JP6253529B2 - 疲労抑制剤の探索方法 - Google Patents

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Description

本発明は、疲労抑制剤を探索する方法に関する。
現代社会においては、過重労働やストレスなどから疲労が蔓延している。例えば、1999年、日本で行われた疲労の実態調査(厚生省研究班 班長:大阪大学 木谷照夫)の結果では、名古屋地区の一般地域住民4,000名(有効回答数3,015)のうち、59.1%の人が疲労を自覚しており、35.8%の人では半年以上続く慢性的な疲労が認められていることが明らかになっている(非特許文献1)。
このような状況から、抗疲労素材の開発が望まれ、近年、新緑の緑葉が放散する「緑の香り」が、拘束ストレスに起因してFos様タンパク質を発現したラットにおいて、Fos様タンパク質の発現を抑制すること(非特許文献2)、更にはトランス−2−ヘキセナールとシス−3−ヘキセノールの混合物(以下、「トランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物」と称する)の香りが疲労回復効果を持つことが報告されている(特許文献1)。
疲労は、精神あるいは身体に負荷を与えた際に作業効率(パフォーマンス)が一過性に低下した状態と定義できる。そのため、抗疲労素材の開発においては、主観的な疲労評価である疲労のVAS (Visual Analogue Scale)評価だけでなく、作業負荷によるパフォーマンス(作業効率)評価を行うことが推奨されている(非特許文献3)。
したがって、これらの評価は、被験者に一定の疲労を負荷した後、その効果を評価する必要があるため、一度に多くの素材を評価することはできないという課題があった。
特許4422103号公報
木谷照夫.疲労の実態調査と健康づくりのための疲労回復法に関する研究(厚生省).平成11年度研究業績報告.2000. 第76回日本生理学会講演要旨、第258頁、1999年 本疲労学会 抗疲労臨床評価ガイドライン
本発明は、疲労抑制剤又はその候補物質を効率良く探索する方法を提供する。
ヒト等の哺乳動物においては、匂いは、鼻腔上部の嗅上皮に存在する嗅神経細胞上の嗅覚受容体に匂い分子が結合し、それに対する受容体の応答が中枢神経系へと伝達されることにより認識されている。近年、嗅覚受容体を培養細胞で機能的に発現させ、受容体の活動を個別に観察する手法が開発され(Katada et al, Biochem Biophys Res Commun 2003, 305:964-969)、特定の嗅覚受容体を発現する培養細胞を用いて当該嗅覚受容体のリガンドを探索する方法が知られている(国際公開第2006/002161号、国際公開第2008/008224号)。
本発明者は、上記の疲労回復効果を有するトランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物の香りに応答する嗅覚受容体を新たに同定することに成功し、その中から選ばれた特定の嗅覚受容体の応答を指標とすることにより、疲労抑制剤又はその候補物質を評価・選択できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の工程a)〜c)を含む疲労抑制剤又はその候補物質の探索方法に係るものである。
a)OR1A1、OR2J3、OR2W1,OR5K1,OR5P3及びOR10A6からなる嗅覚受容体ポリペプチドに試験物質を添加する工程
b)当該試験物質に対する当該受容体ポリペプチドの応答を測定する工程
c)測定された応答に基づいて、当該応答を増強する試験物質を疲労抑制剤又はその候補物質として選択する工程
本発明によれば、疲労抑制剤又はその候補物質を簡易且つ効率よく探索することができる。
嗅覚受容体のトランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物の香りに対する応答。横軸は個々の嗅覚受容体、縦軸は応答強度を示す。 種々の濃度の香料組成物に対する各嗅覚受容体の応答。エラーバー=±SE。 香料組成物の疲労抑制効果。
本発明において、「疲労」とは、身体的あるいは精神的負荷を連続して与えた際にみられる一時的な身体的及び精神的パフォーマンスの低下現象を意味し、ここで、パフォーマンスの低下は、身体的及び精神的作業能力の質的あるいは量的な低下を示す。そして、「疲労抑制」は、上記疲労を減弱させる作用や疲労を回復させる作用を意味する。
また、本発明の「疲労」には、慢性疲労症候群(CFS)や過労死も含まれる。
慢性疲労症候群は、原因不明の慢性的な疲労感のために健全な社会生活が送れなくなるという病態として知られ(日本内科学会雑誌、81:573−582(1992))、その基本的な症状として、例えば、原因不明の激しい全身倦怠感、微熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛、脱力感、思考力又は集中力に関する障害、抑うつ症状、及び睡眠障害などが挙げられる。
過労死とは、重度の過労状態にあり、身体的活力を保つことができないにも拘らず、疲労を十分に感じることができなくなり、その結果、脳血管疾患や心疾患を発症して永久的労働不能や死亡に至った状態を意味する。
したがって、本発明の疲労抑制剤は、斯かる慢性疲労症候群の各症状を緩和し、正常な状態に移行させること、更にはそれにより過労死を予防することを包含する。
