トラクタの走行により圃場に畦を成形する畦成形装置は、土壌を膨軟にするために、トラクタの後部に連結されるロータリー耕耘装置と、一つ又は複数の畦成形板を有し、膨軟にされた土壌を盛り上げて畦を成形するために、前記ロータリー耕耘装置の直後に装着される畦成形ユニットと、前記ロータリー耕耘装置の耕深を定めるための少なくとも二本の接地輪を有する接地輪ユニットとを備え、トラクタの走行により、前記畦成形ユニットの畦成形板により畦を成形するものである。
従来の畦成形装置は、特許文献1に示されるように、畦成形ユニットは、ロータリー耕耘装置に対して一体に装着されていた。畦成形板は、少なくとも畦の上面及び両側面を成形する1枚の上面成形板と、左右一対の側面成形板とから成り、計3枚の成形板が等脚台形状に配置される。なお、上面成形板は、平板に限られず、横断面が円弧状の板で形成されることもあり、特に、形成する畦が1つである「丸畦」、「平高畦」の場合には、後者の形状が多い。
一方、圃場の土壌の硬軟、圃場の耕盤の深さ位置の相違等の関係からして、トラクタの車輪、ロータリー耕耘装置は、圃場面(土壌面)に対する耕深の変化を行いながら、畦成形の作業が行われる。
このため、図10に示されるように、圃場の土壌の柔かい部分、或いは耕盤の深い部分にロータリー耕耘装置Rが達すると、当該ロータリー耕耘装置Rの耕深及び当該装置Rに一体に設けられた畦成形板91全体の沈み込み量が、今までよりも大きくなった状態で、土壌が膨軟にされて、畦が成形される。そして、ロータリー耕耘装置Rにより膨軟にされた土壌の全てが畦の成形に使用される。このため、畦の表面が従来よりも下がった状態で、畦が成形される結果、畦表面が下がることで、畦成形板91に対する土量が多くなって、畦成形に使用されない余剰の土壌は、畦成形板91を構成する上面成形板92により前方に運ばれることになる。ここで、例えば、耕盤が1〜2cm程度だけ深くなっても、その長さが長い場合には、前方に運ばれる土壌の量は多大となる。畦成形板91は、上面成形板92と一対の側面成形板93とから成り、図示のように、上面成形板92は、作業方向に沿った前部が後部に対して高くなるように傾斜配置されている。なお、図10において、94、95は、それぞれロータリー耕耘装置Rが沈み込むことで、耕深が深くなった部分、及び畦上面の下がった部分を示し、96は、前方に運ばれる余剰の土壌を示す。
上記のことが何回も繰り返されると、圃場の両畦端に土壌が運ばれて、両畦端の高さが残りの部分よりも高くなってしまうので、圃場全体を平坦にするため、数年毎に、両畦端の土壌を中央部に戻す作業が必要となり、この土壌の戻し作業は、大変に面倒な作業である。
一方、土壌の硬い部分、或いは耕盤の浅い部分においては、畦成形装置を構成する上面成形板が土壌面よりも上方に配置されてしまうことがあり、この場合には、畦の上面を成形できなくて、完全な畦が成形できない場合がある。
また、トラクタの後部に連結されるロータリー耕耘装置に対して畦成形装置が一体に装着されていて、当該ロータリー耕耘装置を下降させる途中において、畦成形板と接地輪が土壌面に当たってしまうために、畦成形の開始時において、畦端(圃場端)から完成畦が形成されるまでの長さが長くなり、成形済の完成畦と接続させるべく、手作業により畦端部の畦成形をする長さが長くなる問題もあった。同様の問題は、畦の形成端部において、ロータリー耕耘装置を上昇させる場合において、当該ロータリー耕耘装置と畦成形装置とが一体となって上昇されるために、畦の形成端部に形成される未完成畦の長さが長くなってしまう。
また、傾斜地において畦成形を行う場合には、畦成形装置がロータリー耕耘装置に対して一体に装着されているために、傾斜面を上って畦成形作業を行う場合、畦成形板を所要の畦高に調整すると、傾斜面を下って畦成形作業を行う場合には、畦高は、本来の畦高よりも低くなってしまい、一定高さの畦を成形できない問題があった。なお、ここでいう「傾斜地」とは、大きな圃場において大きな凹凸部が形成されている場合には、当該凹凸部において形成される傾斜面を含むものである。
本発明は、圃場の土壌の硬軟、或いは耕盤の起伏等が原因で発生するロータリー耕耘装置の耕深の変化を制御することで、畦成形装置の畦成形板の前方の土量を一定にして、畦成形板が余剰の土壌を前方に運ばないようにすることを課題としている。
上記課題を解決するための請求項1の発明は、土壌を膨軟にするために、トラクタの後部に連結されるロータリー耕耘装置と、
