[第1実施形態]
図1において、内視鏡システム10は、光源装置11と、プロセッサ装置12と、光源装置11及びプロセッサ装置12に着脱自在に接続可能な電子内視鏡(以下、単に内視鏡という)13により構成されている。光源装置11は、照明光を発生して内視鏡13に供給する。内視鏡13は、先端側が検体の体腔内等に挿入されて、体腔内を撮像する。プロセッサ装置12は、内視鏡13の撮像制御を行うと共に、内視鏡13が取得した撮像信号に対して信号処理を施す。
プロセッサ装置12には、画像表示装置14及び入力装置15が接続されている。画像表示装置14は、液晶モニタ等であり、プロセッサ装置12により生成された検体内の画像を表す検体画像を表示する。入力装置15は、キーボードやマウスにより構成され、プロセッサ装置12に対して各種情報を入力する。
内視鏡13には、補色系撮像素子28(図2参照)を備える補色型内視鏡13aと、原色系撮像素子29(図2参照)を備える原色型内視鏡13bがあり、いずれも光源装置11及びプロセッサ装置12に接続可能である。補色型内視鏡13aと原色型内視鏡13bは、撮像素子以外は同一の構成であって、挿入部16と、操作部17と、ユニバーサルケーブル18と、ライトガイドコネクタ19aと、信号コネクタ19bにより構成されている。
挿入部16は、細長く、検体の体腔内等に挿入される。操作部17は、挿入部16の後端に接続されており、スコープスイッチや湾曲操作ダイヤル等が設けられている。スコープスイッチには、観察モードを切り替えるためのモード切替スイッチ17aが含まれている。
ユニバーサルケーブル18は、操作部17から延出されている。ライトガイドコネクタ19a及び信号コネクタ19bは、ユニバーサルケーブル18の端部に設けられている。ライトガイドコネクタ19aは、光源装置11に着脱自在に接続される。信号コネクタ19bは、プロセッサ装置12に着脱自在に接続される。
内視鏡システム10は、観察モードとして、通常光観察モードと狭帯域光観察モードとを有する。通常光観察モードでは、波長域が青色帯域から赤色帯域に及ぶ通常光(白色光)を検体に照射して撮像が行われ、通常光画像が生成される。狭帯域光観察モードでは、波長域の狭い狭帯域光(後述する紫色狭帯域光Vnと緑色狭帯域光Gn)を検体に照射して撮像が行われ、狭帯域光画像が生成される。この通常光観察モード及び狭帯域光観察モードは、補色型内視鏡13aと原色型内視鏡13bとのいずれを用いる場合にも可能である。
通常光観察モードと狭帯域光観察モードとは、前述のモード切替スイッチ17aにより切り替え可能であるが、プロセッサ装置12に接続可能なフットスイッチ(図示せず)や、プロセッサ装置12のフロントパネルに設けられたボタン、入力装置15等により切り替え可能としても良い。
図2において、光源装置11は、複数のLED(Light Emitting Diode)光源20と、光源制御部21と、合波部24とを有している。LED光源20は、紫色LED(V−LED)20aと、白色LED(WL−LED)20bとにより構成されている。V−LED20aは、図3に示すような光強度スペクトルを有する、波長域が380〜440nmで中心波長が約405nmの紫色狭帯域光Vnを発生する。WL−LED20bは、図4に示すような光強度スペクトルを有する、広波長域の白色光WLを発生する。光源制御部21は、V−LED20a及びWL−LED20bの発光制御を行う。
合波部24は、図5に示すように、ダイクロイックミラー22と、第1〜第3レンズ23a〜23cとを有している。第1及び第2レンズ23a,23bは、それぞれLED20a,20bに対応して配置されており、各LED20a,20bから射出された光を集光して平行光とする。V−LED20a及びWL−LED20bは、光軸が直交するように配置されており、この光軸の交点にダイクロイックミラー22が配置されている。
ダイクロイックミラー22は、例えば530nm以上550nm未満の波長域の光を透過させると共に、530nm未満及び550nm以上の波長域の光を反射させる光学特性を有している。したがって、紫色狭帯域光Vnは、ダイクロイックミラー22により反射され、第3レンズ23cにより集光される。一方の白色光WLは、その一部がダイクロイックミラー22を透過し、図6に示すように、波長域が530〜550nmで中心波長が約540nmの緑色狭帯域光Gnとなって第3レンズ23cにより集光される。
狭帯域光観察モード時には、V−LED20a及びWL−LED20bが同時に点灯し、紫色狭帯域光Vnと緑色狭帯域光Gnとがダイクロイックミラー22により合波されて第3レンズ23cにより集光され、ライトガイド27に入射する。
