JP6258121B2 - 摺動部材 - Google Patents

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Description

本発明は、耐食性が高く、且つ、摺動層の樹脂組成物と多孔質焼結層との接合が強い摺動部材に関する。
従来、燃料噴射ポンプ用の摺動部材には、5〜25%程度の気孔率を有する焼結銅系材料が用いられている。この摺動部材は、摺動部材の内部に存在する気孔を介して、液体燃料を円筒形状の摺動部材の外周面側から内周面(摺動面)側に供給することにより、内周面(摺動面)に液体燃料の流体潤滑膜を形成し、高速回転する軸を支承するようになっている。このような焼結銅系材料は、燃料中に含まれる有機酸、硫黄成分による銅合金の腐食が起こり、この銅系腐食生成物が燃料に混入する問題がある。このため、耐食性を高めるためにNi、Al、Znを含有させた焼結銅系摺動材料が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、従来、鋼裏金の表面に銅めっき層を介して銅合金からなる多孔質焼結層を設け、更に、多孔質焼結層の空孔部および表面に樹脂組成物を含浸被覆した複層の摺動材料からなる摺動部材が用いられている(例えば、特許文献4、5参照)。そして、このような複層摺動材料を燃料噴射ポンプ用の摺動部材に適用したものが提案されている(例えば、特許文献6参照)。
特開2002−180162号公報 特開2013−217493号公報 特開2013−237898号公報 特開2002−61653号公報 特開2001−355634号公報 特開2013−83304号公報
ところで、特許文献1〜3の焼結銅系摺動材料は、Ni、Al、Znを含有させて耐食性を高めてはいるが、燃料中に含まれる有機酸、硫黄成分による銅合金の腐食を完全には防止できない。また、特許文献1〜3の焼結銅系摺動材料は、摺動部材の内部全体に気孔を形成するために強度が低く、特に特許文献6に示すようなコモンレール方式の燃料噴射ポンプ等に用いられる摺動部材としては負荷能力が不十分である。
また、特許文献4〜6の複層摺動材料では、鋼裏金の構成を有するので強度は高い。しかしながら、銅合金からなる多孔質焼結層は、燃料あるいは潤滑油中に含まれる有機酸や硫黄成分で銅合金の腐食が起こる。また、特許文献4〜6のような銅めっき層を鋼裏金の表面に設けることなく、単に炭素鋼の粉末を鋼裏金の表面に散布し焼結して多孔質焼結層を形成し、該多孔質焼結層に樹脂組成物を含浸、被覆した摺動材料は、摺動層の樹脂組成物と多孔質焼結層との界面での接合が弱くなることが判明した。
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、耐食性が高く、且つ、摺動層の樹脂組成物と多孔質焼結層との接合が強い摺動部材を提供することにある。
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明においては、裏金層上に多孔質焼結層と樹脂組成物とからなる摺動層が設けられた摺動部材において、前記多孔質焼結層は、Ni−P合金相と粒状の鋼相とからなり、前記粒状の鋼相は、炭素の含有量が0.3〜1.3質量%の炭素鋼であるとともに、組織がフェライト相とパーライト相、または、フェライト相とパーライト相とセメンタイト相とからなり、前記Ni−P合金相は、前記粒状の鋼相どうし及び前記粒状の鋼相と前記裏金層とをつなぐバインダとして機能しており、前記樹脂組成物または前記Ni−P合金相との界面となる前記粒状の鋼相の表面には、前記粒状の鋼相の組織が前記フェライト相とパーライト相とからなる場合、前記粒状の鋼相の中心部における組織中の前記パーライト相に対して前記パーライト相の割合が50%以上少なくなっている低パーライト相部が形成されている一方、前記粒状の鋼相の組織が前記フェライト相とパーライト相とセメンタイト相とからなる場合、前記粒状の鋼相の中心部における組織中の前記パーライト相とセメンタイト相との混合相に対して前記パーライト相の割合が50%以上少なくなっている低パーライト相部が形成されていることを特徴とする。
請求項2に係る発明においては、請求項1記載の摺動部材において、前記粒状の鋼相の平均粒径は、45〜180μmであることを特徴とする。
請求項3に係る発明においては、請求項1又は請求項2記載の摺動部材において、前記低パーライト相部には、前記Ni−P合金相のNi成分が拡散していることを特徴とする。
請求項4に係る発明においては、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の摺動部材において、前記低パーライト相部の厚さは、1〜30μmであることを特徴とする。
請求項5に係る発明においては、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の摺動部材において、前記低パーライト相部の表面における前記パーライト相の面積率は、0〜10%であることを特徴とする。
