JP6368254B2 - 脂質の網羅的解析方法 - Google Patents

脂質の網羅的解析方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6368254B2
JP6368254B2 JP2015014637A JP2015014637A JP6368254B2 JP 6368254 B2 JP6368254 B2 JP 6368254B2 JP 2015014637 A JP2015014637 A JP 2015014637A JP 2015014637 A JP2015014637 A JP 2015014637A JP 6368254 B2 JP6368254 B2 JP 6368254B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sample
ionization
cholesterol
lipids
lipid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015014637A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016138841A (ja
Inventor
久 辻村
久 辻村
綾乃 直江
綾乃 直江
井上 陽介
陽介 井上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kao Corp filed Critical Kao Corp
Priority to JP2015014637A priority Critical patent/JP6368254B2/ja
Publication of JP2016138841A publication Critical patent/JP2016138841A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6368254B2 publication Critical patent/JP6368254B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)

Description

本発明は、試料中の多様な脂質を網羅的に解析する方法に関する。
角質層は表皮の最表面に位置し、皮膚のバリア機能や保湿機能に寄与している。角質層を構成する角質細胞の間には、細胞間脂質が存在し、この細胞間脂質の層と水分子の層が交互に規則正しく何層も重なりあう「ラメラ構造」を形成することで、角質層の働きを支えている。ヒト角質層の細胞間脂質は、主にセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸、硫酸コレステロールなどから構成されている。ヒト角質層のセラミドは、従来、皮膚のバリア機能や保湿機能に関与する主因子として報告されている。セラミド以外の細胞間脂質についても、皮膚機能との関連が報告されている。
特許文献1には、液体クロマトグラフィー(LC)−質量分析(MS)法により、被験者の皮膚角質層のセラミド分子を網羅解析し、その解析で得られた情報を元に被験者の肌質を評価する方法が開示されている。特許文献2には、LC−MS法などで取得した被験体におけるセラミド組成の情報から、アトピー性皮膚炎傾向等の肌質を判断する方法が開示されている。
非特許文献1〜2には、順相液体クロマトグラフィー(NPLC)−エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)法により、被験者の皮膚角質層のセラミド分子を網羅解析したことが開示されている。非特許文献3〜4には、NPLC−ESI−MS法で得られたヒト皮膚角質層のセラミド分子プロファイルが、アトピー性皮膚炎や、皮膚機能の状態と相関性を有していたことが開示されている。非特許文献5には、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)−ESI−MS法により毛髪セラミドを定量したことが開示されている。
非特許文献6には、RPLC−大気圧光イオン化質量分析(APPI−MS)法により、セラミド等の角質層スフィンゴ脂質を検出したことが開示されている。非特許文献7には、NPLC−大気圧化学イオン化質量分析(APCI−MS)法により、皮膚角質層のセラミドを網羅的に解析したことが開示されている。非特許文献8には、NPLC−APCI−MS法によるセラミドとコレステロールの検出と、RPLC−APCI−MS法による遊離脂肪酸の検出とを組み合わせることによって、角質層脂質を網羅的に解析したことが開示されている。
近年、ESIとAPCIによるイオン化を同時に、又はほぼ同時に誘起するイオン源(以下、マルチイオン源とも称する)が開発されている(例えば、非特許文献9)。しかし、このようなESIとAPCIの双方の原理を兼ね備えたマルチイオン源を使用する際の検出感度は、一般的には各イオン源を専用で用いた場合よりも劣る。
