JP6295630B2 - バイオ燃料電池 - Google Patents

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Description

本願発明は、高耐久性のバイオ燃料電池に関し、更に詳細には、バイオ燃料電池の電極触媒である酵素が安定的かつ持続的に機能し得るバイオ燃料電池に関する。
近年、酵素や微生物が持つエネルギー変換システムを利用したバイオ燃料電池の開発が進められている。バイオプロセスを利用するバイオ燃料電池は、温和な条件かつ高い選択性を有し、燃料として糖やアルコール等の環境中に存在する多様な物質を利用できるという利点を有する。そのため、安全で環境負荷が小さいことから、携帯型機器や体内埋込型機器等の小型電子機器の電源等としての更なる発展が期待されている。近年、バイオ燃料電池の性能向上を目指し、安定性向上、電極素材の最適化、電極/酵素間の電子の移動の効率化等の観点からの研究開発が進められている。特にニーズが増加すると思われる小型電子機器への応用を実現するべく、燃料電池システム全体を乾電池サイズにまで小型化及び簡便化する技術の構築が求められている。
酵素を好適な環境下で安定的に働かせ、かつ電流密度を向上させて十分な出力電流を維持するため、酵素固定化電極の研究が行われ、これを利用するバイオ燃料電池の開発が進められている。例えば、グルコース等の燃料を分解する酸化酵素を触媒とした酵素固定化電極を利用したバイオ燃料電池が報告されている(特許文献1)。特許文献1に記載のバイオ燃料電池は、電子メディエーターが担持された燃料極(負極)と、燃料極での燃料の酸化による生成するプロトンを対極側に輸送する電解質膜と、電解質膜を介して燃料極から運ばれたプロトンを酸化する空気極(正極)により構成されている。しかしながら、特許文献1の技術は、電解質膜としてナフィオン(登録商標)膜等の固体電解質膜をそのまま使用するものである。そのため、水素イオン伝達を担う固体電解質膜上の酸性基との接触によって電極触媒である酵素が変性するとの問題があり、耐久性の観点から更なる改善の必要があった。
また、燃料をゲル構造の支持体に封入したバイオ燃料電池が本発明者らによって報告されている(特許文献2)。特許文献2に記載の技術は、燃料が天然高分子や合成高分子等のゲル構造を有する適当な支持体内に封入されて構成され、液体燃料を利用する場合と比してバイオ燃料電池システムの小型化及び簡便化を図ることができるというものである。しかしながら、特許文献2において耐久性に関して議論はなされておらず、また、本願明細書記載の実施例においても耐久性が低いことが認められている。
更に、マイクロ流路中で酵素反応を行うバイオ燃料電池が報告されている(特許文献3)。特許文献3に記載のバイオ燃料電池は、マイクロ流路内に酵素を固定した電極を配置し、フロー方式で酸化還元の酵素反応を行うように構成されている。フロー方式を利用することで、正負極のメディエーターの対極妨害を無くすことができ、隔膜を必要としないバイオ燃料電池を構築することができる。これにより、燃料電池システムの小型化を図ることができると記載されている。しかしながら、フロー方式を実現するための機構が必要であり、依然として燃料電池システムの小型化及び簡便化のニーズに応えるものではなかった。さらに、特許文献3には、マイクロ空間で酵素反応を行うことから、酵素反応効率が向上して発電効率が高まり、連続フローで燃料が送り込むことができることから安定した発電を行うことができると報告されている。しかしながら、高価なメディエーターを液体に含ませてフロー方式で送り込むことからコストが嵩み、また起電力も40mVと低く実用化に際しては更なる改良の必要があった。
これに対して、電極反応に際してメディエーターを必要としない微生物を触媒とするバイオ燃料電池が報告されている(特許文献4)。特許文献4に記載のバイオ燃料電池は、効率的な電極反応が可能な金属塩還元細菌を用いるものである。しかしながら、カチオン交換膜等の隔膜が必要であった。また、負極側では酸素の存在は電極反応の妨げとなるため、窒素を注入することにより溶存酸素を除去した後に密閉する等して嫌気性環境を維持する必要があった。したがって、依然として燃料電池システムの小型化及び簡便化のニーズに応えるものではなかった。また、出力も3.3mWと低く実用化に際しては更なる改良の必要があった。
また、電極反応に際してメディエーター及び隔膜を必要としない直接電子移動型バイオ燃料電池が報告されている(非特許文献1)。非特許文献1に記載の技術は、マルチ銅酵素を用いた酸素還元カソードと,フルクトースデヒドロゲナーゼを用いたフルクトース酸化アノードから構成されている酵素−電極間の直接電子移動反応系をベースにしたバイオ燃料電池に関するものである。メディエーター及び隔膜を必要としないため、バイオ燃料電池の簡便化及び小型化を図ることができる。しかしながら、最大出力は1mW/cm2であり、メディエーターを使用したバイオ燃料電池の10 mW/cm2(ソニー、2010年プレスリリースを参照)と比べると低かった。また、耐久性も数週間と不十分であり、産業上有用なバイオ燃料電池の構築には至っていなかった。
特開2005−310613号公報 特開2013−45647号公報 特開2004−296099号公報 特開平10−233226号公報
Kamitaka Y.他著、Fructose/dioxygen biofuel cell based on direct electron transfer-type bioelectrocatalysis.、Phys. Chem. Chem. Phys.、2007年4月、第9巻第15号、第1793〜1801頁
そこで、本発明は、電極触媒である酵素が安定的かつ持続的に機能し得る高耐久性バイオ燃料電池の構築を目的とし、更に、システム全体の小型化及び簡便化を通して、小型電子機器の電源として応用できるバイオ燃料電池システムの構築を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、バイオ燃料電池内部からの水分の蒸発を防ぐ保湿機構を設けることにより、酵素電極への燃料の安定的かつ持続的な供給が実現できるとの知見を得た。更に、酵素電極が電解質膜の酸性基と直接的に接触することを防ぐ保護機構を設けることにより電極触媒である酵素の失活を抑制若しくは緩和できるとの知見を得た。本発明者らは、これらの知見に基づき、電極触媒である酵素が安定的かつ持続的に機能し得るバイオ燃料電池を構築し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的を達成するため、以下の[1]〜[9]に示す発明を提供する。
〔1〕電解質膜を介して対向する正極及び負極を有し、前記正極及び負極の少なくとも一方が酵素電極として構成されるバイオ燃料電池であって、
前記酵素電極と前記電解質膜との間に形成された保護膜と、
前記バイオ燃料電池の内部に連通し外気に開放される通気構造部に設けられ前記内部からの液体の蒸発を防ぐ防水膜と、を備える。
上記〔1〕のように構成することにより、電極触媒である酵素が安定的かつ持続的に機能し得る高耐久性のバイオ燃料電池を構築することができる。つまり、電解質膜を採用することにより、負極から正極への水素イオンの円滑な伝達を達成できるだけなく、負極メディエーター分子の負極から正極への漏出、又は、正極メディエーター分子の正極から負極への漏出によるバイオ燃料電池内部の反応妨害をも防げるとの利点をも有する。そして、かかる電解質膜と酵素電極との間に保護膜を形成することにより、電解質膜に含まれる酸性基による酵素の変性を抑制及び緩和することができる。これにより、酵素電極が安定的かつ持続的にその機能を発現でき、バイオ燃料電池の耐久性を向上させることができる。そして、防水膜を設けることにより、バイオ燃料電池の内部からの水分の蒸発による乾燥を防ぐことができる。これにより、酵素電極への液体燃料等の供給が安定的かつ持続的に行われ、酵素電極が安定的かつ持続的にその機能を発現できる環境を維持できることとなる。したがって、バイオ燃料電池の耐久性を更に向上させることができる。
〔2〕前記電解質膜は、水素イオン伝達機能を有する酸性基を含み、前記酸性基に不活性化処理が施されている。
上記〔2〕のように構成することにより、上記保護膜の効果と相俟って、電解質膜の酸性基による酵素の変性を効果的に抑制及び緩和することができる。これにより、酵素電極が安定的かつ持続的にその機能を発現でき、バイオ燃料電池の耐久性を更に向上させることができる。
〔3〕加湿機構を備える。
〔4〕前記防水膜は、空気を透過させるが水分を透過させない素材で形成されている。
上記〔3〕及び〔4〕のように構成することにより、バイオ燃料電池の内部からの水分の蒸発を更に効果的に防ぐことができ、バイオ燃料電池の耐久性を更に向上させることができる。また、特に〔4〕の構成によれば、水分の蒸発を防ぐ性質を有すると共に、大気中の酸素を透過できる性質を有する素材を選択することにより、正極反応に必要な酸素を十分に供給した上で、水分蒸発による乾燥を防ぐことができる。つまり、高い発電効率を維持しつつ、更なる耐久性の向上を図ることができる。
〔5〕前記保護膜は、水素イオンを透過させる細孔を有し、かつ酵素の失活を招かない温和な化学的性質を有する素材で形成されている。
上記〔5〕のように、保護膜を、水素イオンを透過させる細孔を有し、かつ酵素の失活を招かない温和な化学的性質を有する素材で形成することにより、バイオ燃料電池の出力に大きな影響を与える水素イオンの伝達機能を損なわずに、酵素を変性から防御することができる。バイオ燃料電池の出力の維持、及びバイオ燃料電池の耐久性向上の両面において利点がある。
〔6〕前記液体に含まれる緩衝物質は、生化学的緩衝物質である。
〔7〕前記生化学的緩衝物質は、酵素変性作用を有しない物質である。
このように緩衝物質として酵素変性作用を有しない生化学的緩衝物質を使用することにより、酵素の変性を抑制及び緩和することができる。これにより、酵素電極が安定的かつ持続的にその機能を発現でき、バイオ燃料電池の耐久性を向上させることができる。
