外箱、内箱及び断熱材を有している。外箱は鋼鉄製である。内箱は樹脂製である。内箱は外箱の内側に配置される。断熱材は、例えば発泡ウレタン等であり、外箱と内箱との間の空間に充填されている。断熱箱体90の内部に形成された貯蔵空間は、1つ又は複数の仕切り部材により、食品を収納保存する複数の貯蔵室に区画されている。
図1及び図2に示すように、ここでは、冷蔵庫1は、複数の貯蔵室として、例えば、冷蔵室100、切替室200、製氷室300、冷凍室400及び野菜室500を備えている。これらの貯蔵室は、断熱箱体90において上下方向に4段構成となって配置されている。
冷蔵室100は、断熱箱体90の最上段に配置されている。切替室200は冷蔵室100の下方における左右の一側に配置されている。切替室200の保冷温度帯は、複数の温度帯のうちのいずれかを選択して切り替えることができる。切替室200の保冷温度帯として選択可能な複数の温度帯は、例えば、冷凍温度帯(例えば−18℃程度)、冷蔵温度帯(例えば3℃程度)、チルド温度帯(例えば0℃程度)及びソフト冷凍温度帯(例えば−7℃程度)等である。製氷室300は、切替室200の側方に隣接して切替室200と並列に、すなわち、冷蔵室100の下方における左右の他側に配置されている。
冷凍室400は、切替室200及び製氷室300の下方に配置されている。冷凍室400は、主に貯蔵対象を比較的長期にわたって冷凍保存する際に用いるためのものである。野菜室500は、冷凍室400の下方の最下段に配置されている。野菜室500は、主に野菜や容量の大きな(例えば2L等)の大型ペットボトル等を収納するためのものである。
冷蔵室100の前面に形成された開口部には、当該開口部を開閉する回転式の冷蔵室扉7が設けられている。ここでは、冷蔵室扉7は両開き式(観音開き式)であり、右扉7a及び左扉7bにより構成されている。冷蔵庫1の前面の冷蔵室扉7(例えば、左扉7b)の外側表面には、操作パネル6が設けられている。操作パネル6は、操作部6a及び表示部6bを備えている。操作部6aは、各貯蔵室の保冷温度及び冷蔵庫1の動作モード(解凍モード等)を設定するための操作スイッチである。表示部6bは、各貯蔵室の温度等の各種情報を表示する液晶ディスプレイである。また、操作パネル6は、操作部6aと表示部6bを兼ねるタッチパネルを備えていてもよい。
冷蔵室100以外の各貯蔵室(切替室200、製氷室300、冷凍室400及び野菜室500)は、それぞれ引き出し式の扉によって開閉される。これらの引き出し式の扉は、扉に固定して設けられたフレームを各貯蔵室の左右の内壁面に水平に形成されたレールに対してスライドさせることにより、冷蔵庫1の奥行方向(前後方向)に開閉できるようになっている。
また、切替室200の内部及び冷凍室400の内部には、食品等を内部に収納できる切替室収納ケース201及び冷凍室収納ケース401がそれぞれ引き出し自在に格納されている。同様に、野菜室500内には、食品等を内部に収納できる上段収納ケース11及び下段収納ケース10が引き出し自在に格納されている。
(冷却機構)
冷蔵庫1は、各貯蔵室へ供給する空気を冷却する冷凍サイクル回路を備えている。冷凍サイクル回路は、圧縮機2、凝縮器(図示せず)、絞り装置(図示せず)及び冷却器3等によって構成されている。圧縮機2は、冷凍サイクル回路内の冷媒を圧縮し吐出する。凝縮器は、圧縮機2から吐出された冷媒を凝縮させる。絞り装置は、凝縮器から流出した冷媒を膨張させる。冷却器3は、絞り装置で膨張した冷媒によって各貯蔵室へ供給する空気を冷却する。圧縮機2は、例えば、冷蔵庫1の背面側の下部に配置される。
冷蔵庫1には、冷凍サイクル回路によって冷却された空気を各貯蔵室へ供給するための風路5が形成されている。この風路5は、主に冷蔵庫1内の背面側に配置されている。冷凍サイクル回路の冷却器3は、この風路5内に設置される。また、風路5内には、冷却器3で冷却された空気を各貯蔵室へ送るための送風ファン4も設置されている。
送風ファン4が動作すると、冷却器3で冷却された空気(冷気)が風路5を通って冷凍室400、切替室200、製氷室300及び冷蔵室100へと送られ、これらの貯蔵室内を冷却する。野菜室500は、冷蔵室100からの戻り冷気を冷蔵室用帰還風路を介して野菜室500内に導入することで冷却される。野菜室500を冷却した冷気は、野菜室用帰還風路を通って冷却器3のある風路5内へと戻される(これらの帰還風路は図示せず)。そして、冷却器3によって再度冷却されて、冷蔵庫1内を冷気が循環される。
風路5からそれぞれの貯蔵室へと通じる中途の箇所には、図示しないダンパが設けられている。各ダンパは、風路5の各貯蔵室へと通じる箇所を開閉する。ダンパの開閉状態を変化させることで、各貯蔵室へと供給する冷気の送風量を調節することができる。また、冷気の温度は圧縮機2の運転を制御することに調節することができる。
以上のようにして設けられた圧縮機2及び冷却器3からなる冷凍サイクル回路、送風ファン4、風路5及びダンパは、貯蔵室の内部を冷却する冷却手段を構成している。
冷蔵庫1の例えば背面側の上部には、制御装置8が収容されている。制御装置8には、冷蔵庫1の動作に必要な各種の制御を実施するための制御回路等が備えられている。制御装置8が備える制御回路として、例えば、各貯蔵室内の温度及び操作パネル6に入力された情報等に基づいて圧縮機2及び送風ファン4の動作並びにダンパの開度を制御するための回路が挙げられる。すなわち、制御装置8は前述した冷却手段等を制御して、冷蔵庫1の動作を制御する。なお、各貯蔵室内の温度は、それぞれの貯蔵室に設置されたサーミスタ(図示せず)等により検知することができる。
