JP6394327B2 - 架橋用エチレン・α−オレフィン共重合体、架橋性樹脂組成物、及びそれを用いた架橋体 - Google Patents
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Description
また、エチレンに、酢酸ビニルを共重合したエチレン−酢酸ビニル共重合体も、その酢酸ビニル部分が容易にラジカル架橋点となるため、架橋しやすい樹脂として用いられている(特許文献1)。しかし、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、長期にわたって使用されると黄変、亀裂入り、劣化変質等が起こりやすい。
一方、エチレンを80〜90モル%の主成分とし、それに1−ブテンや1−ヘキセン、1−オクテンといった、炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合した一般的なエチレン・α−オレフィン共重合体は、一般にジエンモノマーを含有しないため、有機過酸化物等による架橋は容易ではなく、架橋特性は低いと考えられており、一般に、架橋せず、その柔軟性を生かした用途、例えばポリエチレンフィルムや、押出ラミネート用樹脂等に用いられている。そして一部の架橋用途、例えばシラン樹脂とグラフト重合してシラン成分に由来するシラン架橋や、電子線照射による強制的な架橋、低架橋で十分な用途の樹脂原料として用いることはあるものの、上記EPDM等に匹敵する高架橋特性と高機械的強度を求める用途には用いられていなかった。
一方、本出願人は、先に、太陽電池封止材に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体において、その架橋性(耐熱性)を向上するため種々検討した経緯において、エチレン・αーオレフィン共重合体に含まれる分岐数が多い、あるいは二重結合数が多いと、良好な架橋特性が得られることを報告している(特許文献2,3参照)。
しかし、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる二重結合には、種々の二重結合(ビニル、ビニリデン、シスービニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィン)があり、これらの二重結合の種類の違いによる架橋特性発現への寄与について、全てが良好な架橋特性発現に同程度関与するか否か、又は、分岐数、二重結合数はオレフィン共重合体において独立に決まるものであるが、架橋特性発現のためには、この2つの一方だけ満たせばいいのか否かについては言及されていない。
また、太陽電池封止材として要求される架橋特性に比べ、EPDM等が使用されている架橋体においては、更に高い架橋特性と、機械的強度を満たすことが求められている。
エチレンとα−オレフィンの1種以上を共重合してなり、架橋剤(B)と共に含有されて架橋用樹脂組成物を形成する、下記(a1)〜(a3)の特性を有する架橋用エチレン・α−オレフィン共重合体(A)。
(a1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1〜100g/10分
(a2)密度が0.860〜0.920g/cm3
(a3)エチレン・α−オレフィン共重合体中のビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が0.50(個/total 1000C)以上である(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
(a4)エチレン・α−オレフィン共重合体中のコモノマーによる分岐数(N)とビニルおよびビニリデンの合計数(V)が下記式(1)の関係を満たし、かつ、ビニルおよびビニリデンの個数は、それぞれ0.05以上である。
式(1):N×V≧16
(ただし、NおよびVは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素あたりの数である。)
(a5)フローレシオ(FR):190℃における10kg荷重でのMFR測定値であるI10と、190℃における2.16kg荷重でのMFR測定値であるI2.16との比(I10/I2.16)が7.0未満
(a6)エチレン・α−オレフィン共重合体中のビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が、二重結合全体(ビニル、ビニリデン、シス−ビニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィン)の合計数の55%以上である(ただし、ビニル、ビニリデン、シス−ビニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
(a4’)エチレン・α−オレフィン共重合体中のコモノマーによる分岐数(N)と、ビニルおよびビニリデンの合計数(V)が下記式(1’)の関係を満たす。
式(1’):N×V≧30
(ただし、NおよびVは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素あたりの数である。)
成分(B):架橋剤
以下、本発明において用いられる各成分、得られる樹脂組成物、それを用いた架橋体等について詳細に説明する。
本発明の架橋性樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう)は、架橋用重合体としてエチレン・α−オレフィン共重合体である成分(A)及び、架橋剤、特に好ましくは有機過酸化物である成分(B)を含有することを特徴とする。
本発明に用いる成分(A)は、エチレンとα−オレフィンの1種以上を共重合してなり、下記(a1)〜(a3)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体である。
(a1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1〜100g/10分
(a2)密度が0.860〜0.920g/cm3
(a3)エチレン・α−オレフィン共重合体中のビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が0.50(個/total 1000C)以上である(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
