JP6299610B2 - 粉末冶金用金属粉末、コンパウンド、造粒粉末および焼結体 - Google Patents

粉末冶金用金属粉末、コンパウンド、造粒粉末および焼結体 Download PDF

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Description

本発明は、粉末冶金用金属粉末、コンパウンド、造粒粉末および焼結体に関するもので
ある。
粉末冶金法では、金属粉末とバインダーとを含む組成物を、所望の形状に成形して成形
体を得た後、成形体を脱脂・焼結することにより、焼結体を製造する。このような焼結体
の製造過程では、金属粉末の粒子同士の間で原子の拡散現象が生じ、これにより成形体が
徐々に緻密化することによって焼結に至る。
例えば、特許文献1には、ZrおよびSiを含み、残部がFe、CoおよびNiからな
る群から選択される少なくとも1種と不可避元素とで構成された粉末冶金用金属粉末が提
案されている。このような粉末冶金用金属粉末によれば、Zrの作用によって焼結性が向
上し、高密度の焼結体を容易に製造することができる。
また、例えば、特許文献2には、C0.03重量%以下、Ni8〜32重量%、Cr1
2〜32重量%、Mo1〜7重量%、残部がFeおよび不可避不純物からなるステンレス
鋼粉100重量部と、平均粒径10〜60μmのTiまたは/およびNbからなる粉の1
種以上の0.1〜5.5重量部と、からなることを特徴とする金属射出成形用組成物が開
示されている。このような2種類の粉末を混合した組成物を用いることにより、焼結密度
が高く、優れた耐食性を有する焼結体が得られる。
さらに、例えば、特許文献3には、C:0.95〜1.4質量%、Si:1.0質量%
以下、Mn:1.0質量%以下、Cr:16〜18質量%、Nb:0.02〜3質量%を
含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成であり、焼結後の密度が7.65〜
7.75g/cmであり、金属射出成形法により成形されてなることを特徴とするニー
ドルバルブ用ニードルシールが開示されている。これにより、高密度のニードルシールが
得られる。
このようにして得られた焼結体は、近年、各種機械部品や構造部品等に幅広く用いられ
るようになってきている。
ところが、焼結体の用途によっては、さらなる緻密化が必要とされている場合もある。
このような場合、焼結体に対してさらに熱間等方加圧処理(HIP処理)のような追加処
理を行うことで高密度化を図っているが、作業工数が大幅に増加するとともに高コスト化
を免れない。
そこで、追加処理等を施すことなく、高密度の焼結体を製造可能な金属粉末の実現に期
待が高まっている。
特開2012−87416号公報 特開平6−279913号公報 特開2007−177675号公報
本発明の目的は、高密度の焼結体を製造可能な粉末冶金用金属粉末、コンパウンドおよ
び造粒粉末、ならびに前記粉末冶金用金属粉末を用いて製造された高密度の焼結体を提供
することにある。
上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の粉末冶金用金属粉末は、Feが主成分であり、
Crが2質量%以上6質量%以下の割合で含まれ、
Siが0.2質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、
Cが0.5質量%以上2質量%以下の割合で含まれ、
Wが0.5質量%以上20質量%以下の割合で含まれ、
Vが0.5質量%以上6質量%以下の割合で含まれ、
Ti、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
前記第1元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、
前記第2元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする。
本発明の粉末冶金用金属粉末は、Feが主成分であり、
Crが3質量%以上5質量%以下の割合で含まれ、
Siが0.4質量%以上1質量%以下の割合で含まれ、
Cが0.75質量%以上1.75質量%以下の割合で含まれ、
Wが1質量%以上10質量%以下の割合で含まれ、
Vが1質量%以上4.5質量%以下の割合で含まれ、
Ti、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
前記第1元素が0.03質量%以上0.2質量%以下の割合で含まれ、
前記第2元素が0.03質量%以上0.2質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする。
本発明の粉末冶金用金属粉末は、Feが主成分であり、
Crが3.5質量%以上4.5質量%以下の割合で含まれ、
Siが0.6質量%以上0.8質量%以下の割合で含まれ、
Cが1質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、
Wが5質量%以上7質量%以下の割合で含まれ、
Vが2質量%以上3.5質量%以下の割合で含まれ、
Ti、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
前記第1元素が0.05質量%以上0.1質量%以下の割合で含まれ、
前記第2元素が0.05質量%以上0.1質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする。
これにより、合金組成の最適化が図られ、粉末冶金用金属粉末の焼結時の緻密化を促進
することができる。その結果、追加処理を施すことなく、高密度の焼結体を製造可能な粉
末冶金用金属粉末が得られる。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、前記第2元素の含有率E2を前記第2元素の原子量で除した値X2に対する前記第1元素の含有率E1を前記第1元素の原子量で除した値X1の比率X1/X2は、0.3以上3以下であることが好ましい。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、前記第2元素の含有率E2を前記第2元素の原子量で除した値X2に対する前記第1元素の含有率E1を前記第1元素の原子量で除した値X1の比率X1/X2は、0.5以上2以下であることが好ましい。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、前記第2元素の含有率E2を前記第2元素の原子量で除した値X2に対する前記第1元素の含有率E1を前記第1元素の原子量で除した値X1の比率X1/X2は、0.75以上1.3以下であることが好ましい。
これにより、粉末冶金用金属粉末が焼成されたとき、第1元素の炭化物等の析出と第2
元素の炭化物等の析出のタイミングのずれを最適化することができる。その結果、成形体
中に残存する空孔を内側から順次掃き出すようにして排出することができるので、焼結体
中に生じる空孔を最小限に抑えることができる。したがって、高密度で焼結体特性に優れ
た焼結体を製造可能な粉末冶金用金属粉末が得られる。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、前記第1元素の含有率と前記第2元素の含有率の合計が0.05質量%以上0.6質量%以下であることが好ましい。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、前記第1元素の含有率と前記第2元素の含有率の合計が0.1質量%以上0.48質量%以下であることが好ましい。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、前記第1元素の含有率と前記第2元素の含有率の合計が0.12質量%以上0.24質量%以下であることが好ましい。
これにより、製造される焼結体の高密度化が必要かつ十分なものとなる。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、さらに、Moが2質量%以上11質量%以下の割合で含まれていることが好ましい。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、さらに、Moが3質量%以上9質量%以下の割合で含まれていることが好ましい。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、さらに、Moが4質量%以上6.5質量%以下の割合で含まれていることが好ましい。
これにより、製造される焼結体の密度の大幅な低下を招くことなく、焼結体の靭性をよ
り強化することができる。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、さらに、Coが3質量%以上12質量%以下の割合で含まれていることが好ましい。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、さらに、Coが4.5質量%以上10.5質量%以下の割合で含まれていることが好ましい。
これにより、製造される焼結体の密度の大幅な低下を招くことなく、焼結体の耐熱性を
より強化することができる。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、平均粒径が0.5μm以上30μm以下であること
が好ましい。
これにより、焼結体中に残存する空孔が極めて少なくなるため、特に高密度で機械的特
性に優れた焼結体を製造することができる。
本発明のコンパウンドは、本発明の粉末冶金用金属粉末と、前記粉末冶金用金属粉末の
粒子同士を結着するバインダーと、を含むことを特徴とする。
これにより、高密度の焼結体を製造可能なコンパウンドが得られる。
本発明の造粒粉末は、本発明の粉末冶金用金属粉末を造粒してなることを特徴とする。
これにより、高密度の焼結体を製造可能な造粒粉末が得られる。
本発明の焼結体は、Feが主成分であり、
Crが2質量%以上6質量%以下の割合で含まれ、
Siが0.2質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、
Cが0.5質量%以上2質量%以下の割合で含まれ、
Wが0.5質量%以上20質量%以下の割合で含まれ、
Vが0.5質量%以上6質量%以下の割合で含まれ、
Ti、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
前記第1元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、
前記第2元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれている粉末冶金用金属粉末を焼結して製造されたことを特徴とする。
本発明の焼結体は、Feが主成分であり、
Crが2質量%以上6質量%以下の割合で含まれ、
Siが0.2質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、
Cが0.5質量%以上2質量%以下の割合で含まれ、
Wが0.5質量%以上20質量%以下の割合で含まれ、
Vが0.5質量%以上6質量%以下の割合で含まれ、
Ti、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
前記第1元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、
前記第2元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする。
これにより、追加処理を施すことなく、高密度の焼結体が得られる。
以下、本発明の粉末冶金用金属粉末、コンパウンド、造粒粉末および焼結体について詳
細に説明する。
[粉末冶金用金属粉末]
まず、本発明の粉末冶金用金属粉末について説明する。
粉末冶金では、粉末冶金用金属粉末とバインダーとを含む組成物を、所望の形状に成形
した後、脱脂・焼結することにより、所望の形状の焼結体を得ることができる。このよう
な粉末冶金技術によれば、その他の冶金技術に比べ、複雑で微細な形状の焼結体をニアネ
ット(最終形状に近い形状)で製造することができるという利点を有する。
粉末冶金に用いられる粉末冶金用金属粉末としては、従来、その組成を適宜変えること
により、製造される焼結体の高密度化を図る試みがなされてきた。しかしながら、焼結体
には空孔が形成され易いため、溶製材と同等の機械的特性を得るには、焼結体においてさ
らなる高密度化を図る必要があった。
そこで、従来では、得られた焼結体に対し、さらに熱間等方加圧処理(HIP処理)等
の追加処理を施すことにより、高密度化を図ることもあった。しかしながら、このような
追加処理は、多くの手間やコストを伴うため、焼結体の用途を広げる際の足かせとなる。
上記のような問題に鑑み、本発明者は、追加処理を施すことなく、高密度の焼結体を得