請求項6に係る発明においては、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の摺動部材において、前記Ni−P合金相の組成は、9〜13質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることを特徴とする。
請求項7に係る発明においては、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の摺動部材において、前記Ni−P合金相の組成は、9〜13質量%のP、及び選択成分として1〜4質量%のB、1〜12質量%のSi、1〜12質量%のCr、1〜3質量%のFe、0.5〜5質量%のSn、0.5〜5質量%のCuから選択される1種以上を含有し、残部Niおよび不可避不純物からなることを特徴とする。
請求項8に係る発明においては、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の摺動部材において、前記多孔質焼結層における前記Ni−P合金相の割合は、前記多孔質焼結層の100質量部に対して前記Ni−P合金相が5〜40質量部であることを特徴とする。
請求項1に係る発明においては、摺動層を構成する多孔質焼結層は、Ni−P合金相と粒状の鋼相とからなり、有機酸や硫黄成分に対する耐食性が高い。多孔質焼結層のNi−P合金相は、粒状の鋼相どうし及び粒状の鋼相と裏金層とをつなぐバインダとして機能している。また、鋼相は、炭素の含有量が0.3〜1.3質量%の炭素鋼であるとともに、組織がフェライト相とパーライト相、または、フェライト相とパーライト相とセメンタイト相とからなるが、炭素の含有量が0.3質量%未満の炭素鋼を用いる場合には、多孔質焼結層の強度が低く、摺動部材の強度が不十分となる。一方、炭素の含有量が1.3質量%を超える炭素鋼を用いる場合には、鋼相の低パーライト相部におけるパーライト相の割合が多くなってしまう。さらに、摺動層の樹脂組成物またはNi−P合金相との界面となる粒状の鋼相の表面には、粒状の鋼相の組織がフェライト相とパーライト相とからなる場合、粒状の鋼相の中心部における組織中のパーライト相に対してパーライト相の割合が50%以上少なくなっている低パーライト相部が形成されている一方、粒状の鋼相の組織がフェライト相とパーライト相とセメンタイト相とからなる場合、粒状の鋼相の中心部における組織中のパーライト相とセメンタイト相との混合相に対してパーライト相の割合が50%以上少なくなっている低パーライト相部が形成されていることで、摺動層の樹脂組成物と粒状の鋼相の低パーライト相部との界面での熱膨張量の差が小さく、その界面でのせん断が起き難くなり、摺動層の樹脂組成物と粒状の鋼相との接合を強くすることができ、同時に、Ni−P合金相と低パーライト相部との界面でのせん断が起き難くなり、多孔質焼結層の強度を高めることができる。なお、粒状の鋼相の組織がフェライト相とパーライト相とセメンタイト相とからなる場合でも、低パーライト相部の組織は、フェライト相とパーライト相とからなり、セメンタイト相(パーライト相を構成するセメンタイトは除く)は含まれていない。また、粒状の鋼相の組織がフェライト相とパーライト相とからなる場合、低パーライト相部の組織は、フェライト相の単相となる場合がある。
また、請求項2に係る発明のように、粒状の鋼相の平均粒径は、45〜180μmとすることで、多孔質焼結層には、樹脂組成物を含浸させるために好適な空孔が形成される。粒状の鋼相の平均粒径が45μm未満であると、多孔質焼結層に形成される各空孔部のサイズが小さくなり、樹脂組成物を含浸させ難くなる。一方、粒状の鋼相の平均粒径が180μmを超えると、粒状の鋼相の表面の一部に、低パーライト相部が形成されない場合がある。
また、請求項3に係る発明のように、低パーライト相部には、Ni−P合金相のNi成分が拡散していることで、摺動層の樹脂組成物あるいはNi−P合金相との接合を強くすることができる。
また、請求項4に係る発明のように、低パーライト相部の厚さは、1〜30μmの範囲とする。低パーライト相部の厚さが30μm以下であれば、粒状の鋼相の強度に影響しない。一方、低パーライト相部の厚さが1μm未満であると、粒状の鋼相の表面の一部に、低パーライト相部が形成されない場合がある。
また、請求項5に係る発明のように、低パーライト相部の表面におけるパーライト相の面積率は、0〜10%とする。低パーライト相部の表面におけるパーライト相の面積率は、10%以下であると、摺動層の樹脂組成物あるいはNi−P合金相と粒状の鋼相との接合強度を高める効果が高くなる。