膨軟にされた土壌を盛り上げて畦を成形するために、フレームに1又は複数の畦成形板が取付けられて、前記ロータリー耕耘装置の直後に装着される畦成形ユニットと、
前記ロータリー耕耘装置の耕深を定めるために、当該ロータリー耕耘装置の後方に配置された少なくとも2本の接地輪を有する接地輪ユニットとを備え、
前記畦成形板は、畦の上面及び両側面をそれぞれ成形する上面成形板及び左右一対の側面成形板とから成って、当該上面成形板は、作業方向に沿って前部が後部に対して高くなるように傾斜配置され、
前記トラクタの走行により、前記畦成形ユニットの畦成形板により畦を成形するための畦成形装置であって、
前記畦成形ユニットは、自身の自重により成形中の畦面に押し付けられるように、前記ロータリー耕耘装置に昇降可能となって装着され、
前記畦成形ユニットの自重により前記畦成形板を常に成形中の畦の上面に押し付けて畦成形している状態で、前記ロータリー耕耘装置の耕深が基準値よりも深くなることで、前記上面成形板が抱え込む余剰の土壌の量が所定量を超えて、当該畦成形板の前進抵抗が大きくなった場合には、所定量を超える前記余剰土壌の存在により、前記畦成形ユニットは、その自重に抗して上方に移動することで、前記耕深を前記基準値に保持して畦成形されることを特徴としている。
請求項1の発明によれば、前記畦成形ユニットは、前記ロータリー耕耘装置のフレームに対して昇降可能に装着されているため、土壌の膨軟性の相違、耕盤の起伏等により、トラクタの車輪の沈み込み量が多少変化しても、即ち、当該トラクタに連結されたロータリー耕耘装置の沈み込み量が多少変化しても、畦成形ユニットを構成する1又は複数の畦成形板は、ロータリー耕耘装置により膨軟にされた土壌の表面位置に定められた配置位置を自ら選択(制御)しながら、1又は複数の畦が成形される。
即ち、耕盤の深さ位置の変化、或いは土壌の膨軟性の変化により、圃場の「一般部(ロータリー耕耘装置の耕深が基準値を保持することで、作業方向に沿った前部が後部よりも高くなるように配置された畦成形板の上面成形板の配置部分の土量が適正に保持されている部分)」に対してロータリー耕耘装置が必要量だけ下降又は上昇することで、ロータリー耕耘装置の耕深が変化した場合においては、ロータリー耕耘装置に一体に装着された従来構造の畦成形板では、ロータリー耕耘装置の耕深の変化に応じて、畦成形板の上下方向に沿った配置位置が変化するために、畦成形板により保持される土量は変化するのに対して、請求項1の発明では、畦成形ユニットは、前記ロータリー耕耘装置のフレームに対して昇降可能に装着されているために、接地輪の接地面の位置も上下方向に変化して、ロータリー耕耘装置の耕深が制御されて、畦成形ユニットの畦成形板により保持される土量は、ほぼ一定している。
上記した請求項1の発明の作用について、一般部に比較して耕深が深くなった場合と、浅くなった場合とに分けて、更に理論的に述べる。耕深が深くなった場合には、深くなった当初においては、畦成形板は、ロータリー耕耘装置と一体となって畦成形板も一般部よりも下がることで、畦成形板が抱え込む土量が多くなって、畦成形板の抵抗が大きくなり、この結果、トラクタの牽引抵抗が大きくなる。畦成形ユニットには、畦成形板を上方に持ち上げようとするモーメント又は力が生じて、畦成形板は、畦成形ユニットの自重に抗してロータリー耕耘装置に対して徐々に上昇すると同時に、隣接する畦間に形成される溝の深さ(上下方向の位置)も、耕深が深くなった当初に比較すると高くなって、接地輪の接地面の位置も高くなって、ロータリー耕耘装置も上昇して、一般部と同等の耕深に戻ろうとする。即ち、耕深が一般部に対して深くなると、畦成形ユニットの自重に抗してロータリー耕耘装置に対して畦成形板が上昇することで、ロータリー耕耘装置の耕深自体を一般部の耕深に近付けるような作用が生ずるのであり、これにより、耕深が深くなろうとする部分(従来の畦成形装置では、深い耕深が持続されてしまう部分)においては、ロータリー耕耘装置は、一般部に近い耕深に戻ろうとする上記作用が生ずるために、耕深が制御されて、畦成形板が配置部分で抱え込む土量を一般部と同等にすることができて、徐々に増大する余剰の土量を抱え込むことがなくなって、安定した畦成形作業が可能となる。