本発明の架橋用エチレン・α−オレフィン共重合体及びそれを用いた架橋性樹脂組成物は、上記特性を満たすことにより、良好な架橋特性及び機械的強度を有する。
(a1)MFR
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、MFRが0.1〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、さらに好ましくは2〜40g/10分である。エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRが0.1g/10分未満では、分子量が高すぎて混練時に押出しが困難になり、一方、MFRが100g/10分を超えると溶融粘度が低くなりすぎて、取り扱い性に欠けるものとなる。
ポリマーのMFRを調節するには、例えば、重合温度、触媒量、分子調節剤としての水素の供給量などを適宜調整する方法がとられる。エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、JIS−K6922−2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する。
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、密度が0.860〜0.920g/cm3であり、好ましくは0.865〜0.915g/cm3、さらに好ましくは0.870〜0.900g/cm3である。エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が0.860g/cm3未満では、加工後の架橋体がブロッキングしてしまい、一方、密度が0.920g/cm3を超えると加工後の架橋体の剛性が高すぎて、取り扱い性に欠けるものとなる。
ポリマーの密度を調節するには、例えばα−オレフィン含有量、重合温度、触媒量など適宜調節する方法がとられる。なお、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、JIS−K6922−2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(23℃)。
エチレンとα−オレフィンの1種以上を共重合してなる共重合体においては、積極的なジエンモノマーの添加を行わない場合でも、後述する製造過程のメカニズムの違いに起因して、種々の二重結合(ビニル、ビニリデン、シスービニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィン)を生じる場合があり、その量や種類も様々である。
従来、太陽電池封止材として良好な架橋特性を得るためには、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる二重結合数が多いと架橋特性が良好であることは知られていたが、二重結合の種類による違いについては言及されていなかった。
本発明では、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる種々の二重結合のうち、特にビニルとビニリデンが架橋特性と機械的強度の両立において重要であることを見出し、かつ、ビニルとビニリデンの合計数が、従来得ていた共重合よりも多いエチレン・α−オレフィン共重合体を製造し、架橋用のエチレン・α−オレフィン共重合体として用いることによって、本発明の効果を達成することを見出し、完成したものである。
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数当たりのビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が0.50(個/total 1000C)以上であり、好ましくは0.50〜5.0(個/total 1000C)であり、より好ましくは0.60〜4.5(個/total 1000C)であり、さらに好ましくは0.70〜4.0(個/total 1000C)であり、最も好ましくは、0.80〜4.0(個/total 1000C)である。
ビニル、ビニリデンの合計数が上記範囲であると、架橋速度に優れた架橋性樹脂組成物となり、0.50個未満であると、架橋速度が十分なものとならない。ビニル、ビニリデンの合計数は、適当なメタロセン触媒の選択、重合温度、コモノマーの種類を適宜調節することにより、上記範囲に制御することができる。
なお、これら二重結合の数は、主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数であり、1H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルの特性ピークの積分強度を用いて算出した。
下記にビニル、ビニリデンの構造を示す。ここでR1はポリマー主鎖、R2はメチル基
あるいはポリマー主鎖を示す。
また、ビニルおよびビニリデンの個数は重合温度等の製造条件、又は、コモノマーとしてジエン化合物を用いることで調整することができる。
エチレン・α−オレフィン共重合体中のビニル及びビニリデンの個数(V)において、ビニリデンの量が0.2以上であること、好ましくは、0.3以上、更に好ましくは0.4以上であることが挙げられる。
また、ビニリデンの中でも、内部ビニリデンの量が0.1以上となる場合、特に架橋効率の向上が見られる。
ビニリデンの構造は上記に示した通りであるが、そのビニリデンは、更に下記構造に示すように、ポリマーの末端に位置する末端ビニリデンとポリマーの内部に位置する内部ビニリデンが存在する。特にこの内部ビニリデンの量が0.1以上、好ましくは0.15以上であると架橋効率がよい。
(a4)コモノマーによる分岐数(N)とビニル及びビニリデンの個数(V)との関係
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、コモノマーによる分岐数(N)とビニルおよびビニリデンの合計数(V)が、下記式(1)を満たすことが重要であり好ましい。
式(1):N×V≧16
ここで、分岐数(N)およびビニル、ビニリデンの個数(V)は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数(個/total1000C)である。