また、請求項6に係る発明のように、Ni−P合金相の組成は、9〜13質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることで、Ni−P合金の融点が低くなる組成範囲とすることができる。なお、Ni−P合金相の組成は、10〜12質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることがより望ましい。裏金層上に多孔質焼結層を焼結するときの昇温過程では、多孔質焼結層のNi−P合金相成分の全てを液相化させて、Ni成分を粒状の鋼相の表面に拡散させる。このNi成分の粒状の鋼相の表面への拡散は、粒状の鋼相の表面への低パーライト相部の形成に関係している。Ni−P合金相の組成において、Pの含有量が9質量%未満、あるいは13質量%を超えると、Ni−P合金の融点が高くなる。これにより、焼結時、Ni−P合金の液相の発生量が減少し、Ni成分が粒状の鋼相の表面に拡散し難くなり、粒状の鋼相の表面に低パーライト相部が形成され難くなる。
また、請求項7に係る発明のように、Ni−P合金相の組成は、9〜13質量%のP、及び選択成分として1〜4質量%のB、1〜12質量%のSi、1〜12質量%のCr、1〜3質量%のFe、0.5〜5質量%のSn、0.5〜5質量%のCuから選択される1種以上を含有し、残部Niおよび不可避不純物とすることができる。Pの含有量の範囲は、前記した通りであるが、選択成分として1〜4質量%のB、1〜12質量%のSi、1〜12質量%のCr、1〜3質量%のFe、0.5〜5質量%のSn、0.5〜5質量%のCuら選択される1種以上を含有させて、Ni−P合金相の強度を調整してもよい。このようにNi−P合金相は、これらの選択成分を含有しても、粒状の鋼相の表面への低パーライト相部の形成には影響しない。なお、選択成分の中でCu成分をNi−P合金相に含有させる場合、Ni−P合金相の耐食性に影響を及ぼさないようにするため、その含有量は5質量%以下とする必要がある。
また、請求項8に係る発明のように、多孔質焼結層におけるNi−P合金相の割合は、多孔質焼結層の100質量部に対してNi−P合金相を5〜40質量部とする。Ni−P合金相は、粒状の鋼相どうし及び粒状の鋼相と裏金層の表面とをつなぐバインダとして機能している。Ni−P合金相の割合が5質量部未満であると、多孔質焼結層の強度や、多孔質焼結層と裏金層との接合が不十分となる。一方、Ni−P合金相の割合が40質量部を超えると、焼結時、空孔となるべき部分がNi−P合金の液相で充填されてしまうので、多孔質焼結層の空孔率が小さくなりすぎる。
裏金層の表面に摺動層を形成した摺動部材の断面を示す模式図である。 粒状の鋼相の組織を示す拡大図である。 別実施形態の粒状の鋼相の組織を示す拡大図である。 従来の摺動部材を示す模式図である。
本実施形態に係る摺動部材1について、図1乃至図2を参照して説明する。図1は、裏金層2の表面にNi−P合金相7と粒状の鋼相6とからなる多孔質焼結層4と樹脂組成物5とからなる摺動層3を形成した摺動部材1の断面を示す模式図である。図2は、粒状の鋼相6の組織を示す拡大図である。
図1に示すように、摺動部材1は、裏金層2と摺動層3とからなり、摺動層3は、裏金層2上に形成された多孔質焼結層4と該多孔質焼結層の空孔部および表面に含浸被覆された樹脂組成物5とからなる。また、多孔質焼結層4は、粒状の鋼相6とNi−P合金相7とからなる。このNi−P合金相7は、鋼相6の粒どうし、あるいは、鋼相6の粒と裏金層2の表面とをつなぐバインダとなっている。また、図1に示すように、鋼相6の粒どうし、あるいは、鋼相6の粒と裏金層2の表面とは、Ni−P合金相7を介して接合している。なお、鋼相6の粒どうし、あるいは、鋼相6の粒と裏金層2の表面とは、直接、接触、あるいは、焼結により接合している部分が形成されていてもよい。また、鋼相6の粒は、表面の一部がNi−P合金相7により覆われていない部分が形成されているが、全ての鋼相6の粒がNi−P合金相7により覆われていてもよい。また、多孔質焼結層4は、樹脂組成物5を含浸させるための空孔を有し、その空孔率は10〜60%である。より好ましくは、空孔率は20〜40%である。
Ni−P合金相7の組成は、9〜13質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなる。このNi−P合金相7の組成は、Ni−P合金の融点が低くなる組成範囲である。なお、Ni−P合金相7の組成は、10〜12質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることがより望ましい。裏金層2上に多孔質焼結層4を焼結するときの昇温過程では、後述するが、多孔質焼結層4のNi−P合金相7成分の全てを液相化させて、Ni成分を鋼相6の表面に拡散させる。このNi成分の鋼相6の表面への拡散は、鋼相6の表面への低パーライト相部8の形成に関係している。また、Ni−P合金相7の組成において、Pの含有量が9質量%未満、あるいは13質量%を超えると、Ni−P合金の融点が高くなる。これにより、焼結時、Ni−P合金の液相の発生量が減少し、Ni成分が鋼相6の表面に拡散し難くなり、鋼相6の表面に低パーライト相部8が形成され難くなる。