一方、耕深が浅くなった場合には、浅くなった当初は、畦成形板の上面成形板の配置部分で抱え込む土量が減少するので、耕深が浅くなったのに対応して、接地輪の上下方向の位置は、一般部に対して高くなるが、畦成形ユニットの自重により、ロータリー耕耘装置に対して畦成形板が徐々に下降して、畦間に形成される溝の深さに関しても、耕深が浅くなった当初に比較して、接地輪の位置は下がることで、ロータリー耕耘装置自体の配置位置も下がって、一般部と同等の耕深に戻ろうとする。このように、耕深が浅い部分に達した場合においても、耕深が深い部分に達した場合と同様に、ロータリー耕耘装置は、一般部に近い耕深に戻ろうとする作用が生ずる。
即ち、ロータリー耕耘装置の耕深が一般部に比較して深くなった場合には、ロータリー耕耘装置に対して畦成形板が僅かに上昇すると共に、ロータリー耕耘装置の耕深が一般部に比較して浅くなった場合には、ロータリー耕耘装置に対して畦成形板が僅かに下降することで、畦成形板の上面成形板の配置部分には、常に畦成形に必要な適量の土量が抱え込まれることになる。このように、請求項1の発明においては、ロータリー耕耘装置の耕深を制御して、畦成形板の上面成形板の配置部分には、常に必要量の土量が確保されることで、自動土量調整機能を備えているため、従来の畦成形板のように、余剰の土壌が累積されて、そのまま前方に運ばれるという不具合が解消されると共に、常に畦成形板により定められた高さの畦が成形される。なお、現実の畦成形においては、ロータリー耕耘装置に対する畦成形板の昇降量は、僅かである。
また、畦成形ユニットの畦成形板、即ち、一枚の上面成形板及び一対(二枚)の側面成形板は、畦成形板の自重によって、常時、畦の成形面に押圧された状態で、畦が成形されるので、畦の成形面である上面及び両側面が、全長に亘って、畦成形板の形状に倣った均一な表面性状に仕上げられる。
また、従来の畦成形装置では、ロータリー耕耘装置に対して畦成形ユニットが一体に装着されているため、ロータリー耕耘装置の耕深が深く(大きく)なると、これに応じて畦成形ユニットの畦成形板が沈み込んで、畦成形板の前側に土を盛り上げて前進するようになるので、トラクタの牽引抵抗が大きくなって、トラクタの前進速度が低下して、作業能率が低下する。しかし、請求項1の発明では、ロータリー耕耘装置の耕深の変化に応じて、当該ロータリー耕耘装置に対して畦成形ユニットが相対的に昇降して、ロータリー耕耘装置の耕深が制御され、畦成形板は、常に畦成形に必要な量を確保した状態で畦成形が行われるので、トラクタの牽引抵抗が大きくなることはない。
圃場の端部において、トラクタの後部に3点ヒッチリンクを介して連結されたロータリー耕耘装置を下げて、畦成形の作業を開始する際に、畦成形板は、畦成形ユニットの自重によりりロータリー耕耘装置に対して最も低い位置に達しており、ロータリー耕耘装置に対して最も低い位置に達している畦成形板により、従来のロータリー耕耘装置に一体化された畦成形板に比較して、接地輪の走行溝が深く形成されて、ロータリー耕耘装置が一般部の耕深に短距離で達し、畦成形に必要な土量が確保される。この結果、圃場端から完成畦が形成される部分までの長さは極めて短くなって、完成畦と接続させるために、手作業により成形せざるを得ない畦は、殆どなくなる。また、畦の成形端部(畦成形の開始と反対側の端部)においては、畦成形板により運ばれる余剰の土壌がないので、畦の形成端に近い部分まで完成畦の成形が可能となる。
また、傾斜地において、傾斜面を上って畦成形を行う場合には、ロータリー耕耘装置と一体となって土壌面に沈み込もうとする畦成形ユニットの畦成形板は、畦成形ユニットの自重に抗して上方に持ち上げられることで、畦成形板の大きさに応じた一定量の土量の確保を行いながら畦成形されると共に、傾斜面を下って畦成形を行う場合には、ロータリー耕耘装置と一体となって土壌面に対して浮き上がろうとする畦成形ユニットの畦成形板は、当該畦成形ユニットの自重により下方に押し付けられることで、畦成形板の大きさに応じた一定量の土量を確保しながら成形される。よって、傾斜面に沿って畦成形する場合において、上り下りともに、畦高を一定に確保できる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記畦成形ユニットは、付勢手段により下方に付勢された状態で、前記ロータリー耕耘装置に昇降可能となって装着されていることを特徴としているので、畦成形中において、ロータリー耕耘装置と一体となって浮き上がることがない。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記畦成形ユニットのフレームには、左右一対の連結アームが前方に向けて取付けられていて、当該一対の連結アームの先端部は、連結ピンを介してロータリー耕耘装置の上面カバーの前部に回動可能に連結されていることを特徴としている。
