本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が挙げられる。この中でも、チタン化合物やゲルマニウム化合物は触媒活性が高く、少量で重合を行うことが可能であり、フィルム中に残留する金属量が少ないことから、フィルムの輝度が高くなるため好ましい。さらに、ゲルマニウム化合物は高価であることから、チタン化合物を用いることがより好ましい。
チタン化合物を用いたポリエステルの場合、チタン元素含有量は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは1〜20ppm、さらに好ましくは2〜10ppmの範囲である。チタン化合物の含有量が多すぎる場合は、ポリエステルを溶融押出する工程でポリエステルの劣化が促進され黄色味が強いフィルムとなる場合があり、また、含有量が少なすぎる場合は、重合効率が悪くコストアップや十分な強度を有するフィルムが得られない場合がある。また、チタン化合物によるポリエステルを用いる場合、溶融押出する工程での劣化抑制の目的で、チタン化合物の活性を下げるためにリン化合物を使用することが好ましい。リン化合物としては、ポリエステルの生産性や熱安定性を考慮すると正リン酸が好ましい。リン元素含有量は、溶融押出するポリエステル量に対して、好ましくは1〜300ppm、より好ましくは3〜200ppm、さらに好ましくは5〜100ppmの範囲である。リン化合物の含有量が多すぎる場合は、ゲル化や異物の原因となる可能性があり、また、含有量が少なすぎる場合は、チタン化合物の活性を十分に下げることができず、黄色味のあるフィルムとなる場合がある。
本発明のポリエステルフィルム中にはフィルムの耐候性の向上、タッチパネル等に用いられる液晶ディスプレイの液晶等の劣化防止のために、紫外線吸収剤を含有させることも可能である。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能である。粒子を配合する場合、配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。これらの中でも特に少量で効果が出やすいという点でシリカ粒子が好ましい。
また、粒子の平均粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは0.01〜3μmの範囲である。平均粒径を上記範囲で用いることにより、フィルムに適度な表面粗度を与え、また、後工程における種々の硬化性樹脂層等を形成させる場合にも不具合が生じにくい。
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、好ましくは5重量%未満、より好ましくは0.0003〜3重量%の範囲である。粒子が無い場合、あるいは少ない場合は、フィルムの透明性が高くなり、良好なフィルムとなるが、塗布層形成前の段階では滑り性が不十分となる場合があるため、注意が必要である。また、粒子含有量が多すぎる場合には硬化性樹脂層を形成してもヘーズが十分に下がらず、フィルムの透明性が不十分な場合がある。
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。
これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは10〜350μm、より好ましくは20〜300μmの範囲である。
本発明のフィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムを製造する場合、まず先に述べたポリエステル原料を、押出機を用いてダイから溶融押し出しし、溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法や液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に、通常70〜170℃で、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍で延伸する。引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る方法が挙げられる。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。より好ましくはインラインコーティングにより形成されるものである。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻上前のフィルムの何れかにコーティングする。以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と塗布層形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。また、延伸前にフィルム上に塗布層を設けることにより、塗布層を基材フィルムと共に延伸することができ、それにより塗布層を基材フィルムに強固に密着させることができる。さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦および横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、塗布層の造膜性が向上し、塗布層と基材フィルムをより強固に密着させることができ、さらには、強固な塗布層とすることができ、塗布層上に形成され得る各種の硬化性樹脂層との密着性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。
本発明においては、ポリエステルフィルムの一方の面に、平均粒径が0.10〜1.0μmの粒子を10重量%以上含有する塗布層(以下、第1塗布層と記載する場合がある)、およびポリエステルフィルムのもう一方の面に、ポリマーを含有する塗布層(以下、第2塗布層と記載する場合がある)を有することを必須の要件とするものである。
本発明者らは、高度に透明性が要求される用途において、透明性を落とす方向にはなるが、あえて塗布層中に粒子を多く含有させ、フィルムの滑り性を向上させ、後加工工程における傷付き欠陥の防止やしわが入る欠陥を防止した。さらに検討を続けた結果、特定の大きさの粒子を使用した本発明による塗布層形成によれば、第1塗布層上に硬化性樹脂層を設けることにより、塗布層に粒子を含有させることで生じたヘーズを低減させられ、透明性が良好な積層ポリエステルフィルムにできることを見出した。すなわち、透明性を確保したまま、傷やしわが少ないという特徴を兼ね備えた硬化性樹脂層を有する積層ポリエステルフィルムを作成する方法を見出した。
上記特性以外にも、各種の特性の向上が期待できる。平均粒径が0.10〜1.0μmの粒子を10重量%以上含有させることにより、塗布層と硬化性樹脂層の接触面積が増えるので、両層の密着性の向上が期待できる。また、透明な基材に透明な硬化性樹脂層を形成すると、最終製品も透明であるため、加工したのかどうかを判別しにくいが、本発明においては、加工前ではヘーズが高く透明ではないが、加工後ではヘーズが低く透明なフィルムとなるため、加工・未加工の区別をつけられやすいという付加価値もある。さらに、外光反射による干渉ムラに対しても軽減効果がある。塗布層に粒子による凹凸が形成されるため、塗布層上に硬化性樹脂層を形成した際に、塗布層の凹部分に硬化性樹脂層が入り込むことにより、塗布層と硬化性樹脂層との境界領域は両者の層の屈折率の中間付近となるため、外光反射が弱くなり干渉ムラが軽減される。
塗布層中に含有させる粒子としては、従来公知の各種の粒子を使用することができ、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。その中でも、硬さを付与できるという点において無機粒子が好ましく、塗布液の状態での安定性も考慮するとシリカ粒子がより好ましい。