なお、Ni−P合金相7は、前記組成に、さらに、選択成分として1〜4質量%のB、1〜12質量%のSi、1〜12質量%のCr、1〜3質量%のFe、0.5〜5質量%のSn、0.5〜5質量%のCuから選択される1種以上を含有させた組成であってもよい。なお、これら選択成分を含有するNi−P合金相7は、Ni素地部が必須成分であるP及び選択成分であるB、Si、Cr、Fe、Sn、Cuを固溶した形態の組織が好ましいが、Ni素地部が含有成分による2次相(析出物、晶出物)を含んだ形態の組織であってもよい。
多孔質焼結層4におけるNi−P合金相7の割合は、多孔質焼結層4の100質量部に対してNi−P合金相7が5〜40質量部であり、より好ましくは、10〜20質量部である。このNi−P合金相7の割合は、鋼相6の粒どうし、あるいは、鋼相6の粒と裏金層2の表面とを結びつけるバインダとなる形態の多孔質焼結層4を形成するために好適な範囲である。Ni−P合金相7の割合が5質量部未満であると、多孔質焼結層4の強度や、多孔質焼結層4と裏金層2との接合が不十分となる。一方、Ni−P合金相7の割合が40質量部を超えると、焼結時、空孔となるべき部分がNi−P合金で充填されてしまうので、多孔質焼結層4の空孔率が小さくなりすぎる。
多孔質焼結層4における粒状の鋼相6は、平均粒径が45〜180μmであればよい。このような平均粒径の鋼相6を用いることで、多孔質焼結層4には、樹脂組成物5を含浸させるために好適な空孔が形成される。鋼相6の平均粒径が45μm未満であると、多孔質焼結層4に形成される各空孔部のサイズが小さくなり、樹脂組成物5を含浸させ難くなる。一方、鋼相6の平均粒径が180μmを超えると、鋼相6の表面の一部に、低パーライト相部8が形成されない場合がある。
また、粒状の鋼相6の組成は、炭素成分を0.3質量%〜1.3質量%含有する炭素鋼であり、一般市販されるアトマイズ法による粒状の亜共析鋼、共析鋼、過共析鋼を用いることができる。このような炭素鋼を用いることで、有機酸や硫黄成分に対する耐食性は、従来の銅合金を用いるよりも優れている。なお、粒状の鋼相6の組成は、前記炭素成分を含有し、さらに、1.3質量%以下のSi、1.3質量%以下のMn、0.05質量%以下のP、0.05質量%以下のSのいずれか1種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる組成であってもよい。また、鋼相6の組織は、フェライト相9とパーライト相10、または、フェライト相9とパーライト相10とセメンタイト相とからなるが、微細な析出物(走査電子顕微鏡を用い1000倍で組織観察を行っても検出できない析出物相)を含むことは許容される。また、粒状の鋼相6は、その表面(Ni−P合金相7との界面となる表面)に、Ni−P合金相7の成分との反応相が形成されていてもよい。そして、このような粒状の鋼相6とNi−P合金相7とから多孔質焼結層4が構成されていることで、有機酸や硫黄成分に対する耐食性に優れている。
樹脂組成物5は、多孔質焼結層4の空孔部および表面に含浸被覆される。図2に示すように、樹脂組成物5は、多孔質焼結層4の粒状の鋼相6の表面、あるいは、Ni−P合金相7の表面と接している。樹脂組成物5としては、一般的な摺動用の樹脂組成物を用いることができる。具体的には、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、 ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、エポキシ、フェノール、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイドのいずれか一種以上の樹脂に、さらに、固体潤滑剤としてグラファイト、グラフェン、フッ化黒鉛、二硫化モリブデン、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリオレフィン、窒化ホウ素、二硫化錫のいずれか一種以上を含む樹脂組成物を用いることができる。また、樹脂組成物5には、さらに充填剤として、粒状、あるいは、繊維状の金属、金属化合物、セラミック、無機化合物、有機化合物のいずれか一種以上を含有させることができる。なお、樹脂組成物5を構成する樹脂、固体潤滑剤、充填剤は、ここで例示したものに限定されない。
図2に示すように、鋼相6の組織は、フェライト相9とパーライト相10とからなる。鋼相6におけるフェライト相9は、炭素成分の含有量が最大で0.02質量%と少なく、純鉄に近い組成の相である。一方、鋼相6におけるパーライト相10は、フェライト相と鉄炭化物であるセメンタイト相(FeC)とが薄い板状に交互に並んで形成されるラメラ組織の相である。このパーライト相10は、フェライト相9よりも炭素成分の量が多い。そして、図2に示すように、樹脂組成物5あるいはNi−P合金相7との界面となる鋼相6の表面には、鋼相6の粒の中心部における組織中のパーライト相10に対してパーライト相10の割合が50%以上少なくなっている低パーライト相部8が形成される。この低パーライト相部8は、図2に示す鋼相6の粒の断面組織において、鋼相6の粒の表面に隣接するフェライト相6の結晶を主体として形成される環状の層部分である。なお、多孔質焼結層4を構成する粒状の鋼相6のうち、粒の個数割合で20%以下の個数の鋼相6(あるいは、鋼相6の全体積に対して20体積%以下)は、粒の表面に低パーライ相部8が形成されていないことは許容される。
