まず、図1,図2を用いて本発明の実施の形態に係る断続装置が適用されたデファレンシャル装置について説明する。
図1に示すように、デファレンシャル装置101は、デフケース7と、ピニオンシャフト103と、差動ギヤとしてのピニオン105と、一対の出力ギヤとしてのサイドギヤ107,9とからなる差動機構109と、断続装置1とを備えている。
デフケース7は、軸方向両側に形成されたボス部111,43のそれぞれの外周でベアリング113,5を介して静止系部材としてのケーシング3に回転可能に支持され、カバー体115とケース本体117とからなる。ケーシング3内部には、所定量の潤滑油が封入され、各部材の回転に伴い、摺動部の潤滑と冷却が行われている。
なお、ここで軸方向一側及び他側を定義しておくと、本実施の形態の説明においては、図1,図2におけるデフケースの回転軸方向視で、右側を軸方向一側とし、左側を軸方向他側とする。
このデフケース7には、リングギヤ119が固定されるフランジ部121が形成され、リングギヤ119が駆動力を伝達する入力側の伝達機構(例えば、不図示のトランスファなどに連結された不図示のプロペラシャフトなど)に連結されたドライブピニオン123と噛み合い、駆動力が伝達されてデフケース7を回転駆動させる。
ここで、図2に示すように、ドライブピニオン123は、リングギヤ119より小径に形成され、大径のリングギヤ119と変速駆動可能なようにベベルギヤ組を構成し、入力側の伝達機構から伝達された駆動力を方向変換する。
このギヤ組を構成する小径のドライブピニオン123は、入力軸125の軸方向一端側に入力軸125と連続する一部材で形成され、入力軸125から入力された駆動力を方向変換してデフケース7に伝達する。
入力軸125は、軸心がデフケース7の回転軸心と直交する方向に配置され、軸方向に配置された2つのベアリング127,129を介してケーシング3に回転可能に支持されている。この入力軸125の他端側外周には、スプライン形状の連結部131が形成され、入力側の伝達機構側から駆動力を伝達するプロペラシャフトなど側に連結される連結部材133が一体回転可能に連結されている。
連結部材133は、入力軸125の端部にナット135をねじ締結することによって軸方向位置が固定されると共に、ベアリング127,129に予圧が付与され入力軸125の軸方向位置が位置決めされる。また、連結部材133とケーシング3との径方向間にはケーシング3の内部と外部とを区画するシール部材137が配置されると共に、連結部材133の外周にはシール部材137のリップ部と摺動するダストカバー139が配置されている。
この連結部材133を介して入力軸125に伝達された駆動力は、ドライブピニオン123とリングギヤ119とからなるギヤ組を介してデフケース7に伝達される。
このデフケース7のフランジ部121には、カバー体115とケース本体117との分割部が設けられ、この分割部の開口からケース本体117内にピニオン105、一対のサイドギヤ107,9、断続装置1の断続部材13などの各種部材を収容した後、リングギヤ119を固定するボルト141によってケース本体117とカバー体115とが共締めされてケース本体117の開口がカバー体115によって閉塞される。
このようなデフケース7には、ピニオンシャフト103と、ピニオン105と、一対のサイドギヤ107,9と、断続装置1の断続部材13などが収容配置されている。
ピニオンシャフト103は、長尺の1つのピニオンシャフト103と2つの短尺のピニオンシャフト103とからなり、短尺のピニオンシャフト103の外端部をデフケース7に係合してピン143で抜け止め及び回り止めされ、短尺のピニオンシャフト103の内端部が長尺のピニオンシャフト103の中間に設けられた孔に係合して長尺のピニオンシャフト103の抜け止め及び回り止めがなされ、デフケース7と一体に回転駆動される。このピニオンシャフト103には、ピニオン105が支承されている。
ピニオン105は、デフケース7の周方向等間隔に4つ配置される4ピニオンタイプとなっており、それぞれ長尺のピニオンシャフト103の両端側と短尺の2つのピニオンシャフト103の外端側に支承されてデフケース7の回転によって公転する。また、ピニオン105の背面側とデフケース7との径方向間には、ピニオン105の公転時に発生する径方向への移動を受ける球面ワッシャ145が配置されている。
このピニオン105は、一対のサイドギヤ107,9に駆動力を伝達すると共に、噛み合っている一対のサイドギヤ107,9に差回転が生じると回転駆動されるようにピニオンシャフト103に自転可能に支持されている。
