JP6357447B2 - セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
セルロースアシレートと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、エステルオリゴマーとを含有するセルロースアシレートフィルムであって、
上記セルロースアシレートフィルムの膜厚が10μm以上40μm以下であり、
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を、上記セルロースアシレート100質量部に対して、4質量部以上20質量部以下含有し、
上記エステルオリゴマーが、ジオールに由来する単位と、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方とを含み、末端が脂環構造を有するモノカルボン酸に由来する基で封止され、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下である、
セルロースアシレートフィルム。
<2>
上記脂環構造を有するモノカルボン酸が、炭素数6〜12のシクロアルカンモノカルボン酸である<1>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<3>
上記脂環構造を有するモノカルボン酸がシクロヘキサンカルボン酸である<2>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<4>
上記エステルオリゴマーの数平均分子量が、500〜3000である<1>〜<3>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
<5>
上記エステルオリゴマーの数平均分子量が、750〜1500である<4>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<6>
上記ジオールが、エチレングリコール、プロパンジオール、又はブタンジオールである<1>〜<5>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
<7>
上記ジオールが、プロパンジオール又はブタンジオールである<6>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<8>
上記ジオールが分岐構造を有する<7>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<9>
上記エステルオリゴマーの含有量が、上記セルロースアシレート100質量部に対して、4質量部以上30質量部以下である<1>〜<8>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
<10>
上記エステルオリゴマーの含有量が、上記セルロースアシレート100質量部に対して、10質量部以上13質量部以下である<9>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<11>
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が、上記セルロースアシレート100質量部に対して、5質量部以上10質量部以下である<1>〜<10>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
<12>
偏光子と、少なくとも1枚の<1>〜<11>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムとを有する偏光板。
<13>
液晶セルと、少なくとも1枚の<12>に記載の偏光板とを有する液晶表示装置。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、エステルオリゴマーとを含有し、
上記セルロースアシレートフィルムの膜厚が10μm以上40μm以下であり、
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を、上記セルロースアシレート100質量部に対して、4質量部以上20質量部以下含有し、
上記エステルオリゴマーが、ジオールに由来する単位と、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方とを含み、末端が脂環構造を有するモノカルボン酸に由来する基で封止され、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下である、
セルロースアシレートフィルムである。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートを含む。本発明のセルロースアシレートフィルムは、一種又は二種以上のセルロースアシレートを主成分として含むことが好ましい。ここで、「主成分」とは、原料として単一のポリマーを含む場合には、そのポリマーのことを意味し、原料として二種以上のポリマーを含む場合には、最も質量分率の高いポリマーのことを意味する。
D−817−91に準じて実施することができる。
アセチル基のみを有するセルロールアシレート、即ちセルロースアセテートの態様では、その全置換度が2.00〜2.95であることが好ましい。さらには置換度が2.40〜2.95であることがより好ましく、2.85〜2.95であることが更に好ましい。
本発明で用いられるエステルオリゴマーについて説明する。
本発明で用いられるエステルオリゴマーは、ジオールに由来する単位と、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方とを含み、末端が脂環構造を有するモノカルボン酸に由来する基で封止され、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下を満たすオリゴマーである。
以下、本発明におけるエステルオリゴマーの合成に好ましく用いることができるジカルボン酸及びジオールについて説明する。
ジカルボン酸としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方を少なくとも用いることが好ましく、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位を少なくとも用いることがより好ましい。
