JP6398911B2 - 永久磁石およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、保磁力の向上を図れる永久磁石とその製造方法に関する。
Nd等を用いた希土類磁石は非常に優れた磁気特性を発揮するが、稀少で高価な希土類元素(特にDy等)を使用するため、資源リスクが伴う。一方、フェライト磁石は、豊富なFeの酸化物からなるため資源リスクは殆どないが、磁気特性(特に保磁力)が不十分である。
このような観点から、それらの代替となる種々の永久磁石が検討されており、その一つとしてMnAl系磁石がある。これに関連する記載が、例えば下記の文献にある。
特開2001−217108号公報
Applied Physical Letter, 86, 122509 (2005).:SmCo系ナノコンポジット磁石 Journal of Alloys and compounds, 434-435, 611-613 (2007).
特許文献1は、Mn−B相とMn−Al相の両相を混在させることによって磁気特性の向上を図った Mn−B−Alからなる磁石組成物を提案している。
非特許文献1は、高保磁力の硬質磁性相と高飽和磁化の軟質磁性相とを複合化した磁石の一つとして、SmCo系ナノコンポジット磁石を提案している。しかし、このような異種相の複合化により、現実的に保磁力を向上させた報告例は未だ無い。このように、複合(組織)化による永久磁石の特性向上(特に保磁力の向上)が検討されているが、現実的に有効な提案は未だ殆どないのが実情である。
なお、非特許文献2には、永久磁石の組織の複合化とは無関係であるが、MnAl系永久磁石に関する記載がある。具体的にいうと、MnAl系永久磁石の主相となるL1型MnAl相(主相)が、非磁性相なAlMn相(γ相)とMn相(β相)へ相変態することを抑制するために、Cを微量添加する旨を提案している。この非特許文献2の記載からもわかるように、AlMn相(γ相)は非磁性材(フェロ磁性もフェリ磁性も示さない物質)と考えられてきた。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものである。すなわち、従来とは異なる複合化により、磁気特性(特に保磁力)の向上を図れる永久磁石と、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、これまで非磁性材と考えられていたAlMn相(γ相)が、実際には、磁化レベルは小さくてもフェロ磁性またはフェリ磁性を示す磁性材であることを発見した。そして、このAlMn相と強磁性材とを組合わせることにより、その強磁性材の結晶磁気異方性エネルギーを高め、実際に永久磁石の保磁力を大幅に向上させることに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べるような本発明を完成するに至った。
《永久磁石》
(1)本発明の永久磁石は、MnとAlの正方晶であるL1 型MnAl結晶粒からなる第一相と、該第一相の結晶粒とは異なるAlMn結晶粒からなる第二相とが混在しており、該第一相と該第二相は共にX線回折法により検出され、保磁力が13kOe以上であることを特徴とする。
(2)本発明の永久磁石は、いわゆる磁性材である第一相とAlMn結晶粒からなる第二相とが混在した複合相からなり、少なくとも第一相のみからなる従来の永久磁石(AlMn結晶粒を含まない永久磁石)よりも、高い保磁力を発揮する。従って本発明によれば、従来の永久磁石(希土類磁石、フェライト磁石等)の磁気特性向上の他、それらの代替となる新たな永久磁石の提案も可能となり得る。
本発明の永久磁石により保磁力が大幅に向上し得る理由は、次のように考えられる。先ず、永久磁石の保磁力は、通常、それを構成する材質(磁石合金等)の結晶磁気異方性エネルギー(単に「磁気異方性」という。)や飽和磁化に強く依存している。そして磁気異方性や飽和磁化は、本来、結晶構造と構成元素で決定される制御困難な物性値である。従って、既存の永久磁石の保磁力を大幅に向上させることは非常に困難であると、これまで考えられてきた。