〔8〕前記酵素電極は、補酵素要求性酵素を電極触媒とする。
上記〔8〕の構成によれば、本発明の酵素電極として補酵素要求性酵素を利用することができ、特に本発明のバイオ燃料電池は補酵素要求性酵素に好適に利用することができる。電解質膜及び保護膜を設けることにより、酵素電極からの補酵素の拡散を防止することができ、酵素電極が安定的かつ持続的にその機能を発現でき、バイオ燃料電池の耐久性を向上させることができる。また、燃料中に補酵素を添加することができ、酵素電極の十分な機能の発現に効果的である。
〔9〕前記負極は、グルコース脱水素酵素を電極触媒とする酵素電極である。
上記〔9〕の構成によれば、負極の電極触媒としてグルコース脱水素酵素を用いることができる。グルコース脱水素酵素を用いることで、燃料としてグルコースを利用することができ、グルコースは生体内物質であることから安全かつ安価なエネルギー源となる。したがって、このように構成されたバイオ燃料電池は、携帯型機器や体内埋め込み式機器等の電源に安価かつ安全に利用することができる。
本発明の好適実施形態のバイオ燃料電池の模式図である。 先願発明(特開2013−45647号公報)のバイオ燃料電池の耐久性を評価した比較例1の結果を示すグラフであり、当該バイオ燃料電池の電圧の経時変化を示すグラフである。 水分蒸発抑制による耐久性向上効果を検討した実施例1の結果を示すグラフであり、ポリエチレン袋を設けた場合のバイオ燃料電池の電圧の経時変化を示すグラフである。 水分蒸発抑制による耐久性向上効果を検討した実施例1の結果を示すグラフであり、ポリエチレン袋と水を含ませたペーパータオルを設けた場合のバイオ燃料電池の電圧の経時変化を示すグラフである。 燃料への補酵素添加と電解質膜による耐久性向上効果を検討した実施例2の結果を示すグラフであり、燃料に補酵素を添加した場合、及び隔膜として電解質膜を組み込んだ場合のバイオ燃料電池の電圧の経時変化を示すグラフである。 電解質膜の不活性化及びセルロース膜による挟み込みによる耐久性向上効果を検討した実施例3において構築したバイオ燃料電池の模式図であり、電解質膜がセルロース膜で挟み込まれていることを示す。 電解質膜の不活性化及びセルロース膜による挟み込みによる耐久性向上効果を検討した実施例3の結果を示すグラフであり、不活性化された電解質膜、及び更にセルロース膜で挟み込まれた電解質膜が組み込まれたバイオ燃料電池の電圧の経時変化を示すグラフである。 緩衝液の種類による耐久性向上効果を検討した実施例4の結果を示すグラフであり、緩衝物質としてイミダゾール及びリン酸を用いた場合のバイオ燃料電池の電圧の経時変化を示すグラフである
以下、本願発明について詳細に説明する。
本発明のバイオ燃料電池は、電解質膜を介して対向する正極及び負極を有し、前記正極及び前記負極の少なくとも一方が酵素電極として構成される。そして、前記酵素電極と前記電解質膜との間に形成された保護膜と、前記バイオ燃料電池の内部に連通し外気に開放される通気構造部に設けられた防水膜を備えて構成される。保護膜は、酵素電極を電解質膜の酸性基との直接的な接触から防御する保護機構として機能し、防水膜はバイオ燃料電池内部からの水分の蒸発を防ぐ保湿機構として機能する。
ここで、本発明の好適実施形態のバイオ燃料電池について、模式的に表した概念図である図1を用いて説明する。図1の各構成要素を積層することにより本発明のバイオ燃料電池が構築される。ただし、本発明は、かかる実施形態に限定されると解釈されるべきではない。図1において、外部回路によって接続された負極21と正極22が電解質膜31を挟んで対向するように配置されており、負極21及び正極22の少なくとも一方は酵素電極として構成される。電解質膜31は保護膜32a、32bによって挟持されており、酵素電極と電解質膜31が直接接触しないように構成されている。そして負極21に隣接して燃料保持部1が設けられ、燃料を負極21に供給するように構成される。そして、正極22の電解質膜31の反対側には外気に開放される通気構造部4が設けられ、外気が正極22に供給されるように構成される。このとき、通気構造部4には防水膜5が設けられ、外気は防水膜5を経てバイオ燃料電池内部に取り込まれる。なお、電解質膜31と保護膜32a、32bは、負極21及び正極22を隔てることから、隔膜3と称する場合がある。また、外枠はアクリル板100等で形成される。そして、負極21と外枠、及び正極22と外枠の間にはチタンメッシュ103等のスペーサーが配設され、一端が端子出しのため外枠の外に延出されて構成されている。
電極は、電解質膜31を介して正極22と負極21を対向させて構築される。電極としては、燃料のもつ化学エネルギー取出しそれを電子エネルギーに変換し得、かつ、電子伝導性を有するものであれば特に制限はない。具体的には、負極21では酸化反応を行い、正極22では還元反応を行うように構成する。燃料供給性と反応性の観点から、負極21では燃料の酸化反応を行い、正極22では酸素の還元反応を行うように電極を選択することが特に好ましい。
電極触媒としては、燃料からの化学エネルギーを電気エネルギーに変換可能な酵素を利用することができる。酵素電極は、適当な導電性基材上の少なくとも一部に酵素を含む。正極22、負極21の双方を酵素電極として構成してもよいし、負極21のみを酵素電極として、正極22を金属の触媒反応を利用する金属電極等として構成しても良い。
酵素電極として使用される酵素は、酵素の触媒反応と電極反応を共役させ得ることができる限り特に制限は無く、何れをも利用することができる。酵素は単独で、若しくは複数組み合わせて利用することができる。したがって、例えば、任意の酵素と、その酵素に共役する他の任意の酵素とを組み合わせて用いることによって、共役系を構築することもできる。例えば、酸化還元酵素、加水分解酵素、転移酵素等を利用することができる。これに限定するものではないが、酸化還元酵素の利用が好ましい。酸化還元酵素としては、脱水素酵素、オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ヒロドキシラーゼ、又はオキシゲナーゼ等を含む。具体的には、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、ピルビル酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、フルクトシルアミンオキシダーゼ、グルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、ピルビル酸脱水素酵素、乳酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、ヒドロキシ酪酸脱水素酵素、及びピリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ等のマルチ銅酵素等を例示することができる。補酵素及び補因子要求性の有無についても特に制限はない。補酵素及び補因子を要求する酵素については、アポ形態、ホロ形態の別をも問わないが、電極反応に際しては活性を発現できるように構成する。したがって、アポ形態として電極上に保持された場合には、補酵素及び補因子を燃料等に封入する等、活性型に変換するための手段を設けることが必要となる。
本発明のバイオ燃料電池においては、負極21は脱水素酵素等の燃料の酸化反応を行う酵素を選択することが好ましい。また、正極22を酵素電極として構築する場合にはオキシダーゼ等の酸素の還元反応を行う酵素を選択することが好ましい。特には、負極側触媒としてグルコース脱水素酵素、正極側触媒としてビリルビンオキシダーゼが好ましい。例えば、実施例で使用した負極側触媒としてアシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)NBRC12552株由来のグルコース脱水素酵素、正極側触媒として市販のビリルビンオキシダーゼ(天野エンザイム)等を挙げることができる。
アシネトバクター・カルコアセティカスNBRC12552株由来のグルコース脱水素酵素の配列情報は、GENBANK ACCESSION No : 15871(配列番号1(塩基配列)及び配列番号2(アミノ酸配列))から取得することができる。詳細は、Cleton-Jansen,A.M., Goosen,N., Vink,K. and van de Putte,P.他著、「Cloning, characterization and DNA sequencing of the gene encoding the Mr 50,000 quinoprotein glucose dehydrogenase from Acinetobacter calcoaceticus(アシネトバクター カルコアセティカス由来のMr 50,000のキノプロテイン グルコース脱水素酵素をコードする遺伝子のクローニング、特徴付け、及びDNAシークエンシング)」、JOURNAL Mol. Gen. Genet.、第217巻、第2〜3巻、第430〜436頁、1989年)に記載されている。この酵素は、Acinetobacte細菌のペリプラズム画分に存在しており、酸化により得られた電子を呼吸鎖に渡すことでエネルギー生産に関与している。活性の発現には、PQQとカルシウムイオンが必須で、カルシウムイオンは触媒反応に関与する他にホモ2量体形成にも関係していることが知られている。この酵素は、他のグルコース酸化酵素に比べ、反応速度が非常に速く、また溶存酸素の影響を受けにくいという特徴があるため酵素電極として利用価値が非常に高い酵素である。
ビリルビンオキシダーゼは、銅イオンを活性中心に持つマルチ銅オキシダーゼであり、ビリルビンからビルベルジンへの酸化反応を触媒する酵素である。基質から取り出した電子を用いて分子状酸素を電子還元し水分子を生成する反応を触媒するという性質を有することから、燃料電池の正極触媒としての利用価値が高い。
また、酵素の由来も特に限定されない。したがって、天然に存在する細菌、酵母、及び動植物等の任意の生物体から適当なタンパク質の単離精製技術により調製された天然由来のものであってもよく、遺伝子工学的手法により組換え体として製造されたもの、あるいは化学的に合成されたものであってもよい。