るための条件について鋭意検討を重ねた。その結果、金属粉末を構成する合金の組成を最
適化することにより、焼結体の高密度化が図られることを見出し、本発明を完成するに至
った。
具体的には、本発明の粉末冶金用金属粉末は、Crが2質量%以上6質量%以下の割合
で含まれ、Siが0.2質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、Cが0.5質量%
以上2質量%以下の割合で含まれ、Wが0.5質量%以上20質量%以下の割合で含まれ
、Vが0.5質量%以上6質量%以下の割合で含まれ、後述する第1元素が0.01質量
%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、後述する第2元素が0.01質量%以上0.5
質量%以下の割合で含まれ、残部がFeおよびその他の元素で構成されている金属粉末で
ある。このような金属粉末によれば、合金組成の最適化が図られた結果、焼結時の緻密化
を特に高めることができる。その結果、追加処理を施すことなく、高密度の焼結体を製造
することができる。
そして、焼結体の高密度化が図られることで、機械的特性に優れた焼結体が得られるこ
とになる。このような焼結体は、例えば機械部品や構造部品といった外力(荷重)が加わ
る用途にも幅広く適用可能なものとなる。
また、このような焼結体は、切削工具等の用途にも適用可能なものとなる。すなわち、
焼結体の高密度化および機械的特性の向上が図られることにより、より高速での切削が可
能な高速度工具を容易に製造することができる。
なお、第1元素とは、Ti、Y、Zr、Nb、HfおよびTaの6元素からなる群から
選択される1種の元素であり、第2元素とは、前記6元素からなる群から選択される1種
の元素であって、かつ、元素周期表における族が第1元素よりも大きい元素、または、前
記6元素からなる群から選択される1種の元素であるとともに第1元素として選択された
元素と元素周期表における族が同じ元素であって、かつ、元素周期表における周期が第1
元素よりも大きい元素である。
以下、本発明の粉末冶金用金属粉末の合金組成についてさらに詳述する。なお、以下の
説明では、粉末冶金用金属粉末を単に「金属粉末」ということもある。
(Cr)
Cr(クロム)は、製造される焼結体に耐食性を付与する元素であり、Crを含む金属
粉末を用いることで、長期にわたって高い機械的特性を維持し得る焼結体が得られる。
金属粉末におけるCrの含有率は、2質量%以上6質量%以下とされるが、好ましくは
3質量%以上5質量%以下とされ、より好ましくは3.5質量%以上4.5質量%以下と
される。Crの含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、製造される焼結
体の耐食性が不十分になる。一方、Crの含有率が前記上限値を上回ると、全体の組成に
よっては、焼結性が低下し、焼結体の高密度化が困難になる。
(Ni)
本発明の粉末冶金用金属粉末は、必要に応じてNiを含んでいてもよい。Niは、製造
される焼結体に耐食性や耐熱性を付与する元素である。
金属粉末におけるNiの含有率は、好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下と
され、より好ましくは0.01質量%以上0.3質量%以下とされ、さらに好ましくは0
.02質量%以上0.25質量%以下とされる。Niの含有率を前記範囲内に設定するこ
とで、長期にわたって機械的特性に優れた焼結体が得られる。
Niの含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、製造される焼結体の耐
食性や耐熱性を十分に高められないおそれがあり、一方、Niの含有率が前記上限値を上
回ると、かえって耐食性や耐熱性が低下するおそれがある。
(Si)
Si(ケイ素)は、製造される焼結体に耐食性および高い機械的特性を付与する元素で
あり、Siを含む金属粉末を用いることで、長期にわたって高い機械的特性を維持し得る
焼結体が得られる。
金属粉末におけるSiの含有率は、0.2質量%以上1.5質量%以下とされるが、好
ましくは0.4質量%以上1質量%以下とされ、より好ましくは0.6質量%以上0.8
質量%以下とされる。Siの含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、S
iを添加する効果が希薄になるため、製造される焼結体の耐食性や機械的特性が低下する
。一方、Siの含有率が前記上限値を上回ると、全体の組成によっては、Siが多くなり
過ぎるため、かえって耐食性や機械的特性が低下する。
(C)
C(炭素)は、後述する第1元素や第2元素と併用されることで、焼結性を特に高める
ことができる。具体的には、第1元素や第2元素は、それぞれがCと結合することにより
、炭化物を生成する。この炭化物が分散して析出することにより、結晶粒の著しい成長を
防止する効果が生じる。このような効果が得られる明確な理由は不明であるが、理由の1
つとして、分散した析出物が障害となって結晶粒の著しい成長を阻害するため、結晶粒の
サイズのバラツキが抑えられることが考えられる。これにより、焼結体中に空孔が生じ難
くなるとともに、結晶粒の肥大化が防止されるため、高密度でかつ機械的特性の高い焼結
体が得られる。
金属粉末におけるCの含有率は、0.5質量%以上2質量%以下とされるが、好ましく
は0.75質量%以上1.75質量%以下とされ、より好ましくは1質量%以上1.5質
量%以下とされる。Cの含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、結晶粒
が成長し易くなり、焼結体の機械的特性が不十分になる。一方、Cの含有率が前記上限値
を上回ると、全体の組成によっては、Cが多くなり過ぎるため、かえって焼結性が低下す
る。
(W)
Wは、製造される焼結体の耐熱性を強化する元素である。
金属粉末におけるWの含有率は、0.5質量%以上20質量%以下とされるが、好まし
くは1質量%以上10質量%以下とされ、より好ましくは5質量%以上7質量%以下とさ
れる。Wの含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、焼結体の耐熱性を十
分に高めることができなくなり、例えば得られた焼結体を用いて工具を製造したとき、高
温下における工具の硬度や耐軟化性、耐摩耗性が低下するおそれがある。一方、Wの含有
率が前記上限値を上回ると、全体の組成によっては、焼結体の靭性等の機械的特性が低下
し、例えば工具に欠け等の不具合が発生するおそれがある。
(V)
Vは、製造される焼結体の耐熱性を強化する元素である。
金属粉末におけるVの含有率は、0.5質量%以上6質量%以下とされるが、好ましく
は1質量%以上4.5質量%以下とされ、より好ましくは2質量%以上3.5質量%以下
とされる。Vの含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、焼結体の耐熱性
を十分に高めることができなくなり、例えば得られた焼結体を用いて工具を製造したとき
、高温下における工具の硬度や耐軟化性、耐摩耗性が低下するおそれがある。一方、Vの
含有率が前記上限値を上回ると、全体の組成によっては、焼結体の靭性等の機械的特性が
低下し、例えば工具に欠け等の不具合が発生するおそれがある。
(第1元素および第2元素)
第1元素および第2元素は、炭化物や酸化物(以下、まとめて「炭化物等」ともいう。
)を析出させる。そして、この析出した炭化物等は、金属粉末が焼結するとき、結晶粒の
著しい成長を阻害すると考えられる。その結果、前述したように、焼結体中に空孔が生じ
難くなるとともに、結晶粒の肥大化が防止され、高密度でかつ機械的特性の高い焼結体が
得られる。
加えて、詳しくは後述するが、析出した炭化物等が結晶粒界において酸化ケイ素の集積
を促進し、その結果、結晶粒の肥大化を抑えつつ、焼結の促進と高密度化とが図られる。
さらには、析出した炭化物等は、硬度が高いため、この炭化物等が焼結体の表面に露出
すると、焼結体の表面硬度を特に高めることができる。
ところで、第1元素および第2元素は、Ti、Y、Zr、Nb、HfおよびTaの6元
素からなる群から選択される2種の元素であるが、長周期型元素周期表の3A族または4
A族に属する元素(Ti、Y、Zr、Hf)を含むことが好ましい。第1元素および第2
元素の少なくとも一方として3A族または4A族に属する元素を含むことにより、金属粉
末中に酸化物として含まれている酸素を除去し、金属粉末の焼結性を特に高めることがで
きる。
また、第1元素は、前述したように、Ti、Y、Zr、Nb、HfおよびTaの6元素
からなる群から選択される1種の元素であればよいが、好ましくは前記6元素からなる群
のうち、長周期型元素周期表の3A族または4A族に属する元素とされる。3A族または
4A族に属する元素は、金属粉末中に酸化物として含まれている酸素を除去し、金属粉末
の焼結性を特に高めることができる。これにより、焼結後に結晶粒内に残存する酸素濃度
の低減を図ることができる。その結果、焼結体の酸素含有率の低減を図り、高密度化を図
ることができる。また、これらの元素は、活性が高い元素であるため、速やかな原子拡散
をもたらすと考えられる。このため、この原子拡散が駆動力となって金属粉末の粒子間距
離が効率よく縮まり、粒子間にネックを形成することによって成形体の緻密化が促進され
る。その結果、焼結体のさらなる高密度化を図ることができる。
一方、第2元素は、前述したように、Ti、Y、Zr、Nb、HfおよびTaの6元素
からなる群から選択される1種の元素であって、かつ、第1元素とは異なる元素であれば
よいが、好ましくは前記6元素からなる群のうち、長周期型元素周期表の5A族に属する
元素とされる。5A族に属する元素は、特に、前述した炭化物等を効率よく析出させるた
め、焼結時の結晶粒の著しい成長を効率よく阻害することができる。その結果、微細な結
晶粒の生成を促進させ、焼結体の高密度化と機械的特性の向上とを図ることができる。
なお、上述したような元素からなる第1元素と第2元素との組み合わせでは、それぞれ
の効果が互いに阻害し合うことなく発揮される。このため、このような第1元素および第
2元素を含む金属粉末は、とりわけ高密度な焼結体を製造可能なものとなる。
また、より好ましくは、第1元素が4A族に属する元素であり、第2元素がNbである
組み合わせが採用される。
また、さらに好ましくは、第1元素がZrまたはHfであり、第2元素がNbである組
み合わせが採用される。
このような組み合わせが採用されることにより、上述した効果がより顕著になる。
また、これらの元素のうち、Zrはフェライト生成元素であるため、体心立方格子相を
析出させる。この体心立方格子相は、他の結晶格子相に比べて焼結性に優れているため、
焼結体の高密度化に寄与する。
金属粉末における第1元素の含有率は、0.01質量%以上0.5質量%以下とされる
が、好ましくは0.03質量%以上0.2質量%以下とされ、より好ましくは0.05質
量%以上0.1質量%以下とされる。第1元素の含有率が前記下限値を下回ると、全体の
組成によっては、第1元素を添加する効果が希薄になるため、製造される焼結体の高密度
化が不十分になる。一方、第1元素の含有率が前記上限値を上回ると、全体の組成によっ
ては、第1元素が多くなり過ぎるため、前述した炭化物等の比率が多くなり過ぎて、かえ
って高密度化が損なわれる。
金属粉末における第2元素の含有率は、0.01質量%以上0.5質量%以下とされる
が、好ましくは0.03質量%以上0.2質量%以下とされ、より好ましくは0.05質
量%以上0.1質量%以下とされる。第2元素の含有率が前記下限値を下回ると、全体の
組成によっては、第2元素を添加する効果が希薄になるため、製造される焼結体の高密度
化が不十分になる。一方、第2元素の含有率が前記上限値を上回ると、全体の組成によっ
ては、第2元素が多くなり過ぎるため、前述した炭化物等の比率が多くなり過ぎて、かえ
って高密度化が損なわれる。
また、前述したように、第1元素および第2元素は、それぞれ炭化物等を析出させるが
、第1元素として前述したように3A族または4A族に属する元素を選択し、第2元素と
して前述したように5A族に属する元素を選択した場合、金属粉末を焼結する際に、第1
元素の炭化物等が析出するタイミングと第2元素の炭化物等が析出するタイミングとが互
いにずれると推測される。このように炭化物等が析出するタイミングがずれることにより
、焼結が徐々に進行することになるため、空孔の生成が抑えられ、緻密な焼結体が得られ
るものと考えられる。すなわち、第1元素の炭化物等と第2元素の炭化物等の双方が存在
していることにより、高密度化を図りつつ、結晶粒の肥大化を抑制することが可能になる
と考えられる。
なお、金属粉末には、前記6元素からなる群から選択される2種の元素が含まれていれ
ばよいが、この群から選択される元素であって、この2種の元素とは異なる元素がさらに
含まれていてもよい。すなわち、金属粉末には、前記6元素からなる群から選択される3
