JP6278882B2 - 表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6278882B2
JP6278882B2 JP2014235644A JP2014235644A JP6278882B2 JP 6278882 B2 JP6278882 B2 JP 6278882B2 JP 2014235644 A JP2014235644 A JP 2014235644A JP 2014235644 A JP2014235644 A JP 2014235644A JP 6278882 B2 JP6278882 B2 JP 6278882B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
zirconium
film
aluminum alloy
substrate
oxide film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2014235644A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016098397A (ja
Inventor
真 俵
真 俵
小島 徹也
徹也 小島
太田 陽介
陽介 太田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2014235644A priority Critical patent/JP6278882B2/ja
Publication of JP2016098397A publication Critical patent/JP2016098397A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6278882B2 publication Critical patent/JP6278882B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Chemical Treatment Of Metals (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Description

本発明は表面処理が施された表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法に関する。
周知の通り、従来から、自動車、船舶、航空機あるいは車両等の輸送機、機械、電気製品、建築、構造物、光学機器、器物の部材や部品用として、各種アルミニウム合金板が、合金毎の各特性に応じて汎用されている。そして、近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車車体の軽量化による燃費の向上が追求されていることから、従来使用されていた鉄鋼材料に代わって、比重が鉄の約1/3であり、優れたエネルギー吸収性を有するアルミニウム合金板の自動車車体への使用が増加している。
アルミニウム合金板を自動車パネルとして用いる場合には、成形性、溶接性、接着性、化成処理性、塗装後の耐食性、美観等が要求される。アルミニウム合金板を用いて自動車パネルを製造する方法は、1)成形(所定寸法への切り出し、所定形状へのプレス成形)、2)接合(溶接および/または接着)、3)化成処理(洗浄剤による脱脂→表面調整→リン酸亜鉛処理)、4)塗装(電着塗装による下塗り→中塗り→上塗り)、であり、従来の鋼板を用いる場合と基本的に同じである。
一方で、自動車部品のモジュール化が進行しつつあり、アルミニウム合金板自体が製造されてから、前記の自動車パネルの製造工程や車体製造工程に入るまでの期間がこれまでより長くなる傾向がある。自動車部品のモジュール化とは、自動車メーカーにおいて車体に直接取り付けていた個々の部品を、部品会社において事前にサブアセンブリーしてから車体に取り付ける方法である。自動車メーカーにおける難作業を簡素化して生産効率を上げることが主な目的であり、生産工程の短縮、仕掛品を削減する効果もある。自動車部品のモジュール化により、部品会社の負担は増加するが、自動車会社と部品会社の全体としてのコスト低減に効果があり、結果的に自動車のコスト削減に寄与している。
そして、アルミニウム合金板自体が製造されてから前記の製造工程に入るまでの期間がこれまでより長くなるため、アルミニウム合金板の表面保護の観点から、アルミニウム合金板に防錆油を塗油する処理が行われる。しかし、このような場合、どうしてもアルミニウム合金板の表面特性が経時変化し、アルミニウム合金板の脱脂性、化成処理性へ悪影響を及ぼすことが問題となっている。すなわち、アルミニウム合金板の表面特性の経時変化に伴い、化成処理時の脱脂性が悪化し、化成処理皮膜が付着し難くなり、結果的に塗装後の耐食性に影響を及ぼすこととなる。加えて、接着剤で接合したアルミニウム合金製自動車パネルでは、使用中に水分や酸素、あるいは塩分等が接合部に侵入することで、接着剤とアルミニウム合金板との界面が経時劣化して界面剥離が発生し、接着強度が低下することが問題となっている。
このため、従来、アルミニウム合金板の表面に形成された酸化皮膜、特にMgを含有する酸化皮膜を洗浄等で除去することによって、脱脂性、化成処理性および接着性を向上させることが行われている(例えば、特許文献1〜5参照)。しかしながら、酸化皮膜を完全に除去することは難しく、表面特性の経時変化が少ない表面安定性に優れたものを得ることは困難であった。また、酸化皮膜を完全に除去するには強力に洗浄する必要があるため、生産性に劣り、経済的ではなかった。
そこで、アルミニウム合金板の酸化皮膜のMg量とOH量を調整し、酸化皮膜の調整後14日以内に防錆油を塗油することが行われている(例えば、特許文献6参照)。また、アルミニウム合金板の表面に、リン酸塩皮膜とその上に形成された酸化アルミニウム膜とからなる表面皮膜を形成し、この表面皮膜(酸化アルミニウム膜)の上に防錆油を塗油することも行われている(例えば、特許文献7参照)。
特開平06−256980号公報 特開平06−256881号公報 特開平05−070741号公報 特開平04−214835号公報 特開平02−115385号公報 特開2006−200007号公報 特許第2744697号公報
しかしながら、アルミニウム合金板の表面特性の経時変化は、アルミニウム合金板の製造直後から一週間程度までの変化量が最も大きく、その後の変化は比較的少ない。したがって、特許文献6に記載されたアルミニウム合金板においては、表面調整後14日以内に防錆油を塗油するため、アルミニウム合金板の表面保護が不十分となる場合があり、目的とする脱脂性、化成処理性および接着性が得られないという問題がある。また、特許文献7に記載されたアルミニウム合金板においても、その表面皮膜の構成が塗油後一週間放置したサンプル評価結果によって特定されるものであるため、目的とする脱脂性、化成処理性および接着性が得られないという問題がある。
