スマートフォン等を用いたモバイル用インターネットサービス、データセンタに集約したサーバを用いたクラウドコンピュータサービス等の普及により、高品質の動画、音声情報をはじめとする膨大な情報が情報通信ネットワークにより伝送されている。さらに、それらサービスの多様化、拡充、高度化および利用する個人、法人の増加により、情報通信ネットワークを流れる情報量、すなわちネットワークのトラフィック量は、年々、増加しており、既存の情報通信ネットワークの伝送容量を上回ることが予想されている。そこで、通信ネットワークの情報伝送容量を大幅に拡大し、増加するトラフィックに対応できるようにすることが社会的な課題になっている。
従来、情報通信ネットワークの基盤となる光ファイバを伝送媒体とした光通信ネットワークにおいては、光の強度を変調して情報を伝送する光強度変調方式が用いられている。光ファイバ1本あたりの伝送容量を拡大するために、光強度変調方式において、変調速度、すなわちビットレート(1秒間あたりの変調回数)を増加させるだけでなく、波長の異なる複数の光信号を同時に伝送する波長多重伝送方式が導入されている。このような光ファイバ伝送を実現するために、光通信システム装置においては、電気信号を光信号に変換するために光の強度を変調する光変調器、光信号を受信して電気信号に変換する光受信器といった光デバイスが多数、使用されている。
例えば、波長数が40(40波長)の波長多重通信伝送方式を実現するための構成例として、送信側に光送信器が40個、受信側に40個の光受信器が装備される。このように、大容量の光伝送を実現するためには、光通信システム装置において多数の光デバイスが必要になるため、個々の光デバイスについては、低価格すなわち製造コストが低いことが求められる。例えば、情報通信ネットワークの伝送量容量を、現状の100倍以上に拡大するために、設備投資の観点からは、光通信システム装置の製造コストを100倍以上に増大させることは許容されない。
また、光デバイスは、小型であることが望まれる。一般的には、光通信システム装置においては、光デバイスは、プリント基板の上に搭載されるが、光デバイスが小型であれば、1枚のプリント基板への搭載数を多くすることができ、光通信システム装置を小さくすることができる。あるいは、同じ大きさであれば、処理能力を拡大することができる。さらに、光デバイスでは、所定の性能、機能を発揮する上で、信頼性を確保することも求められる。すなわち、温度や湿度の変動、あるいは長期間の使用において、所定の性能、機能を維持しなければならい。
近年、光通信の伝送容量をさらに拡大するために、光の位相、または位相と強度とを2段階以上に変調する多値変調方式を用いて、光信号を伝送するデジタルコヒーレント伝送方式が導入され始めている。このような伝送システムを実現するために、光の位相や強度を高速で多値変調する光変調器、光の位相や偏波を制御し干渉させることにより光の位相情報を強度情報に変換して、光信号を多チャンネルの電気信号に変換する光受信器等の光デバイスが用いられている。これら複雑かつ高度な光信号処理を行う光デバイスでは、一般的には、平板基板上において光導波路を構成要素として形成される平面光集積回路が用いられている。以後、平面光集積回路を単に光集積回路、平板基板とその表面の光集積回路とを合わせたものを光集積回路基板、光集積回路を用いた光デバイスを光集積回路型光デバイスと呼ぶことにする。
従来、石英光導波路を構成要素とした光集積回路が用いられている。しかし、石英光導波路自体では、高速の光強度変調、位相変調、光信号の電気信号への変換等の機能を有していないため、電気光学効果を有する結晶材料、半導体材料を集積する必要がある。また、光導波路の方向を変換するためには、ある程度大きな曲率半径を確保する必要があるため、光回路のレイアウトは比較的大きくなり、集積回路基板の大きさは、1辺が10mm以上となる。これに伴い、光デバイスのサイズも比較的大きくなる欠点がある。
一方、インジウムリン(InP)といった半導体をベースとした半導体光集積回路、コアをシリコン、クラッドを石英としたシリコン光導波路により光回路を構成したシリコンフォトニクス光集積回路の研究開発が進展し、実用化の段階に来ている。これらの光集積回路は、光の位相、強度の高速変調、光信号の電気信号への変換等、多様で高度な光信号処理機能を実現することができる。また、光導波路レイアウトの曲率半径を非常に小さくすることができ、結果として、光集積回路基板のサイズを大幅に小さくすることができる。一般的に、光集積回路基板のサイズは、1辺を数mm程度にすることができる。これにより、光デバイス(光集積回路基板を搭載したパッケージ)のサイズを小さくすることができる。