また一般に、NPLCは、親水性相互作用(極性基や構造基本骨格)に応じた分離挙動を示すため、夾雑成分の影響を受けにくい反面、イオン性化合物の分離には不向きであり、多様な脂質の分離への適用は困難である。一方、RPLCは、一般的に疎水性相互作用(疎水基)に応じた分離挙動を示すため、基本的に疎水基を有する多様な脂質の分離に適用できる反面、夾雑成分の影響を受ける可能性が高い。そのため、RPLCでは通常、試料から夾雑成分を除去するための煩雑な前処理が必要である。
したがって、従来の高速液体クロマトグラフィー(LC)−質量分析(MS)法においては、解析対象成分の構造又は化学的特性に応じて、逆相又は順相によるLC分離と、ESI又はAPCIによるMS検出とを適宜組み合わせて使用することが一般的である。例えば、角質層脂質の主成分である遊離脂肪酸、硫酸コレステロール、コレステロール、セラミドの分析の場合、各々LC分離及びMS検出におけるイオン化条件が異なり、しかも他の角質層成分や角層剥離テープの粘着成分などが夾雑物となるため、これら全てを同時にLC−MS分析することは極めて困難である。従来の角質層脂質の網羅解析では、非特許文献8に開示されるように、解析対象成分ごとに別個の条件でLC分離及びイオン化されていた。
特開2007-108060号公報 特開2008-261741号公報
Journal of Lipid Research, 2008, 49:1466-1476. Journal of Lipid Research, 2009, 50:1708-1718. Journal of Investigative Dermatology, 2010, 130:2511-2514. Archives of Dermatological Research, 2013, 305:151-162. Lipids, 2007, 42:275-290. Journal of Chromatography A, 2006, 1133:58-68. Journal of Lipid Research, 2011, 52:1211-1221. Biochimica et Biophysica Acta, 2014, 1841:70-79. Chromatography,2006, 27:81-84.
本発明は、皮膚や毛などの多様な脂質を含む試料中に含まれる脂質、例えば、セラミド、遊離脂肪酸、コレステロール、硫酸コレステロールなどを一度に検出することができる、脂質の網羅的解析方法に関する。
本発明者らは、種々検討した結果、脂質を含む試料を、まとめて逆相液体クロマトグラフィーにより分離した後、ESIとAPCIによるイオン化を誘起するマルチイオン源を備えた質量分析装置にかけることによって、該試料中のセラミド、遊離脂肪酸、コレステロール及び硫酸コレステロールなどの、従来は別々のLC−MS分析で検出されていた各種脂質を一度に検出することができることを見出した。
すなわち、本発明は、試料中の脂質の網羅的解析方法であって、
試料を、逆相液体クロマトグラフィーに供すること;
該クロマトグラフィーに供した試料を、エレクトロスプレーイオン化と大気圧化学イオン化の両方を誘起するマルチイオン源によるイオン化に供すること;ならびに、
該イオン化に供した試料を質量分析にかけて、セラミド、遊離脂肪酸、コレステロール及び硫酸コレステロールを検出すること、
を含む方法を提供する。
本発明によれば、一度のLC−MS分析で、多様な脂質を含む試料中の脂質の網羅的解析が可能になる。とりわけ、本発明によれば、従来は別々のLC−MS分析で検出しなければならなかった試料中の脂質、例えば、セラミド、遊離脂肪酸、コレステロール及び硫酸コレステロールなどを、一度のLC−MS分析でまとめて検出することができる。本発明の方法は、皮膚や毛の脂質解析に好適である。本発明の方法による解析結果は、肌質や髪質の状態の評価に応用することができる。
本発明の脂質の網羅的解析方法に基づく脂質の網羅的解析システムの一例を概略的に示すブロック図。 角質層試料の多段抽出イオンクロマトグラム。A−a:前腕試料の負イオンモード検出、A−b:前腕試料の正イオンモード検出、B−a:頬試料の負イオンモード検出、B−b:頬試料の正イオンモード検出。CERs:セラミド、FFAs:遊離脂肪酸、ChSO4:硫酸コレステロール、CHOL:コレステロール。
本発明は、試料中の脂質の網羅的解析方法を提供する。本発明の方法に適用される試料は、解析の標的とする脂質を含有する可能性のある試料であれば特に限定されない。試料の好ましい例としては、ヒトや動物などの生物の生体や死体から採取した皮膚、皮膚角質層、毛、臓器、血液、体液、及びそれらから再構成した細胞や組織などが挙げられ、より好ましくは、生体から切除、削剥又は剥離した皮膚角質層や毛が挙げられ、さらに好ましくは、テープストリッピング法によって採取した皮膚角質層が挙げられる。該テープストリッピング法に用いる角層剥離テープの粘着成分は、特に限定されないが、好ましくはアクリル系ポリマーである。
