以下、本発明を詳細に説明する。
まず本発明の光学素子用有機化合物について説明する。本発明の光学素子用有機化合物は、具体的には、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物である。
本発明の光学素子用有機化合物は、下記(1A)又は(2A)で示される部分構造を基本骨格として有する化合物であるが、好ましくは、下記(1A)又は(2A)で示される部分構造と、(メタ)アクリロイル基と、を有する(メタ)アクリレート化合物である。
(式(1A)及び式(2A)において、X
0及びY
0は、それぞれ酸素原子又は硫黄原子である。)
尚、本発明の光学素子用有機化合物の好ましい態様については後述する。
まず式(1)の化合物について説明する。式(1)において、X及びYは、それぞれ下記に示される置換基から選択される置換基である。
式(1)中のX及びYで表わされる置換基において、*は、R1又はR2との結合手を表す。
式(1)において、R1及びR2は、それぞれ水素原子、炭素数1乃至2のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基から選択される置換基である。
R1及びR2で表されるアルキル基として、メチル基及びエチル基が挙げられる。
式(1)において、Z1及びZ2は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至2のアルコキシ基、炭素数1乃至2のアルキルチオ基、置換あるいは無置換の炭素数1乃至2のアルキル基から選択される置換基である。
Z1及びZ2で表されるハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。
Z1及びZ2で表されるアルコキシ基として、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられる。
Z1及びZ2で表されるアルキルチオ基として、メチルチオ基及びエチルチオ基が挙げられる。
Z1及びZ2で表されるアルキル基として、メチル基及びエチル基が挙げられる。尚、このアルキル基は、さらに、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基(1−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基)、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メルカプトエトキシ基、2−メルカプトエチルチオ基、(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ基(1−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ基、2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ基、3−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ基)、3−ヒドロキシプロポキシ基、3−メルカプトプロポキシ基、3−メルカプトプロピルチオ基、(メタ)アクリロイルオキシブトキシ基(1−(メタ)アクリロイルオキシブトキシ基、2−(メタ)アクリロイルオキシブトキシ基、3−(メタ)アクリロイルオキシブトキシ基、4−(メタ)アクリロイルオキシブトキシ基)、4−ヒドロキシブトキシ基、4−メルカプトブトキシ基、4−メルカプトブチルチオ基、アリルオキシ基、アリルチオ基、4−ビニルベンジルオキシ基、オキシラニルメトキシ基、オキシラニルエトキシ基、チイラニルメトキシ基、チイラニルエトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、メトキシ基及びエトキシ基から選択される置換基を有していてもよい。
式(1)において、a及びbは、それぞれ0乃至2の整数である。ここでaが2のとき2つのZ1は、同じであってもよいし異なっていてもよい。またbが2のとき2つのZ2は、同じであってもよいし異なっていてもよい。合成のし易さを考慮すると、a及びbは、それぞれ0又は1であることが好ましい。
次に、式(1)に示される化合物の好ましい態様について説明する。ここで式(1)に示される化合物の好ましい態様は、下記(1−1)と(1−2)とに大別される。
(1−1)X及びYが、それぞれ下記に示す置換基より選択される置換基である場合
(1−2)X及びYが、それぞれ硫黄原子(−S−)又は酸素原子(−O−)である場合
(1−1)の場合、下記(1−1−1)乃至(1−1−3)を充足する態様がより好ましい。
(1−1−1)X及びYが、それぞれ下記に示される置換基から選択される置換基であること
(1−1−2)R
1及びR
2が、それぞれ水素原子、炭素数1乃至2のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基から選択される置換基であること
(1−1−3)Z
1及びZ
2が、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至2のアルコキシ基、炭素数1乃至2のアルキルチオ基、置換あるいは無置換の炭素数1乃至2のアルキル基から選択される置換基であること
また(1−1)の場合、上記(1−1−1)、並びに下記(1−1−4)及び(1−1−5)を充足する態様が特に好ましい。
(1−1−4)R1及びR2が、それぞれ水素又は(メタ)アクリロイル基であること
(1−1−5)Z1及びZ2が、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至2のアルコキシ基、炭素数1乃至2のアルキルチオ基及び炭素数1乃至2のアルキル基から選択される置換基であること
(1−2)の場合、下記(1−2−1)乃至(1−2−3)を充足する態様が好ましい。
(1−2−1)X及びYが、それぞれ−S−又は−O−であること
(1−2−2)R1及びR2が、それぞれ水素又は炭素数1乃至2のアルキル基であること
(1−2−3)Z1及びZ2が、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至2のアルコキシ基、炭素数1乃至2のアルキルチオ基及び置換あるいは無置換の炭素数1乃至2のアルキル基から選択される置換基であること
また(1−2)の場合、上記(1−2−1)及び(1−2−2)、並びに下記(1−2−4)を充足する態様がより好ましい。
(1−2−4)Z1及びZ2が、それぞれ水素原子又は置換あるいは無置換の炭素数1乃至2のアルキル基であること
さらに(1−2)の場合、上記(1−2−1)及び(1−2−4)、並びに下記(1−2−5)を充足する態様が特に好ましい。
(1−2−5)R1及びR2が、それぞれ炭素数1乃至2のアルキル基であること
ところで、Z1及びZ2が置換基を有する炭素数1乃至2のアルキル基である場合、当該アルキル基の具体的な構造として下記一般式(3)に示される構造が好ましい。
式(3)において、**は、結合手を表す。またmは、0又は1であり、nは、2乃至4の整数を表す。尚、合成のし易さという観点から、mは0であることが好ましい。ここで、Z1及びZ2のいずれかの構造が式(3)に示される構造である場合、化合物自体がよりフレキシブルな構造になるので、化合物自体の融点を下げることができる。化合物自体の融点が下がることは、成形のしやすさという観点で有利であるといえる。
次に、下記一般式(2)の化合物について説明する。
式(2)において、Xは、下記に示される置換基から選択される置換基である。
式(2)中のXで表わされる置換基において、*は、R11との結合手を表す。
式(2)において、Yは、下記に示される置換基から選択される置換基である。
式(2)中のYで表わされる置換基において、*は、R12との結合手を表す。
式(2)において、R11及びR12は、それぞれ水素原子、炭素数1乃至2のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基から選択される置換基である。
R11及びR12で表されるアルキル基として、メチル基及びエチル基が挙げられる。
式(2)において、Z3は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至2のアルコキシ基、炭素数1乃至2のアルキルチオ基及び置換あるいは無置換の炭素数1乃至2のアルキル基から選択される置換基である。
Z3で表されるアルコキシ基として、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられる。
Z3で表されるアルキルチオ基として、メチルチオ基及びエチルチオ基が挙げられる。
Z3で表されるアルキル基として、メチル基及びエチル基が挙げられる。尚、このアルキル基は、さらに、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基(1−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基)、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メルカプトエトキシ基、2−メルカプトエチルチオ基、(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ基(1−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ基、2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ基、3−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ基)、3−ヒドロキシプロポキシ基、3−メルカプトプロポキシ基、3−メルカプトプロピルチオ基、(メタ)アクリロイルオキシブトキシ基(1−(メタ)アクリロイルオキシブトキシ基、2−(メタ)アクリロイルオキシブトキシ基、3−(メタ)アクリロイルオキシブトキシ基、4−(メタ)アクリロイルオキシブトキシ基)、4−ヒドロキシブトキシ基、4−メルカプトブトキシ基、4−メルカプトブチルチオ基、アリルオキシ基、アリルチオ基、4−ビニルベンジルオキシ基、オキシラニルメトキシ基、オキシラニルエトキシ基、チイラニルメトキシ基、チイラニルエトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、メトキシ基及びエトキシ基から選択される置換基を有していてもよい。
