JP6344454B2 - 高強度鋼板およびその製造方法並びに高強度亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

高強度鋼板およびその製造方法並びに高強度亜鉛めっき鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、主に自動車の構造部材に好適な成形性に優れた高強度鋼板およびその製造方法に関し、特に780MPa以上の引張強度(TS)を有し、延性のみならず、剛性に優れ、さらには深絞り性にも優れる高強度鋼板を得ようとするものである。
近年、衝突時における乗員の安全性確保や車体軽量化による燃費改善を目的として、TSを780MPa以上としつつも板厚は薄い高強度鋼板を、自動車構造部材に適用する動きが積極的に進められている。加えて、最近では、980MPa級、1180MPa級のTSを有する極めて強度の高い高強度鋼板の適用も検討されている。
しかしながら、一般的に鋼板の高強度化は成形性の低下を招くため、高強度と優れた成形性を両立させることは難しく、高強度と優れた成形性を併せ持つ鋼板が望まれていた。
また、最近では、鋼板の高強度化が顕著に進んだ結果、TSが780MPa以上で、板厚2.0mmを下回るような薄鋼板を積極的に適用しようという動きがある。しかし、薄肉化による車体剛性の低下が問題になるため、自動車の構造部品の剛性を向上させることが必要になってきている。構造部品の剛性は、断面形状が同じならば鋼板の板厚とヤング率で決まるため、軽量化と構造部品の剛性を両立させるには、鋼板のヤング率を高めることが有効である。
ヤング率は、鋼板の集合組織に大きく支配され、体心立方格子である鉄の場合は、原子の稠密方向である<111>方向に高く、逆に原子密度の小さい<100>方向に低いことが知られている。結晶方位に異方性のない通常の鉄のヤング率は約206GPaであることが知られているが、結晶方位に異方性を持たせ、特定方向の原子密度を高めることで、その方向のヤング率を高めることができる。しかし、自動車車体の剛性を考える場合には、様々な方向から荷重が加わるため、特定方向のみでなく、各方向に高いヤング率を有する鋼板が求められる。
このような要望に対して、例えば特許文献1には、質量%で、C:0.02〜0.15%、Si:0.3%以下、Mn:1.0〜3.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:1.0%以下、N:0.01%以下およびTi:0.1〜1.0%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるスラブを、熱間圧延し、20〜85%の圧下率で冷間圧延後、再結晶焼鈍することで、フェライト単相のミクロ組織を有し、TSが590MPa以上、かつ圧延方向に対して90°方向のヤング率が230GPa以上、圧延方向に対して0°、45°、90°方向の平均ヤング率が215GPa以上であることを特徴とする剛性に優れた高強度薄鋼板の製造方法が提案されている。
また、特許文献2には、質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:1.5%以下、Mn:1.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、N:0.01%以下、Nb:0.02〜0.15%およびTi:0.01〜0.15%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるスラブを、熱間圧延し、40〜75%の圧下率で冷間圧延後、再結晶焼鈍することで、フェライトとマルテンサイトの混合組織を有し、TSが590MPa以上、かつ圧延方向に対して直角方向のヤング率が230GPa以上であることを特徴とする加工性に優れた高剛性高強度鋼板の製造方法が提案されている。
さらに、特許文献3には、質量%で、C:0.010〜0.050%、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜3.0%、P:0.005〜0.1%、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.5%、N:0.01%以下およびNb:0.03〜0.3%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるスラブを、熱間圧延後に冷間圧延し、再結晶焼鈍することで、フェライト相の面積率が50%以上、およびマルテンサイト相の面積率が1%以上を含む鋼組織を有し、圧延直角方向のヤング率が225GPa以上、平均r値が1.3以上であることを特徴とする高強度鋼板の製造方法が提案されている。
特開2007−092130号公報 特開2008−240125号公報 特開2005−120472号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、引張強度780MPa以上を達成するためには、例えばその実施例を参照すると、V:0.4質量%およびW:0.5質量%もの添加が必要である。また、さらなる高強度化を図るには、CrやMo等の高価な元素の活用が必要不可欠であるため、合金コストが増加するという問題があった。
特許文献2に記載の技術では、鋼板の一方向のみのヤング率を高めることには有効であるが、各方向に高いヤング率を有する鋼板が必要とされる自動車の構造部品の剛性向上には適用できない。
特許文献3に記載の技術では、剛性と加工性に優れることを開示しており、加工性の中でも、とりわけ深絞り性に優れることを開示しているが、TSが高々660MPa程度と低い。
さらに、特許文献1〜3に記載の技術では、必ずしも延性および剛性のみならず、深絞り性にも優れるという特長を有していない。
本発明は、かかる事情に鑑み開発されたもので、フェライトの集合組織をγ−fiber(<111>軸が圧延面の法線方向に平行な繊維集合組織)に発達させ、かつベイナイト変態を活用し、適正量の残留オーステナイトを分散させることで、780MPa以上のTSを有しつつ、延性のみならず剛性に優れ、さらには深絞り性に優れる高強度鋼板を得ることを目的とする。
なお、本発明において、延性すなわちEl(全伸び)に優れるとは、TS×Elの値が15000MPa・%以上を意味する。
また、剛性すなわちヤング率に優れるとは、圧延方向、および圧延方向に対して45°方向のヤング率が205GPa以上、かつ圧延方向に対して直角方向のヤング率が220GPa以上を意味する。
さらに、深絞り性に優れるとは、深絞り性の指標である平均r値が、鋼板の強度に関係なく0.95以上であることを意味する。
さて、発明者らは、780MPa以上のTSを有し、延性、剛性、さらには深絞り性に優れる高強度鋼板を開発すべく、鋭意検討を重ねた。
その結果、以下の知見を得るにいたった。
(1)本発明の製造方法では、TiおよびNbのうちのいずれか1種あるいは2種の元素を添加し、その他の合金元素の成分組成を適正に制御した鋼スラブを加熱したのち、熱間圧延を施すが、その際、熱間圧延の巻取温度(CT)を比較的高温にすることで、添加したTiおよび/またはNbの析出促進効果により、侵入型元素であるCおよびNを、熱安定性の高い炭化物および窒化物として析出させることが重要である。
