JP6305392B2 - 脂肪酸燃焼によるインスリン抵抗性の測定方法、並びにそれに使用する組成物 - Google Patents

脂肪酸燃焼によるインスリン抵抗性の測定方法、並びにそれに使用する組成物 Download PDF

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Description

本発明は、被験者についてインスリン抵抗性の有無を測定する方法、および当該方法に好適に使用される組成物に関する。具体的には、本発明は、被験者について、その脂肪酸燃焼に基づいてインスリン抵抗性の有無を、13C等の標識C-呼気試験を用いて測定し、またモニタリングする方法、および当該方法に好適に使用される組成物に関する。なお、上記「被験者についてインスリン抵抗性の有無を測定する方法」には、高インスリン血症である被験者についてインスリン抵抗性であるか否かを識別する方法が含まれる。前者の場合は「インスリン抵抗性である」と判断され、後者の場合は「インスリン抵抗性を伴わない高インスリン血症(以下、「インスリン非抵抗性/高インスリン血症」ともいう)」と判断することができる。
また、本発明は、被験者について標識C-呼気試験を用いて糖/脂肪酸燃焼比率を測定する方法、および当該方法に好適に使用される組成物に関する。
一般に耐糖能異常は、空腹時血糖値が110mg/dl〜126mg/dl未満もしくは経口ブドウ糖負荷試験で2時間値が140mg/dl〜199mg/dlの状態を指し、境界型糖尿病とも言われる。境界型糖尿病患者は、血糖値が正常でないものの糖尿病でもなく、しかしこれを放置すれば糖尿病になる可能性が高いため糖尿病予備軍とも呼ばれる。また動脈硬化はこの段階から進行することが知られている。このため、予防医学的にもこの段階の対象者を抽出することは重要である。
一方、糖尿病診断は、まず尿糖検査、または空腹時血糖値検査による一次スクリーニングを行い、これらの検査で陽性の場合に、グルコース負荷試験を行い、確定診断に至るのが一般的である。最近では、グルコースを用いた糖負荷試験の前に、血中のHbAlCやフルクトサミンを検査する場合もある。
しかし、グルコースを用いた糖負荷試験は、大量のグルコースを摂取することによる副作用の問題が指摘されているとともに、被験者を数時間にわたり拘束し、また度重なる採血が必要であるため、被験者の身体的負担が大きく現実には限られた対象者にしか実施できない。また、HbAlCやフルクトサミンの結果は次の来院時まで知ることができず、迅速性に欠けるという欠点がある。その前段階の試験である尿糖検査や空腹時血糖値検査等の方法では、多くの糖尿病患者で尿糖が陰性となり、血糖値が正常値を示すため、糖尿病患者を見逃してしまうことも多く、その感度の低さが問題となっている。このため、こうした糖尿病診断で採用されている従来の方法では、糖尿病は発症していないものの糖尿病の前段階の状態、例えば境界型糖尿病や境界型糖尿病までも至っていない状態(インスリン抵抗性の状態、及びインスリン抵抗性を伴わない高インスリン血症の状態)までを判定することはできない。
最近、糖尿病診断方法の一つとして、13Cで標識された酢酸、オレイン酸またはパルミチン酸を静脈内投与し、呼気試験により呼気CO中の13C濃度の増加率を測定することでインスリン分泌不全型糖尿病を診断する方法が提案されている。(特許文献1)。しかし、かかる方法により、境界型糖尿病までも至っていない状態(インスリン抵抗性の状態、及びインスリン抵抗性を伴わない高インスリン血症の状態)が診断できるか否かは不明である。
またインスリン抵抗性を示す基礎疾患として肝疾患が挙げられる。特に肝硬変患者は栄養学的には蛋白・エネルギー低栄養状態(PEM)の代表的病態であり、かなりの割合でインスリン抵抗性が併存しており、インスリン抵抗性の併存と肝癌の相関も報告されている。しかしながら、肝硬変患者に併存するインスリン抵抗性の診断方法はいまだ確立されておらず、PEMの程度を診断するには間接熱量計という糖質と脂質の燃焼割合を検出する方法がある。糖質と脂質の燃焼割合は呼吸商として算出することができ、糖質の燃焼低下/脂肪の燃焼亢進により呼吸商が0.85以下に低下すると肝硬変や肝癌の予後が悪化することが報告されている。また、肝硬変の重症度の進展とともに呼吸商の低下が顕著に認められることも報告されている(以上、非特許文献1)。つまり、糖質と脂質の燃焼割合を測定することで、肝硬変や肝癌等の重症度や予後を判断することが可能である。しかし、呼吸商を求める従来の方法は、実用性に乏しく、簡易に栄養状態を客観的に知る事は不可能とされている。
一方、糖尿病の診断に、13Cで標識したグルコースを投与し、呼気中に二酸化炭素として排出される13CO2を測定する、いわゆる標識C-呼気試験を応用することが提案されている(特許文献2〜4参照)。具体的には、特許文献2には、特定位の炭素を13Cで置換したグルコースを用いて呼気試験を行い、呼気中に***される13CO2 濃度の増加率を測定することにより、糖尿病の有無及びその病型(I型糖尿病、II型糖尿病)の別を診断する方法が記載されている。また、特許文献3及び4には、特許文献2と同様に13Cで標識したグルコースを用いて呼気試験を行い、呼気中に***される13CO2 濃度から算出した呼気中の13Cと12Cとの比(13C/12C)が、健常者のそれよりも低値であることを指標として、糖尿病患者やインスリン抵抗患者を診断することができることが記載されている。
しかし、いずれの文献にも、グルコースを用いた標識C-呼気試験と脂肪酸を用いた標識C-呼気試験とを組み合わせることで、呼吸商に代わって、糖質と脂質の燃焼割合が精度高く検出するできることについては記載も示唆もされていない。
特開平11−124343号公報 特開平10−67689号公報 特表2002−513911号公報 特開2008−292506号公報
栄養−評価と治療 vol.29、No.1、37-40頁
本発明は、同位体標識された炭素数12〜38の脂肪酸を用いた標識C-呼気試験により、被験者についてインスリン抵抗性を精度高く、且つ迅速に検出する方法を提供することを目的とする。また本発明は、上記方法に使用するためにインスリン抵抗性測定用組成物を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、同位体標識された炭素数12〜38の脂肪酸を用いた標識C-呼気試験の結果と同位体標識されたグルコースを用いた標識C-呼気試験の結果若しくは血糖値とを組み合わせることにより、被験者の糖/脂肪酸燃焼比率並びにインスリン抵抗性を精度高く検出する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、同位元素で標識した炭素数12〜38の脂肪酸を経口投与した後、呼気に***される同位体標識炭酸ガス(CO)の量およびそれから算出される呼気に含まれる炭酸ガスの存在比(非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合)の挙動から、被験者についてインスリン抵抗性を精度高く、しかも迅速に測定することができることを見出した。また、本発明者らは、かかる被験者の結果から、当該被験者についてインスリン抵抗性であるか、またはインスリン抵抗性を伴わない高インスリン血症であるかを判定することができることを見出した。
さらに本発明者らは、同位元素で標識した炭素数12〜38の脂肪酸による呼気試験から得られる結果と同位元素で標識したグルコースによる呼気試験から得られる結果あるいは血糖値とを組み合わせることで、被験者の糖/脂肪酸燃焼比率を精度高く測定することができること、また当該糖/脂肪酸燃焼比率からも被験者のインスリン抵抗性が精度高く測定できることを確認した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものであり、下記の態様を有する。
(1)インスリン抵抗性の測定方法
(1-1)下記(a)及び(b)の工程を有する、被験者のインスリン抵抗性の測定方法:
(a)生体内で標識炭酸ガスに変換されて呼気中に排出される同位元素Cの少なくとも一つで標識されてなる炭素数12〜38の脂肪酸またはその塩を有効成分とする組成物を被験者に静脈内投与して呼気を採取する工程、および
(b)呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合を求める工程。
なお、当該(b)の工程は、後述するように、例えばΔ%13C(13C濃度変化量:atom%)またはΔ13C値(δ13C値変化量:‰)を求めることによって行うことができる。
(1-2)さらに下記(c)の工程を有する、(1-1)に記載するインスリン抵抗性の測定方法:
(c)(b)工程で得られる被験者の「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(被験値)を、健常者について得られる「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(対照値)と比較し、被験値が対照値よりも高い場合に当該被験者をインスリン感受性が低下している(インスリン抵抗性)と決定し、被験値が対照値と同等または低い場合に当該被験者をインスリン感受性が正常または低下していないと決定する工程。
(1-3)被験者が高インスリン血症の患者であって、さらに下記(d)の工程を有する、(1-1)に記載するインスリン抵抗性の測定方法:
(d)(b)工程で得られる被験者の「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(被験値)を、健常者について得られる「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(対照値)と比較し、被験値が対照値よりも低い場合に、当該被験者をインスリン感受性が正常または低下していない「インスリン非抵抗性の高インスリン血症」と決定する工程。
(1-4)被験者が高インスリン血症の患者であって、さらに下記(e)の工程を有する、(1-1)に記載するインスリン抵抗性の測定方法:
(e)(b)工程で得られる被験者の「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(被験値)を、健常者について得られる「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(対照値)と比較し、被験値が対照値よりも高い場合に当該被験者をインスリン感受性が低下している、言い換えると「インスリン抵抗性」または「インスリン抵抗性の高インスリン血症」と決定し、被験値が対照値よりも低い場合に当該被験者をインスリン感受性が正常または低下していない、言い換えると「インスリン非抵抗性の高インスリン血症」であると決定する工程。
(1-5)上記同位元素が13Cである、(1-1)乃至(1-4)のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法。
(1-6)炭素数12〜38の脂肪酸が、炭素数12〜28の中鎖、長鎖または極長の脂肪酸である(1-1)乃至(1-5)のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法。
(1-7)炭素数12〜38の脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びパルミチン酸からなる群から選択される少なくとも1種である(1-1)乃至(1-6)のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法。
(1-8)同位元素Cの少なくとも一つで標識されてなる炭素数12〜38の脂肪酸が、1位の炭素が13Cで標識されてなる1-13C-パルミチン酸、1-13C-ステアリン酸、または1-13C-オレイン酸である(1-1)乃至(1-7)のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法。
(1-9)非絶食状態にある被験者を(a)工程に供することを特徴とする(1-1)乃至(1-8)のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法。
(1-10)高インスリン血症である被験者についてインスリン抵抗性の有無を検出する方法である、(1-1)乃至(1-9)のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法。
(1-11)被験者が、境界型糖尿病、II型糖尿病、及び肝疾患(肝硬変、NASH、NAFLD)からなる群から選択される少なくとも1つの状態にあるものである、(1-1)乃至(1-10)のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法。
(2)糖/脂肪酸燃焼比率の測定方法
(2-1)被験者について、下記の工程(i)及び(ii)を有する糖代謝能測定方法により得られる[Δ標識C(‰)−呼気採取時間tまでの曲線下面積](以下、「AUCt[標識C-グルコース]」と称する)を、上記(1-1)乃至(1-11)のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法から得られる[Δ標識C(‰)−呼気採取時間tまでの曲線下面積](以下、「AUCt[標識C-脂肪酸]」と称する)で除した値(AUCt[標識C-グルコース]/ AUCt[標識C-脂肪酸])を指標として、被験者身体における糖/脂肪酸燃焼率を測定する方法:
