JP6400981B2 - タラロマイセス属に属する種の検出に用いられるオリゴヌクレオチド及びプライマー対、並びにタラロマイセス属に属する種の検出キット及び検出方法 - Google Patents
タラロマイセス属に属する種の検出に用いられるオリゴヌクレオチド及びプライマー対、並びにタラロマイセス属に属する種の検出キット及び検出方法 Download PDFInfo
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Description
(1)タラロマイセス属に属する種の検出に用いられるオリゴヌクレオチドであって、
タラロマイセス マクロスポラスを検出する場合に用いられる下記(A)及び下記(B)のいずれか一方の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又はタラロマイセス トラキスペルムスを検出する場合に用いられる下記(C)及び下記(D)の塩基配列のいずれか一方の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド。
(A)配列番号1に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(B)配列番号2に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(C)配列番号3に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(D)配列番号4に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(2)タラロマイセス属に属する種の検出に用いられるオリゴヌクレオチドであって、
タラロマイセス マクロスポラス又はタラロマイセス トラキスペルムスのイソクエン酸リアーゼをコードする遺伝子領域に種特異的にハイブリダイズすることが可能なオリゴヌクレオチド。
(3)(2)に記載のタラロマイセス属に属する種の検出に用いられるオリゴヌクレオチドであって、
タラロマイセス マクロスポラスを検出する場合に用いられる下記(I)及び下記(J)のいずれか一方の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又はタラロマイセス トラキスペルムスを検出する場合に用いられる下記(K)及び下記(L)の塩基配列のいずれか一方の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド。
(I)配列番号9に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(J)配列番号10に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(K)配列番号11に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(L)配列番号12に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(4)タラロマイセス属に属する種の検出に用いられるプライマー対であって、
タラロマイセス マクロスポラスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(E)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(F)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対若しくは下記(M)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(N)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対、又はタラロマイセス トラキスペルムスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(G)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(H)の塩基配列でそれぞれ表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対若しくは下記(O)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(P)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対。
(E)配列番号1に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(F)配列番号2に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(G)配列番号3に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(H)配列番号4に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(M)配列番号9に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(N)配列番号10に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(O)配列番号11に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(P)配列番号12に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(5)(4)に記載のタラロマイセス属に属する種の検出に用いられるプライマー対であって、
タラロマイセス マクロスポラスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(e)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(f)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対若しくは下記(m)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(n)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対、又はタラロマイセス トラキスペルムスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(g)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(h)の塩基配列でそれぞれ表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対若しくは下記(o)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(p)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対。
(e)配列番号1に記載の塩基配列
(f)配列番号2に記載の塩基配列
(g)配列番号3に記載の塩基配列
(h)配列番号4に記載の塩基配列
(m)配列番号9に記載の塩基配列
(n)配列番号10に記載の塩基配列
(o)配列番号11に記載の塩基配列
(p)配列番号12に記載の塩基配列
