JP6397973B1 - 光導波路素子及び波長フィルタ - Google Patents
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Abstract
【課題】フォトニック結晶を利用し、入力された光を異なるモードに変換して反射できる光導波路素子を提供する。
【解決手段】モード変換部、モード変換部の一端に隣接して形成された第1補償部、及びモード変換部の他端に隣接して形成された第2補償部を含む光導波路コアと、光導波路コアを包含するクラッドとを備える。モード変換部には、周期的に形成された複数の空孔を含む第1空孔群、及び第2空孔群を含むフォトニック結晶が形成されている。フォトニック結晶は、波長λに対し、第1空孔群及び第2空孔群の周期をΛ、基本モードに対する等価屈折率をn0、q次モードに対する等価屈折率nqとして、2π/Λ=2π(n0+nq)/λを満たす。第1補償部及び第2補償部には、それぞれ1又は複数のサブ空孔が形成されており、第1補償部及び第2補償部は、特定の波長λの基本モードの光を基本モードのまま反射する。
【選択図】図1
【解決手段】モード変換部、モード変換部の一端に隣接して形成された第1補償部、及びモード変換部の他端に隣接して形成された第2補償部を含む光導波路コアと、光導波路コアを包含するクラッドとを備える。モード変換部には、周期的に形成された複数の空孔を含む第1空孔群、及び第2空孔群を含むフォトニック結晶が形成されている。フォトニック結晶は、波長λに対し、第1空孔群及び第2空孔群の周期をΛ、基本モードに対する等価屈折率をn0、q次モードに対する等価屈折率nqとして、2π/Λ=2π(n0+nq)/λを満たす。第1補償部及び第2補償部には、それぞれ1又は複数のサブ空孔が形成されており、第1補償部及び第2補償部は、特定の波長λの基本モードの光を基本モードのまま反射する。
【選択図】図1
Description
この発明は、フォトニック結晶によって特定の波長の光を反射する光導波路素子及びこれを備える波長フィルタに関する。
近年、小型化や量産性に有利な光デバイスの開発に当たり、Si(シリコン)を導波路の材料として用いるSi導波路が注目を集めている。
Si導波路では、実質的に光の伝送路となる光導波路コアを、Siを材料として形成する。そして、Siよりも屈折率の低い例えばシリカ等を材料としたクラッドで、光導波路コアの周囲を覆う。このような構成により、光導波路コアとクラッドとの屈折率差が極めて大きくなるため、光導波路コア内に光を強く閉じ込めることができる。その結果、曲げ半径を例えば1μm程度まで小さくした、小型の曲線導波路を実現することができる。そのため、電子回路と同程度の大きさの光回路を作成することが可能であり、光デバイス全体の小型化に有利である。
また、Si導波路では、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の半導体装置の製造過程を流用することが可能である。そのため、チップ上に電子機能回路と光機能回路とを一括形成する光電融合(シリコンフォトニクス)の実現が期待されている。
ところで、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplex)方式を利用した受動型光加入者ネットワーク(PON:Passive Optical Network)では、加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)毎に異なる受信波長が割り当てられる。局側装置(OLT:Optical Line Terminal)は、各ONUへの下り光信号を、送り先の受信波長に対応した送信波長でそれぞれ生成し、これらを多重して送信する。各ONUは、複数の波長で多重された下り光信号から、自身に割り当てられた受信波長の光信号を選択的に受信する。ONUでは、各々の受信波長の下り光信号を選択的に受信するために、波長フィルタが使用される。そして、波長フィルタを、上述したSi導波路によって構成する技術が実現されている。
Si導波路を用いる波長フィルタとしては、例えば、マッハツェンダー干渉器を用いたものやアレイ導波路グレーティングを用いたものがある。また、Si導波路を用いる波長フィルタとして、リング共振器(例えば特許文献1〜3参照)や、グレーティング型(例えば特許文献4参照)又は方向性結合器型(例えば特許文献5参照)の波長フィルタがある。これらの波長フィルタは、電極を設け、電圧を印可することによって、出力波長を可変にできるという利点がある。さらに、グレーティングと同様に、光を回折させることによって、特定の波長を逆方向に反射させる素子として、フォトニック結晶と呼ばれる構造がある。
フォトニック結晶は高い回折効率を有するため、波長フィルタとして利用した場合、高効率に波長分離できることが期待される。しかしながら、従来のフォトニック結晶は、基本モード間の逆方向への回折を行う構造であり、機能が限られている。そして、入力された光を異なるモードに変換して反射するフォトニック結晶については知られていなかった。
そこで、この発明の目的は、フォトニック結晶を利用した光導波路素子であって、入力された光を異なるモードに変換して反射できる光導波路素子、及びこれを利用した波長フィルタを提供することにある。
上述した目的を達成するために、この発明による光導波路素子は、第1仮想線分、及び第1仮想線分と平行な第2仮想線分に沿い、かつ第1仮想線分及び第2仮想線分と重なる位置に設けられた光導波路コアと、光導波路コアを包含するクラッドとを備える。
光導波路コアは、第1仮想線分及び第2仮想線分に沿って直列に接続された、モード変換部と、モード変換部の一端に隣接して形成された第1補償部と、モード変換部の他端に隣接して形成された第2補償部とを含む。モード変換部には、第1仮想線分と重なる位置に配列して周期的に形成された複数の空孔を含む第1空孔群、及び第2仮想線分と重なる位置に配列して、第1空孔群と同一周期で、かつ第1空孔群に含まれる空孔と半周期ずれた位置に形成された複数の空孔を含む第2空孔群を含むフォトニック結晶が形成されている。フォトニック結晶は、特定の波長λに対し、第1空孔群に含まれる空孔及び第2空孔群に含まれる空孔の周期をΛ、基本モードに対する等価屈折率をn0、q(qはq>0の整数)次モードに対する等価屈折率をnqとして、2π/Λ=2π(n0+nq)/λを満たす。第1補償部及び第2補償部には、それぞれ1又は複数のサブ空孔が形成されており、第1補償部及び第2補償部は、特定の波長λの基本モードの光を基本モードのまま反射する。
また、この発明による第1の要旨による波長フィルタは、上述した光導波路素子と、結合部を含む出力導波路コアとを備える。光導波路コアは、モード変換部と直列に接続され、基本モード及びq次モードの光を伝播させる多モード導波路部をさらに含む。第1補償部は、多モード導波路部の一部として形成されている。クラッドは、光導波路コア及び出力導波路コアを包含する。多モード導波路部と結合部とが、互いに離間しかつ並んで配置された結合領域が設定されている。結合領域では、多モード導波路部を伝播するq次モードの光と、結合部を伝播するr(rはr≧0の整数)次モードの光とが結合される。
また、この発明による第2の要旨による波長フィルタは、上述した光導波路素子を備える。光導波路コアは、第1仮想線分及び第2仮想線分に沿って直列に接続されたn個(nは2以上の整数)のモード変換部並びに第1補償部及び第2補償部と、n−1個のキャビティ部とを含む。モード変換部とキャビティ部とは、交互に接続されている。キャビティ部を挟んで隣り合うモード変換部間に存在する第1補償部及び第2補償部は、隣り合うモード変換部間に挟まれたキャビティ部の一部として形成されている。キャビティ部は、キャビティ部を伝播する、特定の波長の基本モードの光の位相を整合させる。