本発明において、「嗅覚受容体ポリペプチド」とは、嗅覚受容体又はそれと同等の機能を有するポリペプチドをいい、嗅覚受容体と同等の機能を有するポリペプチドとは、嗅覚受容体と同様に、細胞膜上に発現することができ、匂い分子の結合によって活性化するポリペプチドをいう(Nat.Neurosci.2004,5:263−278)。
本明細書において、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の同一性は、リップマン−パーソン法(Lipman−Pearson法;Science,1985,227:1435−41)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Win(Ver.5.1.1;ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
本発明の疲労抑制剤又はその候補物質の探索方法は、a)OR1A1、OR2J3、OR2W1,OR5K1,OR5P3及びOR10A6からなる嗅覚受容体ポリペプチドに試験物質を添加する工程、b)当該試験物質に対する当該受容体ポリペプチドの応答を測定する工程、c)測定された応答に基づいて、当該応答を増強する試験物質を疲労抑制剤又はその候補物質として選択する工程、を含む。
本発明の方法においてOR1A1、OR2J3、OR2W1,OR5K1,OR5P3及びOR10A6は、いずれもヒト嗅細胞で発現している嗅覚受容体である。
OR1A1は、GenBankにGI:289547622として登録されている。OR1A1は、配列番号1で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。
OR2J3は、GenBankにGI:507588245として登録されている。OR2J3は、配列番号3で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。
OR2W1は、GenBankにGI:169234788として登録されている。OR2W1は、配列番号5で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。
OR5K1は、GenBankにGI:115270954として登録されている。OR5K1は、配列番号7で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。
OR5P3は、GenBankにGI:23592229として登録されている。OR5P3は、配列番号9で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。
OR10A6は、GenBankにGI:52218835として登録されている。OR10A6は、配列番号11で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。
図1に示すように、当該OR1A1、OR2J3、OR2W1,OR5K1,OR5P3及びOR10A6を含む嗅覚受容体ポリペプチドは、疲労回復効果を有することが知られているトランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物の香りに対して応答を示すことが明らかにされた。
よって、OR1A1、OR2J3、OR2W1,OR5K1,OR5P3及びOR10A6の6種の嗅覚受容体と機能的に等価なポリペプチドは、嗅覚受容体ポリペプチドとして当該6種の嗅覚受容体と同様に本発明の方法に使用することができる。斯かる嗅覚受容体ポリペプチドとしては、例えば、OR1A1、OR2J3、OR2W1、OR5K1、OR5P3及びOR10A6の各アミノ酸に対して、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、なお好ましくは98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、トランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物に対する応答性を有するポリペプチドが挙げられる。
ここで、シス−3−ヘキセノールとトランス−2−ヘキセナールの混合比率は、特に限定されないが、等モル混合物であるのが好ましい。
本発明の方法において、嗅覚受容体ポリペプチドは、受容体の機能を失わない限り、任意の形態で使用され得る。例えば、嗅覚受容体ポリペプチドは、生体から単離された嗅覚受容器若しくは嗅細胞等の天然に嗅覚受容体ポリペプチドを発現する組織や細胞、又はそれらの培養物;当該嗅覚受容体ポリペプチドを担持した嗅細胞の膜;当該嗅覚受容体ポリペプチドを発現するように遺伝的に操作された組換え細胞又はその培養物;当該組換え細胞の膜;及び、当該嗅覚受容体ポリペプチドを有する人工脂質二重膜、等の形態で使用され得る。これらの形態は全て、本発明で使用される嗅覚受容体ポリペプチドの範囲に含まれる。
好ましい態様においては、嗅細胞等の天然に嗅覚受容体ポリペプチドを発現する細胞、又は嗅覚受容体ポリペプチドを発現するように遺伝的に操作された組換え細胞、あるいはそれらの培養物が使用される。当該組換え細胞は、嗅覚受容体ポリペプチドをコードする遺伝子を組み込んだベクターを用いて細胞を形質転換することで作製することができる。
