JP6360908B2 - オリゴ糖の全発酵 - Google Patents

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Description

本発明は、末端にガラクトース−(1→4)−グルコース二糖を含むオリゴ糖を産生可能な細菌宿主細胞、その使用、および末端にガラクトース−(1→4)−グルコース二糖を含むオリゴ糖の製造方法に関する。
人乳は、糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、無機物および微量元素の複雑な混合物である。最も多く含まれるのは糖質であり、糖質はさらにラクトースとより複雑な構造を有するオリゴ糖(ヒトミルクオリゴ糖、HMO)に分けることができる。ラクトースはエネルギー源として利用されるが、複雑な構造を有するオリゴ糖は乳児では代謝されない。複雑な構造を有するオリゴ糖の割合は全糖質画分の1/10以下であり、おそらく150種類を超えるオリゴ糖から構成されている。このような複雑な構造を有するオリゴ糖の存在および濃度はヒト特有のものであり、例えば飼育されている酪農動物など、他の哺乳動物のミルク中には大量には存在しない。
最も多く含まれるオリゴ糖は、2’−フコシルラクトースおよび3’−フコシルラクトースであり、合わせてヒトミルクオリゴ糖画分全体の1/3をも占める。人乳中に多く含まれるその他のヒトミルクオリゴ糖としては、ラクト−N−テトラオース、ラクト−N−ネオテトラオースおよびラクト−N−フコペンタオースIが挙げられる。このような中性オリゴ糖以外に、例えば3’−シアリルラクトース、6’−シアリルラクトース、3−フコシル−3’−シアリルラクトース、ジシアリル−ラクト−N−テトラオースなどの酸性ヒトミルクオリゴ糖もまた人乳中に存在する。これらの構造は、上皮細胞表面の複合糖質であるルイスx(LeX)などのルイス式組織−血液型抗原のエピトープと密接な関係があり、ヒトミルクオリゴ糖は、上皮細胞表面のエピトープと構造的な相同性を有することから、病原菌に対して防御性を有する。
このような複雑な構造を有するオリゴ糖類が人乳中に存在することは古くから知られており、これらオリゴ糖類の生理学的機能は長年、医薬研究の対象とされてきた。比較的多く存在するヒトミルクオリゴ糖のいくつかについては、特定の機能がすでに解明されている。
ヒトミルクオリゴ糖は、腸管における上述の局所作用以外にも、体循環に入ることにより乳児において全身作用を発揮することも示されている。また、ヒトミルクオリゴ糖は、タンパク質−糖相互作用(例えばセレクチンと白血球との結合)に作用することにより、免疫応答を調節して炎症反応を抑制することができる。
プレバイオティクス作用を有するオリゴ糖類、特にヒトミルクオリゴ糖が有益な特性を有することは研究により明らかにされているが、該オリゴ糖類は入手しにくいため、効率的な商用生産、すなわち、大規模な生産が切望されている。
ヒトミルクオリゴ糖の供給が限られていること、また各ヒトミルクオリゴ糖の純粋な画分を得ることが難しいことから、これらの複雑な分子のうち数種については化学的経路が開発されている。しかし、化学的合成、酵素的合成または発酵によるヒトミルクオリゴ糖の製造には課題がある。少なくとも食品用途に十分な品質のものを大量に得ることは、これまで化学合成では実現できていない。この点に関して特筆すべきは、ヒトミルクオリゴ糖の化学的合成経路には数種の有害化学物質が使用されており、この有害化学物質が最終生成物に混入する危険性があることである。
ヒトミルクオリゴ糖の化学的合成には課題が多いことから、酵素的な方法や発酵的な手法がいくつか開発された。現在、2’−フコシルラクトース、3−フコシルラクトース、ラクト−N−テトラオース、ラクト−N−ネオテトラオース、3’−シアリルラクトースおよび6’−シアリルラクトースなどの数種のHMO類については、発酵的な手法が開発されている。これらの方法では、組換えEscherichia coliなどの遺伝子組換え菌株が主に用いられている。
例えばUS 7,521,212 B1や、Albermannら、(2001) Carbohydr. Res. 334(2) p 97-103に記載されているように、現在、HMO類を製造するために生体触媒や発酵を利用する手法はすべて、出発基質としてラクトースを用いており、これに別の単糖類を付加させるというものである。ラクトースへの単糖類の付加は、グリコシルトランスフェラーゼやグリコシダーゼの触媒作用により、適切な活性化単糖基質を用いて行うことができる。また、トランスグルコシダーゼの反応によっても、ラクトースに別の単糖類を付加することができる。
特に、HMO類の発酵合成は極めて効率的である。というのは、必要であるが合成が困難なヌクレオチド活性化単糖類が、使用する微生物の代謝により供給されるからである。しかし、生体触媒を用いる手法と比較すると、HMO類の合成にホールセルを使用することにも大きな欠点がいくつかあり、これらの欠点は、細胞膜を通過する輸送過程、代謝による副反応、合成されたオリゴ糖を、とりわけ種々のポリオール類(糖類など)、核酸、ポリペプチド、無機物などを含む複雑な混合物から精製する必要があることなどに関連するものである。
発酵法でラクトースを使用することに関する技術的な課題として、ラクトースの熱処理による、ラクトース(β−D−ガラクトピラノシル−(1→4)−D−グルコース)からラクツロース(β−D−ガラクトピラノシル−(1→4)−D−フルクトフラノース)への転位反応の発生が挙げられる。この転位反応は、ラクトースをオートクレーブすることで進行する可能性があり、ラクトース発酵の培地や原料中に存在するラクトースの数パーセントが変換されて、ラクツロースとなる。ラクツロースは、ヒトにとって消化できない糖であり、慢性便秘の治療に広く使用されている。
また、ラクトースのラクツロースへの変換により、不要な副生成物が生成されるだけでなく、グリコシル化される可能性がある基質が生じ、より複雑な構造を有するオリゴ糖(例えば2’−フコシルラクツロース)が生成される可能性がある。従って、ラクトースからラクツロースが生成すると、所望の生成物に、これと非常に類似したオリゴ糖が混入してしまうため、このオリゴ糖を所望の生成物から分離することは困難というよりむしろほぼ不可能である。
とりわけ問題なのは、ラクトースの添加により、文献上立証されている影響、いわゆるラクトース誘導性細胞死が生じることである。ラクトース誘導性細胞死は、ラクトースの過剰な取り込みと、それに伴う細菌膜のプロトン勾配の崩壊とによって起こるようである。特にラクトース透過酵素遺伝子(例えばE.coliのlacY)の過剰発現と、組換え細胞の暴露とが組み合わさると、組換え菌株の増殖に大幅な遅延が生じ、細胞性多糖の合成が促進される可能性がある(Grubeら、“Hydrogen-producing Escherichia coli strains overexpressing lactose permease: FT-IR analysis of the lactose-induced stress“ (2013) Biotechnol. Appl. Biochem. 5, 31)。
また、現在、商用規模のラクトースはすべて、酪農産業における廃棄物である乳清に由来している。乳清は、チーズやカゼインの製造過程で大量に生じる。このような酪農産業由来のラクトースにおいては、狂牛病としても広く知られているウシ海綿状脳症(BSE)の原因物質であるプリオンタンパク質に汚染されている可能性があるという懸念が拭いきれない。BSEは、脳と脊髄に海綿状変性を引き起こす、畜牛の致死性の神経変性疾患であるが、ヒトにも感染する可能性があり、ヒトではクロイツフェルト・ヤコブ病の変異型として知られている。また、ラクトースがβ−ガラクトシダーゼ陽性のE.coli菌株に供給されると、アロラクトース(β−D−ガラクトピラノシル−(1→6)−D−グルコピラノース)に変換され、別の不要な混入物質となる可能性もある(Huberら、“Efflux of beta-galactosidase products from Escherichia coli” (1980) J. Bacteriol. 141, 528-533)。
また、ラクトースは、発酵培地の成分のうち最も高価なものの1つでもあり、グルコース、グリセロール、スクロースなどで代用できれば、HMO類をより費用効率よく製造できるだろう。
上記に鑑み、HMOを製造するための改良手段および改良方法を開発し、公知技術における上記の課題を解決することが望まれている。
本発明によれば、前記目的および他の目的は、以下の細菌宿主細胞によって達成される。すなわち、末端にガラクトース−(1→4)−グルコース二糖を含むオリゴ糖を産生可能な細菌宿主細胞であって、
(i)β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有し、遊離グルコース単糖をガラクトシル化してラクトースを細胞内で産生することができるタンパク質をコードする、少なくとも1つの組換え核酸配列、ならびに
(ii)フコシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、グルコサミルトランスフェラーゼおよびガラクトシルトランスフェラーゼの少なくとも1つから選択されるグリコシルトランスフェラーゼをコードする、少なくとも1つの組換え核酸配列を含み、
ラクトースを外部から添加せずに、オリゴ糖を産生することができる細菌宿主細胞である。
前記目的はさらに、遺伝子組換えされた宿主細胞を用いた全発酵により、少なくとも1つの所望のオリゴ糖を製造する方法によって達成され、該所望のオリゴ糖は末端にガラクトース−(1→4)−グルコース二糖を含み、本方法は、
a)本発明の細菌宿主を得るステップ、ならびに
b)前記細菌宿主細胞を培養するステップであって、培養を、(i)グルコース、セルロース、セロビオース、スクロース、グリセロール、糖蜜、コーンシロップ、ガラクトース、合成ガス、一酸化炭素、メタノール、ピルビン酸塩、コハク酸塩、および細胞の代謝によってグルコースに変換されうるその他の任意の炭素源の少なくとも1つから選択される炭素源を用いて行い、前記宿主細胞は、前記炭素源から遊離のグルコースを細胞内で生成することができ、かつ培養を、(ii)本方法の実施中、外部からラクトースを供給することなく行うことにより、前記所望のオリゴ糖を製造するステップを含む。
本発明の目的はこのようにして完全に達成される。
本発明の細菌細胞および方法によれば、所望のオリゴ糖、特にガラクトース−(1→4)−グルコース二糖を還元末端に有するオリゴ糖、例えば2’−フコシルラクトースなどのHMO類等を、該オリゴ糖の発酵製造法の基質としてラクトースを外部から供給することなく、グルコース、スクロース、グリセロールなどの単純な炭素源から全発酵により得ることができる。
単純な炭素源を用いて、産生細胞中に遊離のグルコースを貯蔵させることができるので、細胞はラクトースを合成できる。得られたラクトースは、合成細胞から排出され、別の細胞で発酵に利用されることによって、より複雑な構造を有するオリゴ糖へと合成されてもよいが、合成細胞自身によって、より複雑な構造を有するオリゴ糖へと合成されるとより好都合である。次いで、合成されたオリゴ糖生成物は、排出輸送体または透過酵素によって、産生細胞から発酵培地中に排出される。
本明細書において、用語「核酸」は、一本鎖または二本鎖の、デオキシリボヌクレオチドポリマーまたはリボヌクレオチドポリマーを指し、別段の指定がない限り、天然由来のヌクレオチドと同様に核酸とハイブリッドを形成する、天然ヌクレオチドの公知の類似体を包含する。別段の指示がない限り、個々の核酸配列にはその相補配列も含まれる。
