以下、図面を参照しながら発明を実施するための形態を詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に従った無線通信システムの例図である。図1に示すように、無線通信システム1は、無線基地局装置2および無線通信端末装置3−1〜3−4を含む。
無線通信システム1は、例えば、the third Generation Partnership Project(3GPP)の仕様書に適合した無線通信システムである。無線基地局装置2は、例えば、evolved Node B(eNB)である。無線通信端末装置3−1〜3−4は、例えば、User Equipment(UE)である。以下の説明において複数の無線通信端末装置を特に区別しない場合には、無線通信端末装置3と記載する。なお、図1には、1つの無線基地局装置2が図示されているが、無線通信システム1に含まれる無線基地局装置2の数は、任意の数であってよい。また、図1には、4つの無線通信端末装置3−1〜3−4が図示されているが、無線基地局装置2と接続される無線通信端末装置3の数は、任意の数であってよい。
図1に示した一例では、無線基地局装置2は、1つの無線制御部21と複数の無線部22−1および22−2とを含む。1つの無線制御部21と複数の無線部22−1および22−2とは、Common Public Radio Interface(CPRI)といった所定の規格に適合した有線で接続される。図1には、2つの無線部22−1および22−2が図示されているが、無線基地局装置2に含まれる無線部の数は、任意の数であってよい。以下の説明において複数の無線部を特に区別しない場合には、無線部22と記載する。
無線部22は、無線通信端末装置3と無線信号を送受信する無線基地局装置2の構成要素であり、例えば、Radio Remote Head(RRH)である。無線基地局装置2の通信エリア(セル)は、複数のセクタに分割され、複数のセクタは、複数の無線部22にそれぞれ対応する。図1に示すように、各無線部22は、対応するセクタS内の無線通信端末装置3との間で無線信号を送受信する。無線部22は、無線制御部21から受信したベースバンド信号を無線周波数信号に変換し、無線周波数信号を無線通信端末装置3へ送信する。また、無線部22は、無線通信端末装置3から受信した無線信号をベースバンド信号に変換し、ベースバンド信号を無線制御部21へ送信する。
無線制御部21は、無線基地局装置2全体の制御および呼制御を行う無線基地局装置2の構成要素であり、例えば、Base Band Unit(BBU)である。無線制御部21は、コアネットワーク(不図示)から受信したInternet Protocol(IP)パケットをベースバンド信号に変調し、ベースバンド信号を無線部22へ送信する。また、無線部22から受信したベースバンド信号をIPパケットに復調し、IPパケットをコアネットワークへ送信する。無線制御部21は、呼制御および信号処理を実行する構成要素をセクタS毎に有し得る。
前述したように、無線基地局装置の消費電力を低減する方法としては、ハンドオーバを用いた技術が存在する。しかしながら、こうした技術には、以下のような不都合が存在する。
図2は、無線基地局装置の省電力化のためにハンドオーバが用いられたケースの説明図である。例えば、図2に示すように、第1のセクタS−1に対応する構成要素を介して無線基地局装置2と接続された第1の無線通信端末装置3−1(図1)が、ハンドオーバの実行によって、第2のセクタS−2に対応する構成要素を介して接続されたと仮定する。図2に示したケースでは、第1の無線部22−1を含む第1のセクタS−1に対応する構成要素を介して無線基地局装置2と接続される無線通信端末装置3は、ハンドオーバの実行後には存在しない。すなわち、例えば、無線制御部21内において、第1のセクタS−1に対応する構成要素の無線リソースは、未使用の状態になる。そこで、第1のセクタS−1に対応する構成要素への電力供給を遮断すれば、無線基地局装置2の省電力化を図ることができる。
しかしながら、上述したようなハンドオーバでは、ハンドオーバの対象とされた無線通信端末装置3の通信に必要な全ての無線リソースは、ハンドオーバ元の構成要素からハンドオーバ先の構成要素へ移行される。このため、無線基地局装置2の省電力化のためにハンドオーバが用いられた場合、例えば、あるセクタSに対応する無線制御部21内の一部の構成要素のみへの電力供給を遮断するといった、無線基地局装置2の柔軟な省電力化を図ることができない。
また、図2に示した一例では、ハンドオーバの実行後には、第1の無線通信端末装置3−1は、ハンドオーバ前の第1の無線部22−1と比較して遠方に位置する第2の無線22−2を介して無線基地局装置2と接続される。遠方に位置する無線部22へ接続されるこうしたケースでは、無線通信端末装置3と無線基地局装置2との間の無線通信品質がハンドオーバ後に劣化する可能性がある。
さらに、無線制御部21内の構成要素間のデータ転送処理に時間がかかる等、ハンドオーバの処理シーケンスが長時間継続すると、無線リソース制御(Radio Resource Control、RRC)の管理タイマの満了に伴ってRRC Reconfiguration FailureによるRRC Connection Re-establishmentが発生する可能性がある。RRC Connection Re-establishmentが多発すると、過度なアクセス集中を引き起こし、新規のデータ通信接続に悪影響を及ぼす可能性がある。
このように、無線基地局装置の省電力化のためにハンドオーバが用いられると、様々な不都合が生じ得る。そこで、こうした不都合を克服するために、第1の実施形態に従った無線基地局装置は、以下で説明するような構成を有し、以下で説明するような電力制御処理を実行する。
図3は、第1の実施形態に従った無線基地局装置の例示的構成図である。図3に示すように、無線基地局装置2の無線制御部21は、呼制御部211、スケジューラ処理部群212G、およびN個(Nは、2以上の整数)の送受信処理部213(213−1〜213−N)を含む。
呼制御部211は、無線リソース制御(RRC)処理部211A、呼処理部211B、省電力判定部211C、および省電力処理指示部211Dを含む。
スケジューラ処理部群212Gは、N個のスケジューラ処理部212(212−1〜212−N)を含む。スケジューラ処理部212は、無線通信端末装置3から受信した無線通信品質データに従って、当該無線通信端末装置3との間の通信のために使用される無線リソースを割り当てる。例えば、Long Term Evolution(LTE)では、無線リソースの最小割り当て単位は、Resource Block(RB)と称され、時間方向および周波数方向の2次元のスケジューリングが行われる。無線通信品質データは、Demodulation Reference Signal(DM RS)およびSounding Reference Signal(SRS)を介して無線通信端末装置3から無線基地局装置2へ送信される。
N個の送受信処理部213は、レイヤ2処理部2131(2131−1〜2131−N)およびレイヤ1処理部2132(2132−1〜2132−N)をそれぞれ含む。