第1塗布層に用いる粒子の平均粒径は、0.10〜1.0μmであることが必須であり、好ましくは0.10〜0.70μm、より好ましくは0.20〜0.60μm、さらに好ましくは0.25〜0.50μmの範囲である。これらの範囲で使用することで、フィルムの滑り性が良好なものとなり、高品質なフィルムとすることができる。また、塗布層上に硬化性樹脂層を形成した後の透明性が良好になるという利点や、硬化性樹脂層の加工・未加工の区別がしやすいという利点、さらに塗布層からの粒子の脱落やフィルムのブロッキングも防止することができるという利点もある。また、塗布層と硬化性樹脂層との中間付近の屈折率を有する厚さ方向の境界領域の範囲が適切なものとなり、外光反射による干渉ムラの軽減にも効果が期待できる。
本発明においては、第1塗布層にポリマーを含有させることが好ましい。ポリマーの役割としては、上述した粒子を塗布層中に保持することと、第1塗布層の上に形成される硬化性樹脂層との密着性を向上させることが挙げられる。
ポリマーとしては従来公知のポリマーを使用することができる。ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも硬化性樹脂層との密着性向上、塗布外観向上の観点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。基材のポリエステルフィルムとの相性を考えるとポリエステル樹脂がより好ましく、また、各種の硬化性樹脂層との密着性がより向上するという観点からは、アクリル樹脂やウレタン樹脂が好ましい。
ポリエステル樹脂とは、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸および、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオ−ル、2−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、p−キシリレングリコ−ル、ビスフェノ−ルA−エチレングリコ−ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ−ル、ジメチロ−ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジメチロ−ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ−ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
アクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーを含む重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体、さらにはアクリル系、メタアクリル系のモノマー以外の重合性モノマーとの共重合体、いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。また、密着性をより向上させるために、ヒドロキシル基、アミノ基を含有することも可能である。
上記重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
ウレタン樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物のことである。通常ウレタン樹脂はポリオールとイソシアネートの反応により作成される。ポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
ポリカーボネートポリオール類は、多価アルコール類とカーボネート化合物とから、脱アルコール反応によって得られる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、これらの反応から得られるポリカーボネート系ポリオール類としては、例えば、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるものが挙げられる。
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
硬化性樹脂層との密着性を向上させるために、上記ポリオール類の中でもポリエステルポリオール類およびポリカーボネートポリオール類がより好適に用いられる。
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用しても良く、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1 ,8−オクタンジアミン、1 ,9−ノナンジアミン、1 ,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1 ,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
本発明におけるウレタン樹脂は、溶剤を媒体とするものであってもよいが、好ましくは水を媒体とするものである。ウレタン樹脂を水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ウレタン樹脂の構造中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性、密着性に優れており好ましい。
また、導入するイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、第4級アンモニウム塩等、種々のものが挙げられるが、カルボキシル基が好ましい。ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤などの一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法がある。特に、カルボキシル基含有ジオールを用いて、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。
例えば、ウレタン樹脂の重合に用いるジオールに対して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)ブタン酸等を共重合させることができる。またこのカルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等で中和した塩の形にするのが好ましい。特に好ましいものは、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。かかるポリウレタン樹脂は、塗布後の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を、他の架橋剤による架橋反応点として用いることが出来る。これにより、塗布前の液の状態での安定性に優れる上、得られる塗布層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等をさらに改善することが可能となる。
また、塗布層の強度を向上させるために、架橋剤を併用することが好ましい。架橋剤とは従来公知の材料を使用することができ、例えば、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、メラミン化合物、シランカップリング化合物、ヒドラジド化合物、アジリジン化合物等が挙げられる。密着性が良好であるという観点において、上記中でもオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物が好ましい。また、硬化性樹脂層との密着性をより向上させる等のために、2種類以上の架橋剤を併用することがより好ましい。特にオキサゾリン化合物とエポキシ化合物、オキサゾリン化合物とイソシアネート系化合物、オキサゾリン化合物とカルボジイミド系化合物、イソシアネート系化合物とカルボジイミド系化合物の組み合わせで使用すると格段に密着性が向上することを見出した。また、塗布層の強度を高くするという観点において、メラミン化合物を併用することがより好ましいことも見出し、特に平均粒径が0.2μmを超える粒子で、粒子含有量が10重量%を超える場合には効果が大きいことが判明した。
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα,β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
オキサゾリン化合物に含有されるオキサゾリン基の含有量は、オキサゾリン基量で、通常0.5〜10mmol/g、好ましくは1〜9mmol/g、より好ましくは3〜8mmol/g、さらに好ましくは4〜6mmol/gの範囲である。上記範囲での使用が、硬化性樹脂層への密着性が向上し好ましい。
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えば、エピクロロヒドリンとエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
イソシアネート系化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等が例示される。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートがより好ましい。
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミンなどのアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。これらの中でも特に硬化性樹脂層との密着性が向上しやすいという観点から活性メチレン系化合物であることが好ましい。
また、本発明におけるイソシアネート系化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート系化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂との混合物や結合物を使用することが好ましい。
カルボジイミド系化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、塗布層上に形成され得る硬化性樹脂層との密着性の向上や、塗布層の耐湿熱性の向上のために用いられるものである。カルボジイミド系化合物は、分子内にカルボジイミド、あるいはカルボジイミド誘導体構造を1つ以上有する化合物であるが、より良好な密着性等のために、分子内に2つ以上有するポリカルボジイミド系化合物がより好ましい。
カルボジイミド系化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
さらに本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド系化合物の水溶性や水分散性を向上させるために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
カルボジイミド系化合物に含有されるカルボジイミド基の含有量は、カルボジイミド当量(カルボジイミド基1molを与えるためのカルボジイミド化合物の重さ[g])で、通常100〜1000、好ましくは250〜800、より好ましくは300〜700、さらに好ましくは350〜650の範囲である。上記範囲での使用が、硬化性樹脂層への密着性が向上し好ましい。
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
なお、これら架橋剤は、乾燥過程や、製膜過程において、反応させて塗布層の性能を向上させる設計で用いている。できあがった塗布層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
次に本発明の第2塗布層に関して説明する。第2塗布層の主目的は、硬化性樹脂層との密着性である。そのため、より密着性を確保しにくい硬化性樹脂層を形成する必要がある場合には、第1塗布層ではなく、第2塗布層上に形成することが好ましい。
第2塗布層に含有するポリマーとしては、上述した第1塗布層の形成に用いられ得るポリマーが挙げられる。加えて、硬化性樹脂層の中でも特に活性エネルギー線硬化性樹脂層との密着性をより向上させるために、炭素−炭素二重結合を含有するポリマーを使用することも可能である。密着性向上の観点から、炭素−炭素二重結合を含有するポリマーとしては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂やポリエステル樹脂が挙げられる。また、安定した炭素−炭素二重結合の導入の観点から、ウレタン樹脂がより好ましく、その中でも、特に、ポリエステルポリオール類から形成されるポリエステル系ウレタン樹脂やポリカーボネートポリオール類から形成されるポリカーボネート系ウレタン樹脂が好ましい。塗布層に炭素−炭素二重結合を含有させ、当該二重結合と、プリズム層、マイクロレンズ層やハードコート層等の形成に用いられる化合物の炭素−炭素二重結合とを活性エネルギー線照射時に反応させ、共有結合を形成し、それにより密着性を向上させることができる。
前記、炭素−炭素二重結合を含有するポリマーから形成された塗布層は、硬化性樹脂層の中でも活性エネルギー線による硬化性樹脂層、その中でも特に、プリズム層やマイクロレンズ層のような、通常、無溶剤系の活性エネルギー線硬化性の組成物から形成される、一般的には密着性を確保しにくい硬化性樹脂層との密着性向上に最適である。特に近年においては、小消費電力化の流れもあり、プリズムシートやマイクロレンズシートの輝度を従来よりも向上させる必要があり、そのために、プリズム層やマイクロレンズ層に用いる材料を高屈折率化する傾向にある。それらの硬化性樹脂層の高屈折率化のためには、芳香族を多く含有する化合物を用いる手法が取られている。しかし、一方で、芳香族の含有量が多くなると、その相互作用の少なさから、塗布層との密着性の低下につながってしまうという問題が発生する。そのために、芳香族の含有量を多く、屈折率が高い、すわなち、輝度を高くする設計でも密着性が十分に確保できる塗布層を有する積層ポリエステルフィルムが望まれている。
炭素−炭素二重結合を含有するウレタン樹脂とは、ウレタン樹脂の中に炭素−炭素二重結合を有するものであり、プリズム層、マイクロレンズ層やハードコート層等を形成する化合物中に含有する炭素−炭素二重結合と反応するものであれば従来公知の材料を使用することができる。例えば、ウレタン樹脂にアクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、アリル基等の形で導入することが挙げられる。
炭素−炭素二重結合には各種の置換基を導入することができ、例えば、メチル基やエチル基等のアルキル基、フェニル基、ハロゲン基、エステル基、アミド基等やあるいは共役二重結合のような構造を有していても良い。また、置換基の量としては、特に制限はなく、1置換体、2置換体、3置換体、あるいは4置換体いずれも使用することが可能であり、反応性を考慮すると1置換体、あるいは2置換体が好ましく、さらには1置換体がより好ましい。
ウレタン樹脂への導入の容易さとプリズム層、マイクロレンズ層やハードコート層等を形成する化合物中に含有する炭素−炭素二重結合との反応性を考慮すると、アクリレート基やメタクリレート基が好ましく、置換基がないアクリレート基やメタクリレート基がより好ましく、置換基がないアクリレート基が特に好ましい。
また、炭素−炭素二重結合部(C=C部分であり、分子量24)のウレタン樹脂全体に対する割合は好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、さらに好ましくは1.5重量%以上である。炭素−炭素二重結合部の樹脂全体に対する割合が0.5重量%以上であると効果的にプリズム樹脂、マイクロレンズ樹脂やハードコート樹脂等への密着性が向上する。
第2塗布層においても、第1塗布層と同様に架橋剤を併用することが好ましく、使用する架橋剤は第1塗布層と同様である。密着性が良好であるという観点において、上記中でもオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物が好ましい。また、硬化性樹脂層との密着性をより向上させる等のために、2種類以上の架橋剤を併用することがより好ましく、特にオキサゾリン化合物とエポキシ化合物、オキサゾリン化合物とイソシアネート系化合物、オキサゾリン化合物とカルボジイミド系化合物、イソシアネート系化合物とカルボジイミド系化合物の組み合わせで使用すると格段に密着性が向上する。
また、滑り性やブロッキングを改良するために、第2塗布層の形成に粒子を併用することが好ましい。粒子の種類としては第1塗布層の形成に用いられる粒子と同様のものを使用することができる。また、粒子の平均粒径としては、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.02〜0.70μm、さらに好ましくは0.05〜0.50μm、特に好ましくは0.10〜0.30μm、最も好ましくは0.12〜0.18μmの範囲である。これらの範囲で使用することで、フィルムの滑り性が良好なものとなり、ブロッキングもしにくいフィルムとなる。また、粒子の塗布層からの脱落防止にも効果的である。さらに、粒径が比較的大きい粒子を用いた場合には、塗布層が硬化性樹脂層に入り込む形で接触面積が増えるので、両層の密着性の向上が期待できると共に、塗布上に硬化性樹脂層を形成した際には光の微拡散効果もあり、バックライト用にはより好適なフィルムとすることが可能である。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、いずれの塗布層の形成においても必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を併用することも可能である。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する第1塗布層中の割合として、粒子は、10重量%以上であることが必須で、好ましくは12〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは25〜40重量%の範囲である。上記範囲で使用することにより、フィルムの滑り性が十分なものとなり、後加工工程における欠陥を少なくでき、また、効果的なヘーズの調整が可能となり、硬化性樹脂層の加工・未加工の区別がつけやすくなる。また、塗布層と硬化性樹脂層との中間付近の屈折率を有する面方向の境界領域の範囲が適切なものとなり、外光反射による干渉ムラの軽減にも効果が期待できる。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する第1塗布層中の割合として、ポリマーは、好ましくは10〜85重量%、より好ましくは15〜75重量%、さらに好ましくは25〜65重量%の範囲である。上記範囲で使用することにより、良好な密着性や粒子の脱落防止に効果がある。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する第1塗布層中の割合として、架橋剤由来の成分は、好ましくは80重量%未満、より好ましくは5〜65重量%の範囲、さらに好ましくは10〜50重量%の範囲である。上記範囲で使用することにより、良好な塗布外観や強固な塗布層となり、密着性の良い硬化性樹脂層を形成することができる。特に塗布層を強固にしたい場合はメラミン化合物を併用することが好ましく、その好ましい範囲は3〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%の範囲である。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する第2塗布層中の割合として、ポリマーは、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15〜90重量%、さらに好ましくは25〜85重量%、特に好ましくは40〜75重量%の範囲である。上記範囲で使用することにより、密着性が良好なものとなる。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する第2塗布層中の割合として、架橋剤由来の成分は、好ましくは80重量%未満、より好ましくは3〜70重量%の範囲、さらに好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜45重量%の範囲である。上記範囲で使用することにより、良好な塗布外観や強固な塗布層となり、密着性の良い硬化性樹脂層を形成することができる。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する第2塗布層中の割合として、粒子は、好ましくは70重量%未満、より好ましくは3〜60重量%、さらに好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%の範囲である。上記範囲で使用することにより、フィルムの滑り性が十分なものとなり、また、硬化性樹脂層形成による微拡散が効果的なものとなる。
塗布層中の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
塗布層の形成に関して、上述の一連の化合物を溶液または溶媒の分散体として、固形分濃度が0.1〜80重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。特にインラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、水溶液または水分散体であることがより好ましいが、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。また、有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の膜厚は、通常0.001〜1μm、好ましくは0.01〜0.5μm、より好ましくは0.03〜0.2μmの範囲である。膜厚を上記範囲で使用することで、粒子の脱落防止に効果的であり、また、良好な塗布外観や硬化性樹脂層との密着性を確保することができる。
また、粒子の平均粒径と塗布層の膜厚との関係は、平均粒径/塗布層の膜厚として、好ましくは1.0以上の範囲、より好ましくは1.2〜20の範囲、さらに好ましくは1.5〜15の範囲、特に好ましくは1.7〜10の範囲である。上記範囲で使用することにより、塗布層を設けた積層ポリエステルフィルムとして高ヘーズ化でき、かつ硬化性樹脂層を設けた後のヘーズ低下を効果的に行うことができる。また粒子の塗布層からの脱落防止にも寄与することが可能となる。
本発明のフィルムにおいて、塗布層を形成する方法としては、例えば、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、通常、70〜270℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
硬化性樹脂層を加工の際に傷やしわ等の欠陥を低減させるために、滑り性の良い塗布層であることが好ましい。滑り性の指標として、静止摩擦係数が挙げられる。塗布層に含有する粒子の平均粒径や含有量で調整することが可能である。静止摩擦係数の範囲として、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.1〜0.6、さらに好ましくは0.2〜0.5の範囲である。これらの範囲で使用することで、フィルムの滑り性が硬化性樹脂層の加工に最適な範囲となり、傷やしわ等の欠陥が発生することを防止できる。また、ロール状にしたときの滑り性が悪いことにより発生する点状欠陥を低減することも可能である。
硬化性樹脂層の加工・未加工の区別をつけやすくするためには、第1塗布層上に硬化性樹脂層を形成することによりヘーズが低下することが好ましい。ヘーズの低下量は、特に制限されないが、好ましくは1.0%以上、より好ましくは3.0%以上、さらに好ましくは5.0%以上、特に好ましくは7.0%以上、最も好ましくは10%以上の範囲である。上記範囲の設定とすることで、会議室、作業室、検査室等のさまざまな場所やフィルムの見方による硬化性樹脂層の加工・未加工の区別を付けやすくなる。
本発明の硬化性樹脂層を形成する前の塗布層を有するポリエステルフィルムのヘーズは、特に限定されないが、好ましくは3.0%以上である。粒子によりヘーズを調整する場合、フィルムの見え方は、使用する粒子の種類や大きさ、また基材の状態にも依存するため一概には言えないが、硬化性樹脂層の加工・未加工の区別をより付けやすくするためには、より好ましくは5.0%を超えること、さらに好ましくは10%を超えること、特に好ましくは15%を超えることである。
本発明においては、第1塗布層および第2塗布層上に硬化性樹脂層を有することを必須の要件とするものである。硬化性樹脂層としては、例えば、プリズム層、マイクロレンズ層、ハードコート層、スティッキング防止層、光拡散層等が挙げられる。
第1塗布層上に形成する硬化性樹脂層としては、特に限定されるものではないが、本発明においては、ヘーズが比較的低いことが一般的な、スティッキング防止層やハードコート層、あるいは低ヘーズ(8.0%以下)な光拡散層等が好ましく、硬化性樹脂層のヘーズとしては、好ましくは8.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、特に好ましくは0.5%以下の範囲である。硬化タイプとしては熱硬化でも活性エネルギー線硬化でもどちらでも良好である。硬化性樹脂層の厚みとしては、特に限定はさるものではないが、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは1〜15μm、さらに好ましくは1〜8μmの範囲である。
一方、第2塗布層上に形成する硬化性樹脂層としては、第1塗布層上に形成する硬化性樹脂層よりも密着性に乏しい層を配置することがトータルフィルム設計としては好ましい。特に限定されるものではないが、プリズム層やマイクロレンズ層等が挙げられる。これらの硬化性樹脂層は通常溶剤を含有しないか、含有しても5重量%以下である化合物から形成されるため、塗布層への浸透が弱く、密着性に乏しいものとなる傾向がある。特に近年のように高輝度化のための設計にされたプリズム層やマイクロレンズ層は、より一層、密着性に乏しいものとなるため、本発明の第2塗布層が効力を発揮する。硬化のタイプとしては、熱硬化よりも活性エネルギー線硬化の方が好ましい。
すなわち、本発明における好ましい構成としては、硬化性樹脂層/第1塗布層/ポリエステルフィルム/第2塗布層/活性エネルギー線硬化性樹脂層、であり、特に好ましくは、(スティッキング防止層、ハードコート層、あるいは低ヘーズな光拡散層から選ばれる硬化性樹脂層)/第1塗布層/ポリエステルフィルム/第2塗布層/(プリズム層またはマイクロレンズ層)である。
硬化性樹脂層の例として、ハードコート層の場合、使用される材料としては、特に限定されないが、例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、テトラエトキシシラン等の反応性珪素化合物等の硬化物が挙げられる。これらのうち生産性及び硬度の両立の観点より、活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートを含む組成物の重合硬化物であることが特に好ましい。
活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートを含む組成物は特に限定されるものでない。例えば、公知の活性エネルギー線硬化性の単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートを一種類以上混合したもの、活性エネルギー線硬化性ハードコート用樹脂材として市販されているもの、あるいはこれら以外に本実施形態の目的を損なわない範囲において、その他の成分をさらに添加したものを用いることができる。
活性エネルギー線硬化性の単官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリール(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性の二官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ) アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタンアクリレート等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートを含む組成物に含まれるその他の成分は特に限定されるものではない。例えば、無機又は有機の微粒子、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等が挙げられる。また、ウェットコーティング法において成膜後乾燥させる場合には、任意の量の溶媒を添加することができる。
ハードコート層等の硬化性樹脂層の形成方法は、有機材料を用いた場合にはロールコート法、ダイコート法等の一般的なウェットコート法が採用される。形成されたハードコート層には必要に応じて加熱や紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射を施し、硬化反応を行うことができる。
また、硬化性樹脂層の例として、無溶剤系の硬化性樹脂層であるプリズム層やマイクロレンズ層がある。プリズム層は、近年、輝度を効率的に向上させるため、各種の形状が提案されているが、一般的には、断面三角形状のプリズム列を並列させたものである。また、マイクロレンズ層も同様に各種の形状が提案されているが、一般的には、多数の半球状凸レンズをフィルム上に設けたものである。いずれの層も従来公知の形状のものを設けることができる。
プリズム層の形状としては、例えば、厚さ10〜500μm、プリズム列のピッチ10〜500μm、頂角40°〜100°の断面三角形状のものが挙げられる。マイクロレンズ層の形状としては、例えば、厚さ10〜500μm、直径10〜500μmの半球状のものが挙げられるが、円錐、多角錘のような形状をしていても良い。
プリズム層やマイクロレンズ層は、一般的には無溶剤系(溶剤の含有量が5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは溶剤を含有しない)の活性エネルギー線硬化性化合物から形成される。また、ハードコート層は一般的には、溶剤系の活性エネルギー線硬化性化合物から形成される。
プリズム層やマイクロレンズ層を形成する化合物としては、上述したハードコート層の形成で用いられる化合物が挙げられる。さらに、高輝度化するためには、屈折率を高くできる材料を使用することが好ましい。