種以上の元素が含まれていてもよい。これにより、組み合わせ方によって多少異なるもの
の、前述した効果をさらに増強することができる。
また、第1元素の含有率と第2元素の含有率の比率は、第1元素として選択された元素の原子量および第2元素として選択された元素の原子量を考慮して設定されるのが好ましい。
具体的には、第1元素の含有率E1(質量%)を第1元素の原子量で除した値を指数X1とし、第2元素の含有率E2(質量%)を第2元素の原子量で除した値を指数X2としたとき、指数X2に対する指数X1の比率X1/X2は0.3以上3以下であるのが好ましく、0.5以上2以下であるのがより好ましく、0.75以上1.3以下であるのがさらに好ましい。X1/X2を前記範囲内に設定することにより、第1元素の炭化物等の析出のタイミングと第2元素の炭化物等の析出のタイミングとのずれを最適化することができる。これにより、成形体中に残存する空孔を内側から順次掃き出すようにして排出することができるので、焼結体中に生じる空孔を最小限に抑えることができる。したがって、X1/X2を前記範囲内に設定することで、高密度で機械的特性に優れた焼結体を製造可能な金属粉末を得ることができる。また、第1元素の原子数と第2元素の原子数とのバランスが最適化されるため、第1元素によってもたらされる効果と第2元素によってもたらされる効果とが相乗的に発揮され、とりわけ高密度の焼結体を得ることができる。
ここで、第1元素および第2元素の具体的な組み合わせの例について、上述した比率X
1/X2の範囲に基づき、含有率E1(質量%)と含有率E2(質量%)の比率E1/E
2についても算出する。
例えば、第1元素がZrであり、第2元素がNbである場合、Zrの原子量が91.2であり、Nbの原子量が92.9であることから、E1/E2は0.29以上2.95以下であるのが好ましく、0.49以上1.96以下であるのがより好ましい。
また、第1元素がHfであり、第2元素がNbである場合、Hfの原子量が178.5であり、Nbの原子量が92.9であることから、E1/E2は0.58以上5.76以下であるのが好ましく、0.96以上3.84以下であるのがより好ましい。
また、第1元素がTiであり、第2元素がNbである場合、Tiの原子量が47.9であり、Nbの原子量が92.9であることから、E1/E2は0.15以上1.55以下であるのが好ましく、0.26以上1.03以下であるのがより好ましい。
また、第1元素がNbであり、第2元素がTaである場合、Nbの原子量が92.9であり、Taの原子量が180.9であることから、E1/E2は0.15以上1.54以下であるのが好ましく、0.26以上1.03以下であるのがより好ましい。
また、第1元素がYであり、第2元素がNbである場合、Yの原子量が88.9であり、Nbの原子量が92.9であることから、E1/E2は0.29以上2.87以下であるのが好ましく、0.48以上1.91以下であるのがより好ましい。
また、第1元素がTiであり、第2元素がZrである場合、Tiの原子量が47.9であり、Zrの原子量が91.2であることから、E1/E2は0.16以上1.58以下であるのが好ましく、0.26以上1.05以下であるのがより好ましい。
また、第1元素がZrであり、第2元素がTaである場合、Zrの原子量が91.2であり、Taの原子量が180.9であることから、E1/E2は0.15以上1.51以下であるのが好ましく、0.25以上1.01以下であるのがより好ましい。
なお、上述する組み合わせ以外についても、上記と同様にしてE1/E2を算出するこ
とができる。
また、第1元素の含有率E1と第2元素の含有率E2の合計(E1+E2)については
0.05質量%以上0.6質量%以下であるのが好ましく、0.10質量%以上0.48
質量%以下であるのがより好ましく、0.12質量%以上0.24質量%以下であるのが
さらに好ましい。第1元素の含有率と第2元素の含有率の合計を前記範囲内に設定するこ
とで、製造される焼結体の高密度化が必要かつ十分なものとなる。
また、Siの含有率に対する第1元素の含有率と第2元素の含有率の合計の比率を(E
1+E2)/Siとしたとき、(E1+E2)/Siは0.1以上0.7以下であるのが
好ましく、0.15以上0.6以下であるのがより好ましく、0.2以上0.5以下であ
るのがさらに好ましい。(E1+E2)/Siを前記範囲内に設定することで、Siを添
加した場合の靭性の低下等が、第1元素および第2元素の添加によって十分に補われる。
その結果、高密度であるにもかかわらず、靭性といった機械的特性に優れ、かつ、Siに
由来する耐食性にも優れた焼結体を製造可能な金属粉末が得られる。
加えて、第1元素および第2元素が適量添加されることにより、焼結体中の結晶粒界に
おいて、第1元素の炭化物等および第2元素の炭化物等が「核」となり、酸化ケイ素の集
積が起こると考えられる。酸化ケイ素が結晶粒界に集積することにより、結晶粒内の酸化
物濃度が低下するため、焼結の促進が図られる。その結果、焼結体の高密度化がさらに促
進されるものと考えられる。
さらには、析出した酸化ケイ素は、集積する過程において結晶粒界の三重点に移動し易
いので、この点での結晶成長が抑制される(ピン留め効果)。その結果、結晶粒の著しい
成長が抑制され、より微細な結晶を有する焼結体が得られる。このような焼結体は、機械
的特性が特に高いものとなる。
また、集積した酸化ケイ素は、前述したように結晶粒界の三重点に位置し易く、そのた
め、粒状に成形される傾向にある。したがって、焼結体には、このような粒状をなし、酸
化ケイ素の含有率が相対的に高い第1領域と、第1領域よりも酸化ケイ素の含有率が相対
的に低い第2領域と、が形成され易くなる。第1領域が存在することで、前述したような
、結晶内部の酸化物濃度の低下と、結晶粒の著しい成長の抑制とが図られる。
なお、第1領域および第2領域について、それぞれ電子線マイクロアナライザー(EP
MA)による定性定量分析を行うと、第1領域では、O(酸素)が主元素となっている一
方、第2領域では、Feが主元素となる。前述したように、第1領域は、主に結晶粒界に
存在する一方、第2領域は、主に結晶粒内に存在する。そこで、第1領域において、Oお
よびSiの2元素の含有率の和とFeの含有率とを比較すると、2元素の含有率の和はF
eの含有率より多くなっている。一方、第2領域では、OおよびSiの2元素の含有率の
和は、Feの含有率より圧倒的に小さい。これらのことから、第1領域では、Siおよび
Oの集積が図られていることがわかる。具体的には、第1領域では、Siの含有率とOの
含有率との和は、Feの含有率の1.5倍以上になっている。また、第1領域におけるS
iの含有率は、第2領域におけるSiの含有率の3倍以上になっている。
さらに、組成比によって異なる場合もあるが、第1元素の含有率および第2元素の含有
率の少なくとも一方は、第1領域>第2領域の関係を満足する。このことから、第1領域
において、前述した第1元素の炭化物等や第2元素の炭化物等が、酸化ケイ素が集積する
際の核になっていることを示している。具体例としては、第1領域における第1元素の含
有率は、第2領域における第2元素の含有率の3倍以上になっている。
なお、上述したような酸化ケイ素の集積は、焼結体の緻密化の原因の1つと考えられる
。したがって、本発明により高密度化が図られた焼結体であっても、組成比によっては、
酸化ケイ素が集積していない場合もあると考えられる。
また、粒状をなす第1領域の直径は、焼結体全体におけるSi含有率に応じて異なるも
のの、0.5μm以上15μm以下程度とされ、好ましくは1μm以上10μm以下程度
とされる。これにより、酸化ケイ素の集積に伴う焼結体の機械的特性の低下を抑えつつ、
焼結体の高密度化を十分に促進させることができる。
なお、第1領域の直径は、焼結体の断面の電子顕微鏡写真において、濃淡から特定され
る第1領域の面積と同じ面積を持つ円の直径(円相当径)の平均値として求めることがで
きる。平均値を求める際には10個以上の測定値が用いられる。
さらには、Cの含有率に対する第1元素の含有率と第2元素の含有率の合計の比率を(
E1+E2)/Cとしたとき、(E1+E2)/Cは0.02以上0.32以下であるの
が好ましく、0.04以上0.26以下であるのがより好ましく、0.06以上0.2以
下であるのがさらに好ましい。(E1+E2)/Cを前記範囲内に設定することで、Cを
添加した場合の硬度の上昇および靭性の低下と、第1元素および第2元素の添加によって
もたらされる高密度化とを両立させることができる。その結果、引張強さや靭性といった
機械的特性に優れた焼結体を製造可能な金属粉末が得られる。
なお、金属粉末には、Ti、Y、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択され
る2種の元素が含まれていればよいが、この群から選択される元素であって、この2種の
元素とは異なる元素がさらに含まれていてもよい。すなわち、金属粉末には、前記群から
選択される3種以上の元素が含まれていてもよい。これにより、組み合わせ方によって多
少異なるものの、前述した効果をさらに増強することができる。
(その他の元素)
本発明の粉末冶金用金属粉末は、上述した元素の他、必要に応じてMn、Mo、Co、
Cu、NおよびSのうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。なお、これらの元素は、
不可避的に含まれる場合もある。
Mnは、Siと同様、製造される焼結体に耐食性および高い機械的特性を付与する元素
である。
金属粉末におけるMnの含有率は、特に限定されないが、0.01質量%以上2質量%
以下であるのが好ましく、0.01質量%以上1質量%以下であるのがより好ましく、0
.02質量%以上0.5質量%以下であるのがさらに好ましい。Mnの含有率を前記範囲
内に設定することで、高密度で機械的特性に優れた焼結体が得られる。また、高温時(赤
熱時)の脆性の増大を抑制することができる。
なお、Mnの含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、製造される焼結
体の耐食性や機械的特性を十分に高められないおそれがあり、一方、Mnの含有率が前記
上限値を上回ると、かえって耐食性や機械的特性が低下するおそれがある。
Moは、製造される焼結体の靭性等の機械的特性を強化する元素である。
金属粉末におけるMoの含有率は、特に限定されないが、2質量%以上11質量%以下
であるのが好ましく、3質量%以上9質量%以下であるのがより好ましく、4質量%以上
6.5質量%以下であるのがさらに好ましい。Moの含有率を前記範囲内に設定すること
で、製造される焼結体の密度の大幅な低下を招くことなく、焼結体の靭性等の機械的特性
をより強化することができる。
Coは、製造される焼結体の耐熱性を強化する元素である。
金属粉末におけるCoの含有率は、特に限定されないが、3質量%以上12質量%以下
であるのが好ましく、4.5質量%以上10.5質量%以下であるのがより好ましい。C
oの含有率を前記範囲内に設定することで、製造される焼結体の密度の大幅な低下を招く
ことなく、焼結体の耐熱性をより強化することができる。特に、高温下における硬度や耐
軟化性の低下を抑制することができるので、例えば得られた焼結体を用いて工具を製造し
たとき、より高速での切削が可能な高速度工具を容易に製造することができる。
Cuは、製造される焼結体の耐食性を強化する元素である。
金属粉末におけるCuの含有率は、特に限定されないが、1質量%以下であるのが好ま
しく、0.01質量%以上0.5質量%以下であるのがより好ましい。Cuの含有率を前
記範囲内に設定することで、製造される焼結体の密度の大幅な低下を招くことなく、焼結
体の耐食性をより強化することができる。
Nは、製造される焼結体の耐力等の機械的特性を高める元素である。
金属粉末におけるNの含有率は、特に限定されないが、0.03質量%以上1質量%以
下であるのが好ましく、0.08質量%以上0.5質量%以下であるのがより好ましく、
0.1質量%以上0.3質量%以下であるのがさらに好ましい。Nの含有率を前記範囲内
に設定することで、製造される焼結体の密度の大幅な低下を招くことなく、焼結体の耐力
等の機械的特性をより高めることができる。
なお、Nが添加された金属粉末を製造するには、例えば、窒化した原料を用いる方法、
溶融金属に対して窒素ガスを導入する方法、製造された金属粉末に窒化処理を施す方法等
が用いられる。
Sは、製造される焼結体の被削性を高める元素である。
金属粉末におけるSの含有率は、特に限定されないが、0.5質量%以下であるのが好
ましく、0.01質量%以上0.3質量%以下であるのがより好ましい。Sの含有率を前
記範囲内に設定することで、製造される焼結体の密度の大幅な低下を招くことなく、製造
される焼結体の被削性をより高めることができる。
この他、本発明の粉末冶金用金属粉末には、B、Se、Te、Pd、Al等が添加され
ていてもよい。その場合、これらの元素の含有率は、特に限定されないが、それぞれ0.
