JP6251162B2 - ポリプロピレン樹脂組成物、その成形体、及びポリプロピレン樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

ポリプロピレン樹脂組成物、その成形体、及びポリプロピレン樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物及びその成形体に関する。
ポリプロピレン系樹脂は、成形性、機械的性質、経済性等に優れるため、例えば、ドアトリム、バンパー、ピラー等の自動車部品に使用される材料の大部分を占めている。自動車部品の分野では、ポリプロピレン樹脂を単独で用いるほか、機械的特性等の向上を目的として、無機充填剤やエラストマー等を添加した複合ポリプロピレン樹脂も広く使用されている。また、黒色系着色剤、中でも特にカーボンブラックは、着色力、隠蔽力が大きく、成形体の耐久性を向上させるため、自動車の内装部品の着色成分として多用されている。更に、形成した成形体に良好な性能バランスを付与し易くなることから、無機充填剤であるタルクを含有させることも行われている。
しかし、タルクを含有した、カーボンブラック等で着色したフィラー含有のポリプロピレン系樹脂は、その成形体の耐傷付性が低く、傷付いた場合には該傷部分が白っぽく見える白化傷が生じてしまうという問題がある。このような問題点に対し、耐傷付性を改善させるために、表面改質剤として脂肪酸アミドを添加して表面抵抗を低減させる方法(特許文献1)や、(メタ)アクリル酸金属塩がグラフトされた変性ポリプロピレンを使用する方法(特許文献1、2)等が提案されている。また、耐傷付性に加えて、樹脂の流れに伴って成形体表面に生じるトラシマ(虎縞)模様の発生を抑制し、物性バランスにも優れる成形体が得られるとしたポリプロピレン樹脂組成物も提案されている(特許文献3)。
特開2009−79117号公報 特開2010−53332号公報 特開2013−209472号公報
しかしながら、タルクを含有し、カーボンブラック等で着色したポリプロピレン系樹脂で形成した成形体では、硬質な物で衝撃を受けた場合には完全に傷付くのを防ぐことができなかった。また、表面改質剤として、例えば、特許文献1に記載されているようなエルカ酸アミド等の脂肪酸アミドを添加した場合には、確かに白化傷を目立たなくさせる効果があるが、本発明者らの検討によれば、特に、エルカ酸アミドを多量に添加すると成形体の表面にべた付きを生じ、また、成形体の諸物性の低下を招く等の問題点があった。このことに原因していると考えられるが、特許文献1では、樹脂組成物100重量部中に、脂肪酸アミドを0.1〜1.5重量部、好ましくは0.3〜1.0重量部配合するとしており、実施例で配合しているのは0.5重量部程度と少量である。更に、変性ポリプロピレンを併用することで耐傷付性が向上するとしているが、変性ポリプロピレンの調製は煩雑である。特許文献2に記載の技術も、変性ポリプロピレンを使用するものであり、結晶性樹脂であるポリプロピレン樹脂において傷の起点となる非晶部を強化するために添加するとしている。しかし、特許文献2に記載の変性ポリプロピレンを使用した場合には、成形体中に亜鉛やマグネシウム等の金属が含有されることになるという別の問題もあり、更なる有用な材料の開発が望まれる。
また、特許文献3に記載の発明は、弾性率と衝撃強度等の物性バランスをも問題としているため、エラストマー(ゴム)を複合強化した複合ポリプロピレンであり、更に、不飽和カルボン酸で変性したポリプロピレンを用い、pHが2〜4.5のカーボンブラックを用いる等、多くの特有の成分をバランスよく配合する必要があり、調製が煩雑であるという課題がある。本発明者らは、上記した従来技術の課題解決にあたり、できるだけ簡単な配合のポリプロピレン系樹脂組成物で、形成した黒色の成形体に傷が付いたとしても白化傷がより目立ちにくい構成とできれば、極めて有用であるとの認識を持つに至った。
本発明は、上記問題点及び認識に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、汎用材料を用いた簡単な配合からなるものでありながら、特に、例え傷が付いたとしても、その黒色系の成形体の白化傷を目立たなくすることを特徴とする、カーボンブラック等の黒色系着色剤で着色し、無機充填剤としてタルクを含有してなるポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体を提供することである。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、カーボンブラック等の黒色系着色剤で着色し、無機充填剤としてタルクを含有したポリプロピレン系樹脂及びその成形体において、エルカ酸アミドと特定の改質剤とを併用することによって、白化傷を目立たなくすることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、ポリプロピレン樹脂に、エルカ酸アミドだけでなく、特定のエチレン系共重合体を併用することで、該共重合体が、エルカ酸アミドを成形体の表面に偏在させ易くする機能を発揮する改質剤となることを見出して本発明を達成したものである。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物では、ポリプロピレン樹脂に、エルカ酸アミドと特定のエチレン系共重合体を併用するだけで、成形体の表面の改質に効果的なエルカ酸アミドを、形成した成形体表面により多く存在させることができ、その結果、白化傷が目立たなくなると同時に、エルカ酸アミドの添加量を多くしても、エルカ酸アミドを多く用いた場合に生じる成形体表面のべた付きや、衝撃強度低下を防止することができるようになる。本発明は、下記構成を有するポリプロピレン樹脂組成物及びその成形体を提供する。
