JP6398882B2 - 静電潜像現像用トナー及びその製造方法 - Google Patents

静電潜像現像用トナー及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、静電潜像現像用トナー及びその製造方法に関する。
トナー用の結着樹脂として、溶融混練された結晶性樹脂及び非結晶性樹脂(非晶性樹脂)が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献2に記載されているトナーは、結着樹脂として、第1非結晶性ポリエステル樹脂(非晶質ポリエステル樹脂B)と、第2非結晶性ポリエステル樹脂(非晶質ポリエステル樹脂A)と、結晶性ポリエステル樹脂とを含有するトナー粒子を含む。第2非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂はそれぞれ、第1非結晶性ポリエステル樹脂中に分散している。
国際公開第2005/111730号 特開2013−54178号公報
特許文献1に記載の結着樹脂を用いたトナーは、定着性に劣る傾向がある。この理由は、結着樹脂として使用された複数種の樹脂の相溶性が十分でないためであると考えられる。また、特許文献2に記載のトナーでは、トナー粒子を構成する第1非結晶性ポリエステル樹脂中に、ガラス転移点(Tg)の低い第2非結晶性ポリエステル樹脂が分散している。このため、特許文献2に記載のトナーは、耐熱保存性に劣る傾向がある。特許文献1及び2に開示される技術を用いても、帯電減衰しにくく、耐熱保存性及び定着性に優れる静電潜像現像用トナーを提供することは困難である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、帯電減衰しにくく、耐熱保存性及び定着性に優れる静電潜像現像用トナー及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子を、複数含む。前記トナー粒子は、前記結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂と、前記非結晶性ポリエステル樹脂中に分散した粒子状の結晶性ポリエステル樹脂とを含有する。前記結晶性ポリエステル樹脂の分散径は40nm以上150nm以下である。走査型プローブ顕微鏡のダイナミックモードで、前記トナー粒子の断面における前記走査型プローブ顕微鏡の探針の位相遅れを測定した場合に、前記非結晶性ポリエステル樹脂上での前記探針の位相遅れAと前記結晶性ポリエステル樹脂上での前記探針の位相遅れBとが、関係式「−22°≦B−A≦−13°」を満たす。
本発明に係る静電潜像現像用トナーの製造方法は、前記静電潜像現像用トナーを製造する方法であり、コア材料の溶融混練と、混練物の粉砕と、材料の添加と、シェル層の形成とを含む。前記コア材料の溶融混練では、少なくとも非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含む前記コアの材料を溶融混練して、分散径が40nm以上150nm以下の範囲内にない前記結晶性ポリエステル樹脂を含有する混練物を得る。前記混練物の粉砕では、前記混練物を粉砕して前記コアを得る。前記材料の添加では、水性媒体に、前記コアと、前記シェル層の材料とを入れる。前記シェル層の形成では、前記水性媒体中で前記シェル層の材料を重合反応させることにより、前記コア中の前記結晶性ポリエステル樹脂の分散径を40nm以上150nm以下にするとともに、前記コアの表面に前記シェル層を形成する。
本発明によれば、帯電減衰しにくく、耐熱保存性及び定着性に優れる静電潜像現像用トナー及びその製造方法を提供することが可能になる。
本発明の実施形態に係るトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂に関して、走査型プローブ顕微鏡のダイナミックモードで測定されたヒストグラムの一例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本実施形態のトナーは、複数のトナー粒子(それぞれ後述する構成を有する粒子)を含む粉体である。トナーは、1成分現像剤として使用してもよい。また、混合装置(より具体的には、ボールミル等)を用いてトナーとキャリアとを混合して2成分現像剤を調製してもよい。高画質の画像を形成するためには、キャリアとしてフェライトキャリアを使用することが好ましい。また、長期にわたって高画質の画像を形成するためには、キャリアコアと、キャリアコアを被覆する樹脂層とを備える磁性キャリアを使用することが好ましい。磁性キャリアを作製するためには、キャリアコアを磁性材料で形成してもよいし、樹脂層中に磁性粒子を分散させてもよい。高画質の画像を形成するためには、2成分現像剤におけるトナーの量は、キャリア100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下であることが好ましく、8質量部以上12質量部以下であることがより好ましい。
本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置(画像形成装置)において画像の形成に用いることができる。以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。
まず、画像データに基づいて感光体(例えば、感光体ドラムの表層部)に静電潜像を形成する。次に、形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像する。現像工程では、帯電したトナーを静電潜像に付着させて、感光体上にトナー像を形成する。そして、続く転写工程では、感光体上のトナー像を中間転写体(例えば、転写ベルト)に転写した後、さらに中間転写体上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、トナーを加熱して、記録媒体にトナーを定着させる。その結果、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。
本実施形態に係るトナーは、次に示す構成(以下、基本構成と記載する)を有する静電潜像現像用トナーである。
(トナーの基本構成)
静電潜像現像用トナーが、結着樹脂を含有するトナー粒子を、複数含む。トナー粒子は、結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂と、非結晶性ポリエステル樹脂中に分散した粒子状の結晶性ポリエステル樹脂とを含有する。結晶性ポリエステル樹脂の分散径は40nm以上150nm以下である。走査型プローブ顕微鏡のダイナミックモードで、トナー粒子の断面における走査型プローブ顕微鏡の探針の位相遅れを測定した場合に、非結晶性ポリエステル樹脂上での探針の位相遅れAと結晶性ポリエステル樹脂上での探針の位相遅れBとが、関係式「−22°≦B−A≦−13°」を満たす。なお、結晶性ポリエステル樹脂の分散径は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法で測定される投影像における粒子の長軸径である。
結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂とは、走査型プローブ顕微鏡のダイナミックモードで走査した場合の探針の位相遅れの大きさに基づいて区別できる。探針の位相遅れは、探針を振動させるための入力信号(例えば、カンチレバーの圧電素子への加振信号)に対する探針の出力信号の位相遅れである。位相遅れの符号が負(−)であることは、探針の出力信号が入力信号に対して遅れていることを示し、位相遅れの数値は、遅れの程度を示す。結晶性ポリエステル樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂よりも柔らかいため、非結晶性ポリエステル樹脂よりも探針の位相遅れが大きくなる傾向がある。探針の位相遅れの測定方法は、後述する実施例で示す方法又はその代替方法である。ポリエステル樹脂に関する探針の位相遅れは、ポリエステル樹脂を合成するための材料(例えば、アルコール及び/又はカルボン酸)の種類又は使用量(配合比)を変更することで、調整できる。
発明者は、前述の基本構成のうち、位相遅れAと位相遅れBとが関係式「−22°≦B−A≦−13°」を満たすことが、トナーの耐熱保存性と低温定着性とを両立させるために有効であることを見出した(後述する表1及び表2参照)。前述の基本構成を有するトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂に関して、実際に走査型プローブ顕微鏡のダイナミックモードで測定されたヒストグラムの一例を、図1に示す。ヒストグラム中には、非結晶性ポリエステル樹脂に由来するピークと結晶性ポリエステル樹脂に由来するピークとが示されている。図1の例では、位相遅れAが−93°(非結晶性ポリエステル樹脂に由来するピークの位相遅れの値)であり、位相遅れBが−114°(結晶性ポリエステル樹脂に由来するピークの位相遅れの値)である。したがって、図1の例では、前述の基本構成における「B−A」(以下、結晶性−非結晶性の位相差と記載する)が−21°であり、上記関係式「−22°≦B−A≦−13°」を満たす。
トナーの低温定着性を向上させるためには、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性指数が0.90以上1.50以下であることが好ましい。こうした結晶性指数を有する結晶性ポリエステル樹脂は、シャープメルト性に優れる。なお、結晶性指数は、融点(Mp)に対する軟化点(Tm)の比率(=Tm/Mp)である。Mp及びTmの各々の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。非結晶性ポリエステル樹脂については、明確なMpを測定できないことが多い。ポリエステル樹脂の結晶性指数は、ポリエステル樹脂を合成するための材料(例えば、アルコール及び/又はカルボン酸)の種類又は使用量を変更することで、調整できる。