本発明は、前記課題を解決するものであり、アルミニウム合金板自体が製造されてから自動車パネル等の製造工程に入るまでの期間が長くなっても、脱脂性、化成処理性および接着性に優れる表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板は、アルミニウム合金からなる基板と、前記基板の表面に形成された酸化皮膜と、前記酸化皮膜の表面に形成されたジルコニウムを含有するジルコニウム系皮膜と、前記ジルコニウム系皮膜の表面に形成されたビニルホスホン酸を含有するビニルホスホン酸系皮膜と、を備える表面処理アルミニウム合金板であって、前記酸化皮膜は、膜厚が1〜30nmであり、前記ジルコニウム系皮膜は、前記酸化皮膜に対する付着量が二酸化ジルコニウム換算量で0.01〜25mg/mであり、前記ビニルホスホン酸系皮膜は、膜厚が0.1〜10nmであることを特徴とする。
このような構成によれば、基板の表面に形成された所定膜厚の酸化皮膜と、酸化皮膜の表面に形成された所定付着量のジルコニウムを含有するジルコニウム系皮膜と、ジルコニウム系皮膜の表面に形成された所定膜厚のビニルホスホン酸系皮膜と、を備えることで、従来行われていた酸洗浄等を行わずに、脱脂性、化成処理性および接着性が向上する。特に、ジルコニウム系皮膜において、二酸化ジルコニウム換算量で規定する付着量が所定範囲であることで、ジルコニウム系皮膜が防錆油の吸着を抑制するため、化成処理工程における脱脂時に防錆油およびプレス油が十分に除去でき、良好な水濡れ性が維持される。その結果、脱脂不良(水濡れ性不良)に起因した化成処理ムラの発生が抑制される。加えて、ジルコニウム系皮膜と酸化皮膜が強固に結合されているため、表面処理アルミニウム合金板と接着剤との間で界面剥離が発生することが抑制される。
本発明に係る表面処理アルミニウム合金板の製造方法は、圧延によってアルミニウム合金からなる基板を作製する基板作製工程と、前記基板を400〜580℃に加熱して前記基板の表面に酸化皮膜を形成する加熱工程と、前記酸化皮膜が形成された前記基板を冷却して、前記酸化皮膜の表面にジルコニウム系皮膜を形成する冷却工程と、前記ジルコニウム系皮膜の表面にビニルホスホン酸を含有する水溶液を接触させて、前記ジルコニウム系皮膜の表面にビニルホスホン酸系皮膜を形成するビニルホスホン酸系皮膜形成工程と、を含み、前記冷却工程において、濃度が0.005〜5g/Lであり、pHが0〜5の硝酸酸化ジルコニウム水溶液を冷却液として用いることを特徴とする。また、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板の製造方法は、前記基板が熱処理型アルミニウム合金からなり、前記加熱工程が前記基板に溶体化処理を施す溶体化処理工程であって、前記冷却工程が前記酸化皮膜が形成された前記基板に焼入処理を施す焼入工程であることが好ましい。
このような手順によれば、所定温度で加熱する加熱工程を行うことで、基板の表面に所定膜厚の酸化皮膜が形成されると共に、表面処理アルミニウム合金板の強度が調整される。また、所定の硝酸ジルコニウム(正式名:二硝酸酸化ジルコニウム、慣用名:オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、硝酸ジルコン等)水溶液で冷却する冷却工程を行うことで、酸化皮膜の表面に所定付着量のジルコニウム系皮膜が形成される。また、ジルコニウム系皮膜が形成された基板をビニルホスホン酸を含有する水溶液(以下、適宜、ビニルホスホン酸水溶液という)を用いて処理することで、所定膜厚のビニルホスホン酸系皮膜が形成される。なお、熱処理型アルミニウム合金としては、Al−Cu−Mg系合金(2000系)、Al−Mg−Si系合金(6000系)、Al−Zn−Mg系合金(7000系)が知られている。
本発明の表面処理アルミニウム合金板は、脱脂性、化成処理性および接着性に優れる。
また、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板の製造方法は、脱脂性、化成処理性および接着性に優れる表面処理アルミニウム合金板を製造できる。また、本発明に係る製造方法は、従来行われていた酸洗浄等を省略できるため、コストダウンを図ることができる。
本発明に係る表面処理アルミニウム合金板の構成を示す断面図である。 本発明に係る表面処理アルミニウム合金板の製造方法を示す工程フローである。
≪表面処理アルミニウム合金板≫
以下、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板について、図1を参照して具体的に説明する。図1に示すように、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板10は、基板1と、この基板1の表面に形成された酸化皮膜2と、この酸化皮膜2の表面に形成されたジルコニウムを含有するジルコニウム系皮膜3と、このジルコニウム系皮膜3の表面に形成されたビニルホスホン酸を含有するビニルホスホン酸系皮膜4と、を備える。そして、酸化皮膜2の膜厚、ジルコニウム系皮膜3の付着量、ビニルホスホン酸系皮膜4の膜厚を規定したものである。
なお、ここで、基板1の表面とは、基板1の表面の少なくとも一面を意味し、いわゆる表面、裏面が含まれる。
以下、各構成について説明する。
<基板>
基板1は、アルミニウム合金からなり、その板厚は表面処理アルミニウム合金板10の用途に応じて適宜設定される。また、基板1の材料となるアルミニウム合金も、表面処理アルミニウム合金板10の用途に応じて、JISに規定される、またはJISに近似する種々の非熱処理型アルミニウム合金または熱処理型アルミニウム合金から適宜選択される。なお、非熱処理型アルミニウム合金は、純アルミニウム(1000系)、Al−Mn系合金(3000系)、Al−Si系合金(4000系)およびAl−Mg系合金(5000系)であり、熱処理型アルミニウム合金は、Al−Cu−Mg系合金(2000系)、Al−Mg−Si系合金(6000系)およびAl−Zn−Mg系合金(7000系)である。
具体例を挙げると、表面処理アルミニウム合金板を自動車用に用いる場合では、0.2%耐力が100MPa以上の高強度の基板であることが好ましい。このような特性を満足する基板を構成するアルミニウム合金としては、通常、この種の構造部材用途に汎用される、5000系、6000系、7000系等の耐力が比較的高い汎用合金であって、必要により調質されたアルミニウム合金が好適に用いられる。優れた時効硬化能や合金元素量が比較的少なくスクラップのリサイクル性や成形性にも優れている点では、6000系アルミニウム合金を用いることが好ましい。