しかし、メカニズムは必ずしも定かではないが、これまで着目されてこなかったAlMn結晶粒からなる第二相(適宜、単に「AlMn相」ともいう。)が、磁性材からなる第一相(適宜、単に「磁性相」ともいう。)に強く作用し、第一相の本来有する磁気異方性に加えて、第一相に誘導磁気異方性を生じさることが新たにわかった。これにより、磁性相とAlMn相が混在、共存または複合化した組織(適宜、単に「複合相」という。)は、大きな磁気異方性を発現し、ひいては永久磁石の保磁力の大幅な向上が可能になったと考えられる。なお、AlMn相が磁性相に誘導磁気異方性を生じさせることから、AlMn相は、これまで認識されてきたような非磁性材ではなく、磁性材と考える方が妥当である。
《永久磁石の製造方法》
本発明は永久磁石としてのみならず、その製造方法としても把握できる。例えば、MnAl系合金からなる永久磁石の場合であれば、本発明は、MnとAlからなる合金(適宜、「MnAl系合金」という。)を調製する調製工程と、該合金からL1型MnAl結晶粒とAlMn結晶粒を生成する生成工程とを備え、MnAl系永久磁石が得られることを特徴とする製造方法としても把握できる。
《その他》
特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を、新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
試料A0と試料A1に係る磁化曲線を示す図である。 試料12と試料C0に係る磁気トルク曲線を示す図である。 試料12と試料C0に係る回転ヒステリシス損失を示す図である。 試料14に係る磁化曲線を示す図である。 第一相および第一相と第二相の複合相の磁化曲線と試料全体の磁化曲線との関係を説明する図である。
本明細書で説明する内容は、本発明の永久磁石のみならず、その製造方法にも該当し得る。上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一以上の構成要素を付加し得る。製造方法に関する構成要素は、一定の場合(構造または特性により「物」を直接特定することが不可能であるかまたは非実際的である事情(不可能・非実際的事情)等がある場合)、プロダクトバイプロセスとして「物」に関する構成要素ともなり得る。なお、いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《第一相》
第一相は、フェロ磁性またはフェリ磁性を発現する結晶粒からなる磁性相であり、通常、主相である。第二相(AlMn相)による誘導磁気異方性により、第一相を主体とする永久磁石の保磁力が向上する限り、第一相の種類は問わない。例えば、第一相は、第二相と同系統なMnAl系合金からなるL1型MnAl結晶粒(MnとAlからなる正方晶)でもよい。この他、第一相は、各種のフェライト(鉄酸化物)や希土類磁石合金の結晶粒からなる場合も考えられる。
《第二相》
第二相は、AlMn結晶粒からなり、当然、組成や結晶構造が第一相とは異なる。既述したように、第二相も第一相と同様に磁性相であって、磁化レベルは小さくても、大きな磁気異方性を発現すると考えられる。これにより本発明の永久磁石は大きな保磁力を発揮し得るが、第二相を構成するAlMn結晶粒が過小または過大であると、その効果は乏しい。そこでAlMn結晶粒は、結晶粒の平均粒径が10nm〜5μmさらには50nm〜1μmであると好ましい。なお、本明細書でいう平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により得られた顕微鏡写真を画像処理して算出される。具体的には、視野(10μm×10μm)中に存在するそれぞれのAlMn結晶粒について、その面積に相当する円の直径の相加平均値として求めることができる。
また第二相(AlMn相)が過少では効果が乏しく、過多では永久磁石としての磁化(磁束)が低下し得る。そこで永久磁石全体を100体積%として、AlMn相が5体積%以下であると好ましい。