(野菜室の構成)
図3は、冷蔵庫1が備える野菜室500部分の断面図である。野菜室500は、食品、特に野菜を保存する貯蔵室である。下段収納ケース10は、野菜室扉9のフレーム(図示せず)によって支持されている。下段収納ケース10の上側には、上段収納ケース11が載置されている。野菜室扉9を前方へと引き出すと、下段収納ケース10及び上段収納ケース11が野菜室扉9と一体となって前方へと引き出される。野菜室扉9を引き出した状態で、上段収納ケース11だけを後方へスライドすると、下段収納ケース10だけが引き出された状態となる。下段収納ケース10だけが引き出された状態では、下段収納ケース10に食品を出し入れすることができる。
野菜室500の内部には、扉開閉検知スイッチ12、サーミスタ13及び発光部14が設けられている。扉開閉検知スイッチ12は、野菜室扉9の開閉状態を検知するためのものである。扉開閉検知スイッチ12は、野菜室500の前面開口の縁部における野菜室扉9と対向する位置に設けられている。
野菜室500内の背面部には、サーミスタ13及び発光部14が取り付けられている。サーミスタ13は、野菜室500内の温度を検知する。発光部14は、貯蔵室である野菜室500の内部に可視光を照射可能である。ここでは、下段収納ケース10の背面における発光部14に対向する部分に開口部15が形成されている。そして、発光部14は、この開口部15を通して下段収納ケース10の内部に可視光を照射できるようになっている。なお、下段収納ケース10の少なくとも開口部15に相当する部分に発光部14から照射される可視光を透過させる性質の材料を用いるようにしてもよい。
(発光部の構成)
次に、図4を参照しながら発光部14の構成についてさらに説明する。図4に示すように、発光部14は、第1の光源16a及び第2の光源16bの2種の光源を備えている。前述したように、発光部14は可視光を照射可能である。このため、発光部14は、可視光を照射する可視光源を備えている。第1の光源16a及び第2の光源16bは、可視光源である。これらの第1の光源16a及び第2の光源16bは、それぞれが独立して、点灯及び消灯することができるように構成されている。
第1の光源16aは、第1の波長を中心波長とする光を照射する。第2の光源16bは、第2の波長を中心波長とする光を照射する。第1の波長及び第2の波長は、いずれも可視光領域に属する。ただし、第2の波長は、第1の波長とは異なっている。
具体的には、第1の光源16aの中心波長である第1の波長は、500nm以上700nm以下、好ましくは600nm以上700nm以下である。すなわち、第1の光源16aから照射される光は赤色である。第1の光源16aとして具体的に例えば、赤色LEDを用いることができる。
また、第2の光源16bの中心波長である第2の波長は、500nm以上560nm以下である。すなわち、第2の光源16bから照射される光は緑色である。第2の光源16bとして具体的に例えば、緑色LEDを用いることができる。すなわち、第2の波長は、可視光領域であって第1の波長より短い波長である。
第1の光源16aは第1の放射強度で光を照射する。第2の光源16bは第2の放射強度で光を照射する。第2の放射強度は、第1の放射強度と異なる強度である。ここでは、第2の放射強度は、第1の放射強度より低い。具体的には、第1の放射強度と第2の放射強度との比が2:1になっている。
発光部14に設けられる第1の光源16a及び第2の光源16bを構成する各素子の光量及び個数は、第1の光源16a及び第2の光源16bの放射強度が上述したように関係を満たすことができるように選定されている。具体的にここでは、発光部14には、第1の光源16aを構成する素子が2個設けられ、第2の光源16bを構成する素子が1個設けられている。
(冷蔵庫の制御系統)
図5は、冷蔵庫1の制御系統の機能的な構成を示すブロック図である。この図5には、特に野菜室500の制御に関係する部分が示されている。制御装置8は、例えばマイクロコンピュータを備えており、プロセッサ8a及びメモリ8bを備えている。制御装置8は、メモリ8bに記憶されたプログラムをプロセッサ8aが実行することにより、予め設定された処理を実行し、冷蔵庫1を制御する。
制御装置8には、サーミスタ13から野菜室500の内部の温度の検知信号が入力される。また、制御装置8には、操作パネル6の操作部6aからの操作信号も入力される。さらに、制御装置8には、扉開閉検知スイッチ12からの検知信号も入力される。
制御装置8は、入力された信号に基づいて、野菜室500の内部が設定された温度に維持されるように、圧縮機2及び送風ファン4等の動作を制御する処理を実行する。また、制御装置8は、操作パネル6の表示部6bに表示信号を出力する。
さらに、制御装置8は、発光部14へと制御信号を出力して発光部14の発光動作についても制御する。前述したように、発光部14は、第1の光源16a及び第2の光源16bを備えている。そして、制御装置8は、発光部14が備える第1の光源16a及び第2の光源16bのそれぞれの点灯及び消灯の状態を制御することが可能である。
(発光部の制御)
次に、図6を参照しながら、制御装置8による発光部14の発光動作制御について説明する。制御装置8は、発光部14から可視光を含む光を照射させる照射工程と、発光部14から可視光を含む光を照射させない非照射工程とを交互に繰り返すように発光部14の動作を制御する。すなわち、制御装置8による制御により発光部14は、光を照射する照射工程と、光を照射しない非照射工程とを交互に繰り返す。
