JP6393211B2 - 挿入式骨固定部材 - Google Patents
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Description
ここで、「剛性」とは、挿入式骨固定部材を骨に形成された穴へ挿入したときに、軸体の環状膨出部が実質的に変形せずに穴の周壁に食い込んで固定される、骨より硬い性状を意味する。
この挿入式骨固定部材1(以下、単に、「骨固定部材1」という。)は、軸体11の基端にヘッド部12を有し、軸体11が、円柱状の基軸11aに複数(本実施例において、図1(a)は2個のもの、図1(b)は3個のものを例示しているが、軸体11の長さ等に応じて、4個以上とすることもできる。)の環状膨出部11bを軸方向に間隔をあけて設けてなり、骨固定プレート2を骨固定プレート2に設けた孔2aを介して骨3に固定するために使用されるもので、骨3に形成された穴3aへの挿入時に軸体11の環状膨出部11bが穴3aの周壁に食い込んで固定される剛性を備えた生体内分解吸収性材料から形成されてなり、環状膨出部11bが、先端側傾斜面11b1と基端側傾斜面11b2を有し、縦断面形状における先端側傾斜面11b1が、基軸11aに対し5〜30°、好ましくは、10〜25°の角度θ1で先端側から基端側に向けて径が拡大する形状をし、基端側傾斜面11b2が、基軸に対し75〜90°、好ましくは、80〜90°の角度θ2で先端側から基端側に向けて径が縮小する形状をし、基端側傾斜面11b2が基軸11aと交差する部分に、基軸11aの外径D11aの0.05〜0.3倍の半径のアール11rが形成されてなるようにしている。
ここで、「基軸11a」とは、軸体11の環状膨出部11bを除いた部分を意味し、「基軸11aの外径D11a」とは、軸体11の先端部を除く最小径の部分の直径を意味する。
なお、軸体11の先端部は、骨3に形成された穴3aへの挿入しやすさを考慮して、必要に応じて、基軸11aの外径D11a(軸体11の最小径)よりも小径の先細形状に形成することができる。
これにより、骨固定部材1は、骨より硬い性状を呈し、操入具(図示省略)を介して打撃等することにより骨固定部材1の軸体11を骨3に形成された穴3aへ挿入、固定する際に、骨固定部材1が破損したり、損傷を受けることを防止することができるとともに、軸体11の環状膨出部11bが実質的に変形せずに穴3aの周壁に食い込んで固定されるものとなる。
環状膨出部11bは、穴3aの周壁に食い込んで骨固定部材1の軸体11を骨3に固定させるためのものであり、環状の一部を切欠いたものであっても、実質的に当該部分が変形せずに全体として環状を維持し、上記機能を奏するものであれば、これも環状膨出部の概念に含まれる。
この生体内分解吸収性材料は、本件出願人が先にインプラント材料として提案したものであり(必要があれば、例えば、特許第3239127号公報参照。)、基本的に生体内分解吸収性である結晶性の熱可塑性ポリマー中に粒子又は粒子の集合塊の大きさが0.2〜50μmの表面生体活性なバイオセラミックス粉体の10〜60重量%を実質的に均一に分散させた複合材料からなり、ポリマーの結晶が圧入充填による加圧により結晶化して配向しており、かつ、その結晶化度が10〜70%である、閉鎖成形型内に圧入充填して加圧配向した圧縮成形又は鍛造成形により得られた加圧配向成形体からなる粒子及びマトリックスポリマー強化複合材料である。
(a)バイオセラミックス
1)バイオセラミックス
バイオセラミックスは、表面生体活性なバイオセラミックスである。
表面生体活性なバイオセラミックスとしては、焼成したハイドロキシアパタイト(HA)、バイオガラス系もしくは結晶化ガラス系の生体用ガラス、ディオプサイド等のいずれか単独又は2種以上の混合物を挙げられる。その中、焼成したハイドロキシアパタイト(HA)、バイオガラス系のバイオグラス、セラビタール、結晶化ガラス系のA−Wガラスセラミック等や結晶化ガラス系のバイオベリット−1、インプラント−1、β−結晶化ガラス、ディオプサイドが好適に使用できる。
使用可能な他のバイオセラミックスとしては、表面生体活性なバイオセラミックスの外、生体内吸収性のバイオセラミックスのような他のバイオセラミックスも同様に使用できる。
