以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(1)受電装置1の概要
図1に示すように、受電装置1は、受電部2と、方形波コンバータ(以下「コンバータ」と略す)3とを備える。受電部2は、2次コイル5と、共振用のコンデンサ(以下「共振コンデンサ」という)6とを備える。2次コイル5のインダクタンスはLs、共振コンデンサ6のキャパシタンスはCsである。2次コイル5は、受電装置1の外部の1次コイル150に対向して配置され、1次コイル150と電磁結合される。共振コンデンサ6は、その一端が2次コイル5の一端に接続されており、2次コイル5と共に直列共振回路を形成する。
共振コンデンサ6のキャパシタンスCsは、直列共振回路の共振周波数fが1次コイル150に流れる高周波電流の周波数fに一致するような値に設定されている。共振コンデンサ6は、換言すれば、2次コイル5の誘導性リアクタンスωLsに起因するリアクタンス電圧を補償(キャンセル)することにより直列共振回路全体として電圧が0となるように(即ち合成リアクタンスが0となるように)設けられている。なお、ωは角周波数である。
2次コイル5のインダクタンスLsと共振コンデンサ6のキャパシタンスCsは、上記のように、合成リアクタンスが0となるように設計され、その設計に基づいて各素子が選定される。しかし、各素子の特性のバラツキ、受電部2全体の回路構成、通電電流値、温度変化、経年変化などの種々の要因によって、実際の合成リアクタンスを設計通りに0にすることは困難である。つまり、受電部2内の誘導電流経路中の実際の合成リアクタンスは0にならず、リアクタンスが残存する。以下、その残存するリアクタンスを、残存リアクタンスと称し、その値をωLrとする。また、Lrを残存リアクタンス成分ともいう。
コンバータ3は、第1スイッチ部Sw1、第2スイッチ部Sw2、第3スイッチ部Sw3、第4スイッチ部Sw4、制御部10、入力電流センサ16、出力電流センサ17、及び平滑コンデンサ18を備える。
各スイッチ部Sw1〜Sw4は、自己消孤機能を有する半導体スイッチング素子であり、本実施形態ではいずれも絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。ただし、各スイッチ部Sw1〜Sw4としてIGBTを用いるのはあくまでも一例であり、他の半導体スイッチング素子(例えばMOSFET)を用いてもよいし、半導体スイッチング素子以外の他の種類のスイッチを用いてもよい。
第1スイッチ部Sw1のエミッタが第4スイッチ部Sw4のコレクタに接続されることにより、これら2つのスイッチ部Sw1,Sw4が直列接続されてなる一組の直列接続部が形成されている。また、第3スイッチ部Sw3のエミッタが第2スイッチ部Sw2のコレクタに接続されることにより、これら2つのスイッチ部Sw2,Sw3が直列接続されてなる一組の直列接続部が形成されている。これら二組の直列接続部は、負荷4の両端間で互いに並列接続されている。
第1スイッチ部Sw1のエミッタと第4スイッチ部Sw4のコレクタとの接続点である第1ノードN1には、受電部2内の共振コンデンサ6の他端が接続されている。第3スイッチ部Sw3のエミッタと第2スイッチ部Sw2のコレクタとの接続点である第2ノードN2には、受電部2内の2次コイル5の他端が接続されている。
各スイッチ部Sw1〜Sw4のエミッタ−コレクタ間には、それぞれ、ダイオードD1〜D4が接続されている。これら各ダイオードD1〜D4は、それぞれ、対応するスイッチ部がターンオフした際に発生する逆起電力を吸収する。なお、各ダイオードD1〜D4は、ディスクリート素子であってもよいし、各スイッチ部Sw1〜Sw4のエミッタ−コレクタ間に形成される寄生ダイオードであってもよい。
平滑コンデンサ18は、負荷4に並列接続されている。受電部2からコンバータ3に入力された交流電圧は、各スイッチ部Sw1〜Sw4からなる変換回路によって脈流電圧に変換されて負荷4側へ出力される。以下、この変換回路からの出力を変換出力ともいう。平滑コンデンサ18は、変換回路からの変換出力(脈流電圧)を平滑化して直流化するために設けられている。
入力電流センサ16は、受電部2から入力される交流の入力電流I(瞬時値i)を検出可能なセンサである。出力電流センサ17は、負荷4へ出力される直流の出力電流を検出するためのセンサである。
制御部10は、入力電流検出器11と、出力電流検出器12と、出力電圧検出器13と、制御器14と、パルス発生器15とを備える。
入力電流検出器11は、入力電流センサ16から入力される検出信号に基づいて入力電流iを検出し、さらに、後述するように入力電流iの振幅Imと位相θを検出して、制御器14へ出力する。出力電流検出器12は、出力電流検出センサ17から入力される検出信号に基づいて、コンバータ3から負荷4へ出力される出力電流を検出し、制御器14へ出力する。出力電圧検出器13は、コンバータ3から負荷4へ出力される出力電圧を検出し、制御器14へ出力する。
制御器14は、後述するように、第1スイッチ部Sw1と第2スイッチ部Sw2とで構成される第1のスイッチ対と、第3スイッチ部Sw3と第4スイッチ部Sw4とで構成される第2のスイッチ対とが交互にオン・オフするように、これら各スイッチ部Sw1〜Sw4のスイッチングに必要なパラメータを演算する。
パルス発生器15は、制御器14にて演算された各種パラメータ等に基づいて、各スイッチ部Sw1〜Sw4をオン・オフさせるためのパルス信号を生成して、各スイッチ部Sw1〜Sw4へ出力する。コンバータ3は、このようなスイッチングによって、受電部2から入力される交流電力を直流電力に変換して負荷4へ出力すると共に、受電部2からの交流電力の入力端子間(各ノードN1,N2間)に補償電圧を発生・印加させる。
補償電圧は、受電部2における残存リアクタンスωLr(主には誘導性リアクタンスωLsと容量性リアクタンス1/ωCsとの合成リアクタンス)に起因するリアクタンス電圧をキャンセルするための電圧である。既述の通り、受電部2は、実際には残存リアクタンス成分Lrが残っている。この残存リアクタンス成分Lrは、受電部2における共振の発生を阻害する要因となっている。そこで、コンバータ3が受電部2に対して補償電圧を印加することで、結果として残存リアクタンス成分Lrを打ち消し、これにより完全共振またはそれに近い状態を作り出して、1次コイル150から最大限の電力を取得することができるようになる。
なお、以下の説明では、受電部2について残存リアクタンス(残存リアクタンス成分)というときは、特に断りのない限り、2次コイル5と共振コンデンサ6との合成値を意味するものとし、これら2つの素子以外の他の要因(例えば配線)によって生じるリアクタンス成分は無視する。
(2)補償電圧生成の概要
図2(a)に、本実施形態の受電装置1の等価回路を示す。既述の通り、受電部2においては、2次コイル5と共振コンデンサ6との合成リアクタンスである残存リアクタンスωLrが存在する。なお、受電部2において、抵抗7(抵抗値Rs)は、2次コイル5に含まれる抵抗成分を示しており、交流電圧源8は、2次コイル5で発生する誘導電圧Vs(瞬時値vs)を示している。
コンバータ3は、図2(a)に示すように、等価抵抗102(抵抗値Rc)と等価リアクタンス素子101(リアクタンス成分は−Lc)との直列接続回路として等価的に表すことができる。図2(a)の等価回路から明らかなように、コンバータ3のリアクタンス成分−Lcの絶対値Lc(以下「リアクタンス補償量」という)が、受電部2の残存リアクタンス成分Lrと等しければ、等価回路全体の合成リアクタンスは、jω(Lr−Lc)=0となり、リアクタンス成分が0の完全共振状態とすることができる。
そこで本実施形態では、コンバータ3が、受電部2に対して、次式(1)で表される補償電圧Vc(瞬時値vc)を演算して印加する、リアクタンス補償制御を行う。
Vc=(Rc−jωLc)I ・・・(1)
上記式(1)において、Lc=Lrであれば、受電部2内の残存リアクタンスωLrを打ち消して完全共振を実現できる。そのため、コンバータ3は、リアクタンス補償量Lcを残存リアクタンス成分Lrと同じ値に設定すると共に等価抵抗値Rcを適宜設定して、それら設定した各値から補償電圧Vcを演算して、その補償電圧Vcを受電部2に印加する。式(1)で表される補償電圧Vcを受電部2に印加することで、結果として、受電部2の残存リアクタンスωLrをキャンセルして(0にして)、完全共振を実現することができる。
しかし、受電部2の残存リアクタンス成分Lrを正確に把握することは、一般的に非常に困難である。既述の通り、各素子の特性のバラツキ、受電部2の回路構成、通電電流値、温度変化、経年変化などの種々の要因によって、実際の残存リアクタンス成分Lrは変動する。
そこで、本実施形態のコンバータ3は、リアクタンス補償制御を効果的に実現するために、このリアクタンス補償制御において、最適なリアクタンス補償量Lc(Lrと等しいか又は非常に近い値)を探索する補償量探索制御を行う。そして、その補償量探索制御により探索された最適なリアクタンス補償量Lcを用いて、上記式(1)で表される補償電圧Vcを生成し、受電部2に印加する。
リアクタンス補償制御、及びそのリアクタンス補償制御の中で行われる補償量探索制御は、いずれも、コンバータ3における制御部10で行われる。なお、リアクタンス補償量Lcは、本発明の等価リアクタンス成分の一例に相当する。
(3)リアクタンス補償制御の概要
制御部10により実行されるリアクタンス補償制御について具体的に説明する。
1次コイル150に高周波交流電圧(例えば、5〜30kHz)が印加されて高周波交流電流が通電されている状態で、その1次コイル150に2次コイル5が対向すると、2次コイル5に誘導電圧Vsが発生する。この誘導起電力Vsによって受電部2に交流電流Iが流れる。受電部2の交流電流Iはコンバータ3に入力され、その交流電流(入力電流)Iの瞬時値iは、入力電流センサ16により検出される。具体的には、入力電流センサ16からの検出信号に基づいて入力電流検出器11がその瞬時値iを検出する。そして、入力電流検出器11は、入力電流iからその振幅Im及び位相θを演算する。
ここで、入力電流センサ16で検出される入力電流Iの瞬時値iは、下記式(2)で表される。
i=Im・exp[j(ωt+θ)] ・・・(2)
なお、Imは電流振幅、tは時間、θは電流位相を表す。expは指数関数を表す記号である。
入力電流検出器11は、検出した入力電流iに基づいて、電流振幅Im及び電流位相θを演算する。入力電流Iの瞬時値iからその振幅及び位相を演算する方法は様々であり、具体的にどのような方法で演算するかについては適宜決めればよい。特許文献2にも、その演算方法の一例が記載されている。
特許文献2に記載の演算方法は、おおよそ次の通りである。まず、入力電流iをsinθ及びcosθの両者とそれぞれ乗算する。そして、各乗算結果からローパスフィルタにて高周波成分を除去した後、AD変換する。これにより、X=(Im・sinθ)/2、及びY=(Im・cosθ)/2、の2つのデジタルデータが得られる。従って、電流振幅Im及び電流位相θは、それぞれ、次式(3)、(4)で得られる。
Im=2(X2+Y2)1/2 ・・・(3)
θ=arctan(X/Y) ・・・(4)
このように、電流振幅Im及び電流位相θは、特許文献2に記載の方法を用いて演算することができる。もちろん、この方法はあくまでも一例であり、他の方法を用いてこれら両者を演算してもよい。
制御器14は、コンバータ3の等価抵抗Rc及びリアクタンス補償量Lcの最適値(完全共振状態となるような値。具体的には残存リアクタンス成分Lrと同じ値。)を、補償量探索制御によって導出する。コンバータ3の等価抵抗Rcを適宜設定すると共に、補償量探索制御によってリアクタンス補償量Lcの最適値が得られれば、受電部2に印加すべき補償電圧Vcを生成する準備が整ったことになる(式(1)参照)。
補償量探索制御は、本発明の最も特徴的な部分であり、いくつかの方式がある。補償量探索制御の詳細については後で説明することとする。ここでは、補償量探索制御によってLc、Rcが演算されたものと仮定して、説明を続ける。
演算されたリアクタンス補償量Lc及び等価抵抗Rcを用いて、コンバータ3の内部インピーダンスZの振幅Zm及び位相φは、次式(5)、(6)のように表せる。
Zm={Rc2+(−ωLc)2}1/2 ・・・(5)
φ=arctan{(−ωLc)/Rc} ・・・(6)