本実施形態では、電子顕微鏡を用いて摺動部材1の厚さ方向に平行な方向に切断された断面組織において、複数個(例えば5個)の鋼相6の粒の中心部付近、及び、摺動層3の樹脂組成物5あるいはNi−P合金相7との界面となる鋼相6の表面付近をそれぞれ倍率1000倍で電子像を撮影し、その画像を一般的な画像解析手法(解析ソフト:Image−Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて、組織中のパーライト相10の面積率を測定した。そして、鋼相6の粒の中心部における組織中のパーライト相10に対して、鋼相6の粒の表面付近における組織中のパーライト相10の割合(面析率)が50%以上少なくなっていることで、鋼相6の粒の表面に低パーライト相部8が形成されていることが確認できる。なお、鋼相6の粒の中心部付近におけるパーライト相10の面積率の観察部は、厳密な意味での鋼相6の粒の中心部位置でなくてもよい。これは、鋼相6のの中心部位置から低パーライト相部8までの間の組織が、実質的にほぼ同じ組織(同じパーライト相10の面積率)になっているからである。
上記した低パーライト相部8の厚さは、摺動層3の樹脂組成物5あるいはNi−P合金相7との界面から1〜30μmである。さらに、低パーライト相部8の厚さは、1〜10μmとすることが好ましい。また、低パーライト相部8の厚さは、鋼相6の平均粒径の20%以下とすることが好ましい。低パーライト相部8の厚さが30μm以下であれば、鋼相6の強度に影響しない。一方、低パーライト相部8の厚さが1μm未満であると、鋼相6の表面の一部に、低パーライト相部8が形成されない場合がある。
また、摺動層3の樹脂組成物5あるいはNi−P合金相7との界面となる鋼相6の低パーライト相部8には、多孔質焼結層4におけるNi−P合金相7から拡散したNi成分が含まれている。このNi成分は、低パーライト相部8の表面付近のフェライト相9に固溶した形態で低パーライト相部8に含まれている。多孔質焼結層4のNi−P合金相7から鋼相6の低パーライト相部8に拡散したNi成分は極微量であるが、EPMA(エレクトロンプローブマイクロアナライザー)測定により低パーライト相部8に拡散したNi成分が確認される。また、低パーライト相部8中のNi成分は、フェライト相9に固溶された形態で存在しており、樹脂組成物5あるいはNi−P合金相7との界面となる低パーライト相部8の表面から内部へ向かって次第にNi成分の濃度が減少していることが確認できる。なお、低パーライト相部8には、NiP(金属間化合物)の相が形成されていない。
また、鋼相6の低パーライト相部8の表面は、Ni成分の拡散により、特にパーライト相10が少なくなっている。低パーライト相部8の表面におけるパーライト相10の面積率は、摺動層3の樹脂組成物5あるいはNi―P合金相7と鋼相6の低パーライト相部8との接合強度を高めるため、0〜10%とすることが好ましい。なお、鋼相6の表面におけるパーライト相10の面積率は、直接、測定はできないが、電子顕微鏡を用いて摺動部材1の厚さ方向に平行な方向に切断された断面組織において、複数個(例えば5個)の鋼相6の粒を倍率1000倍で電子像を撮影し、その画像を一般的な画像解析手法(解析ソフト:Image−Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて、鋼相6の輪郭線の全長に対するパーライト相10による輪郭線の長さの割合(鋼相6の外周である輪郭線のうちパーライト相10に相当する部分の長さの割合)を測定することにより確認できる。
図3は、別実施形態の鋼相6の組織を示す拡大図である。鋼相6は、炭素成分の含有量が0.8質量%を超える過共析鋼の粉末を用いるときには、図3に示すように、鋼相6の粒の組織がフェライト相9とパーライト相10とセメンタイト相とからなり、鋼相6の粒の表面付近にはフェライト相9とパーライト相10とからなる低パーライト相部8が形成され、鋼相6の粒の中心部の組織が少量のフェライト相9、及びパーライト相とセメンタイト相との混合相10Aになる場合がある。この場合には、鋼相6の粒の中心部における組織中のパーライト相とセメンタイト相との混合相10Aに対して、鋼相6の粒の表面付近における組織中のパーライト相10の割合(面積率)が50%以上少なくなっていることで、鋼相6の表面に低パーライト相部8が形成されていることが確認できる。また、パーライト相とセメンタイト相との混合相10Aは、ベイナイト相、ソルバイト相、トールースタイト相を含んでいてもよい。