(i)生体内で標識炭酸ガスに変換されて呼気中に排出される同位元素Cの少なくとも一つで標識されてなるグルコースを有効成分とする組成物を被験者に静脈内投与して呼気を採取する工程、および
(ii)呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合を求める工程。
(2-2)被験者について血糖値の逆数(1/血糖値)を、上記(1-1)乃至(1-11)のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法から得られる[Δ標識C(‰)−呼気採取時間tまでの曲線下面積](以下、「AUCt[標識C-脂肪酸]」と称する)で除した値([1/血糖値/AUCt[標識C-脂肪酸])を指標として、被験者身体における糖/脂肪酸燃焼率を測定する方法。
(2-3)被験者について血糖値の逆数(1/血糖値)を、上記(1-1)乃至(1-11)のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法から得られるΔ標識C(‰)のCt [標識C-脂肪酸](t=1-30min)で除した値([1/血糖値]/Ct[標識C-脂肪酸](t=1-30min))から、被験者身体における糖/脂肪酸燃焼率を測定する方法。
(2-4)被験者が絶食状態にあるか、または非絶食状態にある、(2-1)乃至(2-3)のいずれかに記載する糖/脂肪酸燃焼率の測定方法。
(3)インスリン抵抗性を測定するための組成物
(3-1)生体内で標識炭酸ガスに変換されて呼気中に排出される同位元素Cの少なくとも一つで標識されてなる炭素数12〜38の脂肪酸またはその塩を有効成分とする、インスリン抵抗性を測定するための注射投与形態を有する組成物。
(3-2)上記同位元素が13Cである、(3-1)に記載するインスリン抵抗性測定用組成物。
(3-3)炭素数12〜38の脂肪酸が、炭素数12〜18の飽和脂肪酸または炭素数18の不飽和脂肪酸である(3-1)または(3-2)に記載するインスリン抵抗性測定用組成物。
(3-4)炭素数12〜38の脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びパルミチン酸からなる群から選択される少なくとも1種である(3-1)乃至(3-3)のいずれかに記載するインスリン抵抗性測定用組成物。
(3-5)同位元素Cの少なくとも一つで標識されてなる炭素数12〜38の脂肪酸が、1位の炭素が13Cで標識されてなる1-13C-パルミチン酸、1-13C-ステアリン酸、または1-13C-オレイン酸である(3-1)乃至(3-4)のいずれかに記載するインスリン抵抗性測定用組成物。
(4)標識C-脂肪酸の使用
(4-1)生体内で標識炭酸ガスに変換されて呼気中に排出される同位元素Cの少なくとも一つで標識されてなる炭素数12〜38の脂肪酸を有効成分とする注射投与形態を有する組成物の、インスリン抵抗性を測定するための呼気試験における使用。
(4-2)上記組成物が、前記(3-1)乃至(3-5)のいずれかに記載するインスリン抵抗性測定用組成物である、(4-1)に記載する使用。
(4-3)生体内で標識炭酸ガスに変換されて呼気中に排出される同位元素Cの少なくとも一つで標識されてなる炭素数12〜38の脂肪酸を有効成分とする注射投与形態を有する組成物の、糖/脂肪酸燃焼比率を測定するための呼気試験における使用。
(4-4)上記組成物が、前記(3-1)乃至(3-5)のいずれかに記載する耐糖能測定用組成物である、(4-3)に記載する使用。
本発明の方法によれば、被験者のインスリン抵抗性を、精度高くかつ迅速に測定し評価することができる。精度及び迅速性は、本発明の方法を非絶食条件下で行うことで、より一層向上させることができる。本発明の方法によれば、60分以内、好ましくは30分以内、より好ましくは15分以内の短時間で、被験者のインスリンに対する感受性の低下(インスリン抵抗性)を測定し、評価することができる。このため、本発明の方法によれば、被験者を長時間拘束する必要がなく、身体的また精神的に負担をかけずに、被験者のインスリン抵抗性を測定することができる。
また、本発明の方法によれば、高インスリン血症の被験者についてインスリン抵抗性の有無を測定することができ、インスリン抵抗性の高インスリン血症、及びインスリン非抵抗性の高インスリン血症の別を識別することができる。なお、インスリン非抵抗性の高インスリン血症は、インスリン抵抗性(インスリンに対する感受性低下)の前段階であり、インスリン非抵抗性の高インスリン血症であると判定された被験者は、運動や食事療法により、インスリン抵抗性に進展することを予防することが可能である。
また、本発明によれば、境界型糖尿病やII型糖尿病などの高インスリン血症の患者についてインスリン抵抗性を測定することができるだけでなく、肝疾患(肝硬変、NASH[非アルコール性脂肪肝炎]、NAFLD[非アルコール性脂肪肝疾患]等)患者についてもインスリン抵抗性を測定することができる。
また同位元素で標識した炭素数12〜38の脂肪酸を用いた呼気試験と同位元素で標識したグルコースによる呼気試験を併用することで、被験者の糖/脂肪酸燃焼比率を測定することができる。当該方法によれば、被験者について、呼吸商に代えて、また呼吸商よりも鋭敏に、糖質と脂肪酸のどちらをエネルギー源として利用しているかを測定することができる。また本発明の方法で得られた「糖/脂肪酸燃焼比率」からも被験者のインスリン抵抗性を精度高く評価することができる。
絶食させたZucker系ラットに、1-13C-パルミチン酸Na溶液を経口投与(po)(―◇―)あるいは静脈注射(iv)(―■―)した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-パルミチン酸Na投与後の各測定時間(t分)を示す(実験例1)。 絶食または非絶食状態のZDF系ラット(Lean及びFatty)に、U-13C-グルコース溶液を静脈注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。(A)にはLeanラット(絶食:−◆−、非絶食:―◇―)の結果を、(B)にはFattyラット(絶食:―■―、非絶食:―□―)の結果をそれぞれ示す。縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸はU-13C-グルコース溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す(実験例2)。 絶食または非絶食状態のZDF系ラット(Lean及びFatty)に、1-13C-酢酸Na溶液を静脈注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。(A)にはLeanラット(絶食:―◆―、非絶食:―◇―)の結果を、(B)にはFattyラット(絶食:―■―、非絶食:―□―)の結果をそれぞれ示す。縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-酢酸Na溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す(実験例2)。 絶食または非絶食状態のZDF系ラット(Lean及びFatty)に、1-13C-オクタン酸Na溶液を静脈注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。(A)にはLeanラット(絶食:―◆―、非絶食:―◇―)の結果を、(B)にはFattyラット(絶食:―■―、非絶食:―□―)の結果をそれぞれ示す。縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-オクタン酸Na溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す(実験例2)。 絶食または非絶食状態のZDF系ラット(Lean及びFatty)に、1-13C-ラウリン酸溶液を静脈注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。(A)にはLeanラット(絶食:―◆―、非絶食:―◇―)の結果を、(B)にはFattyラット(絶食:―■―、非絶食:―□―)の結果をそれぞれ示す。縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-ラウリン酸溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す(実験例2)。 絶食または非絶食状態のZDF系ラット(Lean及びFatty)に、1-13C-パルミチン酸Na溶液を静脈注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。(A)にはLeanラット(絶食:―◆―、非絶食:―◇―)の結果を、(B)にはFattyラット(絶食:―■―、非絶食:―□―)の結果をそれぞれ示す。縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-パルミチン酸Na溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す(実験例2)。 絶食または非絶食状態のZDF系ラット(Lean及びFatty)に、1-13C-オレイン酸溶液を静脈注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。(A)にはLeanラット(絶食:―◆―、非絶食:―◇―)の結果を、(B)にはFattyラット(絶食:―■―、非絶食:―□―)の結果をそれぞれ示す。縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-オレイン酸溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す(実験例2)。 LETO及びOLETF系ラット(絶食群、非絶食群)の各群に、1-13C-パルミチン酸Na溶液を静脈投与した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。(A)はLETO系ラット(絶食:―◆―、非絶食:―◇―)の結果、(B)はOLETF系ラット(絶食:―■―、非絶食:―□―)の結果を示す。縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-パルミチン酸Na溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す(実験例3)。 (A)絶食状態のZDF系ラット(Lean:―◆―、Fatty:―■―)に、1-13C-パルミチン酸Na溶液を静脈注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。(B)非絶食状態のZDF系ラット(Lean:―◇―、Fatty:―□―)に、1-13C-パルミチン酸Na溶液を静脈注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。いずれも縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-パルミチン酸Na溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す(実験例3)。 (A)絶食状態のLETOラット(―◆―)及びOLETFラット(―■―)に、1-13C-パルミチン酸Na溶液を静脈注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。(B)絶食状態のLETOラット(―◇―)及びOLETFラット(―□―)に、1-13C-パルミチン酸Na溶液を静脈注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。いずれも縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-パルミチン酸Na溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す(実験例3)。 (A)非絶食状態のZDF系ラット(Lean:―◇―、Fatty:―□―)に、1-13C-パルミチン酸Na溶液を静脈注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。(B)絶食状態のZDF系ラット(Lean:―◆―、Fatty:―■―)に、1-13C-パルミチン酸Na溶液を静脈注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。いずれも縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-パルミチン酸Na溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す(実験例4)。 (A)非絶食状態のLETOラット(―◇―)及びOLETFラット(―□―)に、1-13C-パルミチン酸Na溶液を静脈注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。