JP6347475B2 - 少なくとも2つのGBSSIと2つのSSIIaの酵素活性を欠損したコムギから調製された小麦粉を使用したマルトース高含有生地の製造方法 - Google Patents

少なくとも2つのGBSSIと2つのSSIIaの酵素活性を欠損したコムギから調製された小麦粉を使用したマルトース高含有生地の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、少なくとも2つのGBSSIと2つのSSIIaの酵素活性を欠損したコムギに由来する小麦粉又はデンプンを用いてマルトース含量の高い生地を製造する方法に関する。
デンプンは、グルコースがα-1,4結合で連なった直鎖状のアミロースとα-1,6結合を介して枝分かれ構造をもったアミロペクチンという2つの成分の混合物である。これら成分は種々の酵素の働きによって合成され、穀物においては種子の胚乳部分に蓄積される。
アミロースは、主に顆粒結合性澱粉合成酵素遺伝子にコードされる顆粒結合性澱粉合成酵素(Granule-Bound Starch Synthase; GBSS)によって合成され、コムギにおいては顆粒結合性澱粉合成酵素I(GBSSI)によって合成されている。異質6倍体である主要な普通系コムギの染色体には、同祖染色体であるA、B、Dの3つのゲノムが存在する。普通系コムギであれば、GBSSI遺伝子は3種類存在し(Wx-A1遺伝子、Wx-B1遺伝子、Wx-D1遺伝子; それぞれGBSSI-A1遺伝子、GBSSI-B1遺伝子、GBSSI-D1遺伝子といわれることもある)、それぞれ7A、4A、7D染色体上に存在する。これらの遺伝子から顆粒結合性澱粉合成酵素(GBSSI-A1、GBSSI-B1、GBSSI-D1)が発現している。ゲノムDNA上に生じた変異によりGBSSIの酵素活性が欠損した系統も存在する。例えば、公知のコムギ品種では、「ホクシン」がGBSSI-B1欠損型(アミロース含量がやや低い)、「チクゴイズミ」がGBSSI-A1、B1欠損型(アミロース含量が低い)、「はつもち」及び「もち乙女」がGBSSI全欠損型(モチ性、アミロース含量が極端に低い)である。GBSSIの欠損パターンを簡便に識別する方法としては、胚乳の各GBSSIタンパク質の有無を直接解析する方法や、ゲノムDNA配列を元にして調べる方法などが確立されている(例えば、特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)。
一方、アミロペクチンは、複数の酵素の働きによって合成されている。この複数の酵素とは、(可溶性)澱粉合成酵素I型(Starch Synthase I; SSI)、(可溶性)澱粉合成酵素II型(Starch Synthase II; SSII)、(可溶性)澱粉合成酵素III型(Starch Synthase III; SSIII)、枝作り酵素(Branching enzyme; BE)、枝切り酵素(Debranching enzyme; DBE)などである。
コムギにおいて、アミロペクチンの分岐鎖合成に関わる酵素の1つとして知られる澱粉合成酵素IIa型(SSIIa)(SSIIa-A1、SSIIa-B1、SSIIa-D1)は、7A、7B、7D染色体上に存在する3種類のSSIIa遺伝子(SSIIa-A1遺伝子、SSIIa-B1遺伝子、SSIIa-D1遺伝子)によりコードされている。これらSSIIaに関しても、ゲノムDNA上に生じた変異により酵素活性が欠損した系統が存在し、公知のコムギ品種で例示すると、「Chosen57」がSSIIa-A1欠損型、「関東79号」がSSIIa-B1欠損型、「Turkey116」がSSIIa-D1欠損型である。SSIIaに関しても、欠損パターンを識別する方法が公知である(特許文献2、非特許文献4)。
デンプンは高度に結晶化した顆粒の形で植物に貯蔵されている。これに水分を加えて加熱することでデンプン粒は次第に膨潤し、ある一定の温度で結晶構造が崩れ糊状になる(糊化)。その後、冷却することで糊化デンプンは次第に粘性が増大しゲル化する。このようなデンプンの特性や、アミロースとアミロペクチンの含量比は、由来する植物種によって大きく異なる場合があることが知られている。
デンプンは植物における貯蔵物質で重要なエネルギー源であるとともに、ヒトにとっても重要なエネルギー源である。デンプンを摂取する際には、これを含む穀粒を加工し食品に利用するだけでなく、上記の膨潤や糊化の特性を利用し、増粘剤、保水剤、ゲル形成剤などの食品添加剤として使用される。一方、食品関連分野以外でも、糊やフィルムの原料として古くから利用されている。また、化学的、あるいは物理的に修飾を施した加工デンプンなどにも多くの需要がある。デンプンは貯蔵される器官(種子や塊茎)の重量の大部分を占めており、デンプン特性が変化すれば、これら器官を原料とした上記食品の食感、あるいはそのようなデンプンを使用した食品添加剤を加えた食品の加工性などに与える影響は大きいことから、多様な特性を持ったデンプンの開発に対する需要は高い。
前述したようにデンプンの特性は植物種によって大きく異なる場合がある。しかしながら、同一植物種内でのデンプンの多様性については、アミロース含量の違いによる物性の変化に負うところが大きい。例えば、GBSSIが全て野生型であるコムギのアミロース含量に比べて、ホクシン、チクゴイズミのアミロース含量は有意に低下し、うどん等麺用粉としての利用に優れているとされ、商業的にも広く栽培されている。また、イネやトウモロコシではアミロース含量が極端に低いモチ性デンプンを蓄積する系統が知られていたが、コムギでは中村ら(特許文献1)によって初めてモチコムギが育種され、通常のコムギを用いた食品に比べて独特の加工性や食感を有していることが知られている。
小麦デンプンにおいて、アミロース含量はデンプンの特性を現す指標の一つとしてよく議論されるが、アミロペクチンの構造については議論されることが比較的少ない。したがって、一般的に食品に使用されるコムギのデンプン特性の違いは主にアミロース含量の違いに起因するものに限られ、コムギデンプン特性における多様性は非常に限られたものとなっている。このため新たな特性をもったデンプンを蓄積するコムギを開発することができれば、従来とは異なった特徴を具える改良製品、あるいは新たな用途の開発が可能となることから、このようなコムギの開発は切に望まれている。
本願発明者らは、GBSSIとSSIIaの酵素活性制御により新たな特性のデンプンを蓄積するコムギを提供することを目的として、GBSSI-A1、GBSSI-B1、GBSSI-D1及びSSIIa-A1、SSIIa-B1、SSIIa-D1の6種の酵素の欠損の組み合わせ63通り(野生型を除く)のうちの特定の組み合わせで酵素活性を欠損したコムギ系統を作出し、デンプンの特性を解析した(特許文献3)。特許文献3には、GBSSI-A(-)B(+)D(-)/SSIIa-A(+)B(-)D(-)及びGBSSI-A(-)B(-)D(+)/SSIIa-A(+)B(-)D(-)という、2つのGBSSIと2つのSSIIaを欠損した2種類のコムギ系統を作出したことも記載されている。しかしながら、これら系統のデンプンの特性については、十分には検討されていない。また、3つのGBSSIのうちの2つを欠損し、かつ、3つのSSIIaのうちの2つを欠損した、特許文献3に記載された系統以外のコムギ系統については、その作出さえ報告されていない。
