JP6268998B2 - 鋼製部材の端部構造 - Google Patents
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Description
地震時においては部材の塑性変形により入力エネルギーを構造物に吸収させることが現在の耐震設計の原則であるが、前記技術においては、梁端の補剛または補強により塑性化を抑止しているだけであるので、鋼材の高強度化および断面がスリム化された部材に対して前述の課題を解決できない。つまり構造物の耐震性能に影響する鋼製部材の塑性変形性能を十分に確保することができない。
地震等の外力によって塑性化が想定される前記鋼製部材のフランジの軸方向の範囲において、少なくともフランジ縁端部に、前記フランジの面外変形を拘束しかつ前記フランジの軸方向への変形を拘束しない面外変形拘束部材が設けられていることを特徴とする。
なお、Lは鋼製柱または鋼製梁の長さであり、dは鋼製梁の最大の梁成または鋼製柱の最大径である。
また、フランジの軸方向とは、鋼製梁や鋼製柱等の鋼製部材の長手方向に沿う軸方向のことを意味する。
また、面外変形拘束部材は、少なくともフランジ縁端部に設ければよく、フランジの上下の表面を覆うようにして設けてもよい。
なお、面外変形拘束部材の長さを塑性化が想定される鋼製部材の軸方向の範囲より大幅に大きくすることは、発明効果に対する経済性が低下することになるので、通常は前述の塑性化が想定される範囲にdを加えた長さを上限とすれば十分である。
前述の通り、鋼製部材の降伏強度Fおよびフランジの幅厚比が大になるほどこの現象が早期に発生することになり、さらに梁の塑性変形倍率ηの低下は顕著となる。
したがって、鋼製部材の塑性変形倍率ηを高めることができ、高強度化した鋼製部材およびスリム化された断面を適用する場合においても、低コストかつ簡易な手段で鋼製部材の塑性変形性能を確保でき、この結果耐震性能を向上させることができる。
したがって、前記特許文献2に記載の技術のように、補剛パネルの梁材軸方向の溶接および直交する柱部材に対する溶接を必要とせず、施工が容易となる。
前記面外変形拘束部材は、その溝部が前記フランジ縁端部に係合されたうえで、前記フランジにその軸方向の1カ所で固定されていることが好ましい。
また、面外変形拘束部材が、フランジに鋼製部材の軸方向の1カ所で固定されているので、地震力を受けた場合にフランジ縁端部から脱落するのを防止したうえで、溝部の両側面によってフランジの面外変形を拘束できるとともに、フランジの鋼製部材の軸方向への変形を拘束しないので、簡単な構成によって、塑性化が生じた後の局部座屈発生を抑制できるとともに、局部座屈に伴う応力低下を抑制できる。
また、前記面外変形拘束部材は、フランジ縁端部の板厚方向(面外方向)の変形を拘束する必要があるため、板厚方向(面外方向)に対して十分な曲げ剛性を有する必要がある。面外変形拘束部材の曲げ剛性の調整は、面外変形拘束部材の断面形状(幅および高さ)により行うことが可能である。面外変形拘束部材の材質は、鋼材の適用が製作や入手・経済性の面で最も適しているが、鋼製部材の端部が曲げモーメントにより塑性化している間にフランジ縁端部の板厚方向(面外方向)の変形を抑制できる機能が発揮できれば、他の材料(樹脂等)を適用することも可能である。
前記面外変形拘束部材は、その両係合部の溝部が前記フランジ縁端部にそれぞれ係合されることによって、前記フランジに取り付けられていてもよい。
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態にかかる鋼製部材の端部構造を示すもので、図1(a)は当該接合構造の側面図、図1(b)は当該端部構造の断面図である。
鋼製梁1は、上下のフランジ1a,1aと、これらフランジ1a,1aを結合するウエブ1bとから一体的に形成されている。