生体内吸収性のバイオセラミックスとしては、未焼成ハイドロキシアパタイト、ジカルシウムホスフェート、トリカルシウムホスフェート、テトラカルシウムホスフェート、オクタカルシウムホスフェート、カルサイト等のいずれか単独、又は2種以上の混合物が挙げられる。その中、未焼成のHA(未焼成HA)、ジカルシウムホスフェート、α−トリカルシウムホスフェート(α−TCP)、β−トリカルシウムホスフェート(β−TCP)、テトラカルシウムホスフェート(TeCP)、オクタカルシウムホスフェート(OCP)、ジカルシウムホスフェート・ハイドレート・オクタカルシウムホスフェート(DCPD・OCP)、ジカルシウムホスフェート・アンハイドライド・テトラカルシウムホスフェート(DCPA・TeCP)、カルサイト等が好適に使用できる。
ポリマーとしては、生体内分解吸収性である結晶性の熱可塑性ポリマーであれば特に制限されないが、そのうちでも生体安全性、生体適合性が確認され、既に実用されているポリ乳酸や、各種のポリ乳酸共重合体(例えば、乳酸−グリコール酸共重合体)が好ましく使用される。
ポリ乳酸としては、L−乳酸又はD−乳酸のホモポリマーが好適であり、また、乳酸−グリコール酸共重合体としては、モル比が99:1〜75:25の範囲内のものが、グリコール酸のホモポリマーよりは耐加水分解性がよくて好適である。また、非晶性のD、L−ポリ乳酸又はその乳酸−グリコール酸共重合体、乳酸−カプロラクトン共重合体、或いは該ホモポリマー、コポリマーと相溶性のある生体内分解吸収性の他のポリマーの少量を、塑性変形し易くするために、或いは得られる加圧配向による配向成形体に靱性を持たせるために混合してもよい。もちろん、生体との反応、或いは分解速度を配慮すると、未反応のモノマーや触媒残渣が除去・精製されて少ないポリマーがよい。
圧入充填による加圧配向成形体は、高い機械的強度を持ち、ほど良い加水分解の速度を持つという2つの要求因子のバランスを考えて、結晶化度の範囲を10〜70%、好ましくは20〜50%に選択する必要がある。結晶化度が70%を越えると、見かけの剛性は高いが、靱性に欠けるので脆くなる。また、分解は必要以上に遅くなり、生体内での吸収、消失に長期を要するので望ましくない。逆に、結晶化度が10%未満と低い場合には、結晶配向による強度の向上は望めない。このように機械的強度と分解、吸収による消滅の速さ、或いは生体への刺激が少ないことを勘案すると、適切な結晶化度は10〜70%、好ましくは20〜50%である。10〜20%の低結晶化度であっても、フィラーの効果によって強度は非充填の場合よりも向上する。また、50〜70%の高結晶化度であっても、加圧による塑性変形の過程で微結晶が生じて、生体内での分解、吸収に不利に作用することは少ない。すなわち、配向成形体の結晶化度が10〜70%であることが望ましい。
このように三次元的に加圧配向された成形体は、例えば、延伸配向の成形体に比較して、密度が高くなる。それは変形度にも左右されるが、表面生体活性なバイオセラミックスを20%台混合したものは1.4〜1.5g/cm3 、30%台混合したものは1.5〜1.6g/cm3 、40%台混合したものは1.6〜1.7g/cm3 、50%台混合したものは1.7〜1.8g/cm3となる。この高密度は材料の緻密さを示す指数でもあり、高強度を裏付ける重要な要因の一つである。
この材料は、圧入充填による加圧配向によって作られたために、成形体の結晶(分子鎖)が本質的に複数の基準軸に平行に配向している。一般に、基準軸が多くなるほど成形体の強度的な異方性が少なくなるので、方向性のある材料のように、或る方向からの比較的弱い力で破壊するようなことは少なくなる。
製造法は、基本的に(a)予め生体内分解吸収性である結晶性の熱可塑性ポリマーと表面生体活性なバイオセラミックス粉体とが実質的に均一に混合・分散した混合物を作り、(b)次いで該混合物を溶融成形して予備成形体(例えば、ビレット。)を造り、(c)該予備成形体を下端が本質的に閉鎖された成形型の狭い空間を持つ閉鎖成形型のキャビティ内に(圧縮配向の場合)圧入充填することによって、或いは断面の厚み或いは幅のいずれかが部分的又は全体的に予備成形体のそれよりも小さい成形型の狭い空間に、或いは成形型の空間を予備成形体を収容する空間よりも小さくした成形型のキャビティ内に(鍛造配向の場合)圧入充填することによって、該予備成形体を冷間で塑性変形させながら加圧配向成形体とする。
すなわち、製造法は、予め生体内分解吸収性である結晶性の熱可塑性ポリマーと表面生体活性なバイオセラミックス粉体とが実質的に均一に分散した混合物を作り、次いで該混合物を溶融成形して予備成形体を造り、該予備成形体を閉鎖成形型のキャビティ内に、冷間で圧入充填して塑性変形させて配向成形体とする。