上記試料は、クロマトグラフィー分離の前に溶媒抽出に供され、脂質を含む溶媒抽出液へと調製される。溶媒抽出のための溶媒には、標的脂質の溶解性が高く、かつ好ましくは、テープストリッピングに用いたテープやその粘着成分が溶解し難い溶媒を用いる。好ましい溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。さらに、脂質解析が夾雑成分の影響を受ける可能性がある場合、夾雑物を除去するための前処理を試料に施してもよい。あるいは、上記試料から脂質を含む溶媒抽出液を調製する方法として、生体試料から脂質成分を分離精製するための公知の手法、例えば、Bligh and Dyer法やFolch法を適用することができる。しかし、本発明の方法では上記前処理や複雑な分離精製手順は必要なく、上記溶媒抽出液をそのまま逆相液体クロマトグラフィーにかけても、十分な精度のデータを得ることができる。
本発明の脂質の網羅的解析方法では、上記手順で調製した試料をクロマトグラフィー分離する。より詳細には、上記手順で調製した溶媒抽出液を、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)に供する。本発明の方法では、従来の解析法のように、標的脂質ごとに試料を分けたり、それらを別個にNPLCとRPLCに供する必要はなく、全ての試料を同じ条件でクロマトグラフィー分離すればよい。
RPLC用の充填剤としては、シリカゲルやポリマーゲル基材に炭化水素鎖を結合した充填剤が挙げられる。好ましくは、シリカゲル基材にオクタデシル基を結合した充填剤(ODS又はC18充填剤とも称する)が挙げられる。
クロマトグラフィーの溶離液は、標的脂質を適度に保持して分子種別に分離することが可能であり、かつ不揮発性の酸や塩を高濃度に含まないものが好ましい。例えば、溶離液aはメタノール/水の混合液、溶離液bはイソプロパノールとし、溶離液aとbで100:0〜0:100(体積比)のグラジエントをかけることができる。
次いで、上記クロマトグラフィーに供した試料を、質量分析のためのイオン化に供する。好ましくは、該イオン化は、イオン化促進剤の存在下で行われる。イオン化促進剤は、質量分析の正イオンモードで[M+H]+、[M+H−H2O]+などが高感度に検出され、負イオンモードで[M−H]-、[M+HCOO]-、[M+CH3COO]-などが高感度に検出されるように、該イオン化の際の標的脂質のイオン化効率を向上させる物質である。イオン化促進剤の例としては、ギ酸、酢酸、及びそれらの塩(例えば、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム)からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。イオン化促進剤は、上記クロマトグラフィー分離で得られた溶出液に添加されてもよいが、上述したクロマトグラフィー用の溶離液に添加されてもよい。
本発明の方法においては、上記クロマトグラフィーに供した試料は、一度に、エレクトロスプレーイオン化(ESI)と、大気圧化学イオン化(APCI)の両方のイオン化に供される。これにより、試料中の標的脂質分子を、その極性や構造特異性にかかわらずイオン化することができる。試料を一度にESIとAPCIの両方に供するには、該試料を、ESIとAPCIの両方を同時に、又はほぼ同時に誘起するイオン源(すなわち、マルチイオン源)によるイオン化に供すればよい。例えば、当該マルチイオン源を備えた質量分析装置に試料を導入すればよい。なお、本明細書において、「ESIとAPCIを同時に、又はほぼ同時に誘起するイオン源」又は「マルチイオン源」とは、ESIとAPCIを同時に行う複合イオン化法を実行できるか、又はESIとAPCIそれぞれの単独イオン化法をデッドタイム無く切換えて実行可能であり、それによって、1回の質量分析でESIとAPCIにより生成されたイオンを同時に検出することができるように試料をイオン化することができるイオン源を意味している。このようなマルチイオン源は、マルチモードイオンソース、デュアルイオンソース、ESCiマルチモードイオン源、デュオスプレーイオンソース、ハイブリッドイオン源などと称され、Agilent Technologies、島津製作所、Waters Corporation、AB Sciex、株式会社日立ハイテクノロジーズなどから販売又は公開されている(例えば、米国特許第6646257号、国際公開公報第2003/102537号、国際公開公報第2007/032088号、国際公開公報第2014/084015号)。
上記の手順でESIとAPCIの両方に供されイオン化された試料中の脂質分子は、質量分析にかけられる。質量分析には、四重極型質量分析装置(Q−MS)、飛行時間型質量分析装置(TOF−MS)、イオントラップ型質量分析装置(IT−MS)、フーリエ変換型質量分析装置(FT−MS)等のシングル型の質量分析装置、Q−TOF、IT−TOF等のハイブリッド型質量分析装置、又はトリプル四重極型等のタンデム質量分析装置(MS/MS等)などの公知の質量分析装置を用いることができる。質量分析におけるイオン化された脂質分子の検出は、正イオンモード及び負イオンモードのいずれで行ってもよく、標的脂質分子種に応じて正又は負のイオンモードを選択すればよい。例えば、遊離脂肪酸及び硫酸コレステロールは負イオンモード、コレステロールは正イオンモードで検出することが好ましい。セラミドは、正負いずれのイオンモードでも検出することができるが、夾雑物の影響を回避するためには負イオンモードで検出することが好ましい。
