JP6307129B2 - 表面にゲル状被覆を有する構造体 - Google Patents
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Description
かかる技術によれば、成形体表面を形成する合成樹脂に滑剤などの添加剤を加える場合と比較して、滑り性を飛躍的に高めることができるため、現在注目されている。
また、本出願人は、内容物と接触する内面に液膜が形成されており、該液膜には、粒子径が300μm以下の固体粒子が分散されていることを特徴とする包装材も先に提案している(特願2014−126877号)。
しかるに、本出願人が先に提案したこれらの技術においても、滑り性の経時的低下という問題は有効に解決されていない。
本発明の他の目的は、特に乳化物が内容物として収容される容器として使用され、かかる乳化物に対する滑り性の持続性に優れた構造体を提供することにある。
(1)前記ゲル状被覆が100mPa・s以下の粘度(25℃)を有していること、
(2)前記熱可塑性樹脂製基材が容器であり、該容器の内面に、前記ゲル状被覆が形成されていること、
が好適である。
一方、ゲル状被覆とせず、上記ゲル状被覆の形成に用いた油性液体のみで油膜を容器(基材)内面に形成したに過ぎない場合には、40℃、2週間保存で内容物(マヨネーズ様食品)に対する滑り性が大幅に低下してしまっている。
即ち、単なる油膜により滑り性を高めている場合には、この油膜を通る粘稠な含水物質によって油膜が表面から徐々に掻き取られていく。このため、初期段階では、油膜による滑り性が有効に発現するが、油膜上を粘稠な含水物質が流れるごとに油膜が消耗していき、この結果、滑り性は次第に低下していくこととなり、その持続性は不満足なものなってしまう。
しかるに、本発明では、基材表面にゲル状被覆が形成されているため、このゲル状被覆上を粘稠な含水物質が流れるとき、その応力(荷重)によって、粘稠な含水物質との接触界面では油性液体が遊離して優れた滑り性を発揮すると同時に、ゲル状被覆と成形体表面との界面側では、応力(荷重)をほとんど受けず、成形体表面から動かず、安定に保持され続ける。即ち、ゲル状被覆上を粘稠な含水物質が繰り返し流れた場合にも、ゲル状被覆はほとんど消耗しない。この結果、初期滑り性が優れているばかりか、優れた滑り性の持続性が得られるものと考えられるのである。
基材1は、その表面にゲル状被覆3を保持することが可能な熱可塑性樹脂により形成されるものであり、用途に応じた形態を有していればよい。
特に、本発明の構造体は、ゲル状被覆3により、粘稠な含水物質に対して優れた滑り性を示すという観点から、基材1は、このような含水物質を流すための配管や、これを収容する容器や容器蓋などの形態を有していることが好適であり、このような含水物質と接触する面に、上記のゲル状被覆3が形成される。
オレフィン系樹脂、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体など;
エチレン・ビニル系共重合体、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等;
スチレン系樹脂、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等;
ビニル系樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等;
ポリアミド樹脂、例えば、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等;
ポリエステル樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらの共重合ポリエステル等;
ポリカーボネート樹脂;
ポリフエニレンオキサイド樹脂;
生分解性樹脂、例えば、ポリ乳酸など;
勿論、成形性が損なわれない限り、これらの熱可塑性樹脂のブレンド物を、下地樹脂として使用することもできる。
即ち、オレフィン系樹脂は、PET等のポリエステル樹脂と比較してガラス転移点(Tg)が低く、室温下での分子の運動性が高いため、ゲル状被覆3を形成する油性液体の一部が内部に浸透し、これにより、ゲル状被覆3を表面に安定に保持するという点で最適である。