(1)ポリプロピレン樹脂50〜90質量%に、黒色系着色剤0.01〜5質量%、タルク0.5〜40質量%を含有してなる黒色系のポリプロピレン樹脂組成物であり、
更に、エルカ酸アミド0.8〜5質量%、エチレン−アクリル酸系共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体0.8〜20質量%を含有し、且つ、前記エルカ酸アミドの含有量を1とした場合に、該エルカ酸アミドに対する前記エチレン−アクリル酸系共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量の比が、質量基準で0.9〜4.0となるように調整されており、
更に、該組成物の黒色系成形体における、白化傷が修復される能力を、引っ掻き促進試験後における白化傷の部分と、それ以外の部分との色差の差である引っ掻き促進試験後の色差値ΔE*で評価した場合に、該色差値ΔE*が5.0以下であることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。
上記のポリプロピレン樹脂組成物の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。
(2)前記黒色系着色剤が、カーボンブラックを必須成分として含む上記(1)に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
(3)前記ポリプロピレン樹脂が、メルトフローレート(JIS K7210に準拠、230℃、2.16kg荷重)が10〜50g/10分のポリプロピレン樹脂である上記(1)又は(2)に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
(4)前記エチレン−アクリル酸エチル系共重合体を必須成分として含む上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物で形成されてなることを特徴とする黒色系成形体。
本発明によれば、汎用材料を用いた簡単な配合からなるものでありながら、特に、例え傷が付いたとしても、その黒色系の成形体の白化傷を目立たなくすることができる、カーボンブラック等の黒色系着色剤で着色し、無機充填剤としてタルクを含有してなるポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の提供が可能になる。なお、本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、その利用に合わせて、コンパウンドでの提供、マスターバッチでの提供のいずれの形態での提供も可能であるので、汎用性の高い材料とできる。
以下、本発明の好ましい形態を挙げて、本発明について詳細に説明する。本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、主成分であるポリプロピレン樹脂50〜90質量%に、黒色系着色剤0.01〜5質量%とタルク0.5〜40質量%とが含有された黒色のポリプロピレン樹脂組成物であり、その添加剤として、エルカ酸アミドを0.8〜5質量%の範囲内で添加し、更に、エチレン−アクリル酸エチル共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体を0.8〜20質量%の範囲内で含有させ、上記構成としたことで、エルカ酸アミドを添加することで発揮される表面改質の機能をより高めることを達成すると同時に、エルカ酸アミドを添加したことによって生じる成形体表面に生じるべた付きの抑制を達成する。以下、本発明を構成する各成分について説明する。
<黒色系着色剤>
本発明で使用される黒色系着色剤には、その高い隠蔽力、着色力、更に成形体とした場合の耐久性向上等の理由から、カーボンブラックを必須成分として含有することが好ましい。カーボンブラックとしては、公知の樹脂着色用のものをいずれも用いることができる。例えば、平均粒子径が10〜100nm、好ましくは15〜80nm、更には15〜40nm程度のカーボンブラックが好適である。カーボンブラックとしては、いずれのものも使用できるが、粒子径が細かすぎると分散不良の問題が生じるおそれがあり、大きすぎると着色力が低下するので好ましくない。カーボンブラックの分散剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム等の従来公知のものを使用することができる。
