JP6307325B2 - 対物ワイピング用シートおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、対物ワイピング用シート、特に台所にて使用される調理器具や台所に設置される周辺設備の清掃に用いる対物ワイピング用シートおよびその製造方法に関する。
不織布を使用した対物ワイピング用シートは、対象物や除去したい汚れに応じて、一般家庭用、業務用を問わず多種多様な製品が提案され使用されている。一般的な家庭において、不織布製の対物ワイピング用シートは床(フローリングや畳)のワイピング、ガラス製品のワイピング、一般家電製品のワイピング、および洗面台やトイレの便器といった陶磁器のワイピングなどに使用されている。一般家庭において、対物ワイピング用シートによる清掃が必要な用途の中でも、特に台所にて使用される調理器具、周辺設備、例えば、ガスコンロやIHコンロなどのコンロ周り、オーブンレンジ、電子レンジなどのレンジの内部や換気扇周りなどは、対象物表面に強固に付着した焦げ付き汚れや、油汚れなどの粘度の高い液状の汚れやゲル状の汚れが発生し易く、その除去には手間と時間がかかり、大変煩わしいものである。
従来から、このような台所での汚れを除去することを目的として、不織布を利用した清掃用シートが開発されている。
例えば、特許文献1〜4には、不織布を2層構造で含んで成る清掃用シートが開示されていて、その一方の不織布に水などの洗浄液を含浸させて、その清掃の際、かかる洗浄液を不織布から放出しながら、他方の不織布の面で汚れを除去することが開示されている。
特開2003−325411号公報 特開2005−312711号公報 特開2003−180593号公報 特開2006−305177号公報
上述の通り、台所(特にガスコンロやIHコンロなどのコンロ周り、オーブンレンジ、電子レンジなどのレンジの内部や換気扇周り)では、その表面に強固に付着した焦げ付き汚れや、油汚れなどの粘度の高い液状の汚れ、水性又は油性のゲル状の汚れ(これらが乾燥して固着したものなども含まれる)などが問題であった。
このような焦げ付き汚れを除去するために、例えば清掃用シートの強度や硬度、粗さなどを増大させると、かかる焦げ付き汚れの除去は容易となるが、その反面、清掃面に傷が付きやすくなるなどの問題があった。
また、清掃用シートとして柔らかい不織布を使用すると、清掃面へのダメージは軽減されるが、焦げ付き汚れの除去に時間がかかるといった問題、あるいは完全に汚れを除去することができないなどの問題が生じる恐れがある。
さらに、強固な焦げ付き汚れを除去する場合、使用の間に不織布が焦げ付き汚れに引っかかって毛羽立ち、ひいては破れるという問題もあった。
従って、かかる焦げ付き汚れの除去には、さらなる改善の余地があった。
また、油汚れなどの粘度の高い液状の汚れやゲル状の汚れに関して、上述の特許文献1〜4に記載のように清掃用シートに洗浄液などを含浸させて清掃する場合であっても、かかる粘度の高い液状の汚れやゲル状の汚れ、特に油汚れなどは清掃用シートに吸着されにくいという問題があった。加えて、これらの油汚れを対象物から剥離(又は分離)させて、水などの洗浄液に溶解させても、油汚れが溶解している洗浄液を清掃用シートに吸収させなければ対象物の表面に残り、清掃後に洗浄液が乾燥することで、対象物表面に油膜として残るため、その拭き取り性能が十分でないなどの問題もあった。
従って、かかる油汚れなどの粘度の高い液状の汚れやゲル状の汚れの除去、すなわち、かかる汚れを対象物表面から剥離(又は分離)して除去することに加えて、このような汚れを溶解させた洗浄液の対象物表面からの除去(すなわち、仕上げ拭きの拭き取り性能の向上)にも、さらなる改善の余地があった。
また、本発明者の研究により、不織布を使用した清掃用シートにおいて、洗浄液をシートに含浸させて使用する場合であっても、1枚のシートで油汚れなどの粘度の高い液状の汚れを除去し、なおかつ液残りや油膜残りなどを減少させて清掃を仕上げることと、上述の強固な焦げ付き汚れを除去することとの両方を達成することは、かかる不織布に求められる性能が互いに大きく異なるため、極めて困難であることもわかった。
本発明では、焦げ付き汚れの除去性能ならびに油汚れなどの液状の汚れやゲル状の汚れの除去性能の両方に優れる対物ワイピング用シートおよびその製造方法の提供を目的とする。
本発明は、以下の対物ワイピング用シートおよびその製造方法を提供するが、本発明は、以下の発明に限定されるものではない。
[1]
少なくとも2枚の不織布を積層し、前記不織布を一体化して構成される対物ワイピング用シートであって、
前記対物ワイピング用シートにおいて、一方の表面を構成する不織布が熱接着不織布であり、もう一方の表面を構成する不織布がスパンレース不織布であり、
前記熱接着不織布が、前記熱接着不織布の総質量に対して、20質量%以上の熱接着性繊維を含み、
前記熱接着性繊維の繊度が7.5dtex以上、16dtex以下であり、
前記熱接着性繊維によって、前記熱接着不織布を構成する繊維の交点の少なくとも一部が熱接着されており、
前記スパンレース不織布が、繊度0.6dtex以下の極細繊維を、前記スパンレース不織布の総質量に対して20質量%以上含む、
対物ワイピング用シート。
[2]
前記極細繊維が、分割型複合繊維に由来する繊維である、上記[1]に記載の対物ワイピング用シート。
[3]
前記スパンレース不織布が、前記スパンレース不織布の総質量に対して、50質量%以上の合成繊維を含む、上記[1]または[2]に記載の対物ワイピング用シート。
[4]
前記スパンレース不織布が、前記スパンレース不織布の総質量に対して、60質量%以下の親水性繊維を含む、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の対物ワイピング用シート。
[5]
前記親水性繊維がセルロース系繊維である、上記[4]に記載の対物ワイピング用シート。
[6]
前記スパンレース不織布の表面が凹部を有する、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の対物ワイピング用シート。
[7]
前記熱接着不織布の表面が実質的に平坦である、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の対物ワイピング用シート。
[8]
前記熱接着不織布と、前記スパンレース不織布とを積層し、前記2つの不織布を一体化して構成される2層構造を有する、上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の対物ワイピング用シート。
[9]
前記対物ワイピング用シート100質量部に対して、50質量部以上、1000質量部以下の洗浄料を含む、上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の対物ワイピング用シート。
[10]
台所での清掃に使用するための上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の対物ワイピング用シートであって、前記熱接着不織布で構成された表面で焦げ付き汚れを除去し、前記スパンレース不織布で構成された表面で液状またはゲル状の汚れを除去する台所用の対物ワイピング用シート。
[11]
少なくとも2枚の不織布を積層し、前記不織布を一体化して構成される対物ワイピング用シートの製造方法であって、
繊度が7.5dtex以上、16dtex以下の熱接着性繊維を20質量%以上含む繊維ウェブを用意し、前記繊維ウェブを構成する繊維同士の交点の少なくとも一部を前記熱接着性繊維により熱接着して、前記熱接着性繊維を20質量%以上含む熱接着不織布を得ること、
繊度が0.6dtex以下の極細繊維を含むスパンレース不織布であり、前記スパンレース不織布の総質量に対して前記極細繊維を20質量%以上含むスパンレース不織布を得ること、
前記熱接着不織布が前記対物ワイピング用シートの一方の表面を構成し、前記スパンレース不織布が前記対物ワイピング用シートのもう一方の表面を構成するように、前記熱接着不織布と前記スパンレース不織布とを積層すること、
前記熱接着不織布と前記スパンレース不織布とを積層した状態で加熱して、前記熱接着不織布と前記スパンレース不織布とを一体化すること、
を含む対物ワイピング用シートの製造方法。
[12]
前記熱接着不織布と前記スパンレース不織布とを一体化することが、少なくとも1対の対向する金属ロールの間に、前記熱接着不織布と前記スパンレース不織布とを積層した状態で挿入することで、前記熱接着不織布と前記スパンレース不織布とを少なくとも部分的に熱接着させることを含み、前記金属ロールのうち、前記スパンレース不織布と接触する金属ロールは、表面に凸部を有するエンボスロールであり、前記熱接着不織布と接触する金属ロールは、表面が平坦な金属ロールであり、
前記熱接着の間に、前記凸部を有するエンボスロールによって、前記スパンレース不織布の表面に前記エンボスロールの凸部に対応する凹部を形成し、
前記熱接着の間に、前記表面が平坦な金属ロールによって、前記熱接着不織布の表面を実質的に平坦に成形する、上記[11]に記載の対物ワイピング用シートの製造方法。
本発明によると、焦げ付き汚れの除去性能、ならびに油汚れなどの粘度の高い液状の汚れやゲル状の汚れに対する除去性能(対象物表面からの剥離(又は分離)と、液残り、油膜残りの少ない仕上げ拭き性)の両方に優れる対物ワイピング用シートおよびその製造方法を提供することができる。
本発明の対物ワイピング用シート(2層構造)の概略図である。 本発明の対物ワイピング用シートの製造方法の一実施形態を示す概略図である。 本発明の対物ワイピング用シートの使用方法の一例を示す概略図であり、熱接着不織布1を外側にしてスパンレース不織布2を内側にして折り曲げて使用する場合を示す。 本発明の対物ワイピング用シートの使用方法の一例を示す概略図であり、スパンレース不織布2を外側にして熱接着不織布1を内側にして折り曲げて使用する場合を示す。
本発明は、対物ワイピング用シートおよびその製造方法に関する。
<対物ワイピング用シート>