上記セラミドのような正負いずれのイオンモードでも検出することができる分子の場合、一般的には感度面で優位な正イオンモードが使用される。しかし、夾雑物の影響を回避するためには負イオンモードでの検出が望ましい。負イオンモードで高感度に検出するためには、上述したイオン化促進剤を使用し、負イオンモードでの標的分子のイオン化効率を向上させることが望ましい。
上記ESIとAPCIによるイオン化と質量分析により、試料中の脂質が網羅的に検出される。より詳細には、本発明の方法によれば、試料中の極性及び非極性の脂質をともに一度の質量分析で検出することができる。本発明の脂質の網羅的解析方法のための標的脂質の好ましい例としては、皮膚角質層の細胞間脂質及び毛の内在性脂質が挙げられる。より好ましくは、標的脂質は、少なくともセラミド、遊離脂肪酸、コレステロール及び硫酸コレステロールであり得る。
質量分析にかけられたイオン化された脂質分子は、質量数/電荷(m/z)ごとに分離され、検出される。検出された分子種はm/zに基づいて同定することができるが、好ましくは、特許文献1に開示される手法に基づいて同定される。この手法は、要約すると、以下のとおりである:まず、脂質含有試料をクロマトグラフィー分離し、質量分析装置でイオン化して検出した後、質量分析装置から出力されるデータから、クロマトグラフィーでのピークの保持時間と、質量分析で計測したm/z及びイオン強度に基づいて3軸に展開した多段抽出イオンクロマトグラムを作成する。次いで、予め準備した標的脂質のピークの保持時間とm/zに関するデータベースを探索することで、多段抽出イオンクロマトグラム上の各ピークを形成する脂質分子種を同定する。
同定した脂質を定量解析する場合、各脂質の抽出イオンクロマトグラム上でのピーク面積を測定し、比較すればよい。より正確な定量解析のためには、クロマトグラフィーでのピークの保持時間や、質量分析で計測したm/z又はイオン強度のデータを内部標準によって校正することが好ましい。例えば、上述した試料の溶媒抽出液に既知濃度の内部標準物質を添加し、該内部標準物質のピーク面積に対する各脂質のピーク面積の比を求めることにより、各脂質を定量することができる。内部標準物質の例としては、セラミドについてはN−Heptadecanoyl−D−erythro−Sphingosine(C17:0−Ceramide)、遊離脂肪酸についてはArachidic Acid−d39、コレステロールについてはCholesterol−d7、硫酸コレステロールについてはSodium eicosyl sulfateを挙げることができる。
さらに精密な定量が必要な場合、各脂質分子種の絶対検量線を作成することができる。該検量線に基づいて、対応する脂質分子種の絶対量を算出することができる。例えば、セラミドを定量する場合、全セラミド分子の標準品を準備してそれらの絶対検量線を作成し、該絶対検量線に基づいて、試料中に含まれる各種セラミド分子の絶対量を算出することができる。
さらに、定量された脂質の量を、採取された試料の量、例えば皮膚、角質層又は毛の面積や重量、細胞数、タンパク質量などで除することにより、試料の特定量又は面積あたりに含まれる各脂質の量を算出することができる。
本発明による脂質の網羅的解析方法で取得された試料中の脂質組成(種類や量など)の情報を用いて、該試料やそれが由来する生物の状態を評価することができる。例えば、試料がヒト皮膚や毛である場合、試料中の脂質組成から、該ヒトの肌質や髪質を評価することができる。より詳細な例として、肌質の評価の手順を以下に説明する。まず、ヒト集団から、本発明の方法により、皮膚の角質層中のセラミド、遊離脂肪酸、コレステロール、硫酸コレステロールなどの脂質組成(種類や量)を取得し、該脂質組成と彼らの肌質(例えば、普通肌、乾燥肌、脂性肌、保湿力に劣る肌、バリア機能に劣る肌、ニキビができやすい肌、スケーリングが生じやすい肌、紅斑が生じやすい肌、乾癬患者の肌質、アトピー性皮膚炎患者の肌質、など)との関連付けデータを作成する。次いで、本発明の方法により、被験者の皮膚の角質層中のセラミド、遊離脂肪酸、コレステロール、硫酸コレステロールなどの脂質組成(種類や量)を取得する。上記ヒト集団より得た脂質組成と肌質との関連付けデータに基づいて、該被験者より得た脂質組成からその肌質を評価することができる。好ましくは、本発明の方法により取得した脂質組成に加えて、必要に応じて他の皮膚の性状(経皮水分蒸散量、水分量、外観等)も参照する。これによって、肌質をより正確に評価することが可能となる。同様の手順で、髪質(例えば化学処理によるダメージ度など)を評価することが可能である。
以下、図面を参照して、本発明による脂質の網羅的解析方法の一実施形態を説明する。
図1は、本発明の脂質の網羅的解析方法に適用される解析システムの一例を概略的に示すブロック図である。システム1は、液体クロマトグラフ10、質量分析装置20、及び演算装置30を備える。
液体クロマトグラフ10は、溶離液a、bを送液するグラジエントポンプ11a及び11b、試料溶液cを導入するオートインジェクター12、及び分離カラム13を備えている。試料溶液cには、好ましくは、上述した試料の溶媒抽出液を用いる。溶離液a、bは上述したとおりであり、ポンプ11a及び11bがそれらの濃度勾配を調整する。分離カラム13には、上述したクロマトグラフィー充填剤が充填されている。