好適なアルミニウム合金の組成の一例として、Mg:0.2〜1.5質量%、Si:0.3〜2.3質量%、Cu:1.0質量%以下を含有し、さらに必要に応じて、Ti:0.1質量%以下、B:0.06質量%以下、Be:0.2質量%以下、Mn:0.8質量%以下、Cr:0.4質量%以下、Fe:0.5質量%以下、Zr:0.2質量%以下、V:0.2質量%以下から選択される1種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金が挙げられる。各元素の数値限定理由は以下のとおりである。
(Mg:0.2〜1.5質量%)
Mgは、強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が0.2質量%以上であれば、強度向上の効果が大きい。一方、Mgの含有量が1.5質量%以下であれば、成形性が向上しやすくなる。
(Si:0.3〜2.3質量%)
Siは、強度を向上させる効果がある。Siの含有量が0.3質量%以上であれば、強度向上の効果が大きい。一方、Siの含有量が2.3質量%以下であれば、成形性、熱間圧延性が向上しやすくなる。
(Cu:1.0質量%以下)
Cuは、強度を向上させる効果がある。Cuの含有量が1.0質量%以下であれば、耐食性が向上しやすくなる。好ましくは、0.1質量%以上である。
(Ti:0.1質量%以下、B:0.06質量%以下、Be:0.2質量%以下、Mn:0.8質量%以下、Cr:0.4質量%以下、Fe:0.5質量%以下、Zr:0.2質量%以下、V:0.2質量%以下から選択される1種以上)
Tiは、鋳塊の結晶粒を微細にし、成形性を向上させる効果がある。Tiの含有量が0.1質量%以下であれば、粗大な晶出物の形成が抑制され、成形性が向上しやすくなる。
Bは、鋳塊の結晶粒や晶出物を微細にし、成形性を向上させる効果がある。Bの含有量が0.06質量%以下であれば、粗大な晶出物が抑制され、成形性が向上しやすくなる。なお、Ti、Bの合計量は0.09質量%以下であることが好ましい。
Beは、熱間圧延性および成形性を向上させる効果がある。しかし、Beの含有量が0.2質量%を超えると、効果が飽和する。
Mn、Cr、Fe、Zr、Vは、強度を向上させる効果がある。含有量がそれぞれ、0.8質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.2質量%、0.2質量%以下であれば、粗大な晶出物が抑制され、成形性が向上しやすくなる。なお、Mn、Cr、Fe、Zr、Vの合計量は1.0質量%以下であることが好ましい。
<酸化皮膜>
酸化皮膜2は、基板1の表面に形成される凸凹状の多孔質皮膜であり、基板1が6000系合金からなる場合には、酸化マグネシウムを主成分とする皮膜である。
そして、酸化皮膜2は、表面処理アルミニウム合金板10の製造過程における熱処理等により、基板1の表面に不可避的に形成されるものである。酸化皮膜2の膜厚は1〜30nmである。酸化皮膜2の膜厚は、表面処理アルミニウム合金板10の製造過程(加熱工程)における加熱温度によって制御する。
(膜厚:1〜30nm)
酸化皮膜2の膜厚が1nm未満では、防錆油およびプレス油中のエステル成分の吸着が抑制されるため、ジルコニウム系皮膜3およびビニルホスホン酸系皮膜4が無くても脱脂性、化成処理性および接着性は確保されるが、膜厚を1nm未満に制御するには酸洗浄等が必要となる。そのため、生産性に劣り、実用的ではない。一方、酸化皮膜2の膜厚が30nmを超えると、ジルコニウム系皮膜3およびビニルホスホン酸系皮膜4を設けても、脱脂性、化成性、接着性を確保することができない。酸化皮膜2の膜厚は、脱脂性、化成性、接着性をより向上させやすくする観点から、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下である。
<ジルコニウム系皮膜>
ジルコニウム系皮膜3は、酸化皮膜2の表面に形成された皮膜である。ジルコニウム系皮膜3は、ジルコニウムを含有し、酸化皮膜2に対する付着量が二酸化ジルコニウム換算量で0.01〜25mg/mの皮膜である。ジルコニウム系皮膜3の付着量は、表面処理アルミニウム合金板10の製造過程(冷却工程)における硝酸ジルコニウム水溶液の濃度およびpHによって制御する。
(付着量:二酸化ジルコニウム換算量で0.01〜25mg/m
ジルコニウム系皮膜3の付着量が0.01mg/m未満では、凹凸状の酸化皮膜2を十分にカバーしきれず、また、酸化皮膜2を十分にカバーできても、ジルコニウム系皮膜3中のZr成分が不足するため、脱脂性、化成処理性および接着性が確保できない。一方、ジルコニウム系皮膜3を25mg/mを超えて付着させても、脱脂性の向上効果は飽和し、生産コストが高くなる。ジルコニウム系皮膜3の付着量は、酸化皮膜2をよりカバーしやすくしたり、ジルコニウム系皮膜3中のZr成分をより十分なものとしたりする観点から、好ましくは二酸化ジルコニウム換算量で0.1mg/m以上、より好ましくは1mg/m以上である。また、付着量を抑えて生産性をより向上させる観点から、好ましくは二酸化ジルコニウム換算量で10mg/m以下、より好ましくは5mg/m以下である。
<ビニルホスホン酸系皮膜>
ビニルホスホン酸系皮膜4は、ジルコニウム系皮膜3の表面に形成されたビニルホスホン酸を含有する皮膜である。表面処理アルミニウム合金板10は、ビニルホスホン酸系皮膜4を備えることで、接着性を向上させることができる。
また、ビニルホスホン酸系皮膜4の膜厚は0.1〜10nmである。ビニルホスホン酸系皮膜4の膜厚は、表面処理アルミニウム合金板10の製造過程(ビニルホスホン酸系皮膜形成工程)での条件によって制御する。
(膜厚:0.1〜10nm)
ビニルホスホン酸系皮膜4の膜厚が0.1nm未満では、充分なアンカー効果が得られず、接着性を確保することができない。一方、10nmを超える膜厚としても、その効果は飽和し、生産コストが高くなる。したがって、ビニルホスホン酸系皮膜4の膜厚は0.1〜10nmとする。ビニルホスホン酸系皮膜4の膜厚は、ビニルホスホン酸系皮膜4の生成をより容易にする観点から、また、接着性をより向上させやすくする観点から、好ましくは1nm以上である。また、膜厚を薄くして生産性をより向上させる観点から、好ましくは5nm以下である。
酸化皮膜2の膜厚の測定方法としては、例えば、高周波グロー放電発光分光分析(Glow Discharge−Optical Emission Spectroscopy、以下、GD−OESと称す)によって測定することができる。具体的には、GD−OESにより測定した、深さ方向プロファイルでの酸素最大濃度の半値の時の深さを複合皮膜(酸化皮膜2とジルコニウム系皮膜3の合計)厚さとし、Zr濃度が0.1原子%まで低下した時の深さをジルコニウム系皮膜3の厚さと規定することができる。そして、複合皮膜の膜厚からジルコニウム系皮膜3の膜厚を引いた値を酸化皮膜2の膜厚と規定することができる。しかしながら、測定方法は、GD−OESと同精度を持つ測定方法であれば、GD−OESに限定されるものではない。