本明細書において、用語「作動可能に連結された」とは、核酸発現制御配列(プロモーター、シグナル配列、転写因子結合部位群など)と第2の核酸配列との間の機能的結合を意味するものとし、発現制御配列は、第2の配列に対応する核酸の転写および/または翻訳に影響を及ぼす。従って、用語「プロモーター」は、通常、DNAポリマー上で遺伝子の「前方に位置」し、mRNAへの転写の開始部位を示すDNA配列を指す。「レギュレーター」DNA配列も通常、DNAポリマー上で遺伝子の「上流」にあり(すなわち前方に位置し)、転写開始の頻度(または速度)を決定づけるタンパク質と結合する。これらの配列は「プロモーター/レギュレーター」または「制御」DNA配列と総称され、機能的DNAポリマー上で、選択された遺伝子(または一連の遺伝子群)の前方にそれぞれ位置し、協働して、該遺伝子の転写(その結果として発現)を行うかどうかを決定する。DNAポリマー上で遺伝子の後方にあり、mRNAへの転写終了のシグナルを送るDNA配列は、転写「終結(ターミネーター)」配列と呼ばれる。
本明細書において細菌宿主細胞に関しての、用語「組換え」は、細菌細胞が異種の核酸を複製すること、あるいは異種の核酸(すなわち「その細胞にとって外来の」配列)にコードされるペプチドまたはタンパク質を発現することを指す。組換え細胞は、元の(非組換え)細胞中には存在しない遺伝子を含みうる。組換え細胞はまた、元の細胞中に存在する遺伝子であるが、人工的な手段によって改変され、細胞内に再導入された遺伝子を含みうる。本用語はまた、細胞から核酸を取り出さずに改変された、細胞内因性の核酸を含む細胞も包含する。このような改変には、遺伝子置換、位置特異的変異およびそれらに関連する技術による改変が含まれる。従って、「組換えポリペプチド」とは、組換え細胞によって産生されたものである。本明細書において、「異種配列」または「異種核酸」とは、個々の宿主細胞にとって外来性の起源(例えば異なる種)に由来するものであるか、あるいは同じ起源であれば、本来の形から改変されたものである。従って、プロモーターに作動可能に連結された異種核酸は、プロモーターとは異なる起源に由来するものであるか、あるいは同じ起源であれば、本来の形から改変されたものである。異種配列は、例えば形質移入、形質転換、融合(conjugation)または形質導入により、宿主微生物細胞のゲノム中に安定に導入することができ、異種配列を導入する宿主細胞に応じた方法を適用することができる。種々の方法が当業者に公知であり、例えばSambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に開示されている。
従って本明細書において、「細菌宿主細胞」とは、形質転換もしくは形質移入された細菌細胞、または外因性ポリヌクレオチド配列によって形質転換もしくは形質移入されうる細菌細胞であると理解される。
したがって、本発明で用いられる核酸配列は、例えば、宿主微生物細胞に形質転換/形質移入、あるいはその他の方法で安定に導入されるベクターに含まれていてもよい。
本発明のポリペプチドの産生には、多種多様な発現系を用いることができる。前記ベクターには特に、染色体由来ベクター、エピソーム由来ベクターおよびウイルス由来ベクターが含まれ、例えば、細菌性プラスミド由来ベクター、バクテリオファージ由来ベクター、トランスポゾン由来ベクター、酵母エピソーム由来ベクター、挿入因子由来ベクター、酵母染色体因子由来ベクター、ウイルス由来ベクターおよびこれらを組み合わせたベクター(例えばコスミドやファージミドなどの、プラスミドとバクテリオファージ双方の遺伝因子に由来するベクター)などが挙げられる。発現系構築物は、発現を調節・誘導する制御領域を含んでもよい。概して言えば、宿主におけるポリヌクレオチドの維持、増幅または発現に適し、かつポリペプチドの合成に適した任意の系またはベクターを、本件の発現に用いることができる。適切なDNA配列の発現系への挿入は、例えば上記のSambrookらの文献に記載されている方法などの、様々な公知の方法や常法により行うことができる。
選択した宿主生物の形質転換に用いる遺伝学的材料の単離、合成、精製および増幅を行うための「組換えDNA」法に関する技術は、特許文献や学術文献中に多く記載されている。従って、選択した外因性(すなわち外来または「異種」)DNA配列を含む「ハイブリッド」のウイルスDNAまたは環状プラスミドDNAを用いて宿主生物を形質転換することは公知である。この技術分野における公知の方法では、まず環状のウイルスDNAまたはプラスミドDNAを酵素的に開裂させて直鎖状のDNA鎖とした形質転換ベクターを作製する。また、通常所望のタンパク質生成物をコードする配列を含む、選択した外来性DNA鎖も、同一/類似の酵素を用いて直鎖状にする。得られた直鎖状のウイルスDNAまたはプラスミドDNAと外来性DNAとを、修復プロセスに関与するライゲーション酵素の存在下、インキュベートすることにより、選択した外因性DNAセグメントがウイルスDNAまたは環状DNAプラスミド中に「スプライスされた」、「ハイブリッド」ベクターが得られる。
用語「〜をコードする核酸配列」は、一般に任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを指し、無修飾RNA、無修飾DNA、被修飾RNA、被修飾DNAのいずれでもよく、特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子を一般に表す。この用語には、一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖領域と二本鎖領域とが混在するDNA、一本鎖領域と二本鎖領域と三本鎖領域とが混在するDNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、一本鎖領域と二本鎖領域とが混在するRNA、および一本鎖領域、より典型的には二本鎖領域もしくは三本鎖領域であってもよいDNAとRNA、または一本鎖領域と二本鎖領域が混在しうるDNAとRNAとを含む混成分子が包含されるが、これらに限定されない。またこの用語には、ポリペプチドをコードする1つの連続領域や複数の不連続領域(例えば、組み込まれたファージ、挿入配列またはエディティングによって分断されている)とともに、コード配列および/または非コード配列を含んでいてもよい別の領域をさらに含むポリヌクレオチドも包含される。
本明細書において、「培養する」という用語は、所望のオリゴ糖の産生が可能な、該産生に適した培地および条件で、細菌細胞を増殖させることを意味する。適切な細菌宿主細胞ならびにそれを培養するための培地および条件は、当業者が自身の技術的かつ専門的素養に関係のある本発明の開示を読めば容易に得ることができる。
本明細書に記載の発明によれば、本明細書に記載の関連タンパク質/酵素をそれぞれコードする核酸が細胞中に含まれている限り、本明細書で定義されるオリゴ糖を1種類以上、すなわち例えば2、3、4種類製造可能であることが理解できるであろう。
好ましい一実施形態によれば、本発明の方法は、c)培地および/または細菌細胞からオリゴ糖を回収するステップを含む。ステップc)は、ステップb)の後、すなわち培養ステップの後に行われ、回収は、培養ステップにより、本明細書で定義される所望のオリゴ糖が得られた時点、またはその所望の量が得られた時点で行われることが理解できるであろう。
本明細書において、「回収する」という用語は、本発明の宿主微生物によって産生されたオリゴ糖を、宿主微生物培養物から、単離、採取、精製、収集などによって分離することを意味する。
さらに本明細書において、用語「酵素活性」とは、酵素活性を示す任意の分子、特にタンパク質であって、それ自身は変化せずに特異的な生化学的反応を引き起こす触媒として働くものを含むことを意味する。特に、基質を生成物に変換することができる酵素活性を有するタンパク質がこの用語に含まれる。
酵素反応において、反応開始時に存在する分子を基質と呼び、基質が変換されて生じた別の分子を生成物と呼ぶ。生体細胞中のほぼすべての化学反応は、生命維持に十分な速度で進行するために酵素を必要とする。各酵素は基質に対して選択性を有し、多くの可能性からわずか数種類の反応のみの速度を上げるので、細胞内で産生される酵素の組合せによって、細胞内で起こる代謝経路が決定される。
本明細書に記載の細菌細胞、その使用および方法によれば、意外なことに、本明細書で定義される所望のオリゴ糖が全発酵により得られることが明らかになった。本発明は、基本的に2種の特異的酵素活性、すなわちβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性と少なくとも1つのグリコシルトランスフェラーゼ活性とを有する細菌微生物を利用するものであり、該細菌宿主微生物は、ラクトースの添加がなくても、単純な炭素源で増殖しながら、所望のオリゴ糖を効率的に産生する。
本発明に関連する範囲内で、「ラクトースを外部から添加せずに」という表現は、本発明の細菌宿主細胞を培養している培地にラクトースを添加しないことを意味する。「外部から(外因性)」は、前記細胞によって「内因的に産生される」こととは異なるものとし、本方法のいずれの時点においても、細菌宿主細胞にラクトースが添加されないことを意味するものとする。
本方法においては、上記の酵素的特徴を有する改変されていない微生物を用いることもできるが、本発明の一態様によれば、細菌微生物は組換え細菌微生物または組換え細菌細胞であり、該組換え細菌細胞は形質転換により少なくとも上記の酵素活性を有するものである。
本発明の細菌宿主細胞は、グルコースなどの炭素源を以下のように使用する。まず、炭素源、すなわちグルコースが細菌細胞に内包化される。すなわち細胞膜を通過してサイトゾル内に輸送される。サイトゾル内でグルコースは、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を示す酵素によってガラクトシル化される。すなわち、細胞内に存在する(あるいは細胞内で生成した)ヌクレオチド活性化ガラクトースからガラクトース残基がグルコースに転移し、ラクトースが生成する。続いて、ラクトースは、例えばフコシル残基を転移するグリコシルトランスフェラーゼ活性の受容体として利用され、ヌクレオチド活性化フコースからフコシル残基がラクトースに転移することによって、フコシルラクトースが生成する。この工程は、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性と少なくとも1つのグリコシルトランスフェラーゼ活性をともに有する細菌細胞を用いることにより達成される。また、この工程は、ラクトースがβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有する細胞から排出され、培地中に存在するか添加される別の(細菌性の)細胞によって利用されるという形でも達成することができる。この場合、前記別の細胞は、ラクトースを受容体として利用するグリコシルトランスフェラーゼ活性を有する細胞であり、排出されたラクトースはこの細胞に取り込まれ/内包化される。
上記工程で産生されたフコシルラクトースなどの本明細書で定義されるオリゴ糖は、細胞内から、細菌細胞が培養されている培地に輸送される。この生成物は、培地から回収、例えば単離できるため、さらなる利用が可能である。
一般に、また本発明の全体にわたって、用語「グリコシルトランスフェラーゼ活性」または「グリコシルトランスフェラーゼ」は、二糖、オリゴ糖および多糖の生合成に関与する酵素を示すとともにこれらを包含し、これらの酵素は活性化ヌクレオチド単糖/糖(「グリコシル供与体」)からグリコシル受容体分子への、単糖の転移を触媒する。
グリコシルトランスフェラーゼは、ガラクトシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼおよびフコシルトランスフェラーゼから選択されることが好ましい。
別の好ましい一実施形態によれば、本発明の細菌宿主細胞または方法において、グリコシルトランスフェラーゼは、α−1,2−フコシルトランスフェラーゼ、α−1,3−フコシルトランスフェラーゼ、β−1,3−N−アセチルグルコサミルトランスフェラーゼ、β−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ、α−2,3−シアリルトランスフェラーゼ、α−2,6−シアリルトランスフェラーゼ、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼおよびβ−1,6−ガラクトシルトランスフェラーゼの少なくとも1つから選択される。