他の黒色系着色剤成分も特に限定されずないが、例えば、グラファイト、鉄黒、フタロシアニンブラック、アニリンブラック、ペリレンブラック、CNT等を用いることができる。また、黒色顔料により着色した黒色樹脂の色調を微妙に変化させるため、上記に挙げた黒色系着色剤の他に、従来、プラスチックの着色に使用されている顔料、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、インジゴ系顔料、インダンスレン系顔料、キノフタロン系顔料及び金属錯体系顔料等の有機顔料、コバルトブルー、二酸化チタン、ベンガラ、黄鉛、群青、紺青及び複合酸化物系顔料等の無機顔料を調色剤として併用することができる。上記他の黒色顔料及び調色剤は、所望する色に適合させるために、例えば、カーボンブラック100質量部に対して0.5〜700質量部の範囲で使用することができる。本発明のポリプロピレン樹脂組成物を構成するカーボンブラック等の黒色系着色剤の量は、0.01〜5質量%であるが、好ましくは0.1〜3質量%である。黒色系着色剤の量が、5質量%を超えると、諸物性のバランスが悪くなるおそれや成形流動性が低下するおそれがある。
<タルク>
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、上記した黒色系着色剤と共に、機械的強度等の物性向上を目的として、タルクを0.5〜40質量%の範囲で配合されてなる。本発明で使用されるタルクは、従来より、樹脂成形物の充填材として使用されるものであれば、特に限定されず用いることができるが、下記のものを使用することが好ましい。すなわち補強効果等に優れる点から、天然のタルクに粉砕(例えば、ジェットミル等による粉砕)・分級を施して製造されたものを用いることが好ましく、具体的には、次の物性を有する粉体を用いることが好ましい。すなわち、アスペクト比は、5〜30であることが好ましく、より好ましくは5〜20である。タルクの平均粒径は、0.1〜40μmのものが好ましく、1〜20μmのものがより好ましい。篩い上相対粒子量が25%である時の粒子径(25%粒子径)を篩い下相対粒子量が75%である時の粒子径(75%粒子径)で除した値(25%粒子径/75%粒子径)は、2.0〜5.0であることが好ましい。本発明のポリプロピレン樹脂組成物を構成するタルクの量は、0.5〜40質量%であることを要する。より好ましくは1〜30質量%である。タルクの量が、少ないと機械的強度等の物性向上があまりみられず、40質量%を超えると、諸物性のバランスが悪くなったり、成形流動性が低下するおそれがある。
<ポリプロピレン樹脂>
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂を主成分とし、組成物中に50〜90質量%含有されている。本発明で使用されるポリプロピレン樹脂は、その流動性を示すメルトフローレート(JIS K7210に準拠、230℃、2.16kg荷重、以下同様。)が10〜50g/10分であるものを使用することが好ましい。より好ましくは20〜40g/10分である。メルトフローレートが10g/10分未満であると、成形時の流動性が低下するおそれがあるので好ましくない。また、メルトフローレートが50g/10分を超えると耐衝撃性が低下するおそれがあるので好ましくない。本発明のポリプロピレン樹脂組成物を構成するポリプロピレン樹脂の量は、50〜90質量%であることを要し、より好ましくは60〜80質量%である。ポリプロピレン樹脂の量が、50質量%未満だと、流動性が不十分になる。
<エルカ酸アミド>
本発明のポリプロピレン樹脂組成物を構成するエルカ酸アミドは、組成物中に0.8〜5質量%の範囲で含有される。本発明者らの検討によれば、エルカ酸アミドを構成成分としたことで、成形体の成形工程において樹脂組成物に適度な滑り性を付与し、更に、形成した成形体の表面の滑り性を向上させることができる。本発明のポリプロピレン樹脂組成物の構成成分であるエルカ酸アミドは、このように成形体表面を改質する滑剤として機能するが、エルカ酸アミドの量は、0.8〜5質量%であることを要し、より好ましくは1〜3質量%である。エルカ酸アミドの量が、5質量%を超えると、本発明の組成物の構成によっても、形成した成形体にべた付きが起きてしまう。一方、エルカ酸アミドの量が、0.8質量%未満だと、成形体の表面に十分な滑り性が得られず、成形体における耐白化傷性が不十分になる。
<改質剤>
