JP6316912B1 - 高張力鋼板のプレス加工品の製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】置き割れや遅れ破壊が起らない高張力鋼板のプレス加工品を提供する。【解決手段】引張強度が400MPa〜800MPaの高張力鋼板からプレス金型を用いて絞り成形されたプレス加工品であって、そのプレス加工品の予め特定された置き割れ発生部位(P)だけの部分加熱による焼入れ状態の加熱部(a)と非焼入れ状態の未加熱残存部(b)れとも異なる組織変化の中間層である境界(c)が、上記鋼板の板面(d)とほぼ平行な方向(H−H)に沿い延在する帯状として、その置き割れ発生部位(P)における切断面の光学顕微鏡写真に表出していることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は置き割れや遅れ破壊などを起さない高張力鋼板のプレス加工品の製造法に関する。
一般に、プレス金型により金属板を絞り加工する場合、その加工次第では素材の内部に引張応力が残留し、そのため加工終了後数時間から数日間放置している間に、その絞り加工品の開口端部から自然に亀裂が発生する現象(置き割れ、時期割れ又は時効割れという)や、腐蝕、溶接、酸洗い、電気メッキなどの工程における水素吸収による破壊(遅れ破壊やメッキ割れという)が起る問題がある。
特に、高張力鋼板は炭素(C)のほかに、ニッケル(Ni)やシリコン(Si)、マンガン(Mn)などの合金元素を添加し、その熱処理工程を工夫することによって、高い引張強度を得ており、軽量化にも役立つため、自動車などに広く使用されつつあるが、一般鋼に比して延性が低いため、プレス金型による絞り加工上の大きな制約が伴い、割れなどの加工不良を生じやすい。加工時に割れなどの不良品を発生せず、良好な加工品を得られたとしても、その後に上記置き割れやメッキ割れ、遅れ破壊などが起るので、甚だ厄介なことである。
このような問題の解決策としては、特許第2982494号が提案されている。
特許第2982494号公報
ところが、上記特許文献1に開示されたプレス法の構成では、主に素材の肉厚を均一化させるための正しごきと、素材の引張残留応力を減少させ、圧縮応力を残留させるための逆しごきとを行って、その素材が高張力鋼などの高強度材であっても、上記圧縮残留応力の生成により置き割れ現象の発生を防止するようになっているので、円筒状などの比較的単純な形状であれば、上記逆しごきを支障なく行えるとしても、複雑な形状をプレス成形する際には、そのしごき方向に制約を受けることになる結果、適用できる目的物が非常に狭く限定されてしまうのであり、汎用性に劣る。
本発明はこのような問題の抜本的な解決を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では400MPa〜800MPaの引張強度を有する高張力鋼板のプレス加工品を製造する方法であって、
上記プレス加工品の置き割れ発生部位を予め特定しておくために、その高張力鋼板をプレス金型により第1次的若しくは試作的に絞り成形するか、又はその代りとなるプレス金型設計段階でのシミュレーションによる絞り成形解析を行う予備工程と、
上記予備工程に引き続き又は別個独立して、その予備工程と同じプレス金型を用い、同じ加工条件のもとで第2次的又は本格的に絞り成形する本番工程と、
その本番工程での絞り成形を終えたプレス加工品の予め特定しておいた置き割れ発生部位だけに、その後温度範囲が400℃以上1,000℃未満で、且つ保持時間が0.1秒〜1.0分の部分加熱を施す加熱工程とから成ることにより、その焼入れ状態の加熱部と非焼入れ状態の未加熱残存部との何れとも異なる組織変化の中間層である境界が、上記鋼板の板面とほぼ平行な方向に沿い延在する帯状として、その置き割れ発生部位における切断面の光学顕微鏡写真に表出することを特徴とする。
また、請求項2では加熱工程での部分加熱を、その温度範囲が600℃以上900℃未満で、且つ保持時間が0.2秒〜20秒として施すことを特徴とする。