好ましい実施形態によれば、2’−フコシルラクトースを合成するために、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性に加えて、適切な2−フコシルトランスフェラーゼを発現させる。また、3−フコシルラクトースを合成するために、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼに加えて、適切な3−フコシルトランスフェラーゼを発現させる。また、2’,3−ジフコシルラクトースを合成するために、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼに加えて、適切なα−1,2−フコシルトランスフェラーゼとα−1,3−フコシルトランスフェラーゼを共に発現させる。また、ラクト−N−テトラオースを合成するために、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼに加えて、適切なβ−1,3−N−アセチルグルコサミルトランスフェラーゼとβ−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼを産生細菌宿主細胞中で発現させる。また、ラクト−N−フコペナトースIなどの、さらに複雑な五糖類を合成するために、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼに加えて、適切なβ−1,3−N−アセチル−グルコサミルトランスフェラーゼ、β−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼおよびα−1,2−フコシルトランスフェラーゼを機能的に発現させるような核酸を導入することにより組換え細胞を作製する。
本発明において使用可能であり、かつ本発明の一部であるグリコシルトランスフェラーゼの例としては、細菌性フコシルトランスフェラーゼが挙げられるが、これに限定されない。好ましくは、α−1,2−フコシルトランスフェラーゼまたはα−1,3−フコシルトランスフェラーゼであり、より好ましくはE.coli:O126のwbgL遺伝子(Genbank登録番号:ADN43847)によってコードされるα−1,2−フコシルトランスフェラーゼまたはAkkermansia muciniphila、Bacteroides fragilis、Helicobacter pylori、Escherichia coli、Salmonella enterica、哺乳動物、Caenorhabditis elegansもしくはSchistosoma mansoniのα−1,3−フコシルトランスフェラーゼである。好ましくは、EP 2 479 263 A1、EP 2 439 264またはWO 2010/142305に開示されているグリコシルランスフェラーゼまたはその変異型を使用することが好ましく、本明細書にて、これらに記載の内容を明示的に参照することにより、当該内容は本発明の一部となる。
本明細書において使用される用語としての「変異型」は、元のポリヌクレオチドまたはポリペプチドとは異なるが、元のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの本質的な(酵素的)特性を保持しているポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。一般的には、変異型ポリヌクレオチドは、元のポリヌクレオチドとはヌクレオチド配列が異なる。変異型のヌクレオチド配列における変化は、元のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変化させるものであってもよく、変化させないものであってもよい。ヌクレオチドの変化によって、元の配列によってコードされるポリペプチドに、以下に述べるようなアミノ酸の置換、付加、欠失、融合および切断が生じる可能性がある。一般的には、ポリペプチドの変異型は、元のポリペプチドとはアミノ酸配列が異なる。一般的に相違は限定されているので、元のポリペプチドと変異型の配列は、全体的によく類似しており、多くの領域で同一である。変異型と元のポリペプチドは、1以上の置換、付加、欠失またはこれらの任意の組合せによって、アミノ酸配列が異なっていてもよい。置換または挿入されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされていてもよく、コードされていなくてもよい。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変異型は、対立遺伝子変異型などの天然に存在するものであってもよく、あるいは天然に存在することが知られていない変異型であってもよい。ポリヌクレオチドやポリペプチドの、天然に存在しない変異型を、突然変異誘発技術、直接合成法および当業者に公知のその他の組換え法によって作製してもよい。
本発明の範囲において、核酸/ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの多型変異型、対立遺伝子、変異体および種間ホモログも上記の用語に含まれ、これらは、グリコシルトランスフェラーゼ/β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有する野生型タンパク質を表すポリペプチドと、約60%を超えるアミノ酸配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれを超えるアミノ酸配列同一性を、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000またはそれを超える数のアミノ酸からなる領域にわたって有するアミノ酸配列を含む。
従って、本明細書に記載の遺伝子/タンパク質の「機能的フラグメント」とは、そのフラグメントの元となる遺伝子またはタンパク質と同等またはそれより若干弱い活性を保持する、該遺伝子/タンパク質の配列変異型を指すものとする。
従って、用語「α−1,2−フコシルトランスフェラーゼ」もしくは「フコシルトランスフェラーゼ」、または「α−1,2−フコシルトランスフェラーゼ」もしくは「フコシルトランスフェラーゼ」をコードする核酸/ポリヌクレオチドとは、GDP−フコースなどの供与体基質から、受容体分子へのα−1,2−結合様式でのフコースの転移を触媒するグリコシルトランスフェラーゼを指す。用語「α−1,3−フコシルトランスフェラーゼもしくはフコシルトランスフェラーゼ」、または「α−1,3−フコシルトランスフェラーゼもしくはフコシルトランスフェラーゼ」をコードする核酸/ポリヌクレオチドとは、GDP−フコースなどの供与体基質から、受容体分子へのα−1,3−結合様式でのフコースの転移を触媒するグリコシルトランスフェラーゼを指す。受容体分子としては、ラクトース、ラクト−N−トリオースII、ラクト−N−テトラオース、ラクト−N−ネオテトラオースまたはこれらの任意の誘導体などが挙げられる。
好ましい一実施形態によれば、本発明の細菌宿主細胞および本発明の方法で用いられる細菌宿主細胞は、オリゴ糖排出タンパク質または合成されたオリゴ糖を宿主細胞から排出させる透過酵素、インベルターゼ、フルクトキナーゼ、ならびにGDP−フコース、GDP−グルコース、GDP−マンノース、UDP−N−アセチルグルコサミン、UDP−ガラクトース、UDP−N−アセチルガラクトサミン、酸および/またはCMP−シアル酸の生合成に関与するタンパク質のうち、少なくとも1つのタンパク質をコードする核酸配列をさらに含む。
オリゴ糖排出タンパク質または透過酵素は、可溶性のオリゴ糖生成物を産生細胞から排出させることのできるタンパク質であることが好ましい。本発明の一態様によれば、排出タンパク質を発現する核酸として使用可能なものは、例えば、Yersinia bercovieri ATCC43970のyberc0001_9420遺伝子、またはその変異型、ホモログもしくは機能的フラグメントである。従って、「排出タンパク質」または「オリゴ糖排出タンパク質」は、オリゴ糖を細菌細胞から排出させることのできる任意のタンパク質である。これに関しては、オリゴ糖排出輸送体とその使用について記載されているWO2010/142305の開示内容(特に実施例)も参照するものとする。
上記の排出輸送体または透過酵素タンパク質の典型例としては、スクロース透過酵素、フルクトキナーゼ、スクロース加水分解酵素、転写リプレッサーの4つの遺伝子(それぞれcscB、cscK、cscAおよびcscR)を含むcsc遺伝子クラスターによってコードされるタンパク質、Bacillus subtiilisのグルコース透過酵素、Streptomyces coelicolorまたはStreptomyces clavuligerusのグルコース透過酵素などが挙げられる。従って好ましい一実施形態において、細菌宿主細胞はさらにcsc遺伝子クラスターを含む。
ヌクレオシド二リン酸糖の生合成に関与するタンパク質の典型例としては、ヌクレオシド二リン酸糖ピロホスホリラーゼ、糖キナーゼなどが挙げられ、フコースキナーゼ、GDP−フコースピロホスホリラーゼ、GDP−マンノース−4,6−デヒドラターゼ(GMD)、GDP−ケト−6−デオキシマンノース−3,5−エピメラーゼ、4−リダクターゼ、グルコースキナーゼ、グルコース−6−リン酸−1−エピメラーゼ、ホスホグルコムターゼ、グルコース−1−リン酸グアニリルトランスフェラーゼおよびCMP−シアル酸シンターゼが好ましい。
本発明の一態様によれば、本明細書で使用される請求項に記載の細菌宿主細胞において、核酸は内因性核酸または組換え核酸である。
先に定義した通り、本明細書および本分野において一般的に、用語「内因性」は、目的の酵素をコードする核酸が細菌宿主細胞由来のものであり、宿主細胞に導入されたものではないことを意味し、一方「組換え」核酸は宿主細胞に導入されたもので、宿主細胞由来のものではない。
別の一実施形態によれば、核酸は同種または異種である。本明細書および関連分野において一般的に理解される表現として、「同種」とは、特定の生成物をコードする核酸配列が、その核酸配列が導入された種と同じ種に由来していることを言う。用語「異種」とは、特定の生成物をコードする核酸配列が、その核酸配列が導入された種とは異なる種に由来していることを言う。
別の一実施形態によれば、本発明の細菌宿主細胞は、内因性核酸配列または組換え核酸配列の制御的な過剰発現を可能にする制御配列をさらに含む。本明細書において「核酸発現制御配列」という表現と同義に用いられる用語「制御配列」には、先に定義した通り、プロモーター配列、シグナル配列または転写因子結合部位群が含まれ、これらの配列は、作動可能に連結している核酸配列の転写および/または翻訳に影響を及ぼす。
上述した通り、本発明において用いられる核酸配列は、例えば、細菌宿主細胞に安定に形質転換/形質移入されるベクターに含まれていてもよい。組換え産生に関する前掲の定義および詳細な説明は、このパラグラフに適用されるものとする。
いくつかの実施形態において、核酸配列は、誘導可能なプロモーターの制御下に配置される。このプロモーターにより遺伝子の発現が誘導されるが、その発現レベルは、温度、pH、嫌気性または好気性条件、光、転写因子および薬品などの、環境や発生的因子によって変化しうる。本明細書において、このようなプロモーターは「誘導可能な」プロモーターと言われ、本発明において用いられるタンパク質が発現するタイミングを調節することができる。E.coliなどの細菌宿主細胞のための、誘導可能なプロモーターは当業者に公知である。