永久磁石がMnAl系合金からなる場合であれば、その全体を100原子%(単に「%」という。)としたときに、Al:39〜46%、Al:40〜44%さらにはAl:41〜43%であり、残部がMnと任意な少量(例えば、合計で3%以下さらには2%以下)の改質元素(例えば、B、C、N、O等の侵入型元素、Fe、Ni等の強磁性元素)または不純物とからなるとよい。この場合、L1型MnAl結晶粒からなる第一相(適宜、単に「L1型MnAl相」ともいう。)と、AlMn結晶粒からなる第二相との複合相からなる高保磁力の永久磁石を得ることができる。なお、この複合相は、大部分を占めるL1型MnAl相と、少量のAlMn相がL1型MnAl相に隣接して微細に分散した状態の組織からなると好ましい。
《永久磁石の製造方法》
本発明の永久磁石は、その製造方法を問わないが、例えば、MnAl系合金からなる永久磁石であれば、次のような調製工程と生成工程とを行うことにより得ることができる。
(1)調製工程
調製工程は、例えば、永久磁石の所望組成に応じて用意されたターゲット原料に対してスパッタリングをして、基材(基板)上に合金層を形成する工程である。この合金層の組成は、例えば、上述したような範囲内とするとよい。合金層の厚さ、積層数等は適宜調整すればよい。複数の合金層を積層する場合、全体として所望組成となれば、各層毎の合金組成は異なっていてもよい。合金層を積層する場合、均質的な永久磁石を得るために、各層の厚さは、例えば5〜500nm内で調整するとよい。
MnAl系合金の調製は、560〜750℃さらには580〜720℃の加熱下でなされると好ましい。この理由は、第一相であるL1型MnAl相および第二相であるAlMn相の結晶生成のため560℃以上の加熱が必要となり、また、750℃以上になるとAlの蒸発が顕著になり組成の制御が困難になるためと考えられる。MnAl系合金層を形成する場合なら、基材温度を上記の範囲内とするとよい。なお、調製工程は、酸化防止雰囲気(真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等)でなされると好ましい。
(2)生成工程
生成工程は、調製工程で得られたMnAl系合金から、晶出、析出、結晶成長等させることにより、第一相となるL1型MnAl結晶粒と第二相となるAlMn結晶粒とを得る工程である。結晶粒の晶出または析出は、調製工程後の高温なMnAl系合金を冷却したり、さらには熱処理を別途行うことにより可能である。
結晶成長によりL1型MnAl結晶粒またはAlMn結晶粒を得る場合なら、エピタキシャル成長により結晶方位が特定方向に揃った結晶粒が得られるような基材(基板)を選択し、その基材上に上述した合金層を形成すると好ましい。基材の選択は、例えば、基材側(または下地層)と合金層側との結晶格子定数、熱膨張係数等が近接するように行うとよい。このような基材として、例えば、酸化マグネシウム(MgO)の単結晶からなるMgO単結晶基材、W、Mo、Cu、Siの単結晶基材などがある。
また、合金層側の結晶面と整合的な結晶構造を有する下地層を基材上に形成しておいてもよい(下地層形成工程)。このような下地層には、シード層やバッファ層がある。シード層とはバッファ層の結晶成長を促進させる層であり、バッファ層とは合金層の形成を促進する土台となる層である。 このような下地材として、Mo、Ta、W、Ti、Cr、V、Nb、Pd、Pt、Ag、Auなどがある。なお、下地層もスパッタリングにより形成可能である。
さらに、調製工程後の合金表面、または生成工程後のL1型MnAl結晶粒とAlMn結晶粒の表面に、その酸化を抑止する保護層を形成すると好ましい(保護層形成工程)。保護層の形成も、前述したスパッタリングにより行える。このときのターゲットには、Cr、Ag、Au、Pd、Pt、Mo、Cu、Ti、Ta、Ru、V、Hf、W、Irなどの単体、合金または化合物などを用いることができる。このスパッタリングは、通常、室温域で行えば足りる。
《永久磁石》
本発明の永久磁石は、その用途を問わず、種々の電磁機器に用いることができる。例えば、本発明の永久磁石は、電動機のロータやステータに配設されて界磁を構成し得る。なお、本発明の永久磁石は、薄膜法の他、溶解法、焼結法等によっても製造され得る。
薄膜法により種々の試料を製造し、第二相となるAlMn相自体の特性と、AlMn相が、第一相である磁性相(特にその一例であるL1型MnAl相)に及ぼす影響を評価した。これらの実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
《薄膜法》
