以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態になるボーリング用工具のボーリングヘッド部分を示す側面図であり、ボーリング用工具の中心軸線(以下、軸線Oという)を含む切断面でボーリング用工具の先端側を切断し、その断面を表す。ボーリング用工具10は、主要な部品として、工具本体11と、工具ホルダ19と、カートリッジ本体21と、ダイヤルリング31と、切刃チップ41を備える。工具本体11は軸線Oに沿って延びる円柱状であって、後端に結合部12を有する。結合部12は、軸線Oに直角な平面であって後端方向に指向する接合面12bと、接合面12bの中心から突出する結合軸部12cを含む。結合軸部12cが仮想線で示す工具ホルダ19に受け入れられ、接合面12bが工具ホルダ19の先端面になる接合面19cと接触することにより、工具本体11は工具ホルダ19に装着される。工具ホルダ19は後端側で図示しない主軸にチャッキングされる。これによりボーリング用工具10は一体回転する。工具本体11はボーリング用工具10の先端部を占めることからヘッド本体ともいう。また工具本体11、カートリッジ本体21、およびダイヤルリング31をボーリングヘッド部分ともいう。工具本体11の先端部にはチップポケット13、貫通孔14、および切欠部15が形成される。
図2は、同実施形態を示す横断面図であり、軸線Oに直交する平坦面でボーリング用工具10を切断して切断面を軸線O方向にみた状態を表す。チップポケット13および切欠部15は、工具本体11の外周に設けられ、直径方向に離れて配置される。貫通孔14はチップポケット13から切欠部15まで、工具本体11の直径方向に真っ直ぐ延びる丸孔である。貫通孔14の軸線Cは、工具本体11の軸線Oと直交する。貫通孔14と切欠部15の接続箇所には凹部16が形成される。凹部16は切欠部15よりも小さい空間であるが、貫通孔14の直径よりは大きい。
貫通孔14にはカートリッジ本体21が通される。カートリッジ本体21はブロック状の頭部22、円柱状の脚部23、およびこれらを連結固定するボルト24を有する。頭部22には凹部22bと、凸部22cと、凹部22bから凸部22cまで延びる丸孔22dが形成される。脚部23の一端には、凹部23cが形成される。また脚部23には、凹部23cから脚部23の中央へ延びる雌ねじ孔23mが形成される。頭部22の凸部22cが脚部23の凹部23cに嵌合すると、丸孔22dが雌ねじ孔23mに一致する。凹部22bにボルト24が差し込まれると、凹部22bよりも小径の丸孔22dにはボルト24の軸部のみが通され、凹部22bにはボルト24の頭部が係止される。そしてボルト24の軸部は雌ねじ孔23mに螺合することにより、頭部22と脚部23は連結固定される。
カートリッジ本体21の頭部22は工具本体11のチップポケット13に受け入れられる。カートリッジ本体21の脚部23は、工具本体11の貫通孔14に通されて、切欠部15に突出する。かかる脚部23の先端部外周には雄ねじ23fが形成される。ただし脚部23の根元(頭部22と連結箇所)から中間領域までの外周面は、滑らかに形成される。
カートリッジ本体21は貫通孔14の軸線Cに沿って延びる。軸線Cは工具本体11の直径に対応する。以下の説明において、切欠部15(脚部23)からチップポケット13(頭部22)へ向かう方向を軸線C方向一方ともいい、反対にチップポケット13(頭部22)から切欠部15(脚部23)へ向かう方向を軸線C方向他方ともいう。脚部23の外周面および貫通孔14の内周面は滑らかに形成され、カートリッジ本体21は貫通孔14の軸線C方向に自由に摺動可能であるが、後述する被ロック部とロックフランジ38の当接によって軸線C方向他方への移動を禁止される。
チップポケット13は、軸線Cと平行であって軸線Oの周方向に指向する平坦面13gを有する。またカートリッジ本体21の頭部22は、平坦面13gと接触する平坦な側面22gを有する。これら平坦面13gと側面22gの接触は、カートリッジ本体21の摺動を阻害しない。平坦面13gは、ボーリング用工具10が軸線Oを中心に回転してワークを中ぐり切削する際に、切刃チップ41がワークから受ける反力を受け止める。
脚部23の表面には、軸線C方向に延びる帯状の平坦面23gが形成される。工具本体11には、工具本体11の外周面から貫通孔14まで延びる雌ねじ孔11mが形成される。雌ねじ孔11mは貫通孔の軸線C方向一方端と接続し、軸線Cに対して直角に延びる。雌ねじ孔11mにはセットねじ43が螺合する。セットねじ43の先端はセットねじ43の延在方向と直交する平坦面に形成される。セットねじ43の後端にはねじ回しと係合するための多角形穴が形成される。ねじ回しを使ってセットねじ43を締め込むことにより、セットねじ43の先端が平坦面23gを押圧し、カートリッジ本体21は摺動不能に固定される。