一方、製造工程の工夫によりコムギ加工食品の食味や食感を向上させる試みも古くから行なわれており、様々な手法が開発されている。例えば、パン等のベーカリー食品の分野では、ベーカリー食品の製造方法の一つとして湯種法が知られている(特許文献4、5)。湯種法では、材料として用いる小麦粉の一部に熱湯を加えて混捏して湯種生地を調製し、粗熱を除去した後、湯種生地に残りの小麦粉、イースト、常温の水、食塩、砂糖、脱脂粉乳、油脂及びその他の副材料を加えて混捏してベーカリー生地を作製し、これを用いてベーカリー食品を製造する。この湯種法によると、熱湯によりデンプンが糊化して、最終的に得られるベーカリー食品の食感がしっとり、もちもちとして、自然な甘みが加わり食味が向上することが知られている。
しかしながら、湯種法では通常熱湯が使用されるため、特に製パン工場等での大規模生産においては、燃料費の増大や作業現場での安全性の面で通常の製造方法と比べて不利である。原材料が高温にさらされるため、原材料中のタンパク質等の成分が熱により変性してしまうことも懸念される。
特開平6−125669号公報 特開2005−333832号公報 国際公開WO2006/118300号公報 特許第3167692号公報 特許第5178404号公報
Yamamori et. al., Theor. Appl. Genet (2000)101:21-29 Nakamura et. al., Genome (2002)45:1150-1156 Saito et. al., Mol. Breed. (2009)23:209-217 Shimbata et. al., Theor. Appl. Genet (2005)111:1072-1079
本発明は、パン等のベーカリー食品をはじめとするコムギ加工食品の食味・食感を向上させる新規な手段であって、大規模生産にも適した手段を提供することを目的とする。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギに由来する小麦粉が、従来の市販のコムギ品種等、異なる酵素欠損パターンを有するコムギに由来する小麦粉と比較して、比較的低温での加温混捏により非常に多くのマルトースを生地中に生成できること、このマルトース生成量の高さは内在のβアミラーゼ活性の違いによるものではなくデンプンの性質の違いによりもたらされるものであること、従って上記特定の欠損パターンを有するコムギ由来の小麦粉又はデンプンを含む生地材料を穏やかな加温条件下で混捏して生地を製造することにより、マルトース含量の高い生地が得られ、このようにして得られたマルトース高含有生地を用いることで、自然な甘みが加わり食味に優れ良好な食感を有するコムギ加工食品を製造できることを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉又は前記収穫物若しくは前記小麦粉から分離されたデンプンを含む生地材料を、70℃未満の水と混合し、55℃以上70℃未満の加温条件下で混捏することを含む、マルトース高含有生地の製造方法を提供する。さらに、本発明は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉又は前記収穫物若しくは前記小麦粉から分離されたデンプンを含む生地材料を、70℃未満の水と混合し、55℃以上70℃未満の加温条件下で混捏することを含む、マルトース高含有コムギ加工食品の製造方法を提供する。さらに、本発明は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉又は前記収穫物若しくは前記小麦粉から分離されたデンプンを含む生地材料を、70℃未満の水と混合し、55℃以上70℃未満の加温条件下で混捏することにより、マルトース高含有生地を製造する工程、並びに得られたマルトース高含有生地を用いてコムギ加工食品を製造する工程を含む、コムギ加工食品の製造方法を提供する。さらに、本発明は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉又は前記収穫物若しくは前記小麦粉から分離されたデンプンを含む生地材料を、70℃未満の水と混合し、55℃以上70℃未満の加温条件下で混捏することを含む、生地中のマルトース含量を高める方法を提供する。

本発明によれば、特定の酵素欠損パターンを有するコムギ由来の小麦粉又はデンプンを用いて、従来の湯種法よりも穏やかな加温条件下での混捏により、生地中のマルトース含量を大いに高めることができる。熱湯を使用しないため、小麦粉中のタンパク質の変性を低減できる。本発明の方法により製造された高マルトース含量の生地でパン類等のコムギ加工食品を製造すれば、自然な甘みが豊かでしっとり、モチモチした食感に優れ、良好な食味のコムギ加工食品を得ることができる。
各系統由来の小麦粉サンプルを加温して混捏し作製した生地中のマルトース含量を測定した結果である。 2/2欠損体由来の小麦粉サンプルを加温して混捏し作製した生地中のマルトース含量を測定した結果である。 2/2欠損体及び3/2欠損体由来の小麦粉サンプルを加温して混捏し作製した生地中のマルトース含量を測定した結果である。 各系統の小麦粉中のβ-アミラーゼ活性を測定した結果である。 実施例で食パン製造のために製造した中間生地中のマルトース含量を測定した結果である。 実施例で製造した食パンのクラム中のマルトース含量を測定した結果である。60℃条件で混捏した生地の配合量は、全小麦粉使用量の50%とし、製造例2のみ10%とした。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(弾力)。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(粘り)。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(モチモチ感)。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(しっとり感)。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(甘さ)。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(ぱさつき)。 実施例で製造した食パンの食味試験の結果である(香り)。
本発明で用いるコムギ系統は、アミロースを合成する酵素GBSSI-A1, B1, D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、アミロペクチンの枝鎖を伸長させる酵素SSIIa-A1, B1, D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損した系統である。以下、本明細書において、2つのGBSSIと2つのSSIIaを欠損した系統を「2/2欠損体」、3つのGBSSIと2つのSSIIaを欠損した系統を「3/2欠損体」と呼ぶ。また、2/2欠損体及び3/2欠損体を総称して「2-3/2欠損体」と呼ぶことがある。