ポリマー中のコモノマーによる分岐数(N)は、製造時のα−オレフィンの添加量、重合温度等の重合条件により調整することができる。
本願発明のポリマーの分岐数(N)は、0<Nの数であり、好ましくは20<N、更に好ましくは40<N、最も好ましくは60<Nであり、上限は特に制限がないが、好ましくはN<140、更に好ましくはN<120、最も好ましくはN<100の範囲であることが挙げられる。
また、N×Vの値として、好ましくはN×V≧30、更に好ましくはN×V≧40、最も好ましくはN×V≧60の範囲であること、上限は製造可能である範囲において特に制限はないが、好ましくはN×V≦200、更に好ましくはN×V≦160の範囲が挙げられる。
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体中のビニル、ビニリデンの合計数は、好ましくは、エチレン・α−オレフィン共重合体中の全ての二重結合(ビニル、ビニリデン、シス−ビニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィン)の合計数の55%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上、最も好ましくは70%以上を占める。ビニル、ビニリデンの合計数が二重結合の合計数の55%以上であると、架橋速度に優れた架橋性樹脂組成物となり、少ないと、架橋速度が十分なものとならない。
二重結合の合計数を調整する方法としては適当なメタロセン触媒の選択、重合温度、コモノマーの種類を適宜調節する方法などが挙げられる。
なお、これら二重結合の数は、上記(a3)と同様に、1H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルの特性ピークの積分強度を用いて算出した。
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、フローレシオ(FR)、すなわち190℃における10kg荷重でのMFR測定値であるI10と、190℃における2.16kg荷重でのMFR測定値であるI2.16との比(I10/I2.16)が7.0未満であることが好ましい。なお、メルトフローレート(MFR)は、JIS−K7210−1999に準拠して測定した値である。
FRは、エチレン・α−オレフィン共重合体の分子量分布、長鎖分岐の量と相関が深いことが知られている。本発明では、上記条件を満たすポリマーの中でも、190℃における10kg荷重でのMFR測定値(I10)と、190℃における2.16kg荷重でのMFR測定値(I2.16)との比(I10/I2.16)が7.0未満であるものを使用することが好ましい。このような長鎖分岐に特徴があるポリマー構造となっている共重合体を用いることで、剛性と架橋効率のバランスが良好なものとなる。これに対して、FRが7.0以上であると、架橋する際の架橋効率が悪くなる傾向にある。
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、透明性を必要とする樹脂組成物用途に用いられる場合は、さらに、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましい。Mz/Mnが8.0を超えると透明性が悪化する。Mz/Mnを所定の範囲に調整する方法としては適当なメタロセン触媒を選択する方法などが挙げられる。
なお、Mz、Mnの値は、GPCにより測定される値であるが、詳細な測定条件は、下記記載のとおりである。
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工製AD806M/S 3本(カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンはα=0.733、logK=−3.407である。)
測定温度:140℃
濃度:10mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
本発明に用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンから誘導される構成単位を主成分としたエチレンとα−オレフィンのランダム共重合体である。
コモノマーとして用いられるα−オレフィンは、炭素数3〜50のα−オレフィンであり、好ましくは炭素数3〜20のα−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デケン、1−ウンデケン、1−ドデケン、ビニルベンゼン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1−4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン等を挙げることができる。これらの中でも、好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、5−エチリデン−2−ノルボルネンであり、特に好ましくは、プロピレンである。
一方、上記式の下側では、重合反応中のポリマー鎖(P)に、プロピレンが挿入し、引き続き錯体金属(M)のβ位の水素を引抜かれると中間体3が生じる。この中間体3においても、(a)又は(b)の水素からの脱離反応が考えられるが、立体的、電子的要因に理由により(b)の水素が優先的に脱離して、中間体4が生じる。さらに中間体4から次のモノマーがいずれに挿入してもビニリデンが生じる。
上記の理由から、プロピレン挿入後は、1−ヘキセン、1−オクテンといったα−オレフィン挿入後と対比して、優先的にビニリデンが生じると考えられる。なお、本発明において、ビニリデン等の二重結合の発生のメカニズムは、上記メカニズムに限定されるものではない。
コモノマーとして、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、及び1,9−デカジエン等のジエン化合物を、α−オレフィンに少量配合してもよい。これらのジエン化合物を配合すると、長鎖分岐ができるので、エチレン・α−オレフィン共重合体の結晶性を低下させ、透明性、柔軟性、接着性等が良くなるとともに、長鎖分岐の末端基は不飽和基となるため、有機過酸化物による架橋反応や、酸無水物基含有化合物若しくはエポキシ基含有化合物との共重合反応やグラフト反応を容易におこすことができる。またエチレン・α−オレフィン共重合体に少量配合されるジエン化合物として、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンのような環状ジエンも使用できる。