請求項3の発明によれば、畦成形ユニットは、当該畦成形ユニットをロータリー耕耘装置に連結している一対の連結アームの回動により、当該ロータリー耕耘装置に対して必要量だけ昇降(上下動)する構成であるので、最も簡単な構成によって、ロータリー耕耘装置に対して畦成形ユニットを昇降可能に装着できる。また、一対の連結アームは、ロータリー耕耘装置の上面カバーの前部に連結すると、連結アームの長さを長くすることができ、連結アームの回動時において、当該連結アームにおける畦成形ユニットを装着した部分の動きは、前後方向の移動量が少なくなって、上下方向の動きが主体となるので、畦成形ユニットの昇降に対して効果的に作用する。
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記付勢手段は、圧縮バネであって、その復元力が調整可能であることを特徴としている。
請求項4の発明によれば、圧縮バネの復元力の調整により、畦成形板により形成される畦面に対する当該畦成形板の押付け力の調整が可能となって、成形される畦の表面状態を微妙に調整できる。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記接地輪ユニットは、前記畦成形ユニットを構成する1つの畦成形板により形成される1つの畦の両側部、又は複数の畦成形板により形成される複数の畦の間、及び両端の畦の外側に配置される2本又はそれ以上の幅広の接地輪を備え、各接地輪により、隣接する畦の間の溝部の底面を押し付けて平坦に仕上げる構成であることを特徴としている。
請求項5の発明によれば、ロータリー耕耘装置の耕深を定めるための接地輪を幅広にして、全ての畦の間の溝部に配置することで、隣接する畦の間の溝部の底面を押し付けて仕上げるための仕上輪としての機能が付与されているので、前記溝部の底面の膨軟な土壌を綺麗な平坦面に仕上げることができる。
本発明によれば、圃場の土壌の硬軟、或いは耕盤の起伏等が原因となって、ロータリー耕耘装置の耕深が一般部に対して変化しても、畦成形ユニットは、前記ロータリー耕耘装置のフレームに対して昇降可能に装着されているため、畦成形板が配置されている部分の土量は、ロータリー耕耘装置の耕深の制御により、ほぼ一定となる。この結果、畦成形板(正確には、上面成形板)配置部分に余剰の土壌が発生することはなくなって、当該余剰の土壌が前方に運ばれる現象が生じなくなると共に、成形される畦は、畦成形ユニットの自重により押し付けられているため、常に畦成形板に対応した形状の畦が成形されて、畦形状が崩されることはない。
また、畦成形ユニットの上面成形板は、畦成形の開始直後から終了直前まで、その配置部分に畦成形に必要な適量の土量を抱え込んだ状態で、畦成形されるため、余剰の土壌が運ばれることがなくなると共に、畦の両端部の近傍まで完成畦が成形されて、未完成畦の長さは、極めて短くなる。更に、傾斜地における畦成形においても、傾斜地に沿った上り下りとは無関係に、一定の畦高の畦の成形が可能となる。
更に、畦成形板は、付勢手段の付勢力(押付け力)により、成形中に畦面に対して弾力的に押し付けられた状態で畦が形成されるので、畦の全長に亘って、畦面は均一な性状に仕上げられることで、畦面が綺麗となる。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図4に示されるように、トラクタTの後部に3点ヒッチリンク1を介してロータリー耕耘装置Rが昇降可能に装着され、ロータリー耕耘装置Rには、トラクタTのPTO軸(図示せず)の動力が伝達されて、駆動軸2が駆動回転される。駆動軸2には、多数本の耕耘爪3が取付けられ、当該耕耘爪3のダウンカット回転により、圃場の土壌が破砕されて膨軟化される。ロータリー耕耘装置Rの上面カバー4の上面における幅方向の中央部には、トラクタTの3点ヒッチリンク1に連結されるフレーム状のマスト部5が上方に突出して設けられている。なお、図4において、6,7は、それぞれトラクタTの前輪及び後輪を示す。
