まず、構成を説明する。実施例1の制御装置が適用されたFFプラグインハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)の構成を、「駆動システム構成」、「電源システム構成」、「制御システム構成」、に分けて説明する。
[駆動システム構成]
図1はFFプラグインハイブリッド車両の全体を示す。以下、図1に基づいて、FFプラグインハイブリッド車両の駆動システム構成を説明する。
前記駆動システムとして、図1に示すように、スタータモータ1(略称「M」)と、横置きエンジン2(エンジン、略称「ICE」)と、第1クラッチ3(クラッチ、略称「CL1」)と、モータ/ジェネレータ4(走行用モータ、略称「M/G」)と、第2クラッチ5(略称「CL2」)と、ベルト式無段変速機6(変速機、略称「CVT」)と、を備えている。ベルト式無段変速機6の出力軸は、終減速ギヤトレイン7と差動ギヤ8と左右のドライブシャフト9R,9Lを介し、左右の前輪10R,10L(駆動輪)に駆動連結される。なお、左右の後輪11R,11Lは、従動輪としている。
前記スタータモータ1は、横置きエンジン2のクランク軸に設けられたエンジン始動用ギヤに噛み合うギヤを持ち、後述するキャパシタ23を電源とし、エンジン始動時にクランク軸を回転駆動するクランキングモータである。
前記横置きエンジン2は、クランク軸方向を車幅方向としてフロントルームに配置したエンジンであり、電動ウォータポンプ12と、横置きエンジン2の逆転を検知するクランク軸回転センサ13と、を有する。
前記第1クラッチ3は、横置きエンジン2とモータ/ジェネレータ4との間に介装された油圧作動によるノーマルオープンの乾式多板摩擦クラッチであり、第1クラッチ油圧により完全締結/スリップ締結(スリップ状態)/開放が制御される。
前記モータ/ジェネレータ4は、第1クラッチ3を介して横置きエンジン2に連結された三相交流の永久磁石型同期モータである。このモータ/ジェネレータ4は、後述する強電バッテリ21を電源とし、ステータコイルには、力行時に直流を三相交流に変換し、回生時に三相交流を直流に変換するインバータ26が、ACハーネス27を介して接続される。
前記第2クラッチ5は、モータ/ジェネレータ4と駆動輪である左右の前輪10R,10Lとの間に介装された油圧作動による湿式の多板摩擦クラッチであり、第2クラッチ油圧により完全締結/スリップ締結(スリップ状態)/開放が制御される。実施例1の第2クラッチ5は、遊星ギヤによるベルト式無段変速機6の前後進切替機構に設けられた前進クラッチ5aと後退ブレーキ5bを流用している。つまり、前進走行時には、前進クラッチ5aが第2クラッチ5とされ、後退走行時には、後退ブレーキ5bが第2クラッチ5とされる。
前記ベルト式無段変速機6は、変速機入力軸inputに接続したプライマリプーリPrPと、変速機出力軸outputに接続したセカンダリプーリSePと、プライマリプーリPrPとセカンダリプーリSePとの間に架け渡されたプーリベルトBEと、を有する無段変速機である。
プライマリプーリPrPは、変速機入力軸inputに固定された固定シーブと、変速機入力軸inputに摺動自在に支持された可動シーブと、を有している。セカンダリプーリSePは、変速機出力軸outputに固定された固定シーブと、変速機出力軸outputに摺動自在に支持された可動シーブと、を有している。
プーリベルトBEは、プライマリプーリPrPとセカンダリプーリSePとの間に巻き掛けられた金属ベルトであり、それぞれの固定シーブと可動シーブとの間に挟持される。ここでは、固定シーブと可動シーブとのそれぞれに接する傾斜面を両側にもった多数のエレメントを重ね、薄板を層状に重ねると共に円環状に形成したリング2組を、エレメントの両側に挟み込ませることで構成された、いわゆるVDT型ベルトを使用している。
このベルト式無段変速機6は、プライマリ油室とセカンダリ油室への変速油圧によりベルトの巻き付き径を変えることで無段階の変速比を得る変速機である。すなわち、変速油圧により、プライマリプーリPrPの可動シーブ及びセカンダリプーリSePの可動シーブの各可動シーブを摺動させることにより両プーリPrP,SePのプーリ幅を変更し、プーリベルトBEの挟持面の径を変更して変速比(プーリ比)を自在に制御する。
このベルト式無段変速機6には、メインオイルポンプ14(メカ駆動、第1クラッチ3等の油圧源となるオイルポンプ)と、サブオイルポンプ15(モータ駆動)と、ポンプ吐出圧を調圧することで生成したライン圧を元圧として第1,第2クラッチ油圧及び変速油圧を作り出す図外のコントロールバルブユニットと、を有する。なお、メインオイルポンプ14は、モータ/ジェネレータ4のモータ軸(=変速機入力軸)により回転駆動される。サブオイルポンプ15は、主に潤滑冷却用油を作り出す補助ポンプとして用いられる。
ここで、プライマリプーリPrPのプーリ幅が広くなると共に、セカンダリプーリSePのプーリ幅が狭くなると変速比がLow側に変化する。また、プライマリプーリPrPのプーリ幅が狭くなると共に、セカンダリプーリSePのプーリ幅が広くなると変速比がHigh側に変化する。
前記第1クラッチ3とモータ/ジェネレータ4と第2クラッチ5により1モータ・2クラッチの駆動システムが構成され、この駆動システムによる主な駆動態様として、「EVモード」と「HEVモード」と「WSCモード」を有する。
前記「EVモード」は、第1クラッチ3を開放し、第2クラッチ5を締結してモータ/ジェネレータ4のみを駆動源に有する電気自動車モードであり、「EVモード」による走行を「EV走行」という。
前記「HEVモード」は、両クラッチ3,5を締結して横置きエンジン2とモータ/ジェネレータ4を駆動源に有するハイブリッド車モードであり、「HEVモード」による走行を「HEV走行」という。また、「HEVモード」は、モータアシストモード(モータ力行)・エンジン発電モード(ジェネレータ回生)・減速回生発電モード(ジェネレータ回生)を有する。
前記「WSCモード」は、モータ/ジェネレータ4をモータ回転数制御とし、第2クラッチ5を要求駆動力相当の伝達トルク容量にてスリップ締結するCL2スリップ締結モードである。この「WSCモード」は、駆動系にトルクコンバータのような回転差吸収継手を持たないことで、「HEVモード」での停車からの発進域等において、横置きエンジン2(アイドル回転数以上)と左右前輪10L,10Rの回転差をCL2スリップ締結により吸収するために選択される。
前記モータ/ジェネレータ4は、基本的にブレーキ操作時において回生動作を行うことに伴い、ブレーキ操作時にトータル制動トルクをコントロールする回生協調ブレーキユニット16を有する。この回生協調ブレーキユニット16は、ブレーキペダルと電動ブースタとマスタシリンダを備え、電動ブースタは、ブレーキ操作時、ペダル操作量にあらわれる要求制動力から回生制動力を差し引いた分を液圧制動力で分担するというように、回生分/液圧分の協調制御を行う。
[電源システム構成]
図1はFFプラグインハイブリッド車両の全体システムを示す。以下、図1に基づいて、FFプラグインハイブリッド車両の電源システム構成を説明する。
前記電源システムとしては、図1に示すように、モータ/ジェネレータ電源としての強電バッテリ21と、12V系負荷電源としての12Vバッテリ22と、スタータ電源としてのキャパシタ23と、を備えている。
前記強電バッテリ21は、モータ/ジェネレータ4の電源として搭載された二次電池であり、例えば、多数のセルを積層したセルモジュールを、バッテリパックケース内に設定したリチウムイオンバッテリ(略称「LB」)が用いられる。この強電バッテリ21には、強電の供給/遮断/分配を行うリレー回路を集約させたジャンクションボックスが内蔵され、さらに、エアコン機能を持つバッテリ温度調整ユニット24と、バッテリ充電容量(バッテリSOC)やバッテリ温度を監視するリチウムバッテリコントローラ86と、が付設される。
前記強電バッテリ21とモータ/ジェネレータ4は、DCハーネス25とインバータ26とACハーネス27を介して接続される。インバータ26には、強電の供給/遮断/分配を行うリレー回路を集約させたジャンクションボックス28が内蔵され、さらに、暖房回路29と電動エアコン30と、力行/回生制御を行うモータコントローラ83と、が付設される。つまり、インバータ26は、強電バッテリ21の放電によりモータ/ジェネレータ4を駆動する力行時、DCハーネス25からの直流をACハーネス27への三相交流に変換する。また、モータ/ジェネレータ4での発電により強電バッテリ21を充電する回生時、ACハーネス27からの三相交流をDCハーネス25への直流に変換する。また、モータコントローラ83は、モータ/ジェネレータ温度(モータ温度、M/G温度)やモータ印加電流値等を監視する。ここで、モータ印加電流値とは、力行時、強電バッテリ21から放電される電力を、インバータ26により三相交流電力に変換して印加する電流値である。
前記強電バッテリ21には、DCハーネス31を介して急速外部充電ポート32が接続されるとともに、DC分岐ハーネス25’と充電器33とACハーネス34とを介して普通外部充電ポート35が接続される。充電器33は、AC/DC変換や電圧変換を行う。急速外部充電時には、例えば、外出先等に設置されている充電スタンドのコネクタプラグを、急速外部充電ポート32に接続することで外部充電される(急速外部充電)。普通外部充電時には、例えば、家庭用電源からのコネクタプラグを、普通外部充電ポート35に接続することで外部充電される(普通外部充電)。