1質量%未満であるのが好ましく、合計でも0.2質量%未満であるのが好ましい。なお
、これらの元素は、不可避的に含まれる場合もある。
さらに、本発明の粉末冶金用金属粉末には、不純物が含まれていてもよい。不純物とし
ては、上述した元素以外の全ての元素が挙げられ、具体的には、例えば、Li、Be、N
a、Mg、P、K、Ca、Sc、Zn、Ga、Ge、Ag、In、Sn、Sb、Os、I
r、Pt、Au、Bi等が挙げられる。これらの不純物の混入量は、各々の元素がFe、
Cr、Si、C、第1元素および第2元素の各含有量よりも少なくなるように設定されて
いるのが好ましい。また、これらの不純物の混入量は、各々の元素が0.03質量%未満
となるように設定されるのが好ましく、0.02質量%未満となるように設定されるのが
より好ましい。また、合計でも0.3質量%未満とされるのが好ましく、0.2質量%未
満とされるのがより好ましい。なお、これらの元素は、その含有率が前記範囲内であれば
、前述したような効果が阻害されないので、意図的に添加されていてもよい。
一方、O(酸素)も、意図的に添加されたり不可避的に混入したりしてもよいが、その
量は0.8質量%以下程度であるのが好ましく、0.5質量%以下程度であるのがより好
ましい。金属粉末中の酸素量をこの程度に収めることで、焼結性が高くなり、高密度で機
械的特性に優れた焼結体が得られる。なお、下限値は特に設定されないが、量産容易性等
の観点から0.03質量%以上であるのが好ましい。
Feは、本発明の粉末冶金用金属粉末を構成する合金のうち含有率が最も高い成分(主
成分)であり、焼結体の特性に大きな影響を及ぼす。Feの含有率は、特に限定されない
が、50質量%以上であるのが好ましい。
また、粉末冶金用金属粉末の組成比は、例えば、JIS G 1257(2000)に
規定された鉄及び鋼−原子吸光分析法、JIS G 1258(2007)に規定された
鉄及び鋼−ICP発光分光分析法、JIS G 1253(2002)に規定された鉄及
び鋼−スパーク放電発光分光分析法、JIS G 1256(1997)に規定された鉄
及び鋼−蛍光X線分析法、JIS G 1211〜G 1237に規定された重量・滴定
・吸光光度法等により特定することができる。具体的には、例えばSPECTRO社製固
体発光分光分析装置(スパーク放電発光分光分析装置、モデル:SPECTROLAB、
タイプ:LAVMB08A)や、(株)リガク製ICP装置(CIROS120型)が挙
げられる。
なお、JIS G 1211〜G 1237は、下記の通りである。
JIS G 1211(2011) 鉄及び鋼−炭素定量方法
JIS G 1212(1997) 鉄及び鋼−けい素定量方法
JIS G 1213(2001) 鉄及び鋼中のマンガン定量方法
JIS G 1214(1998) 鉄及び鋼−りん定量方法
JIS G 1215(2010) 鉄及び鋼−硫黄定量方法
JIS G 1216(1997) 鉄及び鋼−ニッケル定量方法
JIS G 1217(2005) 鉄及び鋼−クロム定量方法
JIS G 1218(1999) 鉄及び鋼−モリブデン定量方法
JIS G 1219(1997) 鉄及び鋼−銅定量方法
JIS G 1220(1994) 鉄及び鋼−タングステン定量方法
JIS G 1221(1998) 鉄及び鋼−バナジウム定量方法
JIS G 1222(1999) 鉄及び鋼−コバルト定量方法
JIS G 1223(1997) 鉄及び鋼−チタン定量方法
JIS G 1224(2001) 鉄及び鋼中のアルミニウム定量方法
JIS G 1225(2006) 鉄及び鋼−ひ素定量方法
JIS G 1226(1994) 鉄及び鋼−すず定量方法
JIS G 1227(1999) 鉄及び鋼中のほう素定量方法
JIS G 1228(2006) 鉄及び鋼−窒素定量方法
JIS G 1229(1994) 鋼−鉛定量方法
JIS G 1232(1980) 鋼中のジルコニウム定量方法
JIS G 1233(1994) 鋼−セレン定量方法
JIS G 1234(1981) 鋼中のテルル定量方法
JIS G 1235(1981) 鉄及び鋼中のアンチモン定量方法
JIS G 1236(1992) 鋼中のタンタル定量方法
JIS G 1237(1997) 鉄及び鋼−ニオブ定量方法
また、C(炭素)およびS(硫黄)の特定に際しては、特に、JIS G 1211(
2011)に規定された酸素気流燃焼(高周波誘導加熱炉燃焼)−赤外線吸収法も用いら
れる。具体的には、LECO社製炭素・硫黄分析装置、CS−200が挙げられる。
さらに、N(窒素)およびO(酸素)の特定に際しては、特に、JIS G 1228
(2006)に規定された鉄および鋼の窒素定量方法、JIS Z 2613(2006
)に規定された金属材料の酸素定量方法も用いられる。具体的には、LECO社製酸素・
窒素分析装置、TC−300/EF−300が挙げられる。
また、本発明の粉末冶金用金属粉末は、マルテンサイトの結晶構造を有しているのが好
ましい。マルテンサイトの結晶構造は、Cが過飽和に固溶した体心立方格子を含んでいる
。この体心立方格子は、焼成あるいはその後の熱処理に伴って面心立方格子から転化した
ものであり、その際に体積膨張を伴っている。したがって、マルテンサイトの結晶構造を
有する粉末冶金用金属粉末は、高硬度の焼結体を製造し得るものとなる。このため、例え
ば得られた焼結体を用いて工具を製造したとき、より高速での切削が可能であるとともに
耐摩耗性に優れた工具を製造することができる。
なお、粉末冶金用金属粉末がマルテンサイトの結晶構造を有しているか否かは、例えば
X線回折法により判定することができる。
また、本発明の粉末冶金用金属粉末の平均粒径は、0.5μm以上30μm以下である
のが好ましく、1μm以上20μm以下であるのがより好ましく、2μm以上10μm以
下であるのがさらに好ましい。このような粒径の粉末冶金用金属粉末を用いることにより
、焼結体中に残存する空孔が極めて少なくなるため、特に高密度で機械的特性に優れた焼
結体を製造することができる。
なお、平均粒径は、レーザー回折法により得られた質量基準での累積粒度分布において
、累積量が小径側から50%になるときの粒径として求められる。
また、粉末冶金用金属粉末の平均粒径が前記下限値を下回った場合、成形し難い形状を
成形する際に成形性が低下し、焼結密度が低下するおそれがあり、前記上限値を上回った
場合、成形時に粒子間の隙間が大きくなるので、やはり焼結密度が低下するおそれがある
また、粉末冶金用金属粉末の粒度分布は、できるだけ狭いのが好ましい。具体的には、
粉末冶金用金属粉末の平均粒径が前記範囲内であれば、最大粒径が200μm以下である
のが好ましく、150μm以下であるのがより好ましい。粉末冶金用金属粉末の最大粒径
を前記範囲内に制御することにより、粉末冶金用金属粉末の粒度分布をより狭くすること
ができ、焼結体のさらなる高密度化を図ることができる。
なお、上記の最大粒径とは、レーザー回折法により得られた質量基準での累積粒度分布
において、累積量が小径側から99.9%となるときの粒径のことをいう。
また、粉末冶金用金属粉末の粒子の短径をS[μm]とし、長径をL[μm]としたと
き、S/Lで定義されるアスペクト比の平均値は、0.4以上1以下程度であるのが好ま
しく、0.7以上1以下程度であるのがより好ましい。このようなアスペクト比の粉末冶
金用金属粉末は、その形状が比較的球形に近くなるので、成形された際の充填率が高めら
れる。その結果、焼結体のさらなる高密度化を図ることができる。
なお、前記長径とは、粒子の投影像においてとりうる最大長さであり、前記短径とは、
長径に直交する方向においてとりうる最大長さである。また、アスペクト比の平均値は、
100個以上の粒子について測定されたアスペクト比の値の平均値として求められる。
また、本発明の粉末冶金用金属粉末のタップ密度は、3.5g/cm以上であるのが
好ましく、4g/cm以上であるのがより好ましい。このようにタップ密度が大きい粉
末冶金用金属粉末であれば、成形体を得る際に、粒子間の充填性が特に高くなる。このた
め、最終的に、特に緻密な焼結体を得ることができる。
また、本発明の粉末冶金用金属粉末の比表面積は、特に限定されないが、0.1m
g以上であるのが好ましく、0.2m/g以上であるのがより好ましい。このように比
表面積の広い粉末冶金用金属粉末であれば、表面の活性(表面エネルギー)が高くなるた
め、より少ないエネルギーの付与でも容易に焼結することができる。したがって、成形体
を焼結する際に、成形体の内側と外側とで焼結速度の差が生じ難くなり、内側に空孔が残
存して焼結密度が低下するのを抑制することができる。
[焼結体の製造方法]
次に、このような本発明の粉末冶金用金属粉末を用いて焼結体を製造する方法について
説明する。
焼結体を製造する方法は、[A]焼結体製造用の組成物を用意する組成物調製工程と、
[B]成形体を製造する成形工程と、[C]脱脂処理を施す脱脂工程と、[D]焼成を行
う焼成工程と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
[A]組成物調製工程
まず、本発明の粉末冶金用金属粉末と、バインダーとを用意し、これらを混練機により
混練し、混練物を得る。
この混練物(本発明のコンパウンドの実施形態)中では、粉末冶金用金属粉末が均一に
分散している。
本発明の粉末冶金用金属粉末は、例えば、アトマイズ法(例えば、水アトマイズ法、ガ
スアトマイズ法、高速回転水流アトマイズ法等)、還元法、カルボニル法、粉砕法等の各
種粉末化法により製造される。
このうち、本発明の粉末冶金用金属粉末は、アトマイズ法により製造されたものである
のが好ましく、水アトマイズ法または高速回転水流アトマイズ法により製造されたもので
あるのがより好ましい。アトマイズ法は、溶融金属(溶湯)を、高速で噴射された流体(
液体または気体)に衝突させることにより、溶湯を微粉化するとともに冷却して、金属粉
末を製造する方法である。粉末冶金用金属粉末をこのようなアトマイズ法によって製造す
ることにより、極めて微小な粉末を効率よく製造することができる。また、得られる粉末
の粒子形状が表面張力の作用により球形状に近くなる。このため、成形した際に充填率の
高いものが得られる。すなわち、高密度な焼結体を製造可能な粉末を得ることができる。
なお、アトマイズ法として、水アトマイズ法を用いた場合、溶融金属に向けて噴射され
る水(以下、「アトマイズ水」という。)の圧力は、特に限定されないが、好ましくは7
5MPa以上120MPa以下(750kgf/cm以上1200kgf/cm以下
)程度とされ、より好ましくは、90MPa以上120MPa以下(900kgf/cm
以上1200kgf/cm以下)程度とされる。
また、アトマイズ水の水温も、特に限定されないが、好ましくは1℃以上20℃以下程
度とされる。
さらに、アトマイズ水は、溶湯の落下経路上に頂点を有し、外径が下方に向かって漸減
するような円錐状に噴射される場合が多い。この場合、アトマイズ水が形成する円錐の頂
角θは、10°以上40°以下程度であるのが好ましく、15°以上35°以下程度であ
るのがより好ましい。これにより、前述したような組成の粉末冶金用金属粉末を、確実に
製造することができる。
また、水アトマイズ法(特に高速回転水流アトマイズ法)によれば、とりわけ速く溶湯
を冷却することができる。このため、広い合金組成において高品質な粉末が得られる。
また、アトマイズ法において溶湯を冷却する際の冷却速度は、1×10℃/s以上で
あるのが好ましく、1×10℃/s以上であるのがより好ましい。このような急速な冷
却により、均質な粉末冶金用金属粉末が得られる。その結果、高品質な焼結体を得ること
ができる。
なお、このようにして得られた粉末冶金用金属粉末に対し、必要に応じて、分級を行っ
てもよい。分級の方法としては、例えば、ふるい分け分級、慣性分級、遠心分級のような
乾式分級、沈降分級のような湿式分級等が挙げられる。
一方、バインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸
ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレ
ート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化
ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等
のポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはこ
れらの共重合体等の各種樹脂や、各種ワックス、パラフィン、高級脂肪酸(例:ステアリ
ン酸)、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等の各種有機バインダ
ーが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
また、バインダーの含有率は、混練物全体の2質量%以上20質量%以下程度であるの
が好ましく、5質量%以上10質量%以下程度であるのがより好ましい。バインダーの含
有率が前記範囲内であることにより、成形性よく成形体を形成することができるとともに
、密度を高め、成形体の形状の安定性等を特に優れたものとすることができる。また、こ
れにより、成形体と脱脂体との大きさの差、いわゆる収縮率を最適化して、最終的に得ら
れる焼結体の寸法精度の低下を防止することができる。すなわち、高密度でかつ寸法精度
の高い焼結体を得ることができる。
また、混練物中には、必要に応じて、可塑剤が添加されていてもよい。この可塑剤とし
ては、例えば、フタル酸エステル(例:DOP、DEP、DBP)、アジピン酸エステル
、トリメリット酸エステル、セバシン酸エステル等が挙げられ、これらのうちの1種また
は2種以上を混合して用いることができる。
さらに、混練物中には、粉末冶金用金属粉末、バインダー、可塑剤の他に、例えば、滑
剤、酸化防止剤、脱脂促進剤、界面活性剤等の各種添加物を必要に応じ添加することがで
きる。
なお、混練条件は、用いる粉末冶金用金属粉末の金属組成や粒径、バインダーの組成、
およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げれば、混練温度:50
℃以上200℃以下程度、混練時間:15分以上210分以下程度とすることができる。
また、混練物は、必要に応じ、ペレット(小塊)化される。ペレットの粒径は、例えば
、1mm以上15mm以下程度とされる。
なお、後述する成形方法によっては、混練物に代えて、造粒粉末を製造するようにして
もよい。これらの混練物および造粒粉末等が、後述する成形工程に供される組成物の一例
である。
本発明の造粒粉末の実施形態は、本発明の粉末冶金用金属粉末に造粒処理を施すことに
より、複数個の金属粒子同士をバインダーで結着してなるものである。
造粒粉末の製造に用いられるバインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピ
レン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、
ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ
塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチ
レンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニ
ルピロリドンまたはこれらの共重合体等の各種樹脂や、各種ワックス、パラフィン、高級
脂肪酸(例:ステアリン酸)、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド
等の各種有機バインダーが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いる
ことができる。
このうち、バインダーとしては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンを
含むものが好ましい。これらのバインダー成分は、結着性が高いため、比較的少量であっ
ても効率よく造粒粉末を形成することができる。また、熱分解性も高いことから、脱脂お
よび焼成の際に、短時間で確実に分解、除去することが可能になる。
また、バインダーの含有率は、造粒粉末全体の0.2質量%以上10質量%以下程度で
あるのが好ましく、0.3質量%以上5質量%以下程度であるのがより好ましく、0.3
質量%以上2質量%以下であるのがさらに好ましい。バインダーの含有率が前記範囲内で
あることにより、著しく大きな粒子が造粒されたり、造粒されていない金属粒子が大量に
残存してしまうのを抑制しつつ、造粒粉末を効率よく形成することができる。また、成形
性が向上するため、成形体の形状の安定性等を特に優れたものとすることができる。また
、バインダーの含有率を前記範囲内としたことにより、成形体と脱脂体との大きさの差、
いわゆる収縮率を最適化して、最終的に得られる焼結体の寸法精度の低下を防止すること
ができる。
さらに、造粒粉末中には、必要に応じて、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、脱脂促進剤、界
面活性剤等の各種添加物が添加されていてもよい。
一方、造粒処理としては、例えば、スプレードライ(噴霧乾燥)法、転動造粒法、流動
層造粒法、転動流動造粒法等が挙げられる。
なお、造粒処理では、必要に応じて、バインダーを溶解する溶媒が用いられる。かかる
溶媒としては、例えば、水、四塩化炭素のような無機溶媒や、ケトン系溶媒、アルコール
系溶媒、エーテル系溶媒、セロソルブ系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系
溶媒、芳香族複素環化合物系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン化合物系溶媒、エステル系溶
媒、アミン系溶媒、ニトリル系溶媒、ニトロ系溶媒、アルデヒド系溶媒のような有機溶媒
等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上の混合物が用いられる。
造粒粉末の平均粒径は、特に限定されないが、10μm以上200μm以下程度である
のが好ましく、20μm以上100μm以下程度であるのがより好ましく、25μm以上
60μm以下程度であるのがさらに好ましい。このような粒径の造粒粉末は、良好な流動
性を有し、成形型の形状をより忠実に反映させ得るものとなる。
なお、平均粒径は、レーザー回折法により得られた質量基準での累積粒度分布において
、累積量が小径側から50%になるときの粒径として求められる。
[B]成形工程
次に、混練物または造粒粉末を成形して、目的の焼結体と同形状の成形体を製造する。
成形体の製造方法(成形方法)としては、特に限定されず、例えば、圧粉成形(圧縮成
形)法、金属粉末射出成形(MIM:Metal Injection Molding)法、押出成形法等の各
種成形法を用いることができる。
このうち、圧粉成形法の場合の成形条件は、用いる粉末冶金用金属粉末の組成や粒径、
バインダーの組成、およびこれらの配合量等の諸条件によって異なるが、成形圧力が20
0MPa以上1000MPa以下(2t/cm以上10t/cm以下)程度であるの
が好ましい。
また、金属粉末射出成形法の場合の成形条件は、諸条件によって異なるものの、材料温
度が80℃以上210℃以下程度、射出圧力が50MPa以上500MPa以下(0.5
t/cm以上5t/cm以下)程度であるのが好ましい。
また、押出成形法の場合の成形条件は、諸条件によって異なるものの、材料温度が80
℃以上210℃以下程度、押出圧力が50MPa以上500MPa以下(0.5t/cm
以上5t/cm以下)程度であるのが好ましい。
このようにして得られた成形体は、金属粉末の複数の粒子の間隙に、バインダーが一様
に分布した状態となる。
なお、作製される成形体の形状寸法は、以降の脱脂工程および焼成工程における成形体
の収縮分を見込んで決定される。
[C]脱脂工程
次に、得られた成形体に脱脂処理(脱バインダー処理)を施し、脱脂体を得る。
具体的には、成形体を加熱して、バインダーを分解することにより、成形体中からバイ
ンダーを除去して、脱脂処理がなされる。
この脱脂処理は、例えば、成形体を加熱する方法、バインダーを分解するガスに成形体
を曝す方法等が挙げられる。
成形体を加熱する方法を用いる場合、成形体の加熱条件は、バインダーの組成や配合量
によって若干異なるものの、温度100℃以上750℃以下×0.1時間以上20時間以
下程度であるのが好ましく、150℃以上600℃以下×0.5時間以上15時間以下程
度であるのがより好ましい。これにより、成形体を焼結させることなく、成形体の脱脂を
必要かつ十分に行うことができる。その結果、脱脂体の内部にバインダー成分が多量に残
留してしまうのを確実に防止することができる。
また、成形体を加熱する際の雰囲気は、特に限定されず、水素のような還元性ガス雰囲
気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、大気のような酸化性ガス雰囲気、または
これらの雰囲気を減圧した減圧雰囲気等が挙げられる。
一方、バインダーを分解するガスとしては、例えば、オゾンガス等が挙げられる。
なお、このような脱脂工程は、脱脂条件の異なる複数の過程(ステップ)に分けて行う
ことにより、成形体中のバインダーをより速やかに、そして、成形体に残存させないよう
に分解・除去することができる。
また、必要に応じて、脱脂体に対して切削、研磨、切断等の機械加工を施すようにして
もよい。脱脂体は、硬度が比較的低く、かつ比較的可塑性に富んでいるため、脱脂体の形
状が崩れるのを防止しつつ、容易に機械加工を施すことができる。このような機械加工に
よれば、最終的に寸法精度の高い焼結体を容易に得ることができる。
[D]焼成工程
前記工程[C]で得られた脱脂体を、焼成炉で焼成して焼結体を得る。
この焼結により、粉末冶金用金属粉末は、粒子同士の界面で拡散が生じ、焼結に至る。
この際、前述したようなメカニズムによって、脱脂体が速やかに焼結される。その結果、
全体的に緻密な高密度の焼結体が得られる。
焼成温度は、成形体および脱脂体の製造に用いた粉末冶金用金属粉末の組成や粒径等に
よって異なるが、一例として980℃以上1330℃以下程度とされる。また、好ましく
は1050℃以上1260℃以下程度とされる。
また、焼成時間は、0.2時間以上7時間以下とされるが、好ましくは1時間以上6時
間以下程度とされる。
なお、焼成工程においては、途中で焼成温度や後述する焼成雰囲気を変化させるように
してもよい。
焼成条件をこのような範囲に設定することにより、焼結が進み過ぎて過焼結となり結晶
組織が肥大化するのを防止しつつ、脱脂体全体を十分に焼結させることができる。その結
果、高密度であり、かつ特に機械的特性に優れた焼結体を得ることができる。
また、焼成温度が比較的低温であることから、焼成炉による加熱温度を一定に制御し易
く、したがって、脱脂体の温度も一定になり易い。その結果、より均質な焼結体を製造す
ることができる。
さらには、前述したような焼成温度は、一般的な焼成炉で十分に実現可能な焼成温度で
あるため、安価な焼成炉が利用可能であるとともに、ランニングコストも抑えることがで
きる。換言すれば、前記焼成温度を超える場合には、特殊な耐熱材料を用いた高価な焼成
炉を利用する必要があり、しかもランニングコストも高くなるおそれがある。
また、焼成の際の雰囲気は、特に限定されないが、金属粉末の著しい酸化を防止するこ
とを考慮した場合、水素のような還元性ガス雰囲気、アルゴンのような不活性ガス雰囲気
、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧雰囲気等が好ましく用いられる。
このようにして得られた焼結体は、高密度で機械的特性に優れたものとなる。すなわち
、本発明の粉末冶金用金属粉末とバインダーとを含む組成物を、成形した後、脱脂・焼結
して製造された焼結体は、従来の金属粉末を焼結してなる焼結体に比べて相対密度が高く
なる。よって、本発明であれば、HIP処理のような追加処理を施さなければ到達し得な
かった高密度の焼結体を、追加処理なしに実現することができる。
具体的には、本発明によれば、粉末冶金用金属粉末の組成によって若干異なるものの、
一例として従来よりも2%以上の相対密度の向上が期待できる。
その結果、得られた焼結体の相対密度は、一例として97%以上になることが期待でき
る(好ましくは98%以上、より好ましくは98.5%以上)。このような範囲の相対密
度を有する焼結体は、粉末冶金技術を利用することで目的とする形状に限りなく近い形状
を有するものであるにもかかわらず、溶製材に匹敵する優れた機械的特性を有するものと
なるため、ほとんど後加工を施すことなく各種の機械部品や構造部品等に適用可能なもの