そして、コンバータ3が生成すべき補償電圧Vc(瞬時値vc)は、その振幅をVm、位相をΦとすると、Zm,Φを用いて次式(7)、(8)のように表せる。
Vm=Zm・Im ・・・(7)
Φ=φ+θ ・・・(8)
つまり、Lc及びRcが演算されれば、それらに基づいて上記式(5)、(6)によりコンバータ3内部のインピーダンスZの振幅Zm及び位相φが得られる。そして、インピーダンスZの振幅Zm及び位相φが得られれば、入力電流検出器11で演算された電流振幅Im及び電流位相θも用いて、上記式(7)、(8)により、生成すべき補償電圧vcが得られる(具体的にはその振幅Vm及び位相Φが得られる)。
補償電圧vcを具体的にどのような波形の電圧として生成するかについては種々考えられるが、本実施形態では、一例として、パルス状の電圧を生成する。具体的には、制御器14は、補償量探索制御によって演算されたLc及びRcを用いて、上記式(5)〜(8)により、生成すべき補償電圧vcを算出する。
そして、パルス発生器15は、制御器14により算出された補償電圧vcを生成させるために各スイッチ部Sw1〜Sw4のスイッチングを行う。パルス発生器15は、補償電圧vcがノード間N1―N2に発生するように各スイッチ部Sw1〜Sw4をスイッチングするためのパルス信号を生成して、各スイッチ部Sw1〜Sw4のゲートへ出力する。
このスイッチングにより、ノード間N1−N2には、実際には振幅Edのパルス状の電圧(式(1)で表される補償電圧Vcと等価)が印加されることになる。Edは、コンバータ3から負荷4へ出力される出力電圧である。なお、負荷4に対して並列に、別途、電圧値Edの直流電源が接続されていてもよい。
パルス発生器15による、各スイッチ部Sw1〜Sw4をスイッチングするためのパルス信号の生成は、より具体的には、制御器14から入力される、パルス信号生成に必要な情報である重なり角β及び初期位相αに基づいて行われる。
制御器14は、上記式(7)、(8)により算出されるVm、Φに基づいて、まず、重なり角βを次式(9)により算出する。
β=π−θa ・・・(9)
なお、θaは、補償電圧vcの1パルス分のオン時間(デューティ比)を表す。θaは、上記式(7)で算出された補償電圧vcの振幅Vm、及び出力電圧Edに基づいて、次式(10)により算出する。
θa=2arcsin(Vm・π/4Ed) ・・・(10)
また、制御器14は、基準信号(電流位相θ)と同期をとるために必要な初期位相αを、次式(11)により算出する。
α=−Φ+β/2 ・・・(11)
このようにして算出された重なり角β及び初期位相αは、パルス発生器15に入力される。パルス発生器15は、制御器14から入力された重なり角β及び初期位相αに基づき、図3に示すようなタイミングで各スイッチ部Sw1〜Sw4をスイッチングする。
まず、第1スイッチ部Sw1と第2スイッチ部Sw2のスイッチングについて説明する。図3に示すように、第1スイッチ部Sw1については、基準位相に対して初期位相αだけ位相をずらしたタイミングで第1スイッチ部Sw1を所定時間(一周期あたり約π)だけオンし、その後そのオン時間と同じ時間だけオフする。その後はこの動作が周期的に繰り返される。
第2スイッチ部Sw2については、第1スイッチ部Sw1のオンよりもβだけ早いタイミングでオンする。第2スイッチ部Sw2は、オン後、第1スイッチ部Sw1のオン時間と同じ時間だけオンする。つまり、第1スイッチ部Sw1がオフするタイミングよりもβだけ早いタイミングでオフする。第2スイッチ部Sw2のオフ時間は、第1スイッチ部Sw1のオフ時間と同じである。その後はこの動作が周期的に繰り返される。
上記のように第1スイッチ部Sw1及び第2スイッチ部Sw2がそれぞれβずれたタイミングでオン・オフされることにより、補償電圧vcの正のパルスは、第1スイッチ部Sw1がオンしてから第2スイッチ部Sw2がオフするまでの、(π−β=θa)の時間、発生する。この正のパルスが周期的に繰り返し発生する。
次に、第3スイッチ部Sw3と第4スイッチ部Sw4のスイッチングについて説明する。図3に示すように、第3スイッチ部Sw3は、第2スイッチ部Sw2と全く逆に動作される。即ち、第3スイッチ部Sw3は、第2スイッチ部Sw2のオン時間中にオフされ、第2スイッチ部Sw2のオフ時間中にオンされる。
第4スイッチ部Sw4については、第1スイッチ部Sw1と全く逆に動作される。即ち、第4スイッチ部Sw4は、第1スイッチ部Sw1のオン時間中にオフされ、第1スイッチ部Sw1のオフ時間中にオンされる。第4スイッチ部Sw4のオン・オフタイミングを第3スイッチ部Sw3のオン・オフタイミングと比較して説明すると、第4スイッチ部Sw4は、第3スイッチ部Sw3のオン後、βだけ遅れたタイミングでオンする。そして、第4スイッチ部Sw4は、オン後、第3スイッチ部Sw3がオフしてβ経過後にオフする。
上記のように第3スイッチ部Sw3及び第4スイッチ部Sw4がそれぞれβずれたタイミングでオン・オフされることにより、補償電圧vcの負のパルスは、第4スイッチ部Sw4がオンしてから第3スイッチ部Sw3がオフするまでの、(π−β=θa)の時間、発生する。この負のパルスが周期的に繰り返される。
そして、上記のように4つのスイッチ部Sw1〜Sw4がそれぞれスイッチングされることにより、図3の最下段に示すような、振幅Edのパルス状の補償電圧vcが生成される。即ち、正のパルスと負のパルスが交互に周期的に発生し、結果として、上記式(7)、(8)で表される補償電圧vc(上記式(1)で表される補償電圧Vc)が受電部2の出力端子間に印加(各ノードN1−N2間に印加)される。
このようにして補償電圧vcが受電部2に印加されることにより、受電装置1は、図2(a)に示す等価回路においてLc=Lrの状態となる。即ち、受電部2内の残存リアクタンス成分Lrはコンバータ3のリアクタンス補償量Lcによって打ち消され、全体として完全共振の状態となる。
よって、受電部2からコンバータ3に入力される入力電流及び入力電圧の位相が一致し、力率1での装置運転が可能となる。そして、受電部2から入力された入力電流iは、上述したスイッチング動作によって脈流を含む直流電流に変換されたのち、平滑コンデンサ18によって平滑化される。そして、その平滑化された直流電流が、負荷4へ供給される。
(4)補償量探索制御の概要
次に、リアクタンス補償制御の中で実行される、リアクタンス補償量Lcの最適値を探索することを主な目的とする補償量探索制御について、具体的に説明する。補償量探索制御は、概略的には、次のように行う。即ち、リアクタンス補償量Lcを所定の範囲内且つ所定の変動パターンで少しずつ変化させ、変化させる毎にそのLcの値にてコンバータ3を動作(補償電圧vcを印加)させる。そして、Lcを変化させてそのLcでコンバータ3を動作させる毎に、コンバータ3で検出又は演算可能な所定の物理量を取得する。この物理量は、リアクタンス補償量Lcの変化に起因して(その変化に伴って)変化する物理量である。
リアクタンス補償量Lcが異なると、そのLcの値に応じて、取得される物理量の値も変化する。一方、物理量によっては、その物理量の状態に基づいて、完全共振状態になっているかどうかを判断することが可能である。そこで、補償量探索制御では、Lcを変化させる毎にそのLcに基づく補償電圧vcを印加して、そのときの物理量の状態を検出し、その物理量の状態が、完全共振状態のときの状態(完全共振状態になっているならば生じることが予想される状態)となった場合に、そのときのLcの値を、探索すべき最適なリアクタンス補償量Lcに決定する。
リアクタンス補償量Lcを変化させることにより変化が生じる物理量としては、例えば、受電部2から入力される入力電流iや、コンバータ3から負荷4へ出力される出力電力P、コンバータ3の等価抵抗Rcなどがある。
リアクタンス補償量Lcを変化させると、それに伴って共振点がずれるため、入力電流iも変化する。そのため、リアクタンス補償量Lcを変化させたときの入力電流iの変化の状態から、リアクタンス補償量Lcの最適値を探索することができる。
また、リアクタンス補償量Lcを変化させると、それに伴って共振点がずれるため、出力電力Pも変化する。そのため、リアクタンス補償量Lcを変化させたときの出力電力Pの変化の状態から、リアクタンス補償量Lcの最適値を探索できる。
また、出力電力Pが常に一定となるような制御(電力一定制御)を行う場合において、リアクタンス補償量Lcを変化させると、等価抵抗Rcも変化する。そのため、リアクタンス補償量Lcを変化させたときの等価抵抗Rcの変化の状態から、リアクタンス補償量Lcの最適値を探索できる。
なお、電力一定制御を適用するか否かについては適宜決めることができる。ただし、物理量として出力電力Pを用いる場合は、電力一定制御を適用しないことが前提となる。逆に、物理量として等価抵抗Rcを用いる場合は、電力一定制御を用いることが前提となる。
補償量探索制御の具体的な方法(方式)は種々考えられる。本実施形態では、複数種類の方法のうち、常時パラメータ検出方式による補償量探索制御について説明する。なお、補償量探索制御の具体的方法としては、他に、常時電流検出方式(電力一定制御有り)、常時電流検出方式(電力一定制御無し)、常時電力検出方式、及び、起動時電流検出方式などもある。これら他の方式については、第2〜第5実施形態として後でそれぞれ説明する。
(5)常時パラメータ検出方式による補償量探索制御
図2(a)に示した受電装置1の等価回路を、ベクトル図で表すと、図2(b)のように表すことができる。図2(b)のベクトル図より、次式(12)が成り立つ。
Vs=[{ω(Lr−Lc)I}2+{(Rs+Rc)I}2]1/2
=I[{ω(Lr−Lc)}2+(Rs+Rc)2]1/2 ・・・(12)
よって、入力電流Iは、次式(13)で表せる。
I=Vs/[{ω(Lr−Lc)}2+(Rs+Rc)2]1/2 ・・・(13)
ここで、誘起電圧Vs、抵抗Rs、及び残存リアクタンス成分Lrは、いずれも一定値であるものとする。また、ωは、ω=2πfで表され、周波数fによって決まる値である。そのため、ωも一定であるものとする。
コンバータ3からの出力電力Pは、次式(14)で表せる。
P=Rc・I2 ・・・(14)
上記式(14)に式(13)を導入すると、出力電力Pは、次式(15)のように表せる。
P=Vs2・Rc/[{ω(Lr−Lc)}2+(Rs+Rc)2] ・・・(15)
本実施形態では、電力一定制御を用いるため、出力電力Pが一定となるように制御される。具体的には、制御器14が、出力電力Pが一定となるように等価抵抗Rcを調整する。そのため、式(15)において、Lcが変化することにより(Lr−Lc)の項が変化すると、出力電力Pを一定にすべく、等価抵抗Rcは図4(a)に示すように変化する。なお、図4(a)は、(Lr−Lc)の変化に対する等価抵抗Rcの変化の傾向を概略的に示したイメージ図であって、等価抵抗Rcの変化が必ずしも正確に表現されているわけではない。
図4(a)から、(Lr−Lc)が0に近づくほど、即ち力率が1に近くなるほど、等価抵抗Rcは大きくなることがわかる。また、力率が1に近づくほど等価抵抗Rcが大きくなることから、式(14)より、電力一定制御のもとでは、力率が1に近づくほど(つまり等価抵抗Rcが大きくなるほど)入力電流Iは小さくなることになる。
つまり、電力一定制御を行いながら補償量探索制御を行う場合は、力率が1に近づくほど、等価抵抗Rcは増加し、逆に入力電流Iは減少する。なお、等価抵抗Rcを調整することにより出力電力Pを調整できるため、等価抵抗Rcは電力制御パラメータと考えることもできる。
そこで、本実施形態では、リアクタンス補償量Lcを変化させながら補償電圧vcを生成・印加して、コンバータ3動作用のパラメータの1つである等価抵抗Rcの状態をみる。そして、等価抵抗Rcの状態が、完全共振状態のときに発生する状態となる場合に、そのときのLcの値を、最終的に設定すべき最適なリアクタンス補償量Lcとして決定する。これが、本実施形態の、常時パラメータ検出方式による補償量探索制御の概要である。
常時パラメータ検出方式による補償量探索制御は、具体的には、次のように行う。まず、リアクタンス補償量Lcをある基準値(初期値)Lcoに設定する。そして、その基準値Lcoに設定したリアクタンス補償量Lcに、正弦波状の外乱(本発明の第1の変化パターンの一例に相当)を少なくとも1周期分与える。つまり、リアクタンス補償量Lcを正弦波状に変化させる。なお、リアクタンス補償量Lcを変化させるということは、リアクタンス補償量Lcに基づいて生成される補償電圧vcの位相を変化させるということを意味する。
