JP6288815B2 - 肺炎等を治療するための医薬組成物 - Google Patents
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Description
[1] シアリダーゼ阻害活性を有する化合物を含む、肺炎および/または肺線維症を予防および/または治療するための医薬組成物。
[2] シアリダーゼ阻害活性を有する化合物が、哺乳類シアリダーゼ阻害活性を有する、[1]に記載の医薬組成物。
[3] シアリダーゼ阻害活性を有する化合物が、ウイルスシアリダーゼ阻害活性および/または細菌シアリダーゼ阻害活性を有する、[2]に記載の医薬組成物。
[4] 哺乳類シアリダーゼ阻害活性が、ヒトシアリダーゼ阻害活性である、[2]または[3]に記載の医薬組成物。
[5] シアリダーゼ阻害活性を有する化合物が、ペラミビル、オセルタミビル、ザナミビルおよびラニナミビルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、[1]〜[4]のいずれかに記載の医薬組成物。
[6] 肺炎が、間質性肺炎である、[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[7] 肺炎が、II型肺胞上皮細胞の傷害に起因する肺炎である、[1]〜[6]のいずれかに記載の医薬組成物。
[8] ペラミビルおよび/またはラニナミビルを含む、哺乳類シアリダーゼ阻害剤。
[10]シアリダーゼ阻害活性を有する化合物が、哺乳類シアリダーゼ阻害活性を有する化合物である、[9]に記載の方法。
[11]シアリダーゼ阻害活性を有する化合物が、ウイルスシアリダーゼ阻害活性および/または細菌シアリダーゼ阻害活性を有する化合物である、[10]に記載の方法。
[12]哺乳類シアリダーゼ阻害活性が、ヒトシアリダーゼ阻害活性である、[10]または[11]に記載の方法。
[14]肺炎が、間質性肺炎である、[9]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15]肺炎が、II型肺胞上皮細胞の傷害に起因する肺炎である、[9]〜[14]のいずれかに記載の方法
本発明によれば、好ましくは特発性線維症を予防および/もしくは治療するのに有用な化合物、およびこれを含む医薬製剤を提供することができる。
本発明によれば、好ましくはII型肺胞上皮細胞を傷害から防御するのに有用な化合物、およびこれを含む医薬製剤を提供することができる。
本発明によれば、好ましくはシアリダーゼの上昇に起因する疾患の治療および/または予防に有用な化合物、およびこれを含む医薬製剤を提供することができる。
本発明によれば、ウイルスシアリダーゼ阻害活性を示し、肺炎および肺線維症の治療および予防効果を有する化合物、およびこれを含む組成物を提供することができる。
比較的古い論文である、C.R. Lambre et al., Clin. exp. Immunol. 73: 230-235, 1988には、特発性間質性肺炎の肺胞内においてシアリダーゼ活性が上昇する旨記載され、IPFとシアリダーゼとの関係が示唆されているともいえるが、ここではシアリダーゼ阻害剤によるIPFの予防、治療について何ら言及されておらず、ましてその作用機序については何ら詳らかにされていない。事実、本発明者らは、同文献に記載の方法を追試すべく、同様の方法にて細気管支肺胞洗浄液中のシアリダーゼ活性測定を試みたものの、シアリダーゼ活性が低すぎて計測できなかった。しかしながら、本発明者らの知見によれば、従来の研究対象であったI型細胞上皮細胞の傷害よりもむしろ、上記の本田孝行、信州医誌、47(6): 481-488, 1999がいう、II型肺胞上皮細胞がシアリダーゼにより受ける傷害が、肺線維症の機序に関係すると考えられる。
本明細書中に別記のない限り、本発明に関して用いられる科学的および技術的用語は、当業者に通常理解されている意味を有するものとする。一般的に、本明細書中に記載された化合物、細胞、生化学に関して用いられる用語、およびその技術は、当該技術分野においてよく知られ、通常用いられているものとする。
本発明者らは、インフルエンザウイルスシアリダーゼ阻害活性を有する化合物として知られるもののいくつか、例えば、ペラミビルなどが、ヒトシアリダーゼ阻害剤活性を有することを発見した。
本発明における「投与」とは、例えば経口、経鼻、経静脈、経皮などの経路により行うことができる。例えば、ペラミビルは経静脈(静脈注射)、オセルタミビルは経口、ザナミビルおよびラニナミビルは経鼻(吸入)が好ましいが、特に限定されるものではない。
本発明者らは、II型肺胞上皮細胞が、図1に示されるようなメカニズムによって傷害されるものと考えた。かかるメカニズムによると、傷害は、肺胞内でシアリダーゼという酵素の活性が上昇することで生じる。本発明者らは、現にII型肺胞上皮細胞の培養細胞であるA549細胞をシアリダーゼ処理すると傷害が生じることを実証した。
<細胞培養>
A549細胞(ヒトII型肺胞上皮がん細胞)とCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)は、10%ウシ胎児血清(FCS)(Thermo Fisher Scientific, USA)、100 U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン加DMEM液体培地(DMEM)(nacalai tesque)を用い、培養した。Lec2細胞(CHO細胞由来シアル酸転移酵素欠損細胞株)は10%FCS、100 U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン加α-MEM液体培地(α-MEM)(nacalai tesque)を用い、培養した。各々の細胞は37℃に維持した5%CO2インキュベータで培養し、1週間に2度継代した。
(1)細胞準備
培養したA549細胞とCHO細胞の培養液を取り除き、リン酸緩衝食塩水(Phosphate buffered saline, PBS)pH7.0を加えて1回洗浄した。PBSを取り除き、トリプシンEDTA(SIGMA-ALDRICH, USA)を1 mL加えて37℃インキュベータで5分間反応させた。反応後、細胞の浮遊を確認し、DMEMを10 mL加え、全量を15 mLチューブへ移した。1000 rpm、室温5分間で遠心した。上清を取り除き、細胞浮遊液をDMEMにて細胞数1.0x105個/mLに調整し、5 mLラウンドチューブに分注した。Lec2細胞ではDMEMをα-MEMに換え、同様の操作を行った。細胞を分注した各チューブを1000 rpm、室温5分間遠心した。上清を取り除き、PBSを500μLずつチューブに加え、1回洗浄した。
遠心後、上清を取り除き、PBSを200μLずつチューブに加えた。次にStreptococcus 6646K由来シアリダーゼ(S-Sia)(生化学バイオビジネス)もしくはArthrobacter ureafaciens由来シアリダーゼ(A-Sia)(nacalai tesque)が0、0.01、0.1、1、5 U/Lとなるように加え、37℃で30分間反応させた。
反応後に遠心し、上清を取り除いた後、0.1%ウシ血清アルブミン(Bovine serum albumin, BSA)(SIGMA-ALDRICH)加PBSを500μLずつチューブに加え、洗浄した。0.1%BSA加PBSによる洗浄は、計3回行った。洗浄後、3%BSA加PBSを500μLずつチューブに加えて、室温20分間ブロッキング反応を行った。
反応後に遠心し、上清を取り除いた後、0.1%BSA加PBSを100μLずつチューブに加えた。その後、一次抗体にマウスIgM 抗TF抗体(Glycotope, Germany)を5μl加え、氷上で20分間反応させた。また、アイソタイプコントロールとしてマウスIgM 抗Lipopolysaccharide抗体(Beckman coulter, USA)を5μl加え、氷上で20分間反応させた。
反応後、0.1%BSA加PBS 500μLで3回洗浄した。その後、0.1%BSA加PBS 500μLで細胞を浮遊させ、二次抗体としてFITC標識ヤギ抗マウスIgM抗体(Invitorogen, USA)を0.5μL加え、氷上で20分間反応させた(図2)。
反応後、0.1%BSA加PBS 500μLで3回洗浄した。洗浄後、FACS Flow(BD Biosciences, USA)500μLに浮遊させ、BD FACSCalibur(BD Biosciences)で測定した。また、解析はCELLQUEST Software(BD Biosciences)を用いた。
A549細胞およびCHO細胞において、S-SiaもしくはA-Sia消化後に抗TF抗体を加えると蛍光強度が増強した。また、シアリダーゼ濃度依存的に蛍光強度は変化した。両細胞ともS-Sia濃度が5 U/Lで最大の蛍光強度を示し、0.1 U/L以下では蛍光を確認できなかった(図3−A、B)。5 U/Lと1 U/LのA-Sia消化では同様に最大の蛍光強度を示した。蛍光強度は0.5 U/Lまで確認できた(図3−D、E)。
Lec2細胞では、S-SiaまたはA-Siaで消化後抗TF抗体を加えても、蛍光強度は変化しなかった(図3−C、F)。
抗TF抗体の代わりにアイソタイプコントロール抗体を加えた場合、A549細胞、CHO細胞、Lec2細胞に蛍光強度増強はなく、反応しなかった(図3中1)。
<ペラミビルによるフローサイトメトリ阻害アッセイ>
(1)実施例1(1)細胞準備と同様に、細胞を準備した。
(2)シアリダーゼ消化
S-Siaを2.5 U/Lに生理食塩水で調整した。シアリダーゼ加生理食塩水でシアリダーゼ阻害作用のある抗インフルエンザウイルス剤ペラミビル(BIOCRYST, USA)を0.01、0.1、1、10 mg/mLに調整し、200μLずつチューブに加えた後、37℃で30分間反応させた。
これ以降のブロッキング、一次抗体反応、二次抗体反応および測定を、実施例1の(3)〜(6)と同様に行った。
1.5 mLチューブにペラミビルが0.01、0.1、1、10 mg/mLとなるように生理食塩水で調整した。それぞれの溶液にS-Siaが2.5 U/L、4-メチルウンベリフェリル-N-アセチルノイラミン酸(4MU-NANA、Toronto Research Chemicals)が0.154 mg/mLとなるように加え、十分に混和した。その後、各溶液を96well plateに100μLずつ分注し、Cytoflour Series 4000(Applied Biosystems, USA)を用いて蛍光強度を測定した。Gain 50で37℃で60分間、5分おきに測定した。4メチルウンベリフェロン(4MU)は励起波長365 nm、蛍光波長450 nmで検出した。
(4MU-NANAを用いた阻害アッセイにおける抑制)
ペラミビルを加えた場合、濃度依存的に蛍光強度の抑制を認めた。0.01 mg/mLペラミビルでは蛍光強度抑制は確認できなかったが、0.1 mg/mL以上で蛍光強度抑制が確認できた。10 mg/mLペラミビルで蛍光強度抑制が最大となった(図4)。
ペラミビルを加えない場合、経時的な蛍光強度増強が認められた。
(フローサイトメトリ阻害アッセイにおける抑制)
A549細胞とCHO細胞は、ペラミビル濃度依存的に蛍光強度が抑制された。A549細胞はペラミビル0.1 mg/mLから抑制が始まり1 mg/mLで完全に蛍光強度が抑制された(図5−A)。CHO細胞はペラミビル0.1 mg/mLから抑制が認められ、完全な蛍光強度抑制はA549細胞同様に1 mg/mLで得られた(図5−B)。
一方、Lec2細胞ではペラミビル濃度に関係なく全てにおいて蛍光強度の変化は確認できなかった(図5−C)。
<抗TF抗体を用いた補体細胞傷害実験>
実施例1の(1)〜(4)と同様にして、細胞準備、シアリダーゼ消化、ブロッキングおよび抗体反応それぞれを行った。
蒸留水1 mLで溶解させたウサギ補体(Cedarlane laboratories, Canada)を無血清DMEMで1.5倍希釈し、補体反応液として調製した。一次抗体反応後、0.1%BSA加PBSで3回洗浄し、補体反応液を加え、37℃で1時間反応させた。
反応後、0.1%BSA加PBSで3回洗浄した。洗浄後、無血清DMEMを300μL〜500μL加え細胞を浮遊させ、96 well plateに100μLずつ分注した。CellTiter 96(登録商標) AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega, USA)の試薬を各wellに20μLずつ加え十分に混和した。37℃で2時間反応させた。
反応後、SPECTRAmax PLUS384(Molecular Devices, USA)を用い吸光度を測定した。吸光度は490 nmで測定した。