図1に、従来の半導体またはシリコンフォトニクス光集積回路型光デバイスの構造の一例を示す。光集積回路型光デバイスは、パッケージ(筐体)11内部に、光集積回路基板12と電気回路基板13とを収容し、光集積回路への光の入出力を行うための複数本の光ファイバ14が光集積回路基板12に接続されている(例えば、非特許文献1参照)。図1においては、光集積回路基板12に形成された光集積回路、電気回路基板13の電気回路の詳細は省略している。光集積回路基板13をパッケージ11に収容するのは、プリント基板上への実装、比較的脆弱である光集積回路の保護、光集積回路と電気回路との配線等の都合による。
半導体またはシリコンフォトニクス光集積回路では、回路自体が非常に小さいために、光集積回路基板12の端面に近い領域において、光入出力を行うための複数本の光導波路(以下、光入出力用光導波路という)18のピッチ(隣り合う光導波路同士の間隔)も非常に小さい。例えば、光導波路のピッチは30μm以下に設定できる。これに対して、通常の光ファイバ(クラッド径は125μm)14を、複数本並べて整列させると、光ファイバのコアのピッチは、125μm以下にすることは困難である。光集積回路のレイアウトの設計において、光入出力用光導波路18のピッチは任意に設定できるが、光ファイバ14のピッチに合わせて125μm以上にするためには、光集積回路の中で光導波路のピッチを拡大するための領域が必要になる。従って、光集積回路基板12の一辺の寸法が大きくなる欠点が生じる。
通常の光ファイバのモードフィールド径(MFD)(スポットサイズ)は、波長1.55μmにおいて10μm程度である。一方、半導体光導波路あるいはシリコン光導波路でのMFDは、1μm前後であり、光集積回路基板の入出力端付近の光導波路に、スポットサイズ変換部を設けたとしても、MFDは5μm程度以下である。光集積回路において、MFDを10μm程度に拡大できるスポットサイズ変換部も開発されているが、変換部分での導波路の長さが長くなり、光集積回路基板が大きくなってしまう欠点がある。
上述したように、光集積回路基板12が多少大きくなっても、パッケージ11を含めた光集積回路型光デバイスのサイズは、さほど拡大することはない。しかしながら、光集積回路の製造において、1枚のウエハから製造できる光集積回路基板の枚数が少なくなり、1つの光集積回路基板あたりの製造コストが上昇するという欠点が生じる。
そこで、ファイバアレイ部16と変換部17とから構成される接続部品15を用いて、複数本の光ファイバ14と光入出力用光導波路18との低損失な接続を実現している。ファイバアレイ部16は、ガラス部材から成り、内部にて光ファイバ14をアレイ状に整列させて固定している。変換部17は、ガラス材料なら成り、光ファイバ14のコアと光入出力用光導波路18とをそれぞれ接続する複数本のコア部を有する。変換部17の光ファイバ側では、光ファイバ14のピッチ(125μm以上)に合わせて、コア部のピッチは大きく、MFDも光ファイバのそれに合わせている。変換部17の光集積回路基板12側では、光入出力用光導波路18のピッチに合わせて、コア部のピッチは小さくなっており、MFDも光入出力用光導波路18に合わせて小さくなっている。変換部17は、複数本のコア部を有するガラス部材を加熱しながら引き延ばすことにより、コア部のピッチを小さくし、またコア部を細くすることによりMFDを小さくしている。
接続部品15は、光集積回路基板12の端面に対して、光結合を考慮して高精度に位置決めされた状態で接着固定される。光集積回路基板12は、パッケージ11の底面に接着固定される。接続部品15もパッケージ11に固定される。具体的には、接続部品15とパッケージ11の側壁とが交差する部分(以下、固定部という)にて固定される。接続部品15をパッケージ11に固定するのは、パッケージ外部の光ファイバ部分において、引っ張り、圧縮、ねじり、曲げ等の外力が加わったとき、その外力が、変換部17や光集積回路基板12に伝達するのを防止し、それらを保護するためである。特に、外力が変換部17に伝わると、光集積回路基板12と変換部17との接着固定部が剥離し、光の入出力が損なわれ、致命的な故障となる可能性があるからである。
しかしながら、接続部品15は、パッケージ11の長手方向にある程度(数mm以上)の長さが必要となり、光集積回路基板12の1辺より長くなることが多い。接続部品15の長さ、すなわち光ファイバ14を光集積回路基板12に接続するのに要する長さ(図1中のLc)は、10mm程度を越えることになる。これにより、光集積回路基板12が小さくても、光集積回路型光デバイスの大きさは、あまり小さくならない。従って、光ファイバの接続に要する長さLcを小さくすることが求められている。
また、光集積回路基板12と接続部品15とがパッケージに固定されるので、光集積回路型光デバイスが使用される環境温度が変化して、パッケージ11が膨張または収縮した場合、光集積回路基板12と接続部品15との相対的な位置が変動し、両者の接着固定部分が剥離する可能性がある。そこで、パッケージ11の材料として、熱膨張係数が非常に小さな材料が必要となり、パッケージ11が高価になる欠点がある。従って、光集積回路型光デバイスが高コストにならないように、パッケージ11の熱膨張がある程度許容できる廉価なパッケージを使用できることが望まれている。
図2に、従来の半導体またはシリコンフォトニクス光集積回路型光デバイスの構造の他の例を示す。光集積回路型光デバイスは、パッケージ(筐体)21内部に、光集積回路基板22と電気回路基板23とを収容し、光集積回路への光の入出力を行うための複数本の光ファイバ24が光集積回路基板22に対して光学的に接続されている(例えば、特許文献1参照)。図2においても、光集積回路基板22に形成された光集積回路、電気回路基板23の電気回路の詳細は省略している。
この例では、ファイバアレイ部品26と2つのレンズ27a,27bとにより、複数本の光ファイバ24と光入出力用光導波路28との低損失な接続を実現している。ファイバアレイ部26は、ガラス部材から成り、内部にて光ファイバ24を、所定のピッチ(125μm以上)でアレイ状に整列させて固定している。レンズ27a,27bは、光ファイバ24から出射された光信号のスポットサイズを変換し、集光位置におけるピッチを変換している。光集積回路基板22は、パッケージ21の底面に接着固定される。ファイバアレイ部26と2つのレンズ27a,27bともパッケージ21に固定される。
しかしながら、空間光学的な処理のために、ファイバアレイ部26から光集積回路基22までの間隔がある程度必要になり、光ファイバ24を光集積回路基板22に接続するのに要する長さ(図2中のLc)は、図1の場合と同様に長くなり、光集積回路基板22が小さくても、光集積回路型光デバイスの大きさは、あまり小さくならない。
また、光集積回路基板22、ファイバアレイ部26、2つのレンズ27a,27bは、相対的な位置変動が殆ど許容されないため、光集積回路型光デバイスが使用される環境温度が変化して、パッケージ21が膨張または収縮した場合、光ファイバ26と光入出力用光導波路28との間の光結合効率が劣化する。そこで、パッケージ21の材料として、熱膨張係数が非常に小さな材料が必要となり、パッケージ21が高価になる欠点がある。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図3に、本発明の第1の実施形態にかかる光集積回路型光デバイスを示す。光集積回路型光デバイスは、パッケージ(筐体)31内部に、光集積回路基板32と電気回路基板33とを収容し、光集積回路への光の入出力を行うための複数本の光ファイバ34が光集積回路基板32に接続されている。図1においては、光集積回路基板32に形成された光集積回路、電気回路基板33の電気回路の詳細は省略している。半導体光集積回路またはシリコンフォトニクス光集積回路からなる光集積回路では、回路自体が非常に小さいために、光集積回路基板32の端面に近い領域において、光入出力を行うための複数本の光導波路(以下、光入出力用光導波路という)38は、一部のみ描かれている(以下の実施形態も同じ)。
第1の実施形態の光集積回路は、基板がシリコンからなり、クラッドが石英、コアがシリコンからなるシリコン光導波路(以下、単に光導波路という)を構成要素とした光集積回路である。光導波路のモードフィールド径(スポットサイズ)は、波長1.55μmにおいて、1μm以下である。光導波路の方向を直角に曲げる場合でも、曲率半径は100μm以下に小さくすることができ、石英系光導波路を構成要素とした光集積回路に比べて、光集積回路のサイズ(基板の一辺のサイズ)や面積を大幅に小さくすることができ、一般的には基板の一辺のサイズは10mm以下である。
光集積回路のサイズを小さくできることに伴い、光集積回路基板32の端面の光入出力用光導波路38の互いの間隔(ピッチ)も50μm以下と小さくできる。ここで、光入出力用光導波路38のピッチは、例えば、光ファイバ34のピッチに合わせて、80μm〜125μmに設定することも可能であるが、光集積回路の中で光導波路のピッチを拡大するための領域が必要になり、光集積回路基板のサイズがその分大きくなる。光集積回路基板が多少大きくなっても、光集積回路型光デバイス全体の大きさは余り変わらないが、1枚のウエハから製造される光集積回路基板の個数が減少するため、光集積回路基板の製造コストが増加する欠点が生じる。
第1の実施形態では、変換ファイバ35、ファイバ固定部36、および支持部37を用いて、複数本の光ファイバ34と光入出力用光導波路38との低損失な接続を実現している。ファイバ固定部36は、外形が立方体のガラス部材から成り、内部にて光ファイバ34をアレイ状に所定のピッチで整列させて固定している。ファイバ固定部36は、パッケージ31の側壁に固定されている。光ファイバ34は、ファイバ固定部36の端面から光集積回路基板32側は、変換ファイバ35となり、支持部37に接続される。支持部37は、外形が立方体のガラス部材から成り、内部にて変換ファイバ35をアレイ状に所定のピッチで整列させて固定している。支持部37の光集積回路基板32側の端面と、変換ファイバ35の端面とは同一の面となっている。変換ファイバ35のピッチと光入出力用光導波路38のピッチとはほぼ同一であり、変換ファイバ35と光入出力用光導波路38の中心軸がほぼ一致した状態で、支持部37は、光集積回路基板32の端面に紫外線硬化型接着剤を用いて接着固定されている。このようにして、変換ファイバ35を介して光ファイバ34と光入出力用光導波路38とを光学的に接続する。
光ファイバ34とファイバ固定部36に固定されている光ファイバは、クラッド径は70μm以上(例えば、80μmまたは125μm)である。変換ファイバ35は、ファイバ固定部36から支持部37に向かって、クラッド径は50μm以下(例えば、30μm)と細くなるように加工されている。従って、支持部37の光集積回路基板32の端面において、変換ファイバ35のピッチは、50μm以下(例えば30μm)に設定することができる。
ファイバ固定部36においては、例えば、クラッド径が80μmであっても、被覆の外形はそれ以上に大きいので、110μm以上のピッチで整列している。光ファイバ34をファイバ固定部36でパッケージ31に固定するのは、パッケージ外部の光ファイバ部分において、引っ張り、圧縮、ねじり、曲げ等の外力が加わったとき、その外力が、支持部37や光集積回路基板32に伝達するのを防止し、それらを保護するためである。特に、外力が支持部37に伝わると、光集積回路基板32の破損や歪み、光集積回路基板32と支持部37との位置ずれ等が発生し、光集積回路型光デバイスとしての特性が劣化し、または動作不良を引き起こす可能性があるためである。
変換ファイバ35のファイバ固定部36の端面から支持部37の端面までの長さは2mm以上あり、被覆がない状態である。この領域では、光ファイバのピッチは、110μm以上から50μm以下に変換されるため、被覆のない光ファイバが撓んでいることから、撓み部39と呼ぶことにする。なお、光集積回路型光デバイスの製造時におけるパッケージ内の実装作業において、変換ファイバに傷をつけたり、変換ファイバが破断しないように、被覆を施す場合もある。
光集積回路基板32の入出力端付近の光入出力用光導波路38には、スポットサイズ変換器(SSC)が備えられ、変換ファイバ35に対向した光導波路端でのモードフィールド径(MFD)は、波長1.55μmにて10μm程度になっている。ただし、MFDを10μm程度に大きく拡大するSSCを形成するために、光集積回路基板32のサイズが若干大きくなっており、また光集積回路の作製において、SSCを形成するための工程が追加されて、製造コストが高くなっている。
また、光集積回路基板32とファイバ固定部36とがパッケージ31に固定されるので、光集積回路型光デバイスが使用される環境温度が変化して、パッケージ31の膨張や収縮に伴い、ファイバ固定部36と支持部37との相対的な位置が変動する。熱膨張係数の低いパッケージ材料を使用すれば、この位置変動を小さくすることができるが、パッケージは比較的高価になる。第1の実施形態では、撓み部39において変換ファイバ35が撓む(湾曲する)ことができるので、ファイバ固定部36と支持部37との相対的位置変動をある程度許容することができ、熱膨張係数の高い比較的廉価なパッケージ材料を用いることができる。また、パッケージ31は、高い剛性(外力による歪みが小さい)を有する必要がなく、パッケージ31の底面、側壁、蓋の肉厚を薄くすることができ、パッケージサイズの削減、低コスト化を図ることができる。
一般的に、クラッド径が50μm以下に小さい光ファイバは、クラッド径が80μmや125μmの光ファイバと比較して、同じ曲げ半径でも、曲げたときの反作用(曲げるのに要する力)が小さい。また、断面方向における最大引っ張り応力が小さくなるために、曲げにより破断する可能性は小さくなる。従って、変換ファイバ35は、撓み部39の長さが同じである前提において、撓み部39においてクラッド径が80μmまたは125μmである場合と比較して、湾曲による反作用で接続部品にかかる力は小さく、ファイバが破断する可能性も低い。言い換えれば、支持部37にかかる力の許容値、ファイバの破断確率が同じであるならば、撓み部39の長さを短くすることができる。すなわち、光ファイバ34を光集積回路基板32に接続するのに要する長さ(図3中のLc)を短くすることができる。
撓み部39の長さが2〜3mmと短い場合、かつクラッド径が80μmまたは125μmと大きい光ファイバを選択すると、支持部37とファイバ固定部36との相対的な位置変動に合わせて光ファイバは撓むことができる。しかし、撓み部39での光ファイバの剛性は高く、その弾性力により、支持部37にある程度の力が作用し、接続の信頼性を低下させる。一方、クラッド径が50μm以下と細い変換ファイバ35は、ファイバの弾性力は小さく、支持部37にかかる力は小さくなる。撓み部39においてクラッド径が小さく、光ファイバを湾曲されることが容易であるから、撓み部39の長さが短くても、光ファイバのピッチを110μm以上から50μm以下に変換することができる。
変換ファイバ35は、先端付近の数mmのみクラッド径が50μm以下で、それ以外の部分は80μmまたは125μmとなる光ファイバが必要となる。このような光ファイバは、光ファイバ34の先端付近をフッ酸等によるエッチングにより加工する方法、または変換ファイバ35となるクラッド径が小さい光ファイバを、光ファイバ34に融着接続にする方法(第2の実施形態を参照)により作製することができる。なお、パッケージ31の外部においても、光ファイバ34のクラッド径を50μm以下とすることも考えられるが、光ファイバの機械的強度が不十分で、破断する確率が高くなる。
第1の実施形態の光集積回路は、基板がシリコンからなり、クラッドが石英、コアがシリコンからなるシリコン光導波路を構成要素とし、光導波路のモードフィールド径は2μm以下である。光集積回路基板の端面の光入出力用光導波路にはスポットサイズ変換機能が付与され、光入出力用光導波路の端面でのモードフィールド径は、波長1.55μmにおいて10μm程度に拡大される。光集積回路への光の入出力を行うための光ファイバのクラッド径は80μmまたは125μmであり、光入出力用光導波路の端面では、互いの間隔(ピッチ)も50μm以下と小さくできる。
第1の実施形態においては、光ファイバをパッケージに固定して、機械的信頼性を確保する場合でも、光集積回路においてピッチを拡大するための領域を不要とし、光ファイバと光集積回路基板との接続に要する長さLcを短くできることにより、パッケージサイズの小型化を図ることができる。さらに、廉価なパッケージ材料を使用することができるので、光集積回路型光デバイスの製造コストを下げることができる。光ファイバをパッケージに固定する部分において機密封止が必要となる場合でも、上記の効果を享受できることは明らかである。
第1の実施形態の図1においては、光ファイバの本数を4本としているが、本発明はこれに限らない。ファイバ固定部は、光ファイバをパッケージに固定する機能だけでなく、パッケージにより機密封止を行う場合には、光ファイバの周囲の隙間を無くし、空気の流動を防止する機能も持つ。第1の実施形態では、コアがシリコンからなるシリコン光導波路を構成要素とする光集積回路を用いたが、InPやGaAs等の材料を用いた半導体光導波路を構成要素とする光集積回路を用いることもできる。
第1の実施形態では、光入出力用光導波路の間隔、およびファイバ固定部における光ファイバの間隔は等間隔としているが、これに限らない。例えば、光ファイバの間隔は等間隔であるが、複数本の光入出力用光導波路において、互いの間隔が30μmと40μmとなる配列を混在させることもできる。
[第2の実施形態]
図4(a)に、本発明の第2の実施形態にかかる光集積回路型光デバイスを示す。光集積回路型光デバイスは、パッケージ(筐体)41内部に、光集積回路基板42と電気回路基板43とを収容し、光集積回路への光の入出力を行うための複数本の光ファイバ44が光集積回路基板42に接続されている。第1の実施形態と同様に、第2の実施形態においても、変換ファイバ45、ファイバ固定部46、および支持部47を用いて、複数本の光ファイバ44と光入出力用光導波路48との低損失な接続を実現している。
光ファイバ44は、クラッド径は70μm以上(例えば、80μmまたは125μm)であり、コアとクラッドとの比屈折率差が0.5%以下の低Δの光ファイバである。光ファイバ44は、波長1.55μmにおけるモードフィールド径(MFD)が10μm程度の通常のシングルモードファイバである。変換ファイバ45は、ファイバ固定部46から支持部47に向かって、クラッド径は50μm以下(例えば、30μm)と細くなるように加工されている。光集積回路基板42の入出力端付近の光入出力用光導波路48には、スポットサイズ変換器(SSC)が備えられ、変換ファイバ45に対向した光導波路端でのモードフィールド径(MFD)は、波長1.55μmにて5μm程度であり、第1の実施形態と比較すると小さくなっている。
一般的に、MFDを10μm程度に拡大するスポットサイズ変換器と比較して、5μm程度までしか拡大しないスポットサイズ変換器は、構造が簡単であり、作製の負荷が小さい。すなわち、光集積回路の作製コストが小さい。変換ファイバ45は、パッケージ41の内部において、クラッド径は50μm以下で、かつコアとクラッドとの比屈折率差が1.5%以上と高Δの光ファイバである。波長1.55μmにおいてシングルモードを維持するために、変換ファイバ45は、コア径が5μm以下と小さく、MFDも5μm程度になっている。これにより、光入出力用光導波路48との光結合効率を高くすることができる。言い換えれば、接続損失が小さい。
図4(b)は、ファイバ固定部46の内部の一部を拡大した図である。光ファイバ44の被覆のない接続部分44aと高Δの細径ファイバである変換ファイバ45の接続部分45aとが融着接続されている。接続部分44aと接続部分45aとを融着する際に、融着部分の近辺と接続部分45aとを加熱することにより、変換ファイバ45のコアのドーパント(ゲルマニウム等)をクラッドの方へ拡散させることにより、コアを拡大し、スポットサイズ変換の機能を付与する。これにより、光ファイバ44と変換ファイバ45との間を低損失で光を伝搬させることができる。一般的に、融着接続した部分および加熱した部分は、熱により機械的強度が劣化する(曲げや引っ張りにより破断し易い)。そこで、これら部分をファイバ固定部46に収容することにより、光ファイバの破断の発生を防止することができる。
ファイバ固定部46と支持部47との間の光ファイバの撓み部49では、変換ファイバ45が高Δであるため、光ファイバの曲げ半径が小さくても、曲げ損失は小さくなる。これにより、光ファイバのピッチの変換のために曲げ半径が小さくなっても、またはファイバ固定部46と支持部47との相対的な位置変動により、光ファイバが撓み、曲げ半径が小さくなっても、曲げ損失は小さくすることができる。
第2の実施形態の光集積回路は、光入出力用光導波路48に設けられたスポットサイズ変換機能は、波長1.55μmにてMFDを5μm程度しか拡大できないが、変換ファイバによって光ファイバのピッチの変換とモードフィールド径の変換が可能である。従って、光集積回路の作製工程は、比較的簡単となり、他の光回路の作製工程と共有することができるので、光集積回路の製造コストを抑えることができる。結果として、光集積回路型光デバイスの製造コストを下げることができる。
[第3の実施形態]
図5に、本発明の第3の実施形態にかかる光集積回路型光デバイスを示す。光集積回路型光デバイスは、パッケージ(筐体)51内部に、光集積回路基板52と電気回路基板53とを収容し、光集積回路への光の入出力を行うための複数本の光ファイバ54が光集積回路基板52に接続されている。第1の実施形態と同様に、第3の実施形態においても、変換ファイバ55、ファイバ固定部56、および支持部57を用いて、複数本の光ファイバ54と光入出力用光導波路58との低損失な接続を実現している。
光ファイバ54は、クラッド径は70μm以上(例えば、80μmまたは125μm)である。変換ファイバ55は、ファイバ固定部56から支持部57に向かって、クラッド径は50μm以下(例えば、30μm)と細くなるように加工されている。変換ファイバ55は、光ファイバ54の先端付近を、フッ化水素水等を用いてエッチングすることにより作製している。
光ファイバのクラッド径は125μmが一般的であるが、プリント基板上での光ファイバ配線には、クラッド径が80μmの光ファイバが用いられる。これは、同じ曲げ半径でも、破断する確率が低く、曲げるための反作用が小さい(剛性が低く)からである。このような光ファイバを取り扱うのは、光伝送システム装置の製造における作業者のみであるから、細くて破断し易くても製造上の問題点とはならない。変換ファイバ55は、光ファイバ54と一体的に形成されており、両者のつなぎ目が無い。これにより、両方の光ファイバの境界において、光の伝搬損失は殆ど発生しない。
第3の実施形態にかかる光集積回路型光デバイスには4本の光ファイバが接続されており、2本の光ファイバについては、パッケージの外部において、先端付近に光コネクタのフェルール61が取り付けられている。第3の実施形態では、パッケージの外部の光ファイバおよび光コネクタも光集積回路型光デバイスの一部と見なし、光集積回路基板や電気回路を含むパッケージは、光集積回路型光デバイスの本体と見なす。
図6に、第3の実施形態にかかる光コネクタを示す。光コネクタのフェルール61は、ジルコニア製の円筒形の部材から成るジルコニア部62と、金属製のフランジ部63とから構成されている。ここで、光ファイバ54は、変換ファイバ55と同様に高Δ(1.5%以上)の光ファイバであり、フェルール61のジルコニア部62においては、MFDが10μm程度(波長1.55μm)の低Δ(0.5%以下)の光ファイバとなっている。
光ファイバ54は、被覆54aとともに、内径が0.25mm程度以上のフランジ部63に挿入され、フランジ部63とジルコニア部62の一部との間に充填された接着剤64により固定されている。フランジ部63の内部において、高Δの光ファイバのコア54bと低Δの光ファイバのコア54cとを融着接続している。この融着接続部54dによりコアを拡大し、スポットサイズ変換の機能を付与する。融着接続部54dをフェルール61に収容することにより、融着接続部54dを保護している。
なお、ファイバ固定部56とフェルール61との間に融着接続部を設け、融着接続部に被覆をコーティングする構成も考えられるが、光集積回路型光デバイスがプリント基板に実装された際、プリント基板上での光ファイバ配線のレイアウトにおいて、融着接続部が曲げによって破断する確率が高くなる。
本実施形態では、パッケージ51からフェルール61までの光ファイバ54は、高Δであり、曲げ半径が小さくても、曲げ損失を小さくできるため、光集積回路型光デバイスをプリント基板に実装した際、プリント基板上での光ファイバの配線レイアウトにおいて、曲げ半径を小さくすることができる、言い換えれば、配線レイアウトの自由度が高くなる。
以上のように、(1)光集積回路基板52の光入出力用光導波路58と変換ファイバ55との間、(2)変換ファイバ55と光ファイバ54との間、(3)光ファイバ54と光コネクタを介して接続される伝送路の光ファイバとの間における相互の光の伝搬において、発生する損失を小さくすることができる。その結果、光集積回路の光入出力用光導波路と伝送路の光ファイバとの間での損失を小さくすることができる。
光集積回路型光デバイスに接続された4本の光ファイバのうち、残りの2本の光ファイバについては、先端にフェルールは取り付けられていない。これらの光ファイバは、別の光デバイスの高Δの光入出力用光ファイバに対して融着接続される。
第3の実施形態では、光コネクタのフェルールを例に説明したが、光レセプタのフェルール、光ファイバアレイ用の接続部品等を適用することもできる。
第3の実施形態によれば、光集積回路型光デバイスをプリント基板に実装し、光集積回路型光デバイスに付属する光ファイバをプリント基板上で配線する場合、配線レイアウトの曲げ半径を小さくすることができ、配線レイアウトの自由度が向上する。配線レイアウトの曲げ半径が比較的大きな場合、配線レイアウトと他の光デバイスの位置が重なり、そのデバイスの実装位置が制限される場合がある。
[第4の実施形態]
図7に、本発明の第4の実施形態にかかる光集積回路型光デバイスを示す。光集積回路型光デバイスは、パッケージ(筐体)71内部に、光集積回路基板72と電気回路基板73とを収容し、光集積回路への光の入出力を行うための複数本の光ファイバ74が光集積回路基板72に接続されている。第1の実施形態と同様に、第4の実施形態においても、変換ファイバ75、ファイバ固定部76、および支持部77を用いて、複数本の光ファイバ74と光入出力用光導波路78との低損失な接続を実現している。
一般的には、光集積回路基板72は、平面形状が概ね四角形と見なせる。また、パッケージ71の平面形状も概ね四角形であり、その四周囲には側壁がある。光集積回路基板72において、光入出力用光導波路78への光の入出力を行うための端面、すなわち支持部77を接続する端面は4面存在し、上記四角形の一辺が1つの端面に相当する。同様に、パッケージの側壁も4面存在し、上記四角形の一辺が1つの側壁に相当する。第1〜3の実施形態においては、光集積回路基板の支持部が装着される端面は、4つの端面の内、ファイバ固定部が設けられたパッケージの側壁に近い端面にあった。
第4の実施形態では、支持部77を接続する端面は、ファイバ固定部76が設けられた側壁に近接しない端面、すなわち、ファイバ固定部76の側壁に平行であるが、側壁から離れた位置の端面である。支持部77は、この端面の隅、すなわち光集積回路基板72の角(この端面と、この端面に直角の端面との交差点)に近い位置に配置される。一方、ファイバ固定部76は、側壁の角に近い位置に配置される。支持部77とファイバ固定部76との相対位置関係は、光ファイバ74の光軸に対して直角の方向にシフトして配置されている。図7を参照すると、支持部77は紙面の下側、ファイバ固定部76は紙面の上側にシフトした位置に配置されている。
このような構成により、ファイバ固定部76と支持部77との間の変換ファイバ75は、U字またはJ字を描くようにして配置される。第1〜3の実施形態の場合と比較して、光ファイバの曲げ半径を大きくすることができる。変換ファイバ75は、クラッド径は50μm以下と細く、高Δの光ファイバであるので、破断確率は比較的低く、曲げ損失は比較的小さく、曲げるための光ファイバの弾性力は比較的小さい。
変換ファイバ75の配線レイアウトは、電気回路基板73および光集積回路基板72の上部を通過する。従って、光集積回路基板72の占める空間と変換ファイバ75の配線レイアウトの空間とを共有することになる。これにより、変換ファイバ75の配線レイアウトを確保するために、パッケージ71のサイズを増加させる必要がなくなる。また、光集積回路基板72と、ファイバ固定部76が設けられた側壁とを近接させることができる。第1〜3の実施形態の場合と比較して、変換ファイバ75の撓み部を光集積回路上に配置することになり、光ファイバと光集積回路基板との接続に要する長さLcを短くすることができ、パッケージサイズを縮小することができる。
さらに、ファイバ固定部76と支持部77との間の変換ファイバ75は比較的長いので、温度変動によるパッケージの収縮、膨張に伴うファイバ固定部76と支持部77との相対的な位置変動の許容値を大きくすることができ、廉価なパッケージ材料を使用することができる。また、パッケージに対する光集積回路基板の実装の位置誤差の許容値を大きくすることができ、光集積回路型光デバイス作製コストの削減に繋がる。なお、変換ファイバ75は、被覆が無くクラッドが露出しているため、振動等によりファイバ同士が接触し擦れることにより光ファイバが破断することが懸念される場合は、硬化後でも比較的柔らかい樹脂を光ファイバに塗布するなどして、被覆をしておく。
[第5の実施形態]
図8に、本発明の第5の実施形態にかかる光集積回路型光デバイスを示す。光集積回路型光デバイスは、パッケージ(筐体)81内部に、光集積回路基板82と電気回路基板83とを収容し、光集積回路への光の入出力を行うための複数本の光ファイバ84が光集積回路基板82に接続されている。第1の実施形態と同様に、第5の実施形態においても、変換ファイバ85、ファイバ固定部86、および支持部87を用いて、複数本の光ファイバ84と光入出力用光導波路88との低損失な接続を実現している。
第4の実施形態と比較すると、支持部87を接続する光集積回路基板82の端面の位置が異なる。支持部87が接続される端面は、ファイバ固定部86が設けられた側壁に対して直交する端面である。光集積回路基板82の光入出力用光導波路88と、支持部87に内挿された変換ファイバ85の光軸の方向は、基板端面の長手方向(辺の方向)に対して10°以上、具体的には45°だけ傾き、光集積回路の表面に対して平行である。ファイバ固定部86は、パッケージ81の側壁に設けられ、支持部87と離れた位置に配置される。ファイバ固定部86と支持部87との間の変換ファイバ85は、U字またはJ字を大きく曲げるようにして配置される。
変換ファイバ85の配線レイアウトは、光集積回路基板82の占める空間と共有することになる。これにより、変換ファイバ85の配線レイアウトを確保するために、パッケージ81のサイズを増加させる必要がなくなる。また、光集積回路基板82と、ファイバ固定部86が設けられた側壁とを近接させることができる。変換ファイバ85の撓み部を光集積回路上に配置することになり、光ファイバと光集積回路基板との接続に要する長さLcを短くすることができ、パッケージサイズを縮小することができる。
光集積回路基板82の光集積回路と電気回路基板83との間には、電気配線(ワイヤボンディング)が施される。第5の実施形態では、この電気配線と変換ファイバ85とが干渉しないように、配線レイアウトを設定することができる。また、変換ファイバ85は、被覆が無くクラッドが露出しているため、第4の実施形態と同様に、振動等によりファイバ同士が接触し擦れることにより光ファイバが破断することが懸念される場合は、硬化後でも比較的柔らかい樹脂を光ファイバに塗布するなどして、被覆をしておく。