JP6323807B2 - 偽造防止用紙及びその作製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、銀行券、有価証券、旅券等、偽造防止が必要とされる貴重印刷物に用いられる用紙及びその製造方法に関するものである。
近年のカラーコピーやカラースキャナ等による複製技術の進歩に伴い、銀行券、有価証券、旅券等の貴重印刷物が偽造される危険性が高まってきている。その対策として、貴重印刷物に用いる印刷用紙の製造段階である抄紙工程において、用紙に着色繊維、蛍光繊維等の特殊繊維や、スレッドを抄き入れる方法がある。
例えば、特殊繊維を用紙に抄き入れる方法としては、特許文献1において、円網抄紙機の円網槽内の紙料液面と、円網との境界部の上側に、特殊繊維を含有する紙料を流し込むノズルを設置したのち、ノズルから特殊繊維を含有する紙料を流し込むことで、円網により形成した湿紙の表面上に特殊繊維が付与されることで形成された、特殊繊維が付与された用紙の製造方法が開示されている。また、湿紙の表面上に特殊繊維を流し込んだのち、その上に、併設した円網又は長網からの湿紙を重ねることで、多層紙の紙層内に特殊繊維を付与することが可能となる。
また、スレッドを単層の用紙内に抄き入れる方法としては、特許文献2において、長網抄紙機又は円網抄紙機で単層の紙層を形成する際に、網の幅方向に振幅駆動可能な挿入管を介してスレッドを挿入することで、単層の紙層内にスレッドが付与された用紙の製造方法が開示されている。特許文献2の用紙は、幅方向に駆動させながらスレッドを挿入することで生じる、スレッドと紙層の分離した箇所の長さを固有情報とし、その固有情報を基に用紙の真偽判別を可能としている。
特公平6−63200号公報 特許第3766850号公報
特許文献1の方法により、特殊繊維を用紙内に付与することが可能となった。しかしながら、抄紙工程において湿紙上に、特殊繊維を含有する紙料を流し込むことで付与していることから、単層の用紙に対しては表面上にしか形成できず、用紙内部に付与する場合には、特殊繊維を表面上に付与した単層の湿紙の上に、湿紙を抄き合わせなければ形成することができない。よって、単層の場合には、表面から特殊繊維が剥がされて改竄される可能性がある。
また、用紙に対して特殊繊維が付与される位置は、特殊繊維を流し込むノズルが移動可能な、用紙の幅方向の一部に限定される。貴重印刷物は、前述したカラーコピー、カラースキャナ等を用いた偽造に加え、一つの真正品を切り貼りし、複数の偽造品を生み出すという偽造行為も併せて問題となっている。特許文献1のように、特殊繊維を一部の限定された位置にのみ付与可能とした構成では、用紙の大半となる特殊繊維が付与されていない箇所を切り貼りし、複数の偽造品を生み出すという偽造行為が行われる可能性がある。
さらに、特許文献1の方法を用いて用紙の内部に付与する場合には、多層紙とする必要があるため、層同士が繊維間結合だけでは十分に定着せずに、層間剥離が発生する可能性がある。さらには、抄紙工程及びそれに伴う紙料調整等前処理工程も二つの円網槽を用いることから、複数必要となるという問題点がある。
また、特許文献2の方法により、単層の用紙の紙層内部に、スレッドを付与することが可能となった。しかしながら、スレッドと紙層の分離した箇所の長さを固有情報とし、その固有情報を基に用紙の真偽判別を行うことから、単層の用紙ではあるが、分離した箇所から、層間剥離が発生するという問題点がある。
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、具体的には、単層の用紙の紙層内部におけるユーザが所望する位置に、定着性に優れた機能性材料が付与された偽造防止効果を有する用紙及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の偽造防止用紙は、単層の用紙における紙層内の一部に、用紙の表面から同じ深さに付与されて成る模様を有し、模様は、紙層と化学結合可能な官能基を有する及び/又は繊維で形成された紙層による三次元の網目より大きい幅を有する少なくとも一種類の機能性材料から成ることを特徴とする偽造防止用紙である。
また、本発明の偽造防止用紙の作製方法は、抄紙機を用いて機能性材料が付与された用紙を製造する方法であって、機能性材料は、湿紙と化学結合可能な官能基を有する材料及び/又は繊維で形成された紙層による三次元の網目より大きい幅を有する材料であり、抄紙機におけるワイヤー部上で、機能性材料を複数分散した分散液を噴射するノズルの流量を調整する工程と、単層の湿紙内部に機能性材料を付与するために、ワイヤー部上の湿紙の水分量を調整する工程と、水分量調整工程後の湿紙に対し、噴射流量調整工程後のノズルから機能性分散液を付与する工程とを有することを特徴する偽造防止用紙の作製方法である。
さらに本発明の水分量調整工程は、湿紙の含水率を80〜97%に調整することを特徴とする。
単層の用紙内部に、紙層と化学結合可能な官能基を有する及び/又は繊維で形成された紙層による三次元の網目より大きい幅を有する複数の機能性材料を、用紙の表面から全て同じ深さに付与して成る模様を形成することで、外観は多層紙と同様に、用紙の内部に機能性材料を有する用紙であるが、実際には単層で形成されていることから、多層紙に付与された場合と比べて層間剥離が発生せず、紙層と機能性材料の定着性に優れた偽造防止用紙となる。