となる。また、例えば得られた焼結体を用いて工具を製造したとき、より高速での切削が
可能であるとともに耐摩耗性に優れた工具を製造することができる。
また、本発明の粉末冶金用金属粉末とバインダーとを含む組成物を、成形した後、脱脂
・焼結して製造された焼結体は、その引張強さ、0.2%耐力、抗折力、疲れ強さ等が、
従来の金属粉末を用いて同様に焼結してなる焼結体の物性値よりも大きくなる。これは、
合金組成を最適化したことにより、金属粉末の焼結性を高め、これにより製造される焼結
体の機械的特性が向上したためと考えられる。
また、上述したようにして製造された焼結体は、その表面が高硬度のものとなる。具体
的には、粉末冶金用金属粉末の組成によって若干異なるものの、一例として焼入れ処理お
よび焼き戻し処理を施した後の表面のロックウェルC硬さが50以上90以下になること
が期待される。また、好ましくは60以上80以下になることが期待される。このような
硬度を有する焼結体は、例えば工具や金型として用いられた場合に、優れた切削性や耐摩
耗性を付与することができる。
なお、上述した焼入れ処理および焼き戻し処理は、例えば、JIS G 4403(2
006)に規定された熱処理条件に基づいて行うことができる。
また、追加処理を施さなくても、焼結体は十分に高い密度と機械的特性とを有している
が、さらなる高密度化および機械的特性の向上を図るために、あるいはその他の目的にお
いて、焼結体に対して各種の追加処理を施すようにしてもよい。
この追加処理としては、例えば、上述した焼入れ処理および焼き戻し処理の他、前述し
たHIP処理のような高密度化を図る追加処理であってもよく、各種サブゼロ処理、各種
焼き鈍し処理等であってもよい。これらの追加処理は単独で行われてもよく、複数が組み
合わされて行われてもよい。
また、上述した焼成工程や各種追加処理においては、金属粉末中(焼結体中)の軽元素
が揮発し、最終的に得られる焼結体の組成は、金属粉末中の組成から若干変化している場
合もある。
例えば、Cについては、工程条件や処理条件に応じて異なるものの、最終的な焼結体に
おける含有率が、粉末冶金用金属粉末における含有率の5%以上100%以下の範囲内(
好ましくは30%以上100%以下の範囲内)で変化する可能性がある。
また、Oについても、工程条件や処理条件に応じて異なるものの、最終的な焼結体にお
ける含有率が、粉末冶金用金属粉末における含有率の1%以上50%以下の範囲内(好ま
しくは3%以上50%以下の範囲内)で変化する可能性がある。
一方、前述したように、製造された焼結体は、必要に応じて行われる追加処理の一環で
HIP処理に供されてもよいが、HIP処理を行っても十分な効果が発揮されない場合も
多い。HIP処理では、焼結体のさらなる高密度化を図ることができるが、そもそも本発
明で得られる焼結体は、焼成工程の終了時点ですでに十分な高密度化が図られている。こ
のため、さらにHIP処理を施したとしても、それ以上の高密度化は進み難い。
加えて、HIP処理では、圧力媒体を介して被処理物を加圧する必要があるため、被処
理物が汚染されたり、汚染に伴って被処理物の組成や物性が意図しない変化を生じたり、
汚染に伴って被処理物が変色したりするおそれがある。また、加圧されることにより被処
理物内において残留応力が発生あるいは増加し、これが経時的に解放されるのに伴って変
形や寸法精度の低下といった不具合の発生を招くおそれがある。
これに対し、本発明によれば、このようなHIP処理を施すことなく、十分に密度の高
い焼結体を製造可能であるため、HIP処理を施した場合と同様の高密度化および高強度
化が図られた焼結体を得ることができる。そして、このような焼結体は、汚染や変色、意
図しない組成や物性の変化等が少なく、変形や寸法精度の低下といった不具合の発生も少
ないものとなる。よって、本発明によれば、機械的強度および寸法精度が高く、耐久性に
優れた焼結体を効率よく製造することができる。そして、例えば得られた焼結体を用いて
工具を製造したとき、より高速での切削が可能であるとともに耐摩耗性に優れた工具を製
造することができる。
また、本発明で製造された焼結体は、機械的特性を向上させる目的の追加処理をほとん
ど必要としないため、組成や結晶組織が焼結体全体で均一になり易い。このため、構造的
な等方性が高く、形状によらず全方位からの荷重に対する耐久性に優れたものとなる。
なお、このようにして製造された焼結体では、その表面近傍における空孔率が内部にお
ける空孔率よりも相対的に小さくなることが多いことが認められる。このようになる理由
は明確ではないが、第1元素および第2元素が添加されることにより、成形体の内部より
も表面近傍において、焼結反応がより進み易くなっているということが挙げられる。
具体的には、焼結体の表面近傍の空孔率A1とし、焼結体の内部の空孔率をA2とした
とき、A2−A1は0.1%以上3%以下であるのが好ましく、0.2%以上2%以下で
あるのがより好ましい。A2−A1がこのような範囲にある焼結体は、必要かつ十分な機
械的強度を有する一方、表面を容易に平坦化することを可能にする。すなわち、かかる焼
結体の表面を研磨することにより、鏡面性の高い表面を得ることができる。
このような鏡面性の高い焼結体は、機械的強度が高くなるだけでなく、審美性に優れた
ものとなる。このため、かかる焼結体は、優れた美的外観が要求される用途にも好適に用
いられる。
なお、焼結体の表面近傍の空孔率A1とは、焼結体の断面のうち、表面から50μmの
深さの位置を中心に半径25μmの範囲内の空孔率のことをいう。また、焼結体の内部の
空孔率A2とは、焼結体の断面のうち、表面から300μmの深さの位置を中心に半径2
5μmの範囲内の空孔率のことをいう。これらの空孔率は、焼結体の断面を走査型電子顕
微鏡で観察し、前記範囲内に存在する空孔の面積を前記範囲の面積で除して得られた値で
ある。
以上、本発明の粉末冶金用金属粉末、コンパウンド、造粒粉末および焼結体について、
好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、本発明の焼結体は、例えば、ドリル、エンドミル、バイト、ダイス、ロールのよ
うな各種工具、プレス型、鍛造型、押出工具のような各種金型の他、自動車用部品、自転
車用部品、鉄道車両用部品、船舶用部品、航空機用部品、宇宙輸送機(例えばロケット等
)用部品のような輸送機器用部品、パソコン用部品、携帯電話端末用部品のような電子機
器用部品、冷蔵庫、洗濯機、冷暖房機のような電気機器用部品、工作機械、半導体製造装
置のような機械用部品、原子力発電所、火力発電所、水力発電所、製油所、化学コンビナ
ートのようなプラント用部品、時計用部品、金属食器、宝飾品、眼鏡フレームのような装
飾品の他、あらゆる構造部品に用いられる。
次に、本発明の実施例について説明する。
1.焼結体(Zr−Nb系)の製造
(サンプルNo.1)
[1]まず、水アトマイズ法により製造された表1に示す組成の金属粉末を用意した。
なお、この金属粉末の平均粒径は4.32μmであった。
また、表1に示す粉末の組成は、誘導結合高周波プラズマ発光分析法(ICP分析法)
により同定、定量した。なお、ICP分析には、(株)リガク製、ICP装置(CIRO
S120型)を用いた。また、Cの同定、定量には、LECO社製炭素・硫黄分析装置(
CS−200)を用いた。さらに、Oの同定、定量には、LECO社製酸素・窒素分析装
置(TC−300/EF−300)を用いた。
[2]次に、金属粉末と、ポリプロピレンおよびワックスの混合物(有機バインダー)
とを、質量比で9:1となるよう秤量して混合し、混合原料を得た。
[3]次に、この混合原料を混練機で混練し、コンパウンドを得た。
[4]次に、このコンパウンドを、以下に示す成形条件で、射出成形機にて成形し、成
形体を作製した。
<成形条件>
・材料温度:150℃
・射出圧力:11MPa(110kgf/cm
[5]次に、得られた成形体に対して、以下に示す脱脂条件で熱処理(脱脂処理)を施
し、脱脂体を得た。
<脱脂条件>
・脱脂温度 :500℃
・脱脂時間 :1時間(脱脂温度での保持時間)
・脱脂雰囲気:窒素雰囲気
[6]次に、得られた脱脂体を、以下に示す焼成条件で焼成した。これにより、焼結体
を得た。なお、焼結体の形状は、直径10mm、厚さ5mmの円筒形状とした。
<焼成条件>
・焼成温度 :1300℃
・焼成時間 :3時間(焼成温度での保持時間)
・焼成雰囲気:アルゴン雰囲気
[7]次に、得られた焼結体に対し、以下に示す条件で焼き入れ処理を施した。
<焼き入れ処理条件>
・焼き入れ温度 :1180℃
・焼き入れ時間 :4時間
・焼き入れ雰囲気:アルゴン雰囲気
・冷却方法 :油冷
[8]次に、焼き入れ処理を施した焼結体に対し、以下に示す条件でサブゼロ処理を施
した。
<サブゼロ処理条件>
・サブゼロ処理温度 :−196℃
・サブゼロ処理時間 :2時間
[9]次に、サブゼロ処理を施した焼結体に対し、以下に示す条件で焼き戻し処理を施
した。
<焼き戻し処理条件>
・焼き戻し処理温度 :560℃
・焼き戻し処理時間 :4時間
・冷却方法 :空冷
(サンプルNo.2〜27)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表1に示すように変更した以外は、それぞれサンプルN
o.1の焼結体の製造方法と同様にして焼結体を得た。なお、サンプルNo.27の焼結
体については、焼成後、下記の条件でHIP処理を施した。また、サンプルNo.14〜
16、26の焼結体は、それぞれガスアトマイズ法により製造された金属粉末を用いて得
られたものである。なお、表1には、備考欄に「ガス」と表記している。
<HIP処理条件>
・加熱温度 :1100℃
・加熱時間 :2時間
・加圧力 :100MPa
Figure 0006299610
なお、表1では、各サンプルNo.の焼結体のうち、本発明に相当するものを「実施例
」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各焼結体には、微量の不純物が含まれていたが、表1への記載は省略した。
(サンプルNo.28)
[1]まず、表2に示す組成の金属粉末を、サンプルNo.1の場合と同様、水アトマ
イズ法により製造した。
[2]次に、スプレードライ法により、金属粉末を造粒した。このとき使用したバイン
ダーはポリビニルアルコールであり、金属粉末100質量部に対して1質量部になる量を
使用した。また、ポリビニルアルコール1質量部に対して50質量部の溶媒(イオン交換
水)を使用した。これにより、平均粒径50μmの造粒粉末を得た。
[3]次に、この造粒粉末を、以下に示す成形条件で圧粉成形した。なお、この成形に
は、プレス成形機を使用した。また、作製する成形体の形状は、20mm角の立方体形状
とした。
<成形条件>
・材料温度:90℃
・成形圧力:600MPa(6t/cm
[4]次に、得られた成形体に対して、以下に示す脱脂条件で熱処理(脱脂処理)を施
し、脱脂体を得た。
<脱脂条件>
・脱脂温度 :450℃
・脱脂時間 :2時間(脱脂温度での保持時間)
・脱脂雰囲気:窒素雰囲気
[5]次に、得られた脱脂体を、以下に示す焼成条件で焼成した。これにより、焼結体
を得た。
<焼成条件>
・焼成温度 :1300℃
・焼成時間 :3時間(焼成温度での保持時間)
・焼成雰囲気:アルゴン雰囲気
[6]次に、得られた焼結体に対し、以下に示す条件で焼き入れ処理、サブゼロ処理お
よび焼き戻し処理を施した。
(サンプルNo.29〜38)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表2に示すように変更した以外は、それぞれサンプルN
o.28の場合と同様にして焼結体を得た。なお、サンプルNo.38の焼結体について
は、焼成後、下記の条件でHIP処理を施した。
<HIP処理条件>
・加熱温度 :1100℃
・加熱時間 :2時間
・加圧力 :100MPa
Figure 0006299610
なお、表2においては、各サンプルNo.の粉末冶金用金属粉末および焼結体のうち、
本発明に相当するものを「実施例」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としてい
る。
また、各焼結体には、微量の不純物が含まれていたが、表2への記載は省略した。
2.焼結体(Zr−Nb系)の評価
2.1 相対密度の評価
表1、2に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS Z 2501(2000