ここで、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は、構造中のシクロヘキサン環が有する水素原子が、置換基(R)によって置換されていてもよい。
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
炭素数2〜8のアルケニル基としては、エテニル基、1−メチルエテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−メチレンブチル基等が挙げられる。炭素数2〜8のアルキニル基としては、エチニル基、1−メチルエチニル基、1−プロピン基、2−プロピン基、2−メチル−1−プロピン基、2−メチル−2−プロピン基、2−メチレンブチン基等が挙げられる。
炭素数6のアリール基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基などが挙げられる。 Rは環構造を形成していてもよく、環構造として例えば、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ボロニル基、イソボロニル基、ノルボルニル基等が挙げられる。
Rは置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、アルコキシ置換アルキル基、カルボキシル基などが挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。ただし、Rが表す基の炭素数の定義にはRが表す基がさらに有していてもよい置換基の炭素数は含まれず、例えばメチル基で置換されたフェニル基は、置換基としてメチル基を有する炭素数6のアリール基であるため、Rに含まれる(すなわち、メチル基で置換されたフェニル基は、炭素数7のアリール基ではない)。
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸がRによって置換されている場合、反応性、原料調達の観点から1,2−シクロヘキサンジカルボン酸におけるシクロヘキサン環の4位にRが置換されていることが好ましい。
ただし、本発明で使用されるエステルオリゴマー中、ジオールに由来する単位と、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方の合計のモル比率は80%以上が好ましく、90%以上であることがより好ましい。
ジオールとしては、炭素数2〜10の脂肪族ジオールが好ましい。
脂環構造を含む脂肪族ジオールとしては、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
非環状の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールを挙げることができ、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。
ジオールの炭素数は、2〜6であることがより好ましく、2〜4であることが特に好ましい。2種以上のジオールを用いる場合には、2種以上の平均炭素数が上記範囲となることが好ましい。ジオールの炭素数が上記範囲であれば、セルロースアシレート及び紫外線吸収剤との相溶性に優れ、フィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。
本発明に用いられるエステルオリゴマーの末端は、脂環構造を有するモノカルボン酸に由来する基で封止されたものである。すなわち、エステルオリゴマーは、末端の水酸基と脂環構造を有するモノカルボン酸を反応させて得られる末端構造(脂環構造を有するモノカルボン酸残基)を有する。
詳細な作用機構は不明であるが、このように脂環構造を有するモノカルボン酸に由来する基で封止することによって得られるエステルオリゴマーは、セルロースアシレートやベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(「UV吸収剤」ともいう)との相溶性に優れるため、UV吸収剤を高濃度添加した際もブリードアウトの起こらないセルロースアシレートフィルムを提供することができるものと推察される。
また、末端を疎水性官能基で保護することは、偏光板の高温高湿環境下での偏光子耐久性の改善とフィルム表面性の改善に有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
ここで、残基とは、上記エステルオリゴマーの部分構造で、上記エステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。モノカルボン酸R’−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR’−CO−である。
具体的にはシクロプロパンカルボン酸、シクロブタンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、4−メチルシクロヘキサンカルボン酸、4−エチルシクロヘキサンカルボン酸、4−プロピルシクロヘキサンカルボン酸、4−tert−ブチルシクロヘキサンカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、シクロヘキサンカルボン酸、4−メチルシクロヘキサンカルボン酸がより好ましく、シクロヘキサンカルボン酸であることが最も好ましい。なお、炭素数6〜12のシクロアルカンモノカルボン酸であり、かつ、炭素数6〜12のシクロアルカンモノカルボン酸が少なくとも1つのシクロヘキサン環を含む化合物には、シクロヘキサン環の置換基どうしが連結した縮合環を含む、炭素数6〜12のシクロアルカンモノカルボン酸なども含まれる。
上記エステルオリゴマーの酸価は10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、1mgKOH/g以下であることが特に好ましい。上記エステルオリゴマーの水酸基価は30mgKOH/g以下であることが紫外線吸収剤のブリードアウト抑制する観点から必要であり、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、1mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