レイヤ2処理部2131は、無線通信端末装置3との間で送受信されるデータ信号に対してレイヤ2(データリンク層)における処理を行う。レイヤ2での処理には、Packet Data Convergence Protocol(PDCP)レイヤでの処理、Radio Link Control(RLC)レイヤでの処理、およびMedium Access Control(MAC)レイヤでの処理が含まれ得る。図3に示した一例では、N個の送受信処理部213内の各レイヤ2処理部2131は、PDCP及びRLC処理部2131A(2131A−1〜2131A−N)、下りデータバッファ2131B(2131B−1〜2131B−N)を含む。また、N個の送受信処理部213内の各レイヤ2処理部2131は、MAC処理部2131C(2131C−1〜2131C−N)、およびHybrid Automatic Repeat Request(HARQ)バッファ2131D(2131D−1〜2131D−N)を含む。
レイヤ1処理部2132は、無線通信端末装置3との間で送受信されるデータ信号に対してレイヤ1(物理層)における処理を行う。レイヤ1での処理には、無線通信端末装置3との間で送受信されるデータ信号に対して符号化または復号する処理、ならびに変調または復調する処理が含まれ得る。図3に示した一例では、N個の送受信処理部213内のレイヤ1処理部2132は、符号及び復号処理部2132A(2132A−1〜2132A―N)、ならびに変調及び復調処理部2132B(2132B−1〜2132B−N)を含む。
無線基地局装置2のN個の無線部22は、ディジタル/アナログ(D/A)及びアナログ/ディジタル(A/D)変換回路221(221−1〜221−N)、送受信処理回路222(222−1〜222−N)、ならびにアンテナ223(223−1〜223−N)をそれぞれ含む。
第1の実施形態に従った電力制御処理が実行されていない状態において、無線制御部21内のN個のスケジューラ処理部212およびN個の送受信処理部213は、無線基地局装置2の通信エリア(セル)を分割したN個のセクタS(S−1〜S−N)にそれぞれ対応し、N個の無線部22にそれぞれ対応する。例えば、第1のスケジューラ処理部212−1および第1の送受信処理部213−1は、第1のセクタS−1に対応し、第1の無線部22−1に対応する。また、第Nのスケジューラ処理部212−Nおよび第Nの送受信処理部213−Nは、第NのセクタS−Nに対応し、第Nの無線部22−Nに対応する。
無線通信端末装置3への送信処理では、コアネットワーク(Core Network、CN)から送信されたIPパケットは、当該IPパケットの宛先の無線通信端末装置3が存在するセクタ(或いは無線部22)に対応する送受信処理部213により受信される。受信されたIPパケットは、無線基地局装置2から無線通信端末装置3への下り方向のデータを一時的に格納するための下りデータバッファ2131Bに蓄積される。
スケジューラ処理部212は、対応するセクタ内に位置する無線通信端末装置3の中から無線基地局装置2と通信を行う無線通信端末装置3を選択する。無線通信端末装置3による選択処理では、選択された当該無線通信端末装置3との通信に使用される変調方式および伝送レート等も決定される。
受信されたIPパケットがユーザデータ(U−planeのデータ)である場合、PDCP及びRLC処理部2131Aは、ユーザデータに対してPDCPレイヤでの処理およびRLCレイヤでの処理を行う。また、受信されたIPパケットが制御データ(C−planeのデータ)である場合、RRC処理部211Aは、制御データに対してRRCレイヤでの処理を行う。そして、PDCP及びRLC処理部2131Aは、RRCレイヤでの処理が行われた制御データに対してPDCPレイヤでの処理およびRLCレイヤでの処理を行う。PDCPレイヤでの処理には、ユーザデータに対するヘッダ圧縮処理および秘匿処理、ならびに制御データに対するIntegrity protection処理および秘匿処理を実行して、PDCP Protocol Data unit(PDU)を生成する処理が含まれ得る。RLCレイヤでの処理には、PDCP PDUを分割または統合して、Transmission Time Interval(TTI)毎のトランスポートブロックサイズに見合った長さのRLC PDUを生成する処理が含まれ得る。RRCレイヤでの処理には、RRCコネクションの設定、維持、および解放といった処理が含まれ得る。
MAC処理部2131Cは、RLC PDUをスケジューラ処理部212により決定されたサイズのトランスポートブロックに多重化してMAC PDUを生成する。符号及び復号処理部2132Aは、スケジューラ処理部212により決定された符号化率に従ってMAC PDUを符号化する。変調および復調処理部2132Bは、符号化されたMAC PDUをスケジューラ処理部212により決定された変調方式に従って変調処理する。
符号及び復号処理部2132Aにより変調されたデータは、D/A及びA/D変換回路221によってアナログ信号に変換され、送受信処理回路222によって無線周波数帯域へアップコンバートされる。無線周波数帯域にアップコンバートされたアナログ信号は、アンテナ223を介して対応するセクタS内の無線通信端末装置3へ送信される。
無線通信端末装置3からの受信処理では、送受信処理回路222は、アンテナ223を介して受信された無線周波数帯域のアナログ信号をベースバンドへダウンコンバートする。D/A及びA/D変換回路221は、ベースバンドのアナログ信号をディジタル信号に変換する。
スケジューラ処理部212は、対応するセクタ内に位置する無線通信端末装置3の中から無線基地局装置2と通信する無線通信端末装置3を選択する。無線通信端末装置3による選択処理では、選択された当該無線通信端末装置3に使用される復調方式および伝送レート等も決定される。
変調および復調処理部2132Bは、ベースバンドのディジタル信号をスケジューラ処理部212によって決定された復調方式に従って復調する。符号及び復号処理部2132Aは、復調されたディジタル信号をスケジューラ処理部212によって決定された復号率に従って復号する。
復号された信号がユーザデータである場合、MAC処理部2131CによるMACレイヤでの処理、ならびにPDCP及びRLC処理部2131AによるPDCPレイヤでの処理とRLCレイヤでの処理とがユーザデータに対して行われる。復調された信号が制御データである場合、MAC処理部2131CによるMACレイヤでの処理、PDCP及びRLC処理部2131AによるPDCPレイヤでの処理およびRLCレイヤでの処理、ならびにRRC処理部211AによるRRCレイヤでの処理が制御データに対して行われる。MACレイヤでの処理には、トランスポートブロックからRLC PDUを抽出する処理が含まれ得る。RLCレイヤでの処理には、RLC PDUから、対応するPDCP PDUを再構築する処理が含まれ得る。PDCPレイヤでの処理には、対応するヘッダの復元、秘匿解除、およびIntegrity checkをPDCP PDUに対して実行して、IPパケットを生成する処理が含まれ得る。生成されたIPパケットは、コアネットワークへ送信される。
呼処理部211Bは、無線通信端末装置3に対する各種無線リソースの設定、解放、および管理等の呼処理を行う。
省電力判定部211Cは、無線制御部21内の各構成要素(各部)からトラヒック情報を収集し、無線制御部21内の各構成要素の省電力化が可能か否かを判定する。なお、図3に示した一例では、省電力判定部211Cは、呼制御部211に含まれるが、省電力判定部211Cは、無線制御部21の他の構成要素に含まれてもよく、無線制御部21内の単独の構成要素であってもよい。