)に規定された焼結金属材料の密度を測定する方法に準じて、焼結密度を測定するととも
に、各焼結体を製造するのに用いた粉末冶金用金属粉末の真密度を参照して、各焼結体の
相対密度を算出した。
算出結果を表3、4に示す。
2.2 硬度の評価
表1、2に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS Z 2245(2005
)に規定されたロックウェル硬さ試験の方法に準じて、ロックウェルC硬さを測定した。
そして、測定した硬さについて、以下の評価基準にしたがって評価した。
<ロックウェルC硬さの評価基準>
A:ロックウェルC硬さが67以上である
B:ロックウェルC硬さが63以上67未満
C:ロックウェルC硬さが63未満である
評価結果を表3、4に示す。
2.3 抗折力の評価
表1、2に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS R 1601(2008
)に規定されたファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法に準じて、抗折力を測定し
た。なお、測定にあたっては、3点曲げ試験ジグを用いた。
そして、測定したこれらの抗折力について、以下の評価基準にしたがって評価した。
<抗折力の評価基準>
A:焼結体の抗折力が4600MPa以上である
B:焼結体の抗折力が4400MPa以上4600MPa未満である
C:焼結体の抗折力が4200MPa以上4400MPa未満である
D:焼結体の抗折力が4000MPa以上4200MPa未満である
E:焼結体の抗折力が3800MPa以上4000MPa未満である
F:焼結体の抗折力が3800MPa未満である
以上の評価結果を表3、4に示す。
2.4 疲れ強さの評価
表1、2に示す各サンプルNo.の焼結体について、疲れ強さを評価した。なお、疲れ
強さは、JIS Z 2273(1978)に規定された金属材料の疲れ試験方法に準じ
て回転曲げ疲れ限度を測定した後、以下の評価基準に当てはめることにより評価した。な
お、試験の際の応力振幅は300MPa、繰り返し周波数は30Hz、繰り返し数は1×
10回とした。
<回転曲げ疲れ限度の評価基準>
A:焼結体の回転曲げ疲れ限度が1200MPa以上である
B:焼結体の回転曲げ疲れ限度が1150MPa以上1200MPa未満である
C:焼結体の回転曲げ疲れ限度が1100MPa以上1150MPa未満である
D:焼結体の回転曲げ疲れ限度が1050MPa以上1100MPa未満である
E:焼結体の回転曲げ疲れ限度が1000MPa以上1050MPa未満である
F:焼結体の回転曲げ疲れ限度が1000MPa未満である
以上の評価結果を表3、4に示す。
Figure 0006299610
Figure 0006299610
表3、4から明らかなように、実施例に相当する焼結体は、比較例に相当する焼結体(
HIP処理を施した焼結体を除く。)に比べて、相対密度および硬度が高いことが認めら
れた。また、抗折力および疲れ強さといった特性についても、有意差があることが認めら
れた。
一方、実施例に相当する焼結体と、HIP処理を施した焼結体との間で、各物性値を比
較したところ、いずれも同程度であることが認められた。
3.焼結体(Hf−Nb系)の製造
(サンプルNo.39〜58)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表5に示すように変更した以外は、それぞれサンプルN
o.1の焼結体の製造方法と同様にして焼結体を得た。
Figure 0006299610
なお、表5では、各サンプルNo.の焼結体のうち、本発明に相当するものを「実施例
」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各焼結体には、微量の不純物が含まれていたが、表5への記載は省略した。
4.焼結体(Hf−Nb系)の評価
4.1 相対密度の評価
表5に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS Z 2501(2000)に
規定された焼結金属材料の密度を測定する方法に準じて、焼結密度を測定するとともに、
各焼結体を製造するのに用いた粉末冶金用金属粉末の真密度を参照して、各焼結体の相対
密度を算出した。
算出結果を表6に示す。
4.2 硬度の評価
表5に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS Z 2245(2005)に
規定されたロックウェル硬さ試験の方法に準じて、ロックウェルC硬さを測定した。
そして、測定した硬さについて、2.2に記載された評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表6に示す。
4.3 抗折力の評価
表5に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS R 1601(2008)に
規定されたファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法に準じて、抗折力を測定した。
そして、測定したこれらの抗折力について、2.3に記載した評価基準にしたがって評
価した。
以上の評価結果を表6に示す。
4.4 疲れ強さの評価
表5に示す各サンプルNo.の焼結体について、疲れ強さを評価した。なお、疲れ強さ
は、JIS Z 2273(1978)に規定された金属材料の疲れ試験方法に準じて回
転曲げ疲れ限度を測定した後、2.4に記載した評価基準にしたがって評価した。
以上の評価結果を表6に示す。
Figure 0006299610
表6から明らかなように、実施例に相当する焼結体は、比較例に相当する焼結体に比べ
て、相対密度および硬度が高いことが認められた。また、抗折力および疲れ強さといった
特性についても、有意差があることが認められた。
5.焼結体(Ti−Nb系)の製造
(サンプルNo.59〜68)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表7に示すように変更した以外は、それぞれサンプルN
o.1の焼結体の製造方法と同様にして焼結体を得た。
(サンプルNo.69)
平均粒径8.66μmの金属粉末と、平均粒径40μmのTi粉末と、平均粒径25μ
mのNb粉末と、を混合し、混合粉を調製した。なお、混合粉の調製にあたっては、混合
粉の組成が表7に示す組成になるように、金属粉末、Ti粉末およびNb粉末の各混合量
を調整した。
次いで、この混合粉を用い、サンプルNo.1の焼結体の製造方法と同様にして焼結体
を得た。
Figure 0006299610
なお、表7では、各サンプルNo.の焼結体のうち、本発明に相当するものを「実施例
」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各焼結体には、微量の不純物が含まれていたが、表7への記載は省略した。
6.焼結体(Ti−Nb系)の評価
6.1 相対密度の評価
表7に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS Z 2501(2000)に
規定された焼結金属材料の密度を測定する方法に準じて、焼結密度を測定するとともに、
各焼結体を製造するのに用いた粉末冶金用金属粉末の真密度を参照して、各焼結体の相対
密度を算出した。
算出結果を表8に示す。
6.2 硬度の評価
表7に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS Z 2245(2005)に
規定されたロックウェル硬さ試験の方法に準じて、ロックウェルC硬さを測定した。
そして、測定した硬さについて、2.2に記載された評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表8に示す。
6.3 抗折力の評価
表7に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS R 1601(2008)に
規定されたファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法に準じて、抗折力を測定した。
そして、測定したこれらの抗折力について、2.3に記載した評価基準にしたがって評
価した。
以上の評価結果を表8に示す。
6.4 疲れ強さの評価
表7に示す各サンプルNo.の焼結体について、疲れ強さを評価した。なお、疲れ強さ
は、JIS Z 2273(1978)に規定された金属材料の疲れ試験方法に準じて回
転曲げ疲れ限度を測定した後、2.4に記載した評価基準にしたがって評価した。
以上の評価結果を表8に示す。
Figure 0006299610
表8から明らかなように、実施例に相当する焼結体は、比較例に相当する焼結体に比べ
て、相対密度および硬度が高いことが認められた。また、抗折力および疲れ強さといった
特性についても、有意差があることが認められた。
7.焼結体(Y−Nb系)の製造
(サンプルNo.70〜79)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表9に示すように変更した以外は、それぞれサンプルN
o.1の焼結体の製造方法と同様にして焼結体を得た。
Figure 0006299610
なお、表9では、各サンプルNo.の焼結体のうち、本発明に相当するものを「実施例
」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各焼結体には、微量の不純物が含まれていたが、表9への記載は省略した。
8.焼結体(Y−Nb系)の評価
8.1 相対密度の評価
表9に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS Z 2501(2000)に
規定された焼結金属材料の密度を測定する方法に準じて、焼結密度を測定するとともに、
各焼結体を製造するのに用いた粉末冶金用金属粉末の真密度を参照して、各焼結体の相対
密度を算出した。
算出結果を表10に示す。
8.2 硬度の評価
表9に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS Z 2245(2005)に
規定されたロックウェル硬さ試験の方法に準じて、ロックウェルC硬さを測定した。
そして、測定した硬さについて、2.2に記載された評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表10に示す。
8.3 抗折力の評価
表9に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS R 1601(2008)に
規定されたファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法に準じて、抗折力を測定した。
そして、測定したこれらの抗折力について、2.3に記載した評価基準にしたがって評
価した。
以上の評価結果を表10に示す。
8.4 疲れ強さの評価
表9に示す各サンプルNo.の焼結体について、疲れ強さを評価した。なお、疲れ強さ
は、JIS Z 2273(1978)に規定された金属材料の疲れ試験方法に準じて回
転曲げ疲れ限度を測定した後、2.4に記載した評価基準にしたがって評価した。
以上の評価結果を表10に示す。
Figure 0006299610
表10から明らかなように、実施例に相当する焼結体は、比較例に相当する焼結体に比
べて、相対密度および硬度が高いことが認められた。また、抗折力および疲れ強さといっ
た特性についても、有意差があることが認められた。
9.焼結体(Ti−Zr系)の製造
(サンプルNo.80〜89)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表11に示すように変更した以外は、それぞれサンプル
No.1の焼結体の製造方法と同様にして焼結体を得た。
Figure 0006299610
なお、表11では、各サンプルNo.の焼結体のうち、本発明に相当するものを「実施
例」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各焼結体には、微量の不純物が含まれていたが、表11への記載は省略した。
10.焼結体(Ti−Zr系)の評価
10.1 相対密度の評価
表11に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS Z 2501(2000)