さらに、オレフィン系樹脂は、可撓性が高く、後述するダイレクトブロー成形による絞り出し容器(スクイズボトル)の用途にも使用されており、本発明の構造体をこのような容器に適用するという観点からもオレフィン系樹脂は適している。
また、酸素吸収層は、特開2002−240813号等に記載されているように、酸化性重合体及び遷移金属系触媒を含む層であり、遷移金属系触媒の作用により酸化性重合体が酸素による酸化を受け、これにより、酸素を吸収して酸素の透過を遮断する。このような酸化性重合体及び遷移金属系触媒は、上記の特開2002−240813号等に詳細に説明されているので、その詳細は省略するが、酸化性重合体の代表的な例は、第3級炭素原子を有するオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレンやポリブテン−1等、或いはこれらの共重合体)、熱可塑性ポリエステル若しくは脂肪族ポリアミド;キシリレン基含有ポリアミド樹脂;エチレン系不飽和基含有重合体(例えばブタジエン等のポリエンから誘導される重合体);などである。また、遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属の無機塩、有機酸塩或いは錯塩が代表的である。
上述した各層の厚みは、各層に要求される特性に応じて、適宜の厚みに設定されればよい。
図2において、全体として10で示されるこのボトルは、螺条を備えた首部11、肩部13を介して首部11に連なる胴部壁15及び胴部壁15の下端を閉じている底壁17を有しており、このようなボトル(基材1)の内面にゲル状被覆3が形成されることとなる。
かかるボトル10は、粘稠な物質の収容に好適に使用され、胴部壁15をスクイズすることにより、内部に収容された粘稠な物質を排出するというものであり、このようなボトルの内面にゲル状被覆3が形成され、内容物に対する滑性及びその持続性が向上していれば、このような内容物を速やかに排出することができるし、しかも、その全量を排出し、該内容物を使い切ることも可能となる。
本発明において、上記のような基材1の表面に設けられるゲル状被覆3は、油性液体と微細固体状粒子とから形成される。そして、ゲル状被覆3はチキソトロピー性を有していることが好ましい。
このような油性液体は、当然、大気圧下での蒸気圧が小さい不揮発性の液体、例えば沸点が200℃以上の高沸点液体でなければならない。揮発性液体を用いた場合には、容易に揮散して経時と共に消失し、ゲル状被覆3を形成することが困難となってしまうからである。
即ち、粘稠な含水物質に対する滑り性を高めるという点で、表面張力が10乃至40mN/m、特に16乃至35mN/mの範囲にある油性液体を用いるのが良く、このような油性液体としては、流動パラフィン、合成パラフィン、フッ素系液体、フッ素系界面活性剤、シリコーンオイル、脂肪酸トリグリセライド、各種の植物油などが代表的である。特に滑り性の対象となる物質が食品類(例えばマヨネーズやケチャップ)である場合には、食用油が好適である。
かかる食用油の具体例としては、大豆油、菜種油、オリーブオイル、米油、コーン油、べに花油、ごま油、パーム油、ひまし油、アボガド油、ココナッツ油、アーモンド油、クルミ油、はしばみ油、サラダ油などを例示することができる。
尚、上記の粒子径は、例えばレーザ回折散乱法や、マイクロスコープ観察などにより測定することができ、所謂二次粒子径(凝集粒子径)を意味する。
また、例えば、油性液体100質量部に対し、微細固体粒子5質量部を混合し、攪拌して作成したゲル状被膜3は、回転数20rpmでは、粘度が124mPa・Sであり、回転数2rpmでは、粘度が243mPa・Sであり、回転数が大きいほど粘度が小さいというチキソトロピー性を有している。このように、チキソトロピー性を有することで、初期滑り性を大きくし且つその持続性を大きく向上させることができる。例えば、チキソトロピー性が小さい(粘度差が小さい)と、ゲル状被覆3上を含水物質が流れたときに表面に滲み出る油量が少なく、初期滑り性が低くなる傾向があり、しかも、成形体1表面でのゲル状被覆3が安定に保持されず、ゲル状被覆3上を物質が流れるごとに、滑り性が低下していく傾向が大きく、滑り性の持続性が不満足となってしまう恐れがある。