照射工程では、第1の光源16a及び第2の光源16bの両方が点灯される。非照射工程では、第1の光源16a及び第2の光源16bのいずれも点灯されない。各工程の継続時間は予め設定されている。これらについてはそれぞれ、照射工程の継続時間はΔT1、非照射工程の継続時間はΔT2とする。
このように、制御装置8は、照射工程、非照射工程の順で実施するように発光部14を制御する。そして、非照射工程の終了後は再び照射工程から前述の順で各工程を繰り返して実施する。したがって、それぞれの工程を順に1回ずつ行う1周期にかかる時間ΔTは、ΔT1及びΔT2の合計となる。
制御装置8は、照射工程と非照射工程とが、24時間以下の周期で交互に繰り返されるように発光部14を制御する。すなわち、ΔTは24時間以下となるように設定される。そして、発光部14は、照射工程と非照射工程とを、24時間以下の周期で交互に繰り返す。
また、非照射工程の継続時間ΔT2は、照射工程の継続時間ΔT1以下となるように設定される。以上のような条件を満たす各工程の継続時間の一例として、具体的には、ΔT1を12時間、ΔT2を12時間に設定する。この場合のΔTは24時間となる。
以上のように構成された冷蔵庫1が備える野菜室500の発光部14の制御に係る一連の流れについて、図7のフロー図を参照しながら説明する。冷蔵庫1の電源が投入されると、まず、ステップS101において、制御装置8は、発光部14の第1の光源16a及び第2の光源16bを点灯させる。続くステップS102において、制御装置8は、経過時間を計測するタイマーtの値を0にリセットし、タイマーによる計時を開始する。
そして、続くステップS103において、制御装置8は、タイマーの経過時間tがΔT1になったか否かを確認する。タイマーの経過時間tがΔT1になっていなければ、タイマーの経過時間tがΔT1になるまでステップS103の確認を繰り返す。そして、タイマーの経過時間tがΔT1となれば、ステップS104へと進む。以上のステップS101からS103までが照射工程である。
ステップS104においては、制御装置8は、発光部14の第1の光源16a及び第2の光源16bを消灯させる。そして、ステップS105へと進み、制御装置8は、経過時間を計測するタイマーtの値を0にリセットし、タイマーによる計時を開始する。
続くステップS106において、制御装置8は、タイマーの経過時間tがΔT2になったか否かを確認する。タイマーの経過時間tがΔT2になっていなければ、タイマーの経過時間tがΔT2になるまでステップS106の確認を繰り返す。そして、タイマーの経過時間tがΔT2となれば、ステップS101へと戻り、以上のステップを繰り返し実行する。以上のステップS104からS106までが非照射工程となる。
(光照射による作用)
次に、以上のような発光部14での光照射により期待される作用について説明する。まず、植物の光合成反応について説明する。光合成反応は次の(1)式で表すことができる。
6CO2+12H2O+688kcal→C6H12O6+6H2O+6O2 ・・・ (1)
この(1)式において、CO2:二酸化炭素、H2O:水、688kcal:光エネルギー、C6H12O6:ブドウ糖である。
この(1)式の光合成反応により、植物は、光エネルギーを利用して大気中の二酸化炭素と植物のもつ水とから酸素と糖を生成する。この反応は二段階に分かれている。一段階目は葉などに含まれるクロロフィル等の色素により吸収された光エネルギーを使って水を水素と酸素に分解し、酵素タンパク質の働きで化学エネルギーを蓄える。二段階目は、電子、水素イオン及び大気中の二酸化炭素を使ってブドウ糖を合成する。ブドウ糖が増加した野菜はその貯蔵性が良くなったり、ブドウ糖からビタミンCを生成したりする。
光合成を活発に行わせるためには、野菜室500内に照射する光を光合成に有効なものとする必要がある。クロロフィルの吸収スペクトルは、赤色(660nm近辺)と青色(450nm近辺)に二つの光吸収ピークがあり、この波長が光合成に特に有効であることが知られている。
また、緑色(500〜600nm)は、クロロフィルによる吸収率は低いが、葉の内部で光が散乱してクロロフィルとの遭遇頻度が高くなり、葉全体での吸収率は高くなる。したがって、吸収スペクトルに一致する赤色光と補助光としての緑色光の両方の光を照射することで、葉の全体のクロロフィルを活性化させることができ、効率的に光合成を行わせることができる。
ここで、光合成に利用できる光の量は、光合成光量子束密度(単位:μmol/(m^2・s))で測ることができる。光合成光量子束密度とは、クロロフィルが吸収できる400nmから700nmまでの波長領域における、1秒あたり、1平方メートルあたりの光量子の数を表すものである。
図8に示すのは、光合成光量子束密度に対する野菜室で3日間保存し光合成させた野菜のビタミンC量の変化率を測定した結果のグラフである。この図8のグラフから、光合成光量子束密度が大きいほど、光合成が促進され、野菜に含まれるビタミンCが増加する傾向にあることがわかる。
ここで、照射される光に含まれる光量子数n[mol]と光の放射エネルギーQ[J]との間には、次の(2)式に示す一定の関係があることが知られている。
なお、この(2)式において、e:光量子1個のエネルギー[J]、Na:アボガドロ定数(=6.02×10^23)、λ:波長[nm]、h:プランク定数(=6.63×10^−34)[Js]、C:光速(=3.00×10^8)[m/s]である。