本発明の対物ワイピング用シートは、例えば台所の清掃において、その表面に強固に付着した焦げ付き汚れや、しつこい油汚れなどの粘度の高い液状の汚れやゲル状の汚れを効率よく除去することを主たる目的して開発されたものである。
本発明において用いる「台所」との用語は、台所、いわゆるキッチン、システムキッチンなどを含み、さらに台所で使用することのできる調理器具や周辺設備、例えばガスコンロやIHコンロなどのコンロ、オーブンレンジ、電子レンジなどのレンジ、換気扇など、また、ガスコンロやIHコンロの周辺を構成する壁面などを含む。なお、本発明の対物ワイピング用シートは、以下にて詳しく説明する通り、その用途は台所の清掃に限定して解釈されるべきではない。
本発明において、「焦げ付き汚れ」とは、台所で発生し得る焦げ付きによる汚れ(例えば、有機物の燃焼による焦げ付き汚れなど)を意味し、「液状の汚れ」とは、水および/または油を含む流動性を有する汚れを意味し、「ゲル状の汚れ」とは、水および/または油を含む流動性の無い汚れを意味し、ゲル状の汚れには、これらが乾燥して固着した汚れも含む。
本発明の対物ワイピング用シートは、少なくとも2枚の不織布を積層し、かかる不織布を一体化して構成されるものであり、対物ワイピング用シートの一方の表面を構成する不織布は「熱接着不織布」であり、もう一方の表面を構成する不織布は「スパンレース不織布」である。
例えば図1に示す通り、本発明の対物ワイピング用シート10は、少なくとも2枚の熱接着不織布1およびスパンレース不織布2を積層し、これらを一体化して構成されるものであり、シート10の一方の表面は、熱接着不織布1から構成され、もう一方の表面は、スパンレース不織布2から構成される2層構造のものであってもよい。ただし、本発明のシートは、かかる2層構造に限定されるものではない。
ここで「積層」とは、少なくとも2枚の不織布が、少なくとも部分的に積層されていることを意味し、2枚の不織布の内側には必要に応じて他の層(例えば他の不織布層)が存在していてもよいことを意味する。また、「一体化」とは、かかる不織布が少なくとも部分的に物理的および/または化学的に結合していることを意味し、好ましくは熱接着により少なくとも部分的に結合していることを意味する。
例えば図1に示す通り、本発明の対物ワイピング用シート10では、熱接着不織布1で強固な汚れ、より具体的には台所で生じた焦げ付き汚れなどを掻き取り、スパンレース不織布2で油汚れなどの粘度の高い液状の汚れやゲル状の汚れを拭き取り、対象物から剥離させた汚れ(例えば、掻き取って対象面から落とした焦げ付き汚れや、拭き取って対象面から落とした粘度の高い液状の汚れやゲル状の汚れ)を水や界面活性剤などを含む洗浄液に溶解および/または混在させて、かかる洗浄液をスパンレース不織布2に吸収させることで対象面から有意に除去することができる。また、本発明の対物ワイピング用シート10は、折り曲げて使用することもでき、好ましくは熱接着不織布1で焦げ付き汚れを除去した後に、折り返してスパンレース不織布2で油汚れなどの粘度の高い液状の汚れを除去することができるので(例えば図3、4参照)、1枚のシートで清掃を効率的に行うことができる。
また、図2〜4に示す通り、スパンレース不織布2の表面には、例えば金属ロール13としてエンボスロールを用いることによってエンボス加工を施すことにより、例えば図3に示すように本発明のシートを折り曲げて矢印aの方向に沿って熱接着不織布1で強固な焦げ付き汚れを除去する際、内側の対向するスパンレース不織布2の間での滑りを防止し、作業性を高めることができる。また、その後、例えば図4に示すように本発明のシートを折り返して、スパンレース不織布2で油汚れなどの粘度の高い液状の汚れを除去する際、そのエンボス加工による凹部によって、その除去効果をさらに高めることも可能である。
このようにして、本発明の対物ワイピング用シートでは、1枚のシートで、対象面に固着している焦げ付き汚れや、対象面からの除去が難しい油汚れなどの粘度の高い液状の汚れ及びゲル状の汚れを効率よく除去することができ、少ない拭き取り回数で油膜残りなどが少ない表面に仕上げることができる。
以下、本発明の対物ワイピング用シート(以下、単に「シート」と略記する場合もある)で用いることのできる熱接着不織布およびスパンレース不織布について、それぞれ詳しく説明する。
[熱接着不織布]
本発明において「熱接着不織布」とは、不織布の総質量に対して、20質量%以上の熱接着性繊維を含み、かかる熱接着性繊維によって、不織布を構成する繊維(すなわち、不織布に含まれる繊維)の交点の少なくとも一部を熱接着して成る不織布を意味する(以下、「サーマルボンド不織布」と称する場合もある)。
また、本発明において使用することのできる「熱接着性繊維」とは、加熱により熱接着性を呈することのできる繊維を意味する。
ここで「熱接着性」とは、加熱により接着性を呈する性質を意味するが、この接着性を呈するのに要する加熱温度およびその接着性の程度に特に制限はない。
熱接着性繊維として、例えば、少なくとも1種類の熱可塑性樹脂を含んで成る繊維、好ましくは少なくとも2種類の熱可塑性樹脂を含んで成る複合繊維を使用することができる。なお、本発明において、熱接着性繊維は、最大で6種類の熱可塑性樹脂を含むことができ、その種類および配合比に特に制限はない。
また、本発明では、熱可塑性樹脂として、従来公知の熱可塑性樹脂を何ら制限なく使用することができる。
熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどのポリエステル系樹脂;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなど、通常のチーグラ・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用して重合される各種ポリエチレン系樹脂、通常のチーグラ・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用して重合されるアイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックなどの各種ポリプロピレン系樹脂、各種ポリメチルペンテン系樹脂、各種ポリブテン−1系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂などの各種ポリオレフィン系樹脂;ナイロン6,ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチックなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なかでも2種類の熱可塑性樹脂を含んで成る複合繊維を使用することが好ましく、そのなかでも2種類のポリオレフィン系樹脂を組み合わせて使用することがより好ましく、特にポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを組み合わせて使用することが、熱接着性複合繊維を容易に製造できる点、熱接着が低温で行える点、接着強度に優れた熱接着点が形成される点、製造コスト、生産コストを低く抑えられるなどの点で好ましい。
ここで、複合繊維に含まれる2つの熱可塑性樹脂のうち、融点(紡糸後の融点)の低いものを第1成分とし、それよりも融点(紡糸後の融点)の高いものを第2成分とすると、その複合比(第2成分/第1成分)は、容積比で80/20〜20/80であることが好ましい。
また、かかる複合繊維は、芯鞘型、偏心芯鞘型、並列型(サイドバイサイド型)、分割型、海島型の構造を有していてもよい。かかる複合繊維の製造方法に特に制限はなく、例えば、従来公知の方法を使用して製造してもよい。あるいは市販のものを使用してもよい。
本発明において、熱接着不織布に含まれる上述の熱接着性繊維の繊度は、7.5dtex以上、16dtex以下であり、好ましくは8.0dtex以上、15dtex以下であり、より好ましくは8.5dtex以上、14.5dtex以下であり、特に好ましくは9.8dtex以上、14.0dtex以下である。
熱接着性繊維の繊度が上記の範囲内であると、強固な汚れ、より具体的には台所での焦げ付き汚れの除去性能が飛躍的に向上する。また、熱接着不織布の強度が向上し、使用の際の破れを抑制することもできる。さらに驚くべきことに、このような効果が得られるとともに、対象物の表面を傷つける恐れを低減することもできる。
熱接着性繊維の繊度が7.5dtex未満であると、対象面に強固に付着している汚れに対する掻き落とし効果が低下する。また、繊度が16dtexを超えると、不織布の目付が同じであれば、その不織布を構成する熱接着性繊維の本数が減少し、この場合にも掻き落とし効果は低下する。また、繊度が16dtexを超えると、熱接着性繊維の単繊維強度や熱接着不織布における熱接着の状態にもよるが、熱接着不織布全体が非常に硬い不織布となり、対象物の表面に傷が付きやすくなるなどの問題が生じる恐れがある。
本発明において、熱接着不織布に含まれる上述の熱接着性繊維は、短繊維であっても、長繊維であってもよく、その長さに特に制限はないが、例えば28mm以上、105mm以下、好ましくは32mm以上、90mm以下、より好ましくは42mm以上、80mm以下、特に好ましくは48mm以上、72mm以下である。
また、本発明において、熱接着不織布に含まれる上述の熱接着性繊維の配合量は、上述の通り、熱接着不織布の総質量に対して、20質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。本発明において、熱接着不織布に含まれる熱接着性繊維の上限は特に限定されず、熱接着不織布が熱接着性繊維からなる不織布であってもよい。
熱接着性繊維の配合量が上記の範囲内であると、不織布の作製時における十分な熱接着効果が得られるだけでなく、後述するスパンレース不織布との積層一体化が強固になり、対物ワイピング用シートとして力を入れて汚れを拭き取っても熱接着不織布とスパンレース不織布の剥離が生じにくくなる。加えて、熱接着不織布全体が充分に硬い不織布が得られるため、対象物の表面に強固に付着している汚れを掻き落とす性能が高い熱接着不織布になるなどの効果が得られる。