このようなコモノマーとしてのジエン化合物の含量は、柔軟性と架橋特性の観点から、好ましくは0.01〜5.00mol%であり、より好ましくは0.02〜1.00mol%、さらに好ましくは0.05〜0.50mol%である。
ただし、エチレンとαーオレフィンの1種又は2種以上のみからなる共重合体であることが好ましい。
本発明で使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造に用いられる触媒としては、特に限定されないが、より好ましくはメタロセン触媒を用いる。
メタロセン触媒としては、特に限定されるわけではないが、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物と助触媒とを触媒成分とする触媒が挙げられる。特に、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物を使用するのが好ましい。
製造法としては、特に限定されず、高圧イオン重合法、気相法、溶液法、スラリー法等を用いることができるが、本発明に係る二重結合を調整したエチレン・オレフィン共重合体を得るためには150〜330℃の高温で重合を行うことが望ましいため、高圧イオン重合法利用するのが好ましい(「ポリエチレン技術読本」第4章、松浦一雄・三上尚孝 編著、2001年)。
本発明における成分(B)の架橋剤は、主に成分(A)を架橋するために用いられる成分で、好ましくは有機過酸化物が挙げられる。
有機過酸化物としては、分解温度(半減期が1時間である温度)が70〜180℃、とくに90〜160℃の有機過酸化物を用いることができる。このような有機過酸化物として、例えば、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ジパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、ジクロヘキサノンパーオキサイドなどが挙げられる。
本発明において、樹脂組成物にはヒンダードアミン系光安定化剤を配合することが望ましい。ヒンダードアミン系光安定化剤は、ポリマーに対して有害なラジカル種を捕捉し、新たなラジカルを発生しないようにするものである。ヒンダードアミン系光安定化剤には、低分子量のものから高分子量のものまで多くの種類の化合物があるが、従来公知のものであれば、特に制限されずに用いることができる。
前記含有量を0.01重量部以上とすることにより安定化への効果が十分に得られ、2.5重量部以下とすることによりヒンダードアミン系光安定化剤の過剰な添加による樹脂の変色を抑えることができる
また、本発明において、前記有機過酸化物(B)と前記ヒンダードアミン系光安定化剤との重量比を、1:0.01〜1:10とし、好ましくは1:0.02〜1:6.5とする。これにより、樹脂の黄変を顕著に抑制することが可能となる。
また、本発明の樹脂組成物には架橋助剤を配合することができる。架橋助剤は、架橋反応を促進させ、エチレン・α−オレフィン共重合体の架橋度を高めるのに有効であり、その具体例としては、ポリアリル化合物やポリ(メタ)アクリロキシ化合物のような多不飽和化合物を例示することができる。
より具体的には、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエートのようなポリアリル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのようなポリ(メタ)アクリロキシ化合物、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。架橋助剤は、成分(A)100重量部に対し、0〜5重量部程度の割合で配合することができる。
本発明の樹脂組成物には、紫外線吸収剤を配合することができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
これら紫外線吸収剤は、エチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対し0〜2.0重量部配合し、好ましくは0.05〜2.0重量部、より好ましくは0.1〜1.0重量部、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部、最も好ましくは0.2〜0.4重量部配合するのがよい。
本発明の樹脂組成物には、樹脂を改質させる目的でシランカップリング剤を用いることができる。
本発明におけるシランカップリング剤としては、例えばγ−クロロプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリクロルシラン;ビニルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリアセトキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。好ましくは、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
これらのシランカップリング剤は、エチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対して0〜5重量部使用し、好ましくは0.01〜4重量部、より好ましくは0.01〜2重量部、さらに好ましくは、0.05〜1重量部で使用される。
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を著しく損なわない範囲で、他の付加的任意成分を配合することができる。このような任意成分としては、通常のポリオレフィン系樹脂材料に使用される酸化防止剤、結晶核剤、透明化剤、滑剤、着色剤、分散剤、充填剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を挙げることができる。