この(2)式から分かるように、照射される光の波長が長いほど、光に含まれている光量子の数がより多くなる。
図9は、緑色光と赤色光とが同じ光量子束密度となるときに、必要なエネルギー量を示した一例である。緑色光よりも赤色光の方が低い放射エネルギーで同じ光量子束密度を得ることができる。また、図10は、緑色光と赤色光の光量子束密度の合計を任意の一定値としたときにおける、緑色光と赤色光の放射エネルギー比R/Gと、緑色光と赤色光の合計エネルギーとの関係を示すものである。光量子束密度の合計が一定であるという条件の下では、緑色光に対する赤色光の放射エネルギー比R/Gが大きいほど、合計エネルギーは小さくなる。
すなわち、緑色光よりも赤色光の比率が高い方が、より小さい合計エネルギーで同等の合計光量子束密度を得ることができる。また、この図10を見ると、放射エネルギー比R/Gが2以上において、十分小さい合計エネルギーで同等の合計光量子束密度を得られることが分かる。
そこで、図11に示すのは、緑色光と赤色光の放射エネルギー比を1:2とした場合に図9と等しい合計光量子束密度となるエネルギー量の一例である。このように、緑色光と赤色光の放射エネルギー比を1:2とした場合、図9の例と同じく合計光量子束密度は35+85=120[μmol/(m^2・s)]であるが、放射エネルギーの合計は、8+16=24[W/m^2]で、図9の例の26[W/m^2]よりも小さくなる。
前述したように、この発明の実施の形態1においては、第1の光源16aは、赤色光を第1の放射強度で照射する。また、第2の光源16bは、緑色光を第2の放射強度で照射する。第2の放射強度は第1の放射強度と異なる強度であり、ここでは、第2の放射強度は第1の放射強度より低く、具体的には、第1の放射強度と第2の放射強度との比が2:1になっている。
そして、光を照射する照射工程において、発光部14は、第1の光源16aから第1の放射強度で光を照射し、同時に、第2の光源16bから第2の放射強度で光を照射する。したがって、より小さい合計放射エネルギーでもって、より多くの光量子束密度を得ることができ、光を照射した野菜類の光合成を効率的に促進することが可能である。
なお、以上においては、第1の光源16a及び第2の光源16bから照射される光の放射エネルギー量は固定されており、前述したような放射エネルギー量の関係を満たすように第1の光源16a及び第2の光源16bを構成する素子を予め発光部14に設けておく場合について説明した。この点については、これに限られず、例えば、第1の光源16a及び第2の光源16bとして光量を変化させることができるものを用いて、制御装置8が第1の光源16a及び第2の光源16bの光量を調節して、前述の放射エネルギー量の関係を満たすようにしてもよい。
次に、植物の概日リズムは、光の明暗周期等の時間情報が与えられない条件下においても、自律的に約24時間周期を継続する。しかし、光を照射しない暗環境下で野菜類等の青果物を保存した場合には、光合成を行わないので貯蔵性向上又は栄養素増量等の効果を得ることはできない。一方、連続的に光を照射した明環境下で青果物を保存した場合には、光合成は行うが、栄養素の生成が十分にできなかったり、光合成速度や光合成能力が低下したりする等の障害を誘発することがある。
そこで、この発明に係る冷蔵庫1においては、前述したように、野菜室500の発光部14は、野菜室500の下段収納ケース10内に対して可視光を含む光を照射する照射工程と可視光を含む光を照射しない非照射工程とを交互に繰り返して実施する。
このため、下段収納ケース10内は、可視光が照射されて明環境となる明期と可視光が照射されず暗環境となる暗期とに時間経過とともに変わる。すなわち、下段収納ケース10内では、朝に日が昇り夜に日が沈むことによる自然界での光量変化を模擬した環境が実現される。したがって、下段収納ケース10に投入された青果物等の植物に対して、概日リズムに従った光合成等の活動を促すことができる。
また、植物の概日リズムは、朝から夜を経てまた朝になる時間に対応した約24時間周期である。しかし、植物の概日リズムは、環境光の影響を受けてそのリズムの位相が変化するという特徴がある。例えば、暗環境において光を照射して明環境とすると、リズム位相は朝側にずれる。このような特徴を利用し、非照射工程の時間を可視光照射工程よりも短くし、すなわち光を照射しない暗期を、光を照射する明期よりも短縮して光照射の周期を24時間以下とすることで、下段収納ケース10内の青果物が保存中に光合成を行う時間の割合を大きくすることができる。そして、保存中に光合成を行う時間の割合を大きくすることで、青果物の糖及びビタミンC等の栄養素の生成効率を向上させることができる。
ここで、図12を参照しながら、以上で説明したような複数の異なる光照射条件下で青果物を保存した場合に、青果物に含まれる栄養素(ビタミンC)の量にどのような差異が生じるのかについて、具体的な比較例を挙げて説明する。この図12は、複数の異なる光照射条件下でキャベツを3日間保存した後のビタミンC量を比較したグラフである。ビタミンC量は、保存前の初期のビタミンC量を100として変化の割合で表している。光照射の条件については、光強度を同等とし、照射する光に含まれる色及び1日あたりの照射時間を変えている。