本発明では、2-3/2欠損体由来の小麦粉又はデンプンを含む生地材料を、55℃以上70℃未満という特定の温度に加温した条件下で水と共に混捏(加温混捏)する。以下、本明細書において、2-3/2欠損体由来の小麦粉を用いる方法を「第1の方法」、2-3/2欠損体由来のデンプンを用いる方法を「第2の方法」と呼ぶ。
第1の方法では、穀粉材料として2-3/2欠損体由来の小麦粉を使用し、上記した特定の温度に加温した条件下で水と共に混捏する。加温混捏工程で用いる小麦粉は、2-3/2欠損体由来の小麦粉のみであってもよいし、2-3/2欠損体由来の小麦粉に他の穀粉を配合したものであってもよい。「他の穀粉」とは、GBSSI及びSSIIaの欠損パターンが異なる他のコムギ系統(GBSSI及びSSIIaに欠損のない系統も包含される)に由来する小麦粉、又はコムギ以外の穀類から調製された穀粉(ライ麦粉、米粉、大豆粉など)であり得る。2-3/2欠損体由来の小麦粉は、2-3/2欠損体の複数の系統に由来する複数の小麦粉を混合して用いることができる。例えば、2種類以上の2/2欠損体由来の小麦粉を混合して、又は2種類以上の3/2欠損体由来の小麦粉を混合して用いてもよいし、あるいは、1種類以上の2/2欠損体由来の小麦粉及び1種類以上の3/2欠損体由来の小麦粉を混合して用いてもよい。他の穀粉と混合して用いる場合、2-3/2欠損体由来の小麦粉(複数系統を用いる場合はその合計の量)は、生地の材料として用いられる穀粉材料全体のうちの10%以上、例えば15%以上、20%以上、30%以上、又は40%以上とすることができる。3/2欠損体由来の小麦粉を加温混捏すると、2/2欠損体由来の小麦粉を加温混捏した場合よりもさらに生地中マルトース含量を高めることができる(図5参照)。
第1の方法において、加温混捏工程に付す生地材料は、2-3/2欠損体由来の小麦粉及び水を含み、マルトースを実質的に含んでいなければ、他の材料を含んでいてもよい。「マルトースを実質的に含んでいない」とは、マルトースそのものを生地の材料としては使用しないという意味であり、生地の材料として用いるいずれかの材料中に成分としてマルトースが微量に含有されることは許容される。そのような微量のマルトース成分は、本発明の方法により最終的に得られるコムギ加工食品中のマルトース含量の高さには寄与しない。
加温混捏工程において穀粉材料と混合する水の温度及び加温温度は、好ましくは55℃〜67℃、より好ましくは55℃〜65℃、さらに好ましくは58℃〜65℃、さらに好ましくは58℃〜63℃である。ミキサー等の混捏機を用いて混捏を行なう場合、ボウル内部の温度が上記の温度となるようにボウル部分を外部から加温すればよい。捏上温度は概ね50℃〜65℃程度である。このような温度帯で混捏することで、2-3/2欠損体由来の小麦粉(より具体的には小麦粉中のデンプン)からは、酵素欠損パターンが異なる他の系統由来の小麦粉と比較して多量のマルトースが生地中に生成される(図1〜3参照)。生地の材料としてマルトースを使用することなく、生地中のマルトース含量を高めることができる。
加温混捏工程において穀粉材料と混合する水の量は、通常、対粉湯量で50%〜300%(穀粉1gに対し0.5ml〜3ml)程度、好ましくは80〜250%程度、又は100〜220%程度である。
加温混捏の時間は特に限定されず、ベーカリー食品分野で知られる一般的な湯種法において湯種生地を混捏する時間と同程度でよく、例えば5分間程度でよい。
加温混捏の後の工程は、一般的な湯種法と同様に実施することができる。一般的な湯種法では、製造した湯種の粗熱をとり、必要に応じて低温(4℃以下)で一晩〜24時間程度保存した後、湯種を残りの生地材料に加えて常温で混捏を行ない、生地を完成させる。本発明でも、2-3/2欠損体由来の小麦粉を用いて上記の通り湯種を製造し、湯種の粗熱を取り、所望により低温で保存した後、残りの生地材料と湯種を合わせて常温で混捏し(以下、この混捏工程を「常温混捏工程」と呼ぶことがある)、マルトース高含有生地を得ることができる。イースト等の熱に弱い材料を用いる場合は常温混捏工程で加えればよい。その他の生地材料(例えば、砂糖、塩、油脂等)は、加温混捏の温度で悪影響を受けない限り、加温混捏工程で加えてもよいし、常温混捏工程で加えてもよい。
常温混捏工程で湯種と混合する穀粉は、2-3/2欠損体由来の小麦粉であってもよいし、2-3/2欠損体由来の小麦粉以外の他の穀粉であってもよく、あるいは2-3/2欠損体由来の小麦粉と他の穀粉との混合物であってもよい。もっとも、加温混捏工程に付す穀粉材料中に占める2-3/2欠損体由来小麦粉の割合を極力高くすることが好ましいので、2-3/2欠損体由来の小麦粉に他の穀粉を配合して高マルトース生地を製造する場合には、生地材料として用いる2-3/2欠損体小麦粉の全量を加温混捏工程に付すか、あるいは、加温混捏工程に付す穀粉を2-3/2欠損体由来の小麦粉100%として生地を製造することが好ましい。なお、一般的な湯種法では、通常、生地の穀粉材料全体のうち5%〜50%程度を湯種の製造に使用し、残りを常温混捏工程で湯種に加えるが、本発明でも、加温混捏工程に付す穀粉は、生地の穀粉材料全体の5%〜50%程度としてよい。
本発明の第2の方法では、2-3/2欠損体由来のデンプンを、小麦粉等の穀粉と組み合わせて用いる。穀粉及び2-3/2欠損体由来のデンプンを含む生地材料を、上記した特定の温度に加温した条件下で水と共に混捏する。下記実施例において具体的に示される通り、2/2欠損体及び3/2欠損体の小麦粉が生地中のマルトース含量を高めるという効果は、小麦粉に内在するβアミラーゼの活性の違いに起因しているのではなく、デンプンの性質の違いに起因している。従って、例えば生地の穀粉材料として通常の小麦粉を使用し、これに2-3/2欠損体由来のデンプンを加えて上記第1の方法と同様の条件で加温混捏をすることによっても、通常の小麦粉に内在するβアミラーゼの作用で2-3/2欠損体由来のデンプンが分解し、マルトースが多量に生成するので、マルトース含量の高い生地を得ることができる。
第2の方法で2-3/2欠損体由来のデンプンと組み合わせて用いる穀粉は、典型的には小麦粉であり、2-3/2欠損体ではないコムギ系統に由来する小麦粉を用いることができる。小麦粉以外の穀類から調製された穀粉(例えば、ライ麦粉、大豆粉、米粉など)をさらに含んでいてもよい。また、内在するβアミラーゼ活性が小麦粉と概ね同程度以上の穀粉であれば、小麦粉に代えて用いることも可能である。そのような、小麦粉と同程度以上の内在βアミラーゼ活性を有する穀粉としては、ライ麦粉、大豆粉、米粉等を挙げることができる。
第2の方法において、2-3/2欠損体のデンプンは、穀粉材料に対し3〜400%程度の量で生地材料に配合すればよい。1種類の2-3/2欠損体系統に由来する1種類のデンプンのみを用いてもよいし、複数の系統に由来する複数の2-3/2欠損体デンプンを混合して用いてもよい。複数種類のデンプンを混合して用いる場合、合計の使用量が上記の範囲内であればよい。