発明者は、前述の基本構成のうち、トナーコア中の結晶性ポリエステル樹脂の分散径が40nm以上150nm以下であることが、トナーの耐熱保存性及び帯電性(特に、電荷減衰特性)を改善するために有効であることを見出した(後述する表1及び表2参照)。結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂とが相溶してトナーコア中の結晶性ポリエステル樹脂の分散径が小さくなり過ぎると、トナーの耐熱保存性が劣化すると考えられる。他方、トナーコア中の結晶性ポリエステル樹脂の分散径が大きくなり過ぎると、トナーが電荷減衰し易くなると考えられる。
トナーが前述の基本構成を有するためには、非結晶性ポリエステル樹脂のSP値(SPA)と結晶性ポリエステル樹脂のSP値(SPB)とが、関係式「0.2J/cm3≦|SPA−SPB|≦1.0J/cm3」を満たすことが好ましい。非結晶性ポリエステル樹脂のSP値と結晶性ポリエステル樹脂のSP値との差(以下、結晶性−非結晶性のSP値差と記載する)が0.2J/cm3以上1.0J/cm3以下であることで、非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とが適度に相溶すると考えられる。
なお、上記関係式におけるSP値(SPA及びSPB)は、Collmanの方法(下記文献A参照)に従って計算したSP値(溶解度パラメーター)である。ポリエステル樹脂のSP値は、ポリエステル樹脂を合成するための材料(例えば、アルコール及び/又はカルボン酸)の種類又は使用量を変更することで、調整できる。
文献A:M.M.Collman、外2名(ペンシルベニア州立大学)、「Specific Interactions and the Miscibility of Polymer Blends」、(米国)、テクノミック・パブリッシング(Technomic Publishing)、1991年
トナーに含まれるトナー粒子は、シェル層を備えないトナー粒子(以下、非カプセルトナー粒子と記載する)であってもよいし、シェル層を備えるトナー粒子(以下、カプセルトナー粒子と記載する)であってもよい。しかし、上記基本構成は、トナーに含まれるトナー粒子がカプセルトナー粒子である場合に、特に有益である。以下、トナーに含まれるトナー粒子がカプセルトナー粒子である実施形態について説明する。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子(カプセルトナー粒子)は、コア(以下、トナーコアと記載する)と、トナーコアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを備える。シェル層は、実質的に樹脂から構成される。トナーコア又はシェル層の表面に外添剤が付着していてもよい。シェル層は、トナーコアの表面全体を覆っていてもよいし、トナーコアの表面を部分的に覆っていてもよい。また、トナーコアの表面に複数のシェル層が積層されてもよい。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。以下、外添剤が付着する前のトナー粒子を、トナー母粒子と記載する。また、シェル層を形成するための材料を、シェル材料と記載する。非カプセルトナー粒子においては、後述するカプセルトナー粒子におけるトナーコアをトナー母粒子として使用できる。
トナーが前述の基本構成を有するためには、トナーコアが乾式法により作製され、シェル層が湿式法によりトナーコアの表面に形成されることが好ましい。乾式法としては、粉砕法が特に好ましい。粉砕法は、複数種の材料(樹脂等)を溶融混練して混練物を得る工程と、得られた混練物を粉砕する工程とを経て、粉体(例えば、トナーコア)を得る方法である。湿式法としては、重合法が特に好ましい。重合法は、液(例えば、水性媒体)中において基体(例えば、トナーコア)の表面で材料を重合反応させることにより、樹脂を合成する方法である。
乾式法によりトナーコアを作製する場合、凝集法のような湿式法によりトナーコアを作製する場合よりも、トナーコアが凝集しにくくなる。この理由は、乾いた粉体を攪拌するよりも、粉体の分散液を攪拌するほうが、粒子同士の接触時間が短くなるためであると考えられる。また、乾式法によりトナーコアを作製することで、トナーコア中の結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂とを均一に混合し易くなる。
また、乾式法によりトナーコアを作製した後、湿式法によりトナーコアの表面にシェル層を形成することで、トナーコア中の結晶性ポリエステル樹脂の分散径を調整し易くなる。シェル層形成時(詳しくは、シェル材料の重合反応時)の熱によりトナーコア中の結晶性ポリエステル樹脂の分散径を大きくすることができる。また、液中でトナーコアを加熱することで、トナーコアの凝集を抑制することができる。
トナーコア中の結晶性ポリエステル樹脂の分散径を調整し易くするためには、水性媒体中でシェル層を形成することが好ましい。水性媒体中でトナーコアが加熱されると、非結晶性ポリエステル樹脂がトナーコアの表面に移動し、結晶性ポリエステル樹脂がトナーコアの内部に移動する傾向がある。この理由は、非結晶性ポリエステル樹脂が結晶性ポリエステル樹脂よりも強い親水性を有するためであると考えられる。なお、水性媒体は、水を主成分とする媒体(より具体的には、純水、又は水と極性媒体との混合液等)である。水性媒体は溶媒として機能してもよい。水性媒体中に溶質が溶けていてもよい。水性媒体は分散媒として機能してもよい。水性媒体中に分散質が分散していてもよい。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、シェル層が、トナーコアの表面積のうち、50%以上99%以下の面積を覆っていることが好ましく、70%以上95%以下の面積を覆っていることがより好ましい。トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、シェル層の最大厚さが1nm以上100nm以下であることが好ましい。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、トナーの体積中位径(D50)が1μm以上10μm未満であることが好ましい。なお、体積中位径(D50)の測定方法は、後述する実施例で示す方法又はその代替方法である。
次に、トナーコア(結着樹脂及び内添剤)、シェル層、及び外添剤について、順に説明する。トナーの用途に応じて必要のない成分を割愛してもよい。なお、粉体(より具体的には、トナーコア、トナー母粒子、外添剤、又はトナー等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の個数平均である。また、粉体の粒子径は、何ら規定していなければ、一次粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)である。以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
<好適な熱可塑性樹脂>
トナー粒子(特に、トナーコア又はシェル層)を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、又はポリメタクリル酸メチル(PMMA)等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、又はN−ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、もしくはウレタン樹脂のような単独重合体、又はこれら単独重合体のいずれかの繰返し単位と同一のモノマーに由来する繰返し単位を1種以上有する共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)を好適に使用できる。
熱可塑性樹脂は、1種以上の熱可塑性モノマー(より具体的には、アクリル酸系モノマー又はスチレン系モノマー等)を縮重合又は共縮重合させることで得られる。
スチレン−アクリル酸系樹脂は、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体である。スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するためには、例えば以下に示すような、スチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーを好適に使用できる。アクリル酸系モノマーを用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂にカルボキシル基を導入できる。また、水酸基を有するモノマー(より具体的には、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等)を用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂に水酸基を導入できる。アクリル酸系モノマーの使用量を調整することで、得られるスチレン−アクリル酸系樹脂の酸価を調整できる。また、水酸基を有するモノマーの使用量を調整することで、得られるスチレン−アクリル酸系樹脂の水酸基価を調整できる。
スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、又はp−エチルスチレンが挙げられる。
アクリル酸系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
ポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸とを縮重合又は共縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、ジオール類又はビスフェノール類等)又は3価以上のアルコールを好適に使用できる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸を好適に使用できる。また、ポリエステル樹脂を合成する際に、アルコールの使用量とカルボン酸の使用量とをそれぞれ変更することで、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価を調整することができる。ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