なお、熱接着不織布に含まれる繊維は、上述の熱接着性繊維に限定されるものではなく、さらに必要に応じて、上記の効果が損なわれない範囲で他の繊維を含んでいてもよい(以下、「混合繊維」と称する場合もある)。
混合繊維に特に制限はなく、例えば、針葉樹や広葉樹から生産される各種木材パルプを始め、ラミー、リネン、ケナフ、アバカ、ヘネケン、ジュート、ヘンプ、ヤシ、パーム、コウゾ、ミツマタ、バガス等の天然繊維や、ビスコースレーヨン、テンセル(登録商標)、リヨセル(登録商標)、キュプラなどの再生繊維などであってもよい。また、混合繊維は、合成樹脂からなる繊維であってもよい。
合成樹脂からなる繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの公知のポリエステルからなる単一繊維、公知のポリエチレン系樹脂からなる単一繊維、公知のポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維、もしくはこれらのポリオレフィンのモノマー同士の共重合樹脂、またはこれらのポリオレフィンを重合する際にメタロセン触媒を使用したポリオレフィンなど公知のポリオレフィン系樹脂からなる単一繊維、ナイロン6、ナイロン66,ナイロン11、ナイロン12などの公知のポリアミドからなる単一繊維、アクリルニトリルからなる(ポリ)アクリルの単一繊維、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチックの単一繊維、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エンジニアリング・プラスチックの単一繊維、または異なる種類の樹脂同士、もしくは同一の種類の異なるポリマー成分からなる樹脂(例えばポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレート)同士を複合した複合繊維などが挙げられる。
混合繊維が合成樹脂からなる複合繊維である場合、その複合状態は特に限定されない。例えば、複合繊維は、芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維、柑橘類の房状の樹脂成分が交互に配置されている分割型複合繊維や海島型複合繊維であってもよい。
混合繊維の熱接着不織布内における配合量は、熱接着不織布の総質量に対して、80質量%未満、好ましくは60質量%未満、より好ましくは40質量%未満、特に好ましくは20質量%未満である。混合繊維は、使用する必要がなければ、熱接着不織布に含まれなくてもよい。
上述の繊維を含む熱接着不織布は、上述の通り、熱接着性繊維によって、構成繊維の交点の少なくとも一部を熱接着することにより形成され得るものである。
かかる熱接着不織布の全体の目付は、例えば5g/m2以上、40g/m2以下である。熱接着不織布の目付が5g/m2未満であると、熱接着不織布を構成する繊維の本数が少なく、また熱接着不織布の厚さが薄いものとなるため、対象物の表面に強固に付着している汚れを掻き落とす性能が低下するおそれがある。熱接着不織布の目付が40g/m2を超えると、熱接着不織布が厚くなりすぎるおそれ、また硬くなりすぎるおそれがあり、対物ワイピング用シートとしての取扱い性が低下するおそれがある。熱接着不織布の目付は、好ましくは10g/m2以上、35g/m2以下であることがより好ましく、12g/m2以上、30g/m2以下であることが特に好ましく、15g/m2以上、25g/m2以下であることが最も好ましい。
熱接着不織布の目付が上記の範囲内であると、ある程度の強度を維持しながら熱接着不織布を薄く成形することができる。そうすることで、ある程度の強度を保ちながら、折り曲げることが可能となる(例えば図3、4参照)
また、熱接着不織布の目付が上記の範囲内であると、ある程度の強度を維持しながら、例えば図3および4に示すようにシートを折り曲げて使用すること、また、熱接着不織布を含めて、対物ワイピング用シート全体が柔軟性を有するため、清掃する対象物表面の細かい形状に対する追従性が高くなり、取扱い性に優れるだけでなく、各種汚れ(表面に強固に付着した焦げ付き汚れや、油汚れなどの粘度の高い液状の汚れやゲル状の汚れ)に対する除去性能が高い対物ワイピング用シートとなる。
本発明のシートにおいて、熱接着不織布の厚みは、例えば0.2mm以上、1.5mm以下、好ましくは0.2mm以上、1.2mm以下、より好ましくは0.25mm以上、1.0mm以下、特に好ましくは0.3mm以上、0.8mm以下である。
熱接着不織布の厚みが上述の範囲内であると、例えば焦げ付き汚れなどの強固な汚れを掻き落とすのに十分な強度が得られ、なおかつ本発明のシートを折り曲げることができる。
また、本発明のシートにおいて、熱接着不織布の汚れの除去を担う面(すなわちスパンレース不織布に積層する側の面とは反対側の面)は、実質的に平坦であることが好ましい。
ここで、熱接着不織布の表面が「実質的に平坦である」とは、調製した熱接着不織布の表面に対して、別途に熱エンボス加工を始めとする不織布への賦形加工をさらに行っていない状態を意味するか、または不織布の厚さを100%としたときに、その厚さの20%未満の凹部が存在しない状態を意味する。なお、このような凹部には、熱接着不織布中に含まれる繊維に起因する微細な凹部や、熱接着不織布が低目付になったときに生じ得る構成繊維が存在しない部分は含まれない。
このように熱接着不織布が実質的に平坦であることによって、強固な汚れ、特に台所での焦げ付き汚れに対して平行かつ適切に接触することができ、かかる汚れを効率よく除去することができる。
また、例えば図3および4に示すように、本発明のシートを折り曲げて使用する場合、その形状を適切に、好ましくは図示するように対象物に対して平行に維持することができる。
[スパンレース不織布]
本発明において「スパンレース不織布」とは、以下にて本発明の対物ワイピング用シートの製造方法について詳細に説明する通り、水流により繊維を交絡させて不織布を作製する従来公知のスパンレース法により得られる不織布を意味する(以下、「水流交絡不織布」と称する場合もある)。
本発明において、スパンレース不織布は、繊度が0.6dtex以下の極細繊維を、かかるスパンレース不織布の総質量に対して、20質量%以上の割合で含むものである。
(極細繊維)
本発明において使用することのできる繊度が0.6dtex以下の極細繊維は、通常、自然界には存在しない合成繊維であり、その繊度が0.6dtex以下、好ましくは0.01dtex以上、0.6dtex以下、より好ましくは0.03dtex以上、0.5dtex以下、特に好ましくは0.05dtex以上、0.5dtex以下である限り、従来公知の合成繊維を何ら制限なく使用することができる。
本発明において、極細繊維の繊度が上記の範囲内であれば、本発明のシート、特にスパンレース不織布の表面は、油汚れなどの液状の汚れの除去効果に優れる。なぜなら、かかる極細繊維の毛管現象により、液状の汚れを迅速かつ効率よく吸収することができるからである。
スパンレース不織布における極細繊維の配合量は、スパンレース不織布の総質量に対して、20質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは60質量%以上であり、最も好ましくは70質量%以上である。スパンレース不織布において、極細繊維の配合量の上限は特に限定されず、100質量%、すなわち全てが極細繊維からなる不織布であってもよいし、95質量%以下であってもよいし、90質量%以下であってもよい。
極細繊維の配合量は、上記の範囲内であると、油汚れなどの粘度の高い液状の汚れや、ゲル状の汚れに対する吸着性が向上する、柔らかさが得られるようになる。また、極細繊維の存在によって毛細管現象が現れるため、水性の液体、油性の液体を問わず、スパンレース不織布はかかる汚れを吸収するようになる。その結果、ワイピングにより対象物表面から剥離(又は分離)した汚れが溶解あるいは混合されている洗浄液をスパンレース不織布が吸収する量が多くなり、対象物表面への液残りや油膜残りが抑えられる、などの効果が得られる。
極細繊維の繊維長に特に制限はなく、短繊維であっても長繊維であってもよく、その長さに特に制限はないが、例えば26mm以上、96mm以下、好ましくは32mm以上、88mm以下、より好ましくは38mm以上、72mm以下、特に好ましくは42mm以上、64mm以下である。
本発明において使用する極細繊維は、以下にて詳細に説明する分割型複合繊維に由来する繊維であることが好ましい。
(分割型複合繊維に由来する繊維)
分割型複合繊維は、2以上の成分からなる複合繊維であって、分割により1本の繊維から複数本のより繊度の小さい繊維を形成し得る繊維である。「分割型複合繊維に由来する繊維」とは、分割型複合繊維の分割により形成された、分割前の一つのセクションのみからなる単一繊維、および2以上のセクションからなる繊維のほか、1本の分割型複合繊維の一部が分割されているが、他の部分において全く分割していない繊維を指す。あるいは、スパンレース不織布中に分割型複合繊維の分割により形成された繊維が含まれる限りにおいて、1本の分割型複合繊維が全く分割されていないことがある場合に、そのような全く分割されていない分割型複合繊維も、分割型複合繊維に由来する繊維に含まれる。
分割型複合繊維は、具体的には、繊維断面において構成成分のうち少なくとも1成分が2個以上に区分されてなり、構成成分の少なくとも一部が繊維表面に露出し、その露出部分が繊維の長さ方向に連続的に形成されている繊維断面構造を有する。本発明で用いる分割型複合繊維は2以上の成分で構成され、かつ、当該2以上の成分のうち、一つの成分は融点が140℃以下の熱可塑性樹脂の成分(「低融点成分」)であり、別の一つの成分は、融点が140℃を超える熱可塑性樹脂の成分(「高融点成分」)である。ここで、融点は、繊維にした後の樹脂の融点であり、JIS K7121(1987)に準じて測定したDSC曲線より求めることができる。低融点成分は繊維同士を接着させる役割をするので、熱接着成分と呼ぶこともできる。本発明においては、分割型複合繊維の1成分を低融点成分とし、低融点成分からなる極細繊維で繊維同士の交点の少なくとも一部を接着させる。それにより、スパンレース不織布は、その取り扱い性が向上する。高融点成分は、低融点成分と十分な融点差、好ましくは5℃以上の融点差、より好ましくは10℃以上の融点差を有し、低融点成分を溶融する温度で熱により変形等しないものであることが好ましい。