この発明の光導波路素子では、モード変換部に、2列の空孔群(第1空孔群及び第2空孔群)を含むフォトニック結晶を形成することによって、特定の波長の基本モードの光を、1次モードに変換して反射することができる。
また、この発明の波長フィルタでは、上述した光導波路素子を用いることによって、特定の波長とその他の波長とを分離し、経路を切り替えて取り出すことができる。そして、フォトニック結晶を利用することによって、高い回折効率で特定の波長の光を反射させることができる。従って、高効率に波長分離及び経路切替を行うことができる。
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
(光導波路素子)
図1を参照して、この発明の光導波路素子について説明する。図1(A)は、光導波路素子を示す概略的平面図である。図1(B)は、図1(A)に示す光導波路素子をI−I線で切り取った概略的端面図である。なお、図1(A)では、後述する光導波路コアのみを示してあり、クラッド、支持基板及び電極を省略している。
図1を参照して、この発明の光導波路素子について説明する。図1(A)は、光導波路素子を示す概略的平面図である。図1(B)は、図1(A)に示す光導波路素子をI−I線で切り取った概略的端面図である。なお、図1(A)では、後述する光導波路コアのみを示してあり、クラッド、支持基板及び電極を省略している。
なお、以下の説明では、各構成要素について、光の伝播方向に沿った方向を長さ方向とする。また、支持基板の厚さに沿った方向を厚さ方向とする。また、長さ方向及び厚さ方向に直交する方向を幅方向とする。
光導波路素子100は、支持基板10、クラッド20、光導波路コア30及び電極40を備えて構成されている。
支持基板10は、例えば単結晶Siを材料とした平板状体で構成されている。
クラッド20は、支持基板10上に、支持基板10の上面10aを被覆し、かつ光導波路コア30を包含して形成されている。クラッド20は、例えばSiO2を材料として形成されている。
光導波路コア30は、クラッド20よりも高い屈折率を有する例えばSiを材料として形成されている。その結果、光導波路コア30は、実質的な光の伝送路として機能し、入力された光が光導波路コア30の平面形状に応じた伝播方向に伝播する。また、光導波路コア30は、伝播する光が支持基板10へ逃げるのを防止するために、支持基板10から例えば少なくとも1μm以上離間して形成されているのが好ましい。
ここでは、光導波路コア30は、厚さ方向でシングルモード条件を達成すべく、例えば200〜500nmの範囲内の厚さとするのが好ましい。例えば1550nmの波長の光を伝播させる場合には、光導波路コア30を200〜300nmの範囲内の厚さとするのが好ましい。
また、光導波路コア30は、第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1仮想線分L1、第3点P3と第4点P4とを結ぶ第2仮想線分L2に沿い、かつこれら第1仮想線分L1及び第2仮想線分L2と重なる位置に設けられている。なお、第2仮想線分L2は、第1仮想線分L1と平行である。
さらに、光導波路コア30は、第1仮想線分L1及び第2仮想線分L2に沿って直列に接続されたモード変換部31と1対の補償部(第1補償部131a及び第2補償部131b)とを含む。
モード変換部31にはフォトニック結晶が形成されている。フォトニック結晶は、モード変換部31に、第1空孔群61及び第2空孔群62が形成されることによって構成される。
第1空孔群61は、第1仮想線分L1と重なる位置に配列して周期的に形成された複数の空孔51を含む。また、第2空孔群62は、第2仮想線分L2と重なる位置に配列して、第1空孔群61と同一周期で形成された複数の空孔52を含む。そして、第1空孔群61に含まれる空孔51と第2空孔群62に含まれる空孔52とは、互いに半周期ずれた位置に形成されている。
空孔51及び52は、モード変換部31を厚さ方向に貫通して形成される。また、ここでは、空孔51及び52は、厚さ方向に直交する断面形状が円形とされている。
フォトニック結晶は、入力される特定の波長λのTE(Transverse Electric)偏波の光を、基本モードから1次モードに変換して反射する。また、フォトニック結晶は、その他の波長の光を、基本モードのままで透過させる。
フォトニック結晶における位相整合条件は、空孔51及び52の形成周期をΛ、基本モードのTE偏波に対する等価屈折率をn0、1次モードのTE偏波に対する等価屈折率をn1として、下式(1)で表される。
2π/Λ=2π(n0+n1)/λ ・・・(1)
フォトニック結晶では、上式(1)が成立する波長λ、すなわちブラッグ波長のTE偏波がブラッグ反射される。従って、空孔51及び52の周期は、所望の反射すべき波長λに対して上式(1)が成立するように設計される。また、モード変換部31の幅や空孔51及び52の直径等、その他の設計についても、所望の反射すべき波長λに応じて設計される。
フォトニック結晶では、上式(1)が成立する波長λ、すなわちブラッグ波長のTE偏波がブラッグ反射される。従って、空孔51及び52の周期は、所望の反射すべき波長λに対して上式(1)が成立するように設計される。また、モード変換部31の幅や空孔51及び52の直径等、その他の設計についても、所望の反射すべき波長λに応じて設計される。
ここで、フォトニック結晶の変形例として、空孔51及び52がそれぞれ固有の直径を持ち、直径に少なくとも2以上の値がある構成とすることができる。図2を参照して、フォトニック結晶の変形例について説明する。図2は、フォトニック結晶の変形例を説明するための概略的平面図である。なお、図2では、モード変換部のみを示し、その他の構成を省略してある。
図2に示す構成例では、第1周期目の空孔51及び52の直径に対して、周期毎に直径が増加する。空孔51及び52の直径は、モード変換部31の長さ方向における中心付近の空孔51及び52で最大となる。そして、空孔51及び52の直径は、最大となる空孔51及び52以降減少する。
このように、空孔51及び52の直径が異なる値を持つことによって、フォトニック結晶における光の散乱を抑制することができる。なお、空孔51及び52の直径の変化量は、反射すべき波長λ及び回折効率に応じて設計される。
第1補償部131a及び第2補償部131bは、モード変換部31を挟んでモード変換部31の両端31a及び31bに隣接してそれぞれ形成されている。モード変換部31の一端31aに第1補償部131aが、また、モード変換部31の他端31bに第2補償部131bが形成されている。
第1補償部131a及び第2補償部131bには、それぞれサブ空孔90が形成されている。サブ空孔90は、第1補償部131a及び第2補償部131bの幅方向における中央に形成されている。また、サブ空孔90は、第1補償部131a及び第2補償部131bを厚さ方向に貫通して形成される。ここでは、サブ空孔90は、厚さ方向に直交する断面形状が円形とされている。
サブ空孔90が形成されていることにより、第1補償部131a及び第2補償部131bは、上述した特定の波長λの基本モードの光を基本モードのまま反射する。
なお、第1補償部131a及び第2補償部131bには、サブ空孔90を複数形成することもできる。この場合には、第1補償部131a及び第2補償部131bの長さ方向に沿って、複数のサブ空孔90を配列する。