請求項3では加熱工程での部分加熱方法が、スポット溶接機における一対の電極で予め特定しておいた置き割れ発生部位を挟みながら、10kV〜45kVで0.2秒〜20秒電圧を印加する方法であることを特徴とする。
請求項1の製造法によれば、そのプレス加工品における予備工程での特定(知得)しておいた置き割れ発生部位だけを、その本番工程での本格的又は第2次的な絞り成形の終了後に、所定の加熱温度とその保持時間のもとで部分加熱するようになっているため、上記プレス加工品の目標とする形状に変化があっても、置き割れや遅れ破壊の起らない各種プレス加工品を容易に得られる汎用性がある。
しかも、上記加熱温度とその保持時間での部分加熱を行う加熱工程は、プレス加工品を第2次的又は本格的に絞り成形する本番工程の後工程として、その製造ラインへ容易に組み込むことができ、その結果プレス加工品の置き割れ発生部位だけを部分加熱することとも相俟って、生産性を著しく向上できる効果もある。
その場合、請求項2の構成を採用するならば、上記プレス加工品における置き割れや遅れ破壊の発生を、ますます効率良く確実に防止できる効果がある。
更に、請求項3の構成を採用するならば、プレス加工品の絞り成形した目標形状に変化があっても、その置き割れ発生部位をスポット溶接機の電極によって容易・確実に挟むことができ、しかもその素材の中心部から表面(板面)に向かってすばやく加熱し得る効果があり、その意味でも生産性の向上に役立つ。
本発明により部分加熱した置き割れ発生部位の切断面を撮影した光学顕微鏡写真に表われた組織の模式図であって、(イ)はスポット溶接機により加熱した場合の組織を示し、(ロ)はレーザー装置により加熱した場合の組織を示している。 本発明に係るプレス加工品の一例として示すキャスターの側面図である。 図2の正面図である。 キャスターの軸受け本体をプレス加工品として、その一連の加工順序を示す説明図である。 上記軸受け本体における曲げコーナー個所の置き割れ発生部位を示す斜面図である。 図5の置き割れ発生部位をスポット溶接機によって部分加熱する工程の概略斜面図である。 同じく置き割れ発生部位を挟みながら通電する加熱工程の説明図である。 上記置き割れ発生部位の加熱状態を示す正面図である。
以下、本発明の構成を具体的に詳述する。本発明はプレス金型により高張力鋼板を各種の目標形状に絞り成形したプレス加工品と、その汎用的な製造法であり、置き割れや遅れ破壊の発生防止を目的とする。
本発明において採用する高張力鋼板は、400MPa〜800MPaの引張強度を有するものである。その引張強度が400MPa未満のものについては、本発明を採用するまでもなく、一般鋼とほぼ同じ加工条件のもとで製造することができ、他方引張強度が800MPaを越えるものについては、通常のプレス加工方法による製造が困難であり、置き割れや遅れ破壊の発生原因も大きく異なるので、本発明を採用することができない。
本発明者が高張力鋼板をプレス金型により、各種の目標形状に絞り成形したプレス加工品について、その成形加工特性を調査・検討した結果では、置き割れや遅れ破壊の発生部位が常に特定の個所に集中していること、その特定の個所は主に引張応力の残留しやすい曲げコーナー部位であることが判明した。そのため、その曲げコーナー部位の残留応力を除去又は緩和することが、問題の解決になると考えられる。
そこで、置き割れや遅れ破壊が起らない各種目標形状のプレス加工品を得るべく、その素材である上記引張強度の高張力鋼板をプレス金型により、第1次的に又は試作として絞り成形し、その絞り加工品の置き割れ発生部位を予め特定(知得)しておくのである。
その試作的な絞り加工を実行する代りに、プレス金型設計段階でコンピューターのシミュレーションによる絞り成形解析を行って、上記置き割れ発生部位を予め特定しておいても良い。