リアクタンス補償量Lcに対して正弦波状の外乱が与えられた場合、その外乱が与えられたリアクタンス補償量である外乱付与補償量Lcnは、次式(16)のように表される。
Lcn=Lc+sin(n・2π/N) ・・・(16)
上記式(16)において、nは自然数(n=1,2,3,・・・)、Nは、正弦波1周期中にリアクタンス補償量を変化させる総回数である。
従って、Lcがある値に設定されている場合に、そのLcに対して正弦波状の外乱を与えるということは、次のような手順を踏むことになる。
まず、Lc及びRcをそれぞれ初期値に設定して、それら初期値及び入力電流iに基づいて補償電圧vcを算出し、実際に受電部2へ印加する。
補償電圧vcを印加したら、そのときの出力電流及び出力電圧を検出して、それら検出値から出力電力Pを演算する。そして、その出力電力Pと、予め設定された目標電力Poとを比較して、出力電力Pが目標電力Poに一致するように、電力制御パラメータである等価抵抗Rcの値を補正演算する。補正演算したRcの値は、メモリに記憶しておく。また、入力電流iの検出も行う。また、Lcに対する外乱付与も行う。即ち、まずn=1として、式(16)により、外乱付与補償量Lc1=Lc+sin(2π/N)を得る。そして、検出した入力電流i、外乱付与補償量Lc1、及び補正演算されたRcに基づいて、補償電圧vcを算出し、その補償電圧vcを実際に生成して受電部2に印加する。
補償電圧vcを演算して印加する毎に、上記同様の処理を行って、Rcを補正演算すると共にLcを変化させていく。即ち、上記のようにn=1として補償電圧vcを演算、印加した後は、そのときの出力電流及び出力電圧を検出して、それら検出値から出力電力Pを演算する。そして、その出力電力Pと、予め設定された目標電力Poとを比較して、出力電力Pが目標電力Poに一致するように等価抵抗Rcの値を補正演算し、メモリに記憶する。また、入力電流iの検出も行う。また、Lcに対する外乱付与も行う。即ち、n=2として(つまりnを1つインクリメントして)、式(16)により、外乱付与補償量Lc2=Lc+sin(2・2π/N)を得る。そして、検出した入力電流i、外乱付与補償量Lc2、及び補正演算されたRcに基づいて、補償電圧vcを算出し、その補償電圧vcを実際に生成して受電部2に印加する。
その後も同様に、補償電圧vnを印加する毎に、入力電流iの検出、等価抵抗Rcの補正演算・記憶、nのインクリメントによる外乱付与補償量Lcnの更新等を行って、補正電圧vnを再演算(更新)する。そして、受電部2に印加する補償電圧vnを、その更新した補正電圧vnに切り替える。これを、n=1〜Nまで繰り返し行う。これにより、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して正弦波状の外乱が1周期分付与されることになる。また、リアクタンス補償量Lcが正弦波状に変化する過程における等価抵抗Rcの値(変化)も、正弦波1周期分取得される。
そして、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して上記のように正弦波状の外乱を1周期分与える毎に、前半周期の等価抵抗Rcの積分値(面積)Aと、後半周期の等価抵抗Rcの積分値(面積)Bとを比較する。なお、ここでいう積分値(面積)とは、各外乱付与補償量Lcn毎にメモリに記憶した等価抵抗Rcの総和(各半周期内での総和)である。
仮に、現在のリアクタンス補償量Lcが既にLc=Lrとなっている場合、つまり既に共振状態になっている場合は、そのLcの値を増加させても減少させても、いずれも残存リアクタンス成分Lrとの差が大きくなって、共振からずれていくことになる。
そのため、既にLc=Lrの共振状態になっている場合は、図4(b)の中央部に例示するように、Lcを正弦波状に変化させた場合における前半周期の等価抵抗Rcの値は、Lcが増加してLrから離れていくにしたがって小さくなり、その後Lcが減少してLrに近づいていくにしたがって再び大きくなる。また、後半周期の等価抵抗Rcの値は、Lcが減少してLrから離れていくにしたがって小さくなり、その後Lcが増加してLrに近づいていくにしたがって再び大きくなる。等価抵抗Rcは、Lc=Lrのときに最大値をとり、LcとLrとの差が大きくなるほど等価抵抗Rcは小さくなる。
そのため、既にLc=Lrとなっている場合は、そのLcを正弦波状に1周期分変化させたときの前半周期の等価抵抗Rcの面積Aと後半周期の等価抵抗Rcの面積Bは、同じ面積(A=B)となる。
一方、現在設定されているリアクタンス補償量Lcが残存リアクタンス成分Lrよりも小さい場合は(Lc<Lr)、その現在のLcに正弦波状の外乱を加えると、等価抵抗Rcは図4(b)の左側に例示するように変化する。即ち、Lcが増加していくと、LcはLrに近づいていく(つまり共振状態に近づいていく)ため、等価抵抗Rcは増加していく。逆に、Lcが減少していくと、LcはLrから離れていくため、等価抵抗Rcは減少していく。
そのため、Lc<Lrとなっている場合は、そのLcを正弦波状に1周期分変化させた場合における、前半周期の等価抵抗Rcの面積Aと後半周期の等価抵抗Rcの面積Bは異なり、面積A>面積Bとなる。これは言い換えれば、1周期分の積分結果が面積A>面積Bとなったということは、現在設定されているリアクタンス補償量Lcは実際の残存リアクタンス成分Lrよりも小さい、ということを示している。
そこで、本実施形態では、設定されているリアクタンス補償量Lcに正弦波状の外乱を1周期分与えた結果、前半周期の等価抵抗Rcの面積Aが後半周期の等価抵抗Rcの面積Bよりも大きかった場合は、リアクタンス補償量Lcの設定値を、現在の設定値よりも大きい値に更新する。具体的には、例えば両面積の差(A−B)に所定のゲインGpiを乗じることによりLcの変化分ΔLcを算出する。そして、その算出したΔLcを現在の設定値Lcに加算することで、新たなリアクタンス補償量Lcを算出する。
なお、現在設定されているリアクタンス補償量Lcを面積差(A−B)に基づいて具体的にどのように増加させるかについては、上記方法に限らず種々の方法が考えられる。例えば、現在設定されているLcと面積差(A−B)をもとに、基準値Lcoに対する加算値をΔLcとして演算し、その演算したΔLcを基準値Lcoに加算することによってLcを更新するようにしてもよい。その他、適切にLcを更新する(実際のLrに近づける)ことができる限り、面積差(A−B)に基づくLcの更新演算方法は適宜決めることができる。
このようにして更新された新たなリアクタンス補償量Lcは、Lc>Lrとなっていない限り、実際の残存リアクタンス成分Lrに近づいているはずである。
そして、更新された新たなリアクタンス補償量Lcに対して、再び、正弦波状の外乱を1周期分与え、前半周期の等価抵抗Rcの積分値(面積A)と後半周期の等価抵抗Rcの積分値(面積B)を比較する。そして、両者の差(A−B)に基づいて、上記同様、ΔLcを演算して、Lcの設定値を更新する。A>Bの状態が続く限り、Lcの設定値を徐々に(ΔLcずつ)大きくしていくことで、Lcの値をLrに到達させていく。
一方、現在設定されているリアクタンス補償量Lcが残存リアクタンス成分Lrよりも大きい場合は(Lc>Lr)、その現在のLcに正弦波状の外乱を加えると、等価抵抗Rcは図4(b)の右側に例示するように変化する。即ち、Lcが増加していくと、LcはLrから離れていく(つまり共振状態から遠ざかっていく)ため、等価抵抗Rcは減少していく。逆に、Lcが減少していくと、LcはLrに近づいていくため、等価抵抗Rcは増加していく。
そのため、Lc>Lrとなっている場合は、そのLcを正弦波状に1周期分変化させた場合における、前半周期の等価抵抗Rcの面積Aと後半周期の等価抵抗Rcの面積Bは異なり、面積A<面積Bとなる。これは言い換えれば、1周期分の積分結果が面積A<面積Bとなったということは、現在設定されているリアクタンス補償量Lcは実際の残存リアクタンス成分Lrよりも大きい、ということを示している。
そこで、本実施形態では、設定されているリアクタンス補償量Lcに正弦波状の外乱を1周期分与えた結果、前半周期の等価抵抗Rcの面積Aが後半周期の等価抵抗Rcの面積Bよりも小さかった場合は、リアクタンス補償量Lcの設定値を、現在の設定値よりも小さい値に更新する。具体的には、A>Bの場合と同様、両面積の差(A−B)に所定のゲインGpiを乗じることによりLcの変化分ΔLcを算出する。そして、その算出したΔLcを現在の設定値Lcから減算することで、新たなリアクタンス補償量Lcを算出する。なお、ΔLcとして正の値を算出する構成にしている場合は、現在の設定値LcからΔLcを減算させればよく、ΔLcとして負の値を算出する構成にしている場合は、現在の設定値LcにΔLcを加算すればよい。いずれにおいても、結果として、リアクタンス補償量Lcは現在の設定値よりも低い値に更新されることになる。
このようにして更新された新たなリアクタンス補償量Lcは、Lc<Lrとなっていない限り、実際の残存リアクタンス成分Lrに近づいているはずである。
そして、更新された新たなリアクタンス補償量Lcに対して、再び、正弦波状の外乱を1周期分与え、前半周期の等価抵抗Rcの積分値(面積A)と後半周期の等価抵抗Rcの積分値(面積B)を比較する。そして、両者の差(A−B)に基づいて、上記同様、ΔLcを演算して、Lcの設定値を更新する。A<Bの状態が続く限り、Lcの設定値を徐々に(ΔLcずつ)小さくしていくことで、Lcの値をLrに到達させていく。
このように、常時パラメータ検出方式による補償量探索制御では、現在設定されているLcに正弦波状の外乱を加えて等価抵抗Rcの前半周期の積分値(面積A)と後半周期の積分値(面積B)を比較し、A>BならばLcをΔLcずつ増加させ、逆にA<BならばLcをΔLcずつ減少させていくことで、Lcを実際の残存リアクタンス成分Lrに一致させていく。そして、A=Bとなったとき、Lcが実際の残存リアクタンス成分Lrに一致したものとして、その場合は現在設定されているLcをそのまま使用して補償電圧vcを生成、印加する。
上述したような常時パラメータ検出方式による補償量探索制御を行って、リアクタンス補償量Lcの最適値を探索し、その最適なリアクタンス補償量Lcに基づく補償電圧vcを受電部2に印加することで、受電部2に残存リアクタンス成分Lrがあってもそれを打ち消して全体として共振状態(完全共振又はそれに近い状態)にすることができる。そして、その補償電圧vcの印加により、受電部2からコンバータ3へ入力される電流と電圧の位相を一致させることができ、力率1での装置運転が実現される。
ここで、常時パラメータ検出方式による補償量探索制御を実現するために制御器14内に設けられている、パラメータ演算部20の構成について、図4(c)を用いて説明する。制御器14は、主に、常時パラメータ検出方式による補償量探索制御を実現する機能と、その補償量探索機能により設定されたリアクタンス補償量Lcと等価抵抗Rc、及び入力電流検出器11により検出された電流振幅Iと電流位相θに基づいて補償電圧vcを算出する機能を備えている。このうち、常時パラメータ検出方式による補償量探索制御を実現する機能は、制御器14内に設けられているパラメータ演算部20により実現される。
図4(c)に示すように、パラメータ演算部20は、乗算器21と、電力指令値生成部22と、減算器23と、第1PI制御部24と、正弦波外乱生成部25と、Rc面積差計算部26と、第2PI制御部27と、加算器28とを備える。
乗算器21は、出力電流検出器12により検出された出力電流と出力電圧検出器13により検出された出力電圧とを乗算することにより、出力電力Pを演算する。電力指令値生成部22は、出力電力Pの目標値である目標電力Poを生成する。減算器23は、乗算器21で演算された出力電力P(実際の出力電力)から目標電力Poを減算することにより両者の差分(電力偏差)を演算する。第1PI制御部24は、減算器23で演算された電力偏差に基づき、その電力偏差が0となるように等価抵抗Rcを補正演算する。本実施形態では、既述の通り、電力一定制御が行われる。第1PI制御部24は、その電力一定制御を実現するための機能ブロックである。