液体クロマトグラフ10により、試料溶液c中の標的脂質を分離することができる。液体クロマトグラフ10で分離された標的脂質は、後段の質量分析装置20に導入される。
質量分析装置20は、イオン化装置21と質量分離検出装置22を備える。液体クロマトグラフ10で分離された標的脂質がイオン化装置21に導入され、ここで該混合溶液中の脂質分子がイオン化される。
イオン化装置21は、ESIとAPCIの両方を同時に、又はほぼ同時に誘起するマルチイオン源(いわゆる、マルチモードイオンソース、デュアルイオンソース、ESCiマルチモードイオン源、デュオスプレーイオンソース、ハイブリッドイオン源など)を備える。イオン化装置21において、混合溶液中の脂質は、一度にESIとAPCIの両方のイオン化に供され、イオン化される。
質量分離検出装置22は、イオン化装置21で生成したイオンをm/zごとに分離し、検出する。質量分離検出装置22は、上述したシングル型、ハイブリッド型、又はタンデム型の質量分析装置であり得る。
上記の液体クロマトグラフ10及び質量分析装置20としては、これらが一体になった市販の液体クロマトグラフィー−質量分析装置を使用することができる。
演算装置30は、質量分析装置20からの出力データに基づいて抽出イオンクロマトグラムを作成する演算手段を備える。好ましくは、演算装置30は、液体クロマトグラフ10におけるピークの保持時間と、質量分析装置20で検出されたm/z及びイオン強度とを3軸に展開して多段抽出イオンクロマトグラムを作成する演算手段を有する。また好ましくは、演算装置30は、各標的脂質分子種の保持時間やm/zに関するデータベース(図1中に図示せず)にアクセス可能であり、かつ、上記演算手段により作成された多段抽出イオンクロマトグラム上の各ピークを形成する脂質分子種を、該データベースに基づいて同定する比較演算手段を備えている。さらに、演算装置30は、上記演算手段で作成した抽出イオンクロマトグラム及び/又は上記比較演算手段で同定した脂質分子種を所望の形式で出力し表示する表示手段を備えていることが好ましい。
例えば、演算装置30は、上記演算手段及び/又は比較演算手段による演算を実行するためのソフトウェアがインストールされており、かつ質量分析装置20からの出力データや演算結果を記憶するメモリ、及び演算結果を表示するディスプレイを備えた計算機である。上記データベースは、演算装置30内に常時保存されていてもよいが、普段は演算装置の外部の記憶媒体やハードディスクに保存されており、必要に応じてネットワークを介して呼び出されてもよい。
本発明の例示的実施形態として、さらに以下の組成物、製造方法、用途あるいは方法を本明細書に開示する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
<1>試料中の脂質の網羅的解析方法であって、
試料を、逆相液体クロマトグラフィーに供すること;
該クロマトグラフィーに供した試料を、エレクトロスプレーイオン化と大気圧化学イオン化の両方を誘起するマルチイオン源によるイオン化に供すること;ならびに、
該イオン化に供した試料を質量分析にかけて、セラミド、遊離脂肪酸、コレステロール及び硫酸コレステロールを検出すること、
を含む、方法。
<2>上記試料が、好ましくは生体から切除、削剥又は剥離した皮膚角質層や毛であり、より好ましくは、テープストリッピング法により得られた皮膚角質層である、<1>記載の方法。
<3>好ましくは、上記テープストリッピング法に用いる角層剥離テープの粘着成分がアクリル系ポリマーである、<2>記載の方法。
<4>好ましくは、上記試料が、上記クロマトグラフィーに供する前に溶媒抽出に供され、脂質を含む溶媒抽出液へと調製される、<1>〜<3>のいずれか1項記載の方法。
<5>好ましくは、上記溶媒がメタノール、エタノール、又はイソプロパノールである、<4>記載の方法。
<6>好ましくは、上記イオン化を、酢酸、酢酸アンモニウム、ギ酸及びギ酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種のイオン化促進剤の存在下で行う、<1>〜<5>のいずれか1項記載の方法。
<7>好ましくは、上記イオン化促進剤が上記クロマトグラフィーの溶離液に添加される、<6>記載の方法。
<8>好ましくは、上記イオン化が、ESIとAPCIによるイオン化を同時に、又はほぼ同時に誘起するマルチイオン源を備えた質量分析装置により行われる、<1>〜<7>のいずれか1項記載の方法。
<9>好ましくは、上記質量分析による検出が正イオンモード及び負イオンモードで行われ、より好ましくは、コレステロールが正イオンモードで検出され、かつ遊離脂肪酸、硫酸コレステロール及びセラミドが負イオンモードで検出される、<1>〜<8>のいずれか1項記載の方法。
<10>好ましくは、上記質量分析により角質層の細胞間脂質が検出される、<1>〜<9>のいずれか1項記載の方法。
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