また、抄紙機におけるワイヤー部上の水分量を調整した単層の湿紙に対し、噴射流量を調整したノズルから、機能性材料を分散した機能性材料分散液を付与することで、単層の用紙内部に機能性材料が付与された偽造防止用紙を製造する。よって、従来の多層紙の製造工程と比べて、抄紙工程及びそれに伴う紙料調整等前処理工程も半減されるというメリットが生まれた。
さらに、機能性材料を流し込みではなく、噴射流量を調整したノズル噴射により付与することで、湿紙の幅方向に限定されることなく、用紙に対してユーザの所望する位置に付与することが可能となった。よって、機能性材料を一部の限定された位置にのみ付与した構成と比べ、全体に付与可能であることから、切り貼りによる偽造が極めて困難となる。また、切り貼りにより偽造を行った場合には、ユーザが所望する位置に機能性材料が付与されていないため、簡単に偽造判定を行うことが、可能となる。
本発明における偽造防止用紙(1)を示す平面図。 本発明における偽造防止用紙(1)のY−Y’断面図。 本発明における模様(2)を付与する形状を示す平面図。 本発明における偽造防止用紙(1’)を示す断面図。 本発明における偽造防止用紙(1’)のY−Y’断面図。 本発明の偽造防止用紙の製造方法を示すフローチャート。 本発明の偽造防止用紙を製造する抄紙機を示す模式図。 本発明の偽造防止用紙の製造方法における各工程を示す模式図。 本発明における偽造防止用紙(1’)の領域(Z)の拡大図。
本発明は、以下に述べる発明を実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の色々な実施の形態が含まれる。
図1は、本発明の偽造防止用紙(1)の平面図である。偽造防止用紙(1)の領域(Z)には、図1(a)に示すように、反射光下では表面からは視認することができないが、図1(b)に示すように、透過光下で視認可能な帯状の模様(2)が付与されている。
図2は、偽造防止用紙(1)の図1におけるY−Y’断面図である。偽造防止用紙(1)は、繊維から成る単層の用紙における紙層(Q)内の一部に、偽造防止用紙(1)の表面(F)から全て同じ深さに付与されて成る模様(2)を有する。模様(2)は、拡大図に示すように、複数の機能性材料(3)により形成されている。
用紙を形成する繊維は、特に限定されるものではなく、木材や非木材などの植物繊維を原料とするKP、SP等の化学パルプ、GP、TMP、CTMP等の機械パルプ、古紙再生パルプ等のパルプを適宜選択して使用できるが、木材や非木材繊維から成る紙、水素結合を形成できる官能基を持つ合成繊維から成る合成繊維紙が好ましい。
詳細については後述するが、模様(2)は、複数の機能性材料(3)を水に分散させた後に、その分散液(以下「機能性分散液」という。)を、抄紙機上の湿紙に噴射することで、用紙の紙層(Q)内に付与される。よって、用紙を、木材繊維や非木材繊維等の天然繊維や水素結合を形成できる官能基を持つ合成繊維で形成することで、水に分散させた機能性材料(3)を、水素結合により紙層(Q)内に強固に定着することが、可能となる。
なお、水素結合を形成できる官能基を持たない合成繊維から成る合成繊維紙や、水素結合をしないプラスチック繊維やガラス繊維が入った用紙であっても、機能性分散液に少量のバインダー成分を配合して、機能性材料(3)を紙層(Q)内に定着することができれば、使用することができる。
また、用紙は、紙層(Q)内に付与された模様(2)を透過光下で観察可能とするために、光を透過する特性、いわゆる光透過性を有することが好ましい。なお、図1においては、紙層(Q)は光透過性を有する材料として説明したが、光透過性を有さない材料とすることも、可能である。
用紙を、光透過性を有さない材料とし、機能性材料(3)を、磁性や赤外線吸収材料のように機械読取可能な材料を用いた場合、透過光下では機能性材料(3)の存在を確認することができないが、機械読取により、単層の紙層(Q)内に付与された機能性材料(3)を判別することが可能となり、二次認証を用紙に付与することが可能となる。以下、本発明においては、紙層(Q)が光透過性を有する用紙を形成可能な材料から成るとして説明する。
なお、本発明において単層とは、抄紙機における、長網部又は円網部のいずれか一つの網で形成された用紙の層のことをいう。
次に、機能性材料(3)について説明する。機能性材料(3)は、単層の用紙における紙層(Q)内の一部に付与される、目視及び/又は機械読み取り判別が可能な材料のことである。
機能性材料(3)には、着色繊維、蛍光繊維、ポリマー繊維、金属繊維、ナノファイバー、サーモ繊維等の機能性繊維や、カーボン、酸化チタン、有色顔料、雲母(パール顔料)、有色蛍光顔料、無色蛍光顔料等の機能性顔料、有色染料である機能性染料、金属粉末、金属片、金属箔、蒸着薄膜等の機能性細片等がある。
模様(2)は、少なくとも一種類の機能性材料(3)が複数配置されて成る。少なくとも一種類の機能性材料(3)が複数配置されて成るとは、例えば、一本の着色繊維と、複数本の蛍光繊維があることをいう。また、一種類の機能性材料(3)が複数あるとは、ナノファイバーが複数本あることをいう。