遺伝子工学的手法により製造する場合には公知の方法を利用することができる。具体的には、所望の酵素遺伝子の塩基配列を基にして作成したDNAをプローブとして用いるハイブリダイゼーション法により、生物体由来のゲノムDNA、全RNAから逆転写反応によって合成したcDNA等から所望の酵素をコードする核酸分子を調製することができる。多くの酵素のアミノ酸配列及びそれをコードする遺伝子の塩基配列は公知であり、GenBank、EMBL、DDBJ等の遺伝子配列データベースから取得することができる。一例として、上述のアシネトバクター カルコアセティカス由来のグルコース脱水素酵素(GENBANK ACCESSION No : 15871)の配列情報を配列表の配列番号1(塩基配列)及び配列番号2(アミノ酸配列)に示す。また、ここで提示する配列番号3(塩基配列)及び配列番号4(アミノ酸配列)をも利用することができる。ここで用いられるプローブは、所望の酵素と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドであり、常法に基づいて調製することができる。例えば、ホスホアミダイト法等に基づく化学合成法、既に標的となる核酸が取得されている場合にはその制限酵素断片等が利用可能である。このようなプローブとしては、所望の酵素をコードする核酸分子の塩基配列に基づき、この塩基配列の連続する10以上、好ましくは15以上、更に好ましくは約20〜50の塩基からなるオリゴヌクレオチドが例示される。そして、プローブは必要に応じて適当な標識が付されていてよく、このような標識として放射線同位体、蛍光色素等が例示される。
また、所望の酵素遺伝子の塩基配列を基にして作成したプライマーとして用いるPCRによっても同様に、生物体由来のゲノムDNA、cDNAを鋳型として所望の酵素をコードする核酸分子を調製することができる。PCRを利用する場合に用いられるプライマーは、所望の酵素をコードする核酸配列と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドであり、常法に基づいて調製することができる。例えば、ホスホアミダイト法等に基づく化学合成法、既に標的となる核酸が取得されている場合にはその制限酵素断片等が利用可能である。化学合成法に基づきプライマーを調製する場合には、合成に先立って標的核酸の配列情報に基づいてプライマーの設計を行う。プライマーの設計は、所望の領域を増幅するように、例えばプライマー設計支援ソフト等を利用して設計することができる。プライマーは合成後、HPLC等の手段により精製される。また、化学合成を行う場合には市販の自動合成装置を利用することも可能である。このようなプライマーとしては、所望の増幅領域を挟んで設計され、10以上、好ましくは15以上、更に好ましくは約20〜50の塩基からなるオリゴヌクレオチドが例示される。
ここで、相補的とは、プローブ又はプライマーと標的核酸分子とが塩基対合則に従って特異的に結合し安定な二重鎖構造を形成できることを意味する。ここで、完全な相補性のみならず、プローブ又はプライマーと標的核酸分子が互いに安定な二重鎖構造を形成し得るのに十分である限り、いくつかの核酸塩基のみが塩基対合則に沿って適合する部分的な相補性であっても許容される。その塩基数は、標的核酸分子を特異的に認識するために十分に長くなければならないが、長すぎると逆に非特異的反応を誘発するので好ましくない。したがって、適当な長さはGC含量等の標的核酸の配列情報、並びに、反応温度、反応液中の塩濃度等のハイブリダイゼーション反応条件など多くの因子に依存して決定される。
更に、常法のホスホルアミダイト法等のDNA合成法を利用して、所望の酵素をコードする核酸分子を化学的に合成することができる。
そして、得られた核酸分子用いて、当業者に公知の遺伝子組換え技術により所望の酵素を製造することができる。
具体的には、所望の酵素をコードする核酸分子を適当な発現ベクター中に挿入し、これを宿主に導入することによって形質転換体を作製する。ここで、利用可能なベクターとしては、外来DNAを組み込め、かつ宿主細胞中で自律的に複製可能なものであれば特に制限はない。したがって、ベクターは、外来遺伝子を挿入できる少なくとも1つの制限酵素部位の配列を含むものである。例えば、プラスミドベクター(pEX系、pUC系、及びpBR系等)、ファージベクター(λgt10、λgt11、及びλZAP等)、コスミドベクター、ウイルスベクター(ワクシニアウイルス、及びバキュロウイルス等)等が包含される。そして、ベクターは、外来遺伝子がその機能を発現できるように組み込まれ、機能発現に必要な他の既知の塩基配列が含まれていてもよい。例えば、プロモータ配列、リーダー配列、シグナル配列、並びにリボソーム結合配列等が挙げられる。プロモータ配列としては、例えば、宿主が大腸菌の場合にはlacプロモータ、trpプロモータ等が好適に例示される。しかしながら、これに限定するものではなく既知のプロモータ配列を利用できる。更に、宿主において表現型選択を付与することが可能なマーキング配列等をも含ませることができる。このようなマーキング配列としては、薬剤耐性、栄養要求性などの遺伝子をコードする配列等が例示される。具体的には、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子等が例示される。
ベクターへの外来遺伝子の挿入は、例えば、適当な制限酵素で所望の酵素をコードする核酸分子を切断し、適当なベクターの制限酵素部位、又はマルチクローニング部位に挿入して連結する方法などを用いることができるが、これに限定されない。連結に際しては、DNAリガーゼを用いる方法等、既知の方法を利用できる。また、DNA Ligation Kit(タカラバイオ社)等の市販のライゲーションキットを利用することもできる。
形質転換体の作製に際して宿主となる細胞としては、外来遺伝子を効率的に発現できる宿主細胞であれば、特に制限はない。原核生物細胞を好適に利用でき、特には大腸菌を利用することができる。その他、枯草菌、バシラス属細菌、シュードモナス属細菌等をも利用できる。大腸菌としては、例えば、E.coli DH5α、E.coli BL21、E.coli JM109等を利用できる。更に、原核生物に限定されず真核生物細胞を利用することが可能である。例えば、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母、Sf9細胞等の昆虫細胞、CHO細胞、COS-7細胞等の動物細胞等を利用することも可能である。形質転換法としては、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポソームフェクション法、マイクロインジェクション法等を既知の方法を利用することができる。
続いて、得られた形質転換体を、導入された核酸分子の発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養し、所望の酵素を製造する。培養は、常法に準じて行うことができ、宿主細胞の栄養生理学的性質を勘案して、培養条件を選択すればよい。使用される培地としては、宿主細胞が資化し得る栄養素を含み、形質転換体におけるタンパク質の発現を効率的に行えるものであれば特に制限はない。したがって、宿主細胞の生育に必要な炭素源、窒素源その他必須の栄養素を含む培地であることが好ましく、天然培地、合成培地の別を問わない。例えば、炭素源として、グルコース、デキストラン、デンプン等が、また、窒素源としては、アンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、ペプトン、カゼイン等が挙げられる。他の栄養素としては、所望により、無機塩類、ビタミン類、抗生物質等とを含ませることができる。宿主細胞が大腸菌の場合には、LB培地、M9培地等が好適利用できる。また、培養形態についても特に制限はないが、大量培養の観点から液体培地が好適に利用できる。
所望の組換えベクターを保持する宿主細胞の選別は、例えば、マーキング配列の発現の有無により行なうことができる。例えば、マーキング配列として薬剤耐性遺伝子を利用する場合には、薬剤耐性遺伝子に対応する薬剤含有培地で培養することによって行うことができる。
形質転換体の培養物から、所望の酵素を単離精製するには、通常のタンパク質の単離、精製法を用いることができる。精製は、上記形質転換体の培養物から、所望の酵素の存在する画分に応じて、一般的なタンパク質の単離精製方法に準じた手法を適用すればよい。具体的には、所望の酵素が宿主細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離、濾過等の手段により宿主細胞を除去して培養上清を得る。続いて、培養上清に、公知のタンパク質精製方法を適宜選択することにより、単離精製することができる。例えば、硫酸アンモニウム沈殿、透析、SDS-PAGE電気泳動、ゲル濾過、疎水、陰イオン、陽イオン、アフィニティークロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー等の公知の単離精製技術を単独、又は適宜組み合わせて適用することができる。特にアフィニティークロマトグラフィーを利用する場合、所望の酵素をヒスチジンタグ(His Tag)等のタグペプチドとの融合タンパク質として発現させて、かかるタグペプチドに対する親和性を利用することが好ましい。また、所望の酵素が宿主細胞内で産生される場合には、培養物を遠心分離、濾過等の手段により宿主細胞を回収する。続いて、リゾチーム処理などの酵素的破砕方法、又は超音波処理、凍結融解、浸透圧ショック等の物理的破砕方法等により、宿主細胞を破砕する。破砕後、遠心分離、濾過等の手段により可溶化画分を収集する。得られた可溶化画分を、前述の細胞外に生産できる場合と同様に処理することにより単離精製することができる。
また、アミノ酸配列が公知である酵素については、化学的合成技術によっても製造することができる。例えば、所望の酵素のアミノ酸配列の全部、又は一部を、ペプチド合成機を用いて合成し、得られるポリペプチドを適当な条件の下で、再構築することにより調製することもできる。