電極40は、クラッド20を介して、モード変換部31を被覆する位置に形成される。電極40に電流を流すことでジュール熱を発生させ、この発熱による熱光学効果によって、モード変換部31の屈折率を変化させる。その結果、モード変換部31による反射波長を変化させることができる。
以上に説明したように、光導波路素子100では、モード変換部31に、2列の空孔群(第1空孔群61及び第2空孔群62)を含むフォトニック結晶を形成することによって、特定の波長の基本モードのTE偏波を、1次モードのTE偏波に変換して反射することができる。
従って、光導波路素子100を用いることにより、フォトニック結晶を透過する特定の波長の光を取り出す波長フィルタを構成することができる。
ここで、フォトニック結晶の両端部(すなわちモード変換部31の両端部)では、基本モードと1次モードとの間の反射回折のみならず、不所望な基本モード間の反射回折が生じ、基本モードの入力光が基本モードのまま反射されてしまうことが、FDTD(Finite Differential Time Domain)を用いたシミュレーションにより判明した。しかし、光導波路素子100では、モード変換部31の両端に第1補償部131a及び第2補償部131bが設けられている。上述したように、第1補償部131a及び第2補償部131bは、基本モードの光を基本モードのまま反射する。この結果、モード変換部31で不所望に生じる基本モード間の反射回折を、第1補償部131a及び第2補償部131bにおける基本モード間の反射回折により打ち消すことができる。従って、光導波路素子100では、モード変換部31から、基本モードの反射光が逆行するのを防ぐことができる。
また、光導波路素子100では、電極40を用いてモード変換部31に熱を与えることができる。そのため、フォトニック結晶が反射及び透過させる光の波長を変化させることができる。従って、光導波路素子100を用いることにより、出力波長が可変な波長フィルタを構成することができる。
なお、この実施の形態では、モード変換部31のフォトニック結晶において、特定の波長の光を、基本モードから1次モードに変換して反射する構成について説明した。しかし、モード変換部31のフォトニック結晶が、基本モードの特定の波長の光を、q次モード(qはq>0)に変換して反射する構成とすることもできる。その場合には、モード変換部31のフォトニック結晶における位相整合条件は、空孔51及び52の形成周期をΛ、基本モードの光に対する等価屈折率をn0、q次モードの光に対する等価屈折率をnqとして、下式(2)で表される。
2π/Λ=2π(n1+nq)/λ ・・・(2)
フォトニック結晶では、上式(2)が成立する波長λ、すなわちブラッグ波長の光がブラッグ反射される。フォトニック結晶は、反射すべき波長λに対して上式(2)が成立するように設計される。
フォトニック結晶では、上式(2)が成立する波長λ、すなわちブラッグ波長の光がブラッグ反射される。フォトニック結晶は、反射すべき波長λに対して上式(2)が成立するように設計される。
そして、q次モードが、振幅分布が反対称である奇数次モードである場合には、空孔51と空孔52とが、互いに半周期ずれた位置に形成される。また、q次モードが、振幅分布が対称である偶数次モードである場合には、空孔51及び空孔52の形成位置を、周期をずらすことなく一致させる。すなわち空孔51と空孔52とが互いに対称となる位置に形成される。
また、この実施の形態では、空孔51及び52がモード変換部31を厚さ方向に貫通して形成される構成について説明した。しかし、空孔51及び52は、モード変換部31の上面からこのモード変換部31の厚さ方向の中途まで、モード変換部31を掘り込んで(すなわちモード変換部31を貫通させずに)形成することもできる。この場合には、出力光の波長ピークに***が生じるのを抑制できることが、FDTDを用いたシミュレーションにより判明した。同様に、サブ空孔90についても、第1補償部131a及び第2補償部131bを貫通させずに、第1補償部131a及び第2補償部131bの中途まで掘り込んで形成することができる。
(特性評価)
発明者は、FDTDを用いて、光導波路素子100の特性を評価するシミュレーションを行った。
発明者は、FDTDを用いて、光導波路素子100の特性を評価するシミュレーションを行った。
まず、第1のシミュレーションとして、光導波路素子100におけるサブ空孔90の形成位置に関するシミュレーションを行った。
第1のシミュレーションでは、光導波路素子100について、第1補償部131a側から光導波路コア30に基本モードのTE偏波を入力し、モード変換部31において生じる基本モード間の反射回折によって、第1補償部131a側に反射される基本モードの光の強度(すなわち基本モード間の回折量)を測定した。ここでは、第1補償部131aのサブ空孔90と最も一端31a側に位置する空孔51又は52(ここでは、図1(A)において紙面の最も左端に存在する空孔52)との長さ方向に沿った中心間距離(以下、サブ空孔90と空孔52との中心間距離とも称する)を変化させつつ、基本モード間の回折量を測定した。
第1のシミュレーションでは、モード変換部31のフォトニック結晶において、波長1550nmの基本モードのTE偏波を1次モードに変換して反射する設計として、以下のように光導波路素子100を設計した。すなわち、光導波路コア30の厚さを200nmとした。また、モード変換部31の幅を1000nmとした。また、空孔51及び空孔52の形成周期を326μmとし、空孔51及び空孔52をそれぞれ20個ずつ形成する場合を想定した。また、空孔51及び空孔52の直径を100nmとした。また、空孔51及び空孔52間の、モード変換部31の幅方向に沿った中心間距離を500nmとした。
なお、この第1のシミュレーションでは、モード変換部31には他端31bが存在しないものとした。従って、第1のシミュレーションにおいては、モード変換部31の他端31b側における基本モード間の回折は生じず、第2補償部131bについても省略した。しかし、実際の光導波路素子100において、モード変換部31の他端31b側で生じる基本モード間の回折は、一端31a側と同様である。このため、第2補償部131bのサブ空孔90の形成位置と基本モード間の回折量との関係についても、この第1のシミュレーションの結果を適用することができる。
第1のシミュレーションの結果を図3(A)に示す。図3(A)では、縦軸に、基本モード間の回折量をdB目盛で、また、横軸にサブ空孔90と空孔52との中心間距離をμm単位でとって示してある。
図3(A)に示すように、サブ空孔90と空孔52との中心間距離が0.23μmのとき、基本モード間の反射回折が−30dB以下に抑えられていることがわかる。このように、設計に応じて、最適なサブ空孔90と空孔52との中心間距離を設定することにより、不所望な基本モード間の反射回折を抑制することができる。
次に、第2のシミュレーションとして、光導波路素子100における波長特性に関するシミュレーションを行った。
第2のシミュレーションでは、光導波路素子100について、第1補償部131a側から光導波路コア30に基本モードのTE偏波を入力し、モード変換部31において生じる基本モードと1次モードとの間の反射回折によって、第1補償部131a側に反射される1次モードの光の強度(すなわち基本モードと1次モードとの間の回折量)、及びモード変換部31において生じる基本モード間の反射回折によって、第1補償部131a側に反射される基本モードの光の強度(すなわち基本モード間の回折量)を測定した。
第2のシミュレーションでは、サブ空孔90と空孔52との中心間距離として、上述した第1のシミュレーションによって求めた最適値(0.23μm)を採用した。その他の設計条件については、第1のシミュレーションと同様である。
