JP6263808B2 - 玉軸受 - Google Patents
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Description
特許文献1には、必要グリース量を封入して耐久性を満足しつつ、低トルクを実現するために、グリースを保持器の軸方向一側の端面だけでなく軸方向反対側の端面にも配置することが記載されている。
特許文献2には、小型モータの回転部を支持する玉軸受の低トルク化や個体毎のバラツキの低減を図ることを目的として、内輪および外輪のうちの非回転輪(固定輪)の溝肩部(軌道面が設けられた周面)に潤滑剤を塗布することが記載されている。
小型軸受の軸受空間は元々狭いが、予圧を付与すると、内外輪に軸方向のずれが生じるためさらに狭くなり、封入されたグリースがさらに潰されやすくなる。特許文献2に記載されているように、単に非回転輪の溝肩部に潤滑剤を塗布すると、軸受に予圧を付与した後に軸受の内部空間が狭くなるため、グリースが潰されやすい。
この発明の課題は、小型モータの回転部を支持する用途等で軸受の内部空間が狭い場合でも、低トルク化が実現できる玉軸受を提供することである。
(b) 前記グリースの塗布体積は前記空間の17体積%以上30体積%以下である。
(c) 前記グリースの混和ちょう度は250以下である。
(f) 前記非回転輪の前記空間を構成する周面の周方向全体に渡って、複数の球状のグリースが配置されている。
前記構成(a) および(a')のうち、グリースが前記シールド板近傍に塗布されていることで、前記シールド板から離れた位置に塗布されているものと比較して、グリースが玉からより離れた位置に存在するため、玉軸受に予圧を付与して内外輪に軸方向のずれが生じた場合でも、グリースが玉に接触しにくい状態となる。よって、玉軸受に予圧を付与した状態でもグリースが潰されにくい。
前記構成(c) を満たすことで、混和ちょう度が250を超えるグリースを使用した場合と比較して、玉軸受の回転トルクを低く抑えることができる。混和ちょう度が250を超えるグリースは柔らかいため、玉軸受の回転時にグリースに含まれる増ちょう剤が内外輪の軌道溝に入り易くなる。
この態様の玉軸受は、下記の構成(d) を満たすシールド板を有することが好ましい。
(d) 前記内輪の外周面または前記外輪の内周面と所定隙間で近接する近接部を有し、前記近接部は軸方向内側に折り曲げられた折り曲げ部を有し、前記折り曲げ部の折り曲げ角度(θ)は、板面に沿った基準線に対して90°未満である。
(e) 前記シールド板の近接部は、前記折り曲げ部である第1の折り曲げ部の先端に、軸方向内側に折り曲げられた第2の折り曲げ部を有し、前記第2の折り曲げ部の前記基準線に対する折り曲げ角度(θ2)は、前記第1の折り曲げ部の折り曲げ角度(θ1)より大きい。
前記シールド板の前記第2の折り曲げ部の前記折り曲げ角度(θ2)は90°以上であことが好ましい。
この態様の玉軸受が前記構成(d) を満たすシールド板を有することにより、前記折り曲げ部を有さないシールド板を有する場合や、前記折り曲げ部を有するシールド板を有していても、その折り曲げ角度θが90°未満の範囲から外れる場合と比較して、高速回転時のグリース漏れ量が低減できる。
[第1実施形態]
図1は、この発明の第1実施形態に相当する玉軸受を示す断面図である。図2は図1のA−A断面に対応する図である。この玉軸受は、内輪1と、外輪2と、玉3と、保持器4と、シールド板50と、グリース6で構成されている。この玉軸受の寸法は、外径8mm、内径3mm、幅4mm、玉の直径1.588mmである。
シールド板50は金属製で、シールド板50の内周縁部が、内輪1の外周面11と所定隙間で近接する近接部501となっている。この近接部501は軸方向内側に折り曲げられていない。シールド板50の外周縁部が、外輪2の内周面21に形成された取り付け溝23に固定される固定部52となっている。
図2に示すように、グリース6は、外輪2の内周面21に塗布され、内輪1の外周面11には塗布されていない。グリース6の塗布は、シールド板50を取り付ける前に、保持器4の開口側から、例えば複数の穴の開いたノズルを使用して、外輪2の内周面21の周方向全体に渡って、複数の球状のグリース6が隙間なく配置されるように行う。この塗布方法では、従来のグリース封入装置が利用できるため、新たな設備が不要であり、生産コストの上昇を招かない。
グリース6の混和ちょう度は232であり、グリース6の塗布体積は軸受空間の25〜29体積%である。
したがって、この実施形態の玉軸受によれば、予圧を付与した状態でも、グリース6に含まれる増ちょう剤が内外輪の軌道溝12,22に入る量が低減されるため、回転トルクの上昇が抑制される。
図3は、参考例の玉軸受を示す断面図である。図4は図3のA−A断面に対応する図である。この玉軸受は、以下の点で第1実施形態の玉軸受と異なるが、それ以外の点は第1実施形態の玉軸受と同じである。