エステルオリゴマーの水酸基価は以下のようにして測定できる。
フィルムをメタノールに浸漬させて、エステルオリゴマーを抽出する。抽出液をNMR(Nuclear Magnetic Resonance、核磁気共鳴),HPLC(High performance liquid chromatography、高速液体クロマトグラフィー)等により解析し、エステルオリゴマーの分子構造と添加量を決定する。抽出液を蒸発させて、添加量成分1gを回収し、JIS K0700に記載の方法にて水酸基価を測定する。抽出物の水酸基価から、決定したエステルオリゴマーの添加量と水酸基の有無を考慮して、エステルオリゴマーの水酸基価を決定する。
本発明で使用されるエステルオリゴマーの合成方法としては、ジカルボン酸とジオールの脱水縮合反応、又は、ジオールへの無水ジカルボン酸の付加および脱水縮合反応などの公知の方法を利用することができる。
さらに、上記エステルオリゴマーの合成は、常法により上記ジカルボン酸と、上記ジオールと、末端封止用の脂環構造を有するモノカルボン酸とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとジオール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。
本発明で使用されるエステルオリゴマーの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定、評価することができる。具体的には、以下の方法で測定した値を採用する。上記エステルオリゴマーをTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させ、東ソー株式会社製高速GPCを用いて行った。数平均分子量Mnはポリスチレン換算で計算した。より詳細な条件を以下に示す。
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
カラム:TOSOH TSKgel Super HZM−H、HZ4000, HZ2000(東ソー株式会社製)を使用する;
カラム温度:40℃;
試料濃度:0.1質量%;
検出器:EcoSEC HLC−8320GPC(東ソー株式会社製);
流量 :0.01mL/min
校正曲線:標準ポリスチレン(TSK standard ポリスチレン、東ソー株式会社製、Mw=7000000〜1000)の6サンプルによる校正曲線を使用する。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、上記エステルオリゴマーの含有量が、上記セルロースアシレート100質量部に対して4〜30質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることがより好ましく、10〜13質量部であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、フィルムの硬度が特に良好となる。エステルオリゴマーは、1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(「UV吸収剤」とも言う)を含有する。UV吸収剤は、液晶ディスプレイの液晶等が紫外線により劣化することを防止し、高温高湿環境下での偏光子耐久性の改善に寄与する。特に、本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板の偏光子を保護する偏光板保護フィルムや、液晶表示装置の表面保護フィルムとして利用する態様において、UV吸収剤の添加は有効である。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を2種以上併用する場合においては、使用合計量が上記範囲となっていることが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、高温高湿環境下での偏光子耐久性を改良するため、添加剤として偏光子耐久性改良剤を含んでいてもよい。
偏光子耐久性改良剤としては、公知の有機酸などを用いることができ、例えば、多価カルボン酸のモノグリセリドなどの有機酸モノグリセリド、特開2012−72348号公報に記載の化合物、バルビツール酸誘導体などを挙げることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムに含まれる偏光子耐久性改良剤の含有量としては、セルロースアシレートに対して、6質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤の少なくとも1種をさらに含有していてもよい。他の添加剤の例には、上記エステルオリゴマー以外の他の高分子系可塑剤(例えば、リン酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、重縮合オリゴマー系可塑剤等)、酸化防止剤および後述のマット剤等が含まれる。
本発明のセルロースアシレートフィルムに含まれる上記他の添加剤の含有量としては、セルロースアシレート100質量部に対して、3質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、実質的に含まないことがさらに好ましい。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムに含まれるレターデーション発現剤(レターデーション低減剤も含む)の含有量としては、セルロースアシレート100質量部に対して、3質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、実質的に含まないことがさらに好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、上記エステルオリゴマー以外に他の高分子系可塑剤を、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。他の高分子系可塑剤としては、ポリエステルポリウレタン系可塑剤、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル等のアクリル系ポリマー(エステル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、tert−ノニル基、ドデシル基、トリデシル基、ステアリル基、オレイル基、ベンジル基、フェニル基など)、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、フェノール−ホルムアルデヒド縮合物、尿素−ホルムアルデヒド縮合物、酢酸ビニル、等が挙げられる。