第2のシミュレーションの結果を図3(B)に示す。図3(B)では、縦軸に、光強度をdB目盛で、また、横軸に波長をnm単位でとって示してある。図3(B)において、曲線101は、1次モードの反射光の強度を、また、曲線103は、基本モードの反射光の強度をそれぞれ示している。
図3(B)に示すように、設計波長である1550nm付近において、約125nmの広い波長範囲で、基本モードが1次モードに変換されつつ反射されたことが確認された。
また、設計波長である1550nm付近において、基本モード間の反射回折が−30dB以下に抑えられることが確認された。
また、設計波長である1550nm付近において、基本モード間の反射回折が−30dB以下に抑えられることが確認された。
(第1の波長フィルタ)
図4を参照して、上述した光導波路素子100(図1参照)を利用した第1の波長フィルタについて説明する。図4は、第1の波長フィルタを示す概略的平面図である。なお、図4では、光導波路コア及び後述する出力導波路コアのみを示してあり、クラッド、支持基板及び電極を省略している。また、光導波路素子100と共通する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図4を参照して、上述した光導波路素子100(図1参照)を利用した第1の波長フィルタについて説明する。図4は、第1の波長フィルタを示す概略的平面図である。なお、図4では、光導波路コア及び後述する出力導波路コアのみを示してあり、クラッド、支持基板及び電極を省略している。また、光導波路素子100と共通する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
第1の波長フィルタ200は、上述した光導波路素子100に、出力導波路コア70を追加して構成されている。また、光導波路コア30は、上述したモード変換部31並びに第1補償部131a及び第2補償部131bに追加して、入力部32、入力側テーパ部33、多モード導波路部34、出力側テーパ部35及び出力部36を含んでいる。入力部32、入力側テーパ部33、多モード導波路部34、モード変換部31、第2補償部131b、出力側テーパ部35及び出力部36は、この順に直列に接続されている。
なお、第1補償部131aは、多モード導波路部34の一部として形成されている。従って、多モード導波路部34の、モード変換部31側の端付近には、サブ空孔90が形成されている。そして、多モード導波路部34のサブ空孔90が形成された領域が、第1補償部131aとして機能する。
入力部32は、TE偏波の伝播光に対してシングルモード条件を達成する幅に設定されている。
入力側テーパ部33は、入力部32と接続された一端33aから、多モード導波路部34と接続された他端33bへ、連続的に幅が拡大する。そして、入力側テーパ部33の一端33aの幅は、入力部32の幅と等しく設定されている。従って、入力側テーパ部33は、一端33aにおいて、TE偏波の伝播光に対してシングルモード条件を達成するように設定されている。
多モード導波路部34は、基本モード及び1次モードのTE偏波を伝播させる。
モード変換部31には、特定の波長のTE偏波に対して上式(1)を満たすフォトニック結晶が形成されている。フォトニック結晶は、入力される特定の波長のTE偏波の光を、基本モードから1次モードに変換して反射する。また、フォトニック結晶は、その他の波長の光を、基本モードのままで透過させる。
出力側テーパ部35は、第2補償部131bと接続された一端35aから、出力部36と接続された他端35bへ、連続的に幅が縮小する。そして、出力側テーパ部35の他端35bの幅は、TE偏波の伝播光に対してシングルモード条件を達成するように設定されている。
出力部36は、TE偏波の伝播光に対してシングルモード条件を達成する幅に設定されている。
出力導波路コア70は、光導波路コア30と同様に、クラッド20よりも高い屈折率を有する例えばSiを材料として形成されている。また、出力導波路コア70は、伝播する光が支持基板10へ逃げるのを防止するために、支持基板10から例えば少なくとも1μm以上離間して形成されているのが好ましい。
ここでは、出力導波路コア70の厚さは、厚さ方向でシングルモード条件を達成すべく、例えば200〜500nmの範囲内の厚さとするのが好ましい。例えば1550nmの波長の光を伝播させる場合には、出力導波路コア70を200〜300nmの範囲内の厚さとするのが好ましい。
また、出力導波路コア70は、結合部71と第2出力部72とを含んでいる。
結合部71は、光導波路コア30の多モード導波路部34と、互いに離間し、かつ並んで配置されている。そして、光導波路コア30の多モード導波路部34と、出力導波路コア70の結合部71とが、互いに離間しかつ並んで配置された結合領域80として設定されている。なお、第2出力部72は、結合領域80を挟んで、モード変換部31と反対側で結合部71と接続されている。
結合領域80において、多モード導波路部34及び結合部71は、それぞれの中心軸が平行となるように配設されている。
また、結合部71は、一端71aから第2出力部72と接続された他端71bへ、幅が連続的に拡大するテーパ形状とされている。結合部71の一端71a及び他端71bの幅は、基本モードのTE偏波を伝播可能な等価屈折率に対応して設定されている。そして、結合部71は、一端71aから他端71bまでの間に、多モード導波路部34を伝播する1次モードのTE偏波に対する等価屈折率と、結合部71を伝播する基本モードのTE偏波に対する等価屈折率とが一致する幅を含んでいる。
その結果、結合領域80では、多モード導波路部34を伝播する1次モードのTE偏波と、結合部71を伝播する基本モードのTE偏波とを結合することができる。
第2出力部72は、TE偏波の伝播光に対してシングルモード条件を達成する幅に設定されている。
第1の波長フィルタ200では、基本モードの光信号が、光導波路コア30の入力部32に入力され、入力側テーパ部33及び多モード導波路部34を経てモード変換部31に送られる。モード変換部31を伝播する特定の波長の基本モードのTE偏波は、フォトニック結晶によって、1次モードに変換されて反射され、再び多モード導波路部34に送られる。その他の光は、基本モードのまま、出力側テーパ部35を経て出力部36から出力される。フォトニック結晶で反射され、多モード導波路部34を伝播する1次モードのTE偏波は、結合領域80において、基本モードに変換されつつ、出力導波路コア70の結合部71へ移行する。結合部71へ移行した基本モードのTE偏波は、第2出力部72から出力される。
このように、第1の波長フィルタ200は、上述した光導波路素子100を用いることによって、特定の波長とその他の波長とを分離し、経路を切り替えて取り出す波長フィルタとして使用することができる。そして、モード変換部31においてフォトニック結晶を利用することによって、高い回折効率で特定の波長の光を反射させることができる。従って、高効率に波長分離及び経路切替を行うことができる。
また、第1の波長フィルタ200では、第1補償部131a及び第2補償部131bを含むことにより、モード変換部31で不所望に生じる基本モード間の反射回折を、第1補償部131a及び第2補償部131bにおける基本モード間の反射回折により打ち消すことができる。その結果、モード変換部31から、基本モードの反射光が逆行するのを防ぐことができる。
なお、この実施の形態では、モード変換部31のフォトニック結晶において、特定の波長の光を、基本モードから1次モードに変換して反射する構成について説明した。しかし、上式(2)を満たすようにフォトニック結晶を形成することによって、フォトニック結晶が、基本モードの特定の波長の光を、q次モードに変換して反射する構成とすることもできる。