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、上記したエルカ酸アミドに加えて、改質剤として、エチレン−アクリル酸系共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体を0.8〜20質量%の範囲で含有してなることを特徴とする。本発明で使用されるポリプロピレン樹脂に配合されたエチレン−アクリル酸系共重合体及びエチレン−酢酸ビニル共重合体は、本発明者らの検討によれば、ポリプロピレン樹脂よりも親水性に優れるため、本発明のポリプロピレン樹脂組成物で成形体を形成した場合に、選択的に表面配向する。また、本願発明者らの検討によれば、先に説明した併用する滑剤成分としてのエルカ酸アミドは、主成分であるポリプロピレン樹脂に比べて、添加したエチレン−アクリル酸系共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体に近い溶解度パラメータを持つため、エルカ酸アミドが、エチレン−アクリル酸系共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体に引き寄せられる形で、より樹脂成形体の表面に偏在しやすくなる。すなわち、本発明者らの検討によれば、本発明を構成するエチレン−アクリル酸系共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体は、エルカ酸アミドに対して主成分のプロピレン樹脂よりも高い相溶性を示し、エルカ酸アミドを樹脂成形体の表面に偏在させる機能を発揮する。この結果、エルカ酸アミドに加え、その改質剤として機能するエチレン−アクリル酸系共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体を併用した構成の本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、その成形体の耐傷付き白化特性の向上に対して顕著な効果を実現できたものと考えられる。本発明のポリプロピレン樹脂組成物を構成するエチレン−アクリル酸系共重合体とエチレン−酢酸ビニル共重合体は、単独又は併用して使用することができる。
本発明の樹脂組成物を構成するエチレン−アクリル酸系共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸メチル(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)或いはエチレン−アクリル酸ブチル(EBA)等が挙げられ、これらはいずれも本発明に好適に用いることができる。これらは市販品として得ることができるが、例えば、エルバロイ(登録商標、デュポン社製)や、レクスパール(商品名、日本ポリエチレン製)や、株式会社NUCの製品等が挙げられる。上記した中でも、エチレン−アクリル酸メチル(EMA)やエチレン−アクリル酸エチル(EEA)は、本発明の樹脂組成物の主成分であるポリプロピレン等のポリオレフィンとの相溶性に優れるため、本発明の構成材料として特に有用である。
本発明の樹脂組成物を構成するエチレン−アクリル酸系共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体の量は、0.8〜20質量%、好ましくは1〜10質量%である。エチレン−アクリル酸系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の量が20質量%を超えると、形成した成形体の衝撃性や剛性に悪影響を与える。また、本発明のポリプロピレン樹脂組成物において、前記エルカ酸アミドの含有量に対する前記エチレン−アクリル酸系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量の比は、エルカ酸アミドの含有量を1とした場合に、質量基準で0.9〜4.0であることを要する。更に好ましくは1.0〜4.0である。すなわち、本願発明者らの検討によれば、前記エルカ酸アミドの含有量に対する前記エチレン−アクリル酸系共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量が多くても少なくても、上記した本発明を特徴づける顕著な相乗効果が得られにくい。
<引っ掻き促進試験後のΔE*
本発明では、本発明のポリプロピレン樹脂組成物で形成した成形体における白化傷の白化傷とそれ以外の部分との色差が経時に伴って小さくなるという特徴を評価するため、引っ掻き傷を付け、促進試験を行った後にΔE*の測定を行い、この測定値を用いて本発明の顕著な効果を達成するポリプロピレン樹脂組成物を規定した。なお、促進試験は、白化傷とそれ以外の部分との色差が経時に伴って小さくなるという特徴を短時間で最終状態を見出すために行った。また、ΔE*の測定方法は下記の通りである。まず、評価対象の樹脂組成物を用い射出成型機にて縦90(mm)×横50(mm)×厚さ2(mm)の試験片を作成し、評価用プレートとした。本発明では、試験片の調製の際に、日精樹脂工業社製の射出成型機:NS40−5A(商品名)、型締め圧40トンを用いた。そして、下記の条件で該試験片に直線状の傷を11本付け、白化傷の目立ちやすさが促進試験として該試験片を80℃のギアオーブンに2時間入れ、白化傷の修復の程度を、目視と、下記の方法で引っ掻き促進試験後の色差値ΔE*測定して評価した。測定結果を表1、2に示した。
試験機名:全自動クロスカット膜剥離試験機
試験荷重:先端175g
針の材質:タングステン
試験速度:500mm/min.