次に、従来の摺動部材11における摺動層13の樹脂組成物15と多孔質焼結層14との接合について、図4を参照して説明する。図4は、従来の裏金層12上に組織がフェライト相とパーライト相とからなる炭素鋼(亜共析鋼)粉末を焼結した多孔質焼結層14を形成した摺動部材11を示す模式図である。焼結後の多孔質焼結層14の組織は、多孔質焼結層14の表面(炭素鋼の表面)と内部とにおいてフェライト相やパーライト相の割合に差はなく、表面においてもパーライト相が多く形成されている。
摺動層13の樹脂組成物15との界面となる多孔質焼結層14の表面(炭素鋼の表面)において、パーライト相が多いと、摺動層13の樹脂組成物15との接合が弱くなる。図4に示すように、そのような多孔質焼結層14を摺動部材11として用いた場合、局部的に摺動層13の樹脂組成物15と多孔質焼結層14との界面でせん断が起こる場合がある。これは、摺動部材11が使用される温度が上昇すると、多孔質焼結層14よりも摺動層13の樹脂組成物15の熱膨張量が大きいので、摺動層13の樹脂組成物15と多孔質焼結層14との界面でせん断応力が発生するためである。
具体的には、多孔質焼結層14におけるフェライト相とパーライト相とでは熱膨張係数が異なり、パーライト相は鉄炭化物であるセメンタイト(FeC)を含むために、フェライト相よりも熱膨張係数が小さい。このため、摺動部材11の温度が上昇したとき、摺動層13の樹脂組成物15と多孔質焼結層14との熱膨張量の差によるせん断力は、界面において不均一となる。そして、摺動層13の樹脂組成物15と多孔質焼結層14のパーライト相との界面では、熱膨張量の差が大きく、その熱膨張量の差によるせん断応力によって微小せん断部が形成される。また、多孔質焼結層14の表面におけるパーライト相の面積が多いほど、微小せん断が起こる面積が増加し、摺動層13の樹脂組成物15と多孔質焼結層14のフェライト相との界面にも、このせん断が伝播すると考えられる。これに対し、本実施形態では、摺動層3の樹脂組成物5との界面となる多孔質焼結層4の鋼相6の表面において、鋼相6の粒の内部に対してパーライト相10の割合が50%以上少なくなっている低パーライト相部8が形成されることで、そのような摺動層3の樹脂組成物5と多孔質焼結層6との界面でのせん断が起き難くなっている。また、Ni−P合金相7との界面となる鋼相6の表面において、鋼相6の粒の内部に対してパーライト相10の割合が50%以上少なくなっている低パーライト相部8が形成されることで、フェライト相9とパーライト相10との熱膨張係数の違いに起因したNi―P合金相7と鋼相6との界面でのせん断が起き難くなっている。
次に、本実施形態に係る摺動部材1の作製方法について説明する。まず、炭素成分を0.3〜1.3質量%含有する炭素鋼のアトマイズ粉末とNi−P合金のアトマイズ粉末との混合粉を準備する。この混合粉の準備時には、多孔質焼結層4のNi−P合金相7となる成分を、Ni−P合金の粉末の形態で含ませる必要がある。また、Ni−P合金相7に、B、Si、Cr、Fe、Sn、Cu等の選択成分を含有させる場合には、それら選択成分を含んだNi−P合金のアトマイズ粉末と炭素鋼のアトマイズ粉末との混合粉を準備する必要がある。そして、室温で、準備した混合粉を裏金上に散布した後、粉末散布層を加圧することなく焼結炉を用いて、930〜1000℃の還元雰囲気中で焼結する。なお、裏金層は、従来から一般的な炭素鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、Ni合金等の板や条を用いることができるが、これらに限定されないで他の組成の金属の裏金を用いてもよい。
焼結時において、昇温途中の880℃になると、9〜13質量%のPと残部Niの組成からなるNi−P合金の粒が溶融を始める。その液相は、炭素鋼(鋼相6)の粒どうしや、炭素鋼(鋼相6)の粒と裏金層2の表面との間で流動し、裏金層2の表面上に多孔質焼結層4の形成が開始される。9〜13質量%のPと残部Ni の組成からなるNi−P合金の粒は、950℃で完全に液相となる。なお、Pの含有量範囲を少なくした10〜12質量%のPと残部Niの組成からなるNi−P合金の粒は、930℃で完全に液相となる。
焼結温度は、Ni−P合金の粒が、完全に溶融する温度以上に設定されている。また、Ni−P合金の組成は、後述するが、炭素鋼(鋼相6)の組織が完全オーステナイト相となる温度(A3変態点)以上で、完全に溶融する組成になされている。