第1の方法と同様に、第2の方法においても、加温混捏工程に付す生地材料は、穀粉、2-3/2欠損体由来のデンプン及び水を含み、マルトースを実質的に含んでいなければ、他の材料を含んでいてもよい。2-3/2欠損体由来のデンプンは、2種以上の2-3/2欠損体に由来するデンプンを混合して用いてもよい。
第2の方法における加温混捏工程のその他の条件は第1の方法と同様である。また、加温混捏の後の工程は、第1の方法と同じく、一般的な湯種法と同様に実施することができる。
本発明によるマルトース高含有生地の製造用の穀粉は、2-3/2欠損体由来の小麦粉を含む。該製造用の穀粉は、主として上記第1の方法に用いられる穀粉である。該製造用の穀粉は、2-3/2欠損体由来の小麦粉のみからなっていてもよいし、他の穀粉(上述)をさらに含んでいてもよい。2-3/2欠損体由来の小麦粉自体も、1種類の2-3/2欠損体に由来する小麦粉のみを用いてもよいし、2種以上の2-3/2欠損体由来の小麦粉(例えば、2種以上の2/2欠損体由来の小麦粉、2種以上の3/2欠損体由来の小麦粉、又は、1種以上の2/2欠損体由来の小麦粉及び1種以上の3/2欠損体由来の小麦粉)を混合して用いてもよい。
本発明によるマルトース高含有生地の製造原料は、2-3/2欠損体由来の小麦粉又はデンプンを含む。例えば、該原料は、(1)2/2欠損体由来の小麦粉と、2/2欠損体由来のデンプンとの両者を含む原料;(2)2/2欠損体以外の小麦粉若しくは小麦粉以外の穀粉と、2/2欠損体由来のデンプンとを含む原料;又は、(3)2/2欠損体由来の小麦粉と、2/2欠損体以外のコムギ由来デンプン若しくはコムギ以外の植物に由来するデンプンとを含む原料であり得る。(1)は第1の方法及び第2の方法に、(2)は第2の方法に、(3)は第1の方法に用いることができる。
2/2欠損体は、本願発明者らがGBSSIとSSIIaの酵素活性制御により新たな特性のデンプンを蓄積するコムギを提供することを目的として作出したコムギ系統である。9系統のうち、GBSSI-A(-)B(+)D(-)/SSIIa-A(+)B(-)D(-)及びGBSSI-A(-)B(-)D(+)/SSIIa-A(+)B(-)D(-)の具体例が、国際公開WO2006/118300号公報に記載されている。下記実施例に記載されている残りの7系統は新たに作出された系統である。また、国際公開WO2006/118300号公報には、3/2欠損体の具体例も記載されている。
上記の加温混捏工程により生地中のマルトース含量が高まるという効果は、2/2欠損体及び3/2欠損体に共通の効果であり、本発明では2/2欠損体及び3/2欠損体の酵素欠損パターンは特に限定されない。2/2欠損体の中では、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損したコムギ(例えばGBSSI-B1、GBSSI-D1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギ)で混捏温度60℃〜65℃における生地中マルトース含量が特に高く(図2、図3)、本発明において特に好ましく使用することができる。3/2欠損体は、混捏温度60℃〜65℃における生地中マルトース含量が2/2欠損体よりもさらに高く(図2、図3)、とりわけGBSSI-A1、GBSSI-B1、GBSSI-D1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギでマルトース含量が顕著に高まることから、本発明においては当該系統も特に好ましく用いることができる。
コムギのGBSSI-A1, B1, D1及びSSIIa-A1, B1, D1の配列(ゲノムDNA、タンパク質)は公知であり、それぞれGenBankに下記のaccession番号で登録されている。これらの各配列を下記表1の通りに配列表に示す。
もっとも、配列表に示した配列は野生型配列の一例であり、天然に存在するコムギ(一般に流通しているコムギ品種も含む)には、各酵素タンパク質の活性は正常であるが塩基配列ないしはアミノ酸配列が一部相違するものも存在し得る。本発明において「GBSSI-A1遺伝子」「GBSSI-A1タンパク質」といった場合には、配列表に示した塩基配列又はアミノ酸配列と完全に同一の配列を有するものだけではなく、酵素活性を損なわない天然の変異を含む配列を有するものも包含される。他の酵素についても同様である。そのような天然の変異配列は、通常、配列表に示した各塩基配列又はアミノ酸配列と90%以上、例えば95%以上、あるいは98%以上の同一性を有する。
「酵素活性を欠損した」とは、植物体内で正常な酵素活性を有する当該タンパク質が機能していないこと、例えば、正常な酵素活性を有するタンパク質を発現していないことをいう。より具体的には、遺伝子配列の変異(一つ又は複数の塩基の置換、欠失、挿入、逆位、転座などの変異をいい、遺伝子領域全体の欠失も含む)、mRNA転写の欠損、タンパク質翻訳の欠損、コムギ植物体内での酵素活性の阻害などの態様が挙げられる。本発明においては、野生型の各酵素の活性の10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満にまで酵素活性が低下ないしは欠失していれば、いずれの態様であってもよい。最も好ましくは、2/2欠損体は、3種のGBSSIのうちのいずれか2つ、及び3種のSSIIaのうちのいずれか2つの酵素タンパク質を細胞内に蓄積せず、各酵素の活性が完全に失われたコムギであり、より具体的には、2つのGBSSI及び2つのSSIIaを発現しないコムギである。3/2欠損体の最も好ましい例も同様である。
SSIIaは、一般的にはアミロペクチン分岐鎖(α-1,6結合により枝分かれしたグルコース重合体)の合成、特に重合度が中程度の鎖(11から25程度の重合度をもつ鎖)の合成に関与していると考えられている。ゆえに、SSIIaの酵素活性は、基質となるADP-グルコースとアミロペクチンを認識し、ADP-グルコースからグルコースをアミロペクチン分岐鎖の末端に結合させる活性と考えることができる。一方、GBSSIは、基本的にはアミロース合成に関与していると考えられている。よってGBSSIの酵素活性は、基質となるADP-グルコースとアミロースを認識し、ADP-グルコースからグルコースを伸長途中のアミロースの末端に付加する働きであると考えることができる。