1日中全く光を照射しない非照射では、保存後のビタミンC量は初期よりも減少している(図12の最も左側のグラフ)。これに対し、光を照射した条件ではいずれも、保存後のビタミンC量は初期よりも増加した。1日中連続的に光を照射した場合(図12の中央のグラフ)と比較して、光を照射しない時間すなわち暗期を設け、概日リズムに対応した光照射を行うと、より保存後のビタミンCの増加量が多くなる結果となった(図12の最も右側のグラフ)。
このように、青果物の概日リズムに応じて適切な波長の光を照射することにより、光合成及び栄養素の生成の効率をよく行わせることができ、保存中の野菜の貯蔵性向上及び栄養素増量の効果を得ることが可能である。すなわち、この発明に係る冷蔵庫1によれば、自然界の光の動きを模擬した光の照射を行うことで、青果物の概日リズムを利用し、青果物の光合成などの活動をコントロールすることができ、光合成による栄養素の生成を促進したり、余分な蒸散を抑制したりして、野菜を高品質に保存することができる。
(発光部の制御の別例)
以上で説明した発光部14の制御では、1日のうちのどの時間帯に照射工程及び非照射工程を実施するのかについては特に言及しなかった。ここでは、発光部14の制御の他の例として、非照射工程を実施する時間帯等の発光部14の制御を野菜室扉9の開閉状態の検知結果に応じて行うようした例について図13を参照しながら説明する。
前述したように野菜室扉9は、貯蔵室である野菜室500を開閉可能な扉である。また、扉開閉検知スイッチ12は、この野菜室扉9の開閉を検知する検知手段である。制御装置8は、一定時間当たりの、すなわち、予め設定された基準時間当たりの、扉開閉検知スイッチ12により検知された野菜室扉9の開閉回数を計数している。この際の基準時間は、例えば非照射工程の継続時間ΔT2とする。そして、制御装置8は、一定時間当たり野菜室扉9が開閉された回数が予め設定された回数以下である時間帯に、非照射工程を実施するように発光部14を制御する。
冷蔵庫1の扉は、食事の準備又は買い物前後等に開閉が多くなり、使用者が寝ている間又は外出中等には開閉されない。そのため、日常生活において扉開閉回数の変化は1日の中でパターン化され、予測することができる。そこで、制御装置8は、野菜室扉9の開閉回数を計数し、一定時間当たりの扉開閉回数の少ない時間帯を、図示しない記憶部等に記憶する。そして、次の日以降における記憶した時間帯、あるいは、時間帯を記憶した24時間後に非照射工程を開始することで、開閉回数の少ない時間帯に非照射工程を実施することができる。
非照射工程の途中で野菜室扉9が開閉されると、冷蔵庫1の外の光の影響により保存している青果物の概日リズムの位相が変化してしまう可能性がある。そこで、野菜室扉9の開閉回数が少ない時間帯に非照射工程を実施することで、下段収納ケース10内の青果物に光が照射されない暗期を確保することができ、概日リズムにあった光照射制御を効率的に行うことができる。
なお、冷蔵室扉7に設置された操作パネル6の操作部6aを操作することによって、使用者が、発光部14からの光照射制御の実施と停止(発光部14を常に消灯する)とを切り替えることができるようにしてもよい。操作パネル6により使用者が発光部14を点灯させる制御を実施するか否かを選択できるようにすることで、青果物をあまり保存しないとき又は長期間使用しないとき等に、停止を選択し発光部14を常に消灯させ、エネルギー消費量の低減を図るとともに通常の冷蔵庫1と同様の使い勝手を提供することができる。
また、光照射制御の実施中には、操作パネル6の表示部6bに「光照射中」等の表示を行うようにしてもよい。さらに、表示部6bに、可視光照射工程中(明期)に「点灯中」、非照射工程中(暗期)に「消灯中」等の表示を表示部6bにしてもよい。さらに、庫内(野菜室500内)の光の状態を、自然界の光の1日に置き換えた表示を表示部6bしてもよい。具体的に例えば、光照射制御で実施中の工程に合わせて、照射工程中に「昼」、非照射工程中に「夜」等の表示を表示部6bにしてもよい。このようにすることで、使用者に庫内の光の状態を報知することができ、利便性、満足感を向上させることができる。加えて、非照射工程実施中に不要な扉の開閉をしない等の注意を使用者に促すこともできる。
なお、操作パネル6は、冷蔵庫1の外側に設置するのに限らず、庫内(貯蔵室内)に設置されていてもよい。また、冷蔵庫1に通信手段を設け、電気通信回線等を介して、携帯情報端末(スマートフォンを含む携帯電話、タブレット端末等)により、冷蔵庫1の制御装置8に指令を伝えたり、冷蔵庫1の情報を受信して表示したりしてもよい。すなわち、携帯情報端末に操作パネル6の操作部6a及び表示部6bの機能の一方又は両方を備えるようにしてもよい。
以上のように構成された冷蔵庫は、食品を保存する貯蔵室である野菜室500と、貯蔵室の内部に可視光を照射可能な発光部14と、を備えている。また、発光部14は、可視光領域の第1の波長を中心波長とする光を照射する第1の光源16aと、第1の波長より短い可視光領域の第2の波長を中心波長とする光を照射する第2の光源16bと、を備えている。そして、発光部14は、光を照射する照射工程において、第1の光源16aから第1の放射強度で光を照射し、同時に、第2の光源16bから第1の放射強度と異なる第2の放射強度で光を照射する。
ここでは、特に、第2の放射強度は第1の放射強度より低く、具体的には、第1の放射強度と第2の放射強度との比が2:1である。このため、より少ない光放射エネルギー量で一定の光合成を起こさせることができ、余分なエネルギーを消費することなく光放射エネルギーを効率的に活用して、保存中の野菜類等(特に葉菜類)の青果物の光合成を促進し、栄養素の生成を促進したり、貯蔵性を向上させたりすることができる。
実施の形態2.