分割型複合繊維を構成する成分は、特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン−1、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン12およびナイロン66のようなポリアミド系樹脂等から任意に選択される。分割型複合繊維を構成する成分は、それ単独で繊維が構成されたときに公定水分率が5%未満となるものであってよく、あるいは5%を超えるものであってもよい。
分割型複合繊維を構成する高融点成分/低融点成分の組み合わせは、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン/ポリエチレン等である(ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、および直鎖状低密度ポリエチレンのいずれか一つまたはそれらの組み合わせである)。なお、ポリエチレンは比較的低い温度で溶融して、繊維同士を良好に接着するので、これを熱接着成分とすることが好ましい。上記の組み合わせのうち、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンの組み合わせが特に好ましい。
分割型複合繊維の繊度は、各成分に分割したときに(即ち、各セクションが一本の繊維となったときに)、繊度0.6dtex以下、好ましくは0.01dtex以上、0.6dtex以下の極細繊維を与えるものであれば、特に限定されない。本発明においては、分割型複合繊維に由来する繊維として、低融点成分からなる極細繊維が含まれ、これが繊維同士の交点の少なくとも一部を熱接着している。低融点成分からなる極細繊維の繊度が0.6dtex以下であると、熱接着点が小さいために、不織布の風合いが損なわれにくく、また、不織布が硬くなりにくい。
このような極細繊維を発生させるために、分割型複合繊維の繊度は、好ましくは、1dtex以上、9dtex以下であり、より好ましくは、1.3dtex以上、6.7dtex以下であり、さらにより好ましくは、1.5dtex以上、4.4dtex以下であり、特に好ましくは1.6dtex以上、3.5dtex以下である。また、分割型複合繊維における各成分への分割数(即ち、複合繊維におけるセクションの数)は、例えば、4以上、32以下であることが好ましく、4以上、20以下であることがより好ましく、6以上、16以下であることが最も好ましい。分割数が小さいと、繊度0.6dtex以下の極細繊維を形成するために、分割前の繊度を小さくする必要がある。小さい繊度の分割型複合繊維は、製造することが難しく、また不織布の生産性を低下させることがある。分割数が大きい分割型複合繊維は、複雑な紡糸ノズルを用いて、溶融紡糸条件を厳密に制御して製造する必要がある。そのため、そのような分割型複合繊維の使用は不織布の製造コストを上昇させることがある。極細繊維の繊度の下限は、特に限定されないが、0.01dtex以上であることが好ましい。
セクションの形状は特に限定されない。例えば、分割型複合繊維は、楔形のセクションが菊花状に並べられたものであってよい。あるいは、分割型複合繊維は、繊維断面において各セクションが層状に並べられたものであってよい。また、分割型複合繊維は繊維断面を観察したとき長さ方向に連続する空洞部分を有さない、いわゆる中実分割型複合繊維であってよく、あるいは長さ方向に連続する1箇所以上の空洞部分を有する、いわゆる中空分割型複合繊維であってもよい。
分割型複合繊維を構成する成分の容積比は、得ようとする極細繊維の繊度等に応じて決定され得る。例えば、低融点成分と高融点成分との容積比は、2:8〜8:2(低融点成分:高融点成分)であることが好ましい。上記範囲内に容積比があると、複合繊維の生産性および複合繊維の分割性が高くなる傾向にある。より好ましい低融点成分:高融点成分の容積比は、4:6〜6:4である。
(その他の合成繊維)
また、本発明では、スパンレース不織布において、上述の極細繊維に加えて、従来公知の他の合成繊維を配合してもよい。
合成樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの公知のポリエステルからなる単一繊維、公知のポリエチレン系樹脂からなる単一繊維、公知のポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維、もしくはこれらのポリオレフィンのモノマー同士の共重合樹脂、またはこれらのポリオレフィンを重合する際にメタロセン触媒を使用したポリオレフィンなど公知のポリオレフィン系樹脂からなる単一繊維、ナイロン6、ナイロン66,ナイロン11、ナイロン12などの公知のポリアミドからなる単一繊維、アクリルニトリルからなる(ポリ)アクリルの単一繊維、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチックの単一繊維、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エンジニアリング・プラスチックの単一繊維、または異なる種類の樹脂同士、もしくは同一の種類の異なるポリマー成分からなる樹脂(例えばポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレート)同士を複合した複合繊維などが挙げられる。
スパンレース不織布において、合成繊維の合計の配合量(上述の極細繊維を含む)は、スパンレース不織布の総質量に対して、例えば50質量%以上、好ましくは55質量%以上、95質量%以下、より好ましくは60質量%以上、92質量%以下、特に好ましくは70質量%以上、90質量%以下である。
合成繊維の配合量が、上記の範囲内であると、拭き取り時の拭き取り性が良く、液残りが少ないといった効果が得られる。
なお、上述の合成繊維の合計の配合量には、以下にて詳しく説明する親水性繊維の量は含まれないことに留意されたい。
(親水性繊維)
また、本発明のスパンレース不織布は、スパンレース不織布の総質量に対して、60質量%以下、好ましくは5質量%以上、50質量%以下、より好ましくは8質量%以上40質量%以下、特に好ましくは10質量%以上、30質量%以下の親水性繊維を含む。
スパンレース不織布が親水性繊維を上記の範囲で含むことによって、例えば水性の液状の汚れの吸着性能が向上する。
また、親水性繊維は、必要に応じて不織布に含浸され得る水、洗浄料などの液体を保持することができ、この保持した液体を使用の際に対象物に供給し、最終的に洗浄後にかかる洗浄液を吸収し、対象面から水分を極力除去する役割を担うこともできる。
親水性繊維は公定水分率が5%以上の繊維である。公定水分率は、JIS L0105(2006)に示されている。公定水分率が知られていない場合には、次の式から算出される値を公定水分率とする。
公定水分率(%)=[(W−W’)/W’]×100
ここで、Wは温度20℃、湿度65%RHの環境下における繊維の質量(g)、W’は繊維絶乾時の質量(g)をそれぞれ意味する。なお、温度20℃、湿度65%RHの環境下における繊維の質量は、温度20℃、湿度65%RHの環境下に繊維を放置し、一定の質量になったときの質量を意味し、繊維絶乾時の質量は、105℃に設定した乾燥機中に繊維を放置し、一定の質量になった時の質量を意味する。
親水性繊維は、具体的には、パルプ、コットン、麻、シルク、およびウールなどの天然繊維、ビスコースレーヨン、キュプラ、および溶剤紡糸セルロース繊維などの再生繊維、ならびに親水性を有する合成繊維、または疎水性の合成繊維(公定水分率が5%未満の合成繊維)に親水化処理を施したもの等である。親水化処理として、例えば、コロナ放電処理、スルホン化処理、グラフト重合処理、繊維への親水化剤の練り込み、および耐久性油剤の塗布などが挙げられる。
親水性繊維は、セルロース系繊維であることが好ましい。セルロース系繊維は、より具体的には、1)機械パルプ、再生パルプおよび化学パルプ等のパルプ、2)コットン(木綿)、麻などの植物性天然繊維、ならびに3)ビスコースレーヨン、キュプラ、および溶剤紡糸セルロース繊維(例えば、レンチングリヨセル(登録商標)およびテンセル(登録商標))等の再生繊維である。
パルプは、針葉樹木材または広葉樹木材を用いて常套の方法で製造されたものであってよい。一般的に、パルプ繊維の繊度は、1.0dtex〜4.0dtex程度、繊維長は0.8mm〜10mm程度であるが、この範囲外の繊度および/または繊維長を有するパルプ繊維を使用してもよい。
再生繊維を使用する場合、その繊度は、0.1dtex〜6dtex程度であることが好ましく、0.3dtex〜3.5dtex程度であることがより好ましい。この範囲内の繊度の再生繊維は柔軟性を確保するのに適している。再生繊維の繊度が小さすぎると、繊維ウェブを製造する際のカード通過性が悪化し、不織布の生産性が低下することがある。再生繊維の繊度が大きすぎると、不織布が粗いものとなって、触感が低下することがある。
また、スパンレース不織布は、上述の繊維だけでなく、他の繊維、例えば、針葉樹や広葉樹から生産される各種木材パルプを始め、ラミー、リネン、ケナフ、アバカ、ヘネケン、ジュート、ヘンプ、ヤシ、パーム、コウゾ、ミツマタ、バガス等の天然繊維を含んでいてもよく、その配合量に特に制限はない。
ここで、本発明において、スパンレース不織布の全体の目付は、例えば30g/m2以上、100g/m2以下であり、好ましくは40g/m2以上、90g/m2以下であり、より好ましくは50g/m2以上、80g/m2以下であり、特に好ましくは60g/m2以上、75g/m2以下である。