(B)絶食状態のLETOラット(―◆―)及びOLETFラット(―■―)に、1-13C-パルミチン酸Na溶液を静脈注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を示す。いずれも縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-パルミチン酸Na溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す(実験例4)。 絶食及び非絶食状態にあるZDF系ラット(Lean:―◆―、Fatty:―□―)について測定した呼吸商(RQ)の平均値±SDを示す(実験例4)。 ZDF系ラット(Lean及びFatty)について、実験例2において(a)U-13Cグルコース溶液投与(絶食状態、非絶食状態)で得られた△13C(‰)AUC(120分)と、(f)1-13Cパルミチン酸Na溶液投与(絶食状態、非絶食状態)で得られた△13C(‰)AUC(60分)との比率(AUC[U-13C-グルコース]/AUC[1-13C-パルミチン酸Na])を、それぞれ絶食状態の値と非絶食状態の値とで比較した結果を示す。 ZDF系ラット(Lean及びFatty)について、血糖値の逆数(絶食状態、非絶食状態)と、実験例2において(f)1-13Cパルミチン酸Na溶液投与(絶食状態、非絶食状態)で得られた△13C(‰)のAUC(60分)との比率([1/血糖値]/AUC[1-13C-パルミチン酸Na])を、それぞれ絶食状態の値と非絶食状態の値とで比較した結果を示す。 ZDF系ラット(Lean及びFatty)について、血糖値の逆数(絶食状態、非絶食状態)と、実験例2において(f)1-13C-パルミチン酸Na溶液投与(絶食状態、非絶食状態)で得られた△13C(‰) のCmaxとの比率([1/血糖値]/Cmax [1-13C-パルミチン酸Na])を、それぞれ絶食状態の値と非絶食状態の値とで比較した結果を示す。 左から順に、Control群(非絶食時血糖値:108mg/dL)、軽度糖尿病群(非絶食時血糖値:166mg/dL)、及び重症糖尿病群(非絶食時血糖値:281mg/dL)に、3-13C-グルコースと1-13C-パルミチン酸Naとの混合溶液を静脈内投与し、呼気試験により測定した3CO2濃度から算出した△13C(‰)の推移を示す。
(I)標識C-呼気試験に関連する用語および解析方法の説明
本発明のインスリン抵抗性及び糖/脂肪酸燃焼比率の測定方法は、13C-呼気試験などの標識C-呼気試験を用いることを基礎とするものである。よって、本発明の説明に先だって、標識C-呼気試験に関連する用語およびその解析方法について説明する。
なお、ここでは本発明で用いる「同位元素C」の一例として、13Cを挙げて説明する。
(1) δ 13 C値(‰)
同位体の存在比を表す場合、同一元素の中で最も組成比の高い元素を分母にした同位体比(R)を用いる。従って炭素13(13C)のR値は、炭素12(12C)を分母とした次式で表される。
Figure 0006305392
Rは非常に小さい数値であるため、直接測定することは困難である。より正確に定量するため、質量分析計を用いる場合には、常に標準物質との比較が行われ、測定結果は、次式で定義されるδ値で表される。
Figure 0006305392
なお、標準ガスとして、石灰石由来の炭酸ガス(PDB)を使用する場合、RSTDは、RPDB=0.0112372となる。
(2) Δ 13 C値(‰)
「Δ13C値(‰)」は、下式で示すように、試薬投与前のδ13C値(すなわち天然に存在する13Cのδ値)をback groundとして、試薬投与後のδ13C値から差し引いた値(Δ13C)を意味する。
Figure 0006305392
(3) 呼気中の 13 C濃度(% 13 C:atom%)
呼気中の13C濃度(%13C:atom%)は下式で定義される。
Figure 0006305392
(1)で定義した相対値δ13C値を、一般的な濃度の概念である総炭素中の13C含量(%)の形に変換するには、下記の方法を用いることができる。
まず、上記式の右辺の分母子を12Cで割り、(式1)に基づいてRに変換すると、下記の通りになる。
Figure 0006305392
このRに、(式2)で求めたRSAMを代入して整理すると次式となり、δ13C値を用いて13C濃度(%13C)を表すことができる。
Figure 0006305392
(4) 13 C濃度の変化量(Δ% 13 C)
呼気中の13C濃度(%13C)の変化量(Δ%13C)は、次式で定義されるように、投与t時間後の13C濃度〔(%13C)t〕から投与前0時間の13C濃度〔(%13C )0〕を差し引いて求められる。
Figure 0006305392
(5) Δ 13 C値(‰)と 13 C濃度変化量(Δ% 13 C)との関係
13Cの天然存在比(R)は約0.011であり、標識試薬を投与した場合でも呼気中への増加量はわずかに+0.001〜0.002程度である。そこで、天然存在比R→0とみなすことができ、%13CをRで表した(式4)は、次式で近似することができる。
Figure 0006305392
この近似式を用いて、まずδ13Cの定義である(式2)よりRSAMを求めて上記式のRに代入して整理すると、13C濃度を求める近似(式7)が得られる。
Figure 0006305392
これを(式6)に代入すると、下式(式8)に示すように、Δ13CからΔ%13Cを算出することができる。
Figure 0006305392
(II)インスリン抵抗性測定用組成物
本発明のインスリン抵抗性測定用組成物は、生体内で標識CO2ガスに変換して呼気中に排出される同位元素Cの少なくとも一種で標識されてなる炭素数12〜38の脂肪酸またはその塩を有効成分とするものである。本発明で用いられる標識C-脂肪酸またはその塩は、被験者に投与された後、体内の脂質代謝能に応じて代謝され、脂質代謝能の大きさを反映した標識Cを含む炭酸ガスとして呼気に排出される特性を有する。
本発明で用いられる脂肪酸としては、前述する通り炭素数12〜38の脂肪酸を挙げることができる。これらの脂肪酸には、炭素数12〜18未満の中鎖脂肪酸、炭素数18〜24未満の長鎖脂肪酸、炭素数24〜28の極長脂肪酸、炭素数30〜38のウルトラロング脂肪酸が含まれる。好ましくは炭素数12〜28の中鎖、長鎖、及び極長の脂肪酸であり、より好ましくは炭素数12〜24未満の中鎖及び長鎖脂肪酸である。具体的にはラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、及びアラキジン酸等の飽和脂肪酸;パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、バクセン酸(C18)、及びネルボン酸(C24)等の二重結合を一つ有する不飽和脂肪酸;パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、バクセン酸(C18)、及びネルボン酸(C24)等の二重結合を一つ有する不飽和脂肪酸;リノール酸 (C18)や8,11-イサコジエン酸等の二重結合を二つ有する不飽和脂肪酸;リノレン酸 (C18)やアラキドン酸(C20)等の二重結合を三以上有する不飽和脂肪酸を挙げることができる。好ましくは飽和脂肪酸、及び二重結合を一つ有する不飽和脂肪酸であり、なかでも好ましくはラウリン酸(C12:0)、ステアリン酸(C18:0)、パルミチン酸(C16:0)、及びオレイン酸(C18:1)であり、より好ましくはステアリン酸(C18)及びパルミチン酸(C16)である。
脂肪酸を構成する炭素原子の標識に用いられる同位元素としては、特に制限はされないが、具体的には13C、及び14Cを挙げることができる。かかる同位元素は放射性及び非放射性の別を問わないが、安全性の観点から好ましく非放射性同位元素である。かかる同位元素としては好適に13Cを挙げることができる。
同位体元素−標識脂肪酸は、脂質代謝経路(脂肪酸代謝経路)を経て生成されるCOの少なくとも一部が同位元素で標識されてなるように、標識されてなるものである。例えば、このような同位体元素−標識脂肪酸としては、脂肪酸の1位の炭素原子が同位元素で標識されてなる化合物、具体的には、1-13C標識脂肪酸を例示することができる。また脂肪酸の少なくとも1位が同位体で標識されていればよく、1位の炭素原子以外に、他の炭素原子のいずれか1以上、または全ての炭素原子が同位元素で標識されてなるものであってもよい。脂肪酸等の化合物を13Cや14Cなどの同位体で標識する方法は、特に制限されず、通常使用される方法が広く採用される(佐々木、「5.1安定同位体の臨床診断への応用」:化学の領域107「安定同位体の医・薬学、生物学への応用」pp.149-163(1975)南江堂;梶原、RADIOISOTOPES,41,45-48(1992)等)。これらの同位体標識化合物、特に実施例に示す1-13C標識−ラウリン酸、1-13C標識−パルミチン酸、1-13C標識−ステアリン酸、1-13C標識−オレイン酸、及びそれらの塩はいずれも商業的に入手することができ、簡便にはかかる市販品を使用することもできる。
なお、炭素数12〜38の脂肪酸の塩としては、生体に投与可能な、いわゆる薬学的に許容される塩であればよく、具体的にはナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属塩を例示することができるが、好ましくはアルカリ金属塩であり、特に好ましくはナトリウム塩である。
本発明の組成物は、基本的には、投与後、標識C-脂肪酸が体内に吸収され、また代謝された後に、標識炭酸ガスとして呼気に排出されるのであるものであればよく、それを満たすものである限り、その形態、標識C-脂肪酸以外の成分、各成分の配合割合、組成物の調製方法等を特に制限するものではない。
後述する実験例1に示すように「Δ13C(‰)」の立ち上がりの速さ、言い換えると13C標識脂肪酸投与後、呼気中に13CO2として***される速さから、好ましくは注射投与形態、特に静脈内投与形態を有するものである。ここで注射投与形態には、注射剤や点滴剤の投与形態(液状、懸濁状または乳液状)が含まれる。
本発明の組成物は、実質上、有効成分である上記標識C-脂肪酸だけからなるものであってもよいが、本発明の作用及び効果を損なわない限り、他の成分として、各製剤形態(投与形態)に応じて、通常当業界において用いられる薬学上許容される任意の担体及び添加物を配合した形態であってもよい。この場合、有効成分として配合する標識C-脂肪酸の量としては、特に制限されることなく、組成物100重量%中、例えば1〜99重量%の範囲を挙げることができ、かかる範囲で適宜調整することができる。
具体的には、本発明の組成物を、液体、懸濁液または乳液状等の注射投与形態に調製するにあたり、各種形態に応じて、精製水または注射用蒸留水のほか、各種の担体または添加剤を用いることができる。例えば、添加剤としては、等張化剤(例えば塩化ナトリウムなど)、pH調整剤(例えば塩酸、水酸化ナトリウムなど)、緩衝剤(例えばホウ酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなど)、保存剤(例えば塩化ベンザルコニウムなど)、増粘剤(例えばカルボキシビニルポリマーなど)のような通常用いられる添加剤を用いることができる。なお、本発明の組成物は使用時に上記注射投与形態を有していればよく、使用時に注射用蒸留水などで溶解して用いられる形態、例えば凍結乾燥または噴霧乾燥されてなる製剤など、固形形態を有するものであってもよい。
本発明の組成物は、後述する測定方法において被験者への投与試料(被験試料)として使用される。具体的には、被験者におけるインスリン抵抗性を測定するために投与される被験試料として、また被験者における糖/脂肪酸燃焼比率を測定するために投与される被験試料として使用される。
これらの測定方法は、いずれも、本発明の組成物を被験者(ヒトおよび動物を含む)に静脈内投与した後、呼気を採取して呼気に含まれる炭酸ガスの存在比(非標識CO量または総CO量に対する標識CO量)を測定することによって、当該存在比を指標として測定することができる。その詳細は、下記(III)にて説明する。
本発明のインスリン抵抗性測定用組成物に配合される標識C-脂肪酸(有効成分)の量としては、ケースに応じて適宜調節設定することができる。具体的には、1回あたりの投与量が標識C-脂肪酸(有効成分)の量に換算して、5 mg/body〜50 g/body、好ましくは10 mg/body〜25 g/bodyの範囲となるように調製することができる。
(III)インスリン抵抗性の測定方法
前述する本発明のインスリン抵抗性測定用組成物を用いることによって、被験者(ヒトまたはヒト以外の哺乳動物)のインスリンに対する感受性の低下(インスリン抵抗性)を測定することができる。
当該インスリン抵抗性の測定は、基本的には、下記に示すように、標識C-脂肪酸を有効成分とする上記組成物を、ヒトを始めとする哺乳動物(被験者)に投与し、呼気を採取し[下記、本発明方法の(a)工程]、当該呼気に含まれる炭酸ガスの存在比(非標識CO量または総CO量に対する標識CO量)を測定する工程[下記、本発明方法の(b)工程]を経て行うことができる。