本発明の一態様によれば、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼはNeisseria meningitidisのβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼであり、Neisseria meningitidisのLgtBおよびAggregatibacter aphrophilusのlex−1、またはそれらの機能的フラグメントからなる群から選択される遺伝子によってコードされることが好ましい。また、当業者が本明細書を読めば、その他の酵素、すなわちβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するとともに単糖グルコースを基質として受容し、本明細書および請求項に記載の方法でβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼとして作動する他の生物由来の酵素についても理解できるであろう。
本発明の細菌宿主細胞に導入されたβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼにより、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ反応の受容体基質である細胞内の遊離のグルコースは、HMO合成に必要なラクトース二糖構造に変換される。
ラクトース合成に必要な遊離グルコースは、培養培地にグルコースを添加することによってプールすることができる。
また、グルコースを含む二糖またはオリゴ糖を、組換え細菌宿主細胞の炭素源として用いることによって、遊離のグルコースを供給することもできる。このように添加された二糖またはオリゴ糖は単糖に切断されて遊離グルコースとその他の単糖類となり、細胞内でのHMO合成に使用される。遊離グルコースやグルコース含有糖類を供給する以外に、オリゴ糖合成に必要なグルコースを、組換え細胞自身の代謝(糖新生)によって供給することもできる。
細菌宿主細胞内で受容体基質として働く遊離グルコースのプール以外に、UDP−ガラクトースなどの効率的な供給も必要である。UDP−ガラクトースは、例えば、細胞自身の代謝により供給することが可能であり、この代謝は、UDP−ガラクトース−4’−エピメラーゼの過剰発現や、UDP−ガラクトース−4’−エピメラーゼをグルコース−1−リン酸−1−ウリジニルトランスフェラーゼと組み合わせるなどの、さらなる遺伝子改変によって促進させることができる。
また、ガラクトースをHMO産生細菌宿主細胞に発酵培地を介して供給することにより、UDP−ガラクトースを得ることもできる。このガラクトースは細胞に取り込まれ、リン酸化されてガラクトース−1−リン酸になった後、UDP−ガラクトースに変換される。これらの酵素活性をコードする遺伝子は文献により既知である(Grossiordら、“Characterization, Expression, and Mutation of the Lactococcus lactis galPMKTE Genes, Involved in Galactose Utilization via the Leloir Pathway” (2003) J. Bacteriol 185(3) 870-878)。
ラクト−N−テトラオースなどの合成には、UDP−ガラクトースに加えて、UDP−N−アセチルグルコサミンも必要である。UDP−N−アセチルグルコサミンも、細菌宿主細胞自身のUDP−N−アセチルグルコサミン代謝により得ることができる。N−アセチルグルコサミン含有オリゴ糖の合成に必要なUDP−N−アセチルグルコサミンの供給は、産生細胞内でのN−アセチルグルコサミンの異化を不活性化することにより増大させることができる。
以下に限定されないが、2’−フコシルラクトース、3−フコシルラクトースおよび2’,3−フコシルラクトースなどのフコース含有HMOの合成には、GDP−L−フコースが必要である。2’−フコシルラクトースの合成に必要なGDP−フコースの供給は、例えば、Bacteroidis fragilis fkp遺伝子によってコードされる二機能性のL−フコキナーゼ/GDP−ピロホスホリラーゼ酵素の作用発現と、HMO合成細胞へのL−フコースの添加により可能である。同様に、シアル酸を細胞に添加し、細胞に取り込まれたシアル酸がCMP−シアル酸シンターゼによって活性化されると、CMP−シアル酸が得られる。CMP−シアル酸(CMP−ノイラミン酸としても知られる)は、シアル酸含有オリゴ糖(3’−シアリルラクトース、6’−シアリルラクトース、3−フコシル−3’−シアリルラクトースなど)の合成に利用されうる。
また、GDP−L−フコースの供給については、GDP−L−フコース経路の遺伝子を過剰発現させて、2’−フコシルラクトース、3−フコシルラクトース、2’,3−ジフコシルラクトース、ラクト−N−フコペンタオースIなどのフコシル化HMO類の合成に必要なGDP−L−フコースの供給量を増やすことも可能である。
本発明の細菌宿主細胞および/または方法の好ましい一実施形態によれば、本発明の細菌宿主細胞は、Escherichia coli菌株、Lactobacillus種、Corynebacterium菌株、Bacillus菌株、Lactobacillus菌株、Streptococcus菌株、Enterococcus菌株、Lactococcus菌株またはClostridium菌株である。好ましくは、Corynebacterium glutamicum、Clotridium cellulolyticum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium autoethanogenum、Clostridium acetobutylicum、Bacillus subtilis、Bacillus megaterium、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus delbrueckiiおよびLactococcus lactis細胞から選択される細菌宿主細胞である。また、当業者が本開示を読めば、その他の菌株についても理解するであろう。
好ましい一実施形態によれば、本発明の細菌宿主は、(i)前記オリゴ糖の前駆体を細胞内で分解するタンパク質を発現しないように、もしくは(ii)前記オリゴ糖の前駆体を細胞内で分解するタンパク質の発現を阻害するようにさらに改変されるか、または(iii)前記タンパク質が所望のオリゴ糖の合成酵素を阻害しないように制御される。好ましい一実施形態において、前記タンパク質はβ−ガラクトシダーゼ、好ましくはlacZである。
さらに、「前駆体」という表現には、本発明のオリゴ糖の生合成経路に関与する化合物、特に内因性前駆体、すなわち宿主細胞内で産生され、該細胞内に元来存在する前駆体が含まれる。
上述したように、本発明は、遺伝子組換えされた宿主細胞を用いた全発酵により、少なくとも1つの所望のオリゴ糖を製造する方法にも関する。所望のオリゴ糖は末端にガラクトース−(1→4)−グルコース二糖を含み、本方法は以下のステップを含む。
a)(i)前記請求項のいずれかに記載の細菌宿主細胞、または(ii)β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有し、遊離のグルコース単糖をガラクトシル化してラクトースを細胞内で産生することのできるタンパク質をコードする組換え核酸配列を含む第1の細菌宿主細胞と、フコシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、グルコサミルトランスフェラーゼおよびガラクトシルトランスフェラーゼの少なくとも1つから選択されるグリコシルトランスフェラーゼをコードする組換え核酸配列を少なくとも1つ含む第2の細菌宿主細胞とを得るステップ。
b)ステップa)で得た細菌宿主細胞(i)または(ii)を培養するステップであって、培養を、(I)グルコース、スクロース、グリセロール、糖蜜、コーンシロップ、ガラクトース、合成ガス、一酸化炭素、メタノール、セルロースおよびセロビオースの少なくとも1つから選択される炭素源を用いて行い、宿主細胞は、前記炭素源から遊離のグルコースを細胞内で生成することができ、かつ培養を、(II)本方法の実施中、外部からラクトースを供給することなく行うことにより、前記所望のオリゴ糖を製造するステップ。
前記細菌宿主細胞に関してはすでに説明した通りであり、本発明の方法によれば、オリゴ糖の前駆体を添加せずに、所望のオリゴ糖を完全発酵または全発酵により製造することができる。これは、本明細書に記載の方法によれば、オリゴ糖の微生物生産が、単純な炭素源を利用して増殖する宿主細胞により可能であることによる。本発明の方法によれば、上述した通りに細菌宿主細胞を作製し、グルコースなどの単純な炭素源を用いて培養すると、炭素源は細菌細胞に内包化され、すなわち細胞膜を通過してサイトゾル内に輸送される。サイトゾル内で、グルコースなどの炭素源はガラクトシル化される。すなわちガラクトース残基が、細胞内に存在する(あるいは細胞内で生成した)ヌクレオチド活性化ガラクトースからグルコースに転移する。このステップはβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性により触媒され、その結果、ラクトースが生成する。次いで、ラクトースは、例えばフコシル残基をヌクレオチド活性化フコースからラクトースに転移させるグリコシルトランスフェラーゼ活性の受容体として用いられることにより、例えばフコシルラクトースが生成する。
本発明の方法によれば、この工程は、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性と少なくとも1つのグリコシルトランスフェラーゼ活性をともに有する細菌宿主細胞を用いることにより達成される。また、この工程は、第1のステップ、すなわちステップ(i)のガラクトシル化のみが第1の細菌宿主細胞内で行われ、生成したラクトースがβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有する第1の細菌細胞から第1の細胞が培養されている培地中に排出され、次いで、培地中に存在していてもよく、別途添加されてもよい、第1の細胞とは別の第2の細菌宿主細胞によって利用されるという形でも達成することができる。ラクトースは、ラクトースを受容体とするグリコシルトランスフェラーゼ活性を有する第2の細菌宿主細胞に取り込まれ/内包化される。
本発明の方法および使用の好ましい一実施形態において、所望のオリゴ糖はヒトミルクオリゴ糖であり、好ましくは添付の表1に列挙したもののうちの少なくとも1つから選択されるヒトミルクオリゴ糖であり、2’−フコシルラクトース、3−フコシルラクトース、2’,3−ジフコシルラクトース、3’−シアリルラクトース、6’−シアリルラクトース、3−フコシル−3’−シアリルラクトース、ラクト−N−テトラオース、ラクト−N−ネオテトラオース、ラクト−N−フコペンタオースI、ラクト−N−フコペンタオースII、ラクト−N−フコペンタオースIII、ラクト−N−フコペンタオースV、ラクト−N−ジフコシルヘキソースI、ラクト−N−ジフコシルヘキサオースIIおよびラクト−N−シアリルペンタオースLSTa、LSTb、LSTcから選択されることが好ましい。



本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、細胞内で産生されたヌクレオチド活性化糖が、本方法の実施中、ステップb)において細胞によって利用される。このヌクレオチド活性化糖は、GDP−フコース、UDP−N−アセチルグルコサミン、UDP−ガラクトース、UDP−N−アセチルガラクトサミンおよびCMP−シアル酸の少なくとも1つであることが好ましい。
本発明の方法の別の好ましい一実施形態によれば、本方法の実施中、(ヌクレオチドにより活性化されていない)糖が外部から添加される。この糖は、フコース、グルコース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミンおよびシアル酸から選択される糖であり、細菌宿主細胞内でヌクレオチドにより活性化される。
本発明の一態様によれば、本方法はバッチ式または連続式の全発酵法である。
従って、本発明の一態様である連続式全発酵法では、宿主細胞の培養ステップにおいて、炭素源は培地に継続的に添加される。培養ステップにおいて炭素源を継続的に添加することによって、安定的かつ効率的にオリゴ糖を製造することができる。