前記12Vバッテリ22は、スタータモータ1を除いた他の補機類である図外の12V系負荷の電源として搭載された二次電池であり、例えば、エンジン車等で一般的に搭載されている鉛バッテリが用いられる。強電バッテリ21と12Vバッテリ22は、DC分岐ハーネス25”とDC/DCコンバータ37とバッテリハーネス38を介して接続される。DC/DCコンバータ37は、強電バッテリ21からの数百ボルト電圧を12Vに変換するものであり、このDC/DCコンバータ37を、ハイブリッドコントロールモジュール81により制御することで、12Vバッテリ22の充電量を管理する構成としている。
前記キャパシタ23は、スタータモータ1の専用電源として搭載された蓄電デバイスであり、大きな静電容量を有し、急速充放電性能に優れた特徴を持つ電気二重層キャパシタ(eDLC:electric Double Layer Capacitor)と呼ばれるものが用いられる。12Vバッテリ22及びDC/DCコンバータ37等を含む補機負荷電源系とキャパシタ23は、バッテリ分岐ハーネス38’とキャパシタ充電回路41を介して接続される。また、キャパシタ23とスタータモータ1は、キャパシタハーネス42及びリレースイッチ44等を介して接続される。なお、キャパシタ23とキャパシタ充電回路41等によりDLCユニット45を構成する。また、リレースイッチ44の通電(オン)/遮断(オフ)は、ハイブリッドコントロールモジュール81により行われる。このリレースイッチ44が通電(オン)されている間、キャパシタ23の電力を用いてスタータモータ1が駆動する。
前記キャパシタ充電回路41は、スイッチング方式による半導体リレー内蔵のDC/DCコンバータ回路(スイッチング素子とチョークコイルとコンデンサとダイオードの組み合わせ回路)により構成される。このキャパシタ充電回路41は、ハイブリッドコントロールモジュール81により制御される半導体リレー51とDC/DCコンバータ52を有する。半導体リレー51は、半導体スイッチング素子を使用した無接点リレーであり、例えば、絶縁された入出力の空間を光の信号で伝達するフォトカプラと呼ばれる光半導体を用いた構成としている。この半導体リレー51は、12Vバッテリ22及びDC/DCコンバータ37等を含む補機負荷電源系からキャパシタ23を切り離したり接続したりするスイッチ機能を持つ。DC/DCコンバータ52は、入力された直流をスイッチング素子によってパルス電流に細分し、それらを繋ぎ合わせて必要な電圧の直流出力を得ることで、12V直流を13.5V直流に変換する機能とキャパシタ充電電流を切り替える機能を持つ。
[制御システム構成]
図1はFFプラグインハイブリッド車両の全体システムを示す。以下、図1に基づいて、FFプラグインハイブリッド車両の制御システム構成を説明する。
前記制御システムとしては、図1に示すように、車両全体の消費エネルギを適切に管理する機能を担う統合制御手段として、ハイブリッドコントロールモジュール81(略称:「HCM」)を備えている。このハイブリッドコントロールモジュール81に接続される制御手段として、エンジンコントロールモジュール82(略称:「ECM」)と、モータコントローラ83(略称:「MC」)と、CVTコントロールユニット84(略称:「CVTCU」)と、を有する。そして、データ通信モジュール85(略称:「DCM」)と、リチウムバッテリコントローラ86(略称:「LBC」)と、を有する。これらの制御手段は、ハイブリッドコントロールモジュール81とDLCユニット45を接続するLIN通信線89(LIN:「Local Interconnect Network」の略称)を除き、CAN通信線90(CANは「Controller Area Network」の略称)により双方向情報交換可能に接続される。
前記ハイブリッドコントロールモジュール81は、各制御手段、イグニッションスイッチ91、アクセル開度センサ92、車速センサ93、アクセルペダルセンサ95等からの入力情報に基づき、様々な制御を行う。このうち、外部充電が可能なFFプラグインハイブリッド車両を高い燃費効率で走らせることを目的として行われる制御が、強電バッテリ21のバッテリSOCに基づく走行モード(「CDモード」、「CSモード」)の選択制御である。
前記「CDモード(Charge Depleting mode)」は、原則として、強電バッテリ21の電力を消費するEV走行を優先するモードであり、例えば、強電バッテリ21のバッテリSOCがフルSOCから設定SOCまで低下する間にて選択される。但し、EV走行では駆動力が不足する高負荷走行等において、例外的にHEV走行が行われる。この「CDモード」の選択中における横置きエンジン2の始動は、スタータモータ1による始動(スタータ始動)を基本とし、モータ/ジェネレータ4による始動(強電始動、M/G始動)を例外とする。
前記「CSモード(Charge Sustain mode)」は、原則として、強電バッテリ21の電力を維持するHEV走行を優先するモードであり、強電バッテリ21のバッテリSOCが設定SOC以下になると選択される。つまり、強電バッテリ21のバッテリSOCを所定範囲に維持する必要があるとき、横置きエンジン2の駆動によりモータ/ジェネレータ4を発電させるエンジン発電によるHEV走行を行う。この「CSモード」の選択中における横置きエンジン2の始動は、モータ/ジェネレータ4による始動(強電始動、M/G始動)を基本とし、スタータモータ1による始動(スタータ始動)を例外とする。なお、モード切り替え閾値である「設定SOC」は、CDモード→CSモードのときの値と、CSモード→CDモードのときの値とでヒステリシスを持たせている。
前記ハイブリッドコントロールモジュール81は、エンジン始動制御を行う。エンジン始動制御は、モータ/ジェネレータ4を駆動源とするEVモードにてエンジン始動要求があると、モータ/ジェネレータ4を用いた強電始動と、スタータモータ1を用いたスタータ始動と、のいずれかを用いてエンジンを始動する制御である。
ここで、エンジンの始動が要求される場合とは、例えば、駆動力要求による場合とシステム要求による場合等である。
駆動力要求による場合とは、例えば、ドライバが要求する要求駆動力(ドライバのアクセルペダル操作によるアクセル開度APO等)がモータ/ジェネレータ4が出力可能な上限の駆動力を超えている場合等である。また、アクセル開度APOが一定であっても、車速VSPが上昇することにより、駆動力要求になる。
システム要求による場合とは、例えば、バッテリSOCの低下による強電バッテリ21への充電要求による場合や、冷却水の温度が低下したことによる場合等がある。
前記ハイブリッドコントロールモジュール81は、入力された情報に基づき、モータコントローラ83へモータ/ジェネレータ4のモータ回転数指令等を出力する。ハイブリッドコントロールモジュール81は、リレースイッチ44の通電(オン)/遮断(オフ)制御を行う。
前記ハイブリッドコントロールモジュール81では、上記の制御以外に、キャパシタ23への充電制御、キャパシタ23からの放電制御を行う。
前記エンジンコントロールモジュール82は、横置きエンジン2の燃料噴射制御や点火制御や燃料カット制御等を行う。モータコントローラ83は、インバータ26によるモータ/ジェネレータ4の力行制御や回生制御等を行うとともに、モータ/ジェネレータ温度やモータ印加電流値等を管理する。このモータコントローラ83は、ハイブリッドコントロールモジュール81からのモータ回転数指令に従って、モータ/ジェネレータ4を回転駆動させるモータ回転数制御を行う。
前記CVTコントロールユニット84は、第1クラッチ3の締結油圧制御、第2クラッチ5の締結油圧制御、ベルト式無段変速機6の変速油圧制御等を行う。データ通信モジュール85は、携帯リモコンキーのスイッチを遠隔操作したとき、携帯リモコンキーとの間で通信が成立すると、例えば、充電ポートリッドやコネクタロック機構のロック/アンロックの制御を行う。リチウムバッテリコントローラ86(充電容量検出手段)は、強電バッテリ21のバッテリSOCやバッテリ温度等を管理する。
図2はハイブリッドコントロールモジュール81にて実行されるエンジン始動制御処理流れを示す(エンジン始動制御手段)。以下、エンジン始動制御処理構成をあらわす図2の各ステップについて説明する。なお、このエンジン始動制御処理は、モータ/ジェネレータ4を駆動源とするEVモードが選択されているときに、「START」する。
ステップS1では、エンジン始動要求が有るか否かを判断する。YES(エンジン始動要求有り)の場合はステップS10へ進み、NO(エンジン始動要求無し)の場合はステップS1を繰り返す。
ステップS10では、ステップS1でのエンジン始動要求有りの判断に続き、車速センサ93からの入力情報に基づき、車速VSPがゼロか否かを判断する。YES(VSP=0)の場合はステップS20へ進み、NO(VSP>0)の場合はステップS30へ進む。
ステップS20では、ステップS10での「VSP=0」の判断に続き、急加速判定、すなわち、ドライバのアクセル踏み込み操作速度により加速意図(以下、「ドライバの加速意図」という。)の有無を判定する(加速意図判定手段)。YES(ドライバの加速意図有り)の場合はステップS24へ進み、NO(ドライバの加速意図無し)の場合はステップS25へ進む。この加速意図判定処理流れを、図3のフローチャートに示す(加速意図判定手段)。以下、ステップS20における加速意図判定処理構成をあらわす図3の各ステップ(ステップS21〜ステップS23)について説明する。