図3は、図2に表されるカートリッジ本体21の先端部およびダイヤルリング31を拡大して示す断面図である。図5は、同実施形態の側面図であってダイヤルリング31を拡大して示し、カートリッジ本体21の脚部側(軸線C方向他方)からみた状態、つまり軸線Oに対して直角方向にみた状態を表す。ダイヤルリング31は円筒部32およびフランジ33を有する。円筒部32の内周面には雌ねじが形成され、カートリッジ本体21の雄ねじ23fに螺合する。ダイヤルリング31のフランジ33は円筒部32の中央部に設けられ、円筒部32の外周面から突出する。フランジ33の一端面は平坦面33bにされ、他端面はテーパ面33cにされる。フランジ33の平坦面33bは、後述するロックフランジ38と対向する。フランジ33のテーパ面33cにはダイヤルの如き目盛(図5)が周方向等間隔に設けられる。円筒部32の一端部は工具本体11の凹部16に収容される。ダイヤルリング31の残りの部分、つまりフランジ33および円筒部32の他端部、は切欠部15に収容される。円筒部32の他端は、円板の蓋部材34で覆われる。
軸線C方向一方の工具本体11と軸線C方向他方のフランジ33との間にはロックフランジ38が配置される。ロックフランジ38は環状に形成されて、ダイヤルリング31のフランジ33のうち平坦面33bと対向する部位には、ウェーブスプリング42を受け入れる凹部が形成される。ウェーブスプリング42は環状であって、ウェーブスプリング42の中心孔にダイヤルリング31の円筒部32を通される。ウェーブスプリング42はロックフランジ38および(ダイヤルリング31の)フランジ33間に縮設されて、ダイヤルリング31をロックフランジ38から抜け出す方向(軸線C方向他方)に付勢する。ウェーブスプリング42よりも外径側では、ロックフランジ38およびダイヤルリング31のフランジ33間に軸線C方向に開いた隙間Gが介在する。図示しない変形例として、隙間Gは閉じていてもよく、この場合にはダイヤルリング31のフランジ33の平坦面33bがロックフランジ38の表面38cに接触する。
カートリッジ本体21は平坦面13g(図2)によって回動を規制されているため、ダイヤルリング31を回動させると、カートリッジ本体21が軸線C方向に移動する。これにより切刃チップ41の突出量(軸線Oから切刃チップ41までの距離)が微調整される。なおダイヤルリング31を回動させても、ウェーブスプリング42は弾性変形しないし、ダイヤルリング31が軸線C方向に移動することはない。
工具本体11の凹部16は、円筒部32の一端側を受け入れる他、ロックナット36、ワッシャ37、およびロックフランジ38を収容する。工具本体11の凹部16は2段底に形成される。これらのうち深い方の底面16bは、中心で貫通孔14と接続して環状面にされる。浅い方の底面は、深い方の底面を取り囲む平坦な環状面16cにされる。ロックフランジ38は環状に形成されて、環状面16cと接触する。ロックフランジ38の中心孔にはダイヤルリング31の円筒部32が通される。ロックナット36およびワッシャ37は、ロックフランジ38よりも底面16b側に配置される。なおロックフランジ38は、内向きフランジのように、環状面16cよりも内径側へ突出し、底面16bと対向する。
図2に示すように凹部16の外縁には、雌ねじ孔17が設けられる。雌ねじ孔17に螺合する皿ねじ18は、ロックフランジ38を環状面16cに向かって押圧する。これによりロックフランジ38は工具本体11に取付固定される。
説明を図3に戻すと、ロックフランジ38の裏面38bは外径側で環状面16cと面接触する。ロックフランジ38の表面38cには目印(図5で示す三角印)が刻設される。かかる目印はテーパ面33cに刻設される目盛と向き合い、ダイヤルリング31の周方向位置および回動角を表示する。
ダイヤルリング31の円筒部32には、一端側外周に雄ねじ32fが形成される。かかる雄ねじ32fには環状のロックナット36が螺合する。円筒部32の一端部は環状のワッシャ37に通される。ワッシャ37はロックナット36とロックフランジ38の間に配置される。
図4はワッシャ37を取り出して示す斜視図である。ワッシャ37は、基本的にはリング状の円板であるが、リング部37cと、周方向一部分に形成される舌部37tを含む舌付ワッシャである。舌部37tは、ワッシャ37の内周縁から軸方向に起立し、円筒部32の周方向一部分に形成される凹部32dに係合する。かかる凹部32dは、円筒部32の外周面に設けられ、ワッシャ37を回り止めする。ワッシャ37の一端面に接触するロックナット36は、ワッシャ37によって相対回転を規制される。このためロックナット36は、不用意に回動することがなく、円筒部32の外周に螺合したまま軸線C方向に変位することを防止される。
また凹部32dと舌部37tの係合によって、ワッシャ37は軸線C方向の相対変位を規制される。これによりロックフランジ38はワッシャ37およびダイヤルリング31のフランジ33間に保持され、ダイヤルリング31の軸線C方向中央部が、常態でロックフランジ38の軸線C方向位置と重なるよう保持される。したがって作業者がダイヤルリング31を回動させると、カートリッジ本体21が軸線C方向に進退動し、切刃チップ41の突出量が微調整される。切刃チップ41の調整作業は、ダイヤルリング31の回動によって実現される。ロックナット36はダイヤルリング31およびロックフランジ38に覆われており、作業者の目に触れるものではない。したがって通常の使用において、ロックナット36は作業者によって回動されない。
次に、工具本体11を工具ホルダ19に装着する構造について説明する。