何れにしても、上記のような予備工程を行った後に、その予備工程と同じプレス金型を用い、同じ加工条件のもとで、同じ素材の高張力鋼板を第2次的又は本格的に絞り成形する。このような本番工程は上記予備工程に引き続き実行しても良く、また時間的又は場所的に別個独立して実行してもさしつかえない。
そして、上記本番工程での絞り成形を終えたプレス加工品の予め特定しておいた置き割れ発生部位だけに、その終了から30分などの一定時間経過後加熱工程として、温度範囲が400℃以上1000℃未満で、且つ保持時間が0.1秒〜1.0分の部分加熱を施すのである。
その加熱工程での部分加熱方法としては、スポット溶接機(交流式抵抗溶接機)などが装備している向かい合う一対の電極で、上記絞り成形し終えたプレス加工品の予め特定しておいた置き割れ発生部位を挟みながら通電して、その素材である高張力鋼板の中心部から加熱する方法を初め、同じくプレス加工品の予め特定しておいた置き割れ発生部位へ、レーザーなどのエネルギービームを照射して、その素材である高張力鋼板の表面から加熱する方法や高周波による誘導加熱法、ガス炎やアークを用いる方法などを広く採用することができるが、特に上記スポット溶接機のような素材の中心部から置き割れ発生部位の表面に向かって、全体的にすばやく加熱できる直接通電加熱法の採用が最も好適である。
また、部分加熱の温度範囲としては上記した400℃以上1000℃未満、好ましくは600℃以上900℃未満に設定する。たとえ部分加熱であっても、その温度が400℃未満であると、期待する程の大きな組織変化を得られず、残留応力を充分に緩和できないため、未だ置き割れや遅れ破壊の起るおそれがある。後述する加熱部と未加熱残存部との何れとも異なる組織変化の境界(中間層)が、帯状に顕出することはない。
尚、加熱温度の検知については、一般的な温度測定用の各種センサーを使うことができるほかに、加熱部分の色変化による判定方法を採用することもできる。
他方、加熱温度が1000℃を越える高温であると、熱の影響が広範囲に波及し、全体的に組織変化を起した焼入れ状態となり、加熱した部分が硬脆くなるため、耐衝撃性の低下を招く。この加熱条件でも、後述する加熱部と非加熱残存部との何れとも異なる組織変化の境界(中間層)が、帯状に顕出することはない。更に高温なると、母材が溶融してしまい、形状を維持できなくなるなどの問題を生じる。
上記スポット溶接機などの直接通電加熱法による部分加熱の場合においては、素材の板厚によって左右されるが、10kV〜45kVの電圧を印加するのである。その10kVよりも電圧が低いと、部分加熱が不充分となって、焼入れ部分を形成することが困難であり、45kVよりも電圧が高いと、加熱した部分の全体に焼きが入って、硬脆くなったり、溶融してしまったりするなどの問題を生じる。
更に、上記部分加熱の保持時間としては0.1秒〜1,0分、好ましくは0.2秒〜20秒に設定する。その加熱保持時間が0.1秒未満では、上記加熱温度が400℃未満である場合と同様に、未だ組織変化が小さく、残留応力を緩和するまでの時間が不足するため、置き割れや遅れ破壊の起るおそれがある。プレス加工品の強度にバラツキを生じるおそれもある。
他方、上記加熱保持時間が1.0分を越える長時間の場合、残留応力の緩和には充分であるが、上記加熱温度が1000℃を越える場合と同様に、熱が広範囲に伝導するため、強度変化が過大となり、プレス加工品の設計強度を確保できなくなる問題がある。また、後処理に長時間を要することになる結果、生産性の低下も招く。
そのため、要するに上記加熱工程ではプレス金型により絞り成形を実行し終えたプレス加工品について、先の予備工程において特定しておいた置き割れ発生部位だけに、上記直接通電加熱法やエネルギービームを照射する方法などにより、温度範囲が400℃以上1000℃未満で、且つ保持時間が0.1秒〜1.0分の部分加熱を行うのである。
そうすれば、図1(イ)(ロ)の模式図に示す如く、そのプレス加工品(P)における置き割れ発生部位(P)の切断面をその後機械的に研磨し、ナイタール(エッチング剤:硝酸とアルコールの混合液)で腐蝕した上、光学顕微鏡で観察し、撮影した組織写真には、焼入れ状態の加熱部(a)及び非焼入れ状態の未加熱残存部(b)と異なる組織変化の中間層である境界(c)が、素材である高張力鋼板の板面(d)とほぼ平行な方向(H−H)に沿って延在する帯状に表出することになる。
