JP6300344B2 - 海流推定方法及び海流推定システム - Google Patents

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Description

本発明は、海上における船舶等を用いて海流の方向、流速を推定する海流推定方法、海流推定システムに関する。
海水の流れには、潮汐作用によって生ずる潮流と、潮流とは異なる原因で地球規模において発生する海流がある。潮流は比較的短い時間内において周期的に変動し、天文学的に予測が可能であるのに対し、海流の時間的変化は一般的には潮流よりも緩やかであるがその予測が困難である。一方、船舶の運航に対しては、この海流は大きな影響を及ぼす。このため、海流ベクトル(海流の向き、流速(強度))、あるいはその分布を認識することは、船舶の運航上極めて重要である。例えば、海流を把握した運航をすれば、運航時間の短縮や燃料消費を低減することもできる。
海流は、例えば観測船や係留ブイ等による計測、人工衛星を用いたリモートセンシング、沿岸に設置された海洋レーダー等によって計測される。こうした離散的な実測データを用いたシミュレーション(計算)によって、海流の全体像が得られ、公開されている。こうした場合においては、海流を実測する測定点を増やし、かつ測定の精度を高めることが正確に海流分布を把握するためには必要である。このように潮流、海流を検出するために、各種の技術が提案されている。特許文献1には、船舶の船位情報と、船舶の形状等を元にしてモデル化した運動モデルを用いた計算によって、船位情報としての船舶の位置の変化と、船首方向から潮流を算出する技術が記載されている。船舶の位置は、例えばGPS(Global Positioning System)等を用いて、また船首方向は、例えばジャイロコンパスを用いて海上においても認識することができる。
特許文献2には、船舶の位置の軌跡と船首方向を同時にディスプレイに表示し、潮流による影響を視覚的に把握させることのできる表示装置が記載されている。
特許文献3には、複数の船舶の各々が潮流を測定し、これらの情報を基地局に集約することによって海流の分布を推定し、潮流が実測された箇所以外の箇所における潮流の情報を推定するシステムが記載されている。潮流を実測した船舶以外の船舶は、この情報によって、自己のいる箇所における潮流を認識した運行をすることができる。
特開2005−172618号公報 特開平8−114462号公報 特開2001−264437号公報
特許文献1に記載の技術では、船舶の形状等を元にしたモデル化を行い、流体力学的な計算を行って海流の向き、流速を算出している。このため、計算に用いる前提条件が非常に多く、この前提条件が実際の船舶に全て合致することは稀であり、実際の状況と乖離している場合が多くなる。このため、潮流(海流)ベクトルを高精度で求めることは困難であった。
特許文献2に記載の技術では、潮流を視覚的に認識することは容易であるものの、正確にその向き、流速を算出することが困難であることは明らかである。特許文献3に記載の技術は、個々の船舶において潮流が正確に測定できることを前提としているために、その精度は、結局は個々の船舶における潮流ベクトルの検出の精度に依存する。このため、特許文献1に記載の技術と同様に、潮流(海流)に関する情報を高精度で求めることは困難であった。また、個々の船舶が潮流分布測定だけの目的のために、専用の設備を搭載し協力して行動をする必要があった。
従って、海流に関する情報(向き、流速)を正確に測定することは困難であった。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決するもので、海流に関する情報(向き、流速)を正確に、容易に推定可能な海流推定方法及び海流推定システムを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の請求項1に係る海流推定方法は、海上の船舶の運航に関する状況が特定された運航情報を複数用いることによって海流の向き及び強さを示す海流ベクトルを推定する海流推定方法であって、前記運航情報として海流を推定する海域を通る複数の前記船舶の個船毎の対地速度ベクトル及び前記船舶の船首方位を取得し個船毎の前記対地速度ベクトル及び前記船首方位に基づいて複数の前記船舶の航行する前記海域における前記海流ベクトルを算出するとともに、前記運航情報を取得する複数の前記船舶の隻数を増すことにより前記海流ベクトルの推定確度を上げることを特徴とする。
この発明においては、少なくとも複数の船舶の対地速度ベクトル、船首方位に関する情報が含まれる運航情報が複数取得され、これらの情報に基づいて海流ベクトル(海流の向き、強さ)が算出される。ここで、特に複数の船舶における運行情報が用いられる。
本発明の請求項2に係る海流推定方法において、前記運航情報には、前記船舶の対地速度が特定された対地速度情報、及び前記船舶の対地方位が特定された対地方位情報が含まれ、前記対地速度及び前記対地方位から求めた前記対地速度ベクトルを用いて前記海流ベクトルを算出することを特徴とする。
この発明においては、各運航情報には、船舶の対地速度(対地速度ベクトルの絶対値)が特定された対地速度情報と、対地方位(対地速度ベクトルの向き)が特定された対地方位情報が含まれる。これによって各運航情報毎に対地速度ベクトルが特定される。
本発明の請求項3に係る海流推定方法は、前記船首方位が特定された船首方位情報、前記対地速度情報、及び前記対地方位情報を船舶自動識別システム(Automatic Identification System:AIS)によって取得することを特徴とする。
この発明においては、船首方位情報、対地速度情報、対地方位情報は、特に大型の船舶に設置が義務づけられているAISによって取得される。