ジオール類の好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、又はポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテルが挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸等)、又はアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
なお、上記2価又は3価以上のカルボン酸は、エステル形成性の誘導体(より具体的には、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステル等)に変形して用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素数1以上6以下のアルキル基を意味する。
<好適な熱硬化性樹脂>
トナー粒子(特に、シェル層)を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、スルホンアミド系樹脂、グリオキザール系樹脂、グアナミン系樹脂、アニリン系樹脂、ポリイミド樹脂(より具体的には、マレイミド重合体又はビスマレイミド重合体等)、又はキシレン系樹脂を好適に使用できる。
熱硬化性樹脂は、1種以上の熱硬化性モノマーを縮重合又は共縮重合させることで得られる。また、架橋剤を用いることで、熱可塑性モノマーにより熱硬化性樹脂を合成することもできる。
熱硬化性モノマーの好適な例としては、メチロールメラミン、メラミン、メチロール化尿素(より具体的には、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素等)、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、又はスピログアナミンが挙げられる。
[トナーコア]
トナーコアは、結着樹脂を含有する。また、トナーコアは、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含有してもよい。
(結着樹脂)
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の水酸基価(測定方法:JIS(日本工業規格)K0070−1992)及び酸価(測定方法:JIS(日本工業規格)K0070−1992)がそれぞれ10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましい。
高速定着時におけるトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂の軟化点(Tm)が、100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。なお、軟化点(Tm)の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。異なるTmを有する複数種の樹脂を組み合わせることで、結着樹脂のTmを調整することができる。
本実施形態に係るトナーは、前述の基本構成を有する。トナーコアは、結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂と、非結晶性ポリエステル樹脂中に分散した粒子状の結晶性ポリエステル樹脂とを含有する。トナーコアは、結着樹脂として、ポリエステル樹脂以外の樹脂(より具体的には、前述の各種熱可塑性樹脂等)を含んでもよい。
トナーが前述の基本構成を有するためには、基本構成における非結晶性ポリエステル樹脂が、1種以上のビスフェノール類(より具体的には、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、又はポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル等)と1種以上のジオール類(より具体的には、テレフタル酸、フマル酸、又はアルキルコハク酸等)との重合体であることが好ましい。トナーが前述の基本構成を有するためには、基本構成における結晶性ポリエステル樹脂が、1種以上の2価カルボン酸(より具体的には、スベリン酸、アジピン酸、又はコハク酸等)と1種以上のジオール類(より具体的には、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、又はヘキサンジオール等)との重合体であることが好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂に、スチレン系モノマーに由来する1種以上の繰返し単位とアクリル酸系モノマーに由来する1種以上の繰返し単位とを組み込んでもよい。また、結晶性ポリエステル樹脂に、ビスフェノール類(より具体的には、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、又はポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル等)に由来する1種以上の繰返し単位を組み込んでもよい。
トナーの耐熱保存性と低温定着性とを両立させるためには、溶融混練された1種類の結晶性ポリエステル樹脂と複数種の非結晶性ポリエステル樹脂とをトナーコアが含有することが好ましい。
(着色剤)
トナーコアは、着色剤を含有してもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の使用量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有してもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有してもよい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを好適に使用できる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を好適に使用できる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを好適に使用できる。
(離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有してもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素ワックス;酸化ポリエチレンワックス又はそのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物性ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物性ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを好適に使用できる。1種類の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含有してもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナーコアに負帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。また、トナーコアに正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させる必要はない。
(磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含有してもよい。磁性粉としては、例えば、鉄(より具体的には、フェライト又はマグネタイト等)、強磁性金属(より具体的には、コバルト又はニッケル等)、鉄及び/又は強磁性金属を含有する合金、強磁性化処理(より具体的には、熱処理等)が施された強磁性合金、又は二酸化クロムを好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するため、磁性粉を表面処理することが好ましい。酸性条件下でトナーコアの表面にシェル層を形成する場合に、トナーコアの表面に金属イオンが溶出すると、トナーコア同士が固着し易くなる。磁性粉からの金属イオンの溶出を抑制することで、トナーコア同士の固着を抑制することができると考えられる。
[シェル層]
シェル層は、粒状感のない膜であってもよいし、粒状感のある膜であってもよい。シェル層を形成するための材料として樹脂粒子を使用した場合、材料(樹脂粒子)が完全に溶けて膜状の形態で硬化すれば、シェル層として、粒状感のない膜が形成されると考えられる。他方、材料(樹脂粒子)が完全に溶けずに膜状の形態で硬化すれば、シェル層として、樹脂粒子が2次元的に連なった形態を有する膜(粒状感のある膜)が形成されると考えられる。
シェル層は、実質的に熱硬化性樹脂のみからなってもよいし、実質的に熱可塑性樹脂のみからなってもよいし、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との両方を含有していてもよい。シェル層が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との両方を含有する場合、シェル層における熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との割合は任意である。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との割合の例としては、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、3:1、4:1、又は5:1(それぞれ質量比で、熱可塑性樹脂:熱硬化性樹脂)が挙げられる。
トナーの耐熱保存性を向上させるためには、前述の好適な熱硬化性樹脂をシェル層が含有することが好ましい。トナーの帯電安定性及び耐熱保存性を向上させるためには、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、及びグリオキザール系樹脂からなる群より選択される1種以上の熱硬化性樹脂をシェル層が含有することが特に好ましい。