(2)熱間圧延後は、必要に応じて、熱処理を施して熱延板を軟質化させ、その後の冷間圧延にて、圧下率を極力高くして、α−fiber(<110>軸が圧延方向に平行な繊維集合組織)およびγ−fiberの集合組織を発達させることが重要である。
(3)このようにして得られた焼鈍処理前の鋼板組織を、固溶Cおよび固溶Nを熱安定性の高い炭化物および窒化物として析出させ、かつα−fiberおよびγ−fiberの集合組織を発達させた組織とすることで、その後のフェライト単相域での1回目の焼鈍処理によりフェライトを再結晶させる際に、フェライトの集合組織をα−fiberおよびγ−fiber、特にγ−fiberに発達させることができ、その結果、全方向のヤング率を向上させ、また平均r値を向上させることが可能となる。
(4)次いで、フェライト+オーステナイト二相域での2回目の焼鈍処理で、フェライトの集合組織を維持しつつオーステナイトを一定量生成させ、その後の冷却過程で、ベイナイトを生成させ残留オーステナイトを生成させるとともに、フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトを一定の割合以上生成させることにより、所望のTSおよびElを確保することが可能となる。
(5)かくして、780MPa以上のTSを有しつつ、延性のみならず剛性に優れ、さらには深絞り性にも優れる高強度鋼板を得ることができる。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.成分組成が、質量%で、
C:0.08%以上0.35%以下、
Si:0.50%以上2.50%以下、
Mn:1.50%以上3.00%以下、
P:0.001%以上0.100%以下、
S:0.0001%以上0.0200%以下および
N:0.0005%以上0.0100%以下
を含有し、さらに、
Ti:0.001%以上0.200%以下および
Nb:0.001%以上0.200%以下
のうちから選んだ1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
鋼組織が、面積率で、
フェライトが20%以上で、該フェライトの平均結晶粒径が10μm以上20μm以下であり、また
ベイナイトが5%以上、
マルテンサイトが5%以上で、
ベイナイトおよびマルテンサイトの面積率が合計で15%以上であり、
体積率で、残留オーステナイトが5%以上であり、
さらに、フェライトの集合組織が、α−fiberに対するγ−fiberのインバース強度比で、3.0超であるミクロ組織を有する
ことを特徴とする高強度鋼板。
2.前記1に記載の高強度鋼板に、さらに、質量%で、
Al:0.01%以上1.00%以下、
V:0.005%以上0.100%以下、
B:0.0001%以上0.0050%以下、
Cr:0.05%以上1.00%以下、
Cu:0.05%以上1.00%以下、
Sb:0.0020%以上0.2000%以下、
Sn:0.0020%以上0.2000%以下、
Ta:0.0010%以上0.1000%以下、
Ca:0.0003%以上0.0050%以下、
Mg:0.0003%以上0.0050%以下および
REM:0.0003%以上0.0050%以下
のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする高強度鋼板。
3.前記1または2に記載の高強度鋼板の製造方法であって、
前記1または2に記載の成分組成を有する鋼スラブを、1100℃以上1300℃以下に加熱し、仕上げ圧延出側温度を800℃以上1000℃以下で熱間圧延し、巻取温度を300℃以上800℃以下で巻き取り、酸洗処理後、そのまま、あるいは450℃以上800℃以下の温度域で900s以上36000s以下の間保持したのち、40%以上の圧下率で冷間圧延を施し、
ついで得られた冷延板を、450℃以上T1温度以下の温度域に加熱し、該温度域で300s以上保持する1回目の焼鈍処理を施し、
ついで、T1温度以上T2温度以下の温度域まで再加熱して2回目の焼鈍処理を施したのち、少なくとも550℃までの平均冷却速度を5℃/s以上として、300℃以上500℃以下の冷却停止温度域まで冷却し、該冷却停止温度域で10s以上保持することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。

T1温度(℃)=720+29×[%Si]−21×[%Mn]+17×[%Cr]
T2温度(℃)=946−203×[%C]1/2+45×[%Si]−30×[%Mn]+150×[%Al]−20×[%Cu]+11×[%Cr]+350×[%Ti]+104×[%V]
[%X]は鋼板の成分元素Xの質量%とし、含有しない成分元素については零とする。
4.前記1または2に記載の高強度鋼板の表面に、亜鉛めっき層を有することを特徴とする高強度亜鉛めっき鋼板。
本発明によれば、780MPa以上のTSを有し、延性のみならず剛性に優れ、さらには深絞り性にも優れる高強度鋼板を効果的に得ることができる。
従って、本発明により得られた高強度鋼板を、例えば自動車構造部材に適用することによって車体軽量化による燃費改善を図ることができ、産業上の利用価値は極めて大きい。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、高強度鋼板の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、以下の説明において、鋼の成分元素の含有量を表す「%」は、特に明記しない限り「質量%」を意味する。
[C:0.08%以上0.35%以下]
Cは、鋼板の高強度化および安定した残留オーステナイト量を確保するのに必要不可欠な元素であり、ベイナイト量およびマルテンサイト量の確保および室温でオーステナイトを残留させるために必要な元素である。
C量が0.08%未満では、所望のTSとElを確保することが難しい。一方、C量が0.35%を超えると、鋼板の脆化や遅れ破壊の懸念が生じ、また、溶接部および熱影響部の硬化が著しく溶接性が劣化する。従って、C量は0.08%以上0.35%以下とする。好ましくは0.12%以上0.33%以下、より好ましくは0.15%以上0.31%以下、さらに好ましくは0.20%以上0.30%以下である。
[Si:0.50%以上2.50%以下]
Siは、炭化物の生成を抑制し、残留オーステナイトの生成を促進することで、鋼板のElを向上させるのに有用な元素である。また、残留オーステナイトが分解することによる炭化物の生成を抑制するのにも有効である。さらに、フェライト中で高い固溶強化能を有するため、鋼の強度向上に寄与する。また、フェライトに固溶したSiは、加工硬化能を向上させて、フェライト自身の延性を高める効果がある。
こうした効果を得るには、Si量を0.50%以上含有する必要がある。一方、Si量が2.50%を超えると、フェライト中への固溶量の増加による加工性、靭性の劣化を招き、また赤スケール等の発生による表面性状の劣化や、溶融めっきを施す場合には、めっき付着性および密着性の劣化を引き起こす。従って、Si量は0.50%以上2.50%以下とする。好ましくは0.80%以上2.00%以下、より好ましくは1.00%以上1.80%以下、さらに好ましくは1.10%以上1.70%以下である。
[Mn:1.50%以上3.00%以下]