炭素成分を0.3〜1.3質量%含有する炭素鋼の焼結前の組織は、フェライト相9とパーライト相10とからなる組織、パーライト相10からなる組織、あるいは、パーライト相10とセメンタイト相とからなる組織であるが、焼結時の昇温過程で727℃(A1変態点)になると、これら組織は、オーステナイト相への変態を始め、900℃では完全にオーステナイト相からなる組織となる。このオーステナイト相は、フェライト相9よりもFe原子間の隙間(距離)が大きくなるので、多孔質焼結層4におけるNi−P合金相7のNi原子が、この隙間に侵入する拡散が起こり易い状態となる。上記したように、Ni−P合金の組成は、鋼相6の組織が完全オーステナイト相となる温度(A3変態点)以上で、完全に溶融する組成になされており、焼結温度は、Ni−P合金の粒が、完全に溶融する温度以上に設定されている。これは、液相状態のNi−P合金相7中のNi原子は、固相状態のNi−P合金相7中のNi原子よりも、鋼相6の表面におけるオーステナイト相中への拡散が起こり易いからである。
なお、Ni原子の拡散は、鋼相6とNi−P合金相7との接触部のみで起こるのではなく、Ni原子は、この接触部から鋼相6とNi−P合金相7とが直接、接触しない部分である鋼相6の表面(摺動層3の樹脂組成物5と接することになる鋼相6の表面)へも拡散する。
焼結時、Ni−P合金が完全に液相状態となり、且つ、鋼相6が完全オーステナイト組織の状態となることが組み合わさって、鋼相6の表面にNi原子が拡散する。このNi原子は、オーステナイト相に固溶される結果、オーステナイト相のFe原子間の隙間に固溶されていた炭素原子が、鋼相6の内部側(粒の中心部側)へ追い出されるように拡散する。なお、液相状態にあったNi原子は、鋼相6の表面におけるオーステナイト相へ拡散し、固溶されるのと同時に固相となるので、Ni原子が鋼相6の極表面付近にしか拡散しない。
焼結後の冷却過程で727℃(A1変態点)以下になると、鋼相6の組織は、フェライト相9とパーライト相10とからなる組織、パーライト相10からなる組織、あるいは、フェライト相9とパーライト相10とセメンタイト相とからなる組織となる。以上の機構により、鋼相6の粒の中心部付近では、炭素成分の含有量によって決まる通常のフェライト相9とパーライト相10とからなる組織、パーライト相10からなる組織、あるいは、フェライト相9とパーライト相10とセメンタイト相とからなる組織(フェライト相9、及びパーライト相とセメンタイト相との混合相10Aからなる組織)となり、鋼相6の表面付近には、その中心部での組織中のパーライト相10(中心部がパーライト相とセメンタイト相との混合相10Aからなる組織の場合には、その組織中のパーライト相とセメンタイト相との混合相10A)に対してパーライト相10の割合が少なくなっている組織(鋼相6の極表面は、ほぼフェライト相9からなる組織)である低パーライト相部8が形成されると推定される。なお、Ni成分は、低パーライト相部8の表面付近のフェライト相9に固溶された状態で鋼相6に含まれている。
上記のように裏金層2の表面上に多孔質焼結層4が形成された部材には、予め準備された樹脂組成物5(有機溶剤にて希釈してもよい)が、多孔質焼結層4の空孔部を充填し、多孔質焼結層4の表面を被覆するように含浸される。そして、この部材は、樹脂組成物5の乾燥、焼成のための加熱が施され、裏金層2の表面上に多孔質焼結層4と樹脂組成物5とからなる摺動層3が形成される。なお、樹脂組成物5としては、段落0032に記載した樹脂組成物を用いることができる。
なお、本実施形態の鋼相6には、アトマイズ法によって製造された粒状の炭素鋼の粉末を素材として用いることが望ましい。炭素鋼のアトマイズ粉末は、結晶組織に歪(原子空孔)が導入されている。この歪は、炭素鋼の結晶組織で本来、Fe原子が存在すべき部位にFe原子が存在しない原子レベルの隙間が形成されている欠陥部である。焼結時の昇温過程で鋼相6(炭素鋼)における結晶の歪は、徐々に鋼相6の表面側へ移動して消滅するが、この歪と置き換わるようにNi―P合金相7のNi原子が、鋼相6の表面側の結晶中で歪があった部位へ拡散するようになる。一方、塊状の鋳鋼を機械粉砕した粉砕粉を用いた場合、粉砕粉は、アトマイズ粉末よりも結晶の歪が非常に少ないので、鋼相6の表面へのNi原子の拡散が起こり難い。
また、本実施形態では、上記のように炭素鋼のアトマイズ粉末とNi−P合金のアトマイズ粉末との混合粉を用いたが、鋼相とNi―P合金相との成分を予め合金化したFe−Ni−P−C系合金のアトマイズ粉を用いた場合、多孔質焼結層はFe−Ni合金相の素地に、遊離セメンタイト相(FeC)やFe−P化合物相(FeP,FeP)やNi―P化合物相(NiP)が混在した組織となり、多孔質焼結層の強度が低くなる。また、Ni粉末とFe−P−C系合金粉末との混合粉を用いた場合、焼結時には、粉末組成のNi成分の一部が液相化するのみで、液相の発生量が少なく、鋼相の表面へのNi原子の拡散が殆ど起こらない。このため、鋼相の表面には、パーライト相の割合が減少した低パーライト相部が形成されない。また、この液相はNiPを主体とするので、焼結後のNi相と鋼相との界面にNiP相(金属間化合物)が介在するように形成される。このNiP相は、硬質であるが脆く、多孔質焼結層の強度が低くなる。