(1)皮膚角質層の採取及び脂質の抽出
健常男性の前腕及び頬に、フィルムマスキングテープ(寺岡製作所/465#40、2.5cm幅×3cm長)を10秒間押し付けた。この作業を同一箇所で連続3回繰り返すことで皮膚角質層を採取した(採取面積=7.5cm2×3枚)。
(2)試料溶液の調製
角質層を採取したテープを5mLスクリュー管(商品名:マルエム/No.2)内でメタノール溶液1.9mLに浸漬させ、室温で10分間超音波処理し、脂質を抽出した。次いで、このスクリュー管に、内部標準物質混合液〔セラミド群の内部標準物質としてC17:0−Ceramide(Avanti Polar Lipids,Inc.)、遊離脂肪酸群の内部標準物質としてArachidic Acid−d39(Cambridge Isotope Laboratories,Inc.)、コレステロールの内部標準物質としてCholesterol−d7(Avanti Polar Lipids,Inc.)、及び硫酸コレステロールの内部標準物質としてのSodium eicosyl sulfate(Sigma−Aldrich)の混合溶液〕100μLを加え、試料溶液を調製した。
(3)LC−MS分析
(2)で調製した試料溶液を、下記の条件下でLC−MS分析し、各種脂質(セラミド、遊離脂肪酸、コレステロール及び硫酸コレステロール)の検出及び定量を行った。
(装置)
LC/1100シリーズ、質量分析計/G1956B シングル四重極(Agilent Technologies)
(クロマトグラフィー分離)
分離カラム:L−column ODS 2.1mm内径×150mm、粒径5μm(40℃)
溶離液a:5mmol/L酢酸・10mmol/L酢酸アンモニウム含有メタノール/水=1/1(v/v)
溶離液b:5mmol/L酢酸・10mmol/L酢酸アンモニウム含有2−プロパノール
グラジエント:溶離液b 20%(0min)→20%(1min)→60%(2min)→100%(30min)→100%(35min)
移動相流速:0.2mL/min
平衡化時間:10min
注入量:20μL
(質量分析)
イオン化法:マルチモードイオンソース(ESI/APCI)
極性:正イオン及び負イオン
チャージング電圧:2000V
キャピラリー電圧:2000V(正イオン)、4000V(負イオン)
ベーポライザー温度:200℃
ネブライザー圧力:60psig
乾燥ガス温度:350℃
乾燥ガス流量:4L/min
(検出モード)
セラミド:酢酸イオンが付加された分子([M+CH3COO]-)を負イオンモードでSIM検出
遊離脂肪酸:脱プロトン化分子([M−H]-)を負イオンモードでSIM検出
硫酸コレステロール:金属イオン、又はプロトンイオンが脱離した分子(例えば[M−Na]-)を負イオンモードでSIM検出
コレステロール:プロトン化し脱水された分子([M+H−H2O]+)を正イオンモードでSIM検出
(4)データ解析
得られたデータを、保持時間とm/zとイオン強度の3軸を有する多段抽出イオンクロマトグラムに展開した。図2の多段抽出イオンクロマトグラムに示されるように、本発明の解析方法により、セラミド、遊離脂肪酸、コレステロール及び硫酸コレステロールが検出された。
1 解析システム
10 液体クロマトグラフ
11a、11b グラジエントポンプ
12 オートインジェクター
13 分離カラム
20 質量分析装置
21 イオン化装置
22 質量分離検出装置
30 演算装置
a、b 溶離液
c 試料溶液

Claims (5)

  1. 試料中の脂質の網羅的解析方法であって、
    試料を、逆相液体クロマトグラフィーに供すること;
    該クロマトグラフィーに供した試料を、エレクトロスプレーイオン化と大気圧化学イオン化の両方を誘起するマルチイオン源によるイオン化に供すること;ならびに、
    該イオン化に供した試料を質量分析にかけて、セラミド、遊離脂肪酸、コレステロール及び硫酸コレステロールを検出すること、
    を含む、方法。
  2. 前記質量分析によるセラミドの検出が負イオンモードで行われる、請求項1記載の方法。
  3. 前記質量分析による遊離脂肪酸及び硫酸コレステロールの検出が負イオンモードで行われ、コレステロールの検出が正イオンモードで行われる、請求項2記載の方法。
  4. 前記試料がテープストリッピング法により得られた皮膚角質層の溶媒抽出液である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. 前記イオン化を、酢酸、酢酸アンモニウム、ギ酸及びギ酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種のイオン化促進剤の存在下で行う、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