ステップS21では、アクセル開度センサ92からの入力情報に基づき、アクセル開度APOが所定のアクセル開度より大きいか否かを判定する(アクセル開度判定部)。例えば、アクセル開度を8段階とした場合に、アクセル開度センサ92からの入力情報が4段階(所定のアクセル開度)よりも大きいか否かを判定する。YES(APO>4/8)の場合はステップS22へ進み、NO(APO≦4/8)の場合は「ドライバの加速意図無し」すなわち図2のステップS25へ進む。
ここで、所定のアクセル開度は、アクセル踏み込み操作により、「EVモード」から「HEVモード」へ切り替わるときの車速VSPに応じたアクセル開度APOに設定される。
ステップS22では、ステップS21での「APO>4/8」の判断に続き、アクセルペダルセンサからの入力情報(アクセルペダルの踏込量)に基づき、図外のアクセルペダルの踏込速度(以下、「踏込速度」という。)が所定の踏込速度より大きいか否かを判定する(アクセルペダル踏込速度判定部)。すなわち、アクセルペダルの踏込量の単位時間(例えば10ms)当たりの増加量(踏込速度)を算出し、この踏込速度(アクセル踏み込み操作速度相当値)が所定の踏込速度(所定値)より大きいか否かを判定する。YES(踏込速度>所定の踏込速度)の場合は「ドライバの加速意図有り」すなわち図2のステップS24へ進み、NO(踏込速度≦所定の踏込速度)の場合はステップS23へ進む。
ここで、所定の踏込速度は、予め感応試験等によって設定される。すなわち、それを越えてアクセル踏み込み操作速度が変化することで、ドライバの要求駆動力が高く、速やかなエンジン始動が望まれるという下限値を推定して設定する。
ステップS23では、ステップS22での「踏込速度≦所定の踏込速度」の判断に続き、アクセル開度センサ92からの入力情報から、単位時間(例えば10ms)当たりのアクセル開度変化量が所定の変化量より大きいか否かを判定する(アクセル開度変化量判定部)。すなわち、アクセル開度の単位時間当たりのアクセル開度変化量(増加量)ΔAPOを算出し、このアクセル開度変化量ΔAPO(アクセル踏み込み操作速度相当値)が所定の変化量(所定値)より大きいか否かを判定する。YES(ΔAPO>所定の変化量)の場合は「ドライバの加速意図有り」すなわち図2のステップS24へ進み、NO(ΔAPO≦所定の変化量)の場合は「ドライバの加速意図無し」すなわち図2のステップS25へ進む。
ここで、所定の変化量は、予め感応試験等によって設定される。すなわち、それを越えてアクセル踏み込み操作速度が変化することで、ドライバの要求駆動力が高く、速やかなエンジン始動が望まれるという下限値を推定して設定する。
ステップS24では、ステップS20でのドライバの加速意図有りの判断に続き、横置きエンジン2の始動としてスタータモータ1を用いたスタータ始動を実行し、エンドへ進む。このステップS24では、ベルト式無段変速機6の変速比は変速しない。
また、モータ/ジェネレータ4のモータ回転数を、第1クラッチ3の締結油圧を発生させるモータ回転数まで高めるモータ回転数指令を、ハイブリッドコントロールモジュール81からモータコントローラ83へ出力する。さらに、CVTコントロールユニット84は、スリップ状態にある第2クラッチ5の伝達トルク容量を徐々に高める第2クラッチ5の締結油圧制御を行う。
ステップS25では、ステップS20でのドライバの加速意図無しの判断に続き、横置きエンジン2の始動としてモータ/ジェネレータ4を用いた強電始動を実行し、エンドへ進む。
ステップS30では、ステップS10での「VSP>0」の判断に続き、エンジン始動要求時の第1クラッチ3を挟んだ横置きエンジン2とモータ/ジェネレータ4との差回転が所定の差回転より大きいか否かを判定する。すなわち、横置きエンジン2及びモータ/ジェネレータ4の回転数から、第1クラッチ3を挟んだ横置きエンジン2とモータ/ジェネレータ4との差回転(以下、単に「差回転」という。)を演算する(差回転演算手段)。なお、エンジン始動要求時、横置きエンジン2の回転数はゼロであるから、その差回転はモータ/ジェネレータ4のモータ回転数に等しい(差回転=モータ回転数)。この差回転が所定の差回転より大きいか否かを判定する。YES(差回転>所定の差回転)の場合はステップS40へ進み、NO(差回転≦所定の差回転)の場合はステップS70へ進む。
ここで、所定の差回転は、変速時間を考慮したエンジン始動時間に応じて設定される。エンジン始動時間は、エンジン始動から第1クラッチ3のロックアップが完了するまでの時間である。
ステップS40では、ステップS30での「差回転>所定の差回転」の判断に続き、急加速判定、すなわち、ドライバの加速意図の有無を判定する(加速意図判定手段)。YES(ドライバの加速意図有り)の場合はステップS60へ進み、NO(ドライバの加速意図無し)の場合はステップS50へ進む。この加速意図判定処理流れを、図3のフローチャートに示す(加速意図判定手段)。以下、ステップS40における加速意図判定処理構成をあらわす図3の各ステップ(ステップS41〜ステップS43)について説明する。
ステップS41では、YES(APO>4/8)の場合はステップS42へ進み、NO(APO≦4/8)の場合は「ドライバの加速意図無し」すなわち図2のステップS50へ進む以外は、ステップS21と同一であるから説明を省略する。
ステップS42では、YES(踏込速度>所定の踏込速度)の場合は「ドライバの加速意図有り」すなわち図2のステップS60へ進み、NO(踏込速度≦所定の踏込速度)の場合はステップS43へ進む以外は、ステップS22と同一であるから説明を省略する。
ステップS43では、YES(ΔAPO>所定の変化量)の場合は「ドライバの加速意図有り」すなわち図2のステップS60へ進み、NO(ΔAPO≦所定の変化量)の場合は「ドライバの加速意図無し」すなわち図2のステップS50へ進む以外は、ステップS23と同一であるから説明を省略する。
ステップS50では、ステップS40でのドライバの加速意図無しの判断に続き、始動後アシスト余裕判定を行う。すなわち、始動後アシスト余裕判定として、強電バッテリ21の状態に基づき、横置きエンジン2が始動後に、モータ/ジェネレータ4により横置きエンジン2をトルクアシストするアシスト余裕の有無を判定する(始動後アシスト余裕判定手段)。YES(アシスト余裕有り)の場合はステップS60へ進み、NO(アシスト余裕無し)の場合はステップS80へ進む。この始動後アシスト余裕判定処理流れを、図4のフローチャートに示す(始動後アシスト余裕判定手段)。以下、始動後アシスト余裕判定処理構成をあらわす図4の各ステップ(ステップS51〜ステップS53)について説明する。
ステップS51では、リチウムバッテリコントローラ86が監視するバッテリ充電容量(バッテリSOC)が、所定のバッテリSOCより大きいか否かを判定する。YES(バッテリSOC>所定のバッテリSOC)の場合はステップS52へ進み、NO(バッテリSOC≦所定のバッテリSOC)の場合は「アシスト余裕無し」すなわち図2のステップS80へ進む。
ステップS52では、ステップS51での「バッテリSOC>所定のバッテリSOC」の判断に続き、リチウムバッテリコントローラ86が監視するバッテリ温度が、所定のバッテリ温度範囲内か否かを判定する。YES(所定のバッテリ温度範囲内)の場合はステップS53へ進み、NO(所定のバッテリ温度範囲外)の場合は「アシスト余裕無し」すなわち図2のステップS80へ進む。
ステップS53では、ステップS52での所定のバッテリ温度範囲内の判断に続き、モータコントローラ83が監視するモータ/ジェネレータ温度(M/G温度)が、所定のM/G温度未満か否かを判定する。YES(M/G温度<所定のM/G温度)の場合は「アシスト余裕有り」すなわちステップS60へ進み、NO(M/G温度≧所定のM/G温度)の場合は「アシスト余裕無し」すなわち図2のステップS80へ進む。
ステップS60では、ステップS40でのドライバの加速意図有りの判断、または、ステップS50での「アシスト余裕有り」の判断に続き、ベルト式無段変速機6の変速比のアップシフトを実行すると共に、横置きエンジン2の始動としてスタータモータ1を用いたスタータ始動を実行し、エンドへ進む。
ステップS70では、ステップS30での「差回転≦所定の差回転」の判断に続き、モータ/ジェネレータ4が出力可能な上限トルクと実トルクとから演算されたモータ/ジェネレータ4が出力可能な余裕トルクが、所定の余裕トルク未満か否かを判定する(余裕トルク判定手段)。すなわち、モータ/ジェネレータ4が出力可能な上限トルク及びモータ印加電流値から推定される実トルクから、モータ/ジェネレータ4が出力可能な余裕トルクを演算する。この演算した余裕トルクが、所定の余裕トルク未満か否かを判定する。YES(余裕トルク<所定の余裕トルク、余裕トルク無し)の場合はステップS80へ進み、NO(余裕トルク≧所定の余裕トルク、余裕トルク有り)の場合はステップS90へ進む。
ここで、所定の余裕トルクとは、横置きエンジン2の始動としてモータ/ジェネレータ4を用いた強電始動を実行するために、モータ/ジェネレータ4が出力することができるトルクである。
