JP6354446B2 - プリフォームの製造方法及び繊維強化複合材料成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)所望の繊維強化樹脂成形品を得るべくその本成形に先立って、シート状のプリプレグを雄雌型の狭圧により所定形状に賦形するプリフォームの製造方法であって、賦形性解析ソフトウェアを用いたシミュレーションによって算出される織物プリプレグのせん断変形角度が15°以上となるプリプレグの場所に、賦形前に正方形であった織物の単位構造が、前記シミュレーションによりせん断変形して形成される略菱形の四辺形の長い方の対角線の方向に張力を加えながら賦形するプリフォームの製造方法である。
また、本発明の第二の態様は、
(2)上記(1)記載のプリフォームの製造方法によって製造されたプリフォームを成形型で圧縮成形することで、立体形状を有する繊維強化複合材料成形品を得る繊維強化複合材料成形品の製造方法である。
[1]賦形したい形状の3次元CADデータを入手、または作成する。
[2]賦形性解析ソフトウェアを用いて前記3次元CADデータを織物プリプレグで賦形することを想定したシミュレーションを行い、賦形時における織物プリプレグのせん断変形角度が15°以上となる場所を特定する。
本発明のプリフォームの製造方法において張力を付与する位置を特定するときは、賦形したい形状の3次元CADデータが必要である。
3次元CADデータが手元に存在する場合はそれを用いればよい。3次元CADデータが手元にない場合は、レイアウトマシン(例えば、東京貿易テクノシステム株式会社製、製品名:レイアウトマシン 96AS)を用いて、所望の間隔で賦形したい形状の座標データを計測し、そのデータを3次元CADソフトウェア(例えば、Siemens PLM Software社製、製品名:NX)へ入力することで3次元CADデータを得ることが可能であるし、光学式の3次元測定器(例えば、OTTO Vision Technology Gmbh社製、製品名:kolibri move)を用いて賦形したい形状を計測し、当該データを3次元CADソフトウェアへ取り込むことで3次元CADデータを得ることも可能である。いずれの方法によっても構わないが、データを簡便に作成できることから光学式の3次元測定器を用いることが好ましい。
前記3次元CADデータを賦形性解析ソフトウェア(例えば、Siemens PLM Software社製、製品名:Fibersim)を用いてプリプレグで賦形することを想定したシミュレーションを行うことができる。
具体的には、図1に示すような自動車のバケットシート1の3次元CADデータに対して、前記賦形性解析ソフトウェア内の項目「Material」で「PPG−PL−3K」を選択し、項目「Fiber Spacing factor」の値を0.5以下で入力した後、「Net Productivity」を選択して所望のシミュレーションを行うことができる。
「Fiber Spacing Factor」は、シミュレーションを行う際に使用するメッシュの大きさを指す。賦形する形状の大きさに合わせて適宜選択すればよいが、シミュレーションの精度の観点から0.5以下の値を入力することが好ましい。
前記シミュレーションを行うことで、図2A、図2Bに示すようにバケットシート形状内におけるプリプレグのせん断変形角度分布2を得ることができる(図2A、図2Bではせん断角度0°以上15°未満の領域を2A、同15°以上30°未満の領域を2B、同30°以上の領域を2Cとして、ハッチ濃度で示している。)。
ここで言う「せん断変形角度」とは、図3に示すように、経糸3Aと緯糸3Bとからなる角度4A(90°)に、賦形シミュレーションによって図4に示すように生じる変化4Bのことであり、前記賦形性解析ソフトウェア上では「Limit Angle」と称するものである。
前記せん断変形角度が15°以上となるプリプレグの場所に張力を付与することが好ましい。
本発明者らの経験によると、前述した条件のもと実施したシミュレーション結果で、せん断変形角度が0°以上15°未満となる領域は問題なく賦形可能であること、同じくせん断変形角度が15°以上30°未満となる領域は賦形に際して注意が必要であること、同じくせん断変形角度が30°以上は人手による賦形では賦形困難であることを示している。従って、せん断変形角度が15°以上となる場所に張力を付与しながら賦形することで、シワを回避することが有効である。
[1]プリプレグを賦形性解析ソフトウェアにて決定した形状に切断する。
[2]切断済みプリプレグを積層し積層体を得た後、それをプリフォーム型に配置する
[3]シミュレーションにより特定した積層体の場所をクランプする。
[4]クランプしたまま積層体を加熱機で加熱する。
[5]加熱した積層体に張力を付与し、積層体をプリフォーム型で挟圧して賦形する。
[6]張力を徐荷してクランプを外した後、プリフォーム型を開き、賦形した積層体を取り出す。
但し、プリプレグ1枚を賦形する場合は、上記の工程[2]中の積層操作を省略し、1枚のプリプレグを積層体と称することとする。
本発明のプリフォームの製造方法に用いることができるプリプレグの形態は、強化繊維が一方向に引き揃えられたUDプリプレグであってもよいし、強化繊維が製織された織物プリプレグであってもよい。
(強化繊維)