上記の樹脂組成物を用いて得られる架橋体は、T−ダイ押出機、カレンダー成形機など、公知のシート成形法によってシート状に製造することができる。例えばエチレン・α−オレフィン共重合体に、架橋剤を添加し、必要に応じて、ヒンダードアミン系光安定化剤、さらには架橋助剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の添加剤を予めドライブレンドしてT−ダイ押出機のホッパーから供給し、80〜150℃の押出温度において、シート状に押出成形することによって得ることができる。これらドライブレンドに際して、一部又は全部の添加剤は、マスターバッチの形で使用することができる。またT−ダイ押出やカレンダー成形において、予め非晶性α−オレフィン系共重合体に一部又は全部の添加剤を、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて溶融混合して得た樹脂組成物を使用することもできる。
本発明の架橋体の例としては、EPDMの代替として、従来EPDMを用いた架橋体が例示される。たとえば、自動車部品(ウェザーストリップ、ホース、エアバッグカバー等)、窓枠、モールド、ケーブル、パッキン、電線被覆材、発泡架橋体、各種押出製品が例示される。
(1)メルトフローレート(MFR):前述の通り、エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、JIS−K6922−2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2)密度:前述の通り、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、JIS−K6922−2:1997附属書(23℃、低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定した。
ビニルおよびビニリデン(V)、内部ビニリデンの数は、1H−NMRにより、次の条件で測定し、コモノマー量は、主鎖及び側鎖の合計1000個の炭素あたりの個数で求めた。
装置 : ブルカー・バイオスピン(株)AVANCEIIIcryo−400MHz
溶媒 : o−ジクロロベンゼン/重化ブロモベンゼン=8/2混合溶液
<試料量>
460mg/2.3ml
<13C−NMR>
・1Hデカップル、NOEあり
・積算回数:256scan
・フリップ角:90°
・パルス間隔20秒
・AQ(取り込み時間)=5.45s D1(待ち時間)=14.55s
<1H−NMR>
・積算回数:1400scan
・フリップ角:1.03°
・AQ(取り込み時間)=1.8s D1(待ち時間)=0.01s
(1)架橋性・耐熱性(ゲル分率30分/%)
得られたペレットを、150℃−0kg/cm2の条件で、1分予熱した後、150℃−100kg/cm2の条件で29分加圧(150℃で30分間プレス成形)し、その後、30℃に設定された冷却プレスに100kg/cm2の加圧の条件で、10分間冷却することで、厚み0.7mmの架橋済シートを作製した。厚み0.7mmのシートのゲル分率で評価した。ゲル分率が高いほど架橋が進行しており、耐熱性が高いと評価できる。ゲル分率が70wt%以上のものを、耐熱性評価「○」とした。尚、ゲル分率は、当該シートを、約1gを切り取り精秤して、キシレン100ccに浸漬し110℃で24時間処理し、ろ過後残渣を乾燥し精秤して、処理前の重量で割りゲル分率を算出する。
得られたペレットを、90℃−0kg/cm2の条件で、3分予熱した後、90℃−100kg/cm2の条件で2分加圧(90℃で5分間プレス成形)し、その後、30℃に設定された冷却プレスに100kg/cm2の加圧の条件で、5分間冷却することで、厚み1.5mmの未架橋シートを作製した。該シートを用いて、キュラストメーター7(JSRトレーディング社製)にてトルクカーブ測定を実施した。測定はJIS−K6300−2に準拠し、150℃にて30分間行った。得られたトルクデータの最大値で評価した。
(1)成分(A): エチレン・α−オレフィン共重合体
下記製造方法により製造したエチレン・α−オレフィン共重合体(PE−1〜PE−6、PE−12〜PE−14)を実施例として用いた。物性を表1に示す。
一方、比較例として、下記市販のエチレン・α−オレフィン共重合体を、PE−7〜11として用いた。物性を表1に示す。
(PE−7):DEX Plastomers社製 Exact8230
(PE−8):ダウ社製 エンゲージ8407
(PE−9):DEX Plastomers社製 Exact8230
(PE−10):三井化学社製 タフマーP−0180
(PE−11):三井化学社製 タフマーA−4070S
(i)触媒の調製
特開平10−218921号公報に記載された方法で調製した錯体「rac−ジメチルシリレンビスインデニルハフニウムジメチル」0.05モルに、等モルの「N,Nジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート」を加え、トルエンで50リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
内容積5.0リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器を用い、反応器内の圧力を80MPaに保ち、エチレン(C2)、プロピレン(C3)、1−ヘキセン(C6)を所定割合、40kg/時の割合で原料ガスを連続的に供給した。また、上記(i)触媒の調製の項に記載の触媒溶液を連続的に供給し、表1記載の重合温度を維持するようにその供給量を調整した。反応終了後、得られたエチレン・α−オレフィン共重合体の、MFR、密度、ビニル含有量、ビニリデン含有量、内部ビニリデン含有量、分岐数、コモノマー組成比が表1記載のエチレン・α−オレフィン共重合体(PE−1〜6、PE−12〜PE−14)を得た。なお、PE−5及びPE−6の二重結合量の詳細を表2に示す。
エチレン・α−オレフィン共重合体(PE−1)100重量部に対して、有機過酸化物として、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート(アルケマ吉富社製、ルペロックスTBEC)を1.5重量部を配合したもの(耐熱性測定用)、1.0重量部を配合したもの(機械的強度測定用)を各々用意した。これを十分に混合し、40mmφ単軸押出機を用いて設定温度130℃、押出量(17kg/時)の条件でペレット化した。
