JP6397280B2 - 多層管 - Google Patents
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Description
たとえば、安価で高剛性、高強度な多層管として、特開昭61−32743号公報(特許文献1)に、中間層として、ガラス繊維、無機充填剤及び不飽和カルボン酸変性ポリオレフィンを含有するポリプロピレン系樹脂層を有することを特徴とする少なくとも3層からなるポリオレフィン系多層構造管が開示されている。
本発明の多層管は、軸心から外周への方向に、第1層と、第2層と、第3層とを含む。第2層は、第1層に接触するように積層され、第3層は、第2層に接触するように積層される。第1層と第2層との界面および第2層と前記第3層との界面の少なくともいずれかの十点平均粗さRzは、30μm以上である。
このように、本発明においては、層界面が十分荒れているため、多層管が変形を受けた場合であっても、界面剥離を起こしにくい。本明細書において、多層管が受け得る変形には、外力の負荷による変形、温度変化、湿度変化および経年劣化などの環境変化による変形が含まれる。
十点平均粗さRzの範囲に含まれる上限値は特に限定されないが、製造容易性などの観点からたとえば300μmである。
なお、十点平均粗さRzは、JIS B 0601に準拠した測定値である。
本発明の多層管においては、第1層と第2層との界面および第2層と第3層との界面の少なくともいずれかの界面最大高さRyが50μm以上であってよい。
これによって、多層管が変形を受けた場合であっても、界面剥離をより起こしにくい。
界面最大高さRyの範囲に含まれる上限値は特に限定されないが、製造容易性などの観点からたとえば500μmである。
なお、界面最大高さRyは、JIS B 0601に準拠した測定値である。
本発明の多層管においては、第2層が繊維を含む樹脂であり、第3層は繊維を含まない樹脂であってよい。
これによって、第2層の寸法安定性および強度と、第3層の継手との融着接合容易性とを両立させることができる。寸法安定性が良好であるとは、熱伸縮が少ない(線膨張係数が小さい)ことをいう。
本発明の多層管においては、第1層と第3層とは、互いに同じ樹脂で構成されていてよい。
これによって、第2層の両面に接触する層の機械的特性が揃うとともに、多層管の製造効率もよい。
本発明の多層管において、第2層の弾性率は、第1層の弾性率および第3層の弾性率の1.5倍以上であることが好ましい。
この場合、第2層が、第1層および第3層よりも充分に大きい弾性率を有するため、多層管全体としての良好な耐変形性を効率よく得ることができる。
弾性率の範囲に含まれる上限値は特に限定されないが、機械的特性などの観点からたとえば3倍である。
なお、弾性率は、JIS K 7171に準拠した測定値である。
本発明の多層管において、第2層中の繊維の含有量は、5重量%以上35重量%未満であってよい。
この場合、5重量%以上であることにより、多層管の良好な寸法安定性を効率よく得ることができ、35重量%未満であることにより、第2層の破壊モードを延性的破壊へ遷移させ易くすることができる。
本発明の多層管において、第2層は、相溶化剤を含んでよい。
これによって、多層管の寸法安定性、強度、高温での伸びの少なくともいずれかを良好に得ることができる。なお、高温での伸びとは、延性的破壊を破壊モードとして生じさせ易くする指標をいう。高温での伸びが良いと、破壊モードが延性的破壊となり易い。
本発明の多層管においては、第2層の樹脂に含まれる繊維がガラス樹脂であり、第2層に含まれる相溶化剤がシラン変性ポリオレフィンであることが好ましい。
これによって、多層管のより良好な寸法安定性を効率よく得ることができる。
本発明の多層管においては、第2層の線膨張係数が、第1層または第3層の線膨張係数の0.8倍以下であることが好ましい。
本発明の多層管は、その総厚に対し、第2層の層厚が20%以上80%以下であってよい。
この場合、層厚が20%以上であることにより、多層管の好ましい寸法安定性および機械的強度を得ることができ、80%以下であることにより、継手との良好な融着接合容易性を得ることができる。
図1は、本発明の第1実施形態の多層管を軸方向に垂直な断面で切断した場合の模式的断面図である。図2は、図1の一部拡大図である。
[基本構成]
図1に示す多層管100は、軸心から外周の方向に順番に、第1層210(内層)、第2層220(中間層)および第3層230(外層)が互いに接触するように積層されている。本実施形態では、多層管100が三層から構成されるものを挙げているが、本発明は、多層管100がさらに1または2以上の他の層を有することを除外するものではない。
多層管100においては、第2層220と第3層230との間の界面225が荒らされている。具体的には、界面225の十点平均粗さRz(JIS B 0601に準拠)は、30μm以上、好ましくは50μm以上である。さらに、界面225の界面最大高さRy(JIS B 0601に準拠)が50μm以上、好ましくは100μm以上である。これにより、多層管100が、外力の負荷による変形、および温度変化、湿度変化ならびに経年劣化などの環境変化による変形の少なくともいずれかを受けた場合であっても、第2層220と第3層230との間で界面剥離を起こしにくい。
なお、図2に、十点平均粗さRzおよび界面最大高さRyの基準となる面を平均面225Vとして示す。