ジルコニウム系皮膜3の付着量の測定方法としては、例えば、蛍光X線によって測定することができる。具体的には、蛍光X線によってジルコニウム系皮膜3中のジルコニウムを定量し、その値を二酸化ジルコニウム量に換算して、ジルコニウム系皮膜3の付着量とする。しかしながら、測定方法は、蛍光X線と同精度を持つ測定方法であれば、蛍光X線に限定されるものではない。
ビニルホスホン酸系皮膜4の膜厚の測定方法としては、例えば、GD−OESによって測定することができる。具体的には、GD−OESにより測定した、深さ方向プロファイルでの酸素濃度が15原子%を下回る深さから、ビニルホスホン酸系皮膜4のリン濃度(原子%)が最大値の1/10を下回る深さを差し引いた値とすることができる。しかしながら,測定法は、GD−OESと同精度を持つ測定法であれば、GD−OESに限定されるものではない。
≪表面処理アルミニウム合金板の製造方法≫
次に、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板の製造方法について、図2を参照して説明する。なお、表面処理アルミニウム合金板の構成については、図1を参照する。
表面処理アルミニウム合金板10の製造方法は、基板作製工程S1と、加熱工程S2と、冷却工程S3と、ビニルホスホン酸系皮膜形成工程S4と、を含むものである。そして、加熱工程S2における加熱温度と、冷却工程S3における硝酸ジルコニウム水溶液の濃度およびpHを規定したものである。
以下、各工程について説明する。
<基板作製工程>
基板作製工程S1は、圧延によって基板1を作製する工程である。具体的には、以下のような手順で基板1を作製することが好ましい。
所定の組成を有するアルミニウム合金を連続鋳造により溶解、鋳造して鋳塊を製造し(溶解鋳造工程)、前記製造された鋳塊に均質化熱処理を施す(均質化熱処理工程)。次に、前記均質化熱処理された鋳塊に、熱間圧延を施して熱延板を製造する(熱間圧延工程)。次いで、熱延板に300〜580℃で荒焼鈍または中間焼鈍を行い、最終冷間圧延率5%以上の冷間圧延を少なくとも1回施して、所定の板厚の冷延板(基板1)を製造する(冷間圧延工程)。荒焼鈍または中間焼鈍の温度を300℃以上とすることで、成形性向上の効果がより発揮され、580℃以下とすることで、バーニングの発生による成形性の低下を抑制しやすくなる。最終冷間圧延率を5%以上とすることで、成形性向上の効果がより発揮される。最終冷間圧延率は90%以下であることが好ましい。なお、均質化熱処理、熱間圧延の条件は、特に限定されるものではなく、熱延板を通常得る場合の条件でよい。また、中間焼鈍は行わなくてもよい。
<加熱工程>
加熱工程S2は、基板1を400〜580℃に加熱して、基板1の表面に酸化皮膜2を形成する工程である。また、加熱工程S2は、表面処理アルミニウム合金板10の強度を調整する工程でもある。なお、加熱工程S2は、加熱速度100℃/分以上の急速加熱とすることが好ましい。また、加熱速度は500℃/分以下であることが好ましい。
そして、加熱工程S2は、基板1が熱処理型アルミニウム合金からなる場合には溶体化処理工程であって、基板1が非熱処理型アルミニウム合金からなる場合には、焼鈍工程(最終焼鈍工程)における加熱工程である。
(加熱温度:400〜580℃)
加熱温度400℃以上に急速加熱することで、表面処理アルミニウム合金板10の強度、および、その表面処理アルミニウム合金板10の塗装後加熱(ベーキング)した後の強度がより高くなる。加熱温度580℃以下に急速加熱することで、バーニングの発生による成形性の低下が抑制される。また、加熱温度400〜580℃で加熱することで、基板1の表面に所定膜厚(1〜30nm)の酸化皮膜2が形成される。なお、強度を向上させる観点から、保持時間は、3〜30秒が好ましい。
<冷却工程>
冷却工程S3は、酸化皮膜2が形成された基板1を冷却して、酸化皮膜2の表面にジルコニウム系皮膜3を形成する、すなわち、冷却処理と表面処理とを同時に行なう工程である。なお、冷却工程S3は、冷却速度100℃/分以上で100℃まで急速冷却することが好ましい。100℃までの冷却速度を100℃/分以上とすることで、成形性の低下がより抑制されると共に、ベーキング後の強度がより高くなる。また、100℃までの冷却速度は500℃/分以下であることが好ましい。
そして、冷却工程S3は、基板1が熱処理型アルミニウム合金からなる場合には焼入処理工程であって、基板1が非熱処理型アルミニウム合金からなる場合には、焼鈍工程(最終焼鈍工程)における冷却工程である。
冷却工程S3では、冷却液として、濃度が0.005〜5g/Lであり、pHが0〜5の硝酸ジルコニウム水溶液を用いる。また、冷却工程S3では、冷却時間が1〜30秒であることが好ましい。この冷却工程S3では、例えば、酸化皮膜が形成された基板1に対して、シャワーや噴霧することで硝酸ジルコニウム水溶液を吹き付けることや、または、硝酸ジルコニウム水溶液中を通過させることにより、基板1の冷却を行なうようにしている。なお、用いる硝酸ジルコニウムの種類(製造元など)は本発明の目的にあわせて適宜選択すればよい。
(濃度:0.005〜5g/L)
冷却液として所定濃度の硝酸ジルコニウム水溶液を用いることで、ジルコニウム系皮膜3の付着量が所定範囲(二酸化ジルコニウム換算量:0.01〜25mg/m)となる。硝酸ジルコニウム水溶液の濃度が0.005g/L未満では、ジルコニウム系皮膜3の付着量が少なく(二酸化ジルコニウム換算量で0.01mg/m未満)、表面処理アルミニウム合金板10の脱脂性、化成処理性および接着性が確保できない。一方、濃度が5g/Lを超えると、ジルコニウム系皮膜3の付着量が多く(二酸化ジルコニウム換算量で25mg/mを超える)、脱脂性の向上効果が飽和し、生産コストが高くなる。硝酸ジルコニウム水溶液の濃度は、ジルコニウム系皮膜3の付着量をより十分なものとする観点から、好ましくは0.025g/L以上、より好ましくは0.05g/L以上である。また、ジルコニウム系皮膜3の付着量を抑えて生産性をより向上させる観点から、好ましくは0.5g/L以下、より好ましくは0.25g/L以下である。
(pH:0〜5)