MgO単結晶基板(適宜、単に「基板」ともいう。)を用意した。このMgO単結晶基板は、(001)面が成膜面になるように加工し、表面粗度を小さくするため研磨を行ったものである。特に断らない限り、その(001)面上へ、スパッタリングにより直接に成膜した。
実施例でいうスパッタリングは、特に断らない限り、マグネトロンスパッタ法に基づき、成膜前の到達真空度を5x10−8Pa以下、製膜形状をφ8mmとして行った。各膜厚は、成膜速度と成膜時間の積から算出した。ちなみに成膜速度は、本実施例では0.4〜1Å/sとした。
成膜後の基板を室温(35℃以下)まで冷却し、その室温域で、膜表面に酸化防止のためのTa層(保護層)を形成した(保護層形成工程)。
《第一実施例》
(1)試料の製造
AlMn 自体の特性を調べるため、上記の基板上に直接Fe層のみを形成した試料A0と、基板上に直接AlMn層を形成した後、その上にFe層を積層した試料A1とを用意した。Fe層の厚さはいずれも5nmと、AlMn層の厚さは45nmとした。試料A0およびAlのFe層成膜時の基板温度は50℃以下とし、試料A1のAlMn層の成膜時の基板温度は650℃とした。
(2)測定
こうして得られた各試料を用いて、膜面に対して垂直方向の磁化を、振動試料型磁力計(VSM)で測定した。このとき得られた各試料に係る磁化曲線を図1に併せて示した。
(3)評価
先ず、試料A0に係る磁化曲線から次のことがわかる。Feは結晶磁気異方性エネルギーが小さいが、試料A0に係るFe層(薄膜)は形状異方性の影響を強く受けて、その磁化容易方向は膜面に平行な方向(適宜、「面方向」という。)となっている。このためFe層は、測定している膜面に直交する方向(適宜、「面直方向」という。)が磁化困難方向となる。このため面直方向の磁化を測定して得られる磁化曲線は、図1に示すようになる。このFe層に係る磁化曲線から、磁化が飽和する磁界を読み取ると、試料A0に係るFe層の異方性磁界は約20kOeと見積もれる。
次に、試料A1に係る磁化曲線から次のことがわかる。試料A1に係るFe層も、面直方向が磁化困難方向である点は、試料A0に係るFe層と同じである。但し、試料A1に係るFe層は、その下層側でAlMn層と隣接しており、その異方性磁界は約10kOeにまで減少している。これは、AlMn層により、Fe層が面直方向に磁化され易くなったことを示す。換言するなら、AlMn層によって、Fe層の磁気異方性が面直方向に誘導されたことがわかる。
このようにAlMnは、その隣接域または近傍域にある磁性材に誘導磁気異方性を生じさせることから、AlMnは、フェロ磁性材かフェリ磁性材であるかは別にして、磁性材であるといえる。また、本実施例に依り、AlMn相(第二相)が作用を及ぼす相手材(第一相)は、硬質磁性材(例えば、後述するMnAl系磁性材)に限らず、軟質磁性材でもよいことが明らかとなった。
《第二実施例》
(1)試料の製造
上述した薄膜法により、合金組成または成膜時の基板温度を種々変更した合金層を基板上に成膜した。こうして、表1に示す種々の試料を得た。なお、試料C0は、基板の(001)面上へスパッタリングによりCr層(下地層)を形成した後(下地層形成工程)、そのCr層上へMn−Al合金層を形成したものである。ちなみに、各合金層の膜厚は全体としてCr層10nm、MnAl層45nmとした。
《試料の観察・測定》
(1)組織
各試料に係る合金層について、X線回折法(XRD)を行うことにより、L1型MnAl結晶(第一相)とAlMn結晶(第二相)の生成の有無を確認した。XRD回折強度と共に相生成の有無を、表1に併せて示した。表1中の「○」は相生成がされていることを意味し、「×」は相生成がされていないことを意味する。
(2)磁気特性
表1に示す結果に基づき、両相からなる複合相が生成されている試料について、室温(23℃)における磁気特性(飽和磁化と保磁力)を振動試料型磁力計(VSM)で測定した。その結果も表1に併せて示した。
また、試料12と試料C0について、印加磁場:27kOeとしたときの磁気トルクの変化を図2に示した。また、それら試料に係る回転ヒステリシス損失Wrの印加磁場Hに対する変化を図3に示した。さらに、試料14に係る磁化曲線を図4Aに示した。
《評価》