畦成形ユニットAは、図1〜図6に示されるように、横方向に配置された1本の角パイプから成るフレーム11に、計3つの畦成形板12を構成する上面成形板13及び側面成形板14a(14b,14c)が一体に取付けられている。即ち、各畦成形板12は、畦Kの上面を形成する1枚の上面成形板13と、畦Kの両側面を成形する一対の側面成形板14a,14b〔(14a,14c),(14b,14c)〕とが等脚台形状に配置されることで形成される。上面成形板13は、前端が高くなるように傾斜配置され、各上面成形板13の前方には、ロータリー耕耘装置Rにより膨軟にされた土壌を押さえ付けて、畦成形板12による畦成形を容易にするための押付け板15がほぼ全幅に亘って設けられている。なお、上面成形板13は、図5、図8及び図9に示されるように、作業方向(トラクタTの進行方向Qと同じ)に沿って前部が後部に対して高くなるように傾斜配置されており、ロータリー耕耘装置Rの耕深が深くなると、畦成形板12のうち当該上面成形板13により、土が前方に運ばれる。
なお、計6枚の側面成形板14a(14b,14c)のうち両端を除く4枚の側面成形板14a,14bは、隣接する2枚の側面成形板14a(14b)が両畦立板のように機能して畦溝を成形すると共に、両端の各側面成形板14cは、片畦立板のように機能して畦溝を成形する。また、両端の各側面成形板14cには、畦成形の直前において、ロータリー耕耘装置Rにより膨軟にされた土壌が側方に流れ出るのを防止する土壌流出防止板16が設けられ、当該土壌流出防止板16の後方には、成形済の既存畦が崩されるのを防止するために、当該既存畦の一側面に当てがわれる既存畦保護板17が配置されている。
畦成形ユニットAのフレーム11には、ロータリー耕耘装置Rのマスト部5の両側に配置されて、当該畦成形ユニットAをロータリー耕耘装置Rに対して回動可能に連結するための一対の連結アーム21が一体に取付けられている。連結アーム21は、ロータリー耕耘装置Rの上面カバー4のわん曲形状に対応して中央部が僅かに下方に向けてわん曲された形状となっている。ロータリー耕耘装置Rの上面カバー4の前端部における前記マスト部5の両側には、畦成形ユニットAの一対の連結アーム21の先端部を連結するための各連結ブラケット22がそれぞれ設けられている。各連結ブラケット22は、2個のブラケット単体が一組となっていて、各ブラケット単体の間に各連結アーム21の先端部が挿入されて、連結ピン23を介して回動可能に連結される。このため、畦成形ユニットAは、一対の連結アーム21を介してロータリー耕耘装置Rの上面カバー4の前端部に回動可能に連結されることで、畦成形ユニットAの畦成形板12は、ロータリー耕耘装置Rに対して昇降(上下動)する構成となる。
畦成形ユニットAは、一対の連結アーム21の間に配置される一対のバネ手段(付勢手段)のバネ力(復元力)により、常時下方に付勢されることで、畦成形板12を構成する上面及び側面の各成形板13,14a(14b,14c)は、成形中の畦Kの上面及び両側面を弾力的に押し付ける構成となる。畦成形ユニットAのフレーム11の前面には、一対のブラケット単体から成る連結ブラケット24が前方に向けて設けられている。ロータリー耕耘装置Rの上面カバー4の手前側には、一対の側板25が幅方向に所定間隔をおいて前後方向に設けられ、各側板25の手前側の端部の間にパイプ状のブラケット取付体26が横方向(幅方向)に配置されて、当該各側板25に一体に設けられ、当該ブラケット取付体26の両端部には、一対のブラケット単体から成る連結ブラケット27が斜上後方に向けて一体に設けられ、連結ブラケット27を構成する一対のブラケット単体の間には、バネロッド挿通孔28が直径方向に設けられたバネ支持体29が一体となって設けられている。前記バネ手段は、下端部が連結ピン31を介して前記連結ブラケット24に連結されて、上端部が前記バネ支持体29のバネロッド挿通孔28に挿通されたバネロッド32と、当該バネロッド32における調整ナット33と連結ブラケット27の間に外嵌された圧縮バネ34と、ロータリー耕耘装置Rに対する畦成形ユニットAの下方側の回動端を規制するために、前記バネロッド32の上端部に螺合された回動端規制ナット35とから成る。バネロッド32に対する調整ナット33の螺合位置の変更により、圧縮バネ34の復元力を調整でき、当該調整により、畦成形板12を構成する上面成形板13及び側面成形板14a(14b,14c)の成形中の畦面に対する弾性的押付け力が調整されて、成形される畦の表面の状態を調整できる。