好適には、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜発現を促進するために、当該嗅覚受容体ポリペプチドをコードする遺伝子とともに、RTP(receptor−transporting protein)をコードする遺伝子を細胞に導入する。好ましくは、RTP1Sをコードする遺伝子を、当該嗅覚受容体ポリペプチドをコードする遺伝子とともに細胞に導入する。RTP1Sの例としては、ヒトRTP1Sが挙げられる。ヒトRTP1Sは、GenBankにGI:50234917として登録されており、配列番号13で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号14で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。
また、ヒトRTP1Sの代わりに、ヒトRTP1Sのアミノ酸配列(配列番号14)に対して、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、なお好ましくは98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、ヒトRTP1Sと同様に、嗅覚受容体の膜における発現を促進するポリペプチドを使用してもよい。
本発明の方法に使用される試験物質は、疲労抑制剤として使用することを所望する物質であれば、特に制限されない。試験物質は、天然に存在する物質であっても、化学的又は生物学的方法等で人工的に合成した物質であってもよく、また化合物であっても、組成物若しくは混合物であってもよい。
試験物質を添加した後、嗅覚受容体ポリペプチドの応答が測定される。
測定は、嗅覚受容体の応答を測定する方法として当該分野で知られている任意の方法、例えば、カルシウムイメージング法等によって行えばよい。また嗅覚受容体は、匂い分子によって活性化されると、細胞内のGαsと共役してアデニル酸シクラーゼを活性化することで、細胞内cAMP量を増加させることが知られている(Touhara K. Neurochem Int. 2007 51. 132-139.)。従って、例えば試験物質添加後の細胞内cAMP量を指標にすることで、嗅覚受容体の応答を測定することができる。cAMP量を測定する方法としては、ELISA法やレポータージーンアッセイ法等が挙げられる。
次いで、測定された上記嗅覚受容体ポリペプチドの応答に基づいて、当該受容体ポリペプチドに応答する試験物質が同定される。試験物質の同定は、試験物質を添加した該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を、試験物質を添加しない該嗅覚受容体ポリペプチドの応答と比較することによって行うことができる。また、試験物質を添加した該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を、試験物質を添加した該嗅覚受容体ポリペプチドを発現しない細胞の応答と比較することによって行うこともできる。また、試験物質を添加した該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を、試験物質を添加する前の該嗅覚受容体ポリペプチドの応答と比較することによっても行うことができる。また、試験物質と対照物質を添加した該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を、対照物質を添加した該嗅覚受容体ポリペプチドの応答と比較することによっても行うことができる。
例えば、上記嗅覚受容体ポリペプチドの応答に対して試験物質が及ぼす作用は、試験物質添加群と非添加群との間、該嗅覚受容体ポリペプチド発現群と非発現群との間、試験物質添加前後、又は試験物質および対照物質群と対照物質群との間で、該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を比較することによって評価することができる。試験物質添加により、該嗅覚受容体ポリペプチドの応答が活性化される場合、当該試験物質を、該嗅覚受容体ポリペプチドを活性化又は応答を増強する物質として同定することができる。尚、対照物質としては、例えばトランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物が挙げられる。
上記の手順で同定された試験物質は、後記実施例で示すように、OR1A1、OR2J3、OR2W1,OR5K1,OR5P3及びOR10A6の6種の嗅覚受容体を活性化し(図2)、公知の疲労抑制剤であるトランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物と同等以上の疲労抑制効果が認められる(図3)。したがって、当該試験物質は、疲労抑制剤又はその候補物質となり得る。
例えば、上記の手順で測定された試験物質添加群における嗅覚受容体ポリペプチドの応答が、対照となる群と比較して好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上に高ければ、当該試験物質を、疲労抑制剤又はその候補物質として評価又は選択することができる。あるいは、上記の手順で測定された試験物質添加群における嗅覚受容体ポリペプチドの応答が、対照となる群と比較して統計学的に有意に高ければ、当該試験物質を、疲労抑制剤又はその候補物質として評価又は選択することができる。