別の一態様によれば、本発明の方法は、流加発酵法であるか流加発酵法を含む方法であり、流加発酵法は、培地を希釈することなく基質が添加される液量一定流加培養、または基質の添加により発酵時間とともに発酵液量が変化する液量可変流加培養である。
本発明の一実施形態において、細菌宿主細胞は、β−ガラクトシダーゼ、L−フコースイソメラーゼ、L−フクロースキナーゼおよびUDP−グルコース:ウンデカプレニルリン酸グルコース−1−リン酸トランスフェラーゼをコードする遺伝子が欠損した細胞または該遺伝子を非調節(deregulated)状態で含む細胞となるように、さらに形質転換されていることがより好ましい。
この実施形態においては、単糖類の細胞内分解およびコラン酸産生が抑制され、β−ガラクトシダーゼの場合には受容体分子が分解されないという利点がある。
別の好ましい一実施形態によれば、オリゴ糖の製造方法においてグリコシダーゼを利用して、所望のオリゴ糖の製造時に生じた、不要かつ/または妨げとなる物質、例えば、副産物、未反応の出発基質および中間生成物を分解する。グリコシダーゼを用いることによって、例えば、所望のオリゴ糖の合成時に同じ微生物内で生成された、所望のオリゴ糖の精製工程の妨げとなる別の(オリゴ)糖類を代謝により分解することができる。
1種以上のグリコシダーゼを、本発明の製造方法の最後に、外部から培養物に添加してもよい。これはグリコシダーゼをコードする宿主微生物の内在遺伝子が不活性化されていたり欠損している場合に特に好ましい。また、グリコシダーゼは、前記宿主微生物によって内因的に生成されるものであってもよい。内因的に生成される該グリコシダーゼをコードする核酸配列は、前記宿主細胞に天然に存在するものではなく、前記宿主細胞は、該宿主細胞に天然に存在しないグリコシダーゼを発現するよう安定的に形質転換されたものであり、宿主微生物内における該グリコシダーゼの発現は、誘導可能なものである。
この実施形態では、オリゴ糖を産生する微生物において、非調節状態にあったβ−ガラクトシダーゼなどのグリコシダーゼが、例えば温度や基質による外部からの誘導により、内因的(遺伝子がゲノム上に存在する)に発現される。これは、グリコシダーゼが所望のオリゴ糖の合成時においては非調節状態にあるが、発酵過程の最後に、例えば温度(変化)またはテトラサイクリンなどの誘導物質を添加することによってグリコシダーゼの発現誘導が可能であることを意味する。グリコシダーゼの発現誘導は、宿主微生物の培養で十分な量および/または本質的に最大量のオリゴ糖が産生された後に行われる。次いで、発現誘導されたグリコシダーゼにより、不要な糖中間体や基質などが分解され、所望のオリゴ糖の精製を妨げたり困難にする糖中間体や基質が本質的に存在しない培地が得られる。発現を誘導する適切な手段は先行技術においていくつか知られており(例えば上記のSambrookら,1989を参照のこと)、当業者は所望のオリゴ糖にそれぞれ適した手段を利用することができるであろう。
本明細書において、遺伝子に関連した「調節(レギュレート)される」という用語は、遺伝子の発現が制御された方式で調節可能である、例えばアップレギュレートまたはダウンレギュレートされることを意味し、このような調節されている遺伝子によってコードされ、合成されたタンパク質の量は、例えばダウンレギュレートやアップレギュレートされた状態にない遺伝子などの、調節されていない遺伝子の場合とは異なるものと一般に理解される。
本発明の別の一態様によれば、前記グリコシダーゼは、培地に添加した、該グリコシダーゼを発現する第2の微生物により生成される。
この実施形態において、第2の微生物によって発現されるグリコシダーゼは、該微生物に天然に存在するグリコシダーゼであるか、または該微生物のゲノムに安定的に組み込まれた核酸配列によってコードされるグリコシダーゼである。この実施形態は、オリゴ糖を製造するための連続発酵法において特に適した形態であり、例えば2つの別々の発酵槽または発酵容器が用意され、1つの槽/容器はオリゴ糖の合成反応に使用され、もう一方の槽/容器は基本的に、不要な糖類の分解に用いられる。
上述したように、本発明は、末端にガラクトース−(1→4)−グルコース二糖を含むオリゴ糖を全発酵により製造するための、本明細書に記載の細菌宿主細胞の使用にも関する。
本明細書で使用されるすべての専門用語および科学用語は、別段の定めがない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味と同じ意味である。全般的に、本明細書で使用される用語、ならびに細胞培養、分子遺伝学、有機化学や核酸化学、およびハイブリダイゼーションに関する上述した実験手法や以下に記載する実験手法は、当技術分野で周知されており、一般に使用されるものである。
さらなる利点は、各実施形態の説明および添付した図面から理解されるものである。
当然のことながら、上述した特徴および以下に説明する特徴については、個々に明記した組合せだけでなく、本発明の範囲から逸脱しない限りは、他の組合せまたは単独でも利用可能である。
本発明のいくつかの実施形態を図示し、以下の記載においてより詳細に説明する。各図は以下の通りである。
本発明の方法の一実施形態の概略を示した図である。Aは2’−フコシルラクトースの製造、Bは3’−シアリルラクトースの製造、Cはラクト−N−ネオテトラオースの製造を示す。
2’−フコシルラクトース産生E.coli菌株の培養上清をHPLCで分析した結果を示した図である。Aは、スクロースとラクトースの存在下、IPTG非添加で培養した細胞の結果、Bは、スクロース存在下で培養した細胞の結果、Cは、スクロースとグルコースの存在下で培養した細胞の結果、Dは、スクロースを含有する無機塩培地中で培養した休止細胞の結果、Eは、グルコースを含有する無機塩培地中で培養した休止細胞の結果である。
ラクト−N−ネオテトラオース産生E.coli BL21(DE3)菌株の培養抽出物をTLCで分析した結果を示した図である。Aは、グルコース存在下で培養したE.coli BL21(DE3)1046(4)の培養抽出物の結果、Bは、グルコース存在下で培養したE.coli BL21(DE3)724 pCDF−galE pINT−malE−lex1とE.coli BL21(DE3)724 pCDF−galE pINT−malE−lgtBの培養抽出物の結果である。LNnT。
本発明により製造されうるオリゴ糖の一覧(表1)である。
本発明の細菌宿主細胞において典型例として用いられる配列/プラスミドの模式図を示す。AはPtet−lacY−FRT−add1−FRT(添付配列表の配列番号1)、BはPtet−wbgL−FRT−neo−FRT(添付配列表の配列番号2)、CはPtet−yberc0001_9420−FRT−cat−FRT(添付配列表の配列番号3)、DはPtet−manCB,PT5−gmd−wcaG−FRT−dhfr−FRT(添付配列表の配列番号4)、EはcscBKAR(添付配列表の配列番号5)、FはgalMKTE(添付配列表の配列番号6)、GはpCDF−galE(添付配列表の配列番号7)、HはpDEST−lgtB(添付配列表の配列番号8)、IはPtet−lgtA−PT5−galT−FRT−kanR−FRT(添付配列表の配列番号9)、JはPtet−glmUM−PT5−glmS−FRT−dhfr−FRT(添付配列表の配列番号10)、KはPT5−lgtB−FRT−tetR−FRT(添付配列表の配列番号11)、LはPt5−galE−FRT−cat−FRT FRT(添付配列表の配列番号12)、MはpINT−malE−lgtB(添付配列表の配列番号13)を示す。
図1に、代表的なオリゴ糖を製造するための、本発明の方法と本発明の典型的な細菌宿主細胞とを用いた全発酵の典型的な経路を示す。図1A、1Bおよび1Cにおいて、参照番号100は、目的とする各オリゴ糖に関して、本発明によって遺伝子組換えされた、典型的な細菌宿主細胞を示す。
図1Aは、2’−フコシルラクトースの模式的な製造、すなわち全発酵による製造を示しており、この図では、典型的な炭素源としてスクロースが用いられていることがわかる。スクロース透過酵素(1)により、スクロースは宿主細胞に取り込まれる、あるいは内包化される。細菌宿主細胞内で、スクロースはインベルターゼ(2)によってフルクトースとグルコースに分解される。生成したフルクトースはフルクトキナーゼ(4)によってリン酸化されてフルクトース−6−リン酸となり、フルクトース−6−リン酸はホスホヘキソースイソメラーゼ(5)によってグルコース−6−リン酸に変換されうる。次に、ホスホグルコムターゼ(6)によってグルコース−1−リン酸に変換され、さらにグルコース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(7)によってUDP−グルコースに変換される。生成したUDP−グルコースは、UDP−ガラクトース−4−エピメラーゼ(8)と呼ばれる酵素による触媒反応により、UDP−ガラクトースとなる。そして、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(3)が、UDP−ガラクトース+グルコース→UDP+ラクトースの反応を触媒する。
その結果、細胞内で産生されたラクトースがさらに変換されて、オリゴ糖産生の原料として用いられる(上記例を参照)。図1に示す実施形態において、ラクトースは、GDP−フコースを供与体基質とするα−1,2−フコシルトランスフェラーゼ(14)と呼ばれる酵素によって変換され、最終生成物である2’−フコシルラクトースとなる。
UDP−フコースは細胞内で産生されたものであってもよく、添加されたものであってもよい。マンノースリン酸イソメラーゼ(9)と呼ばれる酵素が、フルクトース−6−リン酸からマンノース−6−リン酸への変換を触媒し、生成したマンノース−6−リン酸は、ホスホマンノムターゼ(10)と呼ばれる酵素によりマンノース−1−リン酸に変換される。マンノース−1−リン酸グアニリルトランスフェラーゼ(11)と呼ばれる酵素が、マンノース−1−リン酸からGDP−マンノースへの変換を触媒し、生成したGDP−マンノースは、GDP−D−マンノース−4,6−デヒドラターゼ(12)によってGDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノースに変換される。次いで、GDP−L−フコースシンターゼ(13)がGDP−フコースへの反応を触媒し、生成したGDP−フコースは上述の通り、α−1,2−フコシルトランスフェラーゼ(14)と呼ばれる酵素の供与体基質として利用される。そして、このようにして細胞内で産生された2’−フコシルラクトースは、排出輸送体または透過酵素(15)によって排出される。
図1Bは、本発明の方法と本発明の典型的な細菌宿主細胞とを用いた3’−シアリルラクトースの模式的な製造、すなわち全発酵による製造を示している。この製造においては、以下の酵素を用いる:(1)スクロース透過酵素、(2)インベルターゼ、(3)β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ、(4)フルクトキナーゼ、(5)グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、(6)ホスホグルコムターゼ、(7)グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、(8)UDP−ガラクトース−4−エピメラーゼ、(9)L−グルタミン:D−フルクトース−6−リン酸アミノトランスフェラーゼ、(10)ホスホグルコサミンムターゼ、(11)N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ/グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、(12)UDP−N−アセチルグルコサミン−2−エピメラーゼ、(13)シアル酸シンターゼ、(14)CMP−シアル酸シンテターゼ、(15)α−2,3−シアリルトランスフェラーゼ、(16)糖排出トランスポーター、(17)グルコサミン−6−リン酸−アセチルトランスフェラーゼ、(18)ホスファターゼ、(19)N−アセチルグルコサミン−2−エピメラーゼ。