多層管100は、第2層220の弾性率(JIS K 7171に準拠)が、第1層210の弾性率および第3層230の弾性率の1.5倍以上、好ましくは2倍以上となるように構成される。このように、第2層220は第1層210および第3層230よりも充分に大きい弾性率を有する。したがって、多層管100が、外力の負荷による変形、および温度変化、湿度変化ならびに経年劣化などの環境変化による変形の少なくともいずれかを受けた場合であっても、充分に大きい弾性率を有する第2層220の耐変形性が良好であるため、第2層220が芯となり、多層管100全体としての良好な耐変形性を確保することができる。なお、第2層220の弾性率の上限は、たとえば3倍である。
多層管100は、第2層220の線膨張係数が第1層210および第3層230の線膨張係数より小さくなるように構成されている。具体的には、第2層220の線膨張係数は、第1層210および第3層230の線膨張係数の0.8倍以下、または0.3倍以下であってよい。より具体的には、第1層210および第3層230の線膨張係数がたとえば12×10−5以上14×10−5以下であれば、第2層220の線膨張係数は10×10−5前後(9.6×10−5以上11.2×10−5以下)であってよい。
多層管100は、80℃での熱間内圧クリープ試験において、脆性破壊を抑制してニーポイント(延性破壊から脆性破壊への変化点)が発生しない、またはニーポイントの発生がより長期側にシフトすることが好ましく、脆性破壊を抑制してニーポイントが発生しないことがより好ましい。
具体的には、多層管100の最高使用圧力(60℃−30年)は、0.9MPa以上、好ましくは0.95MPa以上、さらに好ましくは1MPa以上、さらに好ましくは1.05MPa以上である。このように、多層管100は長期耐久性を有する。
多層管100は、第2層220の層厚T2が、多層管100の総厚(本実施形態においては、第1層210の層厚T1、第2層220の層厚T2、および第3層230の層厚T3の和)の20%以上80%以下となるように構成される。層厚T2が20%以上であることにより、多層管100の好ましい寸法安定性および機械的強度が得られる程度に第2層220の厚みを確保することができる。層厚T2が80%以下であることにより、たとえば多層管100を継手とエレクトロフュージョン接合などにより融着接合する場合に、継手との融着接合容易性を良好に確保することができる。このような効果をより一層効果的に高める観点からは、第2層220の層厚T2は、多層管100の総厚の、好ましくは30%以上70%以下である。なお、第2層220の層厚T2の基準となる外周側の面は、平均面225Vとする。
第1層210および第3層230は、いずれも同じポリオレフィン系樹脂で構成される。したがって、第2層220の両面で機械的特性が揃うとともに、多層管100の製造効率も良い。なお、本発明は、第1層210と第3層230とは、異なる材料または異なるポリオレフィン系樹脂から構成されることを除外するものではない。
これらのポリオレフィン樹脂は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
第2層220は、繊維強化樹脂で構成される。
[第2層の材料−マトリックス樹脂]
マトリックス樹脂は、ポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、第1層210および第3層230の構成樹脂として挙げたものと同様である。第2層220のマトリックス樹脂は、第1層210および第2層220を構成する樹脂と同じである。全ての層に同じ樹脂を用いることにより、隣接する層が互いになじみやすく、界面剥離を効果的に抑制することができる。
繊維の材質としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミックス繊維、ボロン繊維、微細な金属繊維などの無機繊維;およびアラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、ビニロン、ポリアセタール、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、高強度ポリプロピレンなどの有機繊維が挙げられる。炭素繊維としては、PAN (ポリアクリロニトリル) 系炭素繊維、シリコン−チタン−炭素繊維、ピッチ系炭素繊維などが挙げられる。また、有機繊維としては、ケナフ、麻などの天然繊維も挙げられる。本発明においては、低線膨張性の観点から、繊維はガラス繊維であることが好ましい。これらの繊維は、単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。
また、このような繊維に、マトリックス樹脂を保持させる方法としては、公知の方法が全て採用可能である。
さらに、繊維は、ポリオレフィン収束剤により収束されたものであってもよい。ポリオレフィン収束剤は、ガラス繊維を収束させることができれば特に限定されないが、具体的にはポリオレフィンである。当該ポリオレフィンは、マトリックス樹脂と同様のものであってもよい。つまり、マトリックス樹脂がポリエチレンであれば、収束剤もポリエチレンであってよい。さらに、収束剤としての当該ポリオレフィンには、変性ポリオレフィンが含まれる。ポリオレフィン収束剤の具体例としては、マレイン酸変性ポリオレフィン、およびシラン変性ポリオレフィン等が挙げられる。第2層220に低線膨張係数を具備させる観点からは、ポリオレフィン収束剤はシラン変性ポリオレフィンであることが好ましく、さらに、繊維がガラス繊維であることが好ましい。