(6)タラロマイセス属に属する種の検出用キットであって、
タラロマイセス マクロスポラスを検出する場合に用いられる前記(A)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、タラロマイセス マクロスポラスを検出する場合に用いられる前記(B)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、タラロマイセス マクロスポラスを検出する場合に用いられる前記(I)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、タラロマイセス マクロスポラスを検出する場合に用いられる前記(J)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、タラロマイセス トラキスペルムスを検出する場合に用いられる前記(C)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、タラロマイセス トラキスペルムスを検出する場合に用いられる前記(D)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、タラロマイセス トラキスペルムスを検出する場合に用いられる前記(K)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、及びタラロマイセス トラキスペルムスを検出する場合に用いられる前記(L)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドを含む
タラロマイセス属に属する種の検出用キット。
(7)(6)に記載のタラロマイセス属に属する種の検出用キットであって、
タラロマイセス マクロスポラスをPCR法により検出する場合に用いられる前記(E)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び前記(F)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対、タラロマイセス マクロスポラスをPCR法により検出する場合に用いられる前記(M)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び前記(N)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対、タラロマイセス トラキスペルムスをPCR法により検出する場合に用いられる前記(G)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び前記(H)の塩基配列でそれぞれ表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対、並びにタラロマイセス トラキスペルムスをPCR法により検出する場合に用いられる前記(O)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び前記(P)の塩基配列でそれぞれ表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対のうちの少なくとも一つのプライマー対を含む
タラロマイセス属に属する種の検出用キット。
(8)(7)に記載のタラロマイセス属に属する種の検出方法であって、
タラロマイセス マクロスポラスを検出する場合は前記(E)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び前記(F)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、タラロマイセス トラキスペルムスを検出する場合は前記(G)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び前記(H)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行うことを特徴とする
タラロマイセス属に属する種の検出方法。
(9)タラロマイセス属に属する種の検出方法であって、
タラロマイセス マクロスポラスを検出する場合は前記(A)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、前記(B)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、前記(I)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び前記(J)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも一つを用い、タラロマイセス トラキスペルムスを検出する場合は前記(C)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、前記(D)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、前記(K)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び前記(L)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも一つを用いることを特徴とする
タラロマイセス属に属する種の検出方法。
(10)(9)に記載のタラロマイセス属に属する種の検出方法であって、
タラロマイセス マクロスポラスを検出する場合は前記(E)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び前記(F)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行うステップ、並びに前記(M)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び前記(N)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行うステップのうち少なくとも一方のステップを含み、タラロマイセス トラキスペルムスを検出する場合は前記(G)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び前記(H)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行うステップ、並びに前記(O)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び前記(P)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行うステップのうち少なくとも一方のステップを含むことを特徴とする
タラロマイセス属に属する種の検出方法。
(11)(10)に記載のタラロマイセス属に属する種の検出方法であって、