[(a)工程] 生体内で標識炭酸ガスに変換されて呼気中に排出される同位元素Cの少なくとも一つで標識されてなる炭素数12〜38の脂肪酸またはその塩(以下、特に言及しない限り、これらを総称して「標識C-脂肪酸」という。)を有効成分とする組成物を被験者に投与して呼気を採取する工程。
[(b)工程] 呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合を求める工程。
本発明で用いる標識C-脂肪酸は、前述するように、被験者に静脈内投与された後、被験者の脂質代謝能に応じて代謝され、当該脂質代謝能の大きさを反映した標識Cを含む炭酸ガスとして呼気に排出される特性を有している。
なお、ここで標識C-脂肪酸を有効成分とする本発明の組成物の投与方法は、実験例1に示すように精度の高さという点からは静脈内投与が好ましい。
本発明のインスリン抵抗性測定用組成物に配合される標識C-脂肪酸(有効成分)の量としては、ケース〔被験者の別、被験者の状態(絶食/非絶食の別)など〕に応じて適宜調節設定することができる。静脈内投与1回あたりの量として、標識C-脂肪酸(有効成分)の量に換算して、5 mg/body〜50 g/body、好ましくは10 mg/body〜25 g/bodyの範囲となるように調製することができる。
本発明が対象とする被験者は、前述するようにヒトまたはヒト以外の哺乳動物である。ヒト以外の哺乳動物としては、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、ブタ、牛、及び馬などが挙げられるが、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、サル等の実験動物である。
かかる被験者は、(a)工程に供する前、絶食状態であってもまた非絶食状態であってもよい。後述する実験例2で示すように、絶食状態にある被験者よりも非絶食状態にある被験者を(a)工程に供することで、(b)工程において「非標識CO量または総CO量に対する標識CO量」が短時間で精度高く測定することができることから、非絶食状態であることが好ましい。
(a)工程で採取した呼気を用い、(b)工程で求められる、呼気に含まれる炭酸ガスの存在比(非標識CO量または総CO量に対する標識CO量の割合)から、被験者のインスリン抵抗性を測定する方法の一例を、13C-標識脂肪酸を有効成分とする組成物を用いる場合(即ち、測定する標識CO13COの場合)を例として説明すれば、下記の通りである。
(1)採取した呼気に含まれる炭酸ガスの存在比(総CO量に対する13CO量の割合)を、下記に記載する方法に従って、13C-標識脂肪酸投与前の13C含量(atom %)〔(%13C)0〕を差し引いた13C濃度の変化量(Δ%13C)として算出する。
呼気に含まれる総炭素中の13C含量(atom %)〔呼気中の13C濃度(%13C)〕を求め、さらに式6に従って、13C-標識化合物投与前の13C濃度(atom %)〔(%13C)0〕を差し引いて、13C濃度の変化量(Δ%13C)を求める。
Figure 0006305392
Figure 0006305392
(2) なお、必要に応じて、上記13C濃度の変化量(Δ%13C)は、式5および式3に基づいて、Δ13C値(‰)〔δ13C値変化量(‰)またはDOB(‰)〕に換算してもよい。
Figure 0006305392
Figure 0006305392
標識C-脂肪酸を有効成分とするインスリン抵抗性測定用組成物を投与した後に呼気中に排出される標識C含量、またはこれに対応するΔ%13C(atom%)若しくはΔ13C値(‰)は、後述する実験例に示すように、被験者のインスリン抵抗性を反映しており、当該組成物を用いた本発明の方法によれば、当該被験者のインスリン抵抗性を精度良く、且つ迅速に測定することができる。
なお、呼気試料中に含まれる標識炭酸ガスの測定・分析は、使用する同位元素が放射性か非放射性かによって異なるが、通常、液体シンチレーションカウンター法、質量分析法、赤外分光分析法、発光分析法、磁気共鳴スペクトル法等といった一般に使用される分析手法を用いて行うことができる。好ましくは測定精度の点から赤外分光分析法及び質量分析法である。
上記(b)の工程で得られる「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(Δ%13C(atom%)若しくはΔ13C値(‰))を指標として、下記の方法により、被験者のインスリン抵抗性を決定することができる。
(c-1)(b)工程で得られる被験者の「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(Δ%13C(atom%)若しくはΔ13C値(‰))(被験値)を、健常者について得られる対応する「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(Δ%13C(atom%)若しくはΔ13C値(‰))(対照値)と比較する。
(c-2)上記で比較した結果、被験値が対照値よりも高い場合、当該被験者をインスリンに対する感受性が低下している、すなわち「インスリン抵抗性がある」と決定し、被験値が対照値と同等もしくは低い場合を被験者についてインスリンに対する感受性が正常または低下していないと決定する。
なお、ここで健常者とは、インスリンに対する感受性が健常(正常)であることを意味する。つまり、当該健常者は、インスリン分泌に異常がなく、糖尿病(II型、妊娠糖尿病を含む)、境界型糖尿病、及び肝疾患(肝硬変、NASH、NAFLDなど)等の糖代謝異常(高インスリン血症を含む)を生じていない被験者である。
健常者であるか否かは、当業界において公知または慣用の糖尿病の診断方法(75gブドウ糖負荷試験などの血糖値の測定、インスリン抵抗性試験、ヘモグロビンA1cなど)を用いて決定することができる。例えば、75gブドウ糖負荷試験の場合、空腹時の血糖値が110mg/dl未満で且つ負荷後2時間目の血糖値が140mg/dl未満であれば、糖代謝能が正常であると判断することができる。
実験例2(図2)に示すように、糖尿病を発症しているか、糖尿病の前状態にある被験モデル(インスリン抵抗性のモデル)(図2中、ZDF fattyラットが相当)は、健常モデル(図2中、ZDF leanラットが相当)よりも糖代謝能が低下している。当該被験モデルに標識C-脂肪酸を投与し(b)工程を実施すると、当該(b)工程により求められる「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(Δ%13C(atom%)若しくはΔ13C値(‰))(被験値)は、図6の(B)図(ZDF fattyに関する図)に示すように、健常モデルについて得られる「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(Δ%13C(atom%)若しくはΔ13C値(‰))(対照値)(図6の(A)図(ZDF leanに関する図))と比較して、絶食状態(fasting)及び非絶食状態(feeding)ともに全般的に上昇(亢進)していることがわかる(実験例2)。同様の結果は、被験動物として、上記ZDF fattyに代えて、インスリン抵抗性モデルとして肥満又は/及び脂肪肝を伴う糖尿病と糖尿病合併症を発症する2型糖尿病のモデル動物であるOLETFラットを使用した実験からも得られている(実験例3、図7参照)。なお健常モデルに対するインスリン抵抗性モデルのΔ%13C(atom%)若しくはΔ13C値(‰)の上昇差(亢進差)は、非絶食状態(feeding)のほうが顕著である(実験例3、図8(A)と(B)との比較、及び図9(A)と(B)との比較)。つまり、このことから、糖尿病を発症しているか、または糖尿病の前状態にあり、インスリン感受性が低下している被験者(インスリン抵抗性の被験者)は、健常者よりも脂肪酸代謝が亢進していることがわかる。従って、本発明の方法によれば、被験者の脂肪酸代謝能から、間接的に当該被験者のインスリン抵抗性を測定することができる。この本発明の方法の特徴は、非絶食状態における実験結果である図8及び9の各(B)図からわかるように、インスリン感受性が低下した被験者について得られる値(Δ%13C(atom%)若しくはΔ13C値(‰))と健常者について得られる対照値との差異が明確であり、呼気採取から短時間(1分〜30分以内、好ましくは1分〜15分以内)で高い精度の結果が得られることである。
また実験例4(図10及び11)に示すように、高インスリン血症であるもののインスリンに対する感受性が低下していない「インスリン非抵抗性/高インスリン血症」の被験モデル(図10:ZDF fattyラット、図11:OLETFラット)は、健常モデル(図10:ZDF leanラット、図11:LETOラット)よりも脂肪酸代謝能が低下している。当該「インスリン非抵抗性/高インスリン血症」モデルに、好ましくは非絶食状態で標識C-脂肪酸を投与し(b)工程を実施すると、当該(b)工程により求められる「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(Δ%13C(atom%)若しくはΔ13C値(‰))(被験値)は、図10及び11の各々(A)図(図10:ZDF fattyラットのグラフ、図11:OLETFラットのグラフ)に示すように、健常モデル(図10:ZDF leanラット、図11:LETOラット)について得られる「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(Δ%13C(atom%)若しくはΔ13C値(‰))(対照値)よりも低下(減少)していることがわかる(実験例4)。このことから、インスリン抵抗性を伴わない高インスリン血症(インスリン非抵抗性/高インスリン血症)の被験者は、健常者よりも脂肪酸代謝が低下していることがわかる。つまり、本発明の方法によれば、高インスリン血症の被験者について、その脂肪酸代謝能から、間接的に当該被験者のインスリン抵抗性の有無を測定することができ、「インスリン非抵抗性/高インスリン血症」及び「インスリン抵抗性/高インスリン血症」の別を判別することができる。当該方法も、実験例4の結果を示す図10〜11、特に非絶食状態における実験結果を示す各(A)図からわかるように、呼気採取から短時間(1分〜30分以内、好ましくは1分〜15分以内)で高い精度の結果が得られることを特徴とする。
なお、呼気試験を利用した本発明の方法と並行して、当業界において公知または慣用の糖代謝能の測定(血糖値の測定、インスリン抵抗性試験、ヘモグロビンA1cなど)を行ってもよい。糖代謝能の測定を併用することで、本発明の方法によりインスリン抵抗性であると決定された被験者について、さらにインスリン抵抗性を伴う境界型糖尿病または糖尿病(II型糖尿病、妊娠糖尿病)であるか否かを判断し、決定することができる。また呼気試験を利用した本発明の方法と並行して、当業界において公知または慣用の肝疾患・肝機能の測定を行ってもよい。肝疾患・肝機能の測定を併用することで、本発明の方法によりインスリン抵抗性であると決定された被験者について、さらにインスリン抵抗性を伴う肝疾患(肝硬変、NASH、NAFLD)であるか否かを判断し、決定することができる。
この場合、本発明の方法を適用する被験者としては、かかる疾患(インスリン抵抗性を伴う境界型糖尿病または糖尿病、肝疾患や肝機能障害)に罹患しているか、または罹患している可能性のあるヒトまたはその他の哺乳類を挙げることができる。また、本発明の方法は、インスリン抵抗性の有無を検出する目的で、またかかる疾患の罹患とともにインスリン抵抗性の有無を検出する目的で、ヒトまたはその他の哺乳類に広く適用することもできる。本発明の方法は、精度が高いことから、被験者について、正常でもまた糖尿病でも境界型糖尿病でもないものの、インスリン感受性が低下している状態;正常でもまたインスリン感受性が低下していないものの、高インスリン血症である状態を識別し判定するために有効に利用することができる。
なお、他の指標である測定値(血糖値)によれば、空腹時血糖値が100mg/dl〜126mg/dl未満、好ましくは110mg/dl〜126mg/dl未満、または経口ぶどう糖負荷試験(75g OGTT)での2時間値が140mg/dl〜199mg/dlである場合に、「境界型糖尿病」であると決定することができる。また(1)空腹時血糖値が126mg/dl以上、(2)経口ぶどう糖負荷試験(75g OGTT)での2時間値が200mg/dl以上、(3)随時血糖値が200mg/dl以上、または(4)ヘモグロビンA1cが6.5%以上のいずれかに該当する場合に「糖尿病」であると決定することができる。
(IV)糖/脂肪酸燃焼比率の測定方法
生体内での糖及び脂質の代謝燃焼比率は、一般に、呼気中に排出される二酸化炭素量と酸素量から、下式に基づいて算出される呼吸商から評価することができる。
Figure 0006305392
具体的には、糖質を摂取した際の呼吸商はRQ=1.0であり、脂質を摂取した際の呼吸商はRQ=0.7であり、上記式で得られる呼吸商の値から、生体内で、糖及び脂質のどちらがどれだけの割合で利用されているか(燃焼率)を決定することができる。
本発明の糖/脂肪酸燃焼比率の測定方法(糖/脂肪酸燃焼比率測定法)は、生体内における糖と脂肪酸との燃焼比率(糖/脂肪酸燃焼比率)を測定するための方法であり、従来法である上記呼吸商に代えて、また呼吸商よりも精度高く、被験者について所期の糖/脂肪酸燃焼比率を求めることができるという点で有用な方法である。