図14から図17は、この発明の実施の形態2に係るもので、図14は冷蔵庫が備える発光部の構成を示す図、図15は冷蔵庫の発光部が備える各光源の光照射制御のタイムチャート、図16は冷蔵庫の光照射制御の流れを示すフロー図、図17は複数の光照射条件下で3日間キャベツを保存した場合のビタミンC量の比較の一例を示す図である。
ここで説明する実施の形態2は、前述した実施の形態1の構成に加えて、発光部14に第3の光源16cを設けるようにしたものである。そして、照射工程において、第1の光源16aから第3の光源16cの全てを点灯する第1の照射工程と、第3の光源16cを消灯して第1の光源16a及び第2の光源16bだけを点灯する第2の照射工程の2つの工程を含むようにしたものである。
以下、この実施の形態2に係る冷蔵庫について、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
すなわち、図14に示すように、発光部14は、第1の光源16a及び第2の光源16bに加えて、第3の光源16cをさらに備えている。第3の光源16cは、第1の光源16a及び第2の光源16bと同じく可視光源である。これら3種の光源は、それぞれ独立して点灯及び消灯することができる。
第3の光源16cは、第3の波長を中心波長とする光を照射する。第3の波長は可視光領域に属する。第3の波長は、第1の波長及び第2の波長のいずれとも異なっている。ここでは、第3の波長は第2の波長より短い(したがって、当然に第1の波長より短い)。具体的には、第3の光源16cの中心波長である第3の波長は、400nm以上500nm以下である。すなわち、第3の光源16cから照射される光は青色である。第3の光源16cとして具体的に例えば、青色LEDを用いることができる。
第3の光源16cは第3の放射強度で光を照射する。第3の放射強度は、第1の放射強度及び第2の放射強度のいずれとも異なる強度である。ここでは、第3の放射強度は、第1の放射強度及び第2の放射強度のいずれよりも低い。具体的には、第1の放射強度と第3の放射強度との比が5:1になっている。第1の放射強度と第2の放射強度との比は、実施の形態1と同じく2:1である。したがって、第1の放射強度、第2の放射強度と第3の放射強度の比は、10:5:2になっている。
発光部14に設けられる第1の光源16a、第2の光源16b及び第3の光源16cを構成する各素子の光量及び個数は、第1の光源16aから第3の光源16cの放射強度が上述したように関係を満たすことができるように選定されている。具体的にここでは、発光部14には、第1の光源16aを構成する素子が2個設けられ、第2の光源16b、第3の光源16cを構成する素子がそれぞれ1個ずつ設けられている。
次に、図15を参照しながら、制御装置8による発光部14の発光動作制御について説明する。制御装置8は、発光部14から可視光を含む光を照射させる照射工程と、発光部14から可視光を含む光を照射させない非照射工程とを交互に繰り返すように発光部14の動作を制御する。照射工程では、第1の光源16a、第2の光源16b及び第3の光源16cの少なくともいずれかが点灯される。非照射工程では、第1の光源16a、第2の光源16b及び第3の光源16cのいずれも点灯されない。
照射工程は、さらに2つの工程に分けられる。照射工程では、まず第1の照射工程が実施され、次に第2の照射工程が実施される。すなわち、制御装置8は、照射工程において、第1の照射工程と第2の照射工程とを実施するように発光部14を制御する。第1の照射工程では、制御装置8は、第1の光源16a、第2の光源16b及び第3の光源16cの全てから光を照射させる。すなわち、赤色光と緑色光と青色光とが照射される。第2の照射工程では、制御装置8は、第1の光源16a及び第2の光源16bから光を照射させ、第3の光源16cは消灯される。すなわち、赤色光及び緑色光が照射され、青色光は照射されない。
各工程の継続時間は予め設定されている。これらについてはそれぞれ、第1の照射工程の継続時間はΔT1、第2の照射工程の継続時間はΔT2、非照射工程の継続時間はΔT3とする。
このように、制御装置8は、第1の照射工程、第2の照射工程、非照射工程の順で実施するように発光部14を制御する。そして、非照射工程の終了後は再び可視光照射工程すなわち第1の照射工程から前述の順で各工程を繰り返して実施する。したがって、それぞれの工程を順に1回ずつ行う1周期にかかる時間ΔTは、ΔT1、ΔT2及びΔT3の合計となる。また、可視光照射工程の継続時間は、ΔT1及びΔT2の合計となる。
制御装置8は、可視光照射工程と非照射工程とが、24時間以下の周期で交互に繰り返されるように発光部14を制御する。すなわち、ΔTは24時間以下となるように設定される。また、非照射工程の継続時間ΔT3は、可視光照射工程の継続時間以下となるように設定される。すなわち、非照射工程の継続時間ΔT3は、第1の照射工程の継続時間ΔT1と第2の照射工程の継続時間ΔT2との合計時間以下となるように設定される。さらに、第1の照射工程の継続時間ΔT1は、第2の照射工程の継続時間ΔT2以下となるように設定される。以上のような条件を満たす各工程の継続時間の一例として、具体的には、ΔT1を2時間、ΔT2を10時間、そして、ΔT3を12時間に設定する。この場合のΔTは24時間となる。
以上のように構成された冷蔵庫1が備える野菜室500の発光部14の制御に係る一連の流れについて、図16のフロー図を参照しながら説明する。冷蔵庫1の電源が投入されると、まず、ステップS201において、制御装置8は、発光部14の第1の光源16a、第2の光源16b及び第3の光源16cを点灯させる。続くステップS202において、制御装置8は、経過時間を計測するタイマーtの値を0にリセットし、タイマーによる計時を開始する。