スパンレース不織布の全体の目付が上記の範囲内であると、不織布に充分な厚みがあるため、作業時の耐久性に優れる。また、不織布全体で十分な量の洗浄液を保持することができるため、その拭き取り性が向上するなどの効果が得られる。
また、本発明において、スパンレース不織布は、単層であっても、2層以上の多層構造であってもよい。なお、この場合において、各層の目付は、それぞれ独立して、例えば、10g/m2以上、70g/m2以下であり、好ましくは15g/m2以上、50g/m2以下であり、より好ましくは20g/m2以上、45g/m2以下であり、特に好ましくは25g/m2以上、40g/m2以下である。
また、スパンレース不織布が多層構造を有する場合、その層の数に特に制限はないが、最大で5層、より好ましくは最大で4層の構造を有することができる。
本発明では、多層構造のスパンレース不織布として3層構造のものが好ましく、その中間に位置する層(以下、「中間層」と称する)を上述の親水性繊維から構成される層とすることがさらに好ましい。
親水性繊維は、上述の通り、親水性を有することから、水性の液体を吸着または保持するのに適しているが、油汚れなどを吸着するのには適していない。従って、親水性繊維から構成される層を3層構造の最外層として配置すると、油汚れが残り、油膜が形成される場合があるので、親水性繊維から構成される層を3層構造の中間層として配置し、その中に必要に応じて水などの洗浄料などを含浸させて洗浄料の保持層として使用することが好ましい。
また、3層構造の外層、特に最外層は、上述の分割型複合繊維に由来する繊維から構成されることが好ましく、かかる繊維によって、油汚れなどの吸着性は大幅に向上する。
ここで、本発明のシートにおいて、スパンレース不織布の全体の厚みは、例えば0.3mm以上、2.0mmであり、好ましくは0.4mm以上、1.5mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上、1.2mm以下であり、特に好ましくは0.6mm以上、1.0mm以下である。
スパンレース不織布の厚みが上述の範囲内であると、油汚れなどの液状の汚れを吸着するのに十分な厚みが得られる。
また、ここで、例えば図2に示す通り、スパンレース不織布2は、上述の熱接着不織布1と共に2本の対向する金属ロール13、14の間に挟持されて積層され、さらにその間に熱を付与することによって、例えば金属ロール13、14のいずれか一方またはその両方で加熱することによって、熱接着により熱接着不織布1と一体化することができる。
このとき、図2に示すように金属ロール13として表面に凸部を有するエンボスロールを使用することで、スパンレース不織布2の表面にエンボスロールの凸部の形状に対応する形状の凹部を形成することができる。
このようにスパンレース不織布の表面に凹部を形成することで、本発明の対物ワイピング用シートにおいて、スパンレース不織布の表面による拭き取り効果はさらに向上する。また、かかる凹部により、スパンレース不織布の表面と対象物との間の摩擦力を適切に調節することもできる。
かかる凹部の深さは、例えば0.1mm以上、1.5mm以下、好ましくは、0.2mm以上、1.2mm以下、より好ましくは0.3mm以上、1.0mm以下、特に好ましくは0.3mm以上、0.8mm以下である。
かかる凹部の形状および配置のパターンに特に制限はない。詳しくは、以下の製造方法の説明において詳述する。
また、図3において例示する通り、本発明の対物ワイピング用シートの熱接着不織布1の表面が外側になるように本発明のシートを折り曲げて使用する場合、強固な汚れ、特に焦げ付き汚れなどを、シートを矢印aの方向に沿って動かすことによって掻き取る場合、スパンレース不織布2の表面に形成した凹部により摩擦力が増加し、対向するスパンレース不織布2の間で不織布が互いに対して滑走することを有意に抑制することもできる。
<本発明の対物ワイピング用シートに含まれる他の層>
本発明の対物ワイピング用シートは、上述の熱接着不織布およびスパンレース不織布だけでなく、例えば熱接着不織布とスパンレース不織布との間に他の層(例えば他の不織布の層)を含んでいてもよい。
<洗浄料>
本発明の対物ワイピング用シートには、上述の汚れをさらに効率よく除去するために、洗浄料が含浸されていてもよい。
本発明において、洗浄料は、スパンレース不織布に含浸させることが好ましい。このとき、洗浄料が水性である場合、スパンレース不織布は、親水性繊維を含むことが好ましい。
本発明の対物ワイピング用シートに含浸されるか、または併用され得る洗浄料は、水(例えば、水道水、工業用水、蒸留水、脱イオン水など)などの水性媒体中に界面活性剤、アルカリ剤、電解質および水溶性溶剤などの洗浄成分を含むものであり、上述の汚れを溶解および/または分解できるものが好ましい。なお、洗浄料中に含まれ得る不揮発性残留成分については、10重量%以下であることが清掃後の仕上がり性の面で好ましく、特に5重量%以下であることが好ましい。
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の何れもが用いられ得、特に洗浄性と仕上がり性の両立の面から、ポリオキシアルキレン(アルキレンオキサイド付加モル数1〜20)アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エーテル、アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)グリコシド(平均糖縮合度1〜5)、ソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エステル、及びアルキル(炭素数6〜22の直鎖又は分岐鎖)グリセリルエーテル等の非イオン界面活性剤並びにアルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン等のアルキル炭素数8〜24の両性界面活性剤が好適に用いられる。界面活性剤は、洗浄料中に、0.01質量%以上、2.0質量%以下の割合で含まれていてもよい。
アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等の炭酸塩、硫酸水素ナトリウム等のアルカリ性の硫酸塩、第1リン酸ナトリウム等のリン酸塩、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩、アンモニア、モノ、ジ又はトリエタノールアミン等のアルカノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のβ−アミノアルカノール並びにモルホリン等が挙げられ、特に感触とpHの緩衝性の点でモノ、ジ又はトリエタノールアミン等のアルカノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のβ−アミノアルカノール並びにモルホリンが好ましい。アルカリ剤は、洗浄料中に、1質量%以下の割合で含まれていてもよい。
電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び硫酸ナトリウムのような一価の水溶性金属塩、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸亜鉛のような二価の水溶性金属塩、塩化アルミニウム及び塩化鉄のような三価の水溶性金属塩、並びにクエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム及びフマル酸ナトリウムのような水溶性有機酸塩が好ましい。電解質は、洗浄料中に、0.01質量%以上、10質量%以下の割合で含まれていてもよい。
水溶性溶剤としては、1価アルコール、多価アルコール及びその誘導体から選ばれる1種以上のものが好適である。特に、油汚れの溶解性、仕上がり性、安全性の点から、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、グリセリン等が好ましい。水溶性溶剤は、洗浄料中に、1質量%以上、50質量%以下の割合で含まれていてもよい。
洗浄料には、上述の洗浄成分に加えて、必要に応じて、除菌剤(例えば、過酸化水素、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、第4級アンモニウム塩、安息香酸ナトリウム及びパラオキシ安息香酸ナトリウム、並びにポリリジンのような天然除菌剤等が挙げられる)、香料、防黴剤、色素(染料、顔料)、キレート剤、研磨剤、漂白剤等を含有させることもできる。
なお、洗浄料の媒体である水は、洗浄料中に、50質量%以上、99.9質量%以下、好ましくは75質量%以上、99質量%以下の割合で含まれていることが、清掃する表面の洗浄性および仕上がり性の点から好ましい。
洗浄料の使用量に特に制限はないが、対物ワイピング用シート100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、1000質量部以下、より好ましくは100質量部以上、750質量部以下の洗浄料を含浸させる。
このような範囲内で洗浄料含浸させることによって、本発明の対物ワイピング用シートの汚れ除去性能は、飛躍的に向上する。
また、本発明の対物ワイピング用シートがこのような洗浄料を含む場合、本発明の対物ワイピング用シートを適切な包装材料で包装してパッケージング化して販売してもよい。
このとき、本発明の対物ワイピング用シートは適切に折り畳んだ状態でもよく、かかるシートを複数枚同時にパッケージング化してもよい。
<対物ワイピング用シートの使用方法>
本発明の対物ワイピング用シートの使用方法に特に制限はないが、例えば図1に示すように布状または板状の形態で使用してもよく、このとき熱接着不織布1の面で強固な汚れ(例えば焦げ付き汚れ)を掻き取り、その次に、裏返して、スパンレース不織布2の面で液状の汚れ(例えば油汚れ)を拭き取ることができる。このようにして1枚のシートで汚れ、特に台所(キッチン)周りの汚れを簡便かつ効率よく除去することができる。