上記構成によって、畦成形ユニットAは、圧縮バネ34の復元力により下方に付勢された状態となって、ロータリー耕耘装置Rに対して一対の連結アーム21を介して回動可能に連結され、畦成形中において、畦成形板12を構成する上面及び側面の各成形板13,14a(14b,14c)は、圧縮バネ34の復元力により、成形中の畦Kの上面及び両側面を弾力的に押し付けながら、畦Kが成形される。
次に、図1〜図7、特に図2を参照して、接地輪ユニットBについて説明する。接地輪ユニットBは、これを構成する複数の接地輪Wにより、ロータリー耕耘装置Rの耕耘を定めると共に、隣接する畦Kの間の溝部Gの底面を押し付けて綺麗に仕上げるためのものであり、従来の構造と同一であって、改良部分は存在しないので、畦成形との関係において、簡単に説明する。接地輪ユニットBは、1本の角パイプから成る取付ロッド41の前方に枠体部42を介して左右一対の連結アーム40が一体に取付けられ、各連結アーム40の先端部は、前記一対の側板25の前後方向の中央部にボルト44及びナット45によって、前後方向に沿った配置位置を調整可能にして連結され、前記枠体部42に斜上方に向けて一体に取付けられた連結ブラケット46に、ロータリー耕耘装置Rのマスト部5に設けられた調整棹47の斜下端部が連結され、前記取付ロッド41に一定間隔をおいて接地輪支持ロッド48が垂直下方に向けて設けられ、各接地輪支持ロッド48の下端部に、隣接する畦Kの間に形成される溝部Gの幅に対応した幅広の接地輪Wが回転可能に支持された構成である。
マスト部5の起立板49には、支持棹51の基端部が回動可能に支持され、前記調整棹47は、当該支持棹51の内部に大部分が収容されて、調整ハンドル52の操作により、当該調整棹47の支持棹51に対する突出長の調整によって、ロータリー耕耘装置Rに対する接地輪ユニットB、即ち、複数の接地輪Wの高さが調整可能になっていて、ロータリー耕耘装置Rの耕耘が調整される。
上記のようにして、ロータリー耕耘装置Rに畦成形ユニットA及び接地輪ユニットBの双方が装着された状態において、接地輪ユニットBの各接地輪Wは、畦成形ユニットAにより成形される各畦Kの間の溝部Gに配置される。即ち、接地輪ユニットBの各接地輪Wは、畦成形板12を構成する複数の側面成形板14a(14b,14c)のうち、両端の側面成形板14cの側方、及び両畦立板状の一対の側面成形板14a(14b)の間に配置される。
接地輪ユニットBは、ロータリー耕耘装置Rに一体に装着されていて、各接地輪Wの下端位置は、ロータリー耕耘装置Rの耕耘爪3により土壌が耕耘される結果、発生する未耕耘の面とほぼ同一である。
次に、図5〜図9を参照して、本発明の作用について説明する。本発明は、耕盤の深さ位置、或いは土壌の膨軟性の変化により、圃場の一般部に対してロータリー耕耘装置Rが僅かに下降又は上昇しても、ロータリー耕耘装置Rにより膨軟にされた土壌面に対する畦成形板12の上下方向の配置位置が殆ど変化しないと共に、畦成形板12を構成する上面成形板13及び側面成形板14a(14b,14c)が成形中に畦面に対して弾力的に押し付けられた状態で、畦Kが成形される点に特徴を有するので、この部分について詳細に説明する。
図5は、上記した「一般部」において畦成形している状態の畦成形ユニットAの側面図である。ロータリー耕耘装置Rにより膨軟にされた土壌は、両畦立板状の一対の側面成形板14a(14b)及び両端の片畦立板状の側面成形板14cにより、両側及び片側に畦立てされるようにして、移動させられて、弾性的に押し付けられることで、側面形状が定められると共に、上面が上面成形板13により弾性的に押し付けられることで、上面形状が定められて、複数の畦Kが同時に成形されて、各畦Kの間に溝部G(図7参照)が成形される。接地輪Wは、溝部Gに接地圧E0 で押し付けられている。図5において、θ0 は、連結ピン23とパイプ状のブラケット取付体26との各軸心を結ぶ線分と、連結アーム21における連結ピン23に連結された一方のストレート部21aの軸心とのなす角度(以下、「ロータリー耕耘装置Rに対する連結アーム21の角度」という)を示し、F0 は、ロータリー耕耘装置Rによる土壌の破砕部と未破砕部との境界面を示す。なお、畦成形中において、接地輪Wは、上記した境界面F0 に達するとみなした。なお、図5において、Qは、トラクタTの進行方向を示す。