鋼製柱2は、四角筒状に形成された鋼管柱であり、鋼製梁1を接合すべき部分に水平ダイヤフラム2a,2aが上下に所定の間隔(フランジ1a,1a間の間隔)をもって設けられている。この水平ダイヤフラム2aは、鋼製柱2より大径に形成されており、その外周部は鋼製柱2の外周面から突出している。
図1に示すように、面外変形拘束部材5は、塑性化が想定される範囲Aに略一致させて設けられている。また、面外変形拘束部材5の鋼製柱2側の端部と水平ダイヤフラム2aとの間には所定の隙間があり、面外変形拘束部材5は、水平ダイヤフラム2a、すなわち鋼製柱2に固定されていない。
このような面外変形拘束部材5は、その溝部6がフランジ縁端部に係合されたうえで、フランジ1aに鋼製梁1の軸方向の1カ所で固定されている。
第1の方法は、図2(a)に示すように、面外変形拘束部材5の外側を向く側面に、前記溝部6まで達する貫通穴5aを形成し、その部分をプラグ溶接7によりフランジ1aに固定する方法である。
第2の方法は、図2(b)に示すように、面外変形拘束部材5の外側を向く側面に、前記溝部6まで達する貫通穴5aを形成し、この貫通穴5aを通してスタッドボルトや固定ボルト8をフランジ1aにねじ込んで、当該フランジ1aに固定する方法である。
第4の方法は、図2(d)に示すように、面外変形拘束部材5の外側を向く側面に、前記溝部6まで達する貫通穴5aを形成し、この貫通穴5aを通してスタッドボルトや固定ボルト8をフランジ1aにねじ込むとともに、面外変形拘束部材5の上面または下面に、前記溝部6まで達する貫通穴5bを形成し、その部分をプラグ溶接7によりフランジ1aに固定する方法である。
また、面外変形拘束部材5は、フランジ1aの軸方向の塑性化を阻害しないようにしないと、局部座屈の抑制により部材の安定した塑性変形によりエネルギー吸収をするという本来の機能を発揮できないので、面外変形拘束部材5のフランジ1aへの取付けは、フランジ1aの軸方向に対して2か所以上の固定や線状の連続溶接による固定は避ける必要がある。したがって、面外変形拘束部材5は、フランジ1aのフランジ縁端部の小口、表面または裏面のいずれか一つ、もしくはこれらを組み合わせて軸方向のうち1断面のみにおいて固定する。
例えば、図3(b)に示すように、断面矩形の長尺な鋼材5cの側面に、2つの断面矩形の長尺な鋼材5d,5dを、フランジ1aの厚さの分だけ上下に離間して溶接等によって固定してもよい。
またこの場合、図3(c)に示すように、上側の鋼材5dの上面を鋼材5cの上面と面一になるようにして、鋼材5d,5dを鋼材5cに溶接等によって固定してもよい。このようにすれば、フランジ1aからの上方への突出長さを小さくできるので、フランジ1aに床スラブ等を設置する場合に有利である。
よって、鋼製梁1の塑性変形倍率ηを高めることができ、高強度化した鋼製梁1およびスリム化された断面を適用する場合においても、低コストかつ簡易な手段で鋼製梁1の塑性変形性能を確保でき、この結果耐震性能を向上させることができる。
したがって、前記特許文献2に記載の技術のように、補剛パネルの梁材軸方向の溶接および直交する柱部材に対する溶接を必要とせず、施工が容易となる。
さらに、面外変形拘束部材5は、フランジ1aの面外方向に対して十分な曲げ剛性を有しているので、フランジ縁端部の板厚方向(面外方向)の変形を確実に拘束することができる。
図4は第2の実施の形態にかかる鋼製部材の端部構造を示す断面図である。
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、H形断面を有する鋼製梁1は鋼製柱2に溶接によって接合されている。
本実施の形態が、第1の実施の形態と異なる点は、面外変形拘束部材の構成であるので、以下ではその点について詳しく説明し、第1の実施の形態と同様の構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
繋ぎ部10bは平板状に形成されており、その長さ(図4において紙面と直交する方向の長さ)は、係合部10aと等しくなっている。
面外変形拘束部材10をフランジ1aに取り付ける場合、例えば、工場や現場等において、鋼製柱2に接合する前の鋼製梁1の端部側から、面外変形拘束部材10をその溝部11,11aがフランジ縁端部に係合するようにして、外挿することにより行う。
工場で、面外変形拘束部材10をフランジ1aに取り付ける場合、当該面外変形拘束部材10を所定の位置で仮止めしておき、現場で鋼製柱2に鋼製梁1を接合した後、または接合する前に、面外変形拘束部材10を地震等の外力によって塑性化が想定される範囲においてフランジ1aに軸方向の一カ所でスポット溶接等によって固定すればよい。
また、面外変形拘束部材10がフランジ1aに地震等の外力によっても鋼製梁1の軸方向にずれるおそれがないように係合していれば、当該面外変形拘束部材10を地震等の外力によって塑性化が想定される範囲に取り付けるだけで、溶接等によって固定する必要はないので、その分施工の手間が省ける。
また、前記別個に製作した係合部10a,10aの溝部11,11をフランジ縁端部にそれぞれ係合することによって、当該係合部10a,10aをフランジ1aに予め取り付けておき、その後、これら係合部10a,10aに、別に製作した繋ぎ部10bの端部を溶接接合することによって、面外変形拘束部材10を一体化してもよい。
例えば、面外変形拘束部材を、フランジ1aの上下面にそれぞれ当接して、当該フランジ1aの面外変形を拘束する上下一対の当接部材と、これら当接部材をフランジ1aの軸方向の1カ所でフランジ1aに固定できる固定部材とから構成してもよい。固定部材としては、例えば、ボルトを一方の当接部材を貫通させたうえで、フランジを貫通させ、さらに他方の当接部材に貫通させたうえで、ナットをボルトに螺合して締め付けるものとしてもよい。
また、前記第1および第2の実施の形態において、面外変形拘束部材5,10によってフランジの軸方向への変形を拘束しないように、溝部6,11とフランジ1aの縁端部との間に、テフロン(登録商標)シート等の摺動層を介在させてもよい。
2 鋼製柱(他の部材)
5,10 面外変形拘束部材
6,11 溝部
10a 係合部
10b 繋ぎ部
Claims (3)
- H形断面を有する鋼製部材を、他の部材に直交するようにして剛接合した場合の前記鋼製部材の端部構造であって、
地震等の外力によって塑性化が想定される前記鋼製部材のフランジの軸方向の範囲において、少なくともフランジ縁端部に、前記フランジの面外変形を拘束しかつ前記フランジの軸方向への変形を拘束しない面外変形拘束部材が設けられ、
前記面外変形拘束部材は、前記フランジ縁端部に係合される断面略コ字形の溝部を有し、
前記面外変形拘束部材は、その溝部が前記フランジ縁端部に係合されたうえで、前記フランジにその軸方向の1カ所で固定されていることを特徴とする鋼製部材の端部構造。 - H形断面を有する鋼製部材を、他の部材に直交するようにして剛接合した場合の前記鋼製部材の端部構造であって、
地震等の外力によって塑性化が想定される前記鋼製部材のフランジの軸方向の範囲において、少なくともフランジ縁端部に、前記フランジの面外変形を拘束しかつ前記フランジの軸方向への変形を拘束しない面外変形拘束部材が設けられ、
前記面外変形拘束部材は、前記フランジの両フランジ縁端部にそれぞれ係合する断面略コ字形の溝部を有する2つの係合部と、当該2つの係合部を前記フランジのウエブと逆側の表面上で繋ぐ繋ぎ部とで一体的に形成され、
前記面外変形拘束部材は、その両係合部の溝部が前記フランジ縁端部にそれぞれ係合されることによって、前記フランジに取り付けられていることを特徴とする鋼製部材の端部構造。 - 前記面外変形拘束部材は前記他の部材に固定されていないことを特徴とする請求項1または2に記載の鋼製部材の端部構造。
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