図1Cは、本発明の方法と本発明の典型的な細菌宿主細胞とを用いたラクト−N−ネオテトラオースの模式的な製造、すなわち全発酵による製造を示している。この製造においては、以下の酵素を用いる:(1)スクロース透過酵素、(2)スクロース−6−リン酸加水分解酵素、(3)β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ、(4)フルクトキナーゼ、(5)グルコースリン酸イソメラーゼ、(6)ホスホグルコムターゼ、(7)グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、(8)UDP−ガラクトース−4−エピメラーゼ、(9)L−グルタミン:D−フルクトース−6−リン酸アミノトランスフェラーゼ、(10)ホスホグルコサミンムターゼ、(11)N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ/グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、(12)β−1,3−N−アセチルグルコサミントランスフェラーゼ。
上述した通り、本発明の細菌宿主細胞は、先に定義したβ−1,4,ガラクトシルトランスフェラーゼとグリコシルトランスフェラーゼ以外に、本明細書で述べた図1A〜1Cに示す酵素のうち少なくとも1つ、すなわち1つ以上を含むように形質転換されてもよい。
実施例1
E.coli 2’−フコシルラクトース産生菌株の作製
Escherichia coli BL21(DE3)を用いて、2’−フコシルラクトース産生菌株を構築した。代謝工学技術として、特定の遺伝子の突然変異誘発と欠損、および異種遺伝子のゲノムへの組み込みを行った。
遺伝子lacZとaraAを、Ellisら、“High efficiency mutagenesis, repair, and engineering of chromosomal DNA using single-stranded oligonucleotides”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 6742-6746 (2001)に記載のミスマッチオリゴヌクレオチドを用いた突然変異誘発により不活性化した。
ゲノム欠損は、DatsenkoおよびWarner(“One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6640-6645 (2000))の方法に従って行った。L−フコースの細胞内分解を防ぐために、L−フコースイソメラーゼをコードする遺伝子(fucI)とL−フクロースキナーゼをコードする遺伝子(fucK)を、E.coli BL21(DE3)菌株のゲノムから欠損させた。また、wzxC−wcaJ遺伝子も欠損させた。wcaJは、コラン酸合成における第1ステップを触媒するUDP−グルコース:ウンデカプレニルリン酸グルコース−1−リン酸トランスフェラーゼをコードする遺伝子と考えられており(Stevensonら、“Organization of the Escherichia coli K-12 gene cluster responsible for production of the extracellular polysaccharide colonic acid”, J. Bacteriol. 178:4885-4893; (1996))、コラン酸の産生は、GDP−フコースの利用においてフコシルトランスフェラーゼによる反応と競合する。さらに、N−アセチル−グルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼとグルコサミン−6−リン酸デアミナーゼをそれぞれコードする遺伝子nagAとnagBも除去した。
異種遺伝子のゲノムへの組み込みは転位により行った。転位は、EZ−Tn5TMトランスポーゼース(Epicentre、米国)を用いて直鎖状DNA−フラグメントを組み込む方法、またはマリナートランスポーゼースHimar1の高活性C9−変異体(Lampeら、“Hyperactive transposase mutants of the Himar1 mariner transposon”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:11428-11433 (1999))を用いた方法により行った。EZ−Tn5トランスポゾンを作製するために、目的とする遺伝子を、FRT部位に挟まれた抗生物質耐性カセットと共に、プライマー1119および1120を用いて増幅した(使用したすべてのプライマーを表3に示す)。得られたPCR産物は、EZ−Tn5トランスポーゼースの19bpのMosaic End認識部位を両端に有していた。Himar1トランスポーゼースを用いた組み込みを行うために、目的とするオペロンを、FRT部位に挟まれた抗生物質耐性カセットと共に、ベクターpEcomarにクローニングした。トランスポーゼースは、pEcomarにコードされており、ParaBの制御下に配置されている。EZ−Tn5トランスポゾン<Ptet−lacY−FRT−aadA−FRT>(配列表の配列番号1)、<Ptet−wbgLco−FRT−neo−FRT>(配列表の配列番号2)および<Ptet−yberc0001_9420−FRT−cat−FRT>(配列表の配列番号3)を、EZ−Tn5トランスポーゼースを介して組み込んだ。
E.coli K12 TG1のラクトースインポーターLacY(登録番号:ABN72583)の遺伝子が組み込まれたのを確認した後、プラスミドpCP20にコードされたFLPリコンビナーゼによりストレプトマイシン耐性クローンから耐性遺伝子を除いた(DatsenkoおよびWarner、“One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6640-6645 (2000))。
E.coli:O126のα−1,2−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子wbgL(登録番号:ADN43847)については、E.coli発現用にコドン最適化したものを、GenScript Cooperation(米国)に合成を委託して得た。Yersinia bercovieri ATCC 43970の、メジャーファシリテータースーパーファミリーに属する糖排出トランスポーターをコードする遺伝子yberc0001_9420(登録番号:EEQ08298)については、GenScript Cooperation(米国)に合成を委託し、EZ−Tn5<Ptet−yberc0001_9420−FRT−cat−FRT>トランスポゾンとして挿入した。
GDP−フコースのデノボ合成を促進させるために、E.coli K12 DH5αのホスホマンノムターゼをコードする遺伝子(manB)、マンノース−1−リン酸グアノシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(manC)、GDP−マンノース−4,6−デヒドラターゼをコードする遺伝子(gmd)およびGDP−L−フコースシンターゼをコードする遺伝子(wcaG)を、E.coli BL21(DE3)菌株内で過剰発現させた。オペロンmanCBはPtetの制御下にあり、オペロンgmd、wcaGはPT5プロモーターから転写される。マリナー様因子Himar1トランスポーゼースにより特異的に認識される末端逆位配列に挟まれたトランスポゾンカセット<Ptet−manCB−PT5−gmd,wcaG−FRT−dhfr−FRT>配列番号4は、pEcomar C9−manCB−gmd,wcaG−dhfrから挿入した。
E.coli Wのcsc遺伝子クラスター(登録番号:CP002185.1)(配列表の配列番号5)は、スクロース透過酵素、フルクトキナーゼ、スクロース加水分解酵素、転写抑制因子の4つの遺伝子(それぞれ遺伝子cscB、cscK、cscAおよびcscR)を含み、これらの遺伝子によって、菌株はスクロースを唯一の炭素源として増殖できるようになる。pEcomar−cscABKRプラスミドを用いた転位により、このcscクラスターをE.coli BL21(DE3)菌株のゲノムに組み込んだ。
プライマー605と606を用いて、E.coli K12 TG1からgalオペロン(galETKM)(配列表の配列番号6)を増幅し、redリコンビナーゼヘルパープラスミドpKD46を用いて促進される相同組換えによりE.coli BL21(DE3)菌株のgalM ybhJ遺伝子座に挿入した(DatsenkoおよびWarner、“One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6640-6645 (2000))。
プラスミドの構築
pCDF−galE(配列表の配列番号7):E.coli K12のゲノムDNAをテンプレートとし、プライマー1163および1162を用いてgalEを増幅した。得られたPCR産物を精製し、制限エンドヌクレアーゼNdeIおよびXhoIで切断し、同じ酵素で切断したベクターpCDF(Novagen)の第2のマルチクローニングサイトに連結した。
pDest−lgtB(配列表の配列番号8):Neisseria meningitisのβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼの遺伝子lgtBを、ゲートウェイ反応(Invitrogen)によりベクターpDEST14にクローニングした。
休止細胞による2’−フコシルラクトースの製造
プラスミドpCDF−galEおよびpDEST−lgtBを保有するE.coli BL21(DE3)878を、100μgml−1のアンピシリンと50μgml−1のストレプトマイシンを含有する2YT培地中、30℃で培養した。一晩培養して得られた培養物を、同じ抗生物質を含有する300mlの新たな2YT培地に0.3%(vol/vol)の濃度で植菌した。細胞を、OD660nmが0.3になるまで30℃で培養し、0.35mMのIPTGを添加することにより、galEとlgtBの遺伝子発現を誘導した。30℃で5時間培養した後、遠心分離により細胞を無菌的に採取し、上記の抗生物質と、炭素源として2%(wt/vol)のスクロースまたはグルコースとを含む、50mlの無菌無機塩培地(Samainら、“Production of O-acetylated and sulphated chitooligosaccharides by recombinant Escherichia coli strains harbouring different combinations of nod genes”, J. Biotechnol. 72:33-47 (1999))に再懸濁した。細胞を25℃で4日間培養した。
上清に分泌された2’−フコシルラクトースをHPLCで分析した。
galEとlgtBの過剰発現による2’−フコシルラクトースの発酵生産
プラスミドpCDF−galEおよびpDEST−lgtBを保有するE.coli BL21(DE3)878を、100μgml−1のアンピシリン、50μgml−1のストレプトマイシン、炭素源として2%(wt/vol)のスクロース、または1.6%(wt/vol)のスクロースと0.4%(wt/vol)のグルコースを含有する無機塩培地(Samainら、“Production of O-acetylated and sulphated chitooligosaccharides by recombinant Escherichia coli strains harbouring different combinations of nod genes”, J. Biotechnol. 72:33-47 (1999))中、30℃で培養した。培養物のOD660nmが0.3になった時点で、0.35mMのIPTGを添加して、galEとlgtBの遺伝子発現を誘導した。誘導後、細胞を25℃で4日間培養した。