pHがマイナスになる場合は強酸になるため、製造設備に悪影響を与える等の理由から、本発明で用いる硝酸ジルコニウム水溶液についてはそのようなケースは想定せず、冷却液としての硝酸ジルコニウム水溶液のpHは0以上とする。一方、pHが5を超えると、冷却液の安定性が低下し、冷却液中に沈殿が発生しやすくなる。冷却液中に沈殿が発生すると、表面処理アルミニウム合金板10の板表面に沈殿が異物として押し込まれ、外観不良となるため、好ましくない。冷却水としての硝酸ジルコニウム水溶液のpHは、ジルコニウム系皮膜3をより形成させやすくする観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上である。また、冷却液中の沈殿の発生より抑制しやすくする観点から、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
このように、本発明に係る製造方法では、冷却工程において、硝酸ジルコニウム水溶液を冷却液として使用し、加熱後の基板1、すなわち、表面に酸化皮膜2が形成された基板1を冷却すると共に表面処理を行う。これにより、酸洗浄等により表面の酸化皮膜2を除去する必要がないため、従来行われていた酸洗浄等を行う必要がなく、酸洗浄等のラインを省略することができる。さらに、冷却処理と表面処理とを同一工程で行うことができるため、製造コストをさらに削減することができる。
<ビニルホスホン酸系皮膜形成工程>
ビニルホスホン酸系皮膜形成工程S4は、ジルコニウム系皮膜3の表面にビニルホスホン酸を含有する水溶液を接触させて、ジルコニウム系皮膜3の表面にビニルホスホン酸系皮膜4を形成する工程である。
ビニルホスホン酸系皮膜形成工程S4では、pHが0.5〜3であり、50〜70℃のビニルホスホン酸水溶液に1〜90秒間浸漬し、余分な薬液を水洗した後、室温〜120℃で適宜乾燥させることが好ましい。
反応性と造膜性を考慮し、さらには上層のビニルホスホン酸系皮膜形成後に中層のジルコニウム系皮膜3を残すことを考慮し、ビニルホスホン酸水溶液のpHが0.5〜3になるように酸度を調整することが好ましい。pHが0.5以上であれば、先に形成したジルコニウム系皮膜3の溶解速度が遅くなり、ジルコニウム系皮膜3が完全に溶解または消失、あるいは膜厚が薄くなる可能性が低くなる。したがって、アルミニウム合金基材の溶出を抑制し、特性を向上させる効果を十分に発現させることが期待できる。一方、pHが3以下であれば、反応性が高くなり、ビニルホスホン酸系皮膜4の形成に多大な時間がかかることがない。したがって、ビニルホスホン酸系皮膜4の形成に用いるビニルホスホン酸水溶液のpHは、0.5〜3とすることが好ましい。ビニルホスホン酸水溶液のpHは、ジルコニウム系皮膜3の溶解をより抑制する観点から、より好ましくは1以上である。また、ビニルホスホン酸系皮膜4の形成にかかる時間をより短くする観点から、より好ましくは2以下である。
ビニルホスホン酸水溶液への浸漬時間については規定されるものではなく、ビニルホスホン酸水溶液のpHに基づいて適宜調整すればよい。一例としては、60℃のビニルホスホン酸水溶液に、1〜90秒間浸漬させる条件である。また、浸漬後の乾燥時間についても規定されるものではなく、一例としては、余分な薬液を水洗した後、室温〜120℃で行う条件である。
なお、ビニルホスホン酸水溶液による処理は、前記した浸漬のほか、例えば、ジルコニウム系皮膜3が形成された基板1に対して、シャワーや噴霧することでビニルホスホン酸水溶液を吹き付けることにより行ってもよい。なお、用いるビニルホスホン酸の種類(製造元など)は本発明の目的にあわせて適宜選択すればよい。
表面処理アルミニウム合金板10の製造方法は、以上説明したとおりであるが、表面処理アルミニウム合金板10の製造を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、前記ビニルホスホン酸系皮膜形成工程の後に予備時効処理を施す予備時効処理工程を設けてもよい。予備時効処理は、72時間以内に40〜120℃で8〜36時間の低温加熱することにより行うのが好ましい。この条件で予備時効処理することにより、成形性、および、ベーキング後の強度向上を図ることができる。
その他、例えば表面処理アルミニウム合金板10の板表面の異物を除去する異物除去工程や、各工程で発生した不良品を除去する不良品除去工程等を含めてもよい。
そして、製造された表面処理アルミニウム合金板10は、成形前にプレス油が塗布される。プレス油は、エステル成分を含有するものが主に使用される。
次に、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板10にプレス油を塗布する方法について説明する。
プレス油の塗布の方法としては、例えば、エステル成分としてオレイン酸エチルを含有するプレス油に、表面処理アルミニウム合金板10を浸漬させるだけでよい。エステル成分を含有するプレス油を塗布する方法や条件は、特に限定されるものではなく、通常のプレス油を塗布する方法や条件が広く適用できる。また、エステル成分もオレイン酸エチルに限定されるものではなく、ステアリン酸ブチルやソルビタンモノステアレート等、様々なものを利用することができる。
このように製造された表面処理アルミニウム合金板10では、所定膜厚の酸化皮膜2と、所定付着量のジルコニウムを含有するジルコニウム系皮膜3と、所定膜厚のビニルホスホン酸系皮膜4と、を備えるため、脱脂性、化成処理性および接着性が向上する。
次に、本発明の表面処理アルミニウム合金板について、本発明の要件を満たす実施例と、本発明の要件を満たさない比較例と、を対比させて具体的に説明する。
成分が6022規格(Si:0.8〜1.5質量%,Mg:0.45〜0.7質量%,Cu:0.01〜0.11質量%),6016規格(Si:1.0〜1.5質量%,Mg:0.25〜0.6質量%,Cu:0.2質量%),6111規格(Si:0.6〜1.1質量%,Mg:0.5〜1.0質量%,Cu:0.5〜0.9質量%)の市販品3種の6000系アルミニウム合金板を用いて、前記した製造方法により、サイズが70mm幅×150mm長さ×1mm厚さの基材を作製した(表1参照)。
次に、この基材を実体到達温度400〜580℃まで加熱し、加温せずに常温である、硝酸やアンモニア水を添加してpHを2〜4に調整した濃度0.05〜0.5g/Lの硝酸ジルコニウム水溶液に5〜20秒間浸漬した。次いで、60℃のビニルホスホン酸水溶液(pH=1.6)に、1〜90秒間浸漬し、余分な薬液を水洗した後、室温で乾燥させた。このようにして、両面に酸化皮膜、ジルコニウム系皮膜およびビニルホスホン酸系皮膜が形成された表面処理アルミニウム合金板を作製した。この表面処理アルミニウム合金板の両面に、市販自動車用洗浄プレス油(鉱物系、動粘度1〜7cSt)を0.1〜2g/m塗布して、供試材とした。ただし一部については、以下に述べるとおり、製造条件を適宜変更した。