高輝度化のためのプリズム層やマイクロレンズ層の屈折率としては、1.57以上であることが好ましい。本発明の積層ポリエステルフィルムにおいては、屈折率は高い方が輝度が向上する傾向にある。本発明においてポリエステルフィルムの屈折率は1.65付近であり、それゆえ、プリズム層やマイクロレンズ層等の活性エネルギー線硬化性樹脂層の屈折率の範囲は、通常1.57〜1.65、好ましくは1.58〜1.64、さらに好ましくは1.59〜1.63の範囲である。上記範囲にすることで、輝度を高くすることができる。
屈折率を前記の範囲にするためには、上述した一般的な化合物に加え、芳香族構造を多く有する化合物、硫黄原子、ハロゲン原子、金属化合物を使用する方法が挙げられる。その中でも特に、プリズム層やマイクロレンズ層の屈折率が均一化でき、環境上の観点から、芳香族構造を多く有する化合物や硫黄原子を用いる方法が好ましい。
芳香族構造を多く有する化合物としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]フェナントレン、ピレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ペリレン等の縮合多環式芳香族構造を有する化合物、ビフェニル構造を有する化合物、フルオレン構造を有する化合物等が挙げられる。
縮合多環式芳香族構造、ビフェニル構造、フルオレン構造には各種の置換基が導入されていてもよく、特にフェニル基等、ベンゼン環を含有する置換基が導入されているものは屈折率をより高くすることができるため好ましい。また、硫黄原子やハロゲン原子等、屈折率を高くする原子を導入することも可能である。さらに、塗布層との密着性を向上させるために、エステル基、アミド基、水酸基、アミノ基、エーテル基等、各種の官能基を導入することも可能である。
本発明のフィルムにおける活性エネルギー線硬化性樹脂層中の縮合多環式芳香族構造、ビフェニル構造、フルオレン構造およびそれらの構造に置換する芳香族化合物の合計は、他の構造の種類と量、あるいは硬化状況にも依存するため一概には言えないが、紫外線硬化性樹脂層全体に対して、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは25〜70重量%、さらに好ましくは30〜60重量%の範囲である。上記範囲で使用することにより、輝度が高い硬化性樹脂層を形成することが可能である。
本発明のフィルムにおける活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成する縮合多環式芳香族構造、ビフェニル構造、フルオレン構造を有する化合物の割合は、活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成する化合物組成の全不揮発成分に対する割合として、通常10重量%以上、好ましくは20〜90重量%、さらに好ましくは25〜80重量%の範囲である。上記範囲で使用することにより、輝度が高い硬化性樹脂層を形成することが可能である。
また、硬化性樹脂層の例として、スティッキング防止層や光拡散層は粒子とバインダーを含有してなるものである。スティッキング防止層は光拡散層と同様なバインダーと粒子を含有するもので、粒子の含有量は、光拡散性が目的ではないため、より小さい粒径で、より少ない量を含有させる方法が一般的である。
スティッキング防止層や光拡散層に含有させる粒子としては、従来公知の粒子を使用することができ、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂等の有機粒子や、シリカ、金属酸化物、硫酸バリウム等の無機粒子を使用することができる。中でも透明性が良好であるアクリル樹脂やアクリルウレタン樹脂が好適に用いられる。また、これら粒子の粒径は特に限定されるものではないが、平均粒径として1〜50μm、より好ましくは1〜10μmである。
スティッキング防止層や光拡散層に含有させるバインダーは粒子を固定させるために使用するものであり、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ樹脂、上述したハードコート層の形成に用いられるものと同様な活性エネルギー線硬化型樹脂等が挙げられる。加工性を考慮するとポリオール化合物が好適に用いられ、例えば、アクリルポリオールやポリエステルポリオール等が挙げられる。
ポリオール化合物をバインダーとして用いた場合は、硬化剤としてイソシアネートを含有させると良い。イソシアネートを含有させることにより、より強固な架橋構造を形成することができ、熱硬化性樹脂層としての物性が向上する。また、バインダーとして活性エネルギー線硬化性樹脂を使用する場合は(メタ)アクリレート系樹脂が好ましく、硬化性樹脂層の硬度の向上に役立てることができる。
スティッキング防止層や光拡散層には必要に応じて、界面活性剤、微小無機充填剤、可塑剤、硬化剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、防錆剤等を含有していても良い。
スティッキング防止層や光拡散層におけるバインダーと粒子の混合割合は、得ようとする特性により適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、重量比で、バインダー/粒子が0.1〜50の範囲、より好ましくは0.5〜20の範囲である。
スティッキング防止層や光拡散層を形成する方法としては、バインダーと粒子を含む塗布液を調製し、塗布・乾燥させることによる方法が挙げられる。塗布方法としては、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、スプレーコート、スピンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。スティッキング防止層や光拡散層の厚みは、特に限定されるものではないが、光拡散性、膜強度等を考慮して、1〜100μmの範囲、より好ましくは1〜30μmの範囲である。
硬化性樹脂層の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS、ESCA、蛍光X線、NMR等の分析によって行うことができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの極限粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径の測定方法
TEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H−7650、加速電圧100V)を使用して塗布層を観察し、粒子10個の粒径の平均値を平均粒径とした。
(3)ポリマー中の炭素−炭素結合部の重量
ポリマーを減圧乾燥後、NMR(Bruker Biospin社製 AVANCEIII600)を用いて、1Hと13Cの各ピークを帰属し、計算により求めた。
(4)塗布層の膜厚測定方法
塗布層の表面をRuO4で染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuO4で染色し、塗布層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H−7650、加速電圧100V)を用いて測定した。なお、膜厚は粒子の部分を含まない箇所で測定した。
(5)屈折率の測定方法
塗布層上に硬化性樹脂層の形成に用いられる硬化性組成物を膜厚10μmで平坦に配置し、硬化させ、平坦な硬化性樹脂層を形成した。硬化性樹脂層側の屈折率を屈折計(株式会社アタゴ製 SL−NA−B)を用いて測定した。
(6)摩擦係数の測定方法
幅10mm、長さ100mmの平滑なガラス板上に第1塗布層側を上面としてフィルムを貼り付け、その上に幅18mm、長さ120mmに切り出したフィルムの第1塗布層側を下面として、塗布層側同士が擦れあうように直径8mmの金属ピンに押し当て、金属ピンをガラス板の長手方向に、加重30g、40mm/分で滑らせて摩擦力を測定し、滑らせ始めた点の摩擦係数(静止摩擦係数)を測定した。なお、測定は、室温23±1℃ 、湿度50±0.5%RHの雰囲気下で行い、摩擦係数が高く測定振れが大きい場合は、振れの中間の値を摩擦係数とした。
(7)ヘーズの測定方法
株式会社村上色彩技術研究所製ヘーズメーター HM−150を使用して、JIS K 7136で測定した。
(8)第1塗布層上に硬化性樹脂層を形成した際のヘーズの低下量の測定方法
フィルムの第1塗布層上のみに硬化性樹脂層を形成後、(6)による方法でヘーズを測定し、硬化性樹脂層を形成前のヘーズからの差を計算した。
(9)硬化性樹脂層加工前後の判別性評価方法
硬化性樹脂層を第1塗布層上に形成する前と形成した後の20cm×20cmフィルムの差を観察した。観察の仕方としては、会議室、検査室を想定して、白色机上(判別性1)、黒色机上(判別性2)の2か所において、それぞれ硬化性樹脂層が形成されていないフィルムと硬化性樹脂層が形成されたフィルムを置き、斜め30度で1m離れた箇所から観察した場合の両者の差を確認した。差が瞬時に判別できる場合を5点、3秒間の観察で容易に判別できる場合を4点、じっくり見ると判別できる場合を3点、判別しづらい場合を2点、判別できない場合を1点とした。点数が高い方が好ましい。
(10)第1塗布層と硬化性樹脂層の密着性の評価方法
第1塗布層上に硬化性樹脂層を形成したフィルムに対して、80℃、90%RHの環境下で50時間処理した後のフィルムの硬化性樹脂層に、10×10のクロスカットをして、その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後の剥離面を観察し、剥離面積が5%未満ならば◎、5%以上10%未満なら○、10%以上50%未満なら△、50%以上ならば×とした。
(11)第2塗布層と硬化性樹脂層の密着性の評価方法
第2塗布層上に硬化性樹脂層を形成したフィルムに対して、80℃、90%RHの環境下で50時間処理した後のフィルムの硬化性樹脂層にカッターナイフで5mm間隔にキズをつけ、18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした。剥離面を観察し、剥離面積が5%未満ならば◎、5%以上20%未満なら○、20%以上50%未満なら△、50%以上ならば×とした。
(12)輝度の評価方法
輝度測定装置(株式会社トプコン製BM−7)を用いて、輝度を測定し、比較例5と比較して輝度が2%以上向上している場合を◎、向上しているが2%未満である場合を○、同等以下である場合を×とした。
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、エチルアシッドフォスフェートを生成ポリエステルに対して30ppm、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して100ppmを窒素雰囲気下、260℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、テトラブチルチタネートを生成ポリエステルに対して50ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.3kPaまで減圧し、さらに80分、溶融重縮合させ、極限粘度0.63のポリエステル(A)を得た。
<ポリエステル(B)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して900ppmを窒素雰囲気下、225℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、正リン酸を生成ポリエステルに対して3500ppm、二酸化ゲルマニウムを生成ポリエステルに対して70ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.4kPaまで減圧し、さらに85分、溶融重縮合させ、極限粘度0.64のポリエステル(B)を得た。
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、溶融重合前に平均粒径2.7μmのシリカ粒子を0.3重量部添加する以外はポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・粒子:(IA) 平均粒径0.15μmのシリカ粒子
・粒子:(IB) 平均粒径0.20μmのシリカ粒子
・粒子:(IC) 平均粒径0.30μmのシリカ粒子
・粒子:(ID) 平均粒径0.45μmのシリカ粒子
・ポリエステル樹脂:(IIA)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
・アクリル樹脂:(IIB)下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N−メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
・炭素−炭素二重結合を有するウレタン樹脂:(IIC)
ヒドロキシエチルアクリレートユニット:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートユニット:ヘキサメチレンジイソシアネート3量体ユニット:カプロラクトンユニット:エチレングリコールユニット:ジメチロールプロパン酸ユニット=18:12:22:26:18:4(mol%)から形成される炭素−炭素二重結合部の重量が2.0重量%であるウレタン樹脂。
・炭素−炭素二重結合部を有するウレタン樹脂:(IID)
ヒドロキシエチルアクリレートユニット:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートユニット:ヘキサメチレンジイソシアネート3量体ユニット:カプロラクトンユニット:エチレングリコールユニット:ジメチロールプロパン酸ユニット=6:10:20:38:22:4(mol%)から形成される炭素−炭素二重結合部の重量が0.7重量%であるウレタン樹脂。
・オキサゾリン化合物:(IIIA)
オキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリルポリマー エポクロス(オキサゾリン基量=4.5mmol/g、株式会社日本触媒製)
・エポキシ化合物:(IIIB)ポリグリセロールポリグリシジルエーテル
・イソシアネート系化合物:(IIIC)
ヘキサメチレンジイソシアネート1000部を60℃で攪拌し、触媒としてテトラメチルアンモニウム・カプリエート0.1部を加えた。4時間後、リン酸0.2部を添加して反応を停止させ、イソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物を得た。得られたイソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物100部、数平均分子量400のメトキシポリエチレングリコール42.3部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート29.5部を仕込み、80℃で7時間保持した。その後反応液温度を60℃に保持し、イソブタノイル酢酸メチル35.8部、マロン酸ジエチル32.2部、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液0.88部を添加し、4時間保持した。n−ブタノール58.9部を添加し、反応液温度80℃で2時間保持し、その後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート0.86部を添加して得られたブロックポリイソシアネート。
・カルボジイミド系化合物:(IIID)
ポリカルボジイミド化合物 カルボジライト(カルボジイミド当量=600、日清紡株式会社製)
・メラミン化合物:(IIIE)ヘキサメトキシメチロールメラミン
硬化性樹脂層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・紫外線硬化性化合物:(ia)
2−ビフェノキシエチルアクリレート
・紫外線硬化性化合物:(ib)
4,4’−(9−フルオレニリデン)ビス(2−フェノキシエチルアクリレート)
・紫外線硬化性化合物:(ic)
エチレングリコール変性ビスフェノールAアクリレート(エチレングリコール鎖=8)
・紫外線硬化性化合物:(id)
エチレングリコール変性ビスフェノールAアクリレート(エチレングリコール鎖=10)
・紫外線硬化性化合物:(ie)
ヘキサンジオールジアクリレート
・光重合開始剤:(ii)
ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)、(C)をそれぞれ91%、3%、6%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:14:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.3倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記表1に示す塗布液A1を塗布層の膜厚(乾燥後)が0.11μmになるように塗布し(第1塗布層)、反対側の面に塗布液B2を塗布層の膜厚(乾燥後)が0.04μmになるように塗布し(第2塗布層)、テンターに導き、横方向に120℃で3.9倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、厚さ250μmのポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの第1塗布層上に硬化性樹脂層として、樹脂(株式会社日本触媒製 ハルスハイブリッド UV−G301)88質量部、イソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製、デスモジュール N−3200)9質量部、平均粒径5μmのアクリル樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製 MBX−15)3質量部、トルエン 100質量部、メチルエチルケトン 100質量部を調製し、塗布・加熱硬化させることにより、厚さ3μmのスティッキング防止層(当該層のヘーズは0.4%、以下S1と記載する場合がある)が形成されたフィルムを得た。
次に第2塗布層上に硬化性樹脂層として、プリズム層形成のために、ピッチ50μm、頂角65°のプリズム列が多数並列している型部材に、下記表3に示す組成物P1を配置し、その上から上記で得られたフィルムの第2塗布層が組成物と接触する向きに積層ポリエステルフィルムを重ね、ローラーにより組成物を均一に引き伸ばし、紫外線照射装置から紫外線を照射し、硬化させた。次いで、フィルムを型部材から剥がし、プリズム層(以下、P1と記載する場合がある)が形成されたフィルムを得た。
得られたフィルムを評価したところ、摩擦係数は低く滑り性が良好な塗布層であったため傷やしわ欠陥はなく、また、スティッキング防止層の加工・未加工の判別性、密着性およびプリズム層の密着性、輝度は良好であった。このフィルムの特性を下記表4および5に示す。
実施例2〜165、176〜185、196〜205、216〜225:
実施例1において、塗布剤組成を表1および2に示す塗布剤組成に変更し、第2塗布層上に形成する硬化性樹脂層の化合物組成を表3に示すとおりに変更する以外は実施例1と同様にして製造し、積層ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムは表4〜15に示すとおり、摩擦係数は低く滑り性が良好な塗布層であったため傷やしわ欠陥はなく、また、スティッキング防止層の加工・未加工の判別性、およびプリズム層の密着性、輝度は良好であった。
実施例166〜175、186〜195、206〜215:
実施例1において、塗布剤組成を表1および2に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様に塗布層が形成されたフィルムを得た。得られたフィルムの第1塗布層上に硬化性樹脂層として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート84質量部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート8質量部、平均粒径5μmのアクリル樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製 MBX−15)3質量部、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製 イルガキュア 184)5質量部、トルエン 100質量部、メチルエチルケトン 100質量部を調整し、塗布・乾燥し、紫外線を照射して硬化させることにより、厚さ3μmのスティッキング防止層(当該層のヘーズは0.4%、以下S2と記載する場合がある)が形成されたフィルムを得た。次に第2塗布層上に形成する硬化性樹脂層の化合物組成を表3に示すとおりに変更する以外は実施例1と同様にプリズム層が形成されたフィルムを得た。
得られたフィルムを評価したところ、摩擦係数は低く滑り性が良好な塗布層であったため傷やしわ欠陥はなく、また、スティッキング防止層の加工・未加工の判別性、密着性およびプリズム層の密着性、輝度は良好であった。このフィルムの特性を下記表10〜13に示す。
実施例226:
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:18:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.3倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記表1に示す塗布液A5を塗布層の膜厚(乾燥後)が0.11μmになるように塗布し(第1塗布層)、反対側の面に塗布液B2を塗布層の膜厚(乾燥後)が0.10μmになるように塗布し(第2塗布層)、テンターに導き、横方向に120℃で3.9倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、厚さ250μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの塗布層上に実施例1と同様に硬化性樹脂層を両面に形成した。
得られたフィルムを評価したところ、摩擦係数は低く滑り性が良好な塗布層であったため傷やしわ欠陥はなく、また、スティッキング防止層の加工・未加工の判別性、密着性およびプリズム層の密着性、輝度は良好であった。このフィルムの特性を下記表14および15に示す。
比較例1:
実施例1において、塗布層を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムを評価したところ、下記表17に示すとおり、摩擦係数は高く塗布層の滑り性は悪く、スティッキング防止層の加工・未加工の判別性や密着性も悪いものであった。
比較例2〜5:
実施例1において、塗布剤組成を表1および2に示す塗布剤組成に変更し、第2塗布層上に形成する硬化性樹脂層の化合物組成を表3に示すとおりに変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムを評価したところ、下記表16および17に示すとおり、スティッキング防止層の加工・未加工の判別性が悪く、摩擦係数は高めで塗布層の滑り性が十分でない場合も見られた。