対照として、E.coli BL21(DE3)878を、炭素源として2%(wt/vol)のスクロースを含有する無機塩培地中で培養した。OD660nmが0.5になった時点で、10mMのラクトースを加えた。細胞を30℃で2日間培養した。
上清に分泌された2’−フコシルラクトースをHPLCで分析した。
HPLCによる培養上清の分析と2’−フコシルラクトースの検出
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析を、示差屈折率検出器(RID−10A)(Shimadzu、ドイツ)とReproSil Carbohydrate、5μm(250mm×4.6mm)(Dr.Maisch GmbH、ドイツ)を備えたHPLCシステム(Shimadzu、ドイツ)を用いて行った。一定組成のアセトニトリル:HO(68/32(v/v))を溶離液とし、35℃、流速1.4ml/分で溶出を行った。カラムへの試料の注入量は40μlとした。試料は、あらかじめろ過(孔径0.22μm)して、イオン交換マトリックス(Strata ABW、Phenomenex)を用いた固相抽出により清澄化を行ったものである。
HPLC分析の結果を図2に示す。図2は、2’−フコシルラクトース産生E.coli BL21(DE3)878 pCDF−galE pDEST−lgtBの培養上清のHPLC分析結果を示している。図2Aは、スクロースとラクトースの存在下、IPTGを添加せずに培養したE.coli BL21(DE3)878 pCDF−galE pDEST−lgtBの結果、図2Bは、スクロースを用いて培養した細胞の結果、図2Cは、スクロースとグルコースを用いて培養した細胞の結果をそれぞれ示しており、galEとlgtBの発現は、OD660nmが0.3になった時点で、0.35mMのIPTGを添加することにより誘導した。
図2Dと2Eは、休止細胞のHPLC分析の結果を示している。E.coli BL21(DE3)878 pCDF−galE pDEST−lgtB細胞を2YT培地で予備培養し、0.35mMのIPTGで誘導を行った。細胞を採取した後、スクロース(図2D)またはグルコース(図2E)を含有する無機塩培地で培養した。
図2のHPLC分析から明らかなように、上述した典型的な実施形態における最終生成物、すなわち2’−フコシルラクトースは、スクロースを用いた本発明の細菌宿主細胞の発酵、スクロースとグルコースを用いた本発明の細菌宿主細胞の発酵、スクロースを用いた休止細胞の発酵およびグルコースを用いた休止細胞の発酵により、効率的に産生された。
実施例2
細胞外ラクトース非添加における、galEとβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼの過剰発現による、組換えE.coli菌株のLNnT産生
E.coliラクト−N−ネオテトラオース産生菌株の作製
Escherichia coli BL21(DE3)を用いて、ラクト−N−ネオテトラオース(LNnT)産生菌株を構築した。代謝工学技術として、特定の遺伝子の突然変異誘発と欠損、および異種遺伝子のゲノムへの組み込みを行った。
遺伝子lacZとaraAを、Ellisら、“High efficiency mutagenesis, repair, and engineering of chromosomal DNA using single-stranded oligonucleotides”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 6742-6746 (2001)に記載のミスマッチオリゴヌクレオチドを用いた突然変異誘発により不活性化した。
ゲノム欠損は、DatsenkoおよびWarner(“One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6640-6645 (2000))の方法に従って行った。N−アセチルグルコサミンの細胞内分解を防ぐために、N−アセチルグルコサミン−6−リン酸デアセチラーゼをコードする遺伝子(nagA)とグルコサミン−6−リン酸デアミナーゼをコードする遺伝子(nagB)を、E.coli BL21(DE3)菌株のゲノムから欠損させた。また、wzxC−wcaJ遺伝子も欠損させた。wcaJは、コラン酸合成における第1ステップを触媒するUDP−グルコース:ウンデカプレニルリン酸グルコース−1−リン酸トランスフェラーゼをコードする遺伝子である(Stevensonら、“Organization of the Escherichia coli K-12 gene cluster responsible for production of the extracellular polysaccharide colonic acid”, J. Bacteriol. 178:4885-4893; (1996))。さらに、L−フコースイソメラーゼとL−フクロースキナーゼをコードする遺伝子fucIとfucJもそれぞれ除去した。
異種遺伝子のゲノムへの組み込みは転位により行った。転位は、EZ−Tn5TMトランスポーゼース(Epicentre、米国)を用いて直鎖状DNA−フラグメントを組み込む方法、またはマリナートランスポーゼースHimar1の高活性C9−変異体(Lampeら、“Hyperactive transposase mutants of the Himar1 mariner transposon”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:11428-11433 (1999))を用いた方法により行った。EZ−Tn5トランスポゾンを作製するために、目的とする遺伝子を、FRT部位に挟まれた抗生物質耐性マーカーと共に、プライマー1119および1120を用いて増幅した(使用したすべてのプライマーを表5に示す)。得られたPCR産物は、EZ−Tn5トランスポーゼースの19bpのMosaic End認識部位を両端に有していた。Himar1トランスポーゼースを用いた組み込みを行うために、目的とする発現構築物(オペロン)を、FRT部位に挟まれた抗生物質耐性マーカーと共に、pEcomarベクターに同様にクローニングした。マリナートランスポーゼースHimar1の高活性C9−変異体は、pEcomarベクターにコードされており、アラビノース誘導性プロモーターParaBの制御下に配置されている。
発現フラグメント<Ptet−lacY−FRT−aadA−FRT>と<Pt5−galE−FRT−cat−FRT>(配列表の配列番号12)を、EZ−Tn5トランスポーゼースを用いて組み込んだ。E.coli K12 TG1のラクトースインポーターLacY(登録番号:ABN72583)の遺伝子が組み込まれたのを確認した後、プラスミドpCP20にコードされたFLPリコンビナーゼによりストレプトマイシン耐性クローンから耐性遺伝子を除いた(DatsenkoおよびWarner、“One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6640-6645 (2000))。Neisseria meningitidis MC58のN−アセチルグルコサミングリコシルトランスフェラーゼ遺伝子lgtA(登録番号:NP_274923)については、E.coli発現用にコドン最適化したものを遺伝子合成により作製した。同様に遺伝子合成により作製した、E.coli K−12 substr.MG1655のガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼをコードする遺伝子galT(登録番号:NP_415279)と共に、lgtAを、プラスミドpEcomar−lgtA−galTを用いた転位により挿入した(配列表の配列番号9)。UDP−N−アセチルグルコサミンのデノボ合成を促進させるために、L−グルタミン:D−フルクトース−6−リン酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子(glmS)、E.coli K−12 substr.MG1655のホスホグルコサミンムターゼをコードする遺伝子(glmM)およびE.coli K−12 substr.MG1655のN−アセチルグルコサミン−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ/グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(glmU)(それぞれ登録番号:NP_418185、NP_417643、NP_418186)をコドン最適化したものを遺伝子合成により作製した。オペロンglmUMを、構成型テトラサイクリン系プロモーターPtetの制御下にクローニングし、またglmSを構成型PT5プロモーターの制御下にクローニングした。マリナー様因子Himar1トランスポーゼースにより特異的に認識される末端逆位配列に挟まれたトランスポゾンカセット<Ptet−glmUM−PT5−glmS−FRT−dhfr−FRT>(配列表の配列番号10)を、pEcomar−glmUM−glmSから挿入した。N.meningitidis MC58のβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子lgtB(登録番号:NP_274922)については、E.coli発現用にコドン最適化したものを合成により作製した。E.coli BL21(DE3)へのゲノムへの組み込みは、プラスミドpEcomar−lgtBからのカセット<Pt5−lgtB−FRT−tetR−FRT>(配列表の配列番号11)の転位により行った。さらに、UDP−ガラクトース合成を促進させるために、E.coli K12 DH5αのUDP−ガラクトース−4−エピメラーゼ遺伝子galEを、E.coli BL21(DE3)菌株内で過剰発現させた。
プライマー605と606を用いてE.coli K12 TG1からgalオペロン(galETKM)を増幅し、redリコンビナーゼヘルパープラスミドpKD46を用いて促進される相同組換えによりE.coli BL21(DE3)菌株のgalM ybhJ遺伝子座に挿入した(DatsenkoおよびWarner、“One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6640-6645 (2000))。各種異種遺伝子および遺伝子クラスターの配列を別表1に示す。
プラスミドの構築
E.coli K12 DH5αのゲノムDNAをテンプレートとし、プライマー1163と1162を用いてgalEを増幅した。得られたPCR産物を精製し、制限エンドヌクレアーゼNdeIとXhoIで切断し、同じ酵素で切断したベクターpCDF(Novagen)の第2のマルチクローニングサイトに連結した。galEは、IPTG誘導性T7プロモーターから発現される。Neisseria meningitisのβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子lgtB(登録番号:NP_274922)とAggregatibacter aphrophilus NJ8700のlex1(登録番号:YP_003008647)については、コドン最適化したものを、GenScript Cooperation(米国)に合成を委託して得た。両遺伝子のクローニングは、配列およびライゲーションに依存しないクローニングにより行った(LiおよびElledge、“Harnessing homologous recombination in vitro to generate recombinant DNA via SLIC.”, Nat. Methods. 2007 Mar;4(3):251-6. Epub 2007 Feb 11)。従って、アンヒドロテトラサイクリン誘導性プロモーターの制御下にmalE遺伝子を保有するプラスミドpINTを用いて、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするlgtB遺伝子またはlex1遺伝子とmalEとのN末端融合が可能であった。