これを換言すれば、上記加熱後の置き割れ発生部位(P)における切断面の光学顕微鏡写真に、焼入れ状態の加熱部(a)と非焼入れ状態の未加熱残存部(b)との何れとも異なる組織変化の境界(中間層)(c)が板面(d)とほぼ平行な方向(H−H)に沿って延在する帯状に表出するまで、プレス加工品の置き割れ発生部位(P)だけを部分加熱するのである。
上記本番工程と加熱工程を経て製造され、その置き割れ発生部位(P)における切断面の光学顕微鏡写真に、焼入れ状態の加熱部(a)と非焼入れ状態の未加熱残存部(b)との何れとも異なる組織変化の境界(中間層)(c)が、板面(d)とほぼ平行な方向(H−H)に沿い延在する帯状に表出したプレス加工品は、その製造後数日間放置してから目視観察するも、置き割れや遅れ破壊を起すことはなかった。その結果、上記部分加熱の条件を管理・制御することによって、置き割れや遅れ破壊が起らない各種プレス加工品を汎用的に製造することができる。
上記の説明から理解されるように、本発明に係る高張力鋼板のプレス加工品の製造法は一般的な残留応力を緩和させるために、絞り加工前の素材である高張力鋼板を全体的に加熱する方法ではなく、同じく素材の高張力鋼板に軟化部分を設けるべく、その鋼板を絞り加工前や絞り加工中に部分加熱する方法でもない。
あくまでも本番工程での絞り成形し終えたプレス加工品を部分加熱する方法であり、そのため生産性の低下が危惧されるが、その高張力鋼板の第1次的又は試作的な絞り成形の実行や、その実行の代りとなるプレス金型設計段階でのシミュレーションによる絞り成形解析を行う予備工程において、その特定(把握)しておいた置き割れ発生部位だけを、その後部分加熱するようになっている構成のため、その各種プレス加工品の絞り成形する目標形状がたとえ複雑に変化したとしても、常時正確に加熱できる汎用性があり、上記素材を全体加熱する方法に比しても、その熱に起因する過大な変形を起すおそれがなく、強度の低下や生産性の低下を招くこともない。
更に言えば、上記加熱工程は予め特定しておいた置き割れ発生部位だけの部分加熱として、その加熱保持時間が0.1秒〜1.0分の僅少で足りるため、本番工程のタクトと合わせたり、また本番工程での絞り成形が複数回行われるような場合に、その途中へ加入したりすることも容易であり、その意味でも生産性の低下を防止することができる。
<実施例1>
以下、キャスターの軸受け本体に適用した本発明の実施例を説明するが、その高張力鋼板の絞り成形したプレス加工品がキャスターの軸受け本体だけに限定されることはなく、各種の目標形状に絞り成形されたプレス加工品を対象とする。
図2、3に示すようなキャスター(10)の車輪(11)を軸受けする本体(12)の素材として、引張強度が590MPa、板厚が2.0mmの高張力鋼板(JFEスチール株式会社のJSC590R−SD)を用い、150〜200Tプレス機(株式会社アマダ製)を使って、図4(i)〜(vi)のような外形抜き・穴明け→前絞り・刻印→絞り→穴明け→溝加工→車軸穴明けという6工程のプレス加工を行った。
その加工直後のプレス加工品を目視観察したが、割れや裂けなどの不具合を確認できなかったので、そのまま12時間放置した後、再度上記プレス加工品を目視観察したところ、図5の符号(P)で示す曲げコーナー部位に割れが見つかった。また、割れが発見されなかったプレス加工品については、三価ユニクロメッキ(亜鉛メッキ)を施したところが、同じ図5の符号(P)で示す曲げコーナー部位に割れが見つかり、軸受け本体(12)として使用できない状態であった。
そこで、上記軸受け本体(12)における図5の符号(P)で示す割れが発生している曲げコーナー部位を、そのプレス加工後30分経過してから図6、7のように、スポット溶接機(W)における2mmの直径を備えた向かい合う一対の電極(13)で挟み、30kVで0.4秒電圧を印加することにより部分加熱した。その印加中、電極(13)で挟まれた部位には赤熱が見られ、その発色の度合いから判定される加熱温度は800℃程度であった。