正弦波外乱生成部25は、正弦波信号を生成する。Rc面積差計算部26は、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して正弦波状の外乱が1周期分付与される毎に、その1周期のうち前半周期のRcの面積Aと後半周期のRcの面積Bとの差であるRc面積差を演算する。
第2PI制御部27は、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して正弦波状の外乱が1周期分付与される毎に、Rc面積差計算部26により演算されたRc面積差に基づいて、そのRc面積差が0となるようにリアクタンス補償量Lcを更新する。
加算器28は、第2PI制御部27にてリアクタンス補償量Lcが更新演算される毎に、その演算された新たなリアクタンス補償量Lcに対して、正弦波外乱生成部25からの正弦波信号に基づいて正弦波状の外乱を付与する。具体的には、式(16)を用いて説明したように、正弦波信号に従って外乱付与補償量Lcnを順次生成していく(1周期あたりN個生成)。
なお、リアクタンス補償量Lcに対して正弦波状の外乱を与える具体的方法は、加算器28を用いる方法に限定されない。また、上記式(16)に示す演算にて正弦波状の外乱を与えることもあくまでも一例である。上記式(16)による外乱付与に限らず、また加算器28を用いた外乱付与に限らず、他の種々の演算方法によって正弦波状の外乱を与えるようにしてもよい。外乱の振幅(本例では正弦波の振幅)についても適宜決めることができる。
加算器28で外乱付与補償量Lcnが生成される毎に(つまり現在設定されているLcが正弦波状にLc1からLcNまで変化していく毎に)、その生成されたLcnとそのときの等価抵抗Rcと入力電流iに基づいて補償電圧vcが演算され、受電部2に印加される。そして、そのときの出力電力Pが乗算器21で演算され、その出力電力Pと目標電力Poとの差に基づいて第1PI制御部24により等価抵抗Rcが新たに補正演算される。つまり、LcnがLc1からLcNまで正弦波状に変化していく毎に等価抵抗Rcが補正演算される。そして、等価抵抗Rcが演算される毎に、その演算された等価抵抗RcはRc面積差計算部26内のメモリに記憶され、積分(面積算出)に用いられる。
そして、加算器28による、現在のLc設定値に対する正弦波1周期分の外乱付与が終わると、第2PI制御部27によって、Rc面積差計算部26により演算されたRc面積差に基づいて、リアクタンス補償量Lcが更新演算される。このとき、既述の通り、Rc面積差が0であった場合は、リアクタンス補償量Lcは、現在設定されている値がそのまま維持される。一方、Rc面積差が正(A>B)だった場合はリアクタンス補償量Lcは現在の値よりも大きい値に更新され、Rc面積差が負(A<B)だった場合はリアクタンス補償量Lcは現在の値よりも小さい値に更新される。このようにしてリアクタンス補償量Lcが更新(又は現状維持)された後は、再び、加算器28によって、その更新後の新たなリアクタンス補償量Lcに対して上記同様に正弦波状外乱が1周期分付与される。そして、その1周期におけるRc面積差に応じてリアクタンス補償量Lcがさらに更新演算される。このような更新演算が繰り返し行われることによって、リアクタンス補償量Lcが最適値(実際の残存リアクタンス成分Lrと同じ値)に到達していく。
なお、コンバータ3は、常時パラメータ検出方式による補償量探索制御を、コンバータ3の起動中は常時行う。起動中に常時行うことにより、仮に、起動中に受電部2の残存リアクタンス成分Lrに変動が生じたとしても、その変動に追随してリアクタンス補償量Lcも常に最適な値に合わせることができる。これにより、コンバータ3の起動中、常時、完全共振状態(またはそれに近い状態)を維持することができる。後述する第2〜第4実施形態の各補償量探索制御についても同様であり、コンバータ3の起動中は常時行う。
(6)第1実施形態の効果
以上説明したように、本第1実施形態の受電装置1では、リアクタンス補償量Lcに正弦波状の外乱を付与することによって、補償電圧vcの位相を変化させる。そして、そのように変化させたときの、等価抵抗Rcの状態に基づいて、リアクタンス補償量Lcの最適値が探索される。そのため、受電部2内の残存リアクタンス成分Lrが種々の要因で変化しても、実際の残存リアクタンス成分Lrに応じた適切な補償電圧vcを受電部2に印加することができる。
つまり、本第1実施形態の受電装置1によれば、素子ばらつき、温度、経年変化等の種々の要因によって2次コイル5のインダクタンスLsが変化(ひいては受電部2内の残存リアクタンスLrが変化)しても、受電装置1全体として、1次コイル150に流れる交流電流の周波数での共振を容易且つ適切に発生させることができる。
特に、本第1実施形態では、現在設定されているリアクタンス補償量Lcを正弦波状に変化させながら補償電圧vcを生成、印加してみて、正弦波1周期における、等価抵抗Rcの前半周期の積分値(面積A)と後半周期(面積B)とを算出する。そして、両面積A,Bを比較することで、共振の有無を判断する。さらに、両面積A,Bが異なる場合は、両者の差に応じて、リアクタンス補償量Lcが適切な方向へ更新される。そのため、リアクタンス補償量Lcの最適値を容易且つ高い精度で算出することができる。
また、本第1実施形態では、電力一定制御を用いているが、その場合、リアクタンス補償量Lcが変化すると(ひいては補償電圧vcが変化すると)それに応じて等価抵抗Rcも変化する。そのため、物理量として等価抵抗Rcを用いることで、リアクタンス補償量Lcの最適値を適切に探索することができる。
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、補償量探索制御の具体的方法として、常時パラメータ検出方式による補償量探索制御を例に挙げて説明した。これに対し、本第2実施形態では、補償量探索制御の具体的方法の1つである、常時電流検出方式(電力一定制御有り)による補償量探索制御について説明する。
常時電流検出方式(電力一定制御有り)による補償量探索制御においても、リアクタンス補償量Lcの設定値に対して正弦波状の外乱を印加する。ただし、第1実施形態では等価抵抗Rcを半周期毎に積分したのに対し、本実施形態では、入力電流iを半周期毎に積分する。そして、その半周期毎の積分値(面積)の差に基づいて、リアクタンス補償量Lcを更新演算する。
電力一定制御のもとでは、図4(a)及び式(14)を用いて説明したように、(Lr−Lc)が0に近づくほど、即ち力率が1に近くなるほど、等価抵抗Rcが大きくなって、入力電流Iは小さくなる。
そこで、本第2実施形態では、リアクタンス補償量Lcを変化させながら、出力電力Pが一定になるように等価抵抗Rcを調整しつつ、入力電流iの状態をみる。そして、入力電流iの状態が、完全共振状態のときに発生する状態となる場合に、そのときのLcの値を、最終的に設定すべき最適なリアクタンス補償量Lcとして決定する。これが、本第2実施形態の、常時電流検出方式(電力一定制御有り)による補償量探索制御の概要である。
常時電流検出方式(電力一定制御有り)による補償量探索制御は、具体的には、次のように行う。まず、リアクタンス補償量Lcをある基準値(初期値)Lcoに設定する。そして、その基準値Lcoに設定したリアクタンス補償量Lcに、正弦波状の外乱を少なくとも1周期分与える。つまり、リアクタンス補償量Lcを正弦波状に変化させる。
リアクタンス補償量Lcに対する正弦波状の外乱の付与は、第1実施形態と同様に行う。つまり、第1実施形態において式(16)を用いて説明したように、1周期中に2π/Nずつ計N回変化させる。具体的には、次のような手順を踏むことになる。
まず、Lc及びRcをそれぞれ初期値に設定して、それら初期値及び入力電流iに基づいて補償電圧vcを算出し、実際に受電部2へ印加する。
補償電圧vcを印加したら、入力電流iを検出し、その値をメモリに記憶しておく。即ち、本第2実施形態では、制御器14は、入力電流検出器11から、電流振幅Im及び電流位相θに加えて、入力電流iの値そのものも取得して、メモリに記憶する。
また、出力電流及び出力電圧を検出して、それら検出値から出力電力Pを演算する。そして、その出力電力Pと目標電力Poとを比較して、出力電力Pが目標電力Poに一致するように、電力制御パラメータである等価抵抗Rcの値を補正演算する。
また、Lcに対する外乱付与を行う。即ち、まずn=1として、式(16)により、外乱付与補償量Lc1=Lc+sin(2π/N)を得る。そして、検出した入力電流i、外乱付与補償量Lc1、及び補正演算されたRcに基づいて、補償電圧vcを算出し、その補償電圧vcを実際に生成して受電部2に印加する。
補償電圧vcを演算して印加する毎に、上記同様の処理を行って、入力電流iを検出・記憶すると共に、Rcを補正演算し且つLcを変化させていく。即ち、上記のようにn=1として補償電圧vcを演算、印加した後は、そのときの入力電流iを検出してメモリに記憶する。さらに、出力電流及び出力電圧を検出して、それら検出値から出力電力Pを演算する。そして、その出力電力Pと、予め設定された目標電力Poとを比較して、出力電力Pが目標電力Poに一致するように等価抵抗Rcの値を補正演算する。そして、Lcに対する外乱付与を再び行う。即ち、n=2として(つまりnを1つインクリメントして)、式(16)により、外乱付与補償量Lc2=Lc+sin(2・2π/N)を得る。そして、検出した入力電流i、外乱付与補償量Lc2、及び補正演算されたRcに基づいて、補償電圧vcを算出し、その補償電圧vcを実際に生成して受電部2に印加する。
その後も同様に、補償電圧vnを印加する毎に、入力電流iの検出とメモリへの記憶、等価抵抗Rcの補正演算、nのインクリメントによる外乱付与補償量Lcnの更新等を行って、補正電圧vnを再演算(更新)する。そして、受電部2に印加する補償電圧vnを、その更新した補正電圧vnに切り替える。これを、n=1〜Nまで繰り返し行う。これにより、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して正弦波状の外乱が1周期分付与されることになる。また、リアクタンス補償量Lcが正弦波状に変化する過程における入力電流iの値(変化)も、正弦波1周期分取得される。
そして、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して上記のように正弦波状の外乱を1周期分与える毎に、前半周期の入力電流iの積分値(面積)Aと、後半周期の入力電流iの積分値(面積)Bとを比較する。なお、ここでいう積分値(面積)とは、各外乱付与補償量Lcn毎にメモリに記憶した入力電流iの総和(各半周期内での総和)である。
仮に、既にLc=Lrの共振状態になっている場合は、図5(a)の中央部に例示するように、Lcを正弦波状に変化させた場合における前半周期の入力電流iの値は、Lcが増加してLrから離れていくにしたがって大きくなり、その後Lcが減少してLrに近づいていくにしたがって再び小さくなる。また、後半周期の入力電流iの値は、Lcが減少してLrから離れていくにしたがって大きくなり、その後Lcが増加してLrに近づいていくにしたがって再び小さくなる。入力電流iは、Lc=Lrのときに最小値となり、LcとLrとの差が大きくなるほど入力電流iは大きくなる。
そのため、既にLc=Lrとなっている場合は、そのLcを正弦波状に1周期分変化させたときの前半周期の入力電流iの面積Aと後半周期の入力電流iの面積Bは、同じ面積(A=B)となる。
一方、現在設定されているリアクタンス補償量Lcが残存リアクタンス成分Lrよりも小さい場合は(Lc<Lr)、その現在のLcに正弦波状の外乱を加えると、入力電流iは図5(a)の左側に例示するように変化する。即ち、Lcが増加していくと、LcはLrに近づいていく(つまり共振状態に近づいていく)ため、入力電流iは減少していく。逆に、Lcが減少していくと、LcはLrから離れていくため、入力電流iは増加していく。
そのため、Lc<Lrとなっている場合は、そのLcを正弦波状に1周期分変化させた場合における、前半周期の入力電流iの面積Aと後半周期の入力電流iの面積Bは異なり、面積A<面積Bとなる。これは言い換えれば、1周期分の入力電流iの積分結果が面積A<面積Bとなったということは、現在設定されているリアクタンス補償量Lcは実際の残存リアクタンス成分Lrよりも小さい、ということを示している。
そこで、本実施形態では、設定されているリアクタンス補償量Lcに正弦波状の外乱を1周期分与えた結果、前半周期の入力電流iの面積Aが後半周期の入力電流iの面積Bよりも小さかった場合は、リアクタンス補償量Lcの設定値を、現在の設定値よりも大きい値に更新する。具体的には、例えば両面積の差(A−B)に所定のゲインGpiを乗じることによりLcの変化分ΔLcを算出する。そして、その算出したΔLcを現在の設定値Lcに加算することで、新たなリアクタンス補償量Lcを算出する。
なお、現在設定されているリアクタンス補償量Lcを面積差(A−B)に基づいて具体的にどのように増加させるかについては、上記方法に限らず、第1実施形態でも説明したように種々の方法が考えられる。つまり、適切にLcを更新する(実際のLrに近づける)ことができる限り、面積差(A−B)に基づくLcの更新演算方法は適宜決めることができる。
このようにして更新された新たなリアクタンス補償量Lcは、Lc>Lrとなっていない限り、実際の残存リアクタンス成分Lrに近づいているはずである。
そして、更新された新たなリアクタンス補償量Lcに対して、再び、正弦波状の外乱を1周期分与え、前半周期の入力電流iの積分値(面積A)と後半周期の入力電流iの積分値(面積B)を比較する。そして、両者の差(A−B)に基づいて、上記同様、ΔLcを演算して、Lcの設定値を更新する。A<Bの状態が続く限り、Lcの設定値を徐々に(ΔLcずつ)大きくしていくことで、Lcの値をLrに到達させていく。
一方、現在設定されているリアクタンス補償量Lcが残存リアクタンス成分Lrよりも大きい場合は(Lc>Lr)、その現在のLcに正弦波状の外乱を加えると、入力電流iは図5(a)の右側に例示するように変化する。即ち、Lcが増加していくと、LcはLrから離れていく(つまり共振状態から遠ざかっていく)ため、入力電流iは増加していく。逆に、Lcが減少していくと、LcはLrに近づいていくため、入力電流iは減少していく。
そのため、Lc>Lrとなっている場合は、そのLcを正弦波状に1周期分変化させた場合における、前半周期の入力電流iの面積Aと後半周期の入力電流iの面積Bは異なり、面積A>面積Bとなる。これは言い換えれば、1周期分の入力電流iの積分結果が面積A>面積Bとなったということは、現在設定されているリアクタンス補償量Lcは実際の残存リアクタンス成分Lrよりも大きい、ということを示している。
そこで、本実施形態では、設定されているリアクタンス補償量Lcに正弦波状の外乱を1周期分与えた結果、前半周期の入力電流iの面積Aが後半周期の入力電流iの面積Bよりも大きかった場合は、リアクタンス補償量Lcの設定値を、現在の設定値よりも小さい値に更新する。具体的には、A<Bの場合と同様、両面積の差(A−B)に所定のゲインGpiを乗じることによりLcの変化分ΔLcを算出する。そして、その算出したΔLcを現在の設定値Lcから減算する。これにより、リアクタンス補償量Lcは現在の設定値よりも低い値に更新されることになる。
このようにして更新された新たなリアクタンス補償量Lcは、Lc<Lrとなっていない限り、実際の残存リアクタンス成分Lrに近づいているはずである。
そして、更新された新たなリアクタンス補償量Lcに対して、再び、正弦波状の外乱を1周期分与え、前半周期の入力電流iの積分値(面積A)と後半周期の入力電流iの積分値(面積B)を比較する。そして、両者の差(A−B)に基づいて、上記同様、ΔLcを演算して、Lcの設定値を更新する。A>Bの状態が続く限り、Lcの設定値を徐々に(ΔLcずつ)小さくしていくことで、Lcの値をLrに到達させていく。
このように、常時電流検出方式(電力一定制御有り)による補償量探索制御では、現在設定されているLcに正弦波状の外乱を加えて入力電流iの前半周期の積分値(面積A)と後半周期の積分値(面積B)を比較し、A<BならばLcをΔLcずつ増加させ、逆にA>BならばLcをΔLcずつ減少させていくことで、Lcを実際の残存リアクタンス成分Lrに一致させていく。そして、A=Bとなったとき、Lcが実際の残存リアクタンス成分Lrに一致したものとして、その場合は現在設定されているLcをそのまま使用して補償電圧vcを生成、印加する。
上述したような常時電流検出方式(電力一定制御有り)による補償量探索制御を行って、リアクタンス補償量Lcの最適値を探索し、その最適なリアクタンス補償量Lcに基づく補償電圧vcを受電部2に印加することで、受電部2に残存リアクタンス成分Lrがあってもそれを打ち消して全体として共振状態(完全共振又はそれに近い状態)にすることができる。そして、その補償電圧vcの印加により、受電部2からコンバータ3へ入力される電流と電圧の位相を一致させることができ、力率1での装置運転が実現される。
ここで、常時電流検出方式(電力一定制御有り)による補償量探索制御を実現するために制御器14内に設けられている、パラメータ演算部30の構成について、図5(b)を用いて説明する。本第2実施形態において、常時電流検出方式(電力一定制御有り)による補償量探索制御を実現する機能は、制御器14内に設けられているパラメータ演算部30により実現される。
図5(b)に示すように、本第2実施形態のパラメータ演算部30は、乗算器31と、電力指令値生成部32と、減算器33と、第1PI制御部34と、I面積差計算部35と、第2PI制御部36と、正弦波外乱生成部37と、加算器38とを備える。
このうち、乗算器31、電力指令値生成部32、減算器33、及び第1PI制御部34は、第1実施形態のパラメータ演算部20(図4(c)参照)における乗算器21、電力指令値生成部22、減算器23、及び第1PI制御部24と全く同じであるため、これらについての詳細説明は省略する。また、正弦波外乱生成部37も、第1実施形態の正弦波外乱生成部25と同じである。
I面積差計算部35は、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して正弦波状の外乱が1周期分付与される毎に、その1周期のうち前半周期の入力電流iの面積Aと後半周期の入力電流iの面積Bとの差であるI面積差を演算する。
第2PI制御部36は、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して正弦波状の外乱が1周期分付与される毎に、I面積差計算部35により演算されたI面積差に基づいて、そのI面積差が0となるようにリアクタンス補償量Lcを更新する。
加算器38は、第1実施形態の加算器28と同様、第2PI制御部36にてリアクタンス補償量Lcが更新演算される毎に、その演算された新たなリアクタンス補償量Lcに対して、正弦波外乱生成部37からの正弦波信号に基づいて正弦波状の外乱を付与する。具体的には、式(16)を用いて説明したように、正弦波信号に従って外乱付与補償量Lcnを順次生成していく(1周期あたりN個生成)。
加算器38で外乱付与補償量Lcnが生成される毎に(つまり現在設定されているLcが正弦波状にLc1からLcNまで変化していく毎に)、その生成されたLcnとそのときの等価抵抗Rcと入力電流iに基づいて補償電圧vcが演算され、印加される。そして、そのときの入力電流iが検出され、I面積差計算部35内のメモリに記憶されて、積分(面積算出)に用いられる。
加算器38による、現在のLc設定値に対する正弦波1周期分の外乱付与が終わると、第2PI制御部36によって、I面積差計算部35により演算されたI面積差に基づいて、リアクタンス補償量Lcが更新演算される。このとき、既述の通り、I面積差が0であった場合は、リアクタンス補償量Lcは、現在設定されている値がそのまま維持される。一方、I面積差が負(A<B)だった場合はリアクタンス補償量Lcは現在の値よりも大きい値に更新され、I面積差が正(A>B)だった場合はリアクタンス補償量Lcは現在の値よりも小さい値に更新される。このようにしてリアクタンス補償量Lcが更新された後は、再び、加算器38によって、その更新後の新たなリアクタンス補償量Lcに対して上記同様に正弦波状外乱が1周期分付与される。そして、その1周期におけるI面積差に応じてリアクタンス補償量Lcがさらに更新演算される。このような更新演算が繰り返し行われることによって、リアクタンス補償量Lcが最適値(実際の残存リアクタンス成分Lrと同じ値)に到達していく。
以上説明したように、本第2実施形態では、リアクタンス補償量Lcに正弦波状の外乱を付与することによって補償電圧vcの位相を変化させたときの、入力電流iの状態に基づいて、リアクタンス補償量Lcの最適値が探索される。そのため、第1実施形態と同様、素子ばらつき、温度、経年変化等の種々の要因によって2次コイル5のインダクタンスLsが変化(ひいては受電部2内の残存リアクタンスLrが変化)しても、受電装置1全体として、1次コイル150に流れる交流電流の周波数での共振を容易且つ適切に発生させることができる。
また、本第2実施形態でも、電力一定制御を用いているが、その場合、リアクタンス補償量Lcが変化すると(ひいては補償電圧vcが変化すると)それに応じて入力電流iも変化する。また、入力電流iの取得は比較的容易である。そのため、物理量として入力電流iを用いることで、リアクタンス補償量Lcの最適値を適切に探索することができる。
[第3実施形態]
本第3実施形態では、補償量探索制御の具体的方法の1つである、常時電流検出方式(電力一定制御無し)による補償量探索制御について説明する。
本第3実施形態では、制御器14は、電力一定制御を行わない。そのため、等価抵抗Rcは、例えば2次コイル5の抵抗成分Rsなどに基づいて予め決められた一定の値が用いられる。つまり、本第3実施形態では、等価抵抗Rcは一定値である。そのため、既述の式(13)から明らかなように、(Lr−Lc)が0に近づくほど、即ち力率が1に近くなるほど、入力電流Iは大きくなる。
そこで、本第3実施形態では、リアクタンス補償量Lcを変化させながら、入力電流iの状態をみる。そして、入力電流iの状態が、完全共振状態のときに発生する状態となる場合に、そのときのLcの値を、最終的に設定すべき最適なリアクタンス補償量Lcとして決定する。これが、本第3実施形態の、常時電流検出方式(電力一定制御無し)による補償量探索制御の概要である。
常時電流検出方式(電力一定制御無し)による補償量探索制御は、具体的には、次のように行う。まず、リアクタンス補償量Lcをある基準値(初期値)Lcoに設定する。そして、その基準値Lcoに設定したリアクタンス補償量Lcに、正弦波状の外乱を少なくとも1周期分与える。つまり、リアクタンス補償量Lcを正弦波状に変化させる。
リアクタンス補償量Lcに対する正弦波状の外乱の付与は、第1実施形態と同様に行う。つまり、第1実施形態において式(16)を用いて説明したように、1周期中に2π/Nずつ計N回変化させる。具体的には、次のような手順を踏むことになる。
まず、Lcを初期値に設定して、そのLcと、Rc(一定値)と、入力電流iとに基づいて、補償電圧vcを算出し、実際に受電部2へ印加する。補償電圧vcを印加したら、入力電流iを検出し、第2実施形態と同じようにその値をメモリに記憶しておく。
また、Lcに対する外乱付与を行う。即ち、まずn=1として、式(16)により、外乱付与補償量Lc1=Lc+sin(2π/N)を得る。そして、検出した入力電流i及び外乱付与補償量Lc1に基づいて、補償電圧vcを算出し、その補償電圧vcを実際に生成して受電部2に印加する。
補償電圧vcを演算して印加する毎に、上記同様の処理を行って、入力電流iを検出・記憶すると共に、Lcを変化させていく。即ち、上記のようにn=1として補償電圧vcを演算、印加した後は、そのときの入力電流iを検出してメモリに記憶する。そして、Lcに対する外乱付与を再び行う。即ち、n=2として(つまりnを1つインクリメントして)、式(16)により、外乱付与補償量Lc2=Lc+sin(2・2π/N)を得る。そして、検出した入力電流i、外乱付与補償量Lc2、及びRcに基づいて、補償電圧vcを算出し、その補償電圧vcを実際に生成して受電部2に印加する。
その後も同様に、補償電圧vnを印加する毎に、入力電流iの検出とメモリへの記憶、nのインクリメントによる外乱付与補償量Lcnの更新等を行って、補正電圧vnを再演算(更新)する。そして、受電部2に印加する補償電圧vnを、その更新した補正電圧vnに切り替える。これを、n=1〜Nまで繰り返し行う。これにより、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して正弦波状の外乱が1周期分付与されることになる。また、リアクタンス補償量Lcが正弦波状に変化する過程における入力電流iの値(変化)も、正弦波1周期分取得される。
そして、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して上記のように正弦波状の外乱を1周期分与える毎に、第2実施形態と同様、前半周期の入力電流iの積分値(面積)Aと、後半周期の入力電流iの積分値(面積)Bとを比較する。
仮に、既にLc=Lrの共振状態になっている場合は、図6(a)の中央部に例示するように、Lcを正弦波状に変化させた場合における前半周期の入力電流iの値は、Lcが増加してLrから離れていくにしたがって小さくなり、その後Lcが減少してLrに近づいていくにしたがって再び大きくなる。また、後半周期の入力電流iの値は、Lcが減少してLrから離れていくにしたがって小さくなり、その後Lcが増加してLrに近づいていくにしたがって再び大きくなる。入力電流iは、Lc=Lrのときに最大値となり、LcとLrとの差が大きくなるほど入力電流iは小さくなる。
そのため、既にLc=Lrとなっている場合は、そのLcを正弦波状に1周期分変化させたときの前半周期の入力電流iの面積Aと後半周期の入力電流iの面積Bは、同じ面積(A=B)となる。
一方、現在設定されているリアクタンス補償量Lcが残存リアクタンス成分Lrよりも小さい場合は(Lc<Lr)、その現在のLcに正弦波状の外乱を加えると、入力電流iは図6(a)の左側に例示するように変化する。即ち、Lcが増加していくと、LcはLrに近づいていく(つまり共振状態に近づいていく)ため、入力電流iは増加していく。逆に、Lcが減少していくと、LcはLrから離れていくため、入力電流iは減少していく。
そのため、Lc<Lrとなっている場合は、そのLcを正弦波状に1周期分変化させた場合における、前半周期の入力電流iの面積Aと後半周期の入力電流iの面積Bは異なり、面積A>面積Bとなる。これは言い換えれば、1周期分の入力電流iの積分結果が面積A>面積Bとなったということは、現在設定されているリアクタンス補償量Lcは実際の残存リアクタンス成分Lrよりも小さい、ということを示している。
そこで、本実施形態では、設定されているリアクタンス補償量Lcに正弦波状の外乱を1周期分与えた結果、前半周期の入力電流iの面積Aが後半周期の入力電流iの面積Bよりも大きかった場合は、リアクタンス補償量Lcの設定値を、現在の設定値よりも大きい値に更新する。具体的には、例えば両面積の差(A−B)に所定のゲインGpiを乗じることによりLcの変化分ΔLcを算出する。そして、その算出したΔLcを現在の設定値Lcに加算することで、新たなリアクタンス補償量Lcを算出する。
なお、現在設定されているリアクタンス補償量Lcを面積差(A−B)に基づいて具体的にどのように増加させるかについては、上記方法に限らず、第1実施形態でも説明したように種々の方法が考えられる。つまり、適切にLcを更新する(実際のLrに近づける)ことができる限り、面積差(A−B)に基づくLcの更新演算方法は適宜決めることができる。
このようにして更新された新たなリアクタンス補償量Lcは、Lc>Lrとなっていない限り、実際の残存リアクタンス成分Lrに近づいているはずである。
そして、更新された新たなリアクタンス補償量Lcに対して、再び、正弦波状の外乱を1周期分与え、前半周期の入力電流iの積分値(面積A)と後半周期の入力電流iの積分値(面積B)を比較する。そして、両者の差(A−B)に基づいて、上記同様、ΔLcを演算して、Lcの設定値を更新する。A>Bの状態が続く限り、Lcの設定値を徐々に(ΔLcずつ)大きくしていくことで、Lcの値をLrに到達させていく。
一方、現在設定されているリアクタンス補償量Lcが残存リアクタンス成分Lrよりも大きい場合は(Lc>Lr)、その現在のLcに正弦波状の外乱を加えると、入力電流iは図6(a)の右側に例示するように変化する。即ち、Lcが増加していくと、LcはLrから離れていく(つまり共振状態から遠ざかっていく)ため、入力電流iは減少していく。逆に、Lcが減少していくと、LcはLrに近づいていくため、入力電流iは増加していく。
そのため、Lc>Lrとなっている場合は、そのLcを正弦波状に1周期分変化させた場合における、前半周期の入力電流iの面積Aと後半周期の入力電流iの面積Bは異なり、面積A<面積Bとなる。これは言い換えれば、1周期分の入力電流iの積分結果が面積A<面積Bとなったということは、現在設定されているリアクタンス補償量Lcは実際の残存リアクタンス成分Lrよりも大きい、ということを示している。
そこで、本実施形態では、設定されているリアクタンス補償量Lcに正弦波状の外乱を1周期分与えた結果、前半周期の入力電流iの面積Aが後半周期の入力電流iの面積Bよりも小さかった場合は、リアクタンス補償量Lcの設定値を、現在の設定値よりも小さい値に更新する。具体的には、A>Bの場合と同様、両面積の差(A−B)に所定のゲインGpiを乗じることによりLcの変化分ΔLcを算出する。そして、その算出したΔLcを現在の設定値Lcから減算する。これにより、リアクタンス補償量Lcは現在の設定値よりも低い値に更新されることになる。
このようにして更新された新たなリアクタンス補償量Lcは、Lc<Lrとなっていない限り、実際の残存リアクタンス成分Lrに近づいているはずである。
そして、更新された新たなリアクタンス補償量Lcに対して、再び、正弦波状の外乱を1周期分与え、前半周期の入力電流iの積分値(面積A)と後半周期の入力電流iの積分値(面積B)を比較する。そして、両者の差(A−B)に基づいて、上記同様、ΔLcを演算して、Lcの設定値を更新する。A<Bの状態が続く限り、Lcの設定値を徐々に(ΔLcずつ)小さくしていくことで、Lcの値をLrに到達させていく。
このように、常時電流検出方式(電力一定制御無し)による補償量探索制御では、現在設定されているLcに正弦波状の外乱を加えて入力電流iの前半周期の積分値(面積A)と後半周期の積分値(面積B)を比較し、A>BならばLcをΔLcずつ増加させ、逆にA<BならばLcをΔLcずつ減少させていくことで、Lcを実際の残存リアクタンス成分Lrに一致させていく。そして、A=Bとなったとき、Lcが実際の残存リアクタンス成分Lrに一致したものとして、その場合は現在設定されているLcをそのまま使用して補償電圧vcを生成、印加する。
上述したような常時電流検出方式(電力一定制御無し)による補償量探索制御を行って、リアクタンス補償量Lcの最適値を探索し、その最適なリアクタンス補償量Lcに基づく補償電圧vcを受電部2に印加することで、受電部2に残存リアクタンス成分Lrがあってもそれを打ち消して全体として共振状態(完全共振又はそれに近い状態)にすることができる。そして、その補償電圧vcの印加により、受電部2からコンバータ3へ入力される電流と電圧の位相を一致させることができ、力率1での装置運転が実現される。
ここで、常時電流検出方式(電力一定制御無し)による補償量探索制御を実現するために制御器14内に設けられている、パラメータ演算部40の構成について、図6(b)を用いて説明する。本第3実施形態において、常時電流検出方式(電力一定制御無し)による補償量探索制御を実現する機能は、制御器14内に設けられているパラメータ演算部40により実現される。
図6(b)に示すように、本第3実施形態のパラメータ演算部40は、I面積差計算部41と、PI制御部42と、正弦波外乱生成部43と、加算器44とを備える。このうち正弦波外乱生成部43は、第1実施形態の正弦波外乱生成部25と同じである。
I面積差計算部41は、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して正弦波状の外乱が1周期分付与される毎に、その1周期のうち前半周期の入力電流iの面積Aと後半周期の入力電流iの面積Bとの差であるI面積差を演算する。PI制御部42は、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して正弦波状の外乱が1周期分付与される毎に、I面積差計算部41により演算されたI面積差に基づいて、そのI面積差が0となるようにリアクタンス補償量Lcを更新する。
加算器44は、第1実施形態の加算器28と同様、PI制御部42にてリアクタンス補償量Lcが更新演算される毎に、その演算された新たなリアクタンス補償量Lcに対して、正弦波外乱生成部43からの正弦波信号に基づいて正弦波状の外乱を付与する。具体的には、式(16)を用いて説明したように、正弦波信号に従って外乱付与補償量Lcnを順次生成していく(1周期あたりN個生成)。
加算器44で外乱付与補償量Lcnが生成される毎に(つまり現在設定されているLcが正弦波状にLc1からLcNまで変化していく毎に)、その生成されたLcnと等価抵抗Rcと入力電流iに基づいて補償電圧vcが演算され、印加される。そして、そのときの入力電流iが検出され、I面積差計算部41内のメモリに記憶されて、積分(面積算出)に用いられる。
加算器44による、現在のLc設定値に対する正弦波1周期分の外乱付与が終わると、PI制御部42によって、I面積差計算部41により演算されたI面積差に基づいて、リアクタンス補償量Lcが更新演算される。このとき、既述の通り、I面積差が0であった場合は、リアクタンス補償量Lcは、現在設定されている値がそのまま維持される。一方、I面積差が正(A>B)だった場合はリアクタンス補償量Lcは現在の値よりも大きい値に更新され、I面積差が負(A<B)だった場合はリアクタンス補償量Lcは現在の値よりも小さい値に更新される。このようにしてリアクタンス補償量Lcが更新された後は、再び、加算器44によって、その更新後の新たなリアクタンス補償量Lcに対して上記同様に正弦波状外乱が1周期分付与される。そして、その1周期におけるI面積差に応じてリアクタンス補償量Lcがさらに更新演算される。このような更新演算が繰り返し行われることによって、リアクタンス補償量Lcが最適値(実際の残存リアクタンス成分Lrと同じ値)に到達していく。
以上説明したように、本第3実施形態でも、第2実施形態と同様、リアクタンス補償量Lcに正弦波状の外乱を付与することによって補償電圧vcの位相を変化させたときの、入力電流iの状態に基づいて、リアクタンス補償量Lcの最適値が探索される。第2実施形態と異なるのは、主に、電力一定制御の有無である。そのため、第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
[第4実施形態]
本第4実施形態では、補償量探索制御の具体的方法の1つである、常時電力検出方式による補償量探索制御について説明する。
本第4実施形態では、第3実施形態と同様、制御器14は、電力一定制御を行わない。そのため、等価抵抗Rcは、第3実施形態と同様、一定値である。
等価抵抗Rcが一定値であるため、既述の式(13)から明らかなように、(Lr−Lc)が0に近づくほど、即ち力率が1に近くなるほど、入力電流Iは大きくなる。そして、入力電流Iが大きくなるほど、既述の式(14)から明らかなように、出力電力Pは増加する。つまり、電力一定制御を行わない場合、力率が1に近づくほど、入力電流は大きくなって出力電力Pも増加する。
そこで、本第4実施形態では、リアクタンス補償量Lcを変化させながら、出力電力Pの状態をみる。そして、出力電力Pの状態が、完全共振状態のときに発生する状態となる場合に、そのときのLcの値を、最終的に設定すべき最適なリアクタンス補償量Lcとして決定する。これが、本第4実施形態の、常時電力検出方式による補償量探索制御の概要である。
常時電力検出方式による補償量探索制御は、具体的には、次のように行う。まず、リアクタンス補償量Lcをある基準値(初期値)Lcoに設定する。そして、その基準値Lcoに設定したリアクタンス補償量Lcに、正弦波状の外乱を少なくとも1周期分与える。つまり、リアクタンス補償量Lcを正弦波状に変化させる。
リアクタンス補償量Lcに対する正弦波状の外乱の付与は、第1実施形態と同様に行う。つまり、第1実施形態において式(16)を用いて説明したように、1周期中に2π/Nずつ計N回変化させる。具体的には、次のような手順を踏むことになる。
まず、Lcを初期値に設定して、そのLcと、Rc(一定値)と、入力電流iとに基づいて、補償電圧vcを算出し、実際に受電部2へ印加する。補償電圧vcを印加したら、出力電流と出力電圧に基づいて出力電力Pを算出し、メモリに記憶しておく。
また、Lcに対する外乱付与を行う。即ち、まずn=1として、式(16)により、外乱付与補償量Lc1=Lc+sin(2π/N)を得る。そして、検出した入力電流i及び外乱付与補償量Lc1に基づいて、補償電圧vcを算出し、その補償電圧vcを実際に生成して受電部2に印加する。
補償電圧vcを演算して印加する毎に、上記同様の処理を行って、出力電力Pを算出・記憶すると共に、Lcを変化させていく。即ち、上記のようにn=1として補償電圧vcを演算、印加した後は、そのときの出力電力Pを算出してメモリに記憶する。そして、Lcに対する外乱付与を再び行う。即ち、n=2として(つまりnを1つインクリメントして)、式(16)により、外乱付与補償量Lc2=Lc+sin(2・2π/N)を得る。そして、入力電流i、外乱付与補償量Lc2、及びRcに基づいて、補償電圧vcを算出し、その補償電圧vcを実際に生成して受電部2に印加する。
その後も同様に、補償電圧vnを印加する毎に、出力電力Pの算出とメモリへの記憶、nのインクリメントによる外乱付与補償量Lcnの更新等を行って、補正電圧vnを再演算(更新)する。そして、受電部2に印加する補償電圧vnを、その更新した補正電圧vnに切り替える。これを、n=1〜Nまで繰り返し行う。これにより、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して正弦波状の外乱が1周期分付与されることになる。また、リアクタンス補償量Lcが正弦波状に変化する過程における出力電力Pの値(変化)も、正弦波1周期分取得される。
そして、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して上記のように正弦波状の外乱を1周期分与える毎に、前半周期の出力電力Pの積分値(面積)Aと、後半周期の出力電力Pの積分値(面積)Bとを比較する。
仮に、既にLc=Lrの共振状態になっている場合は、図7(a)の中央部に例示するように、Lcを正弦波状に変化させた場合における前半周期の出力電力Pの値は、Lcが増加してLrから離れていくにしたがって小さくなり、その後Lcが減少してLrに近づいていくにしたがって再び大きくなる。また、後半周期の出力電力Pの値は、Lcが減少してLrから離れていくにしたがって小さくなり、その後Lcが増加してLrに近づいていくにしたがって再び大きくなる。出力電力Pは、Lc=Lrのときに最大値となり、LcとLrとの差が大きくなるほど出力電力Pは小さくなる。
そのため、既にLc=Lrとなっている場合は、そのLcを正弦波状に1周期分変化させたときの前半周期の入力電流iの面積Aと後半周期の入力電流iの面積Bは、同じ面積(A=B)となる。
一方、現在設定されているリアクタンス補償量Lcが残存リアクタンス成分Lrよりも小さい場合は(Lc<Lr)、その現在のLcに正弦波状の外乱を加えると、出力電力Pは図7(a)の左側に例示するように変化する。即ち、Lcが増加していくと、LcはLrに近づいていく(つまり共振状態に近づいていく)ため、出力電力Pは増加していく。逆に、Lcが減少していくと、LcはLrから離れていくため、出力電力Pは減少していく。
そのため、Lc<Lrとなっている場合は、そのLcを正弦波状に1周期分変化させた場合における、前半周期の出力電力Pの面積Aと後半周期の出力電力Pの面積Bは異なり、面積A>面積Bとなる。これは言い換えれば、1周期分の出力電力Pの積分結果が面積A>面積Bとなったということは、現在設定されているリアクタンス補償量Lcは実際の残存リアクタンス成分Lrよりも小さい、ということを示している。
そこで、本実施形態では、設定されているリアクタンス補償量Lcに正弦波状の外乱を1周期分与えた結果、前半周期の出力電力Pの面積Aが後半周期の出力電力Pの面積Bよりも大きかった場合は、リアクタンス補償量Lcの設定値を、現在の設定値よりも大きい値に更新する。具体的には、例えば両面積の差(A−B)に所定のゲインGpiを乗じることによりLcの変化分ΔLcを算出する。そして、その算出したΔLcを現在の設定値Lcに加算することで、新たなリアクタンス補償量Lcを算出する。
なお、現在設定されているリアクタンス補償量Lcを面積差(A−B)に基づいて具体的にどのように増加させるかについては、上記方法に限らず、第1実施形態でも説明したように種々の方法が考えられる。つまり、適切にLcを更新する(実際のLrに近づける)ことができる限り、面積差(A−B)に基づくLcの更新演算方法は適宜決めることができる。
このようにして更新された新たなリアクタンス補償量Lcは、Lc>Lrとなっていない限り、実際の残存リアクタンス成分Lrに近づいているはずである。
そして、更新された新たなリアクタンス補償量Lcに対して、再び、正弦波状の外乱を1周期分与え、前半周期の出力電力Pの積分値(面積A)と後半周期の出力電力Pの積分値(面積B)を比較する。そして、両者の差(A−B)に基づいて、上記同様、ΔLcを演算して、Lcの設定値を更新する。A>Bの状態が続く限り、Lcの設定値を徐々に(ΔLcずつ)大きくしていくことで、Lcの値をLrに到達させていく。
一方、現在設定されているリアクタンス補償量Lcが残存リアクタンス成分Lrよりも大きい場合は(Lc>Lr)、その現在のLcに正弦波状の外乱を加えると、出力電力Pは図7(a)の右側に例示するように変化する。即ち、Lcが増加していくと、LcはLrから離れていく(つまり共振状態から遠ざかっていく)ため、出力電力Pは減少していく。逆に、Lcが減少していくと、LcはLrに近づいていくため、出力電力Pは増加していく。
そのため、Lc>Lrとなっている場合は、そのLcを正弦波状に1周期分変化させた場合における、前半周期の出力電力Pの面積Aと後半周期の出力電力Pの面積Bは異なり、面積A<面積Bとなる。これは言い換えれば、1周期分の出力電力Pの積分結果が面積A<面積Bとなったということは、現在設定されているリアクタンス補償量Lcは実際の残存リアクタンス成分Lrよりも大きい、ということを示している。
そこで、本実施形態では、設定されているリアクタンス補償量Lcに正弦波状の外乱を1周期分与えた結果、前半周期の出力電力Pの面積Aが後半周期の出力電力Pの面積Bよりも小さかった場合は、リアクタンス補償量Lcの設定値を、現在の設定値よりも小さい値に更新する。具体的には、A>Bの場合と同様、両面積の差(A−B)に所定のゲインGpiを乗じることによりLcの変化分ΔLcを算出する。そして、その算出したΔLcを現在の設定値Lcから減算する。これにより、リアクタンス補償量Lcは現在の設定値よりも低い値に更新されることになる。
このようにして更新された新たなリアクタンス補償量Lcは、Lc<Lrとなっていない限り、実際の残存リアクタンス成分Lrに近づいているはずである。
そして、更新された新たなリアクタンス補償量Lcに対して、再び、正弦波状の外乱を1周期分与え、前半周期の出力電力Pの積分値(面積A)と後半周期の出力電力Pの積分値(面積B)を比較する。そして、両者の差(A−B)に基づいて、上記同様、ΔLcを演算して、Lcの設定値を更新する。A<Bの状態が続く限り、Lcの設定値を徐々に(ΔLcずつ)小さくしていくことで、Lcの値をLrに到達させていく。
このように、常時電力検出方式による補償量探索制御では、現在設定されているLcに正弦波状の外乱を加えて出力電力Pの前半周期の積分値(面積A)と後半周期の積分値(面積B)を比較し、A>BならばLcをΔLcずつ増加させ、逆にA<BならばLcをΔLcずつ減少させていくことで、Lcを実際の残存リアクタンス成分Lrに一致させていく。そして、A=Bとなったとき、Lcが実際の残存リアクタンス成分Lrに一致したものとして、その場合は現在設定されているLcをそのまま使用して補償電圧vcを生成、印加する。
上述したような常時電力検出方式による補償量探索制御を行って、リアクタンス補償量Lcの最適値を探索し、その最適なリアクタンス補償量Lcに基づく補償電圧vcを受電部2に印加することで、受電部2に残存リアクタンス成分Lrがあってもそれを打ち消して全体として共振状態(完全共振又はそれに近い状態)にすることができる。そして、その補償電圧vcの印加により、受電部2からコンバータ3へ入力される電流と電圧の位相を一致させることができ、力率1での装置運転が実現される。
ここで、常時電力検出方式による補償量探索制御を実現するために制御器14内に設けられている、パラメータ演算部50の構成について、図7(b)を用いて説明する。本第4実施形態において、常時電力検出方式による補償量探索制御を実現する機能は、制御器14内に設けられているパラメータ演算部50により実現される。
図7(b)に示すように、本第4実施形態のパラメータ演算部50は、乗算器51と、P面積差計算部52と、PI制御部53と、正弦波外乱生成部54と、加算器55とを備える。このうち正弦波外乱生成部54は、第1実施形態の正弦波外乱生成部25と同じである。また、乗算器51も、第1実施形態の乗算器21と同様、出力電流と出力電圧を乗算することにより出力電力Pを演算する。
P面積差計算部52は、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して正弦波状の外乱が1周期分付与される毎に、その1周期のうち前半周期の出力電力Pの面積Aと後半周期の出力電力Pの面積Bとの差であるP面積差を演算する。PI制御部53は、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して正弦波状の外乱が1周期分付与される毎に、P面積差計算部52により演算されたP面積差に基づいて、そのP面積差が0となるようにリアクタンス補償量Lcを更新する。
加算器55は、第1実施形態の加算器28と同様、PI制御部53にてリアクタンス補償量Lcが更新演算される毎に、その演算された新たなリアクタンス補償量Lcに対して、正弦波外乱生成部43からの正弦波信号に基づいて正弦波状の外乱を付与する。具体的には、式(16)を用いて説明したように、正弦波信号に従って外乱付与補償量Lcnを順次生成していく(1周期あたりN個生成)。
加算器55で外乱付与補償量Lcnが生成される毎に(つまり現在設定されているLcが正弦波状にLc1からLcNまで変化していく毎に)、その生成されたLcnと等価抵抗Rcと入力電流iに基づいて補償電圧vcが演算され、印加される。そして、そのときの出力電力Pが乗算器51にて演算され、P面積差計算部52内のメモリに記憶されて、積分(面積算出)に用いられる。
加算器55による、現在のLc設定値に対する正弦波1周期分の外乱付与が終わると、PI制御部53によって、P面積差計算部52により演算されたP面積差に基づいて、リアクタンス補償量Lcが更新演算される。このとき、既述の通り、P面積差が0であった場合は、リアクタンス補償量Lcは、現在設定されている値がそのまま維持される。一方、P面積差が正(A>B)だった場合はリアクタンス補償量Lcは現在の値よりも大きい値に更新され、P面積差が負(A<B)だった場合はリアクタンス補償量Lcは現在の値よりも小さい値に更新される。このようにしてリアクタンス補償量Lcが更新された後は、再び、加算器55によって、その更新後の新たなリアクタンス補償量Lcに対して上記同様に正弦波状外乱が1周期分付与される。そして、その1周期におけるP面積差に応じてリアクタンス補償量Lcがさらに更新演算される。このような更新演算が繰り返し行われることによって、リアクタンス補償量Lcが最適値(実際の残存リアクタンス成分Lrと同じ値)に到達していく。
以上説明したように、本第4実施形態では、リアクタンス補償量Lcに正弦波状の外乱を付与することによって補償電圧vcの位相を変化させたときの、出力電力Pの状態に基づいて、リアクタンス補償量Lcの最適値が探索される。そのため、第1実施形態と同様、素子ばらつき、温度、経年変化等の種々の要因によって2次コイル5のインダクタンスLsが変化(ひいては受電部2内の残存リアクタンスLrが変化)しても、受電装置1全体として、1次コイル150に流れる交流電流の周波数での共振を容易且つ適切に発生させることができる。
リアクタンス補償量Lcが変化すると(ひいては補償電圧vcが変化すると)それに応じて出力電力Pも変化する。また、出力電力Pの取得(演算)は比較的容易である。そのため、物理量として出力電力Pを用いることで、リアクタンス補償量Lcの最適値を適切に探索することができる。
[第5実施形態]
本第5実施形態では、補償量探索制御の具体的方法の1つである、起動時電流検出方式による補償量探索制御について説明する。