省電力処理指示部211Dは、省電力判定部211Cにより省電力化が可能と判定された場合に、「省電力化対象の構成要素内の使用中の無線通信端末リソース(無線通信端末装置3を単位とするリソース)を解放し、無線通信端末装置3との通信を継続するために、解放された無線通信端末リソースを他の構成要素の未使用の無線通信端末リソースに割り当てること」が可能か否かを判定する。以下の説明では、「省電力化対象の構成要素内の使用中の無線通信端末リソースを解放し、無線通信端末装置3との通信を継続するために、解放された無線通信端末リソースを他の構成要素の未使用の無線通信端末リソースに割り当てること」を便宜的に「無線通信端末リソースの移行」と呼ぶ。なお、無線通信端末リソースが割り当てられる「他の構成要素」は、「省電力化対象の構成要素」と同一の機能を有する無線基地局装置2の構成要素であり、「省電力化対象の構成要素」とは異なるセクタに対応する構成要素である。
無線通信端末リソースの移行が可能と判定される場合、省電力処理指示部211Dは、省電力処理の実行を無線制御部21内の構成要素に指示する。具体的には、省電力処理指示部211Dは、タイミング調整コマンドを送信する機能を有する無線制御部21内の構成要素に対して、タイミング調整コマンドの送信停止を指示する。タイミング調整コマンドを送信する機能を有する構成要素は、例えば、スケジューラ処理部212である。また、省電力処理指示部211Dは、省電力化対象の構成要素に対して、通信中の無線通信端末装置3に関するデータを無線通信端末リソースの移行先の構成要素へ通知するように指示する。
タイミング調整コマンドは、複数の無線通信端末装置3が無線基地局装置2へ無線信号を送信するタイミングが同期するように、各無線通信端末装置3の無線信号の送信タイミングを調整するために用いられるコマンドである。タイミング調整コマンドは、例えば、Long Term Evolution(LTE)の仕様に適合した無線通信システムにおけるTiming Advanced Command(TAC)である。無線基地局装置2は、無線通信端末装置3から送信された上りリンク信号(例えばSRS)に基づいて送信タイミングの調整値を計算し、計算された送信タイミングの調整値をTACによって無線通信端末装置3に通知する。上りリンク信号は、無線通信端末装置3から無線基地局装置2へ繰り返し送信されてもよい。その場合、無線基地局装置2は、送信された上りリンク信号に基づいてTACを繰り返し生成および送信する。無線通信端末装置3は、移動し得るため、無線信号の送信タイミングは、変化し得る。そこで、無線基地局装置2により生成されたTACは、TACの送信と共にカウントが開始された時間同期タイマ(Time Alignment Timer、TAT)が満了するまでの所定時間に限り有効とされる。新たなTACが生成および送信されず時間同期タイマが満了した場合、無線基地局装置2は、当該無線通信端末装置3に割り当てたPhysical Uplink Control Channel(PUCCH)リソースやSRSリソースを解放する。時間同期タイマ満了後の再同期のためには、ランダムアクセス(Random Access、RA)手順が無線通信端末装置3と無線基地局装置2との間で行われ得る。
第1の実施形態では、無線基地局装置2は、あるスケジューラ処理部212の無線通信端末リソースを解放し、無線通信端末装置3との通信を継続するために他のスケジューラ処理部212の未使用の無線通信端末リソースを割り当てる。そして、無線基地局装置2は、無線通信端末リソースの移行により無線通信端末リソースが未使用状態となったあるスケジューラ処理部212への電力供給を停止して、無線基地局装置2の省電力化を実現する。
第1の実施形態に従った電力制御方法の一例を図4〜図7を更に参照しながら説明する。
図4は、第1の実施形態に従った電力制御処理実行前の無線通信端末リソースの説明図である。図5A〜図5Cは、第1の実施形態に従った例示的な電力制御処理シーケンス図である。
図1に示した一例では、第1の無線通信端末装置3−1は、第1のセクタS−1に対応する第1の無線部22−1を介して無線基地局装置2と接続される。また、第1の無線通信端末装置3−1に対する呼制御および信号処理は、第1のセクタS−1に対応する無線制御部21内の無線リソースが用いられる。具体的には、図4に示すように、第1のスケジューラ処理部212−1および第1の送受信処理部213−1の各無線リソースが用いられる。一方、第2〜第4の無線通信端末装置3−1〜3−4は、第2のセクタS−2に対応する第2の無線部22−2を介して無線基地局装置2と接続される。また、第2〜第4の無線通信端末装置3−1〜3−4に対する呼制御および信号処理は、第2のセクタS−2に対応する無線制御部21内の無線リソースが用いられる。具体的には、図4に示すように、第2のスケジューラ処理部212−2および第2の送受信処理部213−2の各無線リソースが用いられる。
無線基地局装置2と第1の無線通信端末装置3−1とが図1および図4に示すように接続されている状態において、第1のスケジューラ処理部212−1は、TACの送信を第1のレイヤ2処理部2131−1に指示する(図5Aの処理P1001)。前述したように、TACは、タイミング調整コマンドの一例である。また、前述したように、スケジューラ処理部212は、タイミング調整コマンドを送信する機能を有し得る構成要素の一例である。
第1のレイヤ2処理部2131−1は、第1のスケジューラ処理部212−1から送信された指示を受信し、受信された指示に従ってTACを第1のレイヤ1処理部2132−1を介して第1の無線通信端末装置3−1へ送信する(処理P1002)。第1の無線通信端末装置3−1は、受信されたTACに従って無線基地局装置2への無線信号の送信タイミングを調整し、時間同期を確立する(処理P1003)。
第1のスケジューラ処理部212−1は、第1のスケジューラ処理部212−1に関するトラヒック情報を呼制御部211(省電力判定部211Cおよび省電力処理指示部211D)へ送信する(処理P1004)。また、第2のスケジューラ処理部212−2は、第2のスケジューラ処理部212−2に関するトラヒック情報を呼制御部211へ送信する(処理P1005)。呼制御部211へ送信されるトラヒック情報は、省電力判定制御用の情報であり、例えば、省電力化が可能か否かを省電力判定部211Cが判定するために用いられる。第1の実施形態では、省電力判定制御用の情報は、例えば、無線通信端末リソースの使用率であり、以下の式(1)で求められる。
式(1)において、Act_UEkは、スケジューラ処理部212−k(kは、スケジューラ処理部212の番号であり、1〜Nまでの整数)が処理可能な無線通信端末装置3に対する使用率を示す。MAX_UEkは、スケジューラ処理部212−kが処理可能な無線通信端末装置3の最大数を表す。Ocp_UEnは、スケジューラ処理部212−kが管理する無線通信端末装置3−n(nは、スケジューラ処理部212−k内の無線通信端末装置3の番号であり、1〜MAX_UEkまでの整数)の占有の有無を表す。
省電力判定部211Cは、各スケジューラ処理部212から受信したトラヒック情報に基づいて、当該スケジューラ処理部212を省電力化できるか否かを判定する(処理P1006)。例えば、省電力判定部211Cは、図6に示される省電力判定処理を所定の周期で繰り返し実行することによって、当該スケジューラ処理部212−kを省電力化できるか否かを判定する。図6は、第1の実施形態に従った例示的な省電力判定処理フロー図である。