各実施例、比較例にて使用した容器、ゲル状被膜、内容物は次のとおりである。
下記の層構成を有する多層構造を有し、且つ内容量400gの多層ダイレクトブローボトルを供した。
内層:低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)
中間層:エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)
外層:低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)
接着層(内外層と中間層との間):酸変性ポリオレフィン
油性液体:中鎖脂肪酸添加サラダ油
粘度:33mPa・s(25℃)
接触角(20℃):18度
固体状粒子:カルナバワックス
ホモジナイザーを使用し、室温(25℃)で、上記の固体状粒子を、表1に示す量割合で上記の油性液体に微分散化させて塗布液を調製し、表1に示す塗布量を、エアースプレーを用いて容器の内面に均一となるように塗布してゲル状被膜を形成した。
接触角;
容器内面を上面にしてゲル状被膜に使用した油性液体を10mg落とし、20℃、50%RH、接触角計(協和界面科学(株)社DropMaster700)にて測定した。
粘度;
粘度は、ビーカーに入れた測定物質に、B型デジタル粘度計のスピンドルとガードを入れ、25℃にて、回転数20rpmでスピンドルを1分間回転させ、粘度測定を行った。
卵1個(50g)と酢15ccと塩2.5ccを混ぜた後、さらに食用油150ccを混ぜ合わせて、実験用のマヨネーズ様食品を作成した。各実施例、比較例では、必要量の内容物を作成して使用した。
<滑り性評価>
ボトル内に、噴霧ノズルを底まで挿入し、ゲル状被膜を噴霧しながら引き上げることによりボトル底部から側壁全面に塗布した。この容器内面にゲル状被膜が形成されているボトル内に、内容物であるマヨネーズ様食品を常法で400g充填し、ボトル口部をアルミ箔でヒートシールし、キャップで密封して充填ボトルを得た。
内容物が充填された充填ボトルを23℃で1週間保管した(初期ボトル)。
表1に示す各保管期間・温度にて保管されたボトルについて、胴部を押し、ボトル口部を通して内容物を最後まで搾り出した後、このボトル内に空気を入れ形状を復元させた。
次いで、このボトルを倒立(口部を下側)にして1時間保管した後のボトル胴部壁の内容物滑り性の程度(胴部壁に内容物が付着していない程度)を測定し、次の式で内容物付着率を計算した。
内容物付着率(%)
=(内容物が付着している表面積/ボトル胴部壁表面積)×100
上記で計算された内容物付着率から、滑り性を次の基準で評価した。
〇:内容物付着率が10%未満
△:内容物付着率が10%以上で50%未満
×:内容物付着率が50%以上
<固体状粒子径測定>
作成したゲル状被膜をマイクロスコープで観察し、画像処理して粒小径を測定した。最大粒子径をゲル状被膜の粒子径とした。
成形したボトルに、ゲル状被膜を、表1中の塗布量で塗布し、滑り性を評価した。
〔比較例1〕
成形したボトルに、ゲル状被膜と同様の油性液体を、表1中の塗布量で塗布し、滑り性を評価した。
〔比較例2〕
成形したボトルに、ゲル状被覆と同様の油性液体と固体粒子(粒子径85μm)を混合した液を表1中の塗布量で塗布し、滑り性を評価した。作成した液体は、固体粒子が微細固体状粒子ではないため、ゲル状ではなかった。
3:ゲル状被覆
Claims (2)
- 所定の形状に成形されている熱可塑性樹脂製基材の表面にゲル状被覆が形成されている構造体であって、該ゲル状被覆は、微細固体粒子を含み且つ回転数20rpmで測定して35〜250mPa・s(25℃)の粘度を有していることを特徴とする構造体。
- 前記熱可塑性樹脂製基材が容器であり、該容器の内面に、前記ゲル状被覆が形成されている請求項1に記載の構造体。
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