なお、供試材(No.1〜16)の作製では、基板の加熱温度(実体到達温度)、硝酸ジルコニウム水溶液のpHおよび濃度、硝酸ジルコニウム水溶液の接触時間、ビニルホスホン酸水溶液の接触時間を、前記範囲内で適宜調整した。供試材(No.17)の作製では、硝酸ジルコニウム水溶液による冷却(表面処理)を施さず、水冷によって冷却し、ジルコニウム系皮膜およびビニルホスホン酸系皮膜を設けなかった。供試材(No.18、19)の作製では、加熱処理後に酸洗浄を行い、ジルコニウム系皮膜およびビニルホスホン酸系皮膜を設けなかった。供試材(No.20)の作製では、基板の加熱温度を590℃とした。供試材(No.21)の作製では、硝酸ジルコニウム水溶液の濃度を0.004g/Lとした。供試材(No.22)の作製では、ビニルホスホン酸水溶液のpHを4とした。
前記のようにして得られた供試材について、酸化皮膜の膜厚を高周波グロー放電発光分光分析(GD−OES(ホリバ・ジョバンイボン社製,型式JY−5000RF))によって測定した。また、ジルコニウム系皮膜の付着量(二酸化ジルコニウム換算量)を蛍光X線(島津製作所社製、型式XRF1800)によって測定した。また、ビニルホスホン酸系皮膜の膜厚を高周波グロー放電発光分光分析(GD−OES(ホリバ・ジョバンイボン社製,型式JY−5000RF))によって測定した。
なお、これらの具体的な測定方法については前述したとおりである。
その結果を表1に示す。なお、表1において、「−」は皮膜を有さないものである。また、本発明の規定を満たさないものは数値に下線を引いて示す。
次に、前記の供試材を用いて、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
<脱脂性(水濡れ面積率)>
各供試材を、15〜35℃で50〜90%RHの環境室内に6ヶ月放置した。そして、6ヶ月後に、市販自動車用の炭酸ソーダ系脱脂浴に40℃×2分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)し、30秒間水洗(流水)した後の供試材面積に対する水濡れ面積率(表裏の平均)を測定した(良好な程、高い数値となり、完全に水濡れする場合は100%となる)。これにより、化成処理時の水濡れ性、すなわち、脱脂性を評価することができる。各供試材は、それぞれ3枚とし、水濡れ面積率は、これらの平均値とした。なお、湿潤環境室内に保持する前の初期値は全て100%であった。水漏れ面積率が80%以上のものを、脱脂性が良好、80%未満のものを、脱脂性が不良とした。
<化成処理性(化成処理ムラ有無)>
各供試材を、炭酸ソーダ系脱脂浴に40℃×2分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)して、供試材表面を脱脂処理した。次に、室温の亜鉛系表面調整浴に1分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)した後、35℃リン酸亜鉛浴に2分間浸漬(スターラーによる攪拌あり)して、供試材表面を化成処理した。そして、化成処理後の供試材表面に発生する化成処理ムラを目視にて観察し、化成処理性を評価した。化成処理性の評価において、化成処理ムラの発生が無かったものを、表中「なし」と記して、化成処理性が良好とし、化成処理ムラが発生したものを、表中「あり」と記して、化成処理性が不良とした。
<接着性(凝集破壊率)>
構成が同じ2枚の供試材(25mm幅)の端部を、熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤(サンスター技研株式会社製、ペンギンセメント#1086)を介して、ラップ長13mm(接着面積:25mm×13mm=325mm)となるように重ね合わせた。なお、接着剤層の膜厚が150μmとなるように微量のガラスビーズ(粒径150μm)を接着剤に添加して調節した。重ね合わせてから30分、室温で乾燥させて、次いで、170℃で20分間加熱して接着剤を硬化させた。その後、さらに室温で24時間静置して、接着試験体とした。
得られた接着試験体を、50℃、95%RHの湿潤雰囲気中に30日間保持した後、引張試験機にて50mm/分の速度で引張り、下記の式(1)に基づいて、接着部分の接着剤層の凝集破壊率(非界面剥離率)を算出した。なお、凝集破壊率は、接着試験体3本の平均値とした。また、式(1)において、接着試験体の一方を試験片A、他方を試験片Bとする。凝集破壊率が80%以上のものを接着性が良好、80%未満のものを接着性が不良とした。
凝集破壊率(%)=100−{(試験片Aの界面剥離面積/試験片Aの接着面積)×100}+{(試験片Bの界面剥離面積/試験片Bの接着面積)×100}・・・(1)
Figure 0006278882
表1に示すように、供試材No.1〜16(実施例)は、本発明の構成を満たすため、脱脂性、化成処理性および接着性が良好であった。
一方、供試材No.17〜22(比較例)は、本発明の構成を満たさないため、以下の結果となった。
供試材No.17は、ジルコニウム系皮膜およびビニルホスホン酸系皮膜を設けていないため、脱脂性、化成処理性および接着性が不良であった。
供試材No.18は、酸洗浄を行い、前記特許文献等に記載された従来の表面処理アルミニウム合金板を想定したものであるが、ジルコニウム系皮膜およびビニルホスホン酸系皮膜がないため、脱脂性、化成処理性および接着性が不良であった。また、酸洗浄を行ったため、生産性も劣っていた。
供試材No.19は、より強力な洗浄である強酸洗浄を行ったものであるが、酸化皮膜の膜厚が下限値未満であるため、脱脂性、化成処理性および接着性は良好であった。しかしながら、強酸洗浄を行ったため、生産性に劣っていた。したがって、この表面処理アルミニウム合金板は、経済的ではなく、実用に適さないものであった。
供試材No.20は、ジルコニウム系皮膜の付着量およびビニルホスホン酸系皮膜の膜厚が本発明の範囲内であったが、酸化皮膜の膜厚が上限値を超えているため、脱脂性、化成処理性および接着性が不良であった。
供試材No.21は、酸化皮膜の膜厚およびビニルホスホン酸系皮膜の膜厚が本発明の範囲内であったが、ジルコニウム系皮膜の付着量が下限値未満のため、脱脂性、化成処理性および接着性が不良であった。
供試材No.22は、酸化皮膜の膜厚およびジルコニウム系皮膜の付着量が本発明の範囲内であったが、ビニルホスホン酸系皮膜の膜厚が下限値未満のため、接着性が不良であった。
以上、本発明に係る表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法について実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて改変・変更等することができることはいうまでもない。
1 基板
2 酸化皮膜
3 ジルコニウム系皮膜
4 ビニルホスホン酸系皮膜
10 表面処理アルミニウム合金板
S1 基板作製工程
S2 加熱工程
S3 冷却工程
S4 ビニルホスホン酸系皮膜形成工程