図8は、耕盤の深さ位置、或いは土壌の膨軟性の変化により、土壌に対するロータリー耕耘装置Rの耕深が一般部に対してD1 だけ深くなった当初、即ち、土壌の破砕部と未破砕部との境界面F1 が前記境界面F0 よりも(D1 )だけ深くなった当初の畦成形ユニットAの側面図である。土壌の一般部において畦成形作業を行っている途中において、耕盤の位置が深くなったり、或いは土壌が柔らかくなったりすることで、ロータリー耕耘装置Rの土壌に対する耕深が「一般部」に比較して「D1 」だけ深くなった場合には、畦成形ユニットAは、一対の連結アーム21を介してロータリー耕耘装置Rの上面カバー4の先端部に回動可能であって、しかも圧縮バネ34の復元力により、各畦成形板12は、成形中に畦面に対して弾力的に押し付けられる構成であるので、耕深が深くなった当初は、ロータリー耕耘装置R及び各接地輪Wは、「一般部」に比較して「D1 」だけ深く沈み込むことで、畦成形板12も一時的には、沈み込み量が多くなって、上面成形板13の配置部分の土量が多くなるが、後述の作用によって、畦成形板12は、一般部と同等の位置に戻って、即ち、ロータリー耕耘装置Rにより膨軟にされた土壌の表面の位置に倣う。なお、耕深が深くなった当初は、畦成形ユニットAの各畦成形板12は、当該畦成形ユニットAの自重、及び圧縮バネ34の復元力に抗して、ロータリー耕耘装置Rに対して畦成形ユニットAは、図5において、連結ピン23を中心にして相対的に時計方向に回動すると共に、接地輪Wは、隣接する畦Kの間の溝部Gを前記接地圧E0 よりも遥かに大きな接地圧E1 で押し付けることで、自ら更に深い溝部Gを形成しながら回転する。
更に詳細に述べると、ロータリー耕耘装置Rの耕深が深くなった場合には、深くなった当初においては、ロータリー耕耘装置Rと一体となって畦成形板12も一般部よりも下がって、畦成形板12が抱え込む土量が多くなることで、畦成形板12の牽引抵抗が大きくなって、畦成形ユニットAには、畦成形板12を上方に持ち上げるモーメントMが生じて、畦成形板12は、当該畦成形ユニットAの自重、及び圧縮バネ34の復元力に抗してロータリー耕耘装置Rに対して徐々に上昇し、同時に隣接する畦間に形成される溝の深さ(上下方向の位置)も、耕深が深くなった当初に比較すると高くなって、接地輪Wの接地面の位置が高くなることで、ロータリー耕耘装置Rも上昇して、一般部と同等の耕深に戻ろうとする。なお、図8において、37は、耕深が深くなった当初において、畦成形板12が一般部よりも下がることで、当該畦成形板12が抱え込むことになった余剰の土壌を示す。即ち、耕深が一般部に対して深くなると、当該畦成形ユニットAの自重、及び圧縮バネ34の復元力に抗してロータリー耕耘装置Rに対して畦成形板12が上昇することで、ロータリー耕耘装置Rの耕深自体を一般部の耕深に近付けるような作用が生ずるのであり、これにより、耕深が深くなろうとする部分(従来の畦成形装置では、深い耕深が持続されてしまう部分)においては、ロータリー耕耘装置Rの耕深を、一般部に近い耕深に戻ろうとする上記作用が生ずるために、耕深が制御されて、上面成形板13が抱え込む土量を一般部と同等にすることができて、徐々に増大する余剰の土量を抱え込むことがなくなって、安定した畦成形作業が可能となる。
この結果、ロータリー耕耘装置Rは、耕深が深くなった当初においては、「一般部」に比較して「D1 」だけ大きく沈み込むが、畦成形ユニットAは、ロータリー耕耘装置Rの耕深が制御されることで、膨軟にされた土壌面に対して「一般部」と同一の位置を保持したままで、畦成形される。この作用によって、ロータリー耕耘装置Rの耕深が深くなっても、畦成形板12により畦成形される土量は、一定していて、「一般部」と同一である。よって、従来の畦成形板91のように、畦成形に必要な土量に対して増大した余剰の土壌が前方に運ばれる不具合は解消される。耕深が深くなった当初では、ロータリー耕耘装置Rに対する連結アーム21の角度(θ1 )は、前記角度(θ0 )よりも大きくなる(θ1 >θ0 )。この結果、畦成形板12は、相対的にロータリー耕耘装置Rに対して「D1 」だけ上昇される。