通常光観察モード時には、ダイクロイックミラー22は、移動機構(図示せず)によりWL−LED20bの光軸外に移動される。これにより、通常光観察モード時には、白色光WLは、第3レンズ23cに直接入射し、ライトガイド27に供給される。通常光観察モード時には、ダイクロイックミラー22が退避するので、V−LED20aから射出された紫色狭帯域光Vnはダイクロイックミラー22で反射されても第3レンズ23cには入射しない。このため、通常光観察モード時には、V−LED20aは点灯・非点灯のいずれでも良い。
紫色狭帯域光Vnは、中心波長が約405nmであり、可視光領域においてヘモグロビンの吸光係数が高い波長である。緑色狭帯域光Gnは、中心波長が約540nmであり、緑色光の波長域においてヘモグロビンの吸光係数が高い波長である。また、緑色狭帯域光Gnは、紫色狭帯域光Vnより粘膜での反射率が高いという特性を有する。
内視鏡13の挿入部16の先端には、照明窓と観察窓とが隣接して設けられており、照明窓に照明レンズ25が取り付けられており、観察窓に対物レンズ26が取り付けられている。内視鏡13内には、ライトガイド27が挿通されており、ライトガイド27の一端が照明レンズ25に対向している。ライトガイド27の他端は、ライトガイドコネクタ19aに配置され、光源装置11内に挿入される。
照明レンズ25は、光源装置11からライトガイド27に入射され、ライトガイド27から射出された光を集光して検体内に照射する。対物レンズ26は、検体の生体組織等からの反射光を集光して光学像を結像する。対物レンズ26の結像位置には、光学像を撮像して撮像信号を生成する撮像素子(補色型内視鏡13aの場合には補色系撮像素子28、原色型内視鏡13bの場合には原色系撮像素子29)が配置されている。補色系撮像素子28及び原色系撮像素子29は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。
補色系撮像素子28の撮像面には、光学像を光学的に画素毎に色分離する補色系色分離フィルタ28aが設けられている。この補色系色分離フィルタ28aは、図7に示すように、マゼンタ(Mg)、グリーン(G)、シアン(Cy)、イエロー(Ye)の4種のカラーフィルタセグメントを有し、各カラーフィルタセグメントは画素単位で取り付けられている。したがって、補色系撮像素子28は、Mg、G、Cy、Yeの4種の画素を有し、奇数列を、Mg画素、Cy画素、Mg画素、Ye画素、・・・の順番、偶数列を、G画素、Ye画素、G画素、Cy画素、・・・の順番とするように、奇数行にMg画素とG画素とが交互に配置され、偶数行にCy画素とYe画素とが交互に配置されている。このカラーフィルタ配列は、補色市松色差線順次方式と呼ばれている。
原色系撮像素子29の撮像面には、原色系色分離フィルタ29aが設けられている。この原色系色分離フィルタ29aは、図8に示すように、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3種のカラーフィルタセグメントを有し、各カラーフィルタセグメントは画素単位で取り付けられている。したがって、原色系撮像素子29は、R、G、Bの3種の画素を有し、奇数列にG画素とB画素とが交互に配置され、偶数列にR画素とG画素が交互に配置され、奇数行にG画素とR画素とが交互に配置され、偶数行にB画素とG画素とが交互に配置されている。このカラーフィルタ配列は、原色ベイヤー方式と呼ばれている。
内視鏡13には、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成された情報記憶部30が設けられている。情報記憶部30は、内視鏡13の固有情報(撮像素子のカラーフィルタ配列や画素数、後述する補正係数)等を記憶している。
プロセッサ装置12は、制御部31と、撮像制御部32と、相関二重サンプリング(CDS)回路33と、A/D変換回路34と、明るさ検出回路35と、調光回路36と、信号処理部37と、チャネル割当部38とを有する。
制御部31は、プロセッサ装置12内の各部と、光源装置11との制御を行う。制御部31は、光源装置11及びプロセッサ装置12に内視鏡13が接続された際に、情報記憶部30から内視鏡13の固有情報を読み取り、接続された内視鏡13が補色型内視鏡13aであるか原色型内視鏡13bであるかを判定する。撮像制御部32は、制御部31により判定された内視鏡13の種類に応じて、撮像素子(補色系撮像素子28または原色系撮像素子29)を駆動する。