タラロマイセス マクロスポラスを検出する場合は前記(e)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び前記(f)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行うステップ、並びに前記(m)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び前記(n)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行うステップのうち少なくとも一方のステップを含み、タラロマイセス トラキスペルムスを検出する場合は前記(g)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び前記(h)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行うステップ、並びに前記(o)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び前記(p)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行うステップのうち少なくとも一方のステップを含むことを特徴とする
タラロマイセス属に属する種の検出方法、
である。
本発明は、タラロマイセス属に属する種を特異的に検出するために用いられるオリゴヌクレオチド及びプライマー対、並びにタラロマイセス属に属する種を特異的に検出することが可能な検出キット及び検出方法を提供するものである。従来は、タラロマイセス属に属する種を特異的に検出することが困難であった(特許文献1及び特許文献2参照)。そこで、本発明の発明者らは、カビ・キノコに特異的なハイドロフォビン遺伝子、微生物の一部と植物が保持するイソクエン酸リアーゼ遺伝子(後述する)に着目することで、タラロマイセス属に属する種を特異的に検出する技術を見出した。
タラロマイセス属は、耐熱性を有するカビの一種であって、子のう菌類に属する。子のう菌類は、子のう胞子という、硬い種子がさらに硬い殻に包まれたような強固な状態で土壌中に広く存在する菌類である。タラロマイセス属のカビの中には、90℃以上でも耐熱性を有するものがいるため、100℃以下の低温で殺菌することが一般的な果実缶詰やジャム等の果実加工食品、あるいはジュースや緑茶飲料等の清涼飲料水の製造上、問題となる。
タラロマイセス属に属する種は、タラロマイセス属に属するカビであって、具体的には、タラロマイセス マクロスポラス、タラロマイセス トラキスペルムス、タラロマイセス フラバス(Talaromyces flavus)、タラロマイセス ルテウス(Talaromyces luteus)、タラロマイセス ウォルトマンニー(Talaromyces wortmannii)、タラロマイセス バシリスポラス(Talaromyces bacillisporus)等が挙げられる。
本発明では、タラロマイセス属に属する種のうち、タラロマイセス マクロスポラス、タラロマイセス トラキスペルムスを種特異的に検出する技術を提供する。タラロマイセス マクロスポラス及びタラロマイセス トラキスペルムスは、他のタラロマイセス属に属する菌と比較しても、果実缶詰やジャム等の果実加工食品、あるいはジュースや緑茶飲料等の清涼飲料水から検出される可能性が高い。これに加えて、他のタラロマイセス属に属する菌と比較しても耐熱性及びD値が高く、100℃以下の低温加熱による滅殺は困難である(非特許文献1 Table1参照)。このため、上記2つの菌を種特異的に検出することは、食品の安全性を確保する上でもきわめて重要である。
ハイドロフォビン遺伝子は、本発明に係るオリゴヌクレオチドやプライマー対を用いた検出の標的となる遺伝子のうちの一つである。ハイドロフォビン遺伝子は、カビ・キノコに特異的であると考えられている遺伝子であって、ハイドロフォビンという低分子量タンパク質をコードする。ハイドロフォビンは、空気中に菌糸、子実体等の構造体を形成するカビ・キノコなどの細胞表層に普遍的に存在し、その表層に撥水性を与える機能等を有する。
イソクエン酸リアーゼは、グリオキシル酸回路の反応を触媒する酵素の一つであり、グリオキシル酸回路に特有の酵素である。グリオキシル酸回路は、微生物の一部や植物に見られる代謝回路であり、イソクエン酸からリンゴ酸とコハク酸を生成し、さらにオキサロ酢酸を生成することができる。("Life and death in a macrophage: role of the glyoxylate cycle in virulence" Eukaryotic Cell, 2002, vol.1 (5) , pp.657-662 参照)
イソクエン酸リアーゼをコードする遺伝子領域は、本発明に係るオリゴヌクレオチド及びプライマー対がハイブリダイズすることが可能な遺伝子領域の一つである。なお以下の説明において、「イソクエン酸リアーゼをコードする遺伝子」を単に「イソクエン酸リアーゼ遺伝子」ともいうものとする。
本発明に係るオリゴヌクレオチドは、DNAが10塩基〜30塩基、15塩基〜25塩基、さらに18〜20塩基結合したものをいう。本発明に係るオリゴヌクレオチドは、タラロマイセス属に属する種の検出に用いられるオリゴヌクレオチドであって、より具体的には、タラロマイセス マクロスポラス又はタラロマイセス トラキスペルムスの種特異的な検出に用いるものである。
タラロマイセス マクロスポラスを検出する場合に用いられるオリゴヌクレオチドは、下記(A)及び(B)の塩基配列のいずれか一方の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は下記(I)及び下記(J)のいずれか一方の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドにより、タラロマイセス マクロスポラスを種特異的に検出することが可能となる。
(A)配列番号1に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(B)配列番号2に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(I)配列番号9に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(J)配列番号10に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
タラロマイセス トラキスペルムスを検出する場合に用いられるオリゴヌクレオチドは、下記(C)及び(D)の塩基配列のいずれか一方の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は下記(K)及び下記(L)の塩基配列のいずれか一方の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドである。当該オリゴヌクレオチドにより、タラロマイセス トラキスペルムスを種特異的に検出することが可能となる。
(C)配列番号3に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(D)配列番号4に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(K)配列番号11に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(L)配列番号12に記載の塩基配列若しくはその相補配列、又は当該塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
配列番号1及び2に記載の塩基配列は、タラロマイセス マクロスポラスのハイドロフォビン遺伝子内の所定の塩基配列と相補的な塩基配列である。同様に、配列番号3及び4に記載の塩基配列は、タラロマイセス トラキスペルムスのハイドロフォビン遺伝子内の所定の塩基配列と相補的な塩基配列である。
配列番号9及び10に記載の塩基配列は、タラロマイセス マクロスポラスのイソクエン酸リアーゼ遺伝子内の所定の塩基配列と相補的な塩基配列である。同様に、配列番号11及び12に記載の塩基配列は、タラロマイセス トラキスペルムスのイソクエン酸リアーゼ遺伝子内の所定の塩基配列と相補的な塩基配列である。