一対のサイドギヤ107,9は、ボス部147,31でデフケース7に相対回転可能に支持され、ピニオン105と噛み合っている。また、サイドギヤ107,9とデフケース7との軸方向間には、ピニオン105との噛み合い反力によるサイドギヤ107,9の軸方向への移動を受けるスラストワッシャ149,151が配置されている。
この一対のサイドギヤ107,9は、内周側にスプライン形状の連結部153,155が設けられ、出力側の部材(例えば、不図示の左右輪など)に連結された駆動軸(不図示)がサイドギヤ107,9と一体回転可能に連結され、入力側の伝達機構からデフケース7に入力された駆動力を出力側の部材へ出力する。
このようなデファレンシャル装置101における差動機構109の差動は、断続装置1において、第1部材としてのデフケース7と、第2部材としてのサイドギヤ9との間に設けられた断続部11によってロック又はアンロックされる。
この断続装置1が適用されたデファレンシャル装置101では、断続装置1が接続されると、デフケース7とサイドギヤ9とが接続され、差動機構109の差動がロック状態となる。この状態では、デフケース7に入力された駆動力が一対のサイドギヤ107,9に対して均等に出力される。
このようなデファレンシャル装置101は、いわゆるデフロック機能を有するデファレンシャル装置となっている。以下、図1〜図10を用いて本発明の実施の形態に係る断続装置について説明する。
本実施の形態に係る断続装置1は、ケーシング3にベアリング5を介して相対回転可能に配置された第1部材と第2部材としてのデフケース7及びサイドギヤ9と、このデフケース7とサイドギヤ9との間の動力伝達を断続するため、第1部材と第2部材のうちの一方であるデフケース7と回転方向に一体で軸方向移動可能に連結された断続部材13と、この断続部材13を断続操作する環状の電磁石15と、この電磁石15の内径側に軸方向移動可能に配置され電磁石15の励磁により断続部材13を軸方向に移動操作する可動部材17とを備えている。
また、電磁石15は、デフケース7を支持するベアリング5と軸方向に隣接配置されている。
さらに、デフケース7とサイドギヤ9のうち一方であるデフケース7には、電磁石15及び可動部材17の軸方向一側への移動を規制する環状の規制部材19が設けられている。
そして、規制部材19には、電磁石15及び可動部材17側を軸方向一側に連通させる孔部21が設けられている。
また、孔部21には、回転部材としてのデフケース7をケーシング3に支持するベアリング5が隣接配置されている。
さらに、規制部材19は、非磁性材料からなる。
また、規制部材19は、外径がベアリング5を支持するケーシング3のベアリング支持部23と軸方向にオーバーラップして配置されている。
さらに、規制部材19は、内径がデフケース7に圧入によって固定されている。
また、ベアリング5は、テーパローラベアリングからなり、規制部材19には、ベアリング5の保持器との干渉を回避する回避部24が設けられている。
図1〜図3に示すように、断続部材13は、基部25と、凸部27と、噛み合い歯29とから構成されている。基部25の内周面は、環状に形成され、サイドギヤ9のボス部31の外周側で同芯的に支持され、サイドギヤ9の背面側とデフケース7の壁部33との軸方向の間に配置され、デフケース7に対して回転方向に一体で軸方向移動可能に連結配置されている。
この基部25とサイドギヤ9の背面との軸方向間には、断続部材13を断続部11の接続解除方向に付勢する付勢部材35が配置されている。この基部25のデフケース7の壁部33側には、環状に形成された基部25から軸方向一側に向けて凸部27が設けられている。
凸部27は、基部25の側面に基部25と連続する一部材として周方向等間隔に複数設けられている。この凸部27は、デフケース7の壁部33の回転方向間にデフケース7の内外を連通するように開口して設けられた複数の軸方向孔37に回転方向に一体で軸方向移動可能に連結係合されている。
この凸部27と軸方向孔37との係合により、断続部材13がデフケース7に回り止めされ、断続部材13とデフケース7とが一体回転可能となる。なお、凸部27と軸方向孔37との周方向の対向面には、同一傾斜のカム面が形成されている。
このため、断続部材13が断続部11の接続方向に移動されたときに、デフケース7の回転によってカム面が係合することにより、断続部材13をさらに断続部11の噛み合い方向(軸方向他側)に移動させ、断続部11の接続を強化させる。
