JP6347475B2 - 少なくとも2つのGBSSIと2つのSSIIaの酵素活性を欠損したコムギから調製された小麦粉を使用したマルトース高含有生地の製造方法 - Google Patents
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Description
2つのGBSSIを欠損し、かつ、2つのSSIIaを欠損したコムギ系統は、下記の2系統を親系統として作出された。
親系統1:
「関東79号」(SSIIa-B1欠損型)と外国産品種である「Turkey116」(SSIIa-D1欠損型)、「Chosen57」(SSIIa-A1欠損型)の3品種を順次交配して選抜された、SSIIaを完全に欠損した系統。
親系統2:
もち乙女(GBSSI全欠損型、SSIIaタンパク質は野生型)と「Kestrel」を交配し、そのF5世代の種子から選抜された、GBSSIを完全に欠損した系統。
GBSSI-A1遺伝子確認用プライマー:
AFC:TCGTGTTCGTCGGCGCCGAGATGG(配列番号13)
AR2:CCGCGCTTGTAGCAGTGGAAGTACC(配列番号14)
GBSSI-B1遺伝子確認用プライマー:
BDFL:CTGGCCTGCTACCTCAAGAGCAACT(配列番号15)
BRC1:GGTTGCGGTTGGGGTCGATGAC(配列番号16)
BFC:CGTAGTAAGGTGCAAAAAAGTGCCACG(配列番号17)
BRC2:ACAGCCTTATTGTACCAAGACCCATGTGTG(配列番号18)
GBSSI-D1遺伝子確認用プライマー:
BDFL:CTGGCCTGCTACCTCAAGAGCAACT(配列番号15)
DRSL:CTGTTTCACCATGATCGCTCCCCTT(配列番号19)
SSIIa-A1遺伝子確認用プライマー:
SSIIAF1:GCGTTTACCCCACAGAGC(配列番号20)
SSIIAR1:ACGCGCCATACAGCAAGTCATA(配列番号21)
SSIIa-B1遺伝子確認用プライマー:
SSIIBF1:ATTTCTTCGGTACACCATTGGCTA(配列番号22)
SSIIBR1:TGCCGCAGCATGCC(配列番号23)
SSIIa-D1遺伝子確認用プライマー:
SSIIDF1:GGGAGCTGAAATTTTATTGCTTATTG(配列番号24)
SSIIDR1:TCGCGGTGAAGAGAACATGG(配列番号25)
収穫したコムギは水分が14%になるように加水し一晩放置した後、ビューラー社製またはブラベンダー社製のテストミルにて挽砕した。ビューラー社製テストミルで挽砕した場合には、1B、2B、3B、1M、2M、3Mの取り口から得られた粉を混合して小麦粉とした。ブラベンダー社製テストミルで挽砕した場合には、1等粉、2等粉を合わせて小麦粉を得た。また、収穫したコムギは超遠心粉砕機 ZM 200 (Retsch社) を用いて全粒粉に調製した。ロータ回転数は14,000 rpmとし、スクリーンは梯形孔の0.75 mmとした。
上記小麦粉よりデンプンを次のようにして精製した。小麦粉重量に対し、0.5倍の重量の水を加え、よく捏ねて生地を作成し、冷水中で1時間浸漬した。その後、水中で生地を捏ねてデンプンをもみだした。このデンプン懸濁液を2,070×gで10分間遠心分離し、上清を除去した。デンプンの上層に沈澱したペントザン等の夾雑物を除去した。この操作を繰り返してデンプンを洗浄した。このデンプンを凍結乾燥して精製デンプンを得た。また、精製したデンプンは水分含量を測定し、乾物重量を求めた。
精製したデンプンを用いてアミロース含量を測定した。AMYLOSE / AMYLOPECTIN ASSAY KIT (Megazyme社) を使用し、キットの手順書に従って測定を行った。結果を下記表4に示す。
調製した全粒粉を用いてラピッドビスコアナライザー (RVA) を用いた粘度特性の測定を行った。装置にはNEWPORT SCIENTIFIC 社製 model RVA-4を用い、測定法はアメリカ穀物学会の定める公定法 (AACC法76-21) の小麦粉用の方法に従い、STD3のプログラムで測定した。ただし、水の代わりに1 mM 硝酸銀水溶液を使用した。結果を下記表4に示す。
前述の小麦粉を用いて、加温条件下で調製した生地中のマルトース含量の測定を行った。小麦粉1gを遠心チューブに測りとり、温水2mlと混合し保温しながら5分間薬さじで混捏し、小麦粉生地を作製した。温水及び保温の温度は、50℃〜70℃まで5℃刻み(温水50℃・保温50℃〜温水70℃・保温70℃の5段階)で試験区を設定した。作製した各試験区の小麦粉生地を氷上で十分に冷却した後に80%エタノールを10ml加えよく撹拌し、密栓して沸騰水中で20分間加熱して酵素を失活させるとともに糖分を抽出した。これを氷上で十分冷却してから40%エタノールを30ml加えよく混合し、4℃で20分間振とうした。その後、容器内の溶液1.5mlを採取し遠心チューブに移し、4℃、17,800×gで5分間遠心分離し、上清200μlを新たな1.5ml遠心チューブに移し、濃縮遠心乾燥機で乾燥した。乾燥後に75μlの超純水を加えよく混合し、続いて75μlのアセトニトリルを加えよく混合した。これを4℃(17,800×g)で5分間遠心分離し、上清をPTFEフィルター(ADVANTEC DISMIC-3 0.5μm)に通し、その溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC, Waters社製 alliance e2695 separation module)を用いて測定した。検出には示差屈折率検出器(Waters社製 2414 Refractive Index Detector)を用い、75%(v/v)アセトニトリルを分離溶媒として、ASAHIPAK NH2P-50 3Eカラムを用いて分離した。あらかじめ標準物質を用いて作成しておいた検量線をもとに、マルトースのピーク面積から濃度を算出し、生地を構成する小麦粉乾燥重量あたりのマルトース含量を算出し、サンプル間の比較を行なった。
生地中にマルトースが生成するのは小麦粉内在のβ-アミラーゼの働きによる。β-アミラーゼは、デンプンの非還元末端からマルトースを切り出していく酵素であり、糊化したデンプンによく働く。特定温度条件で生地中にマルトースを多く生成する2/2欠損体に関して、その特徴が小麦粉内在β-アミラーゼの活性の違いに起因しているのかどうかを確認するため、各系統の小麦粉中のβ-アミラーゼ活性を測定した。測定には市販のβ-アミラーゼ活性測定キット(Megazyme社)を使用し、キットの手順書に従って測定を行った。