芳香環を持たないアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。また、芳香族環を有するアクリル系ポリマーに用いるアクリルモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、ヒドロキシスチレンなどを挙げることが出来る。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、公知の酸化防止剤、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を含めることができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤を含めることが好ましい。本発明のセルロースアシレートフィルムの酸化防止剤の含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.05〜5.0質量部であることが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法は、特に制限はなく、公知の方法を用いて製膜することができる。例えば、溶液流延製膜法及び溶融製膜法のいずれを利用して製膜してもよい。フィルムの面状を改善する観点から、本発明のセルロースアシレートフィルムは、溶液流延製膜法を利用して製造するのが好ましい。以下、溶液流延製膜法を用いる場合を例に説明するが、本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法は溶液流延製膜法に限定されるものではない。なお、溶融製膜法を用いる場合については、公知の方法を用いることができる。
溶液流延製膜方法では、セルロースアシレート、UV吸収剤、エステルオリゴマー、及び必要に応じて各種添加剤を含有する溶液を用いてウェブを形成する。以下において、溶液流延製膜方法に用いることができる溶液(以下、「セルロースアシレート溶液」、「ドープ」と称する場合もある)について説明する。
本発明で用いられるセルロースアシレートは溶媒に溶解させてドープを形成し、これを基材(たとえば金属支持体)上に流延しフィルムを形成させる。この際に押し出しあるいは流延後に溶媒を蒸発させる必要性があるため、揮発性の溶媒を用いることが好ましい。
更に、反応性金属化合物や触媒等と反応せず、かつ流延用基材を溶解しないものである。又、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。
また、セルロースアシレートと加水分解重縮合可能な反応性金属化合物を各々別の溶媒に溶解し後に混合してもよい。
ここで、上記セルロースアシレートに対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
これらは、ドープを金属支持体に流延した後、溶媒が蒸発し始めてアルコールの比率が多くなることでウェブ(支持体上にセルロースアシレートのドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)をゲル化させ、金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースアシレートの溶解を促進したりする役割もあり、反応性金属化合物のゲル化、析出、粘度上昇を抑える役割もある。
これらのうち、ドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、且つ毒性がないこと等からメタノール、エタノールが好ましい。エタノールがもっとも好ましい。これらの有機溶媒は、単独ではセルロースエステルに対して溶解性を有しておらず、貧溶媒という。
また、本発明においては、水を少量含有させることも溶液粘度や乾燥時のウェットフィルム状態の膜強度を高めたり、ドラム法流延時のドープ強度を高めたりするのに有効であり、例えば溶液全体に対して0.1〜5質量%含有させてもよく、より好ましくは0.1〜3質量%含有させてもよく、特には0.2〜2質量%含有させてもよい。
上記セルロースアシレート濃度は、セルロースアシレートを溶媒に溶解する段階で所定の濃度になるように調整することができる。また予め低濃度(例えば4〜14質量%)の溶液を調製した後に、溶媒を蒸発させる等によって濃縮してもよい。さらに、予め高濃度の溶液を調製後に、希釈してもよい。また、添加剤を添加することで、セルロースアシレートの濃度を低下させることもできる。
セルロースアシレートに対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中でこのセルロースアシレート、添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程、あるいはセルロースアシレート溶液に添加剤溶液を混合してドープを形成する工程である。
セルロースアシレートの溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
ドープ中のセルロースアシレートの濃度は10〜35質量%が好ましい。溶解中または後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送ることが好ましい。
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
ダイの口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、何れも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
ウェブ(セルロースアシレートフィルムの完成品となる前の状態であって、まだ溶媒を多く含むものをこう呼ぶ)を金属支持体上で加熱し、金属支持体からウェブが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または金属支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が、乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。裏面液体伝熱の場合は、ドープ使用有機溶媒の主溶媒または最も低い沸点を有する有機溶媒の沸点以下で加熱するのが好ましい。
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。なお、剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に金属支持体上で充分に乾燥させ過ぎてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
ここで、製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離することで製膜速度を上げることができる)としてゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。例えば、ドープ中にセルロースアシレートに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、金属支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。金属支持体上でゲル化させ剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め製膜速度を上げることができる。
金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により5〜150質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。本発明においては、この金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
残留溶媒量は下記の式で表すことができる。
残留溶媒量(質量%)=[(M−N)/N]×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、Nは質量Mのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
上記剥離工程後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置、および/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いて、ウェブを乾燥することが好ましい。
また、熱処理温度は、30分以下であることが好ましく、20分以下であることがより好ましく、10分程度であることが特に好ましい。
なお、ここでいう「延伸倍率(%)」とは、以下の式により求められるものを意味する。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
なお、本発明においては、フィルム搬送方向に直交する方向TDに延伸する方法として、テンター装置を用いて延伸することが好ましい。
以上のようにして得られた、フィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。フィルムの幅は、0.5〜5.0mが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0mであり、さらに好ましくは1.0〜2.5mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
セルロースアシレートフィルムは単層フィルムであっても、2層以上の積層構造を有していてもよい。例えば、コア層と外層(表層、スキン層と呼ばれることもある)の2層からなる積層構造であることや、外層、コア層、外層の3層からなる積層構造であることも好ましく、これらの積層構造を共流延によって製膜された態様であることも好ましい。
本発明で使用するセルロースアシレートフィルムが2層以上の積層構造を有している場合、外層には、さらにマット剤を添加することが好ましい。マット剤としては、例えば特開2011−127045号公報に記載のものなどを用いることができ、例えば平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子などを用いることができる。
(セルロースアシレートフィルムの厚み)
本発明のセルロースアシレートフィルムの厚みは、10〜40μmであり、15〜35μmであることが好ましく、15〜30μmであることがより好ましく、30μm未満であることがより薄膜化の観点から特に好ましい。上記範囲において、エステルオリゴマー添加によるブリードアウト抑制効果が高く得られる。
本発明で使用するセルロースアシレートフィルムが2層以上の積層構造を有している場合は、外層の1層あたりの厚みはそれぞれ1〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましく、1〜3μmであることが特に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板保護フィルム、画像表示面に配置される表面保護フィルム、等種々の用途に有用である。各用途に適する機能を示すために、本発明のセルロースアシレートフィルムは、例えば、ハードコート層、防眩層、クリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層等を有していてもよい。
また、偏光板の作製時には、本発明のセルロースアシレートフィルムが面内遅相軸を有する場合は、この面内遅相軸と偏光子との透過軸が平行もしくは直交するように貼合することが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、厚みが0.1〜6μm(好ましくは3〜6μm)のハードコート層を有することが好ましい態様の一つである。上記範囲の薄いハードコート層を有することで、脆性やカール抑制などの物性改善、軽量化および製造コスト低減がなされたハードコート層を含む光学フィルムになる。
また、ハードコート層の硬化性組成物を本発明のセルロースアシレートフィルム(基材)上で硬化させることにより、ハードコート層と基材フィルムとの密着性にも優れた光学フィルムとなる。
他の機能を付加することを目的として、ハードコート層上に、他の機能層を積層してもよい。具体的には反射防止層や防汚層である。
また、ハードコート層にフィラーや添加剤を加えることで、機械的、電気的、光学的な物理的な性能や撥水・撥油性などの化学的な性能をハードコート層自体に付与することもできる。
利用可能なマトリックス形成バインダー用モノマー又はオリゴマーの例には、電離放射線硬化性の多官能モノマー及び多官能オリゴマーが含まれる。多官能モノマーや多官能オリゴマーは架橋反応、又は、重合反応可能なモノマーであるのが好ましい。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
具体的には、(ジ)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、等が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」は、それぞれ「アクリレート又はメタクリレート」、「アクリル酸又はメタクリル酸」、「アクリロイル又はメタクリロイル」を表す。
3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類の具体化合物としては、特開2007−256844号公報の[0096]等を参考にすることができる。
具体的な化合物の具体例としては特開2007−256844号公報の[0017]等の記載を参考にすることができる。
ハードコート層の形成に利用可能な硬化性組成物の一例は、アクリレート系化合物を含む硬化性組成物である。硬化性組成物は、アクリレート系化合物とともに、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤を含有するのが好ましく、所望により、さらにフィラー、塗布助剤、その他の添加剤を含有していてもよい。硬化性組成物の硬化は、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により重合反応を進行させることで実行できる。電離放射線硬化と熱硬化の双方を実行することもできる。光及び熱重合開始剤としては市販の化合物を利用することができ、それらは、「最新UV硬化技術」(p.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)や、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のカタログに記載されている。
ハードコート層は、耐擦傷性に優れるのが好ましい。具体的には、耐擦傷性の指標となる鉛筆硬度試験を実施した場合に、MD及びTDのいずれの方向においても、3H以上を達成するのが好ましく、4H以上を達成するのがより好ましい。
また、従来知られている方法を用いてハードコート層の表面に凹凸を形成し、防眩機能を有しても良い。
本発明の偏光板は、偏光子と、少なくとも1枚の本発明のセルロースアシレートフィルムとを含む。
本発明の偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、本発明のセルロースアシレートフィルムの一方の面と、偏光子とを貼り合わせることで作製することができる。本発明のセルロースアシレートフィルムの貼合面は、アルカリ鹸化処理を行うことが好ましい。また、貼合には、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いることができる。
上記した従来知られている光学フィルムについては、光学特性及び材料のいずれについても特に制限はないが、セルロースアシレート樹脂、アクリル樹脂、および/または環状オレフィン樹脂を含む(あるいは主成分とする)光学フィルムを好ましく用いることができ、光学的に等方性のフィルムを用いても、光学的に異方性の位相差フィルムを用いてもよい。
上記の従来知られている光学フィルムについて、セルロースアシレート樹脂を含むものとしては、例えばZRF25(富士フイルム(株)製)などを利用することができる。
上記の従来知られている光学フィルムについて、アクリル樹脂を含むものとしては、特許第4570042号公報に記載のスチレン系樹脂を含有する(メタ)アクリル樹脂を含む光学フィルム、特許第5041532号公報に記載のグルタルイミド環構造を主鎖に有する(メタ)アクリル樹脂を含む光学フィルム、特開2009−122664号公報に記載のラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む光学フィルム、特開2009−139754号公報に記載のグルタル酸無水物単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む光学フィルムを利用することができる。
また、上記の従来知られている光学フィルムについて、環状オレフィン樹脂を含むものとしては、特開2009−237376号公報の段落[0029]以降に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム、特許第4881827号公報、特開2008−063536号公報に記載のRthを低減する添加剤を含有する環状オレフィン樹脂フィルムを利用することができる。
本発明の偏光板を液晶表示装置に利用する態様では、本発明のセルロースアシレートフィルムが液晶セルに近い側の偏光板保護フィルムとなるように配置することもできるし、液晶セルから遠い側の偏光板保護フィルムとなるように配置することもできるが、液晶セルから遠い側の偏光板保護フィルムとなるように配置することが好ましい。
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、この液晶セルの両側に配置された2枚の偏光板(視認側偏光板、及びバックライト側偏光板)とを有する液晶表示装置であって、上記偏光板のうち少なくとも1枚が、本発明の偏光板である。
本発明のセルロースアシレートフィルムの液晶表示装置における機能については特に制限はない。
本発明のセルロースアシレートフィルムの配置方法の好ましい一例としては、ハードコート層を有する状態で視認側偏光板中、視認側(すなわち液晶セルから遠い側)に配置される態様である。