省電力化判定部211Cは、省電力判定処理を開始すると(ステップS1001)、スケジューラ処理部212の番号kを1に設定し(ステップS1002)、スケジューラ処理部212−kにおける無線通信端末リソース占有率Act_UEkが所定の無線通信端末リソース占有閾値Pw_ue_thを超えるか否かを判定する(ステップS1003)。無線通信端末リソース占有閾値Pw_ue_thは、省電力判定閾値の一例である。省電力判定閾値は、当該構成要素を省電力化せずに使用を継続するために要求される最低限の使用率である。
無線通信端末リソース占有率Act_UEkが所定の無線通信端末リソース占有閾値Pw_ue_th以上であると判定された場合(ステップS1003で“NO”)、省電力判定部211Cは、スケジューラ処理部212−kに対する省電力判定カウンタCnt_SCDkを0に設定する(ステップS1004)。そして、省電力判定部211Cは、スケジューラ処理部212−kに対する省電力化の実施を不可と判定する(ステップS1005)。
一方、無線通信端末リソース占有率Act_UEkが所定の無線通信端末リソース占有閾値Pw_ue_th未満であると判定された場合(ステップS1003で“YES”)、省電力判定部211Cは、スケジューラ処理部212−kに対する省電力判定カウンタCnt_SCDkを1つインクリメントする(ステップS1006)。そして、省電力判定部211Cは、省電力判定カウンタCnt_SCDkの値が所定の省電力カウンタ閾値Pw_cnt_thを超えるか否かを判定する(ステップS1007)。省電力カウンタ閾値Pw_cnt_thは、当該構成要素の無線通信端末リソースの使用率が継続して少ないと判定するために設定された閾値である。
省電力判定カウンタCnt_SCDkの値が所定の省電力カウンタ閾値Pw_cnt_th以下であると判定される場合(ステップS1007で“NO”)、省電力判定部211Cは、スケジューラ処理部212−kに対する省電力化の実施を不可と判定する(ステップS1005)。
一方、省電力判定カウンタCnt_SCDkの値が所定の省電力カウンタ閾値Pw_cnt_thを越えると判定される場合(ステップS1007で“YES”)、省電力判定部211Cは、省電力判定部211Cは、スケジューラ処理部212−kに対する省電力化の実施を可と判定する(ステップS1008)。
このように、省電力判定処理フローが所定の周期で繰り返し実行された場合に、省電力判定カウンタCnt_SCDkが連続してインクリメントされ、省電力判定カウンタCnt_SCDkが所定の省電力カウンタ閾値Pw_cnt_thを越えることによって、省電力判定部211Cは、スケジューラ処理部212−kに対する省電力化の実施を可と判定する。こうした省電力判定処理によって、無線通信端末リソースの使用率(トラヒック量)が一時的に減少しても当該構成要素に対する省電力化を実施せず、無線通信端末リソースの使用率が継続的に少ない場合に当該構成要素に対する省電力化を実施することができる。
ステップS1005またはステップS1008での処理が実行されると、省電力判定部211Cは、スケジューラ処理部212の番号kを1つインクリメントする(ステップS1009)。そして、省電力判定部211Cは、インクリメント後のスケジューラ処理部212の番号kの値がスケジューラ処理部212の番号の最大値MAX_SCDを超えるか否かを判定する(ステップS1010)。
インクリメント後のスケジューラ処理部212の番号kの値がMAX_SCD以下であると判定される場合(ステップS1010で“NO”)、省電力判定部211Cは、ステップS1003での処理に戻って、省電力判定処理を継続する。
一方、インクリメント後のスケジューラ処理部212の番号kの値がMAX_SCDを超えると判定される場合(ステップS1010で“YES”)、省電力判定部211Cは、当該周期における省電力判定処理を終了する(ステップS1011)。
省電力判定部211Cは、図6に示されるような省電力判定処理によって省電力化が可能と判断されたスケジューラ処理部212(省電力化対象のスケジューラ処理部212)を省電力処理指示部211Dに通知する。図1および図4に示した一例では、第1のセクタS−1に対応する第1のスケジューラ処理部212−1の無線通信端末リソースは、第1の無線通信端末装置3−1との通信にのみ使用されている。そこで、図6に示されるような省電力判定処理に従って、省電力判定部211Cは、第1のスケジューラ処理部212−1を省電力化対象のスケジューラ処理部212として省電力処理指示部211Dに通知する。
省電力処理指示部211Dは、各スケジューラ処理部212から受信したトラヒック情報(省電力判定制御用の情報)を用いて、省電力化対象のスケジューラ処理部212の使用中の無線通信端末リソースと、その他のスケジューラ処理部212の未使用の無線通信端末リソースを比較する。そして、省電力処理指示部211Dは、無線通信端末リソースの移行が可能か否かを判定する(処理P1007)。第1の実施形態では、前述した「無線通信端末の移行」の説明における「省電力化対象の構成要素」とは、「省電力化対象のスケジューラ処理部212」を指し、「他の構成要素」とは、「その他のスケジューラ処理部212」を指す。
省電力処理指示部211Dは、省電力化対象のスケジューラ処理部212の使用中の無線通信端末リソースよりも、その他のスケジューラ処理部212の未使用の無線通信端末リソースが多ければ、無線通信端末リソースの移行が可能と判定し得る。省電力化対象のスケジューラ処理部212の使用中の無線通信端末リソースよりも多い未使用の無線通信端末リソースを有する複数の他のスケジューラ処理部212が存在する場合、省電力処理指示部211Dは、未使用の無線通信端末リソースが多いスケジューラ処理部212を無線通信端末リソースの移行先のスケジューラ処理部として選択し得る。こうした選択が行われることで、各スケジューラ処理部212の処理量を分散させることができる。
図1および図4に示した一例では、第2のセクタS−2に対応する第2のスケジューラ処理部212−2の無線通信端末リソースは、第2〜第4の無線通信端末装置3−2〜3−4との通信に使用されている。しかしながら、図4に示すように、第2のスケジューラ処理部212−2には、省電力化対象の第1のスケジューラ処理部212−1の使用中の無線通信端末リソースを移行できる未使用の無線通信端末リソースが存在する。そこで、省電力処理指示部211Dは、第2のスケジューラ処理部212−2を無線通信端末リソースの移行先のスケジューラ処理部212として選択する。
省電力処理指示部211Dは、第1の無線通信端末装置3−1へのTACの送信停止を第1のスケジューラ処理部212−1に指示する。また、省電力処理指示部211Dは、第1のスケジューラ処理部212−1から第2のスケジューラ処理部212−2への無線通信端末リソースの移行を第1のスケジューラ処理部212−1に指示する(図5Bの処理P1008)。
省電力処理指示部211Dから指示を受けた第1のスケジューラ処理部212−1は、第1の無線通信端末装置3−1へのTACの送信処理を停止する。また、TACの送信停止に伴って、第1のスケジューラ処理部212−1は、第1の無線通信端末装置3−1へのユーザデータの送信処理を停止する(処理P1009)。