繊維を良好に収束させる観点からは、ポリオレフィン収束剤のMFR(メルトマスフローレイト)は好ましくは0.01g/10分以上、好ましくは16g/10分以下である。上記MFRは、JIS K7210に基づいて、温度190℃、荷重2.16kgfの条件で測定された値である。
さらに、第2層220には相溶化剤が含まれる。相溶化剤としては、たとえば、変性ポリオレフィンおよび塩素化ポリオレフィンなどが挙げられる。変性ポリオレフィンとしては、たとえば、マレイン酸変性ポリオレフィンおよびシラン変性ポリオレフィンなどが挙げられる。相溶化剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。第2層220に低線膨張係数を具備させる観点からは、相溶化剤はシラン変性ポリオレフィンであることが好ましく、さらに、繊維がガラス繊維であることが好ましい。
第2層220には、さらに他の成分が含まれてよい。当該他の成分は、第2層220を製造するための樹脂組成物から繊維と相溶化剤とを除いた成分を100重量%とすると、ポリオレフィン系樹脂の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上となる量で用いられてよい。ポリオレフィン系樹脂の含有量の範囲に含まれる上限値は、99.99重量%、または99.9重量%であってもよい。
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤及びラクトン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
ラクトン系酸化防止剤としては、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンとの反応生成物等が挙げられる。
滑剤の使用量は特に限定されない。たとえば、マトリックス樹脂であるポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、好ましくは3重量部以下である。
多層管100は、第1層210および第3層230をそれぞれ製造するための樹脂組成物と、第2層220を製造するための樹脂組成物とを調製し、成形機を用いて成形する。成形機としては特に限定されず、単軸押出機、二軸異方向パラレル押出機、二軸異方向コニカル押出機、及び二軸同方向押出機等が挙げられる。さらに、成形機を用いて成形する場合、賦形する金型および樹脂温度等も、特に限定されない。
図3は、本発明の第2実施形態の多層管を軸方向に垂直な断面で切断した場合の模式的断面図である。第2実施形態においては、第1実施形態と異なる点について説明し、共通する点は説明を省略する。
本発明においては、多層管100,100aが「多層管」に相当し、第1層210,210aが「第1層」に相当し、界面215aが「第1層と第2層との界面」に相当し、第2層220,220aが「第2層」に相当し、界面225が「第2層と第3層との界面」に相当し、第3層230が「第3層」に相当し、層厚T2が「第2層の層厚」に相当する。
210,210a 第1層
215a 界面
220,220a 第2層
225 界面
230 第3層
T2 第2層の層厚
Claims (10)
- 軸心から外周への方向に、第1層と、前記第1層に接触するように積層された第2層と、前記第2層に接触するように積層された第3層とを含み、
前記第2層と前記第3層との界面の十点平均粗さRzが30μm以上であり、
前記第2層が繊維を含む樹脂で構成され、前記第3層は繊維を含まない樹脂で構成される、多層管。 - 前記第1層と前記第2層との界面の十点平均粗さRzが30μm以上であり、
前記第1層は繊維を含まない樹脂で構成される、請求項1に記載の多層管。 - 前記第1層と前記第2層との界面および前記第2層と前記第3層との界面の少なくともいずれかの界面最大高さRyが50μm以上である、請求項1または2に記載の多層管。
- 前記第1層と前記第3層とは、互いに同じ樹脂で構成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の多層管。
- 前記第2層の弾性率が、前記第1層の弾性率および前記第3層の弾性率の1.5倍以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載の多層管。
- 前記第2層中の前記繊維の含有量が5重量%以上35重量%以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の多層管。
- 前記第2層が相溶化剤を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の多層管。
- 前記繊維がガラス繊維であり、前記相溶化剤がシラン変性ポリオレフィンである、請求項7に記載の多層管。
- 前記第2層の線膨張係数が、前記第1層または前記第3層の線膨張係数の0.8倍以下である、請求項1から8のいずれか1項に記載の多層管。
- 総厚に対し、前記第2層の層厚が20%以上80%以下である、請求項1から9のいずれか1項に記載の多層管。
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