本発明で使用する酵素はさらに、天然由来の酵素に人為的に変異を施した改変体であってもよい。ここで、改変体とは、天然由来の酵素の特定のアミノ酸に改変が生じている改変部位を有するアミノ酸配列を含むものを意味する。改変とは、改変の基礎となるタンパク質のアミノ酸配列のうち、1又は複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および付加の少なくとも1つからなる改変が生じていることを意味する。そして、「1又は複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び付加の少なくとも1つからなる改変」とは、改変の基礎となるタンパク質をコードする遺伝子に対する公知のDNA組換え技術、点変異導入方法等によって、欠失、置換、挿入又は付加することができる程度の数のアミノ酸が、欠失、置換、挿入又は付加されることを意味し、これらの組み合わせをも含む。例えば、このような改変体は、アミノ酸レベルで70 %以上、好ましくは80 % 以上、更に好ましくは90 %以上の相同性を保持するものとすることができる。
このような改変体は、公知の変異導入技術を利用することにより作製できる。例えば、部位特異的突然変異誘発法、PCR等を利用して点変異を導入するPCR突然誘発法、あるいは、トランスポゾン挿入突然変異誘発法などの公知の変異導入技術を利用することができる。市販の変異導入用キット(例えば、QuikChange(登録商標)Site-directed Mutagenesis Kit(Stratagene社製)等を利用してもよい。また、常法のホスホルアミダイト法等のDNA合成法を利用して、所望の改変を施した酵素をコードする核酸分子を構築することによって行なうことができ、これを、上記した当業者に公知の遺伝子組換え技術により所望の酵素を製造することができる。
酵素電極とする場合、酵素は導電性基材上に保持される。好ましくは、酵素は導電性基板上に固定化される。酵素の固定化は、公知の方法の何れをも利用して行うことができる。例えば、共有結合、物理的吸着、イオン結合、抗体等の生物化学的特異的結合による担体結合法、2以上の官能基をもつ試薬による架橋法、ゲル内に封入する包括法等によって固定化することができる。また、これらを組み合わせてもよく、各々の酵素に最適化な酵素固定化法を適宜選択することが望ましい。包括法としては、種々の天然高分子や合成系高分子等の網目状の三次元構造を持つゲル内に封入する格子型を利用することができる。ゲル化剤としては、ゲル燃料の支持体として上記で例示したものを好適に利用することができ、親水性のポリマーの利用が好ましい。また。透析膜等の半透性膜によって封入するマイクロカプセル型、リン脂質のような液体膜によって封入するリポソーム型等を利用することができる。更に、酵素は結晶状態で固定化してもよく、予め調製した酵素結晶を導電性基板上に固定化しても、また導電性基板上で酵素結晶を調製することにより固定化してもよい。
導電性基材としては、外部回路に接続可能で電子を伝達できる基材であれば特に制限はない。グラファイト、グラッシーカーボン、カーボンペーパー、カーボンフェルト、カーボンクロス等のカーボン材、アルミニウム、銅、金、白金、銀、ニッケル、パラジウム等の金属又は合金、SnO2、In2O3、WO3、TiO2等の導電性酸化物等が例示できるが、これらに限定するものではない。従来公知の材質の導電性基材を使用することができる。また、これを単層又は2種以上の積層構造をもって構成してもよい。また、導電性向上のため、市販のケッチェンブラック等のカーボンブラック、活性炭粉末等の導電性カーボン微粒子を基材に塗布してもよい。そして、導電性基材の大きさ及び形状等は特に限定されるものではなく、使用目的に応じて適宜調整することができる。特に本発明の酵素結晶固定化電極は、マイクロメートルオーダーに電極面積を小さくした微小電極として構成することができる。
本発明のバイオ燃料電池の防水膜5は、水分の蒸発を防ぐ性質を有すると共に、大気中の酸素を透過できる性質を有する素材で形成される限り、特に制限はない。素材の性質は、例えば、単位時間当たり、単位面積当たりの酸素透過率(g/m2/24時間)、水蒸気透過率(g/m2/24時間)等で定義することができる。水蒸気透過率は低く、かつ酸素透過率/水蒸気透過率の比率が大きい素材が好ましい。特に、水蒸気透過率が100g/m2/24時間以下、かつ酸素透過率/水分透過率の比率が0.1以上であることが好ましい。素材としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン(Poly(vinylidene fluoride-hexafluoropropylene))、フッ化エチレンプロピレン共重合体(Fluorinated ethylene-propylene copolymer)等)、ポリ塩化ビニル等を挙げることができるが、好ましくは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンであり、特に好ましくは、低密度ポリエチレンを使用できる。なお、ポリエチレンはエチレンが重合した高分子であるが、重合法によって、分子量、構造、結晶性、密度が異なることから、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンに分類される。低密度ポリエチレンとは、高温、高圧条件下で反応させて製造されることから、短くランダムに分岐した構造を有する。したがって、結晶化度が低く、密度が好ましくは約0.91〜0.93程度のものを指す。低密度ポリエチレンとして、市販のジップロック(登録商標)等を使用することもできる。一方、高密度ポリエチレンとは、金属酸化物、アルキルアルミニウム等を触媒として、常圧またはわずかな加圧下でエチレンを重合させることにより製造されるものであり、密度が好ましくは0.94〜0.96程度のものを指す。
防水膜5は、バイオ燃料電池内部、特には燃料から外部への水分の蒸発を防げ、かつ正極22への酸素の供給との目的を達成することができる限り、何れの部位に設置されていてもよい。本発明のバイオ燃料電池は、正極22に酸素を供給するために通気構造部4を設けることができ、かかる通気構造部4の外気との接触面を被覆するように防水膜5を設けることが好ましい。例えば、通気構造部4を、外気を取り込むための通気孔として形成した場合には、かかる通気孔を塞ぐように防水膜5を設置することができる。また、バイオ燃料電池の全体を包み込むように防水膜5を形成してもよい。
更に、本発明のバイオ燃料電池は、内部からの水分の蒸発を更に効果的に防ぐため、加湿機構(図示せず)を備えることが好ましい。例えば、水を含ませた基材、例えば、紙、織布、不織布等を用いることができる。そして、加湿機構は、バイオ燃料電池の内部に組み込むことができる。また、加湿効果がバイオ燃料電池内部に及ぶ限りにおいてはバイオ燃料電池セルの外側に設置してもよく、その場合には防水膜により両者を一体として包み込むことが好ましい。ただし、加湿機構は水分の蒸発を完全に防ぐことができるバイオ燃料電池セル筐体を利用することにより、省略することができる。
このように防水膜5を設けることにより、バイオ燃料電池の内部からの水分の蒸発による乾燥を防ぐことができる。これにより、酵素電極への液体燃料等の供給が安定的かつ持続的に行われ、酵素電極が安定的かつ持続的にその機能を発現できる環境を維持でき、バイオ燃料電池の耐久性を向上させることができる。そして、防水膜5として、水分の蒸発を防ぐ性質を有すると共に、大気中の酸素を透過できる性質を有する素材を選択することにより、正極22反応に必要な酸素を十分に供給した上で、水分蒸発による乾燥を防ぐことができる。つまり、これにより、高い発電効率を維持しつつ、更なる耐久性の向上を図ることができる。
本発明のバイオ燃料電池の電解質膜31は、水素イオン透過性を有するが、電子透過性を有しない素材により形成される限り、特に制限はない。更に、メディエーター透過性を有しない素材であることが望ましい。本発明のバイオ燃料電池は、発電機構は、まず、負極21での燃料の酸化反応で電子と水素イオンが発生する。電子は外部回路を経て、水素イオンは電解質膜31を透過して正極22に移動し、正極22で、この酸素と電子、そして外気から取り込んだ酸素を使用して還元反応を起こすものである。したがって、電解質膜31は、かかる発電機構に適合するものであることが必要であり、水素イオン透過性を有するが、電子透過性を有しないものであることが好ましい。特に、バイオ燃料電池が出力する電流は水素イオンの電解質膜31の透過速度に比例する。そのため、電解質膜31の選択はバイオ燃料電池の出力を左右する重要な構成要素となる。
電解質膜31としては、例えば、固体電解質膜を利用することができる。固体電解質膜は、ポリマーの高分子主鎖に酸性基が側鎖として高密度に結合した構造を有し、隣り合う酸性基に順次水素イオンを伝達することにより、負極側から正極側に水素イオンを透過させることができる。このような固体電解質膜として、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基等の酸性基を持つポリマー膜等を利用することができる。ここで、好適な固体電解質膜として、パーフルオロカーボン系ポリマー膜、ベンゾイミダゾール系ポリマー膜等のイオン交換膜が例示される。パーフルオロカーボン系ポリマー膜として疎水性テフロン骨格とスルホン酸基を持つパーフルオロ側鎖から構成されるパーフルオロスルホン酸系ポリマー膜の一種であるナフィオン(登録商標)膜を利用でき、ベンゾイミダゾール系ポリマー膜としてポリベンゾイミダゾール/H3PO4(PBI/ H3PO4)膜(愛産研ニュース11月号(2008.11)を参照のこと)を利用することができる。