そして、続くステップS203において、制御装置8は、タイマーの経過時間tがΔT1になったか否かを確認する。タイマーの経過時間tがΔT1になっていなければ、タイマーの経過時間tがΔT1になるまでステップS203の確認を繰り返す。そして、タイマーの経過時間tがΔT1となれば、ステップS204へと進む。以上のステップS201からS203までが第1の照射工程である。
ステップS204においては、制御装置8は、発光部14の第3の光源16cを消灯させる。したがって、第1の光源16a及び第2の光源16bだけが点灯した状態となる。続くステップS205において、制御装置8は、経過時間を計測するタイマーtの値を0にリセットし、タイマーによる計時を開始する。
そして、続くステップS206において、制御装置8は、タイマーの経過時間tがΔT2になったか否かを確認する。タイマーの経過時間tがΔT2になっていなければ、タイマーの経過時間tがΔT2になるまでステップS206の確認を繰り返す。そして、タイマーの経過時間tがΔT2となれば、ステップS207へと進む。以上のステップS204からS206までが第2の照射工程である。
ステップS207においては、制御装置8は、発光部14の第1の光源16a及び第2の光源16bを消灯させる。したがって、第1の光源16a、第2の光源16b及び第3の光源16cの全てが消灯した状態となる。そして、ステップS208へと進み、制御装置8は、経過時間を計測するタイマーtの値を0にリセットし、タイマーによる計時を開始する。
続くステップS209において、制御装置8は、タイマーの経過時間tがΔT3になったか否かを確認する。タイマーの経過時間tがΔT3になっていなければ、タイマーの経過時間tがΔT3になるまでステップS209の確認を繰り返す。そして、タイマーの経過時間tがΔT3となれば、ステップS201へと戻り、以上のステップを繰り返し実行する。以上のステップS207からS209までが非照射工程となる。
なお、他の構成及び動作については実施の形態1と同様であって、その詳細説明は省略する。
次に、以上のような発光部14での光照射により期待される作用について説明する。まず、この発明の実施の形態2においては、第1の光源16aは、赤色光を第1の放射強度で照射する。また、第2の光源16bは、緑色光を第2の放射強度で光を照射する。そして、第3の光源16cは、青色光を第3の放射強度で照射する。ここでは、第3の放射強度は第1及び第2の放射強度より低く、具体的には、第1、第2及び第3の放射強度の比は10:5:2になっている。
そして、光を照射する照射工程において、発光部14は、第1の光源16aから第1の放射強度で光を照射し、同時に、第2の光源16bから第2の放射強度で光を照射し、さらに同時に、第3の光源16cから第3の放射強度で光を照射する。実施の形態1で説明したように、照射される光の波長が長いほど、光に含まれている光量子の数がより多くなる。したがって、より小さい合計放射エネルギーでもって、より多くの光量子束密度を得ることができ、光を照射した野菜類の光合成を効率的に促進することが可能である。
また、前述したように、クロロフィルの吸収スペクトルは、赤色(660nm近辺)の他に青色(450nm近辺)にも光吸収ピークがあり、この波長が光合成に特に有効である。また、青色光には、植物の気孔を開く作用がある。そこで、光を照射する明期の初期段階において青色を含む光を照射することで、青果物の気孔を開くことができる。そして、青果物の気孔を開いてから明期を継続することで、青果物は空気中の二酸化炭素を十分に取り込むことができ、効率的に光合成を行うことができる。一方で、青色光には、発芽及び開花も促進させてしまう作用もある。このため、青果物の長期保存を目的とする場合には青色光を照射する時間はなるべく短くした方がよい。
そこで、光合成を促進する可視光照射工程において、まず第1の照射工程で第3の光源16cを点灯して青色を含む光を照射した後、第2の照射工程で第3の光源16cを消灯して青色を含まない光を照射するようにすることで、下段収納ケース10内の青果物の気孔を開口した後に光合成を行わせることができ、下段収納ケース10内の青果物の光合成をより促進することが可能である。また、この際に、青色を含む光を照射する第1の照射工程を、青色を含まない光を照射する第2の照射工程より短くすることで、発芽及び開花をなるべく促進することなく、かつ、十分な気孔の開口作用を得ることができる。
ここで、図17を参照しながら、以上で説明したような複数の異なる光照射条件下で青果物を保存した場合に、青果物に含まれる栄養素(ビタミンC)の量にどのような差異が生じるのかについて、具体的な比較例を挙げて説明する。この図17は、複数の異なる光照射条件下でキャベツを3日間保存した後のビタミンC量を比較したグラフである。ビタミンC量の表現方法、光照射の条件、及び、非照射時の結果については、図12と同じであるため説明を省略する。
光を照射する時間すなわち明期と光を照射しない時間すなわち暗期とを設け、概日リズムに対応した光照射を行った場合、保存後のビタミンCは増加している。そして、12時間の明期において赤色光と緑色とを照射した場合(図17の中央のグラフ)に比較して、12時間の明期の初期の2時間にさらに青色光を照射した場合(図17の最も右のグラフ)の方が、保存後のビタミンCの増加量が多くなる結果となることが分かる。
以上のように構成された冷蔵庫においては、実施の形態1と同様の効果を奏することができるのに加えて、発芽及び開花をなるべく促進することなく、かつ、十分な気孔の開口作用を得ることができ、さらに効率的に光合成による栄養素の生成を促進したり、余分な蒸散を抑制したりして、野菜を高品質に保存することができる。
実施の形態3.