図6は、同実施形態の工具ホルダ19および工具本体11を示す側面図である。図7は、工具ホルダ19および工具本体11の結合部12を示す分解図である。工具ホルダ19は、テーパシャンク部51、フランジ部52、およびアーバ53を有する。テーパシャンク部51は、工具ホルダ19の後端領域に形成され、後端に向かって先細にされる。フランジ部52は、テーパシャンク部51の先端部分から外径方向に突出して形成される。フランジ部52の外周面には、先端側および後端側よりも中央部が内径側に窪むV字溝が形成される。アーバ53は、工具ホルダ19の先端領域に形成され、フランジ部52の先端面から先端方向に突出する円柱状部分である。またアーバ53は、フランジ部52よりも小径であればよく、図6に示すように軸線方向に関し一定の外径を有するか、あるいは図示しない変形例として、アーバ53の先端がアーバ53の根元よりも先細に形成されてもよい。テーパシャンク部51、フランジ部52、およびアーバ53は軸線Oを中心として延びる。
工具本体11はアルミ合金やジュラルミン等の軽金属製である。工具ホルダ19は鋼製であり、アーバ53の先端に結合することからヘッド本体ともいう。工具本体11の後端部には、軸線O方向後端側へ指向する接合面12bが形成される。
アーバ53の先端には、工具本体11の接合面12bと面接触する接合面19cが形成される。接合面19cはアーバ53の先端面であり、工具ホルダ19の先端面でもあり、軸線O方向先端側へ指向する。接合面12b,19cは軸線Oに直角な環状の平坦面である。接合面19cの中心には結合穴55が設けられる。結合穴55は軸線Oを中心として後方へ延びる丸穴であり、円柱状の結合軸部12cを受け入れる。
アーバ53の先端部には雌ねじ孔56がさらに設けられる。雌ねじ孔56はアーバ53の外周面から結合穴55の内周面まで軸線Oに直角に貫通して半径方向に延びる。結合軸部12cの側面にはクランプ用テーパ穴57が形成される。クランプ用テーパ穴57は有底穴であり、その側面は穴底に向かって細くなるテーパである。クランプ用テーパ穴57も、軸線Oを中心とする半径方向に延び、軸線Oに直角である。本実施形態では、各雌ねじ孔56および各クランプ用テーパ穴57が周方向に180°異なる位置で、2個ずつ対向配置される。ただし各雌ねじ孔56および各クランプ用テーパ穴57の配置および個数はこれに限定されない。結合穴55が工具本体11の結合軸部12cを受け入れると、雌ねじ孔56がクランプ用テーパ穴57に接続する。各雌ねじ孔56には、先細の先端テーパ59を有するクランプねじ58がねじ込まれる。
図7に示すように工具本体11の後端部に関し、後端側へ指向する接合面12bからクランプ用テーパ穴57の中心までを間隔d1とする。またアーバ53の先端部に関し、先端側へ指向する接合面19cから雌ねじ孔56の中心までを間隔d2とする。本実施形態では、d1<d2とされ、間隔d2が間隔d1よりも僅かに大きい。ここでいう僅かに大きいとは、クランプ用テーパ穴57の中心軸線が雌ねじ孔56を通過し、かつ雌ねじ孔56の中心軸線がクランプ用テーパ穴57を通過することをいい、両中心軸線同士が平行に延びる(以下同様)。
外径側からクランプねじ58を雌ねじ孔56にねじ込むと、クランプねじ58の先端テーパ59がクランプ用テーパ穴57に進入し、結合軸部12cを押圧する。そして先端テーパ59全周のうち軸線O方向後端側のテーパ面59tが、クランプ用テーパ穴57全周のうち軸線O方向後端側のテーパ面59qに片当たりする。かかる片当たりの押圧によって、結合軸部12cは軸線O方向後方へ引き込まれ、工具本体11の接合面12bが工具ホルダ19の接合面19cに密着する。
本実施形態によれば、カートリッジ本体21が装着される工具本体11をアルミ合金等の軽金属製としたので、ボーリングバーのボーリングヘッド部分を軽量化することができる。これにより、ワークの精密仕上加工時などにボーリングヘッド部分およびアーバが高速回転されても、ボーリングヘッド部分の遠心力が従来のスチール製のものに比し小さいため、アーバがボーリングヘッド部分の遠心力の影響を受けにくくなる。その結果、アーバが微振動を引き起こしたり、ビビリが発生したりするのを防止できる。
また本実施形態によれば、アーバ53の先端に工具本体11を、互いに軸線Oを一致して、結合手段としての結合部12およびクランプねじ58により、分離可能に結合することにより、工具本体11を含むボーリングヘッドの交換が容易になり、かつ、アーバ53を異なる種類のボーリングヘッドに兼用できる。
また本実施形態によれば、クランプ用テーパ穴57の中心から接合面12bまでの間隔d1を雌ねじ孔56の中心から接合面19cまでの間隔d2より小さく設定することにより、アーバ53の接合面19cと工具本体11の接合面12bとを互いに密着でき、アーバ53と工具本体11との結合を確実に、かつ強固にできる。
また本実施形態のボーリング用工具10は、図6に示すようにセンタースルークーラント式であって、クーラントが通過する一連の通路71,72,73,74および噴出孔75を有する。通路71は工具ホルダ19内部に形成され、結合穴55の穴底からテーパシャンク部51の後端まで軸線Oに沿って延びる。通路72は工具本体11内部に形成され、結合軸部12c後端から先端側へ向かって軸線Oに沿って延びる。通路72の先端は通路73の一端と接続する。なお通路71の先端と通路72の後端は、アーバ53と工具本体11との結合に伴って隙間なく接続される。