得られたペレットを使用して、耐熱性、機械的強度を測定、評価した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、PE−1に替えて、PE−2を用いた以外は、実施例1と同様にペレットを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、PE−1に替えて、PE−3を用いた以外は、実施例1と同様にペレットを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、PE−1に替えて、PE−4を用いた以外は、実施例1と同様にペレットを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、PE−1に替えて、PE−5を用いた以外は、実施例1と同様にペレットを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、PE−1に替えて、PE−6を用いた以外は、実施例1と同様にペレットを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、PE−1に替えて、PE−12を用いた以外は、実施例1と同様にペレットを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、PE−1に替えて、PE−13を用いた以外は、実施例1と同様にペレットを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、PE−1に替えて、PE−14を用いた以外は、実施例1と同様にペレットを作製した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、PE−1に替えて、PE−7を用いた以外は、実施例1と同様にペレットを作製した。評価結果を表1に示す。
PE−1の代わりに、PE−8を用いた以外は、実施例1と同様にペレットを作製した。評価結果を表1に示す。
PE−1の代わりに、PE−9を用いた以外は、実施例1と同様にペレットを作製した。評価結果を表1に示す。
PE−1の代わりに、PE−10を用いた以外は、実施例1と同様にペレットを作製した。評価結果を表1に示す。
PE−1の代わりに、PE−11を用いた以外は、実施例1と同様にペレットを作製した。評価結果を表1に示す。
この結果、表1から明らかなように、150℃で30分架橋したシートのゲル分率で示される架橋性及び耐熱性、最大トルク強度で表される機械的強度において、実施例1〜9比較例1〜5よりも高い値を示している。よって、実施例は比較例のものと比較して、架橋特性が良く高い耐熱性を有し、かつ、架橋体として必要な機械的強度を有していることがわかる。
架橋体の例としては、従来EPDMを使用している用途、例えば自動車部品(ウェザーストリップ、ホース、エアバッグカバー等)、窓枠、モールド、ケーブル、パッキン、各種押出製品が挙げられる。
Claims (8)
- エチレンとα−オレフィンの1種以上を共重合してなり、該α−オレフィンの少なくとも1成分としてプロピレンを含み、架橋剤(B)と共に含有されて架橋用樹脂組成物を形成する、下記(a1)〜(a3)及び(a4’)の特性を有する架橋用エチレン・α−オレフィン共重合体(A)。
(a1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1〜100g/10分である
(a2)密度が0.860〜0.920g/cm3である
(a3)エチレン・α−オレフィン共重合体中のビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が0.50(個/total 1000C)以上である(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である)
(a4’)エチレン・α−オレフィン共重合体中のコモノマーによる分岐数(N)と、ビニルおよびビニリデンの合計数(V)が下記式(1’)の関係を満たす。
式(1’):N×V≧30
(ただし、NおよびVは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素あたりの数である。) - 成分(A)が、さらに下記(a6)の特性を有することを特徴とする請求項1に記載の架橋用エチレン・α−オレフィン共重合体。
(a6)エチレン・α−オレフィン共重合体中のビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が、二重結合全体(ビニル、ビニリデン、シス−ビニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィン)の合計数の55%以上である(ただし、ビニル、ビニリデン、シス−ビニレン、トランス−ビニレン、三置換オレフィンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である) - 成分(A)が、メタロセン触媒により製造されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の架橋用エチレン・α−オレフィン共重合体。
- 成分(A)が、α−オレフィンの少なくとも1成分としてプロピレンを10〜30モル%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の架橋用エチレン・α−オレフィン共重合体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の成分(A)と、下記成分(B)を含有することを特徴とする架橋性樹脂組成物。
成分(B):架橋剤 - 該成分(B)が、有機過酸化物であることを特徴とする、請求項5記載の架橋性樹脂組成物。
- 成分(B)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、0.2〜5重量部であることを特徴とする請求項5又は6に記載の架橋性樹脂組成物。
- 請求項5〜7のいずれかに記載の架橋性樹脂組成物を用いてなる架橋体。
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