本発明の糖/脂肪酸燃焼比率測定法は、大きく分けて下記の3つの方法に分類することができる。
(1)被験者について、標識C-グルコース投与後の呼気試験で得られる△標識C(‰)のAUC(t)、及び標識C-脂肪酸投与後の呼気試験で得られる△標識C(‰)のAUC(t)(tは標識C-脂肪酸投与から呼気採取までの時間、つまり呼気採取時間を意味する。以下同じ。)から、両者の比率(AUCt[標識C-グルコース]/AUCt[標識C-脂肪酸])を求める方法。
(2)被験者について得られる血糖値の逆数(1/血糖値)、及び標識C-脂肪酸投与後の呼気試験で得られる△標識C(‰)のAUC(t)から、両者の比率([1/血糖値]/AUCt[標識C-脂肪酸])を求める方法。
(3)被験者について得られる血糖値の逆数(1/血糖値)、及び標識C-脂肪酸投与後の呼気試験で得られる△標識C(‰)の最大値(Ct)(t=1〜30min)から、両者の比率([1/血糖値]/Cmax[標識C-脂肪酸])を求める方法。
以下、これらの3つの方法について説明する。
(1)「AUC t [標識C-グルコース]/AUC t [標識C-脂肪酸]」を求める方法
(1-1)AUC t [標識C-脂肪酸]の求め方
当該方法において、AUCt[標識C-脂肪酸]は、前述する本発明の標識C-脂肪酸投与による呼気試験から求められる[Δ標識C(‰)−呼気採取時間tまでの曲線下面積](AUCt)を意味する。
当該「△標識C(‰)−呼気採取時間tまでの曲線下面積」(AUCt)は、本発明の標識C-脂肪酸投与による呼気試験で得られる△標識C(‰)の経時的変化を示すグラフから求めることができる。具体的には、本発明の標識C-脂肪酸投与による呼気試験から得られるΔ13C(‰)を縦軸に、標識C-脂肪酸投与後の経過時間(呼気採取時間:t)(分)を横軸にしたグラフから、その曲線下面積(AUCt)を算出することで求めることができる。
標識C-脂肪酸、標識C-脂肪酸の投与形態及び投与方法、並びに△標識C(‰)の算出方法などは、(III)で説明した通りであり、その記載はここにおいて援用することができる。
なお、ここで呼気採取時間(t)としては、標識C-脂肪酸投与後1分から60分の間のいずれかの時間でよく、当該範囲内で任意の時間を選択することができる。好ましくは標識C-脂肪酸投与後1〜30分であり、より好ましくは1〜15分である。
(1-2)AUC t [標識C-グルコース]の求め方
また当該方法において、AUCt[標識C-グルコース]は、標識C-グルコース投与による呼気試験から求められる[Δ標識C(‰)−呼気採取時間tまでの曲線下面積](AUCt)を意味する。当該「△標識C(‰)−呼気採取時間tまでの曲線下面積」(AUCt)は、前述する本発明の呼気試験において、標識C-脂肪酸に代えて標識C-グルコースを被験者に投与することで得られる△標識C(‰)の経時的変化を示すグラフから求めることができる。具体的には、標識C-グルコース投与による呼気試験から得られるΔ13C(‰)を縦軸に、標識C-グルコース投与後の経過時間(呼気採取時間:t)(分)を横軸にしたグラフから、その曲線下面積を算出することで求めることができる。
なお、ここで呼気採取時間(t)としては、標識C-グルコース投与後1分から120分の間のいずれかの時間でよく、当該範囲内で任意の時間を選択することができる。好ましくは標識C-グルコース投与後1〜60分であり、より好ましくは1〜30分である。ただし、「AUCt[標識C-グルコース]/AUCt[標識C-脂肪酸]」を求めるにあたっては、AUCt[標識C-脂肪酸]の算出に採用した呼気採取時間(t)と同じ時間(t)が用いられる。
標識C-グルコースは、生体内で標識CO2ガスに変換して呼気中に排出される同位元素Cの少なくとも一種で標識されてなるグルコースであればよい。当該標識C-グルコースは、被験者に投与された後、体内の糖代謝能に応じて糖代謝され、糖代謝能の大きさを反映した標識Cを含む炭酸ガスとして呼気に排出される特性を有する。グルコースを構成する炭素原子の標識に用いられる同位元素としては、特に制限はされないが、具体的には13C、及び14Cを挙げることができる。かかる同位元素は放射性及び非放射性の別を問わないが、安全性の観点から好ましく非放射性同位元素である。かかる同位元素としては好適に13Cを挙げることができる。
同位体元素−標識グルコースは、糖代謝経路を経て生成されるCO2の少なくとも一部が同位元素で標識されてなるように、標識されてなるものである。例えば、このようなグルコースとしては、グルコースの1位或いは6位、2位或いは5位、及び3位或いは4位のいずれか少なくとも1つの炭素原子が同位元素で標識されてなる化合物、具体的には、1-13C標識グルコース、2-13C標識グルコース、3-13C標識グルコースを例示することができる。またグルコースの1位、2位、3位,4位、5位及び6位の全ての炭素原子が同位元素で標識されてなるものであってもよい。好ましくは3位、4位の炭素原子が同位元素で標識されてなるグルコース(例えば、3-13C標識グルコース、4−13C標識グルコース)、並びに1位、2位、3位、4位、5位及び6位の全ての炭素原子が同位元素で標識されてなるグルコースである。
グルコース等の化合物を13Cや14Cなどの同位体で標識する方法は、特に制限されず、通常使用される方法が広く採用される。これらの同位体標識化合物、特に実施例2に示す13C標識−グルコースはいずれも商業的に入手することができ、簡便にはかかる市販品を使用することもできる。
呼気試験に際して、被験者には、被験試料として標識C-グルコースを含む組成物を投与することができる。当該組成物は、基本的には、投与後、標識C-グルコースが体内に吸収され、また代謝された後に、標識炭酸ガスとして呼気に排出されるのであるものであればよく、それを満たすものである限り、その形態、標識C-グルコース以外の成分、各成分の配合割合、組成物の調製方法等を特に制限するものではない。例えば形態としては、経口投与形態を有するものであっても、また静脈内投与形態を有するものであってもよい。前者の場合、液剤(シロップ剤を含む)、懸濁剤および乳剤などの液状形態;錠剤(裸剤、被覆剤を含む)、チュアブル錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤(粉末剤)、細粒剤および顆粒剤などの固形形態など、任意の経口投与形態を採用することができる。後者の場合、例えば注射剤や点滴剤の投与形態(液状、懸濁状または乳液状)を採用することができる。非侵襲的測定方法である点で経口投与形態が好ましいが、高い測定精度が得られるという点では静脈内投与形態が好ましい。この場合、例えば点滴または注射剤などの液体、懸濁液または乳液の形態に調製するに際しては、各種形態に応じて、精製水または注射用蒸留水のほか、各種の担体または添加剤を用いることができる。例えば、添加剤としては、等張化剤(例えば塩化ナトリウムなど)、pH調整剤(例えば塩酸、水酸化ナトリウムなど)、緩衝剤(例えばホウ酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなど)、保存剤(例えば塩化ベンザルコニウムなど)、増粘剤(例えばカルボキシビニルポリマーなど)のような通常用いられる添加剤を用いることができる。
また当該組成物は、製剤形態を有するものに限らず、上記標識C-グルコースを含み、本発明の作用効果を妨げないものであればよく、上記標識C-グルコースを任意の食品素材と組み合わせて、固形食、流動食または液状食の形態を有するものであってもよい。本発明の組成物は、実質上、有効成分である上記標識C-グルコースだけからなるものであってもよいが、本発明の作用及び効果を損なわない限り、他の成分として、各製剤形態(投与形態)に応じて、通常当業界において用いられる薬学上許容される任意の担体及び添加物を配合した形態であってもよい。この場合、有効成分として配合する標識C-グルコースの量としては、特に制限されることなく、組成物100重量%中1〜95重量%を挙げることができ、かかる範囲で適宜調整することができる。
標識C-グルコースの投与量としては、ケースに応じて適宜調節設定することができるが、1回あたりの投与量として、5 mg/body〜50 g/body、好ましくは10 mg/body〜25 g/bodyの範囲を例示することができる。
(1-3)「AUC t [標識C-グルコース]/AUC t [標識C-脂肪酸]」
上記で求められるAUCt[標識C-グルコース]とAUCt[標識C-脂肪酸]との比(AUCt[標識C-グルコース]/AUCt[標識C-脂肪酸])から、被験者について糖/脂肪酸の燃焼率を測定することができる。
例えば、被験者について得られる「AUCt[標識C-グルコース]/AUCt[標識C-脂肪酸]」を、糖代謝能及び脂質代謝能(脂肪酸代謝能)が正常な健常者について得られる「AUCt[標識C-グルコース]/AUCt[標識C-脂肪酸]」と比較した場合に、被験者の「AUCt[標識C-グルコース]/AUCt[標識C-脂肪酸]」が低い場合は、被験者について糖代謝能が低下しているかまたは脂質代謝能(脂肪酸代謝能)が亢進していると判断することができる。
これについて、後述する実験例5の図13の結果に基づいて説明する。
実験例5の図13は、前述の方法で求められるAUCt[標識C-グルコース]とAUCt[標識C-脂肪酸]との比(AUCt[標識C-グルコース]/AUCt[標識C-脂肪酸])に関して、糖代謝異常(インスリン抵抗性)を示す糖尿病のモデル動物(ZDF fattyラット)の当該比と糖代謝能(インスリンに対する感受性)が正常である健常者のモデル動物(ZDF leanラット)の当該比とを、それぞれ絶食状態と非絶食状態において比較した結果を示したものである。
図13に示すように、絶食状態及び非絶食状態のいずれの状態でも、糖尿病モデル(ZDF fattyラット)の「AUCt[標識C-グルコース]/AUCt[標識C-脂肪酸]」は、健常モデル(ZDF leanラット)のそれと比較して顕著に低く、両者に明らかな差異が認められる。このことから、糖尿病モデルは、健常モデルと比べて、糖代謝能(インスリンに対する感受性)が低下しているか、またはそれを代償するために脂質代謝能(脂肪酸代謝能)が亢進していることがわかる。
(2)「[1/血糖値]/AUC t [標識C-脂肪酸]」を求める方法
(2-1)AUC t [標識C-脂肪酸]の求め方
当該AUCt[標識C-脂肪酸]の求め方は、前述した通りであり、上記記載をここに援用することができる。
(2-2)[1/血糖値]の求め方
被験者の血糖値は、定法に従って求めることができる。具体的にはグルコース脱水素酵素(GDH)を用いた酵素電極法装置(ライフチェックセンサー グンゼ(株))により測定することができる。
斯くして得られた血糖値の逆数から、[1/血糖値]を求めることができる。
(2-3)「[1/血糖値]/AUC t [標識C-脂肪酸]」
上記で求められる[1/血糖値]とAUCt[標識C-脂肪酸]との比([1/血糖値]/AUCt[標識C-脂肪酸])から、被験者について糖/脂肪酸の燃焼率を測定することができる。
例えば、被験者について得られる「[1/血糖値]/AUCt[標識C-脂肪酸]」を、糖代謝能(インスリンに対する感受性)及び脂質代謝能(脂肪酸代謝能)が正常な健常者について得られる「[1/血糖値]/AUCt[標識C-脂肪酸]」と比較した場合に、被験者の「[1/血糖値]/AUCt[標識C-脂肪酸]」が低い場合は、被験者について糖代謝能(インスリンに対する感受性)が低下しているか、または脂質代謝能(脂肪酸代謝能)が亢進していると判断することができる。
これについて、後述する実験例5の図14の結果に基づいて説明する。
実験例5の図14は、前述の方法で求められる[1/血糖値]とAUCt[標識C-脂肪酸]との比([1/血糖値]/AUCt[標識C-脂肪酸])に関して、糖代謝異常(インスリン抵抗性)を示す糖尿病のモデル動物(ZDF fattyラット)の当該比と糖代謝能(インスリンに対する感受性)が正常である健常者のモデル動物(ZDF leanラット)の当該比とを、それぞれ絶食状態と非絶食状態において比較した結果を示したものである。
図13に示すように、絶食状態及び非絶食状態のいずれの状態でも、糖尿病モデル(ZDF fattyラット)の「[1/血糖値]/AUCt[標識C-脂肪酸]」は、健常モデル(ZDF leanラット)のそれと比較して顕著に低く、両者に明らかな差異が認められる。このことから、糖尿病モデルは、健常モデルと比べて、糖代謝能(インスリンに対する感受性)が低下しているか、またはそれを代償するために脂質代謝能(脂肪酸代謝能)が亢進していることがわかる。
(3)「[1/血糖値]/Ct[標識C-脂肪酸](t=1-30min)」を求める方法
(3-1)[1/血糖値]の求め方
当該[1/血糖値]の求め方は、前述した通りであり、上記記載をここに援用することができる。
(3-2)Ct [標識C-脂肪酸](t=1-30min)の求め方
当該方法において、Ct[標識C-脂肪酸](t=1-30min)は、前述する本発明の標識C-脂肪酸投与による呼気試験から求められる、標識C-脂肪酸投与から1〜30分間の範囲における任意の呼気採取時間(t)での△標識C(‰)の値(Ct)を意味する。当該呼気採取時間(t)は、標識C-脂肪酸投与から1〜30分間の範囲内の少なくとも1点であればよく、制限はされないものの、好ましくは標識C-脂肪酸投与から1〜15分間の範囲内、より好ましくは1〜10分間の範囲内の任意の少なくとも1点である。当該Ct[標識C-脂肪酸](t=1-30min)には、△標識C(‰)の最大値(Cmax)が含まれる。
当該Ct[標識C-脂肪酸](t=1-30min)は本発明の標識C-脂肪酸投与による呼気試験において、標識C-脂肪酸投与から1〜30分以内、好ましくは1〜15分以内、より好ましくは1〜10分以内に採取した呼気から△標識C(‰)を算出することで求めることができる。
また、Ct[標識C-脂肪酸](t=1-30min)の一態様として△標識C(‰)の最大値(Cmax)を求める場合は、本発明の標識C-脂肪酸投与による呼気試験で得られる△標識C(‰)の経時的変化を示すグラフを用いることができる。具体的には、本発明の標識C-脂肪酸投与による呼気試験から得られるΔ13C(‰)を縦軸に、標識C-脂肪酸投与後の経過時間(呼気採取時間:t、但しt=1-30)(分)を横軸にしたグラフにおいて、Δ13C(‰)ピークの最大値をCmax[標識C-脂肪酸]とする。
標識C-脂肪酸、標識C-脂肪酸の投与形態及び投与方法、並びに△標識C(‰)の算出方法などは、(III)で説明した通りであり、その記載はここにおいて援用することができる。
(3-3)「[1/血糖値]/Ct[標識C-脂肪酸](t=1-30min)
上記で求められる[1/血糖値]とCt[標識C-脂肪酸](t=1-30min)との比([1/血糖値]/Ct[標識C-脂肪酸](t=1-30min))から、被験者について糖/脂肪酸の燃焼率を測定することができる。
例えば、被験者について得られる「[1/血糖値]/Ct[標識C-脂肪酸](t=1-30min)」を、糖代謝能(インスリンに対する感受性)及び脂質代謝能(脂肪酸代謝能)が正常な健常者について得られる「[1/血糖値]/Ct[標識C-脂肪酸](t=1-30min)」と比較した場合に、被験者の「[1/血糖値]/Ct[標識C-脂肪酸](t=1-30min)」が低い場合は、被験者について糖代謝能(インスリンに対する感受性)が低下しているかまたは脂質代謝能(脂肪酸代謝能)が亢進していると判断することができる。
以下に実施例並びに実験例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。ただし、本発明はこれらの実施例等によって何ら制限されるものではない。
実験例1
(1)1- 13 C-パルミチン酸Na溶液の調製
1-13C-パルミチン酸Naを、含水エタノールに500μmol/mL濃度になるように約80℃で溶解させ、これにあらかじめ37℃に温めておいた20%BSAに入れて攪拌混合し、1-13C-パルミチン酸Na濃度が20μmol/2mLになるように溶解し、1-13C-パルミチン酸Na溶液とした(以下の実験例でも同じ。)
(2)実験方法
被験動物としてラット(雄、Zucker系ラット)を用いた。試験前日より絶食させた当該ラットを、経口投与群及び静脈投与群の2群にわけ(各々、n=3)、(1)で調製した1-13C-パルミチン酸Na溶液(20μmol/2mL)を、2mL/kgの割合で、それぞれ経口投与及び静脈内投与した。投与前(0分)と投与後180分までの各時点(t分)で呼気を採取し、呼気中に排出された13CO2濃度から△13C(‰)を、呼気分析用質量分析計(ABCA:SerCon社製)を用いて求めた。
なお、△13C(‰)は、1-13C-パルミチン酸Na投与前(0分)と投与後の各呼気採取ポイント(t分)における呼気中13CO2/12CO2濃度比(δ13C値)をそれぞれ測定し、各採取ポイント(t)におけるδ13C値(δ13Ct)と投与前のδ13C値(δ13C0)の差(δ13Ct−δ13C0)から△13C(‰)値を算出することから求めた(以下の実験例でも同じ。)
(3)実験結果
1-13C-パルミチン酸Na溶液を経口投与(po)あるいは静脈内投与(iv)した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を図1に示す。図中、縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-パルミチン酸Na投与後の呼気採取時間(t分)を示す。
図1に示すように、経口投与群(―◇―)では△13C(‰)の測定値は、各測定時間の間で変わらなかったが、静脈内投与群(―■―)においては、比較的早い時間(投与から10分以内)に、△13C(‰)のピークが認められた。
この結果から、1-13C-パルミチン酸Naは呼気中に13CO2として***されることがわかる。またこの結果から、1-13C-パルミチン酸Na溶液を経口投与ではなく静脈内投与することで、絶食時の脂肪燃焼が判定できることがわかる。
実験例2 各種 13 C標識化合物を用いたインスリン抵抗性の評価
(1)各種 13 C標識化合物含有溶液の調製
(a)U-13C-グルコース溶液
U-13C-グルコースを生理食塩液に50μmol/mL濃度になるように溶解し、これをU-13C-グルコース溶液とした。
(b)1-13C-酢酸 Na溶液
1-13C-酢酸Naを生理食塩液に50μmol/mL濃度になるように溶解し、これを1-13C-酢酸 Na溶液とした。
(c)1-13C-オクタン酸Na溶液
1-13C-オクタン酸Naを生理食塩液に50μmol/mL濃度になるように溶解し、これを1-13C-オクタン酸Na溶液とした。
(d)1-13C-ラウリン酸溶液
1-13C-ラウリン酸を、含水エタノールに500μmol/mL濃度になるように約80℃で溶解した。これを37℃に温めておいた20% BSAに入れて攪拌し、1-13C-ラウリン酸濃度が20μmol/2mlになるように溶解し、これを1-13C-ラウリン酸溶液とした。
(e)1-13C-パルミチン酸Na溶液
実験例1と同じ方法で、1-13C-パルミチン酸Naを含水エタノールに20μmol/2ml濃度になるように溶解し、これを1-13C-パルミチン酸Na溶液とした。
(f)1-13C-オレイン酸溶液
オレイン酸0.5g、大豆油0.5g、精製卵黄レシチン0.12gをプラスチックチューブに入れ、溶解後グリセリン溶液(24.7mg/mL)を0.5mLずつ加えながら乳化した。約9mLにした後1,2μmフィルターにてろ過し、水を加えて10mLにメスアップした。
本液のオレイン酸含量を測定し、グリセリン溶液(22mg/mL)で希釈し5.65mg/mL(20μmol/mL)溶液とした。
(2)インスリン抵抗性の評価
(2−1)実験方法
被験動物として、下記に説明する(A)及び(B)を用いた。
(A)ZDF系ラット〔雄、Lean(18week,絶食時の血糖値及びインスリン値:それぞれ73mg/dL及び1.0 ng/mL、非絶食時の血糖値及びインスリン値:それぞれ98mg/dL及び3.9 ng/mL)、及びFatty(18week,絶食時の血糖値及びインスリン値:それぞれ369 mg/dL及び1.7 ng/mL、非絶食時の血糖値及びインスリン値:それぞれ474 mg/dL及び13.6 ng/mL)〕。
(B)ZDF系ラット[雄、Lean(13week、絶食時の血糖値及びインスリン値:それぞれ63.8mg/dL及び0.21ng/mL、非絶食時の血糖値及びインスリン値:それぞれ111.5mg/dL及び2.26ng/mL)、及びFatty(13week、絶食時の血糖値及びインスリン値:それぞれ240.3mg/dL及び1.97ng/mL、非絶食時の血糖値及びインスリン値:それぞれ595.8mg/dL及び2.77ng/mL)]。
ZDF Fattyラットは、ヒト成人のII型糖尿病及びその合併症に近い病態を発症するインスリンに対する感受性が低下したインスリン抵抗性モデル動物である。一方、ZDF Leanラットは、血糖値及びインスリンに対する感受性が正常である健常モデル動物である。(A)のLean及びFattyラットのそれぞれを前日より絶食にした絶食群と非絶食群に分けて、各群をさらに5群に分けて、各群に上記で調製した(a)U-13C-グルコース溶液、(b)1-13C-酢酸 Na溶液、(c)1-13C-オクタン酸Na溶液、(f)1-13C-オレイン酸溶液(以上、各々1ml/kgずつ)、(d)1-13C-ラウリン酸溶液、または(e)1-13C-パルミチン酸Na溶液(以上、各々2ml/kgずつ)をそれぞれ静脈内投与し、(a)〜(e)は(A)のラットを、(f)は(B)のラットを用いて呼気を採取した(各群、n=3)。
(a)〜(f)の溶液投与前(0分)と、投与後60分までの各時点(t分)で、呼気を採取し、呼気中に排出された13CO2濃度から△13C(‰)を、呼気分析用質量分析計(ABCA:SerCon社製)を用いて求めた。
(2−2)実験結果
(2−2−1)U- 13 C-グルコース溶液の投与
ZDF系ラット(Lean及びFatty)にU-13C-グルコース溶液を静脈内注射した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を図2に示す。図2(A)にLeanラットの結果を、図2(B)にFattyラットの結果をそれぞれ示す。図中、縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸はU-13C-グルコース溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す。
図2の結果からわかるように、Leanラットは健常モデルであるため、非絶食時にはエネルギー源として餌中の糖質を利用する。このため△13C(‰)の値が絶食時よりも高くなる。一方、Fattyラットはインスリン抵抗性モデルであり、遺伝的に糖質が利用できないため、絶食状態でも非絶食状態でも両者の△13C(‰)の推移はほぼ同じでほとんど相違はなかった。
(2−2−2)1- 13 C-酢酸Na溶液の投与
ZDF系ラット(Lean及びFatty)に、1-13C-酢酸Na溶液を静脈内投与した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を図3に示す。図3(A)にLeanラットの結果を、図3(B)にFattyラットの結果をそれぞれ示す。図中、縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸はU-13C-酢酸Na溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す。図3からわかるように、Leanラットの結果とFattyラットの結果にほとんど差異はなく、各群の△13C(‰)は同様の推移を示していた。
(2−2−3)1- 13 C-オクタン酸Na溶液の投与
ZDF系ラット(Lean及びFatty)に、1-13C-オクタン酸Na溶液を静脈内投与した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を図4に示す。図4(A)にLeanラットの結果を、図4(B)にFattyラットの結果をそれぞれ示す。図中、縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸はU-13C-オクタン酸Na溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す。図4からわかるように、Leanラットの結果とFattyラットの結果にほとんど差異はなく、各群の△13C(‰)は同様の推移を示していた。
(2−2−4)1- 13 C-ラウリン酸溶液の投与
ZDF系ラット(Lean及びFatty)に、1-13C-ラウリン酸溶液を静脈内投与した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を図5に示す。図中、縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-ラウリン酸溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す。(A)にLeanラットの結果を、(B)にFattyラットの結果をそれぞれ示した。図5からわかるように、1-13C-ラウリル酸の静脈内投与後の13C(‰)の推移、特に静脈内投与から10分間の推移は、健常モデル(Lean)では絶食群と非絶食群とで差が認められたが、インスリン抵抗性モデル(Fatty)では両者に差は認められなかった。健常モデル(Lean)とインスリン抵抗性モデル(Fatty)とを対比すると、特に非絶食群の13C(‰)の推移、特に静脈内投与から15分間の推移に違いが認められ、インスリン抵抗性モデル(Fatty)の13C(‰)が健常モデル(Lean)のそれよりも高い傾向が認められた。
(2−2−5)1- 13 C-パルミチン酸Na溶液
ZDF系ラット(Lean及びFatty)に、1-13C-パルミチン酸Na溶液を静脈投与した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を図6に示す。図6(A)にLeanラットの結果を、図6(B)にFattyラットの結果をそれぞれ示す。図中、縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-パルミチン酸Na溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す。
(2−2−6)1- 13 C-オレイン酸溶液の投与
ZDF系ラット(Lean及びFatty)に、1-13C-オレイン酸溶液を静脈内投与した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を図7に示す。図7(A)にLeanラットの結果を、図7(B)にFattyラットの結果をそれぞれ示す。図中、縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-オレイン酸溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す。
図6からわかるように、1-13C-パルミチン酸Naの静脈内投与後の13C(‰)の推移は、健常モデル(Lean)及びインスリン抵抗性モデル(Fatty)共に、非絶食状態よりも絶食(空腹)状態のほうが、13C(‰)の値が高く、非絶食状態と絶食状態では、体内のエネルギー利用に関して差異があることが認められた。健常モデル(Lean)とインスリン抵抗性モデル(Fatty)とを対比すると、特に非絶食群の13C(‰)の推移、特に静脈内投与から15分間の推移に違いが認められ、インスリン抵抗性モデル(Fatty)の13C(‰)が健常モデル(Lean)のそれよりも高い傾向が認められた。
また、図7からわかるように、1-13C-オレイン酸の静脈内投与後の13C(‰)の推移は、健常モデル(Lean)及びインスリン抵抗性モデル(Fatty)共に、非絶食状態より絶食(空腹)状態のほうが、13C(‰)の値が高く、非絶食状態と絶食状態では、体内のエネルギー利用に関して差異があることが認められた。健常モデル(Lean)とインスリン抵抗性モデル(Fatty)とを対比すると、特に非絶食群の13C(‰)の推移、特に静脈内投与から30分間の推移に違いが認められ、インスリン抵抗性モデル(Fatty)の13C(‰)が健常モデル(Lean)のそれよりも高い傾向が認められた。
また(2−2−1)のU-13C-グルコース溶液を投与した時よりも絶食時と非絶食時とのエネルギー利用の差が明確であり、エネルギー源のswitchingをより精密にモニターできる。この結果から、1-13C-パルミチン酸またはその塩あるいは1-13C-オレイン酸またはその塩を絶食及び非絶食下、好ましくは非絶食下で静脈内投与し,呼気試験を行うことで、インスリン抵抗性の有無の判定が可能であることがわかる。
実験例3 1- 13 C-パルミチン酸Na溶液を用いたインスリン抵抗性の評価
(1)実験方法
被験動物として、LETOラット(雄)(25week,絶食時の血糖値及びインスリン値:80mg/dL及び1.4 ng/mL,非絶食時の血糖値及びインスリン値:105mg/dL及び3.2 ng/mL)、及びOLETFラット(雄)(25week,絶食時の血糖値及びインスリン値:101mg/dL及び1.1 ng/mL,非絶食時の血糖値及びインスリン値:198mg/dL及び14.4 ng/mL)を用いた。なお、OLETFラットは肥満又は/及び脂肪肝を伴う2型糖尿病のモデル動物であり、LETOラットはそのコントロールである(健常モデル)。絶食時、OLETFラットは正常血糖であったが、非絶食時は高インスリン血症及び高血糖で、隠れ糖尿病の呈を示していた。これらのことから、OLETFラットはインスリンに対する感受性が低下した高インスリン血症のラットであり、インスリン抵抗性のモデル動物といえる。
これらのラットそれぞれについて前日より絶食にした絶食群と非絶食群に分けて、各群に上記実験例2で調製した1-13C-パルミチン酸Na溶液(2ml/kg)を静脈内投与した(各群、n=3)。1-13C-パルミチン酸Na溶液投与前(0分)と、投与後60分までの各時点(t分)で呼気を採取し、呼気中に排出された13CO2濃度から△13C(‰)を、呼気分析用質量分析計(ABCA:SerCon社製)を用いて求めた。
(2)実験結果
健常モデルであるLETOラット及びインスリン抵抗性モデルであるOLETFラット(それぞれ絶食群及び非絶食群)の各群に、1-13C-パルミチン酸Na溶液を静脈内投与した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を図8に示す。(A)はLETOラットの結果、(B)はOLETFラットの結果を示す。図中、縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-パルミチン酸Na溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す。
図8からわかるように、1-13C-パルミチン酸Naの静脈内投与後の13C(‰)の推移は、実験例2(2)(2−2−5)の結果と同様に、LETO及びOLETF系ラット共に、非絶食状態よりも絶食(空腹)状態のほうが数値が高く、非絶食状態と絶食状態では、体内のエネルギー利用に関して差異があることが認められた。また健常モデル(LETO)と肝疾患を伴うインスリン抵抗性モデル(OLETF)とを対比すると、絶食群及び非絶食群のいずれも13C(‰)の推移、特に静脈内投与から15分間の推移に違いが認められ、肝疾患を伴うインスリン抵抗性モデル(OLETF)の13C(‰)が健常モデル(LETO)のそれよりも高い傾向が認められた。
以上のことから、1-13C-パルミチン酸を用いた呼気試験によれば、糖尿病を発症したインスリン抵抗性モデルだけでなく、肝疾患を伴う隠れ糖尿病のモデルであってもインスリン抵抗性を鋭敏にモニターすることができる。
ZDF系ラット(雄、Lean及びFatty)について、絶食状態及び非絶食状態で1-13C-パルミチン酸Naを静脈投与した後の13C(‰)の推移をそれぞれ図9(A)及び(B)に、健常モデルであるLETOラット及び肝疾患を伴うインスリン抵抗性モデルであるOLETF系ラットについて、絶食状態及び非絶食状態で1-13C-パルミチン酸Naを静脈投与した後の13C(‰)の推移をそれぞれ図10(A)及び(B)に示す。図9(A)及び図10(A)に示すように絶食時でも健常モデルと肝疾患を伴うインスリン抵抗性モデルとの糖代謝能(インスリンに対する感受性)の違いは判定出来るが、図9(B)や図10(B)のように非絶食時で測定することで、両者の違いを一層大きな差をもって判定することができることがわかる。
実験例4 インスリン抵抗性を伴わない高インスリン血症(インスリン非抵抗性−高インスリン血症)の評価
(1)実験方法
インスリン抵抗性(インスリンへの感受性の低下)が発生する前段階にある動物として、OLETFラット(11週齢、絶食時の血糖値及びインスリン値:104mg/dL及び0.6ng/mL、非絶食時の血糖値及びインスリン値:124mg/dL及び2.7ng/mL)、並びにZDF Fattyラット(11週齢、絶食時の血糖値及びインスリン値:91mg/dL及び3.4ng/mL、非絶食時の血糖値及びインスリン値:116mg/dL及び19.0ng/mL)を用いた。また、これらのコントロール(健常モデル)として、LETOラット(11週齢、絶食時の血糖値及びインスリン値:57mg/dL及び0.3ng/mL、非絶食時の血糖値及びインスリン値:98mg/dL及び1.4ng/mL)及びZDF Leanラット(11週齢、絶食時の血糖値及びインスリン値:72mg/dL及び0.3ng/mL、非絶食時の血糖値及びインスリン値:113mg/dL及び1.7ng/mL)を用いた。インスリン抵抗性発生の前段階にある動物(OLETFラット、ZDF Fattyラット)は高インスリン血症を有するものの血糖値は正常範囲内であった。そこで、これをインスリン抵抗性を伴わない高インスリン血症モデル、簡略して「インスリン非抵抗性/高インスリン血症モデル」と称する。
これらのラットについて前日より絶食にした絶食群と非絶食群に分けて、各群に上記実験例2で調整した1-13C-パルミチン酸Na溶液(2ml/kg)を静脈内投与した(各群、n=3)。1-13C-パルミチン酸Na溶液投与前(0分)と、投与後30分までの各時点(t分)で呼気を採取し、呼気中に排出された13CO2濃度から△13C(‰)を、呼気分析用質量分析計(ABCA:SerCon社製)を用いて求めた。
(2)実験結果
ZDF系ラット(雄、Lean及びFatty)(非絶食群、絶食群)の各群に、1-13C-パルミチン酸Na溶液を静脈内投与した後、測定した呼気中△13C(‰)の推移を図11に示す。図11(A)は非絶食群の結果、(B)は絶食群の結果を示す。図中、縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は1-13C-パルミチン酸Na溶液投与後の呼気採取時間(t分)を示す。
LETO及びOLETFラットについて、非絶食状態及び絶食状態で1-13C-パルミチン酸Na溶液を静脈投与した後の13C(‰)の推移をそれぞれ図12に示す。図12(A)は非絶食群の結果、(B)は絶食群の結果を示す。
図11(B)及び図12(B)に示すようにインスリン抵抗性が発生する前段階では絶食時に於ける13C(‰)の推移は健常モデルとインスリン非抵抗性/高インスリン血症モデルで差はほとんど認められなかった。しかし、図11(A)及び図12(A)に示すように、非絶食時のインスリン非抵抗性/高インスリン血症モデルの13C(‰)値は健常モデルのそれに比べて有意に低いことが確認された。このパターンは、実験例2で示した糖尿病を発症したインスリン抵抗性モデル、実験例3で示した肝疾患を伴う隠れ糖尿病のインスリン抵抗性モデルのパターン(1-13C-パルミチン酸Na溶液投与後の13C(‰)の推移が健常モデルのそれに比べて有意に高いパターン)(図7〜10)と逆であった。このことから、インスリン非抵抗性/高インスリン血症の患者は、インスリン抵抗性の患者とは逆に、脂肪酸代謝が低下していることが明らかとなった。このことから、脂肪酸代謝の亢進及び低下の有無を指標とすることで、高インスリン血症の患者についてインスリン抵抗性の有無が識別することができることがわかった。具体的には、高インスリン血症の患者について、標識C-脂肪酸を用いた呼気試験において健常者よりも脂肪酸の代謝が亢進している場合は、インスリンに対する感受性が低下していると決定することができ(インスリン抵抗性あり。インスリン抵抗性/高インスリン血症)、逆に健常者よりも脂肪酸の代謝が低下している場合は、インスリンに対する感受性は低下していない(インスリン抵抗性なし。インスリン非抵抗性/高インスリン血症)と決定することができる。
実験例5 呼吸商の評価
被験動物として、ラット(雄、ZDF系ラット、Lean及びFatty)をそれぞれ2群(絶食群及び経口投与群)に分けた。絶食群は実験の前日より絶食にし、経口投与群は呼気分析用チャンバーに移してから40分後に水に溶解したグルコース(2g/4mL)を4mL/kgの割合で経口投与した(n=1)。
生体ガス分析用質量分析計(「ARCO−2000」有限会社アルコシステム製)を用いて、各群の呼気中に排出される二酸化炭素量と酸素量から、下式に基づいて呼吸商を算出した。
Figure 0006305392
ここで糖質による呼気商はRQ=1.0であり、脂質による呼気商はRQ=0.7である。したがって、上記式で得られた呼吸商の値により、糖及び脂質のどちらがどれだけの割合で利用されているかを測定することができる。
ZDF系ラット(Lean及びFatty)について測定した呼吸商の平均値±SDを図13に示す。
この結果から、健常モデル(Lean)では非絶食時にはエネルギー源として糖質を利用し、糖尿病を発症したインスリン抵抗性モデル(Fatty)では糖質を利用していないことがわかる。また、絶食時では両群で差がほとんどないことがわかる。
実験例6 糖/脂肪酸 燃焼比率
実験例2で行った(a)U-13C-グルコース溶液投与の結果と(e)1-13C-パルミチン酸Na溶液投与の結果を用いて、糖/脂肪酸 燃焼比率を計算した。
(1)糖質/脂肪酸 燃焼比率(A)
ZDF系ラット(Lean及びFatty)について、実験例2において(a)U-13C-グルコース溶液投与(絶食状態、非絶食状態)で得られた△13C(‰)のAUC(120分)と、(e)1-13C-パルミチン酸Na溶液投与(絶食状態、非絶食状態)で得られた△13C(‰)のAUC(60分)との比率(AUC[13-C-グルコース]/AUC[1-13C-パルミチン酸Na])を、それぞれ絶食状態の値と非絶食状態の値とで比較した結果を図14に示す。当該比率(AUC[13C-グルコース]/AUC[1-13C-パルミチン酸Na])は、糖/脂肪酸 燃焼比率を示す。
なお、U-13C-グルコースは炭素が6個であるため、1/6にしたAUC120分値を用いた。1-13C-パルミチン酸Naは、投与量が20μmol/kgなのでU-13C-グルコースの投与量50μmol/kgに合わせるために2.5倍にしたAUC60分値を用いた。
図14に示すように、呼吸商(RQ)では、絶食時における健常モデル(Lean)と糖尿病を発症したインスリン抵抗性モデル(Fatty)との差異が明確でなく、これからわかるように、絶食時において被験者が糖質と脂肪酸のどちらをエネルギー源として利用しているかの判定が正確にできなかった。これに対して、標識C-グルコースを用いた呼気試験と標識C-脂肪酸を用いた呼気試験の結果から算出した「AUC[U-13C-グルコース]/AUC[1-13C-脂肪酸]」によれば、図14に示すように、絶食時及び非絶食時のいずれも健常モデル(Lean)と糖尿病を発症したインスリン抵抗性モデル(Fatty)との差異が明確であり、このことから、絶食及び非絶食のいずれの状態でも、被験者が糖質と脂肪酸のどちらをエネルギー源として利用しているかを正確に測定することができることがわかる。つまり、かかる方法によれば、呼吸商の代替として、また呼吸商よりも鋭敏に、糖質と脂肪酸のどちらをエネルギー源として利用しているかを測定することができる。