トナーの帯電安定性を向上させるためには、シェル層が疎水性樹脂を含有することが好ましい。シェル層に含有させる疎水性樹脂としては、熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の好適な熱可塑性樹脂等)、又は架橋剤により前述の好適な熱可塑性樹脂を架橋した熱硬化性樹脂が好ましく、1種以上のスチレン系モノマー(例えば、スチレンモノマー)と1種以上のアクリル酸系モノマー(例えば、アクリル酸エステルモノマー)とが架橋剤(例えば、ジビニルベンゼン)により架橋された樹脂(熱硬化性樹脂)が特に好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂は、ポリエステル樹脂と比べて、疎水性が強く、正帯電し易い傾向がある。また、シェル層の膜質を向上させるためには、シェル層に含有される樹脂(架橋された樹脂)が、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、又はメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルに由来する1種以上のアルコール性水酸基を有することが好ましい。
トナーの帯電安定性を向上させるためには、シェル層が、上記疎水性樹脂に加えて、帯電性樹脂(電荷制御剤を含む樹脂)を含有することが好ましい。シェル層に含有させる帯電性樹脂としては、正帯電性の電荷制御剤に由来する繰返し単位を組み込んだ熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の好適な熱可塑性樹脂等)が好ましく、1種以上の4級アンモニウム化合物(例えば、4級アンモニウム塩)モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマー(例えば、アクリル酸エステルモノマー)との共重合体が特に好ましい。帯電性樹脂の合成に用いられる正帯電性の電荷制御剤の好適な例を以下に示す。なお、必要に応じて、以下に示される各化合物の誘導体又は塩を使用してもよい。
正帯電性の電荷制御剤としては、例えば、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2−オキサジン、1,3−オキサジン、1,4−オキサジン、1,2−チアジン、1,3−チアジン、1,4−チアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、又はキノキサリンのようなアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、又はアジンディーブラック3RLのような直接染料;ニグロシン化合物(より具体的には、ニグロシンBK、ニグロシンNB、又はニグロシンZ等)のような酸性染料;ナフテン酸又は高級有機カルボン酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、又は2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドのような4級アンモニウム塩を好適に使用できる。
[外添剤]
トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。また、トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
外添剤としては、シリカ粒子、又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム等)の粒子を好適に使用できる。1種類の外添剤を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤を併用してもよい。
[トナーの製造方法]
以下、上記構成を有するトナーを製造する方法の一例について説明する。
本実施形態に係る静電潜像現像用トナーの製造方法は、次に示す好適な製造工程(トナーコア材料の溶融混練、混練物の粉砕、材料の添加、及びシェル層の形成)を含む。
(好適な製造工程)
トナーコア材料(トナーコアを形成するための材料)の溶融混練では、少なくとも非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含むトナーコア材料を溶融混練して、分散径が40nm以上150nm以下の範囲内にない結晶性ポリエステル樹脂を含有する混練物を得る。混練物の粉砕では、混練物を粉砕してトナーコアを得る。材料の添加では、水性媒体に、トナーコアと、シェル材料(シェル層の材料)とを入れる。シェル層の形成では、水性媒体中でシェル材料を重合反応させることにより、トナーコア中の結晶性ポリエステル樹脂の分散径を40nm以上150nm以下にするとともに、トナーコアの表面にシェル層を形成する。
上記好適な製造工程を含む方法は、前述の基本構成を有するトナーを容易かつ好適に製造するために有益である。以下、より具体的な例に基づいて、上記好適な製造工程を含む方法についてさらに説明する。この例では、トナーコアがアニオン性を有し、シェル材料(ひいては、シェル層)がカチオン性を有する。トナーコアがアニオン性を有し、シェル材料がカチオン性を有する場合には、液中で負に帯電するトナーコアに、液中で正に帯電するシェル材料が電気的に引き寄せられる。液中でトナーコアにシェル材料が引き寄せられることで、in−situ重合によりトナーコアの表面にシェル層を形成することが可能になる。
(トナーコアの準備)
前述の基本構成を有するトナーを容易に得るためには、粉砕法によりトナーコアを製造することが特に好ましい。
以下、粉砕法の一例について説明する。まず、結着樹脂(例えば、複数種の非結晶性ポリエステル樹脂及び1種類の結晶性ポリエステル樹脂)と、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)とを混合する。続けて、得られた混合物を溶融混練して、分散径が40nm以上150nm以下の範囲内にない結晶性ポリエステル樹脂を含有する混練物を得る。続けて、得られた混練物を粉砕及び分級する。その結果、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。
(シェル層の形成)
水性媒体として、例えばイオン交換水を準備する。続けて、例えば塩酸を用いて水性媒体のpHを所定のpH(以下、シェル材料重合pHと記載する)に調整する。シェル層の形成を促進するためには、シェル材料重合pHは、3以上5以下(弱酸性)であることが好ましい。
続けて、pHが調整された液(例えば、酸性のイオン交換水)に、トナーコアと疎水性樹脂のサスペンション(疎水性樹脂粒子を含む液)とを添加する。疎水性樹脂としては、例えば、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとが架橋剤(例えば、ジビニルベンゼン)により架橋された樹脂を使用できる。シェル層の膜質を向上させるためには、疎水性樹脂粒子の個数平均粒子径は20nm以上50nm以下であることが好ましい。トナーコアがアニオン性を有する場合には、同一極性を有するアニオン界面活性剤を使用することで、トナーコアの凝集を抑制できる。アニオン界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩界面活性剤、スルホン酸塩界面活性剤、リン酸エステル塩界面活性剤、又は石鹸を使用できる。また、必要に応じて、帯電性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を合成するための材料を液中に添加してもよい。
上記シェル材料等は、室温の水性媒体に添加してもよい。ただし、水性媒体の温度を管理することでシェル層の分子量をコントロールすることができる。シェル材料の適切な添加量は、トナーコアの比表面積に基づいて算出できる。また、上記シェル材料等に加えて、重合促進剤を水性媒体中に添加してもよい。
トナーコアの表面に均一にシェル材料を付着させるためには、シェル材料を含む液中にトナーコアを高度に分散させることが好ましい。液中にトナーコアを高度に分散させるために、液中に分散剤を含ませてもよいし、強力な攪拌装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスディスパーミックス」)を用いて液を攪拌してもよい。
続けて、上記シェル材料等を含む液を攪拌しながら液の温度を所定の速度(例えば、0.1℃/分以上3℃/分以下から選ばれる速度)で所定のシェル材料重合温度(例えば、50℃以上85℃以下から選ばれる温度)まで上昇させる。さらに、液を攪拌しながら液の温度をシェル材料重合温度に所定の時間(例えば、30分間以上4時間以下から選ばれる時間)保つ。液の温度を高温に保っている間に、トナーコア中の結晶性ポリエステル樹脂の分散径が40nm以上150nm以下になり、トナーコアの表面にシェル材料が付着する。また、トナーコアの表面でシェル材料が重合反応することで、実質的に樹脂から構成されるシェル層がトナーコアの表面に形成される。粒子状の疎水性樹脂は、液中で溶けて、膜状の形態で硬化すると考えられる。
トナーコア成分の溶出又はトナーコアの変形を抑制するためには、シェル材料重合温度(シェル層硬化時における液の温度)は、トナーコアのガラス転移点(Tg)未満であることが好ましい。しかし、シェル材料重合温度をトナーコアのガラス転移点(Tg)以上にして、あえてトナーコアを変形させてもよい。シェル材料重合温度を高くすると、トナーコアの変形が促進され、トナー母粒子の形状が真球に近づく傾向がある。トナー母粒子が所望の形状になるようにシェル材料重合温度を調整することが望ましい。また、高温でシェル材料を反応させると、シェル層が硬くなり易い。シェル材料重合温度に基づいて、シェル層の分子量を制御することもできる。
上記のようにしてシェル層を硬化させた後、例えば水酸化ナトリウムを用いてトナー母粒子の分散液を中和する。続けて、トナー母粒子の分散液を、例えば常温(約25℃)まで冷却する。続けて、例えばブフナー漏斗を用いて、トナー母粒子の分散液をろ過する。これにより、トナー母粒子が液から分離(固液分離)され、ウェットケーキ状のトナー母粒子が得られる。続けて、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子を洗浄する。続けて、洗浄されたトナー母粒子を乾燥する。その後、必要に応じて、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いてトナー母粒子と外添剤とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。なお、乾燥工程でスプレードライヤーを用いる場合には、外添剤(例えば、シリカ粒子)の分散液をトナー母粒子に噴霧することで、乾燥工程と外添工程とを同時に行うことができる。こうして、トナー粒子を多数含むトナーが製造される。
