以下、図面を用いながら、開示の無線通信方法、無線通信システム、基地局、および無線局の実施形態について説明する。尚、便宜上別個の実施形態として説明するが、各実施形態を組み合わせることで、組合せの効果を得て、更に、有用性を高めることもできることはいうまでもない。
[問題の所在]
まず、各実施形態を説明する前に、従来技術における問題の所在を説明する。この問題は、発明者が従来技術を仔細に検討した結果として新たに見出したものであり、従来は知られていなかったものであることに注意されたい。
上述したように、従来のLTEシステムにおいて無線端末20が複数のセルとの2元接続を実現するために望ましい端末管理は知られていない。以下ではこの点について、従来のLTEシステムにおいて既に規定されている技術を利用することで2元接続を実現するために望ましい端末管理が可能であるか検討する。
その検討の準備として、以下では例として、従来のLTEシステムにおける基地局10から無線端末20への下り制御情報の送受信処理を説明する。なお、LTEシステムにおいては、一般に無線端末20をUE(User Equipment)、基地局10(無線基地局10)をeNB(evolved Node B)と称する。また、本願における無線端末20は、無線局と一般化できることに留意されたい。無線局は、基地局10と無線通信を行うことができる無線通信装置を含むことができる。
基地局10は、所定の場合に下り制御情報であるDCI(Downlink Control Information)を端末に対して送信する。例えば、基地局10は下りデータを送信する場合、当該下りデータにDCIを付随させて送信する。このとき、DCIには無線端末20が下りデータを受信するための種々の制御情報が含まれている。また、例えば、基地局10は端末に上りデータを送信させる場合にも、DCIを送信する。この場合のDCIはUL Grantと呼ばれ、無線端末20が上りデータを送信するための種々の制御情報が含まれている。また、例えば端末における送信電力を制御するためにDCIが用いられる場合もある。このように、DCIは、基地局10と端末との間でデータ通信等の無線通信を行う上で不可欠な制御情報であるといえる。
なお、DCIは従来は下り制御チャネル(PDCCH: Physical Downlink Control CHannel)を介して送受信されるものであったが、3GPPのrelease 11において導入されたEPDCCH(Enhanced Physical Downlink Control CHannel)を介して送受信することもできる。一方、下りデータは下り共有チャネル(PDSCH: Physical Downlink Shared CHannel)を介して、上りデータは上り共有チャネル(PUSCH: Physical Uplink Shared CHannel)を介して、上り制御情報は上り制御チャネル(PUCCH: Physical Uplink Control CHannel)を介してそれぞれ送受信される。
DCIには16ビットのCRCが付加されており、これにより無線端末20がDCIの受信正否を判定できるようになっている。ここで、DCIに付加されるCRCは、データ通信における無線端末20の識別子であるC-RNTI(Cell Radio Network Temporary Identifier)でマスキングされたものが用いられる。
LTEシステムにおいては、RNTI(Radio Network Temporary Identifier)と呼ばれる論理的かつ一時的な端末識別子が用いられており、RNTIのうちでデータ通信における無線端末20の識別子に相当するのがC-RNTIである。C-RNTIは16ビットの識別子であり(ただし、16ビットの空間の一部はC-RNTIとして使用できない)、無線端末20は、基地局10(セル)と上りの同期を取るためのランダムアクセス手続において、基地局10からC-RNTIの割当を受ける。各基地局10は独立に、配下の各無線端末20に対して一意に(配下の各無線端末20間で重複しないように)C-RNTIを割当てる。無線端末20が移動して別の基地局10の配下となった場合には、無線端末20は移動先の基地局10から新たなC-RNTIの割当てを受ける。
図2に基づいて、LTEシステムにおける基地局10によるDCIの送信処理の概要を説明する。なお、図2はLTEシステムにおけるDCIの送信処理の概要を示すものであり、説明の簡単のために手順の一部を省略していることに留意されたい。
まずS101で基地局10はDCIを生成する。前述したように、例えば基地局10において無線端末20に送信する下りデータが発生した場合に、当該下りデータに付随するDCIが生成される。ただし、S101において生成されるDCIはこれに限られるものではなく、任意のDCIでかまわない。
次にS102で基地局10は、前述したように、DCIに16ビットのCRCを付加する。このCRCは、前述したようにDCIの宛先である無線端末20のC-RNTIでマスキングされる。本願では便宜上、このマスキング後のCRCをマスクドCRCと呼ぶことにする。CRCをC-RNTIに基づいてマスキングするのは、端末間による誤受信を防ぐためである。
次にS103で基地局10は、DCIとマスクドCRCに対し、スクランブリングを行う。このスクランブリングは、基地局10の識別子(セルID)であるPCI(Physical Cell Identifier)に基づいて行われる。より具体的には、基地局10は、基地局10自身のPCIに基づいてスクランブリング系列(ゴールドコードと呼ばれる擬似ランダム系列)を生成し、当該スクランブリング系列に基づいてDCIとマスクドCRCをスクランブリングする。なお、PCIはオペレータによって504種類の値から予め各基地局10に対して繰り返し割当てられるが、例えばマクロ基地局10aとスモール基地局10bのような近接する基地局10には異なる値が割当てられる。DCIとマスクドDCIとをPCIに基づいてスクランブリングするのは、これらが基地局10間で干渉することを防ぐためである。
そしてS104で基地局10は、S103でそれぞれスクランブルしたDCIとマスクドCRCとを、宛先の無線端末20に対して送信する。前述したように、DCIはPDCCHとEPDCCHとのいずれかを介して送受信される。例えばPDCCHを介する場合、スクランブルされたDCIとマスクドCRCとは、下りサブフレームの先頭部分に設けられた制御信号領域にマッピングされて送信される。
図3に基づいて、LTEシステムにおける無線端末20によるDCIの受信処理の概要を説明する。なお、図3はLTEシステムにおけるDCIの受信処理の概要を示すものであり、説明の簡単のために手順の一部を省略していることに留意されたい。
まず、図3の前提を説明する。無線端末20は、自分宛てのDCIがいつ(すなわち、どの下りサブフレームで)送信されるかを認識していない。そのため無線端末20は、全ての下りサブフレームの制御信号領域をモニタリングし、そこにマッピングされた全てのDCI(より正確にはDCIの候補)を復号する必要がある。DCIの復号はこのように盲目的に行われるため、一般にブラインドデコーディング(blind decoding)と呼ばれる。
図3のS201で無線端末20は、基地局10から受信した下りサブフレームの制御信号領域において、マスクドCRCが付加されたDCI(DCIの候補)を1つ選ぶ。本願においては便宜上、無線端末20が基地局10から受信したDCIとマスクドCRCを、受信DCIと受信マスクドCRCと称する。
次にS202で無線端末20は、S201で選択した受信DCIと受信マスクドCRCに対し、デスクランブリングを行う(すなわち、スクランブリングを解く)。具体的には、無線端末20は、受信DCIと受信マスクドCRCに対し、基地局10の識別子(セルID)であるPCIに基づいてデスクランブリングを行う。このデスクランブリングは図2のS103において基地局10により行われたスクランブリングの逆変換に相当しているため、これにより受信DCIと受信マスクドCRCに掛けられたスクランブリングを解くことができる。なお、ここでのデスクランブリングを行うためには無線端末20は基地局10のPCIを認識している必要があるが、無線端末20は基地局10の同期信号であるPSS(Primary Synchronization Signal)およびSSS(Secondary Synchronization Signal)によって予めPCIを認識することができる。
そしてS203で無線端末20は、S202でデスクランブリングした受信DCIと受信マスクドDCIとに基づいてCRCチェックを行う。より具体的には、S203で無線端末20は、S202でデスクランブルした受信DCIに基づいてCRC(便宜上、第1CRCと称する)を生成する。また、S202でデスクランブルした受信マスクドCRCを自己のC-RNTIでデマスキング(マスキングを解く)し、マスキングを解かれたCRC(便宜上、第2CRCと称する)を得る。そして、無線端末20は第1CRCと第2CRCとを比較する。これらが一致した場合にはDCIは受信成功となり、無線端末20は当該DCIを自分宛であると判断する。一方、一致しない場合にはDCIは受信失敗となり、第1端末は当該DCIを自分宛ではないと判断する。
S204で無線端末20は、下りサブフレームの制御信号領域において未復号のDCI(の候補)が残っているかを判定する。未復号のDCIが残っている場合には、S201に戻る。未復号のDCIが残っていない場合には、DCIの受信処理を終了する。
以上が、従来のLTEシステムにおける基地局10から無線端末20への下り制御情報の送受信処理となる。以下では話を元に戻し、以上の説明を踏まえて、LTEシステムにおいて2元接続を実現するために望ましい無線端末20の管理について説明する。