従って、GBSSI-A1, B1, D1及びSSIIa-A1, B1, D1の酵素活性については、常法により上記の活性を調べることでその強弱を確認することができる。一例を挙げると、当該酵素を種子から精製し、基質となるADP-[U-14C]グルコースやアミロースあるいはアミロペクチン、さらには反応条件を整えるための成分を加えることで反応を行う。一定時間の反応を終えたところで100℃に加熱することにより酵素を失活させ、陰イオン交換カラムを用いて未反応のADP-[U-14C]グルコースを除いた後、アミロースあるいはアミロペクチンに取り込まれた[U-14C]グルコースの量を、液体シンチレーションカウンターを用いて計測する。別の方法としては、種子より粗精製したタンパク質画分、あるいはデンプン画分(タンパク質含量にして5-10μg)について、未変成{通常のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)からSDSとβ-mercaptoethanolを除いた条件}でのポリアクリルアミドゲル電気泳動を行う。分離の終わったゲルを50 mM グリシン、100 mM 硫酸アンモニウム、5nM β-mercaptoethanol、5 mM MgCl2、0.5mg/ml 牛血清アルブミン、0.01 mg/ml アミロースあるいはアミロペクチン、4mM ADP-グルコースからなる溶液に浸し、4時間から12時間放置する。その後、0.2% ヨウ素、0.02% ヨウ化カリウムからなる溶液を加えることで染色を行い、酵素活性を判定する方法を用いても良い。
酵素活性が欠損しているか否かの確認は、例えば、酵素活性の測定、酵素タンパク質の蓄積量の測定、mRNA発現量の測定、ゲノムDNAの塩基配列の確認等により実施できる。
酵素活性の強弱の確認方法は上述の、基質となるADP-[U-14C]グルコースやアミロースあるいはアミロペクチン、さらには反応条件を整えるための成分を加えることで反応を行う方法の通りである。
酵素タンパク質がコムギ植物体細胞内で蓄積していないこと(より具体的には、酵素タンパク質が発現していないこと)の確認は、コムギ種子又は精製デンプンのSDS-PAGEや二次元電気泳動により行なうことができる。SDS-PAGEで確認されるバンドのサイズは、SSIIa-A1が115 kDa、SSIIa-B1が100 kDa、SSIIa-D1が108 kDaであり、非特許文献1に発現の有無を確認する方法が記載されている。また、GBSSIについては、GBSSI-A1、B1、D1ともにSDS-PAGEで確認されるバンドのサイズはおよそ61kDaであり、とりわけGBSSI-B1とGBSSI-D1のバンドの識別が困難な場合があるため、SDS-PAGEで発現の有無を判定するよりも、特許文献1に記載されているデンプン結合タンパク質の二次元電気泳動により確認する方法が適している。詳細な方法は特許文献1に記載される通りであり、野生型で現れる領域にスポットがあるか否かを確認すればよい。
また、酵素活性の欠損は、酵素活性を失わせるようなゲノムDNA上の変異があるかどうかを調べることによっても確認し得る。特に、酵素の欠損変異が放射線照射や変異原性化学物質への曝露等の変異誘発処理により生じたものである場合、1残基のみのアミノ酸置換を伴う変異が生じる可能性がある。こういった場合には、酵素タンパクの有無を調べるSDS-PAGEのような方法では識別することが困難な場合が多いため、DNA上の変異を確認する手法が適する。SSIIaの場合、酵素活性を失わせるようなゲノムDNA上の変異とは、酵素の基質となるADP-グルコースやアミロペクチンの認識・結合部位における変異、あるいはグルコースをアミロペクチンの非還元末端へ転移する活性中心部位における変異、あるいはN末端に存在するシグナル配列部位における変異等が挙げられる。GBSSIの場合、酵素活性を失わせるようなゲノムDNA上の変異とは、酵素の基質となるADP-グルコースやアミロースの認識・結合部位における変異、あるいはグルコースをアミロースの非還元末端へ転移する活性中心部位における変異等が挙げられる。
GBSSI酵素活性を失わせるようなゲノムDNA上の変異があるかどうかを調べるためのプライマーとしては、例えば、下記実施例で使用しているプライマー(配列番号13〜19)を挙げることができる。このことは非特許文献2および非特許文献3にも記載されている。酵素活性を失わせるようなゲノムDNA上の変異があるか否かの判定基準は下記実施例中の表2に記載される通りである。これらのプライマーを用いてPCR等の核酸増幅法を行なえば、公知のコムギ品種「もち乙女」(3つのGBSSIを欠損)が有する酵素欠損変異を検出することができる。従って、本発明の実施において使用する2-3/2欠損体のGBSSI欠損変異が「もち乙女」に由来する場合、ないしは「もち乙女」と同じGBSSI欠損を有するその他の品種に由来する場合には、配列番号13〜19のプライマーを用いて欠損を確認することができる。
また、SSIIa酵素活性を失わせるようなゲノムDNA上の変異があるかどうかを調べるためのプライマーとしては、例えば、下記実施例で使用しているプライマー(配列番号20〜25)を挙げることができる。このことは非特許文献4にも記載されている。酵素活性を失わせるようなゲノムDNA上に変異があるか否かの判定基準は下記実施例中の表2に記載される通りである。これらのプライマーを用いてPCR等の核酸増幅法を行なえば、公知のコムギ品種「Chosen57」(SSIIa-A1欠損型)、「関東79号」(SSIIa-B1欠損型)及び「Turkey116」(SSIIa-D1欠損型)が有する酵素欠損変異を検出することができる。従って、本発明の実施において使用する2-3/2欠損体のSSIIa欠損変異が上記品種に由来する場合、ないしは上記品種と同じSSIIa欠損を有するその他の品種に由来する場合には、配列番号20〜25のプライマーを用いて欠損を確認することができる。
2/2欠損体及び3/2欠損体は、下記実施例に記載されるように、6つの酵素を任意の組み合わせで欠損している公知のコムギ品種の交配により作出することができる。放射線処理(γ線、β線、X線、中性子線等)、化学物質処理(エチルメタンスルホン酸等)その他の変異誘発処理を行ない、所望の酵素欠損体を選抜して交配に用いてもよい。また、単子葉植物の形質転換体の作出方法が各種公知であり、目的遺伝子の機能を欠損させる遺伝子工学的手法も公知である。例えば、RNAiやアンチセンス法により目的遺伝子の発現を阻害する方法があり、また、植物において目的の遺伝子のみを破壊する遺伝子破壊法も公知となっている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2010) June 29, 107(26): 12034-12039)。従って、本発明で用いるコムギ系統は、遺伝子工学的手法により作出することもできる。
2/2欠損体及び3/2欠損体では、GBSSIとSSIIaの酵素活性の欠損以外の遺伝的形質は特に限定されず、他の形質を導入したものも包含される。例えば、耐病性、グルテン適性、耐倒伏性、秋撒き性、春撒き性、多収性、低温耐性、穂発芽耐性、製粉適性などの有用形質と、2つのGBSSI及び2つのSSIIaの酵素活性の欠損とを組み合わせて有するコムギであってよい。
2/2欠損体由来の小麦粉及び2/3欠損体由来の小麦粉は、2/2欠損体及び3/2欠損体の収穫物(穎果、ないしは種子)を製粉してそれぞれ得ることができる。製粉方法は特に限定されず、従来のコムギ品種の収穫物から小麦粉を製造するときに用いられる一般的な製粉方法を用いることができる。小麦粉の形態は特に限定されず、例えば、通常の製粉工程を経て「ふすま」などの成分を除いた小麦粉でもよいし、分別しない全粒粉であってもよい。