本発明に係る相補配列とは、ある塩基配列の相補鎖となり得る塩基配列をいう。配列番号1〜4に記載の塩基配列の相補配列は、配列番号1〜4に記載の塩基配列と同様に、タラロマイセス マクロスポラス又はタラロマイセス トラキスペルムスのハイドロフォビン遺伝子領域に種特異的にハイブリダイズすることが可能である。
同様に、配列番号9〜12に記載の塩基配列の相補配列は、タラロマイセス マクロスポラス又はタラロマイセス トラキスペルムスのイソクエン酸リアーゼ遺伝子領域に種特異的にハイブリダイズすることが可能である。
したがって、本発明に係る相補配列は、本発明に係るオリゴヌクレオチド及びプライマー対として用いられ得る。
本発明において「塩基配列若しくはその相補配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラス又はタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列」とは、当該塩基配列若しくはその相補配列と実質的に相同な塩基配列をいう。より具体的には、1〜3個の塩基が欠失、置換若しくは付加されている塩基配列であって、タラロマイセス マクロスポラス又はタラロマイセス トラキスペルムスを種特異的に検出することが可能な塩基配列をいうものとする。
本発明に係るプライマー対は、2本のオリゴヌクレオチドの組み合わせであり、PCR法におけるプライマー対として用いられるものである。本発明に係るプライマー対は、タラロマイセス属に属する種の検出に用いられるプライマー対であって、より具体的には、タラロマイセス マクロスポラス又はタラロマイセス トラキスペルムスの種特異的な検出に用いるものである。
タラロマイセス マクロスポラスをPCR法により検出する場合に用いられるプライマー対は、下記(E)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(F)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対、又は下記(M)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(N)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対とすることができる。当該プライマー対により、タラロマイセス マクロスポラスを迅速かつ種特異的に検出することが可能となる。
(E)配列番号1に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(F)配列番号2に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(M)配列番号9に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(N)配列番号10に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(e)配列番号1に記載の塩基配列
(f)配列番号2に記載の塩基配列
(m)配列番号9に記載の塩基配列
(n)配列番号10に記載の塩基配列
タラロマイセス トラキスペルムスをPCR法により検出する場合に用いられるプライマー対は、下記(G)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(H)の塩基配列でそれぞれ表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対、又は下記(O)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(P)の塩基配列でそれぞれ表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対とすることができる。当該プライマー対により、タラロマイセス トラキスペルムスを迅速かつ種特異的に検出することが可能となる。
(G)配列番号3に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(H)配列番号4に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(O)配列番号11に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(P)配列番号12に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(g)配列番号3に記載の塩基配列
(h)配列番号4に記載の塩基配列
(o)配列番号11に記載の塩基配列
(p)配列番号12に記載の塩基配列
タラロマイセス マクロスポラスをPCR法により検出する場合には、例えば、上記(E)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び上記(F)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対のうち、上記(E)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとし、上記(F)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとすることができる。また、例えば、上記(e)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び上記(f)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対のうち、上記(e)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとし、上記(f)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとすることができる。
同様に、上記(M)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び上記(N)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対のうち、上記(M)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとし、上記(N)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとすることができる。また、例えば、上記(m)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び上記(n)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対のうち、上記(m)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとし、上記(n)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとすることができる。