まず議論の前提を述べる。前述したように、無線端末20の中には2元接続できるものが存在する。ここで、2元接続している無線端末20であっても、無線端末20に割当てられるC-RNTIは一つ(あるいは「一意」ともいえる)であるものとする。つまり、無線端末20は2元接続のそれぞれにおいて、同一のC-RNTIに基づいて自分宛ての下りデータを受信するものとする。本願においては便宜上、2元接続が不可能な無線端末20を第1無線端末20aと称し、2元接続が可能な無線端末20を第2無線端末20bと称することとする。
いま、2元接続可能な無線端末20である第2無線端末20bがマクロ基地局10a(マクロセル)に接続しており、第2無線端末20bはマクロ基地局10aと上りデータおよび下りデータの送受信が可能な状態(LTEシステムではRRC-Connected状態と呼ばれる)であるものとする。また、このとき第2無線端末20bは、マクロ基地局10aからC-RNTIとして#N1を割当てられているものとする。
次に第2無線端末20bはマクロ基地局10aの接続を維持しながら、スモール基地局10b(スモールセル)と接続したものとする。すなわち、第2無線端末20bはマクロ基地局10aとスモール基地局10bとに対し2元接続することになったものとする。例えば、第2無線端末20bはスモール基地局10bからの受信品質をマクロ基地局10aに報告し、マクロ基地局10aは当該受信品質に基づいて第2無線端末20bを2元接続させる旨の決定を行い、当該決定を無線端末20に通知する。その後第2無線端末20bはスモール基地局10bと所定の手続きを行い、マクロ基地局10aとの接続を維持しつつ、スモール基地局10bに接続する。
このとき、マクロ基地局10aは、既に第2無線端末20bに対して割当てているC-RNTIである#N1をスモール基地局10bに通知する。前述したように、ここでの議論においては、2元接続を行う無線端末20であっても、割当てられるC-RNTIは一つであることに注意されたい。スモール基地局10bは、第2無線端末20bのC-RNTIをマクロ基地局10aから教えてもらうことにより、第2無線端末20bに対してDCIを送信することができるようになる。その結果、スモール基地局10bは、第2無線端末20bとの間でデータ通信を行うことができるようになる。
以上の手順により、第2無線端末20bにおける2元接続が実現され、第2無線端末20bはマクロ基地局10aとスモール基地局10bとのそれぞれからDCIを受信することが可能となる。その結果、第2無線端末20bはマクロ基地局10aとスモール基地局10bとのそれぞれとの間で並行的にデータ通信を行うことが可能となる。
しかしながら、上記の手順は、スモール基地局10bに接続している無線端末20が第2無線端末20bのみであれば良いのだが、スモール基地局10bに他の無線端末20も接続している場合に、次のような問題が生じる余地がある。
なお、以下ではマクロ基地局10aのPCI(セルID)とスモール基地局10bのPCIとがそれぞれ#M1、#M2であるものとする。
いま、第2無線端末20bがスモール基地局10bに接続したときに、スモール基地局10bには第2無線端末20bが既に接続していたものとする。ここで、第2無線端末20bは第2無線端末20bとは別の無線端末20であり、一例として2元接続不可能な無線端末20であるとする(このような無線端末20をレガシーな無線端末20と称してもよい)。このとき、スモール基地局10bは第2無線端末20bに対し、既にC-RNTIとして#N1を割り当ててしまっている可能性があり得る。これにより、マクロ基地局10aおよびスモール基地局10bに対して2元接続を行う第2無線端末20bと、スモール基地局10bに対して接続する第2無線端末20bとの間で、C-RNTIが重複してしまう自体が発生しうる。
このような状況において、例えば、スモール基地局10bが第2無線端末20b宛てにDCIを送信する場合を考える。その場合、DCIは図2の処理フローに沿って、第2無線端末20bのC-RNTIである#N1でマスキングされたCRCが付加された上で、スモール基地局10bのPCIである#M2でスクランブリングされて送信される。
このとき、第1無線端末20aは図3の処理フローに沿って、受信DCIと受信マスクドCRCとを#M2でデスクランブリングした後に、デスクランブリング後の受信マスクドCRCをさらに#N1でデマスキングした上でCRCチェックを行う。ここで、スモール基地局10bによるDCIに対する変換処理(マスキングおよびスクランブリング)と第1無線端末20aによる受信DCIに対する変換処理(デスクランブリング及びデマスキング)は逆変換の関係にあるため、第1無線端末20aは、スモール基地局10bが変換処理を行う前のDCIとCRCとに基づいてCRCチェックを行うことになる。したがって、この場合には、無線上で許容外の無線誤りが発生しない限り、CRCチェックは成功(受信成功)となり、第1無線端末20aは自分宛てのDCIを適切に受信することができる。
一方、第1の場合における第2無線端末20bによるDCIの受信処理を検討する。このとき第2無線端末20bもやはり図3の処理フローに沿って、受信DCIと受信マスクドCRCを#M2でデスクランブリングした後に、デスクランブリング後の受信マスクドCRCをさらに#N1でデマスキングした上でCRCチェックを行う。ここで、上述したように、第2無線端末20bのC-RNTIと第1無線端末20aのC-RNTIとが重複しており、いずれも#N1であることに留意されたい。このとき、スモール基地局10bによるDCIに対する変換処理と第2無線端末20bによる受信DCIに対する変換処理も逆変換の関係となるため、第2無線端末20bは、スモール基地局10bが変換処理を行う前のDCIとCRCとに基づいてCRCチェックを行うことになる。したがって、この場合に、CRCチェックは成功(受信成功)となり、第2無線端末20bは第1無線端末20a宛てのDCIを不適切に受信してしまう(すなわち誤受信が発生してしまう)。
以上から、C-RNTIが重複することにより、第1無線端末20a宛てのDCIが第1無線端末20aと第2無線端末20bとで重複して受信されてしまう。このとき、第2無線端末20bは他無線端末20宛てのDCIを誤受信してしまうことになる。このような場合、第2無線端末20bはDCIの誤受信に基づいて、当該DCIに付随する下りデータの受信や上りデータの送信等を誤って行うことになるため、誤受信や誤送信等の誤動作が発生することになる。したがって、このようなDCIの重複受信は、無線通信システムとって極めて好ましくない問題であると考えられる。
なお、上記では一例としてスモール基地局10bが第2無線端末20b宛てにDCIを送信する場合に第2無線端末20bにおいて発生する誤受信について説明したが、スモール基地局10bが第2無線端末20b宛てにDCIを送信する場合にも第2無線端末20bにおいて同様の誤受信が発生しうる。これに対し、マクロ基地局10aが第2無線端末20b宛てにDCIを送信する場合には、第2無線端末20bにおいて同様の誤受信は発生しない。第2無線端末20bのC-RNTIは#N1であるが、第2無線端末20bはマクロ基地局10aに接続していない。そのため第1無線端末20aはマクロ基地局10aのPCI(セルID)である#M1でスクランブリングされたDCIを受信するための処理(#M1に基づくデスクランブリング)は行わないためである。
なお、上記の説明においては、C-RNTIの重複に基づく重複受信の問題を説明したが、これに限られないことに留意されたい。LTEシステムにおける端末識別子であるRNTIとしては、C-RNTI以外の種類もあり、これらのうち基地局10間で重複なく割当てられるべきものはがいくつかある。基地局10間で重複なく割当てられるべきRNTIとしては、C-RNTIに加え、Semi-Persistent Scheduling C-RNTI、Temporary C-RNTI、TPC-PUCCH-RNTI、TPC-PUSCH-RNTIが挙げられる。
さらに、上記の説明においてはLTEシステムにおけるマクロ基地局10a(マクロセル)とスモール基地局10b(スモールセル)との2元接続に基づいて行ってきたが、本願発明の適用範囲はこれに限られず、一般的な基地局10(セル)に拡張できることに留意すされたい。例えば、マスターセルとスレーブセル、アンカーセルとアシスティングセル、プライマリセルとセカンダリセル等においても、本願発明は当然に適用可能である。さらに、本願において、それぞれのセル(基地局10)の呼び方についてはこれらに限ったものではないことに留意する。一般的に、従来のLTE通信システムのように制御プレーンとデータプレーンの両方が接続され通信を行う基地局10が主たる基地局10であって、追加的にデータプレーンを接続して通信を行う基地局10が従たる基地局10であれば、この意図を逸脱しない範囲で、様々な呼称を用いることができる。例えば、最新の標準化動向では、2元接続とキャリアアグリゲーションの組み合わせが可能であり、主たる通信リソースを提供するセル群を「マスターセルグループ(MCG)」、追加的な通信リソースを提供するセル群を「セカンダリーセルグループ(SCG)」と呼称している。
加えて、上記はLTEシステムを例に挙げて説明したが、上記の問題はLTEシステムに限定されるわけではないことに注意されたい。すなわち、上記の問題は、条件さえ揃えば、任意の無線通信システムにおいて発生しうるものである。
以上をまとめると、一例としてLTEシステムにおいては、各基地局10は、配下の各無線端末20に対して端末識別子であるC-RNTIを一意に(配下の各無線端末20間で重複しないように)割当て、無線端末20は自らに割当てられたC-RNTIに基づいて、基地局10から自分宛てのDCIの受信を行う。ここで、従来のように各無線端末20が1つの基地局10のみからDCIを受信する前提においては、基地局10内におけるC-RNTIの一意性によって、DCIが宛先無線端末20のみにより受信されることが担保されていた。しかしながら、複数の基地局10からDCIを受信する無線端末20が存在する場合に、基地局10内におけるC-RNTIの一意性によっても、DCIが宛先無線端末20のみにより受信されることが担保されなくなる場合が生じうる。DCIが宛先無線端末20と異なる他無線端末20により受信されると、当該他無線端末20はDCIに付随する下りデータの受信や上りデータの送信を行うことになり、誤受信や誤送信が発生するため好ましくないと考えられる。前述したようにこの問題は、発明者が従来技術を仔細に検討した結果として新たに見出したものであり、従来は知られていなかったものである。以降では、この2元接続に伴う誤受信の問題を解決するための本願の各実施形態を順に説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態は、基地局10(例えばスモール基地局10b)は、該基地局10および他基地局10(例えばマクロ基地局10a)と並行的に通信を行えない第1無線局(例えば2元接続不可能な第1無線端末20a)が宛先である場合、送信する第1情報(例えばDCI)に対して第1変換処理(例えばスモール基地局10bのセルIDに基づくスクランブリング)を行い、前記基地局10は、該基地局10および前記他基地局10と並行的に通信を行える第2無線局(例えば2元接続可能な第2無線端末20b)が宛先である場合、送信する第2情報(例えばDCI)に対して前記第1変換処理とは異なる第2変換処理(例えばマクロ基地局10aのセルIDに基づくスクランブリングとスモール基地局10bのセルIDに基づくスクランブリングから成る2重スクランブリング)を行うものである。
また、第1実施形態は、送信する情報(例えばDCI)に第1変換処理(例えばスモール基地局10bのセルIDに基づくスクランブリング)を行う第1基地局10(例えばスモール基地局10b)と、送信する情報に該第1変換処理または該第1変換処理とは異なる第2変換処理(例えばマクロ基地局10aのセルIDに基づくスクランブリングとスモ−ル基地局10のセルIDに基づくスクランブリングから成る2重スクランブリング)を行う第2基地局10(例えばマクロ基地局10a)と並行的に通信を行い、前記第1基地局10から受信した情報に対して前記第1変換処理に対応する第1復号処理(例えばスモール基地局10bのセルIDに基づくデスクランブリング)を行うとともに、前記第2基地局10から受信した情報に対して前記第2変換処理に対応する第2復号処理(例えばスモール基地局10bのセルIDに基づくデスクランブリングとマクロ基地局10aのセルIDに基づくデスクランブリングから成る2重デスクランブリング)を行う無線通信方法であって、前記第2基地局10は、宛先無線局が前記第1基地局10と該第2基地局10と並行的に通信を行えない場合(例えば2元接続不可能な端末である場合)、送信する情報に対して前記第1変換処理を行うとともに、宛先無線局が該第1基地局10および該第2基地局10と並行的に通信を行える場合(例えば2元接続可能な端末である場合)、送信する情報に対して前記第2変換処理を行うものである。
ここで、上記の第1無線局(2元接続可能な第1無線端末20a)宛の第1情報に対する第1変換処理及び第2無線局(2元接続不可能な第2無線端末20b)宛の第2情報に対する第2変換処理としては、受信側において第1情報や第2情報の重複受信(混信)を回避できるような、あらゆる異なる変換処理を含むことができることに留意する。ただし、上述した問題の所在に鑑みると、仮に第1無線局と第2無線局の識別子が重複した場合においても、第1情報や第2情報の重複受信を回避できるような第1変換処理や第2変換処理を採用するのが望ましい。なお、上記においては、第1の変換処理として、スモール基地局10bのセルIDに基づくスクランブリングを挙げており、第2の変換処理として、マクロ基地局10aのセルIDに基づくスクランブリングとスモ−ル基地局10のセルIDに基づくスクランブリングから成る2重スクランブリングを挙げているが、これらは一例に過ぎないことは言うまでもない。
この第1実施形態によれば、上述した2元接続に伴う重複受信の問題を回避することができる。このことを、前述した問題の所在において述べた具体例に沿って説明する。
例えば、スモール基地局10bが2元接続不可能な第1無線端末20aに対してDCIを送信する場合を考える。このとき、第1実施形態に係るDCIの送信処理によれば、スモール基地局10bはDCIに対して第1変換処理(例えばスモール基地局10bのセルIDに基づくスクランブリング)を行う。これに対し、第1実施形態に係るDCIの受信処理によれば、2元接続可能な第2無線端末20bはDCIに対し、第1変換処理とは異なる第2変換処理に対応する第2復号処理を行う。このとき、送信側の変換処理と受信側の復号処理は対応しないため、復号処理は失敗すると考えられる。したがって、2元接続不可能な第1無線端末20a宛てのDCIに対する2元接続可能な第2無線端末20bによる誤受信が回避される。
一方、スモール基地局10bが2元接続可能な第2無線端末20bに対してDCIを送信する場合を考える。このとき、第1実施形態に係るDCIの送信処理によれば、スモール基地局10bはDCIに対して第2変換処理(例えばマクロ基地局10aのセルIDに基づくスクランブリングとスモール基地局10bのセルIDに基づくスクランブリングから成る2重スクランブリング)を行う。これに対し、2元接続不可能な第1無線端末20aはDCIに対し、第1変換処理に対応する第1復号処理を行う。このときも送信側の変換処理と受信側の復号処理は対応しないため、復号処理は失敗すると考えられる。したがって、2元接続可能な第2無線端末20b宛てのDCIに対する2元接続不可能な第1無線端末20aによる誤受信も回避される。
ところで、上記の第1実施形態および以降の各実施形態においては、主としてLTEシステムにおける下りデータを送受信する場合を例に説明しているが、LTEシステムにおける上りデータを送受信する場合にも同様に適用が可能であることに留意されたい。
また、上記の第1実施形態および以降の各実施形態においては、主としてLTEシステムにおけるマクロ基地局10a(マクロセル)とスモール基地局10b(スモールセル)との2元接続に基づいて説明を行っているが、本願発明の適用範囲はこれに限られず、一般的な無線基地局10(セル)に拡張できることに留意する。例えば、マスターセルとスレーブセル、アンカーセルとアシスティングセル、プライマリセルとセカンダリセル等においても、本願発明は当然に適用可能である。さらに、本願において、それぞれのセル(無線基地局10)の呼び方についてはこれらに限ったものではないことに留意する。一般的に、従来のLTE通信システムのように制御プレーンとデータプレーンの両方が接続され通信を行う無線基地局10が主たる無線基地局10であって、追加的にデータプレーンを接続して通信を行う無線基地局10が従たる無線基地局10であれば、この意図を逸脱しない範囲で、様々な呼称を用いることができる。
さらに、上記の第1実施形態および以降の各実施形態においては、主としてLTEシステムに基づいて説明しているが、本願発明はLTEシステムに限定されるわけではないことに注意されたい。すなわち、本願発明は、条件さえ揃えば、任意の無線通信システムにおいて適用可能なものである。
以上で説明した第1実施形態によれば、上述したように、問題の所在において説明したDCIの重複受信の問題を解決することができる。したがって、第1実施形態によれば、2元接続を実現する場合に望ましい端末管理を行うことが可能となる。
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態をLTEシステムに具体的に適用した実施形態の一つである。
第2実施形態の前提を説明する。第2実施形態においても、前記の「問題の所在」において説明した無線通信システム(すなわち従来のLTEシステム)に準じた無線通信システムを前提とする。具体的には、第2実施形態に係る無線通信システムは、マクロ基地局10a、スモール基地局10b、2元接続不可能な無線端末20である第1無線端末20a、および2元接続可能な無線端末20である第2無線端末20bを備える。
第2実施形態においても、問題の所在において説明した無線通信システム(従来のLTEシステム)と同様に、第2無線端末20bに対するC-RNTIの割当はマクロ基地局10aが行い、第1無線端末20aに対するC-RNTIの割当はスモール基地局10bが行う。そのため、第2無線端末20bのC-RNTIと第1無線端末20aのC-RNTIとが重複しうることが前提となる。しかしながら、第2実施形態に係る無線通信システムにおいては、問題の所在において説明した無線通信システムとは異なり、重複受信の問題は発生しない。この点については追って説明する。
以下では、第2実施形態に係るスモール基地局10bによるDCIの送信処理、マクロ基地局10aによりDCIの送信処理、2元接続不可能な端末(第1無線端末20a)によるDCIの受信処理、および2元接続可能な端末(第2無線端末20b)によるDCIの受信処理を順に説明する。
まず、図4に第2実施形態に係るスモール基地局10bによるDCIの送信処理の処理フローの一例を示す。
図4のS301〜S302は、図2のS101〜S102と同様に行えばよいため、説明は割愛する。次にS303でスモール基地局10bは、DCIの宛先である無線端末20が2元接続可能なものであるか否かを判定する。DCIの宛先が2元接続可能な端末(第2無線端末20b)である場合、S304に進む。一方、DCIの宛先が2元接続不可能な端末(第1無線端末20a)である場合、S305に進む。
そしてS304でスモール基地局10bは、2元接続可能な端末(第2無線端末20b)宛てのDCIおよびマスクドCRCに対し、2重のスクランブリングを行う。この点は、前述した参考技術に係る無線通信システムとは異なる。参考技術のスモール基地局10bにおいては1度のスクランブリングしか行っていないことに留意されたい。
S304における2重のスクランブリングは、例えば次のようにして行う。まず、スモール基地局10bは、DCIとマスクドCRCに対し、マクロ基地局10aのPCI(セルID)に基づいて1度目のスクランブリングを行う。さらに、スモール基地局10bは、それぞれが1度スクランブルされたDCIとマスクドCRCとに対し、スモール基地局10bのPCIに基づいて2度目のスクランブリングを行う(1度目とはスクランブルに用いるPCIが異なることに留意されたい)。これにより、DCIおよびマスクドCRCに対して2重のスクランブリングが行われることになる。
なお、S304で行われる2度のスクランブルの方式としては、前述した参考技術と同様に、従来のLTEシステムで採用されているものを流用することができる。また、1度目のスクランブルを行うためにはスモール基地局10bはマクロ基地局10aのPCIを認識している必要があるが、これは任意の方法で行って構わない。
一方、S305でスモール基地局10bは、2元接続不可能な端末(第1無線端末20a)宛てのDCIとマスクドCRCに対し、1度だけスクランブリングを行う。図4のS305は、図2のS103と同様に行えばよいため、説明は割愛する。
このようにして、S304においてスモール基地局10bは、2元接続可能な端末(第2無線端末20b)に対しては、それぞれが2重にスクランブルされたDCIとマスクドCRCとを生成する。一方、S305においてスモール基地局10bは、2元接続不可能な端末(第1無線端末20a)に対しては、それぞれが1度だけスクランブルされたDCIとマスクドCRCとを生成する。
最後にS306またはS307でスモール基地局10bは、S304またはS305で生成した情報を無線端末20に送信する。すなわち、S306でスモール基地局10bは、S304でそれぞれを2重にスクランブルしたDCIとマスクドCRCとを、2元接続可能な端末(第2無線端末20b)に対して送信する。あるいは、S307でスモール基地局10bは、S305でそれぞれを1度だけスクランブリングしたDCIとマスクドCRCとを、2元接続不可能な端末(第1無線端末20a)に対して送信する。
次に、第2実施形態に係るマクロ基地局10aによるDCIの送信処理を説明する。第2実施形態に係るマクロ基地局10aによるDCIの送信処理は、例えば、上述したLTEシステムに係るDCIの送信処理(図2)と同様に行うことができる(なお、後で変形例として説明するが、この他の方法も考えられる)。そのため、ここでは詳細な説明は割愛する。ちなみに、上述したように、マクロ基地局10aから送信されるDCIに基づいては重複受信の問題はそもそも発生しないため、マクロ基地局10aによるDCIの送信処理は従来と同様でも問題は無いことに留意されたい。
次に、第2実施形態に係る2元接続不可能な無線端末20(第1無線端末20a)によるDCIの受信処理について説明する。第2実施形態に係る第1無線端末20aによるDCIの受信処理は、上述したLTEシステムに係るDCIの受信処理(図3)と同様に行えばよい。そのため、ここでは詳細な説明は割愛する。ちなみに、第1無線端末20aは、前述したようにいわゆるレガシーな無線端末20に相当するため、上述したLTEシステムに係るDCIの受信処理(図3)以外の受信処理を行うのは困難であることに留意されたい。
次に、図5に第2実施形態に係る2元接続可能な無線端末20(第2無線端末20b)によるDCIの受信処理の処理フローの一例を示す。この処理フローは、DCI(正確にはDCIの候補)それぞれに対して行われるブラインド復号(前述)に対応するものである。
まずS401で第2無線端末20bは、基地局10から受信した下りサブフレームの制御信号領域においてマスクドCRCが付加されたDCI(正確にはDCIの候補)を1つ選ぶ。上述したように、本願においては、無線端末20が基地局10から受信したDCIとマスクドCRCを、受信DCIと受信マスクドCRCと称する。ここで、受信DCIは、1度だけスクランブルされたDCIか、2重にスクランブルされたDCIかのいずれかに対応するものである。受信マスクドCRCは、1度だけスクランブルされたマスクドCRCか、2重にスクランブルされたマスクドCRCかのいずれかに対応するものである。
次にS402で第2無線端末20bは、受信DCIおよび受信CRCの送信元である基地局10がスモール基地局10bであるかマクロ基地局10aであるかを判定する。受信DCIおよび受信CRCの送信元がスモール基地局10bである場合、S403に進む。一方、受信DCIおよび受信CRCの送信元がマクロ基地局10aである場合、S404に進む。
次に、S403で第2無線端末20bは、受信DCIおよび受信マスクドCRCを2重にデスクランブリングする。具体的には、まず第2無線端末20bは、受信DCIと受信マスクドCRCに対し、スモール基地局10bのPCIに基づいて1度目のデスクランブリングを行う。さらに、第2無線端末20bは、それぞれが1度デスクランブルされた受信DCIと受信マスクドCRCに対し、マクロ基地局10aのPCIに基づいて2度目のデスクランブリングを行う(1度目とはデスクランブルに用いるPCIが異なることに留意されたい)。これにより受信DCIと受信マスクドCRCとのそれぞれが2重にデスクランブリングされる。ここで行うデスクランブルの方式も、前述した参考技術と同様に、従来のLTEシステムで採用されているものを流用することができる。
なお、図4のS304における2重スクランブリングと図5のS403の2重デスクランブリングを比較すると、マクロ基地局10aのPCIとスモール基地局10bのPCIを適用する順番が反対になっていることに留意されたい。これにより、2重スクランブリングと2重デスクランブリングが互いに逆変換の関係となり、2重スクランブリングされたDCIに対して2重デスクランブリングを行うと元に戻すことができるのである。
一方、S404で第2無線端末20bは、受信DCIおよび受信CRCを1度だけデスクランブリングする(スクランブリングを解く)。具体的には、第2無線端末20bは、受信DCIと受信CRCに対し、マクロ基地局10aのPCI(セルID)に基づいてデスクランブリングを行う。なお、ここで行われるデスクランブルは、基地局10で行われるスクランブリングの逆変換に対応するものである。ここでのデスクランブルの方式としては、前述した参考技術と同様に、従来のLTEシステムで採用されているものを流用することができる。
このようにして、S403において第2無線端末20bは、スモール基地局10bから受信した受信DCIと受信マスクドCRCに対して、それぞれ2重にデスクランブルを行う。一方、S404において第2無線端末20bは、マクロ基地局10aから受信した受信DCIと受信マスクドCRCに対して、それぞれ1度だけデスクランブルを行う。
最後にS405またはS406で第2無線端末20bは、S403またはS404で生成した情報に基づいてCRCチェックを行う。より具体的には、S405で第2無線端末20bは、S403で2重にデスクランブルした受信DCIに基づいてCRCを生成し、当該CRCを自己のC-RNTIでマスクする。そして、マスクしたCRCを、S403で2重にデスクランブルした受信マスクドCRCと比較する。そして、これらが一致した場合にはDCIは受信成功となり、第1端末は当該DCIを自分宛であると判断する。一方、一致しない場合にはDCIは受信失敗となり、第1端末は当該DCIを自分宛ではないと判断する。
また、S406で第2無線端末20bは、S404で1度だけデスクランブルした受信DCIに基づいてCRCを生成し、当該CRCを自己のC-RNTIでマスクする。そして、マスクしたCRCを、S404で1度だけデスクランブルした受信マスクドCRCと比較する。そして、これらが一致した場合にはDCIは受信成功となり、第1端末は当該DCIを自分宛であると判断する。一方、一致しない場合にはDCIは受信失敗となり、第1端末は当該DCIを自分宛ではないと判断する。
最後にS407で第2無線端末20bは、下りサブフレームの制御信号領域において未復号のDCI(の候補)が残っているかを判定する。未復号のDCIが残っている場合には、S401に戻る。未復号のDCIが残っていない場合には、DCIの受信処理を終了する。
以下では、以上で説明した第2実施形態の送受信処理によって、前述した問題が解決されることを確認する。いま、問題の所在において説明したのと同様に、マクロ基地局10aおよびスモール基地局10bに対して2元接続を行う第2無線端末20bと、スモール基地局10bに対して接続する第2無線端末20bとの間で、C-RNTI=#N1が重複していると仮定する。
このような状況において、第1の場合として、スモール基地局10bが第2無線端末20b宛てにDCIを送信する場合を考える。その場合、DCIは図4の処理フローに沿って、第2無線端末20bのC-RNTIである#N1(第1無線端末20aと重複している)でマスキングされたCRCが付加された上で、マクロ基地局10aのPCIである#M1とスモール基地局10bのPCIである#M2で2重にスクランブリングされて送信される。
第1の場合において、第2無線端末20bは図5の処理フローに沿って、受信DCIと受信マスクドCRCを#M2及び#M1で2重にデスクランブリングした後に、2重デスクランブリング後の受信マスクドCRCをさらに#N1でデマスキングした上でCRCチェックを行う。ここで、第1の場合においては、スモール基地局10bによるDCIに対する変換処理と第2無線端末20bによる受信DCIに対する変換処理は逆変換の関係にあるため、第2無線端末20bは、スモール基地局10bが変換処理を行う前のDCIとCRCとに基づいてCRCチェックを行うことになる。したがって、この場合には、無線上で許容外の無線誤りが発生しない限り、CRCチェックは成功(受信成功)となり、第2無線端末20bは自分宛てのDCIを適切に受信することができる。
一方、第1の場合における第1無線端末20aによる受信処理を検討する。このとき第1無線端末20aは図3の処理フローに沿って、受信DCIと受信マスクドCRCをスモール基地局10bのPCIである#M2に基づいてデスクランブリングした後に、デスクランブリング後の受信マスクドCRCをさらに#N1でデマスキングした上でCRCチェックを行う。ここで、第1の場合においては、スモール基地局10bによるDCIに対する変換処理と第1無線端末20aによる受信DCIに対する変換処理は逆変換の関係とはならないため、第1無線端末20aは、スモール基地局10bが変換処理を行う前のDCIとCRCとに基づいてCRCチェックを行うことにはならない。したがって、この場合には、CRCチェックは失敗(受信失敗)となり、第1無線端末20aは第2無線端末20b宛てのDCIを適切に受信しないことができる(誤受信を回避することができる)。
次に第2の場合として、スモール基地局10bが第2無線端末20b宛てにDCIを送信する場合を考える。その場合、DCIは図4の処理フローに沿って、第2無線端末20bのC-RNTIである#N1(第2無線端末20bと重複している)でマスキングされたCRCが付加された上で、スモール基地局10bのPCI(セルID)である#M2でスクランブリングされて送信される。
第2の場合において、第1無線端末20aは図3の処理フローに沿って、受信DCIと受信マスクドCRCを#M2でデスクランブリングした後に、デスクランブリング後の受信マスクドCRCをさらに#N1でデマスキングした上でCRCチェックを行う。ここで、第2の場合においては、スモール基地局10bによるDCIに対する変換処理と第1無線端末20aによる受信DCIに対する変換処理は逆変換の関係にあるため、第1無線端末20aは、スモール基地局10bが変換処理を行う前のDCIとCRCとに基づいてCRCチェックを行うことになる。したがって、この場合には、無線上で許容外の無線誤りが発生しない限り、CRCチェックは成功(受信成功)となり、第1無線端末20aは自分宛てのDCIを適切に受信することができる。
一方、第2の場合における第2無線端末20bによる受信処理を検討する。このとき第2無線端末20bは図5の処理フローに沿って、受信DCIと受信マスクドCRCをスモール基地局10bのPCIである#M2に加えてマクロ基地局10aのPCIである#M1に基づいて2重にデスクランブリングした後に、2重デスクランブリング後の受信マスクドCRCをさらに#N1でデマスキングした上でCRCチェックを行う。ここで、第2の場合においては、スモール基地局10bによるDCIに対する変換処理と第2無線端末20bによる受信DCIに対する変換処理は逆変換の関係とはならないため、第2無線端末20bは、スモール基地局10bが変換処理を行う前のDCIとCRCとに基づいてCRCチェックを行うことにはならない。したがって、この場合には、CRCチェックは失敗(受信失敗)となり、第2無線端末20bは第1無線端末20a宛てのDCIを適切に受信しないことができる(誤受信を回避することができる)。
以上により、第2実施形態によれば、上記の問題の所在において説明した場合とは異なり、2元接続に伴う重複受信の問題は発生しないことになる。
引き続き、上述した2重スクランブリングおよび2重デスクランブリングについて、LTEシステムの標準仕様に沿って具体例を説明する。
図6に一般的なLTEシステムにおけるDCIの送信処理を示す。ここで、図6における送信処理は、図2に係るDCIの送信処理に対応するものである。前述したように、図2においてはDCIの送信処理の手順の一部が省略されているのに対し、図6は送信処理の全容を示すものとなっている。なお、図6は、一例として、2つのDCIが多重される場合を示しているが、多重されるDCIの数は2つとは限らないことは言うまでもない。
図6に示すDCIの送信処理を説明する。まず、基地局10が生成したDCIのビット系列をa_iとする。このとき、S501(CRC attachment)で基地局10は、a_iに対して16ビットのCRCを付加する。ここでa_iに付加されるCRCは、前述した通り、a_iに基づいて計算されたCRCを宛先となる端末のC-RNTIでマスクしたもの(マスクドCRC)である。a_iにマスクドCRCを付加したビット系列をc_iとする。
次にS502(Channel coding)で基地局10は、c_iに対して通信路符号化を行う。このとき、符号化方式としては、tailbitingの畳み込み符号が使用される。ここで、畳み込み符号の出力をd_k^(0)、d_k^(1)、d_k^(2)とする。これらは3つのパリティ系列であり、畳み込み符号の符号化率は1/3となる。
次にS503(Rate matching)で基地局10は、d_k^(0)、d_k^(1)、d_k^(2)に対し、レートマッチングを行う。S503におけるレートマッチングは、さらに、S5031(Sub-block interleaver)のインターリーブ処理、S5032(Bit collection)のビット結合、S5033(Bit selection and pruning)のビット選択およびプルニングの各処理から構成される。S5031のインターリーブ処理においては、d_k^(0)、d_k^(1)、d_k^(2)の各ビット列がそれぞれシャッフルされ、3つのビット系列であるv_k^(0)、v_k^(1)、v_k^(2)を生成する。また、S5032のビット結合においては、v_k^(0)、v_k^(1)、v_k^(2)が結合され、1つのビット系列であるw_kが生成される。そしてS5033のビット選択およびプルニングにおいては、所望の符号化率となるようにw_kに対してビットの選択およびプルニング(間引き)を行い、ビット系列e_kを生成する。
さらに基地局10はe_kを、無線品質等により決定されるアグリゲーションレベルに基づいて、CCE(Control Channel Element)に割りつける。アグリゲーションレベルは1、2、4、8の各値を取ることができ、例えばアグリゲーションレベルが4の場合、基地局10はe_kを4個のCCEに対して割りつける。
そして基地局10はS504(Physical channel processing)で、e_kに対して送信側の物理チャネル処理を行い、無線信号により送信する。S504における送信側の物理チャネル処理は、さらに、S5041(Multiplexing and scrambling)の多重化およびスクランブリング、S5042(Modulation)の変調、S5043(Layer mapping and precoding)のレイヤマッピング及びプリコーディング、S5044(RE mapping)のRE(Resource Element)へのマッピングの各処理から構成される。S5041の多重化およびスクランブリングは、CCEに割りつけられたe_kを多重化した後に、PCI(セルID)に基づいてスクランブリングを行う。S5041におけるスクランブリングについては後述する。そしてS5042でスクランブリング後のビット系列がQPSKで変調された後に、S5043でレイヤ(空間多重による通信路)にマッピングされ、さらにS5044で無線信号上の無線リソース単位であるREにマッピングされる。そして基地局10は当該無線信号を送信する。
一方、DCIの詳細な受信処理については、図6に示されるDCIの詳細な送信処理の反対の処理によって行うことができる。そのため、ここでは説明を割愛する。
さて、送信側の物理チャネル処理におけるスクランブリング(S5041)を説明する。今、CCEに割りつけられたe_kを多重化したビット列をb(i)とする。このとき、LTEの標準仕様において、スクランブリング後のビット列は以下の式(1)で表される。
ここでc(i)はスクランブリング系列と呼ばれるスクランブリング用の系列であり、ゴールドコード(ゴールドシーケンス)と呼ばれる擬似ランダム系列が利用される。ゴールドコードが用いられることで、スクランブリングによってDCIがランダム化されるため、受信側において復調器の安定的な動作が得られる。
DCIに対するスクランブリング系列は所定の式(本願では割愛する)で規定されており、その初期値は以下の式(2)で規定されている。スクランブリング系列はサブフレーム毎に、この初期値に基づいて初期化される。
ここで、N_ID^cellは、基地局10の識別子(セルID)であるPCIに対応している。したがって、DCIに対する送信側のスクランブリングは、これまでに述べてきたとおり、PCIに基づいて行われることが分かる。また、DCIに対する受信側のデスクランブリングは、送信側のスクランブリングの逆変換処理であるため、スクランブリングで用いられるのと同じスクランブリング系列に基づいて行われる。したがって、デスクランブリングについても、やはりPCIに基づいて行われることになる。
図6に基づいて説明したLTEシステムにおけるDCIの送信処理では、S5041においてDCI及びマスクドCRCのスクランブリングが1度だけ行われている。また、DCIの受信処理では、DCI及びマスクドCRCのデスクランブリングが1度だけ行われる(不図示)。言い換えれば、系列e_kに対して、送信側ではスクランブリングが1度だけ行われるとともに、受信側ではデスクランブリングが1度だけ行われる。
これに対し、本願の第2実施形態においては、図4〜図5に基づいて説明したように、DCI及びマスクドCRCに対して2重のスクランブリングやデスクランブリングを行う。そこで、本願の第2実施形態に係るDCIの送受信処理において、図6の系列e_kに対する1度のスクランブリングやデスクランブリングに加えて、いずれかのタイミングでもう1度の追加的なスクランブリングやデスクランブリングを行う必要がある。
この追加的なスクランブリングやデスクランブリングについては、一例として、図6のc_iに対して行うことができる。これはDCIの生のビット列そのものをスクランブリングすることに相当している。これにより、レートマッチング(符号化)前にスクランブリングを行うことになるため、受信側のブラインドデコーディングを従来の処理に沿って行うことができる。
また、他の例として、図6のe_kに対して追加的なスクランブリングやデスクランブリングを行うこともできる。これはe_kに対して連続的に2重のスクランブリングを行うことに相当する。ただし、この場合にはレートマッチング後にスクランブリングを行うことになり、言い換えれば、アグリゲーションレベルの決定及びCCE配置後にスクランブリング処理を行うことになるため、受信側のブラインドデコーディングに影響が波及する。具体的には、受信側においてブラインドデコーディングを2回繰り返すことになるため、その部分の処理量が2倍に増加することになる。