通路73は工具本体11内部に形成され、軸線O直角方向に延びる。通路73の他端は通路74の後端と接続する。通路74は工具本体11内部に形成され、軸線Oと平行に延びる。通路74の先端は噴出孔75と接続する。噴出孔75は上述した通路71〜74よりも小径であり、チップポケット13に形成されて、切刃チップ41へ指向する。これによりワークの中ぐり作業において、ボーリング用工具10から切削箇所へクーラントを供給することができる。また通路71〜74を通過するクーラントは、小径の噴出孔75を通過する際に高圧にされて、噴出孔75から勢いよく噴出する。したがって中ぐり切削時に切刃チップ41およびワークを十分に冷却することができる。
次に本発明の第2実施形態になる、工具本体11を工具ホルダ19に装着する構造について説明する。
図8は、第2実施形態の工具ホルダ19および工具本体11を示す側面図である。図9は、工具ホルダ19および工具本体11を示す分解図である。第2実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第2実施形態では、上述した第1実施形態と異なる点として、軽合金材からなる工具本体11の後端とアーバ53の先端を、鋼製アダプタ61を含む結合手段により、工具本体11およびアーバ53の軸線Oを一致しつつ分離可能に結合したところにある。
アーバ53の接合面19cと工具本体11の接合面12b間には鋼製のアダプタ61が介在する。アダプタ61は、一体物であって、アーバ53の接合面19cと工具本体11の接合面12b間に介在される円盤状のフランジ62と、このフランジ62の両フランジ端面62c,62bに軸線を一致させて突設した先端側および後端側の結合軸部63,65を備える。両フランジ端面62c,62bは軸線Oに直角な環状の平坦面である。
また工具本体11には、接合面12bの中心から先端側へ延びる丸穴である結合穴12dが形成される。結合穴12dは円柱状の結合軸部63を受け入れる。同様に工具ホルダ19の結合穴55は、円柱状の結合軸部65を受け入れる。結合軸部63,65は中実であるが、図示しないクーラント通路が穿設されてもよい。
さらに工具本体11の後端部には、雌ねじ孔12fが形成される。雌ねじ孔12fは工具本体11の外周面から結合穴12dの内周面まで軸線Oと直角に貫通して半径方向に延びる。結合軸部63の外周面にはクランプ用テーパ穴67が形成される。クランプ用テーパ穴67は有底穴であり、その側面は穴底に向かって細くなるテーパに形成される。クランプ用テーパ穴67も、軸線Oを中心とする半径方向に延び、軸線Oに直角である。
第2実施形態では、各雌ねじ孔12fおよび各クランプ用テーパ穴67が周方向に180°異なる位置で、2個ずつ対向配置される。ただし各雌ねじ孔12fおよび各クランプ用テーパ穴67の配置および個数はこれに限定されない。工具本体11の結合穴12dがアダプタ61の結合軸部63を受け入れると、雌ねじ孔12fがクランプ用テーパ穴67に接続する。各雌ねじ孔12fには、先細の先端テーパ69を有するクランプねじ68がねじ込まれる。クランプねじ68は前述したクランプねじ58と同一形状である。
図9に示すように工具本体11の後端部に関し、後端側へ指向する接合面12bから雌ねじ孔12fの中心までを間隔d4とする。またアダプタ61の先端部に関し、先端側へ指向するフランジ端面62cからクランプ用テーパ穴67の中心までを間隔d3とする。第2実施形態では、d3<d4とされ、間隔d4が間隔d3よりも僅かに大きい。
外径側からクランプねじ68を雌ねじ孔12fにねじ込むと、クランプねじ68の先端テーパ69がクランプ用テーパ穴67に進入し、両テーパの当たりによって結合軸部63を押圧する。そして先端テーパ69全周のうち軸線O方向先端側のテーパ面69sが、クランプ用テーパ穴67全周のうち軸線O方向先端側のテーパ面67pに片当たりする。かかる片当たりの押圧によって、結合軸部63は結合穴12dの穴底(軸線O方向先方)へ引き込まれ、工具本体11の接合面12bがアダプタ61の先端側のフランジ端面62cに密着する。
アダプタ61の後端部とアーバ53の結合も、図7に沿って前述したとおりでありアダプタ61の後端側のフランジ端面62bが工具ホルダ19の接合面19cに密着する。
第2実施形態によれば、カートリッジ本体21が装着される工具本体11をアルミ合金等の軽金属製としたので、第1実施形態と同様に高速回転しても遠心力の影響を受けにくい工具を提供できる。またボーリングバーのヘッド本体になる工具本体11に関し、工具本体11の後端とアーバ53の先端間を鋼製のアダプタ61を含む結合手段により結合するため、工具本体11の固有振動数が高くなり、ボーリングヘッド部分のビビリ安定限界が向上する。
また第2実施形態によれば、別構造のアダプタ61を用いることにより、アダプタ61を含む工具本体11および工具ホルダ19の結合手段の加工が容易になるほか、鋼製のアダプタ61を介してアーバ53と工具本体11間を分離可能に結合できる。これによりボーリングヘッド部分になる工具本体11を頻繁に交換しても、ボーリングヘッド部分を直接アーバに結合する第1実施形態に比較して結合部12の摩耗及び変形が少なく、ボーリングヘッド部分とアーバ間の結合精度および結合強度を維持できる。