直線の本数:11本
直線の間隔:0.75mm
促進試験後の色差値ΔE*測定は、測色機で、試験後の白化傷部と未傷部の測色をそれぞれに行い、これらの間の色差値ΔE*を求めた。本発明では測色の際に、測色機としてコニカミノルタ社製の測色計CM−3700d(商品名)を用いて測定した。上記のようにして求めたΔE*の値が小さいほど白化傷を修復する能力に優れていることを示している。目視による官能試験から、ΔE*の値が5.0以下であれば、白化傷が無いとできるか、白化傷があっても殆ど目立たないと評価できたことから、本発明では、ΔE*の値が5.0以下であることを樹脂組成物の構成要件とした。ΔE*の値は1.0以下であることが更に好ましい。本発明者らの検討によれば、本発明で規定する配合のポリプロピレン樹脂組成物とすることで、その黒色成形体は、白化傷が生じたとしても修復して白化傷が目立たない状態の、促進試験後の色差値ΔE*が5.0以下のものになる。
<成形体のべた付き評価>
上記のΔE*の測定に用いた射出成型法で作成した各評価用プレートについて、触診によってべた付き評価を行った。べた付いていない場合を○、べた付いている場合を×として評価した。その結果を表1、2に示した。
<ポリプロピレン樹脂組成物及びその成形体の製造方法・用途>
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造は、黒色系着色剤、タルク、エルカ酸アミド、特定の改質剤及びポリプロピレン樹脂を本発明で規定する配合量比で使用すればよく、これらの成分を、一軸押出機、二軸押出機、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー、ニーダー等の混錬機を用いて溶融混錬する従来公知の方法で製造することができる。これらの混錬機の中でも、特にコンパウンドとして本発明のポリプロピレン樹脂組成物を提供する場合は、二軸押出機を用いてコンパウンドを製造することが好ましい。また、本発明のポリプロピレン樹脂組成物がマスターバッチで提供された場合は、上記に挙げた混練機を用いて事前に希釈を行って使用してもよく、そのような工程を経ずに成形を行ってもよい。また、本発明のポリプロピレン樹脂組成物の成形体は、射出成形法、射出圧縮成形法等の周知の成形法で得ることができる。
次に実施例、比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の文中における「%」、「部」は特に断りのない限り、質量基準である。
(実施例1)
原料として、ポリプロピレン樹脂であるプライムポリプロJ707G(商品名、プライムポリマー社製)74.5部、タルクであるミクロンホワイト5000S(商品名、林化成社製)20.0部、エルカ酸アミドであるニュートロンS(商品名、日本精化社製)1.7部、エチレン−アクリル酸エチル共重合体であるNUC−6170」(商品名、NUC社製)2.3部及びカーボンブラックマスターバッチであるミツビシカーボンブラック#30L(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック、pH8)1.5部を用いた。その際、更に、カーボンブラックの分散剤としてステアリン酸マグネシウム1.5部を外添して用いた。
そして、これらの原料を、二軸押出機(日本鉄鋼所社製、tex30α、スクリュー径D:33mm、スクリュー長L/D=52.5)の上流のフィーダーにより投入し、スクリュー回転数200rpm、吐出量25kg/h、200℃で溶融混錬することにより、ストランド状の溶融樹脂を得た。水槽にて、該溶融樹脂を急冷し、ペレタイザーで切断することで本実施例のポリプロピレン樹脂組成物のペレットを得た。次に、該ペレットを射出成形機(日精樹脂工業製、NS40−5A(商品名)、型締め圧40トン)を用いて、自動車内装用革シボ付きの評価用プレートを作製するための金型(縦90(mm)×横50(mm)×厚さ2(mm)、シボ深さ100%)を用いて210℃で成形し、評価用プレートをそれぞれ得た。得られた各評価用プレートを用い、得られた引っ掻き促進試験後のΔE*値と、成形体のべた付きの評価結果を、プロピレン樹脂組成物の組成と共に表1中に示した。
(実施例2〜10、比較例1〜10)
原料を、表1に示した配合とした以外は、前記した実施例1と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物の製造を行った。実施例9、10では、エチレン−酢酸ビニル共重合体であるウルトラセン526(商品名、東ソー社製)を用いた。また、得られた樹脂組成物をそれぞれに用いて実施例1で行ったと同様に評価用プレートを作製した。そして、得られた各評価用プレートを用い測定した引っ掻き促進試験後のΔE*値と、成形体のべた付きの評価結果を、プロピレン樹脂組成物の組成と共に、実施例2〜10については表1中に、比較例1〜8については表2に示した。


Figure 0006251162
Figure 0006251162
表1及び表2中の原料の詳細は以下の通りである。
・ポリプロピレン樹脂:プライムポリマー社製「プライムポリプロJ707G」(商品名)