撮像制御部32は、補色系撮像素子28の場合には、光源装置11の発光タイミングに合わせて、補色系撮像素子28をフィールド読み出し方式で駆動する。具体的には、フィールド読み出し方式では、奇数フィールドと偶数フィールドとの各読み出し時において、列方向に隣接する2画素を2行の各画素信号が混合(加算)して読み出される(図7参照)。この画素信号の混合は、CCDイメージセンサの水平転送路(図示せず)内で行われる。図9は、狭帯域光観察モード時の駆動タイミングを示している。通常光観察モード時の駆動タイミングは、照明光を白色光WLとすること以外は狭帯域光観察モード時と同一である。
このフィールド読み出し方式より、補色系撮像素子28からは、奇数フィールドと偶数フィールドとのそれぞれにおいて、図10に示すように、Mg画素とCy画素との混合画素信号(以下、第1混合画素信号という)M1と、G画素とYe画素との混合画素信号(以下、第2混合画素信号という)M2と、Mg画素とYe画素との混合画素信号(以下、第3混合画素信号という)M3と、G画素とCy画素との混合画素信号(以下、第4混合画素信号という)M4が出力される。
補色系撮像素子28の各画素がカラーフィルタセグメントに応じて、例えば図11に示す分光感度特性を有することから、各混合画素は、例えば図12に示す分光感度特性を有する。この分光感度特性によると、第1〜第4混合画素のうち、第1混合画素(Mg+Cy)が紫色狭帯域光Vn(中心波長405nm)に対して最も高感度であり、第2混合画素(G+Ye)が緑色狭帯域光Gn(中心波長540nm)に対して最も高感度であることが分かる。ただし、第1混合画素(Mg+Cy)は、緑色狭帯域光Gnに対しても高い感度を有しており、第2混合画素(G+Ye)は、紫色狭帯域光Vnに対して若干の感度を有している。
撮像制御部32は、原色系撮像素子29の場合には、光源装置11の発光タイミングに合わせて、原色系撮像素子29を周知のプログレッシブ読み出し方式で駆動する。このプログレッシブ読み出し方式では、画素信号の混合は行われずに、1行ずつ順に1フレーム分の画素信号が個別に読み出される。
補色系撮像素子28及び原色系撮像素子29から出力された信号は、CDS回路33に入力される。CDS回路33は、入力された信号に対して相関二重サンプリングを行って、CCDイメージセンサで生じるノイズ成分を除去する。CDS回路33によりノイズ成分が除去された信号は、A/D変換回路34に入力されると共に、明るさ検出回路35に入力される。A/D変換回路34は、CDS回路33から入力された信号をデジタル信号に変換して、信号処理部37に入力する。
明るさ検出回路35は、CDS回路33から入力された信号に基づいて、明るさ(信号の平均輝度)を検出する。調光回路36は、明るさ検出回路35により検出された明るさ信号と、基準の明るさ(調光の目標値)との差分である調光信号を生成する。この調光信号は、光源制御部21に入力される。光源制御部21は、基準の明るさが得られるように、複数のLED光源20の発光量を調整する。
制御部31は、内視鏡13のモード切替スイッチ17aが操作された際に発せられるモード切替信号を受信し、受信したモード切替信号に基づいて、光源装置11の発光方式と信号処理部37の信号処理方式を切り替える。
信号処理部37は、セレクタ40と、補色用第1処理部41と、補色用第2処理部42と、原色用第1処理部43と、原色用第2処理部44と、補正係数取得部45とを有している。セレクタ40は、制御部31により判定された内視鏡13の種類及び観察モードに応じて、処理部41〜45のうちからいずれか1つを選択する。
補色用第1処理部41は、内視鏡13の種類が補色型で、かつ観察モードが通常光観察モードである場合に選択される。補色用第1処理部41には、補色系撮像素子28から第1〜第4混合画素信号M1〜M4(図10参照)が入力される。補色用第1処理部41は、補色市松色差線順次方式に用いられる周知のY/C変換を行って、輝度信号Yと色差信号Cr,Cbを生成し、さらにマトリクス演算により輝度信号Yと色差信号Cr,CbをRGB信号に変換する。このRGB信号は、チャネル割当部38に送られる。具体的には、輝度信号Yと色差信号Cr,Cbは、行方向に隣接する第1混合画素信号M1と第2混合画素信号M2との加減算と、行方向に隣接する第3混合画素信号M3と第4混合画素信号M4との加減算とにより算出される。
補色用第2処理部42は、内視鏡13の種類が補色型で、かつ観察モードが狭帯域光観察モードである場合に選択される。補色用第2処理部42は、図13に示すように、マトリクス演算部46と、補間処理部47と、混色補正部48とを有する。
マトリクス演算部46は、補色系撮像素子28から入力される第1〜第4混合画素信号M1〜M4の各組に対して、式(1)で表されるマトリクス演算を行い、第1及び第2表示用信号D1,D2を生成する。具体的には、例えば、図10に示す相対的な位置関係にある第1〜第4混合画素信号M1〜M4をそれぞれ1組としてマトリクス演算を行う。
詳しくは後述するが、狭帯域光観察モード時には、第1表示用信号D1に基づいて、紫色狭帯域光Vnの画像化が行われ、第2表示用信号D2に基づいて緑色狭帯域光Gnの画像化が行われる。α11〜α24の8個の係数は、0以上1以下の値に設定されるが、第1〜第4混合画素信号M1〜M4のうち、第1混合画素信号M1が紫色狭帯域光Vnに対して最も感度が高く、第2混合画素信号M2が緑色狭帯域光Gnに対して最も感度が高いので、係数α11及びα22が他の係数より大きな値に設定される。すなわち、第1混合画素信号M1が第1表示用信号D1の主信号とされ、第2混合画素信号M2が第2表示用信号D2の主信号とされる。例えば、単純に、α11=α22=1、α12=α13=α14=α21=α23=α24=0(すなわち、D1=M1、D2=M2)と設定しても良い。
マトリクス演算部46により生成された第1及び第2表示用信号D1,D2は、補間処理部47に入力される。補間処理部47は、周知の画素補間処理を行い、各画素位置について1組の第1及び第2表示用信号D1,D2を生成する。混色補正部48は、式(2)を用いて混色補正処理を行う。
ここで、K1は、紫色狭帯域光Vnのみを独立照射した場合に得られる第1表示用信号D1vに対する第2表示用信号D2vの比(D2v/D1v)である。K2は、緑色狭帯域光Gnのみを独立照射した場合に得られる第2表示用信号D2gに対する第1表示用信号D1gの比(D1g/D2g)である。
内視鏡システム10は、補正係数K1,K2を取得するためにキャリブレーションモードを有する。このキャリブレーションモードは、入力装置15等の操作により選択可能である。このキャリブレーションモードでは、制御部31は、V−LED20a及びWL−LED20bの光軸の交点にダイクロイックミラー22を配置した状態で、V−LED20aとWL−LED20bとを個別に点灯させて、図14に示すように、紫色狭帯域光Vnと緑色狭帯域光Gnとを時分割照射し、各照射タイミングに合わせて補色系撮像素子28を駆動する。
補正係数取得部45は、キャリブレーションモード時に式(1)に基づくマトリクス演算により前述の第1表示用信号D1v,D1g及び第2表示用信号D2g,D2vを算出し、K1=D2v/D1v、K2=D1g/D2gの関係式に基づいて補正係数K1,K2を算出する。この補正係数K1,K2は、複数の第1表示用信号D1v,D1g及び第2表示用信号D2g,D2vの各平均値を用いて計算することが好ましい。補正係数取得部45により取得された補正係数K1,K2は、混色補正部48に入力される。混色補正部48は、入力された補正係数K1,K2を、キャリブレーションが再度行われるまでの間、保持し続けて混色補正処理に用いる。
また、この補正係数K1,K2は、製造段階で求められ、補色型内視鏡13aの情報記憶部30に予め記憶されている。補色型内視鏡13aが光源装置11及びプロセッサ装置12に接続された際に、制御部31が情報記憶部30から補正係数K1,K2を読み出し、混色補正部48に入力する。キャリブレーションが行われた場合には、補色型内視鏡13aの情報記憶部30に記憶された補正係数K1,K2は消去され、混色補正部48により算出された補正係数K1,K2に書き換えられる。
式(2)の混色補正処理は、混色成分(第1表示用信号D1中の緑色狭帯域光Gn成分と、第2表示用信号D2中の紫色狭帯域光Vn成分)を低減させる。混色補正後の第1及び第2表示用信号D1’,D2’は、チャネル割当部38に送られる。
原色用第1処理部43は、内視鏡13の種類が原色型で、かつ観察モードが通常光観察モードである場合に選択される。原色用第1処理部43には、原色系撮像素子29からRGB信号が入力される。このRGB信号は、1画素に、R、G、Bのいずれかの信号が割り当てられたものである。原色用第1処理部43は、周知の画素補間処理を行い、各画素についてR、G、Bの3つの信号を生成する。この画素補間処理後のRGB信号は、チャネル割当部38に送られる。
原色用第2処理部44は、内視鏡13の種類が原色型で、かつ観察モードが狭帯域光観察モードである場合に選択される。原色用第2処理部44には、原色系撮像素子29からRGB信号が入力される。原色用第2処理部44は、紫色狭帯域光Vn及び緑色狭帯域光Gnに感応するB信号及びG信号を抽出し、同様に画素補間処理を施すことにより、画素毎のB信号及びG信号を生成する。このB信号及びG信号は、チャネル割当部38に送られる。
チャネル割当部38は、観察モードが通常光観察モードである場合には、内視鏡13の種類によらずRGB信号が入力されるため、このR、G、Bの信号をそれぞれ画像表示装置14のRch、Gch、Bchの各チャネルに割り当てて表示させる。これにより、画像表示装置14には、通常光によって照明された検体の像が映し出された通常画像が表示される。
また、チャネル割当部38は、内視鏡13の種類が補色型で、かつ観察モードが狭帯域光観察モードである場合には、補色用第2処理部42から入力された第1及び第2表示用信号D1’,D2’を、式(3)に示すように画像表示装置14の各チャネルに割り当てて表示させる。
これにより、画像表示装置14には、紫色狭帯域光Vn及び緑色狭帯域光Gnにより照明された検体の像が映し出された特殊画像が表示される。式(3)では、紫色狭帯域光Vnに対して高感度の第1表示用信号D1’を2つのチャネルに割り当てて表示させているので、特殊画像は、生体表層付近の表層血管(毛細血管など)等の構造が視認しやすい画像となる。なお、第1及び第2表示用信号D1’,D2’に、「1」,「0」以外の係数で重み付けを行ってチャネルに割り当てても良い。
さらに、チャネル割当部38は、内視鏡13の種類が原色型で、かつ観察モードが狭帯域光観察モードである場合には、原色用第2処理部44から入力されたB信号及びG信号を、式(4)に示すように画像表示装置14の各チャネルに割り当てて表示させる。
これにより、画像表示装置14には、紫色狭帯域光Vn及び緑色狭帯域光Gnにより照明された検体の像が映し出された特殊画像が表示される。この特殊画像は、生体表層付近の表層血管等の構造が視認しやすい画像である。同様に、B信号及びG信号に、「1」,「0」以外の係数で重み付けを行ってチャネルに割り当てても良い。
次に、混色補正処理の作用について説明する。まず、補色型内視鏡13aから検体内に同時照射される紫色狭帯域光Vn及び緑色狭帯域光Gnの光量をそれぞれ“X”、“Y”とし、第1表示用信号D1の紫色狭帯域光Vnに対する平均的な感度を“a1”、第1表示用信号D1の緑色狭帯域光Gnに対する平均的な感度を“b1”、第2表示用信号D2の緑色狭帯域光Gnに対する平均的な感度を“a2”、第2表示用信号D2の紫色狭帯域光Vnに対する平均的な感度を“b2”とすると、第1及び第2表示用信号D1,D2は、式(5)で表される。平均的な感度とは、各狭帯域光の波長域における感度を平均化したものである。
また、これらの感度a1,b1,a2,b2を用いて、混色補正処理に用いられる補正係数K1,K2は、式(6),(7)で表される。
式(5)で表される第1及び第2表示用信号D1,D2に対して、式(2)の混色補正処理を施すと、混色補正後の第1及び第2表示用信号D1’,D2’は、式(8),(9)で表され、混色成分が除去される。
式(8)、(9)において、「a1X」、「a2Y」は、それぞれ光量Xの紫色狭帯域光Vnのみを独立照射した場合の第1表示用信号D1vと、光量Yの緑色狭帯域光Gnのみを独立照射した場合の第2表示用信号D2gとに相当する。したがって、混色補正後の第1及び第2表示用信号D1’,D2’は、時分割照射を行った場合の第1及び第2表示用信号D1v,D2gに比べて、(1−K1K2)倍だけ信号値が低いことを表している。
特に、α11=α22=1、α12=α13=α14=α21=α23=α24=0(すなわち、D1=M1、D2=M2)の場合には、図12を参照すると、a1≒0.45、a2≒0.98、b1≒0.53、b2≒0.07であり、(1−K1K2)≒0.92となるため、信号値の低下率は8%程度である。
次に、内視鏡システム10の作用を、図15に示すフローチャートに沿って説明する。術者により、内視鏡13が光源装置11及びプロセッサ装置12に接続されると、プロセッサ装置12の制御部31は、内視鏡13内の情報記憶部30から固有情報を読み取り、接続された内視鏡13が、補色型内視鏡13aであるか原色型内視鏡13bであるかを判定する。例えば、補色型内視鏡13aである場合には、制御部31は、光源装置11及びプロセッサ装置12を通常光観察モードに設定し、信号処理部37内のセレクタ40に補色用第1処理部41を選択させる。
この通常光観察モードでは、光源装置11の合波部24内のダイクロイックミラー22が前述のように退避すると共に、WL−LED20bが点灯し、通常光(白色光)WLが生成されて、補色型内視鏡13a内のライトガイド27内に供給される。また、補色型内視鏡13a内の補色系撮像素子28は、撮像制御部32によりフィールド読み出し方式で駆動されて第1〜第4混合画素信号M1〜M4を出力する。この第1〜第4混合画素信号M1〜M4は、補色用第1処理部41により、Y/C変換後、RGB信号に変換されて、チャネル割当部38を介して画像表示装置14に表示される。これにより、画像表示装置14には、通常光のもとで撮像された通常画像が表示される。
術者は、補色型内視鏡13aの挿入部16を患者の体腔内に挿入することにより、内視鏡検査を行う。体腔内における患部等の検査対象組織の表層血管の走行状態等をより詳しく観察しようと思う場合には、術者によりモード切替スイッチ17aが操作される。モード切替スイッチ17aが操作された場合には、この操作信号が制御部31により検出されて、光源装置11及びプロセッサ装置12が狭帯域光観察モードに切り替えられる。
狭帯域光観察モードでは、セレクタ40により補色用第2処理部42が選択される。狭帯域光観察モードでは、合波部24内のダイクロイックミラー22がV−LED20a及びWL−LED20bの光軸の交点に配置されると共に、V−LED20aとWL−LED20bとが同時に点灯する。合波部24により紫色狭帯域光Vnと緑色狭帯域光Gnとが混合された狭帯域光が生成されて補色型内視鏡13a内のライトガイド27内に供給される。補色系撮像素子28は、フィールド読み出し方式で駆動されて第1〜第4混合画素信号M1〜M4を出力する。
補色用第2処理部42では、マトリクス演算部46により第1〜第4混合画素信号M1〜M4がマトリクス演算され、第1及び第2表示用信号D1,D2が生成される。この第1及び第2表示用信号D1,D2は、補間処理部47により画素補間処理が行われた後、混色補正部48により前述の混色補正処理が行われる。混色補正後の第1及び第2表示用信号D1’,D2’は、チャネル割当部38により、Rchに第2表示用信号D2’が割り当てられ、Gch及びBchに第1表示用信号D1’が割り当てられて画像表示装置14に表示される。これにより、画像表示装置14には、狭帯域光のもとで撮像が行われた特殊画像が表示される。
紫色狭帯域光Vnは、検体の表面から表層付近の第1透過距離まで透過可能であることから、紫色狭帯域光Vnに基づく第1画像には、表層血管など第1透過距離に含まれる構造の像が多く含まれている。この第1画像は、第1表示用信号D1に基づいて生成される。一方、緑色狭帯域光Gnは、検体の表面から中深層付近の第2透過距離まで透過可能であることから、緑色狭帯域光Gnに基づく第2画像には、中深層血管など第2透過距離に含まれる構造の像が多く含まれている。また、第2画像は、粘膜の微細模様等の視認性に優れる。この第2画像は、第2表示用信号D2に基づいて生成される。この第1画像と第2画像とが合成されたものが特殊画像である。
本実施形態では、混色補正処理により混色成分が除去されて、色分離性が向上すると共に、表層血管の視認性(表層血管と粘膜のコントラスト)が向上した特殊画像が得られる。
特殊画像の表示は、モード切替スイッチ17aが操作されるか、入力装置15により診断を終了するための終了操作が行われるまでの間繰り返し行われる。モード切替スイッチ17aが操作されると、通常光観察モードに戻り、終了操作が行われると、動作を終了する。
一方、制御部31により、光源装置11及びプロセッサ装置12に原色型内視鏡13bが接続されたと判定されると、光源装置11及びプロセッサ装置12が通常光観察モードに設定される共に、セレクタ40により原色用第1処理部43が選択される。この通常光観察モードでは、補色型の場合と同様に、光源装置11により通常光(白色光)WLが生成されて、原色型内視鏡13bのライトガイド27内に供給される。
この場合、原色系撮像素子29は、プログレッシブ読み出し方式で駆動されてRGB信号を出力する。このRGB信号は、原色用第1処理部43により画素補間処理等が行われて、チャネル割当部38を介して画像表示装置14に表示される。これにより、画像表示装置14には、通常光のもとで撮像された通常画像が表示される。
この後、術者によりモード切替スイッチ17aが操作されると、光源装置11及びプロセッサ装置12が狭帯域光観察モードに切り替えられる。狭帯域光観察モードでは、セレクタ40により原色用第2処理部44が選択され、補色型の場合と同様に、光源装置11により紫色狭帯域光Vnと緑色狭帯域光Gnとが混合された狭帯域光が生成されて原色型内視鏡13bのライトガイド27内に供給される。
原色系撮像素子29は、同様にプログレッシブ読み出し方式で駆動されてRGB信号を出力する。このRGB信号は、原色用第2処理部44によりB信号及びG信号のみが抽出されて、画素補間処理等が行われ、チャネル割当部38を介して画像表示装置14に表示される。これにより、画像表示装置14には、狭帯域光のもとで撮像が行われた特殊画像が表示される。
補色型の場合と同様に、特殊画像の表示は、モード切替スイッチ17aが操作されるか、入力装置15により終了操作が行われるまでの間繰り返し行われる。モード切替スイッチ17aが操作されると、通常光観察モードに戻り、終了操作が行われると、動作を終了する。
また、光源装置11及びプロセッサ装置12に補色型内視鏡13aが接続されている場合には、入力装置15等の操作により、混色補正用の補正係数K1,K2を取得するためのキャリブレーションの実行が可能となっている。このキャリブレーションは、白色板などを撮像対象として行われる。
キャリブレーションが実行されると、セレクタ40により補正係数取得部45が選択され、紫色狭帯域光Vnと緑色狭帯域光Gnとの時分割照射が行われる。このとき、補色系撮像素子28から出力された第1〜第4混合画素信号M1〜M4に基づき、第1表示用信号D1v,D1g及び第2表示用信号D2g,D2vがそれぞれ生成され、各信号値の平均値が求められる。そして、K1=D2v/D1v、K2=D1g/D2gの関係式に基づいて補正係数K1,K2が算出される。算出された補正係数K1,K2は、混色補正部48に入力されると共に、補色型内視鏡13a内の情報記憶部30に記憶されている補正係数K1,K2を消去して書き換える。補色型内視鏡13a内の情報記憶部30に記憶された補正係数K1,K2は、補色型内視鏡13aの次回の使用時に、制御部31に読み取られて混色補正部48に入力される。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の内視鏡システムについて説明する。本実施形態の内視鏡システムは、混色補正部48が、式(10)を用いて混色補正処理を行う点が第1実施形態の内視鏡システム10と異なる。
ここで、R1は、第1表示用信号D1’中の緑色狭帯域光Gn成分の割合を表す第1混色率である。R2は、第2表示用信号D2’中の紫色狭帯域光Vn成分の割合を表す第2混色率である。R1,R2は、0以上1以下の値を取る。
R1=0、R2=0の場合には、式(10)は第1実施形態の式(2)と同一であり、図16に示すように、混色成分が完全に除去される。一方、R1≠0、R2≠0の場合には、第1及び第2表示用信号D1’,D2’中に、緑色狭帯域光Gn成分及び紫色狭帯域光Vn成分が、それぞれ第1及び第2混色率R1,R2に応じて付加される。R1≠0、R2≠0の場合の第1及び第2表示用信号D1’,D2’は、式(11),(12)で表される。
第1及び第2混色率R1,R2の各値は、既存の光源装置(例えば、キセノンランプと狭帯域用波長制限フィルタとを有する光源装置)との互換性を保つように、混色補正部48内に設定されている。この第1及び第2混色率R1,R2を、補色型内視鏡13a内の情報記憶部30に記憶しておき、補色型内視鏡13aが光源装置11及びプロセッサ装置12に接続された際に、制御部31が情報記憶部30から取得して混色補正部48に入力するように構成しても良い。
また、R1=0、R2=0の場合には、第1及び第2表示用信号D1’,D2’は、時分割照射時の場合よりも信号値が低下するため、この低下量が大きい場合に、第1及び第2表示用信号D1’,D2’が所定レベルとなるように、式(11),(12)に基づいて第1及び第2混色率R1,R2を決定することも好ましい。
また、図17に示すように、第2実施形態の混色補正部48の後段に構造強調処理部49を設け、混色補正部48から出力される第1及び第2表示用信号D1’,D2’を、第1及び第2混色率R1,R2の少なくとも一方に基づいて構造強調処理を行っても良い。例えば、構造強調処理部49として、特開2013−013656号公報に開示された周波数フィルタリングを行う血管強調処理部を適用し、表層血管部分の強調度合いを、第1混色率R1が大きいほど高く設定する。これは、第1混色率R1が大きいほど、前述の表層血管のコントラストが低下するためである。
なお、上記各実施形態では、混色補正部48は、全ての第1及び第2表示用信号D1,D2を、1組の補正係数K1,K2を用いて混色補正を行っているが、第1及び第2表示用信号D1,D2の1組ごとに異なる補正係数K1,K2を用いて混色補正を行っても良い。この場合、例えば、図10に示す相対的な位置関係にある第1〜第4混合画素信号M1〜M4により生成される第1及び第2表示用信号D1,D2をそれぞれ1組とする。各補正係数K1,K2は、キャリブレーションモードにおいて、紫色狭帯域光Vn及び緑色狭帯域光Gnを独立照射した場合の第1及び第2表示用信号を用いて各組ごとに算出すれば良い。
また、上記各実施形態では、原色用第2処理部44は、RGB信号に含まれるB信号及びG信号をそのまま表示チャネルに割り当てているが、RGBの各信号が、紫色狭帯域光Vn及び緑色狭帯域光Gnの両方に感応する場合があるので、補色用第2処理部42と同様のマトリクス演算及び混色補正を行うことも好ましい。
具体的には、原色用第2処理部44に入力されるRGB信号(画素信号R,G,B)を、式(13)で表されるマトリクス演算を行い、第1及び第2表示用信号D1,D2を生成する。
β11〜β23の6個の係数は、0以上1以下の値である。具体的には、係数β11,β22が他の係数より大きく設定される。例えば、単純に、β11=β22=1、β12=β13=β21=β23=0(すなわち、D1=B、D2=G)と設定しても良い。
混色補正は、補色用第2処理部42の場合と同様であり、式(2)または式(10)に基づく補正が行われる。補正係数K1,K2は、紫色狭帯域光Vnと緑色狭帯域光Gnとを時分割照射し、原色系撮像素子29から出力されるRGB信号をマトリクス演算して、第1表示用信号D1v,D1g及び第2表示用信号D2g,D2vを生成し、K1=D2v/D1v、K2=D1g/D2gの関係式に基づいて算出される。この補正係数K1,K2は、補色型の場合と同様に、原色型内視鏡13bの情報記憶部30に記憶される。その他、情報記憶部30からの補正係数K1,K2の読み出しや、補正係数K1,K2の書き換え等の動作は、補色型の場合と同一であるので説明は省略する。
また、上記各実施形態では、LED光源20としてV−LED20aとWL−LED20bとを用いているが、V−LED20aに代えて、図18に示すように、紫色狭帯域光Vnより長波長側の青色狭帯域光Bnを発生する青色LEDを用いてもよい。この青色狭帯域光Bnの中心波長は約410nm〜420nmの範囲内であり、好ましくは約415nmである。
また、V−LED20aとWL−LED20bに代えて、発光波長域の異なる複数のLED(例えば、4個のLED)を設け、複数のLEDを全て点灯させることにより通常光(白色光)を生成し、複数のLEDのうちの2個のLEDにより2つの狭帯域光を生成するように構成しても良い。さらに、LEDに代えてLD(Laser Diode)等のその他の半導体光源を用いても良い。
また、上記各実施形態の光源装置11に代えて、特許第4009626号公報等に開示された、白色光等の波長域の広い光を発するランプと、狭帯域用フィルタとにより構成された光源装置を用いてもよい。この狭帯域用フィルタは、2つの狭帯域にバンドパス特性を有する2峰性フィルタであり、観察モードに応じてランプの光軸上に挿脱される。
また、上記各実施形態では、図7に示す補色市松色差線順次方式の補色系色分離フィルタ28aを有する補色系撮像素子28を用いているが、図19に示す補色市松色差線順次方式の補色系色分離フィルタを有する補色系撮像素子を用いても良い。
また、上記各実施形態では、Mg画素とCy画素との組み合わせを第1混合画素、G画素とYe画素との組み合わせを第2混合画素、Mg画素とYe画素との組み合わせを第3混合画素、G画素とCy画素との組み合わせを第4混合画素としているが、混合画素の組み合わせはこれに限られず適宜変更しても良い。
また、上記各実施形態では、撮像制御部32、CDS回路33、A/D変換回路34等をプロセッサ装置12内に設けているが、これらを内視鏡13内に設けても良い。
また、上記各実施形態では、補色系撮像素子28及び原色系撮像素子29をCCDイメージセンサとしているが、これらはCMOSイメージセンサであっても良い。CMOSイメージセンサの場合には、イメージセンサが形成されたCMOS半導体基板内に、撮像制御部32、CDS回路33、A/D変換回路34等を形成することが可能である。
また、上記各実施形態では、光源装置及びプロセッサ装置に、補色型内視鏡と原色型内視鏡とが接続可能であるが、補色型内視鏡のみが接続可能であっても良い。
また、上記各実施形態では、光源装置とプロセッサ装置とを別体の装置として構成しているが、これらを単一の装置としても良い。さらに、光源装置を、内視鏡内に組み込んでも良い。