また第2実施形態によれば、クランプ用テーパ穴67の中心軸線からフランジ端面62cまでの間隔d3を雌ねじ孔12fの中心軸線から接合面12bまでの間隔d4より小さく設定することにより、工具本体11の接合面12bとアダプタ61のフランジ端面62cとを互いに密着でき、工具本体11とアダプタ61との結合を確実に、かつ強固にできる。
同様に、クランプ用テーパ穴57の中心軸線からフランジ端面62bまでの間隔d1を雌ねじ孔56の中心軸線から接合面19cまでの間隔d2より小さく設定することにより、アーバ53の接合面19cとアダプタ61のフランジ端面62bとを互いに密着でき、アーバ53とアダプタ61との結合を確実に、かつ強固にできる。
次に本発明の第3実施形態になる、工具本体11を工具ホルダ19に装着する構造について説明する。
図10は、第3実施形態の工具ホルダ19および工具本体11を示す側面図である。図11は、工具ホルダ19および工具本体11を示す分解図である。第3実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第3実施形態では、上述した第2実施形態と異なる点として、軽合金材からなる工具本体11の後端とアーバ53の先端間を結合する鋼製のアダプタ66を工具本体11に対して半固定的に結合できるようにしたところにある。
アダプタ66は、アーバ53の接合面19cと工具本体11の接合面12b間に介在するフランジ62と、フランジ62の後端側のフランジ端面62bに突設した結合軸部65と、フランジ62の先端側のフランジ端面62cに突設したインロー部63gと、インロー部63gの軸心部に突設したねじ部63iと、を備える。結合軸部65と、インロー部63gと、ねじ部63iは、互いに軸線が一致する。
ヘッド本体としての工具本体11には、接合面12bの軸心部に、円形のインロー部63gが嵌合する円形の係合凹部12hと、ねじ部63iが螺合するねじ穴12jが形成される。
第3実施形態においてアーバ53の先端面になる接合面19cに工具本体11を結合する場合は、まず、工具本体11のねじ穴12jにアダプタ66のねじ部63iを螺合し締め込むことにより、アダプタ66のインロー部63gを工具本体11の係合凹部12hに嵌合して工具本体11とアダプタ66の同心性を確保し、かつアダプタ66のフランジ62を工具本体11の接合面12bに密着させて、アダプタ66と工具本体11とを半固定状態に結合する。
次に、アーバ53の結合穴55にアダプタ66の結合軸部65を嵌合した後、各雌ねじ孔56にクランプねじ58を螺合して結合軸部65を締め付ける。この時、クランプ用テーパ穴57の中心軸線からフランジ62のフランジ端面62bまでの間隔d1はアーバ53の雌ねじ孔56の中心軸線から接合面19cまでの間隔d2より僅かに小さく設定されているため、クランプねじ58の螺入により、その先端テーパ59が結合軸部65のクランプ用テーパ穴57に押し込まれると、両テーパの作用によって結合軸部65が結合穴55の奥部方向に引き込まれ、フランジ62のフランジ端面62bとアーバ53の接合面19cとを互いに密着した状態に結合する。
第3実施形態によれば、第2実施形態と同様な効果が得られるほか、アダプタ66にインロー部63gとねじ部63iを設けることにより、アダプタ66とヘッド本体としての工具本体11をねじ込み方式で簡単に結合することができる。
次に本発明の第4実施形態になる、工具本体11を工具ホルダ19に装着する構造について説明する。
図12は、第4実施形態の工具ホルダ19および工具本体11を示す側面図である。図13は、工具ホルダ19および工具本体11を示す分解図である。第4実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第4実施形態では、上述した第3実施形態と異なる点として、軽合金材からなる工具本体11の後端とアーバ53の先端間を結合する鋼製のアダプタ76を工具本体11に対してアダプタ76の内側からボルト77により半固定的に結合できるようにしたところにある。
第4実施形態は、アーバ53との接合面19cと工具本体11の接合面12bを、軸線を互いに一致させて結合する鋼製のアダプタ76を有する。アダプタ76は、アーバ53の接合面19cと工具本体11の接合面12b間に介在するフランジ62と、フランジ62の後端側のフランジ端面62bに突設した筒状の結合軸部65と、フランジ62の先端側のフランジ端面62cに突設したインロー部63gと、フランジ62およびインロー部63gを軸線方向に貫通して結合軸部65の内側空間65nと接続する貫通孔76hを備える。貫通孔76hの内径は、内側空間65nの内径よりも小さく、内側空間65nの底面と接続する。結合軸部65とインロー部63gと貫通孔76hは、互いに軸線が一致する。結合軸部65の内周面は丸穴としての内側空間65nを区画する。
貫通孔76hには軸線Oの後方からクランプボルト77が挿通される。貫通孔76hの内径は、結合軸部65の内周面よりも小径である。このためクランプボルト77の頭部は、内側空間65nの穴底に係止する。またクランプボルト77の軸部は貫通孔76hから突出し、係合凹部12hの底面に穿設されるねじ穴12kと螺合する。なおねじ穴12kは軸線Oに沿って延びる。