(1)図2から次のことがわかる。図2に示す磁気トルク曲線の起伏は磁気異方性を示しており、試料C0の場合、0°(360°)と180°で磁気トルクが正から負に変化している。このため、試料C0には、L1型MnAl相(表1参照)に起因する一つの磁化容易軸が存在することがわかる。これに対して、試料12の場合、180°付近で、試料C0の場合とは異なる新たな起伏を生じている。これは、AlMn相(表1参照)に起因して、L1型MnAl相の本来の磁気異方性とは別に、新たな磁気異方性(誘導磁気異方性)が付加されたためと考えられる。
図3から次のことがわかる。試料C0に係る回転ヒステリシス損失Wrは、飽和磁化を示す磁場に相当する異方性磁界Hに向かって減少している。一方、試料12に係る回転ヒステリシス損失Wrは、少なくとも同レベルの磁場内において、増加傾向のみを示している。このことから、複合相からなる試料12の異方性磁界Hは、単相からなる試料C0の異方性磁界Hよりも、かなり大きくなっていることがわかる。
(2)表1から次のことがわかる。上述の薄膜法で合金層を製造する場合、その全体組成と基板温度が所望の範囲にあるときに、L1型Mn相とAlMn相とからなる複合相が形成され易いことがわかる。
また、試料C0のようにL1型MnAl単相の保磁力は約4kOe程度であることから、試料11〜25のように複合相が形成されることによって、単相の場合よりも保磁力が大幅に増加することも表1からわかる。
さらに、L1型MnAl相とAlMn相とに係るXRD回折強度から、AlMn相はL1型MnAl相に対して僅かに存在する程度でも、全体としての保磁力は大幅に増加することがわかる。従って、L1型MnAl相とAlMn相が共存する複合相からなる永久磁石は、L1型MnAl相による高磁化と高保磁力を両立し得ることがわかる。
(3)このことは、一例として示した試料14に係る磁化曲線(図4A)からもわかる。すなわち、その磁化曲線では、二段階の磁化反転が起こっており、2種類の磁性相(複合相)が存在していることがわかる。そしてL1型MnAl相(第一相)により高磁化が発現されていると共に、AlMn相(第二相)との複合化により高保磁力が発現されている。特に保磁力に着目すると、L1型MnAl相の保磁力は約4kOe程度であるが、AlMn相の存在により、複合相の保磁力は40kOeを遙かに超えている。なお、図4Aに示した磁化曲線は、測定時の印加磁場の上限が50kOeであったため、完全に着磁した状態で測定されたものではない。それでも、AlMn相が生成されることにより、その生成量に依らず、複合相の保磁力が大幅に増大することは十分に確認できる。
このように、高磁化を発現する第一相と高磁気異方性を発現する第二相とが共存することにより、それぞれの高特性を兼ね備えた複合相からなる永久磁石が得られる。この機序を図4Aの磁化曲線を参考に模式的に示すと、図4Bのようになる。つまり、複合相からなる永久磁石の磁化曲線は、第一相の磁化曲線と複合相の磁化曲線とを融合させた形態となり、高磁化と高保磁力が両立され得る形態となり得ることがわかる。

Claims (6)

  1. MnとAlの正方晶であるL1 型MnAl結晶粒からなる第一相と、
    該第一相の結晶粒とは異なるAlMn結晶粒からなる第二相とが混在しており、
    該第一相と該第二相は共にX線回折法により検出され、
    保磁力が13kOe以上であることを特徴とする永久磁石。
  2. 前記第二相は、永久磁石全体を100体積%として5体積%以下である請求項1に記載の永久磁石。
  3. AlMn結晶粒は、平均粒径が10nm〜5μmである請求項1または2に記載の永久磁石。
  4. 全体を100原子%(単に「%」という。)としたときに、Al:39〜46%、Mn:残部であるMnAl系合金からなる請求項1〜のいずれかに記載の永久磁石。
  5. MnとAlからなる合金を調製する調製工程と、
    該合金からL1型MnAl結晶粒とAlMn結晶粒を生成する生成工程とを備え、
    請求項4に記載の永久磁石が得られることを特徴とする永久磁石の製造方法。
  6. 前記調製工程は、560〜750℃でなされる請求項5に記載の永久磁石の製造方法。
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