なお、上記トナーの製造方法の内容及び順序はそれぞれ、要求されるトナーの構成又は特性等に応じて任意に変更することができる。例えば、液(例えば、水性媒体)のpHを調整するタイミングは、前述のシェル材料等(シェル材料及びトナーコア)を液に添加する前でも後でもよい。シェル材料等は、まとめて同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、液にシェル材料等を添加する工程よりも前に、液をシェル材料重合温度まで加熱する工程を行うようにしてもよい。また、液中で材料(例えば、シェル材料)を反応させる場合、液に材料を添加した後、所定の時間、液中で材料を反応させてもよいし、長時間かけて液に材料を添加して、液に材料を添加しながら液中で材料を反応させてもよい。また、シェル材料は、一度に液に添加されてもよいし、複数回に分けて液に添加されてもよい。シェル層の形成方法は任意である。例えば、in−situ重合法、液中硬化被膜法、及びコアセルベーション法のいずれの方法を用いて、シェル層を形成してもよい。また、外添工程の後で、トナーを篩別してもよい。また、必要のない工程は割愛してもよい。例えば、市販品をそのまま材料として用いることができる場合には、市販品を用いることで、その材料を調製する工程を割愛できる。また、液のpHを調整しなくてもシェル材料の重合反応が良好に進行する場合には、pH調整工程を割愛してもよい。また、外添剤が不要であれば、外添工程を割愛してもよい。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させない(外添工程を割愛する)場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。トナーコア材料とシェル材料とはそれぞれ、前述の化合物(樹脂を合成するためのモノマー等)に限られない。例えば、必要に応じて、前述の化合物の誘導体又は塩をトナーコア材料又はシェル材料として使用してもよいし、モノマーに代えてプレポリマーを使用してもよい。また、前述の化合物を得るために、原料として、その化合物の塩、エステル、水和物、又は無水物を使用してもよい。各種材料は、固体状態で使用してもよいし、液体状態で使用してもよい。例えば、固体状態の材料の粉末を使用してもよいし、材料の溶液(溶剤に溶かした液体状態の材料)を使用してもよいし、材料の分散液(固体状態の材料が分散した液体)を使用してもよい。効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に形成することが好ましい。
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係るトナーA−1〜A−9、B−1、B−2、C−1、C−2、及びD−1〜D−3(それぞれ静電潜像現像用トナー)を示す。
Figure 0006398882
以下、トナーA−1〜D−3の製造方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。なお、複数の粒子を含む粉体(より具体的には、トナー母粒子、外添剤、又はトナー等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の個数平均である。誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。また、粉体の粒子径は、何ら規定していなければ、粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)である。また、体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いて測定した値である。また、Tg(ガラス転移点)、Mp(融点)、及びTm(軟化点)の測定方法はそれぞれ、何ら規定していなければ、次に示すとおりである。
<Tg及びMpの測定方法>
測定装置として、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いた。測定装置を用いて試料(例えば、ポリエステル樹脂)の吸熱曲線を測定することにより、試料のTg及びMpを求めた。具体的には、試料(例えば、ポリエステル樹脂)15mgをアルミ皿に入れて、そのアルミ皿を測定装置の測定部にセットした。また、リファレンスとして空のアルミ皿を使用した。吸熱曲線の測定では、測定部の温度を、測定開始温度10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温させた(RUN1)。その後、測定部の温度を150℃から10℃まで10℃/分の速度で降温させた。続けて、測定部の温度を再び10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温させた(RUN2)。RUN2により、試料の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を得た。得られた吸熱曲線から、試料のMp及びTgを読み取った。吸熱曲線中、融解熱による最大ピーク温度が試料のMp(融点)に相当する。また、吸熱曲線中、比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度(オンセット温度)が試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
<Tmの測定方法>
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、ポリエステル樹脂)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTmを読み取った。S字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料のTm(軟化点)に相当する。
また、トナーA−1〜D−3の各々について、前述したCollmanの方法により、結晶性−非結晶性のSP値差(表1中の「SP値差」)を算出した。また、トナーA−1〜D−3の各々について、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて、下記方法により、トナーコア中の結晶性ポリエステル樹脂の分散径(表1中の「分散径」)と、結晶性−非結晶性の位相差(表1中の「位相差」)とをそれぞれ測定した。
<SPMによる測定方法>
試料(トナー)を、スパッタリングにより金でコーティングした後、可視光硬化性樹脂で包埋して、硬化物を得た。その後、超薄切片作製用ナイフ(住友電気工業株式会社製「スミナイフ(登録商標)」:刃幅2mm、刃先角度45°のダイヤモンドナイフ)及びウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて、切削速度0.3mm/秒で硬化物を切削することで、150nmの薄片を作製した。続けて、得られた薄片を、走査型プローブ顕微鏡(株式会社日立ハイテクサイエンス製「多機能型ユニットAFM5200S」)を備えたSPMプローブステーション(株式会社日立ハイテクサイエンス製「NanoNaviReal」)にセットし、次の条件で位相信号及び位相像を測定した。
(SPM測定条件)
・測定探針:低バネ定数シリコンカンチレバー(オリンパス株式会社製「OMCL−AC240TS−C3」、バネ定数:2N/m、共振周波数:70kHz、背面反射コート材:アルミニウム)
・測定モード:SIS−DFM(SIS:サンプリング・インテリジェント・スキャン、DFM:ダイナミック・フォース・モード)
・測定範囲:500nm×500nm
・解像度(Xデータ/Yデータ):512/512
上記測定モード(SIS−DFM)により、カンチレバー(先端部:探針)を共振させた状態で、振動するカンチレバーの振幅が一定になるように探針と試料との間の距離を制御しながら位相信号及び位相像を得た。得られた位相像中には、周囲の部分よりも明らかに位相遅れが大きいドメイン(粒子を示すドメイン)が多数存在していた。これらドメインから任意に20個を選択し、選択された20個のドメインについてそれぞれ、粒子径(最長径)を測定した。そして、得られた20個の測定値(最長径)の算術平均値を、試料(トナー)の評価値(トナーコア中の結晶性ポリエステル樹脂の分散径)とした。
また、上記のようにして得られた位相信号に基づいて、位相遅れのヒストグラム(例えば、図1参照)を得た。そして、得られたヒストグラムから、試料(トナー)に含有される結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂に関して、結晶性ポリエステル樹脂に由来するピークの位相遅れの値(単位:degree)から、非結晶性ポリエステル樹脂に由来するピークの位相遅れの値(単位:degree)を減算することにより、試料(トナー)の評価値(結晶性−非結晶性の位相差)を求めた。
[トナーA−1の製造方法]
(結晶性ポリエステル樹脂Aの合成)
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、エチレングリコール2231gと、スベリン酸5869gと、2−エチルヘキサン酸錫(II)40gと、没食子酸3gとを入れた。続けて、窒素雰囲気かつ温度180℃の条件で、フラスコ内容物を4時間反応させた。続けて、フラスコ内容物を昇温させて、温度210℃で10時間反応させた。続けて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)かつ温度210℃の条件で、フラスコ内容物を1時間反応させた。その結果、Tm88℃、Mp84℃、結晶性指数1.05、SP値11.8J/cm3の結晶性ポリエステル樹脂Aが得られた。
(非結晶性ポリエステル樹脂Aの合成)