Mnは、鋼板の強度確保のために有効である。また、焼入れ性を向上させて複合組織化を容易にする。同時に、Mnは、冷却過程でのパーライトの生成を抑制する作用があり、オーステナイトからベイナイトおよびマルテンサイトへの変態を容易にする。こうした効果を得るには、Mn量を1.50%以上にする必要がある。一方、Mn量が3.00%を超えると、板厚方向のMn偏析が顕著となって、材質安定性の低下を招く。また、鋳造性の劣化などを引き起こす。従って、Mn量は1.50%以上3.00%以下とする。好ましくは1.50%以上2.70%以下、より好ましくは1.80%以上2.50%以下である。
[P:0.001%以上0.100%以下]
Pは、固溶強化の作用を有し、所望の強度に応じて添加できる元素である。また、フェライト変態を促進するために複合組織化にも有効な元素である。こうした効果を得るためには、P量を0.001%以上にする必要がある。一方、P量が0.100%を超えると、溶接性の劣化を招くとともに、亜鉛めっきを合金化処理する場合には、合金化速度を大幅に遅延させて亜鉛めっきの品質を損なう。また、粒界偏析により脆化することによって耐衝撃性を劣化させる。従って、P量は0.001%以上0.100%以下とする。好ましくは0.005%以上0.050%以下である。
[S:0.0001%以上0.0200%以下]
Sは、粒界に偏析して熱間加工時に鋼を脆化させるとともに、硫化物として存在して局部変形能を低下させる。そのため、鋼中含有量は0.0200%以下とする必要がある。一方、生産技術上の制約からは、S量を0.0001%以上にする必要がある。従って、S量は0.0001%以上0.0200%以下とする。好ましくは0.0001%以上0.0050%以下である。
[N:0.0005%以上0.0100%以下]
Nは、鋼の耐時効性を最も大きく劣化させる元素である。特に、N量が0.0100%を超えると、耐時効性の劣化が顕著となるため、その量は少ないほど好ましいが、生産技術上の制約から、N量は0.0005%以上にする必要がある。従って、N量は0.0005%以上0.0100%以下とする。好ましくは0.0005%以上0.0070%以下である。
本発明では、上記成分に加えて、ヤング率の向上に有利な方位の発達したフェライトを得るため、さらにTi:0.001%以上0.200%以下およびNb:0.001%以上0.200%以下のうちのいずれか1種または2種を含有させる必要がある。
[Ti:0.001%以上0.200%以下]
Tiは、C、S、Nと析出物を形成して、焼鈍時に剛性および深絞り性の向上に有利な方位の発達したフェライトを生成させるだけでなく、再結晶粒の粗大化を抑制して、強度の向上にも有効に寄与する。また、Bを添加した場合は、NをTiNとして析出させるため、BNの析出が抑制され、後述するBの効果が有効に発現される。こうした効果を得るには、Ti量を0.001%以上とする必要がある。一方、Ti量が0.200%を超えると、通常のスラブ再加熱時において炭窒化物を全固溶させることができず、粗大な炭窒化物が残るため、高強度化や再結晶抑制の効果が得られない。また、連続鋳造されたスラブを、一旦冷却したのち再加熱を行う工程を経ることなく、そのまま熱間圧延する場合においてもTi量が0.200%を超えた分の再結晶抑制効果の寄与分は小さく、合金コストの増加も招いてしまう。したがって、Ti量は0.001%以上0.200%以下とする。好ましくは0.030%以上0.170%以下、さらに好ましくは0.050%以上0.150%以下である。
[Nb:0.001%以上0.200%以下]
Nbは、熱間圧延時あるいは焼鈍時に微細な析出物を形成して、焼鈍時に剛性および深絞り性の向上に有利な方位の発達したフェライトを生成させるだけでなく、再結晶粒の粗大化を抑制して、強度の向上にも有効に寄与する。特にNbは添加量を適切な量とすることで、焼鈍時に逆変態で生成するオーステナイト相を微細化するため、焼鈍後のミクロ組織も微細化し、強度を上昇させる効果がある。このような効果を得るには、Nb量を0.001%以上とする必要がある。一方、Nb量が0.200%を超えると、通常のスラブ再加熱時において炭窒化物を全固溶させることができず、粗大な炭窒化物が残るため、高強度化や再結晶抑制の効果が得られない。また、連続鋳造されたスラブを、一旦冷却したのち再加熱を行う工程を経ることなく、そのまま熱間圧延する場合においてもNb量が0.200%を超えた分の再結晶抑制効果の寄与分は小さく、合金コストの増加も招いてしまう。したがって、Nb量は0.001%以上0.200%以下とする。好ましくは0.030%以上0.170%以下、さらに好ましくは0.050%以上0.150%以下である。
本発明の高強度鋼板は、上記の基本成分に加え、必要に応じて、さらにAl、V、B、Cr、Cu、Sb、Sn、Ta、Ca、MgおよびREMのうちから選ばれる少なくとも1種の元素を、単独または複合して含有させることができる。なお、鋼板の成分組成の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
〔Al:0.01%以上1.00%以下〕
Alは、炭化物の生成を抑制し、残留オーステナイトの生成を促進するのに有効な元素である。また、製鋼工程で脱酸剤として添加される元素である。こうした効果を得るには、Al量を0.01%以上にする必要がある。一方、Al量が1.00%を超えると、鋼板中の介在物が多くなり延性を劣化させる。従って、Al量は0.01%以上1.00%以下とする。好ましくは0.03%以上0.50%以下である。
〔V:0.005%以上0.100%以下〕
Vは、熱間圧延時あるいは焼鈍時に微細な析出物を形成することで、再結晶粒の粗大化を抑制し、強度の上昇に寄与するとともに、焼鈍時に剛性および深絞り性の向上に有利な方位の発達したフェライトを生成させる。こうした効果を得るためには、V量は、0.005%以上添加する必要がある。一方、V量が0.100%を超えると、成形性が低下する。従って、Vを添加する場合、その含有量は0.005%以上0.100%以下とする。
〔B:0.0001%以上0.0050%以下〕
Bは、鋼の強化に有効な元素であり、その添加効果は、0.0001%以上で得られる。一方、Bは0.0050%を超えて過剰に添加すると、マルテンサイトの生成量が過大となって、著しい強度上昇による延性の低下の懸念が生じる。従って、B量は0.0001%以上0.0050%以下とする。好ましくは0.0005%以上0.0030%以下である。
〔Cr:0.05%以上1.00%以下〕、〔Cu:0.05%以上1.00%以下〕
CrおよびCuは、固溶強化元素としての役割のみならず、焼鈍時の冷却過程において、オーステナイトを安定化し、複合組織化を容易にする。こうした効果を得るには、Cr量およびCu量は、それぞれ0.05%以上にする必要がある。一方、Cr量も、Cu量も1.00%を超えると、鋼板の成形性が低下する。従って、CrおよびCuを添加する場合、それらの含有量はそれぞれ0.05%以上1.00%以下とする。
〔Sb:0.0020%以上0.2000%以下〕、〔Sn:0.0020%以上0.2000%以下〕
SbおよびSnは、鋼板表面の窒化や酸化によって生じる鋼板表層の数十μm程度の領域の脱炭を抑制する観点から、必要に応じて添加する。このような窒化や酸化を抑制すると、鋼板表面におけるマルテンサイトの生成量が減少するのを防止して、鋼板の強度や材質安定性の確保に有効だからである。一方で、これらいずれの元素についても、0.2000%を超えて過剰に添加すると靭性の低下を招く。従って、SbおよびSnを添加する場合、それらの含有量は、それぞれ0.0020%以上0.2000%以下の範囲内とする。