このような凸部27の基部25を軸方向に挟んだ反対側の基部25の側面には、複数の噛み合い歯29が設けられ、この噛み合い歯29と軸方向に対向するサイドギヤ9の背面側には、複数の噛み合い歯39が設けられ、これらの噛み合い歯29,39で断続部11が構成されている。
断続部11は、断続部材13とサイドギヤ9の背面側との軸方向に対向する対向面の周方向にそれぞれ設けられた複数の噛み合い歯29,39の噛み合いとなっている。この断続部11は、噛み合い歯29,39が噛み合うと、断続部材13とサイドギヤ9とが一体回転可能に連結される。
この断続部材13とサイドギヤ9との連結により、デファレンシャル装置101では、デフケース7とサイドギヤ9とが一体回転可能に連結され、差動機構109の差動がロック状態となり、入力側の伝達機構からデフケース7に入力された駆動力が一対のサイドギヤ107,9を介して出力側の部材に対して均等に出力される。
このような断続部11の接続は、断続部材13の断続部11の接続方向側への軸方向他側への移動によって行われ、この断続部材13はアクチュエータ41によって軸方向に移動操作される。
アクチュエータ41は、電磁石15と、可動部材17と、デフケース7の壁部33とを備えている。電磁石15は、デフケース7のボス部43の外周側でデフケース7の壁部33に対して軸方向に隣接配置されている。この電磁石15は、溶接などによって一体に固着された回り止め部45を介して静止系部材としてのケーシング3に対して回り止めされ、電磁コイル47と、コア49とを備えている。
電磁コイル47は、環状に所定巻き数巻回されて樹脂でモールド成形されている。また、電磁コイル47には、外部に引き出されるリード線51が接続され、このリード線51の端末に接続されたコネクタ53を介して通電を制御するコントローラ(不図示)に接続されている。この電磁コイル47の周囲には、コア49が配置されている。
コア49は、電磁コイル47への通電により磁界が形成されるように磁性材料から形成され、所定の磁路断面積を有している。また、コア49は、電磁コイル47の内外周面及び電磁コイル47のデフケース7の壁部33と反対側に位置する軸方向一側端面を環状に覆っている。
このコア49の外径側には、デフケース7の壁部33から軸方向に延設された延設部55が径方向に磁束が透過可能に設定された摺動接触面をもって覆うように配置され、電磁石15の径方向位置を位置決めするように、電磁石15が径方向に支持されている。
この延設部55の軸方向端面は、コア49の外径側から径方向外方に向けて突設された当接部57の軸方向対向面に対して軸方向に磁束が透過可能に設定された摺動接触面をもって対向配置され、デフケース7と電磁石15との軸方向位置を不変とするように、デフケース7と電磁石15とを互いに軸方向に支持している。
このような延設部55の軸方向端面には、角部を面取りして面取部59,59が設けられている。加えて、当接部57の延設部55の軸方向端面と対向する隅部、詳細には当接部57のコア49から延設される基端側の隅部には、軸方向の延設部55から遠ざかる方向に切り欠かれた切欠部61が設けられている。
このように延設部55に面取部59,59を設け、当接部57に切欠部61を設けることにより、延設部55と当接部57との間の摺動抵抗を低減することができ、装置のフリクションを低減することができる。このような電磁石15の内径側には、可動部材17が配置されている。
可動部材17は、電磁石15の内径側でデフケース7のボス部43の外周に軸方向移動可能に配置され、環状のプランジャ63と、リング部材65とを備えている。プランジャ63は、磁性材料から形成され、磁束が透過可能に設定された微小隙間であるエアギャップをもって電磁石15の内径側に配置されている。このプランジャ63の内周には、リング部材65が一体に固定されている。
リング部材65は、非磁性材料から形成され、プランジャ63の内周側からデフケース7側へ磁束が漏れることを防止している。このリング部材65には、デフケース7の壁部33の軸方向孔37内で、断続部材13の凸部27との軸方向の対向面に互いに当接する押圧部67が設けられている。
この押圧部67は、電磁石15の励磁によって作動される可動部材17による軸方向の移動操作力を断続部材13に伝達し、断続部材13を断続部11の接続方向に押圧操作する。
ここで、コア49の軸方向外側(軸方向一側)の端面及びリング部材65の軸方向外側(軸方向一側)の端面は、デフケース7のボス部43の外周に圧入固定された非磁性材料で環状に形成された規制部材19によって軸方向外側(軸方向一側)への位置決めがなされている。