図18は、この発明の実施の形態3に係るもので、冷蔵庫が備える発光部の構成を示す図である。
ここで説明する実施の形態3は、前述した実施の形態1又は実施の形態2の構成において、第2の放射強度すなわち緑色光の放射強度を、第1の放射強度すなわち赤色光の放射強度より高くしたものである。
以下、この実施の形態3に係る冷蔵庫について、実施の形態2の構成を基にして、実施の形態2との相違点を中心に説明する。
すなわち、図18に示すように、発光部14は、第1の光源16a、第2の光源16b及び第3の光源16cを備えている。これら3種の光源は、いずれも可視光源であり、それぞれ独立して点灯及び消灯することができる。
第1の光源16a、第2の光源16b及び第3の光源16cは、第1の波長、第2の波長及び第3の波長をそれぞれ中心波長とする光を照射する。具体的には、第1の波長は500nm以上700nm以下(好ましくは600nm以上700nm以下)、第2の波長は500nm以上560nm以下、第3の波長は400nm以上500nm以下である。したがって、第1の光源16aから照射される光は赤色、第2の光源16bから照射される光は緑色、第3の光源16cから照射される光は青色である。
第1の光源16a、第2の光源16b及び第3の光源16cは、それぞれ第1の放射強度、第2の放射強度及び第3の放射強度で光を照射する。ここでは、実施の形態1及び実施の形態2とは異なり、第2の放射強度は第1の放射強度より高い。具体的に例えば、第1の放射強度と第2の放射強度との比は5:6になっている。また、第3の放射強度が、第1の放射強度及び第2の放射強度のいずれよりも低い点は実施の形態2と同様である。具体的には、第1の放射強度と第3の放射強度との比は、実施の形態2と同じく5:1になっている。したがって、第1の放射強度、第2の放射強度と第3の放射強度の比は、5:6:1になっている。
発光部14に設けられる第1の光源16a、第2の光源16b及び第3の光源16cを構成する各素子の光量及び個数は、第1の光源16aから第3の光源16cの放射強度が上述したように関係を満たすことができるように選定されている。具体的にここでは、発光部14には、第2の光源16bを構成する素子が2個設けられ、第1の光源16a、第3の光源16cを構成する素子がそれぞれ1個ずつ設けられている。
光を照射工程において、発光部14は、第1の光源16aから第1の放射強度で光を照射し、同時に、第2の光源16bから第2の放射強度で光を照射し、さらに同時に、第3の光源16cから第3の放射強度で光を照射する。
なお、他の構成及び動作については実施の形態1又は実施の形態2と同様であって、その詳細説明は省略する。
ここで、第1の光源16a、第2の光源16b及び第3の光源16cは、高強度の光を照射するものである。この場合、光を受けた青果物(野菜類)は、葉の表面側のクロロフィルでは光合成が光飽和し、内部・裏面側のクロロフィルは光飽和していない状態になりやすい。この状態で、第1の光源16a(赤色)の放射エネルギーを高くすると、赤色は葉での吸収率が比較的高いため、表面側のクロロフィルで吸収される。しかし、葉の表面側では光合成が光飽和しているため、赤色光のエネルギーのほとんどは熱として放散されてしまう。
一方、光源16b(緑色LED)は、葉での吸収率が比較的低く、光飽和していない葉の内部及び裏側のクロロフィルを活性化させることができ、光合成を促進することが可能である。そこで、第2の放射強度は第1の放射強度より高くし、すなわち、第2の光源16b(緑色)の放射エネルギーを高くすることで、光源からの放射エネルギーを無駄にすることなく、効率的に光合成を行わせることができる。
以上のように構成された冷蔵庫も、食品を保存する貯蔵室である野菜室500と、貯蔵室の内部に可視光を照射可能な発光部14と、を備えている。また、発光部14は、可視光領域の第1の波長を中心波長とする光を照射する第1の光源16aと、第1の波長より短い可視光領域の第2の波長を中心波長とする光を照射する第2の光源16bと、を備えている。そして、発光部14は、光を照射する照射工程において、第1の光源16aから第1の放射強度で光を照射し、同時に、第2の光源16bから第1の放射強度と異なる第2の放射強度で光を照射する。
ここでは、特に、第2の放射強度は第1の放射強度より高く、具体的には、第1の放射強度と第2の放射強度との比が5:6である。このため、熱に転換されてしまう無駄な光放射エネルギー量を抑制し、余分なエネルギーを消費することなく光放射エネルギーを効率的に活用して、保存中の野菜類等(特に葉菜類)の青果物の光合成を促進し、栄養素の生成を促進したり、貯蔵性を向上させたりすることができる。