図9は、耕盤の深さ位置、或いは土壌の膨軟性の変化により、土壌に対するロータリー耕耘装置Rの耕深が一般部に対してD2 だけ浅くなった当初、即ち、土壌の破砕部と未破砕部との境界面F2 が前記境界面F0 よりも(D2 )だけ浅くなった当初における畦成形ユニットAの側面図である。耕盤の深さが浅くなったり、或いは土壌が硬くなったりして、ロータリー耕耘装置Rの耕深が「一般部」に比較して浅くなることがある。この場合においても、「一般部」の配置位置に対してロータリー耕耘装置Rが僅かに浮き上がっても、畦成形ユニットAの畦成形板12は、圧縮バネ34の復元力により畦面に弾力的に押し付けられているため、ロータリー耕耘装置Rと一体となって浮き上がることなく、成形中の畦面に弾力的に押し付けられた状態を維持している。耕深が浅くなった当初では、図5及び図9の比較から明白なように、畦成形ユニットAは、ロータリー耕耘装置Rに対して相対的に反時計方向に回動されることになって、ロータリー耕耘装置Rに対する連結アーム21の角度(θ2 )は、前記角度(θ0 )よりも小さくなる(θ1 >θ0 >θ2 )。この結果、畦成形板12は、ロータリー耕耘装置Rに対して相対的に「D2 」だけ下降される。
更に、詳細に述べると、耕深が浅くなった場合には、上面成形板13が抱え込む土量が減少するので、圧縮バネ34の復元力により、ロータリー耕耘装置Rに対して畦成形板12が徐々に下降して、畦間に形成される溝部Gの深さに関しても、耕深が浅くなった当初に比較して、接地輪Wの位置は下がることで、ロータリー耕耘装置R自体の配置位置も下がって、一般部と同等の耕深に戻ろうとする。このように、耕深が浅い部分に達した場合においても、耕深が深い部分に達した場合と同様に、ロータリー耕耘装置Rは、一般部に近い耕深に戻ろうとする作用が生ずる。なお、ロータリー耕耘装置Rの耕深が浅い場合においては、接地輪Wの接地圧は、終始、一般部における接地輪Wの接地圧E0 と同等である。
畦成形中において、上記した各作用が連続して反復されることで、土壌に対するロータリー耕耘装置Rの耕深が変化しても、畦成形ユニットAの畦成形板12は、成形中に畦面に対して昇降(上下動)することなく、図7に示されるように、圧縮バネ34の復元力により、畦Kの上面及び両側面は、それぞれ圧力P1 ,P2 で弾力的に押し付けられた状態で畦が成形される。換言すると、土壌に対するロータリー耕耘装置Rの耕深が変化しても、畦成形板12の部分の土量は、一定しているため、余剰又は不足の土壌が発生することがなくなって、従来の畦成形板91におけるように、余剰の土壌を前方に運ばれる不具合が解消されると共に、畦成形板91がロータリー耕耘装置Rと一体となって浮き上がることで、その上面成形板が土壌面から離れてしまって、完全な畦が成形できないという不具合も解消される。このように、畦成形ユニットAの畦成形板12は、畦成形の開始直後から終了直前まで、高さ方向に沿って畦成形に必要な位置に配置されているために、余剰の土壌が運ばれることがなくなると共に、畦の両端部の近傍まで完成畦が成形されて、未完成畦の長さは、極めて短くなる。
なお、隣接する畦Kの間の溝部Gの底面は、膨軟な土壌のままであって、畦成形中において、接地輪ユニットBを構成する幅広の各接地輪Wにより押し付けられることで、平坦に仕上げられる。
上記実施例では、ロータリー耕耘装置Rに対して畦成形ユニットAを回動可能に連結する一対の連結アーム21の先端部は、ロータリー耕耘装置Rの上面カバー4の先端部に連結されることで、当該連結アーム21の長さを長くできて、畦成形ユニットAとの連結部においては、前後方向の動きが少なくなって、本来必要な上下方向の動きのみが得られる利点がある。しかし、一対の連結アーム21の先端部は、ロータリー耕耘装置Rのどの部分に連結されてもよく、上面カバー4の手前側の端部に連結してもよい。
上記実施例のように、ロータリー耕耘装置Rに対して畦成形ユニットAを回動可能に連結する手段として、一対の連結アーム21を選択すると、構成が簡単で配置スペースも小さくて済む利点がある。しかし、本発明においては、畦成形ユニットAは、ロータリー耕耘装置Rの耕深の変化に応じて当該ロータリー耕耘装置Rに対して昇降する構成であればよいので、その機構は、前記一対の連結アーム21に限定されず、例えば、平行リンク機構によって、ロータリー耕耘装置Rに対して畦成形ユニットAを昇降させる構成にしてもよい。平行リンク機構によれば、畦成形板は、本来必要な上下方向のみに移動して、不必要な前後方向への移動がなくなる利点がある。
上記実施例は、複数の畦成形板12を有する畦成形ユニットAを使用することで、複数の畦を同時に成形しているが、本発明は、1つの畦成形板を備えることで、幅広の1つのみの畦を成形する場合に対しても実施可能である。
上記実施例では、ロータリー耕耘装置Rの耕深を定めるための接地輪ユニットBは、回転可能な複数の接地輪Wを有しているが、接地輪Wに替えて、畦Kの間の溝部Gの底面をそりのように摺動する「そり状部材」を用いることも可能である。