また、図3および4に示すように、本発明の対物ワイピング用シートを折り曲げて使用してもよい。例えば図3に示すように、熱接着不織布1の面を外側にして、スパンレース不織布2の面を内側にして半分に折り曲げ、例えば矢印aの方向に沿ってシートを往復運動させることによって、熱接着不織布1の面で強固な汚れ(例えば焦げ付き汚れなど)を掻き取ることができる。このとき、図3に例示するようにスパンレース不織布2の表面にエンボス加工を施しておくと、その摩擦力によって内側に折り畳んだスパンレース不織布2の滑走を有意に抑制することができ、熱接着不織布1による汚れ落としの作業性が飛躍的に向上する。
その後、例えば図4に示すように、使用した熱接着不織布1の面を内側にして、スパンレース不織布2の面を外側にして半分に折り返し、シートを例えば矢印bの方向に沿って往復運動させることによって、スパンレース不織布2の面で液状の汚れ(例えば油汚れなど)を有意に効率よく拭き取ることができる。このとき、上述のようにスパンレース不織布2の表面にエンボス加工を施しておくと、その凹部に汚れが吸収または吸着され、さらに効率よく汚れを除去することができる。また、その際、内側の対向する熱接着不織布の間では繊度が7.5dtex以上、16dtex以下の熱接着性繊維に起因して適度の摩擦力が生じ、熱接着不織布1の滑走は有意に抑制することができ、スパンレース不織布2による汚れ落としの作業性は飛躍的に向上する。また、熱接着不織布1の表面にもエンボス加工を施すことができるが、その場合、不織布面同士の接触面積が下がるために、かえって熱接着不織布1が滑る場合もあり、作業効率が低下することもある。
なお、本発明の本発明の対物ワイピング用シートの使用方法は、上述のものに限定されるものではない。
<対物ワイピング用シートの製造方法>
本発明の対物ワイピング用シートの製造方法について以下に詳しく説明する。
本発明の対物ワイピング用シートの製造方法は、少なくとも以下の工程I〜IVを含むが、本発明の製造方法に含まれる工程は、以下の工程I〜IVに限定されるものではない。
工程I: 熱接着不織布を得ること
工程II: スパンレース不織布を得ること
工程III:前記熱接着不織布と前記スパンレース不織布とを積層すること
工程IV: 前記熱接着不織布と前記スパンレース不織布とを一体化すること
以下、各工程について詳しく説明する。
[工程I]
工程Iにおいて熱接着不織布を得る。工程Iで得られる熱接着不織布は、例えば、上述の通り、まず、繊度が7.5dtex以上、16dtex以下の熱接着性繊維を20質量%以上含む繊維ウェブを用意し、この繊維ウェブを構成する繊維同士の交点の少なくとも一部を熱接着性繊維により熱接着して得られるものであり、前記熱接着性繊維を20質量%以上の割合で含むことを特徴とする(なお、上述の繊維ウェブを構成する繊維は、上記の熱接着性繊維に限定されるものではなく、他の繊維(例えば上述の混合繊維)を含んでいてもよい)。
より具体的には、このような熱接着不織布を得るために、工程Iでは、まず、繊度が7.5dtex以上、16dtex以下の熱接着性繊維、必要があれば上述の混合繊維を用意する。次いで、用意した繊維を均一に混合して繊維ウェブを作製する(ただし、熱接着性繊維の割合は、繊維ウェブの総質量に対して、20質量%以上である)。かかる繊維ウェブは、従来公知の方法で作製することができ、繊維ウェブの作製方法として、例えば、カード法、エアレイド法、湿式抄紙法、スパンボンド法、メルトブローン法などが挙げられる。
続いて、前記繊維ウェブを、熱接着性繊維に含まれる最も融点の高い熱可塑性樹脂の紡糸後の融点をTm(℃)としたときTm℃未満の温度で熱処理することによって、あるいは、熱接着性繊維が複合繊維である場合には、複合繊維に含まれる最も融点の低い熱可塑性樹脂の紡糸後の融点をTmL複合(℃)としたときTmL複合℃以上、TmL複合+30℃以下の温度であって、最も融点の高い熱可塑性樹脂の紡糸後の融点をTmH複合(℃)としたときTmH複合未満の温度で熱処理することによって、不織布を構成する繊維の交点の少なくとも一部を熱接着させる。これにより、繊維が一体化された熱接着不織布が得られる。
なお、上述の熱接着不織布の作製方法は、単なる例示であり、上述の方法に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜選択して使用すればよい。
[工程II]
工程IIにおいてスパンレース不織布を得る。工程IIで得られるスパンレース不織布は、上述の通り、繊度が0.6dtex以下の極細繊維を、スパンレース不織布の総質量に対して、20質量%以上の割合で含むものである。
スパンレース不織布の作製方法に特に制限はなく、例えば、従来公知の水流交絡処理によるスパンレース法を使用して作製すればよい。
かかる水流交絡処理によれば、繊維同士が緻密に交絡し、均一で表面の平坦な不織布を得ることができるとともに、極細繊維として分割型複合繊維に由来する繊維を使用する場合、分割型複合繊維の分割を繊維交絡と同時に行うこともできる。
スパンレース不織布は、例えば、上述の極細繊維(あるいは分割型複合繊維)、必要があれば親水性繊維などを含む繊維ウェブを作製し、繊維ウェブを水流交絡処理などの繊維交絡処理に付した後、繊維ウェブを乾燥し、必要があれば、かかる繊維に含まれる低融点成分により繊維同士を熱接着させることにより製造され得る。
繊維ウェブは、構成繊維を混合して作製する。繊維ウェブの形態は、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブ、エアレイウェブ、湿式抄紙ウェブ、ならびにスパンボンドウェブ等から選択されるいずれの形態であってもよい。
水流交絡処理は、支持体に繊維ウェブ(単層または複層)を載せて、柱状水流を噴射することにより実施する。支持体は、不織布表面が平坦となり、かつ凹凸を有しないように、1つあたりの開孔面積が0.2mmを超える開孔を有さず、また、突起またはパターンが形成されていないものであることが好ましい。例えば、支持体は、80メッシュ以上、100メッシュ以下の平織の支持体であることが好ましい。
水流交絡処理は、孔径0.05mm以上、0.8mm以下のオリフィスが0.3mm以上、1.5mm以下の間隔で設けられたノズルから、水圧1MPa以上、15MPa以下の水流を、繊維ウェブの表裏面にそれぞれ1〜5回ずつ噴射することにより実施してよい。水圧は、好ましくは、1MPa以上、10MPa以下であり、より好ましくは、1MPa以上、7MPa以下である。
次いで、交絡処理後の繊維ウェブは、必要に応じて、熱接着処理に付され得る。熱接着処理は、上述の水流交絡処理によって水分を含んでいる繊維ウェブを乾燥させるだけの熱処理でもよいし、水流交絡処理によって水分を含んでいる繊維ウェブを乾燥し、上述の構成繊維の低融点成分による熱接着処理を兼ねる熱処理であってもよい。水流交絡処理を行った繊維ウェブの熱処理は、例えば、80℃以上、140℃以下の温度で実施することができる。水流交絡後の繊維ウェブに対し、繊維ウェブの乾燥だけを目的に熱処理するのであれば、熱処理の温度は85℃以上、前記構成繊維の低融点成分の融点以下の温度、より好ましくは90℃以上、120℃以下で熱処理を行うことができる。熱処理が繊維ウェブの乾燥と、構成繊維の低融点成分による熱接着処理を同時に行う場合には、熱処理は、125℃以上、150℃以下、好ましくは、構成繊維の低融点成分の融点以上、145℃以下で熱処理を行うことができる。
熱接着処理において、低融点成分以外の繊維成分が溶融すると、接着点が増える又は大きな接着点が形成されて、不織布の柔軟性が損なわれるので、低融点成分のみが溶融するように、温度を選択することが好ましい。熱処理温度を調節することによって、低融点成分による熱接着の度合いを変化させることもできる。熱接着の度合いは、不織布の強度、柔軟性等に影響を与え得る。
交絡処理後、熱接着処理の前に、必要に応じて、不織布を拡幅ロールによる拡幅処理に付してもよい。
[工程III]
工程IIIでは、例えば図1に示す通り、熱接着不織布1が対物ワイピング用シート10の一方の表面を構成し、スパンレース不織布2が対物ワイピング用シート10のもう一方の表面を構成するように、熱接着不織布とスパンレース不織布とを積層する。
より具体的には図2に示す通り、一方の巻出ロール12にスパンレース不織布2を巻回によりセットし、もう一方の巻出ロール11に熱接着不織布1を巻回によりセットし、これらを矢印Xの方向に沿って同時に巻出して重ねることによって、熱接着不織布1およびスパンレース不織布2を簡便かつ効率よく積層することができる。
また、ここで、各巻出ロールの回転方向、各不織布の巻出方向に特に制限は無い。
このとき、テンションロール(図示せず)などを配置して、熱接着不織布1とスパンレース不織布2との積層を調節してもよい。
また、図2に例示するように一対の金属ロール13、14の間で熱接着不織布1とスパンレース不織布2とを挟持(又は金属ロール13、14の間で押圧)することによって、これらの不織布を積層することもできる。なお、このときの圧力は、これらの不織布を積層することができれば特に制限はない。
なお、本発明において、熱接着不織布とスパンレース不織布との積層方法は、上記の方法に限定されるものではない。
また、上述の通り、本発明では、熱接着不織布とスパンレース不織布との間に他の層(例えば他の不織布層など)を介在させてもよく、その場合には、かかる他の層を追加の巻出ロール(図示せず)にセットして、熱接着不織布とスパンレース不織布との間に、この他の層が配置されるように矢印Xに沿って他の層を巻出せばよい。
[工程IV]
工程IVでは、例えば熱接着不織布とスパンレース不織布とを上述のように積層した状態で加熱することにより、熱接着不織布とスパンレース不織布とを一体化する。
このとき、熱接着不織布とスパンレース不織布とを加熱による熱接着によって少なくとも部分的に結合させて一体化することが好ましい。
熱接着不織布とスパンレース不織布とが少なくとも部分的に一体化ができれば、そのときの圧力および加熱温度に特に制限はない。加熱温度としては、例えば熱接着不織布に含まれる熱接着性繊維に含まれる最も融点の低い熱可塑性樹脂の紡糸後の融点±10℃、好ましくは熱接着不織布に含まれる熱接着性繊維に含まれる最も融点の低い熱可塑性樹脂の紡糸後の融点±7の温度範囲で加熱することによって一体化を行うことが好ましい。