Claims (3)

  1. アルミニウム合金からなる基板と、前記基板の表面に形成された酸化皮膜と、前記酸化皮膜の表面に形成されたジルコニウムを含有するジルコニウム系皮膜と、前記ジルコニウム系皮膜の表面に形成されたビニルホスホン酸を含有するビニルホスホン酸系皮膜と、を備える表面処理アルミニウム合金板であって、
    前記酸化皮膜は、膜厚が1〜30nmであり、
    前記ジルコニウム系皮膜は、前記酸化皮膜に対する付着量が二酸化ジルコニウム換算量で0.01〜25mg/mであり、
    前記ビニルホスホン酸系皮膜は、膜厚が0.1〜10nmであることを特徴とする表面処理アルミニウム合金板。
  2. 圧延によってアルミニウム合金からなる基板を作製する基板作製工程と、
    前記基板を400〜580℃に加熱して前記基板の表面に酸化皮膜を形成する加熱工程と、
    前記酸化皮膜が形成された前記基板を冷却して、前記酸化皮膜の表面にジルコニウム系皮膜を形成する冷却工程と、
    前記ジルコニウム系皮膜の表面にビニルホスホン酸を含有する水溶液を接触させて、前記ジルコニウム系皮膜の表面にビニルホスホン酸系皮膜を形成するビニルホスホン酸系皮膜形成工程と、を含み、
    前記冷却工程において、濃度が0.005〜5g/Lであり、pHが0〜5の硝酸酸化ジルコニウム水溶液を冷却液として用いることを特徴とする表面処理アルミニウム合金板の製造方法。
  3. 前記基板が熱処理型アルミニウム合金からなり、前記加熱工程が前記基板に溶体化処理を施す溶体化処理工程であって、前記冷却工程が前記酸化皮膜が形成された前記基板に焼入処理を施す焼入工程であることを特徴とする請求項2に記載の表面処理アルミニウム合金板の製造方法。
JP2014235644A 2014-11-20 2014-11-20 表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法 Expired - Fee Related JP6278882B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014235644A JP6278882B2 (ja) 2014-11-20 2014-11-20 表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014235644A JP6278882B2 (ja) 2014-11-20 2014-11-20 表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016098397A JP2016098397A (ja) 2016-05-30
JP6278882B2 true JP6278882B2 (ja) 2018-02-14