本第5実施形態では、制御器14は、電力一定制御を行わない。ただし、起動時電流検出方式においては、電力一定制御を行わないことは必須ではなく、電力一定制御を行いながらリアクタンス補償量Lcを探索することも可能である。
第3実施形態と同じように等価抵抗Rcをある一定値に定めると、既述の式(13)から明らかなように、(Lr−Lc)が0に近づくほど、即ち力率が1に近くなるほど、入力電流Iは大きくなる。
そこで、本実施形態では、リアクタンス補償量Lcを所定の範囲内でスイープ(本発明の第2の変化パターンの一例に相当)させる。即ち、リアクタンス補償量Lcを、予想される値よりも低い所定値から微少量ずつ増加させていくか、又は予想される値よりも高い所定値から微少量ずつ減少させていく。そして、微少量ずつ増加(又は減少)させる毎に、そのときのLc、Rc、及び入力電流iに基づいて、補償電圧vcを演算、印加して、その印加したときの入力電流iを検出する。入力電流iを検出したら、それをメモリに記憶させる。
そして、再びリアクタンス補償量Lcを微少量増加(又は減少)させて、そのLcと、Rc及び入力電流iに基づいて、補償電圧vcを演算、印加して、その印加したときの入力電流iを検出、記憶する。
このように、リアクタンス補償量Lcを微少量ずつスイープさせながら、都度、入力電流iを検出、記憶する。そして、入力電流iが最大値をとったときのリアクタンス補償量Lcの値を、最終的に設定すべき最適なリアクタンス補償量Lcとして決定する。例えば、リアクタンス補償量Lcを低い値から徐々に増加方向にスイープさせる場合は、LcがLrに近づくにつれて入力電流iは増加していき、LcがLrに一致すると入力電流iが最大値をとる。その後さらにLcを増加させてLrを越えていくと、入力電流iは減少に転じる。
そのため、リアクタンス補償量Lcを増加方向にスイープさせた場合は、入力電流iが増加から減少に転じる(つまり最大値をとる)タイミングにおけるLcの値が、設定すべき最適な値(残存リアクタンス成分Lrと同じ若しくは近い値)となる。リアクタンス補償量Lcを減少方向にスイープさせた場合も同様であり、入力電流iが減少から増加に転じる(つまり最小値をとる)タイミングにおけるLcの値が、設定すべき最適な値(残存リアクタンス成分Lrと同じ若しくは近い値)となる。
具体的な例を、図8に示す。図8に示すように、リアクタンス補償量Lcをスイープさせる範囲を、Loa〜Lobの範囲に設定する。この範囲は適宜決めることができるが、例えば、受電部2の残存リアクタンス成分Lrを推定して、その推定したLrを含む所定範囲内(例えばLrを中心とする所定範囲内)にすることができる。
そして、リアクタンス補償量Lcをスイープ範囲内の最小値Loaとして、補償電圧vcを生成、印加し、そのときの入力電流iを検出、記憶する。そして、リアクタンス補償量Lcを現在の値(Loa)から微少量(例えば予め設定したΔLc)増加させ、その増加後のLcに基づいて補償電圧vcを生成、印加して、そのときの入力電流iを検出、記憶する。そして、リアクタンス補償量Lcを現在の値からさらに微少量(ΔLc)増加させ、上記同様に補償電圧vcを生成、印加して入力電流iを検出、記憶する。このようにして、リアクタンス補償量Lcをスイープさせていき(本例では微少量ΔLcずつ増加させていき)、微少量ΔLc増加させる毎に上記処理を繰り返す。そして、リアクタンス補償量LcがLobに到達したら、それまでの入力電流iの変化に基づき、入力電流iが最大値ImaxのときのLcを検出する。そして、その入力電流iが最大値ImaxのときのLcを、最終的に設定すべきリアクタンス補償量Lcとして決定する。
なお、リアクタンス補償量Lcのスイープは、必ずしも、予め設定したスイープ範囲全体をスイープさせる必要はない。例えば、あるLcの値からスイープさせながら入力電流iをみていき、入力電流iが増加から減少に転じたこと(つまり最大値Imaxをとったこと)を検出したら、その時点でスイープを終了させて、その最大値ImaxをとったときのLcの値を最終的なリアクタンス補償量Lcとして確定するようにしてもよい。
このように、本第5実施形態の起動時電流検出方式による補償量探索制御では、リアクタンス補償量Lcをスイープさせながら入力電流iをみて、入力電流iが最大値をとるリアクタンス補償量Lcを探索する。そして、入力電流iが最大値をとったとき、そのときのLcの値を、最終的なリアクタンス補償量Lcとして確定する。
リアクタンス補償量Lcが確定すれば、その後はそのリアクタンス補償量Lcを用いて補償電圧vcを生成し、受電部2に印加することで、受電部2に残存リアクタンス成分Lrがあってもそれを打ち消して全体として共振状態(完全共振又はそれに近い状態)にすることができる。そして、その補償電圧vcの印加により、受電部2からコンバータ3へ入力される電流と電圧の位相を一致させることができ、力率1での装置運転が実現される。
本第5実施形態の起動時電流検出方式による補償量探索制御は、基本的には、コンバータ3の起動時にコンバータ3が実行する。コンバータ3は、起動時、上述した起動時電流検出方式による補償量探索制御を実行することで、リアクタンス補償量Lcの最適値を探索、確定する。そして、Lcの最適値を確定したら、その後は、その確定したリアクタンス補償量Lcを用いて、補償電圧vcを生成、印加する。
ただし、起動時に行うことは必須ではなく、起動後、所定時間経過後に実行してもよい。また、必ずしも、起動時にのみ補償量探索制御を実行しなければならないというわけではない。起動後であっても、コンバータ3の運転状態や負荷4の状態、負荷4への電力供給の要否などに応じて、適宜、本第5実施形態の補償量探索制御を実行して、リアクタンス補償量Lcの最適値を更新演算するようにしてもよい。
以上説明したように、本第5実施形態では、リアクタンス補償量Lcをスイープさせながら、入力電力iが最大値をとるリアクタンス補償量Lcを探索する。つまり、入力電流iの値自体をみながら、リアクタンス補償量Lcを探索する。そのため、リアクタンス補償量Lcの最適値を容易に探索することができる。
なお、本第5実施形態の起動時電流検出方式による補償量探索制御は、電力一定制御を行いながら実行することもできる。電力一定制御を行う場合、第2実施形態で説明したように、共振状態に近づけば近づくほど(つまりLcがLrに近づくほど)入力電流iは減少していき、逆に共振状態から離れれば離れるほど(つまりLcがLrから離れていくほど)入力電流iは増加していく。
そのため、電力一定制御のもとでは、リアクタンス補償量Lcをスイープさせながら入力電流iをみて、入力電流iが最小値をとるリアクタンス補償量Lcを探索すればよい。そして、入力電流iが最小値をとったとき、そのときのLcの値を、最終的なリアクタンス補償量Lcとして確定すればよい。
[他の実施形態]
(1)第1〜第4実施形態では、それぞれ補償量探索制御をコンバータ3の起動中に常時行うものとして説明したが、常時行うことは必須ではない。例えば、コンバータ3の起動中、所定の実行タイミングで実行するようにしてもよい。また例えば、不規則的なタイミングで実行してもよいし、定期的(間欠的)に実行するようにしてもよい。また例えば、第5実施形態と同じように、起動時にのみ(或いは起動から所定時間経過後に)1回だけ実行するようにしてもよい。
(2)電力一定制御を行わない場合は(第3〜第5実施形態)、リアクタンス補償量Lcが決まれば共振状態となる。そのため、リアクタンス補償量Lcの最適値が確定した後は、等価抵抗Rcを適宜設定することによって、所望の出力電力Pを得られるようにしてもよい。
リアクタンス補償量Lcの最適値が確定すると(Lc=Lrとなると)、既述の式(15)において、(LrーLc)の項は0になるため、式(15)より、出力電力Pは、次式(17)で表せる。
P=Vs2・Rc/(Rs+Rc)2 ・・・(17)
そのため、いったんリアクタンス補償量Lcの最適値が確定した後は、例えば、上記式(17)が最大値となるように等価抵抗Rcの値を設定することで、供給可能な最大の電力を負荷4へ供給することができる。また、任意の出力電力Pを得たい場合は、その出力電力Pに合った等価抵抗Rcを演算して設定すればよい。
(3)補償量探索制御において用いる外乱は、正弦波状の外乱に限定されない。外乱を加えることによって特定の物理量が変動してその変動に基づいてリアクタンス補償量Lcを適値に到達させていくことができる限り、どのような外乱を用いてもよい。
例えば、三角波、矩形波、その他の種々の外乱を用いることができる。また例えば、正・負の外乱を不規則的に与えてもよい。ただし好ましくは、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対して付与される正の外乱の総和と負の外乱の総和が同じになるようにするのが好ましい。上記実施形態で外乱として用いている正弦波は、正の期間(前半周期)と負の期間(後半周期)が同じで且つ各期間の総和(面積)も同じであるため、使用する外乱として適している。
また、上記実施形態で用いた正弦波状の外乱のような、周期的な外乱を与える場合、1周期分与えることは必須ではなく、2周期以上の所定周期分の外乱を与えて、その所定周期内における物理量の状態(例えば積分値)に基づいて、リアクタンス補償量Lcを適値に到達させていくようにしてもよい。
また、ステップ的な外乱を与えてもよい。例えば、現在設定されているリアクタンス補償量Lcに対し、所定値Lnの外乱を、正・負双方で少なくとも1回与える。即ち、Lcに+Lnの外乱を与えてLc+Lnとした場合と、Lcに−Lnの外乱を与えてLc−Lnとしたときの双方の物理量(入力電流i、出力電力P、等価抵抗Rcなど)を比較して、その比較結果に応じてLcを更新演算する(最適値に近づける)ようにしてもよい。
(4)第5実施形態では、起動時電流検出方式による補償量探索制御を説明したが、この補償量探索制御において、検出対象を入力電流i以外の他の物理量としてもよい。即ち、リアクタンス補償量Lcをスイープさせるとそれに伴って変化するような物理量があれば、上記第5実施形態と同じ要領で、その物理量の増減が変化する点におけるLcの値を最適値として確定することができる。
具体的には、例えば出力電力Pを用いることができる。電力一定制御を行わない場合、出力電力Pは、入力電流iと同様、リアクタンス補償量Lcが残存リアクタンス成分Lrに近づくほど増加し、逆にリアクタンス補償量Lcが残存リアクタンス成分Lrから離れるほど減少する。そのため、リアクタンス補償量Lcをスイープさせたときの出力電力Pの変化は、図8に示した入力電流iの変化と同じ傾向となる。そのため、リアクタンス補償量Lcをスイープさせたときの出力電力Pの変化に基づいて、リアクタンス補償量Lcの最適値を探索することができる。
(5)第1〜第4実施形態についても、積分対象の物理量は、各実施形態に示した物理量に限定されない。リアクタンス補償量Lcの外乱変化に伴って変化する物理量である限り、種々の物理量を積分対象とすることができる。
(6)受電部2において、共振コンデンサ6は必須ではない。本発明の特徴は、受電部2内の残存リアクタンス成分Lrを打ち消すためのリアクタンス補償量Lcをコンバータ3が演算してそのリアクタンス補償量Lcに基づく補償電圧vcを受電部2に印加することである。そのため、受電部2そのものが必ずしも直列共振回路を備える必要はなく、最低限、1次コイル150から磁気結合にて電力を受電するための2次コイル5があればよい。
ただし、受電部2内に直列共振回路がない場合、コンバータ3による処理負荷が大きくなるおそれがある。そのため、好ましくは、上記実施形態のように、受電部2内において、1次コイル150に流れる交流電流の周波数fで共振する直列共振回路を構成しておき、その上で、残存リアクタンス成分Lrが生じた場合にはそれをコンバータ3からの補償電圧vcによって補償する(打ち消す)ようにするのがよい。
(7)その他、本発明は、上記の実施形態に示された具体的手段や構造等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の形態を採り得る。例えば、上記の実施形態の構成の一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えたり、他の実施形態の構成に対して付加、置換等したり、課題を解決できる限りにおいて省略したりしてもよい。また、上記の複数の実施形態を適宜組み合わせて構成してもよい。