斯くして、評価又は選択された試験物質は、疲労抑制剤又はその候補物質として使用することができ、また、疲労抑制剤又はその候補物質を製造するために使用することができる。疲労抑制剤の候補物質は、さらに公知の疲労評価である、パソコン作業などに対する作業能率を評価する行動試験、自律神経機能測定、唾液中コルチゾール測定等を必要に応じて行うことにより、疲労抑制剤を選択することができる。
上述した実施形態に関し、本発明においては更に以下の態様が開示される。
<1>以下の工程a)〜c)を含む疲労抑制剤又はその候補物質の探索方法。
a)OR1A1、OR2J3、OR2W1,OR5K1,OR5P3及びOR10A6からなる嗅覚受容体ポリペプチドに試験物質を添加する工程
b)当該試験物質に対する当該受容体ポリペプチドの応答を測定する工程
c)測定された応答に基づいて、当該応答を増強する試験物質を疲労抑制剤又はその候補物質として選択する工程
<2>前記嗅覚受容体ポリペプチドが、天然に嗅覚受容体ポリペプチドを発現する細胞上又は嗅覚受容体ポリペプチドを発現するように遺伝的に操作された組換え細胞上に発現された嗅覚受容体である、<1>の方法。
<3>試験物質を添加しない嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する工程をさらに含む、<1>又は<2>の方法。
<4>前記試験物質を添加しない嗅覚受容体の応答に対して、試験物質を添加された嗅覚受容体の応答が1.1倍以上に増強されていれば、当該試験物質を疲労抑制剤又はその候補物質として選択する、<3>の方法。
<5>前記受容体の応答を測定する工程が、レポータージーンアッセイによって行われる、<1>〜<4>のいずれかの方法。
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
実施例1 トランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物の香りに応答する嗅覚受容体の同定
(1)ヒト嗅覚受容体遺伝子のクローニング
ヒト嗅覚受容体はGenBankに登録されている配列情報を基に、human genomic DNA female (G1521:Promega)を鋳型としたPCR法によりクローニングした。PCR法により増幅した各遺伝子をpENTRベクター(Invitrogen)にマニュアルに従って組込み、pENTRベクター上に存在するNot I、Asc Iサイトを利用して、pME18Sベクター上のFlag−Rhoタグ配列の下流に作成したNot I、Asc Iサイトへと組換えた。
(2)pME18S−RTP1Sベクターの作製
ヒトRTP1Sはhuman RTP1遺伝子(MHS1010−9205862:Open Biosystems)を鋳型としたPCR法によりクローニングした。PCRに用いるプライマーには、センス側にEcoR I、アンチセンス側にXho Iサイトを付加した。PCR法により増幅したhRTP1S遺伝子(配列番号13)をpME18SベクターのEcoR I、Xho Iサイトへ組込んだ。
(3)嗅覚受容体発現細胞の作製
ヒト嗅覚受容体396種をそれぞれ発現させたHEK293細胞を作製した。表1に示す組成の反応液を調製しクリーンベンチ内で15分静置した後、96ウェルプレート(BD)の各ウェルに添加した。次いで、HEK293細胞(3×105細胞/cm2)を100μlずつ各ウェルに播種し、37℃、5%CO2を保持したインキュベータ内で24時間培養した。
(4)トランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物の調製
cis−3−hexenol(3−ヘキセン−1−オール:Sigma−Aldrich社)及びtrans−2−hexenal(2−ヘキセナール:Sigma−Aldrich社)を等モル(それぞれ100μM)で混合し、上記混合物とした。
(5)ルシフェラーゼアッセイ
HEK293細胞に発現させた嗅覚受容体は、細胞内在性のGαsと共役しアデニル酸シクラーゼを活性化することで、細胞内cAMP量を増加させる。本研究での匂い応答測定には、細胞内cAMP量の増加をホタルルシフェラーゼ遺伝子(fluc2P−CRE−hygro)由来の発光値としてモニターするルシフェラーゼレポータージーンアッセイを用いた。また、CMVプロモータ下流にウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を融合させたもの(hRluc−CMV)を同時に遺伝子導入し、遺伝子導入効率や細胞数の誤差を補正する内部標準として用いた。
上記(3)で作製した培養物から、培地をピペットマンで取り除き、DMEM(ナカライテスク)で調製したトランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物(100μMずつの混合物)を含む溶液を75μl添加した。細胞をCOインキュベータ内で、37℃で4時間培養し、ルシフェラーゼ遺伝子を細胞内で充分に発現させた。プレートを10分間室温に放置した後、Dual−GloTM luciferase assay kit(Promega)を用いて細胞内に蓄積したルシフェラーゼ量を測定することにより、それぞれの嗅覚受容体の応答を評価した。ルシフェラーゼの活性測定には、Dual−GloTM luciferase assay system(promega)を用い、製品の操作マニュアルに従って測定を行った。試験物質刺激により誘導されたホタルルシフェラーゼ由来の発光値を、試験物質刺激を行わない細胞での発光値で割った値をfold increaseとして算出し、応答強度の指標とした。