さらに、この実施の形態では、結合領域80において、多モード導波路部34及び結合部71間で結合する光は、基本モードと1次モードとに限定されない。結合部71の一端71a及び他端71bの幅を、r(rはr≧0の整数)次モードの光を伝播可能な等価屈折率に対応して設定し、結合部71が、一端71aから他端71bまでの間に、多モード導波路部34を伝播するq次モードの光に対する等価屈折率と、結合部71を伝播するr次モードの光に対する等価屈折率とが一致する幅を含むように設計することもできる。その場合には、結合領域80において、多モード導波路部34を伝播するq次モードの光と、結合部71を伝播するr次モードの光とを結合することができる。
(第2の波長フィルタ)
図5を参照して、上述した光導波路素子100(図1参照)を利用した第2の波長フィルタについて説明する。図5(A)は、第2の波長フィルタを示す概略的平面図である。図5(B)は、図5(A)に示す第2の波長フィルタをII−II線で切り取った概略的端面図である。なお、図5(A)では、光導波路コアのみを示してあり、クラッド、支持基板及び電極を省略している。また、光導波路素子100と共通する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図5を参照して、上述した光導波路素子100(図1参照)を利用した第2の波長フィルタについて説明する。図5(A)は、第2の波長フィルタを示す概略的平面図である。図5(B)は、図5(A)に示す第2の波長フィルタをII−II線で切り取った概略的端面図である。なお、図5(A)では、光導波路コアのみを示してあり、クラッド、支持基板及び電極を省略している。また、光導波路素子100と共通する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
第2の波長フィルタ300では、光導波路コア30は、モード変換部31並びに第1補償部131a及び第2補償部131bに追加して、入力部231、入力側テーパ部232、キャビティ部234、出力側テーパ部236及び出力部237を含んでいる。
また、光導波路コア30は、2つのモード変換部31(第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2)、並びにこれら第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2それぞれの両端に形成された第1補償部131a及び第2補償部131bを含んでいる。入力部231、入力側テーパ部232、第1モード変換部31−1、キャビティ部234、第2モード変換部31−2、出力側テーパ部236及び出力部237は、この順に直列に接続されている。なお、入力側テーパ部232及び第1モード変換部31−1間には、第1モード変換部31−1の一端31aに隣接して形成されている第1補償部131aが設けられている。また、第2モード変換部31−2及び出力側テーパ部236間には、第2モード変換部31−2の他端31bに隣接して形成されている第2補償部131bが設けられている。
なお、第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2間に存在する第1補償部131a及び第2補償部131b(ここでは、第1モード変換部31−1の他端31bに隣接して形成されている第2補償部131b、及び第2モード変換部31−2の一端31aに隣接して形成されている第1補償部131a)は、第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2間に挟まれたキャビティ部234の一部として形成されている。従って、キャビティ部234の、第1モード変換部31−1側の端付近及び第2モード変換部31−2側の端付近には、それぞれサブ空孔90が形成されている。そして、キャビティ部234のサブ空孔90が形成された領域が、第1補償部131a及び第2補償部131bとして機能する。
入力部231は、TE偏波の伝播光に対してシングルモード条件を達成する幅に設定されている。従って、入力部231は、基本モードの光を伝播させる。
入力側テーパ部232は、入力部231と接続された一端232aから、第1補償部131aと接続された他端232bへ、連続的に幅が拡大する。そして、入力側テーパ部232の一端232aの幅は、入力部231の幅と等しく設定されている。従って、入力側テーパ部232は、一端232aにおいて、TE偏波の伝播光に対してシングルモード条件を達成するように設定されている。
キャビティ部234は、一定幅で形成される。キャビティ部234の幅は、基本モード及び1次モードのTE偏波を伝播させることができるように設定される。
キャビティ部234は、このキャビティ部234を伝播する光のうち、特定の波長の光の位相を整合させる。キャビティ部234の長さは、位相整合させる波長に応じて設計される。
また、上述したように、キャビティ部234は、サブ空孔90が形成された領域として、第1補償部131a及び第2補償部131bを含んでいる。
出力側テーパ部236は、第2補償部131bと接続された一端236aから、出力部237と接続された他端236bへ、連続的に幅が縮小する。そして、出力側テーパ部236の他端236bの幅は、出力部237の幅と等しく設定されている。出力側テーパ部236は、他端236bにおいて、TE偏波の伝播光に対してシングルモード条件を達成するように設定されている。
出力部237は、TE偏波に対してシングルモード条件を達成する幅に設定されている。従って、出力部237は、基本モードの光を伝播させる。
電極40は、クラッド20を介して、モード変換部31及びキャビティ部234の一方又は双方を被覆する位置に形成される。キャビティ部234上に電極40を形成する場合には、電極40の発熱による熱光学効果によって、キャビティ部234の屈折率を変化させることができる。その結果、キャビティ部234によって位相整合させる波長を変化させることができる。なお、モード変換部31及びキャビティ部234双方の上に電極40を設ける場合には、モード変換部31上に設ける電極40とキャビティ部234に設ける電極40とを一体的に形成することができる。
第2の波長フィルタ300では、入力部231から入力され、第1モード変換部31−1を透過する基本モードのTE偏波、及び第2モード変換部31−2のフォトニック結晶でモード変換されつつ反射され、さらに第1モード変換部31−1でモード変換されつつ反射された基本モードのTE偏波のうち、キャビティ部234の長さに応じて位相が整合する波長の光が、出力部237から出力される。
一方、第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2のフォトニック結晶によってモード変換されつつ反射された1次モードのTE偏波のうち、キャビティ部234の長さに応じて位相が整合する波長の光が、入力側テーパ部232に入力される。反射光は、入力側テーパ部232を、入力部231に向かって伝播する。しかし、上述したように、入力側テーパ部232の一端232aの幅は、TE偏波に対してシングルモード条件を満たすように設定されている。そのため、反射光は、入力部231に移行することなく放射する。
従って、第2の波長フィルタ300は、キャビティ部234によって位相整合する、特定の波長の光を取り出す波長フィルタとして使用することができる。