〔Ta:0.0010%以上0.1000%以下〕
Taは、TiやNbと同様に、炭化物や炭窒化物を生成して高強度化に寄与する。加えて、Nb炭化物やNb炭窒化物に一部固溶し、(Nb,Ta)(C,N)のような複合析出物を生成して、析出物の粗大化を著しく抑制し、かかる析出物安定化効果により鋼板の強度向上に有効に寄与すると考えられる。そのため、Taを含有することが好ましい。
ここで、上述の析出物安定化効果は、Taの含有量を0.0010%以上とすることで得られる一方で、Taを過剰に添加しても、析出物安定化効果が飽和する上に、合金コストが増加する。従って、Taを添加する場合、それらの含有量はそれぞれ、0.0010%以上0.1000%以下の範囲内とする。
〔Ca:0.0003%以上0.0050%以下〕、〔Mg:0.0003%以上0.0050%以下〕、〔REM:0.0003%以上0.0050%以下〕
Ca、MgおよびREMは、脱酸に用いる元素であるとともに、硫化物の形状を球状化し、局部延性への硫化物の悪影響を改善するために有効な元素である。これらの効果を得るためには、それぞれ0.0003%以上の添加が必要である。しかしながら、Ca、MgおよびREMは、0.0050%を超えて過剰に添加すると、介在物等の増加を引き起こして表面や内部に欠陥などを引き起こす。従って、Ca、MgおよびREMを添加する場合、それらの含有量はそれぞれ0.0003%以上0.0050%以下とする。
次に、本発明の高強度鋼板のミクロ組織(鋼組織)について説明する。
[フェライトの面積率:20%以上、フェライトの平均結晶粒径:10μm以上20μm以下]
本発明において、極めて重要な発明構成要件である。本発明の高強度鋼板は、高ヤング率化および高r値化に寄与する軟質なフェライト中に、主として延性を担う残留オーステナイトと強度を担うベイナイトおよびマルテンサイトとを分散させた複合組織からなる。そして、十分な延性および強度−延性バランスを確保するためには、2回目の焼鈍およびその冷却過程で生成するフェライトの面積率を20%以上にする必要がある。
なお、フェライトの面積率の上限は、特に限定はしないが、強度確保のためには80%以下が好ましく、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下である。
また、フェライトの平均結晶粒径を10μm以上20μm以下とすることが重要である。フェライトの平均結晶粒径が10μm未満では、所望の集合組織が得られず、所望のヤング率および平均r値を確保できない。一方、フェライトの平均結晶粒径が20μmを超えると、所望のベイナイトおよびマルテンサイトの面積率が得られず、所望の強度を確保できない。したがって、フェライトの平均結晶粒径は10μm以上20μm以下とする。好ましくは11μm以上17μm以下である。かかるフェライト粒径の制御は、製造工程中、特に1回目の焼鈍処理における焼鈍温度および保持時間を適切に制御することによって達成することができる。
[ベイナイトの面積率:5%以上]
本発明において、極めて重要な発明構成要件である。ベイナイトの生成は、未変態オーステナイト中のCを濃化させ、加工時に高ひずみ域でTRIP効果を発現できる残留オーステナイトを得るために必要である。また、高強度および高延性を両立するためには、残留オーステナイトの生成量を増大することが有効である。
本発明において、2回目の焼鈍後の保持過程で、ベイナイトの生成量が5%未満の場合、オーステナイトへのC濃化が十分に進まないため、加工時に高ひずみ域でTRIP効果を発現する残留オーステナイト量が減少する。また、2回目焼鈍後の保持過程での未変態オーステナイトの分率が上昇し、冷却後のマルテンサイトの分率が上昇するため、TSは上昇するものの、延性が低下する。そのため、ベイナイトの面積率は、鋼板組織全体に対する面積率で5%以上が必要である。
なお、ベイナイトの面積率の上限は、特に限定はしないが、高ヤング率化および高r値化に有利なフェライトの面積率確保のためには60%以下とすることが好ましく、より好ましくは50%以下である。
[マルテンサイトの面積率:5%以上]
本発明では、鋼板の強度確保のため、マルテンサイトの面積率を5%以上にする必要がある。
なお、マルテンサイトの面積率の上限は、特に限定はしないが、高ヤング率化および高r値化に有利なフェライトの面積率を確保すると同時に、良好な延性を確保するためには、マルテンサイトの面積率は50%以下が好ましく、より好ましくは40%以下である。
[ベイナイトおよびマルテンサイトの面積率:合計で15%以上]
本発明において、極めて重要な発明構成要件である。低温変態相であるベイナイトおよびマルテンサイトの面積率が15%未満の場合は、鋼板の強度を確保することができない。従って、所望のTSを確保するためには、ベイナイトおよびマルテンサイトの面積率を合計で15%以上にする必要がある。
なお、ベイナイトおよびマルテンサイトの合計面積率の上限は、特に限定はしないが、高ヤング率化および高r値化に有利なフェライトの面積率確保のためには70%以下が好ましい。より好ましくは60%以下、さらに好ましくは55%以下である。
なお、フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの面積率は、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面(L断面)を研磨後、1vol.%ナイタールで腐食し、板厚1/4位置(鋼板表面から深さ方向で板厚の1/4に相当する位置)について、SEM(Scanning Electron Microscope;走査電子顕微鏡)を用いて3000倍の倍率で3視野観察し、得られた組織画像を、Adobe Systems社のAdobe Photoshopを用いて、構成相(フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイト)の面積率を3視野分算出し、それらの値を平均して求めることができる。また、上記の組織画像において、フェライトは灰色の組織(基地組織)、マルテンサイトは白色の組織、そしてベイナイトは灰色の下地に一部白色の組織が混在した組織を呈している。
さらに、フェライトの平均結晶粒径は次のようにして求めることができる。上述のAdobe Photoshopを用いて、画像上に引いた線分の長さを実際の長さに補正した値を、画像上に引いた線分が通る結晶粒の数で割ることで算出した。
[残留オーステナイトの体積率:5%以上]
本発明では、良好な延性および強度−延性バランスを確保するため、残留オーステナイトの量は体積率で5%以上とする必要がある。より良好な延性および強度−延性バランスを確保するためには、残留オーステナイトの量は体積率で8%以上とすることが好ましく、より好ましくは11%以上である。ここに、残留オーステナイトの体積率の上限については特に限定しないが、20%以下とするのが好ましい。
なお、残留オーステナイトの体積率は、鋼板を板厚方向に板厚の1/4まで研削・研磨し、X線回折強度測定により求めた。入射X線には、Co−Kαを用い、フェライトの(200)、(211)各面の回折強度に対するオーステナイトの(200)、(220)、(311)各面の強度比から残留オーステナイト量を計算した。