(6)結果
OR1A1、OR2J3、OR2W1、OR5K1、OR5P3、OR10A6及びOR51I2の7種類の嗅覚受容体がトランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物の香りに対して応答を示した(図1)。
このうち、OR2J3,OR2W1はシス−3−ヘキセノールの受容体であることが既に知られているが、トランス−2−ヘキセナールとの混合物でも応答性を示すかどうかは知られていない。また、その他の5種の受容体はいずれも、トランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物の香りに応答することは報告されていない受容体である。
実施例2 香料混合物のOR1A1、OR2J3、OR2W1、OR5K1、OR5P3及びOR10A6への応答性
(1)香料混合物の調製
メチル2−ナフチルケトン(Sigma−Aldrich社)、l−カルボン((−)−1−メチルー4−イソプロペニルー6−シクロヘキセンー2−オン:和光純薬工業社)、メチルイソオイゲノール(1,2−ジメトキシー4−(1−プロペニル)ベンゼン:Sigma−Aldrich社)、及び酢酸フェニルエチル(2−フェニルエチル エステル:Sigma−Aldrich社)の4種の香料化合物を等モルで混合し、香料混合物Aとした。
(2)実施例1と同様の手順でHEK293細胞にそれぞれ発現させたOR1A1、OR2J3、OR2W1、OR5K1、OR5P3、OR10A6及びOR51I2に対して、(1)で調製した香料混合物Aで刺激し、嗅覚受容体の応答性を評価した。
(3)結果
香料混合物Aは、OR1A1、OR2J3、OR2W1、OR5K1、OR5P3及びOR10A6の受容体を強く活性化した(図2)。
実施例3 香料混合物の疲労抑制効果
(1)健常男性20名に対し、1時間のストループカラーワードテストを行った。問題は、1.5秒間隔で次々と表示し、被験者にはなるべく早く正確に回答するよう指示した。パフォーマンス評価は、ストループカラーワードテストの正答率を解析することにより行った。ストループカラーワードテストを行っている間、香りなし(水)、実施例1(4)で調製したトランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物(最終濃度0.25%)、実施例2(1)で調製した香料混合物A(最終濃度0.02%)をアロマディフューザー(無印良品)にて室内に充満した。被験者を以下の3群にわけ、各香りの間は1週間のインターバルを開け、試験を実施した。
第1群:香りなし→トランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物→香料混合物A
第2群:トランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物→香料混合物A→香りなし
第3群:香料混合物A→香りなし→トランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物
(2)結果
ストループカラーワードテスト開始から30分間の正答率を香りなしの正答率を基準として解析した結果、トランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物の香りと香料混合物Aの香りで正答率に有意な差は認められなかった。以上の結果から、香料混合物Aが疲労抑制効果を示し、その効果はトランス−2−ヘキセナール/シス−3−ヘキセノール混合物と同等であることが示された(図3)。

Claims (5)

  1. 以下の工程a)〜c)を含む疲労抑制剤又はその候補物質の探索方法。
    a)OR1A1、OR2J3、OR2W1,OR5K1,OR5P3及びOR10A6からなる嗅覚受容体ポリペプチドに試験物質を添加する工程
    b)当該試験物質に対する当該受容体ポリペプチドの応答を測定する工程
    c)測定された応答に基づいて、当該応答を増強する試験物質を疲労抑制剤又はその候補物質として選択する工程
  2. 前記嗅覚受容体ポリペプチドが、天然に嗅覚受容体ポリペプチドを発現する細胞上又は嗅覚受容体ポリペプチドを発現するように遺伝的に操作された組換え細胞上に発現された嗅覚受容体である、請求項1記載の方法。
  3. 試験物質を添加しない嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する工程をさらに含む、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記試験物質を添加しない嗅覚受容体の応答に対して、試験物質を添加された嗅覚受容体の応答が1.1倍以上に増強されていれば、当該試験物質を疲労抑制剤又はその候補物質として選択する、請求項3記載の方法。
  5. 前記受容体の応答を測定する工程が、レポータージーンアッセイによって行われる、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
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