このように規制部材19を非磁性材料で形成することにより、コア49とプランジャ63との間の磁路形成に影響を与えることがないと共に、コア49からの磁束漏れを防止でき、効率的に磁路を形成することができる。
また、規制部材19をデフケース7のボス部43の外周に圧入固定することにより、デフケース7のボス部43の外周に規制部材19を固定するための溝部のような固定構造を設ける必要がなく、デフケース7の構造を簡易化することができる。
さらに、規制部材19は環状であることで、電磁石15を周上で均等に保持しやすく、デフケース7に対する支持安定性を向上することができる。加えて、非磁性体であることで、軸方向一側への磁束の漏れを極力抑制することができる。
また、孔部21は、規制部材19に対して周上に均等に複数形成されている。規制部材19はそれ自体の強度を保持することができると共に、環状のプランジャ63の作動に部分的な負荷を与えずに、作動安定性を向上させることができる。
一方、断続装置1では、デフケース7の延設部55と電磁石15のコア49の当接部57との軸方向の当接によって、デフケース7と電磁石15との軸方向位置を不変とするように、デフケース7と電磁石15とを互いに軸方向に支持している。
このため、従来の断続装置では、電磁石15の励磁による延設部55と当接部57との軸方向間の摺動抵抗が大きく、装置のフリクションが増大していた。そこで、当接部57の延設部55との軸方向の背面側には、当接部57の外径より小さく設定された小径部69が設けられている。
小径部69は、コア49の当接部57と延設部55との対向面と反対側の当接部57の背面側から軸方向外方に向けた全域に設けられている。この小径部69は、外径が当接部57の外径より小径となるように設定されている。このように小径部69を軸方向の全域に設けることにより、コア49の当接部57の背面側を径方向に小型化でき、装置を小型化することができる。
このような小径部69を設けることにより、当接部57の背面側の磁束透過断面積を小さくさせることができ、図4に示すように、電磁石15の励磁による延設部55と当接部57との軸方向間の磁束の透過を抑制することができる。このため、電磁石15の励磁による延設部55と当接部57との軸方向間の摺動抵抗を低減することができ、装置のフリクションを低減することができる。
なお、図4(a)に示す電磁石15aは、従来の電磁石であり、図4(b)に示す電磁石15bは、延設部55と径方向にオーバーラップするコア49の径方向肉厚を厚くした電磁石であり、図4(c)に示す電磁石15は、本発明の電磁石である。
ここで、図4に示す電磁石15aと、電磁石15bと、電磁石15との電圧に対するドラグトルクの変化を図5に示す。この図5から明らかなように、当接部57の延設部55との軸方向の背面側に当接部57の外径より小さく設定された小径部69を設けることにより、電磁石15の励磁による延設部55と当接部57との軸方向間の摺動抵抗を低減することができるということがわかる。
なお、コア49に設けられる小径部69としては、コア49の当接部57の背面側の軸方向全域に設けなくともよく、例えば、図6に示すように、当接部57の延設部55との軸方向の背面側に当接部57の外径より小さく設定された溝部で形成された小径部69aであってもよい。
このような小径部69aであっても、当接部57の背面側の磁束透過断面積を小さくさせることができ、電磁石15の励磁による延設部55と当接部57との軸方向間の磁束の透過を抑制することができる。
ここで、図7,図8に示すように、小径部69に対して、静止系部材としてのケーシング3に係合して電磁石15を回り止めする回り止め部45を設けてもよい。詳細には、ケーシング3には、デフケース7を回転可能に支持するベアリング5(図1参照)を保持するベアリングキャップ71が組付けられている。
ベアリングキャップ71は、半円環状に形成され、複数のボルト73を介してケーシング3に固定されている。このベアリングキャップ71は、ケーシング3に組付けることにより、内周側がベアリングキャップ71とケーシング3とで環状に形成され、デフケース7を回転可能に支持するベアリング5を径方向に保持する。
なお、ベアリングキャップ71には、軸方向一端側内周にボルト75で固定された連結部材77を介して支持部材79(図2参照)が組付けられており、支持部材79がベアリング5の軸方向端面に当接してベアリング5を軸方向に保持する。
このようなベアリングキャップ71には、外径側にデフケース7の軸方向に向けてそれぞれ延設された凸部からなる係合部81が対称に2箇所設けられている。この係合部81には、回り止め部45が係合されて電磁石15が回り止めされる。