に規定された焼結金属材料の密度を測定する方法に準じて、焼結密度を測定するとともに
、各焼結体を製造するのに用いた粉末冶金用金属粉末の真密度を参照して、各焼結体の相
対密度を算出した。
算出結果を表12に示す。
10.2 硬度の評価
表11に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS Z 2245(2005)
に規定されたロックウェル硬さ試験の方法に準じて、ロックウェルC硬さを測定した。
そして、測定した硬さについて、2.2に記載された評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表12に示す。
10.3 抗折力の評価
表11に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS R 1601(2008)
に規定されたファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法に準じて、抗折力を測定した
そして、測定したこれらの抗折力について、2.3に記載した評価基準にしたがって評
価した。
以上の評価結果を表12に示す。
10.4 疲れ強さの評価
表11に示す各サンプルNo.の焼結体について、疲れ強さを評価した。なお、疲れ強
さは、JIS Z 2273(1978)に規定された金属材料の疲れ試験方法に準じて
回転曲げ疲れ限度を測定した後、2.4に記載した評価基準にしたがって評価した。
以上の評価結果を表12に示す。
Figure 0006299610
表12から明らかなように、実施例に相当する焼結体は、比較例に相当する焼結体に比
べて、相対密度および硬度が高いことが認められた。また、抗折力および疲れ強さといっ
た特性についても、有意差があることが認められた。
11.焼結体(Zr−Ta系)の製造
(サンプルNo.90〜99)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表13に示すように変更した以外は、それぞれサンプル
No.1の焼結体の製造方法と同様にして焼結体を得た。
Figure 0006299610
なお、表13では、各サンプルNo.の焼結体のうち、本発明に相当するものを「実施
例」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各焼結体には、微量の不純物が含まれていたが、表13への記載は省略した。
12.焼結体(Zr−Ta系)の評価
12.1 相対密度の評価
表13に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS Z 2501(2000)
に規定された焼結金属材料の密度を測定する方法に準じて、焼結密度を測定するとともに
、各焼結体を製造するのに用いた粉末冶金用金属粉末の真密度を参照して、各焼結体の相
対密度を算出した。
算出結果を表14に示す。
12.2 硬度の評価
表13に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS Z 2245(2005)
に規定されたロックウェル硬さ試験の方法に準じて、ロックウェルC硬さを測定した。
そして、測定した硬さについて、2.2に記載された評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表14に示す。
12.3 抗折力の評価
表13に示す各サンプルNo.の焼結体について、JIS R 1601(2008)
に規定されたファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法に準じて、抗折力を測定した
そして、測定したこれらの抗折力について、2.3に記載した評価基準にしたがって評
価した。
以上の評価結果を表14に示す。
12.4 疲れ強さの評価
表13に示す各サンプルNo.の焼結体について、疲れ強さを評価した。なお、疲れ強
さは、JIS Z 2273(1978)に規定された金属材料の疲れ試験方法に準じて
回転曲げ疲れ限度を測定した後、2.4に記載した評価基準にしたがって評価した。
以上の評価結果を表14に示す。
Figure 0006299610
表14から明らかなように、実施例に相当する焼結体は、比較例に相当する焼結体に比
べて、相対密度および硬度が高いことが認められた。また、抗折力および疲れ強さといっ
た特性についても、有意差があることが認められた。

Claims (19)

  1. Feが主成分であり、
    Crが2質量%以上6質量%以下の割合で含まれ、
    Siが0.2質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、
    Cが0.5質量%以上2質量%以下の割合で含まれ、
    Wが0.5質量%以上20質量%以下の割合で含まれ、
    Vが0.5質量%以上6質量%以下の割合で含まれ、
    Ti、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
    前記第1元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、
    前記第2元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする粉末冶金用金属粉末。
  2. Feが主成分であり、
    Crが3質量%以上5質量%以下の割合で含まれ、
    Siが0.4質量%以上1質量%以下の割合で含まれ、
    Cが0.75質量%以上1.75質量%以下の割合で含まれ、
    Wが1質量%以上10質量%以下の割合で含まれ、
    Vが1質量%以上4.5質量%以下の割合で含まれ、
    Ti、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
    前記第1元素が0.03質量%以上0.2質量%以下の割合で含まれ、
    前記第2元素が0.03質量%以上0.2質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする粉末冶金用金属粉末。
  3. Feが主成分であり、
    Crが3.5質量%以上4.5質量%以下の割合で含まれ、
    Siが0.6質量%以上0.8質量%以下の割合で含まれ、
    Cが1質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、
    Wが5質量%以上7質量%以下の割合で含まれ、
    Vが2質量%以上3.5質量%以下の割合で含まれ、
    Ti、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
    前記第1元素が0.05質量%以上0.1質量%以下の割合で含まれ、
    前記第2元素が0.05質量%以上0.1質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする粉末冶金用金属粉末。
  4. 前記第2元素の含有率E2を前記第2元素の原子量で除した値X2に対する前記第1元素の含有率E1を前記第1元素の原子量で除した値X1の比率X1/X2は、0.3以上3以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  5. 前記第2元素の含有率E2を前記第2元素の原子量で除した値X2に対する前記第1元素の含有率E1を前記第1元素の原子量で除した値X1の比率X1/X2は、0.5以上2以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  6. 前記第2元素の含有率E2を前記第2元素の原子量で除した値X2に対する前記第1元素の含有率E1を前記第1元素の原子量で除した値X1の比率X1/X2は、0.75以上1.3以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  7. 前記第1元素の含有率と前記第2元素の含有率の合計が0.05質量%以上0.6質量%以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  8. 前記第1元素の含有率と前記第2元素の含有率の合計が0.1質量%以上0.48質量%以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  9. 前記第1元素の含有率と前記第2元素の含有率の合計が0.12質量%以上0.24質量%以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  10. さらに、Moが2質量%以上11質量%以下の割合で含まれている請求項1ないし9のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  11. さらに、Moが3質量%以上9質量%以下の割合で含まれている請求項1ないし9のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  12. さらに、Moが4質量%以上6.5質量%以下の割合で含まれている請求項1ないし9のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  13. さらに、Coが3質量%以上12質量%以下の割合で含まれている請求項1ないし12のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  14. さらに、Coが4.5質量%以上10.5質量%以下の割合で含まれている請求項1ないし12のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  15. 平均粒径が0.5μm以上30μm以下である請求項1ないし14のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  16. 請求項1ないし15のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末と、前記粉末冶金用金属粉末の粒子同士を結着するバインダーと、を含むことを特徴とするコンパウンド。
  17. 請求項1ないし15のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末を造粒してなることを特徴とする造粒粉末。
  18. Feが主成分であり、
    Crが2質量%以上6質量%以下の割合で含まれ、
    Siが0.2質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、
    Cが0.5質量%以上2質量%以下の割合で含まれ、
    Wが0.5質量%以上20質量%以下の割合で含まれ、
    Vが0.5質量%以上6質量%以下の割合で含まれ、
    Ti、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
    前記第1元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、
    前記第2元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれている粉末冶金用金属粉末を焼結して製造されたことを特徴とする焼結体。
  19. Feが主成分であり、
    Crが2質量%以上6質量%以下の割合で含まれ、
    Siが0.2質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、
    Cが0.5質量%以上2質量%以下の割合で含まれ、
    Wが0.5質量%以上20質量%以下の割合で含まれ、
    Vが0.5質量%以上6質量%以下の割合で含まれ、
    Ti、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
    前記第1元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、
    前記第2元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする焼結体。
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