プリプレグを構成する強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、高強度ポリエステル繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維、ナイロン繊維などが挙げられる。これらの中でも比強度および比弾性に優れることから、炭素繊維が好ましい。
(熱硬化性樹脂)
プリプレグを構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硬化後の強度を高くできることから、エポキシ樹脂が好ましい。
プリプレグ中には、硬化剤、離型剤、脱泡剤、紫外線吸収剤、充填材などの各種添加剤などが含まれてもよい。
前記プリプレグを切断する方法としては、カッティングプロッターを用いて前記平面形状9のCADデータに基づいて切断することが好ましい。その際、CADデータ生成時にマーキングしておいた張力付与位置5B,5C,6B,6C,7B(2カ所),7C(2カ所),8B,8Cが明確になるようにしておくことが好ましい(図5)。
(切断したプリプレグの積層)
次に前記切断したプリプレグを所望の構成、枚数となるように積層し積層体を製作する。本発明のプリフォームの製造方法に用いられるプリプレグの積層構成としては、一方向積層でも直交積層でも疑似等方積層でも構わないが、プリプレグがUDプリプレグである場合には賦形時にプリプレグが裂けることなくせん断変形しやすい点から直交積層とすることが好ましい。
(プリフォーム型)
本実施形態例におけるプリフォーム型は、型でプリプレグの積層体を挟圧したときに積層体30を所望の形状に賦形できるようなプリフォーム型であれば、いかなる形式、材質のものでであってもこの発明のプリフォームの製造方法に用いることができる。
プリフォーム型の材質は金属、ケミカルウッドなどプリプレグを賦形することができるものであれば特に制限はないが、材料が安価であること、加工が容易であることからケミカルウッドであることが好ましい。
(張力付与手段)
張力付与手段40は、プリプレグの積層体の必要箇所をチャックするクランプ41と雄雌型の狭圧方向に対して略垂直方向に張力を付与する張力付与機構42とチャック位置を狭圧方向に移動できる位置可動機構43とを有することが好ましい。
加熱機50は、賦形前に積層体30を軟化させるために加熱するものである。加熱方式としては、例えば、熱風式、赤外線式などが挙げられるが、加熱時間を短縮できる点から赤外線式が好ましい。
またこの加熱機50は、加熱するときのみ積層体30の上部に位置し、それ以外のときは雌型10の動作の妨げにならないように場所に位置している。
(実施例1)
図1に示す自動車のバケットシート1を賦形するため、光学式の3次元測定器(OTTO Vision Technology Gmbh社製、製品名:kolibri move)を用いてバケットシート1の形状を計測し、前記計測データを3次元CADソフトウェア(Siemens PLM Software社製、製品名:NX)に入力することで、バケットシート1の3次元CADデータを得た。
このプリフォームを140℃まで 加熱している圧縮成形用の下型に配置し、これを上型で挟み10分間保持して、加熱 加圧を行うことで、繊維強化樹脂成形品を得た。得られた成形品は強度、外観に優れていた。
(比較例1)
前記シミュレーションにて特定した5B,5C,6B,6C,7B(2カ所),7C(2カ所),8B,8Cを選択せず、せん断変形角度が0°以上15°未満となる領域から10箇所を選択して張力を付与したこと以外は、実施例1と同様の方法でプリフォームを製造した。得られたプリフォームにはシワが多発している状態であった。
2 せん断変形角度分布
2A せん断変形角度:0°以上15°未満
2B せん断変形角度:15°以上30°未満
2C せん断変形角度:30°以上
3A UDプリプレグの0°方向(クロスプリプレグの経糸方向)
3B UDプリプレグの90°方向(クロスプリプレグの緯糸方向)
4A UDプリプレグの0°方向と90°方向とからなる角度(=90°)
4B せん断変形角度
5A,6A,7A,8A せん断変形角度が15°以上の位置
5B,5C,6B,6C,7B,7C,8B,8C 張力付与位置
9 平面形状
10 雌型
20 雄型
30 積層体
40 張力付与手段
41 クランプ
42 張力付与機構
43 位置可動機構
50 加熱機
Claims (2)
- 所望の繊維強化樹脂成形品を得るべくその本成形に先立って、シート状のプリプレグを雄雌型で狭圧することにより所定形状に賦形するプリフォームの製造方法であって、
賦形性解析ソフトウェアを用いたシミュレーションによって算出される織物プリプレグのせん断変形角度が15°以上となるプリプレグの場所に、賦形前に正方形であった織物の単位構造が、前記シミュレーションによりせん断変形して形成される略菱形の四辺形の長い方の対角線の方向に張力を加えながら賦形するプリフォームの製造方法。 - 請求項1記載のプリフォームの製造方法によって製造されたプリフォームを成形型で圧縮成形することで、立体形状を有する繊維強化複合材料成形品を得る繊維強化複合材料成形品の製造方法。
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