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル370gと、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル3059gと、テレフタル酸1194gと、フマル酸286gと、2−エチルヘキサン酸錫(II)10gと、没食子酸2gとを入れた。続けて、窒素雰囲気かつ温度230℃の条件で、反応率が90質量%以上になるまで、フラスコ内容物を反応させた。反応率は、式「反応率=100×実際の反応生成水量/理論生成水量」に従って計算した。続けて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)で、反応生成物(樹脂)のTmが所定の温度(89℃)になるまで、フラスコ内容物を反応させた。その結果、Tm89℃、Tg50℃、SP値11.2J/cm3の非結晶性ポリエステル樹脂Aが得られた。
(非結晶性ポリエステル樹脂Bの合成)
非結晶性ポリエステル樹脂Bの合成方法は、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル370g、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル3059g、テレフタル酸1194g、及びフマル酸286gに代えて、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル1286g、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル2218g、及びテレフタル酸1603gを使用した以外は、非結晶性ポリエステル樹脂Aの合成方法と同じであった。非結晶性ポリエステル樹脂Bに関しては、Tmが111℃、Tgが69℃、SP値が10.4J/cm3であった。
(非結晶性ポリエステル樹脂Cの合成)
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル4907gと、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル1942gと、フマル酸757gと、ドデシルコハク酸無水物2078gと、2−エチルヘキサン酸錫(II)30gと、没食子酸2gとを入れた。続けて、窒素雰囲気かつ温度230℃の条件で、前述の式で表される反応率が90質量%以上になるまで、フラスコ内容物を反応させた。続けて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)で、フラスコ内容物を1時間反応させた。続けて、無水トリメット酸548gをフラスコ内に加えて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)かつ温度220℃の条件で、反応生成物(樹脂)のTmが所定の温度(127℃)になるまで、フラスコ内容物を反応させた。その結果、Tm127℃、Tg75℃、SP値10.7J/cm3の非結晶性ポリエステル樹脂Cが得られた。
(トナーコアの作製)
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、第1結着樹脂(前述の手順で合成した結晶性ポリエステル樹脂A)100gと、第2結着樹脂(前述の手順で合成した非結晶性ポリエステル樹脂A)300gと、第3結着樹脂(前述の手順で合成した非結晶性ポリエステル樹脂B)100gと、第4結着樹脂(前述の手順で合成した非結晶性ポリエステル樹脂C)600gと、着色剤(山陽色素株式会社製「カラ−テックス(登録商標)ブルーB1021」、成分:フタロシアニンブルー)144gと、第1離型剤(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」、成分:カルナバワックス)12gと、第2離型剤(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」、成分:エステルワックス)48gとを、回転速度2400rpmで混合した。トナーA−1において、非結晶性ポリエステル樹脂のSP値(SPA)は10.8J/cm3(=11.2J/cm3×0.3+10.4J/cm3×0.1+10.7J/cm3×0.6)、結晶性ポリエステル樹脂のSP値(SPB)は11.8J/cm3であった。
続けて、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料供給速度5kg/時、軸回転速度160rpm、設定温度(シリンダー温度)100℃の条件で溶融混練した。その後、得られた混練物を冷却した。続けて、冷却された混練物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)16/8型」)を用いて粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製「超音波ジェットミルI型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6μmのトナー母粒子が得られた。
(シェル材料の調製)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水875mLとアニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムル(登録商標)WX」、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、固形分濃度:26質量%)75mLとを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた後、その温度(80℃)に保った。続けて、80℃のフラスコ内容物に2種類の液(第1の液及び第2の液)をそれぞれ5時間かけてフラスコ内に滴下した。第1の液は、スチレン12mLと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)4mLと、アクリル酸ブチル4mLと、ジビニルベンゼン0.5mLとの混合液であった。第2の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30mLに溶かした溶液であった。続けて、フラスコ内の温度を80℃にさらに2時間保って、フラスコ内容物を重合させた。その結果、樹脂微粒子(疎水性樹脂)のサスペンション(以下、サスペンションAと記載する)が得られた。得られたサスペンションAに含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均粒子径は39nmであり、ガラス転移点(Tg)は73℃であった。
(シェル層形成工程)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水300mLを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内容物のpH(シェル材料重合pH)を4に調整した。続けて、フラスコ内に、シェル材料(前述の手順で調製したサスペンションA)15mLを加えて、シェル材料の水溶液を得た。続けて、フラスコ内にトナーコア(前述の手順で作製したトナーコア)300gを添加して、フラスコ内容物を回転速度200rpmで1時間攪拌した。続けて、フラスコ内にイオン交換水300mLを添加した。
続けて、フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら、フラスコ内の温度を1℃/分の速度で70℃(所定のシェル材料重合温度)まで上げた。続けて、温度70℃(シェル材料重合温度)、回転速度100rpmの条件でフラスコ内容物を2時間攪拌した。
続けて、フラスコ内に水酸化ナトリウムを加えて、フラスコ内容物のpHを7に調整した。続けて、フラスコ内容物をその温度が常温(約25℃)になるまで冷却して、トナー母粒子を含む分散液を得た。
(洗浄工程)
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)して、ウェットケーキ状のトナー母粒子を得た。その後、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを5回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。
(乾燥工程)
続けて、得られたトナー母粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、トナー母粒子のスラリーが得られた。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。その結果、トナー母粒子の粉体が得られた。乾燥したトナー母粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果、シェル層に粒状感が見られたが、シェル層を構成する粒子同士は分離していなかった。
(外添工程)
容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、トナー母粒子100質量部と、乾式シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)1質量部と、導電性酸化チタン微粒子(チタン工業株式会社製「EC−100」)0.5質量部とを、5分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤が付着した。その後、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別を行った。その結果、多数のトナー粒子を含むトナーA−1が得られた。得られたトナーA−1に関して、トナーコア中の結晶性ポリエステル樹脂の分散径は44nm、結晶性−非結晶性の位相差は−13°、結晶性−非結晶性のSP値差は1.0であった(表1参照)。
[トナーA−2の製造方法]
トナーA−2の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Aに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Bを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Bの合成)
結晶性ポリエステル樹脂Bの合成方法は、エチレングリコール2231g及びスベリン酸5869gの代わりに、1,2−プロパンジオール2735g及びアジピン酸4922gを使用した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Aの合成方法と同じであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂Bに関して、Tmは90℃、Mpは84℃、結晶性指数は1.07、SP値は11.5J/cm3であった。