また、このような加熱は、例えば図2に示す金属ロール13、14のいずれか一方またはその両方を加熱することによって行われてもよい。
このとき、例えば図2に示すように一対の金属ロール13、14の間で熱接着不織布1とスパンレース不織布2とを挟持して、上述の積層と同時に、かかる2つの不織布を熱接着により一体化してもよい。
また、金属ロール13、14のいずれか一方だけを用いて不織布を加熱により一体化してもよい。
(エンボス加工)
例えば、図2に示すように金属ロール13、14を用いて、熱接着不織布1およびスパンレース不織布2を金属ロール13、14の間に熱接着不織布1とスパンレース不織布2とが積層した状態で挿入して加熱することで熱接着不織布1とスパンレース不織布2とを少なくとも部分的に熱接着させることによってこれらを一体化する場合、スパンレース不織布2と接触する金属ロール13は、例えば図2に示すようにその表面に凸部を有するエンボスロールであってもよい。
金属ロール13をエンボスロールとすることによって、スパンレース不織布2にエンボスロールの凸部の形状に対応する形状の凹部を形成することができる。スパンレース不織布の表面にこのような凹部を形成することで汚れの除去効率が向上し、なおかつ質感なども向上する。
エンボスロールとしては、従来公知のエンボスロールを何ら制限なく使用することができる。
エンボスロールの凸部の形状は、例えば、その高さが、通常0.1mm以上、1.5mm以下、好ましくは0.2mm以上、1.2mm以下、より好ましくは0.3mm以上、1.0mm以下、特に好ましくは0.3mm以上、0.8mm以下の円柱形のものであり、その断面の円の直径は、通常0.5mm以上、1.5mm以下、好ましくは0.7mm以上、1.3mm以下、より好ましくは0.8mm以上、1.2mm以下である。ただし、凸部の形状は、かかる円柱形のものに限定されず、例えば、円錐形、角錐形、三角柱、四角柱、六角柱といった角柱形、半球形であってもよいし、凸部が畝状に連続した線状のものなどであってもよい。
凸部の配置パターンにも特に制限はなく、一定の間隔で配置されることが好ましく、等間隔で配置されることがより好ましく、1.5mm以上、5mm以下の等間隔で配置されることが特に好ましい。なお、凸部間の間隔とは、各凸部の断面の幾何学的形状の中心間の距離を意味する。
なお、エンボスロールの凸部は、スパンレース不織布2を貫通してもよい。
図2に示す態様では、金属ロール13は、その表面に凸部を有するエンボスロールであるが、表面が平坦な金属ロール(例えば、表面に鏡面加工が施された表面が平坦な金属ロールなど)であってもよい。
そうすることで、スパンレース不織布2の表面を実質的に平坦に成形することも可能である。
ここで、スパンレース不織布の表面が実質的に平坦であるとは、上述のようにして作製したスパンレース不織布の表面に対して、別途に熱エンボス加工を始めとする不織布への賦形加工を行っていない状態であるか、または、不織布の厚さを100%としたときに、その厚さの30%未満の凹部が存在しない状態を意味する。なお、かかる凹部には、熱接着不織布中に含まれる繊維に起因する微細な凹部や、熱接着不織布が低目付になったときに生じ得る構成繊維が存在しない部分は含まれない。
また、図2に示す態様では、金属ロール14は、その表面が平坦な金属ロール(例えば、表面に鏡面加工が施された表面が平坦な金属ロールなど)である。
このように表面が平坦な金属ロールを用いることによって、熱接着不織布1の表面を実質的に平坦に成形することができる。
また、金属ロール14は、図2に示す金属ロール13と同様にその表面に凸部を有するエンボスロールであってもよい。そうすることで、熱接着不織布1の表面に、エンボスロールの凸部の形状に対応する形状の凹部を形成することができる。
上述のように、工程IVにおいて、エンボスロールを用いると、熱接着不織布1とスパンレース不織布2との熱接着をエンボスロールの凸部の周辺においてより強力に行うことができ、かかるポイント接着によって、層間剥離しにくいシートを提供することができる。また、その生産性も向上する。
このように、工程IVにおいて、熱接着不織布とスパンレース不織布とを一体化することによって、本発明の対物ワイピング用シートが完成する。
また、必要に応じて、本発明の対物ワイピング用シートに上述の洗浄料を含浸させてもよい。洗浄料の含浸方法に特に制限はなく、浸漬、刷毛塗り、スプレー塗布などの方法により行うことができる。
さらに本発明の対物ワイピング用シートを適切な包装材料で包装してパッケージング化して販売してもよい。
本発明を以下の実施例および比較例にてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<熱接着不織布>
本実施例の対物ワイピング用シートに用いる熱接着不織布を次の手順で作製した。まず熱接着不織布を構成する熱接着性繊維として、繊度が11dtex、繊維長が51mmであり、芯成分がポリプロピレン、鞘成分が高密度ポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維(ダイワボウポリテック(株)製 商品名「NBF(H)」(複合繊維A)を用意し、パラレルカード機を用いて目付(繊維ウェブの狙い目付)約20g/m2、芯鞘型複合繊維が100質量%のパラレルカードウェブを作製した。この繊維ウェブを、熱風貫通式熱処理機(エアスルー加工機)を用いて、熱処理温度を140℃とし、20秒間熱処理することで繊維ウェブを構成する芯鞘型複合繊維の高密度ポリエチレン(鞘成分)を溶融させ、繊維の交点を熱接着し、熱接着不織布を得た。得られた熱接着不織布の厚さは0.5mm、目付は20g/m2であった。
<スパンレース不織布>
本実施例の対物ワイピング用シートに用いるスパンレース不織布を次の手順で作製した。まず、スパンレース不織布を構成する繊維として、繊度が2.2dtex、繊維長が51mmであり、ポリエチレンテレフタレート/高密度ポリエチレンの組み合わせからなる、分割数8の分割型複合繊維(分割により形成される繊維のうち最小の繊度を有するものの繊度は0.275dtex)、商品名「DFS(SH)」、ダイワボウポリテック(株)製)と、繊度が1.7dtexであり、繊維長が40mmのビスコースレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)製)を用意した。
次に、パラレルカード機を用いて目付(繊維ウェブの狙い目付)約30g/m2、分割型複合短繊維が100質量%のパラレルカードウェブを作製した。次に、パラレルカード機を用いて、目付(繊維ウェブの狙い目付)約10g/m2、親水性繊維としてビスコースレーヨン繊維(繊度:1.7dtex、繊維長:40mm)が100質量%のパラレルカードウェブを作製し、上記の分割型複合繊維からなるパラレルカードウェブの上に載置し、積層繊維ウェブとした。さらに、パラレルカード機を用いて目付(繊維ウェブの狙い目付)約30g/m2、上記の分割型複合短繊維が100質量%のパラレルカードウェブを作製し、上記の積層繊維ウェブのビスコースレーヨン繊維からなるパラレルカードウェブ側に、この分割型複合繊維からなるパラレルカードウェブを載置し、分割型複合繊維/ビスコースレーヨン繊維/分割型複合繊維の3層構造を有する積層繊維ウェブを作製した。
この3層構造の積層繊維ウェブに対し、水流交絡処理を行った。水流交絡処理は、孔径0.10mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられているノズルを備えたウォータージェット装置を用いて、積層体の上面に対して水圧3MPaの柱状水流を1回噴射し、その後、同様のウォータージェット装置を用いて、積層体の下面に対して水圧3MPaの柱状水流を1回噴射して、繊維同士を交絡させるとともに、前記分割型複合繊維の分割処理を行った。その後、積層繊維ウェブを100℃にて充分に乾燥させ、スパンレース不織布を得た。得られたスパンレース不織布は、厚さが0.85mmであり、目付が70g/m2であった。
<熱エンボス処理>
得られた熱接着不織布およびスパンレース不織布を用いて、両者を積層して一体化すると同時に、スパンレース不織布側の表面にエンボス加工を行った。
まず、上記の手順で得られた熱接着不織布の上に上記の手順で得られたスパンレース不織布を載置する。次に1対の金属ロール間に、熱接着不織布、スパンレース不織布を重ねた状態で挿入し、両者を一体化させた。このとき、金属ロールの表面温度はともに130℃であり、熱接着不織布と接する側の金属ロールは、その表面が平坦な金属ロールであり、スパンレース不織布と接する側の金属ロールは、その表面に直径1mm、高さ0.5mmの円柱状の突起が上下左右方向3mm間隔(突起の断面である円の中心から、隣り合う突起の断面における円の中心までの距離が3mm)で均等に配置されているドットパターンの金属ロール(エンボスロール)であった。これらの金属ロールを用いて、2MPaの圧力を加えて熱エンボス加工を行い、実施例1の対物ワイピング用シートを得た。
[実施例2]
実施例1と同様にして、スパンレース不織布に熱エンボス加工を施す代わりに熱接着不織布にエンボス加工を施して、対物ワイピング用シートを作製した。
[比較例1]
実施例1と同様にして、熱接着不織布における繊維として複合繊維Aの代わりに以下の複合繊維Bを使用し、スパンレース不織布に熱エンボス加工を施す代わりに熱接着不織布にエンボス加工を施して、対物ワイピング用シートを作製した。
複合繊維B:繊度が6.7dtex、繊維長が51mmであり、芯成分がポリプロピレン、鞘成分が高密度ポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維(ダイワボウポリテック(株)製 商品名「NBF(H)」)
[比較例2]
実施例1と同様にして、熱接着不織布における繊維として複合繊維Aの代わりに以下の複合繊維Cを使用し、スパンレース不織布にエンボス加工を施す代わりに熱接着不織布にエンボス加工を施して、対物ワイピング用シートを作製した。
複合繊維C:繊度が17dtex、繊維長が51mmであり、芯成分がポリプロピレン、鞘成分が高密度ポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維(ダイワボウポリテック(株)製 商品名「NBF(H)」)
[性能評価]
実施例および比較例の対物ワイピング用シートを用いて、焦げ付き汚れの除去性能および液状の汚れの除去性能ならびにシート間すべりについて、それぞれ以下の基準に従って評価した。
(焦げ付き汚れの除去性能の評価)
台所(特にガスコンロ周り)で発生する焦げ付き汚れを人工的に再現した試験片において、以下の焦げ付き汚れの除去試験を行って、焦げ付き汚れの除去率(%)を算出し、かかる除去率が95%以上のものを合格(○)とし、95%未満のものを不合格(×)として焦げ付き汚れの除去性能を評価した。結果を以下の表に示す。
・試験片の作製
ステンレス鋼板(SUS304製)(30mm×80mm×3mm)に、砂糖、醤油および味醂の混合液(混合比(重量基準):砂糖/醤油/味醂=40/44/16)を0.06g塗布し、180℃で120分間焼き付けて、焦げ付き汚れを有する試験片を作製した。
・焦げ付き汚れ除去試験
実施例および比較例の対物ワイピング用シートのサンプル(MD100mm×CD50mm)に蒸留水を含浸させた(含浸率:200%(重量基準))。
次いで、図3に示す通り、熱接着不織布1の面を外側とし、スパンレース不織布2の面を内側としてMD方向に半分に折り畳んだ。
試験片に対して、矢印aの方向に沿って、手動でシートを20回往復させることによって、焦げ付き汚れを掻き取った。
その後、図4に示す通り、使用した熱接着不織布1の面を内側とし、スパンレース不織布2の面を外側にしてMD方向に半分に折り返した。
そして、再度、試験片に対して、矢印bの方向に沿って、手動でシートを10回往復させることによって、試験片上の汚れを拭き取った。
・焦げ付き汚れ除去率
焦げ付き汚れ除去率(%)は、以下の式に従って計算する。
除去率(%)=(A−C)/(A−B)×100
A:焦げ付き汚れを有する試験片の重量(g)
B:ステンレス鋼板の重量(g)
C:試験後の試験片の重量(g)(ただし、水で洗浄した後に乾燥させた後の重量)
(液状の汚れの除去性能の評価)
液状汚れの除去性能を、上述の焦げ付き汚れ除去試験の際に同時に評価した。
上述の手順で人工的に再現した焦げ付き汚れを、蒸留水(200質量%(重量基準))を含む対物ワイピング用シートの熱接着不織布の面で擦ることによって、焦げ付き汚れの一部は蒸留水中に溶解し、また、焦げ付き汚れの一部は細かい粉末状になって蒸留水中に混じって存在する。この焦げ付き汚れが混合、あるいは溶解した蒸留水を、焦げ付き汚れを落とすのに使用したものと同じシートを用いて、上述の通り、スパンレース不織布の面を上述のステンレス鋼板に当てながら手動でシートを10回往復させることで拭き上げた。そして、拭き上げた後の表面を目視により観察し、以下の基準に従って、液状の汚れの除去性能を評価した。
目視により液残りが確認できず、表面が乾燥した後に痕が残らないものを合格(○)とし、目視により細かい水滴は確認できが、表面が乾燥した後に痕がほとんど残らないものを可(△)とし、目視により、大きな水滴がはっきりと残っていることが確認できたものを不合格(×)として評価した。結果を以下の表に示す。
(シート間すべりの評価)
上記の焦げ付き汚れの除去試験において、図3に示すように熱接着不織布1の面を外側にして焦げ付き汚れを除去する際に内側のスパンレース不織布2が滑って拭き取りにくく作業性が低下したものを不合格(×)とし、スパンレース不織布2がほとんど滑らずに作業性が良いものを合格(○)とし、スパンレース不織布2は若干滑るがその作業性にはほとんど影響を与えないものを(△)として評価した。結果を以下の表に示す。
Figure 0006307325
Figure 0006307325
上述の性能評価の結果から、本発明の実施例1、2の対物ワイピング用シートは、焦げ付き汚れの除去性能ならびに液状の汚れの除去性能の両方に優れることがわかった。
また、驚くべきことに、比較例1、2のように熱接着不織布に含まれる熱接着性繊維の繊度が本発明で規定する7.5dtex以上、16dtex以下の範囲から外れると、焦げ付き汚れの除去性能が著しく低下することもわかった。
また、実施例1と、比較例1、2との比較から、実施例1のようにスパンレース不織布にエンボス加工を施すことによって、さらに汚れ除去の作業性が向上し、効率よく焦げ付き汚れが除去できることがわかった。
本発明の対物ワイピング用シートは、台所の清掃、特にガスコンロやIHコンロなどのコンロ周り、オーブンレンジ、電子レンジなどのレンジの内部や換気扇周りの清掃において、その表面に強固に付着した焦げ付き汚れや油汚れなどの液状の汚れの除去に利用することができる。
また、本発明の対物ワイピング用シートは、フライパン、鍋、トースター、魚焼きグリル、バーベキューグリルなどのアウトドア料理道具などの清掃にも利用することができる。
1 熱接着不織布
2 スパンレース不織布
10 対物ワイピング用シート
11 熱接着不織布の巻出ロール
12 スパンレース不織布の巻出ロール
13 金属ロール(エンボスロール)
14 金属ロール

Claims (12)

  1. 少なくとも2枚の不織布を積層し、前記不織布を一体化して構成される対物ワイピング用シートであって、
    前記対物ワイピング用シートにおいて、一方の表面を構成する不織布が熱接着不織布であり、もう一方の表面を構成する不織布がスパンレース不織布であり、
    前記熱接着不織布が、前記熱接着不織布の総質量に対して、20質量%以上の熱接着性繊維を含み、
    前記熱接着性繊維の繊度が7.5dtex以上、16dtex以下であり、
    前記熱接着性繊維によって、前記熱接着不織布を構成する繊維の交点の少なくとも一部が熱接着されており、
    前記スパンレース不織布が、繊度0.6dtex以下の極細繊維を、前記スパンレース不織布の総質量に対して20質量%以上含む、
    対物ワイピング用シート。
  2. 前記極細繊維が、分割型複合繊維に由来する繊維である、請求項1に記載の対物ワイピング用シート。
  3. 前記スパンレース不織布が、前記スパンレース不織布の総質量に対して、50質量%以上の合成繊維を含む、請求項1または2に記載の対物ワイピング用シート。
  4. 前記スパンレース不織布が、前記スパンレース不織布の総質量に対して、60質量%以下の親水性繊維を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の対物ワイピング用シート。
  5. 前記親水性繊維がセルロース系繊維である、請求項4に記載の対物ワイピング用シート。
  6. 前記スパンレース不織布の表面が凹部を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の対物ワイピング用シート。
  7. 前記熱接着不織布の表面が実質的に平坦である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の対物ワイピング用シート。
  8. 前記熱接着不織布と、前記スパンレース不織布とを積層し、前記2つの不織布を一体化して構成される2層構造を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の対物ワイピング用シート。
  9. 前記対物ワイピング用シート100質量部に対して、50質量部以上、1000質量部以下の洗浄料を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の対物ワイピング用シート。
  10. 台所での清掃に使用するための請求項1〜9のいずれか1項に記載の対物ワイピング用シートであって、前記熱接着不織布で構成された表面で焦げ付き汚れを除去し、前記スパンレース不織布で構成された表面で液状またはゲル状の汚れを除去する台所用の対物ワイピング用シート。
  11. 少なくとも2枚の不織布を積層し、前記不織布を一体化して構成される対物ワイピング用シートの製造方法であって、
    繊度が7.5dtex以上、16dtex以下の熱接着性繊維を20質量%以上含む繊維ウェブを用意し、前記繊維ウェブを構成する繊維同士の交点の少なくとも一部を前記熱接着性繊維により熱接着して、前記熱接着性繊維を20質量%以上含む熱接着不織布を得ること、
    繊度が0.6dtex以下の極細繊維を含むスパンレース不織布であり、前記スパンレース不織布の総質量に対して前記極細繊維を20質量%以上含むスパンレース不織布を得ること、
    前記熱接着不織布が前記対物ワイピング用シートの一方の表面を構成し、前記スパンレース不織布が前記対物ワイピング用シートのもう一方の表面を構成するように、前記熱接着不織布と前記スパンレース不織布とを積層すること、
    前記熱接着不織布と前記スパンレース不織布とを積層した状態で加熱して、前記熱接着不織布と前記スパンレース不織布とを一体化すること、
    を含む対物ワイピング用シートの製造方法。
  12. 前記熱接着不織布と前記スパンレース不織布とを一体化することが、少なくとも1対の対向する金属ロールの間に、前記熱接着不織布と前記スパンレース不織布とを積層した状態で挿入することで、前記熱接着不織布と前記スパンレース不織布とを少なくとも部分的に熱接着させることを含み、前記金属ロールのうち、前記スパンレース不織布と接触する金属ロールは、表面に凸部を有するエンボスロールであり、前記熱接着不織布と接触する金属ロールは、表面が平坦な金属ロールであり、
    前記熱接着の間に、前記凸部を有するエンボスロールによって、前記スパンレース不織布の表面に前記エンボスロールの凸部に対応する凹部を形成し、
    前記熱接着の間に、前記表面が平坦な金属ロールによって、前記熱接着不織布の表面を実質的に平坦に成形する、請求項11に記載の対物ワイピング用シートの製造方法。
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