第1のスケジューラ処理部212−1によりTACの送信処理が停止状態になると(処理P1010)、TACが更新されずに時間同期タイマが満了する(処理P1011)。そこで、第1のスケジューラ処理部212−1は、PUCCHリソースおよびSRSリソースといった第1の無線通信端末装置3−1のリソースを無線通信端末リソースの移行のために解放する(処理P1012)。また、第1のスケジューラ処理部212−1は、第1のレイヤ2処理部2131−1のMAC処理部2131C−1に対して、無線通信端末装置3から無線基地局装置2への上り方向のデータを一時的に格納するためのHARQバッファ2131D−1の解放を指示する(処理P1013)。
第1のスケジューラ処理部212−1は、第1のスケジューラ処理部212−1により管理されていたスケジューラ管理情報を第2のスケジューラ処理部212−2へ無線通信端末リソースの移行のために転送する(処理P1014)。転送されるスケジューラ管理情報には、例えば、省電力化対象のスケジューラ処理部212が管理していた無線通信端末装置3の識別情報、その無線通信端末装置3へ送信予定のデータ滞留量、およびその無線通信端末装置3の間欠受信(Discontinuous Reception、DRX)状態に関する情報が挙げられる。
第2のスケジューラ処理部212−2は、第1のスケジューラ処理部212−1から送信されたスケジューラ管理情報を受信し、第1の無線通信端末装置3−1との通信を継続するために無線通信端末リソースの割り当て処理を行う。そして、第2のスケジューラ処理部212−2は、無線通信端末リソースの移行処理の完了を省電力処理指示部211Dに報告する(処理P1015)。
無線通信端末リソースの移行処理が完了すると、第1のスケジューラ処理部212−1は、第1のスケジューラ処理部212−1の電源をオフする(処理P1016)。なお、省電力処理指示部211Dから省電力化対象の構成要素(第1の実施形態では、スケジューラ処理部212)へ電源オフの指示に基づいて、省電力対象の構成要素の電源がオフにされてもよい。
省電力処理指示部211Dは、第1の無線通信端末装置3−1へのTACの送信処理開始を第2のスケジューラ処理部212−2に指示する(図5Cの処理P1017)。第2のスケジューラ処理部212−2は、Physical Downlink Control Channel(PDCCH)を介したランダムアクセス手順、すなわち、非コンテンションベースのランダムアクセス手順を開始するように、第1のレイヤ1処理部2132−1に指示する(処理P1018)。
第2のスケジューラ処理部212−2からの指示を受信した第1のレイヤ1処理部2132−1は、ランダムアクセスプリアンブル番号をPDCCHを介して第1の無線通信端末装置3−1に通知する(処理P1019)。第1の無線通信端末装置3−1は、通知されたランダムアクセスプリアンブル番号からランダムアクセスプリアンブルを生成し、生成されたランダムアクセスプリアンブルを第1のレイヤ1処理部2132−1へ送信する(処理P1020)。
RRC処理部211Aは、第1のレイヤ2処理部3131−1および第1のレイヤ1処理部3132−1を介してRRC Connection Reconfigurationを第1の無線通信端末装置3−1へ送信する(処理P1021)。RRC Connection Reconfigurationを受信した第1の無線通信端末装置3−1は、RRC Connection Reconfiguration Completeを送信する。RRC処理部211Aは、第1の無線通信端末装置3−1から送信されたRRC Connection Reconfiguration Completeを第1のレイヤ1処理部3132−1および第1のレイヤ2処理部3131−1を介して受信する(処理P1022)。第2のスケジューラ処理部212−2は、TACの送信を第1のレイヤ2処理部2131−1に指示する(処理P1023)。第1のレイヤ2処理部2131−1は、第1のレイヤ1処理部2132−1を介して第1の無線通信端末装置3−1へTACを送信する(処理P1023)。第1の無線通信端末装置3−1は、受信されたTACに従って無線基地局装置2への無線信号の送信タイミングを調整し、時間同期を再び確立する(処理P1024)。こうして、第1の無線通信端末装置3−1と無線基地局装置2との間の通信が再開される。
図7は、第1の実施形態に従った電力制御処理実行後の無線通信端末リソースの説明図である。図5を参照しながら前述したような第1の実施形態に従った電力制御処理が実行されると、第1のセクタS−1に対応する第1のスケジューラ処理部212−1の使用中の無線通信端末リソース、すなわち、第1の無線通信端末装置3−1は、解放される。また、第1の無線通信端末装置3−1は、第2のセクタS−2に対応する第2のスケジューラ処理部212−2の未使用の無線通信端末リソースに割り当てられる。一方、第1のセクタS−1に対応する第1のレイヤ1処理部2132−1および第1のレイヤ2処理部2131−1は、第1の無線通信端末装置3−1を引き続き保持する。そこで、第1の無線通信端末装置3−1は、無線通信端末リソースが移行された第1のスケジューラ処理部212−1を除き、第1のセクタS−1に対応する構成要素によって無線基地局装置2と接続される。すなわち、図2を参照しながら前述したようなハンドオーバが実行されたケースと異なり、第1の無線通信端末装置3−1は、図1に示すようにセクタS−1に対応する第1の無線部22−1を介して無線基地局装置2と引き続き接続される。
以上の説明から理解し得るように、第1の実施形態に従った無線基地局装置およびその電力制御方法によれば、各セクタに対応する個別の構成要素に対して無線通信端末リソースの移行が実行されるため、構成要素毎の柔軟な省電力化を実現できる。
また、第1の実施形態に従った無線基地局装置およびその電力制御方法によれば、無線通信端末リソースが移行された構成要素に対応するセクタ内の無線通信端末装置は、省電力化の実施後も同じセクタに対応する構成要素を介して無線基地局装置と接続される。このため、図2を参照しながら前述したようなハンドオーバが実施されるケースとは異なり、無線通信端末装置と無線基地局装置との通信品質に影響を及ぼさずに、無線基地局装置の省電力化を実現できる。
さらに、第1の実施形態に従った無線基地局装置およびその電力制御方法によれば、図2を参照しながら前述したようなハンドオーバが実行されるケースとは異なり、無線リソース制御の管理タイマに関係なく電力制御が実行される。したがって、第1の実施形態に従った無線基地局装置およびその電力制御方法によれば、RRC Reconfiguration FailureによるRRC Connection Re-establishmentが発生する可能性はなく、RRC Connection Re-establishmentの多発による新規のデータ通信接続への悪影響を回避できる。
なお、上述の説明は、第1の実施形態の電力制御方法の一例であり、第1の実施形態の電力制御方法が上述の説明に限定されることを意味しない。
例えば、前述した電力制御処理によって電源がオフにされている省電力化実施済みの構成要素(第1の実施形態では、スケジューラ処理部212)が存在する場合、省電力処理指示部211Dは、省電力化実施済みの構成要素の無線通信端末リソースは未使用状態であると特定し得る。そこで、省電力処理指示部211Dは、省電力化対象の構成要素の使用中の無線通信端末リソースと、省電力化実施済みの構成要素を含むその他の構成要素の未使用の無線通信端末リソースとを比較することによって、無線通信端末リソースの移行が可能か否かを判定し得る(処理P1007)。そして、省電力化実施済みの構成要素が無線通信端末リソースの移行対象の構成要素として選択された場合、省電力処理指示部211Dは、電源をオンにするように省電力化実施済みの構成要素へ指示し得る。
また、省電力化実施済みの構成要素に対応するセクタの他の構成要素の無線通信端末リソースの使用率が所定の省電力解除閾値を越える場合には、省電力処理指示部211Dは、電源をオンにするように省電力化実施済みの構成要素に指示し得る。省電力解除閾値は、省電力化実施済みの構成要素に対する省電力化を解除する基準となる閾値である。こうした電力制御によって、省電力化後のトラヒックの増加にも対応し得る。
図8は、第1の実施形態に従った無線基地局装置の概略的なハードウェア構成図である。図8に示した参照符号は、図3に示した無線基地局装置2の各構成要素の参照符号に対応する。
図8に示すように、無線制御部21内の各構成要素は、必要に応じてプロセッサコアであってよく、複数のプロセッサコアを含むデバイスであってよく、複数のデバイスを含む回路基板であってよい。デバイスは、例えば、Central Processing Unit(CPU)、Digital Signal Processor(DSP)、およびField Programmable Gate Array(FPGA)である。したがって、第1の実施形態に従った電力制御方法によれば、省電力化対象の構成要素がプロセッサコア、デバイス、および回路基板の内の何れにより実装されるかに応じて、プロセッサコア、デバイス、または回路基板の電源をオフにすることによって、無線基地局装置の省電力化が実現され得る。
<第2の実施形態>
前述したように、第1の実施形態では、無線基地局装置の構成要素の内、スケジューラ処理部に対して無線通信端末リソースの移行が実施されることによって、無線基地局装置の省電力化が実現される。しかしながら、無線通信端末リソースの移行対象となる無線基地局装置の構成要素は、スケジューラ処理部に限定されず、他の構成要素であってもよい。
第2の実施形態では、無線基地局装置の構成要素の内、レイヤ2処理部に対して無線通信端末リソースの移行が実施されることによって、無線基地局装置の省電力化が実現される。第2の実施形態に従った無線基地局装置の機能構成は、図3を参照しながら前述した第1の実施形態に従った無線基地局装置2の機能構成と同様であってよい。以下では、図1および図4に示されるように、第1の無線通信端末装置3−1が第1のセクタS−1に対応する構成要素を介して無線基地局装置2と接続され、第2〜第4の無線通信端末装置3−2〜3−4が第2のセクタS−2に対応する構成要素を介して無線基地局装置2と接続されているケースを一例として、第2の実施形態に従った電力制御方法を説明する。
図9A〜図9Cは、第2の実施形態に従った例示的な電力制御処理シーケンス図である。
無線基地局装置2と第1の無線通信端末装置3−1とが図1および図4に示すように接続されている状態において、第1のスケジューラ処理部212−1は、TACの送信を第1のレイヤ2処理部2131−1に指示する(図9Aの処理P2001)。前述したように、TACは、タイミング調整コマンドの一例である。また、スケジューラ処理部212は、タイミング調整コマンドを送信する機能を有し得る構成要素の一例である。第1のレイヤ2処理部2131−1は、第1のスケジューラ処理部212−1から送信された指示を受信し、受信された指示に従ってTACを第1のレイヤ1処理部2132−1を介して第1の無線通信端末装置3−1へ送信する(処理P2002)。第1の無線通信端末装置3−1は、受信されたTACに従って無線基地局装置2への無線信号の送信タイミングを調整し、時間同期を確立する(処理P2003)。
第1のレイヤ2処理部2131−1は、第1のレイヤ2処理部2131−1に関するトラヒック情報を呼制御部211へ送信する(処理P2004)。また、第2のレイヤ2処理部2131−2は、第2のレイヤ2処理部2131−2に関するトラヒック情報を呼制御部211へ送信する(処理P2005)。第1の実施形態と同様に、呼制御部211へ送信されるトラヒック情報は、省電力判定制御用の情報である。第2の実施形態では、省電力判定制御用の情報は、例えば、下りデータバッファ2131Bの滞留量であり、以下の式(2)で求められる。
式(2)において、Buf_UEkは、レイヤ2処理部2131―k(kは、レイヤ2処理部2131の番号であり、1〜Nまでの整数)内の下りデータバッファ2131B−kのバッファ滞留量を表す。MAX_UEkは、レイヤ2処理部2131―kが処理可能な無線通信端末装置3の最大数を表す。Buf_UEnは、レイヤ2処理部2131―kに属する無線通信端末装置3−n(nは、レイヤ2処理部2131―k内の無線通信端末装置3の番号であり、1〜MAX_UEkまでの整数)の下りデータバッファ2131B−kのバッファ滞留量を表す。
省電力判定部211Cは、各レイヤ2処理部2131から受信したトラヒック情報に基づいて、当該レイヤ2処理部2131を省電力化できるか否かを判定する(処理P2006)。例えば、省電力判定部211Cは、図10に示される省電力判定処理を所定の周期で繰り返し実行することによって、当該レイヤ2処理部2131−kを省電力化できるか否かを判定する。図10は、第2の実施形態に従った例示的な省電力判定処理フロー図である。
省電力化判定部211Cは、省電力判定処理を開始すると(ステップS2001)、レイヤ2処理部2131の番号kを1に設定し(ステップS2002)、下りデータバッファ2131B−kのバッファ滞留量Buf_UEkが所定のバッファ滞留量の閾値Pw_buf_thを超えるか否かを判定する(ステップS2003)。バッファ滞留量の閾値Pw_buf_thは、省電力判定閾値の一例である。
バッファ滞留量Buf_UEkが所定のバッファ滞留量の閾値Pw_buf_th以上であると判定された場合(ステップS2003で“NO”)、省電力判定部211Cは、レイヤ2処理部2131−kに対する省電力判定カウンタCnt_SCDkを0に設定する(ステップS2004)。そして、省電力判定部211Cは、レイヤ2処理部2131−kに対する省電力化の実施を不可と判定する(ステップS2005)。
一方、バッファ滞留量Buf_UEkが所定のバッファ滞留量の閾値Pw_buf_th未満であると判定された場合(ステップS2003で“YES”)、省電力判定部211Cは、レイヤ2処理部2131−kに対する省電力判定カウンタCnt_L2kを1つインクリメントする(ステップS2006)。そして、省電力判定部211Cは、省電力判定カウンタCnt_L2kの値が所定の省電力カウンタ閾値Pw_cnt_thを超えるか否かを判定する(ステップS2007)。
省電力判定カウンタCnt_L2kの値が所定の省電力カウンタ閾値Pw_cnt_th以下であると判定される場合(ステップS2007で“NO”)、省電力判定部211Cは、レイヤ2処理部2131−kに対する省電力化の実施を不可と判定する(ステップS2005)。
一方、省電力判定カウンタCnt_L2kの値が所定の省電力カウンタ閾値Pw_cnt_thを越えると判定される場合(ステップS2007で“YES”)、省電力判定部211Cは、省電力判定部211Cは、レイヤ2処理部2131−kに対する省電力化の実施を可と判定する(ステップS2008)。
このように、省電力判定処理フローが所定の周期で繰り返し実行された場合に、省電力判定カウンタCnt_L2kが連続してインクリメントされ、省電力判定カウンタCnt_L2kが所定の省電力カウンタ閾値Pw_cnt_thを越えることによって、省電力判定部211Cは、レイヤ2処理部2131−kに対する省電力化の実施を可と判定する。
ステップS2005またはステップS2008での処理が実行されると、省電力判定部211Cは、レイヤ2処理部2131の番号kを1つインクリメントする(ステップS2009)。そして、省電力判定部211Cは、インクリメント後のレイヤ2処理部2131の番号kの値がレイヤ2処理部2131の番号の最大値MAX_L2を超えるか否かを判定する(ステップS2010)。
インクリメント後のレイヤ2処理部2131の番号kの値がMAX_L2以下であると判定される場合(ステップS2010で“NO”)、省電力判定部211Cは、ステップS2003での処理に戻って、省電力判定処理を継続する。
一方、インクリメント後のレイヤ2処理部2131の番号kの値がMAX_L2を超えると判定される場合(ステップS2010で“YES”)、省電力判定部211Cは、当該周期における省電力判定処理を終了する(ステップS2011)。
省電力判定部211Cは、図10に示されるような省電力判定処理によって省電力化が可能と判断されたレイヤ2処理部2131(省電力化対象のレイヤ2処理部2131)を省電力処理指示部211Dに通知する。図1および図4に示した一例では、第1のセクタS−1に対応する第1のレイヤ2処理部2131−1は、第1の無線通信端末装置3−1との通信にのみ使用されている。そこで、図10に示されるような省電力判定処理に従って、省電力判定部211Cは、第1のレイヤ2処理部2131−1を省電力化対象のレイヤ2処理部2131として省電力処理指示部211Dに通知する。
省電力処理指示部211Dは、各レイヤ2処理部2131から受信したトラヒック情報(省電力判定制御用の情報)を用いて、省電力化対象のレイヤ2処理部2131におけるバッファ滞留量と、その他のレイヤ2処理部2131におけるバッファ未使用量とを比較する。そして、省電力処理指示部211Dは、無線通信端末リソースの移行が可能か否かを判定する(処理P2007)。
省電力処理指示部211Dは、省電力化対象のレイヤ2処理部2131におけるバッファ滞留量よりも、その他のレイヤ2処理部2131におけるバッファ未使用量が多ければ、無線通信端末リソースの移行が可能と判定し得る。省電力化対象のレイヤ2処理部2131におけるバッファ滞留量よりも多いバッファ未使用量を有する複数の他のレイヤ2処理部2131が存在する場合、省電力処理指示部211Dは、バッファ未使用量が多いレイヤ2処理部2131を無線通信端末リソースの移行先のレイヤ2処理部2131として選択し得る。
図1および図4に示した一例では、第2のセクタS−2に対応する第2のレイヤ2処理部2131の無線通信端末リソースは、第2〜第4の無線通信端末装置3−2〜3−4との通信に使用されている。しかしながら、図4に示すように、第2のレイヤ2処理部2131−2には、省電力化対象の第1のレイヤ2処理部2131−1の使用中の無線通信端末リソースを移行できる未使用の無線通信端末リソースが存在する。そこで、省電力処理指示部211Dは、第2のレイヤ2処理部2131−2を無線通信端末リソースの移行先のレイヤ2処理部2131として選択する。
省電力処理指示部211Dは、第1の無線通信端末装置3−1へのTACの送信処理の停止を第1のスケジューラ処理部212−1に指示する(図9Bの処理P2008)。また、省電力処理指示部211Dは、第1のレイヤ2処理部2131−1から第2のレイヤ2処理部2131−2への無線通信端末リソースの移行を第1のレイヤ2処理部2131−1に指示する(処理P2009)。
省電力処理指示部211Dから指示を受けた第1のスケジューラ処理部212−1は、第1の無線通信端末装置3−1へのTACの送信処理を停止する。また、TACの送信処理停止に伴って、第1のスケジューラ処理部212−1は、第1の無線通信端末装置3−1へのユーザデータの送信処理を停止する(処理P2010)。
第1のスケジューラ処理部212−1によりTACの送信処理が停止状態になると(処理P2011)、TACが更新されずに時間同期タイマが満了する(処理P2012)。そこで、第1のスケジューラ処理部212−1は、PUCCHリソースおよびSRSリソースといった第1の無線通信端末装置3−1のリソースを解放する(処理P2013)。また、第1のスケジューラ処理部212−1は、第1のレイヤ2処理部2131−1のMAC処理部2131C−1に対してHARQバッファ2131D−1の解放を無線通信端末リソースの移行のために指示する(処理P2014)。
第1のレイヤ2処理部2131−1は、第1のレイヤ2処理部2131−1により管理されていたRLCレイヤおよびPDCPレイヤでの管理情報を第2のレイヤ2処理部2131−2へ無線通信端末リソースの移行のために転送する(処理P2015)。転送されるRLCレイヤおよびPDCPレイヤでの管理情報には、例えば、RLCレイヤでの状態変数、ならびにPDCPレイヤでのHyper Frame Number(HFN)およびPDCP Sequence Number(PDCP SN)が挙げられる。また、RLCレイヤおよびPDCPレイヤでの管理情報と共に、下りバッファ2131B−1内に滞留するPDCP Service Data Unit(PDCP SDU)が第1のレイヤ2処理部2131−1から第2のレイヤ2処理部2131−2へ転送されてもよい。
第2のレイヤ2処理部2131−2は、第1のレイヤ2処理部2131−1から送信されたRLCレイヤおよびPDCPレイヤでの管理情報を受信し、第1の無線通信端末装置3−1との通信を継続するために無線通信端末リソースの割り当て処理を行う。そして、第2のレイヤ2処理部2131−2は、無線通信端末リソースの移行処理の完了を省電力処理指示部211Dに報告する(処理P2016)。
無線通信端末リソースの移行処理が完了すると、第1のレイヤ2処理部2131−1は、第1のレイヤ2処理部2131−1の電源をオフする(処理P2017)。なお、省電力処理指示部211Dから第1のレイヤ2処理部2131−1へ電源オフの指示に基づいて、第1のレイヤ2処理部2131−1の電源がオフにされてもよい。
省電力処理指示部211Dは、第1の無線通信端末装置3−1へのTACの送信処理開始を第1のスケジューラ処理部212−1に指示する(図9Cの処理P2018)。第1のスケジューラ処理部212−1は、PDCCHを介したランダムアクセス手順を開始するように、第1のレイヤ1処理部2132−1に指示する(処理P2019)。
第1のスケジューラ処理部212−1からの指示を受信した第1のレイヤ1処理部2132−1は、ランダムアクセスプリアンブル番号をPDCCHを介して第1の無線通信端末装置3−1に通知する(処理P2020)。第1の無線通信端末装置3−1は、通知されたランダムアクセスプリアンブル番号からランダムアクセスプリアンブルを生成し、生成されたランダムアクセスプリアンブルを第1のレイヤ1処理部2132−1へ送信する(処理P2021)。
RRC処理部211Aは、第2のレイヤ2処理部3131−2および第1のレイヤ1処理部3132−1を介してRRC Connection Reconfigurationを第1の無線通信端末装置3−1へ送信する(処理P2022)。RRC Connection Reconfigurationを受信した第1の無線通信端末装置3−1は、RRC Connection Reconfiguration Completeを送信する。RRC処理部211Aは、第1の無線通信端末装置3−1から送信されたRRC Connection Reconfiguration Completeを第1のレイヤ1処理部3132−1および第2のレイヤ2処理部3131−2を介して受信する(処理P2023)。
第1のスケジューラ処理部212−1は、TACの送信を第2のレイヤ2処理部2131−2に指示する(処理P2024)。第2のレイヤ2処理部2131−2は、第1のレイヤ1処理部2132−1を介して第1の無線通信端末装置3−1へTACを送信する(処理P2024)。第1の無線通信端末装置3−1は、受信されたTACに従って無線基地局装置2への無線信号の送信タイミングを調整し、時間同期を再び確立する(処理P2025)。こうして、第1の無線通信端末装置3−1と無線基地局装置2との間の通信が再開される。
図11は、第2の実施形態に従った電力制御処理実行後の無線通信端末リソースの説明図である。図9を参照しながら前述したような第2の実施形態に従った電力制御処理が実行されると、第1のセクタS−1に対応する第1のレイヤ2処理部3131−1の使用中の無線通信端末リソース、すなわち、第1の無線通信端末装置3−1は、解放される。また、第1の無線通信端末装置3−1は、第2のセクタS−2に対応する第2のレイヤ2処理部3131−2に割り当てられる。一方、第1のセクタS−1に対応する第1のスケジューラ処理部212−1および第1のレイヤ1処理部2132−1は、第1の無線通信端末装置3−1を引き続き保持する。そこで、第1の無線通信端末装置3−1は、移行された第1のレイヤ2処理部3131−1を除き、第1のセクタS−1に対応する構成要素によって無線基地局装置2と接続される。すなわち、図2を参照しながら前述したようなハンドオーバが実行されたケースと異なり、第1の無線通信端末装置3−1は、図1に示すようにセクタS−1に対応する第1の無線部22−1を介して無線基地局装置2と引き続き接続される。
したがって、第2の実施形態に従った無線基地局装置およびその電力制御方法によれば、前述した第1の実施形態に従った無線基地局装置およびその電力制御方法と同様の効果を得ることができる。
なお、上述の説明は、第2の実施形態の電力制御方法の一例であり、第2の実施形態の電力制御方法が上述の説明に限定されることを意味しない。
例えば、省電力判定制御用情報として下りデータバッファ2131Bの滞留量が用いられた一例を図9および図10を参照しながら上述したが、省電力判定制御用情報は、第1の実施形態と同様に、スケジューラ処理部212における無線通信端末装置3に対する無線通信端末リソースの使用率であってもよい。また、省電力判定制御用情報は、音声データ、パケットデータ、および画像データといった無線通信端末装置3のサービスの種類に従って設定された論理チャネルリソースの使用率であってもよい。こうした省電力判定制御用情報が用いられる場合には、これらの情報がスケジューラ処理部212から呼制御部211へ送信されるように構成され得る。
また、第1の実施形態に従った電力制御方法と第2の実施形態の実施形態に従った電力制御方法とは、排他的な関係になく、両者は組み合わせ得る。
第2の実施形態に従った無線基地局装置のハードウェア構成は、図8を参照しながら前述した第1の実施形態に従った無線基地局装置のハードウェア構成と同様であってよい。したがって、第2の実施形態に従った電力制御方法によれば、省電力化対象の構成要素がプロセッサコア、デバイス、および回路基板の内の何れにより実装されるかに応じて、プロセッサコア、デバイス、または回路基板の電源をオフにすることによって、無線基地局装置の省電力化が実現され得る。
<第3の実施形態>
上述では、第1および第2の実施形態に従った電力制御方法として、図1および図3に示されるように無線制御部と無線部とに分離された無線基地局装置の電力制御方法を説明した。しかしながら、第1および第2の実施形態に従った電力制御方法は、無線制御部と無線部とが物理的または場所的に一体である無線基地局装置に対しても同様に実施できる。
図12は、第3の実施形態に従った無線通信システムの例図である。図1に示すように、無線通信システム4は、無線基地局装置5および無線通信端末装置3(3−1〜3−4)を含む。無線通信システム4は、例えば、3GPPの仕様書に適合した無線通信システムである。無線基地局装置5は、例えば、eNBである。無線通信端末装置3は、例えば、UEである。なお、図12には、1つの無線基地局装置5が図示されているが、無線通信システム4に含まれる無線基地局装置5の数は、任意の数であってよい。また、図12には、4つの無線通信端末装置3−1〜3−4が図示されているが、無線基地局装置5と接続される無線通信端末装置3の数は、任意の数であってよい。
図12に示すように、無線基地局装置5の通信エリアは、複数のセクタS(S−1〜S−3)に分割される。無線基地局装置5は、各セクタS内に位置する無線通信端末装置3と接続する。
図13は、第3の実施形態に従った無線基地局装置の例示的構成図である。図3を参照しながら前述した第1および第2の実施形態に従った無線基地局装置2と同じ構成要素には、図13に示した第3の実施形態に従った無線基地局装置5の構成要素に対して同じ参照符号がふられている。
図13に示すように、無線基地局装置5は、無線基地局装置2の無線制御部21の無線制御部21と同様の構成要素を含む。すなわち、無線基地局装置5は、呼制御部211、N個のスケジューラ処理部212(212−1〜212−N)を含むスケジューラ処理部群212G、およびN個の送受信処理部213(213−1〜213−N)を含む。N個のスケジューラ処理部212およびN個の送受信処理部213(213−1〜213−N)は、無線基地局装置5がカバーするN個のセクタSにそれぞれ対応する無線基地局装置5の構成要素である。
また、図13に示すように、無線基地局装置5は、無線基地局装置2の無線部22の構成要素と同様の構成要素を含む。すなわち、無線基地局装置5は、D/A及びA/D変換回路221(221−1〜221−N)、送受信処理回路222(222−1〜221−N)、ならびにアンテナ223(223−1〜223−N)を含む。D/A及びA/D変換回路221−1〜221−N、送受信処理回路222−1〜221−N、ならびにアンテナ223−1〜223−Nは、N個のセクタSにそれぞれ対応する。
第1および第2の実施形態に従った電力制御方法は、無線基地局装置5に対しても同様に実施できる。そして、第3の実施形態に従った無線基地局装置5およびその電力制御方法によれば、第1および第2の実施形態に従った無線基地局装置2およびその電力制御方法と同様の効果を得ることができる。
図14は、第3の実施形態に従った無線基地局装置の概略的なハードウェア構成図である。図14に示した参照符号は、図13に示した無線基地局装置5の各構成要素の参照符号に対応する。
図14に示すように、図3に示した無線制御部21に相当する無線基地局装置5の各構成要素は、必要に応じてプロセッサコアであってよく、複数のプロセッサコアを含むデバイスであってよく、複数のデバイスを含む回路基板であってよい。デバイスは、例えば、CPU、DSP、およびFPGAである。したがって、第3の実施形態に従った電力制御方法によれば、省電力化対象の構成要素がプロセッサコア、デバイス、および回路基板の内の何れにより実装されるかに応じて、プロセッサコア、デバイス、または回路基板の電源をオフにすることによって、無線基地局装置の省電力化が実現され得る。