模様(2)を形成する複数の機能性材料(3)の全てが、紙層(Q)内において用紙の表面(F)から全て同じ深さ(h1)に付与されている。
本発明における全て同じ深さ(h1)とは、表面(F)から機能性材料(3)までの距離である深さ(h1)が、一つの表面(F)から機能性材料(3)までの距離である深さ(h1)を基準値とした場合、その基準値の±20%の範囲内に、複数の機能性材料(3)の全てが付与されていることをいう。複数の機能性材料(3)の全てが、基準値の±20%の範囲内に付与されることで、用紙の断面として肉眼で観察した場合は、表面(F)に対して平行に複数の機能性材料(3)の全てが付与されているように、視認される。
従来、用紙の表面から全て同じ深さに複数の機能性材料(3)を付与する場合、あらかじめ、多層紙の中間層に用紙に機能性材料を印刷、含浸等により付与したり、前述した特許文献1のように、単層の湿紙上に特殊繊維を混ぜた紙料を流し込んだのち、その上にさらに紙層(Q)を形成したりすることで付与していた。
そのため、いずれの方法においても多層で抄き合わせることが必須となり、例えば、銀行券、有価証券、旅券等の貴重印刷物の用紙として用いた場合、層間同士が剥がされ、多層紙内の機能性材料(3)が改竄されてしまうという問題があった。また、製造上においても、多数の紙層(Q)をそれぞれ形成したのち、一つの用紙として抄き合わせる必要があることから、抄紙工程及びそれに伴う紙料調整等前処理工程も複数必要となるという問題点があった。
そこで、本発明の偽造防止用紙(1)では、単層の用紙における紙層(Q)内の一部に複数の機能性材料(3)から成る模様(2)が形成されている。単層としたことで、層間同士が剥がれるということがなくなり、仮に剥離をして内部の機能性材料(3)を改竄しようとした場合、紙層(Q)が破断することから、偽造が困難となる。
また、本発明の偽造防止用紙(1)は、詳細については後述するが、用紙の製造段階における単層の湿紙に対して、水分量を調整後に機能性材料を分散した機能性分散液をノズル噴射により付与することで、単層の紙層(Q)内に、模様(2)を形成する複数の機能性材料(3)の全てが、用紙の表面(F)から全て同じ深さ(h1)に付与された構成としている。
よって、製造上においても、抄紙機上の一つの長網部又は円網部で、機能性材料(3)を付与することが可能となり、従来の機能性材料(3)の付与方法よりも、抄紙工程が少なくなり、少ない製造設備で製造することが可能となる。
紙層(Q)内に付与された機能性材料(3)を入れた場合の効果は、次のようになる。例えば、機能性材料(3)が着色繊維、有色顔料、有色繊維等、可視光源下において視認可能な材料である場合、肉眼で視認可能な画線状の有色模様を付与することが可能となる。
なお、図1においては、透過光下において、模様(2)が帯状の形状として視認可能となる場合として説明したが、単層の紙層(Q)内に有意味情報として付与していれば、模様(2)の形状に特に限定はない。図3は、機能性材料(3)を付与する他の形状を示す平面図である。図3(a)に示すように、機能性材料(3)は、複数の帯状として形成してもよい。また、図3(b)に示すような図柄状や、図3(c)に示すように文字形状としてもよい。
また、図1については、偽造防止用紙(1)の一部に模様(2)を形成していたが、図3(d)及び図3(e)に示すように、偽造防止用紙(1)の全面に模様(2)を形成することも可能である。
従来、機能性材料(3)を付与する場合、前述した特許文献1のように、特殊繊維を流し込むことで用紙内に付与していた。よって、図3(e)に示す用紙を作製する際の抄紙方向(V)と垂直する幅方向(R)に、帯状にしか付与することができなかった。しかしながら、作製方法についての詳細は後述するが、本発明の偽造防止用紙(1)は、噴射流量を調整したノズル噴射により付与することで、幅方向(R)に限らず、図3(d)に示す偽造防止用紙(1)の全面や、図3(e)に示す渦巻き状等、ユーザが所望する方向及び位置に付与することが可能となる。
図3(e)に示す偽造防止用紙(1)を、切り貼りにより偽造した場合は、図3(f)に示すように、偽造防止用紙(1)においては、平面上のユーザが所望する位置に機能性材料(2)が付与されていないため、簡単に真偽判別を行うことが、可能となる。さらに、図示していないが、断面を見た場合においても、切り貼りによる用紙の破損により、複数の機能性材料(3)の全てが、用紙の表面(F)から全て同じ深さ(h1)に付与された構成ではなくなることから、真偽判別を行うことが、可能となる。
なお、これに限らず、模様(2)を形成する機能性材料(3)を、蛍光繊維、蛍光顔料、赤外吸収顔料、サーモ繊維等所定の環境下において視認可能な材料とすることも、可能である。所定の環境下において視認可能な材料とした場合、模様(2)は、視認可能となる所定の条件下(例:紫外線照射、赤外カメラで視認等)において視認可能となる。