回り止め部45は、電磁石15のコア49の小径部69に周方向に間隔をあけた2箇所に溶接部83を介して電磁石15と一体に設けられている。また、回り止め部45は、それぞれデフケース7の回転軸線と直交する方向に突設された凸部からなる。
この回り止め部45は、電磁石15の周方向の2箇所において、ベアリングキャップ71に設けられた係合部81と電磁石15の回転方向に係合され、電磁石15の回転方向の正逆両方向の回り止めを行う。なお、回り止め部45は、電磁石15のコア49の小径部69にコア49と一体成形されてもよい。
このように電磁石15の小径部69に回り止め部45を設け、ケーシング3側のベアリングキャップ71に係合部81を設け、回り止め部45と係合部81とを電磁石15とケーシング3との軸方向間で係合させることにより、ベアリングキャップ71を固定するボルト73より、矢印85の方向で、外径側に位置する点線の枠部分に電磁石15の回り止め構造を設ける必要がない。
このため、電磁石15を回り止めするために、回り止め部45と係合部81とがケーシング3やベアリングキャップ71の外径側に張り出すことがなく、ケーシング3の外径側への大型化を抑制することができる。
なお、回り止め部45と係合する係合部81は、ベアリングキャップ71に設けられているが、これに限らず、ケーシング3から軸方向の電磁石15側に向けて延設された凸部を係合部81としてもよい。
一方、図1に示すように、電磁石15と軸方向に隣接配置されたデフケース7の壁部33は、電磁石15側に位置する部分より可動部材17側が位置する部分の方が軸方向肉厚を厚く設定されている。このように壁部33の軸方向肉厚を設定することにより、壁部33の内径側の剛性を向上することができる。
このため、壁部33の剛性を確保しつつ、壁部33におけるデフケース7に入力された駆動力の応力が作用する応力部と、デフケース7を回転可能に支持するベアリング5とを軸方向に近接して配置させることができ、装置を小型化することができる。
また、壁部33の軸方向肉厚が厚い部分には、サイドギヤ9の噛み合い反力が入力されるように設定されており、サイドギヤ9の噛み合い反力を安定して受けることができる。
さらに、壁部33の軸方向肉厚が厚い部分と薄い部分との境界部には、コア49及びプランジャ63と共に磁路を形成する磁路形成部87が設けられている。このように磁路形成部87を設けることにより、壁部33の軸方向肉厚が薄い部分に電磁石15を壁部33に対して軸方向により近接して配置することができ、装置を小型化することができる。
ここで、電磁石15のコア49の規制部材19側は、軸方向肉厚が外径側より内径側が厚く設定されている。このコア49は、内径側の軸方向外側に凸部89を設けることによって、軸方向肉厚が外径側より内径側が厚く設定されている。
この軸方向肉厚が最も厚くなる凸部89の端面には、規制部材19が当接されて電磁石15の軸方向の位置決めがなされている。このように軸方向肉厚が最も厚い部分を規制部材19に当接させることにより、電磁石15の軸方向位置決めを安定して行うことができる。
一方、コア49の軸方向肉厚が内径側より薄く設定された外径側には、ケーシング3に対して電磁石15を回り止めする回り止め部45が設けられている。このように軸方向肉厚が薄くなる部分に回り止め部45を設けることにより、回り止め部45を設けるための配置スペースを特別に設ける必要がなく、装置の大型化を抑制することができる。
なお、電磁石15のコア49の規制部材19側の形状としては、例えば、図9(a)に示すように、外径側より内径側の軸方向肉厚が厚くなる段差形状としたり、図9(b)に示すように、外径側から内径側に向けて軸方向肉厚が順次厚くなるように傾斜形状とするなど、外径側の軸方向肉厚より内径側の軸方向肉厚が厚くなるような形状であれば、どのような形状であってもよい。
このように電磁石15のコア49の軸方向肉厚を外径側より内径側が厚くなるように設定することにより、電磁石15の内径側に配置された可動部材17側の磁路断面積が大きくなり、可動部材17の軸方向への推力を向上させることができる。
ここで、コア49の軸方向肉厚を外径側より内径側を厚く設定した電磁石15と、コア49の軸方向肉厚を一定に設定した電磁石15Aとの可動部材17(プランジャ63)の軸方向ストロークに対する可動部材17の推力の変化を図10に示す。この図10から明らかなように、コア49の内径側の軸方向肉厚を厚く設定することにより、可動部材17の推力を向上させることができるということがわかる。