Family

ID=56077170

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014235644A Expired - Fee Related JP6278882B2 (ja) 2014-11-20 2014-11-20 表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6278882B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA3129947C (en) * 2019-03-01 2023-04-11 Howmet Aerospace Inc. Metallic substrate treatment methods and articles comprising a phosphonate functionalized layer

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5374320B2 (ja) * 2009-11-04 2013-12-25 株式会社神戸製鋼所 接着耐久性に優れた表面処理アルミニウム合金材およびそのアルミニウム合金材の表面処理方法
JP5745788B2 (ja) * 2010-06-29 2015-07-08 株式会社神戸製鋼所 表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法
JP5745791B2 (ja) * 2010-07-30 2015-07-08 株式会社神戸製鋼所 表面処理アルミニウム合金板
JP5734008B2 (ja) * 2010-10-18 2015-06-10 株式会社神戸製鋼所 アルミニウム合金板、これを用いた接合体および自動車用部材
JP2014173123A (ja) * 2013-03-08 2014-09-22 Kobe Steel Ltd 表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016098397A (ja) 2016-05-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5968637B2 (ja) 表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法
JP6143431B2 (ja) アルミニウム合金板、これを用いた接合体および自動車用部材
JP5745788B2 (ja) 表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法
JP5745791B2 (ja) 表面処理アルミニウム合金板
JP6457193B2 (ja) 接着耐久性に優れたアルミニウム合金材および接合体、または自動車部材
JP2015157967A (ja) アルミニウム合金板、接合体及び自動車用部材
KR101516472B1 (ko) 알루미늄 합금판, 및 이것을 사용한 접합체 및 자동차용 부재
KR101469324B1 (ko) 자동차용 알루미늄 합금판, 및 이것을 이용한 접합체 및 자동차용 부재
JP2017203209A (ja) アルミニウム合金材の製造方法、アルミニウム合金材、及び接合体
JP5969087B2 (ja) 表面処理アルミニウム合金板
JP2014173123A (ja) 表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法
JP5968956B2 (ja) アルミニウム合金板、これを用いた接合体および自動車用部材
JP6278882B2 (ja) 表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法
JP2010222659A (ja) アルミニウム合金材およびその製造方法
JP2017155289A (ja) 表面処理アルミニウム合金板の製造方法
JP5276263B2 (ja) 表面安定性に優れた自動車用アルミニウム合金材
JP5661602B2 (ja) 自動車用アルミニウム合金板、これを用いた接合体および自動車用部材
JP5192986B2 (ja) 表面安定性に優れたアルミニウム合金材
JP6290042B2 (ja) 接着耐久性に優れたアルミニウム合金材および接合体、または自動車部材
JP5969086B2 (ja) 表面処理アルミニウム合金板およびその製造方法
US20050205167A1 (en) Method for surface treatment of sheets and strips of aluminium alloy
JP5374320B2 (ja) 接着耐久性に優れた表面処理アルミニウム合金材およびそのアルミニウム合金材の表面処理方法
JP6721406B2 (ja) アルミニウム合金材、接着樹脂層付きアルミニウム合金材、アルミニウム合金材の製造方法、及び接着樹脂層付きアルミニウム合金材の製造方法
JP2017203212A (ja) アルミニウム合金材、接着樹脂層付きアルミニウム合金材、アルミニウム合金材の製造方法、及び接着樹脂層付きアルミニウム合金材の製造方法
JP2011202264A (ja) 表面処理アルミニウム合金材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160901

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170417

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170425

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20171031

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171128

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180109

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180116

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6278882

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees