JP6277461B2 - 制振性を付与するために用いられる水性樹脂組成物及びエマルション塗料 - Google Patents

制振性を付与するために用いられる水性樹脂組成物及びエマルション塗料 Download PDF

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Description

本発明は、特に、実用温度領域において効果的な制振性を発現し得る水性樹脂組成物に関する。
従来より、塗料の形態をした制振材料が知られており、塗装という手段によって目的物に複合化させることができるので、目的物の形状によらず利用することができ、有用である。中でも、水系エマルション塗料は、有機溶剤を使用できない場所でも使用でき、さらに、環境保全の面からも有用である。水系の制振塗料としては、塗膜形成成分である樹脂粒子の水系樹脂分散液に、無機充填剤を分散させてなるものが一般的である。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウムやマイカ等が使用されている(特許文献1、特許文献2参照)。そして、特許文献1には、塗膜の内部摩擦が大きいほど高い制振性能が得られること、塗膜の内部摩擦を大きくする方法の1つとして、充填剤を増量する手法が効果的であること、しかし、比重の大きい充填剤を多量に配合した場合は、塗料貯蔵時に沈降した充填剤が凝固し、塗料としての貯蔵安定性に問題があることが記載されている。そして、特定のガラス転移温度を有する特定の合成樹脂を主成分とする合成樹脂エマルションに、無機充填剤である炭酸カルシウム又は転炉スラグ粉末の少なくともいずれかを多量に配合し、さらに特定の増粘剤や分散剤を特定量で配合した塗料とすることで、室温付近(実用温度領域)で高い制振性能を示すことができるとしている。
また、特許文献2では、樹脂エマルション中に、マイカと、炭酸カルシウムと、ガラスバルーンやシリカバルーン等の無機中空粒子とを、その総含有量が66〜68質量%の範囲内となるように配合し、さらに、ポリマーシェルに熱膨張剤を内包してなることで熱膨張する熱膨張性マイクロカプセルを含有させることで、塗膜の制振性能を高めることができるとしている。
ここで、建物や自動車等に用いられる制振塗料については、上記した特許文献1に記載されているように、実用温度領域に、ガラス転移温度(Tg)を持つ高分子合成樹脂をマトリックス成分としたものが多用されている。これは、下記の理由による。制振の機構は、「振動の力学的エネルギーを熱エネルギーに変換させ消散させることにより振動を低減すること」であるので、この変換を効率的に行うことによって、制振性能を発揮させることが可能になる。これに対し、高分子合成樹脂の持つ制振性は、高分子鎖の運動に起因するものであり、この運動が活発になるのは、高分子合成樹脂のガラス転移点付近となる。このような理由から、制振塗料においては、塗膜の制振性を高める目的で、実用温度領域にガラス転移点をもつ材料を使用することが行われている。
特許第3209499号公報 特開2010−235883号公報
しかしながら、確かに、実用温度領域にTgを持つ高分子合成樹脂を塗膜形成成分とした制振塗料では、効率的に制振性能を発揮することが可能になるが、本発明者らの検討によれば、この点のみでは、形成した塗膜が、より高い制振性能を達成するものとはならないことがわかった。すなわち、本発明者らの詳細な検討の結果、塗膜の制振性を高めるとして従来の制振塗料に用いられているマイカや炭酸カルシウム、ガラスバルーンやシリカバルーン等の無機中空粒子等の無機充填剤は、これらの持つ形状が振動の減衰作用に寄与していると考えられるのに対して、これらの無機充填剤は、実用温度領域では、効率的に制振の機構をとっているとは言えないとの知見を得た。また、無機充填剤の中でも、中空ガラスビーズ等の無機中空粒子は、その精製の複雑さから高価なものが多く、これらの材料を使用した場合は、制振塗料のコスト高を招くという別の課題もある。
従って、本発明の目的は、安全性や環境保全の面からも有用な樹脂エマルションを用いた制振性を有する水性樹脂組成物において、実用温度領域で効率的な制振機構を十分にとることができる塗膜形成成分を使用した場合に、使用する充填剤として、特に、この実用温度領域で効率的な制振機構をとり、塗膜の制振性をより高めることができ、さらに、材料コストの点からも課題のない制振性を有する水性樹脂組成物を提供することにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成できる。すなわち、本発明は、少なくとも、高分子合成樹脂エマルションと、ガラス転移温度(Tg)が40〜140℃である樹脂製の中空粒子とを含有してなることを特徴とする制振性を付与するために用いられる水性樹脂組成物を提供する。
また、本発明の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。前記樹脂製の中空粒子を、その固形分中に0.1質量%以上20.0質量%未満の範囲で含んでなること;前記樹脂製の中空粒子のTgが、60〜120℃であること;前記樹脂製の中空粒子を、その固形分中に、1.0質量%以上15.0質量%未満の範囲で含んでなること;前記高分子合成樹脂エマルションのガラス転移温度(Tg)が−70〜70℃であることが挙げられる。
本発明によれば、安全性や環境保全の面からも有用な樹脂エマルションを用いた制振性を有する水性樹脂組成物において、例えば、実用温度領域で効率的な制振機構を十分にとることができる塗膜形成成分を使用した場合に、従来の無機充填剤に替えて、特定の樹脂製の中空粒子を新たな充填剤として用いることで、実用温度領域でも効率的な制振の機構をとり、塗膜の制振性を、従来の無機充填剤を用いた場合よりもより高めることができ、材料コストの点でも環境保全の点でも優れる制振性を有する水性樹脂組成物の提供が可能になる。さらに、本発明によれば、同様の添加量で無機充填剤を使用した従来のものと比べて、形成した塗膜がフクレの発生が抑制された、より効果的に制振性を付与することが可能な水性樹脂組成物が提供される。
製造例2で製造した樹脂製の中空粒子のSEM画像である(×10000倍)。
次に、発明を実施するための好ましい形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明者らは、例えば、高い制振性が得られるとされている、実用温度領域にTgを持つ高分子合成樹脂を塗膜形成成分とした高分子合成樹脂エマルションを含有する水性樹脂組成物としたとしても、従来の制振塗料に使用されている無機充填剤によっては、実用温度領域で効率的な制振の機構の発現による十分な効果が期待できないとの知見の下、従来の無機充填剤に替えて、より高い配合量で使用しても成膜性に問題がなく、特に実用温度領域において塗膜が効果的な制振性を示すものとなる新たな材料を見出すことが、制振塗料の機能向上において極めて重要であると認識するに至った。
本発明者らは、上記した認識の下、種々の材料について、特に実用温度領域において塗膜が効率的に制振性を発現できる充填剤について検討を重ねた結果、無機充填剤に替えて、特定のTgを持つ樹脂製の中空粒子を用いれば、その形状に起因する中空粒子の持つ減衰作用と、特に実用温度領域にTgを持つ高分子合成樹脂を塗膜形成成分とした場合に達成される、高分子合成樹脂の持つ制振性の効果との両立ができることを見出して本発明に至った。さらには、その際における樹脂製の中空粒子の使用量を従来の無機充填剤よりも高めることができ、組成物中における固形分中に0.1質量%以上20.0質量%未満の範囲で含むように構成することで、より安定して、実用温度領域において塗膜が効果的な制振性を発現する水性樹脂組成物とできることを見出した。まず、本発明の水性樹脂組成物を特徴づけるこれらの点について説明する。
上記したように、本発明の制振性を有する水性樹脂組成物は、樹脂製の中空粒子を使用したことを特徴とするが、本発明でいう中空粒子とは、「粒子内に単孔もしくは多孔の空隙を持つ粒子」と定義する。本発明の水性樹脂組成物を特徴づける樹脂製の中空粒子は、そのTgが40〜140℃であることを要するが、さらには、Tgが60〜120℃であるものを使用することが好ましい。本発明者らの検討によれば、Tgが40℃よりも低い中空粒子を水性樹脂組成物の構成材料として使用した場合には、常温で粒子の融着が発生するため、中空粒子としての特性を発揮することができず、本発明が所望する効率的な制振機能の発現が期待できない。一方、高分子合成樹脂はTg付近に損失係数ηの最大値が存在し、この損失係数ηの値が高いほど制振性の効果が高いこととなるが、本発明者らの検討によれば、水性樹脂組成物の構成材料として使用する中空粒子のTgが140℃を超えると、ガラスビーズなどの無機充填剤と同様に、実用温度領域に制振性の高い効果を付与することが期待できなくなる。
さらに、上記したように、本発明の水性樹脂組成物を構成する樹脂製の中空粒子の使用量は、組成物中における固形分中に0.1質量%以上20.0質量%未満の範囲であることが好ましい。水性樹脂組成物中における樹脂製の中空粒子の配合量は少なすぎると、本発明で所望する、実用温度領域において塗膜が効率的な制振機能を発現するという効果が十分に発揮されないので好ましくない。一方、多すぎると、塗膜特性が損なわれ、乾燥塗膜にフクレが生じたり、クラック等の塗膜欠陥が発生してしまうので、塗膜によって制振性を付与する用途では、成膜性に劣るので好ましくない。本発明で使用する樹脂製の中空粒子は、後述するように容易に製造でき、従来その精製が煩雑で材料のコスト高となる中空ガラスビーズ等の無機系の中空粒子に比べて安価であるので、本発明では中空粒子の持つ減衰作用と、高分子合成樹脂エマルションの高分子合成樹脂の持つ制振性の効果とを両立させた水性樹脂組成物を安価に提供することができるという利点もある。
本発明の水性樹脂組成物は、少なくとも、高分子合成樹脂エマルションと、ガラス転移温度(Tg)が40〜140℃である樹脂製の中空粒子とを含有するが、以下、それぞれの構成成分について説明する。
<高分子合成樹脂エマルション>
高分子合成樹脂エマルションを構成するポリマー(樹脂)としては、従来のエマルション塗料に用いられている樹脂と同様のものをいずれも使用することができ、また、そのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されず、例えば、−70〜70℃の広範な範囲のものをいずれも好適に使用することができる。Tg値の詳細については、後述する。
具体的な樹脂としては以下のようなものが例示できるが、特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、ブタジエン、酢酸ビニル、エチレン、エポキシ、ウレタン、アルキッド等のモノマーからなる樹脂が挙げられる。本発明を構成する高分子合成樹脂エマルションとしては、これらのモノマーの、単独重合体、共重合体、或いはこれらの重合体をブレンドしてなる混合物を用いることができる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル・アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、SBR樹脂、NBR樹脂、ブタジエン樹脂、イソプレン樹脂等が挙げられ、いずれの場合も同様の効果が期待される。これらの樹脂エマルションは、色材として顔料を用いた場合における顔料の分散がよく、本発明を特徴づける樹脂製の中空粒子との相溶性もよい。本発明において、上記した高分子合成樹脂エマルションの中でも特に、実用温度域にTgを調整し易い(メタ)アクリル樹脂を含むアクリル系のエマルション(以下、樹脂アクリルエマルションという場合がある)であることが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂を構成するモノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体や、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有単量体が挙げられる。これらとともに用いることのできる単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系単量体や、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン、バーサテック酸ビニル等が挙げられる。
また、高分子合成樹脂エマルションの製造方法は、特に限定されず、従来のエマルションの重合方法を利用することで合成できる。例えば、少なくとも、界面活性剤を含む水中に、上記したモノマー等を適宜に加えて乳化混合液を調製し、該乳化混合液を、水、界面活性剤および重合開始剤の存在下に滴下して乳化重合する工程を有する従来公知の製造方法によって容易に得ることができる。
<樹脂製の中空粒子>
本発明で使用する樹脂製の中空粒子は、先に述べたように、粒子内に単孔もしくは多孔の空隙を持つ樹脂からなる粒子(樹脂製の中空粒子とも呼ぶ)であり、このような形態のもので、かつ、そのガラス転移温度(Tg)が40〜140℃であるものであれば、いずれのものも使用できる。例えば、隠蔽性付与を目的として酸化チタンなどの白色顔料の代替として上市されている樹脂製の中空粒子を挙げることができる。このような樹脂製の中空粒子は、古くからその製造方法が検討されており、よく知られたものでは、ローム&ハース社の「アルカリ膨潤を利用する方法」(特開昭56−32513号公報)、日本合成ゴム社の「重合収縮を利用する方法」(特開昭61−87734号公報、特開昭62−127336号公報)、積水化学工業の「相分離を利用した方法」(特開2005−146223号公報)などが挙げられる。
本発明で使用する樹脂製の中空粒子の製造方法に限定はなく、上記に挙げた従来公知の方法で得ることができるが、例えば、その製造工程で、水などの各種溶媒に分散しているかたち(エマルションタイプ)を取り、使用した溶媒飛散後に、内部に単孔もしくは多孔の空間(空隙)を持つものとなる粒子を好適に使用できる。本発明で用いる樹脂製の中空粒子を構成するポリマー(樹脂)の種類は、特に限定されず、例えば、先に挙げた高分子合成樹脂エマルションを構成する樹脂と同様のものから適宜に選択して用いることができる。なお、高分子合成樹脂エマルションを構成する樹脂と、上記したTgを有する樹脂製の中空粒子を構成する樹脂は、同様の種類のものを用いても異なる種類のものを用いてもいずれでもよい。塗膜を形成した場合における相溶性等を考慮すると、両者を同じ種類の樹脂を含む構成とすることがより好ましい。図1に本発明の実施例で使用した樹脂製の中空粒子のSEM写真を示したが、このような内部に中空部分を有する多孔質ビーズは勿論のこと、おわん状や楕円おわん状の樹脂粒子であってもよい。
本発明で使用する樹脂製の中空粒子を構成するポリマーは、そのTgが40〜140℃であることを要するが、より好ましくは、Tgが60〜120℃であるものを用いるとよい。先にも述べたように、樹脂は、Tg付近に損失係数ηの最大値が存在し、この損失係数ηの値が高いほど制振性の効果が高いこととなるが、本発明者らの検討によれば、本発明で使用する樹脂製の中空粒子を構成する樹脂のTgが140℃を超えると、従来のガラスビーズなどの無機充填剤を用いた制振塗料の場合と同様、実用温度領域において、その形状によって発現している制振性の効果を充分に発揮させることができず、本発明の所期の目的を達成することができない。一方、Tgが40℃未満の場合、常温で樹脂製の中空粒子同士が融着するおそれがあり、中空粒子としての特性を発揮することができなくなり、この場合も本発明の所期の目的を達成することができない。
<Tg値>
本発明において、樹脂のTgは、次のFOX式による理論計算上のものをいう。
[FOX式]
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+…+Wi/Tgi+…+Wn/Tgn
(上記FOX式は、n種の単量体からなる重合体を構成する各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度をTgi(K)とし、各モノマーの質量分率を、Wiとしており、(W1+W2+…+Wi+…Wn=1)である。)
以下に、説明のために、後述する実施例で合成した高分子合成樹脂エマルションのTgを算出するのに使用した、下記の各単量体を単独に重合してなるホモポリマーのそれぞれTg値を下記に示した。
スチレン(St):100℃
メチルメタクリレート(MMA):105℃
ブチルメタクリレート(BMA):20℃
ブチルアクリレート(BA):−52℃
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
アクリル酸(AAc):105℃
メタクリル酸(mAAc):185℃
上記したように、本発明を構成する樹脂製の中空粒子は、粒子内に単孔もしくは多孔の空隙を持つ樹脂粒子であって、さらに、樹脂のTgが40〜140℃であればよく、それ以外の構成は特に限定されない。上記の構成とすることで、塗膜を形成した際にも、樹脂製の中空粒子は、従来の無機充填剤を同様の量で使用した場合に比べて、塗膜の発泡や膨張の発生が抑制された塗膜の形成性に優れたものとなる。例えば、本発明の実施例では、好適なものの代表例として、水に分散させたエマルションタイプの樹脂製の中空粒子を使用しているが、これに限定されず、その他の溶媒に分散されているものや、粉体や湿体タイプの樹脂製の中空粒子を水に分散させて使用したものであっても同様の効果が得られる。また、先にも述べたように、本発明を構成する樹脂製の中空粒子の製造方法に特に制限はなく、先に挙げた従来公知の樹脂製の中空粒子を用いることができる。中でも、水などの各種溶媒に樹脂製の中空粒子が分散しているエマルションタイプのものを用いるのがよく、さらには、高分子合成樹脂エマルションと同種の樹脂を構成成分として含むものを用いることがより好ましい。例えば、高分子合成樹脂エマルションが構成成分としてアクリル樹脂を含み、かつ、併存させる樹脂製の中空粒子が、スチレン・アクリルエマルション型中空粒子であることが挙げられる。このような構成とすることにより、高分子合成樹脂エマルションと樹脂製の中空粒子との相溶性がよくなり、塗膜を形成した際にフクレ等が発生しにくく、平坦面の形成性に優れたものとなる。ここで、エマルションタイプの樹脂製の中空粒子とは、溶媒飛散によって内部に形成された単孔もしくは多孔の空間(空隙)を持つものを意味する。
後述する本発明の実施例では、有機顔料や隠蔽剤として用いられるエマルションタイプの樹脂製の中空粒子(樹脂製中空粒子エマルション)を製造し、これを用いてその効果を検証した。なお、上記樹脂製中空粒子は、水に分散させたエマルションタイプの中空粒子であるが、本発明はこれに限定されず、粉体や湿体タイプの有機中空粒子を水に分散させたものであってもよい。
<水性樹脂組成物>
本発明の水性樹脂組成物は、上記の高分子合成樹脂エマルションと上記の樹脂製の中空粒子とを、必要に応じて、分散剤、消泡剤、炭酸カルシウムやマイカ等と共に混合することにより得ることができる。この際に用いる分散剤や消泡剤は、従来公知のものを用いることができ、特に限定されない。マイカや炭酸カルシウムは、従来より塗膜の制振性を高める材料として使用されており、その点から、制振塗料を製造する際には、これらの材料を併用することが好ましい。
上述したような高分子合成樹脂エマルションと、本発明で規定する樹脂製の中空粒子とを含む水性樹脂組成物中において、樹脂製の中空粒子は、該水性樹脂組成物中の固形分に対して、0.1質量%以上20.0質量%未満の割合で含有されることが好ましい。より好ましくは1.0質量%以上15.0質量%以下である。樹脂製の中空粒子の配合量が少なすぎると、十分な制振性を付与することができず、配合量が多すぎると乾燥塗膜にクラックやフクレ等の塗膜欠陥が発生してしまうため好ましくない。なお、本発明の水性樹脂組成物の固形分は、炭酸カルシウム及びマイカ等を使用する場合には、これらも含んだ固形分を意味する。
本発明で必要に応じて用いる炭酸カルシウムは、粉体状をなしたものであれば特に限定されない。炭酸カルシウムとしては、例えば、軽質炭酸カルシウム及び重質炭酸カルシウムが挙げられる。こうした炭酸カルシウムは、単独種を含有させてもよいし、複数種を組み合わせて含有させてもよい。炭酸カルシウムを用いる場合、その含有量は、水性樹脂組成物の固形分に対して、5〜50質量%程度であることが好ましい。
さらに、本発明の水性樹脂組成物には、必要に応じて、制振性付与成分、難燃剤、酸化防止剤、帯電防止剤、安定剤、発泡剤、滑剤、ゲル化剤、造膜助剤、凍結防止剤、粘度調整剤(アルカリ増粘剤)等を加えることができる。
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。また、以下において、「部」もしくは「%」とあるのはすべて質量基準である。
<製造例1:樹脂アクリルエマルションの製造>
実施例および比較例で主成分として使用した樹脂アクリルエマルションを、以下の方法により製造した。撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロートを備えた四ツ口セパラブルフラスコに、脱イオン水(193.3部)を仕込み、撹拌しながら内温を80℃まで昇温させた。一方、2−エチルヘキシルアクリレート(240.3部)、メチルメタクリレート(293.7部)、アクリル酸(6.7部)、並びにアニオン性乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(21.4部、花王製、商品名:ラテムルWX)、脱イオン水(223.7部)を、ホモディスパーで乳化させ、プレエマルションとした後、滴下ロートに投入した。
次に、セパラブルフラスコ内の内温を80℃に維持しながら、上記で得たプレエマルションを3時間かけて均一に滴下し、これと同時に、10%過硫酸アンモニウム水溶液(16.0部)を、3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、80℃で3時間熟成し、冷却後25%アンモニア水(5.0部)を添加して中和した。pHを調整後、120メッシュのろ布を用いてろ過し、制振材用樹脂アクリルエマルションを得た。得られたアクリルエマルションの固形分は55.0%、pHは7.8、粘度は300mPa・s、粒子径は0.2μmであった。また、このエマルションの理論Tgは0℃である。
<製造例2:樹脂製中空粒子エマルションの製造>
(1)種粒子エマルションの合成
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロートを備えた四ツ口セパラブルフラスコに、脱イオン水(726.0部)、メチルメタクリレート(5.0部)、メタクリル酸(0.1部)を仕込み撹拌しながら加温した。そして、セパラブルフラスコ内の内温が70℃になったところで、10%過硫酸アンモニウム水溶液(1.0部)を添加し、20分間80℃で加温した。一方、メチルメタクリレート(141.0部)、メタクリル酸(94.9部)、並びにアニオン性乳化剤として、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(5.0部、第一工業製薬製、商品名:ネオゲンSF−20)、脱イオン水(120.0部)を、ホモディスパーで乳化させ、プレエマルションとした後、滴下ロートに投入した。
次に、セパラブルフラスコ内の内温を80℃に維持しながら、上記で得たプレエマルションを3時間かけて均一に滴下し、これと同時に、10%過硫酸アンモニウム水溶液(10.0部)を、3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、80℃で3時間熟成し、冷却後120メッシュのろ布を用いてろ過し、種粒子エマルションを得た。得られた種粒子エマルションの固形分は22.5%、pHは2.5、粘度は10mPa・s、粒子径は0.3μmであった。
(2)中空粒子エマルションの合成
(1段目重合)
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロートを備えた四ツ口セパラブルフラスコに、脱イオン水(188.2部)を仕込み、上記で得た種粒子エマルション(66.0部)を添加し、撹拌しながら80℃に加温した。一方、ブチルアクリレート(2.4部)、ブチルメタクリレート(1.1部)、メチルメタクリレート(19.5部)メタクリル酸(0.7部)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1部、第一工業製薬製、商品名:ネオゲンSF−20)、脱イオン水(55.3部)を、ホモディスパーで乳化させ、プレエマルション1とした後、滴下ロートに投入した。そして、セパラブルフラスコ内の内温を80℃に維持しながら、上記で得たプレエマルション1を30分かけて均一に滴下し、これと同時に、10%過硫酸ナトリウム水溶液(1.2部)を、30分かけて均一に滴下した。
(2段目重合)
スチレン(128.3部)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.6部、第一工業製薬製、商品名:ネオゲンSF−20)、脱イオン水(51.8部)を、ホモディスパーで乳化させ、プレエマルション2とした後、滴下ロートに投入した。そして、セパラブルフラスコ内の内温を80℃に維持しながら、プレエマルション1の滴下が終了してから1時間後に、上記で得たプレエマルション2を60分かけて均一に滴下し、これと同時に、10%過硫酸ナトリウム水溶液(3.5部)を、60分かけて均一に滴下した。プレエマルション2の滴下終了後、種粒子を膨潤、溶解させるために、28%のアンモニア水(7.5部)を添加し、80℃で1時間熟成した。冷却後120メッシュのろ布を用いてろ過し、スチレン・アクリルエマルションを得た。得られたエマルションの固形分は27.0%、pHは9.2、粘度は35mPa・s、粒子径は0.8μmであった。
図1に、上記で得たスチレン・アクリルエマルションの電顕写真を示したが、写真にあるように、その粒子内に単孔もしくは多孔の空隙を持つ中空構造を有するものであった。また、このエマルションの理論Tgは、100℃である。
<製造例3:粒子が中空構造を有さないエマルションの製造>
比較例で使用した中空構造を有さない樹脂粒子からなるスチレン・アクリルエマルションは、以下のようにして製造した。撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロートを備えた四ツ口セパラブルフラスコに、脱イオン水(293.2部)を仕込み、撹拌しながら内温を70℃まで昇温させた。次いで、そこに、メチルメタクリレート(47.6部)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(1.9部、花王製、商品名:ラテムルWX)、脱イオン水(18.4部)をホモディスパー等で乳化させ、プレエマルションとしたものを全量投入した。さらに、10%過硫酸アンモニウム水溶液(1.4部)を加え、内温80℃で30分熟成させた。
一方、スチレン(428.4部)、アクリル酸(6.0部)、並びにアニオン性乳化剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(17.1部、花王製、商品名:ラテムルWX)、脱イオン水(166.7部)をホモディスパーで乳化させ、プレエマルションとしたものを滴下ロートに投入した。そして、セパラブルフラスコの内温を80℃に維持しながら、前記プレエマルションを3時間かけて均一に滴下し、これと同時に、10%過硫酸アンモニウム水溶液(12.9部)を、3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、80℃で3時間熟成し、冷却後25%アンモニア水(5.0部)を添加して中和した。pH調整後、120メッシュのろ布を用いてろ過し、樹脂粒子が中空構造を有さないスチレン・アクリルエマルションを得た。得られた粒子の固形分は49.0%、pHは8.0、粘度は150mPa・s、粒子径は0.8μmであった。また、このエマルションの理論Tgは、100℃である。
<実施例1>
製造例1で得た樹脂アクリルエマルション(固形分55%、粒子径0.2μm、Tg=0℃(理論値))を163.6gと、製造例2で得た中空粒子エマルション(固形分27%、粒子径0.8μm、Tg=100℃(理論値))を37.0gと、さらに、分散剤(川原油化製、商品名:SMA1440H)1.0g、消泡剤(サンノプコ製、商品名:ノプコ8034)0.5g、炭酸カルシウム200g及びマイカ54gを加え、高速撹拌機を用いて混合分散した。そして、アルカリ増粘剤を適量添加して、粘度が250ポアズ、P.W.C(Pigment Weight Concentration)72%の塗料を得た。この塗料を、真空撹拌脱泡機を用いて脱泡することにより、実施例のエマルション塗料1を得た。なお、脱泡は、真空度10mmHg(Torr)もしくは1333Paで5分間の条件で行い、以下の例でも同様とした。
<実施例2>
製造例1で得た樹脂アクリルエマルションを90.9gと、製造例2で得た樹脂製中空粒子エマルションを185.2gと、さらに、実施例1で用いたと同様の、分散剤1.0g、消泡剤0.5g、炭酸カルシウム200g及びマイカ54gを加え、高速撹拌機を用いて混合分散した。そして、アルカリ増粘剤を適量添加して、粘度が250ポアズ、P.W.C72%の塗料を得た。この塗料を、真空撹拌脱泡機を用いて脱泡することにより、実施例のエマルション塗料2を得た。
<比較例1(樹脂粒子を含有しない例)>
製造例1で得た樹脂アクリルエマルションを181.8gと、さらに、分散剤1.0g、消泡剤0.5g、炭酸カルシウム200g及びマイカ54gを、高速撹拌機を用いて混合分散した。そして、アルカリ増粘剤を適量添加して、粘度が250ポアズ、P.W.C72%の塗料を得た。この塗料を、真空撹拌脱泡機を用いて脱泡することにより、樹脂粒子を含有していない比較例のエマルション塗料4を得た。
<比較例2(中空構造を有さない樹脂粒子を含有した例)>
製造例1で得た樹脂アクリルエマルションを163.6gと、製造例3で得た中空構造を有さないスチレン・アクリルエマルション(固形分49%、粒子径0.8μm、Tg=100℃(理論値))を20.4gと、さらに、分散剤1.0g、消泡剤0.5g、炭酸カルシウム200g及びマイカ54gを加え、高速撹拌機を用いて混合分散した。そして、アルカリ増粘剤を適量添加して、粘度が250ポアズ、P.W.C72%の塗料を得た。この塗料を、真空撹拌脱泡機を用いて脱泡することにより、中空構造を有さない樹脂粒子を含有した比較例のエマルション塗料5を得た。
<比較例3(中空ガラスビーズを含有した例)>
製造例1で得た樹脂アクリルエマルションを163.6gと、市販の中空ガラスビーズであるSphericel25P45(ポッターズバロティーニ社製、平均粒子径45μm、以下、Sphericel25P45と記載)を10.0gと、さらに、分散剤1.0g、消泡剤0.5g、炭酸カルシウム200g及びマイカ54gを加え、高速撹拌機を用いて混合分散した。そして、アルカリ増粘剤を適量添加して、粘度が250ポアズ、P.W.C72%の塗料を得た。この塗料を、真空撹拌脱泡機を用いて脱泡することにより、中空ガラスビーズを含有した比較例のエマルション塗料6を得た。
<比較例4(中空ガラスビーズ含有した例)>
製造例1で得た樹脂アクリルエマルションを90.9gと、Sphericel25P45(平均粒子径45μm)を50.0gと、さらに、分散剤1.0g、消泡剤0.5g、炭酸カルシウム200g及びマイカ54gを加え、高速撹拌機を用いて混合分散した。そして、アルカリ増粘剤を適量添加して、粘度が250ポアズ、P.W.C72%の塗料を得た。この塗料を、真空撹拌脱泡機を用いて脱泡することにより、中空ガラスビーズを含有した比較例のエマルション塗料7を得た。
<参考例(樹脂製中空粒子エマルションの含有量を多くした例)>
製造例1で得た樹脂アクリルエマルションを36.4gと、製造例2で得た樹脂製中空粒子エマルションを296.3gと、さらに、実施例1で用いたと同様の、分散剤1.0g、消泡剤0.5g、炭酸カルシウム200g及びマイカ54gを加え、高速撹拌機を用いて混合分散した。そして、アルカリ増粘剤を適量添加して、P.W.C72%の塗料を得た。この塗料を、真空撹拌脱泡機を用いて脱泡することによって得られた塗料(エマルション塗料3)を用い、後述する方法で試験片を作成したところフクレが生じてしまい、他の例と同様に損失係数ηの測定を行うことができなかった。このことで、樹脂製中空粒子エマルションを用いた場合でも、その含有量が多くなり過ぎると塗料としての使用には適さないものになることがわかった。しかし、樹脂製中空粒子エマルションを使用することで、比較例の無機充填剤を用いた場合と比べて、成膜性に問題のない添加範囲を高めることができることを確認した。なお、後述するように、樹脂製中空粒子エマルションを高分子合成樹脂エマルションに含有させることによって実現される優れた制振性の付与効果は、上記した実施例1、2の結果から明らかである。
<評価及び試験方法>
実施例、比較例及び参考例で得た各エマルション塗料の制振性能を評価するために、(財)日本自動車研究所の試験システムに準拠した条件で試験片を作成し、片持ちはり法によって損失係数ηを測定した。ここでは、20〜60℃を実用温度域とし、20、30、40、50、60℃の各温度での損失係数ηを測定し、その各値を合算した5点トータル値で評価した。表1中に、何らの制振材料も使用していない比較例1の5点トータル値を1.0とし、この値と比較した結果を損失係数上昇率として示した。この上昇率が高い方が、実用温度領域での制振性の効果の発現の点で優れていると判断できる。
具体的な損失係数ηの測定は、以下のようにして行った。各エマルション塗料を200mm×10mm×1.6mmの鋼板製テストピースに、乾燥後約4.0kg/m2になるように塗布し、100℃で2時間加熱乾燥を行い、それらの中から、ワキ、ピンホール、クラック等の塗膜欠陥のないものを選び、これを試験片とした。そして、各試験片について、B&K(ブリュエルケアー)社製、複素弾性係数測定装置システム(MS18143−NT)を用い、JIS G 0602「制振鋼板の振動減衰特性試験方法」に準拠した測定条件で、20、30、40、50、60℃の各温度での損失係数ηを測定した。なお、共振周波数には、1次、2次・・・とあるが、測定精度の高い2次共振周波数時のηの値を使用した。得られた結果を、組成と共に表1に示した。なお、表中に示した「樹脂エマルション成分」の量は、使用した各エマルション中に含まれる固形分量で記載した。
表1に示したように、本発明で規定する中空粒子を使用したエマルション塗料1は、該塗料1と同じ樹脂アクリルエマルションを用いるものの、樹脂粒子を含有していないエマルション塗料4や、中空構造を有さない樹脂粒子を同様の配合比で含有したエマルション塗料5に比べて、全体的な(実用温度領域の各温度で)損失係数ηの上昇が見られた。すなわち、これらのことは、水性樹脂組成物の構成成分として、本発明で規定する樹脂製の中空粒子を用いることによって、塗膜の制振性の向上効果が得られることを意味する。
また、表1に示したように、エマルション塗料1は、無機系の中空ガラスビーズを当該塗料1と同様の配合比で使用した比較例3のエマルション塗料6と比較して、中空粒子の持つ減衰作用に加え、高温付近に、使用した樹脂製の中空粒子のTg由来の制振作用が付与されることがわかった。さらに、形成した塗膜は、無機系の中空ガラスビーズを使用したエマルション塗料6では、充填剤の量は、樹脂製の中空粒子を使用した塗料1と同様であるのに対し、フクレぎみであり、良好な塗膜が得られ難いといった塗膜の形成性の課題があった。一方、樹脂製の中空粒子の配合量を増やした実施例2のエマルション塗料2については、各温度については顕著な効果が認められたものの、全体的な(実用温度領域の各温度で)損失係数ηの上昇は見られなかった。本発明者らは、その理由を、使用した樹脂アクリルエマルションよりもTgが高い中空粒子の配合量が増えたことにより、エマルション塗料のTgが高温側にシフトしたためと考えている。しかし、エマルション塗料2と同様に、中空ガラスビーズの配合量を増やした比較例4のエマルション塗料7と比較すると、実施例2のエマルション塗料2は、フクレといった塗膜欠陥も少なく、さらに損失係数ηの値が大きい結果となり、その優位性が確認された。なお、参考例に示したように、さらに樹脂製の中空粒子の配合量を増やしたエマルション塗料3の場合には、フクレの問題が生じてしまうことがわかった。
本発明の水性樹脂組成物は、実用温度領域において、従来の制振塗料に比べてより効率的に制振性能を発揮することができるものとなることに加え、無機中空粒子を使用した従来の制振塗料に比べて、塗膜にフクレが発生する迄に、より多量の樹脂製の中空粒子を添加できるので、成膜性と、より高い制振効果の両立が期待できる。さらに、樹脂製の中空粒子を使用することで、無機中空粒子に比べて材料コストの低減を達成できるので、経済的な水性樹脂組成物の提供が可能になり、この点からも、その利用が期待される。

Claims (5)

  1. 少なくとも、ガラス転移温度(Tg)−70〜70℃である(メタ)アクリル樹脂を含むアクリル系の高分子合成樹脂エマルションと、ガラス転移温度(Tg)が40〜140℃である、スチレン・アクリルエマルション型の樹脂製の、内部に単孔もしくは多孔の空間を持つ中空粒子とを含有してなり、前記樹脂製の中空粒子を、その固形分中に0.1質量%以上20.0質量%未満の範囲で含んでなることを特徴とする実用温度領域において発現する制振性を付与するために用いられる水性樹脂組成物。
  2. 前記樹脂製の中空粒子のTgが60〜120℃である請求項1に記載の水性樹脂組成物。
  3. 前記樹脂製の中空粒子を、その固形分中に1.0質量%以上15.0質量%以下の範囲で含んでなる請求項1又はに記載の水性樹脂組成物。
  4. 前記高分子合成樹脂エマルションのガラス転移温度(Tg)が0〜70℃である請求項1〜のいずれか1項に記載の水性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性樹脂組成物を、塗膜形成成分として含有してなることを特徴とするエマルション塗料。
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