式(2)において、cは、0乃至2の整数である。cが2のとき2つのZ3は、同じであってもよいし異なっていてもよい。合成のし易さを考慮すると、cは、0又は1であることが好ましい。
次に、式(2)に示される化合物の好ましい態様について説明する。式(2)に示される化合物のうち、好ましい態様は、下記(2−1)乃至(2−4)を充足する態様である。
(2−1)Xが、下記に示される置換基から選択される置換基であること
(2−2)Yが、下記に示される置換基から選択される置換基であること
(2−3)R
11及びR
12が、それぞれ水素原子、炭素数1乃至2のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基から選択される置換基であること
(2−4)Z
3が、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至2のアルコキシ基、炭素数1乃至2のアルキルチオ基及び置換あるいは無置換の炭素数1乃至2のアルキル基から選択される置換基であること
また式(2)に示される化合物のうち、より好ましい態様は、上記(2−3)及び(2−4)、並びに下記(2−5)及び(2−6)を充足する態様である。
(2−5)Xが、下記に示される置換基から選択される置換基であること
(2−6)Yが、下記に示される置換基から選択される置換基であること
また式(2)に示される化合物のうち、特に好ましい態様は、上記(2−5)及び(2−6)、並びに下記(2−7)及び(2−8)を充足する態様である。
(2−7)R11及びR12が、それぞれ水素原子及び(メタ)アクリロイル基から選択される置換基であること
(2−8)Z3が、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至2のアルコキシ基、炭素数1乃至2のアルキルチオ基及び炭素数1乃至2のアルキル基から選択される置換基であること
ところで、Z3が置換基を有する炭素数1乃至2のアルキル基である場合、当該アルキル基の具体的な構造として下記一般式(3)に示される構造が好ましい。
式(3)において、**は、結合手を表す。またmは、0又は1であり、nは、2乃至4の整数を表す。尚、合成のし易さという観点から、mは0であることが好ましい。ここで、Z3の構造が式(3)に示される構造である場合、化合物自体がよりフレキシブルな構造になるので、化合物自体の融点を下げることができる。化合物自体の融点が下がることは、成形のしやすさという観点で有利であるといえる。
次に、本発明に係る光学材料用有機化合物の製造方法について一例を挙げて説明する。本発明に係る光学材料用有機化合物は、その製造ルートについては特に限定されず、どの様な製造方法でも採用することが可能である。ただし少なくとも下記(a)及び(b)の合成工程が含まれ、化合物によってはさらに(c)の合成工程が含まれる。
(a)芳香環(ベンゼン環)同士の結合の形成
(b)エーテル(チオエーテル)化反応
(c)(メタ)アクリレート化反応
合成のしやすさ等を考慮すると、上記合成工程は、(a)、(b)、(c)の順番で行われる。
合成工程(a)においては、芳香族化合物が有する官能基の種類によって臨機応変に変更可能である。例えば、遷移金属触媒によるカップリング反応やハロゲン化物同士の酸化的カップリング反応、芳香環上での置換反応等である。尚、反応の収率を考慮すると遷移金属触媒によるカップリング反応が望ましい。
遷移金属触媒によるカップリング反応は、任意に選択する事が可能である。代表的な方法としては、ホウ酸等を利用する鈴木カップリング、有機スズを利用するスティルカップリング、有機亜鉛を利用する根岸カップリング等が好適に用いられる。
合成工程(b)において、エーテル化反応の代表的な方法としては、水酸基を水素化ナトリウムや水酸化カリウム等で塩にした後、対応するハロゲン化物を添加するウィリアムソンエーテル合成法等である。
一方、チオエーテル化反応は、チオール基生成反応と、チオール基とハロゲン化物との反応と、により行われる。ここでチオール基生成反応は、例えば、水酸基を求核置換反応に対して活性がある置換基(TsO−、Cl−、CF3S(=O)2−O−等)に変換した後、硫化イオン(S2-)を用いた求核置換反応を行うことにより達成される。またチオール基とハロゲン化物との反応においては、上述したウィリアムソンエーテル合成法等を応用することができる。
合成工程(c)において、代表的な方法としては、(メタ)アクリル酸ハライドや(メタ)アクリル酸無水物を使用して水酸基をエステル化する方法、(メタ)アクリル酸の低級アルコールのエステルを使用するエステル交換反応、N,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を使用して(メタ)アクリル酸と該ジオールとを脱水縮合させる直接エステル化反応、(メタ)アクリル酸と該ジオールを硫酸等の脱水剤存在下で加熱する方法等が好適に用いられる。
また、本発明に係る光学材料用有機化合物が(メタ)アクリレート化合物である場合、反応時や保存時に重合が進行しないように重合禁止剤を必要に応じて使用してもよい。重合禁止剤の例としては、p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジフェニルパラベンゾキノン等のヒドロキノン類、テトラメチルピペリジニル−N−オキシラジカル(TEMPO)等のN−オキシラジカル類、t−ブチルカテコール等の置換カテコール類、フェノチアジン、ジフェニルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン等のアミン類、ニトロソベンゼン、ピクリン酸、分子状酸素、硫黄、塩化銅(II)等を挙げることができる。この中でもヒドロキノン類、フェノチアジン及びN−オキシラジカル類が汎用性かつ重合抑制の点で好ましい。
重合禁止剤の使用量は、前記(メタ)アクリレート化合物に対して、下限が、通常10ppm以上、好ましくは50ppm以上であり、上限が、通常10000ppm以下、好ましくは1000ppm以下である。少なすぎる場合は、重合禁止剤としての効果が発現しないか効果が小さく、反応時や後処理工程での濃縮時に重合が進行する危険性があり、多すぎる場合には、例えば、後述する光学材料を製造する際の不純物となり、また、重合反応性を阻害する等の悪影響を及ぼす危険性があり好ましくない。
次に、本発明の光学素子用有機化合物の特徴について説明する。
本発明者らは、従来よりも高い色収差補正機能を光学素子に付与するためには、光学素子の材料特性として、下記(i)及び(ii)を充足することが光学設計上、極めて有効であることに着目した。
(i)可視光領域内の透過率が高いこと
(ii)2次分散特性(θg,F)が汎用の材料から外れて、より大きい特性(高θg,F特性)であること
具体的には、図1にて示される、アッベ数(νd)と2次分散特性(θg,F)との関係が硝材若しくは有機樹脂の汎用材料のプロットからずれているBのエリアである。具体的には、500μm内部透過率が410nmで90%以上の特性である。ここでBエリアの特性は、νd<25、θg,F>0.70である。
本発明者等は、図1に示されるBエリアの特性を満たす材料について鋭意検討を重ねた結果、共役可能な電子吸引性置換基と電子供与性置換基を少なくとも一つずつ有する長い共役構造の芳香族化合物が、屈折率の分散特性(アッベ数(νd))が高く、かつ2次分散特性(θg,F)が高い(高θg,F特性)、色収差補正機能の高い特性と実用性を兼ね備えた材料になることを見出した。即ち、本発明者らは、下記(1A)あるいは(2A)で示される部分構造を基本骨格とする化合物を見出した。
一般に、芳香族化合物に代表される長い共役構造を有する化合物は、汎用材料よりもバンドギャップが小さいため、紫外領域の吸収端が可視光領域側にシフトしている。その影響により、長い共役構造を有する化合物は、高屈折率特性を有するようになる。この高屈折率特性は、短波長側により影響を与えるため、必然的に2次分散特性(θg、F)が高くなって化合物の特性が図1に示されるBエリア内に収まるようになる。しかし、単純に芳香族化合物を連結させて長い共役構造を構築するだけでは実用性のある材料は得られない。例えば、大きな芳香族化合物は、合成性や他の化合物との相溶性、着色の点において課題が残る。そのため、前記共役可能な電子吸引性置換基と電子供与性置換基を少なくとも一つずつ有する長い共役構造の芳香族化合物が望ましい。
このように、屈折率特性や2次分散特性を高くするという観点からすれば、化合物の共役長は長ければ長い方がよい。しかし、共役構造が長くなり過ぎると可視光領域の短波長側での透過率が低下するため、光学材料という用途を考慮する場合には、共役構造の長さを調整する必要がある。ここで、一般式(1A)及び(2A)で示される部分構造においては、透過率及び屈折率特性について塩梅がよい程の共役長を有している。
ところで共役可能な電子吸引性置換基としては、スルホン、ケトン、イミン、オキシム、ニトリル、ニトロ、エステル等が挙げられる。ここで生成物の長期安定性を考慮すると、好ましくは、スルホン、ケトン、ニトリル、エステルであり、より好ましくはスルホンである。このため、本発明の光学素子用有機化合物には、(1A)及び(2A)に示されるように部分構造としてスルホンを有する化合物である。
また共役可能な電子供与性置換基としては、ヒドロキシル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボニルオキシ基等である。好ましくは、ヒドロキシル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル基、カルボニルオキシ基である。ただし、置換基の分子量が大きくなり過ぎると高い2次分散特性(θg、F)が得られなくなる。このため、置換基としては、炭素数が0乃至10の置換基が望ましい。合成のし易さという観点からすれば、好ましくは、炭素数1乃至4の置換基である。本発明においては、特に好ましい置換基であるヒドロキシル基、メルカプト基、炭素数1乃至4のアルコキシ基及び炭素数1乃至4のアルキルチオ基が選択されている。