2/2欠損体由来のデンプン及び3/2欠損体由来のデンプンは、それぞれ、2/2欠損体及び3/2欠損体の収穫物又は該収穫物を製粉して得られた小麦粉から常法により抽出分離して得ることができる。
本発明の方法で製造されるマルトース高含有生地は、ベーカリー食品をはじめとする各種のコムギ加工食品のための生地として使用することができる。ベーカリー食品としては、例えば、食パン、フランスパン、ロールパン、菓子パンなどのパン類;イーストドーナツなどの揚げパン類;蒸パン類;ピザパイ等のピザ類;スポンジケーキなどのケーキ類;クッキー、ビスケットなどの焼き菓子類などが挙げられる。その他のコムギ加工食品としては、うどんや焼きそば等の麺類、餃子・春巻き・焼売等の中華総菜類の皮、中華まん等の饅頭類の皮等を挙げることができる。とりわけ、本発明の方法で製造されるマルトース高含有生地は、イースト発酵を経て製造されるイースト発酵食品(例えば、パン類、揚げパン類、ピザ類等のベーカリー食品の一部、及び中華まん等)のための生地として特に好ましく用いることができる。マルトース高含有イースト発酵食品を製造する場合は、上述した通り、常温混捏工程で生地にイーストを混合させればよい。イースト発酵後、加熱調理(焼成、又は蒸気加熱など)して食品が製造される。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[コムギ系統の作出]
2つのGBSSIを欠損し、かつ、2つのSSIIaを欠損したコムギ系統は、下記の2系統を親系統として作出された。
親系統1:
「関東79号」(SSIIa-B1欠損型)と外国産品種である「Turkey116」(SSIIa-D1欠損型)、「Chosen57」(SSIIa-A1欠損型)の3品種を順次交配して選抜された、SSIIaを完全に欠損した系統。
親系統2:
もち乙女(GBSSI全欠損型、SSIIaタンパク質は野生型)と「Kestrel」を交配し、そのF5世代の種子から選抜された、GBSSIを完全に欠損した系統。
コムギの栽培、交配は定法に従った。上記の親系統1と親系統2を交配し、F1世代を得た。これを自家受精させてF2、あるいはそれ以降の世代を得た。これら後代の中から、PCRによりGBSSIおよびSSIIa遺伝子の遺伝子型の判別を行ない、所望のコムギ系統を選抜した。PCRによる遺伝子型の確認の具体的な方法は以下の通りである。
コムギの種子を発芽させ、幼葉からのゲノムDNAの精製をキアゲン社製DNeasy plant miniキットを用いて行った。発芽した種子の幼葉を100 mgとり、液体窒素中でパウダー状になるまですりつぶした。すりつぶしたサンプルを1.5 ml容チューブに移し、その後キットに添付のバッファーAP1とRNase solutionを加えて65度で10分間加熱した。次にバッファーAP2を加えて氷上で5分間放置した後、析出した沈殿物を遠心操作により取り除いた。上澄み液にバッファーAP3を加えて混合した後、全量をmini spin columnに供し、遠心操作を行いDNAをメンブランに吸着させた。バッファーAWによる洗浄を2回行った後、バッファーAEを加えて5分間放置し、遠心によりDNA溶液を回収した。
PCRには下記のプライマーを用いた。
GBSSI-A1遺伝子確認用プライマー:
AFC:TCGTGTTCGTCGGCGCCGAGATGG(配列番号13)
AR2:CCGCGCTTGTAGCAGTGGAAGTACC(配列番号14)
GBSSI-B1遺伝子確認用プライマー:
BDFL:CTGGCCTGCTACCTCAAGAGCAACT(配列番号15)
BRC1:GGTTGCGGTTGGGGTCGATGAC(配列番号16)
BFC:CGTAGTAAGGTGCAAAAAAGTGCCACG(配列番号17)
BRC2:ACAGCCTTATTGTACCAAGACCCATGTGTG(配列番号18)
GBSSI-D1遺伝子確認用プライマー:
BDFL:CTGGCCTGCTACCTCAAGAGCAACT(配列番号15)
DRSL:CTGTTTCACCATGATCGCTCCCCTT(配列番号19)
SSIIa-A1遺伝子確認用プライマー:
SSIIAF1:GCGTTTACCCCACAGAGC(配列番号20)
SSIIAR1:ACGCGCCATACAGCAAGTCATA(配列番号21)
SSIIa-B1遺伝子確認用プライマー:
SSIIBF1:ATTTCTTCGGTACACCATTGGCTA(配列番号22)
SSIIBR1:TGCCGCAGCATGCC(配列番号23)
SSIIa-D1遺伝子確認用プライマー:
SSIIDF1:GGGAGCTGAAATTTTATTGCTTATTG(配列番号24)
SSIIDR1:TCGCGGTGAAGAGAACATGG(配列番号25)
GBSSI遺伝子確認用のPCR反応は、10×Taq bufferを5μL, dNTPを終濃度0.2mM, Mg(Cl)2を終濃度1.5mM, プライマー各終濃度0.2μM, ゲノムDNAを終濃度2ng/μL、Taq polymerase(タカラバイオ社)を終濃度0.05 U/μLの組成で全量50μLで行なった。GeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ社)を用いて、95℃ 5分−[95℃ 30秒−65℃ 30秒−72℃ 2分]×32サイクル−72℃ 7分の反応条件とした。
SSIIa遺伝子確認用のPCR反応は、10×LA Taq bufferを2μL, dNTPを終濃度0.2mM, Mg(Cl)2を終濃度2.25mM, プライマー各終濃度0.25μM, ゲノムDNAを終濃度1ng/μL、LA Taq(タカラバイオ社)を終濃度0.025 U/μLの組成で全量20μLで行なった。GeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ社)を用いて、98℃ 5分−[98℃ 30秒−65℃ 30秒−74℃ 1分]×40サイクル−74℃ 5分の反応条件とした。
PCR増幅反応液は3%アガロースゲルによる電気泳動に供した後、エチジウムブロマイド染色を行い、増幅バンドのサイズに基づいて下記の通り遺伝子型を判定した。
以上の確認を行ない、様々な遺伝子型を有するコムギ系統を選抜した。以下の実験では、上記の通りに選抜されたコムギ系統及び公知のコムギ品種(表3)を用いた。
[小麦粉および全粒粉の調製]
収穫したコムギは水分が14%になるように加水し一晩放置した後、ビューラー社製またはブラベンダー社製のテストミルにて挽砕した。ビューラー社製テストミルで挽砕した場合には、1B、2B、3B、1M、2M、3Mの取り口から得られた粉を混合して小麦粉とした。ブラベンダー社製テストミルで挽砕した場合には、1等粉、2等粉を合わせて小麦粉を得た。また、収穫したコムギは超遠心粉砕機 ZM 200 (Retsch社) を用いて全粒粉に調製した。ロータ回転数は14,000 rpmとし、スクリーンは梯形孔の0.75 mmとした。