[トナーA−3の製造方法]
トナーA−3の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Aに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Cを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Cの合成)
結晶性ポリエステル樹脂Cの合成方法は、エチレングリコール2231gの代わりに1,5−ペンタンジオール3744gを使用した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Aの合成方法と同じであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂Cに関して、Tmは86℃、Mpは79℃、結晶性指数は1.09、SP値は11.9J/cm3であった。
[トナーA−4の製造方法]
トナーA−4の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Aに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Dを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Dの合成)
結晶性ポリエステル樹脂Dの合成方法は、スベリン酸5869gの代わりにコハク酸3978gを使用した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Aの合成方法と同じであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂Dに関して、Tmは104℃、Mpは102℃、結晶性指数は1.02、SP値は11.1J/cm3であった。
[トナーA−5の製造方法]
トナーA−5の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Aに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Eを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Eの合成)
結晶性ポリエステル樹脂Eの合成方法は、エチレングリコール2231g及びスベリン酸5869gの代わりに、エチレングリコール2008g、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル1136g、及びコハク酸3978gを使用した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Aの合成方法と同じであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂Eに関して、Tmは87℃、Mpは92℃、結晶性指数は0.94、SP値は10.9J/cm3であった。
[トナーA−6の製造方法]
トナーA−6の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Aに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Fを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Fの合成)
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、エチレングリコール2232gと、スベリン酸5515gとを入れた。続けて、フラスコ内容物を温度160℃に加熱して、添加した材料を溶解させた。続けて、滴下漏斗を用いて、スチレン等の混合液(スチレン488gとアクリル酸52gとジクミルパーオキサイド29gとの混合液)を1時間かけてフラスコ内に滴下した。続けて、フラスコ内容物を攪拌しながら温度170℃で1時間反応させて、フラスコ内のスチレン及びアクリル酸を重合させた。その後、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)に1時間保って、フラスコ内の未反応のスチレン及びアクリル酸を除去した。続けて、2−エチルヘキサン酸錫(II)40gと、没食子酸3gとを、フラスコ内に加えた。続けて、フラスコ内容物を昇温させて、温度210℃で8時間反応させた。続けて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)かつ温度210℃の条件で、フラスコ内容物を1時間反応させた。その結果、Tm90℃、Mp83℃、結晶性指数1.09、SP値10.6J/cm3の結晶性ポリエステル樹脂Fが得られた。
[トナーA−7の製造方法]
トナーA−7の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Fに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Gを使用した以外は、トナーA−6の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Gの合成)
結晶性ポリエステル樹脂Gの合成方法は、各材料の添加量に関して、エチレングリコールの2232gを1984gに、スベリン酸の5515gを4345gに、スチレンの488gを1831gに、アクリル酸の52gを161gに、ジクミルパーオキサイドの29gを110gに、それぞれ変更した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Fの合成方法と同じであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂Gに関して、Tmは90℃、Mpは83℃、結晶性指数は1.09、SP値は10.3J/cm3であった。
[トナーA−8の製造方法]
トナーA−8の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Fに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Hを使用した以外は、トナーA−6の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Hの合成)
結晶性ポリエステル樹脂Hの合成方法は、エチレングリコール2232g及びスベリン酸5515gの代わりに、1,6−ヘキサンジオール2974g、1,4−ブタンジオール972g、及びコハク酸3739gを使用した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Fの合成方法と同じであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂Hに関して、Tmは92℃、Mpは91℃、結晶性指数は1.01、SP値は10.4J/cm3であった。
[トナーA−9の製造方法]
トナーA−9の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂Fに代えて、下記方法により合成された結晶性ポリエステル樹脂Iを使用した以外は、トナーA−6の製造方法と同じであった。
(結晶性ポリエステル樹脂Iの合成)
結晶性ポリエステル樹脂Iの合成方法は、エチレングリコール1984g及びスベリン酸4345gの代わりに、1,6−ヘキサンジオール2643g、1,4−ブタンジオール864g、及びコハク酸2945gを使用した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Gの合成方法と同じであった。得られた結晶性ポリエステル樹脂Iに関して、Tmは92℃、Mpは96℃、結晶性指数は0.95、SP値は10.0J/cm3であった。
[トナーB−1の製造方法]
トナーB−1の製造方法は、溶融混練の温度(シリンダー温度)を100℃から120℃に変更した以外は、トナーA−8の製造方法と同じであった。
[トナーB−2の製造方法]
トナーB−2の製造方法は、溶融混練の温度(シリンダー温度)を100℃から120℃に変更した以外は、トナーA−9の製造方法と同じであった。
[トナーC−1の製造方法]
トナーC−1の製造方法は、シェル材料重合温度を70℃から60℃に変更した以外は、トナーA−2の製造方法と同じであった。
[トナーC−2の製造方法]
トナーC−2の製造方法は、シェル材料重合温度を70℃から60℃に変更した以外は、トナーA−3の製造方法と同じであった。
[トナーD−1の製造方法]
トナーD−1の製造方法は、第1結着樹脂(結晶性ポリエステル樹脂A)の使用量を100gから150gに変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じであった。
[トナーD−2の製造方法]
トナーD−2の製造方法は、第1結着樹脂(結晶性ポリエステル樹脂A)の使用量を100gから150gに変更した以外は、トナーA−6の製造方法と同じであった。
[トナーD−3の製造方法]
トナーD−3の製造方法は、第1結着樹脂(結晶性ポリエステル樹脂A)の使用量を100gから150gに変更した以外は、トナーA−7の製造方法と同じであった。
[評価方法]
各試料(トナーA−1〜D−3)の評価方法は、以下のとおりである。
(最低定着温度)
現像剤用キャリア(FS−C5250DN用キャリア)100質量部と、試料(トナー)5質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。
上述のようにして調製した2成分現像剤を用いて画像を形成して、最低定着温度を評価した。評価機としては、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着器を備えるカラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。上述のようにして調製した2成分現像剤を評価機の現像器に投入し、試料(補給用トナー)を評価機のトナーコンテナに投入した。