また、本実施形態における多孔質焼結層4のNi−P合金相7の組成としてB、Si、Cr、Fe、Sn、Cu等の選択成分を含有させる場合、前述したように、これら選択成分を含むNi−P合金のアトマイズ粉末と炭素鋼のアトマイズ粉末との混合粉を準備し、裏金上で焼結する。この実施形態とは異なり、混合粉にB、Si、Cr、Fe、Sn、Cu等の選択成分の単独の粉末、あるいは、これら選択成分どうしの合金の粉末の形態で含有させる場合、焼結後の多孔質焼結層4の粒状の鋼相6どうし、あるいは、鋼相6と裏金とを接合するバインダ部は、Ni−P合金相と、選択成分からなる相と、Ni−P合金相と選択成分の相との間に形成される反応相と、によって構成されるようになり、多孔質焼結層の強度が低くなる。特に、Sn成分は、前記混合粉に純Sn粉末、あるいは、Sn基合金の形態で含ませることは避けるべきである。純Sn、Sn基合金は融点が低く、焼結時の昇温過程における極初期の232℃程度で液相となるが、液相となったSn原子と鋼相の表面のFe原子とが反応し、Ni−P合金相と鋼相との界面にFeSn相やFeSn相(金属間化合物)が介在するように形成され、鋼相の表面には低パーライト相部が形成されなくなる。さらに、このFeSn相やFeSn相は、硬質であるが脆く、Ni−P合金相と鋼相との接合が非常に弱くなる。
また、本実施形態では、多孔質焼結層4の鋼相6の表面に低パーライト相部8を形成しているが、予め、表面にFeめっき層やNiめっき層を形成した炭素鋼粉末を用いる場合には、摺動部材が高価となる。本実施形態は、このような炭素鋼粉末の表面へのめっき層の形成工程を省略し、多孔質焼結層4の焼結工程にて同時に鋼相6の低パーライト相部8の形成を行うので、摺動部材1を安価に製造することができる。
1 摺動部材
2 裏金層
3 摺動層
4 多孔質焼結層
5 樹脂組成物
6 鋼相
7 Ni−P合金相
8 低パーライト相部
9 フェライト相
10 パーライト相
10A パーライト相とセメンタイト相との混合相

Claims (8)

  1. 裏金層上に多孔質焼結層と樹脂組成物とからなる摺動層が設けられた摺動部材において、
    前記多孔質焼結層は、Ni−P合金相と粒状の鋼相とからなり、
    前記粒状の鋼相は、炭素の含有量が0.3〜1.3質量%の炭素鋼であるとともに、組織がフェライト相とパーライト相、または、フェライト相とパーライト相とセメンタイト相とからなり、
    前記Ni−P合金相は、前記粒状の鋼相どうし及び前記粒状の鋼相と前記裏金層とをつなぐバインダとして機能しており、
    前記樹脂組成物または前記Ni−P合金相との界面となる前記粒状の鋼相の表面には、
    前記粒状の鋼相の組織が前記フェライト相とパーライト相とからなる場合、前記粒状の鋼相の中心部における組織中の前記パーライト相に対して前記パーライト相の割合が50%以上少なくなっている低パーライト相部が形成されている一方、
    前記粒状の鋼相の組織が前記フェライト相とパーライト相とセメンタイト相とからなる場合、前記粒状の鋼相の中心部における組織中の前記パーライト相とセメンタイト相との混合相に対して前記パーライト相の割合が50%以上少なくなっている低パーライト相部が形成されていることを特徴とする摺動部材。
  2. 前記粒状の鋼相の平均粒径は、45〜180μmであることを特徴とする請求項1記載の摺動部材。
  3. 前記低パーライト相部には、前記Ni−P合金相のNi成分が拡散していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の摺動部材。
  4. 前記低パーライト相部の厚さは、1〜30μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の摺動部材。
  5. 前記低パーライト相部の表面における前記パーライト相の面積率は、0〜10%であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の摺動部材。
  6. 前記Ni−P合金相の組成は、9〜13質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の摺動部材。
  7. 前記Ni−P合金相の組成は、9〜13質量%のP、及び選択成分として1〜4質量%のB、1〜12質量%のSi、1〜12質量%のCr、1〜3質量%のFe、0.5〜5質量%のSn、0.5〜5質量%のCuから選択される1種以上を含有し、残部Niおよび不可避不純物からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の摺動部材。
  8. 前記多孔質焼結層における前記Ni−P合金相の割合は、前記多孔質焼結層の100質量部に対して前記Ni−P合金相が5〜40質量部であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の摺動部材。
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