また、本発明に従うミクロ組織では、上記したフェライト、ベイナイト、マルテンサイトおよび残留オーステナイト以外に、焼戻しマルテンサイト、焼戻しベイナイト、パーライト、セメンタイト等の炭化物やその他鋼板の組織として公知のものが含まれる場合があるが、これらの合計量が面積率で15%以下の範囲であれば、含まれていても、本発明の効果が損なわれることはない。
次に、鋼板の集合組織について説明する。
[フェライトの集合組織のα−fiberに対するγ−fiberのインバース強度比:3.0超]
α−fiberとは<110>軸が圧延方向に平行な繊維集合組織であり、またγ−fiberとは<111>軸が圧延面の法線方向に平行な繊維集合組織である。体心立方金属では、圧延変形によりα−fiberおよびγ−fiberが強く発達し、再結晶焼鈍でもそれらに属する集合組織が形成するという特徴がある。
本発明において、フェライトの集合組織のα−fiberに対するγ−fiberのインバース強度比が3.0以下の場合、高ヤング率化および高r値化に好適なγ−fiberの集積度が低く、所望のヤング率および平均r値を確保することが困難となる。従って、フェライトの集合組織のα−fiberに対するγ−fiberのインバース強度比は3.0超とする必要がある。また、かかるインバース強度比の上限は、特に制限されることはないが、8.0以下とすることが好ましい。
なお、従来の一般的な製造方法で得られる高強度鋼板では、α−fiberに対するγ−fiberのインバース強度比は1.0〜2.5程度である。
フェライトの集合組織のα−fiberに対するγ−fiberのインバース強度比は、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面(L断面)を湿式研磨およびコロイダルシリカ溶液を用いたバフ研磨により表面を平滑化した後、0.1vol.%ナイタールで腐食することで、試料表面の凹凸を極力低減し、かつ加工変質層を完全に除去し、ついで板厚1/4位置(鋼板表面から深さ方向で板厚の1/4に相当する位置)について、SEM−EBSD(Electron Back−Scatter Diffraction;電子線後方散乱回折)法を用いて結晶方位を測定する。ついで、得られたデータを、AMETEK EDAX社のOIM Analysisを用いて、まずハイライトのグレイン機能により類似方位の隣接フェライトを含むベイナイトおよびマルテンサイトを選択し、次にチャート機能によりベイナイトおよびマルテンサイトの方位情報のみを抽出することで、フェライトと、ベイナイトおよびマルテンサイトの集合組織情報を分離し、分離したフェライトのα−fiberおよびγ−fiberのインバース強度を求めることにより、算出することができる。
次に、製造方法について説明する。
本発明では、TiおよびNbのうちのいずれか1種あるいは2種の元素を添加し、その他の合金元素の成分組成を適正に制御した鋼スラブを加熱し、熱間圧延を施す。その際、熱間圧延の巻取温度(CT)を比較的高温にすることで、添加したTiおよび/またはNbの析出促進効果により、侵入型元素であるCおよびNを、熱安定性の高い炭化物および窒化物として析出させることが重要である。
また、熱間圧延後は、必要に応じて、熱処理を施して熱延板を軟質化させる。その後、冷間圧延を施す場合には、圧下率を極力高くして、α−fiberおよびγ−fiberの集合組織を発達させることが重要である。
このようにして得られた焼鈍処理前の鋼板組織を、固溶CおよびNを熱安定性の高い炭化物および窒化物として析出させ、かつα−fiberおよびγ−fiberの集合組織を発達させた組織とすることで、その後のフェライト単相域での第1加熱工程(1回目の焼鈍処理)で、フェライトを再結晶させることで、フェライトの集合組織をα−fiberおよびγ−fiber、特にγ−fiberに発達させることができ、その結果、全方向のヤング率を向上させ、また、平均r値を向上させることが可能となる。
次いで、フェライト+オーステナイト二相域での第2加熱工程(2回目の焼鈍処理)で、フェライトの集合組織を維持しつつオーステナイトを一定量生成させ、その後の冷却過程で、ベイナイトおよび残留オーステナイトを生成させるとともに、フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトを一定の割合以上生成させることにより、780MPa以上のTSを有しつつ、延性のみならず剛性に優れ、さらには深絞り性にも優れる高強度鋼板を得ることが可能となる。
また、本発明の高強度亜鉛めっき鋼板は、上述した高強度鋼板に、公知公用の亜鉛めっき処理を施すことにより製造することができる。
以下、各製造工程について説明する。
[鋼スラブの加熱温度:1100℃以上1300℃以下]
鋼スラブの加熱段階で存在している析出物は、最終的に得られる鋼板内では粗大な析出物として存在し、強度に寄与しないため、鋳造時に析出したTi、Nb系析出物を再溶解させる必要がある。
ここに、鋼スラブの加熱温度が1100℃未満では、析出物の十分な溶解が困難であって、圧延荷重の増大による熱間圧延時のトラブル発生の危険が増大するなどの問題が生じる。また、スラブ表層の気泡、偏析などの欠陥をスケールオフし、鋼板表面の亀裂、凹凸を減少し、平滑な鋼板表面を達成する必要性もある。さらに、鋳造時に生成した析出物が再溶解せず、粗大な析出物として残る場合、El、ヤング率および平均r値が低下する問題も生じる。さらには、効果的に残留オーステナイトを生成できず、延性が低下する懸念がある。従って、本発明の鋼スラブの加熱温度は1100℃以上にする必要がある。一方、鋼スラブの加熱温度が1300℃超では、酸化量の増加に伴いスケールロスが増大してしまう。そのため、鋼スラブの加熱温度は1300℃以下にする必要がある。
従って、鋼スラブの加熱温度は1100℃以上1300℃以下とする。好ましくは1150℃以上1280℃以下、さらに好ましくは1150℃以上1250℃以下である。
[仕上げ圧延出側温度:800℃以上1000℃以下]
加熱後の鋼スラブは、粗圧延および仕上げ圧延により熱間圧延され熱延鋼板となる。このとき、仕上げ圧延出側温度が1000℃を超えると、酸化物(スケール)の生成量が急激に増大し、地鉄と酸化物の界面が荒れ、酸洗、冷間圧延後の表面品質が劣化する傾向にあり、また酸洗後に熱延スケールの取れ残りなどが一部に存在すると、延性に悪影響を及ぼす。さらに、結晶粒径が過度に粗大となり、加工時にプレス品表面荒れを生じる場合がある。
一方、仕上げ圧延出側温度が800℃未満では圧延荷重が増大し、圧延負荷が大きくなることや、オーステナイトが未再結晶状態での圧下率が高くなり、異常な集合組織が発達し、最終製品における面内異方性が顕著となり、材質の均一性や材質安定性が損なわれるだけでなく、El、ヤング率および平均r値そのものも低下する。
従って、熱間圧延の仕上げ圧延出側温度を800℃以上1000℃以下にする必要がある。好ましくは820℃以上950℃以下である。