・タルク:林化成社製「ミクロンホワイト5000S」(商品名)
・カーボンブラック:三菱化学社製「ミツビシカーボンブラック#30L」(商品名)
・エチレン−アクリル酸エチル共重合体:NUC社製「NUC−6170」(商品名)
・ステアリン酸マグネシウム:堺化学社製「SM−P」(商品名)
・エチレン−酢酸ビニル共重合体:東ソー社製「ウルトラセン526」(商品名)
・エルカ酸アミド:日本精化社製「ニュートロンS」(商品名)
表1及び表2から明らかな通り、エルカ酸アミドを樹脂組成物中に添加することで、引っ掻き促進試験後のΔE*値を下げることができる。また、例えば、実施例3と比較例4との比較から、ΔE*値の低下の程度は、改質剤であるエチレン−アクリル酸エチル共重合体を配合することで向上することが確認された。実施例1〜5と比較例2、3との比較から、樹脂組成物中へ、エチレン−アクリル酸エチル共重合体のみを配合したとしてもΔE*値の低下の効果は殆どなく、エルカ酸アミドとの併用によって高い相乗効果が得られることが確認できた。更に、比較例5〜8と実施例1〜8との比較から明らかなように、本発明の顕著な効果を得るためには、エルカ酸アミドの配合との兼ね合いで、改質剤であるエチレン−アクリル酸エチル共重合体の最適な配合量があり、エルカ酸アミドに対する前記エチレン−アクリル酸エチル共重合体の含有量の比が、質量基準で0.9〜4.0となるように調整することが有効であることを確認した。すなわち、添加したエルカ酸アミドに対して、エチレン−アクリル酸エチル共重合体の量比が、多過ぎても少な過ぎても、引っ掻き促進試験後のΔE*値を低下させることと、成形体表面におけるべた付きの発生の抑制の両立が達成されないことを確認した。更に、実施例9、10から、エチレン−酢酸ビニル共重合体を添加することによっても、エチレン−アクリル酸エチル共重合体を添加した場合と同様の効果が得られることが確認された。

Claims (6)

  1. 形成した黒色系成形体に傷が付いたとしても白化傷を目立たなくする白化傷が修復される能力を有する黒色系のポリプロピレン樹脂組成物であり、
    主成分であるポリプロピレン樹脂50〜90質量%に、カーボンブラックを含む黒色系着色剤0.01〜5質量%、タルク0.5〜40質量%、エルカ酸アミド0.8〜5質量%、エチレン−アクリル酸系共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体0.8〜20質量%含有されてなり、且つ、前記エルカ酸アミドの含有量を1とした場合に、該エルカ酸アミドに対する前記エチレン−アクリル酸系共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量の比が、質量基準で0.9〜4.0となるように調整されていることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。
  2. 前記黒色系成形体における白化傷が修復される能力を、引っ掻き促進試験後における白化傷の部分と、それ以外の部分との色差の差である引っ掻き促進試験後の色差値ΔE * で評価した場合に、該色差値ΔE * が5.0以下である請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
  3. 前記ポリプロピレン樹脂が、メルトフローレート(JIS K7210に準拠、230℃、2.16kg荷重)が10〜50g/10分のポリプロピレン樹脂である請求項1又は2に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
  4. 前記エチレン−アクリル酸系共重合体を必須成分として含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物で形成されてなることを特徴とする黒色系成形体。
  6. 形成した黒色系成形体に傷が付いたとしても白化傷を目立たなくする白化傷が修復される能力を有する黒色系のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法であって、
    主成分であるポリプロピレン樹脂50〜90質量%に、カーボンブラックを含む黒色系着色剤0.01〜5質量%、タルク0.5〜40質量%、エルカ酸アミド0.8〜5質量%、改質剤としてのエチレン−アクリル酸系共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体0.8〜20質量%を添加し、且つ、前記エルカ酸アミドの含有量を1とした場合に、該エルカ酸アミドに対する前記エチレン−アクリル酸系共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量の比が、質量基準で0.9〜4.0となるように調整した配合量比で使用して、混練機を用いて溶融混練することを特徴とする黒色系のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
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