上記評価機を用いて、90g/m2の紙(A4サイズの評価用紙)に、線速200mm/秒、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、大きさ25mm×25mmのソリッド画像を形成した。続けて、画像が形成された紙を評価機の定着器に通した。
最低定着温度の評価では、定着温度の設定範囲が100℃以上200℃以下であった。詳しくは、定着器の定着温度を100℃から5℃ずつ(ただし、最低定着温度付近では2℃ずつ)上昇させて、ソリッド画像(トナー像)を紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。トナーを定着させることができたか否かは、以下に示すような折擦り試験で確認した。詳しくは、定着器に通した評価用紙を、画像を形成した面が内側となるように半分に折り曲げ、布帛で被覆した1kgの分銅を用いて、折り目上の画像を5往復摩擦した。続けて、紙を広げ、紙の折り曲げ部(ソリッド画像が形成された部分)を観察した。そして、折り曲げ部のトナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm以下となる定着温度のうちの最低温度を、最低定着温度とした。最低定着温度が145℃以下であれば○(良い)と評価し、最低定着温度が145℃を超えれば×(良くない)と評価した。
(耐熱保存性)
試料(トナー)2gを容量20mLのポリ容器に入れて、その容器を、58℃に設定された恒温器内に3時間静置した。その後、恒温槽から取り出したトナーを室温まで冷却して、評価用トナーを得た。
続けて、得られた評価用トナーを、質量既知の100メッシュ(目開き150μm)の篩に載せた。そして、トナーを含む篩の質量を測定し、篩別前のトナーの質量を求めた。続けて、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)に篩をセットし、パウダーテスターのマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5の条件で30秒間、篩を振動させ、評価用トナーを篩別した。そして、篩別後に、トナーを含む篩の質量を測定することで、篩上に残留したトナーの質量を求めた。篩別前のトナーの質量と、篩別後のトナーの質量(篩別後に篩上に残留したトナーの質量)とから、次の式に基づいて凝集度(質量%)を求めた。
凝集度(質量%)=100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量
凝集度が50質量%以下であれば○(良い)と評価し、凝集度が50質量%を超えれば×(良くない)と評価した。
(電荷減衰定数)
試料(トナー)の電荷減衰定数(電荷減衰速度)を評価した。評価機としては、静電気拡散率測定装置(株式会社ナノシーズ製「NS−D100」)を用いた。評価方法は、JIS(日本工業規格)C 61340−2−1−2006に準拠した方法であった。以下、電荷減衰定数の評価方法について詳述する。
測定セルに試料(トナー)を入れた。測定セルは、内径10mm、深さ1mmの凹部が形成された金属製のセルであった。スライドガラスを用いて試料を上から押し込み、セルの凹部に試料を充填した。セルの表面においてスライドガラスを往復移動させることによって、セルから溢れた試料を除去した。試料の充填量は50mgであった。
続けて、試料が充填された測定セルを、温度32℃かつ湿度80%RHの環境下で12時間静置した。続けて、接地させた測定セルを評価機にセットし、評価機の表面電位計のゼロ調整を行った。続けて、電圧10kV、帯電時間0.5秒間の条件で、コロナ放電によって試料を帯電させた。そして、コロナ放電終了後0.7秒経過した後から、試料の表面電位を連続的に測定した。測定された表面電位と、式「V=V0exp(−α√t)」とに基づいて、電荷減衰定数αを算出した。式中、Vは表面電位[V]、V0は初期表面電位[V]、tは減衰時間[秒]をそれぞれ示す。
電荷減衰定数が0.025以下であれば○(良い)と評価し、電荷減衰定数が0.025を超えれば×(良くない)と評価した。
[評価結果]
各試料(トナーA−1〜D−3)についての評価結果を、表2に示す。表2には、最低定着温度、耐熱保存性、及び電荷減衰定数の各々の評価結果を示す。
Figure 0006398882
トナーA−1、A−2、A−4、A−6、A−7、B−1、及びB−2(実施例1〜7に係るトナー)はそれぞれ、前述の基本構成を有していた。詳しくは、実施例1〜7に係るトナーではそれぞれ、トナー粒子が、結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂と、非結晶性ポリエステル樹脂中に分散した粒子状の結晶性ポリエステル樹脂とを含有していた。また、実施例1〜7に係るトナーではそれぞれ、表1に示されるように、結晶性ポリエステル樹脂の分散径が40nm以上150nm以下であった。また、実施例1〜7に係るトナーではそれぞれ、表1に示されるように、走査型プローブ顕微鏡のダイナミックモードで、トナー粒子の断面における走査型プローブ顕微鏡の探針の位相遅れを測定した場合に、非結晶性ポリエステル樹脂上での探針の位相遅れAと結晶性ポリエステル樹脂上での探針の位相遅れBとが、関係式「−22°≦B−A≦−13°」を満たしていた。また、実施例1〜7に係るトナーではそれぞれ、表1に示されるように、非結晶性ポリエステル樹脂のSP値(SPA)と結晶性ポリエステル樹脂のSP値(SPB)とが、関係式「0.2J/cm3≦|SPA−SPB|≦1.0J/cm3」を満たしていた。
実施例1〜7に係るトナーはそれぞれ、表2に示されるように、トナーA−3及びD−1〜D−3(比較例1及び7〜9に係るトナー)と比べて、帯電減衰しにくかった。また、実施例1〜7に係るトナーはそれぞれ、表2に示されるように、トナーA−3、A−5、C−1、及びC−2(比較例1、2、5、及び6に係るトナー)と比べて、低温定着性に優れていた。また、実施例1〜7に係るトナーはそれぞれ、表2に示されるように、トナーA−8及びA−9(比較例3及び4に係るトナー)と比べて、耐熱保存性に優れていた。
実施例1〜7に係るトナーの各々の製造方法は、前述の好適な製造工程(トナーコア材料の溶融混練、混練物の粉砕、材料の添加、及びシェル層の形成)を含む方法であった。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、例えば複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。

Claims (6)

  1. コアと、前記コアの表面に形成されたシェル層とを備え、前記コアに結着樹脂を含有するトナー粒子を、複数含む静電潜像現像用トナーであって、
    前記トナー粒子は、前記結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂と、前記非結晶性ポリエステル樹脂中に分散した粒子状の結晶性ポリエステル樹脂とを含有し、
    前記結晶性ポリエステル樹脂は、ジオール類としてエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び1,4−ブタンジオールのうちの少なくとも1つに由来する繰り返し単位を含み、2価カルボン酸としてスベリン酸及びコハク酸、並びにアジピン酸のうちの少なくとも1つに由来する繰り返し単位を含み更にスチレン系モノマーとしてのスチレンに由来する繰り返し単位を含み、アクリル酸系モノマーとしてのアクリル酸に由来する繰り返し単位を含み
    前記非結晶性ポリエステル樹脂は、ビスフェノール類としてポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル及びポリオキシエチレンビスフェノールAエーテルに由来する繰り返し単位を含み、2価カルボン酸としてテレフタル酸又は、フマル酸及びドデシルコハク酸無水物の何れかに由来する繰り返し単位を含み
    前記結晶性ポリエステル樹脂の分散径は40nm以上150nm以下であり、
    走査型プローブ顕微鏡のダイナミックモードで、前記トナー粒子の断面における前記走査型プローブ顕微鏡の探針の位相遅れを測定した場合に、前記非結晶性ポリエステル樹脂上での前記探針の位相遅れAと前記結晶性ポリエステル樹脂上での前記探針の位相遅れBとが、関係式「−22°≦B−A≦−13°」を満たす、静電潜像現像用トナー。
  2. 前記シェル層が、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとが架橋剤により架橋された樹脂を含有する、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記架橋された樹脂が、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、又はメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルに由来するアルコール性水酸基を有する、請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。
  4. 前記シェル層を構成する前記樹脂のガラス転移点は73℃である、請求項2又は3に記載の静電潜像現像用トナー。
  5. 前記非結晶性ポリエステル樹脂は、軟化点の異なる3種類の非結晶性ポリエステル樹脂を含み、前記軟化点は、それぞれ、89℃、111℃、127℃である、請求項1〜4の何れか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  6. 請求項2又は3に記載の静電潜像現像用トナーを製造する方法であって、
    少なくとも前記非結晶性ポリエステル樹脂及び前記結晶性ポリエステル樹脂を含む前記コアの材料を溶融混練して、前記結晶性ポリエステル樹脂を含有する混練物を得ることと、
    前記混練物を粉砕して前記コアを得ることと、
    水性媒体に、前記コアと、前記シェル層の材料とを入れることと、
    前記水性媒体中で前記シェル層の材料を重合反応させることにより、前記コア中の前記結晶性ポリエステル樹脂の分散径を40nm以上150nm以下にするとともに、前記コアの表面に前記シェル層を形成することと、
    を含む、静電潜像現像用トナーの製造方法。
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