なお、鋼スラブは、マクロ偏析を防止するため、連続鋳造法で製造するのが好ましいが、造塊法や薄スラブ鋳造法などにより製造することも可能である。また、鋼スラブを製造した後、一旦室温まで冷却し、その後再度加熱する従来法に加え、室温まで冷却しないで、温片のままで加熱炉に装入する、あるいは、わずかの保熱を行った後に直ちに圧延する直送圧延・直接圧延などの省エネルギープロセスも問題なく適用できる。また、スラブは通常の条件で粗圧延によりシートバーとされるが、加熱温度を低めにした場合は、熱間圧延時のトラブルを防止する観点から、仕上げ圧延前にバーヒーターなどを用いてシートバーを加熱することが好ましい。
[熱間圧延後の巻取温度:300℃以上800℃以下]
熱間圧延後の巻取温度が800℃を超えると、熱延板組織のフェライトの結晶粒径が大きくなるとともに、TiやNbの炭窒化物が粗大化することで、冷間圧延および焼鈍時のγ−fiberへの方位集積が弱くなり、所望のヤング率および平均r値を確保することが困難となる。一方、熱間圧延後の巻取温度が300℃未満では、熱延板強度が上昇し、冷間圧延における圧延負荷が増大し、生産性が低下する。また、マルテンサイトを主体とする硬質な熱延板に冷間圧延を施すと、マルテンサイトの旧オーステナイト粒界に沿った微小な内部割れ(脆性割れ)が生じやすく、最終焼鈍板の延性が低下する。従って、熱間圧延後の巻取温度は300℃以上800℃以下にする必要がある。好ましくは350℃以上700℃以下、より好ましくは380℃以上650℃以下である。
なお、熱延時に粗圧延板同士を接合して連続的に仕上げ圧延を行っても良い。また、粗圧延板を一旦巻き取っても構わない。また、熱間圧延時の圧延荷重を低減するために仕上げ圧延の一部または全部を潤滑圧延としてもよい。潤滑圧延を行うことは、鋼板形状の均一化、材質の均一化の観点からも有効である。なお、潤滑圧延時の摩擦係数は、0.10以上0.25以下の範囲とすることが好ましい。
このようにして製造した熱延鋼板に、酸洗を行う。酸洗は鋼板表面の酸化物の除去が可能であることから、最終製品の高強度鋼板における良好な化成処理性やめっき品質の確保のために重要である。また、酸洗は、一回でも良いし、複数回に分けても良い。
上記の酸洗処理後、そのまま、あるいは450℃以上800℃以下の温度域で900s以上36000s以下の時間保持したのち、圧下率:40%以上で冷間圧延を施す。
[熱延板酸洗処理後の熱処理温度域と保持時間:450℃以上800℃以下の温度域で900s以上36000s以下の間保持]
熱処理温度域が450℃未満または熱処理保持時間が900s未満の場合、熱延後の焼戻しが不十分なため、その後の冷間圧延時にフェライト、パーライト、ベイナイトおよびマルテンサイトのいずれか1つ以上が混在した不均一な組織となり、かかる熱延板組織の影響を受けて、均一微細化が不十分となる。その結果、最終焼鈍板の組織において、粗大な低温変態相の割合が増加し、不均一な組織となって、最終焼鈍板のEl、ヤング率および平均r値が低下する場合がある。
一方、熱処理保持時間が36000s超の場合は、生産性に悪影響を及ぼす場合がある。また、熱処理温度域が800℃を超える場合は、フェライトとマルテンサイトまたはパーライトの不均一かつ硬質化した粗大な2相組織となって、冷間圧延前に不均一な組織となり、最終焼鈍板の粗大なマルテンサイトの割合が増加して、やはり最終焼鈍板のEl、ヤング率および平均r値が低下する場合がある。
従って、熱延板酸洗処理後の熱処理温度域は450℃以上800℃以下とし、保持時間は900s以上36000s以下とする必要がある。
[冷間圧延時の圧下率:40%以上]
熱間圧延工程後に冷間圧延を行って、ヤング率および平均r値の向上に有効なα−fiberおよびγ−fiberを集積させる。すなわち、冷間圧延によりα−fiberおよびγ−fiberを発達させることによって、その後の焼鈍工程後の組織でも、α−fiberおよびγ−fiber、特にγ−fiberを持つフェライトを増やし、ヤング率および平均r値を高くする。このような効果を得るには、冷間圧延時の圧下率を40%以上とする必要がある。さらに、ヤング率および平均r値を向上させる観点からは、圧下率を45%以上とすることが好ましく、より好ましくは50%以上とする。なお、圧延パスの回数、各パス毎の圧下率については、とくに限定されることなく本発明の効果を得ることができる。また、上記圧下率の上限に特に限定はないが、工業上80%程度である。
[1回目の焼鈍処理の温度域:450℃以上T1温度以下]
本発明において、極めて重要な発明構成要件である。1回目の焼処理の鈍温度域が450℃未満の場合、未再結晶フェライトが多く残存し、フェライトの再結晶時に形成するγ−fiberを有するフェライトが少なくなり、各方向のヤング率および平均r値が低下する。一方、1回目の焼鈍処理の温度がT1温度を超えた場合、γ−fiberを有する再結晶フェライトの核生成サイトからオーステナイトが先に核生成するため、ヤング率および平均r値の向上に好適なγ−fiberを有するフェライトの面積率が低下する。また、焼鈍中に生成したオーステナイトの体積率が増加し、α−fiberおよびγ−fiber、特にγ−fiberに集積したフェライトの体積率が減少するため、各方向のヤング率および平均r値が低下する。さらに、加熱後の冷却工程を実施する場合には、冷却時にオーステナイトが変態して生成するフェライト、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、ベイナイト、焼戻しベイナイト、あるいはパーライト、セメンタイト等の炭化物等が増大し、γ−fiberに集積したフェライトの面積率が低下するため、α−fiberおよびγ−fiber、特にγ−fiberに集積することが難しくなる。従って、1回目の焼鈍処理の温度域は450℃以上T1温度以下にする必要がある。さらに、ヤング率および平均r値を向上させる観点からは、1回目の焼鈍処理の温度域を500℃以上T1温度以下にするのが好ましく、より好ましくは550℃以上T1温度以下である。
[1回目の焼鈍処理での保持時間:300s以上]
本発明において、極めて重要な発明構成要件である。1回目の焼鈍処理での保持時間が300s未満の場合、未再結晶フェライトが残存し、γ−fiberへの集積度が低下することで、各方向のヤング率および平均r値が低下する。このため、保持時間は300s以上とする。また、特に限定する必要はないが、保持時間が100000sを超えると、再結晶フェライト粒径が粗大化し、所望のTSを確保するのが困難となるため、保持時間は100000s以下であることが好ましい。したがって、保持時間は300s以上とする。好ましくは300s以上100000s以下、より好ましくは300s以上36000s以下、さらに好ましくは300s以上21600s以下である。
なお、熱処理方法は連続焼鈍やバッチ焼鈍のいずれの焼鈍方法でも構わない。また、1回目の焼鈍処理後、冷却工程を実施する場合には、室温まで冷却してもよく、また、過時効帯を通過させる処理を施してもよい。なお、冷却工程の冷却方法および冷却速度は特に規定せず、バッチ焼鈍における炉冷、空冷および連続焼鈍におけるガスジェット冷却、ミスト冷却、水冷などのいずれの冷却でも構わない。また、酸洗は常法に従えばよい。なお、特に限定する必要はないが、室温または過時効帯までの平均冷却速度が80℃/sを超えると、鋼板形状が悪化する可能性があるため、平均冷却速度が80℃/s以下とすることが好ましい。
[2回目の焼鈍処理の温度域:T1温度以上T2温度以下]