本発明のセルロースアシレートフィルムの配置方法の他の一例は、ハードコート層を有さない状態でバックライト側偏光板中、バックライト側(すなわち液晶セルから遠い側)に配置される態様である。
このように、本発明の液晶表示装置は、本発明のセルロースアシレートフィルムが、偏光板において液晶セルから遠い側に配置されることが好ましい。
その他の構成については、公知の液晶表示装置のいずれの構成も採用することができる。液晶セルのモードについても特に制限はなく、TN(Twisted Nematic)モード型の液晶セル、横電界スイッチングIPS(In−Plane Switching)モード型の液晶セル、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード型の液晶セル、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)モード型の液晶セル、OCB(Optically Compensatory Bend)モード型の液晶セル、STN(Supper Twisted Nematic)モード型の液晶セル、VA(Vertically Aligned)モード型の液晶セルおよびHAN(Hybrid Aligned Nematic)モード型の液晶セル等の様々な表示モードの液晶表示装置として構成することができる。その中でも、本発明の液晶表示装置は、液晶セルが、横電界スイッチングIPSモード型の液晶セルである液晶表示装置であることが好ましい。
(コア層セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
コア層セルロースアシレートドープ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
エステルオリゴマー(下記表1に記載) 13質量部
下記UV吸収剤B 5質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
メタノール(第2溶剤) 64質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1で用いたエステルオリゴマーの構造を、後述の各実施例および比較例で用いるエステルオリゴマーの構造とあわせて下記表1〜2に記載した。
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液
――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
メタノール(第2溶剤) 11質量部
コア層セルロースアシレートドープ 1質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
上記コア層セルロースアシレートドープと上記外層セルロースアシレートドープを平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープとその両側に外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のバンド上に流延した(バンド流延機)。溶剤含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み40μmのセルロースアシレートフィルムを作製し、これを実施例1のセルロースアシレートフィルムとした。実施例1のセルロースアシレートフィルムのコア層は厚み36μm、コア層の両側に配置された外層はそれぞれ厚み2μmであった。
実施例1のセルロースアシレートフィルムの作製において、セルロースアシレートフィルムに用いるエステルオリゴマーの種類及び添加量、UV吸収剤の種類及び添加量、フィルム膜厚を下記表1〜2に記載したとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜17、比較例1〜6のセルロースアシレートフィルムを作製した。
<セルロースアシレートフィルムの評価>
得られた各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムを用いて、以下の評価を行った。
作成したセルロースアシレートフィルムを観察し、白く見える部分があるかを目視にて評価した。白く見える部分がある場合には、布でふき取り、布にUV吸収剤が付着するかを確認し、析出の有無を評価した。具体的には拭き取った布を溶剤(メタノール、メチレンクロライド等)で抽出した後、得られた抽出液をKBr粉末に添加し、乾燥させることで抽出物とKBrの混合物を得る。得られた混合物を乳鉢ですりつぶし、圧縮機で薄いペレット状にし、赤外分光法により解析し、UV吸収剤起因のシグナルが検出されるかどうかで確認した。
A:白化している箇所が全く見えない
B:白化している箇所はあるが、UV吸収剤の析出は確認されない。
C:白化している箇所があり、UV吸収剤の析出が確認される。
JIS K 5600−5−4(1999)に記載の鉛筆硬度評価を行った。作成したセルロースアシレートフィルムを温度25℃、相対湿度60%で2時間調湿した後、JIS S 6006(2007)に規定するHの試験用鉛筆を用いて、4.9Nの荷重にて10回ひっかき試験を行った。
5:傷のついた回数0から1回
4:傷のついた回数2から3回
3:傷のついた回数4から5回
2:傷のついた回数6から7回
1:傷のついた回数8回以上
(偏光板の作製)
1)フィルムの鹸化
作成したセスロースアシレートフィルム、及びZRF25(富士フイルム(株)製)を37℃に調温した4.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(けん化液)に1分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を通した。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み12μmの偏光子を調製した。
このようにして得た偏光子と、上記鹸化処理したフィルムのうちから2枚選び、これらで上記偏光子を挟んだ後、PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3質量%水溶液を接着剤として、偏光軸とフィルムの長手方向とが直交するようにロールツーロールで貼り合わせて偏光板を作製した。ここで、偏光子の一方の面側のフィルムは、下記表1〜2に記載の各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルム群から選択される1枚を鹸化したフィルムとし、他方の面側のフィルムはZRF25(富士フイルム(株)製)を鹸化したフィルムとした。