同様に、上記(O)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び上記(P)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対のうち、上記(O)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとし、上記(P)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとすることができる。また、例えば、上記(o)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び上記(p)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対のうち、上記(o)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとし、上記(p)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとすることができる。
本発明に係るタラロマイセス属に属する種の検出用キットは、上記(A)〜(D)、上記(I)〜(L)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、及び上記(E)〜(H)、上記(M)〜(P)、上記(e)〜(h)、上記(m)〜(p)の塩基配列で表されるプライマー対のうちの少なくとも一つを含み、タラロマイセス マクロスポラス及び/又はタラロマイセス トラキスペルムスを検出するものである。本発明の検出用キットは、これらをプライマーや核酸プローブとして含み、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法に用いるキットや、ハイブリダイゼーション法に用いるキット等、分子生物学的な種々の検出方法に用いるキットとして構成され得る。
あるいは、本発明に係る検出用キットは、タラロマイセス マクロスポラスを検出する場合に用いられる上記(I)及び上記(J)のいずれか一方の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、並びにタラロマイセス トラキスペルムスを検出する場合に用いられる上記(K)及び上記(L)の塩基配列のいずれか一方の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドを含むものであってもよい。
本発明に係るタラロマイセス属に属する種の検出方法は、上記(A)〜(D)、上記(I)〜(L)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び上記(E)〜(H)、上記(M)〜(P)、上記(e)〜(h)、上記(m)〜(p)の塩基配列で表されるプライマー対のうちの少なくとも一つを用いて、タラロマイセス マクロスポラス及び/又はタラロマイセス トラキスペルムスを検出する方法である。本発明に係る検出方法は、検体から抽出した核酸と上記オリゴヌクレオチド等とを接触させることで、分子生物学的にタラロマイセス マクロスポラス及び/又はタラロマイセス トラキスペルムスを検出する方法とすることができる。このような検出方法の具体例としては、PCR法、ハイブリダイゼーション法、捕捉プローブを用いた標的核酸の捕捉等が挙げられる。
あるいは、上記プライマー対は、上記(m)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(n)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対であってもよく、上記(o)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(p)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対であってもよい。
本発明に係るPCR法は、例えば、テンプレートとしてDNAを用いたPCR法(以下、通常のPCR法とする)、RT−PCR法、real−time PCR法等を用いることができるが、通常のPCR法が好ましい。
本発明に係る検出方法は、検体から抽出された核酸を用いて、タラロマイセス属に属する種を検出することができる。すなわち、タラロマイセス マクロスポラスを検出する場合は、検体から抽出された核酸に上記(A)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、上記(B)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、上記(I)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、及び上記(J)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも一つをハイブリダイズさせる。また、タラロマイセス トラキスペルムスを検出する場合は、上記抽出された核酸に上記(C)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、上記(D)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、上記(K)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び上記(L)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも一つをハイブリダイズさせることで、タラロマイセス属に属する種を検出することができる。核酸は、例えばDNAを用いることができる。
本発明に係る検体としては、タラロマイセス属に属する菌の可能性がある菌株や、タラロマイセス属に属する菌を含んでいる可能性がある製造原料等が挙げられる。製造原料等は、食品の製造原料等が挙げられる。当該食品は、例えば、タラロマイセス属による汚染が問題となる、果実缶詰やジャム等の果実加工食品、ジュースや緑茶飲料等の清涼飲料水等であってもよい。
本発明は、さらに、検体に含まれるタラロマイセス属に属する種を同定する方法を提供することができる。本発明に係る同定方法は、検体から抽出した核酸に、以下のステップ(i)及びステップ(ii)の少なくとも一方のステップを含む。ステップ(i)は、上記(A)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、上記(B)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、上記(I)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、及び上記(J)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも一つをハイブリダイズさせることでタラロマイセス マクロスポラスを検出する。ステップ(ii)は、上記(C)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、上記(D)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、上記(K)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び上記(L)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも一つをハイブリダイズさせることでタラロマイセス トラキスペルムスを検出する。