2回目の焼鈍温度がT1温度未満の場合は、焼鈍中にオーステナイトの生成が不十分となり、結果として、2回目焼鈍処理後の冷却およびその後の保持過程で十分な量の低温変態相が得られず、所望のTSを確保するのが困難となる。また、保持中のベイナイト変態が遅延するため、十分な量の残留オーステナイトを確保することができず、延性の向上が困難となる。一方、2回目の焼鈍温度がT2温度を超えた場合は、オーステナイト単相の温度域になるため、加熱工程および加熱後の保持工程で形成したフェライトの集合組織がランダム化し、最終的に得られる鋼板のヤング率および平均r値が低下する。また、延性向上に寄与するフェライトの面積率も低下するため、所望のElの確保が困難となる。従って、2回目の焼鈍処理の温度域はT1温度以上T2温度以下とする。なお、2回目の焼鈍処理の保持時間は、特に限定はしないが、10s以上1000s以下が好ましい。
[2回目の焼鈍処理後の550℃までの平均冷却速度:5℃/s以上]
2回目の焼鈍処理後の冷却工程において、少なくとも550℃までの平均冷却速度が5℃/s未満では、未変態オーステナイトがパーライトに変態し、所望量のベイナイトおよびマルテンサイトを確保できず、所望のTSおよびElを確保するのが困難となる。また、特に限定する必要はないが、上記した平均冷却速度が200℃/sを超えると、鋼板形状の悪化や、冷却到達温度の制御が困難となる可能性があるため、上記した平均冷却速度は200℃/s以下とすることが好ましい。従って、再加熱後の冷却工程での、少なくとも550℃までの平均冷却速度は5℃/s以上とする。好ましくは5℃/s以上200℃/s以下、より好ましくは8℃/s以上80℃/s以下、さらに好ましくは10℃/s以上50℃/s以下である。
[2回目の焼鈍処理後の冷却停止温度:300℃以上500℃以下]
2回目の焼鈍処理後の冷却停止温度が300℃未満では、2回目の焼鈍処理後の冷却停止時に未変態のオーステナイトがマルテンサイトのみに変態するため、所望のベイナイト量を確保することができず、所望のElを確保することができない。一方、2回目の焼鈍処理後の冷却停止温度が500℃超では、未変態オーステナイトがパーライトに変態し、所望量のベイナイトおよびマルテンサイトが確保できず、所望のTSおよびElを確保するのが困難となる。従って、2回目の焼鈍処理後の冷却停止温度は300℃以上500℃以下とする。さらに、強度と延性のバランスを向上させる観点からは、2回目の焼鈍処理後の冷却停止温度を300℃以上480℃以下とすることが好ましい。より好ましくは350℃以上460℃以下である。
[冷却停止温度域での保持時間:10s以上]
上記再加熱温度域での保持時間が10s未満では、オーステナイトへのC濃化が進行する時間が不十分となって、最終的に所望の残留オーステナイトの体積率の確保が困難になる。なお、特に限定する必要はないが、1000sを超えて滞留した場合、残留オーステナイトの体積率は増加せず、延性の顕著な向上は確認されず飽和傾向となるため、1000s以下が好ましい。従って、上記冷却停止温度域での保持時間は10s以上とする。好ましくは10s以上1000s以下である。
保持後の冷却はとくに規定する必要がなく、任意の方法により所望の温度に冷却してよい。なお、上記所望の温度は、室温程度が望ましい。
[亜鉛めっき処理]
溶融亜鉛めっき処理を施すときは、前記焼鈍処理を施した鋼板を、440℃以上500℃以下の亜鉛めっき浴中に浸漬して溶融亜鉛めっき処理を施した後、ガスワイピング等によって、めっき付着量を調整する。溶融亜鉛めっきはAl量が0.10質量%以上0.23質量%以下である亜鉛めっき浴を用いることが好ましい。また、亜鉛めっきの合金化処理を施すときは、溶融亜鉛めっき処理後に、470℃以上600℃以下の温度域で亜鉛めっきの合金化処理を施す。600℃を超える温度で合金化処理を行うと、未変態オーステナイトがパーライトへ変態し、所望の残留オーステナイトの体積率を確保できず、Elが低下する場合がある。したがって、亜鉛めっきの合金化処理を行うときは、470℃以上600℃以下の温度域で亜鉛めっきの合金化処理を施すことが好ましい。また、電気亜鉛めっき処理を施してもよい。なお、めっき付着量は片面当たり20〜80g/m(両面めっき)が好ましく、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)は、合金化処理を施すことによりめっき層中のFe濃度を7〜15質量%とすることが好ましい。
前記した熱処理後のスキンパス圧延の圧下率は、0.1%以上2.0%以下の範囲が好ましい。0.1%未満では効果が小さく、制御も困難であることから、これが良好範囲の下限となる。また、2.0%を超えると、生産性が著しく低下するので、これを良好範囲の上限とする。
スキンパス圧延は、オンラインで行っても良いし、オフラインで行っても良い。また、一度に目的の圧下率のスキンパスを行っても良いし、数回に分けて行っても構わない。その他の製造方法の条件は、特に限定しないが、生産性の観点から、上記の焼鈍、溶融亜鉛めっき、亜鉛めっきの合金化処理などの一連の処理は、溶融亜鉛めっきラインであるCGL(Continuous Galvanizing Line)で行うのが好ましい。溶融亜鉛めっき後は、めっきの目付け量を調整するために、ワイピングが可能である。なお、上記した条件以外のめっき等の条件は、溶融亜鉛めっきの常法に依ることができる。
(実施例1)
表1に示す成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造法にてスラブとした。得られたスラブを、表2に示す条件で加熱して熱間圧延後、酸洗処理を施し、表2に示したNo.1〜11、13〜23、25、27、29、30、32〜37、39、41は熱延板熱処理を施し、さらに、その中から、No.29、30、32〜37、39、41は延板熱処理後に酸洗処理を施した。
ついで、表2に示した条件で冷間圧延したのち、表2に示した条件で2回の焼鈍処理を施し、高強度冷延鋼板(CR)を得た。
さらに、一部の高強度冷延鋼板(CR)に亜鉛めっき処理を施し、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)、電気亜鉛めっき鋼板(EG)などを得た。溶融亜鉛めっき浴は、GIでは、Al:0.14質量%または0.19質量%含有亜鉛浴を使用し、また、GAでは、Al:0.14質量%含有亜鉛浴を使用し、浴温は470℃とした。めっき付着量は、GIでは、片面当たり72g/m2または45g/m2(両面めっき)とし、またGAでは、片面当たり45g/m2(両面めっき)とした。また、GAは、めっき層中のFe濃度を9質量%以上12質量%以下とした。さらに、EGのめっき付着量は、片面当たり50g/m2(両面めっき)とした。
なお、T1温度(℃)は、以下の式を用いて求めた。
T1温度(℃)=720+29×[%Si]−21×[%Mn]+17×[%Cr]
また、T2温度(℃)は、
T2温度(℃)=946−203×[%C]1/2+45×[%Si]−30×[%Mn]+150×[%Al]−20×[%Cu]+11×[%Cr]+350×[%Ti]+104×[%V]
によって算出することができる。ここに、[%X]は鋼板の成分元素Xの質量%とし、含有しない成分元素については零とする。
なお、T1はAc点、T2はAc点を意味する。