そのため、追加的なスクランブリングやデスクランブリングは図6のc_iに対して行うのが望ましいと考えられる。反対に、追加的なスクランブリングやデスクランブリングを図6のe_kに対して行うことはそれほど現実的では無いものと考えられる。なお、例えば図6のd_k、v_k、w_kのいずれかに対して追加的なスクランブリングやデスクランブリングを行うこととしてもよい。d_kやv_kに対して追加的なスクランブリング等を行う場合、レートマッチング前のスクランブリングに該当しており、c_iに対して追加的なスクランブリング等を行う場合と同様に取り扱うことができる。これに対し、w_kに対して追加的なスクランブリング等を行う場合、レートマッチング後のスクランブリングに該当しており、e_kに対して追加的なスクランブリング等を行う場合と同様に取り扱うことができる。
以上で説明した第2実施形態によれば、上述したように、問題の所在において説明したDCIの重複受信の問題を解決することができる。したがって、第2実施形態によれば、2元接続を実現する場合に望ましい端末管理を行うことが可能となる。
[第3実施形態]
第3実施形態も、第1実施形態をLTEシステムに具体的に適用した実施形態の一つである。第3実施形態は第2実施形態と共通する点も多い。そのため以下では第3実施形態において第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
まず、第3実施形態の前提については、第2実施形態と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
第3実施形態に係るスモール基地局10bによるDCIの送信処理を説明する。第3実施形態に係るスモール基地局10bは、第2実施形態に係るスモール基地局10bと類似する処理フロー(図4)に基づいてDCIの送信処理を行う。具体的には、第3実施形態に係るスモール基地局10bは、図4のS301〜S303およびS305〜S307については、第2実施形態において説明した内容と同様の処理を行えばよい。これに対し、第3実施形態に係るスモール基地局10bは、図4のS304については、第2実施形態において説明した内容と異なる処理を行う。
第3実施形態に係るスモール基地局10bが、図4のS304において行う処理について説明する。図4のS304で第3実施形態に係るスモール基地局10bは、2元接続可能な端末(第2無線端末20b)宛てのDCIおよびマスクドCRCに対し、スクランブリング系列をビット反転させてスクランブリングを行う。より具体的には、DCIに対する通常のスクランブリングでは上述した所定のスクランブリング系列(ゴールドコードを利用)が使用されるのに対し、ここでは当該スクランブリング系列をビット反転した上でスクランブリングを行うのである。
ここで、ビット反転とは、スクランブリング系列の各ビットの0と1を反転させることを意味する。一例としては、上述した所定のスクランブリング系列が1010111010100011である場合、これをビット反転させたスクランブリング系列は0101000101011100となる。なお、このようにビットを反転させることにより反転前のスクランブリング系列が有する擬似ランダム性が失われることは無いため、上述した受信側における復調器の動作の安定性が損なわれないことに留意されたい。
これにより、第3実施形態に係るスモール基地局10bは、2元接続可能な端末(第2無線端末20b)宛てのDCIおよびマスクドCRCに対しては、スクランブリング系列をビット反転させてスクランブリングを行うことになる。一方、第3実施形態に係るスモール基地局10bは、2元接続不可能な端末(第1無線端末20a)宛てのDCIおよびマスクドCRCに対しては、通常通りに(スクランブリング系列をビット反転させることなく)スクランブリングを行うことになる。
一方、第3実施形態に係る2元接続可能な無線端末20(第2無線端末20b)によるDCIの受信処理を説明する。第3実施形態に係る第2無線端末20bは、第2実施形態に係る第2無線端末20bと類似する処理フロー(図5)に基づいてDCIの受信処理を行う。具体的には、第3実施形態に係る第2無線端末20bは、図5のS401〜S402およびS404〜S407については、第2実施形態において説明した内容と同様の処理を行えばよい。これに対し、第3実施形態に係る第1端末は、図5のS403については、第2実施形態において説明した内容と異なる処理を行う。
具体的には、図5のS403で第3実施形態に係る第2無線端末20bは、スモール基地局10bから受信されたDCIおよびマスクドCRCに対し、スクランブリング系列をビット反転させてデスクランブリングを行う。より具体的には、DCIに対する通常のデスクランブリングでは上述した所定のスクランブリング系列(ゴールドコードを利用)が使用されるのに対し、ここでは当該スクランブリング系列をビット反転した上でデスクランブリングを行うのである。この処理は、上述した第3実施形態に係るスモール基地局10bによるスクランブリング処理に対応する処理であるため、詳細な説明は割愛する。
これにより、第3実施形態に係る2元接続可能な端末(第2無線端末20b)はスモール基地局10bから受信したDCIおよびマスクドCRCに対しては、スクランブリング系列をビット反転させてデスクランブリングを行うことになる。一方、第3実施形態に係る第2無線端末20bは、マクロ基地局10aから受信したDCIおよびマスクドCRCに対しては、通常通りに(スクランブリング系列をビット反転させることなく)デスクランブリングを行うことになる。
第3実施形態に係る無線通信システムにおいて、上記の各実施形態と同様に、スモール基地局10bが第2無線端末20b宛てにDCIを送信する場合の誤受信を回避できる。このことを説明するため、ここでは例として、第3実施形態に係る無線通信システムにおいて、スモール基地局10bが第2無線端末20b宛てにDCIを送信する場合を考える。
この場合、DCIおよびマスクドCRCに対するスクランブリングにおいて、ビット反転したスクランブリング系列が使用される。一方、第1無線端末20aは、受信DCIおよび受信マスクドCRCに対するデスクランブリングにおいて、ビット反転しないスクランブリング系列を使用する。このとき、スモール基地局10bによるDCIに対する変換処理と第1無線端末20aによる受信DCIに対する変換処理は逆変換の関係とはならない。そのため、第1無線端末20aは、スモール基地局10bが変換処理を行う前のDCIとCRCとに基づいてCRCチェックを行うことにはならない。したがって、この場合には、CRCチェックは失敗(受信失敗)となり、第1無線端末20aは第2無線端末20b宛てのDCIを適切に受信しないことができる(誤受信を回避することができる)。なお、第3実施形態に係る無線通信システムにおいて、スモール基地局10bが第1無線端末20a宛てにDCIを送信する場合にも誤受信が回避されることも、これと同様にして説明することができる(詳細は割愛する)。
以上で説明した第3実施形態によれば、上述したように、問題の所在において説明したDCIの重複受信の問題を解決することができる。したがって、第3施形態によれば、2元接続を実現する場合に望ましい端末管理を行うことが可能となる。
[第4実施形態]
第4実施形態も、第1実施形態をLTEシステムに具体的に適用した実施形態の一つである。第4実施形態は第3実施形態と共通する点も多い。そのため以下では第4実施形態において第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
まず、第4実施形態の前提については、第3実施形態と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
前述した第3実施形態に係るスモール基地局10bは、2元接続可能な端末(第2無線端末20b)宛てのDCIおよびマスクドCRCに対して、スクランブリング系列をビット反転させてスクランブリングを行うものである。これに対し、第4実施形態に係るスモール基地局10bは、2元接続可能な端末(第2無線端末20b)宛てのDCIおよびマスクドCRCに対して、スクランブリング系列をビット逆転させてスクランブリングを行うものである。
また、第3実施形態に係る2元接続可能な端末(第2無線端末20b)はスモール基地局10bから受信したDCIおよびマスクドCRCに対して、スクランブリング系列をビット反転させてデスクランブリングを行うものである。これに対し、第4実施形態に係る第2無線端末20bはスモール基地局10bから受信したDCIおよびマスクドCRCに対して、スクランブリング系列をビット逆転させてデスクランブリングを行うものである。
ここで、ビット逆転とは、スクランブリング系列のビットの並びを逆転させることを意味する。一例としては、上述した所定のスクランブリング系列が1010111010100011である場合、これをビット逆転させたスクランブリング系列は1100010101110101となる。なお、このようにビットを逆転させることにより逆転前のスクランブリング系列が有する擬似ランダム性が失われることは無いため、上述した受信側における復調器の動作の安定性が損なわれないことに留意されたい。
第4実施形態に係る無線通信システムにおいても、第3実施形態と同様に、スモール基地局10bが第2無線端末20b宛てにDCIを送信する場合に発生する誤受信が回避されることを説明できる。また、スモール基地局10bが第2無線端末20b宛てにDCIを送信する場合にも誤受信が回避されることを説明できる。この説明は第3実施形態と同様であるため、ここでは詳細は割愛する。
以上で説明した第4実施形態によれば、上述したように、問題の所在において説明したDCIの重複受信の問題を解決することができる。したがって、第4施形態によれば、2元接続を実現する場合に望ましい端末管理を行うことが可能となる。
[その他の実施形態]