その加熱後、上記軸受け本体(12)における不具合の有無を目視観察したが、割れや裂けなどの不具合を発見しなかった。また、上記加熱後48時間放置した時点で、再度軸受け本体(12)の不具合を目視観察したが、上記不具合を確認することはできなかった。
更に、上記軸受け本体(12)に三価ユニクロメッキ(亜鉛メッキ)を施した後、その不具合の有無を目視観察したが、やはり上記不具合を確認することはできなかった。
上記メッキ加工を行った軸受け本体(12)に、車輪(11)やベアリングなどの必要な部品を組み付けて、その完成したキャスター(10)の走行試験を行ったところ、100km試験走行した後でも、上記不具合を発見しなかった。
上記実施例1の加熱条件と結果を表1に示す。その表1の結果では、予め特定しておいた上記曲げコーナー部位(置き割れ発生部位)の本発明による部分加熱が、プレス加工品の置き割れやメッキ割れ、遅れ破壊の防止に寄与したものと考えられる。
Figure 0006316912
その軸受け本体(12)の部分加熱した曲げコーナー部位(置き割れ発生部位)(P)を、図8のZ−Z線に沿ってカットし、その切断面を研磨した後、ナイタールで腐蝕処理し、撮影した光学顕微鏡写真に表出した組織は、図1(イ)の模式図に示すとおりであり、その写真には上記部分加熱した結果(証拠)を意味する焼入れ状態の加熱部(a)と非焼入れ状態の未加熱残存部(b)との何れとも異なる組織変化の中間層である境界(c)が、板面(d)とほぼ平行な方向(H−H)に沿って延在する帯状に表出していた。帯状境界(中間層)(c)としての組織変化が起生される上記加熱温度とその保持時間での部分加熱である結果、その絞り成形したプレス加工品である軸受け本体(12)の機械的強度を低下させることもなかった。
<実施例2>
これは実施例1における上記加熱条件のうち、電圧(40kV)と加熱温度(950℃)だけを変えて、同じスポット溶接機(W)により部分加熱した実施例である。
<実施例3>
これは実施例1における上記加熱条件のうち、加熱温度(900℃)とその加熱保持時間(0.6秒)だけを変えて、やはりスポット溶接機(W)により部分加熱した実施例である。
<実施例4>
これは実施例1における上記加熱条件のうち、絞り成形後の放置時間だけを180分として、長く経過してからスポット溶接機(W)により部分加熱した実施例である。
尚、実施例2〜4でも表1に記載した結果から明白なように、実施例1と同じ図1(イ)の帯状境界(中間層)(c)が顕出し、やはり強度の低下を招くこともなく、置き割れや遅れ破壊の発生を防止することができた。
<実施例5>
これは実施例1〜4において採用したスポット溶接機(W)に代えて、レーザー加熱装置(株式会社アマダ製)(図示省略)を使用し、その出力240Wで2cm/秒で加熱した。そのエネルギービームが照射された表面には赤熱が見られ、その発色度合いから850℃に加熱されていると判定した。
その加熱後48時間放置した時点で、上記キャスター(10)における軸受け本体(12)の不具合を目視観察したが、割れや裂けなどの不具合を確認することはできなかった。また、実施例1と同じメッキ加工と更に完成したキャスター(10)の走行試験も行ったが、やはり割れや裂けなどの不具合は確認されなかった。
そして、上記レーザー加熱装置のエネルギービームにより部分加熱した部位をカットし、その切断面をナイタールで腐蝕処理し、光学顕微鏡で組織の変化状態を観察したところ、その写真には図1(ロ)の模式図に示す如き、焼入れ状態の加熱部(a)と非焼入れ状態の未加熱残存部(b)との何れとも相違する組織変化の中間層である境界(c)が、やはり板面(d)とほぼ平行な方向(H−H)に沿って延在する帯状に表出していた。
尚、上記実施例1と実施例5では部分加熱温度の判定を、加熱温度と加熱色との対応関係資料(図示省略)に基いて感覚的に行ったが、市販の適当な温度センサーを使って測定しても良いことは、既述のとおりである。
更に、表1に併記した比較例1〜4の加熱条件は、何れも本発明の規定する上記数値範囲をはずれているため、所期する置き割れや遅れ破壊などの防止効果を達成することができなかった。上記実施例1〜5では確認できた組織変化の帯状境界(中間層)(c)が、比較例1〜4の加熱条件下において表出しなかったことは言うまでもない。
<比較例1>
これでは、加熱後48時間放置した時点において割れや裂けなどの不具合は確認されなかったが、その上記軸受け本体(12)に三価ユニクロメッキ(亜鉛メッキ)を施したところ、その一部に割れ(メッキ割れ)が観察された。更に、メッキ割れを起さなかった軸受け本体(12)に、車輪やベアリングなどを組み付け完成させたキャスター(10)の走行試験を行ったところ、60km走行した時点で割れが発生した。
その原因としては、加熱温度が著しく低いため、プレス加工品の残留応力を確実に緩和又は除去できなかったものと考えられる。
<比較例2>
これでは、加熱温度が高くなりすぎてしまい、加熱部分が溶融し、所定の形状を保つことができなかった。
<比較例3>
これでは、加熱後48時間放置しても割れは確認されなかったが、その後三価ユニクロメッキ(亜鉛メッキ)を施したところ、すべてに割れが発生した。
その原因としては、加熱保持時間が著しく短く、絞り加工品の残留応力を緩和するための加熱不足であると考えられる。
<比較例4>
これでは、加熱後48時間放置しても割れは確認されず、三価ユニクロメッキ(亜鉛メッキ)を施した後にも割れは観察されなかったが、その後更に走行試験に供したところ、70km走行した時点で割れが発生した。
その原因としては、上記比較例3との逆に、加熱保持時間が著しく長いため、その熱の影響が広範囲に波及し、全体の組織変化を起し、硬脆くなってしまったものと考えられる。
(10)・キャスター
(11)・車輪
(12)・軸受け本体
(13)・電極
(P)・置き割れ発生部位
(w)・スポット溶接機
(a)・焼入れ状態の加熱部
(b)・非焼入れ状態の未加熱残存部
(c)・境界(中間層)
(d)・板面

Claims (3)

  1. 400MPa〜800MPaの引張強度を有する高張力鋼板のプレス加工品を製造する方法であって、
    上記プレス加工品の置き割れ発生部位を予め特定しておくために、その高張力鋼板をプレス金型により第1次的若しくは試作的に絞り成形するか、又はその代りとなるプレス金型設計段階でのシミュレーションによる絞り成形解析を行う予備工程と、
    上記予備工程に引き続き又は別個独立して、その予備工程と同じプレス金型を用い、同じ加工条件のもとで第2次的又は本格的に絞り成形する本番工程と、
    その本番工程での絞り成形を終えたプレス加工品の予め特定しておいた置き割れ発生部位だけに、その後温度範囲が400℃以上1,000℃未満で、且つ保持時間が0.1秒〜1.0分の部分加熱を施す加熱工程とから成ることにより、
    その焼入れ状態の加熱部と非焼入れ状態の未加熱残存部との何れとも異なる組織変化の中間層である境界が、上記鋼板の板面とほぼ平行な方向に沿い延在する帯状として、その置き割れ発生部位における切断面の光学顕微鏡写真に表出することを特徴とする高張力鋼板のプレス加工品の製造法。
  2. 加熱工程での部分加熱を、その温度範囲が600℃以上900℃未満で、且つ保持時間が0.2秒〜20秒として施すことを特徴とする請求項1記載の高張力鋼板のプレス加工品の製造法。
  3. 加熱工程での部分加熱方法が、スポット溶接機における一対の電極で予め特定しておいた置き割れ発生部位を挟みながら、10kV〜45kVで0.2秒〜20秒電圧を印加する方法であることを特徴とする請求項1記載の高張力鋼板のプレス加工品の製造法。
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