第1実施形態では、外輪2の内周面21の周方向全体に渡って、複数の球状のグリース6が隙間なく配置されているが、この例では、外輪2の内周面21に円環状のグリース6が配置されている。そして、円環状のグリース6の外周面が外輪2の内周面21に接触している。グリース6の塗布体積は軸受空間の25〜29体積%である。
したがって、この実施形態の玉軸受によれば、第1実施形態の玉軸受と同様に、予圧を付与した状態でも、グリース6に含まれる増ちょう剤が内外輪の軌道溝12,22に入る量が低減されるため、回転トルクの上昇が抑制される。また、第1実施形態の玉軸受と比較してグリース6と外輪2との接触面積が大きいため、グリース6の封入形態が安定しやすいという効果を有する。
図5は、この発明の第3実施形態の玉軸受を示す断面図である。図5のA−A断面に対応する図は図2と同じである。この玉軸受は、以下の点で第1実施形態の玉軸受と異なるが、それ以外の点は第1実施形態の玉軸受と同じである。
図5に示すように、この実施形態の玉軸受には、第1実施形態と同様に配置されたグリース6に加えて、保持器4の開口部とは反対側の空間にも、シールド板50近傍にグリース61が塗布されている。グリース6とグリース61の合計塗布体積は軸受空間の17〜30体積%である。グリース61の塗布体積はグリース6よりも多い。
したがって、この実施形態の玉軸受によれば、第1実施形態の玉軸受と同様に、予圧を付与した状態でも、グリース6に含まれる増ちょう剤が内外輪の軌道溝12,22に入る量が低減されるため、回転トルクの上昇が抑制される。また、保持器4の両側(開口部側とその反対側の両方の空間)に分けてグリース61を塗布することで、グリース漏れの低減と更なる低トルク化が実現できるという効果を有する。
図6は、この発明の第4実施形態の玉軸受を示す断面図である。図6のA−A断面に対応する図は図2と同じである。この玉軸受は、以下の点で第1実施形態の玉軸受と異なるが、それ以外の点は第1実施形態の玉軸受と同じである。
図6に示すように、この実施形態の玉軸受には、第1実施形態と同様に配置されたグリース6に加えて、外輪2の軌道溝22の角部に少量のグリース62が周方向全体に渡って塗布されている。グリース6とグリース62の合計塗布体積は軸受空間の17〜30体積%である。
したがって、この実施形態の玉軸受によれば、第1実施形態の玉軸受と同様に、予圧を付与した状態でも、グリース6に含まれる増ちょう剤が内外輪の軌道溝12,22に入る量が低減されるため、回転トルクの上昇が抑制される。また、外輪2の軌道溝22の角部に少量のグリース62を塗布したことにより、第1実施形態の玉軸受よりも潤滑性能が高くなる。
図7は、この発明の第5実施形態の玉軸受を示す断面図である。図7のA−A断面に対応する図は図2と同じである。この玉軸受は、以下の点で第1実施形態の玉軸受と異なるが、それ以外の点は第1実施形態の玉軸受と同じである。
図7に示すように、この実施形態の玉軸受には、第1実施形態と同様に配置されたグリース6に加えて、保持器4の開口部とは反対側の軸方向端面42に、少量のグリース63が塗布されている。グリース6とグリース63の合計塗布体積は軸受空間の17〜30体積%である。
したがって、この実施形態の玉軸受によれば、第1実施形態の玉軸受と同様に、予圧を付与した状態でも、グリース6に含まれる増ちょう剤が内外輪の軌道溝12,22に入る量が低減されるため、回転トルクの上昇が抑制される。また、保持器4の開口部とは反対側の軸方向端面42にもグリース63を塗布したことにより、基油が少しずつしみ出し、長時間に渡って継続的に基油を供給できるという効果を有する。
図8は、この発明の第6実施形態に相当する玉軸受を示す断面図である。図8のA−A断面に対応する図は図2と同じである。図9は図8の部分拡大図である。この玉軸受は、内輪1と、外輪2と、玉3と、保持器4と、シールド板5と、グリース6で構成されている。この玉軸受の寸法は、外径8mm、内径3mm、幅4mm、玉の直径1.588mmである。
シールド板5は金属製で、シールド板5の内周縁部が、内輪1の外周面11と所定隙間で近接する近接部51となっている。シールド板5の外周縁部が、外輪2の内周面21に形成された取り付け溝23に固定される固定部52となっている。
図2に示すように、グリース6は、外輪2の内周面21に塗布され、内輪1の外周面11には塗布されていない。グリース6の塗布は、シールド板5を取り付ける前に、保持器4の開口側から、例えば複数の穴の開いたノズルを使用して、外輪2の内周面21の周方向全体に渡って、複数の球状のグリース6が隙間なく配置されるように行う。
グリース6の混和ちょう度は232であり、グリース6の塗布体積は軸受空間の17〜30体積%である。
したがって、この実施形態の玉軸受によれば、予圧を付与した状態でも、グリース6に含まれる増ちょう剤が内外輪の軌道溝12,22に入る量が低減されるため、回転トルクの上昇が抑制される。
ここで、図12に示すように、グリースの配置は同じでも、従来のシールド板50を使用した玉軸受(つまり、第1実施形態の玉軸受)では、近接部501と内輪1の外周面11との隙間からグリース6が漏れだし易くなる。
また、高速回転条件で使用される玉軸受に、図13に示すように、芯金71とゴム成形体72とからなる接触シール70を取り付けると、グリース漏れを防止できるが、接触シール70のリップ部72aと内輪1の外周面11との摩擦が大きくなるため、軸受トルクが過大になる恐れがある。
したがって、この実施形態の玉軸受は、回転トルクの上昇とグリース漏れの両方が抑制されたものとなる。
図10は、第7実施形態の玉軸受を示す部分拡大断面図である。この玉軸受は、以下の点で第6実施形態の玉軸受と異なるが、それ以外の点は第6実施形態の玉軸受と同じである。
図10に示すように、この実施形態の玉軸受において、シールド板5Aの近接部51は、軸方向に沿った板面部53から軸方向内側に折り曲げられた折り曲げ部51aのみからなる。折り曲げ部51aの折り曲げ角度θは、板面(板面部53の面)に沿った基準線Lに対して45°である。グリース6の塗布体積は軸受空間の17〜30体積%である。
また、使用するシールド板5Aが、折り曲げ角度θが45°である折り曲げ部51aからなる近接部51を有するため、玉軸受の回転時にグリース6が図10の矢印のように移動する。よって、図12に示す従来のシールド板50を使用した場合と比較して、シールド板5Aの近接部51と内輪1の外周面11との隙間から外部に漏れだすグリース6の量が抑制される。
さらに、この実施形態のシールド板5Aは、第6実施形態のシールド板5と比較して、第2折り曲げ部51bがない分、形状が単純になるため量産性の点で有利である。
なお、上記各実施形態では、グリース6が外輪(非回転輪)2の内周面21に塗布され、内輪(回転輪)1の外周面11には塗布されていない玉軸受について説明しているが、内輪(回転輪)1の外周面11にも僅かな量のグリース6が塗布されていてもよい。
例えば、図11に示す玉軸受は、第1実施形態の玉軸受の内輪(回転輪)1の外周面11に僅かな量のグリース6Aが塗布されている例であり、この例もこの発明の権利範囲に含まれる。また、第2〜第7実施形態の玉軸受において内輪(回転輪)1の外周面11に僅かな量のグリースが塗布されている例も、この発明の権利範囲に含まれる。
11 内輪の外周面
12 軌道溝
2 外輪(非回転輪)
21 外輪の内周面
22 軌道溝
23 シールド板の取り付け溝
3 玉
4 保持器
41 ポケット
42 保持器の開口部とは反対側の軸方向端面
5 シールド板
5A シールド板
51 近接部
51a 折り曲げ部(第1の折り曲げ部)
51b 第2の折り曲げ部
52 固定部
53 板面部
50 シールド板
501 近接部
6 グリース
6A グリース
61 グリース
62 グリース
63 グリース
70 接触シール
71 芯金
72 ゴム成形体
72a リップ部
Claims (5)
- いずれか一方が回転輪となり他方が非回転輪となる内輪および外輪と、前記内輪と前記外輪の間に転動自在に配置された複数の玉と、
前記玉を保持するポケットの軸方向一端に開口部を有する保持器と、
前記内輪と前記外輪との間を軸方向両端で塞ぐシールド板と、
前記内輪、前記外輪、前記玉、および前記シールド板で囲まれた空間に配置されたグリースと、を有し、
前記グリースは、前記保持器の前記開口部側の、前記空間を構成する非回転輪の面の前記シールド板近傍に塗布され、
前記グリースの塗布体積は前記空間の17体積%以上30体積%以下であり、
前記グリースの混和ちょう度は250以下であり、
前記非回転輪の前記空間を構成する周面の周方向全体に渡って、複数の球状のグリースが配置されていることを特徴とする玉軸受。 - 前記グリースは、主に前記保持器の前記開口部側の、前記空間を構成する非回転輪の面の前記シールド板近傍に塗布され、回転輪の面には塗布されていない請求項1記載の玉軸受。
- 前記シールド板は、前記内輪の外周面または前記外輪の内周面と所定隙間で近接する近接部を有し、
前記近接部は軸方向内側に折り曲げられた折り曲げ部を有し、前記折り曲げ部の折り曲げ角度は、板面に沿った基準線に対して90°未満である請求項1または2に記載の玉軸受。 - 前記シールド板の近接部は、前記折り曲げ部である第1の折り曲げ部の先端に、軸方向内側に折り曲げられた第2の折り曲げ部を有し、前記第2の折り曲げ部の前記基準線に対する折り曲げ角度は、前記第1の折り曲げ部の折り曲げ角度より大きい請求項3記載の玉軸受。
- 前記シールド板の前記第2の折り曲げ部の前記折り曲げ角度は90°以上である請求項4記載の玉軸受。
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