ここではその他の実施形態や変形例について簡単に説明する。
まず、第1実施形態について述べたように、第1無線局(2元接続可能な端末)宛の第1情報(DCI)に対する第1変換処理及び第2無線局(2元接続不可能な無線端末20)宛の第2情報(DCI)に対する第2変換処理としては、受信側(第1無線局や第2無線局)において第1情報や第2情報の重複受信(混信)を回避できるような、あらゆる異なる変換処理を含むことができる。ただし、上述した問題の所在に鑑みると、仮に第1無線局と第2無線局の識別子が重複した場合においても、第1情報や第2情報の重複受信を回避できるような第1変換処理や第2変換処理を採用するのが望ましい。
上記の第2実施形態〜第4実施形態において、そのような第1変換処理と第2変換処理の具体例を説明してきたわけであるが、これら以外の具体例も考えられる。例えば第2実施形態においては、図4のS304の2重スクランブリングが第1変換処理を示しており、S305の(1度の)スクランブリングが第2変換処理を示している。ここで、S304の2重スクランブリングとS305のスクランブリングとのいずれも、上述した式(1)や式(2)を含むような従来のLTEシステムにおいて規定された所定の式に基づいて行われる。また、S304の2重スクランブリングはマクロ基地局10aとスモール基地局10bのそれぞれのPCIに基づいて行われ、S305のスクランブリングはスモール基地局10bのPCIに基づいて行われる。しかしながら、これらを例えば以下のように変形することもできる。
例えば、スモール基地局10bは、図4のS304において第1変換処理として、上述した式(1)や式(2)を含むような従来のLTEシステムにおいて規定された所定の式(便宜上、所定式と称する)の代わりに、所定式とは異なる式に基づいてスクランブリングを行う。なお、所定式と異なる式においても、所定式と同様に、擬似ランダム系列が生成されることが望ましい。一方、スモール基地局10bは、図4のS305において第2変換処理として、前記の所定式に基づいてスクランブリングを行う(一般的な方法)。このように、第1変換処理と第2変換処理でのスクランブリングの根拠となる式を異なるものとするような実施形態も可能である。これにより、前述した重複受信の問題を回避することが可能となるからである。
他の例としては、スモール基地局10bは、図4のS304において第1変換処理として、スモール基地局10bのPCI(セルID)そのものではなく、スモール基地局10bのPCIを所定規則で変換(所定の算術演算やビット演算)する等により生成した別のPCIに基づいてスクランブリングを行う。一方、スモール基地局10bは、図4のS305において第2変換処理として、スモール基地局10bのPCIそのものに基づいてスクランブリングを行う(一般的な方法)。この場合、第1変換処理と第2変換処理とのいずれのスクランブリングにおいても、前記の所定式を用いてかまわない。このように、第1変換処理と第2変換処理でのスクランブリングを異なるPCIに基づいて行うような実施形態も可能である。これにより、前述した重複受信の問題を回避することが可能となるからである。
さらに別の例としては、スモール基地局10bは、図4のS304において第1変換処理として、スモール基地局10bのPCIおよび所定式に基づいてスクランブリングを行う(一般的な方法)。一方、スモール基地局10bは、図4のS305において第2変換処理として、何も行わない。ここで、本願における第1変換処理や第2変換処理は、何も行わないことも含む概念として取り扱うことも可能であることに留意されたい。このように、第1変換処理と第2変換処理との一方で何も行わないような実施形態も可能である。これにより、前述した重複受信の問題を回避することが可能となるからである。
次に、上述した各実施形態においては、下り制御情報であるDCIを下り制御チャネルであるPDCCHを介して送受信する場合について説明していた。しかしながら、前述したように、DCIは拡張された下り制御チャネルであるEPDCCHを介して送受信することもできる。この点に関し、本願発明は、DCIをPDCCHを介して送受信する場合に限定されるわけではなく、DCIをEPDCCHに対して適用する場合にも問題なく適用可能である。具体的には、上述した各実施形態における「PDCCH」を「EPDCCH」と置き換えることが実現可能なため、詳細は割愛する。なお、DCIをPDCCHで送信する場合には複数ユーザ宛てのDCIは多重されるのに対し、EPDCCHで送信する場合には多重されないことには注意されたい。
さらに、上述した各実施形態においては、第2実施形態において述べたように、マクロ基地局10aによるDCIの送信処理は、上述したLTEシステムに係るDCIの送信処理(図2)と同様に行うこととしていた。しかしながら、上記の各実施形態においては、マクロ基地局10aもスモール基地局10bと同様の手順でDCIを送信するように変形することが可能である。具体的には、例えば第2実施形態において、マクロ基地局10aは図4の処理フローに沿ってDCIの送信処理を行うようにすることができる。この場合、2元接続可能な無線端末20(第2無線端末20b)によるDCIの受信処理は、図5の処理フローと異なるものとなる。具体的には、第2無線端末20bは、DCIの送信元がマクロ基地局10aかスモール基地局10bかに拘わらず、受信DCIを2重にデスクランブリングすることになる。このような変形例を適用する場合としては、例えばマクロ基地局10aがスモール基地局10bとして振る舞い、対応するスモール基地局10bがマクロ基地局10aとして振る舞う場合が考えられる。
最後に、言うまでもないことであるが、上記の各実施形態において無線基地局10や無線端末20により送受信される制御信号における情報要素名やパラメータ名等は一例にすぎないことに留意する。また、パラメータの配置(順番)が異なっていたり、任意的な(オプショナルな)情報要素やパラメータが使用されていない場合においても、本願発明の趣旨を逸脱しない限りは、本願発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
[各実施形態の無線通信システムのネットワーク構成]
次に図7に基づいて、各実施形態の無線通信システム1のネットワーク構成を説明する。図7に示すように、無線通信システム1は、無線基地局10と、無線端末20とを有する。無線基地局10は、セルC10を形成している。無線端末20はセルC10に存在している。
無線基地局10は、有線接続を介してネットワーク装置3と接続されており、ネットワーク装置3は、有線接続を介してネットワーク2に接続されている。無線基地局10は、ネットワーク装置3およびネットワーク2を介して、他の無線基地局10とデータや制御情報を送受信可能に設けられている。
無線基地局10は、無線端末20との無線通信機能とデジタル信号処理及び制御機能とを分離して別装置としてもよい。この場合、無線通信機能を備える装置をRRH(Remote Radio Head)、デジタル信号処理及び制御機能を備える装置をBBU(Base Band Unit)と呼ぶ。RRHはBBUから張り出されて設置され、それらの間は光ファイバなどで有線接続されてもよい。また、無線基地局10は、マクロ無線基地局10、ピコ無線基地局10等の小型無線基地局10(マイクロ無線基地局10、フェムト無線基地局10等を含む)の他、様々な規模の無線基地局10であってよい。また、無線基地局10と無線端末20との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(無線端末20との送受信及びその制御)も本願の無線基地局10に含まれることとしてもよい。
一方、無線端末20は、無線通信で無線基地局10と通信を行う。
無線端末20は、携帯電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ(Personal Computer)、無線通信機能を有する各種装置や機器(センサー装置等)などの無線端末20であってよい。また、無線基地局10と無線端末20との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(無線基地局10との送受信及びその制御)も本稿の無線端末20に含まれることとしてもよい。
ネットワーク装置3は、例えば通信部と制御部とを備え、これら各構成部分が、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。ネットワーク装置3は、例えばゲートウェイにより実現される。ネットワーク装置3のハードウェア構成としては、例えば通信部はインタフェース回路、制御部はプロセッサとメモリとで実現される。
なお、無線基地局10、無線端末20の各構成要素の分散・統合の具体的態様は、第1実施形態の態様に限定されず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することもできる。例えば、メモリを、無線基地局10、無線端末20の外部装置としてネットワークやケーブル経由で接続するようにしてもよい。
[各実施形態の無線通信システムにおける各装置の機能構成]
次に、図8〜図9に基づいて、各実施形態の無線通信システムにおける各装置の機能構成を説明する。
図8は、無線基地局10(マクロ基地局10a、スモール基地局10bを含む)の機能構成の一例を示すブロック図である。図8に示すように、無線基地局10は、例えば、無線送信部11と、無線受信部12と、制御部13と、記憶部14と、通信部15とを備える。これら各構成部分は、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。なお、無線送信部11と無線受信部12とをまとめて無線通信部16と称する。
無線送信部11は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。無線送信部11は、無線端末20に対して無線信号(下りの無線信号)を送信する。無線送信部11が送信する無線信号には、無線端末20向けの任意のユーザデータや制御情報等(符号化や変調等がなされる)を含むことができる。