また式(1)乃至(2)中に示されているH(水素原子)は、共役構造を調整するために必要であり、その他の置換基では当該置換基の立体障害に起因する芳香環同士のねじれによる共役の切断が起こり、特性が発現しない場合がある。
次に、本発明に係る光学材料について説明する。
本発明の光学材料は、下記(A)乃至(C)に大別される。
(A)本発明の光学材料用有機化合物をマトリックスポリマーに含有させてなる材料
(B)本発明の光学材料用有機化合物を重合させてなる材料
(C)本発明の光学材料用有機化合物と他の化合物とを共重合させてなる材料
ここで、本発明の光学材料用有機化合物のうち、(メタ)アクリロイル基を有していない化合物は(A)の形態で用いられる。一方、本発明の光学材料用有機化合物のうち、(メタ)アクリロイル基を有している化合物は(A)乃至(C)のいずれの形態においても利用可能であるが、専ら(B)又は(C)の形態で用いられる。
本発明の光学材料用有機化合物を(A)の形態で用いる場合、マトリックスポリマーとして、(メタ)アクリル系ポリマー;アリル系ポリマー;エチレン単独重合体、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種又は2種以上のα−オレフィンとのランダム又はブロック共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとの1種又は2種以上のランダム又はブロック共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外の1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種又は2種以上のα−オレフィンとのランダム又はブロック共重合体、1−ブテン単独重合体、アイオノマー樹脂、さらにこれら重合体の混合物等のポリオレフィン系樹脂;石油樹脂、テルペン樹脂等の炭化水素原子系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロンMXD等ポリアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル等のスチレン,アクリロニトリル系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリケトン樹脂;ポリメチレンオキシド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。尚、(メタ)アクリル系ポリマーとは、後述する(メタ)アクリレート化合物を重合してなるポリマーである。またアリル系ポリマーとは、後述するアリル化合物を重合してなるポリマーである。これらの樹脂は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。またこれらマトリックスポリマーは、本発明の光学材料用有機化合物との相溶性を考慮した上で適宜選択される。
また本発明の光学材料用有機化合物を(A)の形態で用いる場合、材料全体に対する本発明の光学材料用有機化合物の含有量は、本発明の光学材料用有機化合物とマトリックスポリマーとの相溶性を考慮した上で適宜選択される。
本発明の光学材料用有機化合物を(A)の形態で用いる場合、マトリックスポリマーとなる樹脂の含有量は、材料全体を基準として50重量%以上99重量%以下である。得られる光学材料のθg,F特性や成形体の脆性を考慮すると、好ましくは、50重量%以上80重量%以下が望ましい。
本発明の光学材料用有機化合物を(B)の形態で用いる場合、本発明の光学材料は、本発明の光学材料用有機化合物((メタ)アクリレート化合物)と、重合開始剤と、からなる組成物から作製される。尚、この組成物には、必要に応じて重合禁止剤、光増感剤、樹脂等をさらに含有させてもよい。
重合開始剤には、光照射によりラジカル種を発生するものやカチオン種を発生するもの、熱によりラジカル種を発生するもの等が挙げられるがこれらに限定されない。
光照射によりラジカル種を発生する重合開始剤としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、4−フェニルベンゾフェノン、4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジフェニルベンゾフェノン、4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン等であるがこれらに限定されない。
また、光照射によりカチオン種を発生する重合開始剤としては、ヨードニウム(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェートが好適な重合開始剤として挙げられるがこれに限定されない。
さらに、熱によりラジカル種を発生する重合開始剤としては、アゾビソイソブチルニトリル(AIBN)等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t―ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、t―ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオデカノエート等の過酸化物が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の光学材料において、本発明の光学材料用有機化合物を(B)の形態で用いる場合、本発明の光学材料用有機化合物の含有量は、望ましくは1.0重量%以上99重量%以下であり、50重量%以上99重量%以下が好ましい。
本発明の光学材料において、本発明の光学材料用有機化合物を(B)の形態で用いる場合、本発明の光学材料の硬化・成形に用いる光重合開始剤の添加量は、重合可能な成分に対して0.01重量%以上10.00重量%以下の範囲が好ましい。尚、光重合開始剤は樹脂の反応性、光照射の波長によって1種類のみで使用することもできるし、2種類以上を併用して使用することもできる。
本発明の光学材料において、本発明の光学材料用有機化合物を(B)の形態で用いる場合、使用される重合禁止剤としては、本発明の光学材料用有機化合物の保存剤として上述した重合禁止剤が挙げられる。
光として紫外線等を照射して重合を開始させる場合には、公知の増感剤等を使用することもできる。増感剤の代表的なものとしては、ベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
尚、重合可能な樹脂成分に対する光重合開始剤の添加比率は、光照射量、さらには、付加的な加熱温度に応じて適宜選択することができる。また、得られる重合体の目標とする平均分子量に応じて、調整することもできる。
本発明の光学材料の硬化・成形に用いる光重合開始剤の添加量は、重合可能な成分に対して0.01重量%以上10.00重量%以下の範囲が好ましい。光重合開始剤は樹脂の反応性、光照射の波長によって1種類のみで使用することもできるし、2種類以上を併用して使用することもできる。
本発明の光学材料用有機化合物を(C)の形態で用いる場合、本発明の光学材料用有機化合物と共重合させる化合物としては、特に制限は無い。例えば、1,3−アダマンタンジオールジメタクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、2(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソボニルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシ)フェニル]フルオレン、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ブチキシエチルアクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルアクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールFジアクリレート、ビスフェノールFジメタクリレート、1,1−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、メチルチオアクリレート、メチルチオメタクリレート、フェニルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート、キシリレンジチオールジアクリレート、キシリレンジチオールジメタクリレート、メルカプトエチルスルフィドジアクリレート、メルカプトエチルスルフィドジメタクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のアリル化合物、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、3,9−ジビニルスピロビ(m−ジオキサン)等のビニル化合物、ジイソプロペニルベンゼン等が挙げられる。ただし本発明はこれらに限定されない。
本発明の光学材料用有機化合物を(C)の形態で用いる場合、本発明の光学材料用有機化合物と共重合させる化合物の含有量は、材料全体を基準として1.0重量%以上80重量%以下である。得られる光学材料のθg,F特性や成形体の脆性を考慮すると、好ましくは、1.0重量%以上30重量%以下である。
次に、本発明の光学素子について図を参照しながら説明する。図2は、本発明の光学素子の例を示す概略図である。(a)の光学素子は、本発明の光学材料を成形加工してなる薄膜(光学部材10)がレンズ基板20の片方の面上に設けられている。図1(a)の光学素子を作製する方法としては、例えば、光透過性材料からなる基板上に膜厚の薄い層構造を形成する方法が採用される。具体的には、金属材料からなる型をガラス基板から一定の距離を置いて設け、この型とガラス基板との間にある空隙に流動性の光学材料又は光学用樹脂組成物を充填してから、軽く抑えることで、型成形を行う。そして必要に応じてその状態に保ったまま該光学材料又は該光学用樹脂組成物の重合を行う。かかる重合反応に供する光照射は、光重合開始剤を用いたラジカル生成に起因する機構に対応して、好適な波長の光、通常、紫外光もしくは可視光を用いて行う。例えば、前記基板として利用する光透過性材料、具体的にはガラス基板を介して、成形されている光学材料調製用のモノマー等の原料に対して、均一に光照射を実施する。照射される光量は、光重合開始剤を利用したラジカル生成に起因する機構に応じて、また、含有される光重合開始剤の含有比率に応じて、適宜選択される。
一方、かかる光重合反応による光学材料の成形体の作製においては、照射される光が型成形されているモノマー等の原料の全体に均一に照射されることがより好ましい。従って、利用される光照射は、基板に利用する光透過性材料、例えばガラス基板を介して、均一に行うことが可能な波長の光を選択することが一層好ましい。この際、光透過性材料の基板上に形成する光学材料の成形体の厚さを薄くすることは、本発明にはより好適である。
一方、図1(b)の光学素子は、本発明の光学材料を成形加工してなる薄膜(光学部材10)がレンズ基板30とレンズ基板40との間に設けられている。図1(b)の光学素子を作製する方法としては、例えば、前述した成形体の樹脂組成物側の面と、対応する別のレンズの両者の間に、同様の未硬化の樹脂組成物等を流し込み、軽く抑えることで成形を行う。そしてこの状態に保ったまま未硬化の樹脂組成物の光重合を行う。それにより前記光学材料がレンズに挟まれた成形体を得ることができる。
同様に、熱重合法により成形体の作製を行うこともできる。この場合、全体の温度をより均一とすることが望ましく、光透過性材料の基板上に形成する重合性組成物の成形体の総厚を薄くすることは、本発明にはより好適なものとなる。また形成する光学材料の成形体の総厚を厚くする場合には、より膜厚、樹脂成分の吸収、微粒子成分の吸収を考慮した照射量、照射強度、光源等の選択が必要である。
一方、本発明の光学材料用有機化合物を含んだ光学材料の成形体を形成する場合、成形方法については、特に限定されるものはないが、低複屈折性、機械強度及び寸法精度等の特性に優れた成形物を得るためには、溶融成形が特に好ましい。溶融成形法としては、プレス成形、押し出し成形、射出成形等が挙げられるが、成形性及び生産性の観点から射出成形が好ましい。また、成形工程における成形条件は、使用目的又は成形方法により適宜選択されるが、射出成形における樹脂組成物の温度は、150℃から400℃の範囲であることが好ましく、200℃から350℃の範囲であることがより好ましく、200℃から330℃の範囲であることが特に好ましい。前記温度範囲で成形することにより、成形時に適度な流動性を樹脂に付与して成形品のヒケやひずみの発生とともに、樹脂の熱分解によるシルバーストリークの発生を防止し、さらには、成形物の黄変を効果的に防止することができる。
本発明の光学材料を上記の成形方法で成形された成形体は光学素子として用いることができる。光学素子の利用例としては、例えばカメラレンズ等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例に限定されるものではない。また、反応式中の略号はそれぞれ下記の通りである。尚、合成した化合物の分子構造の分析は、日本電子製JNM−ECA400 NMRを用いて行った。
THF:テトラヒドロフラン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
TsOH:パラトルエンスルホン酸水和物
(合成例1)4,4’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホンの合成
下記に示す試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン:15g
4−ヒドロキシフェニルボロン酸:21g
炭酸水素ナトリウム:33g
1,4−ジオキサン:500ml
水:250ml
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:2.5g
次に、反応溶液を90℃に加熱してこの温度(90℃)で20時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合を薄相クロマトグラフィー(以下、TLC)で随時確認した。反応終了後、反応溶液を水で希釈した後、溶媒抽出により有機相を回収した。次に、この有機層を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。次に、有機相を減圧濃縮することで得られた残渣についてヘキサン及び酢酸エチルの混合溶液による再結晶精製を行うことにより、淡黄色結晶の4,4’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホン(以下、中間体化合物D1という。)を20g(収率95%)得た。
(合成例2)4−(2−テトラヒドロピラニルオキシエチルチオ)−フェニルボロン酸ピナコールエステルの合成
(1)下記に示す試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
水素化ナトリウム(55%):6.2g
N,N−ジメチルホルムアミド:200ml
次に、反応溶液を0℃に冷却した後、4−ブロモチオフェノール25gをゆっくり添加した。次に、室温まで昇温しながら反応溶液を撹拌した。次に、2−(2−ブロモエトキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン24mlを添加した後、反応溶液を40℃に昇温した後この温度(40℃)で12時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、水で反応を停止させた後、有機相を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、有機層を減圧濃縮して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することにより、4−(2−テトラヒドロピラニルオキシエチルチオ)−ブロモベンゼンを44g得た。尚、得られた化合物は、そのまま次の工程で使用した。
(2)(1)にて得られた化合物及びテトラヒドロフラン400mlを反応容器内に投入した。次に、反応溶液を−78℃に冷却した後、ブチルリチウム(2.6M)64mlをゆっくり滴下した。次に、反応溶液を同温度(−78℃)でさらに2時間撹拌した。次に、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン35mlを滴下した後、反応溶液を室温までゆっくりと昇温しながら12時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した後、有機相を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、この有機層を減圧濃縮することで得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することにより、4−(2−テトラヒドロピラニルオキシエチルチオ)−フェニルボロン酸ピナコールエステル(以下、中間体化合物D2という。)を31g(収率64%)得た。
(合成例3)トリフルオロメタンスルホン酸4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェニルの合成
下記に示す試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン:25g
トリフルオロメタンスルホニルクロリド:12ml
クロロホルム:200ml
次に、反応溶液を0℃に冷却した後、ゆっくりとトリエチルアミン15mlを滴下した。次に、同温度(0℃)で反応溶液を1時間撹拌した。次に、反応溶液を室温まで昇温してからさらに5時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、塩化アンモニウム水溶液で反応を停止し、有機相を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、有機層を減圧濃縮して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することでトリフルオロメタンスルホン酸4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェニル(以下、中間化合物D3という。)を17g(収率45%)得た。
(合成例4)4,4’−ビス(3−ヒドロキシメチル−4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホンの合成
(1)下記に示す試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン:25g
トリフルオロメタンスルホニルクロリド:25ml
クロロホルム:300ml
次に、反応溶液を0℃に冷却した後、ゆっくりとトリエチルアミン42mlを滴下した。次に、同温度(0℃)で反応溶液を1時間撹拌した。次に、反応溶液を室温まで昇温してからさらに5時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、塩化アンモニウム水溶液で反応を停止し、有機相を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、有機相を減圧濃縮して得られた粗生成物についてヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で再結晶精製を行うことにより、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイルビス(トリフルオロメタンスルホナート)を49g(収率94%)得た。ここで得られた化合物については、そのまま次の工程で使用した。
(2)下記に示す試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
ジフェニルスルホン−4,4’−ジイルビス(トリフルオロメタンスルホナート)((1)で合成したものをそのまま使用):28g
3−ホルミル−4−メトキシフェニルボロン酸:25g
炭酸水素ナトリウム:30g
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:1.3g
1,4−ジオキサン:500ml
水:250ml
次に、反応溶液を80℃に加熱してこの温度(80℃)で3時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、水250mlを添加した後、反応溶液を80℃で1時間撹拌した。次に、生成した結晶(粗結晶)をろ過・回収した後、この粗結晶をエタノールで洗浄してから、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で再結晶精製を行うことで薄灰色の結晶を得た。
次に、得られた薄灰色結晶と、下記に示す溶媒を反応容器内に投入した。
メタノール:200ml
テトラヒドロフラン:200ml
次に、反応溶液を0℃に冷却した後、水素化ホウ素ナトリウム12gをゆっくり添加した。次に、反応進行度合をTLCで確認しながら反応溶液を同温度(0℃)で撹拌した。反応の進行を確認した後、2N塩酸水溶液を添加した。次に、反応溶液を室温で1時間撹拌した。次に、生成した結晶を炭酸水素ナトリウム水溶液、水の順で洗浄した。次に、エタノール/酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒で再結晶精製を行うことにより、4,4’−ビス(3−ヒドロキシメチル−4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホン(以下、中間化合物D4という。)を48g(収率90%)得た。
[実施例1]
実施例1で合成した化合物の合成スキームを以下に示す。また具体的な合成方法について以下に説明する。
(1)下記に示す試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
水素化ナトリウム(55%):620mg
N,N−ジメチルホルムアミド:30ml
次に、反応溶液を0℃に冷却した後、中間化合物D1(2.3g)をゆっくりと添加した。次に、反応溶液を室温まで昇温しながら撹拌した。次に、2−(2−ブロモエトキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン2.7mlを添加した後、反応溶液を60℃に加熱してこの温度(60℃)で12時間撹拌した。このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、水で反応を停止し、有機相を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、有機相を減圧濃縮して粗生成物を得た。このようにして得られた粗生成物をそのまま次の工程で使用した。
(2)(1)にて得られた粗生成物及び下記に示す試薬、溶媒を反応容器に投入した。
テトラヒドロフラン:10ml
メタノール:40ml
パラトルエンスルホン酸水和物:少量
次に、反応溶液を室温で12時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、生成した沈殿物をろ過した後、この沈殿物をクロロホルム/ヘキサン混合溶液で再結晶精製を行うことにより、4,4’−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)ジフェニルスルホン2.3g(収率82%)が得られた。
(3)下記に示す試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
4,4’−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)ジフェニルスルホン:3.0g
メタクリル酸:30ml
パラトルエンスルホン酸:0.2g
4−メトキシフェノール:0.2g
トルエン:30ml
次に、反応溶液を20時間加熱撹拌した。尚、このとき生成する水分を適宜除去し、反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応溶液を中性にした後、有機相をクロロホルムで抽出した。次に、得られた有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、有機層を減圧濃縮して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することにより、4,4’−ビス(4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル)ジフェニルスルホンを2.1g(収率55%)得た。
得られた化合物について、1H−NMRによりその構造を確認した。
1H−NMR(CDCl3;TMS):δ 1.95(s、6H)、4.27(t、4H)、4.52(t、4H)、5.59(s、2H)、6.14(s、2H)、6.99−7.01(m、4H)、7.25−7.26(m、4H)、7.50−7.53(m、4H)、7.65−7.67(m、4H)、7.98−8.02(m、4H)
[実施例2]
実施例2で合成した化合物の合成スキームを以下に示す。また具体的な合成方法について以下に説明する。
(1)下記に示す試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
中間体化合物D3:5g
中間体化合物D2:6g
炭酸水素ナトリウム:4g
ジオキサン:150ml
水:70ml
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:0.3g
次に、反応溶液を90℃に加熱してこの温度(90℃)で20時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した後、有機相を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、この有機層を減圧濃縮して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。この精製によって得られた化合物をそのまま次の工程で使用した。
(2)次に、下記に示す試薬、溶媒を反応容器に投入した。
水素化ナトリウム:0.6g
N,N−ジメチルホルムアミド:100ml
次に、反応溶液を0℃に冷却した後、(1)にて得られた化合物をゆっくり添加した。次に、反応溶液を室温まで昇温しながら2時間撹拌した。次に、2−(2−ブロモエトキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン2.4mlを添加した後、反応溶液を60℃に加熱しこの温度(60℃)で10時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した後、有機相を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、有機層を減圧濃縮することで粗生成物を得た。得られた粗生成物は、このまま次の工程で使用した。
(3)(2)で得られた粗生成物、及び下記に示した試薬、溶媒を反応容器に投入した。
テトラヒドロフラン:10ml
メタノール:40ml
パラトルエンスルホン酸:少量
次に、反応溶液を室温で10時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、生成した沈殿物をろ過・回収し、クロロホルム/ヘキサン混合溶媒で再結晶精製を行うことにより、4−(4−(2−ヒドロキシエチルチオ)フェニル)−4’−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ジフェニルスルホンを4.1g(収率73%)得た。
(4)実施例1(3)において、4,4’−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)ジフェニルスルホンに代えて4−(4−(2−ヒドロキシエチルチオ)フェニル)−4’−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ジフェニルスルホンを使用した。これを除いては、実施例1(3)と同様の方法により合成を行い、4−(4−(2−メタクリロイルオキシエチルチオ)フェニル)−4’−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)ジフェニルスルホンを2.5g(収率63%)得た。尚、本実施例において、メタクリル酸の使用量は20mlである。
得られた化合物について、1H−NMRによりその構造を確認した。
1H−NMR(CDCl3;TMS):δ 1.92(s、3H)、1.95(s、3H)、3.22(t、2H)、4.25(t、2H)、4.27(t、2H)、4.50(t、2H)、5.57(d、1H)、5.58(d、1H)、6.12(d、1H)、6.12(d、1H)、6.94−7.03(m、4H)、7.47−7.67(m、4H)、7.89−7.99(m、4H)
[実施例3]
実施例3で合成した化合物の合成スキームを以下に示す。また具体的な合成方法について以下に説明する。
(1)下記に示す試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン:10g
4−ヒドロキシフェニルボロン酸:5.8g
炭酸水素ナトリウム:10g
ジオキサン:400ml
水:200ml
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:0.8g
次に、反応溶液を90℃に加熱してこの温度(90℃)で10時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した後、有機相を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、この有機層を減圧濃縮して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。このようにして得られた生成物を、次の工程でそのまま使用した。
(2)下記に示す試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
水素化ナトリウム:1.4g
N,N−ジメチルホルムアミド:200ml
次に、反応溶液を0℃に冷却した後、(1)にて得られた生成物をゆっくりと添加した。次に、反応溶液を室温まで昇温しながら2時間撹拌した。次に、2−(2−ブロモエトキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン6.4mlを添加した後、反応溶液を60℃に加熱してこの温度(60℃)で5時間撹拌した。このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した後、有機相を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、この有機層を減圧濃縮して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。このようにして得られた生成物を、次の工程でそのまま使用した。
(3)(2)にて得られた生成物及び下記に示す試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
中間化合物D2:6.6g
炭酸水素ナトリウム:4.5g
ジオキサン:300ml
水:150ml
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:0.3g
次に、反応溶液を90℃に加熱してこの温度(90℃)で20時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した後、有機相を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、この有機層を減圧濃縮して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。このようにして得られた生成物を、次の工程でそのまま使用した。
(4)(3)にて得られた生成物及び下記に示す試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
テトラヒドロフラン:10ml
メタノール:40ml
パラトルエンスルホン酸:少量
次に、反応溶液を室温で12時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、生成した沈殿物をろ過・回収した後、この沈殿物をクロロホルム/ヘキサンの混合溶媒で再結晶精製を行うことで4−(4−(2−ヒドロキシエチルチオ)フェニル)−4’−(4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル)ジフェニルスルホンを5g(28%)得た。
(5)実施例1(3)において、4,4’−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)ジフェニルスルホンの代わりに4−(4−(2−ヒドロキシエチルチオ)フェニル)−4’−(4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル)ジフェニルスルホン(2.0g)を使用した。これを除いては、実施例1(3)と同様の方法により合成を行い、4−(4−(2−メタクリロイルオキシエチルチオ)フェニル)−4’−(4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)フェニル)ジフェニルスルホンを0.8g(収率31%)得た。尚、本実施例において、メタクリル酸の使用量は20mlである。
得られた化合物について、1H−NMRによりその構造を確認した。
1H−NMR(CDCl3;TMS):δ 1.91(s、3H)、1.95(s、3H)、3.24(t、2H)、4.27(t、2H)、4.35(t、2H)、4.52(t、2H)、5.56−5.60(m、2H)、6.09−6.13(m、2H)、6.98−7.02(m、2H)、7.45−7.69(m、12H)、7.98−8.02(m、2H)
[実施例4]
実施例4で合成した化合物の合成スキームを以下に示す。また具体的な合成方法について以下に説明する。
(1)下記に示す試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン:13g
中間化合物D2:50g
炭酸水素ナトリウム:29g
ジオキサン:400ml
水:200ml
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:2.1g
次に、反応溶液を90℃に加熱してこの温度(90℃)で20時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した後、有機相を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機層を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、この有機層を減圧濃縮して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。このようにして得られた生成物を、次の工程でそのまま使用した。
(2)(1)にて得られた生成物及び下記に示される試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
テトラヒドロフラン:30ml
メタノール:100ml
パラトルエンスルホン酸:少量
次に、反応溶液を室温で12時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、生成した沈殿物をろ過・回収した後、クロロホルム/ヘキサン混合溶媒で再結晶精製を行うことにより、4,4’−ビス(4−(2−ヒドロキシエチルチオ)フェニル)ジフェニルスルホンを19g(収率74%)得た。
(3)実施例1(3)において、4,4’−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)ジフェニルスルホンの代わりに、4,4’−ビス(4−(2−ヒドロキシエチルチオ)フェニル)ジフェニルスルホンを使用した。これを除いては、実施例1(3)と同様の方法により合成を行い、4,4’−ビス(4−(2−メタクリロイルオキシエチルチオ)フェニル)ジフェニルスルホンを3.0g(収率80%)得た。尚、本実施例において、メタクリル酸及びトルエンの使用量は、それぞれ29ml、40mlである。
得られた化合物について、1H−NMRによりその構造を確認した。
1H−NMR(CDCl3;TMS):δ 1.91(s、6H)、3.22(t、4H)、4.35(t、4H)、5.56(s、2H)、6.07(s、2H)、7.42−7.52(m、8H)、7.65−7.71(m、4H)、8.00−8.05(m、4H)
[実施例5]
実施例5で合成した化合物の合成スキームを以下に示す。また具体的な合成方法について以下に説明する。
(1)下記に示す試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
水素化ナトリウム(55%):2.5g
N,N−ジメチルホルムアミド:200ml
次に、反応溶液を0℃に冷却した後、中間化合物D1(10g)をゆっくりと添加した。次に、反応溶液を室温まで昇温しながら撹拌した。次に、3−ブロモプロパノール5.4mlを添加した後、反応溶液を50℃に加熱してこの温度(50℃)で12時間撹拌した。このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、水で反応を停止し、有機相を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機層を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、有機相を減圧濃縮して得られた粗生成物をヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で再結晶することにより白色結晶を得た。このようにして得られた白色結晶を、次の工程でそのまま使用した。
(2)実施例1(3)において、4,4’−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)ジフェニルスルホンの代わりに本実施例の(1)で得られた白色結晶を使用した。これを除いては、実施例1(3)と同様の方法により、4,4’−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル)ジフェニルスルホンを11.5g(収率71%)得た。尚、本実施例において、メタクリル酸、パラトルエンスルホン酸、メトキシフェノール及びトルエンの使用量は、それぞれ90ml、0.6g、0.6g、90mlである。
得られた化合物について、1H−NMRによりその構造を確認した。
1H−NMR(CDCl3;TMS):δ 1.94(s、6H)、2.19(dt、4H)、4.11(t、4H)、4.36(t、4H)、5.56(br、2H)、6.11(br、2H)、6.94−6.99(m、4H)、7.45−7.54(m、4H)、7.63−7.69(m、4H)、7.96−8.03(m、4H)
[実施例6]
実施例6で合成した化合物の合成スキームを以下に示す。また具体的な合成方法について以下に説明する。
(1)以下に示す試薬、溶媒を反応容器に投入した。
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン:10g
3−メトキシ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェノール:25g
炭酸水素ナトリウム:25g
1,4−ジオキサン:500ml
水:250ml
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:2.5g
次に、反応溶液を90℃に加熱してこの温度(90℃)で20時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、反応溶液を水で希釈して溶媒抽出により有機相を回収した後、この有機層を水、飽和食塩水の順で洗浄した。次に、この有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮することで粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で再結晶精製を行うことで4,4’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)ジフェニルスルホンが淡黄色結晶として得られた。このようにして得られた淡黄色結晶を、次の工程でそのまま使用した。
(2)以下に示す試薬、溶媒を反応容器に投入した。
水素化ナトリウム(55%):5.1g
N,N−ジメチルホルムアミド:300ml
次に、反応溶液中に、(1)にて得られた淡黄色結晶をゆっくりと添加した。次に、反応溶液を室温で1時間撹拌した。次に、3−ブロモプロパノール10mlをゆっくりと滴下した後、反応溶液を60℃に加熱してこの温度(60℃)で12時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、水で反応を停止した後、有機相を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、この有機層を減圧濃縮して得られた粗生成物をヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で再結晶することで白色結晶を得た。このようにして得られた白色結晶を、次の工程でそのまま使用した。
(3)実施例1(3)において、4,4’−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)ジフェニルスルホンの代わりに本実施例の(2)で得られた白色結晶を使用した。これを除いては、実施例1(3)と同様の方法により、4,4’−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシプロポキシ)−3−メトキシフェニル)ジフェニルスルホンを21g(収率84%)得た。尚、本実施例において、メタクリル酸、パラトルエンスルホン酸、メトキシフェノール及びトルエンの使用量は、それぞれ120ml、1.3g、11.3g、300mlである。
得られた化合物について、1H−NMRによりその構造を確認した。
1H−NMR(CDCl3;TMS):δ 1.94(s、6H)、2.24(dt、4H)、3.91(s、6H)、4.17(t、4H)、4.37(t、4H)、5.56(br、2H)、6.11(br、2H)、6.92−7.15(m、6H)、7.64−7.70(m、4H)、7.97−8.03(m、4H)
[実施例7]
実施例7で合成した化合物の合成スキームを以下に示す。また具体的な合成方法について以下に説明する。
(1)実施例6(1)において、2−メトキシ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェノールの代わりに2,6−ジメチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェノールを使用した以外は、実施例6(1)と同様の方法で合成を行った。尚、本実施例において4,4’−ジクロロジフェニルスルホン及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムの使用量は、それぞれ9.6g、2.3gである。これにより4,4’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホンを白色結晶として得た。このようにして得られた白色結晶を、次の工程でそのまま使用した。
(2)以下に示す試薬、溶媒を反応容器に投入した。
水素化ナトリウム(55%):3.1g
N,N−ジメチルホルムアミド:300ml
次に、反応溶液中に、(1)にて得られた白色結晶をゆっくりと添加した後、反応溶液を室温で1時間撹拌した。次に、メタクリル酸−2−ブロモエチル15gをゆっくりと滴下した後、反応溶液を60℃に加熱してこの温度(60℃)で12時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、水を添加して反応を停止した後、有機層を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機層を水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、有機層を減圧濃縮して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することにより4,4’−ビス(4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホンを15g(収率66%)得た。
得られた化合物について、1H−NMRによりその構造を確認した。
1H−NMR(CDCl3;TMS):δ 1.89(s、6H)、2.30(s、12H)、4.30(t、4H)、4.62(s、4H)、5.47(br、2H)、6.05(br、2H)、7.21−7.27(m、4H)、7.60−7.67(m、4H)、7.93−8.01(m、4H)
[実施例8]
実施例8で合成した化合物の合成スキームを以下に示す。また具体的な合成方法について以下に説明する。
(1)以下に示す試薬、溶媒を反応容器に投入した。
水素化ナトリウム(55%):11g
N,N−ジメチルホルムアミド:300ml溶液
次に、反応溶液を0℃に冷却した後、中間化合物D4(30g)をゆっくりと添加した。次に、反応溶液を同温度(0℃)で1時間撹拌した。次に、2−(2−ブロモエトキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン36mlを添加した後、反応溶液を70℃に加熱してこの温度(70℃)で6時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、水を添加して反応を停止させた後、有機層を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機層を、水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、有機層を減圧濃縮して得られる粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することで薄黄色液体を得た。このようにして得られた薄黄色固体をそのまま次の工程で使用した。
(2)(1)にて得られた薄黄色液体及び以下に示す試薬、溶媒を反応容器に投入した。
メタノール:150ml
テトラヒドロフラン:50ml
パラトルエンスルホン酸:触媒量
次に、反応溶液を室温で12時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、トリエチルアミンを添加して反応を停止させた後、生成した結晶をろ過・回収した。次に、得られた結晶をヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で再結晶精製を行うことで白色結晶を得た。このようにして得られた白色固体をそのまま次の工程で使用した。
(3)(2)にて得られた白色液体及び以下に示す試薬、溶媒を反応容器に投入した。
クロロホルム:100ml
ピリジン:150ml
4−メトキシフェノール:0.2g
N,N−ジメチルアミノピリジン:1.2g
無水メタクリル酸:30ml
次に、反応溶液を室温で12時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、2N塩酸を添加して反応を停止させた後、有機層をトルエンで抽出した。次に、得られた有機層を2N塩酸、10%水酸化ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、この有機層を減圧濃縮して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することで油状の生成物を得た。次に、得られた油状生成物をヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で再結晶精製を行うことにより、4,4’−ビス((3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)メチル)−4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホンを26g(収率55%)得た。
得られた化合物について、1H−NMRによりその構造を確認した。
1H−NMR(CDCl3;TMS):δ 1.89(s、6H)、3.78(t、4H)、3.87(s、6H)、4.35(t、4H)、4.65(s、4H)、5.49(br、2H)、6.09(br、2H)、6.90−6.98(m、2H)、7.45−7.51(m、2H)、7.60−7.72(m、8H)、7.94−8.02(m、4H)
[実施例9]
実施例9で合成した化合物の具体的な合成方法について以下に説明する。
(1)実施例8(1)において、2−(2−ブロモエトキシ)テトラヒドロ−2H−ピランの代わりに、下記に示す2−(4−クロロブトキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(9.0ml)を使用した。これを除いては、実施例8(1)と同様の方法により合成を行い、薄黄色液体の生成物を得た。尚、本実施例において、水素化ナトリウム(55%)及び中間化合物D4の使用量は、それぞれ2.8g、8.0gである。このようにして得られた薄黄色液体をそのまま次の工程で使用した。
(2)実施例8(2)において、実施例8(1)にて得られた薄黄色液体の代わりに、本実施例(1)にて得られた薄黄色液体を使用したことを除いては、実施例8(2)と同様の方法により白色結晶を得た。このようにして得られた白色固体をそのまま次の工程で使用した。
(3)実施例8(3)において、実施例8(2)にて得られた白色固体の代わりに、本実施例(2)にて得られた白色固体を使用した。これを除いては、実施例8(2)と同様の方法により、下記に示される化合物、即ち、4,4’−ビス((3−(4−メタクリロイルオキシブトキシ)メチル)−4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホンを6.7g(収率53%)得た。
得られた化合物について、1H−NMRによりその構造を確認した。
1H−NMR(CDCl3;TMS):δ 1.89(s、6H)、2.24(dt、4H)、3.73(t、4H)、3.85(s、6H)、4.32(t、4H)、4.65(s、4H)、5.49(br、2H)、6.09(br、2H)、6.91−6.99(m、2H)、7.45−7.52(m、2H)、7.59−7.72(m、8H)、7.93−8.02(m、4H)
[比較例1]
下記に示す化合物を合成して、後述する光学特性及び実用性の実験を行った。以下に、本比較例の化合物の合成方法を説明する。
(1)以下に示す試薬、溶媒を反応容器に投入した。
中間化合物D3:5g
4−ヒドロキシフェニルボロン酸:2.5g
炭酸水素ナトリウム:4g
ジオキサン:200ml
水:100ml
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:0.3g
次に、反応溶液を90℃に加熱してこの温度(90℃)で20時間撹拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、塩化アンモニウム水溶液を添加して反応を停止させた後、有機層を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機層を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、この有機層を減圧濃縮して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することで4−(4−ヒドロキシフェニル)−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを4.2g(収率98%)得た。
(2)以下に示す試薬、溶媒を反応容器に投入した。
水素化ナトリウム:1.2g
N,N−ジメチルホルムアミド:150ml
次に、反応溶液を0℃に冷却した後、(1)にて合成した4−(4−ヒドロキシフェニル)−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン4.2gを同温度(0℃)でゆっくり添加した。次に、反応溶液を室温まで昇温しながら2時間攪拌した。次に、2−(2−ブロモエトキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン4.8mlを添加した後、反応溶液を60℃に加熱してこの温度(60℃)で12時間攪拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで確認した。次に、塩化アンモニウム水溶液を添加して反応を停止させた後、有機層を酢酸エチルで抽出した。次に、得られた有機層を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、この有機層を減圧濃縮して得られる粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。これにより得られた生成物を次の工程でそのまま使用した。
(3)(2)にて得られた生成物及び以下に示す試薬、溶媒を反応容器に投入した。
テトラヒドロフラン:10ml
メタノール:40ml
パラトルエンスルホン酸:少量
次に、反応溶液を室温で12時間攪拌した。尚、このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、生成した沈殿物をろ過・回収した後、クロロホルム/ヘキサン混合溶媒で再結晶精製を行うことで4−(4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル)−4’−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ジフェニルスルホンを5.0g(収率92%)得た。
(4)以下に示す試薬、溶媒を反応容器に投入した。
4−(4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル)−4’−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ジフェニルスルホン:4.0g
メタクリル酸:25ml
パラトルエンスルホン酸:0.2g
4−メトキシフェノール:0.2g
トルエン:30ml
次に、反応溶液を20時間加熱撹拌した。尚、このとき生成する水分を適宜除去し、反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応溶液を中性にした後、有機相をクロロホルムで抽出した。次に、得られた有機相を水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、有機層を減圧濃縮して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することにより、4−(4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)フェニル)−4’−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)ジフェニルスルホンを4.3g(収率81%)得た。
得られた化合物について、1H−NMRによりその構造を確認した。
1H−NMR(CDCl3;TMS):δ 1.92(s、3H)、1.95(s、3H)、4.20−4.29(m、4H)、4.46−4.52(m、4H)、5.58(d、1H)、5.58(d、1H)、6.12(d、1H)、6.12(d、1H)、6.94−7.03(m、4H)、7.47−7.54(m、2H)、7.61−7.67(m、2H)、7.88−7.97(m、4H)
[比較例2]4,4’−ビス(2−メチルチオフェニル)ジフェニルスルホンの合成
下記に示す化合物(4,4’−ビス(2−メチルチオフェニル)ジフェニルスルホン)を合成して、後述する光学特性及び実用性の実験を行った。以下に、本比較例の化合物の合成方法を説明する。
(1)以下に示す試薬、溶媒を反応容器に投入した。
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン:0.4g
2−メチルチオフェニルボロン酸:0.6g
炭酸水素ナトリウム:0.8g
1,4−ジオキサン:20ml
水:10ml
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:0.07g
次に、反応溶液を90℃に加熱してこの温度で20時間撹拌した。尚。このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、反応溶液を水で希釈した後、溶媒抽出により有機層を回収した。次に、得られた有機層を、水、飽和食塩水の順で洗浄した。次に、得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮して粗生成物を得た。次に、この粗生成物を、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で再結晶精製を行うことにより、4,4’−ビス(2−メチルチオフェニル)ジフェニルスルホンを淡黄色結晶として0.5g(収率72%)得た。
得られた化合物について、1H−NMRによりその構造を確認した。
1H−NMR(CDCl3;TMS):δ 2.37(s、6H)、7.14−7.40(m、8H)、7.56−7.62(m、4H)、8.00−8.06(m、4H)
[比較例3]4−(4−メチルチオフェニル)ジフェニルエーテルの合成
下記に示す化合物(4−(4−メチルチオフェニル)ジフェニルエーテル)を合成して、後述する光学特性及び実用性の実験を行った。以下に、本比較例の化合物の合成方法を説明する。
(1)以下に示す試薬、溶媒を反応容器に投入した。
4−ブロモジフェニルエーテル:0.8g
4−メチルチオフェニルボロン酸:0.6g
炭酸水素ナトリウム:0.8g
ジオキサン:20ml
水:10ml
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:0.1g
次に、反応溶液を90℃に加熱してこの温度で20時間撹拌した。尚。このとき反応進行度合をTLCで随時確認した。次に、反応溶液を水で希釈した後、溶媒抽出により有機層を回収した。次に、得られた有機層を、水、飽和食塩水の順で洗浄した。次に、得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮して粗生成物を得た。次に、この粗生成物を、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で再結晶精製を行うことにより、4−(4−メチルチオフェニル)ジフェニルエーテルを0.8g(収率89%)得た。
得られた化合物について、1H−NMRによりその構造を確認した。
1H−NMR(CDCl3;TMS):δ 2.51(s、3H)、7.03−7.15(m、4H)、7.28−7.39(m、5H)、7.46−7.55(m、4H)
[光学特性の評価]
実施例及び比較例でそれぞれ合成した化合物について光学特性の評価を以下に示す方法で行った。
(1)評価用サンプルの作製
まず評価用のサンプルを以下に示す方法で作製した。
(1a)屈折率測定用サンプル
直径20mmの円板型のガラス基板を2枚用意して、測定対象となる化合物を、厚さが12.5μmで均一になるように、1枚目のガラス基板上に載置した。次に、2枚目のガラス基板を測定対象となる化合物上に載置した後、ガラス基板の外周部分を封止した。ここで測定対象となる化合物が(メタ)アクリレート化合物である場合は、サンプルに紫外光を照射することで2枚のガラス基板に挟まっている化合物を硬化させた。一方、測定対象となる化合物が(メタ)アクリレート化合物以外の化合物である場合は、サンプルを加熱して2枚のガラス基板に挟まっている化合物を融解させた。
(1b)透過率測定用サンプル
上記(1a)において、用意する基板を直径50μmの円板型のガラス基板とし、1枚目のガラス基板上に載置する測定対象となる化合物の厚さを500μmとすることを除いては、上記(1a)と同様の方法によりサンプルを作製した。
(2)測定及び評価
屈折率は、アッベ屈折計(カルニュー光学工業)を用いて測定した。また透過率は、光路長の異なる2種類の膜を成形し、日立ハイテクノロジー社製分光光度計U−4000(製品名)でそれぞれ測定し、410nmでの内部透過率(500μm)に換算した結果を表に示す。ここで光学特性が図1中のB範囲内でありかつ410nmでの透過率が90%以上のものを総合評価○とし、それ以外を総合評価×とした。結果を表1に示す。
[安定性の評価]
安定性は、大気中25℃で2週間保管した際に変質がないものを○、変質したものを×とした。但し、重合性置換基を有するものは、少量(1000ppm以下)の重合禁止剤を含有させた状態で判定している。結果を表1に示す。