本発明の請求項4に係る海流推定方法において、前記運航情報には、前記運航情報が取得された際の前記船舶の位置が特定された位置情報が含まれ、当該位置情報に基づいて前記海域における前記海流ベクトルを算出することを特徴とする。
この発明においては、船舶の位置に基づいて複数の運航情報が選択されて使用される。例えば、海流を推定すべき海域を航行する2隻以上の船舶、近接して航行する2隻以上の船舶等、が選択され、その海域の海流ベクトルの推定(算出)に使用される。ここで、「複数の運航情報」は、必ずしも複数の船舶におけるものでないことは前記と同様である。
本発明の請求項5に係る海流推定方法において、前記運航情報には、前記運航情報が取得された際の前記船舶の位置が特定された位置情報、及び前記位置情報が取得された時刻が特定された時刻情報が含まれ、前記位置情報及び前記時刻情報に基づいて前記対地速度ベクトルを算出することを特徴とする。
この発明においては、対地速度情報と対地方位情報を用いる代わりに、運航情報における位置情報と時刻情報を用い、船舶の位置の時間変化から、対地速度ベクトルが算出される。
本発明の請求項6に係る海流推定方法は、前記船首方位が特定された船首方位情報、及び前記位置情報を船舶自動識別システム(Automatic Identification System:AIS)によって取得することを特徴とする。
この発明においては、位置情報も船首方位情報と同様に、AISによって取得される。
本発明の請求項7に係る海流推定方法は、前記海流ベクトルの算出に用いる情報を、前記運航情報及び/又は前記運航情報の取得状況に基づいて補正することを特徴とする。
この発明においては、海流ベクトルの算出に用いる情報(運航情報によって得られた対地速度ベクトル、船首方位等や、これら以外に海流ベクトルの算出に用いるパラメータ)が、より高精度に海流ベクトルが算出できるように補正されてから使用される。
本発明の請求項8に係る海流推定方法は、前記海流ベクトルに関する情報をパラメータとし、各前記運航情報毎に運航情報別目的関数を作成し、複数の前記運航情報毎の前記運航情報別目的関数の総和である目的関数を最適化する前記海流ベクトルを算出することを特徴とする。
この発明においては、最適化法によって海流ベクトルが推定される。ここでは、複数の運航情報における対地速度ベクトル、船首方位と海流ベクトルを用いて定義される目的関数の最適値(例えば最小値)を与える海流ベクトルが、推定される海流ベクトルであるとされる。目的関数は、運航情報毎に定義された運航情報別目的関数の総和として表される。
本発明の請求項9に係る海流推定方法は、前記海流ベクトルに関する情報をパラメータとして用い各前記運航情報を用いて運航情報別目的関数を作成し、複数の前記運航情報毎の前記運航情報別目的関数に重み係数を乗じた値の総和である目的関数を最適化する前記海流ベクトルを算出し、前記運航情報毎の前記重み係数の設定によって前記補正を行うことを特徴とする。
この発明においては、前記の補正は、運航情報毎の重み係数の設定によって行われる。
本発明の請求項10に係る海流推定方法は、前記重み係数を、前記運航情報が取得された位置と前記海流を推定する位置との差、前記運航情報が取得された時刻と前記海流を推定する時刻との差、前記運航情報を取得した船舶の種類、あるいは前記運航情報を用いて過去に行われた海流ベクトルの算出結果、のうちの少なくとも1つに基づき設定することを特徴とする。
この発明においては、重み係数の設定は、位置、時刻、船舶の種類、過去の算出履歴に基づいて設定される。これによって、使用される運航情報の優先度が設定される。
本発明の請求項11に係る海流推定システムは、
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の海流推定方法に基づいて海流ベクトルを推定する海流推定システムであって、複数の前記船舶の前記運航情報を取得する情報取得部と、前記取得した前記運航情報を記憶する記憶手段と、前記海域を特定の時刻に航行する複数の前記船舶をリストアップするリストアップ手段と、リストアップされた前記船舶の前記運航情報を前記記憶手段から読み取る読取手段と、読み取られた前記運航情報に基づいて、前記海流ベクトルを算出する海流ベクトル算出部とを具備することを特徴とする。
この発明においては、情報取得部が、複数の船舶の運航情報を入手し、この運行情報は記憶手段に記憶される。これらの船舶のうち、リストアップ手段によって対象となる海域を特定の時刻に航行する船舶がリストアップされ、これに対応する運行情報が記憶手段から読み取られる。海流ベクトル算出部は、このように読み取られた運行情報に基づいて海流ベクトル(海流の向き、強さ)を算出する。
本発明の請求項12に係る海流推定システムにおいて、前記情報取得部は、予め予測された海象情報を取得し、前記海流ベクトル算出部は、推定された前記海流ベクトルを前記海象情報に基づいて補正することを特徴とする。
この発明においては、例えば外部から入手した海象情報によって潮流を認識し、推定された海流ベクトルから、この潮流成分を除いた本来の海流が推定される。
本発明の請求項13に係る海流推定システムにおいて、前記海流ベクトル算出部は、複数の前記海域における前記海流ベクトルを算出することにより、海流分布を推定することを特徴とする。
この発明においては、複数の海域における海流ベクトルを推定することにより、海流分布が推定される。
本発明の請求項14に係る海流推定システムにおいて、前記海流ベクトル算出部は、予め予測された複数の前記海域における海流分布に対して、算出された前記海流ベクトルを同化させ、新たな海流分布を推定することを特徴とする。
この発明においては、計算により予め予測された海流分布が存在する場合に、この海流分布に対して、推定された海流ベクトルのデータを同化させることにより、より高精度の海流分布が算出される。
本発明の請求項15に係る海流推定システムは、推定された前記海流分布を元にして、航路の指示を海上の船舶に対して行う航路指示部を具備することを特徴とする。
この発明においては、航路指示部が、推定された海流分布を元にして算出された最適な航路の指示を行う。
本発明の海流推定方法、海流推定システムは以上のように構成されているので、海流ベクトルを高精度で推定することができる。
ここで、対地速度ベクトルと船首方位は、船舶の運航に関する状況を特定する運航情報によって求めることができるため、船舶の通常の設備と運航情報を利用して海流ベクトルの推定を特に容易に行うことができる。特に、正確な対地速度情報、対地方位情報、船首方位情報は、大型の船舶に搭載が義務付けられているAISによって容易に入手することができる。これにより、特別の運航情報取得手段を用いることなく、上記の算出を高精度かつ容易に行うことができる。
また、位置情報、時刻情報も、対地速度情報及び船首方位情報と共に使用することによって、より高精度で海流ベクトルの算出を行うことができる。この際、位置情報も、AISによって正確な情報を容易に入手することができる。位置情報と時刻情報に基づいて対地速度ベクトルを正確に算出し、これによってより高精度に海流ベクトルを算出することもできる。また、位置情報によって海流ベクトルを得た船舶の航行する海域を特定することができる。
また、運航情報を用いて目的関数を作成し、最適化法によって海流ベクトルを推定することにより、より広範囲のデータを用いることによって、より信頼性の高い海流ベクトルを推定することができる。この際、海流ベクトルを算出すべき位置、時刻等を考慮して運航情報別目的関数の重み付けを設定すれば、位置、時刻等に応じて最も確度の高い海流ベクトルを推定することができる。
また、複数の海域における海流ベクトルを推定し、広域の海流分布も推定することができる。この際、海象情報を用いて、得られた海流分布から潮流成分を除いた本来の海流分布を得ることもできる。
また、予め推定される低精度の海流分布がある場合には、推定された海流ベクトルのデータをこれに同化させ、より高精度の海流分布を得ることができる。こうして推定された海流分布を用いて、最適化された航路の指示を行うこともできる。
本発明の実施の形態に係る海流推定方法(船舶が2隻以下の場合)の原理を説明する図である。 本発明の実施の形態に係る海流推定方法(船舶が3隻の場合)の原理を説明する図である。 本発明の実施の形態に係る海流推定システムの構成の一例を模式的に示す図である。
以下、本発明を実施するための形態となる海流推定システム、海流推定方法について説明する。図1は、この海流推定システムにおいて海流を推定(算出)する方法の原理を説明する図である。まず、ここでは、2隻以下の船舶を用いる場合について説明する。図1(a)は、1隻の船舶1の海上における運航状況を上側から見た図であり、単位時間あたりにおける船舶1の動きを模式的に示している。ただし、図1においては、潮流も海流に含め、全体的な海水の流れを海流と呼称することにする。
ここで、海流がない場合には、船舶1は常にその船首方位(船首の向く方向)に沿って対水速度(水面に対する速度)ベクトルVをもって進行し、実際の船舶1の速度(対地速度:絶対座標(地上)に対する速度)ベクトルVは、対水速度ベクトルVと等しくなることは明らかである。しかしながら、海流ベクトルVが零でない場合には、対地速度ベクトルVは、対水速度ベクトルVと海流ベクトルVの和となる。この際、特に船首方位と垂直な成分をもつ海流ベクトルVが存在した場合には、図1(a)に示されるように、船舶1の船首方位は実際の進行方向とずれる。ここで、船舶1自身に搭載されたGPS信号を用いた機器により、船舶1自身の位置情報は高精度で認識することができ、この位置情報の時間変化によって、対地速度ベクトルV(実際の速度の向き、絶対値)も高精度で検出することが可能である。ここで、対地速度ベクトルVを検出することは、対地速度ベクトルVの絶対値と、その向きである対地方位が検出されることを意味する。対地方位は、図1(a)に示されるように、例えば北方向を基準とした時計回りの角度θとして定義される。また、船舶1の船首方位も、同様に角度θとして定義すれば、同様に高精度で認識することができる。船首方位θは、対水速度ベクトルVの向となる。なお、以下の説明においては、対地速度ベクトルの絶対値を対地速度、対地速度ベクトルの向き(θ)を対地方位、対水速度ベクトルの絶対値を対水速度と呼称する。海流ベクトルVが零の場合(海流が存在しない場合)には、対地速度と対水速度は等しく、対地方位と船首方位は等しくなる。
ここで、図1(a)より、対水速度ベクトルVも既知となれば、対地速度ベクトルVとの差分によって海流ベクトルVを算出することができる。これに対して、船舶に装着した流速計等を用いて対水速度ベクトルVを検出することは不可能ではない。しかしながら、GPS信号等を用いて自己の位置を認識し、その時間変化より正確に認識される対地速度ベクトルVと異なり、対水速度ベクトルVを測定するための基準となるのは海水であるため、これを対地速度ベクトルVと同程度に高精度で検出することは困難である。このため、前記の通り、対水速度ベクトルVについては、その方向のみがVと同様に船首方位θとして高精度で認識され、その絶対値VW0を高精度で検出することは困難である。
この場合、図1(b)において、船首方位θと対地速度ベクトルVが正確に定まっても、海流ベクトルVの始点(対水速度ベクトルVの終点)が定まらないため、海流ベクトルVを一義的に求めることができない。例えば、図1(b)においては、ベクトルVC1、VCP、VC2のいずれもが海流ベクトルVの候補となる。ここで、ベクトルVCPは船首方向(対水速度ベクトルV)と垂直である。この結果より、船首方向と垂直な方向の海流ベクトルVの成分は、ベクトルVC1、VC2においてもベクトルVCPとなることは明らかである。すなわち、船舶1の対地速度ベクトルVと船首方位θが認識できた場合、海流ベクトルVの向き、絶対値を正確に算出することは困難であるが、海流ベクトルVの船首方位と垂直な方向成分は一義的に算出することができる。船舶の操舵においては、海流ベクトルVの船首方位と垂直な成分が特に大きな影響を与えることは明らかである。このため、対水速度ベクトルVを用いずに、船舶1の対地速度ベクトルVと船首方位θのみを用い、図1(b)の作図を行うことによってVCPを算出する上記の方法は有効である。
対水速度ベクトルVの方向(船首方位)のみが既知でありその絶対値(対水速度)が不明である場合、海流ベクトルVの他成分、例えば船首方位における成分を算出することは不可能であり、海流ベクトルVの向き、絶対値を一義的に求めることは不可能である。しかしながら、対地速度ベクトルVS1、船首方位θW1である船舶1の他に、船舶2(対地速度ベクトルVS2、船首方位θW2)が航行しており、その対地速度ベクトルVS2、船首方位θW2が正確に検出され、かつ海流ベクトルVが船舶1、2に対して共通である場合には、船舶1、2の対水速度ベクトルVW1、VW2の絶対値が不明であっても、図1(c)に示されるように、海流ベクトルVは一義的に定まる。例えば、船舶1と船舶2の距離が近接していれば、これらの間で海流ベクトルVは共通と考えることができる。この場合には海流ベクトルV(海流の向き、強度)を正確に算出することができる。あるいは、船舶1、2が離間していても、これらが航行する海域において海流ベクトルVが等しいと考えられる場合にも、同様である。
具体的には、この算出方法は、以下の通りとなる。ここで、図1(a)に示されるようにx、y軸をとり、対水速度ベクトルVを(VWx、VWy)とすると、これは、対水速度をVW0として、VW0×(cosθ、sinθ)と書ける。ここで、VW0が不定であり、θは既知となる。対地速度ベクトルVを(VSx、VSy)とすると、これも既知となる。算出すべき海流ベクトルVを(VCx、VCy)とすると、これらの間には、(1)(2)式が成立する。
Figure 0006300344
ここで、(1)(2)式より、不定であるVW0を消去すると、(3)式が得られる。
Figure 0006300344
船舶1、2の各々について(3)式が成立し、VCx、VCyは両者に共通であると仮定すると、船舶1、2についてのVSx、VSy、θについては添字1、2を付して、(4)式が成立する。
Figure 0006300344
これにより、海流ベクトルV=(VCx、VCy)は(5)式によって算出される。
Figure 0006300344
このため、θW1≠θW2の場合、すなわち、船舶1と船舶2の船首方位が異なる場合には、(VCx、VCy)を算出することができる。北方向を基準とした海流の方位(θ、θと同様に定義)はtan−1(VCx/VCy)であり、海流の絶対値(強さ)は(VCx +VCy 1/2となる。
上記の通り、海流ベクトルVの算出に必要なのは、各船舶の対地速度ベクトルV(VSx、VSy)と、船首方位θである。対地速度ベクトルVの算出に必要なのは、対地速度が特定された対地速度情報と、対地方位θが特定された対地方位情報である。更に、船首方位θが特定された船首方位情報が必要となる。前記の通り、自船におけるこれらの情報は、GPS等を用いて得ることができる。
一方、「1974年の海上における人命の安全に関する条約(SOLAS74)」によって、大型の船舶、例えば国際航海に従事する300総トン以上の船舶には、船舶自動識別システム(Auto Identification System:AIS)搭載が義務付けられている。AISによれば、船舶は、自船に関するAIS情報をVHF帯の電波で発信する義務が発生し、他船のAIS情報も受信して入手することができる。これにより、船舶の航行の安全を図ることができる。AISの詳細についての詳細は、例えばhttp://www6.kaiho.mlit.go.jp/osakawan/others/ais/ais.htm等に記載されている。AIS情報のうち、船舶の状態を示す動的情報としては、船舶の位置情報、時刻(世界標準時)、対地方位(対地針路)、対地速度、船首方位、回頭率(船首方位の時間変化率)等がある。
このため、前記の対地速度情報、対地方位情報、船首方位情報は、AIS情報に含まれる。対地速度ベクトルVは、AIS情報における対地速度、対地方位から求まる。あるいは、AIS情報における位置情報の時間変化から、対地速度ベクトルを算出することもできる。すなわち、対地速度ベクトルVをAIS情報から一義的に算出することができる。このため、AISを搭載した船舶であれば、自船の対地速度ベクトルV、船首方位θを認識することができる。これにより、海流ベクトルVの船首方位と垂直な成分(VCP)を算出することが可能となる。
また、AISを搭載した船舶は、他船のAIS情報(対地速度情報、対地方位情報、船首方位情報)を受信することもできる。このため、この船舶は、図1(c)における対地速度ベクトルVS1(2)、船首方向θW1(2)を同様に認識することができる。更に、AISの受信機能をもつ地上局においても、AISを搭載する複数の船舶におけるこれらの情報を認識することができる。このため、海流ベクトルVの算出を、船舶上、地上局のどちらにおいても行うことができる。
なお、上記の計算では、図1(c)に示されるように、2隻の船舶1、2における対地速度ベクトル、船首方位情報が使用された。ここで、船舶1、2は異なる船舶である必要はなく、例えばある時間内において1隻の船舶が船首方位を変えて航行し、この時間内にこの船舶が航行した海域における海流ベクトルVが変わらない場合には、この船舶における異なる時刻あるいは位置における対地速度ベクトル、船首方位情報を上記の2隻の対地速度ベクトル、船首方位情報の代わりに用いることもできる。
上記の算出において使用する情報は、AIS情報に限定されない。例えば、海運企業毎の船舶の運行状況をモニターした情報であり、その中に対地速度情報、対地方位情報、船首方位情報が含まれるものであれば、同様に用いることができることは明らかである。また、例えば、1隻の船舶における異なる複数の時刻の情報を用いることもできる。すなわち、上記の算出を行うためには、船舶の対地速度情報、対地方位情報、船首方位情報が含まれる任意の運航情報(海上の船舶の運航に関する状況が特定された情報)を複数用いることができる。1隻の船舶における異なる複数の時刻の情報の場合には、この運航情報は、AIS情報のように、船舶から外部に発信された情報である必要もない。
上記においては、船舶が2隻(あるいは運航情報が2つ)あり、それぞれの海域における海流ベクトルVが厳密に等しいものとしたために、海流ベクトルVを一義的に算出することができた。しかしながら、実際には、両者の海域間で海流ベクトルVは厳密には等しくない場合も多い。こうした場合には、3隻以上の船舶のデータ(3つ以上の運航情報)を用い、最も確度の高い海流ベクトルを推定することができる。また、2隻の船舶(2つの運航情報)を用いた場合には上記の通り海流ベクトルVは一義的に定まるものの、算出に利用されるVS1(2)、θW1(2)の測定誤差に起因した誤差が発生する。このような誤差を低減し、推定される海流ベクトルVの確度を高くするためには、これより多くの船舶(運航情報)のデータを用いる方が好ましいことは明らかである。この場合における海流ベクトルVの算出方法(推定方法)について以下に説明する。
まず、海流ベクトルVが船舶1、2、3の3隻について厳密に同一となっている場合には、図1(c)と同様の関係が船舶1、2、3のうちの任意の2隻間で成立するため、上記の各ベクトルの関係は図2(a)に示される通りとなる。この図においては、各々の対水速度ベクトルVの終点、あるいは各船舶の船首方位を向く直線(対水速度ベクトルVの方向)の交点が点Cで一致すると共に、各々の対地速度ベクトルVの終点は点Cで一致する。図2(a)においては、海流ベクトルVは、点Cを始点、点Cを終点とするベクトルとなり一義的に定まる。
しかしながら、厳密には図2(a)の関係が成立していない場合には、図2(b)に示されるように、海流ベクトルVの終点となる点C(x、x)を定めた場合に、各船舶の船首方位を向く直線は共通の交点をもたない。このため、海流ベクトルVの始点となるべきCの位置を定めることができず、海流ベクトルVを厳密に算出することができない。この場合には、最適化法として知られるように、海流ベクトルVの始点とすべき点P(x、y)におけるx、yを、ある目的関数が最小値をとるような値として決定することができる。
この最適化において、図2(c)に示されるように、点Pは、船舶1の対水速度ベクトルVW1に対応する直線L、船舶2の対水速度ベクトルVW2に対応する直線L、船舶3の対水速度ベクトルVW3に対応する直線Lとの間の距離(それぞれh、h、hとする)がいずれも短くなる点として定義することができる。図2(c)に示されるように、この点Pは、直線L、L、Lで囲まれる3角形の中に存在する。
推定される海流ベクトルVの始点となる点Pの座標(x、y)としては、例えば、点Pと各直線L、L、Lとの間の距離の2乗和を目的関数とし、この値が最小となるように設定することができる。直線Lがax+by=1で示される場合に、点P(x、y)と直線Lとの間の距離hは、(6)式で与えられる。ここで、点Pと直線Lとの間の距離とは、直線Lと直交し点Pを通る直線と直線Lとの交点と点Pとの間の距離である。
Figure 0006300344
このため、点Pから各直線Lまでの距離hをhとし、hの2乗を運航情報別目的関数とし、最小とすべき目的関数fを、運航情報別目的関数h の総和(h +h +h )とすることができる。この場合、直線L(i=1、2、3)がax+by=1で表されるものとして、目的関数fは(7)式で与えられる。ここで、各船舶の対地速度ベクトルVS1、VS2、VS3は既知であるために、図2(b)における各船舶の位置は、対地速度ベクトルVS1、VS2、VS3の終点が1点Cとなるようにして定まる。また、各船舶の船首方位θW1、θW2、θW3も既知であるため、直線Lが船舶iの位置を通りこの船首方位θを向く直線となるように、a、b(i=1、2、3)は一義的に定まる。
Figure 0006300344
目的関数fを最小化するx、yは、∂f/∂x=0、∂f/∂y=0として定まる。その結果、Pの座標x、yは、(8)、(9)式で与えられる。ここで、A、B、C、D、Eは(10)〜(14)式で与えられる。すなわち、これによってx、yを算出することができ、推定される海流ベクトルVは、点Pから点Cに向かうベクトルと推定されるため、(VCx、VCy)=(x−x、y−y)となる。
Figure 0006300344
すなわち、この計算においては、海流ベクトルVに関する情報であるx、yをパラメータとし、使用した運航情報(対地速度情報、対地方位情報、船首方位情報)毎に運航情報別目的関数を算出し、その総和として目的関数を定義し、海流ベクトルVは、この目的関数を最適化(上記の場合には最小化)するものとして算出(推定)される。
図2の例では、船舶が3隻の場合について記載したが、船舶が4隻以上、あるいは3つ以上の運航情報を用いる場合でも、同様に海流ベクトルVを算出することができることは明らかである。
上記の式(1)〜(14)を用いて海流ベクトルVを算出する場合においては、運航情報(対地速度情報、対地方位情報、船首方位情報)で特定された対地速度ベクトル、船首方位を用いて海流ベクトルVを算出した。しかしながら、海流ベクトルVをより高精度に算出するために、運航情報で特定された対地速度ベクトル、船首方位を補正し、これらを用いて海流ベクトルVを算出することもできる。また、この補正は、対地速度ベクトル、船首方位に対してだけでなく、海流ベクトルVの算出に用いる他の情報(例えば運航情報別目的関数に関する情報)についても行うことができる。
例えば、対地速度情報、船首方位情報は、一定の時間間隔で取得される場合が多く、この時間間隔は、船舶毎に異なる場合もある。このため、複数の船舶のデータを用いる場合には、全ての船舶において、海流ベクトルを推定すべきある定まった時刻の対地速度情報、船首方位情報が存在するとは限らない。こうした場合には、各船舶のAIS情報における時刻情報を元にして、同一時刻のデータとなるように補正された対地速度ベクトル、船首方位等を上記の計算に用いることができる。この補正においては、例えば、海流ベクトルを推定すべき時刻と異なる時刻において取得された対地速度ベクトル、船首方位等のデータを内挿、又は外挿すること等によって、新たに対地速度ベクトル、船首方位等のデータを作成する。この新たなデータを、海流ベクトルを推定すべき時刻におけるデータとして扱うことができる。船首方位については、AIS情報における回頭率のデータを用いることもできる。
また、例えば、船舶1が船舶2と船舶3の中間付近の海域を航行しており、船舶2と船舶3の船首方位θW2、θW3がほぼ同一であり、船舶1の船首方位θW1はこれとは異なる場合について考える。この場合には、船舶2の対地速度ベクトルVS2と船舶3の対地速度ベクトルVS3を内挿することにより、仮に船舶1と同一の海域を船首方位θW3(θW2)で航行した場合における対地速度ベクトルVS23を算出することができる。この場合には、船舶1が航行する海域における海流ベクトルVを算出するためには、この内挿された対地速度ベクトルVS23、船首方位θW3(θW2)と、船舶1において実測された対地速度ベクトルVS1、船首方位θW1を用いて、海流ベクトルVの算出を行うことができる。すなわち、時刻情報に基づいて対地速度ベクトルVを補正するだけでなく、位置情報に基づいて補正した対地速度ベクトルVを使用することにより、より正確に海流ベクトルVを推定することも可能となる。あるいは、時刻情報、位置情報の両方に基づいて補正した対地速度ベクトルV、船首方位θを用いてもよい。
以上の2つの例においては、より高精度に海流ベクトルVを算出するために対地速度ベクトルV、船首方位θが補正された。これに対して、運航情報別目的関数に関する情報を補正する場合について以下に説明する。
目的関数f((7)式)を用いた上記の例では、各船舶毎に運航情報別目的関数h を算出し、その総和を目的関数fとした。この際、例えば、船舶1と船舶2は海流ベクトルVを算出すべき海域の近傍で航行しており、船舶3はこの海域からやや離れた海域にいる場合もある。こうした場合には、各船舶によるデータに重み付けをし、船舶3によるデータ(h)の重み付けを船舶1、2によるデータ(h、h)よりも低くすることが好ましい。具体的には、船舶iの重み係数をwとして、(7)式の目的関数fの代わりに、(15)式で定められる目的関数gを最小とするようにx、yを定めればよい。この例の場合には、w、w>>wとすればよい。前記の目的関数f((7)式)は、w≡1(i=1、2、3)とし、運航情報別の重み付けを行わなかった場合に相当し、この重み係数の設定が、運航情報別目的関数に関する情報の補正に相当する。
Figure 0006300344
この場合には、上記のA〜Eは、(10)〜(14)式の代わりに下記の(16)〜(20)式で与えられるA〜Eを用い、x、yは、上記と同様に、(8)(9)式で与えられる。
Figure 0006300344
重み係数wの設定として、例えば本来の海流ベクトルVを算出したい海域に近い位置にいる船舶について大きな値、この海域から遠い位置にいる船舶について小さな値となるように、海流ベクトルVを算出したい海域からの船舶の距離の関数としてwを設定することができる。すなわち、この重み係数wも、船舶iのAIS情報(位置情報)から定めることができる。
同様に、本来の海流ベクトルVを算出すべき時刻に近い時刻に取得された対地速度情報、船首方位情報をもつ運航情報について大きな値、海流ベクトルVを算出すべき時刻から離れた時刻のデータをもつ運航情報について小さな値となるように、wをこの時間差の関数とすることもできる。前記の通り、各船舶の位置情報、対地速度情報、船首方位情報が取得された時刻に関する情報(時刻情報)は、AIS情報から読みとることができるため、この設定も、AIS情報を元にして行うことができる。あるいは、重み係数wを、位置、時刻の両方の関数として設定することもできる。あるいは、運航情報における回頭率によってwを設定する、例えば回頭率が大きな場合には、船舶の運航に海流の影響が出にくいと判断してwを小さくすることができる。運航情報に対応した船舶の種類によってwを設定する、例えば風の影響を受けやすい船舶のデータは信憑性が低いと判断してwを小さくすることができる。また、同じ運航情報を用いた過去の計算結果の履歴を元にwを設定する、例えば過去の計算において図2(c)のhiが大きくなった運航情報に対しても、wを小さくすることができる。このように、海流に関するデータとしての信憑性が低いと判断されるデータに対しては重み係数wを小さく設定することにより、海流ベクトルVの算出の精度を高めることができる。
また、例えば2隻の船舶のデータが用いられ、この2隻によるデータの数が大きく異なる場合、データの数が多い方の船舶のデータの重み係数wを小さくすることにより、2隻の船舶のデータを実質的に対等に扱う、等の処理を行うこともできる。
すなわち、重み係数の設定は、運航情報が取得された位置と海流を推定する海域の位置との差、運航情報が取得された時刻と海流を推定する時刻との差、単一の船舶において取得され用いられた運航情報の数、等に基づいて行うことができる。他の基準によってこの設定をすることもできる。また、前記の例のように補正された対地速度ベクトル等を用い、更にこの重み係数の設定を行うこともできる。
上記の通りに海流ベクトルVを算出(推定)する海流推定システム全体の構成について図3に示す。図3においては、船舶1〜5が海流100に乗って航行している。各船舶はAISを搭載しており、船舶1〜5の各々は、自船のAIS情報を発信する。このAIS情報は、他船、あるいは地上にある情報取得部10のアンテナ11で受信することができる。情報取得部10は、受信したAIS情報を、サーバ(海流ベクトル算出部)20にネットワーク等を介して送信する。サーバ20は、受信したAIS情報を記憶装置21にデータベースとして記憶し、これを用いて上記の計算を行う。航路指示部22は、最適な航路の指示を船舶1〜5に対して行う。なお、情報取得部(AIS情報取得部)10に接続されたアンテナ11と、サーバ(海流ベクトル算出部)20に接続されたアンテナ11とでは、通信容量、通信に使用される波長や信号方式等に応じ、それぞれにおいて最適なものを用いることができる。この点については、船舶1〜5において用いられるアンテナについても同様である。
例えば、サーバ20は、ある特定の海域近辺を特定の時刻近くに航行する船舶をリストアップし、そのAIS情報を記憶装置21から読み取り、この海域のこの時刻における海流ベクトルVを推定することができる。この時刻として最新(現在)の時刻を設定することによって、最新の海流情報を推定することができ、これを各船舶に発信することができる。
また、この操作を複数の海域、複数の時刻において行うことにより、現在までの海流の時間変化も推定することができる。これにより、今後の海流を予測することも可能となる。
また、サーバ20は、海流ベクトルVを推定する際に用いる対地速度ベクトル、船首方位に関する前記の位置情報、時刻情報等に基づいた補正も行うことができる。
図3の構成においては、サーバ(海流ベクトル算出部)20、記憶装置21を各船舶とは別に地上に設置し、このために情報取得部10も地上に設置するものとした。しかしながら、これらは通常使用されるコンピュータを用いて構成することができ、単純な構成であるため、これらを各船舶に搭載することも可能である。この場合には、自船のAISは、自船のAIS情報を取得するための情報取得部として機能する。他船のAIS情報は、情報取得部10が入手し、上記の処理を行うことができる。ここで算出された海流ベクトルに関する情報を、他船、あるいは地上に向かって発信することも可能である。
この際、サーバ20は、単なる海流ベクトルの推定(算出)だけでなく、この結果を用いた各種の処理も行うことができる。まず、前記の通り、海水の流れには、潮汐作用によって生ずる潮流と、潮流とは異なる原因で地球規模において発生する海流(本来の海流)があり、ここで測定された海流ベクトルは、本来の海流に潮流が加わった流れである。ここで、潮流は周期的であり予測が容易であるために、潮流に関するデータは、海象情報として外部から入手することが可能であり、このデータは予め記憶装置21に記憶させておくことができる。この場合、この潮流のデータを用いて前記の海流ベクトルを補正し、本来の海流に対応するベクトルを算出することができる。
また、海上の複数の海域における海流を推定することにより、広域における海流の分布を推定することができる。時刻毎に推定された海流の分布をデータベース化して記憶装置21に記憶させ、かつ各船舶にもこれを発信することができる。各船舶は常時AIS情報を発信しているために、更新されたAIS情報をサーバ20が受信することにより、こうして推定された海流分布を更新して記憶装置21に記憶させることができる。この際、海象情報を元にして潮流がない場合に対応して算出された本来の海流分布を記憶装置21に記憶すれば、本来の海流分布の時間変化も容易に追跡することができる。
この際、予め算出された低精度の海流分布のデータがある場合、これを記憶装置21が記憶し、上記の海流推定方法によって推定された海流ベクトルをこの海流分布に同化させ、より高精度の海流分布を推定すること(データ同化)もできる。こうした同化方法は、例えば、特開2010−223639号公報に記載されている。こうした同化処理をサーバ20が記憶装置21を用いて行うことも可能であり、この高精度とされた海流分布に関する情報をサーバ20が外部に発信することもできる。
また、サーバ20が船舶の航路上の海流分布を推定できれば、これに基づいた船舶の最適航路を算出することもできる。この場合、例えば、対水速度の絶対値VW0を定めた場合に、図1(a)における対地速度ベクトルVが目的地まで最短距離を結ぶように船首方位θを設定することができる。これにより、同じVW0の場合に航行距離を最も短くし、船舶の燃料消費を低減することが可能となる。すなわち、サーバ20は、船舶の航行に関する指示も行うことができる。図3における航路指示部22は、このように推定された前記海流分布を元にして、最適な航路の指示を海上の船舶1〜5に対して行う。なお、最適な航路指示は、海流ベクトルVの算出に当っての運航情報の提供に係わらない任意の船舶を含めて行うことができる。
上記の通り、上記の海流推定システム、海流推定方法は、海上の船舶を用いて海水の流れを推定するために用いられるが、例えば、広い湖沼や河川等においても、同様にその流れを推定することができることは明らかである。また、船舶としても、AISを搭載する大型船だけでなく、小型の模型船舶等を用いても同様の測定(推定)ができることは明らかである。
1〜5 船舶
10 情報取得部
11 アンテナ
20 サーバ(海流ベクトル算出部)
21 記憶装置
22 航路指示部
100 海流
θ、θW1、θW2 船首方位
、VS1、VS2 対地速度ベクトル
海流ベクトル

Claims (15)

  1. 海上の船舶の運航に関する状況が特定された運航情報を複数用いることによって海流の向き及び強さを示す海流ベクトルを推定する海流推定方法であって、
    前記運航情報として海流を推定する海域を通る複数の前記船舶の個船毎の対地速度ベクトル及び前記船舶の船首方位を取得し個船毎の前記対地速度ベクトル及び前記船首方位に基づいて複数の前記船舶の航行する前記海域における前記海流ベクトルを算出するとともに、前記運航情報を取得する複数の前記船舶の隻数を増すことにより前記海流ベクトルの推定確度を上げることを特徴とする海流推定方法。
  2. 前記運航情報には、前記船舶の対地速度が特定された対地速度情報、及び前記船舶の対地方位が特定された対地方位情報が含まれ、前記対地速度及び前記対地方位から求めた前記対地速度ベクトルを用いて前記海流ベクトルを算出することを特徴とする請求項1に記載の海流推定方法。
  3. 前記船首方位が特定された船首方位情報、前記対地速度情報、及び前記対地方位情報を船舶自動識別システム(Automatic Identification System:AIS)によって取得することを特徴とする請求項2に記載の海流推定方法。
  4. 前記運航情報には、前記運航情報が取得された際の前記船舶の位置が特定された位置情報が含まれ、当該位置情報に基づいて前記海域における前記海流ベクトルを算出することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の海流推定方法。
  5. 前記運航情報には、前記運航情報が取得された際の前記船舶の位置が特定された位置情報、及び前記位置情報が取得された時刻が特定された時刻情報が含まれ、前記位置情報及び前記時刻情報に基づいて前記対地速度ベクトルを算出することを特徴とする請求項1に記載の海流推定方法。
  6. 前記船首方位が特定された船首方位情報、及び前記位置情報を船舶自動識別システム(Automatic Identification System:AIS)によって取得することを特徴とする請求項5に記載の海流推定方法。
  7. 前記海流ベクトルの算出に用いる情報を、前記運航情報及び/又は前記運航情報の取得状況に基づいて補正することを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の海流推定方法。
  8. 前記海流ベクトルに関する情報をパラメータとし、各前記運航情報毎に運航情報別目的関数を作成し、
    複数の前記運航情報毎の前記運航情報別目的関数の総和である目的関数を最適化する前記海流ベクトルを算出することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の海流推定方法。
  9. 前記海流ベクトルに関する情報をパラメータとして用い各前記運航情報を用いて運航情報別目的関数を作成し、
    複数の前記運航情報毎の前記運航情報別目的関数に重み係数を乗じた値の総和である目的関数を最適化する前記海流ベクトルを算出し、前記運航情報毎の前記重み係数の設定によって前記補正を行うことを特徴とする請求項7に記載の海流推定方法。
  10. 前記重み係数を、前記運航情報が取得された位置と前記海流を推定する位置との差、前記運航情報が取得された時刻と前記海流を推定する時刻との差、前記運航情報を取得した船舶の種類、あるいは前記運航情報を用いて過去に行われた海流ベクトルの算出結果、のうちの少なくとも1つに基づき設定することを特徴とする請求項9に記載の海流推定方法。
  11. 請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の海流推定方法に基づいて海流ベクトルを推定する海流推定システムであって、複数の前記船舶の前記運航情報を取得する情報取得部と、前記取得した前記運航情報を記憶する記憶手段と、前記海域を特定の時刻に航行する複数の前記船舶をリストアップするリストアップ手段と、リストアップされた前記船舶の前記運航情報を前記記憶手段から読み取る読取手段と、読み取られた前記運航情報に基づいて、前記海流ベクトルを算出する海流ベクトル算出部とを具備することを特徴とする海流推定システム。
  12. 前記情報取得部は、予め予測された海象情報を取得し、前記海流ベクトル算出部は、推定された前記海流ベクトルを前記海象情報に基づいて補正することを特徴とする請求項11に記載の海流推定システム。
  13. 前記海流ベクトル算出部は、複数の前記海域における前記海流ベクトルを算出することにより、海流分布を推定することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の海流推定システム。
  14. 前記海流ベクトル算出部は、予め予測された複数の前記海域における海流分布に対して、算出された前記海流ベクトルを同化させ、新たな海流分布を推定することを特徴とする請求項13に記載の海流推定システム。
  15. 推定された前記海流分布を元にして、航路の指示を海上の船舶に対して行う航路指示部を具備することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の海流推定システム。
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