無線送信部11が送信する無線信号の具体例としては、図2、図4および図6において各無線基地局10(マクロ基地局10a、スモール基地局10bを含む)が無線端末20(第1無線端末20a、第2無線端末20bを含む)に対して送信している各無線信号が挙げられる。無線送信部11が送信する無線信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で各無線基地局10が無線端末20に対し送信するあらゆる無線信号を含む。
無線受信部12は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で受信する。無線受信部12は、無線端末20から無線信号(上りの無線信号)を受信する。無線受信部12が受信する無線信号には、無線端末20により送信される任意のユーザデータや制御情報等(符号化や変調等がなされる)を含むことができる。無線受信部12が受信する信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で各無線基地局10(マクロ基地局10a、スモール基地局10bを含む)が無線端末20(第1無線端末20a、第2無線端末20bを含む)から受信するあらゆる無線信号を含む。
制御部13は、無線端末20に送信するデータや制御情報を無線送信部11に出力する。制御部13は、無線端末20から受信されるデータや制御情報を無線受信部12から入力する。制御部13は、後述する記憶部14との間でデータ、制御情報、プログラム等の入出力を行う。制御部13は、後述する通信部15との間で、他の無線基地局10等を相手に送受信するデータや制御情報の入出力を行う。制御部13はこれら以外にも無線基地局10における種々の制御を行う。
制御部13が制御する処理の具体例としては、図2、図4および図6において各無線基地局10(マクロ基地局10a、スモール基地局10bを含む)が送受信している各信号に対する制御、および各無線基地局10が行っている各処理に対する制御が挙げられる。制御部13が制御する処理は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で各無線基地局10が実行するあらゆる処理に関する制御を含む。
記憶部14は、データ、制御情報、プログラム等の各種情報の記憶を行う。記憶部14が記憶する各種情報は、上記の各実施形態および変形例で各無線基地局10(マクロ基地局10a、スモール基地局10bを含む)において記憶されうるあらゆる情報を含む。
通信部15は、有線信号等(無線信号でも構わない)を介して、他の無線基地局10等を相手にデータや制御情報を送受信する。通信部15が送受信する有線信号等は、上記の各実施形態および変形例で各無線基地局10が他の無線基地局10等を相手に送受信するあらゆる有線信号等を含む。
なお、無線基地局10は、無線送信部11や無線受信部12を介して無線端末20以外の無線通信装置(例えば他の無線基地局10や中継局)と無線信号を送受信してもかまわない。
図9は、無線端末20(第1無線端末20a、第2無線端末20bを含む)の機能構成の一例を示すブロック図である。図9に示すように、無線端末20は、例えば、無線送信部21と、無線受信部22と、制御部23と、記憶部24とを備える。これら各構成部分は、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。なお、無線送信部21と無線受信部22とをまとめて無線通信部25と称する。
無線送信部21は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。無線送信部21は、各無線基地局10に対して無線信号(上りの無線信号)を送信する。無線送信部21が送信する無線信号には、各無線基地局10向けの任意のユーザデータや制御情報等(符号化や変調等がなされる)を含むことができる。無線送信部21が送信する無線信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20(第1無線端末20a、第2無線端末20bを含む)が各無線基地局10(マクロ基地局10a、スモール基地局10bを含む)に対し送信するあらゆる無線信号を含む。
無線受信部22は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で受信する。無線受信部22は、各無線基地局10から無線信号(下りの無線信号)を受信する。無線受信部22が受信する無線信号には、各無線基地局10により送信される任意のユーザデータや制御情報等(符号化や変調等がなされる)を含むことができる。
無線受信部22が受信する無線信号の具体例としては、図3および図5において無線端末20(第1無線端末20a、第2無線端末20bを含む)が無線基地局10(マクロ基地局10a、スモール基地局10bを含む)から受信している各無線信号が挙げられる。無線受信部22が受信する信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が各無線基地局10から受信するあらゆる無線信号を含む。
制御部23は、各無線基地局10に送信するデータや制御情報を無線送信部21に出力する。制御部23は、各無線基地局10から受信されるデータや制御情報を無線受信部22から入力する。制御部23は、後述する記憶部24との間でデータ、制御情報、プログラム等の入出力を行う。制御部23はこれら以外にも無線端末20における種々の制御を行う。
制御部23が制御する処理の具体例としては、図3および図5において無線端末20(第1無線端末20a、第2無線端末20bを含む)が送受信している各信号に対する制御、および無線端末20が行っている各処理に対する制御が挙げられる。制御部23が制御する処理は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が実行するあらゆる処理に関する制御を含む。
記憶部24は、データ、制御情報、プログラム等の各種情報の記憶を行う。記憶部24が記憶する各種情報は、上記の各実施形態および変形例で無線端末20(第1無線端末20a、第2無線端末20bを含む)において記憶されうるあらゆる情報を含む。
なお、無線端末20は、無線送信部21や無線受信部22を介して無線基地局10以外の無線通信装置と無線信号を送受信してもかまわない。
[各実施形態の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成]
図10〜図11に基づいて、各実施形態および各変形例の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成を説明する。
図10は、無線基地局10(マクロ基地局10a、スモール基地局10bを含む)のハードウェア構成の一例を示す図である。図10に示すように、無線基地局10は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ111を備えるRF(Radio Frequency)回路112と、プロセッサ113と、メモリ114と、ネットワークIF(Interface)115とを有する。これら各構成要素は、バスを介して各種信号やデータの入出力が可能なように接続されている。
プロセッサ113は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)である。本願においては、プロセッサ113をデジタル電子回路で実現することとしてもかまわない。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)等が挙げられる。
メモリ114は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。この他に、無線基地局10は不図示の補助記憶装置(ハードディスク等)等を備えていても良い。
図8に示す無線基地局10の機能構成と図10に示す無線基地局10のハードウェア構成との対応を説明する。無線送信部11および無線受信部12(あるいは無線通信部16)は、例えばRF回路112、あるいはアンテナ111およびRF回路112により実現される。制御部13は、例えばプロセッサ113、メモリ114、不図示のデジタル電子回路等により実現される。記憶部14は、例えばメモリ114により実現される。通信部15は、例えばネットワークIF115により実現される。
図11は、無線端末20(第1無線端末20a、第2無線端末20bを含む)のハードウェア構成の一例を示す図である。図11に示すように、無線端末20は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ121を備えるRF(Radio Frequency)回路122と、プロセッサ123と、メモリ124とを有する。これら各構成要素は、バスを介して各種信号やデータの入出力が可能なように接続されている。
プロセッサ123は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)である。本願においては、プロセッサ123をデジタル電子回路で実現することとしてもかまわない。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)等が挙げられる。
メモリ124は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。
図9に示す無線端末20の機能構成と図11に示す無線端末20のハードウェア構成との対応を説明する。無線送信部21および無線受信部22(あるいは無線通信部25)は、例えばRF回路122、あるいはアンテナ121およびRF回路122により実現される。制御部23は、例えばプロセッサ123、メモリ124、不図示のデジタル電子回路等により実現される。記憶部24は、例えばメモリ124により実現される。