第4実施形態において、アーバ53先端にヘッド本体としての工具本体11を結合する場合は、まず、工具本体11の係合凹部12hにアダプタ76のインロー部63gを嵌合した後、筒状に形成された結合軸部65の内側空間65nから挿入されるクランプボルト77をフランジ62およびインロー部63gを貫通してねじ穴12kに螺合し締め付ける。これにより、工具本体11とアダプタ76の同心性はインロー部63gで確保されるとともに、アダプタ76のフランジ62を工具本体11の接合面12bに密着させて、アダプタ76と工具本体11とを半固定状態に結合する。
次に、アーバ53の結合穴55にアダプタ76の結合軸部65を嵌合した後、各雌ねじ孔56にクランプねじ58を螺合して結合軸部65を締め付ける。この時、クランプ用テーパ穴57の中心軸線からフランジ62のフランジ端面62bまでの間隔d1はアーバ53の雌ねじ孔56の中心軸線から接合面19cまでの間隔d2より僅かに小さく設定されているため、クランプねじ58の螺入により、その先端テーパ59が結合軸部65のクランプ用テーパ穴57に押し込まれると、両テーパの作用によって結合軸部65が結合穴55の奥部方向に引き込まれ、フランジ62のフランジ端面62bとアーバ53の接合面19cとを互いに密着した状態に結合する。
第4実施形態によれば、前述した第2および第3実施形態と同様な効果が得られるほか、アダプタ76と工具本体11をクランプボルト77により結合する。クランプボルト77は、筒状に形成された結合軸部65の内側空間65nからフランジ62の軸線およびインロー部63gの軸線に沿って延び、これらフランジ62およびインロー部63gを貫通する。これにより前述したクランプ用テーパ穴および雌ねじ孔を周方向所定箇所に設けなくてよく、アダプタ76と工具本体11の結合箇所の回転バランスに配慮する必要がなくなる。
なお上述した第1〜第4実施形態の結合手段がそれぞれ備える各種構造は、図示しない変形例において、適宜組み合わせ可能である。
次に本発明の第5実施形態になる、ボーリング用工具について説明する。
図14は本発明の第5実施形態になるボーリング用工具のボーリングヘッド部分を示す部分側面図であり、ボーリング用工具の軸線Oを含む切断面でボーリング用工具の一部を切断してその断面を表す。図15は、図14の工具本体を示す横断面図であり、軸線Oに直交する平坦面で工具本体を切断し、その断面を軸線O方向にみた状態を表す。第5実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第5実施形態では、第1実施形態と異なる点として、工具本体11にバランス調整用ウエイト81を設けたところにある。
図14に示すように、工具本体11の後端領域の外周面には、チップポケット13およびカートリッジ本体21の頭部22と反対の側に位置する周方向位置で、所定径の円形穴11dを形成する。図15に示すように円形穴11dの周方向位置は、工具本体11の先端領域の外周面に形成される切欠部15と重なる。
円形穴11d内には、工具本体11よりも比重の大きい金属、例えば工具本体11がアルミ合金からなる場合、鉛等からなる円盤状のバランス調整用ウエイト81を挿入し、このバランス調整用ウエイト81を固定ねじ82により工具本体11に固定する。前述した図1に示すようにカートリッジ本体21の頭部22はチップポケット13に受け入れられ、カートリッジ本体21の脚部23は切欠部15に突出する。このためバランス調整用ウエイト81は、工具本体11の外周面のうちカートリッジ本体21の頭部22(チップポケット13)から遠くカートリッジ本体21の脚部23(切欠部15)に近い周方向位置に取り付けられる。
バランス調整用ウエイト81の重量は、カートリッジ本体21の頭部22の重量と、軸線Oから頭部22までの径方向への突出量に応じて設定される。そして工具本体11の回転バランスの微調整はバランス調整用ウエイト81を部分的に削り取ることにより行われる。図15に示すように円形穴11dは、頭部22から周方向180°になる反対側の対向位置より若干ずらして形成することが好ましい。具体的には図15に示すように円形穴11dは、軸線Cに平行に設けられず、チップポケット13側に周方向に近づけられる。
このような第5実施形態によれば、軽合金からなる工具本体11にカートリッジ本体21、切刃チップ41、ダイヤルユニット31等を含むボーリングユニットが装着されていても、工具本体11の回転バランスをバランス調整用ウエイト81により確実に調整することができる。これに伴い、ボーリングヘッドおよびアーバの高速回転が可能になり、遠心力の影響やビビリのないワークの高速精密仕上加工を容易に実現できる。
ところで第1実施形態によれば、ロックフランジ38は皿ねじ18によって工具本体11に取付固定される。また被ロック部としてのロックナット36およびワッシャ37は、ダイヤルリング31を介してカートリッジ本体21の脚部23に取付固定される。ロックフランジ38の裏面38bは内径側でワッシャ37の他端面に当接する。これにより被ロック部としてのロックナット36およびワッシャ37は、ロックフランジ38によって凹部16から工具本体11の外径側へ抜け出すことを禁止される。したがってワークを中ぐり切削する際に、図1に太矢印で示すように工具本体11の内径方向に外力Fが、ワークから切刃チップ41に作用しても、かかる外力Fはロックフランジ38に受け止められ、カートリッジ本体21および切刃チップ41は軸線C方向に移動しない。本実施形態によれば、ワークの材質や切削条件の如何により、過大な外力Fを受ける場合であっても、切刃チップ41が移動せず、所望のボーリング径でワークを中ぐり切削を行うことができる。
また第1実施形態によれば、カートリッジ本体21およびダイヤルリング31は、被ロック部とロックフランジ38の当接によって軸線C方向の移動を禁止される。すなわち軸線C方向に過大な外力Fが切刃チップ41に作用しても、外力Fはロックフランジ38に受け止められて、ウェーブスプリング42に作用しない。このように外力Fが過大であってもウェーブスプリング42は圧縮変形しないので、ウェーブスプリング42のばね定数は小さくてもよい。柔らかい弾性部材としてのウェーブスプリング42は、ダイヤルリング31のフランジ33を小さい付勢力で軸線C方向他方側へ押圧する。したがって作業者は小さなトルクでダイヤルリング31を手回しすることができ、切刃チップ41の突出量を容易に微調整することができる。
また第1実施形態によれば、被ロック部として1個のロックナット36と、ダイヤルリング31の円筒部32を通されるワッシャ37を含み、ワッシャ37は環状の舌付ワッシャである。これによりワッシャ37の周方向一部に形成される舌部37tで、ワッシャ37の回転を規制することができる。またダイヤルリング31からみてワッシャ37の変位を規制することができる。そして工具本体11からみてダイヤルリング31を相対変位不能に保持しつつ、ダイヤルリング31の回動を許容することができ、ダイヤルリング31の回動によりカートリッジ本体21を貫通孔14に沿って進退動させ得る。
あるいは図示しない変形例として、ワッシャ37をロックナットに変更し、被ロック部として2個のロックナットを雄ねじ32fに螺合してもよい。これにより被ロック部はダブルロックナットで構成される。2個のロックナットを互いに押し合うように締め付けることによって被ロック部は緩み止めされて、ダイヤルリング31に固定される。
また第1実施形態によれば、図6に示すように工具本体11に形成される通路72〜74および噴出孔75を有する。通路72〜74および噴出孔75はこの順序で直列的に接続し、クーラントが通過する。一連の通路72〜74は工具本体11の後端部から噴出孔75まで延びる。噴出孔75は工具本体11の先端部に形成されて切刃チップ41へ指向する。これにより中ぐり切削において、切刃チップ41およびワークに十分な量のクーラントを供給することができる。
また第2実施形態によれば、図8に示すようにアーバ53と、アーバ53の先端部と工具本体11の後端部を同軸に連結する鋼製のアダプタ61とをさらに備える。アダプタ61は、アーバ53の先端部に形成されて先端側へ指向するアーバの接合面19cおよび工具本体11の後端部に形成されて後端側へ指向する工具本体の接合面12b間に介在するフランジ62と、フランジ62先端側のフランジ端面62cから突出する先端側の結合軸部63と、フランジ62後端側のフランジ端面62bから突出する後端側の結合軸部65とを有する。アーバ53は、アーバ53の接合面19cの中心に形成されて後端側の結合軸部65を受け入れるアーバ53の結合穴55と、アーバ53の結合穴55の内周面からアーバ53の外周面まで延びる少なくとも1つのクランプ用雌ねじ孔56とを有し、クランプ用雌ねじ孔56にクランプねじ58がねじ込まれることによりアダプタ61と結合する。工具本体11は、工具本体11の接合面12bの中心に形成されて先端側の結合軸部63を受け入れる工具本体11の結合穴12dと、工具本体11の結合穴12dの内周面から工具本体11の外周面まで延びる少なくとも1つのクランプ用雌ねじ孔12fとを有し、クランプ用雌ねじ孔12fにクランプねじ68がねじ込まれることによりアダプタ61と結合する。
これによりボーリングバーであるボーリング用工具10のうちのボーリングヘッド部分を軽量化でき、高速回転しても遠心力の影響の受けにくい工具を提供できるとともに、ヘッド本体になる工具本体11とアーバ53先端間を鋼製のアダプタ61を含む結合手段で結合することにより、ヘッド本体の固有振動数が高くなり、ボーリングヘッド部分のビビリ安定限界を向上できる。
また第2実施形態によれば、図8に示すように工具本体11のクランプねじ68の先端部およびアーバ53のクランプねじ58の先端部は、先細の先端テーパ59,69にされる。先端側の結合軸部63の外周面には、工具本体11のクランプ用雌ねじ孔12fと接続するクランプ用テーパ穴67が形成される。後端側の結合軸部65の外周面には、アーバ53のクランプ用雌ねじ孔56と接続するクランプ用テーパ穴57が形成される。図9に示すように先端側のフランジ端面62cから先端側のクランプ用テーパ穴67の中心軸線までの間隔d3は、工具本体11の接合面12bから工具本体11のクランプ用雌ねじ孔12fの中心軸線までの間隔d4よりも小さい。また後端側のフランジ端面62bから後端側のクランプ用テーパ穴57の中心軸線までの間隔d1は、前記アーバ接合面から前記アーバクランプ用雌ねじ孔の中心軸線までの間隔d2よりも小さい。クランプねじ68の先端テーパ69がクランプ用テーパ穴67に進入してテーパ69sとテーパ67pが片当たりすることによって先端側の結合軸部63を工具本体11の結合穴12dに引き込んで工具本体11の接合面12bおよび先端側のフランジ端面62cの密着を実現し、クランプねじ58の先端テーパ59がクランプ用テーパ穴57に進入してテーパ59tとテーパ57qが片当たりすることによって後端側の結合軸部65をアーバ53の結合穴55に引き込んでアーバ53の接合面19cおよび後端側のフランジ端面62bの密着を実現するよう構成される。