A549細胞とCHO細胞とに対して、前記<抗TF抗体を用いた補体細胞障害実験>の(4)抗体反応の工程を行わなかった以外は、前記と同様に処理し、測定した。
A549細胞とCHO細胞とを高濃度シアリダーゼ消化後に、抗TF抗体またはアイソタイプコントロール抗体を加えると細胞傷害が生じた(図6−A、B)。両抗体間に細胞傷害の差は認められなかった。
A549細胞とCHO細胞とにおいて、高濃度S-Sia消化後、抗体を加えずに補体のみを加えるだけで細胞傷害が生じた(図7)。補体を加えなければ両細胞の細胞傷害が起こらなかった(図7−A、C)。
S-Sia 1 U/L以上で、細胞傷害を認め、CHO細胞がA549細胞より強く認められた(図7−B、D)。
Lec2細胞では、抗TF抗体および補体の有無にかかわらず、細胞傷害はなかった(図6−C)。
A549細胞(II型肺胞上皮細胞由来)およびCHO細胞は、その表面にシアリル化TFという糖鎖構造を有しており、シアリダーゼ消化後に補体を加えることにより細胞傷害が生じた(図7)。シアリダーゼ消化後に抗TF抗体を加えても加えなくとも細胞傷害に影響はなく、抗TF抗体の存在は細胞傷害に関与していなかった(図6、7)。この結果は、生体の肺胞内でシアリダーゼ活性が上昇し補体が関与すれば、II型肺胞上皮細胞傷害が生じることを示唆している。IPF患者の気管支肺胞洗浄液中にシアリダーゼ活性が上昇するという報告があり、軽度なII型肺胞上皮細胞傷害がIPF発症の成因になる可能性がある。
<材料と方法>
ラットをペントバルビタール麻酔後に気管を露出し、抗がん剤として知られるブレオマイシン(0.01 U/kg)を、26G針付き注射器を用いて気管内投与した。手術部は縫合し、麻酔覚醒後に通常の飼育室に戻した。2週間の経過観察の後、再度ペントバルビタール麻酔にて安楽死させ、肺胞洗浄及び解剖を行った。治療的介入はシアリダーゼ阻害薬(ペラミビル10 mg/kg)を腹腔内投与した。ブレオマイシン投与後7〜13日目の間連続投与した(図8)。腹腔内投与に関しては、その都度1回の注射のみではあるが、動物の苦痛を考えてジエチルエーテルによる吸入麻酔を使用した。使用する動物数については、コントロール、介入群、それぞれ4匹ずつとし、計8匹を使用した。
体重変化とPaO2/FIO2を図9〜11に示す。投与前の体重はコントロール群が326.8±6.7 g、介入群336.5±8.3 gと優位な変化はなかった。14日後では、コントロール群が234.5±25.3 g、介入群362.2±23.9 gと、コントロール群に有意な体重減少を認めた。また、PaO2/FIO2は、14日後にコントロール群149.1±23.9、介入群284.9±23.9とコントロール群で優位に呼吸状態が悪化していた。また、解剖後の肺の病理組織学的検索においても、介入群ではコントロール群に比べ明らかに肺線維化所見が抑制されていた(図12、13)。
2・・・シアリダーゼ消化なし(抗TF抗体)
3・・・シアリダーゼ濃度0.01 U/L(抗TF抗体)
4・・・シアリダーゼ濃度0.1 U/L(抗TF抗体)
5・・・シアリダーゼ濃度1 U/L(抗TF抗体)
6・・・シアリダーゼ濃度5 U/L(抗TF抗体)
12・・・ペラミビル無添加の陽性コントロール
13・・・ペラミビル濃度0.01 mg/mL
14・・・ペラミビル濃度0.1 mg/mL
15・・・ペラミビル濃度1 mg/mL
16・・・ペラミビル濃度10 mg/mL
22・・・シアリダーゼ消化なし(抗TF抗体)ペラミビル無添加
23・・・シアリダーゼ消化あり(抗TF抗体)ペラミビル無添加
24・・・シアリダーゼ消化あり(抗TF抗体)ペラミビル濃度0.01 mg/mL
25・・・シアリダーゼ消化あり(抗TF抗体)ペラミビル濃度0.1 mg/mL
26・・・シアリダーゼ消化あり(抗TF抗体)ペラミビル濃度1 mg/mL
27・・・シアリダーゼ消化あり(抗TF抗体)ペラミビル濃度10 mg/mL
Claims (1)
- シアリダーゼ阻害活性を有する化合物を含む、シアリダーゼによるII型肺胞上皮細胞の傷害に起因する肺炎および/またはこれに起因する肺線維症を予防および/または治療するための医薬組成物であって、
シアリダーゼ阻害活性を有する化合物が、ペラミビルである、前記医薬組成物。
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