本発明に係るオリゴヌクレオチド及びプライマー対は、いずれも、上記塩基配列を有することにより、タラロマイセス マクロスポラス及びタラロマイセス トラキスペルムス各々を種特異的に検出することができる。タラロマイセス マクロスポラス及びタラロマイセス トラキスペルムスは、上述のように、他のタラロマイセス属に属する菌と比較して、果実加工食品や清涼飲料水から検出される可能性が高いことに加え、耐熱性及びD値も高く、低温加熱による滅殺が難しい。したがって、これらの菌が検出された場合は、加熱殺菌等ではなく、製造原料の除去や製造環境の見直し等の処置を迅速に行う必要が生じる。本発明によれば、タラロマイセス マクロスポラス及びタラロマイセス トラキスペルムスを種特異的に検出することができるため、上記処置の実行を迅速かつ適切に判断することが可能となる。したがって、汚染の拡大を防止することができる。
タラロマイセス マクロスポラス検出用として、配列番号1及び2の塩基配列を有するPCR用のプライマー対を作成した。これらのプライマーは、ハイドロフォビン遺伝子をターゲットとして作成したものである。各プライマーは、オペロンバイオテクノロジー株式会社に合成依頼した。表1に、作成したプライマー対の塩基配列を示す。
タラロマイセス トラキスペルムス検出用のプライマーとして、配列番号3及び4の塩基配列を有するPCR用のプライマー対を作成した。これらのプライマーは、ハイドロフォビン遺伝子をターゲットとして作成したものである。各プライマーは、実施例1と同様にオペロンバイオテクノロジー株式会社に合成依頼した。表1に、作成したプライマー対の塩基配列を示す。
試験例1として、実施例1及び実施例2に係るプライマー対を用いて、検体である菌からタラロマイセス マクロスポラス及びタラロマイセス トラキスペルムスを種特異的に検出できるか否か確認した。
まず、検体からDNAを抽出し、DNA溶液を調製した。検体としては、表2及び表3に示す菌株を用いた。このうち、表2の1,2番及び表3の1,2,5,6番はタラロマイセス マクロスポラスに属する菌株であり、表2の3,4番及び表3の3,4,7,8番は、タラロマイセス トラキスペルムスに属する菌株である。これらの菌株は、独立行政法人 理化学研究所 バイオリソースセンター 微生物材料開発室(JCM)及び独立行政法人 製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター(NBRC)から入手した。
続いて、調整した45種類のDNA溶液と実施例1に係るプライマー対とをそれぞれ用いて、タラロマイセス マクロスポラス検出のためのPCRを行った。同様に、調整した45種類のDNA溶液と実施例2に係るプライマー対とを用いて、タラロマイセス トラキスペルムス検出のためのPCRを行った。
続いて、PCR反応液から5〜10μlを分取し、1.3%(1〜1.5%)濃度のアガロースゲルで電気泳動を行った。バッファーは、1×TAEバッファーを用いた。電気泳動後、アガロースゲルを常法に従って染色し、紫外線(UV)ライトボックス上にてアガロースゲルを撮像した。撮像された画像に基づいてPCR増幅産物を確認した。
図2は、実施例1の電気泳動像であり、図3は実施例2の電気泳動像である。また各図において、Aは表2に記載の各検体の結果を示し、Bは表3に記載の各検体の結果を示す。なお、表2及び表3に付した各菌株の番号と、図2及び図3の電気泳動像に付した各レーンの番号とはそれぞれ対応する。Mのレーンは、サイズマーカーを示す。
試験例2では、製造原料より単離した菌株を検体とし、試験例1と同様にタラロマイセス マクロスポラス及びタラロマイセス トラキスペルムスを種特異的に検出できるか否か確認した。
まず、検体である製造原料から菌株を単離してDNAを抽出し、DNA溶液を調製した。製造原料は、パインアップル、ラズベリー、ブルーベリー、イチゴ等であり、これから80℃で30分の加熱を行い、生残した菌株を単離した。単離した菌株は、形態観察及び塩基配列解析法により同定した。同定された菌株を表5に示す。表5に記載された菌株のうち、1,13番はタラロマイセス マクロスポラスに属する菌株であり、2,3,10番は、タラロマイセス トラキスペルムスに属する菌株である。
続いて、調整したDNA溶液と実施例1及び実施例2に係るプライマー対とを用いて、タラロマイセス マクロスポラス及びタラロマイセス トラキスペルムス検出のためのPCRを行った。本工程は、試験例1と同様であるため、説明を省略する。
続いて、サンプルチューブに入ったPCR反応液を、マイクロチップ電気泳動装置MCE−202MultiNA(島津製作所)にセットし、電気泳動を行った。電気泳動後、データ解析ソフトウェア(MultiNA Viewer)により、PCR増幅産物を確認した。
図4は、試験例2の電気泳動像であり、Aは実施例1、Bは実施例2の結果を示す。なお、図4の電気泳動像に付した各レーンの番号と、表5に付した各菌株の番号とはそれぞれ対応している。なお、M1は、高分子マーカを示し、M2は低分子マーカを示す。また、Pは、PCR反応液中のプライマーのピークを示す。
試験例3として、実施例1及び実施例2に係るプライマー対を用いたPCRにおけるタラロマイセス マクロスポラス及びタラロマイセス トラキスペルムスの検出限界を確認するため、検体から濃度の異なるDNA溶液を作成し、試験を行った。
まず、検体からDNAを抽出し、濃度の異なるDNA溶液を調製した。検体としては、タラロマイセス マクロスポラス JCM22818株と、タラロマイセス トラキスペルムスNBRC31757株とを用いた。これらの菌株の入手元は、試験例1と同様である。
続いて、試料1〜5のDNA溶液と実施例1に係るプライマー対とを用いて、タラロマイセス マクロスポラス検出のためのPCRを行った。また、試料1〜5のDNA溶液と実施例2に係るプライマー対とを用いて、タラロマイセス トラキスペルムス検出のためのPCRを行った。本工程は、試験例1と同様であるため、説明を省略する。
続いて、PCR増幅産物を確認するため、1.3%(1〜1.5%)濃度のアガロースゲルで電気泳動を行った。本工程も、試験例1と同様であるため、その説明を省略する。
図5は、試験例3の電気泳動像であり、Aは実施例1、Bは実施例2の結果を示す。なお、図5の電気泳動像に付した各レーンの番号と、表6に示す各試料の番号とはそれぞれ対応している。Mのレーンは、サイズマーカーを示す。
タラロマイセス マクロスポラス及びタラロマイセス トラキスペルムスのうちの少なくとも一方を検出するため、配列番号5及び6の塩基配列を有するPCR用のプライマー対を作成した。各プライマーは、オペロンバイオテクノロジー株式会社に合成依頼した。表7に、作成したプライマー対の塩基配列を示す。
タラロマイセス マクロスポラス検出用のプライマーとして、配列番号7及び8の塩基配列を有するPCR用のプライマー対を作成した。プライマーは、実施例1と同様にオペロンバイオテクノロジー株式会社に合成依頼した。表7に、作成したプライマーの塩基配列を示す。
試験例4として、比較例1に係るプライマー対を用いて、検体である菌からタラロマイセス マクロスポラス及びタラロマイセス トラキスペルムスのうちの一方を種特異的に検出できるか否か確認した。なお、本試験例は、試験例1と同様の流れで行ったため、重複している部分についてはその説明を省略する。
図6は、試験例4の電気泳動像であり、Aは表8に記載の菌株、Bは表9に記載の菌株の結果を示す。なお、表8及び表9に付した各菌株の番号と、図6A,Bの電気泳動像に付した各レーンの番号とはそれぞれ対応する。Mのレーンは、サイズマーカーを示す。
試験例5として、比較例2に係るプライマー対を用いて、検体である菌からタラロマイセス マクロスポラスを種特異的に検出できるか否か確認した。なお、本試験例は、試験例1及び試験例4と同様の流れで行ったため、重複している部分についてはその説明を省略する。