ここで、既に説明したように、フォトニック結晶の両端部(すなわち第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2それぞれの両端部)では、基本モードと1次モードとの間の反射回折のみならず、不所望な基本モード間の反射回折が生じ、基本モードの入力光が基本モードのまま反射されてしまう。その結果、キャビティ部234では、第1モード変換部31−1からキャビティ部234へ入力される基本モードのTE偏波のみならず、第2モード変換部31−2からキャビティ部234へ入力される基本モードのTE偏波が伝播する。そして、これら反対方向からの基本モードのTE偏波同士が干渉することによって、出力部237からの波長ピークに***が生じることが、FDTDを用いたシミュレーションにより判明した。
しかし、第2の波長フィルタ300では、第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2それぞれの両端に第1補償部131a及び第2補償部131bが設けられている。上述したように、第1補償部131a及び第2補償部131bは、基本モードの光を基本モードのまま反射する。この結果、第2モード変換部31−2からキャビティ部234へ入力される基本モードのTE偏波を第1補償部131a及び第2補償部131bにおける基本モード間の反射回折により打ち消すことができる。従って、第2の波長フィルタ300では、キャビティ部234において、基本モードのTE偏波同士が干渉することを防ぐことができる。その結果、出力部237からの波長ピークに***が生じるのを防ぐことができる。
また、キャビティ部234を、基本モードの光に対してπの整数倍の位相が生じる長さとすることによって、キャビティ部234を伝播する基本モードの光に対して、複数の波長の位相を整合させることができる。従って、第2の波長フィルタ300は、出力光の波長ピークを多峰性とすることができる。
また、第2の波長フィルタ300では、電極40を用いて第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2並びにキャビティ部234に熱を与えることができる。そのため、第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2による反射波長やキャビティ部234が位相整合させる波長を変化させることができる。従って、第2の波長フィルタ300は、出力波長が可変である。
また、第2の波長フィルタ300は、リング共振器と等価な波長フィルタと見なすことができる。この場合、第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2のフォトニック結晶が、リング共振器の方向性結合器部分に対応する。また、キャビティ部234が、リング共振器のリング導波路部分に対応する。ここで、リング共振器は、方向性結合器部分において作製誤差の影響を受けやすい。これに対し、第2の波長フィルタ300は、方向性結合器を構成として含まない。従って、第2の波長フィルタ300は、リング共振器と等価な機能を有しつつ、リング共振器と比べて作製誤差の影響を受けにくい。
この実施の形態では、光導波路コア30が、2つのモード変換部31(第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2)と1つのキャビティ部234を含む構成について説明した。しかし、光導波路コア30が、n個(nは2以上の整数)のモード変換部31とn−1個のキャビティ部234とを含む構成とすることもできる。図6を参照して、第2の波長フィルタの変形例として、n個のモード変換部31とn−1個のキャビティ部234とを含む場合の構成について説明する。図6は、n個のモード変換部31とn−1個のキャビティ部234とを含む第2の波長フィルタの変形例(波長フィルタ350)の概略的平面図である。なお、図6では、クラッド、支持基板及び電極を省略して示してある。
n個のモード変換部31−1〜nとn−1個のキャビティ部234−1〜n−1とは、入力側テーパ部232及び出力側テーパ部236間で、交互に直列に接続される。キャビティ部234を挟んで隣り合うモード変換部31間に存在する第1補償部131a及び第2補償部131bは、隣り合うモード変換部31間に挟まれたキャビティ部234の一部として形成されている。
各モード変換部31には、上述したフォトニック結晶が全域に渡って形成されている。このフォトニック結晶により、各モード変換部31は、入力される特定の波長の伝播光を、基本モードから1次モードに変換して反射する。また、各モード変換部31は、その他の波長の伝播光を、基本モードのままで透過させる。各モード変換部31のフォトニック結晶の空孔51及び52の周期は、共通の条件で、反射すべき波長λに対して上式(1)を満たすように設計される。
各キャビティ部234は、これら各キャビティ部234を伝播するTE偏波のうち、キャビティ部234の長さに応じた特定の波長の光の位相を整合させる。
このように、モード変換部31及びキャビティ部234を多段に接続することによって、出力部237から出力される光の波長ピークのフラットトップ特性を向上させることができる。
なお、各モード変換部31の長さ(フォトニック結晶の空孔51及び52の個数)は、一部又は全部が異なるように設定することができる。この場合には、透過光の波長ピークのフラットトップ特性を向上させることができる。フラットトップ特性を向上させるための、最適な各モード変換部31の長さ(フォトニック結晶の空孔51及び52の個数)の関係は、例えばFDTDを用いたシミュレーションにより、モード変換部31及びキャビティ部234の数に応じて適宜決定することができる。一例として、モード変換部31及びキャビティ部234を多段にする場合には、キャビティ部234に挟まれたモード変換部31−2〜n−1の長さを、両端に配置されるモード変換部31−1及び31−nの長さの2倍程度とすることができる。
(特性評価)
発明者は、FDTDを用いて、第2の波長フィルタ300の特性を評価するシミュレーションを行った。
発明者は、FDTDを用いて、第2の波長フィルタ300の特性を評価するシミュレーションを行った。
このシミュレーションでは、図5に示す構成例の第2の波長フィルタ300について、第1モード変換部31−1に基本モードのTE偏波を入力し、第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2を透過して出力される出力光(透過光)、及び第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2で反射されて出力される出力光(反射光)の強度を解析した。
また、このシミュレーションでは、第1補償部131a及び第2補償部131bを設けない(すなわちサブ空孔90を形成しない)比較用波長フィルタについても同様の解析を行った。そして、第2の波長フィルタ300と比較用波長フィルタとで特性を比較した。
このシミュレーションでは、以下のように第2の波長フィルタを設計した。すなわち、光導波路コア30を、全体的に厚さを200nmとした。また、第1モード変換部31−1、キャビティ部234及び第2モード変換部31−2の幅を一定の1000nmとした。また、第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2のフォトニック結晶における空孔51及び52それぞれの個数を20個、空孔51及び52の形成周期Λを394nm、空孔51及び空孔52間の、モード変換部31の幅方向に沿った中心間距離を500nm、空孔51及び52の直径を100nmとした。また、キャビティ部234の長さを9850nmとした。なお、このシミュレーションでは、キャビティ部234の特性を明瞭に確認するために、第1モード変換部31−1の一端31aに隣接して形成されている第1補償部131a、及び第2モード変換部31−2の他端31bに隣接して形成されている第2補償部131b、並びにこれら領域のサブ空孔90を省略した。