さらに、ポリマー繊維を用いた場合は、観察角度により反射光が変化する効果や、高密度にした場合は透過性が増して白すかし効果が得られる。また、蒸着薄膜や、金属箔等の光透過性の低い材料である場合、反射光下によって虹彩色の偏光効果を得るとともに、透過光では透過光を隠ぺいすることで、黒すかし効果を得ることが可能となる。
本発明の機能性材料(3)は、紙層(Q)と化学結合可能な官能基を有するか及び/又は繊維で形成された紙層(Q)による三次元の網目より大きい幅を有する必要がある。
まず、機能性材料(3)が、紙層(Q)と化学結合可能な官能基を有する必要について説明する。前述のとおり、紙層(Q)は、繊維間の水素結合によって繊維が結合してシート状になっている。よって、機能性材料(3)が、紙層(Q)と化学結合の一つである水素結合可能な官能基を有することで、紙層(Q)の繊維と水素結合して、紙層(Q)の内部に歩留まるという理由からである。
紙層(Q)と水素結合可能な官能基を有する機能性材料(3)は、水酸基を持つ材料であれば、レーヨン、ポリビニルアルコール製の合成繊維等を適宜用いることが可能である。
また、水素結合以外の化学結合としては、バインダーを用いた分子間力による結合がある。例えば、パール顔料、ポリエステル製の合成繊維、マイクロカプセル等、水素結合可能な官能基を有さない機能性材料(3)と、少量のバインダー成分を配合した機能性分散液を抄紙機上で湿紙に付与することで、紙層(Q)の内部に機能性材料(3)を付与することが、可能である。
次に、機能性材料(3)が、繊維で形成された紙層(Q)による三次元の網目(K)より大きい幅を有する必要について説明する。図2の拡大図に示すように、本発明の用紙は、紙層(Q)内で繊維が立体的に入り組んだ形状となることで、網目(K)を有する構造となる。
本発明の機能性材料(3)は、三次元の網目(K)の大きさ(KW)より、大きい幅を有する材料とする。機能性材料(3)が、紙層(Q)による三次元の網目(K)より大きい幅を有することで、紙層(Q)と化学結合可能な官能基を有していない機能性材料(3)であっても、紙層(Q)の三次元の網目(K)から抜け落ちず、紙層(Q)内に歩留まるという理由からである。
紙層(Q)の三次元の網目(K)より大きい幅とは、機能性材料(3)が顔料であるならば、紙層(Q)の三次元の網目(K)より大きい粒子径のことをいう。紙層(Q)の三次元の網目(K)より大きい粒子径を有する機能性材料(3)には、例えば、網目(K)の大きさが10μmであるならば、金属顔料、液晶顔料等がある。
また、機能性材料(3)が繊維であるならば、紙層(Q)の三次元の網目(K)より大きい幅とは、紙層(Q)の三次元の網目(K)より長い繊維長のことをいう。紙層(Q)の三次元の網目(K)より長い繊維長を有する機能性材料(3)には、例えば、網目(K)の大きさが10μmであるならば、NBKP繊維、木綿繊維等がある。
さらに、機能性材料(3)が細片であるならば、紙層(Q)の三次元の網目(K)より大きい幅とは、紙層(Q)の三次元の網目(K)より長い細片長のことをいう。紙層(Q)の三次元の網目(K)より長い細片長を有する機能性材料(3)には、例えば、網目(K)の大きさが10μmであるならば、金属細片、アルミ細片等がある。
以上の理由から、紙層(Q)内に機能性材料(3)を付与するために、機能性材料(3)は、紙層(Q)と化学結合可能な官能基を有するか及び/又は繊維で形成された紙層(Q)における三次元的な網目より大きい幅を有する必要がある。
詳細については後述するが、機能性材料(3)は、機能性材料(3)を水に分散させたのち、分散剤や水溶性高分子、機能性材料(3)の分散状態を阻害しない水溶性液体、有機溶媒、あるいは粉末や微粒子等を加えることで作製した機能性分散液を抄紙機上で湿紙に付与することで付与することが可能である。
機能性分散液は、機能性材料(3)同士が、すぐに水素結合で再結合しない程度の濃度が必要であり、固形分濃度0.1〜3%程度での使用が望ましい。本発明における固形分濃度とは、機能性分散液中に含まれる機能性材料の割合のことである。ただし、機能性材料(3)を強撹拌又は分散剤を添加することで、機能性材料(3)同士を再分離させることができれば、3〜35%程度でも問題はない。
これは、固形分濃度が35%以上の高濃度になると、撹拌又は分散剤を加えるのみでは、機能性材料(3)同士の再結合を抑止できず、再解繊処理が必要となる可能性があるためであり、逆に、固形分濃度が0.1%以下の低濃度では、用紙への付与及び乾燥段階において、水分過多による用紙の膨潤等を促進する可能性があるためである。ただし、それらの問題が他の手段で回避できれば特に制限はない。
機能性分散液を付与する量は、付与する方式によって異なるが、乾燥後の機能性材料(3)の固形分量が、0.01g/m以上と成るように調製する必要がある。固形分量が0.01g/m未満であると、可視光による透過光下において、機能性分散液の付与部が肉眼で視認しづらくなり、好ましくない。また、付与方式によっては、一回での付与限界量が当該量以下の場合もあるが、この場合は数回付与を繰り返し、目標の固形分量を得ればよい。機能性材料(3)は、機能性分散液を湿紙の状態の紙層(Q)内に付与した後、乾燥させることで、本発明の偽造防止用紙(1)が作製される。