また、電解質膜31として、細孔フィリング電解質膜を利用することができる。細孔フィリング電解質膜とは、多孔質基材のサブミクロンサイズの微細孔中に電解質ポリマーを充填した電解質膜であり、基材及びポリマーの設計によりイオン伝達速度の制御を行うことができるというものである。例えば、ポリオレフィン系多孔質基材に2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS)系のポリマーを充填したもの(東亞合成グループ研究年報TREND2006第7号等を参照のこと)を利用することができる。
電解質膜31として、固体電解質膜等のように酸性基による水素イオン透過作用を利用する場合には、その酸性基を不活性化させることが好ましい。酸性基を不活性化することにより、酵素電極の失活を抑制若しくは緩和することができる。ここで、酸性基の不活性化とは、酸性基が、電離した水素イオンの代わりにプラスに帯電している原子や分子等で置換されている状態を意味する。例えば、ナトリウムイオンやカリウムイオン、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンやその他の金属イオン、分子イオン等で置換されることを意味する。不活性化処理としては、酸性基をこれらのイオンに接触させることにより行うことができる。接触は公知の手段により行うことができるが、例えば、これらイオンを含む水溶液に電解質膜31を浸漬させることにより、また電解質膜31に当該水溶液を滴下若しくは噴霧すること等によって行うことができる。
酸性基の不活性化は、電解質膜31上の酸性基の一部若しくは全部を対象とする。このとき、全ての酸性基が不活性化され上記イオンにより置換されたとしても、酸性基とイオンの間は解離反応と結合反応が平衡状態にある。したがって、負極における燃料の酸化反応により生じた水素イオン濃度が高くなるに従って、酸性基が水素イオンにより再置換され、負極21側から正極22側に水素イオンを順次伝達していくことができる。つまり、不活性化の程度は水素イオン透過性の面からは特に制限はない。
このように電解質膜31を設けることにより、負極21から正極22への水素イオンの円滑な伝達を達成できるだけなく、負極メディエーター分子の負極21から正極22への漏出、又は正極メディエーター分子の正極22から負極21への漏出によるバイオ燃料電池内部の反応妨害をも防げるとの利点を有する。また、電極酵素の離脱を防止できるとの利点も有する。更に、電解質膜31を設けることは、補酵素要求性酵素を電極触媒として利用する場合にも利点がある。つまり、酵素電極からの補酵素の拡散を防止することができ、酵素電極が安定的かつ持続的にその機能を発現できる。
ここで、電解質膜31として、一定の大きさ以下の分子又はイオンのみを透過することができる素材、いわゆる半透膜の使用も想定されるが、本発明においては適当ではない。例えば、セルロース膜は500Da程度以下の物質を透過させることができる。したがって、これを利用することにより、水素イオンを透過させることができるが、100時間程度経過すると、メディエーター分子等の拡散による対極の反応妨害が問題となり、好ましくない。
保護膜4は、電解質膜31と酵素電極の間に設けられる。保護膜4は、酵素を電解質膜31の酸性基等の活性基から電極触媒である酵素を保護するものである。電解質膜31として、例えば固体電解質膜のナフィオン(登録商標)を利用した場合には、スルホン酸基のような酸性基による酵素の失活が問題となり、特に200時間程度経過した後にその問題が顕著になる。保護膜4を電解質膜31と酵素電極との間に設けることにより、電解質膜31と酵素電極の直接的な接触がなくなり、電極触媒である酵素が、安定的かつ持続的にその触媒機能を発現できるようになる。
上記酵素の保護機能を発現するため、保護膜4は酵素の働きを阻害するものではないことが必要である。つまり、酵素の働きを阻害しない温和な化学的性質が要求される。したがって、化学的に活性な官能基を有さず、中性付近のpHを有し、かつ疎水性が強くないことが要求される。更に、保護膜4は、バイオ燃料電池の正常な作動のために電解質膜31の働きを阻害するものであってはならず、かつ保護膜4自体も水素イオンを透過させることができるものあることが必要である。具体的には、水素イオンが通過できるサイズの細孔を有するものであることが必要である。つまり、溶媒もしくは水素イオンサイズの物質を通過させるが、高分子の溶質を透過させることができない半透膜を利用することができる。
好適な保護膜4としては、セルロース、アラミド、ガラス、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリエチレン、ゴム、シリコンゴムのような素材を利用して形成することができ、紙、織布、不織布、フィルム等の形態とすることができる。更に、保護膜は酵素電極が電解質膜に直接接触することを防ぐものであるので、かかる目的を達成できる限り、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)パンチングシート、金網の細かな金属メッシュ、発泡金属板等も使用することができる。
保護膜4は、電解質膜31と酵素電極の間に設けられる。したがって、正極22及び負極21の双方を酵素電極として構築する場合には、保護膜4は電解質膜31を挟み込むように正極22側及び負極21側の双方に設けることが好ましい。また、正極22及び負極21の何れか一方のみを酵素電極として構築する場合には、電解質膜31の酵素電極側のみに設ければよい。したがって、正極22をPt触媒電極などの金属電極とした場合には、正極22と電解質膜31との間に保護膜4を設ける必要はない。ただし、この場合にも双方に設けることを妨げるものではない。
このように保護膜4を設けることにより、電解質膜31と酵素電極の直接的な接触を防ぐことができ、電解質膜31の酸性基等による酵素の変性を抑制及び緩和することができる。特に、保護膜4を、水素イオンを透過させる細孔を有し、かつ酵素の失活を招かない温和な化学的性質を有する素材で形成することにより、バイオ燃料電池の出力に大きな影響を与える水素イオンの伝達機能を損なわずに、酵素を変性から防御することができる。つまり、バイオ燃料電池の出力を維持しつつ、耐久性をも向上させることが可能となる。更に、上述の電解質膜31の酸性基の不活性化と相俟って、酵素の変性による失活を効果的に抑えることができる。これにより、酵素電極が安定的かつ持続的にその機能を発現でき、バイオ燃料電池の耐久性を向上させることができる。なお、保護膜4の素材の選択により、完全に電解質膜31と酵素電極との直接的な接触を遮断できる場合には、電解質膜31の酸性基の不活性化は不要あるいは緩和できる。水素イオン透過性の面からは電解質膜31及び保護膜4は薄い方が望ましい。しかしながら、薄すぎた場合は機械的強度が低いため破断等によるメディエーター分子の溶出や負極21と正極22の接触の原因となるため、好適にはそれぞれ10〜200μmの膜厚のものが使用される。
本発明のバイオ燃料電池に含まれる液体は、生化学的緩衝物質を含んで構成される。本発明のバイオ燃料電池は電極触媒として酵素を使用するが、酵素の本体はタンパク質であり、酵素の働きはタンパク質の立体構造に依存する。そして、タンパク質の立体構造は溶液の温度、pHの変化に対して非常に敏感である。そのため、それぞれの酵素反応には最適の温度やpHが存在する。そして、その範囲から僅かにずれると、タンパク質が変性により活性部位の立体構造が変わり、基質が酵素に結合できなくなり酵素が失活してしまう場合がある。したがって、酵素の触媒能力を十分に発現するためにはpH変化を抑える緩衝作用を有する緩衝物質により、pHを一定に保持することが必要となる。
また、酵素は、酸や塩基、界面活性剤、有機溶媒等の化学的な処理によってもタンパク質が変性し酵素が失活してしまう場合がある。そのため、緩衝物質としては、生体系、特には酵素等の生体分子の反応系を干渉しない物質であることが必要である。したがって、上記緩衝物質は生化学的緩衝物質であることが必要となる。
ここで、生化学とは、生体分子を対象とする化学、即ち、酵素等の生体分子を取り出し、その構造と機能を調べ、それら生体分子間の相互作用の解析を通して、生命現象を説明しようとする化学の分野を意味する。ここでは、生物学及び臨床化学等をも含めるものとする。そして、生化学的物質とは、生化学的実験等で用いられるものを意味する。つまり、酵素等の生体分子の機能を損なわず、また生体分子の反応を干渉しない物質である。また、ここでは、生体系に存在する物質をも含むものとする。そして、緩衝物質とは、溶液中の水素イオンの濃度をできるだけ一定に保とうとする能力(緩衝能)を有する物質を意味し、つまり、溶液に酸又は塩基を加えたり、溶液を薄めたときに生じる溶液中の水素イオン濃度の変化を少なくする作用を有する物質を意味する。
生化学的な緩衝物質としては、上記性質を有する限り特に制限はなく、水性環境下において酸または塩基と反応する無機および有機化合物であってよい。例えば、炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、4−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン−1−エタン スルホン酸(HEPES)、3−モルフォリノプロパン スルホン酸(MOPS)等を例示することができ、2種以上の緩衝物質を組みあわてもよい。一方、バイオ燃料電池の緩衝物質として汎用されるイミダゾール環をはじめとする、酵素変性作用を有する化合物については、酵素の変性を招くことから本発明において使用は好ましくない。
ここで、緩衝物質を含む液体としては、液体燃料が例示される。更に、酵素電極を構築する際に、適当な導電性基材に酵素を固定化する際に用いる酵素溶液等も緩衝物質を含んで調製される。
このように緩衝物質として生化学的緩衝物質を使用することにより、酵素の変性を抑制及び緩和することができる。これにより、酵素電極が安定的かつ持続的にその機能を発現でき、バイオ燃料電池の耐久性を向上させることができる。