また図14からわかるように、糖尿病を発症したインスリン抵抗性モデル(Fatty)の「AUC[U-13C-グルコース]/AUC[1-13C-脂肪酸]」の絶食時と非絶食時との差異は、健常モデル(Lean)のそれと比べて極めて小さい。従って、被験者の「AUC[U-13C-グルコース]/AUC[1-13C-脂肪酸]」の絶食時と非絶食時との差異を測定することで、被験者のインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)をより精度高く測定することが可能である。
(2)糖質/脂肪酸 燃焼比率(B)
ZDF系ラット(Lean及びFatty)について、血糖値の逆数(絶食状態、非絶食状態)と、実験例2において(e)1-13C-パルミチン酸Na溶液投与(絶食状態、非絶食状態)で得られた△13C(‰)のAUC(60分)との比率([1/血糖値]/AUC[1-13C-パルミチン酸Na])を、それぞれ絶食状態の値と非絶食状態の値とで比較した結果を図15に示す。当該比率([1/血糖値]/AUC[1-13C-パルミチン酸Na])は、糖/脂肪酸 燃焼比率を示す。
図14と同様に絶食時でも非絶食時でも健常モデル(Lean)、糖尿病を発症したインスリン抵抗性モデル(Fatty)においてエネルギー源として糖質、脂肪酸のどちらを利用しているかが判定できることがわかる。このことから、1-13C-パルミチン酸Naによる測定を行うだけで呼吸商の代替が可能であり、呼吸商よりも鋭敏であることが解る。
また図15からわかるように、糖尿病を発症したインスリン抵抗性モデル(Fatty)の「[1/血糖値]/AUC[1-13C-脂肪酸]」の絶食時と非絶食時との差異は、健常モデル(Lean)のそれと比べて極めて小さい。従って、被験者の「[1/血糖値]/AUC[1-13C-脂肪酸]」の絶食時と非絶食時との差異を測定することで、被験者のインスリンに抵抗性耐糖能をより精度高く測定することが可能である。
(3)糖質/脂肪酸 燃焼比率(C)
ZDF系ラット(Lean及びFatty)について、血糖値の逆数(絶食状態、非絶食状態)と、実験例2において(e)1-13C-パルミチン酸Na溶液投与(絶食状態、非絶食状態)で得られた△13C(‰)のCtとの比率([1/血糖値]/Ct [1-13C-パルミチン酸Na])を、それぞれ絶食状態の値と非絶食状態の値とで比較した結果を図15に示す。なお、ここでは、呼気採取時間(t)として△13C(‰)の値が最大値を示した時間を採用した。具体的には、絶食状態及び非絶食状態にある健常モデル(Lean)についてはそれぞれt=2分及び5分を、また絶食状態及び非絶食状態にある糖尿病モデル(Fatty)についてはそれぞれt=2分及び5分を採用した。
当該比率([1/血糖値]/Ct)は、糖/脂肪酸 燃焼比率を示す。
図16からわかるように、図14と図15と同様に、絶食時でも非絶食時でも健常モデル(Lean)、糖尿病モデル(Fatty)においてエネルギー源として糖質、脂肪酸のどちらを利用しているかが判定できることがわかる。このことから、1-13C-パルミチン酸Naによる測定を、1-13C-パルミチン酸Na投与から1分から30分の範囲内での1点の測定を行うだけで呼吸商の代替が可能であり、呼吸商よりも鋭敏であることが解る。
また図16からわかるように、糖尿病モデル(Fatty)の「[1/血糖値]/Ct [1-13C-脂肪酸](t=1-30min)」の絶食時と非絶食時との差異は、健常モデル(Lean)のそれと比べて極めて小さい。従って、被験者の「[1/血糖値]/Cmax [1-13C-脂肪酸](t=1-30min)」の絶食時と非絶食時との差異を測定することで、被験者のインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)をより精度高く測定することが可能である。
実験例7
(1)3- 13 C-グルコース+1- 13 C-パルミチン酸Na混合液の調製
1-13C-パルミチン酸Naを含水エタノールに、500μmol/mL濃度になるように約80℃で溶解させ、これを37℃に温めておいた20%BSAに入れて攪拌した。更に、3-13C-グルコース溶液を加えて、3-13C-グルコース(50μmol/2mL)と1-13C-パルミチン酸Na(20μmol/2mL)の混合溶液(以下、これを「グルコース/パルミチン酸混合液」という)を調製した。
(2)実験方法
被験動物として、ラット(LETO、OLETF、いずれも雄)を用いた。OLETFラットは肥満で脂肪肝を伴う糖尿病モデル、つまりインスリン抵抗性モデルであり、LETOラットはそのコントロール(健常モデル)である。それぞれControl群(非絶食時血糖値:108mg/dL)、軽度糖尿病群(非絶食時血糖値:166mg/dL)、及び重症糖尿病群(非絶食時血糖値:281mg/dL)に分類し、これらの各群に、非絶食下で、(1)で調製したグルコース/パルミチン酸混合液を2ml/kgの用量で静脈内投与した(n=1)。
次いでグルコース/パルミチン酸混合液を静脈投与する前(0分)及び投与後の各時点(t分)で呼気を採取し、呼気中に排出された13CO2濃度から△13C(‰)を、呼気分析用質量分析計(ABCA:SerCon社製)を用いて求めた。
(3)実験結果
結果を図17に示す。図17中、左側からControl群(非絶食時血糖値:108mg/dL)、軽度糖尿病群(非絶食時血糖値:166mg/dL)、及び重症糖尿病群(非絶食時血糖値:281mg/dL)に、グルコース/パルミチン酸混合液をそれぞれ静脈内投与し、呼気試験により測定された13CO2濃度から算出した△13C(‰)の推移を示す。なお、各図中、縦軸は呼気中△13C(‰)、横軸は静脈内投与後の呼気採取時間(t分)を示す。
図17に示す実測値は、シミュレーション結果(示さず)とよく一致しており、このことから実測値の△13C(‰)の推移から糖尿病の進行程度(control→軽度糖尿病→重症糖尿病)、言い換えるとインスリンに対する感受性の低下(インスリン抵抗性の増大)をモニターすることができることがわかる。また、モデル解析(薬物動態)することにより、グルコース/パルミチン酸混合液を投与して得られた実測値からグルコースとパルチミン酸の個々の呼気反応に分解することもできる。

Claims (15)

  1. 下記(a)及び(b)の工程を有する、被験者のインスリン抵抗性の測定方法:
    (a)生体内で標識炭酸ガスに変換されて呼気中に排出される同位元素Cの少なくとも一つで標識されてなる炭素数12〜38の脂肪酸またはその塩を有効成分とする組成物を被験者に静脈内投与して呼気を採取する工程、および
    (b)呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合を求める工程。
  2. さらに下記(c)の工程を有する、請求項1に記載するインスリン抵抗性の測定方法:
    (c)(b)工程で得られる被験者の「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(被験値)を、健常者について得られる「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(対照値)と比較し、被験値が対照値よりも高い場合に当該被験者をインスリン感受性が低下している(インスリン抵抗性)と決定し、被験値が対照値と同等または低い場合に当該被験者をインスリン感受性が正常または低下していないと決定する工程。
  3. 被験者が高インスリン血症の患者であって、さらに下記(d)の工程を有する、請求項1に記載するインスリン抵抗性の測定方法:
    (d)(b)工程で得られる被験者の「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(被験値)を、健常者について得られる「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(対照値)と比較し、被験値が対照値よりも低い場合に、当該被験者をインスリン感受性が正常または低下していない「インスリン非抵抗性の高インスリン血症」と決定する工程。
  4. 被験者が高インスリン血症の患者であって、さらに下記(e)の工程を有する、請求項1に記載するインスリン抵抗性の測定方法:
    (e)(b)工程で得られる被験者の「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(被験値)を、健常者について得られる「呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合」(対照値)と比較し、被験値が対照値よりも高い場合に当該被験者をインスリン感受性が低下している、言い換えると「インスリン抵抗性」または「インスリン抵抗性の高インスリン血症」と決定し、被験値が対照値よりも低い場合に当該被験者をインスリン感受性が正常または低下していない、言い換えると「インスリン非抵抗性の高インスリン血症」であると決定する工程。
  5. 上記同位元素が13Cである、請求項1乃至4のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法。
  6. 炭素数12〜38の脂肪酸が、炭素数12〜28の中鎖、長鎖または極長の脂肪酸である、請求項1乃至5のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法。
  7. 炭素数12〜38の脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びパルミチン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1乃至6のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法。
  8. 被験者が、境界型糖尿病、II型糖尿病、肝硬変、非アルコール性脂肪肝炎、及び非アルコール性脂肪肝疾患からなる群から選択される少なくとも1つの状態にあるものである、請求項1乃至7のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法。
  9. 被験者について、下記の工程(i)及び(ii)を有する糖代謝能測定方法により得られる[Δ標識C(‰)−呼気採取時間tまでの曲線下面積](以下、「AUCt[標識C-グルコース]」と称する)を、上記請求項1乃至8のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法から得られる[Δ標識C(‰)−呼気採取時間tまでの曲線下面積](以下、「AUCt[標識C-脂肪酸]」と称する)で除した値(AUCt[標識C-グルコース]/ AUCt[標識C-脂肪酸])を指標として、被験者身体における糖/脂肪酸燃焼率を測定する方法:
    (i)生体内で標識炭酸ガスに変換されて呼気中に排出される同位元素Cの少なくとも一つで標識されてなるグルコースを有効成分とする組成物を被験者に静脈内投与して呼気を採取する工程、および
    (ii)呼気に含まれる非標識CO2量または総CO2量に対する標識CO2量の割合を求める工程。
  10. 被験者について血糖値の逆数(1/血糖値)を、上記請求項1乃至8のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法から得られる[Δ標識C(‰)−呼気採取時間tまでの曲線下面積](以下、「AUCt[標識C-脂肪酸]」と称する)で除した値([1/血糖値/AUCt[標識C-脂肪酸])を指標として、被験者身体における糖/脂肪酸燃焼率を測定する方法。
  11. 被験者について血糖値の逆数(1/血糖値)を、上記請求項1乃至8のいずれかに記載するインスリン抵抗性の測定方法から得られるΔ標識C(‰)のCt [標識C-脂肪酸](t=1-30min)で除した値([1/血糖値]/Ct[標識C-脂肪酸](t=1-30min))から、被験者身体における糖/脂肪酸燃焼率を測定する方法。
  12. 生体内で標識炭酸ガスに変換されて呼気中に排出される同位元素Cの少なくとも一つで標識されてなる炭素数12〜38の脂肪酸またはその塩を有効成分とする、インスリン抵抗性を測定するための注射投与形態を有する組成物。
  13. 上記同位元素が13Cである、請求項12に記載するインスリン抵抗性測定用組成物。
  14. 炭素数12〜38の脂肪酸が、炭素数12〜18の飽和脂肪酸または炭素数18の不飽和脂肪酸である、請求項12または13に記載するインスリン抵抗性測定用組成物。
  15. 炭素数12〜38の脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びパルミチン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項12乃至14のいずれかに記載するインスリン抵抗性測定用組成物。
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