次に、偽造防止用紙の他の形態について、図4に示す、本発明の第二の形態の偽造防止用紙(1’)の平面図を用いて説明をする。図4(a)に示す、偽造防止用紙(1’)の領域(Z)には、前述した図1(a)に示すように、反射光下では表面からは視認することができないが、図4(b)に示すように、透過光下で視認可能となるように、機能性材料(3)が付与されている。
図5は、偽造防止用紙(1’)の図4(a)のY−Y’断面図を示す。図2の断面図を用いて前述した偽造防止用紙(1)における模様(2)は、複数の機能性材料(3)が、実線状に付与されて成る構成であったが、図5の偽造防止用紙(1’)における模様(2)は、複数の機能性材料(3)が、破線状に付与されて成る構成である。なお、紙層(Q)及び用いる機能性材料(3)は、前述した偽造防止用紙(1)と同様であることから、説明を省略する。
特許文献2である、単層の用紙の紙層(Q)の内部にスレッドを付与することで、単層の用紙に機能性を付与する構成においては、紙層(Q)の内部にスレッドを破線状に付与することは、不可能であったが、本発明においては、複数の機能性材料(3)を、間隔(P2)を有して付与することで、規則的又は不規則に、紙層(Q)内の所望の位置に付与することが可能となる。よって、実線状に付与した、図2の偽造防止用紙(1)と比べ、再現することがより困難となることから、偽造抵抗性が上がり、透過光下で視認可能となる機能性材料(3)で形成する形状の自由度も上がる。
また、他のメリットとして、間隔(P2)を有して付与することで、間隔(P2)を有さずに実線状に付与した場合と比べて、紙層(Q)内に付与する機能性材料(3)の量が少なくて済む。よって、実線状に付与した場合と比べ、コストを削減することが、可能となる。
なお、偽造防止用紙(1)は、単層構造で説明したが、単層の紙層(Q)内に機能性材料(3)が付与されていれば、その単層構造を、多層紙の一層とする構成とすることも可能である。
次に、図1から図5に示した、単層の紙層(Q)内に機能性材料(3)が付与された偽造防止用紙(1、1’)の作製方法について、その手順を示した図6のフローチャートと、図7の示す、偽造防止用紙(1、1’)を作製する長網抄紙機(M)の模式図を用いて説明する。
まず、長網抄紙機(M)における抄造工程を説明する。長網抄紙機(M)は、大きく分けて、準備部(4)、ワイヤー部(5)、プレス部(6)、乾燥部(7)、カレンダ部(8)、リール部(9)から成る。
準備部(4)は、用紙の原料であり、紙層(Q)を形成する繊維が水に分散した溶液である紙料(W)のもつれ又は固まり等の大きな異物を除去し、繊維を分散させる。
ワイヤー部(5)については、準備部(4)から供給された紙料(W)を、ワイヤー(5a)の上面に供給したのち、ワイヤー(5a)の幅方向の坪量バランス及び繊維の分散を促し、シート状の湿紙(10)を形成する。
プレス部(6)については、湿紙(10)に対して圧力をかけて脱水する。
乾燥部(7)については、脱水後の湿紙(10)を乾燥させるとともに、用紙伸縮の調整も行う。
カレンダ部(8)については、カレンダロール(8a)の間を通し、圧力をかけることで乾燥後の用紙の表面を平滑にするとともに、紙厚の調整を行う。
リール部(9)については、湿紙(10)から用紙になったものを巻き取り、次工程に送付する。
単層の紙層(Q)内に機能性材料(3)が付与された偽造防止用紙(1、1’)の作製方法については、まず、水分量調整工程(ST1)として、長網抄紙機(M)のワイヤー部(5)におけるワイヤー(5a)上の湿紙(10)の水分量を調整する。
図8(a)は、水分量調整工程(ST1)を示す模式図である。長網抄紙機(M)のワイヤー(5a)上に、準備部(4)における紙料供給槽(4a)内に貯蔵した、紙料(W)を供給したのち、ワイヤー(5a)上に湿紙(10)を形成する。
なお、紙料(W)の濃度は、一般的に、長網抄紙機(M)のワイヤー(5a)前であれば、1〜2%程度である。
次に、湿紙(10)の水分量を調整する。
本発明においては、詳細な作製方法においては後述するが、抄紙工程中の湿紙(10)に対して、複数の機能性材料(3)を分散させた液体を、ノズル噴射により湿紙(10)内部に付与したのち、付与後の機能性材料(3)の上に、湿紙(10)を形成する紙料(W)が流動して、覆いかぶさることで、単層の紙層(Q)内に機能性材料(3)を付与している。
機能性材料(3)を付与する際に、湿紙(10)の水分量が多いと、紙層(Q)を形成する繊維及び機能性材料(3)の流動性が高いことに起因し、付与後の機能性材料(3)が、湿紙(10)の内部に留まらず、湿紙(10)全体に拡散するか、又は湿紙(10)を通過し、ワイヤー(5a)の上に留まってしまう。よって、紙層(Q)内の所望の位置に機能性材料(3)を付与することが不可能となる。
一方、湿紙(10)の水分量が少ない場合、機能性材料(3)を付与後、紙層(Q)を形成する繊維の流動性が低いことに起因し、付与後の機能性材料(3)の上に、湿紙(10)を形成する紙料(W)が流動せず、機能性材料(3)が紙層(Q)上に表出したままとなり、紙層(Q)内に機能性材料(3)を付与できない。よって、機能性材料(3)を付与する前に、湿紙(10)の水分量を調節しておく必要がある。