製造例1
2/2欠損体である系統(i)の小麦粉300gに60℃の湯300mlを加え、60℃保温しながら5分間混捏し(加温混捏)、中間生地を作製した。この中間生地を4℃で一晩寝かせた後、下記の配合(中間生地の配合量は小麦粉として全小麦粉使用量のおよそ50%)で材料をホームベーカリー(エムケー精工株式会社)に投入し、「早焼きパンコース」プログラムで食パンを作製した。
材料:
中間生地 260g(小麦粉140g相当)
一般的なパン用小麦粉 140g
水 67ml
砂糖 20g
塩 4g
ショートニング 20g
脱脂粉乳 6g
ドライイースト 3.6g
系統(i)の小麦粉に代えて、3/2欠損体である系統(x)の小麦粉を使用して中間生地を作製し、かつ、中間生地の配合量を下記の通り製造例1の5分の1(すなわち、全小麦粉使用量のおよそ10%)としたことを除き、製造例1と同様の手順で食パンを焼き上げた。
材料:
中間生地 52g(小麦粉28g相当)
一般的なパン用粉 252g
水 166ml
砂糖 20g
塩 4g
ショートニング 20g
脱脂粉乳 6g
ドライイースト 3.6g
系統(i)の小麦粉に代えて、系統(xii)の欠損パターンを有する農林61号の小麦粉を使用し、製造例1と同様の手順で食パンを焼き上げた。
系統(i)の小麦粉に代えて、系統(xv)の欠損パターンを有するチクゴイズミの小麦粉を使用し、製造例1と同様の手順で食パンを焼き上げた。
一般的なパン用小麦粉のみを小麦粉材料として用いて、加温混捏を行なわず、材料をホームベーカリー(エムケー精工株式会社)に投入して「食パンコース」プログラムで食パンを作製した。
製造例1〜4の加温混捏直後の中間生地及び4℃で一晩寝かせた後の中間生地のそれぞれについて、生地中のマルトース含量を測定した。生地からの糖抽出およびマルトース含量の測定は上記[加温処理した生地中のマルトース含量の測定]と同様に実施した。
製造例1〜5の食パンの食味試験を行なった。10名のパネラーにより下記の項目について5段階評価し、各項目の平均値を算出した。
弾力:弾力がない(1点)〜とても弾力がある(5点)
粘り:粘らない(1点)〜粘りが強い(5点)
モチモチ感:モチモチ感がない(1点)〜とてもモチモチしている(5点)
しっとり感:しっとり感がない(1点)〜とてもしっとりする(5点)
甘さ:甘さがない(1点)〜とても甘みがある(5点)
ぱさつき:ぱさつきがない(1点)〜とてもぱさぱさする(5点)
香り:香りがない(1点)〜とても香りが強い(5点)
Claims (16)
- GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉又は前記収穫物若しくは前記小麦粉から分離されたデンプンを含む生地材料を、70℃未満の水と混合し、55℃以上70℃未満の加温条件下で混捏することを含む、マルトース高含有生地の製造方法。
- 前記生地材料は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を含む生地材料である、請求項1記載の方法。
- 55℃〜67℃の水と混合し、55℃〜67℃の加温条件下で混捏する、請求項1又は2記載の方法。
- 前記生地はベーカリー生地である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記生地はパン生地である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記コムギは、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記コムギは、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損したコムギである請求項6記載の方法。
- 前記コムギは、GBSSI-B1、GBSSI-D1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギである請求項7記載の方法。
- 前記コムギは、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損したコムギである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記コムギは、GBSSI-A1、GBSSI-B1、GBSSI-D1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギである請求項9記載の方法。
- GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉又は前記収穫物若しくは前記小麦粉から分離されたデンプンを含む生地材料を、70℃未満の水と混合し、55℃以上70℃未満の加温条件下で混捏することを含む、マルトース高含有コムギ加工食品の製造方法。
- 前記生地材料は、GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を含む、請求項11記載の方法。
- コムギ加工食品がベーカリー食品である請求項11又は12記載の方法。
- コムギ加工食品がイースト発酵食品である請求項11又は12記載の方法。
- GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉又は前記収穫物若しくは前記小麦粉から分離されたデンプンを含む生地材料を、70℃未満の水と混合し、55℃以上70℃未満の加温条件下で混捏することにより、マルトース高含有生地を製造する工程、並びに
得られたマルトース高含有生地を用いてコムギ加工食品を製造する工程
を含む、コムギ加工食品の製造方法。 - GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1のうちの少なくともいずれか2つの酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉又は前記収穫物若しくは前記小麦粉から分離されたデンプンを含む生地材料を、70℃未満の水と混合し、55℃以上70℃未満の加温条件下で混捏することを含む、生地中のマルトース含量を高める方法。
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