E.coli BL21(DE3)1046のバッチ式発酵
E.coli BL21(DE3)1046を、2%(wt/vol)のグルコースを唯一の炭素源およびエネルギー源として含有する無機塩培地(Samainら、“Production of O-acetylated and sulphated chitooligosaccharides by recombinant Escherichia coli strains harbouring different combinations of nod genes”, J. Biotechnol. 72:33-47 (1999))中、30℃で48時間培養した。細胞を採取し、機械的に破砕した。LNnTの産生を薄層クロマトグラフィーにより確認した。
E.coli BL21(DE3)724 pCDF−galE pINT−malE−lgtB/pINT−malE−lex1のバッチ式発酵
プラスミドpCDF−galEと、pINT−malE−lgtBまたはpINT−malE−lex1とを保有するE.coli BL21(DE3)724を、2%(wt/vol)のグルコース、100μgml−1のアンピシリンおよび40μgml−1のゼオシンを添加した無機塩培地(Production of O-acetylated and sulphated chitooligosaccharides by recombinant Esche-richia coli strains harbouring different combinations of nod genes”, J. Biotechnol. 72:33-47 (1999))中、30℃で培養した。培養物のOD660nmが0.1になった時点で、0.3mMのIPTGと200ng/mlのアンヒドロテトラサイクリンを添加して、galE遺伝子とβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子の発現を誘導した。フラスコ内で振とう培養を30℃で48時間行った後、細胞を採取し、機械的に破砕した。LNnTを薄層クロマトグラフィーにより確認した。
薄層クロマトグラフィー(TLC)によるラクト−N−ネオテトラオース(LnNT)の検出
細胞を、ガラスビーズを用いて機械的に破砕した。次いで、試料をTLCシリカゲル60F254(Merck、ドイツ)にスポットした。移動相にはアセトン:ブタノール:酢酸:水(35:35:7:23)を用いた。
ラクト−N−ネオテトラオース産生E.coli BL21(DE3)菌株の培養抽出物のTLC分析
図3に、ラクト−N−ネオテトラオース産生E.coli BL21(DE3)細胞の培養抽出物をTLC(薄層クロマトグラフィー)で分析した結果を示す。図2Aは、グルコース存在下で培養したE.coli BL21(DE3)1046(4)の培養抽出物の結果を示している。標準物質は以下の通りである:ラクトース(レーン1)、ラクト−N−トリオースII(レーン2)、ラクト−N−ネオテトラオース(レーン3)。図3Bは、グルコースを用いて培養したE.coli BL21(DE3)724 pCDF−galE pINT−malE−lex1の培養抽出物の結果(レーン5)と、グルコースを用いて培養したE.coli BL21(DE3)724 pCDF−galE pINT−malE−lgtBの培養抽出物の結果(レーン6)を示している。試料中のLNnT生成物をアスタリスクで示す。
図3に示した結果から、本発明の細胞および方法によりラクト−N−ネオテトラオースが効率的に製造されることがわかる。

Claims (17)

  1. 遺伝子組換えされた宿主細胞を用いた全発酵により、少なくとも1つの所望のオリゴ糖を製造する方法であって、該所望のオリゴ糖は末端にガラクトース−(1→4)−グルコース二糖を含み、
    a)(i)末端にガラクトース−(1→4)−グルコース二糖を含むオリゴ糖を産生可能な細菌宿主細胞であって、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有し、遊離グルコース単糖をガラクトシル化してラクトースを細胞内で産生することができるタンパク質をコードする、少なくとも1つの組換え核酸配列、ならびに、フコシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、グルコサミルトランスフェラーゼおよびガラクトシルトランスフェラーゼの少なくとも1つから選択されるグリコシルトランスフェラーゼをコードする、少なくとも1つの組換え核酸配列を含み、ラクトースを外部から添加せずにオリゴ糖を産生することができる細菌宿主細胞、または
    (ii)β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有し、遊離のグルコース単糖をガラクトシル化してラクトースを細胞内で産生することのできるタンパク質をコードする組換え核酸配列を含む第1の細菌宿主細胞と、フコシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、グルコサミルトランスフェラーゼおよびガラクトシルトランスフェラーゼの少なくとも1つから選択されるグリコシルトランスフェラーゼをコードする組換え核酸配列を少なくとも1つ含む第2の細菌宿主細胞とを得るステップ、ならびに
    b)ステップa)で得た前記細菌宿主細胞(i)または(ii)を培養するステップであって、培養を、(I)グルコース、スクロース、グリセロール、糖蜜、コーンシロップ、ガラクトース、合成ガス、一酸化炭素、メタノール、コハク酸塩、ピルビン酸塩およびラフィノースの少なくとも1つから選択される炭素源を用いて行い、前記宿主細胞は、前記炭素源から遊離のグルコースを細胞内で生成することができ、かつ培養を、(II)本方法の実施中、外部からラクトースを供給することなく行うことにより、前記所望のオリゴ糖を製造するステップを含む方法。
  2. 前記所望のオリゴ糖が、2’−フコシルラクトース、3−フコシルラクトース、2’,3−ジフコシルラクトース、3’−シアリルラクトース、6’−シアリルラクトース、3−フコシル−3’−シアリルラクトース、ラクト−N−テトラオース、ラクト−N−ネオテトラオース、ラクト−N−フコペンタオースI、ラクト−N−フコペンタオースII、ラクト−N−フコペンタオースIII、ラクト−N−フコペンタオースV、ラクト−N−ジフコシルヘキソースI、ラクト−N−ジフコシルヘキサオースIIおよびラクト−N−シアリルペンタオースLSTa、LSTb、LSTcから選択されるヒトミルクオリゴ糖である、請求項に記載の方法。
  3. 細胞内で産生されたヌクレオチド活性化糖が、前記方法の実施中、ステップb)において細胞によって利用され、前記ヌクレオチド活性化糖が、GDP−フコース、GDP−マンノース、UDP−グルコース、UDP−N−アセチルグルコサミン、UDP−ガラクトース、UDP−N−アセチルガラクトサミンおよびCMP−シアル酸の少なくとも1つである、請求項またはに記載の方法。
  4. 前記方法の実施中、ヌクレオチドにより活性化されていない糖を外部から添加し、前記ヌクレオチドにより活性化されていない糖が、フコース、グルコース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミンおよびシアル酸から選択される糖であり、前記細菌宿主細胞内でヌクレオチドにより活性化される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. ステップb)の後にステップc)をさらに含み、ステップc)は所望の量の前記オリゴ糖が産生された後に行われ、ステップc)が、(i)前記細菌宿主細胞に含まれる少なくとも1つのグリコシダーゼの発現を誘導するか、(ii)前記細菌宿主細胞が培養されている培地に、少なくとも1つのグリコシダーゼを発現している第2の細菌宿主を添加することにより、不要なオリゴ糖を分解することを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記グリコシルトランスフェラーゼが、α−1,2−フコシルトランスフェラーゼ、α−1,3−フコシルトランスフェラーゼ、β−1,3−N−アセチルグルコサミルトランスフェラーゼ、β−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ、α−2,6−シアリルトランスフェラーゼ、α−2,3−シアリルトランスフェラーゼおよびβ−1,6−ガラクトシルトランスフェラーゼ、またはそれらの機能的フラグメントの少なくとも1つから選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記細菌宿主細胞が、排出タンパク質と、合成されたオリゴ糖を宿主細胞から排出させる透過酵素のうち、少なくとも1つのタンパク質をコードする核酸配列をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記排出タンパク質が、Yersinia bercovieri ATCC 43970のyberc0001_9420遺伝子またはその機能的フラグメントでコードされる糖排出トランスポーターである、請求項7に記載の方法。
  9. 前記細菌宿主細胞が、インベルターゼ、フルクトキナーゼ、ならびにGDP−フコース、GDP−マンノース、UDP−グルコース、UDP−N−アセチルグルコサミン、UDP−ガラクトース、UDP−N−アセチルガラクトサミン、UDP−グルクロン酸およびCMP−シアル酸の生合成に関与するタンパク質のうち、少なくとも1つのタンパク質をコードする核酸配列をさらに含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 前記核酸が内因性核酸または組換え核酸である、請求項8または9に記載の方法。
  11. 前記核酸が同種または異種である、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 前記細菌宿主細胞が、内因性核酸配列または組換え核酸配列の制御的な過剰発現を可能とする制御配列をさらに含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. 前記β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼが、Neisseria meningitidisのlgtBおよびAggregatibacter aphrophilus NJ8700のlex−1からなる群から選択される遺伝子、またはその機能的フラグメントでコードされる、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 前記細菌宿主細胞が、Escherichia coli菌株、Lactobacillus種、Corynebacterium glutamicum菌株またはClostridium菌株である、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
  15. 前記細菌宿主細胞が、E.coli W csc遺伝子クラスターの遺伝子の少なくとも1つをさらに含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
  16. 前記細菌宿主細胞が、前記オリゴ糖の前駆体を細胞内で分解するタンパク質を発現しないように改変された、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
  17. 前記細菌宿主細胞が、細菌宿主細胞によって産生される中間体、副生成物または内因性オリゴ糖などの妨げとなるオリゴ糖を特異的に分解するグリコシダーゼをコードする核酸配列を含むとともに、前記グリコシダーゼの発現が制御配列の制御下にあるようにさらに遺伝子組換えされた、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
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