湿紙(10)の水分量は、付与する機能性材料(3)の種類や大きさ、また、紙層(Q)を形成する繊維の種類や繊維長等に併せて、湿紙(10)に対し、機能性材料(3)を分散させた液体が、ノズル噴射により湿紙(10)内部に付与したのち、付与後の機能性材料(3)の上に、湿紙(10)を形成する紙料(W)が流動して、覆いかぶさることが可能となるように、適宜調整するが、本発明においては、湿紙(10)の水分量は、含水率80〜97%の範囲とすることが、好ましい。
湿紙(10)の含水率が80%未満となった場合、前述した湿紙(10)の水分量が少ない場合と、同様の問題が生じる。また、含水率が97%を超えた場合、前述した湿紙(10)の水分量が多い場合と、同様の問題が生じる。
湿紙(10)の水分量の調整は、脱水により行う。具体的には、ワイヤー(5a)上の湿紙(10)は、ワイヤー(5a)の下のテーブルロール(5b)により発生するバキューム圧により脱水する。なお、脱水は、テーブルロール(5b)と併せて、サクションボックス等の真空装置を併設したのち、真空装置を用いて強制脱水を行うことも、可能である。
次に、ノズル噴射流量調整工程(ST2)として、前述した機能性材料(3)を分散した機能性分散液(J)を噴射するノズル(11)の噴射流量を調整する。
図8(b)は、ノズル噴射流量調整工程(ST2)を示す模式図である。水分量調整工程(ST1)後の長網抄紙機(M)におけるワイヤー部(5)のワイヤー(5a)上に、ノズル(11)を設ける。
ノズル(11)とは、少なくとも一つの孔又はスリットを有する、機能性材料(3)を分散させた溶液を噴射するための装置をいう。
本発明においては、図1から図5に示したように、単層の紙層(Q)内に機能性材料(3)が付与されている。これは、図8(c)に示すように、ノズル(11)から噴射した機能性分散液(J)が、湿紙(10)の表面(F)を突き抜けたのち、湿紙(10)の裏面(B)までは到達せずに、湿紙(10)内に留まるように、ノズル(11)の噴射流量を調整しているからである。
また、機能性分散液(J)を付与した直後の湿紙(10)の表面(F)は、付与した箇所にライン状の跡が残るが、前述のとおり、水分量調整工程(ST1)において湿紙(10)の水分量を調整したことで、そのライン状の跡の上に湿紙(10)を形成する紙料(W)が流動して、覆いかぶさったのち、表面張力の作用により表面(F)が平らとなることで、図8(d)に示すように、機能性分散液(J)を湿紙(10)の紙層(Q)内に付与することが可能となる。
よって、単層の紙層(Q)内に機能性材料(3)を付与するためには、前述した水分量調整工程(ST1)に加え、ノズル(11)の噴射流量を調整することが重要となる。噴射流量が大きい場合、機能性分散液(J)が湿紙(10)の裏面(B)まで突き抜けてしまい、反対に、噴射流量が小さい場合、機能性分散液(J)は、湿紙(10)の表面(F)上に付与されてしまう。
機能性分散液(J)を湿紙(10)の紙層(Q)内に付与するための、ノズル(11)の噴射流量の最適条件は、水分量調整工程(ST1)後の湿紙(10)の坪量及び水分量と、長網抄紙機(M)の抄速により適宜調整するが、例えば、水分量調整工程(ST1)後の湿紙(10)の坪量が85g/m、含水率が95%で、長網抄紙機(M)の抄速が27m/minとした場合、噴射流量は500ml/minとなる。
なお、ノズル(11)の噴射流量は、前述した、水分量調整工程(ST1)後の湿紙(10)の坪量が85g/m、含水率が95%で、長網抄紙機(M)の抄速が27m/minとした場合の値である、噴射流量は500ml/minを基準値とし、坪量、含水率及び抄速の変動により、適宜調整する。
例えば、湿紙(10)の坪量が85g/mより大きい場合、噴射流量は基準値より大きくする。坪量が大きい場合、湿紙(10)内の繊維量が多くなるため、基準値では、機能性材料(3)が紙層(Q)内に入らない。よって、噴射流量を大きくし、高圧で付与する必要がある。
また、長網抄紙機(M)の抄速が27m/minより早い場合についても、噴射流量は基準値より大きくする。抄速が早い場合、紙層(Q)内に入る前に、ワイヤー(3)上の湿紙(10)が動き、機能性材料(3)は紙層(Q)に入らずに、紙層(Q)の表面(F)に乗ってしまう。よって、噴射流量を大きくし、高圧で付与する必要がある。
さらに、湿紙(10)の含水率が95%より高い場合、噴射流量は基準値より小さくする。含水率が高い場合、湿紙(10)内の繊維量が少なくなるため、基準値では、機能性材料(3)が紙層(Q)を突き抜け、湿紙(10)の裏面(B)に出てしまう。よって、噴射流量を小さくし、低圧で付与する必要がある。
なお、噴射流量は、ノズル(11)の噴射口の形状、機能性材料(3)の坪量、固形分濃度等によりも変動することから、適宜調整を行う。
また、ノズル(11)は、一つに限らず複数設置することも可能である。
次に、機能性分散液付与工程(ST3)として、水分量調整工程(ST1)後の湿紙(10)に対し、ノズル噴射流量調整工程(ST2)後のノズル(11)から、機能性分散液(J)を付与する。
図8(c)は、機能性分散液付与工程(ST3)を示す模式図である。図8(c)に示すように、ワイヤー(5a)上に設置したノズル(11)から、機能性分散液(J)を噴射して付与する。