以上のようにして得られた高強度冷延鋼板(CR)、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)および電気亜鉛めっき鋼板(EG)を供試鋼として、機械的特性を評価した。機械的特性は、以下のように引張試験およびヤング率測定を行い評価した。その結果を表3に示す。また、供試鋼である各鋼板の板厚も表3に示す。
引張試験は、引張試験片の長手が、鋼板の圧延方向に対して直角方向(C方向)となるようにサンプルを採取したJIS5号試験片を用いて、JIS Z 2241(2011年)に準拠して行い、TS(引張強度)およびEl(全伸び)を測定した。なお、本発明で、延性すなわちElに優れるとは、TS×Elの値が15000MPa・%以上の場合である。
ヤング率測定は、鋼板の圧延方向(L方向)、鋼板の圧延方向に対して45°方向(D方向)、鋼板の圧延方向に対して直角方向(C方向)の3方向から10mm×50mmの試験片を切り出し、横振動型の共振周波数測定装置を用いて、American Society to Testing Materialsの基準(C1259)に従い、ヤング率を測定した。なお、本発明で、剛性すなわちヤング率に優れるとは、圧延方向および圧延方向に対して45°方向のヤング率が205GPa以上、かつ圧延方向に対して直角方向のヤング率が220GPa以上の場合である。
平均r値測定は、鋼板の圧延方向(L方向)、鋼板の圧延方向に対して45°方向(D方向)、鋼板の圧延方向に対して直角方向(C方向)の3方向からそれぞれ採取したJIS5号試験片を用いて、JIS Z 2254(2008年)に準拠して、それぞれの塑性歪比r,r,rを求め、以下の式により平均r値を算出した。
平均r値=(r+2r+r)/4
なお、本発明は、深絞り性に優れるとは、深絞り性の指標である平均r値が、鋼板の強度に関係なく0.95以上の場合である。
また、前述した方法に従って、フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの面積率、残留オーステナイトの体積率、さらに鋼板の板厚1/4位置におけるフェライトのα−fiberに対するγ−fiberのインバース強度比を求めた。この結果も表3に併記する。
Figure 0006344454
Figure 0006344454
Figure 0006344454
表3に示したように、発明例では、TSが780MPa以上であり、延性に優れ、高い強度と延性のバランスを有し、かつ剛性および深絞り性にも優れている。一方、比較例では、強度、延性、強度と延性のバランス、剛性、深絞り性のいずれか一つ以上が劣っていた。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、本実施の形態による本発明の開示の一部をなす記述により限定されるものではない。すなわち、本実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、上記した製造方法における一連の熱処理においては、熱履歴条件さえ満足すれば、鋼板に熱処理を施す設備等は特に限定されるものではない。
本発明によれば、780MPa以上のTSを有し、延性のみならず剛性に優れ、さらには深絞り性にも優れる高強度鋼板の製造が可能になる。従って、本発明により得られた高強度鋼板を、例えば自動車構造部材に適用することによって車体軽量化による燃費改善を図ることができ、産業上の利用価値は極めて大きい。

Claims (4)

  1. 成分組成が、質量%で、
    C:0.08%以上0.35%以下、
    Si:0.50%以上2.50%以下、
    Mn:1.50%以上3.00%以下、
    P:0.001%以上0.100%以下、
    S:0.0001%以上0.0200%以下および
    N:0.0005%以上0.0100%以下
    を含有し、さらに、
    Ti:0.001%以上0.200%以下および
    Nb:0.001%以上0.200%以下
    のうちから選んだ1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    鋼組織が、面積率で、
    フェライトが20%以上で、該フェライトの平均結晶粒径が10μm以上20μm以下であり、また
    ベイナイトが5%以上、
    マルテンサイトが5%以上で、
    ベイナイトおよびマルテンサイトの面積率が合計で15%以上であり、
    体積率で、残留オーステナイトが5%以上であり、
    さらに、フェライトの集合組織が、α−fiberに対するγ−fiberのインバース強度比で、3.0超であるミクロ組織を有する
    ことを特徴とする高強度鋼板。
  2. 請求項1に記載の高強度鋼板に、さらに、質量%で、
    Al:0.01%以上1.00%以下、
    V:0.005%以上0.100%以下、
    B:0.0001%以上0.0050%以下、
    Cr:0.05%以上1.00%以下、
    Cu:0.05%以上1.00%以下、
    Sb:0.0020%以上0.2000%以下、
    Sn:0.0020%以上0.2000%以下、
    Ta:0.0010%以上0.1000%以下、
    Ca:0.0003%以上0.0050%以下、
    Mg:0.0003%以上0.0050%以下および
    REM:0.0003%以上0.0050%以下
    のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする高強度鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の高強度鋼板の製造方法であって、
    請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼スラブを、1100℃以上1300℃以下に加熱し、仕上げ圧延出側温度を800℃以上1000℃以下で熱間圧延し、巻取温度を300℃以上800℃以下で巻き取り、酸洗処理後、そのまま、あるいは450℃以上800℃以下の温度域で900s以上36000s以下の間保持したのち、40%以上の圧下率で冷間圧延を施し、
    ついで得られた冷延板を、450℃以上T1温度以下の温度域に加熱し、該温度域で300s以上保持する1回目の焼鈍処理を施し、
    ついで、T1温度以上T2温度以下の温度域まで再加熱して2回目の焼鈍処理を施したのち、少なくとも550℃までの平均冷却速度を5℃/s以上として、300℃以上500℃以下の冷却停止温度域まで冷却し、該冷却停止温度域で10s以上保持することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。

    T1温度(℃)=720+29×[%Si]−21×[%Mn]+17×[%Cr]
    T2温度(℃)=946−203×[%C]1/2+45×[%Si]−30×[%Mn]+150×[%Al]−20×[%Cu]+11×[%Cr]+350×[%Ti]+104×[%V]
    [%X]は鋼板の成分元素Xの質量%とし、含有しない成分元素については零とする。
  4. 請求項1または2に記載の高強度鋼板の表面に、亜鉛めっき層を有することを特徴とする高強度亜鉛めっき鋼板。
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