[小麦粉からのデンプン精製]
上記小麦粉よりデンプンを次のようにして精製した。小麦粉重量に対し、0.5倍の重量の水を加え、よく捏ねて生地を作成し、冷水中で1時間浸漬した。その後、水中で生地を捏ねてデンプンをもみだした。このデンプン懸濁液を2,070×gで10分間遠心分離し、上清を除去した。デンプンの上層に沈澱したペントザン等の夾雑物を除去した。この操作を繰り返してデンプンを洗浄した。このデンプンを凍結乾燥して精製デンプンを得た。また、精製したデンプンは水分含量を測定し、乾物重量を求めた。
[アミロース含量の測定]
精製したデンプンを用いてアミロース含量を測定した。AMYLOSE / AMYLOPECTIN ASSAY KIT (Megazyme社) を使用し、キットの手順書に従って測定を行った。結果を下記表4に示す。
[RVA測定]
調製した全粒粉を用いてラピッドビスコアナライザー (RVA) を用いた粘度特性の測定を行った。装置にはNEWPORT SCIENTIFIC 社製 model RVA-4を用い、測定法はアメリカ穀物学会の定める公定法 (AACC法76-21) の小麦粉用の方法に従い、STD3のプログラムで測定した。ただし、水の代わりに1 mM 硝酸銀水溶液を使用した。結果を下記表4に示す。
[加温処理した生地中のマルトース含量の測定]
前述の小麦粉を用いて、加温条件下で調製した生地中のマルトース含量の測定を行った。小麦粉1gを遠心チューブに測りとり、温水2mlと混合し保温しながら5分間薬さじで混捏し、小麦粉生地を作製した。温水及び保温の温度は、50℃〜70℃まで5℃刻み(温水50℃・保温50℃〜温水70℃・保温70℃の5段階)で試験区を設定した。作製した各試験区の小麦粉生地を氷上で十分に冷却した後に80%エタノールを10ml加えよく撹拌し、密栓して沸騰水中で20分間加熱して酵素を失活させるとともに糖分を抽出した。これを氷上で十分冷却してから40%エタノールを30ml加えよく混合し、4℃で20分間振とうした。その後、容器内の溶液1.5mlを採取し遠心チューブに移し、4℃、17,800×gで5分間遠心分離し、上清200μlを新たな1.5ml遠心チューブに移し、濃縮遠心乾燥機で乾燥した。乾燥後に75μlの超純水を加えよく混合し、続いて75μlのアセトニトリルを加えよく混合した。これを4℃(17,800×g)で5分間遠心分離し、上清をPTFEフィルター(ADVANTEC DISMIC-3 0.5μm)に通し、その溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC, Waters社製 alliance e2695 separation module)を用いて測定した。検出には示差屈折率検出器(Waters社製 2414 Refractive Index Detector)を用い、75%(v/v)アセトニトリルを分離溶媒として、ASAHIPAK NH2P-50 3Eカラムを用いて分離した。あらかじめ標準物質を用いて作成しておいた検量線をもとに、マルトースのピーク面積から濃度を算出し、生地を構成する小麦粉乾燥重量あたりのマルトース含量を算出し、サンプル間の比較を行なった。
結果を図1〜3に示す。系統(xii)〜(xv)の小麦粉で作製した生地では、65℃〜70℃ないしはそれ以上の温度帯でマルトース含量がピークに達する傾向が確認された。一方、2-3/2欠損体の小麦粉で作製した生地では、65℃付近でマルトース含量がピークに達し、それ以上の温度で混捏するとマルトース含量が低下することが確認された。混捏温度55℃及び60℃の試験区で比較すると、系統(xii)〜(xv)の小麦粉生地はマルトース含量が殆ど上昇しておらず、一方、2-3/2欠損体の小麦粉生地はマルトース含量が大幅に高まっていた。2-3/2欠損体の小麦粉は、比較的低めの温度で加温混捏をしても、従来の小麦粉よりも多量にマルトースを生成できることが確認された。
よって、2/2欠損体又は3/2欠損体の小麦粉を使用すれば、熱湯より低い温度で生地中のマルトース含量を高めることができ、熱によるタンパク質の変性等を低減した状態で、より風味や食感に優れた食品を製造することができる。特に、パン等のベーカリー食品のようなイースト菌などを利用する食品においては、菌の発酵活動を高めたり、生地性の改良やより風味や食感に優れた製品を製造することができる。
[β-アミラーゼ活性測定]
生地中にマルトースが生成するのは小麦粉内在のβ-アミラーゼの働きによる。β-アミラーゼは、デンプンの非還元末端からマルトースを切り出していく酵素であり、糊化したデンプンによく働く。特定温度条件で生地中にマルトースを多く生成する2/2欠損体に関して、その特徴が小麦粉内在β-アミラーゼの活性の違いに起因しているのかどうかを確認するため、各系統の小麦粉中のβ-アミラーゼ活性を測定した。測定には市販のβ-アミラーゼ活性測定キット(Megazyme社)を使用し、キットの手順書に従って測定を行った。
結果を図4に示す。図1〜3の結果との対比から、β-アミラーゼ活性はマルトース生成量と相関する結果ではないことが判明した。この結果は、マルトース生成量が高くなる原因が、小麦粉に内在するβ-アミラーゼ活性が元々高かったためではなく、デンプンの性質の違いに起因していることを示唆している。
[食パンの製造及び食味試験]
製造例1
2/2欠損体である系統(i)の小麦粉300gに60℃の湯300mlを加え、60℃保温しながら5分間混捏し(加温混捏)、中間生地を作製した。この中間生地を4℃で一晩寝かせた後、下記の配合(中間生地の配合量は小麦粉として全小麦粉使用量のおよそ50%)で材料をホームベーカリー(エムケー精工株式会社)に投入し、「早焼きパンコース」プログラムで食パンを作製した。
材料:
中間生地 260g(小麦粉140g相当)
一般的なパン用小麦粉 140g
水 67ml
砂糖 20g
塩 4g
ショートニング 20g
脱脂粉乳 6g
ドライイースト 3.6g
製造例2
系統(i)の小麦粉に代えて、3/2欠損体である系統(x)の小麦粉を使用して中間生地を作製し、かつ、中間生地の配合量を下記の通り製造例1の5分の1(すなわち、全小麦粉使用量のおよそ10%)としたことを除き、製造例1と同様の手順で食パンを焼き上げた。
材料:
中間生地 52g(小麦粉28g相当)
一般的なパン用粉 252g
水 166ml
砂糖 20g
塩 4g
ショートニング 20g
脱脂粉乳 6g
ドライイースト 3.6g
製造例3
系統(i)の小麦粉に代えて、系統(xii)の欠損パターンを有する農林61号の小麦粉を使用し、製造例1と同様の手順で食パンを焼き上げた。
製造例4
系統(i)の小麦粉に代えて、系統(xv)の欠損パターンを有するチクゴイズミの小麦粉を使用し、製造例1と同様の手順で食パンを焼き上げた。
製造例5
一般的なパン用小麦粉のみを小麦粉材料として用いて、加温混捏を行なわず、材料をホームベーカリー(エムケー精工株式会社)に投入して「食パンコース」プログラムで食パンを作製した。
<マルトース含量の測定>
製造例1〜4の加温混捏直後の中間生地及び4℃で一晩寝かせた後の中間生地のそれぞれについて、生地中のマルトース含量を測定した。生地からの糖抽出およびマルトース含量の測定は上記[加温処理した生地中のマルトース含量の測定]と同様に実施した。
結果を図5に示す。2/2欠損体である系統(i)由来の小麦粉を用いた製造例1の中間生地では、酵素欠損パターンが異なる系統由来の小麦粉を用いた製造例3、4の中間生地と比較してマルトース含量が明らかに高く、その含量は2倍以上であった。3/2欠損体である系統(x)由来の小麦粉を用いた製造例2の中間生地では、製造例1よりもさらにマルトース含量が高く、製造例3、4と比べるとその含量は3倍以上であった。
また、製造例1〜5の食パンのクラム(耳の内部の白い部分)中のマルトース含量の測定も行なった。クラムの一部を凍結乾燥させた後粉砕し、得られた粉砕物1gを80%エタノール10mlに添加して撹拌し、その後の手順は上記[加温処理した生地中のマルトース含量の測定]に記載の通りに実施した。
結果を図6に示す。焼き上げた後のパンにおいても、製造例1ではマルトース含量が製造例3、4よりも高く、2倍以上のマルトースを含んでいることが確認された。製造例3、4は製造例5よりもマルトース含量が高いが、これは混捏方法の違い(加温混捏の有無)により生じた差であると考えられる。
また、製造例2のパン(系統(x))では、製造例3、4のパンよりもマルトース含量が低いが、これは単に60℃混捏生地の配合量の違いによる。製造例2のパンは60℃混捏生地の配合量が他の試験区の5分の1である。しかしながら、60℃混捏生地の配合量を5分の1まで減らしても、パンクラム中のマルトース含量は製造例3、4のパンの7〜8割以上となっている。中間生地中のマルトース含量は系統(x)で最も高いことも確認されているので(図5)、中間生地の配合量を等しくして加工試験を行えば、非2-3/2欠損体よりも系統(x)の方がパンクラム中マルトース含量が高くなるのは明らかである。
<食パンの食味試験>
製造例1〜5の食パンの食味試験を行なった。10名のパネラーにより下記の項目について5段階評価し、各項目の平均値を算出した。
弾力:弾力がない(1点)〜とても弾力がある(5点)
粘り:粘らない(1点)〜粘りが強い(5点)
モチモチ感:モチモチ感がない(1点)〜とてもモチモチしている(5点)
しっとり感:しっとり感がない(1点)〜とてもしっとりする(5点)
甘さ:甘さがない(1点)〜とても甘みがある(5点)
ぱさつき:ぱさつきがない(1点)〜とてもぱさぱさする(5点)
香り:香りがない(1点)〜とても香りが強い(5点)
評価結果を図7〜13に示す。2/2欠損体である系統(i)由来の小麦粉を用いて加温混捏により製造した製造例1の食パンは、甘さがあり風味に優れていた。食感も、粘りやモチモチ感に優れ、みずみずしさがありぱさつきが少ない良好な食感であった。3/2欠損体である系統(x)由来の小麦粉を用いて加温混捏により製造した製造例2の食パンは、加温混捏生地の配合量が全小麦粉使用量の10%と少ないものの、粘りやモチモチ感、しっとり感に優れており、各項目で加温混捏により製造した製造例3、4の食パンと同等ないしはそれ以上の評価であった。2/2欠損体にさらに3/2欠損体を配合すれば、コムギ加工食品の食味・食感のさらなる向上が可能と考えられる。

Claims (16)

  1. GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉又は前記収穫物若しくは前記小麦粉から分離されたデンプンを含む生地材料を、70℃未満の水と混合し、55℃以上70℃未満の加温条件下で混捏することを含む、マルトース高含有生地の製造方法。
  2. 前記生地材料は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を含む生地材料である、請求項1記載の方法。
  3. 55℃〜67℃の水と混合し、55℃〜67℃の加温条件下で混捏する、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記生地はベーカリー生地である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記生地はパン生地である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記コムギは、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記コムギは、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損したコムギである請求項6記載の方法。
  8. 前記コムギは、GBSSI-B1、GBSSI-D1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギである請求項7記載の方法。
  9. 前記コムギは、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損したコムギである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記コムギは、GBSSI-A1、GBSSI-B1、GBSSI-D1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギである請求項9記載の方法。
  11. GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉又は前記収穫物若しくは前記小麦粉から分離されたデンプンを含む生地材料を、70℃未満の水と混合し、55℃以上70℃未満の加温条件下で混捏することを含む、マルトース高含有コムギ加工食品の製造方法。
  12. 前記生地材料は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を含む、請求項11記載の方法。
  13. コムギ加工食品がベーカリー食品である請求項11又は12記載の方法。
  14. コムギ加工食品がイースト発酵食品である請求項11又は12記載の方法。
  15. GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉又は前記収穫物若しくは前記小麦粉から分離されたデンプンを含む生地材料を、70℃未満の水と混合し、55℃以上70℃未満の加温条件下で混捏することにより、マルトース高含有生地を製造する工程、並びに
    得られたマルトース高含有生地を用いてコムギ加工食品を製造する工程
    を含む、コムギ加工食品の製造方法。
  16. GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉又は前記収穫物若しくは前記小麦粉から分離されたデンプンを含む生地材料を、70℃未満の水と混合し、55℃以上70℃未満の加温条件下で混捏することを含む、生地中のマルトース含量を高める方法。
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