これにより、ヘッド部12と骨固定プレート2に設けた孔2aの周縁との十分な係合代を確保し、骨固定プレートを骨に強固に固定することができる。
これにより、骨3に形成された穴3aへの挿入時に軸体11の環状膨出部11bが穴3aの周壁に食い込んで固定される際の十分な食い込み量を確保し、骨3に対する固着力を大きくすることができる。
これにより、生体に対して刺激を与える突出部をなくすことができる。
これにより、骨固定部材1を挿入具を用いて押し込んで固定する際の挿入具への保持力を高めることができ、骨固定部材1が挿入具から離脱することを防止し、操作性を向上することができる。
これにより、骨3に形成された穴3aへの挿入時に軸体11の環状膨出部11bが穴3aの周壁に食い込んで固定される際の十分な食い込み量を確保し、骨3に対する固着力を大きくすることができる。
生体内分解吸収性材料:焼成したハイドロキシアパタイト(HA)とポリ乳酸共重合体とのコンポジット材料
骨固定部材1の長さL1:4mm
軸体11の長さL11:3mm
ヘッド部12の長さL12(骨固定プレート2の厚さ):1mm
先端側傾斜面11b1の基軸11aに対する角度θ1:17°
基端側傾斜面11b2の基軸11aに対する角度θ2:90°
基軸11aの外径D11a(軸体11の最小径):1.4mm
環状膨出部11bの外径D11b:2mm
環状膨出部11bの山の高さ:0.3mm
環状膨出部11bのピッチ:1mm(図1(b)に示す骨固定部材1は、0.7mm)
アール11r:0.2mm
ヘッド部12の外径D12:3mm
ヘッド部12の凹部12aの直径D12a:1mm
ヘッド部12の凹部12aの深さL12a:1mm
骨3に形成された穴3aの直径D3a:1.85mm
豚の腓骨に直径D3a:1.85mm及び1.90mmの穴3aを形成し、図1(a)に示す挿入式骨固定部材1(4mmタック)を穴3aへ挿入具を用いて押し込んで固定した。
豚の腓骨に直径D3a:1.85mmの穴3aを形成し、この穴3aにタッピングを行い、スクリュー式骨固定部材(ミニスクリュー(タキロン社製CS204))をトルクリミッタが働くまで締め付けて固定した。
引っ張り試験機に試料片を設置し、タック及びミニスクリューを引き抜かれるまで、10mm/minの速度で引き抜き荷重を加えた(n=5)。
11 軸体
11a 基軸
11b 環状膨出部
11b1 先端側傾斜面
11b2 基端側傾斜面
11r アール
12 ヘッド部
12a 凹部
2 骨固定プレート
2a 孔
3 骨
3a 穴
Claims (6)
- 軸体の基端にヘッド部を有し、該軸体が、円柱状の基軸に複数の環状膨出部を軸方向に間隔をあけて設けてなり、骨固定プレートを該骨固定プレートに設けた孔を介して骨に固定するために使用される挿入式骨固定部材であって、
挿入式骨固定部材が、骨に形成された穴への挿入時に軸体の環状膨出部が穴の周壁に食い込んで固定される剛性を備えた生体内分解吸収性材料から形成されてなり、
環状膨出部が、先端側傾斜面と基端側傾斜面を有し、縦断面形状における先端側傾斜面が、基軸に対し5〜30°の角度で先端側から基端側に向けて径が拡大する形状をし、基端側傾斜面が、基軸に対し75〜90°の角度で先端側から基端側に向けて径が縮小する形状をし、
基端側傾斜面が基軸と交差する部分に、基軸の外径の0.05〜0.3倍の半径のアールが形成されてなることを特徴とする挿入式骨固定部材。 - 基軸の外径に対するヘッド部の外径の寸法比が、1.5〜2.5であることを特徴とする請求項1に記載の挿入式骨固定部材。
- 基軸の外径に対する環状膨出部の外径の寸法比が、1.35〜1.5であることを特徴とする請求項1又は2に記載の挿入式骨固定部材。
- ヘッド部の天面が、骨固定プレートを骨に固定した状態で骨固定プレートの表面と面一となる平坦面に形成されてなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の挿入式骨固定部材。
- ヘッド部の天面の中心部に丸穴状の凹部が形成されてなり、該凹部に、凹部に対して締め代を有する挿入具の先端部を強嵌合状態に嵌着するようにしてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の挿入式骨固定部材。
- 環状膨出部の外径に対する穴の直径の寸法比が、0.8〜0.95であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の挿入式骨固定部材。
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