このように構成された断続装置1では、電磁石15の励磁によりコア49とプランジャ63とデフケース7の壁部33とを透過する磁束で形成される最短の磁束ループを有効に用いることによって、プランジャ63が断続部材13側に移動操作され、リング部材65が押圧部67を介して断続部材13を押圧する。
この可動部材17による断続部材13の押圧操作により、断続部材13が付勢部材35の付勢力に抗して断続部11の接続方向に移動され、断続部11が接続される。
この断続部11の接続により、デファレンシャル装置101では、サイドギヤ9と断続部材13とが一体回転可能に接続され、サイドギヤ9とデフケース7とが接続されて差動機構109がロック状態となる。
一方、断続部11の接続解除では、電磁石15への通電を停止することにより、断続部材13が付勢部材35の付勢力によって断続部11の接続解除方向に移動され、断続部11の接続が解除される。
この断続部11の接続解除により、デファレンシャル装置101では、サイドギヤ9と断続部材13とが相対回転可能となり、サイドギヤ9とデフケース7とが相対回転可能となって差動機構109のロック状態が解除される。
ここで、断続装置1では、アクチュエータ41によって移動操作される断続部材13の作動位置を検出することにより、断続部11の状態を検出することができる。詳細には、断続部材13は、アクチュエータ41によって断続部11の接続位置と断続部11の接続解除位置との間を軸方向移動されるので、断続部材13の作動位置を検出することにより、断続部11の状態を検出することができ、デファレンシャル装置101の状態を検出することができる。
そこで、断続部材13には、検出部材91が断続部材13と連動して一体移動するように固定されている。検出部材91は、円盤状に形成され、内径側に複数の凸状板部が断続部材13側に向けて連続形成され、この凸状板部がデフケース7の内外を連通するように開口して設けられた径方向孔93を介して断続部材13の凸部27の軸方向端面にボルトで固定されている。
このため、検出部材91は、断続部材13と一体的に軸方向移動される。この検出部材91の外径側には、ポジションスイッチ95が配置されている。
ポジションスイッチ95は、ケーシング3に固定され、コントローラに接続されている。また、ポジションスイッチ95には、検出部材91の外径側に当接され、検出部材91の軸方向移動によってON−OFF操作される接点部97が設けられている。
このポジションスイッチ95は、接点部97の状態により、断続部材13の作動位置を検出し、断続装置1における断続部11の状態を検出する。このように断続部11の状態を検出することにより、デファレンシャル装置101における差動機構109のロック状態と、アンロック状態とを検出することができる。
このように構成された断続装置1では、可動部材17が電磁石15との径方向間に微小隙間であるエアギャップをもって、デフケース7のボス部43の外周上に軸方向移動可能に配置されているので、可動部材17に潤滑油を供給し、可動部材17の電磁石15の励磁による応答反応性を向上させる必要がある。そこで、可動部材17と軸方向に隣接配置された規制部材19には、可動部材17側に潤滑油を供給するための孔部21が設けられている。
規制部材19は、電磁石15及び可動部材17と、デフケース7を回転可能に支持するベアリング5との軸方向間に配置され、電磁石15及び可動部材17側とベアリング5側とを連通する複数の孔部21が周方向等間隔に設けられている。
このように規制部材19に孔部21を設けることにより、ベアリング5の回転によって潤滑油を可動部材17側に流入させることができ、可動部材17の潤滑性を向上させ、電磁石15の励磁による可動部材17の応答反応性を向上することができる。
なお、ベアリング5は、第1部材及び第2部材の一方としてのデフケース7をケーシング3に対して回転可能に支持するベアリングであるが、規制部材19に設けた孔部21に潤滑油を供給可能なベアリングは、第1部材又は第2部材を支持するベアリングに限らず、他の回転部材を支持するために設けられたベアリングであってもよい。いずれのベアリングにしても、ケーシング3の内部に配置され、回転部材の回転に伴い潤滑油を孔部21に供給可能な配置形状で配置されればよい。
また、図2に示すように、規制部材19の外径は、ケーシング3のベアリング5を支持するベアリング支持部23の内径と軸方向にオーバーラップするように配置されている。