燃料保持部1には燃料が充填されている。燃料としては、電極上で進められる酸化還元反応により電子を放出可能な物質であれば特に制限はない。したがって、燃料は、電極触媒の種類に応じて適宜選択することができる。好ましくは、バイオマス燃料である。バイオマスとは生物由来の資源を意味し、これら自体でもよいが、これらを加工したものが好ましい。例えば、糖類としては、単糖類、二糖類、多糖類などを使用することができる。単糖類としては、炭素数4のエリトロース、トレオース、エリトルロース、炭素数5のアラビノース、キシロース、リボース、リキソース、リブロース、炭素数6のグルコース、ガラクトース、タロース、マンノース、ソルボース、フルクトース、タガソース、ソルボース等が挙げられる。二糖類としては、マルトース、ラクトース、スクロース等を、また、多糖類としては、デンプン、グリコーゲン、セルロース等を例示できる。糖類以外にも、ピルビン酸、オキサロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、グルコン酸、フタル酸、乳酸、マロン酸、酢酸、プロピオン酸、グルコース−6−リン酸、フルクトース-6-リン酸、フルクトース-1,6-ビスリン酸、グリセルアルデヒド−3−リン酸、1,3-ビスホスホグリセリン酸、3-ホスホグリセリン酸、2-ホスホグリセリン酸等の有機酸、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、脂肪類、ペプチド、タンパク質等のポリアミノ酸類、アミン類等を用いることができる。
そして、燃料は適当な溶媒に溶解若しくは懸濁させた液体燃料が好ましい。液体燃料は、燃料の他に、電極触媒と燃料との酸化還元反応の場として至適な環境を与えるため緩衝物質を含有して構成されていてもよく、緩衝物質により酵素が機能しやすいpH付近に制御することができる。このとき、緩衝物質は、上記した生化学的緩衝物質を使用することが好ましい。更に、液体燃料に、電子メディエーターを含ませて構成してよい。電子メディエーターとしては、電極触媒による触媒反応と電極との間の電子授受を媒介できるものであれば特に限定されない。例えば、フェロセン、フェリシアン化物、キノン類、シトクロム類、ビオロゲン類、フェナジン類、フェノキサジン類、フェノチアジン類、フェレドキシン類およびその誘導体等が例示されるが、電極触媒の種類に応じて最適な物質を選択すればよい。更に、負極21の電極触媒として補酵素要求性酵素を利用する場合には、燃料に補酵素を添加することが好ましい。ただし、補酵素が酵素から容易に脱離しない場合には、補酵素の添加は不要、若しくは低濃度でよい。例えば、酵素と補酵素をポリマーで封入した場合、酵素に補酵素の脱離を防止する改変を施した場合などが想定される。
本発明の好適実施形態のバイオ燃料電池の発電機構について図1に従って説明する。負極21では、燃料の酸化反応に伴い電子と水素イオンが生じる。生じた水素イオンは、保護膜32a、電解質膜31、保護膜32bを介して正極22側に移動する。一方、電子は、正極22と負極21を接続する外部回路を介して正極22側に移動する。そして、正極22では、通気構造部4を介して外気を取り込む。外気中の酸素と、負極21側から移動してきたイオンと電子とを利用して還元反応が行われる。この一連の電気化学的反応により、電子が外部回路を移動する際に電気エネルギーが取り出される。
以上のように構成することにより、電極触媒である酵素が安定的かつ持続的に機能し得る高耐久性のバイオ燃料電池を構築することができる。そして、本発明のバイオ燃料電池は2個直列で繋いだ場合に乾電池互換の電圧を長時間発電できるものである。したがって、卓上電卓等の携行型機器等の小型電子機器の電源等への応用が可能であり、高耐久性を示すことから幅広い分野に応用することができる。
比較例1.特開2013−45647号の耐久性評価
従来技術の項で特許文献2として説明した本願発明者らの先の発明である特開2013−45647号(以下、「先願発明」と称する)の図2に記載のバイオ燃料電池の耐久性評価を行った。
(実験方法及び材料)
A.バイオ燃料電池の構成
先願発明の図2に記載のバイオ燃料電池の構成を簡単に説明する。正極と負極が固体電解質膜等の隔膜を挟んで対向するように構成され、正極と負極は外部回路によって接続されている。そして、負極の隔膜とは反対側に接触させてゲル燃料が配置されている。ここで、ゲル燃料とは、燃料を適当な支持体の三次元構造内に封入又は包埋して調製したものである。ゲル燃料には、燃料、及必要に応じてメディエーター、及び緩衝物質等を含ませて構成されている。発電機構は、負極において、燃料の酸化反応に伴い電子とイオンが生じ、生じたイオンが隔膜を介して正極側に移動する。一方、電子は外部回路を介して正極側に移動する。かかる構成を採用する場合、ゲル燃料は電子を伝導するものであってはならない。正極側では、空気中の酸素を取り込み、負極側から移動してきたイオンと電子による還元反応が行われる。そして一連の電子化学反応により、電子が外部回路を移動する際に電気エネルギーが取り出されるというものである。
B.バイオ燃料電池の構築
a.正極用酵素(BOD)溶液の調製
正極用酵素溶液として、ビリルビンオキシダーゼ(Bilirubin Oxidase:天野エンザイム、BOアマノ3、以下「BOD」と略する。)を適当量の0.1 Mの Sodium phosphate Bufferに溶解し、280 nm吸光度測定から吸光度1=1.0 mg/mlと換算して20 mg/mlとなるように濃度調整した。ここで、水は全てミリポア社製超純水製造装置Direct-Q UVで精製したものを使用した。また、リン酸水素二ナトリウム(無水)(和光純薬197-02865)142 gを水に溶解、1 Lにメスアップして、1 M リン酸水素二ナトリウム水溶液とした。リン酸二水素ナトリウム二水和物(和光純薬192-02815)156 gを水に溶解、1 Lにメスアップして、1 Mリン酸二水素ナトリウム水溶液とした。これら水溶液を25 ℃でpH 7.0となるよう混合し、その後、蒸気加熱滅菌(121 ℃、20分)処理を行い、1 M Sodium phosphate Bufferとした。
b.正極の調製
なお、本実験では、先願発明で用いたカーボンペーパーに代えて、カーボンクロスを導電性基材として使用している。カーボンクロスを1.4 cm×1.4 cmにカッターで切断した。活性炭粉末、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)を乳鉢で混合の後、適当量をスパチュラでカーボンクロス両面に塗抹して60 ℃で8時間以上乾燥させた。続いて、カーボンクロス1枚毎に上記aで調製したBOD溶液0.1mlを加え、4 ℃で一晩静置して酵素を固定した。なお、BOD溶液は、BOD 15mg/ml、0.1M Sodium phosphate Bufferと0.5Mフェリシアン化カリウム(K3Fe(CN)6)水溶液を9:1で混合したものを調製した。使用時には水で軽く洗浄して余分な酵素を落として使用した。
c.負極用酵素(AcGDH)溶液の調製
負極用酵素溶液として、グルコース脱水素酵素溶液を調製した。なお、グルコース脱水素酵素としてアシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)NBRC12552株由来のグルコース脱水素酵素を以下の通り調製した。アシネトバクター・カルコアセティカスNBRC12552株由来のグルコース脱水素酵素(以下、「AcGDH」と略する)遺伝子(GeneID:X15871)をベクターpET-22b(+)のマルチクローニング部位(NdeI/BamHI)に挿入した。AcGDH遺伝子を挿入したpET-22b(+)ベクターを用いて大腸菌BL21(DE3)株をトランスフォーメーションし、コロニーをLB/Amp(含アンピシリン50 μg/mL)培地300 mLに接種し、37 ℃で一晩培養した。つぎにジャーファーメンターにLB/Amp培地を20 L仕込み、前培養液200 mlを加え、37℃で約1時間(O.D.=0.1になるまで)培養し、0.01 mM IPTGを加えてタンパク発現誘導をかけ、28 ℃で一晩振盪培養した。ここで発現させたタンパク質の塩基配列を配列表の配列番号3に、また該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列表の配列番号4に示す。培養液を遠心、上清を除去した沈殿を−80 ℃で凍結保存した。凍結保存されたタンパク質発現菌体5 gをPBSバッファー15 mLに懸濁した。氷上で、超音波破砕機XL2000(MISONIX)を用いて15 Wで15秒間破砕を10回行なった。破砕した液は4 ℃、5000 rpmで20分間遠心分離し、分取した上清をCellulose Acetate 0.45um filter (ADBANTEC)でフィルタリングしたものをサンプルとした。オープンカラム(Bio-Rad)にヒスチジンタグ精製用レジン:TALON(Clontech)を10 mL充填し、ベッドボリュームの5倍量の平衡化バッファー(PBS + 300 mM NaCl)で平衡化した。前処理を行なったサンプルをカラムにアプライし、ベッドボリュームの5倍量の洗浄バッファー(PBS + 300 mM NaCl + 10 mM imidazol)で洗浄後、ベッドボリュームの3倍量の溶出バッファー(PBS + 300 mM NaCl + 150 mM imidazol)で溶出した。回収した溶出液をAmicon Ultra-4 (Millipore)を用いて濃縮し、微量透析装置 低速タイプおよび透析カップMWCO1200(共にBio-Tec)を用いて、透析バッファー(10 mM Tris-HCl(pH 7.5)+ 0.1 mM CaCl2)を二時間ごとに交換し合計に時間透析した。透析サンプルは4 ℃、15000 rpmで5分間遠心分離し、分取した上清を20 mg/mL以上になるように再度濃縮した。
d.負極の調製
上記cで調製したAcGDH溶液に1 mM CaCl2、1 μM PQQとなるよう添加し4℃でインキュベートした。カーボンフェルト(カーボンマット50 g/m2のもの)を1.4 cm×1.4 cmにカッターで切断した。AcGDH 5.5mg/mlに0.1 M Sodium phosphate Buffer pH 7.0、5
mM mPMSとなるよう添加した溶液0.22 mlをカーボンフェルトに滴下、風乾して使用した。
e.ゲル燃料の調製
1(w/v)% Agarose、60 mM D-Glucose、0.1 M Sodium phosphate Buffer pH 7.0に調製した溶液を電子レンジで溶解、アクリル製型枠に注いで固めた。
f.バイオ燃料電池セルの組み立て
バイオ燃料電池セルは、アクリル製型枠に、正極|隔膜|負極|燃料保持部(ゲル燃料)の順番で重ね四方をネジ止めし組み立てた。正極及び負極は共に14mm×14mmとした。外枠はアクリル製型枠とし、厚さ1 mmのアクリル板、厚さ2 mmのアクリル板の中央部に1cm×1cmの角穴を開けたものを使用した。角穴の四辺にはネジ止め用に穴を開けた。ゲル燃料は、アクリル板の中央部に角穴を開けたアクリル製型枠に保持し装着した。アクリル板の厚さは、装着するゲル燃料の厚みに従って適宜変更した。隔膜は、電解質膜であるナフィオン膜(登録商標:Aldrich Nafion 115)を使用した。なお、集電板としてチタンメッシュ(Alfa Aesar 40921、10mm幅×40mm長に切断して使用)、スペーサーとして0.5 mm厚のシリコンシート(アズワン等)を使用し、正極及び負極と隔膜の間のシリコンシートの中央部には14 mmの角穴を開けたが、他のシリコンシートには角穴は開けずに構築した。
C.電圧の測定
上記バイオ燃料電池に500kΩのカーボン抵抗(手帳電卓レベル負荷μA)を接続し、室温(20℃)で電圧の経時変化を記録した。
(結果)
図2に結果を示す。図2は電圧の経時変化を示す。その結果、当初680mVであったが、8時間後には電圧が2割以上低下し、24時間後には7割程度低下した。水分の蒸発によりゲル燃料が収縮し、ゲル燃料と電極との間に隙間が発生していることが確認され、これが電圧低下の要因として考えられた。このように、先願発明のバイオ燃料電池は、耐久性の確保が実用化に向けた更なる課題であることが判明した。
実施例1.水分蒸発抑制による耐久性向上効果
上記比較例1の結果を受け、先願発明のバイオ燃料電池はその耐久性の改善という課題があることが判明した。そのため、本実施例では水分蒸発の抑制、及び加湿に焦点を当て、これらと耐久性との関係を評価した。
(実験方法及び材料)
バイオ燃料電池内部、例えば燃料等の水分の蒸発を防ぐため、バイオ燃料電池表面を適当な防水膜で被覆することを検討した。防水膜として安価で入手可能なポリマー素材を調査し、正極反応に必要な酸素を透過し、水分蒸発を防ぐため水の透過性が低い素材の選定を行った。下記表1は、調査を行った各ポリマー素材の水蒸気透過率及び酸素ガス透過率を要約したものである。そして、水蒸気透過率と酸素透過率のデータは兵神装備株式会社の情報提供サイトである技術データ集「エンジニアズブック」http://ebw.eng-book.com/に記載の「各種プラスチックフィルムのガス透過性」を基とし、酸素/水蒸気透過率を計算した。
Figure 0006295630
表1より、防水膜として低密度ポリエチレンが最も適当であることが判明した。なお、市販のジップロック(登録商標)は低密度ポリエチレンであることから、これを防水膜として選定して以下の実験を行った。また、ポリプロピレン、及び高密度ポリエチレンも防水膜として好適に機能し得ることが判明した。一方、一般的スチロール樹脂は酸素/水蒸気透過率比率が高いが、水蒸気透過率が高すぎるため、防水膜として機能しないため除外した。
次に、ジップロック(登録商標)を袋状に加工したポリエチレン袋にバイオ燃料電池を入れた場合と、更に、ポリエチレン袋中に加湿機構として水を含ませたペーパータオルを設けた場合の耐久性を評価した。
なお、バイオ燃料電池は、隔膜としてセルロース膜(和光純薬工業、生化学用透析膜 047-30941)を使用した以外は比較例1のバイオ燃料電池と同様に構築したものを使用した。構築したバイオ燃料電池に500kΩのカーボン抵抗を接続して、室温(20℃)で電圧の経時変化を記録した。
(結果)
図3及び図4に結果を示す。図3及び図4は電圧の経時変化を示し、図3はポリエチレン袋のみの場合の結果であり、■は間欠負荷(1日3回各1分程度)、◆は連続負荷した場合の電圧の経時変化である。図4はポリエチレン袋と水を含ませたペーパータオルを設けた場合の結果である。その結果、水分蒸発を防ぐポリエチレン袋のみでは顕著な耐久性向上効果は認められなかったが、水を含ませたペーパータオルを加えることにより24時間後の電圧は15%低下に緩和した。
なお、本実施例で構築したバイオ燃料電池は、理論上ブドウ糖1分子から2電子を取得することができる。ブドウ糖から100%の確率で電子を取得できたと仮定した場合に、燃料のブドウ糖60mM、1mlは、3.2mAhに相当する。上述の通り負荷抵抗を500kΩとした。そして、当該バイオ燃料電池1セル当たりの解放電圧は約0.7V であるため、1μA前後の電流が流れるが、これは、200時間で3.7μmoleのブドウ糖から取得できる電荷数に相当する。ここで、燃料で使用したブドウ糖60mM、1mlは、60μmoleであるから、これは6%に相当することになる。したがって、数十時間の耐久性試験中にブドウ糖の枯渇による電圧低下は起こらないと推定でき、ここで観察された電圧低下はブドウ糖の枯渇が要因ではなく、バイオ燃料電池の構造上の要因に起因するものであること理解できる。そして、防水膜と保湿機構を設けることによりバイオ燃料電池の耐久性を向上できることが判明した。
実施例2.燃料への補酵素添加と電解質膜による耐久性向上効果
実施例1において、バイオ燃料電池の耐久性向上には、バイオ燃料電池内部からの水分の蒸発を抑えることが必要であることが判明した。本実施例では、更に、バイオ燃料電池の耐久性向上を図るべく、補酵素添加及び隔膜の種類の検討を行った。
(実験方法及び材料)
1.従来条件に基づくバイオ燃料電池の構築(実施例2−1)
燃料保持部にゲル燃料ではなく液体燃料を担持させた点、及び負極及び正極の調製において酵素溶液の組成を変更した点を除いては、実施例1にて構築したバイオ燃料電池に従ってバイオ燃料電池を構築した。
具体的には、正極、負極、及び液体燃料は以下の通り調製した。
a.正極の調製
カーボンクロスを1.4 cm×1.4 cmにカッターで切断した。活性炭粉末、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)を乳鉢で混合の後、適当量をスパチュラでカーボンクロス両面に塗抹して60 ℃で8時間以上乾燥させた。続いて、カーボンクロス1枚毎に比較例1で調製したBOD溶液0.1mlを加え、4 ℃で一晩静置して酵素を固定した。なお、BOD溶液は、BOD 20mg/ml、0.1M Sodium phosphate Bufferと0.5Mフェリシアン化カリウム(K3Fe(CN)6)水溶液を9:1で混合したものを調製した。使用時には水で軽く洗浄して余分な酵素を落として使用した。
b.負極の調製
比較例1で調製したAcGDH溶液に1 mM CaCl2、0.8 mM PQQとなるよう添加し4℃で30分以上インキュベートした。カーボンフェルト(カーボンマット50 g/m2のもの)を1.4 cm×1.4 cmにカッターで切断した。AcGDH 1mg/mlに5 mM mPMS、0.1 M Sodium phosphate Buffer pH 7.0となるよう添加した溶液0.22 mlをカーボンフェルトに滴下、風乾して使用した。
c.液体燃料の調製
60mM D-Glucose、0.1M Sodium Phosphate Bufferに調製した。
2.燃料へ補酵素PQQを添加したバイオ燃料電池の構築(実施例2−2)
負極の電極触媒として用いたAcGDHは補酵素が脱離しやすいことから、液体燃料に補酵素を添加した。詳細には、上記実施例2−1のバイオ燃料電池の液体燃料に0.4mM PQQを添加した。
ここで、調製した液体燃料の組成は以下のとおりである。
60mM D-Glucose、0.4mM PQQ 、0.1M Sodium Phosphate Bufferに調製した。
3.燃料へ補酵素PQQを添加すると共に、隔膜として電解質膜を用いたバイオ燃料電池の構築(実施例2−3)
上記実施例2−2と同様に、液体燃料を60mM D-Glucose、0.4mM PQQ 、0.1M Sodium Phosphate Bufferとして調製したものを使用した。かかる条件に加えて、隔膜として電解質膜であるナフィオン(登録商標)115を用いた。実施例2−1のバイオ燃料電池で使用されているセルロース膜は500Da以下の分子を透過させるものであるが、ナフィオン膜は水素イオンのみしか通さないという性質を有する。
構築したバイオ燃料電池それぞれを、実施例1と同様、水を含ませたペーパータオルと共にポリエチレン袋中に封入した。そして、500kΩのカーボン抵抗を接続して、室温(20℃)で電圧の経時変化を記録した。
(結果)
結果を図5に示す。図5は電圧の経時変化を示す。400mV以上の電圧を保持できる時間を耐久時間と定義すると、実施例2−1では耐久時間は約18時間であったが、実施例2−2では約75時間、実施例2−3では約270時間に向上した。かかる結果より、補酵素の添加によっても耐久時間は向上するが、補酵素添加に加えて隔膜として電解質膜を用いることにより飛躍的に耐久時間が向上することが確認された。
なお、耐久時間の指標とした400mV(0.4V)は、乾電池の終止電圧等から算出されたものである。本発明のバイオ燃料電池は乾電池互換の電圧を発電できることを課題とするものである。アルカリ乾電池、マンガン乾電池などの汎用の乾電池の初期電圧は1.5V超(約1.6V)であり、終止電圧は0.9Vである。そして、ニッケル水素充電池エネループ(登録商標)等の充電池の初期電圧は1.2Vであり、終止電圧は0.8Vである。そして、通常の乾電池で動作する機器は1.6V〜0.8Vで動作するように設計されている。これらを鑑み、また、電池の原理が異なるためバイオ燃料電池を2個直列で繋いだ場合の電圧で評価するものとすると、セル電圧目標値を400mV以上/セルとすることが妥当である。したがって、これを耐久時間の指標とした。