JP2015014637A 2015-01-28 2015-01-28 脂質の網羅的解析方法 Active JP6368254B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015014637A JP6368254B2 (ja) 2015-01-28 2015-01-28 脂質の網羅的解析方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015014637A JP6368254B2 (ja) 2015-01-28 2015-01-28 脂質の網羅的解析方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016138841A JP2016138841A (ja) 2016-08-04
JP6368254B2 true JP6368254B2 (ja) 2018-08-01

Family

ID=56560182

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015014637A Active JP6368254B2 (ja) 2015-01-28 2015-01-28 脂質の網羅的解析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6368254B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018183448A1 (en) * 2017-03-31 2018-10-04 Metabolon, Inc. Comprehensive and quatitative lipid and tocopherol analysis
JP7064746B2 (ja) * 2018-02-14 2022-05-11 国立大学法人浜松医科大学 イオン化装置、イオン化方法、プログラム、及び分析システム

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4931369B2 (ja) * 2005-05-31 2012-05-16 ポーラ化成工業株式会社 リポソームおよびそれを含む処置用の組成物
US20110034419A1 (en) * 2009-06-27 2011-02-10 Musc Foundation For Research Development Cardioprotective Drugs and Diagnostics for Assessing Risk of Cardiovascular Disease
EP2700086B1 (en) * 2011-04-20 2019-09-11 Micromass UK Limited Atmospheric pressure ion source by interacting high velocity spray with a target
JP5916743B2 (ja) * 2011-09-28 2016-05-11 テルモ株式会社 ヘモグロビン含有リポソーム及びその製法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016138841A (ja) 2016-08-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
van Smeden et al. LC/MS analysis of stratum corneum lipids: ceramide profiling and discovery [S]
Hines et al. Assessment of altered lipid homeostasis by HILIC-ion mobility-mass spectrometry-based lipidomics
Ovčačíková et al. Retention behavior of lipids in reversed-phase ultrahigh-performance liquid chromatography–electrospray ionization mass spectrometry
Zheng et al. Recent advances in lipid separations and structural elucidation using mass spectrometry combined with ion mobility spectrometry, ion-molecule reactions and fragmentation approaches
Hancock et al. Advances and unresolved challenges in the structural characterization of isomeric lipids
Spickett et al. Oxidative lipidomics coming of age: advances in analysis of oxidized phospholipids in physiology and pathology
Peterson et al. A review of chromatographic methods for the assessment of phospholipids in biological samples