機能性分散液(J)の固形分濃度は0.1〜4%が、好ましい。固形分濃度が、3%を超える場合、ノズル(11)の噴射流量及び噴射口の形状によっては、ノズル(11)に機能性材料(3)が詰まり、好ましくない。
また、固形分濃度が1%未満の場合、機能性材料(3)を紙層(Q)内に付与することは可能であるが、偽造防止用紙(1、1’)となった際の、模様(2)の視認性や、機能性材料(3)の機械読取性が低下し、好ましくない。
ノズル(11)には、タイマーと、ポンプ、電磁弁等の制御装置を取り付けてもよい。タイマーと制御装置を取り付けたのち、機能性分散液(J)を噴射するタイミングを設定することで、所定のタイミングで自動的に機能性分散液(J)を、湿紙(10)に付与することが可能となる。
なお、前述した図4に示す偽造防止用紙(1’)を作製する場合、機能性分散液(J)を、間隔を空けながら付与する必要がある。よって、制御装置をノズル(11)に取り付けたのち、制御装置を用いて、所望の間隔で機能性分散液(J)の噴射のスイッチをオンオフすることで、機能性分散液(J)を、間隔を空けながら湿紙(10)に付与することが、可能となる。
図9は、図4の偽造防止用紙(1’)の領域(Z)を拡大した図である。図4に示す、複数の機能性材料(3)を、間隔を空けながら付与されることで形成された模様(2)を有する偽造防止用紙(1’)を作製する場合、まず、用いる長網抄紙機(M)の一秒当たりの抄速を測定する。長網抄紙機(M)の抄速が27m/minの場合、一秒当たりの抄速は、450mm/secとなる。
次に、複数の機能性材料(3)を付与する箇所の長さ(P1)を設定する。例えば、図9においては、P1=20mmとする。次に、機能性材料(3)を付与する時間、つまり、ノズル(11)から機能性分散液(J)の噴射をオンとする時間を算出する。オンとする時間は、機能性材料(3)を付与する箇所の長さ(P1)を長網抄紙機(M)の一秒当たりの抄速で割ることで、算出できる。図9においては、算出すると、0.044secとなる。
次に、複数の機能性材料(3)を付与しない箇所の長さ(P2)を設定する。例えば、図9においては、P2=20mmとする。次に、機能性材料(3)を付与しない時間、つまり、ノズル(11)から機能性分散液(J)の噴射をオフとする時間を算出する。オフとする時間は、機能性材料(3)を付与しない箇所の長さ(P2)を長網抄紙機(M)の一秒当たりの抄速で割ることで、算出できる。図9においては、算出すると、0.044secとなる。
以上、図9の機能性材料(3)を付与しない箇所を有する模様(2)は、機能性分散液(J)の噴射を0.044secごとにオンオフすることで、形成することが、可能となる。
機能性分散液(J)付与後の湿紙(10)は、ワイヤー部(5)のワイヤー(5a)上で脱水が進行する過程で、湿紙(10)と機能性分散液(J)に分散された機能性材料(3)が、繊維同士の絡み合い、水素結合等によって繊維間が結合し、図1に示すように、単層の紙層(Q)内に、機能性材料(3)が付与された偽造防止用紙(1)が作製される。
その後、プレス部(6)に配置した複数のプレスロール(6a)で、さらに湿紙(10)を脱水したのち、乾燥部(7)の円筒乾燥機(7a)により、湿紙(10)の水分と、機能性分散液(J)中の残水分を、蒸発させて乾燥させる。
最後に、カレンダ部(8)における、カレンダロール(8a)の間を通し、圧力をかけることで乾燥後の用紙の表面を平滑にするとともに、紙厚の調整を行ったあとに、リール部(9)で、湿紙(10)から偽造防止用紙(S)になったものを巻き取り、次工程に送付する。
本発明の実施例1について、図1及び図2を用いて説明する。実施例1では、単層の紙層(Q)内に、複数の機能性材料(3)が実線状に付与された偽造防止用紙(1)を作製した例を示す。
紙層(Q)を形成する繊維は、アバカパルプを使用した。また、機能性材料(3)は、湿紙と化学結合可能な官能基を有する材料として、着色した稲わらパルプを使用した。
機能性分散液(J)は、機能性材料(3)である着色した稲わらパルプを、水に固形分濃度0.35%で分散させることで作製した。
次に、水分量調整工程(ST1)として、図7及び図8に示す、長網抄紙機(M)を用いて、長網抄紙機(M)のワイヤー(5a)上に、紙料供給槽(4a)から紙層(Q)を形成する紙料(W)を供給したのち、ワイヤー(5a)上に湿紙(10)を形成する。
次に、湿紙(10)の水分量を、テーブルロール(5b)及びサクションボックスを用いて、脱水を行い、含水率95%に調整した。
次に、ノズル噴射流量調整工程(ST2)として、ノズル(11)の噴射流量を、500ml/minに調整した。ノズル(11)は、ノズル径1.5mmの円形状のものを用いた。なお、噴射流量の調整は、ノズル(11)に流送ポンプを接続したのち、流送ポンプのインバータを調整することで行った。
次に、機能性分散液付与工程(ST3)として、水分量調整工程(ST1)後の湿紙(10)に対し、機能性分散液(J)を、ポンプを用いて流送し、ノズル(11)から噴射した。なお、この時、ノズル(11)と湿紙(10)表面の距離は50mmとした。