図7は、試験例5の電気泳動像であり、Aは表10に記載の菌株、Bは表11に記載の菌株の結果を示す。なお、表10及び表11に付した各菌株の番号と、図7A,Bの電気泳動像に付した各レーンの番号とはそれぞれ対応する。Mのレーンは、サイズマーカーを示す。
さらに、タラロマイセス マクロスポラス検出用として、配列番号9及び10の塩基配列を有するPCR用のプライマー対を作成した。これらのプライマーは、イソクエン酸リアーゼ遺伝子をターゲットとして作成したものである。各プライマーは、実施例1,2と同様にオペロンバイオテクノロジー株式会社に合成依頼した。表12に、作成したプライマー対の塩基配列を示す。
タラロマイセス トラキスペルムス検出用として、配列番号11及び12の塩基配列を有するPCR用のプライマー対を作成した。これらのプライマーは、イソクエン酸リアーゼ遺伝子をターゲットとして作成したものである。表12に、作成したプライマー対の塩基配列を示す。
試験例6として、実施例3及び実施例4に係るプライマー対を用いて、検体である菌からタラロマイセス マクロスポラス及びタラロマイセス トラキスペルムスを種特異的に検出できるか否か確認した。なお、試験例1と重複する部分については説明を省略する。
まず、検体からDNAを抽出し、試験例1と同様にDNA溶液を調整した。検体としては、表2及び表3に示す菌株を用いた。さらに、各菌株を、PDA(Potato Dextrose Agar)培地等にて、約25〜30℃、7〜10日間培養した。回収した菌株から、試験例1と同様に、DNAを抽出した。抽出したDNAは、10〜50ng/μlの濃度のDNA溶液として調製した。
続いて、調整した45種類のDNA溶液と実施例3に係るプライマー対とをそれぞれ用いて、タラロマイセス マクロスポラス検出のためのPCRを行った。同様に、調整した45種類のDNA溶液と実施例4に係るプライマー対とを用いて、タラロマイセス トラキスペルムス検出のためのPCRを行った。
続いて、PCR反応液から5〜10μlを分取し、試験例1と同様に、1.3%(1〜1.5%)濃度のアガロースゲルで電気泳動を行った。電気泳動後、試験例1と同様にアガロースゲルを撮像した。撮像された画像に基づいてPCR増幅産物を確認した。
図8は、実施例3の電気泳動像であり、図9は実施例4の電気泳動像である。また各図において、Aは表2に記載の各検体の結果を示し、Bは表3に記載の各検体の結果を示す。なお、表2及び表3に付した各菌株の番号と、図8及び図9の電気泳動像に付した各レーンの番号とはそれぞれ対応する。Mのレーンは、サイズマーカーを示す。
試験例7として、試験例3と同様に、実施例3及び実施例4に係るプライマー対を用いたPCRにおけるタラロマイセス マクロスポラス及びタラロマイセス トラキスペルムスの検出限界を確認するため、検体から濃度の異なるDNA溶液を作成し、試験を行った。なお、検体及び検体の調整方法は試験例3と同様であり、遺伝子増幅及び確認の方法は試験例6と同様であるため、説明を省略する。
図10は、試験例7の電気泳動像であり、Aは実施例3、Bは実施例4の結果を示す。なお、図10の電気泳動像に付した各レーンの番号と、表6に示す各試料の番号とはそれぞれ対応している。Mのレーンは、サイズマーカーを示す。
Claims (11)
- タラロマイセス属に属する種の検出に用いられるプライマー対であって、
タラロマイセス マクロスポラスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(E)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(F)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対。
(E)配列番号1に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(F)配列番号2に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列 - タラロマイセス属に属する種の検出に用いられるプライマー対であって、
タラロマイセス トラキスペルムスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(G)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(H)の塩基配列でそれぞれ表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対。
(G)配列番号3に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(H)配列番号4に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列 - タラロマイセス属に属する種の検出に用いられるプライマー対であって、
タラロマイセス マクロスポラスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(M)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(N)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対。
(M)配列番号9に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(N)配列番号10に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列 - タラロマイセス属に属する種の検出に用いられるプライマー対であって、
タラロマイセス トラキスペルムスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(O)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(P)の塩基配列でそれぞれ表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対。
(O)配列番号11に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(P)配列番号12に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列 - タラロマイセス マクロスポラスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(e)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(f)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対若しくは下記(m)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(n)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対、又はタラロマイセス トラキスペルムスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(g)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(h)の塩基配列でそれぞれ表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対若しくは下記(o)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(p)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対。