上記で作製した偏光板について、ZRF25(富士フイルム(株)製)の片方の面を粘着剤でガラス板に貼り合わせたサンプル(約5cm×5cm)を2組作製した。これをクロスニコル配置して、日本分光(株)製自動偏光フィルム測定装置VAP−7070を用いて直交透過率(湿熱経時前の直交透過率)を410nmで測定した。その後、60℃、相対湿度90%の高温高湿環境下で500時間保存した後の直交透過率(湿熱経時後の直交透過率)を上記方法で測定した。
偏光板の偏光子耐久性の評価値を以下のように定義する。
偏光板の偏光子耐久性の評価値=[湿熱経時後の直交透過率(%)−湿熱経時前の直交透過率(%)]/湿熱経時前の直交透過率(%)
5:7未満
4:7より大きく8未満
3:8より大きく9未満
2:9より大きく10未満
1:10以上
(Xe照射後の表示性能(紫外線に対する偏光子・液晶の保護機能))
市販の液晶テレビ(IPSモードのスリム型42型液晶テレビ)から、液晶セルを挟んでいる偏光板のうち、視認側偏光板を剥がし取り、上記方法で作製した実施例及び比較例及の偏光板を、下記表1〜2に記載の実施例及び比較例のセルロースアシレートフィルムが液晶セルから遠い側(視認側)に配置されるように、ZRF25面側に粘着剤を介して液晶セルに貼合した。組みなおした液晶テレビに対し表示性能(正面及び斜めからの輝度、色味)を確認後、キセノンランプ(スガ試験機株式会社製)を64日間照射し、再び表示性能を確認し、以下の基準で評価した。
A:劣化が全く確認されなかった。
B:斜めからのみ輝度、色味に劣化が確認された。
C:正面及び斜めからの輝度、色味に劣化が確認された。
Mnは数平均分子量を表す。
なお、エステルオリゴマーの末端構造については、すべての末端が表1〜2に記載した構造である。
一方、末端構造が水酸基であるエステルオリゴマーを用いた比較例1、シクロヘキサン環を有していないジカルボン酸を用い、末端が酢酸由来の基にて封止されたエステルオリゴマーを用いた比較例3のセルロースアシレートフィルムにおいては、ブリードアウトが顕著に現れた。また、UV吸収剤量が少ない比較例2のセルロースアシレートフィルムおいては、ブリードアウトは起こさないものの、液晶表示装置に実装した場合の表示性能に劣った。
なお、比較例4に示すように、本発明のセルロースアシレートフィルム以外のフィルムであっても、膜厚が厚い場合においては、ブリードアウトを起こさずに良好な液晶表示性能を示す場合もあるが、薄膜化した場合には、これらの性能は保てなかった(比較例5参照)。
Claims (13)
- セルロースアシレートと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、エステルオリゴマーとを含有するセルロースアシレートフィルムであって、
前記セルロースアシレートフィルムの膜厚が10μm以上40μm以下であり、
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を、前記セルロースアシレート100質量部に対して、4質量部以上20質量部以下含有し、
前記エステルオリゴマーが、ジオールに由来する単位と、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方とを含み、末端が脂環構造を有するモノカルボン酸に由来する基で封止され、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下である、
セルロースアシレートフィルム。 - 前記脂環構造を有するモノカルボン酸が、炭素数6〜12のシクロアルカンモノカルボン酸である請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記脂環構造を有するモノカルボン酸がシクロヘキサンカルボン酸である請求項2に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記エステルオリゴマーの数平均分子量が、500〜3000である請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記エステルオリゴマーの数平均分子量が、750〜1500である請求項4に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記ジオールが、エチレングリコール、プロパンジオール、又はブタンジオールである請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記ジオールが、プロパンジオール又はブタンジオールである請求項6に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記ジオールが分岐構造を有する請求項7に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記エステルオリゴマーの含有量が、前記セルロースアシレート100質量部に対して、4質量部以上30質量部以下である請求項1〜8のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記エステルオリゴマーの含有量が、前記セルロースアシレート100質量部に対して、10質量部以上13質量部以下である請求項9に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が、前記セルロースアシレート100質量部に対して、5質量部以上10質量部以下である請求項1〜10のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 偏光子と、少なくとも1枚の請求項1〜11のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムとを有する偏光板。
- 液晶セルと、少なくとも1枚の請求項12に記載の偏光板とを有する液晶表示装置。
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