なお、第1モード変換部31−1の他端31bに隣接して形成されている第2補償部131bのサブ空孔90と、第1モード変換部31−1の最も他端31b側に位置する空孔51又は52(ここでは、図5(A)において、第1モード変換部31−1内で紙面の最も右端に存在する空孔51)との長さ方向に沿った中心間距離を、空孔51及び52の形成周期Λの5/8周期に相当する長さ(ここでは246.25nm)とした。同様に、第2モード変換部31−2の一端31aに隣接して形成されている第1補償部131aのサブ空孔90についても、サブ空孔90と最も近接する空孔51及び52との長さ方向に沿った中心間距離を、空孔51及び52の形成周期Λの5/8周期に相当する長さとした。
一方、比較用波長フィルタは、第2の波長フィルタとサブ空孔90を形成しない点で構成が異なる以外は、上述した条件の第2の波長フィルタと共通の設計とした。
このシミュレーションの結果を、図7(A)及び(B)に示す。図7(A)は、第2の波長フィルタの出力光の強度を示している。図7(B)は、比較用波長フィルタの出力光の強度を示している。図7(A)及び(B)では、縦軸に、光の強度をdB目盛で、また、横軸に波長をμm単位でとって示してある。図7(A)における曲線201及び図7(B)における曲線301は、基本モードのTE偏波の透過光の強度を示している。また、図7(A)における曲線203及び図7(B)における曲線303は、基本モードのTE偏波の反射光の強度を示している。また、図7(A)における曲線205及び図7(B)における曲線305は、1次モードのTE偏波の反射光の強度を示している。
図7(A)に示すように、第2の波長フィルタ300では、基本モードのTE偏波の透過光として、複数のピークが確認できる。そして、これら透過光のピークは、特に中央のピークにおいて顕著に***が抑えられ、シャープな形状となっていることが確認される。また、基本モードのTE偏波の反射光も、十分に抑えられていることが確認できる。
一方、図7(B)に示すように、比較用波長フィルタでは、基本モードのTE偏波の透過光のピークに***が生じている。また、基本モードのTE偏波の反射光の強度にも、大きなピークが確認される。
この結果より、サブ空孔90を形成することによって、出力される透過光の波長ピークの***が抑えられることが確認された。
(第3の波長フィルタ)
図8を参照して、上述した光導波路素子100(図1参照)を利用した第3の波長フィルタについて説明する。図8は、第3の波長フィルタを示す概略的平面図である。なお、図8では、光導波路コアのみを示してあり、クラッド、支持基板及び電極を省略している。また、光導波路素子100、第1の波長フィルタ200及び第2の波長フィルタ300と共通する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図8を参照して、上述した光導波路素子100(図1参照)を利用した第3の波長フィルタについて説明する。図8は、第3の波長フィルタを示す概略的平面図である。なお、図8では、光導波路コアのみを示してあり、クラッド、支持基板及び電極を省略している。また、光導波路素子100、第1の波長フィルタ200及び第2の波長フィルタ300と共通する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
第3の波長フィルタ400は、上述した第2の波長フィルタ300に、出力導波路コア70を追加して構成されている。また、光導波路コア30は、第2の波長フィルタ300の光導波路コア30(図5参照)に追加して、入力側テーパ部232と最端に配置されたモード変換部31(ここでは第1モード変換部31−1)との間に、これら入力側テーパ部232及び第1モード変換部31−1と直列に接続された多モード導波路部34を含んでいる。なお、出力導波路コア70及び多モード導波路部34は、上述した第1の波長フィルタ200と同様である。
第1モード変換部31−1の、多モード導波路部34側の一端31aに隣接して形成された第1補償部131aは、多モード導波路部34の一部として形成されている。従って、多モード導波路部34の、第1モード変換部31−1側の端付近には、サブ空孔90が形成されている。そして、多モード導波路部34のサブ空孔90が形成された領域が、第1補償部131aとして機能する。
第3の波長フィルタ400では、基本モードの光信号が、光導波路コア30の入力部231に入力され、入力側テーパ部232及び多モード導波路部34を経て第1モード変換部31−1に送られる。
第1モード変換部31−1を透過する基本モードのTE偏波、及び第2モード変換部31−2のフォトニック結晶で偏波変換されつつ反射され、さらに第1モード変換部31−1で偏波変換されつつ反射される基本モードのTE偏波のうち、キャビティ部234の長さに応じて位相が整合する波長の光が、出力部237から出力される。
一方、第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2のフォトニック結晶によってモード変換されつつ反射された1次モードのTE偏波のうち、キャビティ部234の長さに応じて位相が整合する波長の光が、多モード導波路部34に入力される。
多モード導波路部34を伝播する1次モードのTE偏波は、結合領域80において、基本モードに変換されつつ、出力導波路コア70の結合部71へ移行する。結合部71へ移行した基本モードのTE偏波は、第2出力部72から出力される。
このように、第3の波長フィルタ400は、特定の波長とその他の波長とを分離し、経路を切り替えて取り出す波長フィルタとして使用することができる。そして、第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2においてフォトニック結晶を利用することによって、高い回折効率で特定の波長の光を反射させることができる。従って、高効率に波長分離及び経路切替を行うことができる。
なお、この実施の形態では、光導波路コア30が、2つのモード変換部(第1モード変換部31−1及び第2モード変換部31−2)と1つのキャビティ部234を含む構成について説明した。しかし、第2の波長フィルタ350と同様に、光導波路コア30が、n個(nは2以上の整数)のモード変換部31とn−1個のキャビティ部234とを含む構成とすることもできる(図6参照)。
(製造方法)
上述した光導波路素子100、第1の波長フィルタ200、第2の波長フィルタ300及び第3の波長フィルタ400は、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板を利用することによって、簡易に製造することができる。以下、一例として光導波路素子100の製造方法について説明する。
上述した光導波路素子100、第1の波長フィルタ200、第2の波長フィルタ300及び第3の波長フィルタ400は、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板を利用することによって、簡易に製造することができる。以下、一例として光導波路素子100の製造方法について説明する。