その後、ワイヤー(5a)下部に設置された搾水ボックスにより湿紙(10)の水分が脱水され、機能性材料(3)である着色した稲わらパルプと湿紙(10)が絡み合うとともに、水素結合により結合した。さらに、プレスロールで脱水したのち、乾燥、カレンダ処理を行うことで、繊維間結合はより強固になり、単層の紙層(Q)の内部に機能性材料(3)が付与された偽造防止用紙(1)となった。
本発明の実施例2について、図4及び図5を用いて説明する。実施例2では、単層の紙層(Q)内に、複数の機能性材料(3)が破線状に付与された偽造防止用紙(1’)を作製した例を示す。
紙層(Q)を形成する繊維は、木材パルプ(LBKP)を使用した。また、機能性材料(3)は、湿紙と化学結合可能な官能基を有するセルロースナノファイバーを使用した。
機能性分散液(J)は、機能性材料(3)である、セルロースナノファイバーを、水に固形分濃度1%で分散させることで作製した。
次に、水分量調整工程(ST1)として、図7及び図8に示す装置を用いて、長網抄紙機(M)のワイヤー(5a)上に、紙料供給槽(4a)から紙層(Q)を形成する紙料(W)を供給したのち、ワイヤー(5a)上に湿紙(10)を形成する。
次に、湿紙(10)の水分量を、テーブルロール(5b)及びサクションボックスを用いて、脱水を行い、含水率94%に調整した。
次に、ノズル噴射流量調整工程(ST2)として、ノズル(11)の噴射流量を、550ml/minに調整した。ノズル(11)は、ノズル径1.5mmの円形状のものを用いた。なお、噴射流量の調整は、ノズル(11)に流送ポンプを接続したのち、流送ポンプのインバータを調整することで行った。
次に、機能性分散液付与工程(ST3)として、水分量調整工程(ST1)後の湿紙(10)に対し、機能性分散液(J)を、制御装置と接続したポンプを用いて流送し、ノズル(11)から、一定間隔のタイミングで噴射した。
次に、機能性分散液(J)を噴射するタイミングを設定した。なお、タイミングの設定については、前述した図9を用いて説明する。
まず、用いる長網抄紙機(M)の一秒当たりの抄速を測定した。長網抄紙機(M)の抄速は30m/minであることから、一秒当たりの抄速は、500mm/secであった。
次に、機能性材料(3)を付与する箇所の長さ(P1)を設定した。実施例2においては、P1=10mmとした。次に、機能性材料(3)を付与する時間である、ノズル(11)から機能性分散液(J)の噴射をオンとする時間を算出した。オンとする時間を算出すると、0.02secとなった。
次に、機能性材料(3)を付与しない箇所の長さ(P2)を設定した。実施例2においては、P2=20mmとした。次に、機能性材料(3)を付与しない時間である、ノズル(11)から機能性分散液(J)の噴射をオフとする時間を算出した。オフとする時間を算出すると、0.04secとなった。
上記の算出結果に基づき、ノズル(11)を、0.02secオンしたのち、0.04secオフすることで、機能性分散液(J)を噴射した。なお、この時、ノズル(11)と湿紙(10)表面の距離は50mmとした。
その後、ワイヤー(5a)下部に設置された搾水ボックスにより紙料(W)の水分が脱水され、木材パルプ(LBKP)と機能性材料(3)であるセルロースナノファイバーが絡み合いや水素結合により結合した。プレスロールで更に脱水し、乾燥、カレンダ処理を行うことで、繊維間結合は更に強固になり、単層の紙層(Q)の内部に機能性材料(3)が付与された偽造防止用紙(1’)となった。
1 紙層
2 模様
3 機能性材料
4 準備部
4a 紙料供給槽
5 ワイヤー部
5a ワイヤー
5b テーブルロール
6 プレス部
7 乾燥部
7a 円筒乾燥機
8 カレンダ部
8a カレンダロール
9 リール部
10 湿紙
11 ノズル
W 紙料
J 機能性分散液
M 長網抄紙機
1、1’ 偽造防止用紙

Claims (3)

  1. 単層の用紙における紙層内の一部に、前記用紙の表面から同じ深さに付与されて成る模様を有し、
    前記模様は、前記紙層と水素結合可能な官能基を有する及び/ 又は繊維で形成された紙層による三次元の網目の幅より長い細片長を有する細片、大きい粒子径を有する顔料又は長い繊維長を有する繊維を有する少なくとも一種類の機能性材料から成ることを特徴とする偽造防止用紙。
  2. 抄紙機を用いて機能性材料が付与された用紙を製造する方法であって、
    前記機能性材料は、湿紙と化学結合可能な官能基を有する材料及び/ 又は繊維で形成された紙層による三次元の網目より大きい幅を有する材料であり、
    前記抄紙機におけるワイヤー部上で、前記機能性材料を分散した分散液を噴射するノズルの流量を調整する工程と、
    単層の前記湿紙内部に前記機能性材料を付与するために、前記ワイヤー部上の湿紙の水分量を調整する工程と、
    前記水分量調整工程後の湿紙に対し、前記噴射流量調整工程後のノズルから前記機能性分散液を、前記用紙の表面から前記紙層内の全て同じ深さに付与する工程とを有することを特徴する偽造防止用紙の作製方法。
  3. 前記水分量調整工程は、前記湿紙の含水率を80〜97%に調整することを特徴とする請求項2記載の偽造防止用紙の作製方法。
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