Pucci et al. A novel strategy for reducing phospholipids-based matrix effect in LC–ESI-MS bioanalysis by means of HybridSPE
Brouwers et al. Rapid separation and identification of phosphatidylethanolamine molecular species
Ismaiel et al. Monitoring phospholipids for assessment of matrix effects in a liquid chromatography–tandem mass spectrometry method for hydrocodone and pseudoephedrine in human plasma
Han et al. Factors influencing the electrospray intrasource separation and selective ionization of glycerophospholipids
Hsu Complete structural characterization of ceramides as [M− H]− ions by multiple-stage linear ion trap mass spectrometry
JP4821970B2 (ja) 肌質の評価方法
Jin et al. Zwitterionic hydrophilic interaction solid-phase extraction and multi-dimensional mass spectrometry for shotgun lipidomic study of Hypophthalmichthys nobilis
Choi et al. Development of lipidomic platform and phosphatidylcholine retention time index for lipid profiling of rosuvastatin treated human plasma
Sun et al. Elucidation of phosphatidylcholine isomers using two dimensional liquid chromatography coupled in-line with ozonolysis mass spectrometry
JP5116348B2 (ja) 被験物質の評価又はスクリーニング方法
Otoki et al. MS/MS and LC-MS/MS analysis of choline/ethanolamine plasmalogens via promotion of alkali metal adduct formation
WO2006092689A1 (en) Assay of sebum and meibum lipid components by mass spectrometry
Shimizu et al. Mass spectrometric discrimination of squalene monohydroperoxide isomers
Hui et al. Analyses for phosphatidylcholine hydroperoxides by LC/MS
Rejsek et al. Thin-layer chromatography/desorption atmospheric pressure photoionization orbitrap mass spectrometry of lipids
Cao et al. N-alkylpyridinium quaternization combined with liquid chromatography–electrospray ionization-tandem mass spectrometry: A highly sensitive method to quantify fatty alcohols in thyroid tissues
JP6867805B2 (ja) 皮膚の健康の評価方法
JP4990010B2 (ja) 肌質判定方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20171205

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180612

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180613

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180706

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6368254

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250