これにより、アーバ53の接合面19cとアダプタ61のフランジ端面62bを互いに密着でき、アダプタ61のフランジ端面62cと工具本体11の接合面12bを互いに密着でき、アーバ53と工具本体11との結合を確実に、かつ強固にできる。
また第3実施形態によれば、図10に示すようにアーバ53と、アーバ53の先端部と工具本体11の後端部を同軸に連結する鋼製のアダプタ66とをさらに備える。アダプタ66は、アーバ53の先端部に形成されて先端側へ指向するアーバ53の接合面19cおよび工具本体11の後端部に形成されて後端側へ指向する工具本体11の接合面12b間に介在するフランジ62と、フランジ62先端側のフランジ端面62cから突出するインロー部63gと、インロー部63gから突出するねじ部63iと、フランジ62後端側のフランジ端面62bから突出する後端側の結合軸部65とを有する。アーバ53は、アーバ53の接合面19cの中心に形成されて後端側の結合軸部65を受け入れるアーバ53の結合穴55と、アーバ53の結合穴55の内周面からアーバ53の外周面まで延びる少なくとも1つのクランプ用雌ねじ孔56とを有し、クランプ用雌ねじ孔56にアーバ53のクランプねじ58がねじ込まれることによりアダプタ66と結合する。工具本体11は、工具本体11の接合面12bの中心に形成されてインロー部63gと係合する係合凹部12hと、係合凹部12hの底面に形成されてねじ部63iと螺合するねじ穴12jとを有し、ねじ穴12jにねじ部63iが螺合することによりアダプタ66と結合する。
これにより上述した効果に加えて、アダプタ66と工具本体11をねじ込み方式で簡単に結合することができる。
また第4実施形態によれば、図12に示すようにアーバ53と、アーバ53の先端部と工具本体11の後端部を同軸に連結する鋼製のアダプタ76とをさらに備える。アダプタ76は、アーバ53の先端部に形成されて先端側へ指向するアーバ53の接合面19cおよび工具本体11の後端部に形成されて後端側へ指向する工具本体11の接合面12b間に介在するフランジ62と、フランジ62先端側のフランジ端面62cから突出するインロー部63gと、フランジ62後端側のフランジ端面62bから突出する筒状の結合軸部65と、フランジ62およびインロー部63gを貫通して結合軸部65の内側空間65nと接続するボルト貫通孔76hとを有する。アーバ53は、アーバ53の接合面19cの中心に形成されて結合軸部65を受け入れるアーバ53の結合穴55と、アーバ53の結合穴55の内周面からアーバ53の外周面まで延びる少なくとも1つのクランプ用雌ねじ孔56とを有し、アーバ53のクランプ用雌ねじ孔56にクランプねじ58がねじ込まれることによりアダプタ76と結合する。工具本体11は、工具本体11の接合面12bの中心に形成されてインロー部63gと係合する係合凹部12hと、係合凹部12hの底面に形成されてボルト貫通孔76hと接続するねじ穴12kとを有し、ボルト貫通孔76hにクランプボルト77の軸部が通されてねじ穴12kに螺合しクランプボルト77の頭部が内側空間65nの底面に係止することによりアダプタ76と結合する。
これによりアダプタ76の中心を通過するクランプボルトで、アダプタ76と工具本体11を結合することができ、当該結合箇所の回転バランスに配慮する必要がなくなる。
また第3および第4実施形態によれば、図10および図12に示すように、アーバ53のクランプねじ58の先端部は、先細の先端テーパ59にされ、後端側の結合軸部65の外周面には、アーバ53のクランプ用雌ねじ孔56と接続するクランプ用テーパ穴57が形成され、図11および図13に示すように後端側のフランジ端面62bからクランプ用テーパ穴57の中心軸線までの間隔d3は、アーバ53の接合面19cからアーバ53のクランプ用雌ねじ孔56の中心軸線までの間隔d2よりも小さい。アーバ53のクランプねじ58の先端テーパ59がクランプ用テーパ穴57に進入してテーパ59tとテーパ57qが片当たりすることによって後端側の結合軸部65をアーバ53の結合穴55に引き込み、アーバ53の接合面19cおよび後端側のフランジ端面62bの密着を実現するよう構成される。
これによりアーバ53の接合面19cとアダプタ76のフランジ端面62bを互いに密着でき、アーバ53と工具本体11の結合を確実に、かつ強固にできる。
また第5実施形態によれば、図13および図14に示すように工具本体11の外周面のうちカートリッジ本体21の頭部から遠くカートリッジ本体21の脚部に近い周方向位置に取り付けられるバランス調整用ウエイト81をさらに備えることから、軽合金からなる工具本体11にカートリッジ本体21等を含むボーリングユニットが装着されていても、工具本体11の回転バランスをバランス調整用ウエイト81により確実に調整することができる。これに伴い、ボーリングヘッドとしての工具本体11およびカートリッジ本体21とアーバ53との高速回転が可能になり、遠心力の影響やビビリのないワークの高速精密仕上加工を容易に実現できる。
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。