実施例3.電解質膜の不活性化、及びセルロール膜による挟み込みによる耐久性向上効果
実施例2において、バイオ燃料電池の耐久性向上には、電解質膜の利用が効果的であることが判明した。本実施例では、電解質膜から酵素電極を保護し安定的かつ持続的にその触媒機能を発現し得る条件の検討を行った。
(実験方法及び材料)
電解質膜は水素イオンの伝達のための酸性基を有しているが、かかる酸性基が酵素電極の酵素の変性を招き、安定的かつ持続的な触媒機能の発現を妨げる要因となる。したがって、本実施例では、かかる酸性基を不活性化させることによるバイオ燃料電池の耐久性に与える効果を検討する共に、電解質膜を保護膜としてセルロース膜で挟み込んだ場合の効果についても検討した。
1.酸性基が活性化状態にある電解質膜を用いたバイオ燃料電池の構築(実施例3−1)
電解質膜として、実施例2で使用したナフィオン膜を使用し、これを活性化させてバイオ燃料電池に組み込んだ。ナフィオン膜の活性化を行った点、負極、及び正極の調製において酵素溶液の組成並びに液体燃料の組成を変更した点を除いては、実施例2にて構築したバイオ燃料電池に従って構築した。
具体的には、正極、負極、及び液体燃料は以下の通り調製する共に、電解質膜としてナフィオン膜を以下の通り活性化した。
a.正極の調製
カーボンクロスを1.0 cm×1.0 cmにカッターで切断した。活性炭粉末、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)を乳鉢で混合の後、適当量をスパチュラでカーボンクロス両面に塗抹して60 ℃で8時間以上乾燥させた。続いて、カーボンクロス1枚毎に比較例1で調製したBOD溶液51μlを含浸させ、直ぐに使用した。なお、BOD溶液は、BOD 100mg/ml、1M Imidazole BufferpH7.0と0.5Mフェリシアン化カリウム(K3Fe(CN)6)水溶液を9:1で混合したものを調製した。
b.負極の調製
比較例1で調製したAcGDH溶液に1 mM CaCl2、0.8 mM PQQとなるよう添加し4℃でインキュベートした。カーボンクロスを1.0 cm×1.0 cmにカッターで切断した。AcGDH 10mg/ml、30mM mPMS、1 M Imidazole Buffer pH 7.0とした溶液51μlをカーボンクロスに含浸させ、直ぐに使用した。
c.液体燃料の調製
1M D-Glucose、0.4mM PQQ、1M Imidazole Buffer pH7.0に調製した。
d.電解質膜の活性化
ナフィオン膜を適当な大きさに切断し、3%H2O2中で1時間煮沸、水中で1時間煮沸、1M硫酸中で1時間煮沸、水中で1時間煮沸することにより、ナフィオン膜のスルホン酸基を活性化した。ここで、使用した水は上述の通り超純水である。
2.酸性基が不活性化状態にある電解質膜を用いたバイオ燃料電池の構築(実施例3−2)
電解質膜であるナフィオン膜を不活性化させ、バイオ燃料電池に組み込んだ。詳細には、上記3−1のバイオ燃料電池で使用されている活性化状態のナフィオン膜に代えて、不活性状態のナフィオン膜を組み込んで構築した。なお、不活性化状態のナフィオン膜は2重工程で作成し、それぞれを組み込み2個のバイオ燃料電池を構築した。なお、ナフィオン膜の不活性化は以下の通り行った。
電解質膜の活性化
ナフィオン膜を適当な大きさに切断し、3%H2O2中で1時間煮沸、水中で1時間煮沸、1M硫酸中で1時間煮沸、水中で1時間煮沸することにより、ナフィオン膜のスルホン酸基を活性化した。活性化処理後に、1M Imidazole Buffer pH7.0に数時間浸漬させて、スルホン酸基を不活性化した。
3.酸性基が不活性化状態にある電解質膜を保護膜としてセルロース膜で挟み込んだバイオ燃料電池の構築(実施例3−3)
電解質膜であるナフィオン膜を不活性化させ、更に保護膜であるセルロース膜で挟み込んだ状態でバイオ燃料電池に組み込んだ。詳細には、上記3−2のバイオ燃料電池で使用されている不活性状態のナフィオン膜をセルロース膜で挟み込んで構築した。ナフィオン膜の不活性化は以下の通り行った。なお、ここで構築したバイオ燃料電池の構成の模式図を図6に示す。実施例3−1、3−2のバイオ燃料電池の基本構成も特記した以外は図6の通りである。
図6のバイオ燃料電池セルは、厚さ10mmアクリル板100a、厚さ5mmのアクリル板100bに10mm×10mmの角穴を開けたものを使用した。角穴の4辺には、ねじ止め穴を開けた。正極22|隔膜3|負極21|燃料保持部1の順番で重ね四方をネジ止めし組み立てた。液体燃料は、アクリル板100の中央部に角穴を開けたアクリル製型枠に設けた燃料保持部1に充填し装着した。隔膜3は、電解質膜31であるナフィオン膜(登録商標:Aldrich Nafion 115)を、保護膜32であるセルロース膜で挟み込んだもの(32a、32b)を使用した。なお、集電板としてチタンメッシュ103(Alfa Aesar 40921)を10mm×40mm、0.4mm厚SUS網10メッシュ102を14mm×14mm、スペーサーとして0.5 mm厚のシリコンシート101a(アズワン等)に16mm×16mmの角穴をあけたもの、及び1mm厚のシリコンシート101bに14mm×14mmの角穴をあけたものを使用した。これらを図6の順番通りに積層した後、四辺をネジ止めした。
構築したバイオ燃料電池それぞれを、実施例1及び2と同様、水を含ませたペーパータオルと共にポリエチレン袋中に封入した。そして、500kΩのカーボン抵抗を接続して、22℃のインキュベータ中での電圧の経時変化を記録した。
(結果)
結果を図7に示す。図7は電圧の経時変化を示す。400mV以上の電圧を保持できる時間を耐久時間と定義すると、実施例3−3では耐久時間が飛躍的に延び600時間を超えることが確認された。かかる結果より、電解質膜の酸性基を不活性化し、更にセルロース膜で挟み込むことにより、耐久性が飛躍的に向上することが判明した。一方、電解質膜の酸性基の不活性化のみによっても耐久性は向上するが、不活性化状態によりその耐久性が大きく変動する。したがって、酸性基の不活性化状態を制御することが必要となる。
実施例4.緩衝液の種類による耐久性向上効果
実施例2において、バイオ燃料電池の耐久性向上には、電解質膜の利用が効果的であることが判明し、実施例3において、電解質膜から酵素電極を保護することが効果的であることが判明した。本実施例では、緩衝液の種類の選択が酵素電極の触媒機能に与える影響について検討を行った。
(実験方法及び材料)
実施例3においては、緩衝物質としてバイオ燃料電池の分野で汎用されるイミダゾールを使用したが、イミダゾールは酵素変性作用を有することが知られている。そのため、イミダゾールによる酵素電極の劣化が問題となり、特に長期使用した場合に問題が顕著となり、バイオ燃料電池の耐久性を損なう要因となる。そこで、本実施例では、生化学的実験において汎用されるリン酸を緩衝物質として、バイオ燃料電池の耐久性に与える効果を検討した。
具体的には、実施例3−3にて使用した1M Imidazole Buffer pH7.0を、全て1M Sodium phosphate buffer pH7.0に置き換えて、同様に実験した。つまり、酵素溶液及び液体燃料の緩衝液が置き換えられた。
構築したバイオ燃料電池を、実施例1〜3と同様、水を含ませたペーパータオルと共にポリエチレン袋中に封入した。そして、500kΩのカーボン抵抗を接続して、4℃若しくは22℃のインキュベータ中での電圧の経時変化を記録した。また、このとき、1M Imidazole Buffer pH7.0を使用した場合のバイオ燃料電池についても同様に電圧を測定した。
(結果)
結果を図8に示す。図8は電圧の経時変化を示す。400mV以上の電圧を保持できる時間を耐久時間と定義すると、リン酸を緩衝物質として使用した場合に耐久時間が飛躍的に延び、22℃の測定で約2500時間、4℃の測定では3500時間を超えることが確認された。かかる結果より、酵素変性作用のない緩衝物質を使用することにより、酵素電極の触媒能力が安定的かつ持続的に発現することができ、バイオ燃料電池の耐久性が飛躍的に向上することが判明した。
本発明は、バイオ燃料電池に関し、バイオ燃料電池が要求されるあらゆる分野、特に、電子、医療、食品、環境分野等の産業分野において利用可能である。特に卓上電卓等の携行型機器や体内埋め込み式機器等の小型電子機器の電源等への応用が可能である。
1 燃料保持部
21 負極
22 正極
3 隔膜
31 電解質膜
32、32a、32b 保護膜
4 通気構造部
5 防水膜

Claims (8)

  1. 電解質膜を介して対向する正極及び負極を有し、前記正極及び負極の少なくとも一方が酵素電極として構成されるバイオ燃料電池であって、
    前記酵素電極と前記電解質膜との間に形成された保護膜と、
    前記バイオ燃料電池の内部に連通し外気に開放される通気構造部に設けられ前記内部からの液体の蒸発を防ぐ防水膜と、
    加湿機構と、を備えるバイオ燃料電池。
  2. 前記電解質膜は、水素イオン伝達機能を有する酸性基を含み、前記酸性基に不活性化処理が施されている請求項1に記載のバイオ燃料電池。
  3. 前記防水膜は、空気を透過させるが水分を透過させない素材で形成されている請求項1又は2に記載のバイオ燃料電池。
  4. 前記保護膜は、水素イオンを透過させる細孔を有し、かつ酵素の失活を招かない緩和な化学的性質を有する素材で形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載のバイオ燃料電池。
  5. 前記液体に含まれる緩衝物質は、生化学的緩衝物質である請求項1〜4の何れか一項に記載のバイオ燃料電池。
  6. 前記生化学的緩衝物質は、酵素変性作用を有しない物質である請求項に記載のバイオ燃料電池。
  7. 前記酵素電極は、補酵素要求性酵素を電極触媒とする請求項1〜の何れか一項に記載のバイオ燃料電池。
  8. 前記負極は、グルコース脱水素酵素を電極触媒とする請求項1〜の何れか一項に記載のバイオ燃料電池。
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