ステップS80では、ステップS50での「アシスト余裕無し」の判断、または、ステップS70での「余裕トルク無し」の判断に続き、横置きエンジン2の始動としてスタータモータ1を用いたスタータ始動を実行し、エンドへ進む。このステップS80では、ベルト式無段変速機6の変速比は変速しない。
ステップS90では、ステップS70での「余裕トルク有り」の判断に続き、横置きエンジン2の始動としてモータ/ジェネレータ4を用いた強電始動を実行し、エンドへ進む。
次に、作用を説明する。
実施例1のFFプラグインハイブリッド車両の制御装置における作用を、「車速ゼロ発進時のエンジン始動制御処理動作」、「EV走行中の基本的なエンジン始動制御処理動作」、「EV走行中の第1のエンジン始動制御処理動作」、「EV走行中の第2のエンジン始動制御処理動作」、「EV走行中の第3のエンジン始動制御処理動作」、「EV走行中の始動後アシスト余裕情報を用いたエンジン始動制御作用」に分けて説明する。
[車速ゼロ発進時のエンジン始動制御処理動作]
エンジン始動制御は、EVモードにてエンジン始動要求があると、スタータモータ1を用いたスタータ始動と、モータ/ジェネレータ4を用いた強電始動と、のいずれかを用いてエンジンを始動する。
スタータ始動は、ハイブリッドコントロールモジュール81からのスタータ始動指令の出力に基づき、リレースイッチ44をオン(通電)にする。これにより、キャパシタ23を電源とするスタータモータ1が横置きエンジン2のクランク軸を回転させることでスタータ始動が行われ、通電から所定時間後にリレースイッチ44をオフ(遮断)にする。すなわち、スタータモータ1によるエンジン始動制御は、スタータ始動指令によりリレースイッチ44がオン(通電)されている間、キャパシタ23の電力を用いてスタータモータ1が駆動し、横置きエンジン2を始動させる。
強電始動(M/G始動)は、横置きエンジン2の始動には、強電バッテリ21を電源とするモータ/ジェネレータ4を用い、横置きエンジン2をクランキングしてM/G始動する。このM/G始動制御では、第2クラッチ5をスリップ状態とし、第1クラッチ3を徐々に締結していくことで、モータ/ジェネレータ4をスタータモータとし、横置きエンジン2をクランキングする。
まず、エンジン始動制御のうち、車速VSPがゼロのときのエンジン始動制御処理動作について、説明する。
エンジン始動要求があり車速VSPがゼロのときスタータ始動を実行する制御は、図2のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS10→ステップS20→ステップS24→ENDへと進む流れである。すなわち、EVモードにて、エンジン始動要求が有り、車速VSPがゼロすなわち車速ゼロからの発進時、ドライバの加速意図有りと判定された場合、スタータ始動が実行される。
エンジン始動要求があり車速VSPがゼロのとき強電始動を実行する制御は、図2のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS10→ステップS20→ステップS25→ENDへと進む流れである。すなわち、EVモードにて、エンジン始動要求が有り、車速VSPがゼロすなわち車速ゼロからの発進時、ドライバの加速意図無しと判定された場合、強電始動が実行される。
「EV走行中の基本的なエンジン始動制御処理動作」
次に、エンジン始動制御のうち、EV走行中にエンジン始動要求があるときの基本的なエンジン始動制御処理動作について、図2及び図5のエンジン始動領域マップにより説明する。この基本的なエンジン始動制御は、差回転と余裕トルクから判定される。なお、図5の縦軸をモータ/ジェネレータ4のモータ実トルクとし、横軸をモータ/ジェネレータ4のモータ実回転数とする。
EV走行中にエンジン始動要求があるとき、差回転が所定の差回転未満と判定され、余裕トルク有りと判定された場合、図5の強電始動領域となる。すなわち、強電始動を実行する制御は、図2のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS70→ステップS90→ENDへと進む流れである。また、一般に、EV走行中にエンジン始動要求があるとき、強電始動される。
EV走行中にエンジン始動要求があるとき、差回転が所定の差回転未満と判定され、余裕トルク無しと判定された場合、図5のスタータ始動(変速しない)領域となる。すなわち、スタータ始動(変速しない)を実行する制御は、図2のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS70→ステップS80→ENDへと進む流れである。つまり、EV走行中にエンジン始動要求があるとき、モータ/ジェネレータ4に強電始動するための出力可能な余裕トルクが無ければ、スタータ始動される。
EV走行中にエンジン始動要求があるとき、差回転が所定の差回転より大きいと判定された場合、図5のスタータ始動(アップシフトする)領域となる。すなわち、スタータ始動(アップシフトする)を実行する制御は、図2のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→(ステップS40→)ステップS60→ENDへと進む流れである。
このような、スタータ始動の実行と共に、アップシフトを実行する理由を、図6を用いて説明する。図6は、エンジン始動要求時からの第1クラッチ3を挟んだモータ/ジェネレータ4のモータ回転数とエンジン回転数とを示している(一例)。時間ゼロがエンジン始動要求時とする。また、MRn(nは数字)は、モータ回転数を示している。MRnの左下がりの一定の勾配(実線)は無段変速機CVTの変速速度を示し、破線は変速しない場合を示している。ERn(nは数字)は、MRnを変速することにより、最速で第1クラッチ3のロックアップを開始することができる目標回転数である。図6において、所定の時間(time)までに、第1クラッチ3のロックアップを開始することを条件とする。
この場合、MR1及びMR2は、変速しなくても(破線)、この条件を満たす。すなわち、モータ回転数が、所定のモータ回転数(ここでは、時間ゼロのMR2のモータ回転数)より低い場合には、変速しなくても、所定の時間までにそのロックアップを開始することができる。これに対し、MR3〜MR5は、変速しなければ(実線)、その条件を満たすことができない。すなわち、所定の時間までにそのロックアップを開始することができないので、モータ回転数が高い場合には、変速(アップシフト)して、モータ回転数を下げる必要がある。このため、モータ回転数が、所定のモータ回転数より高い場合には、所定の時間までにロックアップを開始することができるように、アップシフトを実行する。つまり、所定の差回転(=所定のモータ回転数)を設定し、スタータ始動の実行と共に、アップシフトを実行する必要がある(図5のスタータ始動(アップシフトする)領域)。
また、所定のモータ回転数を小さくすると、所定の時間(time)を早くすることができるが、図6の所定のモータ回転数をER5より小さくすると、MR5は変速しても、所定の時間までにそのロックアップを開始することができない。このため、所定の差回転は、変速時間を考慮したエンジン始動時間に応じて設定される。
そして、EV走行中にエンジン始動要求があるときの基本的なエンジン始動制御は、急加速判定(ステップS30)及び始動後アシスト余裕判定(ステップS40)により、エンジン始動が制御される。
[EV走行中の第1のエンジン始動制御処理動作]
次に、EV走行中のエンジン始動要求時、かつ、差回転が所定の差回転より大きいと判定されたときのエンジン始動制御のうち、加速意図有り判定時における第1のエンジン始動制御処理動作について、説明する。
EV走行中のエンジン始動要求時、ドライバの加速意図有りと判定された場合、スタータ始動を実行する制御は、図2のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS40→ステップS60→ENDへと進む流れである。すなわち、EV走行中にエンジン始動要求が有り、差回転が所定の差回転より大きいと判定され、ドライバの加速意図有りと判定された場合、アップシフトが実行されると共に、スタータ始動が実行される。
また、ドライバの加速意図有りと判定される場合は、図3のフローチャートにおいて、2つの流れがある。
1つは、ステップS40→ステップS41→ステップS42→「ドライバの加速意図有り」へと進む流れである。すなわち、図3のフローチャートにて、アクセル開度が所定のアクセル開度より大きいと判定され、かつ、踏込速度が所定の踏込速度より大きいと判定された場合である。
もう1つは、ステップS40→ステップS41→ステップS42→ステップS43→「ドライバの加速意図有り」へと進む流れである。すなわち、アクセル開度が所定のアクセル開度より大きいと判定され、かつ、アクセル開度変化量が所定の変化量より大きいと判定された場合である。
つまり、上記いずれかの判定により、ドライバの加速意図有りと判定される。
次に、EV走行中の第1のエンジン始動制御処理動作を、図7のタイムチャートに示す動作例に基づき、各時刻について説明する。なお、図7の縦軸は、上から順に、アクセル開度APO及び車速VSPと、横置きエンジン2のエンジン回転数(ICE、実線)、モータ/ジェネレータ4のモータ回転数(MOT、破線)及びプライマリプーリPrPのプライマリ回転数(PrP、一点鎖線)と、横置きエンジン2のエンジントルク(ICE、実線)、モータ/ジェネレータ4のモータトルク(MOT、破線)、プライマリプーリPrPのプライマリトルク(PrP、一点鎖線)及びスタータモータのスタータモータトルク(starter、二点鎖線)と、第1クラッチ3の伝達トルク容量(CL1容量)と、第2クラッチ5の伝達トルク容量(CL2容量)と、車両の前後加速度Gと、が示されている。図7の横軸は、時間を表していて、「t」はその時刻を表している。なお、トルクは、プラス側が駆動トルクで、0未満は駆動トルクに対する負荷となっている。
また、後述する図8及び図9のタイムチャートにおいて上記の縦軸及び横軸等の説明は同一であり、図8及び図9において図7と同一の時刻tは同じ時間を表している。
以下、図7のタイムチャートに基づき、各ステップについて説明する。
時刻t0では、車速がゼロよりも大きく、エンジン回転数がゼロであるから、車両はEV走行中である。この時刻が、図2のフローチャートにおいて、「START」に相当する。また、EV走行中であるから、第2クラッチ5は締結されている。また、アクセル開度は2となっている。
時刻t0〜時刻t1では、時刻t1の直前にて運転者によりアクセルペダルが踏まれ、アクセル開度が2から8まで急上昇している。
時刻t1では、アクセル開度が最大の8に達したことにより、駆動力要求によるエンジン始動要求となる(START→ステップS1)。また、車速VSPがゼロより大きい(ステップS10)。このとき、エンジン始動要求時の差回転は、図7に示すように、エンジン回転数がゼロであるから、モータ回転数と等しい。すなわち、EV走行中のエンジン始動要求時のモータ回転数は、所定の差回転に相当する回転数よりも大きくなっている(ステップS30)。そして、アクセル開度が8であるから「APO>4/8」である(ステップS41)と共に、このとき「踏込速度>所定の踏込速度」と判定される(ステップS42)ので、ドライバの加速意図有りと判定される(ステップS40)。つまり、アップシフトを実行すると共に、エンジン始動としてスタータ始動(ステップS60)が用いられる。これにより、上記のステップS60の制御が開始される。これが、図2のSTART→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS40→ステップS60→ENDへと進む流れに相当する。また、スリップインの制御が開始される。
時刻t1〜時刻t2では、第1クラッチ3の伝達トルク容量において、プリチャージにより、開放状態の多板摩擦クラッチ(第1クラッチ3)が有するプレート隙間を詰める、いわゆるガタ詰めが行われる。このプリチャージからスタンバイにすることにより、第1クラッチ3の締結開始直前状態にする。また、スタータモータ1の回転駆動(スタータモータトルク)により、横置きエンジン2がクランキングされる。このとき、スリップインの制御が行われている。すなわち、モータ回転数をプライマリ回転数よりも上昇させ、モータ回転数及びプライマリ回転数の回転数に一定の差を付け、第2クラッチ5をスリップ状態とし、第1クラッチ3締結時のトルク変動を吸収できる状態にする。また、スリップ状態にある第2クラッチ5の伝達トルク容量が、要求駆動力相当になるように第2クラッチ5の締結油圧制御が行われる。すなわち、第2クラッチ5の伝達トルク容量を徐々に高める制御が行われている。
時刻t2では、アップシフトを実行する。すなわち、CVTコントロールユニット84により、ベルト式無段変速機6の変速油圧制御を行い、変速比をアップシフトする制御が開始される。そして、アップシフトにより、ベルト式無段変速機6の入力回転数を低下させる。このため、モータ回転数と共に、プライマリ回転数が下がる。この時刻t2の前後において、プライマリプーリPrPのイナーシャトルクによる前後加速度Gの変動(領域G1)により、車両にショックが発生する。このようなショックが生じても、ドライバの加速意図有りとの判定により、ドライバに違和感を与えることはない。このとき、スリップインの制御が終了される。また、エンジンは、クランキング中である。
時刻t2〜時刻t3では、アップシフトの実行により、モータ回転数と共に、プライマリ回転数が徐々に下がっている(時刻t4まで)。このとき、第2クラッチ5の締結容量の上昇に基づき、モータトルク及びプライマリトルクが上昇している(時刻t4まで)。また、横置きエンジン2はクランキング中である。
時刻t3では、クランキングによりエンジン回転数が初爆可能な回転数(ICE初爆可能回転数)に達し、燃料噴射と点火により横置きエンジン2を初爆させる。
時刻t3〜時刻t4では、横置きエンジン2の初爆により、エンジン回転数は上昇している。なお、スタータモータトルクがゼロになったとき、完爆により横置きエンジン2が自立運転状態になる。この時刻t4の直前〜時刻t4において、プライマリプーリPrPのイナーシャトルクによる前後加速度Gの変動(領域G1)により、車両にショックが発生する。
時刻t4では、モータ回転数が目標スリップ回転数まで下げられたので、アップシフトを終了し、モータ回転数を目標スリップ回転数に維持する。このとき、モータトルク及びプライマリトルクは、モータ/ジェネレータ4が出力可能な上限トルク(MOT出力可能上限トルク)に達している。
時刻t4〜時刻t5では、時間経過と共にエンジン回転数が大きくなり、第1クラッチ3を挟んだエンジン回転数とモータ回転数との差回転がほぼ無くなる。
時刻t5では、第1クラッチ3を挟んだエンジン回転数とモータ回転数との差回転が無くなり、第1クラッチ3のロックアップが開始される。すなわち、第1クラッチ3の伝達トルク容量を徐々に高める第1クラッチ3の締結油圧制御が開始される。
時刻t5〜時刻t6では、第1クラッチ3の伝達トルク容量を徐々に高めている。そして、時刻t6の直前に、第1クラッチ3を挟んだエンジン回転数とモータ回転数との差回転が、徐々に無くなっていく。
時刻t6では、第1クラッチ3を挟んだエンジン回転数とモータ回転数との差回転が無くなる同期回転数になり、第1クラッチ3のロックアップ(完全締結)が完了する。このとき、スリップアウトが開始される。
時刻t6〜時刻t7では、スリップアウトの制御が行われている。
時刻t7では、スリップアウトの制御が終了し、第2クラッチ5のロックアップが開始される。すなわち、第2クラッチ5の伝達トルク容量を徐々に高める第2クラッチ5の締結油圧制御が開始される。
時刻t7〜時刻t8では、第2クラッチ5の伝達トルク容量を徐々に高めている。
時刻t8では、全ての回転数が同期し、第2クラッチ5のロックアップ(完全締結)が完了する。このとき、「HEVモード」に移行し、通常の変速制御に復帰し、ダウンシフトが実行される。
時刻t8〜時刻t9では、プライマリトルクが、徐々に上昇し、MOT出力可能上限トルクより大きくなる。このとき、ダウンシフトにより全ての回転数が上昇している。また、車速VSPが上昇している。
時刻t9では、全ての回転数及び車速VSPが上昇している。
なお、時刻t1までが「EVモード」であり、時刻t1〜時刻t8が「EVモード」から「HEVモード」への遷移であり、時刻t8から「HEVモード」である。
[EV走行中の第2のエンジン始動制御処理動作]
次に、EV走行中のエンジン始動要求時、かつ、差回転が所定の差回転より大きいと判定されたときのエンジン始動制御のうち、加速意図無し判定であるがアシスト余裕有り判定時における第2のエンジン始動制御処理動作について、説明する。
EV走行中のエンジン始動要求時、ドライバの加速意図無しと判定され、アシスト余裕有りと判定された場合、スタータ始動を実行する制御は、図2のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS40→ステップS50→ステップS60→ENDへと進む流れである。すなわち、EV走行中にエンジン始動要求が有り、差回転が所定の差回転より大きいと判定され、ドライバの加速意図無しと判定され、アシスト余裕が有りと判定された場合、アップシフトが実行されると共に、スタータ始動が実行される。
また、ドライバの加速意図無しと判定される場合は、図3のフローチャートにおいて、2つの流れがある。
1つは、ステップS40→ステップ41→「ドライバの加速意図無し」へと進む流れである。すなわち、図3のフローチャートにて、アクセル開度が所定のアクセル開度以下と判定された場合である。
もう1つは、ステップS40→ステップS41→ステップS42→ステップS43→「ドライバの加速意図無し」へと進む流れである。すなわち、前記アクセル開度が前記所定のアクセル開度より大きいと判定され、踏込速度が所定の踏込速度以下と判定され、アクセル開度変化量が所定の変化量以下と判定された場合である。
つまり、上記いずれかの判定により、ドライバの加速意図無しと判定される。
そして、アシスト余裕が有りと判定される場合、図3のフローチャートにおいて、ステップS50→ステップS51→ステップS52→ステップS53→「アシスト余裕有り」へと進む流れである。すなわち、図3のフローチャートにて、バッテリSOCが所定のバッテリSOCより大きいと判定され、バッテリ温度が所定のバッテリ温度範囲内と判定され、M/G温度が所定のM/G温度未満と判定された場合、アシスト余裕が有りと判定される。
次に、EV走行中の第2のエンジン始動制御処理動作を、図8のタイムチャートに示す動作例に基づき、各時刻について説明する。
以下、図8のタイムチャートに基づき、各ステップについて説明する。
時刻t0は、車速VSPがゼロよりも大きく、エンジン回転数がゼロであるから、車両はEV走行中である。この時刻が、図2のフローチャートにおいて、「START」に相当する。また、EV走行中であるから、第2クラッチ5は締結されている。また、アクセル開度は4となっていて、このタイムチャートにおいては時間が経過しても一定である。
時刻t0〜時刻t1では、アクセル開度が一定の4であるが、車速VSPが上昇している。また、トルクの上昇により回転数も上昇している。
時刻t1では、アクセル開度APOが一定であっても、車速VSPが上昇することにより、駆動力要求によるエンジン始動要求となる(START→ステップS1)。また、車速VSPがゼロより大きい(ステップS10)。このとき、エンジン始動要求時の差回転は、図8に示すように、エンジン回転数がゼロであるから、モータ回転数と等しい。すなわち、EV走行中のエンジン始動要求時のモータ回転数は、所定の差回転に相当する回転数よりも大きくなっている(ステップS30)。そして、アクセル開度が4であるから「APO≦4/8」と判定される(ステップS41)から、ドライバの加速意図無しと判定される(ステップS40)。このとき、「バッテリSOC>所定のバッテリSOC」と判定され(ステップS51)、「所定のバッテリ温度範囲内」と判定され(ステップS52)、「M/G温度<所定のM/G温度」と判定される(ステップS53)ので、アシスト余裕有りと判定される(ステップS50)。つまり、アップシフトを実行すると共に、エンジン始動としてスタータ始動(ステップS60)が用いられる。これにより、上記のステップS60の制御が開始される。これが、図2のSTART→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS40→ステップS50→ステップS60→ENDへと進む流れに相当する。また、スリップインの制御が開始される。
時刻t1〜時刻t6では、車速VSP及び前後加速度G以外は、図7の同一時刻と同様であるから説明を省略する。ただし、プライマリプーリPrPのイナーシャトルクによる前後加速度Gの変動(領域G1)が起こるタイミングは、図7と同様である。
時刻t6では、第1クラッチ3を挟んだエンジン回転数とモータ回転数との差回転が無くなる同期回転数になり、第1クラッチ3のロックアップ(完全締結)が完了する。このとき、第1クラッチ3のロックアップ(完全締結)が完了から、アシスト余裕分のモータトルクすなわちMOT出力可能上限トルクにより、エンジントルクのアシストが開始される。また、スリップアウトが開始される。このとき、エンジントルクが低く抑えられる。
時刻t6〜時刻t7では、アシスト余裕分のモータトルクにより、エンジントルクをアシストしている(時刻t8まで)。このとき、エンジントルクが低く抑えられている(時刻t8まで)。また、スリップアウトの制御が行われている。
時刻t7では、スリップアウトの制御が終了し、第2クラッチ5のロックアップが開始される。すなわち、第2クラッチ5の伝達トルク容量を徐々に高める第2クラッチ5の締結油圧制御が開始される。
時刻t7〜時刻t8では、第2クラッチ5の伝達トルク容量を徐々に高めている。
時刻t8では、全ての回転数が同期し、第2クラッチ5のロックアップ(完全締結)が完了する。このとき、「HEVモード」に移行し、通常の変速制御に復帰し、ダウンシフトが実行される。
時刻t8〜時刻t9では、モータトルクが徐々に減少すると共に、エンジントルクが徐々に上昇している。このとき、ダウンシフトにより全ての回転数が上昇している。また、車速VSPが上昇している。
時刻t9では、全ての回転数及び車速VSPが上昇している。また、時刻t9より、エンジントルクとなっている。
なお、時刻t1までが「EVモード」であり、時刻t1〜時刻t8が「EVモード」から「HEVモード」への遷移であり、時刻t8から「HEVモード」である。
[EV走行中の第3のエンジン始動制御処理動作]
次に、EV走行中のエンジン始動要求時、かつ、差回転が所定の差回転より大きいと判定されたときのエンジン始動制御のうち、加速意図無し判定であると共にアシスト余裕無し判定時における第3のエンジン始動制御処理動作について、説明する。
EV走行中のエンジン始動要求時、ドライバの加速意図無しと判定され、アシスト余裕無しと判定された場合、スタータ始動を実行する制御は、図2のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS40→ステップS50→ステップS80→ENDへと進む流れである。すなわち、EV走行中にエンジン始動要求が有り、差回転が所定の差回転より大きいと判定され、ドライバの加速意図無しと判定され、アシスト余裕無しと判定された場合、変速されることなく(ベルト式無段変速機6の変速比は変速されない)スタータ始動が実行される。
また、アシスト余裕無しと判定される場合、図3のフローチャートにおいて、ステップS50→ステップS51〜ステップS53のいずれかのステップにおいて「NO」→「アシスト余裕無し」へと進む流れである。すなわち、図3のフローチャートにて、バッテリSOCが所定のバッテリSOCより小さいと判定された場合、バッテリ温度が所定のバッテリ温度範囲外と判定された場合、または、M/G温度が所定のM/G温度以上と判定された場合、アシスト余裕無しと判定される。
なお、ドライバの加速意図無しと判定される場合は、上述した通りである。
次に、EV走行中の第3のエンジン始動制御処理動作を、図9のタイムチャートに示す動作例に基づき、各時刻について説明する。
以下、図9のタイムチャートに基づき、各ステップについて説明する。
時刻t0、時刻t0〜時刻t1は、図8の同一時刻と同様であるから説明を省略する。
時刻t1では、アクセル開度APOが一定であっても、車速VSPが上昇することにより、駆動力要求によるエンジン始動要求となる(START→ステップS1)。また、車速VSPがゼロより大きい(ステップS10)。このとき、エンジン始動要求時の差回転は、図9に示すように、エンジン回転数がゼロであるから、モータ回転数と等しい。すなわち、EV走行中のエンジン始動要求時のモータ回転数は、所定の差回転に相当する回転数よりも大きくなっている(ステップS30)。そして、アクセル開度が4であるから「APO≦4/8」と判定される(ステップS41)から、ドライバの加速意図無しと判定される(ステップS40)。このとき、「バッテリSOC≦所定のバッテリSOC」(ステップS51)、「所定のバッテリ温度範囲外」(ステップS52)、または「M/G温度≧所定のM/G温度」(ステップS53)、のいずれかに該当すると判定されるので、アシスト余裕無しと判定される(ステップS50)。つまり、変速されることなく、エンジン始動としてスタータ始動(ステップS60)が用いられる。これにより、上記のステップS80の制御が開始される。これが、図2のSTART→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS40→ステップS50→ステップS80→ENDへと進む流れに相当する。また、スリップインの制御が開始される。
時刻t1〜時刻t2では、図8の同一時刻と同様であるから説明を省略する。
時刻t2では、変速しない以外は、図8の同一時刻と同様であるから説明を省略する。
時刻t2〜時刻t3では、変速していないので、モータ回転数及びプライマリ回転数は、時刻t2の時点から一定である。このとき、モータ/ジェネレータ4や強電バッテリ21等の状態、すなわち、「バッテリSOC≦所定のバッテリSOC」(ステップS51)、「所定のバッテリ温度範囲外」(ステップS52)、及び「M/G温度≧所定のM/G温度」(ステップS53)のうち少なくとも1つ以上に該当すると判定されている。このため、モータ/ジェネレータ4には、モータトルク制限がかかり、モータトルクは上昇せず、徐々に減少する。これ以外は、図8の同一時刻と同様であるから説明を省略する。
時刻t3、時刻t3〜時刻t4及び時刻t4では、変速されないこと、モータ回転数及びプライマリ回転数が時刻t2の時点から一定であること、及び、モータトルクが減少していること以外は、図8の同一時刻と同様であるから説明を省略する。
時刻t4〜時刻t6’では、時間経過と共にエンジン回転数が大きくなっている。
時刻t6’では、第1クラッチ3を挟んだエンジン回転数とモータ回転数との差回転がほぼ無くなり、第1クラッチ3のロックアップが開始される。すなわち、第1クラッチ3の伝達トルク容量を徐々に高める第1クラッチ3の締結油圧制御が開始される。
時刻t6’〜時刻t7では、第1クラッチ3の伝達トルク容量を徐々に高めている。そして、第1クラッチ3を挟んだエンジン回転数とモータ回転数との差回転が、徐々に無くなっていく。
時刻t7では、第1クラッチ3を挟んだエンジン回転数とモータ回転数との差回転が無くなる同期回転数になり、第1クラッチ3のロックアップ(完全締結)が完了する。すなわち、所定の差回転に相当する回転数よりも高回転側にて、第1クラッチ3のロックアップ(完全締結)が完了する。このとき、モータトルクにアシスト余裕が無いので、モータトルクにより、エンジントルクのアシストはされない。また、スリップアウトが開始される。
時刻t7〜時刻t7’では、スリップアウトの制御が行われている。
時刻t7’では、スリップアウトの制御が終了し、第2クラッチ5のロックアップが開始される。すなわち、第2クラッチ5の伝達トルク容量を徐々に高める第2クラッチ5の締結油圧制御が開始される。
時刻t7’〜時刻t8では、第2クラッチ5の伝達トルク容量を徐々に高めている。
時刻t8では、全ての回転数が同期し、第2クラッチ5のロックアップ(完全締結)が完了する。このとき、「HEVモード」に移行し、通常の変速制御に復帰し、ダウンシフトが実行される。
時刻t8〜時刻t9では、モータトルクが徐々に減少している。全ての回転数及び車速VSPが上昇している。
時刻t9では、全ての回転数及び車速VSPが上昇している。また、時刻t9より、エンジントルクとなっている。
なお、時刻t1までが「EVモード」であり、時刻t1〜時刻t8が「EVモード」から「HEVモード」への遷移であり、時刻t8から「HEVモード」である。
[EV走行中の始動後アシスト余裕情報を用いたエンジン始動制御作用]
例えば、エンジンと、モータジェネレータ(走行用モータ)と、モータジェネレータと駆動輪との間に変速機と、モータジェネレータによってエンジンを始動させる制御装置と、を備えているハイブリッド車輌を比較例とする。この比較例のハイブリッド車輌によれば、エンジン及びモータジェネレータの締結後のトルクを、常にエンジントルクに頼っている。
しかし、比較例のハイブリッド車輌において、バッテリSOCが比較的高い等(バッテリ温度も含む)、締結後にエンジントルクをモータトルクにてアシスト可能な状態にあっても、その締結後のトルクをモータトルクにてアシストせず常にエンジントルクに頼ることになる。このため、エンジン負荷が高くなり、燃費が悪化することがある。
このように、締結後のトルクを、常にエンジントルクに頼ることになるため、エンジン負荷が高くなり、燃費が悪化することがある、という課題があった。
これに対し、実施例1では、ハイブリッドコントロールモジュール81(エンジン始動制御手段、図2)により、EV走行中にエンジン始動要求があるとき(図2、START→ステップS1→ステップS10)、アシスト余裕有りと判定された場合(図2、ステップS50)、アップシフトが実行される(図2のステップS60、図8の時刻t2〜時刻t4)と共に、エンジン始動が実行される(図2のステップS60、図8の時刻t1〜時刻t3)構成を採用した。
すなわち、EV走行中のエンジン始動要求時、アシスト余裕有りと判定された場合、変速機の入力回転数(=モータ回転数)を低下させるアップシフトが実行される(図2、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS40→ステップS50→ステップS60→END)。このため、変速されない場合よりも低回転側にて、横置きエンジン2及びモータ/ジェネレータ4が第1クラッチ3により締結される(図8、時刻t6)ので、エンジントルクが低く抑えられる。また、第1クラッチ3の締結後、アシスト余裕分のモータトルクによりエンジントルクをアシストすることができる(図8、時刻t6〜時刻t8)。つまり、エンジン始動後のエンジンの負荷が下げられ、燃費の悪化を抑制する。
この結果、EV走行中のエンジン始動要求に対し、アシスト余裕有りと判定されたとき、エンジン始動後の燃費の悪化を抑制することができる。
しかも、この場合には、エンジントルクが低く抑えられるので、CO2排出量を減らすことができる。
実施例1では、ハイブリッドコントロールモジュール81(エンジン始動制御手段、図2)により、エンジン始動としてスタータ始動が実行される(図2のステップS60、図8の時刻t1〜時刻t3)構成を採用した。
このため、EV走行中のエンジン始動要求に対し、アシスト余裕有りと判定された場合(図2、ステップS50)、スタータ始動が実行されること(図2のステップS60、図8の時刻t1〜時刻t3)により、モータ/ジェネレータ4のモータトルクをエンジン始動によって消費することがない。
この結果、EV走行中のエンジン始動要求時、アシスト余裕分のモータトルクによりエンジントルクをアシストすることができる(図8、時刻t6〜時刻t8)。
実施例1では、ハイブリッドコントロールモジュール81(エンジン始動制御手段、図2)により、EV走行中のエンジン始動要求時(図2、START→ステップS1→ステップS10)、差回転が所定の差回転より大きいと判定されたとき(図2、ステップS30)、アシスト余裕無しと判定された場合(図2、ステップS50)、変速されることなく(図2のステップS80、図9の時刻t2)スタータ始動が実行される(図2のステップS80、図9の時刻t1〜時刻t3)構成を採用した。
すなわち、EV走行中のエンジン始動要求時、差回転が所定の差回転より大きいと判定されたとき、アシスト余裕無しと判定された(バッテリSOCが比較的低い状態等)の場合、変速されない(図2、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS40→ステップS50→ステップS80→END)。このため、アップシフトが実行される場合よりも高回転側にて、横置きエンジン2及びモータ/ジェネレータ4が第1クラッチ3により締結される(図9、時刻t7)ので、エンジントルクを高めやすくなる。
この結果、EV走行中のエンジン始動要求に対し、モータトルクによるアシストが期待できない場合でも、ドライバ要求に見合った加速を得ることができる。
しかも、この場合には、スタータ始動が実行されること(図2のステップS80、図9の時刻t1〜時刻t3)により、アシスト余裕の無いモータトルクに頼ることなく、確実に横置きエンジン2を始動することができる。
実施例1では、ハイブリッドコントロールモジュール81(エンジン始動制御手段、図2)により、EV走行中のエンジン始動要求時(図2、START→ステップS1→ステップS10)、差回転が所定の差回転より大きいと判定され(図2、ステップS30)、かつ、ドライバの加速意図無しと判定されたとき(図2、ステップS40)、アシスト余裕有りと判定された場合(図2、ステップS50)にはアップシフトが実行される(図2のステップS60、図8の時刻t2〜時刻t4)と共にスタータ始動が実行され(図2のステップS60、図8の時刻t1〜時刻t3)、アシスト余裕無しと判定された場合(図2、ステップS50)には変速されることなく(図2のステップS80、図9の時刻t2)スタータ始動が実行される(図2のステップS80、図9の時刻t1〜時刻t3)構成を採用した。
例えば、差回転が所定の差回転よりも大きい場合でも、ドライバの加速意図が無ければ、変速はされることなく、差回転の大きい高回転側にて、エンジン及びモータジェネレータが締結される。
これに対し、実施例1では、EV走行中のエンジン始動要求時、差回転が所定の差回転より大きいと判定され、かつ、ドライバの加速意図無しと判定されたときでも、アシスト余裕の有無に基づき、変速を実行するかしないかを決める(図2、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS40→ステップS50→ステップS60またはステップS80→END)。
この結果、EV走行中のエンジン始動要求に対し、差回転が所定の差回転より大きいと判定され、かつ、ドライバの加速意図無しと判定されたとき、アシスト余裕の有無に基づき、変速を実行するかしないかを決めることにより、燃費の悪化を抑制することができる。
実施例1では、ハイブリッドコントロールモジュール81(エンジン始動制御手段、図2)により、EV走行中のエンジン始動要求時(図2、START→ステップS1→ステップS10)、差回転が所定の差回転以下と判定されたとき(図2、ステップS30)、モータ/ジェネレータ4が出力可能な余裕トルクの有無が判定される(図2、ステップ70)。そして、余裕トルク無し(余裕トルク<所定の余裕トルク)と判定された場合にはエンジン始動としてスタータ始動が実行され(図2、ステップ80)、余裕トルク有り(余裕トルク≧所定の余裕トルク)と判定された場合にはエンジン始動として強電始動が実行される(図2、ステップ90)構成を採用した。
一般に、スタータ始動は、強電始動と比較すると、騒音の発生が大きい。
これに対し、実施例1では、EV走行中のエンジン始動要求時、差回転が所定の差回転以下と判定されたとき、余裕トルク無しの場合には、エンジン始動としてスタータ始動が実行される(図2、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS70→ステップS80→END)。このため、強電始動ができない場合でも、確実に横置きエンジン2を始動することができる。
また、実施例1では、EV走行中のエンジン始動要求時、差回転が所定の差回転以下と判定されたとき、余裕トルク有りの場合には、エンジン始動として強電始動が実行される(図2、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS70→ステップS90→END)。このため、騒音の発生を抑制することができる。したがって、EV走行中のエンジン始動要求時、差回転が所定の差回転以下と判定されたとき、余裕トルク有りの場合には、乗員要求に応じた車室内の静寂性を得ることができる。
この結果、EV走行中のエンジン始動要求時、差回転が所定の差回転以下と判定されたとき、余裕トルク無しの場合には確実に横置きエンジン2を始動することができ、余裕トルク有りの場合には乗員要求に応じた車室内の静寂性を得ることができる。
次に、効果を説明する。
実施例1のFFプラグインハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 駆動系にエンジン(横置きエンジン2)と走行用モータ(モータ/ジェネレータ4)を備え、前記エンジン(横置きエンジン2)と前記走行用モータ(モータ/ジェネレータ4)との間にクラッチ(第1クラッチ3)を介装し、前記走行用モータ(モータ/ジェネレータ4)と駆動輪(左右前輪10R,10L)との間に変速機(ベルト式無段変速機6)を介装したハイブリッド車両の制御装置において、前記走行用モータ(モータ/ジェネレータ4)を駆動源とするEVモードにてエンジン始動要求があると、前記エンジン(横置きエンジン2)を始動するエンジン始動制御手段(ハイブリッドコントロールモジュール81、図2)と、前記走行用モータ(モータ/ジェネレータ4)の電源である強電バッテリ21と、前記強電バッテリ21の状態に基づき、前記エンジン(横置きエンジン2)の始動後に、前記走行用モータ(モータ/ジェネレータ4)により前記エンジン(横置きエンジン2)をトルクアシストするアシスト余裕の有無を判定する始動後アシスト余裕判定手段(ハイブリッドコントロールモジュール81、図2のステップS50)と、を設け、エンジン始動制御手段(ハイブリッドコントロールモジュール81、図2)は、前記EVモードによる走行中にエンジン始動要求があるとき、(図2のSTART→ステップS1→ステップS10)、アシスト余裕有りと判定された場合(図2のステップS50)、アップシフトを実行すると共に、エンジン始動を実行する(図2のステップS60)。
このため、EV走行中のエンジン始動要求に対し、アシスト余裕有りと判定されたとき、エンジン始動後の燃費の悪化を抑制することができる。
(2) 前記エンジン始動制御手段(ハイブリッドコントロールモジュール81、図2)は、駆動系にスタータモータ1を備え、前記エンジン始動として前記スタータモータ1を用いたスタータ始動を実行する(図2のステップS60)。
このため、(1)の効果に加え、EV走行中のエンジン始動要求時、アシスト余裕分のモータトルクによりエンジントルクをアシストすることができる。
(3) 前記クラッチ(第1クラッチ3)を挟んだ前記エンジン(横置きエンジン2)と前記走行用モータ(モータ/ジェネレータ4)との差回転を演算する差回転演算手段(ハイブリッドコントロールモジュール81、図2のステップS30)を設け、前記エンジン始動制御手段(ハイブリッドコントロールモジュール81、図2)は、前記EVモードによる走行中のエンジン始動要求時(図2のSTART→ステップS1→ステップS10)、前記差回転が所定の差回転より大きいと判定されたとき(図2のステップS30)、アシスト余裕無しと判定された場合(図2のステップS50)、変速することなく前記スタータ始動を実行する(図2のステップS80)。
このため、(2)の効果に加え、EV走行中のエンジン始動要求に対し、モータトルクによるアシストが期待できない場合でも、ドライバ要求に見合った加速を得ることができる。
(4) ドライバの加速意図の有無を判定する加速意図判定手段(ハイブリッドコントロールモジュール81、図2のステップS40)を設け、前記エンジン始動制御手段(ハイブリッドコントロールモジュール81、図2)は、前記EVモードによる走行中のエンジン始動要求時(図2のSTART→ステップS1→ステップS10)、前記差回転が所定の差回転より大きいと判定され(図2のステップS30)、かつ、ドライバの加速意図無しと判定されたとき(図2のステップS40)、前記アシスト余裕有りと判定された場合(図2のステップS50)にはアップシフトを実行すると共に前記スタータ始動を実行し(図2のステップS60)、前記アシスト余裕無しと判定された場合(図2のステップS50)には変速することなく前記スタータ始動を実行する(図2のステップS80)。
このため、(3)の効果に加え、EV走行中のエンジン始動要求に対し、差回転が所定の差回転より大きいと判定され、かつ、ドライバの加速意図無しと判定されたとき、アシスト余裕の有無に基づき、変速を実行するかしないかを決めることにより、燃費の悪化を抑制することができる。
(5) 前記走行用モータ(モータ/ジェネレータ4)が出力可能な上限トルクと実トルクとから演算された前記走行用モータ(モータ/ジェネレータ4)が出力可能な余裕トルクが、所定の余裕トルク未満か否かを判定する余裕トルク判定手段(ハイブリッドコントロールモジュール81、図2のステップS70)を設け、前記エンジン始動制御手段(ハイブリッドコントロールモジュール81、図2)は、前記EVモードによる走行中のエンジン始動要求時(図2のSTART→ステップS1→ステップS10)、前記差回転が所定の差回転以下と判定されたとき(図2のステップS30)、前記余裕トルクが前記所定の余裕トルク未満と判定された場合(図2のステップS70)には前記エンジン始動として前記スタータ始動を実行し(図2のステップS80)、前記余裕トルクが前記所定の余裕トルク以上と判定された場合(図2のステップS70)には前記エンジン始動として前記走行用モータを用いた強電始動を実行する(図2のステップS90)。
このため、(3)〜(4)の効果に加え、EV走行中のエンジン始動要求時、差回転が所定の差回転以下と判定されたとき、余裕トルク無しの場合には確実に横置きエンジン2を始動することができ、余裕トルク有りの場合には乗員要求に応じた車室内の静寂性を得ることができる。
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、スタータモータ1の電源としてキャパシタ23とする例を示した。しかしながら、実施例1に示した構成に限られるものではない。例えば、スタータモータ1の電源として12Vバッテリ22にしてもよい。
実施例1では、変速機として無段変速機CVTであるベルト式無段変速機6とする例を示した。しかしながら、実施例1に示した構成に限られるものではない。例えば、ベルト式無段変速機6をその他の無段変速機CVTにしてもよいし、無段変速機CVTを自動変速機ATまたはMT変速機等にしてもよい。
実施例1では、ドライバの加速意図の有無を、アクセル開度(図3、ステップS21)、踏込速度(図3、ステップS22)及びアクセル開度変化量(図3、ステップS23)から判定する例を示した。しかしながら、実施例1に示した構成に限られるものではない。例えば、図3のステップS20の急加速判定では、少なくとも踏込速度(図3、ステップS22)及びアクセル開度変化量(図3、ステップS23)のいずれか一方のみから、加速意図の有無を判定してもよい。要するに、図2のステップS20の急加速判定では、少なくともドライバのアクセル踏み込み操作速度により加速意図の有無を判定することができればよい。また、図3のステップS40の急加速判定では、アクセル開度(図3、ステップS41)、踏込速度(図3、ステップS42)及びアクセル開度変化量(図3、ステップS43)のうち、1つ以上からドライバの加速意図の有無を判定してもよい。要するに、ドライバの加速意図の有無を判定することができればよい。
実施例1では、横置きエンジン2が始動後に、モータ/ジェネレータ4により横置きエンジン2をトルクアシストするアシスト余裕の有無を判定(始動後アシスト余裕判定、ステップS50、図2及び図4)するために、図4の3つのステップにより判定する例を示した。しかしながら、実施例1に示した構成に限られるものではない。例えば、3つのステップのうち、1つ以上のステップからアシスト余裕の有無を判定してもよい。
実施例1では、エンジン始動としてのスタータ始動を実行する例として、図2のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→(ステップS40→)ステップS60→ENDへと進む流れ、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS40→ステップS60→ENDへと進む流れ、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS40→ステップS50→ステップS60→ENDへと進む流れ、を示した。しかしながら、これらの場合、エンジン始動としてのスタータ始動を実行する構成に限られるものではない。すなわち、エンジン始動として強電始動を実行してもよい。
ただし、強電始動を実行しても、各ステップSに設定された条件を満たす場合(スタータ始動の条件を除く。)に限り、強電始動を実行することができる。例えば、図2のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS10→ステップS30→ステップS40→ステップS50→ステップS60→ENDへと進む流れについては、強電始動を実行しても、ステップS50に設定された条件を満たす場合、強電始動を実行してもよい。
実施例1では、本発明の制御装置をFFプラグインハイブリッド車両に適用する例を示した。しかしながら、実施例1に示した構成に限られるものではない。例えば、FRプラグインハイブリッド車両や4WDプラグインハイブリッド車両に対して適用してもよい。また、プラグインハイブリッド車両に限らず、FRハイブリッド車両やFFハイブリッド車両等に対しても本発明の制御装置を適用することができる。