このように規制部材19を配置させることにより、ベアリング5の回転による潤滑油が規制部材19の外径側から流出することなく、効率的に潤滑油を孔部21に導くことができ、さらに可動部材17の潤滑性を向上することができる。
さらに、ベアリング5は、保持器を有するテーパローラベアリングからなり、規制部材19には、ベアリング5の保持器との干渉を回避する凹状の回避部24が設けられている。
このように規制部材19に回避部24を設けることにより、規制部材19とベアリング5とを軸方向に近接して配置させることができ、装置を小型化することができる。
このような断続装置1では、電磁石15とベアリング5との軸方向間に設けられた電磁石15及び可動部材17の軸方向一側への移動を規制する環状の規制部材19に、電磁石15及び可動部材17側を軸方向一側に連通する孔部21が設けられているので、孔部21を介して潤滑油を可動部材17側に流入させることができ、可動部材17の潤滑性を向上させることができる。図2のように孔部21をベアリングの端部側と近接して、或いは隣接して配置すれば、ベアリング5の回転によって潤滑油がベアリングによる排出機能を受け、孔部21に向けて強制的に流入させることができる。
従って、このような断続装置1では、規制部材19によって可動部材17の軸方向移動を規制しつつ、規制部材19の孔部21によって可動部材17に対する潤滑性を向上し、電磁石15の励磁による可動部材17の応答反応性を向上することができる。
また、規制部材19は、非磁性材料からなるので、電磁石15と可動部材17との間の磁路形成に影響を与えることがないと共に、電磁石15及び可動部材17からの磁束漏れを防止でき、効率的に磁路を形成することができる。
さらに、規制部材19は、外径がベアリング5を支持するケーシング3のベアリング支持部23と軸方向にオーバーラップして配置されているので、ベアリング5の回転による潤滑油が規制部材19の外径側から流出することなく、効率的に潤滑油を孔部21に導くことができ、さらに可動部材17の潤滑性を向上することができる。
また、規制部材19は、内径がデフケース7に圧入によって固定されているので、デフケース7に規制部材19を固定するための固定構造を設ける必要がなく、デフケース7の構造を簡易化することができる。
さらに、規制部材19には、ベアリング5の保持器との干渉を回避する回避部24が設けられているので、規制部材19とベアリング5とを軸方向に近接して配置させることができ、装置を小型化することができる。
また、このような断続装置1が適用されたデファレンシャル装置101では、可動部材17に対する潤滑性を向上し、電磁石15の励磁による可動部材17の応答反応性を向上することができるので、差動機構109のロック状態とアンロック状態との断続特性を向上することができる。
なお、本発明の実施の形態に係る断続装置では、デファレンシャル装置の差動ロック機構として適用されているが、これに限らず、例えば、フリーランニングデフにおけるアウタデフケースとインナデフケースとの間の動力伝達を断続する断続機構、トランスファにおける入力部材と出力部材との間の動力伝達を断続する断続機構、さらにはアクスルディスコネクトのように一つの車軸上の動力伝達を断続する断続機構など、第1と第2部材間の動力伝達を断続する構造であれば、どのような装置にも適用することができる。
また、第1部材と第2部材の一方を静止系の部材とし、他方を回転系の部材とした場合の、いわゆるブレーキ装置に対して本発明の断続機構を適用することもできる。
さらに、断続部は、軸方向に対向する対向歯の噛み合いクラッチとなっているが、これに限らず、軸方向移動可能なスリーブを有し、このスリーブとの径方向間に対向する対向歯の噛み合いクラッチ、或いは多板クラッチや単板クラッチなどからなる摩擦クラッチなど、第1と第2部材間の動力伝達を断続できるものであれば、断続部の形態はどのようなものであってもよい。
また、可動部材は、電磁石の内径側に軸方向移動可能に配置されているが、これに限らず、電磁石の外径側に可動部材を軸方向移動可能に配置させている構成に対しても、均等な機能を得ることができれば、本発明を適用することができる。
さらに、規制部材は、第1と第2部材のいずれか一方に固定されればよく、固定手段としては、圧入に限らず、溶接、螺合、接着、溶着などの他の固定手段を適宜採用可能である。
また、孔部は環状側面に対して必ずしも均等、同様形状である必要はなく、周辺の一部が切り欠かれた開口であってもよい。加えて、孔部自体に傾斜面を設けるなどして、それ自体に潤滑油に軸方向の方向性を持たせる形状を用いてもよい。