(e)配列番号1に記載の塩基配列
(f)配列番号2に記載の塩基配列
(g)配列番号3に記載の塩基配列
(h)配列番号4に記載の塩基配列
(m)配列番号9に記載の塩基配列
(n)配列番号10に記載の塩基配列
(o)配列番号11に記載の塩基配列
(p)配列番号12に記載の塩基配列 - タラロマイセス マクロスポラスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(E)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(F)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対を含む
タラロマイセス属に属する種の検出用キット。
(E)配列番号1に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(F)配列番号2に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列 - タラロマイセス トラキスペルムスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(G)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(H)の塩基配列でそれぞれ表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対を含む
タラロマイセス属に属する種の検出用キット。
(G)配列番号3に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(H)配列番号4に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列 - タラロマイセス マクロスポラスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(M)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(N)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対を含む
タラロマイセス属に属する種の検出用キット。
(M)配列番号9に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列
(N)配列番号10に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス マクロスポラスの検出が可能な塩基配列 - タラロマイセス トラキスペルムスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(O)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(P)の塩基配列でそれぞれ表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対を含む
タラロマイセス属に属する種の検出用キット。
(O)配列番号11に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列
(P)配列番号12に記載の塩基配列、又は当該塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加されておりかつタラロマイセス トラキスペルムスの検出が可能な塩基配列 - タラロマイセス マクロスポラスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(e)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び前記(f)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対、タラロマイセス マクロスポラスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(m)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(n)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対、タラロマイセス トラキスペルムスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(g)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(h)の塩基配列でそれぞれ表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対、並びにタラロマイセス トラキスペルムスをPCR法により検出する場合に用いられる下記(o)の塩基配列で表されたオリゴヌクレオチド及び下記(p)の塩基配列でそれぞれ表されたオリゴヌクレオチドからなるプライマー対のうちの少なくとも一つのプライマー対を含む
タラロマイセス属に属する種の検出用キット。
(e)配列番号1に記載の塩基配列
(f)配列番号2に記載の塩基配列
(g)配列番号3に記載の塩基配列
(h)配列番号4に記載の塩基配列
(m)配列番号9に記載の塩基配列
(n)配列番号10に記載の塩基配列
(o)配列番号11に記載の塩基配列
(p)配列番号12に記載の塩基配列 - タラロマイセス マクロスポラスを検出する場合は下記(e)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び下記(f)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行うステップ、並びに下記(m)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び下記(n)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行うステップのうち少なくとも一方のステップを含み、タラロマイセス トラキスペルムスを検出する場合は下記(g)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び下記(h)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行うステップ、並びに下記(o)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び下記(p)の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行うステップのうち少なくとも一方のステップを含むことを特徴とする
タラロマイセス属に属する種の検出方法。
(e)配列番号1に記載の塩基配列
(f)配列番号2に記載の塩基配列
(g)配列番号3に記載の塩基配列
(h)配列番号4に記載の塩基配列
(m)配列番号9に記載の塩基配列
(n)配列番号10に記載の塩基配列
(o)配列番号11に記載の塩基配列
(p)配列番号12に記載の塩基配列
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