すなわち、まず、支持基板層、SiO2層、及びSi層が順次積層されて構成されたSOI基板を用意する。次に、例えばエッチング技術を用い、Si層をパターニングすることによって、光導波路コア30を形成する。その結果、支持基板10としての支持基板層上にSiO2層が積層され、さらにSiO2層上に光導波路コア30が形成された構造体を得ることができる。次に、例えば化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法を用いて、SiO2層上に、SiO2を、光導波路コア30を被覆して形成する。その結果、SiO2のクラッド20によって光導波路コア30が包含される。次に、クラッド20上に電極40を形成して、光導波路素子100を製造することができる。なお、第1の波長フィルタ200及び第3の波長フィルタ400を製造する場合には、Si層をパターニングして光導波路コア30を形成する工程において、同時に出力導波路コア70を形成することができる。
10:支持基板
20:クラッド
30:光導波路コア
31:モード変換部
32、231:入力部
33、232:入力側テーパ部
34:多モード導波路部
35、236:出力側テーパ部
36、237:出力部
40:電極
51、52:空孔
61:第1空孔群
62:第2空孔群
70:出力導波路コア
71:結合部
72:第2出力部
80:結合領域
90:サブ空孔
100:光導波路素子
131a:第1補償部
131b:第2補償部
200:第1の波長フィルタ
234:キャビティ部
300:第2の波長フィルタ
350:変形例に係る第2の波長フィルタ
400:第3の波長フィルタ
20:クラッド
30:光導波路コア
31:モード変換部
32、231:入力部
33、232:入力側テーパ部
34:多モード導波路部
35、236:出力側テーパ部
36、237:出力部
40:電極
51、52:空孔
61:第1空孔群
62:第2空孔群
70:出力導波路コア
71:結合部
72:第2出力部
80:結合領域
90:サブ空孔
100:光導波路素子
131a:第1補償部
131b:第2補償部
200:第1の波長フィルタ
234:キャビティ部
300:第2の波長フィルタ
350:変形例に係る第2の波長フィルタ
400:第3の波長フィルタ
Claims (10)
- 第1仮想線分、及び前記第1仮想線分と平行な第2仮想線分に沿い、かつ前記第1仮想線分及び前記第2仮想線分と重なる位置に設けられた光導波路コアと、
前記光導波路コアを包含するクラッドと
を備え、
前記光導波路コアは、前記第1仮想線分及び前記第2仮想線分に沿って直列に接続された
モード変換部と、
前記モード変換部の一端に隣接して形成された第1補償部と、
前記モード変換部の他端に隣接して形成された第2補償部と
を含み、
前記モード変換部には、前記第1仮想線分と重なる位置に配列して周期的に形成された複数の空孔を含む第1空孔群、及び前記第2仮想線分と重なる位置に配列して、前記第1空孔群と同一周期で形成された複数の空孔を含む第2空孔群を含むフォトニック結晶が形成されており、
前記フォトニック結晶は、特定の波長λに対し、前記第1空孔群に含まれる空孔及び前記第2空孔群に含まれる空孔の周期をΛ、基本モードに対する等価屈折率をn0、q(qはq>0の整数)次モードに対する等価屈折率をnqとして、2π/Λ=2π(n0+nq)/λを満たし、
前記第1補償部及び前記第2補償部には、それぞれ1又は複数のサブ空孔が形成されており、前記第1補償部及び前記第2補償部は、前記特定の波長λの基本モードの光を基本モードのまま反射する
ことを特徴とする光導波路素子。 - 前記第1空孔群及び前記第2空孔群に含まれる空孔はそれぞれ固有の直径を持ち、該直径には、少なくとも2以上の値がある
ことを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子。 - 前記第1空孔群に含まれる空孔及び前記第2空孔群に含まれる空孔は、前記モード変換部の上面から該モード変換部の厚さ方向の中途まで、該モード変換部を掘り込んで形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光導波路素子。 - 前記クラッドを介して前記モード変換部を被覆する位置に、前記モード変換部に熱を与えるための電極が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光導波路素子。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の光導波路素子と、結合部を含む出力導波路コアとを備え、
前記光導波路コアは、前記モード変換部と直列に接続され、基本モード及びq次モードの光を伝播させる多モード導波路部をさらに含み、
前記第1補償部は、前記多モード導波路部の一部として形成されており、
前記クラッドは、前記光導波路コア及び前記出力導波路コアを包含し、
前記多モード導波路部と前記結合部とが、互いに離間しかつ並んで配置された結合領域が設定されており、
前記結合領域では、前記多モード導波路部を伝播するq次モードの光と、前記結合部を伝播するr(rはr≧0の整数)次モードの光とが結合される
ことを特徴とする波長フィルタ。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の光導波路素子を備え、
前記光導波路コアは、前記第1仮想線分及び前記第2仮想線分に沿って直列に接続された
n個(nは2以上の整数)の前記モード変換部並びに前記第1補償部及び前記第2補償部と、
n−1個のキャビティ部と
を含み、
前記モード変換部と前記キャビティ部とは、交互に接続されており、
前記キャビティ部を挟んで隣り合う前記モード変換部間に存在する前記第1補償部及び前記第2補償部は、隣り合う前記モード変換部間に挟まれた前記キャビティ部の一部として形成されており、
前記キャビティ部は、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長の基本モードの光の位相を整合させる
ことを特徴とする波長フィルタ。 - 前記光導波路コアは、最端に配置された前記モード変換部の一端に隣接する前記第1補償部に、直列に接続された入力側テーパ部をさらに含み、
前記入力側テーパ部は、一端から前記第1補償部側の他端へ、連続的に幅が拡大し、
前記入力側テーパ部の一端は、基本モードに対応する幅に設定されている
ことを特徴とする請求項6に記載の波長フィルタ。 - 結合部を含む出力導波路コアをさらに備え、
前記光導波路コアは、最端に配置された前記モード変換部に直列に接続され、基本モード及びq次モードの光を伝播させる多モード導波路部をさらに含み、
前記最端に配置されたモード変換部の、前記多モード導波路部側の一端に隣接して形成された第1補償部は、前記多モード導波路部の一部として形成されており、
前記クラッドは、前記光導波路コア及び前記出力導波路コアを包含し、
前記多モード導波路部と前記結合部とが、互いに離間しかつ並んで配置された結合領域が設定されており、
前記結合領域では、前記多モード導波路部を伝播するq次モードの光と、前記結合部を伝播するr(rはr≧0の整数)次モードの光とが結合される
ことを特徴とする請求項6に記載の波長フィルタ。 - 前記クラッドを介して前記キャビティ部を被覆する位置に、前記キャビティ部に熱を与えるための電極が形成されている
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の波長フィルタ。 - 前記サブ空孔と最も近接する前記モード変換部の前記空孔との長さ方向に沿った中心間距離が、前記第1空孔群に含まれる空孔及び前記第2空孔群に含まれる空孔の周期の5/8周期に相当する長さである
ことを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の波長フィルタ。
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